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2022/08/02

🇲🇴クレブシエラ肺炎

クレブシエラ菌の感染で起こり、重症化しやすい肺炎

クレブシエラ肺炎とは、グラム陰性桿菌(かんきん)のクレブシエラの感染によって引き起こされる肺炎。

グラム陰性桿菌は、 細菌を分類するグラム染色という手法に染まらないグループのうち、細長い形をした菌です。クレブシエラ菌は日本では肺炎桿菌とも呼ばれ、口腔(こうくう)や腸管に生息する常在菌です。

クレブシエラ菌が健康な人に感染して肺炎を起こすことはまれで、通常、重症の疾患で入院している人がかかる院内感染であり、主として抵抗力の低下した患者に起こります。院内では、菌交代症としてみられやすく、誤嚥(ごえん)性肺炎や菌血症に続発した血行性肺炎が多くみられます。市中肺炎としてみられるものは、大量の飲酒習慣がある人や、糖尿病の人、高齢者、ペニシリン系抗生物質服用者に発症します。

クレブシエラ肺炎を起こすと重症化しやすく、突発的に発症し、せき、発熱、呼吸困難などの症状が現れます。膿性(のうせい)のたん、胸痛が現れることもあります。重症化した時は、呼吸困難で唇などが紫色になるチアノーゼや、意識障害がみられ、緊急に治療を開始する必要が生じます。

通常、クレブシエラ菌は呼吸器に感染を引き起こして肺炎、気管支炎として現れるとともに、尿路、腸管にも感染を引き起こして膀胱(ぼうこう)炎、腎盂(じんう)炎として現れ、肺膿瘍(のうよう)、膿胸、および髄膜炎、敗血症へと進行します。

クレブシエラ肺炎の検査と診断と治療

発熱が高く、胸痛、呼吸困難などがあれば肺炎の疑いがあるので、すぐに医療機関を受診します。そこで診察し、X線検査を行い、重症度に応じて入院の是非や専門病院への転送などが判断されます。ただし、呼吸困難、チアノーゼ、意識障害などが認められた場合は重症肺炎の兆候で、進行が速く治療が間に合わないこともあるため、緊急に医療機関を受診します。

医師の診断では、最も有用な検査として胸部X線撮影が行われ、大葉性肺炎で空洞陰影が認められる傾向があります。人間の右肺は上中下3つ、左肺は上下2つの大きな袋である肺葉に分かれていますが、この肺葉全体が侵されのが大葉性肺炎です。肺膿瘍や膿胸の併発も多く認められます。細菌学的検査として、喀(かく)たんの培養や血清中の抗体価の測定も行われます。

治療には、第3世代セファロスポリン系、セフェピム系、カルバペネム系、フルオロキノロン系、ピペラシリンータゾバクタム系、またはアミノ配糖体系の抗生物質が使用されます。ただし、クレブシエラ菌の一部の分離株は複数の抗生物質に対して耐性を示すため、感受性試験が必須です。

誤嚥性肺炎を起こしている場合は、口腔内の清浄が保たれていないことが大きな原因になりますので、歯磨きを励行し、かつ歯肉の化膿性病巣などを歯科で治療してもらうことも必要です。

🇲🇴クロイツフェルト・ヤコブ病

脳に海綿状の病変が現れる疾患

クロイツフェルト・ヤコブ病とは、体内に異常なプリオン蛋白(たんぱく)が入り、脳が委縮して海綿状の病変が出現する中枢神経疾患。全身の不随意運動と急速に進行する認知症を主症状とし、発病後1~2年以内に全身衰弱、肺炎などで死亡します。

この異常なプリオン蛋白によって起こる疾患は、プリオン病と総称されています。人間ではクロイツフェルト・ヤコブ病のほかに、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群、致死性家族性不眠症があります。かつては、ニューギニア島で行われていた葬儀の際の食人習慣に起因する、クールーという手足が震え認知症となる不治の病も、類縁疾患に含まれていました。

また、牛の狂牛病(牛海綿状脳症:BSE)、羊のスクレイピー病や、ミンクでも同じ症状が起こり、脳に海綿状の病変が起こって死亡します。

クロイツフェルト・ヤコブ病の名は、1920年と1921年にそれぞれ症例報告を行ったドイツの二人の神経学者ハンス・ゲルハルト・クロイツフェルトとアルフォンス・マリア・ヤコブにちなんで付けられたものです。ただし、現在では、クロイツフェルトが報告した症例は別の疾患の患者であった可能性が高いと考えられているため、近年では、病名をヤコブ病と改めるべきだという主張もなされています。

このクロイツフェルト・ヤコブ病はまれな疾患であり、年間の発症者は100万人におよそ1人の割合でしかみられます。日本を含め、世界各国の地域による差は、あまりありません。例外的に中東のパレスチナ地方では、100万人におよそ30人の割合でみられるといわれています。男性よりも女性にやや多く、50~70歳代に起こり、平均発症年齢は62~63歳。日本では、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されています。

疾患の原因は、プリオンと呼ばれる感染因子で、その本体である異常化したプリオン蛋白が脳内に沈着するためと見なされています。プリオンは本来、人間の脳に存在しますが、異常な形のプリオン蛋白が体内に入り込むと正常なプリオン蛋白も異常化すると見なされるため、少量の異常プリオン蛋白に感染したり、摂取しただけでも発症の可能性があります。異常化したプリオンは脳内に沈着、蓄積し、神経細胞を障害して次々と変性、壊死(えし)、脱落させます。しかし、この発症メカニズムも確定的ではありません。

クロイツフェルト・ヤコブ病は、原因や症状などにより、以下のように分類されます。

散発性(孤発性)クロイツフェルト・ヤコブ病

発症の原因が不明で、およそ100万人に1人の割合で発症するとされているもの。発症者の多くは50歳以上の高齢であり、若年層の症例はまれです。

遺伝性(家族性)クロイツフェルト・ヤコブ病

プリオン蛋白をコードするプリオン蛋白遺伝子の変異を原因とするもの。まれですが、プリオン蛋白遺伝子に変異のある人では、この病気が遺伝することがあります。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病

以前は新型、あるいは新変異型クロイツフェルト・ヤコブ病と呼ばれていたもの。異常プリオン蛋白質を含む食肉を摂取したために、人間が発症するもので、かつてイギリス産の狂牛病(牛海綿状脳症)の牛肉に端を発し、世界中で社会問題となりました。

1970年代後半、イギリスにおいて牛の飼料として、羊または牛の骨粉と、内臓由来の蛋白質を混入させた肉骨粉飼料が開発され、高栄養で安価な飼料供給システムができ上がりました。この肉骨粉飼料により、畜産用牛に狂牛病の発症が疑われる結果になり、最初の報告は1985年に行われています。1995年には、狂牛病の牛の神経組織の摂取による、人間への感染が疑われる報告がなされています。

医原性クロイツフェルト・ヤコブ病

異常プリオンに汚染された医療器具の使用、クロイツフェルト・ヤコブ病で亡くなった患者由来の脳硬膜や角膜などの組織の移植、患者由来の脳下垂体ホルモンの投与など、医療行為を原因とするもの。病気の型ではなく、感染経路に注目した分類です。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、医原性クロイツフェルト・ヤコブ病の潜伏期間は約10年とされており、ニューギニア島のクールーでは50年を越すものも報告されています。

このクロイツフェルト・ヤコブ病では、行動異常、性格変化や認知症症状、視覚異常、歩行障害などで発症します。数カ月以内に、記憶力低下、計算力低下、失見当識、無関心、不安、不眠、失認、幻覚など認知症症状が急速に進行し、筋硬直、深部腱(けん)反射高進、病的反射陽性が認められます。

さらに起立、歩行が不能になり、発症より3~7カ月で自発運動はほとんどなくなり、寝たきりの状態、すなわち無動性無言状態となります。1~2年以内に全身衰弱、肺炎、呼吸まひなどで死亡します。

変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の場合は、20歳代の若年に好発します。不安、感覚障害で初発し経過が長いのが特徴とされ、無動性無言状態に陥るのに1年を要します。この理由は、異種の病原体が人間への種差を乗り越え複製するのに、より長い時間がかかっているためであると推測することができます。

検査と診断と治療

クロイツフェルト・ヤコブ病では、脳は海綿状でブヨブヨになり、神経細胞も脱落します。脳の固定標本では抗プリオン抗体により、異常プリオン蛋白を検出することができますが、生前に診断するのは難しいといえます。

脳波は特有な異常を示します。初期から基礎律動の不規則性がみられ、その後高振幅鋭徐波が出現します。画像上CTスキャンでは、初期の軽度の大脳皮質の委縮、脳室拡大がみられ、その後急速な大脳、小脳の委縮、著明な脳室拡大、白質のびまん性低吸収域が認められます。

この病気の有効な治療法はまだ開発されておらず、対症療法が主体となります。最近、培養系においてではありますが、抗マラリア薬及び抗精神薬にプリオン蛋白増殖抑制作用が見付かり、治療薬として期待されています。また、ヘパリン類似活性を有するペントサンポリサルフェートなどの薬物を脳室内に投与する、治療の臨床試験も行われています。

なお、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病の予防法として、プリオン病原体が種の違いをジャンプする可能性があるため、牛の脳、脊髄(せきずい)、眼、回腸部の摂食は避けるべきだと考えられます。狂牛病の牛からの生乳に感染性が認められていないことから、生乳及び乳製品は安全であると推測されます。

羊の脳はフランスで長く食されており、スクレイピー病の人間への伝達は起こらないことが推定されますが、1980年以降発生している狂牛病が羊に伝達されていない確証がない現状では、羊の脳の摂食も避けたほうが無難であると考えられます。

🇰🇲クローン病

腹痛と下痢が続く原因不明の慢性疾患

クローン病とは、小腸の最後の部分に当たる回腸末端を中心に、小腸のほかの場所、大腸から口腔(こうくう)に至る消化管に炎症を起こし、びらんや潰瘍(かいよう)を生じる慢性の疾患。大腸だけが侵される潰瘍性大腸炎と似ている点も多く、2つをまとめて炎症性腸疾患と呼びます。

遺伝的要因とそれに基づく腸管での異常な免疫反応のためとされていますが、はっきりとした原因は解明されていません。食生活の欧米化によって、日本でも20歳代を中心に発症者数が増えており、食物中の物質や微生物が抗原となって異常反応を引き起こすことが、原因の1つと考えられています。

1932年に、アメリカの内科医ブリル・バーナード・クローンらによって限局性回腸炎として報告され、後に病名は改められましたが、回腸末端から盲腸にかけての回盲部に好発する点は確かです。病変が小腸のみにある小腸型、大腸のみにある大腸型、両方にある小腸大腸型に分類されます。日本では、いわゆる難病として厚生労働省特定疾患に指定されており、申請すると医療費の補助が受けられます。

主な症状は、腹痛、下痢。進行すると、体重減少、発熱、貧血、全身倦怠(けんたい)感がみられます。また、腸管が部分的に非常に狭くなることが多く、そのため腹痛はなかなか軽快しません。

血便はあまりはっきりしないこともあり、下痢や下血が軽度の場合、なかなか診断が付かないことがあります。口腔(こうくう)粘膜にアフタ(有痛性小円形潰瘍)や小潰瘍がみられたり、痔(じ)、特に痔瘻(じろう)や肛門周囲膿瘍(のうよう)といわれる難治性の肛門疾患を合併したりすることがあります。

クローン病の検査と診断と治療

いったん発症すれば、急性期は家庭で自分でコントロールできる疾患ではありません。まれな難病ですので、胃腸科専門医の適切な治療を受けることが大切です。

クローン病の病変は、非連続性といわれ、正常粘膜の中に潰瘍やびらんが飛び飛びにみられます。また、縦走潰瘍といわれる消化管の縦方向に沿ってできる細長い潰瘍が特徴的で、組織を顕微鏡で見ると非乾酪性類上皮細胞肉芽腫(にくげしゅ)といわれる特殊な構造がみられます。大腸内視鏡検査、小腸造影検査、上部消化管内視鏡検査などを行い、このような病変が認められれば診断がつきます。血液検査では炎症反応上昇や貧血、低栄養状態がみられます。

根本的治療法はありませんが、薬物療法として、5—アミノサリチル酸製剤(サラゾピリン、ペンタサ)、ステロイド薬を使用します。食べ物が原因の1つとして考えられているため、栄養療法も重要で、最も重症の時には絶食と中心静脈栄養が必要です。少しよくなってきたら、成分栄養剤(エレンタール)という脂肪や蛋白(たんぱく)質を含まない流動食を開始します。成分栄養剤は、栄養状態改善のためにも有効です。

炎症が改善し普通食に近い物が食べられるようになっても、脂肪の取り過ぎや食物繊維の多い食品は避けます。

腸に狭窄(きょうさく)を生じたり、腸管と腸管、腸管と皮膚などがつながって内容物が漏れ出てしまう瘻孔(ろうこう)を生じたり、腸閉塞(へいそく)、穿孔(せんこう)、膿瘍などを合併したりした場合、内科的治療の効果が期待できないため手術が必要となることがあります。

最近、抗体療法である抗TNFα(アルファ)抗体製剤(レミケード)が日本でも使用可能となり、高い活動性が続く場合や瘻孔を合併している場合に明らかな効果が認められています。対症療法として、止痢薬、鎮痙(ちんけい)薬などを使用します。免疫抑制薬(アザチオプリンなど)を使用することもあります。

長期に渡って慢性に経過する疾患であり、治療を中断しないことが大切です。治療の一部として日常の食事制限が必要なことが多く、自己管理と周囲の人たちの理解が必要です。症状が安定している時には通常の社会生活が可能です。

🇰🇲黒あざ

先天的もしくは後天的に、皮膚のすべての部位の一部分にできる黒色調の色素斑

黒あざとは、先天的もしくは後天的に、皮膚のすべての部位の一部分にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素斑(はん)。色素性母斑、母斑細胞性母斑とも呼ばれます。

あざは、医学的には母斑(ぼはん)といわれ、通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイト(メラニン細胞、色素細胞)が、皮膚のやや深い部分の真皮の上層に存在し、母斑細胞に変化して増殖しているために、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れます。

あざはさまざまなタイプに分けられますが、一般的には、その皮膚の一部分の色によって、赤あざ、青あざ、茶あざ、黒あざなどに分けられます。生まれた時からあざがあることもあるし、生後数年、あるいは数十年後に初めてあざが出てくることもあります。

あざの代表的なものが、黒あざ、すなわち色素性母斑です。黒あざの大きさは大小いろいろで、皮膚の表面と同じ高さのものから、半球状に隆起したものまであります。

黒あざの一番小さい型が、いわゆるほくろ(黒子)で、メラニン色素を産生するメラノサイトが変化した母斑細胞からなる良性腫瘍(しゅよう)です。

ほくろの色は一般に濃い黒色か褐色ですが、中には皮膚と同色や、黄色みを帯びた褐色のものもあります。最初は赤く、やがて色が濃くなる場合もあります。ほくろの大きさは、小さい点程度から直径が約2・5センチメートルを超えるものまでさまざまです。ほくろの表面は、平らなもの、盛り上がったもの、滑らかなもの、ザラザラしていぼのようなものなどさまざまで、毛が生えていることもあります。

ほとんどの人には顔や全身に、いくつかはほくろがあり、たくさんある人も珍しくありません。多くの人では小児期から思春期にかけてよくできますが、中には一生増え続ける人もいます。一度できたほくろは、自然には消えません。

女性の場合、ほくろはホルモン量に対応して変化するので、妊娠中はほくろができる、大きくなる、色が濃くなるなどの変化がみられます。皮膚の色が薄い人では、ほくろは主に日光にさらされる部分にできます。

かゆみや痛みを伴うことはなく、ほとんどは無害で切除の必要はありません。見た目や位置によっては、ほくろは魅力的だと見なされることさえあります。

しかし、比較的大きく、通常と異なる外観を有する異形成ほくろ(異形成母斑)が少数でも生じている場合は、ほくろのがんといわれる皮膚がんの一種で、メラノサイトががん化してできる悪性黒色腫(メラノーマ)に発展することがあります。この異形成ほくろは、さまざまな色で、全体の形も縁も不規則でゆがんでいます。もし血縁者の中に悪性黒色腫にかかった人がいる場合、リスクは非常に高くなります。異形成ほくろができる体質は、遺伝します。

時には、黒あざが皮膚の広い範囲に生じる場合もあり、先天性巨大色素性母斑と呼ばれます。まれには、全身に大小の黒褐色のあざが多発し、その上に剛毛が密生し、その外見から獣皮様母斑と呼ばれる場合もあります。この型の黒あざは、脳を始め全身の神経組織の色素異常を伴うこともあり、神経皮膚黒色症と呼ばれ、ほくろのがんといわれる悪性黒色腫ができやすい型です。

時には、まぶたの上、下に黒あざが分かれている場合もあり、分離母斑と呼ばれます。胎生期のまぶたが分離する前から黒あざがあった場合に、分離母斑がみられます。

特に、成人以降に足の裏や手のひらに急に黒あざができて、色や大きさの変化が激しい場合、色の濃淡が強い場合、出血する場合などは、たとえ小さくても悪性黒色腫の可能性もあるので、早めに皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診します。生まれ付きの大きい黒あざも、生後早めに医師と相談します。

黒あざの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。ただし、黒あざ自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍の中でも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。悪性黒色腫の確定診断は、切除したほくろを病理組織検査することでつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、放置しておいてもかまわない黒あざであっても、顔などに大きなものがあり、本人が非常に気にしたり、他人に悪印象を与える時などは、手術で除去することになります。非常に小さなほくろであっても、本人が悪性化や、その他の面で気にする時にも、手術を行うこともあります。

手術では、病変部の皮膚をメスで全部切り取った後、皮膚の欠損部を縫い合わせるか、植皮術を行います。最近では、顔の小さいほくろの場合に、メスの代わりに炭酸ガスレーザーで切除した後、縫い合わせないで自然に治るのを待つ、くり抜き療法も行われています。

いずれにして、多少の傷跡は残ります。特に、植皮術で植皮した皮膚は、周囲の皮膚とは細かい性状が異なり、完全にはなじみません。従って、手術の跡と、ほくろや黒あざとどちらが目立つかを考えてから、手術をする必要があります。手術をしなくても、カバー・マークを利用して、色を隠せばよいからです。

なお、炭酸ガスレーザーを用いる、くり抜き療法は顔面ではあまり傷跡が目立たないことが多いようですが、他の部位ではくり抜いたところの傷跡が目立つ場合もあります。また、レーザー治療では多くの場合、病変部を焼き飛ばすため、病理組織検査を行えません。悪性黒色腫と見分けがつきにくい場合もあるので、レーザー治療を選択する場合には、担当する医師の十分な診断力が必要とされます。

異形成ほくろが悪性黒色腫に発展した場合は、医師による治療は原則的に、悪性黒色腫の部位を外科手術によって円形に切除することになります。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで悪性黒色腫が侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い悪性黒色腫であれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している悪性黒色腫の場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移した悪性黒色腫は致死的なものになることがしばしばあるものの、抗がん剤による化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療が行うことで、健康を保って何年も生存する人もいます。

日光の紫外線は、異形成ほくろの発生や性状の変化を助長します。子供のころに普通に日に当たるだけでも、数十年後に悪性黒色腫が発症するリスクが高まります。ですから、生まれ付き皮膚の色が白い人や異形成ほくろがある人は、日光に当たるのを避けるべきです。

悪性黒色腫を始め、その他の皮膚がんの発生数も年々増加傾向にあり、今まで紫外線に対する防御対策をしてこなかったことが増加の一因であると考えられます。海水浴やスポーツ、仕事などで長時間、過度の紫外線を浴びる場合は、皮膚を紫外線から防御することが非常に大切です。日焼け止めクリームの使用、帽子や日傘の使用、長袖(ながそで)で腕を覆うなどの予防策があります。

🇭🇳黒なまず(癜風)

成人の胸や背中に、褐色のまだらが発生

黒なまずとは、かびの一種である癜風(でんぷう)菌の感染で起こる皮膚病。癜風とも呼ばれて有り触れた疾患ですが、あまり疾患名は知られていません。

癜風菌は皮膚に普通に存在して疾患を起こさない常在真菌で、イースト型(丸い型)として存在しています。菌糸が伸びた型で黒なまずを起こしますが、存在すると必ず起こるわけではありません。残念ながら、起こる人と起こらない人の差が何かかはわかっていません。癜風菌が成育するには脂分が必要なため、皮脂の分泌が関係しているといわれます。

症状としては、主に成人の胸や背中などに、1~2cmの円形または楕円(だえん)形の薄茶色のしみのような斑点(はんてん)ができます。時には、斑点がたくさんできてくっつき、次第に広がっていきます。逆に、薄く色が抜ける白色の斑点ができることもあります。かゆみなどを伴うことが少ないため、気が付かないことも少なくありません。放置すると、色素沈着や白斑が長期化することがあります。かゆみを伴うと少し赤みがあります。

黒なまずは、汗かきの男性に多い傾向があり、運動選手にもよくみられます。汗をたくさん吸い込んだアンダーシャツや練習着をよく洗濯をせずにそのまま干し、乾かないうちにまた着たりすることで、感染しやすいといえます。干す時の管理が悪かったり、ほかの選手のユニホームを借りて着たりすることにより、そのチーム全員がそろって黒なまずになることもあります。

なお、癜風菌は、脂漏性皮膚炎やアトピー性皮膚炎の発症への関与が疑われています。また、にきび、毛嚢(もうのう)炎に似たマラセチア毛包炎を起こすことがあるので、注意が必要です。

黒なまずの検査と診断と治療

黒なまずの診断では、薄茶色や白色に変色した部分をメスなどでこすると、皮膚が粉を吹いたようになり、それをとって顕微鏡で見ると、たくさんの癜風菌が見られます。

治療は、サルチル酸アルコールや抗真菌剤の塗布、抗真菌剤の内服を、角質層の癜風菌を追い出すまで根気よく続けます。初期の黒なまずに対して抗真菌剤はよく効きますが、白斑が長期化した場合は治療は難しく、抗真菌剤は進行を止める程度の効果しかありません。治療によって、癜風菌の細胞膜の合成を阻害し、癜風菌がいなくなっても、しばらく色が残ることがあります。

予防法として、夏に汗をかく機会の多い人は、こまめにシャーワを浴びたり、下着などを清潔に保つことが必要です。

2022/07/17

🇧🇻群発頭痛

群発頭痛は、1時間程度の激しい頭痛が1~2カ月の間、連日のように群発するのが特徴で、血管の拡張が原因で神経が刺激されて起こると考えられています。片頭痛が女性に多いのに対して、群発頭痛は20~30代の男性に多い頭痛です。頻度が比較的まれであるため、三叉(さんさ)神経痛や片頭痛と勘違いされることがあります。

目の奥やこめかみの辺りをえぐられるような、転げ回るほどの激しい痛みが1時間程度続き、自然に治まります。頭痛は年に1~2回、あるいは2~3年に1回程度現れ、毎日のように群発します。それが1~2カ月間続きますが、その時期が過ぎれば全く頭痛は起こりません。

頭痛は睡眠中に起こりやすく、明け方の痛みで目を覚ますこともあります。発作中に、頭痛のある側の目が充血する、涙が出る、鼻が詰まる、鼻汁が出るなどの症状を伴うことがあります。片頭痛のように吐き気や嘔吐(おうと)は、あまりみられません。

群発頭痛の発作時の対応としては、酸素吸入を行ったり、セロトニン作動薬(トリプタン)を使ったりしますが、どちらも医師の処方が必要です。酸素吸入は、100%の酸素を15分間吸入するというものです。群発頭痛は夜中に起こることが多いため、酸素ボンベをレンタルして使用します。また、エルゴタミン製剤の服用は、睡眠中に起こる発作の予防に効果があります。

群発頭痛を予防するための日常生活での注意点は、以下の事項です。

○発作の誘因となるストレスや疲労、睡眠不足を避ける

○睡眠中に発作が起こることが多いため、昼寝をしない

○飲酒を控える

○発作が起こりそうになったら、窓を開けて深呼吸する

○入浴後に発作が起こる人は、シャワーですませる

○気圧変化は発作の誘因となるため、飛行機の搭乗や登山を控える

🟧「酒のエナジードリンク割りは危険」、農水省が注意喚起 過去には中毒死も

 酒とエナジードリンクを一緒に飲むとカフェインの過剰摂取による健康被害につながりかねないとして、農林水産省が注意喚起しています。5月8日に問い合わせが相次いだことを受けての対応で、同省は直前に人気ユーチューバーが酒とエナジードリンクを一緒に飲む動画を投稿した影響とみています。 ...