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2022/08/29

🇱🇹手足のしびれ

手足のしびれは神経からのサインです。きちんと検査をして、適切な対処を心掛けましょう。

手足のしびれは、なぜ起こる?

 「ピリピリする」、「ジンジンする」など人によって訴える症状はさまざまですが、手足のしびれの多くは、体を通る末梢(まっしょう)神経や中枢神経のどこかで神経が刺激されたり、伝導が正常に行われなかったして起こります。痛みや灼熱(しゃくねつ)感を伴う場合もあります。

 原因となる病気で代表的なのは、変形性脊椎(せきつい)症。背骨や周囲の組織が変形し、神経を刺激するために、しびれや痛みを引き起こします。私たち日本人には神経が通る脊柱管(せきちゅうかん)の狭い人が多いために、発症しやすいと見なされています。

 また、パソコンに長時間、向かっている人の中に、手指のしびれを訴える方も多く見られるところですが、この場合は、重症化することはまれです。ただし、しびれが繰り返したり、持続したりしたら、何かの病気のサインである可能性もありますので、専門医の検査をぜひ受けましょう。 

原因をチェック 

●頚椎や腰椎の疾患

 変形性脊椎症は、加齢などによって頸椎(けいつい)や腰椎が変形し、神経を圧迫するものです。多くの場合、頸椎なら手に、腰椎なら脚に症状が現れます。

 脊椎症の一つである腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症では、歩くと脚がしびれ、立ち止まって前かがみになると治まるのが特徴で、50代以上で発症します。

 骨と骨との間のクッションの役割を果たしている椎間板(ついかんばん)が、衝撃などによって突出してしまい、神経を圧迫するのが椎間板ヘルニア。こちらは、青壮年期に多く発症します。 

●末梢神経の障害

 女性の方に多く発症するのが、手根管(しゅこんかん)症候群。手首を通る神経の通り道が狭くなり、小指以外の4本の指がしびれます。肘部管(ちゅうぶかん)症候群では、小指や薬指の一部がしびれます。ひじの内側を通る神経が、関節の変形や良性の腫瘍(しゅよう)などにより圧迫されて、発症します。 

●血行不良 

 動脈硬化により血行が悪くなり、脚がしびれるのが閉塞(へいそく)性動脈硬化症です。中高年の男性の方に多く、初期には歩くと脚にしびれや痛みが出て、しばらく休むと治まります。

 上胸部で手指への血行が悪くなることで発症するのが、胸郭出口症候群です。なで肩の若い女性の方に多く見られ、手がしびれたり、肩が凝ったりします。

●その他

 骨折脱臼切り傷などで神経が傷付き、しびれが出るケースもあります。また、糖尿病が進行すると、末梢神経障害で手足の先がしびれます。

 脳血管障害の初期やその後遺症、さらに脊髄腫瘍骨のがんウイルスや細菌の感染などでも、手足がしびれることがあります。 

対策へのアドバイス

●同じ姿勢を避ける

 デスクワークなどで同じ姿勢を続けていると、当然、体に負荷がかかります。約30分に一度、首や肩を回したり、腰を伸ばしたりして、体を動かしましょう。

 椅子(いす)の高さは、自分の体に合わせて調節しておきましょう。 

●日常生活での注意

 しびれの原因となる病気によって、日常生活での対処法は異なります。

 脊椎症の場合は、まず体重を増やさないことが大切で、コルセットも有効。無理な運動は避け、しびれや痛みがとれてから、医師の指示に従って腹筋や背筋を鍛えましょう。水泳がお勧めのスポーツです。 

 頸椎症の場合は、首を少し前かがみにすると、症状が和らぎます。反対に、首を後ろに反らす、うがいをする際のような動作は控えましょう。頭の重みが神経を圧迫するので、つらい時は横になりましょう。

 胸郭出口症候群では、肩付近の筋肉を鍛えます。 

●対症療法で症状を緩和

 脊椎症や椎間板ヘルニア、手根管症候群、肘部管症候群では、薬物療法などの対症療法が主となり病状に応じて手術も行われています。

 椎間板ヘルニアの場合では、医師が治療を続けるうちに、突出したヘルニアの塊が体の免疫反応などにより消失し、症状が治まるケースも、よくあります。

●体に負担をかけない姿勢

 不自然な姿勢を続けると、背骨や筋肉に大きな負担がかかります。ふだんから正しい姿勢を心掛けたいものです。    

 ◎いすに座る時

 ・あごを少し引き、背中は真っすぐに伸ばす。

 ・腰とひざはほぼ直角に、太ももの上面はほぼ水平になるように。

 ・両腕はひじ掛けや机に乗せた際、水平になるように。

 ・足の裏全体が床に着くように。

 ◎寝る時

 ・敷き布団は軟らかすぎない物に。

 ・首が自然なカーブになる枕を使う。 

2022/08/15

🇹🇴手足口病

手足口(てあしくち)病は、腸管系ウイルスによって起こる感染症で、手のひらや足の裏に小さな水ぶくれ、口の中の粘膜に小さな発疹(はっしん)がたくさんできます。軽い病気ながら、感染力はかなり強く、夏を中心に5月から9月にかけて、乳幼児の間で流行します。

代表的な原因ウイルスはコクサッキーA16、あるいはエンテロ71という名前のウイルスですが、原因となるウイルスがそれ以外にも何種類もあるため、以前にかかったことがある乳幼児でも、またかかることがあります。

潜伏期は2~7日で、多くの乳幼児はほとんど前駆症状なしに発症します。発熱も約半数にみられますが、高熱になることはあまりなく、3日以内に解熱します。

手足の水ぶくれは、痛くありません。ひざやおしりなどにも、多数の水ぶくれが現れることもあります。おしりだけの場合もあり、おむつかぶれと間違えられることも。これらの水ぶくれは、一週間ほどで消失します。

口の中はひどく痛くなることがあるので、酸っぱい物、辛い物など刺激性の食べ物は避け、乳児では脱水を起こさないように水分を与えましょう。口内痛が強くて、全く飲んだり食べたりできない時や、高熱が続いて、頭痛を訴えたり、嘔吐(おうと)を繰り返す時は、早めに診察を受けましょう。無菌性髄膜炎を合併して起こすこともあります。

🇹🇴手汗

手のひらに汗が異常に分泌する症状

手汗とは、日常生活をする上でいろいろな障害をもたらすほど、手のひらに発汗する症状。多汗症の一種で、手掌(しゅしょう)多汗症とも呼ばれます。

多汗症は、体温の調節に必要な範囲を超えて、汗が異常に分泌する症状。全身性の多汗症と、手のひら、足の裏、腋(わき)の下、頭、鼻の頭などにみられる局所性の多汗症があります。

人間は意外と多くの場面で汗をかいており、発汗は体温調節の役割を担う大切な生理機能の一つでもあります。そのため、どのくらいの汗の量で多汗症と呼べるのか分類は難しいのですが、多汗症の場合は気温の変化や運動などとは関係なしに汗をかくことが多いので、心当たりがある人は少し振り返ってみるといいでしょう。特に疾患と考える必要はないにしろ、汗をかくということは日常の生活と密接に関係していることなので、さまざまな悩みや問題を抱えている人が多いのも事実です。

局所性の多汗症は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わったものが大部分です。肥満、過度なダイエット、生活リズムの乱れ、性格的に神経質だったり、緊張しがちなタイプだったりと、ストレスをためやすい状況下に身を置いていることが原因となっています。

これらの原因の背後には、交感神経の働きが大きく関係しています。交感神経は、副交感神経とうまくバランスを取り合いながら、人間が日々健康で過ごせるように作用しているものです。この交感神経がストレスなどさまざまな原因により過敏になってしまうと、体温上昇とは無関係に汗を大量にかくようになり、汗をかくことでさらなるストレスを作り出す悪循環に陥ってしまいます。

全身性の多汗症も、多くは体質的なものです。比較的急激に生じた場合には、代謝機能や自律神経などが障害される、いろいろな疾患が潜んでいる可能性があります。

局所性の多汗症の一種である手汗が起こる原因は、汗をかきやすいという体質に、生活環境や精神的な影響が加わり、発汗を促す交感神経が通常よりも過敏になって起こるものが大部分です。

本人には意識できない幼少期から発症することが多いものの、10歳代から30歳代になって治療を受け始める人が多く認められます。足の裏に異常なほど大量の汗をかく足蹠(そくせき)多汗症(足底多汗症)を伴うことも、しばしばあります。発症に男女差は認められていません。

同じ手汗でも、人によって汗の出る量が異なります。同じ人でも、汗の出る量(発汗量)は時間帯やその日の気温、緊張の度合いによっても違いますが、レベルは3段階に分けられています。

レベル1は、手が湿っている程度。見た目にはわかりにくいものの、触ると汗ばんでいることがわかります。光を反射して汗がキラキラと光ります。

レベル2は、手に水滴ができてぬれており、見た目でも汗をかいていることがわかります。

レベル3は、盛んに水滴ができ、汗が滴り落ちます。

手のひらから汗が滴り落ちるように出る場合は、「手を動かすと汗が飛び散る」「教科書やノート、書類がぬれてしまう」「握手ができない」「手が滑って物を落としやすい」など、さまざまな支障が生じます。

本人にとっては非常につらい状態なので親や周囲の人に相談するのですが、汗っかきの体質ということで片付けられてしまい、治療を受けることなく悩みながら成長していくケースが多いようです。

そのため、性格が消極的になる、集中力が低下するなどの精神的な負担も、背負い込むことになります。その結果、学業成績の低下やいじめの原因となり、不登校や引きこもりに至るケースも認められます。

手汗による支障が改善しない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診し、本人に合った治療を受けることが勧められます。

手汗の治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、皮膚に塗ると汗腺(かんせん)をふさいで一時的に汗を抑える効果がある局所制汗剤として、20パーセントの塩化アルミニウム液や、5パーセントのホルマリン・アルコール液を手のひらの汗が多い部分に塗布します。1日1〜2回塗り、乾いてからパウダーを振り掛けておきます。

精神的な緊張が強くて汗をかくような場合には、精神安定剤を内服することも有効です。

イオン浸透療法(イオントフォレーシス療法)を行うこともあります。水道水に浸した手のひらの部位に、弱い電流を20分ほど流して発汗を抑制するもので、個人差はあっても効果が出るまで数週間の集中的な治療が必要です。治療をやめると再発の可能性が高く、副作用として湿疹(しっしん)、かゆみ、皮むけ、水疱(すいほう)などが生じることがあります。

このイオン浸透療法は皮膚科、皮膚泌尿器科で行う治療法ですが、同様の療法が行えるドライオニックと呼ばれる家庭用機器もあります。

局所制汗剤の外用、イオン浸透療法で十分な効果が得られなかった場合は、必要に応じてボトックス注射を行うこともあります。発汗は交感神経の末端から放出されるアセチルコリンという神経伝達物質により、汗腺が刺激されることで促されるため、汗が出やすい部分にボツリヌス注射を打つと、このアセチルコリンの放出が阻害されるため、汗を減らすことができます。

1回の注射による効果は、約半年間持続するとされています。ただし、副作用などのリスクもあります。

交感神経ブロック手術を行って、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を切除することもあります。手術は基本的に、まず片方の交感神経を切除し、その後の体調の経過をみてから、もう一方の交感神経も切除するかどうかを決定します。

p>手術のメリットは成功率が高く効果に永続性があるということ、デメリットは交感神経を一度切除してしまうと元には戻らないということと、副作用として代償性発汗になる場合がほとんどであることです。代償性発汗とは、手のひらから汗が出なくなった代わりに、背中や下半身などこれまでと違った部位から大量の発汗が起こるものです。

近年では、内視鏡手術(ETS手術)を行うこともあります。腋の下の皮膚を2~4ミリほど切って、小さなカメラを胸腔(きょうくう)に入れ、モニター画面で胸の中を見ながら、胸の辺りにある汗の分泌を調節する交感神経を見付けて切断します。左右両方の交感神経の切断が必要です。

🇼🇸低HDLコレステロール血症

血液中の脂質成分であるHDLコレステロールが低い状態が継続する疾患

低HDLコレステロール血症とは、血液の中を流れる脂質成分であるHDL(高比重リポ蛋白〔たんぱく〕)コレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl未満と、低い状態が継続する疾患。脂質異常症の一つです。

血液の中には、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)のほか、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂質成分が流れています。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となり、中性脂肪はエネルギーの貯蔵庫などとなり、体の機能を保持するために大切な働きを持っています。これらの脂質は肝臓で作られたり、食事から体に摂取され、血液中の脂質成分の量は保たれ調整されています。

このような調整機能が低下したり、食事からの摂取量が多量になっている状態が脂質異常症で、脂質異常症の一つである低HDLコレステロール血症では、動脈硬化を防ぐ働きを持つHDLコレステロール(善玉コレステロール)の低い状態が継続します。

低HDLコレステロール血症を引き起こす原因として、高糖質(炭水化物)食、多価不飽和脂肪酸食、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣が考えられています。糖尿病、肝臓疾患、腎臓(じんぞう)疾患や、遺伝的な要因が、原因となることもあります。

HDLコレステロール(善玉コレステロール)は、血管や組織に蓄積した余剰なコレステロールを引き抜いて運び、肝臓に戻すというコレステロール逆転送系の中心的役割を担っています。

低HDLコレステロール血症により、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の低い状態が継続すると、血液の清浄化機能が低下することにより、血液の中を流れる脂質成分であるLDL(低比重リポ蛋白)コレステロール(悪玉コレステロール)が増加し、LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し、やがて動脈硬化を起こします。

動脈硬化が徐々に進行すると、心肺機能が低下することにより、心筋梗塞(こうそく)など生命にかかわる疾患へ進展することがあります。また、脳梗塞に進展することもあり、深刻な後遺症が残ることもあります。

低HDLコレステロール血症は多くの場合、初期の段階では体の自覚症状は全くないので、血液検査で初めてわかることがほとんどです。無症状であっても、動脈硬化を予防する正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談して下さい。内科、ないし内分泌・代謝科が、担当の診療科です。

低HDLコレステロール血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値は、これらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。

脂質異常症の診断基準では、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl以下を低HDLコレステロール血症とするほか、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が120〜139mg/dl以上を境界域高LDLコレステロール血症、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上を高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)とします。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、食餌(しょくじ)療法と運動療法を行ないます。

食餌療法では、野菜や果物を豊富に摂取し、蛋白質は青魚や大豆製品などから摂取するといった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。症状が軽い場合は、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の数値を正常にすることができます。

運動療法では、積極的に運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、睡眠不足など生活習慣全般を改善することでも、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の減少を抑えて症状の進行を止めることが可能になります。

半年ほど経過しても数値が改善されず、高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)を伴う場合は、薬物療法を併用します。

高LDLコレステロール血症が優位な場合は、スタチン薬、レジン薬、ニコチン酸誘導体を使用します。高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)が優位な場合は、フィブラート系薬剤、ニコチン酸誘導体を使用します。

一方、糖尿病に伴う低HDLコレステロール血症では、肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態であるインスリン抵抗性の是正や、必要に応じたインスリン投与で改善することもあります。

🇼🇸低LDLコレステロール血症

血液中のLDLコレステロールの濃度が低い値を示す状態

低LDLコレステロール血症とは、血液に含まれるLDL(低比重リポ蛋白〔たんぱく〕)コレステロールの値が低い状態。

明らかな基準の定義はないものの、緩い基準では80mg/dl未満、厳しい基準では25mg/dl未満となっています。

低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す疾患は、原発性(一次性)と続発性(二次性)に分類されます。

続発性(二次性)に LDL(低比重リポ蛋白)コレステロールが低値となる疾患としては、バセドウ病や甲状腺(せん)炎を原因とする甲状腺機能高進症、肝硬変、吸収不良症候群、悪性腫瘍(しゅよう)、低栄養が代表的です。

原発性(一次性)に LDL(低比重リポ蛋白)コレステロールが低値となる疾患には、無βリポ蛋白血症、低βリポ蛋白血症、カイロミクロン停滞病があります。

無βリポ蛋白血症は深刻な結果を招くほど脂質濃度が低下する遺伝性疾患

無βリポ蛋白血症は、血液に含まれる脂質濃度が低下して著しい低脂血症を示す、まれな常染色体劣性遺伝疾患。バッセン・コルンツヴァイク症候群、MTP(ミクロソームトリグリセライド〔中性脂肪〕転送蛋白)欠損症とも呼ばれます。

アポB含有リポ蛋白であるカイロミクロン、VLDL(超低比重リポ蛋白)、LDL(低比重リポ蛋白)が血液中に欠損しており、乳児期から著しい低コレステロール血症、および低トリグリセライド(中性脂肪)血症を来します。

原因は、MTP(ミクロソームトリグリセライド〔中性脂肪〕転送蛋白)遺伝子の変異です。

MTPは、肝臓と小腸で合成されたアポ B 蛋白にトリグリセライド(中性脂肪)が転送され、VLDL(超低比重リポ蛋白)とカイロミクロン粒子が形成される過程に不可欠。肝臓での VLDL(超低比重リポ蛋白)の産生により末梢(まっしょう)組織に必要なコレステロールの輸送がなされ、小腸でのカイロミクロンの形成により脂肪が吸収されます。MTPの欠損により、トリグリセライド(中性脂肪)と結合しないアポ B蛋白は速やかに分解されて、血液中に分泌されません。

本来なら、トリグリセライド(中性脂肪)と結合したアポB蛋白は、LDL(低比重リポ蛋白)と略されるβリポ蛋白、VLDL(超低比重リポ蛋白)と略されるプレβリポ蛋白として血液中に分泌され、脂溶性の物質を吸収したり、運搬したりします。従って、血液中にβリポ蛋白、プレβリポ蛋白がないと、脂肪やビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンなど多くの栄養素が臓器や組織に運ばれず、さまざまな症状が起こってきます。

無βリポ蛋白血症の症状はまず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐(おうと)も生じます。

また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄(きょうさく)、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢神経系の損傷による知覚低下や腱(けん)反射消失などが起きる可能性もあります。

未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。

低βリポ蛋白血症は低LDLコレステロール血症を示す遺伝性疾患

低βリポ蛋白血症は、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す常染色体優性遺伝疾患。家族性低βリポ蛋白血症とも呼ばれます。

その原因遺伝子として、アポBとPCSK9(プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)が知られています。アポB変異の大部分は、短縮アポBを生成し、VLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌障害と異化促進の結果、血液中のアポB濃度が低下します。

人間の遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL(低比重リポ蛋白)受容体やこれを働かせる遺伝子の両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。ホモ接合体のみならずヘテロ接合体も、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示します。

低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者では、短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールの濃度が軽度に低下し、一般に、総コレステロール120mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール80mg/dl未満を示します。同じ血液中の脂質である中性脂肪(トリグリセライド)の濃度は、正常の値を示します。

低コレステロール血症を示すことを除いて、自覚症状がないことが多いものの、肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のために、脂肪肝や胆石症の合併が増加することもあります。なお、自覚症状がないケースでは、発育も正常であり、かつ心血管病にかかるリスクが低いため、通常人より長生きするという報告もあります。

低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者では、より短い短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が低下し、一般に、総コレステロール80mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール20mg/dl未満を示すか、非常に短い短縮アポBを生成してアポB合成が欠損し、無βリポ蛋白血症と類似した症状を示します。

アポB合成が欠損した場合の症状は、まず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐も生じます。

また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢神経系の損傷による知覚低下や腱反射消失などが起きる可能性もあります。

また、末梢細胞へのコレステロール供給が低下するために、赤血球は有棘(ゆうきょく)赤血球となります。肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のため、脂肪肝を示すこともあります。

未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。

アポB合成が欠損した場合は通常、小児期に発見されますが、まれに成人期になって偶然発見されるケースもあります。

カイロミクロン停滞病は遺伝子の異常により、体内でカイロミクロンを合成できなくなる疾患

カイロミクロン停滞病は、小腸でカイロミクロンを合成することができないために、脂肪吸収不良が生じる遺伝性疾患。アンダーソン病とも呼ばれます。

SARA2遺伝子の異常による非常にまれな疾患であり、常染色体劣性遺伝形式をとると考えられています。

小腸粘膜細胞内の細胞小器官である小胞体では、中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であるカイロミクロンの分泌は正常に行われるものの、SARA2遺伝子の異常により、カイロミクロンの合成を行う細胞小器官であるゴルジ体へと、カイロミクロンを輸送することができないために、カイロミクロンが合成できず小腸粘膜細胞内で停滞します。

一方、肝臓における、中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であるVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌、合成は損なわれません。

小腸でカイロミクロンが合成できない結果、食事由来の脂肪と脂溶性ビタミンの小腸における吸収が大きく損なわれます。動物性蛋白の摂取不足に伴って、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を生じることもあります。

カイロミクロン停滞病の症状はまず乳児期に現れ、発育不全がみられます。便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。

中枢神経系が損傷し、運動失調症と精神遅滞が起きる可能性もあります。未治療の多くのケースでは、30歳前後までに中枢神経系の障害により、通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されます。

低LDLコレステロール血症の検査と診断と治療

無βリポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。

血中の総コレステロールの値が50mg/dl未満、血中のトリグリセライド(中性脂肪)の値が15mg/dl 未満で、特徴的な脂肪便、神経症状、目の症状が認められる場合に、無βリポ蛋白血症と確定します。

鑑別する疾患には、家族性低βリポ蛋白血症、カイロミクロン停滞病(アンダーソン病)、甲状腺機能高進症があります。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。

無βリポ蛋白血症は遺伝子異常を背景とし、代謝異常が生涯持続するために治癒しませんが、幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。

消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。

低βリポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のLDL(低比重リポ蛋白)コレステロールの低値を確認し、リポ蛋白の電気泳動で短縮アポBを検出することで、低βリポ蛋白血症と確定します。

低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者で、アポB合成が欠損している場合は、血中の総コレステロール値は25〜45 mg/dlで、そのほとんどはHDL(高比重リポ蛋白)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)10 mg/dl未満であることが多く、アポBは検出感度以下、脂溶性ビタミンA・E・Kも低値を示します。

低βリポ蛋白血症と無βリポ蛋白血症は、家族歴によって鑑別します。低βリポ蛋白血症が常染色体優性遺伝であるのに対し、無βリポ蛋白血症は常染色体劣性遺伝疾患であるので、家族調査で無βリポ蛋白血症との鑑別が可能となります。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者、および低値であるが検出可能なLDL(低比重リポ蛋白)を有する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、一般的に何も行ないません。

LDL(低比重リポ蛋白)の欠損する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、無βリポ蛋白血症に対する治療と同様、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。

幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。

消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。

カイロミクロン停滞病の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液に含まれるコレステロール濃度が低く、食後カイロミクロンの欠損する場合に、腸の粘膜を一部採って特殊な染色を行った上で顕微鏡で調べる腸生検を実施します。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、脂肪と脂溶性ビタミン(A、D、E、K)のサプリメントを使用し、補充します。

カイロミクロン停滞病は遺伝子異常を背景とし、代謝異常が生涯持続するために治癒しませんが、脂肪と脂溶性ビタミンを補充することにより、中枢神経系に対する損傷の発生と進行を遅らせることができます。

🇼🇸低カリウム血症

血液中のカリウム濃度が低下した状態で、さまざまな原因で発生

低カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が3・5mEq/l以下に低下した状態。通常、血液中のカリウム濃度は3・5~5・0mEq/lという狭い範囲内で維持されています。

カリウムは細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要で、体内のカリウムの98パーセントが細胞の内部にあり、残りのわずか2パーセントが血液中など細胞の外部に存在しています。しかし、血液中のカリウムは細胞の働きを調節する上でとても重要で、濃度の値が乱れると全身に障害を生じます。

濃度の低下を引き起こす過度のカリウムの喪失は普通、嘔吐(おうと)、下痢、慢性的な下剤の使用、または結腸ポリープが原因です。まれに、極度の高温多湿の状態で多量の汗をかくことによっても、多量のカリウムが体から失われます。

拒食症や大量飲酒などで長期間に渡って偏った食生活をした場合にも、低カリウム血症が起こります。カリウムはさまざまな食物に含まれているので、バランスの取れた食事をしている人に低カリウム血症が起こることはまれといえますが、加工食品が多くなってきたことやストレスなどにより、起こる可能性が高くなってきているようです。

カリウムが尿に出てしまう理由は、いくつかあります。最も一般的なのは、腎臓(じんぞう)に働き掛けて過度のナトリウム、水、カリウムを排出させる利尿薬の使用です。アルドステロンは腎臓に働き掛けて多量のカリウムを排出させるホルモンですが、クッシング症候群になると、副腎がこのホルモンを過度に分泌します。

また、大量の甘草(かんぞう)が含まれる漢方薬を服用する人や、特定のかみタバコを使用する人の場合も、カリウムの排出量が増えます。リドル症候群、バーター症候群、ファンコニ症候群の発症者には、カリウムを保持する腎臓の能力が阻害されるというまれな障害がみられます。

インスリン、ぜんそく治療薬のアルブテロール、テルブタリン、テオフィリンといった特定の薬剤は、細胞内へカリウムが入る動きを促進し、その結果、低カリウム血症を引き起こすことがあります。しかし、これらの薬剤の使用だけが原因で低カリウム血症になることはまれです。

血液中のカリウム濃度が軽く低下している程度では、普通は症状は生じません。激しく低下すると、脱力感や筋力低下など骨格筋の症状、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、便秘など消化管の症状、そして多尿、多飲など腎臓の症状が主体ですが、極めて激しく低下すると、四肢まひ、呼吸筋まひ、不整脈、腸閉塞(へいそく)などに至ります。心臓の薬のジゴキシンを服用している場合は、軽度の低カリウム血症でも危険です。

原因によって、治療法はさまざまです。カリウムの摂取を増やしても改善しないことも多いので、内科の専門医を受診して精密検査を受けることが勧められます。

低カリウム血症の検査と診断と治療

内科の医師による低カリウム血症の診断は、血液中のカリウム濃度を測定するだけで可能ですが、その原因を明らかにしなければ治療ができません。まず、食べ物、薬、点滴などによって体に入るカリウムと、尿中などに出るカリウムのバランスを調べるために、血液中、尿中の電解質濃度、動脈血ガス分析などの検査を行います。

消化管からのカリウム喪失が疑われる時は、内視鏡などによる消化管の検査が行われ、腎臓からのカリウム喪失が予想されれば、腎機能検査や副腎皮質ホルモンの検査などが行われます。また、全身の症状を調べるために、心電図や腹部のX線検査なども行われます。

内科の医師による治療の原則は、原因になっている状態を改善することです。対症療法として、カリウムの補充も行われます。軽症の場合は、まずカリウムを多く含む野菜や果物を取る食事が勧められ、経口カリウム製剤の内服も加えられます。カリウムは消化管を刺激することがあるため、経口カリウム製剤は1回に多量に摂取するよりも、1日数回に分けて、食事と一緒に少量ずつ摂取するようにします。ワックスを染み込ませたり、塩化カリウムをマイクロカプセルに入れるなど、特別なタイプを使用すれば、消化管への刺激は大幅に少なくなります。

重い低カリウム血症や経口摂取が不可能な場合には、点滴によるカリウムの補充が行われます。この際には、急激な血中カリウム値の上昇も逆に危険なので、時間をかけて慎重に補充されます。

利尿薬を服用している人の大半は、経口カリウム製剤を摂取する必要はありません。ただし、医師は定期的に血液中のカリウム濃度を測定して、必要に応じて利尿薬の使い方を調整します。スピロノラクトン、トリアムテレン、アミロライドなどのカリウム保持性利尿薬を加える治療法もありますが、腎臓が正常に機能している場合に限られます。カリウム保持性利尿薬は、副腎皮質ホルモンのうちのアルドステロンの作用を阻害する薬で、副腎疾患や甘草が原因の低カリウム血症には特に有効です。

🇹🇻低血圧症

低血圧のためにいろいろな症状が現れてくる状態

低血圧症とは、血圧の値が低いためにいろいろな症状が現れてくる状態。低血圧の基準は、最大血圧が100ミリ未満を指します。

急性の低血圧が起きた時は、その原因になる重大な疾患があると見なして、すぐ検査や治療をすることが大切です。

低血圧症の中には原因不明のものがあり、これを本態性低血圧症と呼びます。本態性低血圧症が一般的にいわれている低血圧の代表で、体質的因子が大きく関与していると考えられます。

原因の明らかなものは、二次性低血圧症、ないし症候性低血圧症と呼びます。ほかの疾患が存在するために、二次的に低血圧を起こしたケースです。二次性低血圧症は、急性のものと慢性のものに分類されます。急性のものの原因には、心筋梗塞(こうそく)、心不全、急性出血、やけどなどがあります。慢性に属するものの原因には、がん、栄養失調、甲状腺(せん)機能低下症、アルドステロン症などが知られています。

また、低血圧症の中には、起立性低血圧症といい、立ち上がった途端に全身の血液が下半身にたまり、血圧が低下する疾患があります。起立性低血圧症は、血圧を調節する自律神経の働きがアンバランスになったために起こるもので、交感神経系の障害が主な原因とされています。このうち、原因の明らかなものは脳や脊髄(せきずい)の疾患で起こるものが多く、中には自律神経に作用する降圧剤などの薬物によって生じるものもあります。

本態性低血圧症の人が特に訴える症状は、だるい、疲れやすいです。どちらかというと、日常生活で無理が利かないタイプといえます。また、神経質な面が災いすると、これらの症状にこだわり、ささいなことを気にしすぎたりします。とりわけ精神的ストレスが加わったりすると、症状が強く出たりしがち。

ほかに低血圧の人に多い症状には、頭痛、肩凝り、目の疲れ、めまい、耳鳴り、不眠、動悸(どうき)、息切れ、胸痛、吐き気、食欲不振、便秘、腹の張り、胃のもたれがあります。

特に起立性低血圧症の場合、めまいは立ちくらみとして現れやすく、ひどい時には突然、目の前がぼやけたり、真っ暗になったりします。一瞬気が遠くなる感じがしたり、失神したりすることもあります。さらに、足がふらついたり、地面に足が着かないでフワフワした感じ、血の気が引く感じがしたりすることもあります。しかし、症状が起こっても、横になって休めば、簡単に回復します。

また、低血圧の人の傾向として、朝の目覚めが悪く、集中力や作業能力が低下します。このため、会社などに遅刻をしたり、午前中の仕事がはかどらなかったりします。入浴も好きではなく、熱い風呂には気分が悪くて入れないことが多いものです。

低血圧症の検査と診断と治療

低血圧の人は、気候の変わり目や、夏になって暑くなると、症状が出やすいものです。そのような場合は、早めに薬物による治療を受けるようにします。

血圧を上げる薬物は一般に、朝に服用するとよく、夕方以降は控えるのが賢明です。そのほか、自覚症状の強い低血圧症に対しては、症状を軽くする意味で、精神安定剤や自律神経調整剤が使用されることもあります。

生活上で大切なことは、自分に見合った生活のルールを規則正しく守ることです。特に、過労、睡眠不足は大敵。また、立ちくらみの激しい場合は、急に起き上がったりせずに、できるだけゆっくりと体を動かして立ち上がることです。偏食を避け、バランスの取れた食生活を心掛けます。

🇹🇻低血糖

糖尿病の薬が効きすぎるなどにより、血液に含まれる糖が少なくなりすぎて特有の症状が現れる状態

低血糖とは、糖尿病の薬が効きすぎるなどにより、血液に含まれる糖(ブドウ糖)が少なくなりすぎて特有の症状が現れる状態。糖尿病を薬で治療している人に高い頻度でみられます。

血液に含まれる糖は、生きるために欠かせないエネルギー源。糖尿病でない人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されています。しかし、糖尿病ではこの糖の量を一定に維持することができません。食事から取り入れた糖を体や脳のエネルギーとして消費するという需要と供給のバランスが崩れ、血液中の糖が増えすぎると高血糖、逆に薬が効きすぎるなどして血液中の糖が少なくなりすぎると低血糖になります。

一般に、血糖値が70mg/dL以下になると、人の体は血糖値を上げようとします。また、血糖値が50mg/dL未満になると、脳などの中枢神経が糖不足、すなわちエネルギー不足の状態になります。その時に現れる特有の症状を低血糖症状といいます。

人によっては、血糖値が70mg/dL以下にならない場合でも、治療などによって血糖値を下げるインスリンの過剰な状態になった時に血糖値が急激に大きく下がることで、低血糖症状が現れることがあります。逆に、血糖値が70mg/dL以下になった場合でも、低血糖症状が現れない人もいます。

低血糖になる原因は、いくつか考えられます。食事の量や炭水化物の不足、糖尿病の薬を服用した後の食事時間の遅れ、運動の量や時間が多い時の運動中や運動後、空腹での運動、インスリン注射や経口血糖降下剤の量の多すぎ、飲酒、入浴など。

低血糖の時には、その値に応じて、体にさまざまな低血糖症状が現れます。集中できなかったり、いつもしていることに時間がかかってしまう場合は、低血糖の可能性もあります。

睡眠中に低血糖が起きていても、気付かない場合が多々あります。日中に起きる低血糖と症状や原因が異なり、寝る前の運動や食事、入浴などのちょっとした行動が原因になることもあります。さらに、夜間低血糖を起こすと、その反動で翌朝、高血糖になることがあり、その高血糖が尾を引くと一日の血糖コントロールに悪影響を及ぼすことも少なくありません。

血糖値が約70mg/dL以下になると、交感神経症状が現れ、異常な空腹感、発汗、手の震え、動悸(どうき)などの症状が出てきます。さらに血糖値が下がり50mg/dL程度になると、中枢神経症状が現れます。

ただし、ふだんから低血糖がよく起こる人や、低血糖症状の自覚が少ない人は、空腹感、発汗などの交感神経症状が現れないまま、無自覚性低血糖になることがあります。無自覚性低血糖の状況になると、血糖値を測ると60mg/dL程度まで低下していることに気付いたり、血糖値が50mg/dLより低くなって、突然さらに重い中枢神経症状が現れ、意識障害を示すことがあります。

そして、血糖値が30mg/dLよりも低くなると、重症低血糖に陥って意識レベルが低下し、昏睡(こんすい)など意識のない危険な状態になってしまうことがあります。これは大変深刻な状態で、死に至ることもあります。

低血糖になった時は、できるだけ早い段階で速やかに対応をしなければなりません。意識があり経口摂取が可能な時は、砂糖15グラムから20グラムを飲みます。糖分を含む缶ジュース、缶コーヒーでも構いません。10分から15分で回復しない時は、再度同量を摂取します。

α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ等)、ボグリボース(商品名:ベイスン等)、ミグリトール(商品名:セイブル)など、消化管の二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素の働きを抑えることで血糖の急激な上昇を抑える糖尿病の薬を飲んでいて低血糖を起こした時には、砂糖を飲んでもすぐに吸収されないため、回復に時間がかかることがあります。

そのため、低血糖時にはブドウ糖、またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水を飲むようにします。

深刻な低血糖で意識障害を来した時には、自身でブドウ糖を飲み込むのが難しいことがあり、家族や周囲の協力が必要になります。その場合は、無理にブドウ糖を飲ませると、誤嚥(ごえん)や窒息の原因になります。周囲の人は、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間に塗り付けます。

医療機関の指導を受けた上で、周囲の人が血糖値を上げるためのグルカゴンという注射を行うこともあります。肝臓のグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を放出する作用があるグルカゴン注射で回復した後は、軽く経口摂取しておくことが必要です。なお、アルコールの飲みすぎで低血糖になった時は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇しており、グルカゴン注射は効きません。

救急処置でも回復しない時は、すぐに救急車を呼び、医療機関へ搬送しましょう。

意識がはっきりしない状態にまでなった低血糖は、一時的に血糖値が改善してもその後にまた血糖値が下がり、同じ症状が現れる可能性が高くなります。低血糖が続く場合も、必ず医療機関で診察を受けましょう。

低血糖の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科などの医師による診断では、低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合、血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状がある場合に、低血糖と判断します。意識障害で重症低血糖の患者が搬送されてきた場合には直ちに緊急の処置を行いますが、それでも可能であれば血液検査を行い、血糖値を確認します。

内科、内分泌代謝内科などの医師による治療では、意識が保持され経口摂取が可能な場合には、ブドウ糖10〜20グラムを経口摂取します。低血糖昏睡を起こし経口摂取が不可能な場合には、まず50%のブドウ糖液 20〜40 mlを静注し、その後5%のブドウ糖を点滴し、血糖値を100~200 mg/dlに保ちます。特にスルホニル尿素薬(SU薬)を内服している場合には、ブドウ糖液の静注で血糖が上昇したからといって安心せず、数時間後に再発することがあるため、入院の上で十分な管理を行います。

低血糖に関しては、予防に優る治療はありません。食事を規則正しく摂取する、食前の過激な運動は避ける、運動前に補食するなどの注意が必要です。

また、自身が糖尿病治療のために使用している薬が、低血糖を起こしやすいか否かを把握することも、必要です。一般に低血糖を起こしやすい薬は、スルホニル尿素薬(SU薬)とインスリンです。ほかのアカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどの薬でも起こることがあります。インスリン注射は、正しい手技を身に着けておくことが重要です。

軽い低血糖症状が現れた時は、できるだけ早い段階で速やかに対処して、重症低血糖を防ぎます。無自覚低血糖を起こすようなケースでは、こまめに血糖を自己測定し、血糖が下がっていれば症状がなくても早めに対処することが必要です。

低血糖を起こした時、いつ、どこにいてもすぐに対処できるように、ペットシュガーやブドウ糖ゼリーなどを常時携帯しておきます。特に運動療法で外出するような時は忘れずに持っていきます。

もしもの時に備えて、糖尿病患者であることを示す糖尿病手帳や、携帯用の糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)を常に携行しておけば、昏睡で医療機関に搬送された時でもすぐに適切な処置が受けられます。

🇹🇻低血糖発作

血糖値が生理的な変動範囲を超えて低下することにより、意識障害などの症状を示す状態

低血糖発作とは、人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値が生理的に正常な変動範囲を超えて低下することにより、意識障害などのさまざまな症状を示す状態。

対応が遅れると、死に至ることもある危険な状態です。血液に含まれる糖(ブドウ糖)が少なくなりすぎる低血糖の原因により、空腹時低血糖、反応性低血糖、薬剤性低血糖に分けられます。

空腹では本来は低血糖発作は起こりませんが、ホルモンの異常分泌などにより低血糖を引き起こしてしまうものが、空腹時低血糖です。

また、胃がんの手術などで胃を切除した人に起こるのが、反応性低血糖です。

薬剤性低血糖は、糖尿病患者に起こります。糖尿病患者で、食事の量や炭水化物の不足、糖尿病の薬を服用した後の食事時間の遅れ、運動の量や時間が多い時の運動中や運動後、空腹での運動、インスリン注射や経口血糖降下剤の量の多すぎ、アルコールの多量摂取、入浴などが原因で、低血糖発作が引き起こされます。

人の血液に含まれる糖の量、すなわち血糖値は約70mg/dLから140mg/dLの間に維持されていますので、血糖値が約70mg/dL以下になると低血糖の状態となり、交感神経症状が現れ、集中力の低下、脱力感、異常な空腹感、発汗、手の震え、動悸(どうき)などの症状が出てきます。さらに血糖値が下がり50mg/dL程度になると、意識や呼吸の調節をしている中枢神経症状が現れます。

ただし、ふだんから低血糖がよく起こる人や、低血糖症状の自覚が少ない人は、空腹感、発汗などの交感神経症状が現れないまま、無自覚性低血糖になることがあります。無自覚性低血糖の状況になると、血糖値を測ると60mg/dL程度まで低下していることに気付いたり、血糖値が50mg/dLより低くなって、突然さらに重い中枢神経症状が現れ、意識障害を示すことがあります。

そして、血糖値が30mg/dLよりも低くなると、低血糖発作を起こす重症低血糖に陥って意識レベルが低下し、昏睡(こんすい)など意識のない危険な状態になってしまうことがあります。これは大変深刻な状態で、死に至ることもあります。

低血糖になった時は、できるだけ早い段階で速やかに対応をしなければなりません。意識があり経口摂取が可能な時は、砂糖15グラムから20グラムを飲みます。糖分を含む缶ジュース、缶コーヒーでも構いません。10分から15分で回復しない時は、再度同量を摂取します。

α-グルコシダーゼ阻害剤であるアカルボース(商品名:グルコバイ等)、ボグリボース(商品名:ベイスン等)、ミグリトール(商品名:セイブル)など、消化管の二糖類をブドウ糖に分解する消化酵素の働きを抑えることで血糖の急激な上昇を抑える糖尿病の薬を飲んでいて低血糖を起こした時には、砂糖を飲んでもすぐに吸収されないため、回復に時間がかかることがあります。

そのため、低血糖時にはブドウ糖、またはブドウ糖を多く含む清涼飲料水を飲むようにします。

深刻な低血糖で意識障害を来した時には、自身でブドウ糖を飲み込むのが難しいことがあり、家族や周囲の協力が必要になります。その場合は、無理にブドウ糖を飲ませると、誤嚥(ごえん)や窒息の原因になります。周囲の人は、ブドウ糖や砂糖を水で溶かして、口唇と歯肉の間に塗り付けます。

医療機関の指導を受けた上で、周囲の人が血糖値を上げるためのグルカゴンという注射を行うこともあります。肝臓のグリコーゲンを分解し、ブドウ糖を放出する作用があるグルカゴン注射で回復した後は、軽く経口摂取しておくことが必要です。なお、一時的に血糖値を下げる作用があるアルコールの飲みすぎで低血糖になった時は、肝臓内のグリコーゲンが枯渇しており、グルカゴン注射は効きません。

救急処置でも回復しない時は、すぐに救急車を呼び、医療機関へ搬送しましょう。

意識がはっきりしない状態にまでなった低血糖は、一時的に血糖値が改善してもその後にまた血糖値が下がり、同じ症状が現れる可能性が高くなります。低血糖が続く場合も、必ず医療機関で診察を受けましょう。

低血糖発作の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科などの医師による診断では、低血糖症状があってもなくても、血糖値が70mg/dLより低い場合、血糖値が70mg/dLより高くても、低血糖症状がある場合に、低血糖と判断します。低血糖発作を起こす重症低血糖に陥って意識レベルが低下した患者が搬送されてきた場合には、直ちに緊急の処置を行いますが、それでも可能であれば血液検査を行い、血糖値を確認します。

内科、内分泌代謝内科などの医師による治療では、意識が保持され経口摂取が可能な場合には、ブドウ糖10〜20グラムを経口摂取します。低血糖昏睡を起こし経口摂取が不可能な場合には、まず50%のブドウ糖液 20〜40 mlを静注し、その後5%のブドウ糖を点滴し、血糖値を100~200 mg/dlに保ちます。特にスルホニル尿素薬(SU薬)を内服している場合には、ブドウ糖液の静注で血糖が上昇したからといって安心せず、数時間後に再発することがあるため、入院の上で十分な管理を行います。

低血糖に関しては、予防に優る治療はありません。食事を規則正しく摂取する、食前の過激な運動は避ける、運動前に補食するなどの注意が必要です。

また、自身が糖尿病治療のために使用している薬が、低血糖を起こしやすいか否かを把握することも、必要です。一般に低血糖を起こしやすい薬は、スルホニル尿素薬(SU薬)とインスリンです。ほかのアカルボース、ボグリボース、ミグリトールなどの薬でも起こることがあります。インスリン注射は、正しい手技を身に着けておくことが重要です。

軽い低血糖症状が現れた時は、できるだけ早い段階で速やかに対処して、重症低血糖を防ぎます。無自覚低血糖を起こすようなケースでは、こまめに血糖を自己測定し、血糖が下がっていれば症状がなくても早めに対処することが必要です。

低血糖を起こした時、いつ、どこにいてもすぐに対処できるように、ペットシュガーやブドウ糖ゼリーなどを常時携帯しておきます。特に運動療法で外出するような時は忘れずに持っていきます。

もしもの時に備えて、糖尿病患者であることを示す糖尿病手帳や、携帯用の糖尿病患者用IDカード(緊急連絡用カード)を常に携行しておけば、昏睡で医療機関に搬送された時でもすぐに適切な処置が受けられます。

🇳🇷低酸症

胃で分泌される胃液中の胃酸が少ない状態

低酸症とは、食べ物を消化するために胃で分泌される胃液中の塩酸、すなわち胃酸が少ない状態。胃酸減少症、減酸症とも呼ばれます。

胃液の中に、胃酸がほとんどないか、全くない状態は、無酸症(胃酸欠如症)といいます。

胃液は、強酸性で、pHは通常1〜1・5程度。塩酸、すなわち胃酸、および酸性条件下で活性化する蛋白(たんぱく)分解酵素のペプシンが含まれており、これによって蛋白質を分解して、小腸での吸収を助けています。同じく酵素のリパーゼは、主に脂肪を分解しています。

胃液はまた、感染症の原因になる細菌やウイルスを殺菌したり、一部の有害物質を分解したりすることで、生体防御システムとしての役割も担っています。例えば、コレラ菌は胃酸によってほとんどが死滅してしまうため、大量の菌を摂取しない限り感染は起こりませんが、胃酸の分泌量が少ない低酸症の人、胃酸の分泌がほとんどないか、全くない無酸症の人などでは少量のコレラ菌でも発症します。

低酸症は、胃液総酸度が30以下、塩酸含量0・1パーセント以下、pH1・59以上が相当します。

この低酸症を示す疾患の代表的なものは、慢性胃炎の中の委縮性胃炎。これは多くの日本人にみられますが、高齢になるに従い胃粘膜に委縮性変化が生じ、胃酸を分泌する壁細胞という細胞の数が減ってくるために、まず低酸症の状態となり、これが高度になると無酸症になると考えられています。

そのほかに、ビタミンB12や葉酸の欠乏によって生じる悪性貧血や、進行した胃がんなどで、胃粘膜に委縮性変化が生じた場合に、低酸症がみられます。手術によって胃を切除した時にも、低酸症が当然起こります。

胃酸が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起き、食後の胃のもたれ、膨満感、胸焼け、食欲不振、軽い下痢など、さまざまな症状が現れます。

胃のもたれ、胸焼けなどの低酸症で現れる症状は、慢性胃炎、十二指腸潰瘍(かいよう)、食道がん、胃がんなどでもみられる症状であるため、異変に気付いたら内科、胃腸科、消化器科を受診して検査を受け、原因を確かめることが先決です。

低酸症の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器科の医師による診断では、ガストリン、またはヒスタミンを注射し、チューブから胃液を採取する胃液検査で、胃酸分泌能を測ります。また、血中ペプシノーゲン値、特にペプシノーゲンのⅠ/Ⅱ比は、胃粘膜の委縮度と相関しているので、これを測ることによって胃酸分泌能を推測できます。

慢性胃炎や胃がんの診断には、X線検査や内視鏡が必要となります。

内科、胃腸科、消化器科の医師による治療では、検査によって他の疾患が除外され、単に低酸症で塩酸、すなわち胃酸の分泌量が少ないために、食べ物の消化作用に支障が起きている場合は、塩酸リモナーデなどの消化剤を服用します。

慢性胃炎による胃の粘膜の委縮も、胃腺(いせん)の委縮も、元に戻すことはできません。安静を心掛ける、ストレスを避ける、消化のよい食事を取る、コーヒーや香辛料などの刺激物の摂取を避けるなど、日常生活の中で注意をしていきます。

悪性貧血の治療は、基本的に鉄欠乏性貧血と同じで、不足しているビタミンB12か葉酸を補給すれば治ります。

🇳🇷低酸素症

低圧低酸素状態に置かれた時に発症

低酸素症とは、低圧低酸素状態に置かれた時に発生する病的症状。組織低酸素症、高山病、高度障害とも呼ばれます。

高い所では気圧が下がるため空気が薄くなり、それに応じて含まれる酸素の量も減ります。体がそのような環境への急激な変化に順応できずに、極端な酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れます。

一般的には、3000メートル以上の高山に登った際に発症するといわれていますが、標高2500メートルぐらいから発症する可能性があり、日本国内でも報告例があります。海外のトレッキングコースには4000メートルを超えるものもあるので、国内での経験が豊富な人でも、十分な注意が必要となります。

また、低酸素症は登山に伴うものばかりではありません。チベットや南米には、標高3000~4000メートルの高地に乗り物で行ける観光地があり、そこを訪れる人にも発症の可能性があります。

低酸素症の症状が出現する標高や、その高さに慣れるまでの時間には個人差があり、同じ人でもその時の体調によって異なります。

低圧低酸素状態において6~12時間で発症し、一般的には4~5日後には自然消失します。主な症状としては、頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、疲労、脱力、めまい、ふらつき、睡眠障害などです。

ほかにも、すぐに眠ってしまう、日時や場所がわからなくなるなどの精神状態の変化、真っすぐ歩けない、立っていられないなどの運動失調、顔や手足のむくみが挙げられます。

低酸素症の重症型として注意しなければならないものに、高地肺水腫(すいしゅ)と高地脳浮腫(ふしゅ)があります。

高地肺水腫は、肺がむくみ、水分が浸み出した状態で、呼吸がたいへん苦しくなります。呼吸とともにガラガラする音がしたり、せきや血痰(けったん)がみられたりします。肺を通して体に取り込める酸素の量がとても少なくなり、命の危険があります。

高地脳浮腫は、脳がむくんだ状態で、足元がふらつきバランスを崩して転ぶ、意識を失うなどの症状が出現し、こちらも死に至る危険があります。

2006年7月に発表された外務省診療所の調査によると、1996年からの10年間で、ネパール、ペルー、タンザニアの日本大使館が把握している日本人の低酸素症発症者の内、少なくとも26人が死亡しています。死亡者の平均年齢は50歳。

低酸素症の治療法と予防法

最も基本的で効果的な低酸素症(高山病)への対処法は、高度を下げることです。楽になる所まで下ることが大切です。症状が軽い場合は、それ以上高度を上げずにとどまるだけで体が慣れてくることがあります。普通は1~2日で回復し、パラセタモールかアスピリンを服用すれば、頭痛は治ります。

とどまっていても症状が続いたり、次第に具合が悪くなる場合は、直ちに高度を下げるべきです。500メートル下がるだけでも、症状は軽くなります。

重症の場合は、できるだけ速やかにに低地に搬送し、集中的治療が必要です。低地域へすぐに搬送できない場合は、酸素吸入やガモフバッグ(携帯型加圧バッグ)、内服薬による治療を考慮しなくてはなりませんが、そのためには事前の準備が必要です。

ガモフバッグは、携帯用の軽量布製大型バッグまたはテントで、手動のポンプによって中の気圧を上げることができます。重症者を中に入れ、きっちりと口をふさぎ、ポンプを使って内部の気圧を上げて2~3時間過ごさせます。登山の際には酸素吸入が使えない場合が多いのですが、ガモフバッグには同様の効果があります。ただし、それらで完全に治せるわけではなく、若干時間稼ぎができる程度と考えるべきで、下山に勝る治療法はありません。

低酸素症の予防法は、以下のとおりです。標高3000メートル以上では、眠る場所の高度を前日に比べて300メートル以上上げないこと。高度を1000メートル上げるごとに、1日休息日をとること。自分が背負う荷物を重くしすぎないこと。ゆっくり登ること。

眠る場所の高さが大切な理由は、睡眠中は起きている時に比べて呼吸回数が減り、体の中の酸素状態が悪化しやすいからです。いきなり高度を上げると、悪化の程度も大きくなります。また、アルコールや睡眠薬、安定剤などは睡眠中の呼吸状態を悪化させることにつながるので、高い所では控えておくほうが安全。

高所に滞在していると次第に低酸素の状態に慣れてきますが、慣れる速さは人によって違いますし、標高によっても違います。毎日自分の体調をチェックし、必要に応じて休息日を入れることが大切です。

高所の低圧低酸素環境で運動すると、平地での運動に比べて心拍数が増加しやすく、心臓への負担が大きくなります。肺に問題がある場合は、他の人より体に取り込む酸素量が少ないため、体調を崩しやすくなります。

従って、心臓や肺に疾患のある人は、体への負担を考慮し、あらかじめ主治医に相談しておいたほうがよいでしょう。荷物を重くしないこと、ゆっくり登ることは、健康な人にとっても大事です。

高所の冷えた空気は乾燥しており、その中で汗をかくような運動をする場合は、体の中の水分を失いやすく、脱水症に対する注意が必要です。体調維持のため、軽い、高炭水化物の食事を取るとともに、十分な水分を取るよう心掛けてください。また、乾燥した冷たい空気はのどを痛めやすく、風邪をひくことにもつながりますので、マスクを用意しておくとよいでしょう。

低酸素症の予防と症状の緩和のために、アセタゾールアミド、デキサメタゾンの服用を勧める医師もいます。しかし、これらの薬で危険な症状が隠されてしまうこともあるとして、使用には異論もあります。

🇳🇷低脂血症

血液中の脂質成分の濃度が正常値よりも低い値を示す疾患

低脂血症とは、血液に含まれる脂質の濃度が通常低いとされている濃度よりも、さらに低い値を示す疾患。

高脂血症と同じく、脂質代謝異常が原因の脂質異常症の一つです。

血液の中には、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)のほか、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂質成分が含まれています。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となり、中性脂肪はエネルギーの貯蔵庫などとなり、体の機能を保持するために大切な働きを持っています。これらの脂質は肝臓で作られたり、食事から体に摂取され、血液中の脂質成分の量は保たれ調整されています。

脂質成分の中の1つが正常値以下ならば、低脂血症となります。一般に、総コレステロール130mg/dl未満、中性脂肪(トリグリセライド)40mg/dl未満、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)50mg/dl未満、HDLコレステロール(善玉コレステロール)35 mg/dl未満を低脂血症の基準としています。

低脂血症のほとんどが、栄養状態の悪化、甲状腺(せん)疾患や肝臓の疾患、悪性疾患による続発性(二次性)の脂質異常症に相当します。中でもよくみられるのが、低HDLコレステロール血症(低コレステロール血症)で、慢性肝炎、肝硬変、甲状腺機能高進症、糖尿病などの疾患によることが多い傾向にあります。

まれに、低βリポ蛋白(たんぱく)血症、無βリポ蛋白(たんぱく)血症、カイロミクロン停滞病(アンダーソン病)といった原因となる疾患のない遺伝性の低脂血症もあります。

よくみられる低HDLコレステロール血症では、動脈硬化を防ぐ働きを持つHDLコレステロールの低い状態が継続します。原因として、疾患のほか、高糖質(炭水化物)食、多価不飽和脂肪酸食、喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣も考えられています。

HDLコレステロールは、血管や組織に蓄積した余剰なコレステロールを引き抜いて運び、肝臓に戻すというコレステロール逆転送系の中心的役割を担っています。

低HDLコレステロール血症により、HDLコレステロールの低い状態が継続すると、血液の清浄化機能が低下することにより、血液の中に含まれる脂質成分であるLDLコレステロールが増加し、LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し、やがて動脈硬化を起こします。

動脈硬化が徐々に進行すると、心肺機能が低下することにより、心筋梗塞(こうそく)など生命にかかわる疾患へ進展することがあります。また、脳梗塞に進展することもあり、深刻な後遺症が残ることもあります。

低HDLコレステロール血症は多くの場合、初期の段階では体の自覚症状は全くないので、血液検査で初めてわかることがほとんどです。無症状であっても、動脈硬化を予防する正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談して下さい。内科、ないし内分泌・代謝科が、担当の診療科です。

低脂血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値は、これらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。

低HDLコレステロール血症(低コレステロール血症)、低トリグリセライド血症(低中性脂肪血症)が認められた場合は、栄養障害、吸収不良性疾患、肝硬変、甲状腺機能高進症などの原因となる疾患を診断するための検査も行います。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低脂血症を引き起こす原因となる疾患がある場合には、その疾患の治療を優先します。

原因となる疾患のない遺伝性の低脂血症の場合は、症状によっては脂溶性ビタミン剤を補充したり、脂肪食を制限したり、必須脂肪酸を補充したりします。

低HDLコレステロール血症の場合は、食餌(しょくじ)療法と運動療法を行います。

食餌療法では、野菜や果物を豊富に摂取し、蛋白質は青魚や大豆製品などから摂取するといった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。症状が軽い場合は、HDLコレステロールの数値を正常にすることができます。

運動療法では、積極的に運動を行います。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行うことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、睡眠不足など生活習慣全般を改善することでも、HDLコレステロールの減少を抑えて症状の進行を止めることが可能になります。

半年ほど経過しても数値が改善されず、高LDLコレステロール血症、高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)を伴う場合は、薬物療法を併用します。

高LDLコレステロール血症が優位な場合は、スタチン薬、レジン薬、ニコチン酸誘導体を使用します。高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)が優位な場合は、フィブラート系薬剤、ニコチン酸誘導体を使用します。

一方、糖尿病に伴う低HDLコレステロール血症では、肝臓や筋肉、脂肪細胞などでインスリンが正常に働かなくなった状態であるインスリン抵抗性の是正や、必要に応じたインスリン投与で改善することもあります。

🇰🇮低出生体重性低身長症

極めて小さく生まれ、3歳を過ぎても身長が一定の基準に追い付かない低身長症

低出生体重性低身長症とは、妊娠週数(在胎週数)の割に極めて小さく生まれ、3歳を過ぎても身長が一定の基準に追い付かない状態。SGA(Small-for-Gestational Age)性低身長症とも呼ばれます。

子供の低身長症は、身長の伸びを妨げる原因によっていくつかの種類に分けられますが、その中の1つに相当します。

厚生労働省の調査によると、生まれたばかりの新生児の平均身長は男児49・2センチ、女児48・7センチ、平均体重は男児3076グラム、女児2990グラムと報告されています。実際には平均より大きく生まれる新生児もいれば、平均より小さく生まれる新生児もいるわけで、小さく生まれた新生児の中には、母親の胎内にいる間の妊娠週数(在胎週数)からみた時に、身長の伸びや体重の増加がゆっくりで、一定の基準に追い付かずに生まれてくる新生児がいます。

こうした新生児は、胎内発育遅延児(SGA児)と呼ばれます。原因については、母体や胎盤が原因のこともあれば、胎児や遺伝の問題ということもあり、さまざまな要因が重なりあっていると考えられます。

男児の標準的な成長をみると、1歳までに25センチ、1~2歳の間に10センチ、2~3歳の間に8センチ伸びますから、約50センチで生まれた新生児は3歳の時におよそ93センチに成長すると予測できます。子供の体には、こうした成長パターンが組み込まれているために、たとえ小さく生まれたとしても、10人中9人の子供は3歳になるまでの間に、身長が標準の範囲まで追い付きます。

しかし、10人中1人くらいの割合で、3歳を過ぎても身長が標準の範囲まで追い付かない子供がいます。こうした子供は、低出生体重性低身長症(SGA性低身長症)と呼ばれます。

低出生体重性低身長症の子供は、成長ホルモンの分泌はほぼ正常なものの、幼児期を過ぎ、小学校に上がってからも低身長のまま経過することが報告されています。また、通常に比べて思春期の訪れがやや早い傾向もあります。低身長のまま思春期を早く迎えることで、成人になっても背が低いことが予測されます。

低出生体重性低身長症か否かを知る手段の1つに、成長曲線をつける方法があります。成長曲線は、生まれた時からの子供の成長を折れ線グラフで示すもので、母子手帳にも付いています。子供の身長の測定値を継続して記載し、過去のものと線で結んでグラフ化します。あらかじめ標準的な身長グラフも記載されているので、その標準身長と子供の身長を比較してみましょう。もともと、胎内発育遅延児(SGA児)で、3歳になっても-2SD(標準偏差)以上の差がみられる場合は、低出生体重性低身長症が強く疑われます。

子供に低出生体重性低身長症が疑われたら、小児科、小児内分泌科の専門医を受診してください。低身長を改善するために、3歳から成長ホルモンによる治療を始めることが可能です。成長ホルモンの効果は個人差がありますが、効果を出すにはなるべく早い時期から治療を開始するほうが望ましいとされています。

低出生体重性低身長症の検査と診断と治療

小児科、小児内分泌科の医師による診断では、まず生まれた時の様子や、妊娠週数(在胎週数)と体重と身長、その後の成長の様子などを聞くので、受診する保護者には母子手帳や成長曲線の記録などを持参するようにしてもらいます。また、身長と体重の測定などで現在の成長の状況なども調べ、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に判断します。

低身長には、低出生体重性低身長症以外にも、体質性のもの、疾患によるものなどさまざまな原因が考えられるため、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症による低身長などがあります。

小児科、小児内分泌科の医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することで、脳の下垂体から分泌される成長ホルモンを補って、背の伸びを促進させる成長ホルモン療法を行います。ヒト成長ホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は保護者が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日1回寝る前に皮膚の下5ミリの部位に皮下注射します。

現在、使いやすくて安全なペン型の注射器が普及しています。従来のものよりも針先を細くして痛みを少なくしたり、注射器に補助具をつけることで針先が見えなくなるなどの工夫がされています。また最近では、ボタンを押すだけで注射できる全自動の注射器や、針のない圧力式注射器も登場しています。このような注射器を使えば安定した注射ができ、自宅で治療を続けることができます。ヒト成長ホルモンの注射を始めた子供の日常生活上の特別な注意点はなく、運動は自由、食事も自由です。

成長ホルモン療法により1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇰🇮低身長症

何らかの原因によって身長が著しく低くなる疾患

低身長症とは、何らかの原因によって身長が著しく低くなる疾患。侏儒(しゅじゅ)症とも呼ばれています。

身長が著しく低くなる原因はいろいろあり、ホルモンの不足によって起こる場合や、ターナー症候群という性染色体の異常によって発生する疾患によって起こる場合、軟骨異栄養症という生まれ付き骨に異常があって低身長、短指症になる疾患によって起こる場合などがあります。

ホルモンの不足によって起こる場合にも、成長ホルモンの不足によって起こる場合と、甲状腺(こうじょうせん)ホルモンの不足によって起こる場合とがあります。このうち、成長ホルモンの不足による場合を成長ホルモン分泌不全性低身長症、あるいは下垂体性小人症といい、最もよく知られています。

成長ホルモンは主として、脳の中にある下垂体(脳下垂体)という器官から分泌され、骨の両端にある骨端線に作用して骨を成長させる働きを持っています。この成長ホルモンの分泌量が不足することにより、骨が成長できず、低身長になります。

低身長は身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義され、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまりますが、この低身長の中で成長ホルモン分泌不全性低身長症は5パーセント以下です。

原因はいろいろありますが、最も多いのは分娩(ぶんべん)時の異常です。骨盤位分娩(逆子)で、しかも仮死を伴って生まれた男児に多い傾向がみられます。ほかに、少し大きくなってから、脳に腫瘍(しゅよう)ができ、成長ホルモンの分泌が低下するために低身長になることもあります。非常にまれには、成長ホルモンや成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常や、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常によって、低身長になることもあります。

生まれた時には、身長、体重とも健康な赤子と変わりがないのが普通です。しかし、3歳ごろになると、ほかの子供と比べて体が小さいことに家族が気付くようになります。知能の発育は、正常です。

身体的特徴は、体全体の均整がよくとれていて、成人しても顔が丸くて子供っぽく、性器は幼児型のままのことが多いようです。声変わりもなく、陰毛やわき毛もないのが普通。これは性腺刺激ホルモンの分泌も同時に障害されることが多いためです。

このほか、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンや副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモンも低下していることがあります。

現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる時、学校での背の順が前になってくるような時は、成長ホルモン分泌不全性低身長症以外のホルモンの疾患が隠れている時がありますので、内科、内分泌代謝内科、小児科の専門医を受診します。

低身長症の検査と診断と治療

医師による診断は、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に診断します。病因を調べるために、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺機能低下症による低身長などがあります。

医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することが最もよい方法です。このホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は両親が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日寝る前に皮下注射します。

1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇰🇮低髄液圧症

脳脊髄液が減少し、頭痛やさまざまな全身症状が現れる疾患

低髄液圧症とは、脳脊髄腔(のうせきずいくう)を循環する脳脊髄液が持続的、ないし断続的に漏出することによって減少し、頭痛やさまざまな全身症状を示す疾患。低脳脊髄液圧症、脳脊髄液減少症とも呼ばれます。

脳脊髄液は、脳と脊髄全体を覆うように脳脊髄腔を循環して保護液として働き、脳と脊髄を浮かせて頭や体が急激に動くことによる衝撃を柔らげたり、部分的な脳や脊髄の活動によって産生される物質を取り除く働きも併せ持つと考えられています。

脳の内側で4つに分かれて存在する脳室で、血液の成分から1日約500ミリリットル産生されて、1日で3回ほど全体が入れ替わる程度のスピードで循環しています。最終的には、くも膜という脳の保護膜と脳との間に広がっている静脈洞という部位から吸収され、血液へ戻ってゆきます。

何らかの原因で脳脊髄腔を覆っている硬膜に亀裂(きれつ)などが生じ、この脳脊髄液が脳脊髄腔から漏出することが原因で、低髄液圧症が生じます。

原因となるのは、頭や体に強い衝撃を受ける交通事故や、柔道、スノーボード、サッカー、バスケット、器械体操などによるスポーツ外傷、転倒のほか、出産、脱水などです。原因が不明なこともあります。

その症状は、起き上がると痛みが増強し、横になると痛みが軽減する起立性頭痛を主とし、付随する頸部(けいぶ)痛、めまい、耳鳴り、視機能障害、倦怠(けんたい)感などがみられます。

また、個人により、記憶力の低下、集中力の低下、食欲の低下、むくみ、しびれ、歩行障害、顔面痛、味覚障害、動悸(どうき)、胸痛、脱力感、頻尿、無月経、性欲低下、体温調節障害、不眠など、さまざまな症状が起きることもあります。

なお、この低髄液圧症は、日本の医師によって提唱された新たな疾患概念であり、いまだに定まった知見や治療法が確立されていないため、国において専門家による医学的な解明が進められているところです。

このため、診療や治療を行っている医療機関は少なく、脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科などの一部が診療のみ、あるいは診療と治療を行っています。

低髄液圧症の検査と診断と治療

脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による診断では、起立性頭痛などの症状、経過、発症の状況などを問診します。

頭部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、脳脊髄液の減少を評価できるほか、脳脊髄液の減少のために脳がやや下垂している画像が認められることがありますが、常に認められるわけではありません。

放射性同位元素(RI)脳槽(のうそう)・脳脊髄腔シンチグラフィーを行い、腰部から硬膜内に細い針を刺し、造影剤の放射性同位元素を外髄液腔(くも膜下腔)に注入すると、注入3時間以内に膀胱(ぼうこう)内に放射性同位元素が描出される画像や、放射性同位元素が髄液腔外に漏出している画像がみられれば、確定します。

脳神経外科、神経内科、整形外科、麻酔科の医師による治療では、十分な水分を摂取して、ベッドでの安静を保ちます。点滴による水分補給が必要な時もあります。

約2週間の水分摂取と安静で改善しない時には、ブラッドパッチ治療(硬膜外自家血注入療法)を行います。局所麻酔を行った後、X線(レントゲン)透視下で脳脊髄液の漏れている硬膜外腔(硬膜の袋の表面)の近くに針を刺します。そして、自己(患者本人)の腕から摂取した血液(ブラッド)に造影剤を混ぜ、刺しておいた針から注入します。すると、脳脊髄液の漏れている硬膜外腔の周囲に血液が広がって凝固し、硬膜の亀裂をふさぎます。

治療効果には個人差があり、初回で効果がない時は、2~3回行うことも少なくありません。ブラッドパッチ治療後、硬膜の亀裂は2週間から1カ月程度で修復します。

しかし、脳脊髄液の漏出が止まっても、脳脊髄液の生成が追い付くまで2~3カ月かかるのが一般的です。また、治療後6カ月間は再発のリスクが高いといわれています。

付随する諸症状についても、症状ごとに回復の程度が異なります。そのため、真に回復を実感するまでに1~3年かかるのが普通だともいわれています。

🇹🇱ディスチミア親和型うつ病(気分変調性障害)

軽い反面、長く続くタイプのうつ病

ディスチミア親和型うつ病とは、症状が軽い反面、長く続くタイプのうつ病。別名を気分変調性障害、気分変調症といい、かつては抑うつ神経症、神経性抑うつと呼ばれていた病気です。

うつ状態は数年間、場合によっては数10年間も続くケースがあります。10歳代後半から30歳代の若いころから発症することが多く、落ち込んでいるのは会社や家庭、社会環境のせいと思い込む他罰的な態度、責任を転嫁する態度を示すのが、近年の発症者の大きな特徴となっています。発症する原因は、性格に根差す傾向が強く、心因性やストレス性もあります。

青年層の発症者のタイプとして、社会のルールをストレスと感じる、秩序を否定する、仕事に熱心でないなどの性格を持っています。元来の気質の特徴は退却傾向と無気力で、やる気がなく、熱心に何かに取り組んで認められたという経験を持っていません。

学生時代も、親の期待通りに進学しながらあまり勉強せず、挫折感から体調を崩したりします。何となく就職しても、仕事のノルマや上司との関係など、規範でがんじがらめの社会で初めて壁にぶつかり、うつ状態に陥ってしまい長く続かなかったりします。

旅行や買い物などの時は、一時的に気分がよくなります。「仕事は仕事、自分は自分」と考えて、自分の生活を何より大切にし、そのためには会社を変わってもいいと考えているタイプだからです。

医学的にディスチミア親和型うつ病と診断されるのは、主に以下に相当する場合です。一つは、抑うつ気分がほとんど1日中存在し、抑うつ気分のない日よりもある日のほうが多く、本人の言明または周囲の人の観察によってそれが示され、少なくとも2年間以上、小児・青年については1年間以上続いていることです。もう一つは、抑うつの間、食欲減退または過食、不眠または過眠、気力の低下または疲労、自尊心の低下、集中力の低下または決断困難、絶望感のうち2つ、またはそれ以上が存在することです。発症者は衝動的に、大量服薬などの自傷行動に出ることもあります。

こうしたタイプのうつ病であるディスチミア親和型うつ病が増えてきた背景として、うつ病概念の広がりと、社会環境の変化の2点が挙げられます。

症状が軽いディスチミア親和型うつ病は従来、うつ病と見なされなかったタイプ。1980年代以降、精神科領域の診断基準が順次、変わってきて、うつ病の概念が広がったことにより、診断の範畴(はんちゅう)に入るようになりました。従来のうつ病は、定型うつ病、メランコリー型うつ病、あるいは気分障害の中の大うつ病性障害などと呼ばれ、発症は中年期以降に多く、非常にまじめで、規則や秩序を大事にし、仕事に打ち込む人がなります。

また、社会の価値観が変化し、若者文化では「型にはまらない」ことがよしとされる一方、企業社会の現実は厳しく、規則や秩序は依然としてあります。このギャップに対応できない青年層が増えている状況が、現代型うつ病であるディスチミア親和型うつ病を生み出しているといえます。

服薬、休養、精神療法的な働き掛け

不調が続く時は、つらい状態を我慢するよりも、早期に精神科、神経科、心療内科の専門医を受診し、治療を受けることが何よりも大切。

最近では、ディスチミア親和型うつ病(気分変調性障害、気分変調症)の発症者が自分から、「うつ病だから治して」と医療機関を受診してくるケースが、多く報告されています。インターネットなどで情報を収集し、自分で自分の病気に気付くようです。そうした人たちは、医師の診断に協力的で、診断書を要求して休職したりします。

現代では、誰(だれ)もがたくさんのストレスを抱えながら、生活しています。では、単なる気分の落ち込みであるか、うつ病であるかは、どこで線引きしたらよいのでしょうか。

ポイントとなってくるのは、日常生活に支障が出てくるかどうか。毎朝早くに目が覚めてしまい、睡眠不足の状態が続く。会社に行ってもいつものように頭が回らず、仕事にならない。そのような状態が2週間も3週間も続くようなら、一度専門医に診てもらう必要があります。また、生活を共にしている人が様子の変化に気付き、本人を促して受診につながるというケースもあります。

ディスチミア親和型うつ病の特徴は従来の定型うつ病と比較して、若年者に多く、他罰的な態度を示すことですので、医師による治療では服薬、休養のみならず、性格改善を目指した精神療法的な働き掛けが必要です。ただ、このタイプの治療は難しく、抗うつ薬が効きにくいため、かなりの時間と労力を要し、慢性化するケースも多くみられます。

しかし、精神科クリニックのリワーク・カレッジ(復職デイケア、復職支援デイケア)に通い、自分の生き方を考え直したことが、治癒につながる人もいます。中には、異動など職場環境が変わるだけで、途端に治る人もいます。

服薬は抗うつ薬や抗不安薬といったものを用いますが、いろいろな種類がありますので、医師と相談しながら自分に合った薬を見付けていくとよいでしょう。抗うつ薬は副作用が最初から出現しますが、服用を途中で中止すべきではありません。

ストレスの原因から遠ざかり、心身ともにゆっくり休むことも大切なので、時には休職し、自宅療養をすることも必要となります。会社を休んで家でゆっくりしていれば、次第に憂うつな気分が回復してきますが、治療は1週間や2週間で終わるものではありません。

病気を治すことが最優先とはわかっていても、月単位で会社を休むことには抵抗がある人も、多く見受けられます。自宅療養の生活では、早く復職したいという焦りとも闘わなければなりません。治療後の会社の生活への復帰というのも、通勤も含め、非常に落差があります。一度回復しても、朝早く起きて電車で通う大変さや、仕事に必要な集中力がなかなか戻らないのに耐えられず、再休職してしまうケースは後を絶ちません。

そういった状況を避けるために、精神科クリニックなどではリワーク・カレッジを立ち上げています。リワーク・カレッジとは、うつ病から立ち直った人たちをよりスムーズに復職させるためのプログラム。参加できるのは、休職後の自宅療養により、日々の生活リズムが一定に保てるまでになった人たちです。

毎朝、同じ時間に寝起きができるようになれば、体のリズムも整い、気分はかなり回復してきます。薬の服用は続けつつ、軽い運動や読書などの負荷をかけていき、それに耐えられるようになったら、次は復職への第一段階としてリワーク・カレッジに毎朝通うという仕組みです。この通勤のシミュレーションともいえるプログラムを継続的に行えるようになったら、次はグループになじんでいくというプロセスへと移行します。

グループになじむ目的は、自宅療養中に遠ざかっていた人間関係を回復させるためにも、復職という同じ目的を持つ仲間の中へ加わり、復職への不安感を軽減すること。ここで前向きな行動が起こせるようになれば、いよいよ会社への復帰となります。休職開始から復職を果たすまでの期間は、個人差はあっても3~6カ月はみておく必要があります。

復職の際には、会社の上司や人事担当者、産業医などとの打ち合わせも重要。また、復職後も週1回から2週に1回受診して、当面の間は治療を継続することが大切です。心身ともに問題なく健康だという状態まで治しておかないと、すぐに再発する恐れがあるため、一見よくなったように思えても、半年や1年は薬物療法と精神療法的な働き掛けを続ける必要があります。

再びうつを繰り返さないためにも、うつの回復期における、過去を振り返っての自己分析も重要。自分の性格や対人関係能力などを把握し、物事がうまくいかないのは病のせいでも、会社や家庭、社会環境のせいでもなく、自分の性格や生き方に問題があるのだと気付くことが必要です。たとえ病状が回復したとしても、自分の感情をコントロールすることができず、責任を他に転嫁したままでは、同じような状況になった時に病気は再発してしまいます。

🇹🇱低体重児

低体重児とは、生まれた時の体重が2500g未満の新生児のこと。正しくは、低出生(ていしゅっしょう)体重児といいます。近年は増加傾向にあり、妊婦のやせ志向や、妊娠中の喫煙、飲酒などが、その背景にあると見なされています。

この低(出生)体重児はさらに、出生体重が1500g未満の場合は極低(出生)体重児に、1000g未満の場合は超低(出生)体重児に分類されます。かつては、極低(出生)体重児を極小未熟児、超低(出生)体重児を超未熟児と呼んでいました。

原因を大きく分けて、在胎週数が短くて出生する早産のために、赤ちゃんの出生体重が低くなる場合と、子宮内での体重増加が悪い子宮内発育制限のために、赤ちゃんの出生体重が低くなる場合があります。

子宮内発育制限は、先天性心疾患、染色体異常など胎児自身の異常や、妊娠中毒症、極端なやせ、喫煙や飲酒など妊婦側の異常、胎盤および臍帯(さいたい)の異常で起こります。

早産と子宮内発育制限、両方の原因が組み合わさって出生する赤ちゃんは、早産低出生体重児といいます。

低出生体重児であっても、在胎週数がほぼ正期産に近くて先天性異常などを持たず、体の機能が成熟している赤ちゃんには、あまり問題はありません。出生直後に低血糖などになりやすいものの、出生後の授乳、体重増加はおおむね良好に推移します。

小さく早く生まれた赤ちゃんは、体の機能が未熟なために生後さまざまな合併症を起こしやすく、免疫力も弱いために重症の感染症にかかりやすくなります。特に、極低体重児や超低体重児では、その傾向が高くなりますので、在胎週数36週未満の赤ちゃんは一般に、新生児特定集中治療室(NICU)に入って保育されます。

🇹🇱低中性脂肪血症

血液の中に含まれる中性脂肪の値が低い状態

低中性脂肪血症とは、血液に含まれる中性脂肪(トリグリセライド)の値が低い状態。低トリグリセライド血症とも呼ばれます。

中性脂肪は、エネルギーの貯蔵庫であり、生命維持活動に必要な細胞や血管を構築するための栄養素になります。また、中性脂肪を蓄えた脂肪細胞には、衝撃から内臓を守るクッション役、寒さや暑さから身を守る断熱材などの役割があります。

血液に含まれる中性脂肪の値が高いと高中性脂肪血症(高トリグリセライド血症)となり、心筋梗塞(こうそく)などの重篤な疾患が誘因されやすいものの、中性脂肪の値が低すぎても問題になります。

中性脂肪の値は、血液中のコレステロールと中性脂肪値を測る脂質検査で調べることができます。おおよその目安では、29mg/dl以下を低中性脂肪血症と見なし、30 ~149mg/dlを正常、150~299mg/dlを軽度高中性脂肪血症、300~749mg/dlを中等度高中性脂肪血症、750mg/dl以上を高度高中性脂肪血症としています。

適正な中性脂肪の値は現在、30~149mg/dlとなっており、29mg/dl以下は低中性脂肪血症に当てはまる可能性がありますが、この基準値以下でも普通の生活している場合であれば、問題はありません。

基準値をはるかに下回る場合は、問題が生じます。中性脂肪は筋肉や心臓を動かす体のエネルギー源であるため、低すぎると体を正常に動かすエネルギーまで不足してしまい、慢性的な疲労感を感じる原因になります。健康を維持する上では、適正な中性脂肪値を保つことが大切なのです。

中性脂肪が低くなりすぎる原因として、まず第一に考えられるのは、無理なダイエットです。極端に食事量を減らしたり、海草や野菜ばかり食べるなどの食事内容により、摂取するエネルギー量が極端に低かったり、栄養素が偏ったり、栄養が不足していることが原因となります。

あまりに中性脂肪が低い場合は、バセドウ病や甲状腺(せん)炎を原因とする甲状腺機能高進症や、肝硬変、吸収不良症候群などの疾患が隠れている可能性があります。

甲状腺機能高進症では、甲状腺ホルモンが過剰に分泌されている場合、全身の代謝が高進するとともに脂肪の代謝が促進され、コレステロールや中性脂肪が著しく低下します。この場合、動悸(どうき)、発汗、手の震え、倦怠(けんたい)感などの自律神経の緊張症状とともに、体重の減少が生じます。

肝硬変や吸収不良症候群では、脂肪自体が吸収および産生されていない状態に陥り、コレステロールや中性脂肪が著しく低下します。

疾患がなく、食事をしっかり取っているにもかかわらず、低中性脂肪血症になっている人もいます。やせ形の人に多いのですが、そのような人は、生まれ付き中性脂肪値が低い可能性があります。

低中性脂肪血症の検査と診断と治療

血液に含まれる中性脂肪が29mg/dl以下の低中性脂肪血症と判明した場合は、原因となる疾患の有無を調べます。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低下した中性脂肪の値を増加させる必要はなく、甲状腺機能高進症や肝硬変、吸収不良症候群、栄養障害などの原因となる疾患に対応して改善を図ります。

🇳🇨定年退職うつ病

会社を定年退職後に、抑うつ気分に陥り日常生活に支障が出る状態

定年退職うつ病とは、今まで勤めてきた会社を定年退職後に、抑うつ気分などの、うつ病の症状が現れ、日常生活に支障が出てくるようになった状態。退職うつ病、退職症候群、定年症候群などとも呼ばれます。

うつ病は、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安、焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠症などを特徴とする精神疾患。一般に、うつ病を発症しやすい年齢は25歳から35歳ですが、何歳からでも起こる可能性があり、退職や転居といった人生の節目、生活の大きな変化で起こる場合もあるのです。

定年退職うつ病は、定年退職後になるばかりでなく、定年の数年前から退職後の年金生活などに不安を感じて、抑うつ的になってしまう人もいます。定年退職うつ病を発症しやすいタイプは、学校を卒業してからずっと同じ会社に勤め、仕事中心にひたすら頑張ってきた会社人間の人です。40年前後働き続けて定年退職を迎えると、自分の人生の中心であった仕事を失い、何をしてよいのやら途方に暮れてしまいます。また、会社を辞めるということは、愛着を持ってきた仕事、地位や肩書き、所属していた集団、経済的基盤といったものを失い、さまざまな喪失感を伴うものです。

特に、現代社会では寿命が長くなり、60歳代もまだまだ働ける年齢です。多少の衰えは感じていても、自分としては十分働く気がある時期に会社を辞めなくてはならないというのは、社会から必要とされていないように思ってしまい、必要以上に自分を過小評価したり、劣等感にさいなまれたり、むなしさ、寂しさを感じたりもします。それとともに、家庭では主(あるじ)としての地位が揺らいでいることを感じ、プライドさえも打ち砕かれます。

同時に、これまでの生活リズムが一気に大きく変化し、行動範囲が会社から地域へと変化します。出勤する必要がなくなった長い一日をどのように過ごしたらよいか、わからなくなってしまい、気分が沈み込んで何かをする気力がなくなったり、回りのことに興味が持てなくなって人生が味気なく感じられるようになります。意欲減退、無気力、無感動のほか、頭が重い、めまいがする、胃の調子が悪い、疲れやすいなどの身体症状が現れたり、記憶力が衰えるというようなこともあります。

そのような状態が長く続くと、食欲も低下し、睡眠障害なども起こって、日常生活に支障が出てくるようになります。最悪の場合は、自分を責め、自殺を図ることさえあります。

うつ病の原因は十分にわかっていませんが、脳内の神経伝達の一部が一時的に悪くなって、情報(刺激)の伝わり方が部分的に悪くなっているのではないかと考えられています。だから、うつ病の人がやる気をなくしてぐったりしているのは、決して怠けているわけではないのです。脳、あるいは神経という臓器が一時的に不調になっていると考えたほうが、わかりやすいかもしれません。

定年退職うつ病の症状がみられたら、早期に発見して治療を受けるようにしましょう。うつ病と診断された場合は、抗うつ薬による薬物療法がメインに行われます。SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)と呼ばれる抗うつ薬を中心に、気分を安定させる気分安定薬や抗精神病薬、不安や不眠を改善する抗不安薬や睡眠薬など、さまざまなものが選択されます。

薬を服用することで、気分が安定して楽になりますが、3カ月から6カ月、1年くらいの時間がかかります。風邪の熱が解熱剤で翌日には下がったというような治り方はせず、一進一退で、調子が悪くなったり調子がよくなったりという状態を繰り返しながら、次第に軽快していき、ある日気付いてみたら、全く元通りの健康な状態になっていたというような経過をたどります。

調子がよくなったり、副作用が出たりからといって自己判断で薬の服用を中止すると、うつ病が再発することもあるので、注意が必要です。医師と相談しながら、根気よく治すことが大切です。

なお、周囲の人が励ますとかえって本人が重荷に感じ、症状が悪化することもあるので、ストレスを与えないような気配りが必要です。

定年退職うつ病を予防するには、早めに定年後の第二の人生の計画を立て、その準備をしておくことです。定年前から、仕事以外に熱中できる趣味などを持つようにしましょう。また、休日は家族と一緒にどこかへ出掛けるなど、家庭でのコミュニケーションを増やし、自分の居場所を作っておきましょう。趣味のサークル、地域の行事などに積極的に参加し、会社や家庭以外の人間関係も築いておくのもよいでしょう。

何よりも定年退職後の人生を明るく前向きにとらえ、「これからは、今までやりたくてもやれなかったことをやる」というような考え方をすれば、うつ病とは無縁な第二の人生が送れるでしょう。

2022/08/14

🇨🇱低βリポ蛋白血症

低LDLコレステロール血症を示す遺伝性疾患

低βリポ蛋白(たんぱく)血症とは、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示す常染色体優性遺伝疾患。家族性低βリポ蛋白血症とも呼ばれます。

その原因遺伝子として、アポBとPCSK9(プロ蛋白質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)が知られています。アポB変異の大部分は、短縮アポBを生成し、VLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌障害と異化促進の結果、血液中のアポB濃度が低下します。

人間の遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL(低比重リポ蛋白)受容体やこれを働かせる遺伝子の両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。ホモ接合体のみならずヘテロ接合体も、低LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール血症を示します。

低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者では、短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールの濃度が軽度に低下し、一般に、総コレステロール120mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール80mg/dl未満を示します。同じ血液中の脂質である中性脂肪(トリグリセライド)の濃度は、正常の値を示します。

低コレステロール血症を示すことを除いて、自覚症状がないことが多いものの、肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のために、脂肪肝や胆石症の合併が増加することもあります。なお、自覚症状がないケースでは、発育も正常であり、かつ心血管病にかかるリスクが低いため、通常人より長生きするという報告もあります。

低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者では、より短い短縮アポBを生成して、血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)の濃度が低下し、一般に、総コレステロール80mg/dl未満、LDL(低比重リポ蛋白)コレステロール20mg/dl未満を示すか、非常に短い短縮アポBを生成してアポB合成が欠損し、無βリポ蛋白血症と類似した症状を示します。

アポB合成が欠損した場合の症状は、まず乳児期に現れ、発育不全がみられます。脂肪吸収の障害により、授乳開始とともに便に過度の脂肪が含まれる脂肪便という状態になり、便は脂っぽく、悪臭があり、水に浮かびやすくなります。慢性下痢、嘔吐(おうと)も生じます。

また、ビタミンEを始めとした脂溶性ビタミンの吸収障害により、思春期までに網膜色素変性による夜盲、視野狭窄(きょうさく)、視力低下などの目の症状が生じ、失明する可能性もあります。中枢神経系の損傷による運動失調症や精神遅滞、末梢(まっしょう)神経系の損傷による知覚低下や腱(けん)反射消失などが起きる可能性もあります。

また、末梢細胞へのコレステロール供給が低下するために、赤血球は有棘(ゆうきょく)赤血球となります。肝臓からのVLDL(超低比重リポ蛋白)の分泌不全のため、脂肪肝を示すこともあります。

未治療のケースでは、30歳前後までに中枢神経系の損傷により、歩行など通常の日常生活に必要な基本的な活動が著しく障害されることもあります。

アポB合成が欠損した場合は通常、小児期に発見されますが、まれに成人期になって偶然発見されるケースもあります。

低βリポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のLDL(低比重リポ蛋白)コレステロールの低値を確認し、リポ蛋白の電気泳動で短縮アポBを検出することで、低βリポ蛋白血症と確定します。

低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者で、アポB合成が欠損している場合は、血中の総コレステロール値は25〜45 mg/dlで、そのほとんどはHDL(高比重リポ蛋白)コレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)10 mg/dl未満であることが多く、アポBは検出感度以下、脂溶性ビタミンA・E・Kも低値を示します。

低βリポ蛋白血症と無βリポ蛋白血症は、家族歴によって鑑別します。低βリポ蛋白血症が常染色体優性遺伝であるのに対し、無βリポ蛋白血症は常染色体劣性遺伝疾患であるので、家族調査で無βリポ蛋白血症との鑑別が可能となります。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、低βリポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者、および低値であるが検出可能なLDL(低比重リポ蛋白)を有する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、一般的に何も行ないません。

LDL(低比重リポ蛋白)の欠損する低βリポ蛋白血症ホモ接合体の発症者の場合、無βリポ蛋白血症に対する治療と同様、脂溶性ビタミン、特にビタミンEのサプリメントを使用し、多量に補充します。

幼児には1日1000〜2000mg、成人には5000〜10000mgの脂溶性ビタミンを長期にわたって大量に補充することによって、中枢神経系の損傷の発生と進行を遅らせることができます。

消化器症状に対しては、脂肪の摂取、特に長鎖脂肪酸の摂取を制限します。栄養障害に対しては、カイロミクロンを経ずに吸収される中鎖脂肪酸を補充することもあります。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...