ラベル 病気(ら) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 病気(ら) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/07/14

💊ライエル症候群

重度の薬疹で、表皮の壊死や剥離など重篤な症状を伴う皮膚障害

ライエル症候群とは、重度の薬疹(やくしん)で、表皮の壊死(えし)や剥離(はくり)など重篤な症状を伴う皮膚障害。イギリスの皮膚科医ライエルが1956年に初めて報告した疾患で、ライエル症候群型薬疹、中毒性表皮壊死症、中毒性表皮壊死融解症などとも呼ばれます。

このライエル症候群は、その多くが医薬品によるものと考えられています。原因と推定される医薬品は、抗生物質、解熱消炎鎮痛薬、抗てんかん薬を始め、痛風治療薬、サルファ剤、消化性潰瘍(かいよう)薬、催眠鎮静薬、抗不安薬、精神神経用薬、緑内障治療薬、筋弛緩(しかん)薬、高血圧治療薬など広範囲に渡り、その他の医薬品によっても発生することが報告されています。また、総合感冒薬(風邪薬)のような市販の医薬品が原因となることもあります。

ライエル症候群の一部は、単純疱疹(ほうしん)ウイルス、肺炎マイコプラズマ、細菌、真菌などの種々のウイルスや細菌による感染症が原因となって発症します。原因不明な場合も、まれにあります。

38度以上の高熱とともに急激に発症し、全身が広範囲に渡って赤くなり、全身の10パーセント以上にやけどのような水膨れ、皮膚のはがれ、ただれなどが認められます。皮膚や口にできるぶつぶつ、目の充血、のどの痛み、排尿・排便時の痛みなどの症状を伴います。その症状が持続したり、急激に悪くなったりします。肝障害、腎(じん)障害、呼吸器障害、消化器障害などの合併症により、死に至ることもあります。

発生頻度は、人口100万人当たり年間0・4〜1・2人。発症メカニズムについては、医薬品などにより生じた免疫・アレルギー反応によるものと考えられていますが、さまざまな説が唱えられており、いまだ統一された見解は得られていません。

なお、スティーブンス・ジョンソン症候群(皮膚粘膜眼症候群)とライエル症候群は一連の病態と考えられ、ライエル症候群の症例の多くがステ ィーブンス・ジョンソン症候群の進展型と考えられています。

原因と考えられる医薬品の服用後2週間以内に発症することが多く、数日以内あるいは1カ月以上たってから起こることもあります。

その症状が持続したり、急激に悪くなったりした場合、何らかの医薬品を服用している人は放置せずに、すぐに医師、薬剤師に連絡して下さい。その際には、服用した医薬品の種類、服用からどのくらいたっているのかなどを伝えて下さい。

ライエル症候群の診断と治療は、皮膚科の入院施設のある病院で行うことが望ましいとされています。入院に至った際は、皮膚科と眼科、呼吸器科などとのチーム医療が行われることになります。

ライエル症候群の検査と診断と治療

皮膚科の医師による診断では、皮膚生検で確定診断を早急に行い、血液検査、呼吸機能検査なども行います。剥離した皮膚を組織学的に検討すれば、壊死に陥った表皮が認められ、これが確定診断に役立つ特徴となります。また、原因と推定される医薬品や、ウイルスや細菌の感染などを検索します。

医薬品の服用後に高熱を伴う皮膚、粘膜、目の症状を認めたケースでは、原因と推定される医薬品の服用を直ちに中止することが最も重要で、最良の治療法となります。しかし、服用を中止しても重症化する場合があるので、注意が必要です。

一般に、ライエル症候群(中毒性表皮壊死症)を発症した場合、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の全身投与、あるいは血漿(けっしょう)交換療法、ビタミン類の投与、さらに二次感染予防の目的で抗生物質の投与が行われます。皮膚の症状に対しては、熱傷と同様の治療を行い、外用抗生物質、外用副腎皮質ホルモン剤が用いられます。粘膜の症状に対しては、うがい、洗眼など開口部の処置が行われます。

🕷ライム病

マダニにより媒介され、スピロヘータ科ボレリア属の細菌を病原体とする感染症

ライム病とは、野ネズミや小鳥などを保菌動物とし、野生のマダニによ って媒介されるスピロヘータ科ボレリア属の細菌による感染症。

ヨーロッパからアジアまでの温暖な森林地帯、北アメリカの北東部、北中央部、太平洋沿岸地域で多く見られますが、世界中で発生がみられます。ヨーロッパで感染すると皮膚症状が、北アメリカで感染すると関節炎の症状が、目立ちます。日本では年間数十件の患者の報告があり、特に北海道での報告が多く東京都内でも報告があります。

病原体は、スピロヘータ科ボレリア属のライム病ボレリアという、ひょろ長い形をした細菌です。ライム病ボレリアは数種類が確認されており、北アメリカでは主にボレリア・ブルグドルフェリ、ヨーロッパではボレリア・ブルグドルフェリのほか、ボレリア・ガリニ、ボレリア・アフゼリ、ボレリア・ババリエンシスが主な病原体となっています。日本では、ボレリア・ババリエンシス、ボレリア・ガリニが主な病原体となっています。

これらのライム病ボレリアを保有した野生のマダニ科マダニ属のダニに、森林作業や農作業、レジャーなどで草むらややぶなどに立ち入った際に刺されることによって、感染します。北アメリカにおいては主にスカプラリス・マダニ、ヨーロッパにおいてはリシナス・マダニが媒介し、日本ではシュルツェ・マダニが媒介するケースがほとんど。人から人へうつることは、ありません。

潜伏期は3~32日間で、感染初期には、多くの場合、遊走性紅斑(こうはん)と呼ばれる特徴的な症状が出ます。これは、マダニに刺された部位に赤色の丘疹(きゅうしん)が生じ、次第に遠心状に、輪状の紅斑が広がっていくというものです。また、その際に、筋肉痛、関節痛、頭痛、発熱、悪寒、全身倦怠(けんたい)感などの症状を伴うことがあります。

その後、病原体が血液によって全身に運ばれるのに伴い、重度の頭痛や首筋の硬直、刺された部位以外の発疹、関節痛や関節のはれ、筋肉痛、動悸(どうき)や不整脈、めまいや息切れ、神経痛、手足のしびれや痛み、脳や脊髄(せきずい)の炎症、記憶障害など多彩な症状が現れます。

感染から数カ月ないし数年をへて重症化すると、皮膚症状や関節炎、脊髄脳炎などが悪化し死亡することがあります。また、治療が遅れると皮膚や関節などに後遺症が残ることがあります。

日本では、ライム病は感染症法で全数把握対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに保健所に届け出ることになっています。

ライム病の検査と診断と治療

内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による診断は、典型的な症状、感染の機会の有無、さらに病原体あるいは病原体の遺伝子の検出、抗体検査に基づいて下します。

発症の数週間前に、流行地への旅行歴、もしくは野山や河川敷などでの活動歴があればライム病が疑われます。

内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による治療は、ペニシリン系、テトラサイクリン系の抗生物質が有効で、近年はセフェム系抗生物質も用いられています。

治療が遅れると重症化や後遺症が残る場合があるので、早期発見、早期治療が重要です。

ライム病は、ワクチンによる予防対策を講じることができない疾患のため、病原体を保有するダニに刺されない対策を講じることが重要です。

そのポイントは、森林作業や農作業、レジャーなどで、草むらややぶなどダニが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、帽子、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。

衣類にダニがついていることがあるので、森林や野山などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。

万が一ダニに刺され、皮膚に吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、入浴して体をよく洗って注意深く取り除くか、医療機関で処理してもらうことです。

💋落屑性口唇炎

唇の皮が繰り返して、はがれ続ける疾患

落屑(らくせつ)性口唇炎とは、唇が乾燥して皮がはがれたり、めくれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりする疾患。難治性で、症状が繰り返し出現し、治るまでに時間がかかることも少なくありません。

原因ははっきりしませんが、自分の舌で唇を繰り返しなめる、もしくは自分の手指で唇の皮をむしるなどの物理的な刺激による炎症と考えられています。大人より子供のほうが舌で唇をなめる機会が多く、子供がかかりやすい口唇炎であることから、別名で「舌なめずり口唇炎」あるいは「剥脱(はくだつ)性口唇炎」と呼ばれることもあります。

唇が乾燥している状態であり、舌で唇をなめると唾液(だえき)で一時的に潤ったように感じられますが、舌なめずりのような刺激が繰り返し加わることで、唇の油分が減り、唾液に含まれる消化酵素が乾燥を助長し、唇の皮膚の表層にある角質層がはがれやすくなります。その結果、皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が早まり、角質層が正常に形成されないため、外部からの刺激や異物の侵入から守ったり、内側に蓄えている水分が逃げないようにしたりする皮膚のバリア機能が失われた状態となります。

唇は極度に乾燥し、それによってさらに舌なめずりを繰り返すことで、症状が悪化するという悪循環を生じます。唇の皮がはがれたり、めくれたり、赤くなったり、ひび割れたり、かさぶたがみられたりするほか、出血などの症状がみられるようになります。また、口角に亀裂(きれつ)が入ったり、唇の内側の皮がむけたりするなど周囲の皮膚にまで炎症が波及することもあります。唾液や飲み物などの刺激によって、ヒリヒリ感、痛み、かゆみを生じることもあります。

特に冬季などの空気が乾燥した時期に、落屑性口唇炎は起こりやすくなります。落屑性口唇炎は時に大人にもみられ、栄養不足、ビタミンの欠乏、精神的な背景なども原因になることもあります。

感染症による口唇炎を伴うケースもあり、唇に水疱(すいほう)ができるものはヘルペスなどのウイルス感染、白い苔(こけ)のようなものが唇に付着するものはカンジダなどによる真菌感染、ただれが強いものは細菌感染が考えられ、強い痛みやはれ、発熱などが現れることもあります。

落屑性口唇炎の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、落屑性口唇炎と確定するためには、アレルギー性の接触性口唇炎、いわゆる、かぶれを除外することが必要です。かぶれの原因として、食べ物や口紅、リップクリーム、歯磨き粉、治療で使用している外用薬などが考えられるので、これらに対しパッチテストを行い、かぶれかどうかを判断します。

また、口の中にいる一般的なカビであるカンジダや細菌、ウイルスなどの感染を伴うこともあり、それぞれ治療法が異なるので、検査を行います。

落屑性口唇炎と同じような症状を示す特殊な疾患として粘膜苔癬(たいせん) があるので、この疾患を除外するために、唇の組織を一部切り取って顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、ワセリンなどの保湿剤を使用し、炎症が強い時はステロイド剤(副腎〈ふくじん〉皮質ホルモン剤)や非ステロイド剤の外用薬を使います。また、栄養バランスに気を付け、ビタミン、特にビタミンB2、B6を補うことも治療の一つとなります。

感染症による口唇炎を伴っている場合には、抗生物質、抗ウイルス薬、抗真菌薬など、それぞれの病原体に適した塗り薬や内服薬を使用します。

精神的な原因が背景にある場合には、抗うつ剤の内服薬の使用で改善するケースもありますが、無意識のうちに舌で唇をなめたり、皮をむしったりしてしまうことがあって、治りにくくなるので、ストレスをためないなど日常生活を工夫することも大切です。

🧠ラクナ梗塞

脳深部の細い動脈にできる直径15ミリ未満の小さな梗塞

ラクナ梗塞(こうそく)とは、脳の深部を走っている極めて細い血管に起きた動脈硬化が原因となって、発症する小さな脳梗塞。穿通枝(せんつうし)梗塞とも呼ばれます。

ラクナは、ラテン語で「空洞」を意味しています。脳の細い血管の閉塞により、脳の組織の一部が壊死して脱落し空洞を残すために、この疾患名があります。

ラクナ梗塞は通常、脳の深部にある0・4ミリ以下の非常に細い血管である穿通枝(穿通枝動脈)が狭くなり、この部位に血の固まりである血栓が形成されて、最終的に血管が閉塞して生じるとされています。極めて細い血管の閉塞により生じる脳梗塞なので、病変の大きさは直径15ミリ以下です。直径15ミリを超える梗塞は、ラクナ梗塞とはいいません。

血管の閉塞のほかに、不整脈や心臓の疾患で心臓内で血栓が形成され、この血栓が流れて飛んで、脳の深部の極めて細い血管を閉塞させることもあります。

このラクナ梗塞は、小さな梗塞であるため、脳梗塞の中では最も症状は軽症です。ほかの種類の脳梗塞であるアテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓と違い、大きな発作が起こることはありません。

その症状はラクナ症候群といい、運動まひ、しびれなどの感覚障害が主に起こります。そして、症状は段階的に現れて、少しずつ進行していきます。ラクナ梗塞が発症することが多いのは、安静時で、特に睡眠中です。朝起きた時にも、起こることが多くみられます。

また、ラクナ梗塞では梗塞する部分が極めて小さいので、症状が出ないことがあります。これを無症候性脳梗塞、あるいは隠れ脳梗塞といい、運動障害や感覚障害などの自覚症状を感じないまま、小さな脳梗塞が起こります。高齢者に多くみられ、高血圧、高脂血症、糖尿病などがあると発症する確率が高くなります。

ほとんどが直径15ミリ以下の小さな梗塞ですが、そのまま放置しておくと、梗塞の数が増えたり、梗塞が脳のいろいろなところに発生して、多発性脳梗塞になります。多発性脳梗塞になると、手足や顔面のしびれ、軽いまひ、言語障害、歩行障害、食べ物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害などの症状がみられます。また、認知症の原因となることもあります。

多発性脳梗塞の一番の危険要因は、高血圧です。高血圧は、血管の内側の壁に強い圧力を加えます。そのために、血管の内側の壁が傷付いて、どんどん硬くもろくなり、動脈硬化が発症します。動脈硬化が起こると、血管の血液が通る部分が狭くなり、血流が途絶えて脳梗塞になる危険が増すのです。

ラクナ梗塞の検査と診断と治療

脳神経外科、脳外科、神経内科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)で脳血管の様子を調べるほか、超音波検査で首を通る頸(けい)動脈が動脈硬化を起こして狭くなっていないかどうかを調べます。頸動脈で血栓ができて脳に流れると、脳血管が詰まる恐れがあるためです。

脳神経外科、脳外科、神経内科の医師による治療では、血管が狭くなっていれば、血液を固まりにくくするアスピリン、塩酸チクロピジン、シロスタゾールなどの抗血小板剤を使用します。

脳血管がこれ以上詰まらないようにするには、血圧の管理が大切です。塩分を控え、過カロリー、脂質過多の食生活を見直して、魚や植物性蛋白(たんぱく)質中心の日本食を取り入れるなど食生活に気を配り、50歳代であれば、上は130未満、下は80未満を目標にします。毎日30分程度歩くこともお勧め。水分はしっかり補給し、節酒や禁煙も必要です。

適正な血圧は、年齢や心臓病や糖尿病の有無、コレステロール値などによって変わってきます。掛かり付け医を持ち、指導を受けるといいでしょう。

ラクナ梗塞が進行した多発性脳梗塞で起こりやすい認知症には、根本的な治療はありません。デイケア、デイサービスへの通所や、家族の協力のもとでの散歩や、食事、テレビ、清掃、おやつ、会話など、生活習慣を規則正しく続けることで、脳を活性化させ、症状が改善したり、進行が遅れたりということがあります。

🧤ラテックスアレルギー

ラテックスアレルギーとは、天然ゴム製品に含まれる水溶性蛋白(たんぱく)質がアレルゲンとなって、すぐに起こる即時型アレルギー反応です。ゴム手袋、輪ゴム、ゴム風船、粘着テープ、コンドームなどに皮膚が触れると、むくみやじんましんが出現します。

重症例では、ラテックスの付着したパウダーを吸い込んだだけで、喘息(ぜんそく)発作やアレルギー性鼻炎、結膜炎などを起こしたりします。ひどい場合は、血圧低下が起こり、ショック状態に陥ることも。

症状が軽い場合、抗ヒスタミン薬の内服で治まりますが、症状が重い場合、それぞれの症状に合わせた対処療法が必要となります。

ラテックスアレルギーと診断された人は、原因物質となる天然ゴム製品を使わないようにすることで予防できます。しかし、医療従事者や、ゴム製品をよく用いている人、何らかのアレルギーがある人など、ふだんアレルギーとまったく無縁だった人たちにも起こり得ます。

ラテックスアレルギーを発症する素因を持っているのは、食物アレルギーのある人、中でもバナナ、アボカド、キウイフルーツ、クリなど、蛋白質がゴムの木のと似ている食物にアレルギーのある人で、注意が必要とされます。

🐀ラッサ熱

ラッサ熱は、一類感染症の一つです。一類感染症とは、1999年4月1日より施行された「感染症新法」によって、原則として隔離、入院となる感染症で、6疾患が規定されています。

ナイジェリアのラッサ村で発見され、ラッサウイルスを持つネズミから感染します。頭痛、発熱、下痢が起こり、重症になると脳症、心不全、腎(じん)不全となり、30~50パーセントの人が死亡します。

隔離が必要なのは、感染者の血液、気道分泌物、尿から、皮膚や気道を介して第三者に移るためです。

このラッサ熱に似た病気には、マールブルグ病、エボラ出血熱、クリミア・コンゴ出血熱があり、同じ一類感染症に規定されています。

🚣‍♂ラッセン病

成長期の子供にみられ、膝の皿の軟骨が損傷を受けて痛みを起こす疾患

ラッセン病とは、膝(ひざ)の皿に当たる膝蓋骨(しつがいこつ)の軟骨が損傷して、痛みを起こす疾患。発育が旺盛な時期の子供、特に10〜15歳の男子に多く発生します。

足を頻繁に使うスポーツなどで症状が誘発されることもあるため、スポーツ障害の一つとしても考えられています。また、成長期の子供の軟骨に障害が起き、痛みを伴う骨端(こったん)症の一つにも数えられています。

発症する膝蓋骨は、膝(ひざ)の前にある平たい骨。上端には大腿四頭筋腱(だいたいしとうきんけん)がつき、ややとがった下端と脛(けい)骨前面上部との間に膝蓋腱があります。ランニングやジャンプの動作などにより、太ももの筋肉である大腿四頭筋が収縮すると、膝蓋骨の骨端軟骨が繰り返し引っ張られることになり、痛みが起こります。ひどい時には、通常の歩行時にも痛みが起こることもあります。

ラッセン病が発生する原因は、骨端軟骨が存在するような年齢の時に繰り返される膝蓋骨部分でのストレスです。もともと、軟骨成分の多い子供の骨は衝撃にも弱く、腱による強力な牽引(けんいん)力がかかると、軟骨部分では容易に骨がはがれてしまいます。

骨端軟骨は15~16歳で膝蓋骨体部と癒合して骨が完成しますので、成長とともに自然に治る場合が多いのですが、痛みが強い際には整形外科を受診し、症状によってはスポーツを中断して回復を待ったほうがよいこともあります。

整形外科の医師による診断は、痛みの部位とレントゲン写真により容易にできます。治療は、痛みの程度やスポーツ時の障害の程度によって異なります。非常に痛みが強い場合には一時的にスポーツを休止する必要がありますが、基本的には活動を続けながら治療します。

軽症例では、消炎鎮痛剤入りの外用薬などで軽快します。痛みが強ければ、ギプスなどで膝関節を固定して安静を図ることもあります。

多くの場合はスポーツを控え、安静を図る程度で痛みは治まりますが、スポーツを続けた場合で活動時の痛みが続く時には、膝蓋骨にかかるストレスを軽減する特殊なサポーターを装着する方法もあります。スポーツ前後の大腿四頭筋のストレッチング、特に活動後のストレッチングと氷などでの患部の冷却は効果的で、ふだんのストレッチなどのケアをしっかりし、痛みかひどくならないように活動量をコントロールすれば、スポーツを続けながら治療できます。

ラッセン病による膝の痛みは、男子の場合で15歳から16歳で骨の成長が完了するに伴って軽減し、将来障害が残ってスポーツに支障を来すことはほとんどありません。

🐸ラヌーラ

唾液の出口が詰まって周囲の組織内にたまり、口底部に袋状の嚢胞ができる疾患

ラヌーラとは、唾液腺(だえきせん)で作られた唾液が排出障害を起こして、周囲の組織中に漏れ出し、唾液をためた袋状の嚢胞(のうほう)が口底部にできる疾患。

嚢胞は透明感のある青みを帯びた半球状の膨らみで、これが大きくなったものがガマガエルの喉頭嚢(こうとうのう)に似ているところから、がま腫(しゅ)とも呼ばれます。

舌の裏面に覆われた下顎(したあご)の内側の部分で、口の中の底に当たる口底部には、唾液腺の舌下腺(ぜっかせん)や顎下(がくか、がっか)腺、口底部小唾液腺があります。これらの唾液腺の管の出口が外傷など何らかの原因で詰まると、唾液が外に出てこられなくなって、周囲の粘膜の下に袋状の嚢胞を作ってはれることがあります。これを舌下型ラヌーラと呼びます。

 口底部と下顎の境に当たる顎舌骨筋を超えて、顎の下に袋状の嚢胞を作ることもあります。これを顎下型ラヌーラと呼びます。また、口底部と顎下部の両方に袋状の嚢胞を作ることもあります。これを舌下顎下型ラヌーラと呼びます。

舌下型ラヌーラは、口底部の粘膜の下に片側性に発生します。小さいものは無症状ですが、徐々に大きくなると舌が持ち上げられ、発語障害や、物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害が起こってきます。かんで嚢胞の一部が破れると、中から粘性の高い液が出て、はれはなくなります。しかし、しばらくするとまた同じようにはれてきます。

顎下型ラヌーラでは、顎の下全体がはれてきます。痛みもなく軟らかくはれてくるため、嚢胞がかなり多くなるまでわからないことがあります。

口底部や顎の下のはれに気が付いた場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科、歯科口腔(こうくう)外科を受診することが勧められます。

ラヌーラの検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科の医師による診断では、触診や超音波検査(エコー)、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などで、ラヌーラかどうかを調べ、嚢胞と舌下腺などとの関係を明らかにします。

顎下型ラヌーラでは、リンパ管腫というリンパ液のたまる疾患などとの見分けが必要になります。

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科の医師による治療では、薬で治すことはできないため、手術が基本となります。

嚢胞が小さいうちは針を刺して中の粘液を抜くことがありますが、ある程度の大きさになると、手術で嚢胞壁を一部切り取って開放し、嚢胞を縮小させ、開放部分が閉鎖して再度唾液がたまらないように、嚢胞壁の辺縁を口腔粘膜と縫い合せます。外来小手術として行われますが、再発することが少なくありません。

最も確実な治療方法は、嚢胞とともに、原因となっている舌下腺、あるいは顎下腺、小唾液腺を同時に摘出する手術です。特に、顎下型ラヌーラでは、舌下腺などを同時に摘出したほうがよいといわれています。

また、嚢胞の大きさにもよりますが、不随意に嚥下反射などで動きやすい部分ですので、神経、血管などを傷付けるリスクが少しでも減るように、全身麻酔下での手術を行ったほうがよいといわれています。

舌下腺などを完全に摘出すれば、ほぼ再発はありません。また、片側の舌下腺を摘出しても、口が渇くという問題は生じません。

🤯ラムゼー・ハント症候群

水痘・帯状疱疹ウイルスが顔面神経や、その周辺の聴神経に感染して発症する疾患

ラムゼー・ハント症候群とは、水痘(すいとう)・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが顔面神経や、その周辺の聴神経に感染して発症する疾患。疾患名は初めて報告したアメリカの神経科医にちなんでおり、別名でハント症候群とも呼ばれます。

ヘルペスウイルス属の1つである水痘・帯状疱疹ウイルスに乳幼児期に初感染すると、水ぼうそう(水痘)になります。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。水膨れは胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。水膨れの数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

乳幼児期に一度かかると免疫ができるため、この水ぼうそうに再びかかることはほとんどありません。しかし、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も体のいろいろな神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかの切っ掛けにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水ぼうそうのように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。体のどこにでも帯状疱疹の症状は現れますが、胸から背中にかけてが一番多く、顔や手足、腹や尻(しり)の下などに現れることもあり、顔や耳を中心に起こった帯状疱疹がラムゼー・ハント症候群に相当します。

このラムゼー・ハント症候群は、顔面神経の膝(しつ)神経節という場所に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、顔面神経や聴神経に感染して起こります。

発症すると、ある日突然に顔の片側が動かなくなり、顔がゆがんだり、口の一方が曲がるなどの症状が現れます。また、外に張り出している片側の耳介や、耳の穴から鼓膜まで続く外耳道に神経痛のような鈍痛が現れ、数日の内に耳介や外耳道に発赤やかゆみを伴う小さな水膨れが出現し、水膨れが乾燥すると、かさぶたになります。水膨れは、軟口蓋(なんこうがい)や舌など、口の中にも発生することがあります。

初期症状として、耳の後ろに刺すような、うずくような痛みが発作的に出現することや、耳の聞こえが悪くなったり、耳鳴りがしたり、ふらつきやめまいなどの内耳障害が生じることもあります。

これらの症状は同時に、または時間をおいて次々に起こります。顔面神経まひと同じ側の目の涙の分泌低下、食べ物の味がよくわからない味覚障害、水分の少ない食品が飲み込めないなどの嚥下(えんげ)障害、音が割れるように聞こえたり、大きく響くように聞こえたりする聴覚過敏になることもあります。

このような典型的な症状は出現せず、耳の奥の痛みや耳の周辺の痛みしか出現しない場合もあります。

片側の耳に水膨れやかさぶたができ、片側の顔の動きが悪いことに気付いた時には、早期に耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医の診察を受けることが勧められます。

ラムゼー・ハント症候群の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、耳や口の中などの視診により帯状疱疹の有無を調べます。水膨れ中か唾液(だえき)中の水痘・帯状疱疹ウイルスのDNAを検出するのが最も確実な診断法で、中の抗水痘・帯状疱疹ウイルスIgM抗体価の上昇を確認するのも、診断の助けになります。

顔面神経まひがあれば、筋電図検査、神経興奮性検査を行って、まひの程度、顔面神経の障害部位を診断します。難聴、めまいがあれば、聴力検査、平衡機能検査、脳神経検査など通常の耳科的検査も実施し、他の脳神経に異常がないかどうかを調べます。

顔面神経まひが生じてしばらくしてから小さな水膨れが現れることがあり、初めはベルまひ(特発性顔面神経まひ)と診断されることもよくあります。時には、水痘・帯状疱疹ウイルスにより、小さな水膨れを伴わずに顔面神経まひが生じることもあり、症状からはベルまひと区別できないこともあります。この場合、血液検査によって水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化が生じていることが確認できます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因であることがはっきりすれば、アシクロビル製剤、バラシクロビル製剤などの抗ウイルス薬を注射します。発症から約3~4日以内に投与すれば回復が早いとされています。

これに加え、神経周辺の炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の注射か内服、ビタミンB12剤、代謝を活性化するATP剤、鎮痛薬の内服、病変部への軟こうの塗布(とふ)などを行うこともあります。

顔面神経まひには、顔面マッサージが行われます。まひが軽度であれば、1〜2カ月で完全に治ります。まひが高度で顔の片側が全く動かない場合、治癒率は50〜60パーセント程度とベルまひに比べて不良であり、6〜12カ月経過してもまひが残り、まぶたと口が一緒に動く病的共同運動、ひきつれなどの後遺症を残すケースも多くみられます。

顔面神経まひが治らず、発症者が希望した場合は、顔面神経減荷術という手術が行われ、まひが回復することもあります。

めまいは1〜2週間で改善しますが、難聴、耳鳴りなどの聴力の障害は完治しないこともあります。後遺症として、耳介や外耳道の水膨れが治った後も長期間にわたって、痛みが続く帯状疱疹後神経痛が起こることもあります。

なお、水痘・帯状疱疹ウイルスは体内の神経節に潜み、体力や抵抗力が低下した時に増殖し、発症する特徴があるので、再発を防ぐ上でも疲労、ストレス、睡眠不足を避け、免疫力を維持しておくことも大切です。

💅卵殻爪

爪の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態

卵殻爪(らんかくそう)とは、爪(つめ)の甲が薄く白くなり、爪の先端が内側に湾曲する状態。エッグシェルネイルとも呼ばれます。

卵の殻のような形になって、しばらくほうっておけば元の爪の甲の形に戻るというわけではありません。薄くなった爪の甲は、健康な爪の甲よりもずっともろくなるため、ちょっとしたことで爪の甲が割れやすくなります。

爪が割れやすい状態は、ほかの爪の疾患を引き起こします。卵殻爪がもとで、爪の甲が両側縁に向かって深く湾曲する巻き爪や陥入爪になるケースも珍しくありません。

卵殻爪の発生には、過剰なダイエットによる栄養不足が大きく関係しています。爪は健康のバロメータであり、栄養状態が現れやすい部位ですから、男性よりもダイエットに取り組んでいるケースが多い女性がかかりやすいといえるでしょう。また、内臓の疾患、神経障害、薬物が原因で、卵殻爪が発生することもあります。

卵殻爪は命にかかわる疾患ではないので、あまり気にしない人も多いようですが、正常な状態とはほど遠く、悪化して巻き爪や陥入爪になれば、治療もより困難になります。卵殻爪になったら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。爪が割れやすくなりますから、自己治療は危険です。

卵殻爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、卵殻爪を起こし得る外的物質や薬物、あるいは皮膚疾患、内臓の疾患、細菌感染、栄養不足などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、一般的には、爪の甲の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合もあります。

栄養不足が原因で卵殻爪を生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因で卵殻爪を生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、圧力がかかって爪が割れる原因になる、マニキュア、ネイルアート、小さい靴を履くなどを避けることです。

🥚卵管がん

女性の卵管に生じる、極めてまれながん

卵管がんとは、女性の卵管に生じるがん。卵管は、子宮の左右両端から伸びて、子宮と卵巣を結んでいる長さ約10センチの細い管です。

女性性器がんの中では最も発生頻度が低く、全体の1パーセント程度の発症率となっています。

出産経験のない女性、閉経前後の女性、不妊の女性に多いといわれていて、広範囲の年齢層に発生します。好初発年齢は主に50~60歳で、そのうち約半数が閉経後に発症します。

はっきりとした原因は、解明されていません。卵管がんはまず、卵管内腔(ないくう)の卵管上皮より発生し、内腔に乳頭状に発育します。早期より筋層にも浸潤します。初期がんの多くは、卵管の内腔が水腫(すいしゅ)状を呈します。組織学的には、大部分が腺(せん)がんであり、卵巣の上皮性卵巣がんの中の漿液(しょうえき)性腺がんに類似しています。

初期には、ほとんど無症状のまま経過します。進行すると、下腹部の痛み、不正出血、水のようなサラサラとした下り物が多量に出るなどがみられます。水様性の下り物は、水腫状になった卵管に漿液性の液体が貯留し、これが卵管平滑筋の収縮によって間欠的に子宮内腔、腟(ちつ)を通じて体外に排出されるものです。

そのほか、黄色い下り物が出たり、閉経後の女性では血が混じった下り物が出ることもあります。腹水がたまることによる腹部の膨らみもみられ、おなかの上からでも触れられるようになります。

卵管がんの検査と診断と治療

卵管は骨盤内にあって腹腔内に隠れている臓器なので、自覚症状が出るのが遅くなるため、卵巣がんと同じく卵管がんの早期発見は極めて困難です。卵管がんを少しでも早い段階で発見するためにも、定期的に婦人科、産婦人科で検診を受けることが大切になります。

医師による内診で、進行したがんでは卵管がはれているとか、しこりとして触れる場合もあります。その場合は超音波やCT、MRIで検査をして、腫瘍があるか否か調べます。くねくねとしたソーセージ状の腫瘍があり、その中に液体を貯留し充実部もあれば、卵管がんの可能性が高くなります。また、子宮腔内からの吸引細胞診が、発見の切っ掛けとなることもあります。

治療は、手術により両側の卵管と卵巣、そして子宮を全て摘出します。発見された時にはかなり進行していることが多く、非常に治りにくいため、手術後に抗がん剤による化学療法も行います。

がんが消化器やリンパ節に転移している場合は、その部分も手術によって切除し、抗がん剤による化学療法、放射線治療を行います。

☦乱視

角膜の球面の異常により物の形をはっきり見られない状態

乱視とは、遠くの物を見る時も、近くの物を見る時も、ともに視力が悪く、網膜上に1点として像を結ばない状態。がちゃ目とも呼ばれます。

水晶体が乱視の原因となっている場合もありますが、多くの場合は角膜が原因となっています。正常な人では、角膜は横方向も縦方向もほぼ同じカーブをしています。乱視の人では、カーブの度合いが、横方向と縦方向で異なります。このために、横方向と縦方向とで屈折力に差が生じ、網膜上にはっきりとした像を結ぶことができないのです。

生物の目は完全ではないため、万人が乱視の要素は持っています。軽い乱視では、視力障害が少ない場合もあります。ある程度以上の乱視では、遠方視、近方視ともに物が見にくかったり、片目で見ても物が二重、三重になるなど、ずれた像となることがあります。調節性の眼精疲労のため眼痛、頭痛を生じる場合もあります。その他、夜間に見えにくくなることもあります。

このような症状は、軽い乱視でも年齢が進むに従って現れてきます。乱視のために、特に低年齢で弱視を生じることもあります。

乱視には、不正乱視と正乱視の2種類があります。

不正乱視とは、角膜の表面が凸凹不整となっているもの。円柱レンズの眼鏡では矯正できません。角膜の外傷や、円錐(えんすい)角膜、翼状片などによる角膜の非対称的なゆがみ、加齢性変化による白内障などが原因となって生じます。まれに、水晶体の外傷による亜脱臼(あだっきゅう)、円錐水晶体などの水晶体疾患などが原因となります。

近年、不正乱視は高次収差とも呼ばれるようになり、波面センサーという機械を用いることで、その光学的特性などを分析することができるようになりつつあります。高次収差をその特性で大きく分けると、いわゆるピンぼけを生じる球面収差と、彗星(すいせい)の尾のように網膜に結像させるコマ収差の組み合わせともいえます。

一方、正乱視とは、角膜または水晶体が正しい球面ではなく、いびつな形をしているもの。円柱レンズの眼鏡で矯正できます。一般に乱視といえば、この正乱視のことを指します。

円柱レンズとは、円柱を軸に平行な平面で切り取ったものです。軸方向には屈折力がありませんが、軸と垂直方向に屈折面があるレンズで、凹と凸の円柱レンズがあります。その円柱レンズと球面レンズの組み合わせのパターンにより、近視性乱視、遠視性乱視、混合(雑性)乱視に分類されます。

別の分類方法として、屈折力が強い強主経線が垂直方向の直乱視、同じく強主経線が水平方向の倒乱視、強主経線が斜めの方向である斜乱視という3種類に分ける場合もあります。このうち、直乱視が正乱視の90パーセント程度を占めます。

さらに、強主経線の一方が正視つまり球面レンズでの矯正を必要としない単乱視、強主経線とそれに直交する屈折力が弱い弱主経線が、どちらも遠視もしくは近視である複乱視、強主経線が近視で、かつ弱主経線が遠視である混合(雑性)乱視という分類方法もあります。

乱視の検査と診断と治療

医師による視力検査では、放射状の線からなる乱視表を使います。乱視なら、ピントが合っていない方向の線ははっきり見えますが、ピントが合っている方向の線はぼやけて、あるいは二重に見えます。つまり、ピントの合う合わないと線がぼやけるぼやけないは、逆の関係にあります。

乱視の治療としては、眼鏡をかけたり、コンタクトレンズを使用したりします。しかし、不正乱視の場合は眼鏡で矯正するすることはできないので、コンタクトレンズを使用します。

角膜のゆがみによる正乱視は、円柱レンズまたはハードコンタクトレンズによる矯正が一般的に適しています。最近では、ソフトコンタクトレンズでもトーリックレンズと呼ばれる乱視矯正レンズも多種あるものの、矯正可能な乱視屈折度数が限られていて、まばたきなどでコンタクトレンズの軸ずれが生じ、きっちりと乱視を矯正することがハードコンタクトレンズに比べてやや難しい面があります。

水晶体が原因である正乱視は、コンタクトレンズでは矯正できません。また、特に子供では乱視による屈折異常弱視(経線弱視)が発生しやすいので、眼鏡処方を行うことはとても大切なこと。眼鏡が顔に対して位置ずれを生じると矯正効果が大きく変わるので、眼鏡の顔に対するフィッティングもしっかり行うことが大切です。

不正乱視の治療は、その原因が角膜の形状異常によるものであれば、第一選択としては、やはりハードコンタクトレンズが適しています。ただし、水晶体が原因である不正乱視は、水晶体が原因である正乱視と同じくコンタクトレンズによる治療では矯正できません。

現在、近視や乱視は、エキシマレーザーによる角膜のレーシック(屈折矯正手術)により、屈折度数には制限があるものの、矯正することがある程度可能になってきています。さらに、補償光学と呼ばれる方法で、不正乱視もある程度ならば治療可能になりつつあります。

ただし、このようなレーシックは、手術適応か否かなどを明確に診断できる眼科専門医の知識がなくては不可能です。簡便で安価な非眼科専門医の施設で手術を受け、とんでもないことになってしまったケースが、多く報告されています。レーシックを受ける場合は、まず眼科専門医に相談することが肝要です。

☪卵巣がん

女性の卵巣に発生する悪性の腫瘍

卵巣がんとは、卵巣に発生する腫瘍(しゅよう)のうち、悪性腫瘍の代表となる疾患。女性特有の疾患であり、命の危険もあります。

卵巣は、子宮の左右に一つずつある親指くらいの楕円(だえん)形の小さな臓器です。卵巣の中で卵子を成熟させ、放出するという働きがあり、周期的に卵胞ホルモンと黄体ホルモンという2種類のホルモンを分泌して女性の機能を調整しており、妊娠と出産のためにはなくてはならない臓器です。

この卵巣には、人体の臓器の中で最も多くの種類の腫瘍が発生します。腫瘍は大きく、良性群、中間群(境界悪性)、悪性群に分けられ、悪性の代表が卵巣がん。それらを正確に判断するためには、手術によって腫瘍を摘出し、顕微鏡で調べなければなりません。

年齢的には少女から高齢者まで幅広く、卵巣がんは発症しますが、40歳代から発症する人が増加し、50歳代から70歳代の女性に最も多く発症します。女性の70人に1人が発症していると見なされ、婦人科系のがんの中では2番目に発症率が高く、死亡率は1番目といわれています。食生活の欧米化に伴って年々少しずつ発症する人が増えており、特に50歳以降に発症すると死亡率は高くなっています。

死亡率が高い原因には、卵巣がんの早期発見が難しいという点が挙げられます。卵巣は、骨盤内にあって腹腔(ふくくう)内に隠れている臓器なので、自覚症状が出るのが遅くなります。医療機関での画像診断でも、ある程度の大きさにならないと診断することが難しい面があります。進行してがんがかなり大きくなったり、他の臓器への転移が起こって初めて、気付くというケースが多くみられます。

卵巣がんが小さい時は、症状は何もありません。がんが大きくなってくると、下腹部にしこりを感じたり、圧迫感により尿が近くなるといった症状が現れてきます。胃が圧迫されることによる食欲不振や、下腹部の消化不良のような不快感、腰痛や吐き気、疲労感、不正性器出血などといった症状も現れてきます。

さらに進行すると、卵巣が腫大して腹水がたまり、妊娠時のように腹が膨らんできます。そうなると、貧血や体重の減少などもみられるようになってきます。

人体の臓器の中でもとても小さな卵巣ですが、そこにできるがんにはさまざまなものがあります。卵巣の中にある表層上皮、胚(はい)細胞(卵細胞)、性ホルモンを分泌する性索間質などすべての細胞から、さまざまながんが発生します。

その発生する細胞から、上皮性卵巣がん、胚細胞性卵巣がん、性索間質性卵巣がんの3つに大きく分けられ、さらに組織学的に細かく分類されています。

卵巣がんのうち、90パーセント以上を占めるのが表皮上皮から発生する上皮性卵巣がんで、40歳代から60歳代の女性に多くみられます。上皮性卵巣がんの中でも組織学的な分類でみると、漿液性腺(しょうえきせいせん)がん、粘液性腺がん、類内膜腺がん、明細胞腺がんが多くみられます。粘液性腺がんの場合は、若年層でも発症することがあります。

また、卵子を生じる細胞から発症する胚細胞性卵巣がんの場合は、30歳未満の比較的年齢の低い女性に多くみられるものの、発症頻度は非常に少ないとされています。性ホルモンを分泌する性索間質卵巣がんのうち、顆粒(かりゅう)膜細胞腫という中間群に分類される腫瘍は、10歳代という若年層に発症します。

他の臓器へ最も転移しやすいのは、腹膜播種(はしゅ)と呼ばれるもので、卵巣から横隔膜にも転移し、そこから胸腔内に広がることがあります。このように卵巣がんが転移した場合、腹水のために腹が大きく張ったり、胸水による息切れがみられるなどの症状が現れます。逆に、胃がんや大腸がんなどの他の臓器のがんの転移によって、卵巣がんが発症したというケースもみられます。

卵巣がんの治療は、その卵巣がんの種類によって異なってきます。適切な治療を行うためにも、自分の卵巣がんの種類を把握することは大切なことです。

卵巣がんの検査と診断と治療

何らかの自覚症状が現れてから医療機関で検査を受けると、その時点ですでに進行が進み転移が起きている場合が多くあります。卵巣がんを少しでも早い段階で発見するためにも、定期的に婦人科、産婦人科で検診を受けることが大切になります。

卵巣がんは子宮がん検診のように細胞をとって検査することはできないため、エコー検査による検診が行われています。エコー検査によって卵巣に腫瘍が認められた場合や、下腹部の圧迫感やしこりなどといった症状を感じている場合は、CTやMRIなどの画像検査により卵巣がんやそれに伴う転移、腫瘍の性質や進行度などといった詳しい状態を検査していきます。

卵巣にできる腫瘍には良性と悪性があるので、腫瘍マーカーによる検査が行われ良性、悪性の判断が行われます。

しかし、腫瘍マーカーは初期や低年齢の女性の場合は陰性のことが多いため、正確に判断するためには手術によって組織を摘出し、病理組織検査によって調べる必要があります。

従って、種々の検査で、卵巣の直径が5センチ以上となっている場合は、原則的に手術が行われ、摘出物の病理組織検査で、その後の治療方法が決まります。

手術中の肉眼的な所見で、腫瘍が良性か悪性かはおおよそわかりますが、どちらかはっきりしない場合は、手術中の迅速病理組織疹の結果で、子宮まで摘出するか否か決定されます。

がんが卵巣内にとどまっている場合は、がんのできている卵巣と卵管だけを切除するだけでよいこともあります。がんが卵巣外にも及んでいる場合は、両側の卵巣と卵管、子宮、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄いである大網(だいもう)、リンパ節などを広範に摘出しなければなりません。大網は最も卵巣がんが転移しやすい部位とされ、早期がんの場合でも切除することがあります。

がんが卵巣外に広く散らばっている場合には、手術の後、抗がん剤による強力な化学療法が必要となります。抗がん剤はがんの種類によってかなり有効で、残ったがんが縮小したり、消失することもあります。この場合は、もう一度手術を行い、残った腫瘍を完全に摘出したり、化学療法を中止する時期を決定します。

なお、卵巣がんは乳がん同様に家族性腫瘍とみられ、家族の中に子宮がんや乳がん、大腸がんの人がいる場合は、リスク因子が高くなっています。また、出産歴がない場合や第1子を高齢で出産した場合、初潮を早く迎えた場合、閉経が遅い場合なども、リスク因子として挙げられています。生活習慣からみるリスク因子には、喫煙、食事での動物性脂肪の多量摂取、肥満などがあります。

☮卵巣腫瘍

卵巣の片側または両側に、はれが生じた状態

卵巣腫瘍(しゅよう)とは、子宮の左右両側に一つずつある卵巣に、はれが生じた状態。多くは卵巣の片側に発生しますが、両側に発生することもあります。

通常は直径2〜3cm程度の大きさの卵巣は、妊娠、受精に必要な卵胞を抱えている臓器で、女性ホルモンを産生しているため、腫瘍ができやすい臓器です。また、体内の臓器の中で、最も多種類の腫瘍ができる臓器でもあります。

卵巣腫瘍は大きく分けて、内容が液状で弾力性のある、あるいは軟らかい嚢腫(のうしゅ)と、内容が固形である充実性腫瘍の2つがあります。また、卵巣腫瘍は臨床経過に応じて、良性群、中間群(境界悪性)、悪性群に大きく分けられます。悪性群の代表は、卵巣がんです。

嚢腫は、中に水のようなものがたまって、ぶよぶよしています。ほとんどの場合良性ですが、中には悪性のものや、悪性に変化するものがあるので注意が必要です。充実性腫瘍は、約75〜80パーセントが悪性もしくは境界悪性です。嚢腫と充実性腫瘍が混じったものもあります。そのほか、ホルモンを作り出す腫瘍もあります。

卵巣そのものは親指の頭くらいですが、腫瘍ができると徐々に大きくなり、時には数キログラムにもなります。

卵巣腫瘍の原因は、卵巣内で分泌される液が自然にたまって嚢胞になるとか、子宮内膜症による場合とか、双胎(二子)の場合、あるいは排卵誘発剤によって起こる卵巣の腫大などのほかは、はっきりしません。

しかし、 卵巣は生殖細胞である卵子が存在する場所なので、胎生期よりさまざまな種類の組織が紛れ込んでいて、それが発育するとも考えられます。従って、卵巣腫瘍には大変多くの種類が存在します。

卵巣の良性腫瘍は一般的に、ホルモンを作り出すものを除いて、全身症状は乏しいものが多いようです。症状は腫瘍の大小に関係があり、小さなものでは無症状のものが多く、かなり大きくなってきて初めて、腹部の膨隆、あるいは腹部に腫瘤を触れるようになってきます。また、時には下腹部に圧迫感、強い痛みを感じることもあります。

多くは特別な場合を除いて、いろいろな異常を感じ、医師を訪れた際に偶然に発見されることがしばしばです。

腫瘍が茎を持って大きくなる場合には、時として何らかの原因で捻転(ねんてん)を起こすことがあります。このような場合には、激しい痛み、吐き気、嘔吐(おうと)などの強い症状を現したり、種類によっては腹水、胸水を伴うこともあり、そのための全身症状を現します。

そのほか、ホルモンを作り出す腫瘍では、作り出されたホルモンにより、いろいろな異常が引き起こされたりします。

卵巣腫瘍の検査と診断と治療

卵巣腫瘍がほかの婦人科腫瘍と異なるところは、特徴的な初発症状が乏しいことです。早期発見が完全な治療を受けるためには必要なのですが、なかなか症状が出にくく、大量の腹水がたまってから、慌てて婦人科を受診するケースが少なくありません。

従って、何らかの下腹部痛、不正出血、下り物の増加、腹部膨満感など、ふだんとは異なる症状を感じた場合には、この卵巣腫瘍を常に念頭に入れ、早期に婦人科を受診して適切な検査を受けることが重要です。特に、下腹部に膨満感があり、ウエストのサイズが大きくなった場合は、ただ太っただけなどとすまさずに、必ず婦人科を受診するようにします。

卵巣腫瘍の診断に最も有用なのは、経腟(けいちつ)超音波検査で、腟の中に超音波プローブという細い管を挿入して卵巣を観察します。この検査は、下腹部を表面から超音波で観察する経腹超音波検査に比べ、卵巣を近いところから詳しく観察できるため、小さな腫瘍を早期に発見するためには不可欠な検査です。

ただし、卵巣腫瘍でも直径が15cmを超えるほど巨大なものでは、経腹超音波検査のほうが有用なこともあります。また、画像診断として、卵巣腫瘍の種類を特定するためにはCTやMRI検査が有効です。

卵巣腫瘍が良性か悪性かを判断する一つの目安として、腫瘍マーカーが用いられています。腫瘍マーカーは初期や低年齢の女性の場合は陰性のことが多いため、正確に良性か悪性かを判断するためには、手術によって摘出し、顕微鏡で腫瘍細胞を調べる病理検査を行います。

治療としては、良性の腫瘍で、若い女性の場合には、腫瘤(しゅりゅう)だけを取る切除術を行い、健康な部分を残すように心掛けます。もし、両側に発生しても、少なくとも片側の健康な部分を残すように努めます。

このような保存的療法を行うことによって、卵巣の機能は保たれ、妊娠の可能性も残ることになります。

また、卵巣摘除をする場合も、できるだけ卵管は残すように心掛けます。ただし、腫瘍が卵管に接したり、癒着がひどく、卵管にも病変が認められるような場合には、卵巣とともに卵管の摘出も行われます。

時として、がんのような悪性の経過をたどるものがありますが、がんが卵巣内にとどまっている場合は、がんのできている卵巣と卵管だけを切除するだけでよいこともあります。がんが卵巣外にも及んでいる場合は、両側の卵巣と卵管、子宮、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄いである大網(だいもう)、リンパ節などを広範に摘出しなければなりません。

大網は最も卵巣がんが転移しやすい部位とされ、早期がんの場合でも切除することがあります。卵巣をすべて摘出してしまうと、女性ホルモンの分泌がなくなるので、ホルモンのバランスが崩れて、自律神経のバランスも崩れ、更年期障害のような症状が現れます。

がんが卵巣外に広く散らばっている場合には、手術の後、抗がん剤による強力な化学療法が必要となります。抗がん剤はがんの種類によってかなり有効で、残ったがんが縮小したり、消失することもあります。この場合は、もう一度手術を行い、残った腫瘍を完全に摘出したり、化学療法を中止する時期を決定します。

☦卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)

卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、はれが生じた状態

卵巣嚢腫(のうしゅ)とは、卵子や女性ホルモンを作っている卵巣に液体成分の入った袋のようなものができ、卵巣の一部にはれが生じた状態。嚢胞性腫瘍(しゅよう)とも呼ばれます。

この卵巣嚢腫の多くは、子宮の左右両側に一つずつある卵巣の片側に発生しますが、両側に発生することもあります。通常は直径2〜3cm程度の大きさの卵巣は、妊娠、受精に必要な卵胞を抱えている臓器で、女性ホルモンを作っているため、多種類の腫瘍ができやすい臓器です。

卵巣嚢腫にはいろいろなタイプがあり、大きさもピンポン玉大の小さなものからグレープフルーツ大以上のものまでさまざまです。ほとんどの卵巣嚢腫は小さなもので、症状もありません。かなり大きくなってきて初めて、腹部の膨隆、あるいは腹部に腫瘤(しゅりゅう)を触れるようになってきます。また、時には下腹部に圧迫感、強い痛みを感じることもあります。

しかしながら、ほとんどの卵巣嚢腫は良性で、がんに代表される悪性腫瘍ではありません。ごくまれに、悪性の卵巣がんであることがあり、嚢腫が茎を持って大きくなる場合には、時として何らかの原因で捻転(ねんてん)を起こすことがあります。このような場合には、激しい痛み、吐き気、嘔吐(おうと)などの強い症状を現したり、種類によっては腹水、胸水を伴うこともあり、そのための全身症状を現します。

そのために、卵巣嚢腫が見付かった場合には、まず悪いものではないかどうか、治療が必要なものであるかどうかなどをチェックする必要があります。

卵巣嚢腫の主なタイプとして、機能性嚢腫、単純性嚢腫、皮様嚢腫、子宮内膜症性嚢腫があります。

機能性嚢腫は、一時的に排卵日ごろにはれて、自然に消えてなくなるもの。女性なら誰でも、排卵日ごろには卵子を入れる袋である卵胞が大きくなり、卵胞が破裂して卵子が飛び出すことによって、排卵が起こります。まれに、卵胞が大きくなっても卵子が飛び出さず、排卵が起こらないことがあります。大きくなった卵胞がしばらく残っている状態が、この機能性嚢腫です。普通、次の月経のころには小さくなります。消失が遅れる場合でも、1〜3カ月以内には消えてなくなります。

単純性嚢腫は、若い女性に非常によくみられる良性のもの。丸い袋のように見える腫瘍で、内部には隔壁や腫瘍の固まりが全くなく、液体成分だけです。直径5~6cmくらいまでの小さなもので症状がなければ、経過観察をするだけでもかまいません。ただし、この単純性嚢腫のようにみえても非常にまれに悪性部分が隠れている場合があるので、定期的な検査は必要です。

皮様嚢腫は、20〜30歳代によくみられ、内部に皮脂、毛髪、歯、軟骨などを含んだ良性のもの。小さいものなら無症状ですが、大きくなると下腹部痛や不快感などが生じます。普通は次第に大きくなるので、経過観察をしたとしても最終的に手術が必要になることが多い腫瘍です。左右の卵巣にできたり、再発することがよくあり、一部ががん化することもあるので、手術しない場合でも定期的な検診は必要です。

子宮内膜症性嚢腫は、子宮内膜症が原因で卵巣にできるもの。子宮内膜症というのは、子宮の内膜が子宮の内側以外の部分にできる疾患。卵巣に子宮内膜症ができると、月経のたびに卵巣の中でも出血が起こります。そのために、卵巣の中にドロドロの茶褐色の血液がたまるので、別名チョコレート嚢腫(嚢胞)とも呼ばれています。月経は毎月起こるので、チョコレート嚢腫も少しずつ大きくなります。大きくなった嚢腫によって下腹部痛、特に性交時の下腹部痛や月経時の下腹部痛が起こります。

卵巣嚢腫の検査と診断と治療

卵巣嚢腫(嚢胞性腫瘍)がほかの婦人科腫瘍と異なるところは、特徴的な初発症状が乏しいことです。早期発見が完全な治療を受けるためには必要なのですが、なかなか症状が出にくく、大量の腹水がたまってから、慌てて婦人科を受診するケースが少なくありません。

従って、何らかの下腹部痛、不正出血、下り物の増加、腹部膨満感など、ふだんとは異なる症状を感じた場合には、この卵巣嚢腫を念頭に入れ、早期に婦人科を受診して適切な検査を受けることが必要です。

卵巣嚢腫は、産婦人科の通常検査である内診や超音波検査などによって見付かります。詳しく超音波検査をすることによって、腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、腫瘍内部が水だけなのか固まり部分があるのか、腫瘍の中が壁で区切られているのか、腫瘍の中に血液や毛髪、軟骨などが入っていそうかどうかなど、かなりのことがわかります。

少しでも悪性腫瘍の疑いがある場合には、血液をとってCA125などいくつかの腫瘍マーカーの値を測定します。ただし、卵巣がんの種類によっては、腫瘍マーカーが高くならないことがあります。逆に、卵巣がんでなくても、CA125などが高くなることもあります。

内診や超音波検査、血液検査だけでは良性か悪性かの判定が難しい場合、さらにCTやMRI検査を行います。実際には、超音波検査で判定が困難な場合は詳しい検査をしても区別が付かないことが多いので、ある程度の大きさがあって全く良性腫瘍とはいい切れない場合には、手術療法を行います。

卵巣嚢腫が良性と判断される場合は、一般的に、腹腔(ふくくう)鏡を使って腫瘍部分だけを取り去ることができます。全身麻酔をして、へその下あるいは上に非常に小さな皮膚切開をし、腹の中を観察するための内視鏡カメラを挿入します。1cm以下の切開をさらに数カ所追加して、そこから遠隔操作ができる手術機械を挿入して手術を行います。腹腔鏡を使って手術をした場合には、術後の腹部の傷はほとんど目立ちません。

腹腔鏡手術が困難なタイプの卵巣嚢腫、あるいは悪性が疑われる場合は、通常の開腹による手術を行います。

一般的に、卵巣嚢腫の手術は、婦人科の手術の中でもかなり簡単な部類に入ります。ただし、子宮内膜症性嚢腫に限っては、その後の妊娠に対する影響がありますので、慎重に対応する必要があります。

ごくまれに、がんのような悪性の経過をたどるものがありますが、がんが卵巣内にとどまっている場合は、がんのできている卵巣と卵管だけを切除するだけでよいこともあります。がんが卵巣外にも及んでいる場合は、両側の卵巣と卵管、子宮、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄いである大網(だいもう)、リンパ節などを広範に摘出しなければなりません。

大網は最も卵巣がんが転移しやすい部位とされ、早期がんの場合でも切除することがあります。卵巣をすべて摘出してしまうと、女性ホルモンの分泌がなくなるので、ホルモンのバランスが崩れて、自律神経のバランスも崩れ、更年期障害のような症状が現れます。

がんが卵巣外に広く散らばっている場合には、手術の後、抗がん剤による強力な化学療法が必要となります。抗がん剤はがんの種類によってかなり有効で、残ったがんが縮小したり、消失することもあります。この場合は、もう一度手術を行い、残った腫瘍を完全に摘出したり、化学療法を中止する時期を決定します。

2022/07/13

☪卵巣の形態異常(ターナー症候群)

性染色体の異常によって、卵巣組織が認められない疾患

卵巣の形態異常とは、多くは性染色体の異常によって、卵巣の発育異常が生じる先天的な疾患。これらはターナー症候群と呼ばれます。

この疾患では、卵巣は索状痕跡(こんせき)様、すなわち、ひも状で、卵巣組織が認められません。卵巣から分泌されるはずの女性ホルモンが欠如するため、第二次性徴が発来せず、月経や乳房の発育がみられません。ただ、症状には個人差が大きく、中学生になっても性の発達がみられない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れて、初潮が来る女性もいます。

そのほかに、ターナー症候群では身長が低い短躯(たんく)、鎖骨から首の外側にかけての皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)などの特有な症状がみられます。知能は概して正常です。

中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期以降に起こることがあります。

ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、二次性徴は女性ホルモン剤の使用で治療が可能で、低身長も成長ホルモン治療で改善します。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

卵巣の形態異常の検査と診断と治療

早期発見、早期治療が重要です。本人と家族に、卵巣の形態異常をもたらすターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が得られますので、低身長の女児では積極的に染色体検査を受けます。

背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。

染色体検査でターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能ですので、卵巣ホルモンや黄体ホルモンの補充は、最終身長を考慮して時期が決められます。

成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。

なお、ターナー症候群の女性は糖尿病になりやすいので、肥満に注意します。染色体にY染色体の成分が確認された際には、性腺腫瘍(しゅよう)を発症する危険性があるため、性腺摘除を行います。

🏃ランナー黒爪

ランニングにより足指の爪床が傷付くことで内出血を起こし、爪下に血液がたまった状態

ランナー黒爪(くろづめ)とは、ランニングによる持続的な圧迫がかかることにより、足指の爪床が傷付くことで内出血を起こし、爪(つめ)と皮膚の間に血液がたまった状態。爪下血腫(そうかけっしゅ)、爪下出血とも呼ばれます。

特にマラソンなどの長距離ランナーに好発するほかに、サッカー、バスケットボールなどを行う人にも起こります。シューズで足指を踏み付けられるなどの1回の外的な衝撃で起こることもあり、日常生活で足指に重い物を落としたり、足指を段差にぶつけるなどの1回の外的な衝撃で起こることもあります。

一般には、ランナー黒爪は、ランニング中に足指の爪に接触するシューズの先から持続的な圧迫がかかることが主な原因となって起こります。そのほか、過剰なランニング時間と距離、ランニング中の急激なスピードの変化、クッションの悪いシューズや擦り減ったシューズの使用、不整地や硬い路面や下り坂でのランニング、ランニングフォームの崩れなど、さまざまな要因が加味されて起こります。

両足の親指、人差し指、中指などの爪にランナー黒爪を起こした場合、すぐに爪の甲の一部分または全体が黒く変色します。爪の甲の色が変化するのは、爪の奥で内出血が起こり、爪と皮膚の間に血液がたまるためです。つまり、ランナー黒爪は、打撲による内出血によって皮膚にできる青あざのようなものです。

たまった血液により爪の下の内圧が上がるため、ズキズキする強い痛みを生じます。また、爪の根元の部分がたまった血液ではれ、爪がグラグラすることがあります。

時間が経つにつれて、爪の黒い部分は消えていきます。また、爪が伸びるに従って、黒い部分が移動するケースもあります。

痛みのない場合に放置しておくと、たまった血液によって爪の甲が爪床から離れているため、血腫が小さくない限り、通常は数週間で変色した爪がはがれ落ちます。爪の下の爪床に変形がなければ、元の爪の下に根元から新しい爪が作られ、指先まで伸び切れば古い爪に置き換わります。

ただし、成人の足指の爪は0・05ミリしか伸びないため、爪が置き換わるには半年から1年と長い期間がかかります。

ランナー黒爪が軽く、痛みがなければ、治療をせずに放置していてもかまいません。ランナー黒爪が重く、痛みがある場合、爪の根元の1/3に血液がたまっている場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし整形外科、形成外科で治療してもらうことが勧められます。

爪床に重度の損傷が生じたり、爪の根元の1/3に血液がたまって爪母の状態が悪くなると、新しく作られる爪が変形したまま、元の形に戻らない場合がよくあるからです。このリスクを減らすためには、早期に血腫を抜いて爪を圧迫、固定しておくか、爪を除去して爪床の損傷をすぐに修復する必要があります。

ランナー黒爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし整形外科、形成外科の医師による診断では、症状や問診でランナー黒爪と判断できます。爪のはれや痛みが強い時は、X線(レントゲン)検査で骨折の有無を確認します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし整形外科、形成外科の医師による治療では、骨折があれば、骨折の治療を優先します。

爪に対しては、痛みを和らげ、黒爪の範囲が広がらないようにする目的で、消毒した注射針や熱したクリップの先などでゆっくりと爪に小さな穴を開けて、たまった血液を外に出します。これで痛みは緩和されます。

爪には痛みを感じる細胞がないので、爪に穴を開ける際に痛みは伴いません。爪に穴を開けた後は、不潔にならないように数日間、血液を吸収する素材を使用したガーゼで覆い、薄く伸縮性があるテープで圧迫しておきます。

痛みがひどい時には、爪とその下の皮膚に少し圧力をかけただけでも痛みが伴うので、麻酔を使用してから爪に穴を開けます。

長距離走やサッカーなどで、足指に持続的な圧迫がかかることにより黒爪になった場合は、なるべく走ることを控えるようにしてもらいます。軽度の黒爪の場合でも、さらに足や爪を酷使し続けると症状が悪化してしまうからです。

走ることによる黒爪を防ぐためには、クッションの効いた指先に圧力がかからないシューズを選び、足に負担をかけないように気を付けることです。また、シューズのひもをしっかり結ぶ、ストレスがかかる部分にパッドなどの緩衝剤を入れる、足指にテープを巻いたりワセリンを塗る、5本指の靴下を履くこともお勧めで、足指を清潔に保ち、足裏から見て爪先が出ないように爪を切ることも必要です。

🏃‍♀ランナー膝

ランニングなどによって膝関節周辺の腸脛靱帯が炎症を起こす状態

ランナー膝(ひざ)とは、不整地や下り坂でのランニングなどにより、膝関節周辺の腸脛靱帯(ちょうけいじんたい)に炎症が生じる状態。腸脛靱帯炎とも呼ばれます。

腸脛靱帯は、股(こ)関節の外側から膝の外側に通って脛骨外側に付着している長い靱帯であり、股関節を外転したり、太腿(ふともも)を持ち上げたり、下腿(かたい)を外旋する働きを持っています。膝の屈伸運動を繰り返すことによって、この腸脛靱帯が大腿骨外顆(がいか)と接触して、摩擦を繰り返すために炎症を起こし、疼痛(とうつう)が発生するのが、ランナー膝です。

特にマラソンなどの長距離ランナーに好発するほかに、バスケットボール、水泳、自転車、スキー、エアロビクス、バレエなどを行う人にも起こります。

一般には、オーバーユース(使いすぎ)が主な原因となって発生するといわれています。そのほか、過剰なランニング時間と距離、ランニング中の急激なスピードの変化、ウォームアップ不足による柔軟性不足、筋力低下、内反膝(O脚)や回内足による腸脛靭帯の緊張、クッションの悪いシューズや擦り減ったシューズの使用、不整地、硬い路面、下り坂でのランニングなど、さまざまな要因が加味されて発生します。

症状としては、膝の外側に緊張、違和感を感じ、その症状が徐々に灼熱(しゃくねつ)感に変わり、大腿骨外顆周辺に限って疼痛が生じます。腸脛靱帯は明らかに緊張が増し、時に靱帯に沿って疼痛が放散します。初期はランニング後に疼痛が発生し、休むと消失します。しかし、ランニングを続けていると次第に疼痛は増強して、簡単に消失しなくなってきます。

ひどくなると歩く際にも疼痛が生じ、特に階段を下りる時に増します。重症な場合、痛み部分の摩擦を軽減するために、膝を伸ばしたままで歩行するようになります。

2週間以内に症状の改善がみられない場合は、整形外科、スポーツ整形外科の医師、またはスポーツトレーナーに相談して下さい。

ランナー膝の検査と診断と治療

整形外科、スポーツ整形外科の医師による診断では、症状や問診でランナー膝(腸脛靱帯炎)と確定できます。疼痛が誘発されるグラスピングテストも有用で、膝を90度屈曲して大腿骨外顆部で腸脛靱帯を押さえてから膝を伸展していくと、痛くなります。外側半月板損傷との鑑別が必要となり、MRI検査を行うこともあります。

整形外科、スポーツ整形外科の医師による治療は、手術をしない保存療法が原則です。第1に患部の安静、つまり、ランニングの休止が大切です。次に、患部のアイシング(冷却)を徹底します。さらに、消炎鎮痛剤の内服や、貼付(ちょうふ)剤の使用、超音波・低周波・マイクロ波などの電気刺激療法、針治療、マッサージを行うこともあります。

難治な症例では、手術をすることもありますが、一般的ではありません。

いったん症状が出現すると、簡単には疼痛が消失しないので、初期の適切な安静、休養はとりわけ大切となります。痛みを無理に抑えて練習を続けるよりも、完全に休養して患部の安静を図って炎症の回復を待つほうが、痛みが少なくなる期間が短縮される可能性が高くなります。マラソン本番が近く、どうしても出場したい場合には、患部に局所麻酔剤を注射して痛みを和らげる方法もありますが、決して勧めることができるものではありません。

予防法としては、ランニング前後に股関節外側部を主としたストレッチ、アイシングを念入りにすることが大切です。ストレッチでは、腸脛靱帯の付着部のみではなく、臀部(でんぶ)や太腿、下腿の筋肉までゆっくりと伸ばすことです。

シューズのかかとの減り具合をチェックし、極端に内側や外側が減っている場合には、足底板などのインソールやテーピングも必要です。再発を繰り返す場合や内反膝(O脚)の強い場合は、腸脛靭帯に負担がかからないように、足底板をインソールしてシューズの外側を高くします。シューズは、クッションのよいものを選びます。

ランニングフォームを矯正して、ランニング中の着地時につま先が内側を向かないようにすることも大切です。ランニングコースの検討も必要で、硬い路面の走行をなるべく避け、傾斜のある路面の走りすぎも避けることです。

その点で、側道を決まった方向(側)で走行しないことも必要で、側道は水はけのため道路中央よりも低くなっているため、道路端の腸脛靱帯に負担がかかるためです。また、トラック競技場を決まった方向(側)で走行しないことも必要で、トラック競技場は反時計回りのため、右足外側に遠心力がかかり腸脛靱帯が引っ張られるためです。同一側の膝の負担を軽くする目的で、たまには普段と反対回りのトラック走行なども取り入れて下さい。

スポーツ整形外科の医師に治療を含めたアドバイスを受けたり、スポーツトレーナーにランニングメニュー作成やストレッチなどの相談をしたり、シューズアドバイザーにウオーミングアップ用や本番に使用するシューズ選びを相談したりするのも有用です。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...