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2022/07/13

☮リール黒皮症

化粧品などが原因で顔に色素沈着が生じる皮膚障害

リール黒皮症とは、化粧品などが原因になることによって、顔に色素沈着を生じる皮膚障害。男性に生じるケースもありますが、大部分は20~50歳の女性にみられます。

顔では、ほおを中心に耳前部、額、まぶたなどに、紫褐色から黒褐色の網状、斑(まだら)状、またはびまん性の境界のはっきりしない色素沈着を生じます。時には、首や前腕に生じることもあります。

多くの場合には、色素沈着の前に、顔のかゆみ、あるいは赤みなどがあって、その後、半月から数カ月以内に色素沈着に気付きます。色素沈着ができた後も、かゆみ、赤みが残っている場合もあります。

原因が不明のこともありますが、大部分はもともと素因のある人に、化粧品皮膚炎などの湿疹(しっしん)のような炎症反応が繰り返し起こった結果、表皮の基底部が破壊され、基底部にあるメラニン色素が真皮内に入るために生じると考えられています。

かつて、化粧品に含まれるタール系の色素や香料が原因の化粧品皮膚炎が多かった時期に、このリール黒皮症も増加しました。化粧品メーカーがこれらの色素や香料を化粧品から除外してから、リール黒皮症が急激に減少したことからも、化粧品皮膚炎と関連の深いことがわかります。近年は、化粧品の品質向上によってあまりみられなくなっています。

しかし、リール黒皮症と似たような症状のものに、入浴の時にナイロンタオルなどで皮膚をこすりすぎて、色素沈着するものがあります。若い女性を中心に、胸、背中、腕など下の骨が出っ張っていて、皮下脂肪の少ない部分に生じるのが特徴です。

ナイロンタオルは木綿のタオルより繊維が強いため、皮膚に加わる刺激が強すぎるのが原因と見なされますので、使用をやめれば自然に治ります。

リール黒皮症の検査と診断と治療

大部分は顔面の湿疹様病変の結果生じるため、原因と思われる外来性物質を除くことが重要です。病院で、パッチテストなどを受けて、原因物質を見付けます。

リール黒皮症そのものに対する特効治療法は、現在のところありません。多くの場合は、皮膚炎の症状が合併しているので、赤みがあったり、かゆみを伴う急性期には、副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤の外用、抗ヒスタミン剤やビタミンCの内服などを行います。炎症症状が取れれば、色素沈着は消えるはずです。

生活上の注意としては、急性期では皮膚のバリア機能が壊れていますので、化粧は一切しないように。マッサージなどの摩擦を避け、日光にもなるべく当たらないほうが安全です。

急性期をすぎた後は、低刺激性のせっけんや、敏感肌用の化粧品を、徐々に使っていくようにします。

☦リウマチ

広義では、関節ならびに関節の周囲の骨、筋肉など、体を支え動かす器官が炎症を起こして痛む病気全般を指します。具体的には、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、変形性関節炎、痛風などが相当します。

これらの病気はまとめて、リウマチ性疾患と呼ばれています。

☪リウマチ性多発筋痛症

首、肩、腰の筋肉痛やこわばりが起こる疾患

リウマチ性多発筋痛症とは、首、肩、腰の筋肉痛やこわばりが起こる慢性炎症性の疾患。50歳以上、特に60歳の中高年の人に多くみられ、やや女性に多いと見なされています。

原因は不明で、前兆になるような感染症などは特に知られていません。

筋肉症状、全身症状、関節症状の3つが、主な症状です。体の中心に近い部分の筋肉の痛みやこわばりから始まり、微熱、全身のだるさ、食欲不振、体重減少などの全身症状と、関節の痛みを伴います。これらの症状が急速に出現して、2週間ほどの短期間に病勢はピークに達します。

筋肉のこわばりは、関節リウマチのように朝起きてすぐが最も強く、体を動かすうちに和らいできます。筋肉痛は首、肩周囲、腰部、臀(でん)部、大腿(だいたい)部にみられ、押さえたり、運動してもそれほど変わらないのが特徴です。また、筋肉には赤みやはれなどはなく、筋力が弱くなったと感じることもありません。関節症状は、主として痛みが肩、膝(ひざ)、手首の関節やその周囲に見られ、関節そのものがはれたりすることはほとんどありません。

20〜30パーセント前後の発症者では、側頭動脈炎(巨細胞性動脈炎)という膠原(こうげん)病疾患を合併し、ズキンズキンとした拍動性頭痛と圧痛を一方のこめかみに生じ、視力障害をみることもあります。

症状は、急に始まることが多いのですが、治療しないとそのまま続くため、数カ月にわたって徐々に進んだようにみえることもあります。

リウマチ性多発筋痛症の検査と診断と治療

リウマチ性多発筋痛症は正しく診断されればコントロールが可能なので、この疾患が疑われたら、なるべく早くリウマチ専門医の診察を受けることが大切となります。

この疾患の診断を確定する特有な検査はありませんが、体の炎症症状を示す赤沈検査や血清CRP濃度が高値となるほか、軽い赤血球数の減少と、白血球数および血小板数の増加がみられます。一方、筋痛があるにもかかわらず、多発性筋炎にみられるような筋肉由来の血清酵素の増加はみられません。また、リウマトイド因子や抗核抗体などの免疫異常は、通常認められません。

検査所見のほか、筋肉症状、全身症状、関節症状など、それぞれの特徴を組み合わせて診断されます。なお、側頭動脈炎を合併する場合は、血管造影検査や組織を一部取る生検(病理検査)が必要なことがあります。

治療には、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が有効です。筋肉痛には、非ステロイド性消炎鎮痛剤も効果的です。治療開始後1〜2週間以内に症状が改善し始めるケースも多く、改善が得られたら、少しずつ薬剤を減量します。一定の減量が得られた後も、1年以上のステロイド治療が必要なケースが多く、副作用である骨粗鬆(こつそしょう)症の対策が必須になります。ステロイド療法の効き目が悪いケースでは、時に免疫抑制剤が使われることもあります。

☮リウマチ様関節炎

手足を始めとする全身の関節に慢性的な炎症を生じる全身性疾患

リウマチ様関節炎とは、手足を始めとする全身の関節に激しい痛みや腫(は)れを起こす疾患。慢性関節リウマチとも、単に関節リウマチとも呼ばれます。

医学の発展した現在でも原因は不明のため、完治することは難しく、進行すると関節が変形して日常生活にも支障を来すことがあります。さらに、心臓や消化器などで血管炎を起こしたり、心筋梗塞(こうそく)や重い肺炎を引き起こすような悪性関節リウマチへ進展することもあります。

リウマチ様関節炎は厚生労働省の「特定疾患治療研究事業対象疾患」、いわゆる原因が不明で治療法が確立されていない難病に指定されており、医療費の自己負担分について公的な補助を受けることができます。

リウマチ様関節炎は毎年、約1万5000人が発症し、現在の日本で約70万人の患者がいるといわれています。男女比は女性が男性の4倍以上と、女性に多い疾患です。

発病する年齢の傾向は30~50歳の働き盛りの年代であるため、症状が重い場合は日常生活に支障を来すなど、発症者にとって精神的にも、経済的にも大きな負担となっています。

前述したように、リウマチ様関節炎の原因は現在も解明されていませんが、本来は自分の体を守るべき免疫機能に異常が起こり、誤って自分の体を攻撃してしまうことから起こると考えられています。免疫機能に異常を起こす要因としては、リウマチ様関節炎になりやすい体質(遺伝的な素因)であることや、ウイルスや細菌の感染の関与が考えられています。

リウマチ様関節炎は、関節の滑膜という組織に炎症が起こり慢性化していく疾患で、まず初めに手足の指や手首に痛みと腫れが起こることが典型的な症状とされています。慢性化して進行すると、四肢の大きな関節が腫れてくるようになります。

関節の痛みや腫れは、初めに1、2個所の関節が同時に腫れ、左右の同じ場所が腫れることも特徴的です。

腫れている部分は、滑膜の炎症が起こっているために関節液の分泌が増え、水がたまったような状態になります。その部分は軟らかく、強く圧迫すると痛みがあります。タオルを絞ったりしても痛く、時には何の動作もしていないのに激しい痛みを感じることもあります。

また、体を動かし始める際にこわばりが強く、動かしにくく感じられます。特に朝起きた際によくみられるので「朝のこわばり」と呼ばれています。曲げ伸ばしをしているとこわばりは解消されますが、炎症が重い時には、こわばりが一日中続くこともあります。

関節の痛みや腫れは放置しておくと次第に炎症が重くなり、関節軟骨の破壊から骨の破壊まで進み、関節の脱臼(だっきゅう)などによって関節の変形が始まります。そうなると、痛みが激しく曲げ伸ばしも不自由になるため、筋肉を縮めたり伸ばしたりする働きも衰えて、よりいっそう関節が動かなくなって変形の度合いが強くなります。

関節の変形にはリウマチ様関節炎特有のものが、いくつかあります。手指の付け根から小指側に曲がる尺側偏位(しゃくそくへんい)、白鳥の首のように曲がるスワンネック変形、親指がヒッチハイクをする時に合図する指の形に曲がるヒッチハイカー変形などです。

足の関節でも同様の変形が起こります。歩く時に体重を支えクッションの役目をしている土踏まずのアーチがつぶれたり、歩行困難になる重大な変形もみられます。

リウマチ様関節炎は関節で起こるだけでなく、全身的な症状が現れる場合もあります。脱力感、疲れやすさ、体重減少、貧血などが代表的です。また、リウマチ結節といって皮膚の下にすぐ骨があるような、こぶ状の塊が肘(ひじ)関節の外側や後頭部などにできることもあります。

重症の場合には、血管の壁に炎症が起こる血管炎によって皮膚潰瘍(かいよう)、神経炎などがみられます。

リウマチ様関節炎の検査と診断と治療

内科、膠原(こうげん)病(リウマチ)内科、整形外科の医師によるリウマチ様関節炎(慢性関節リウマチ)の検査の主なものには、リウマトイド因子(RF)、血沈、CRP(C-反応性たんぱく)、MRI(核磁気共鳴撮像法)があります。

リウマトイド因子(RF)は、体の防御反応として作られた免疫グロブリンに対する自己抗体で、血清中のリウマトイド因子の有無を調べます。リウマチ様関節炎の患者で陽性を示すのは約80パーセントですが、肝硬変でも約50パーセントが陽性を示すといわれており、必ずしも陽性だからといってリウマチ様関節炎とはいえないので注意が必要とされています。

また、赤血球の沈降速度を測ることで、炎症の強さを調べます。通常は1時間に10mm以下ですが、リウマチ様関節炎の場合40~100mmの異常値を示します。さらに、血清中にたんぱく質の一種が増えているかを測定することで、炎症の度合いを調べます。陽性で増えている場合はリウマチ様関節炎が疑われます。初期の関節の異常を発見するには、MRIによる画像診断が有効です。

リウマチ様関節炎の診断基準として、アメリカリウマチ協会(ARA)(現・アメリカリウマチ学会(ACR))の「ACR改訂診断基準」が用いられています。

1)1時間以上続く朝のこわばり(主に手指)、2)3個所以上の関節の腫れ、3)手の関節(手関節、中手指節関節、近位指節関節)の腫れ、4)対称性の関節(左右同じ関節)の腫れ、5)手のエックス線写真の異常所見、6)皮下結節、7)血液検査でリウマチ反応が陽性

上記の1)から7)のうち、4項目以上を満たせば、リウマチ様関節炎と診断されます。ただし、1)から4)までは、6週間以上持続することが必要。

この診断基準や検査の結果、問診、全身症状の観察などからリウマチ様関節炎を診断します。また、進行度を表す基準については、アメリカのスタインブロッカーによる「進行度の病気分類」と「日常動作における機能分類」があります。

原因がまだ解明されていないリウマチ様関節炎は、完治させるための治療は難しく、現在は症状を軽減したり、進行を防ぐことに重点が置かれています。特に関節の痛みや腫れを放置することは、関節の変形を引き起こすことにもなるので、早期にしっかりと治療することが大切です。

原因が不明の疾患ですが、恐れずに前向きに付き合うことが肝心です。わずかな変化を見逃さないことが進行を防ぎ、症状の軽減にもつながります。関節の痛みや腫れがひどく、炎症の激しい時に体を動かすことは、炎症を助長させることになります。炎症が激しい時には安静が第一です。

痛みや腫れがひどくなく、炎症も治まっている時には、運動機能訓練を行います。筋肉は使わないと筋力がどんどん低下し、日常生活を不自由なく過ごすことが難しくなることもあります。プールでの水中運動訓練を始め、無理のない運動で筋力を高めます。

疾患への理解、安静と運動と同時に、医師の側では、関節の痛みや炎症を抑えるために非ステロイド性抗炎症薬や副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤などを用います。その他、抗リウマチ薬で炎症を抑えます。また、抗リウマチ薬が効かない場合は、免疫抑制薬を用いる場合があります。

滑膜の炎症が激しい場合には、滑膜切除術が行われ、関節の骨が破壊されてしまった場合には人工関節置換術などが行われます。

関節の痛みを和らげ、筋肉の緊張をとるための温熱療法、関節の動かせる範囲をゆっくりと十分に伸ばし、筋力を強化する関節可動域体操と筋力強化や、関節の変形予防、すでに変形していても残った機能を支えるための補助具などがあります。

☦梨状筋症候群

臀部から下肢に痛みとしびれが生じる疾患

梨状筋(りじょうきん)症候群とは、臀部(でんぶ)から、膝(ひざ)の後ろ側のくぼんだ部分や、ふくらはぎなどの下肢に痛みとしびれが生じる疾患。原因がわからず見逃されやすい疾患です。

梨状筋は股(こ)関節の後方に付いている筋肉であり、臀筋群のさらに奥に走っている深層筋に相当し、ちょうど骨盤から出てくる坐骨(ざこつ)神経の真上を走っています。

この梨状筋によって坐骨神経が圧迫を受けて、梨状筋症候群が発症します。特に臀部、つまり尻(しり)の奥からピリピリとした痛みが慢性的に続くことから、ゆっくりと症状が現れ始めることが多いようです。その後、太股(ふともも)、膝の後ろ側のくぼみ、ふくらはぎと、下肢に向かって症状が広がるという傾向があります。筋力低下や感梨状筋による坐骨神経の圧迫は本来少ないのですが、股関節の屈伸運動が頻繁になされるランニングや、股関節を急激にねじるような動作を行うスポーツを切っ掛けに、梨状筋により坐骨神経が摩擦、圧迫されて発症することが多いようです。また、臀部の打撲、車の運転などで長時間同じ姿勢をとっている慢性の圧迫刺激により、発症することもあります。

まれに坐骨神経のすべてが梨状筋を貫通している場合、坐骨神経が枝分かれして一方が梨状筋を貫通している場合、また枝分かれした坐骨神経により梨状筋が挟まれている場合があります。この3パターンの場合、梨状筋が緊張することで坐骨神経を圧迫し、症状が出ることもあります。

女性に多い疾患であり、女性のほうが男性よりも筋肉が弱く、腱(けん)と骨をつなぐ腱鞘(けんしょう)の間に起こる腱鞘炎を起こしやすい体質を有しているためと考えられています。

痛み、しびれなどの症状を伴うことから、腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアと独自に判断する人が多く、また腰椎椎間板ヘルニアの治療を行っても一向に改善されず、検査してみたら梨状筋症候群であったということも多いようです。

梨状筋症候群の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、臀部から下肢にかけての痛みとしびれ、モアレ写真などの光学的検査、関節や筋肉の状態などの運動分析法などにより、梨状筋による座骨神経圧迫なのかを判断します。

しかし、原因がわからず見逃されやすい疾患であり、CT、MRIなどの画像診断で梨状筋がはれて大きくなっている場合には異常と診断されますが、そうでない場合には坐骨神経そのものが圧迫されているかどうかを診断するのは難しい場合があります。ほかの腰椎疾患などを除外して、梨状筋症候群の診断にたどり着くことが多いのが現状です。

臀部から下肢にかけて坐骨神経の経路に沿って痛みやしびれがあるため、腰椎椎間板ヘルニアとの鑑別が必要となります。

整形外科の医師による治療は、保存療法と手術療法があります。保存療法では、臀部の保温、安静を行うようにし、硬い椅子に座るなどの臀部への機械的刺激を避けるようにします。ある特定の動作で症状が誘発される場合は、その動作を避けるようにします。また、鎮痛剤による痛みの緩和を行い、痛みがひどい時には梨状筋部への神経ブロック注射が効果的な場合もあります。

筋肉の緊張と硬直により痛みが出るので、温熱療法、電気治療、筋肉の緊張をほぐす筋弛緩(しかん)剤などが効果的な場合もあります。そのほか、梨状筋のストレッチや運動療法が効果的である場合もあります。これは梨状筋の緊張を緩和し、股関節運動で坐骨神経の動きをよくすることによるものです。

坐骨神経が梨状筋を貫通している人で、保存療法で症状の改善がみられない場合には、梨状筋を切断し坐骨神経を正常な位置に戻す手術療法を行うこともあります。

整形外科で梨状筋症候群と診断され、保存療法でも症状が改善されない場合には、整体やカイロプラクティックなどよるマッサージやストレッチを受けてみるのもよいでしょう。梨状筋および大臀筋など臀部周辺の筋肉をほぐすことで、症状の緩和が期待できます。覚障害は、あまり起こりません。

梨状筋症候群を発症すると、座った姿勢から立ち上がろうとした場合や、かかとを地に着けたままで足の先だけを外側に回すように股関節から脚全体を動かした場合、横座りで体重を痛めた側にかけた場合、背中を後ろに反らせるような動作をした場合に、痛みが増強します。歩行時にはあまり痛みがないことが多く、腰痛はありません。

☪離人症性障害

外の世界や自分自身に対する現実感が薄れる症状が強く出てくる神経症性障害

離人症性障害とは、自分の外の世界や自分自身に対する現実感が薄れる離人症の症状が前面に、強く出てくる神経症性障害。離人神経症とも呼ばれます。

離人症性障害の症状としては、離人症と現実感消失が中心となります。離人症は、自分が自分から離れて外部の観察者となったように感じることです。自分の行動を離れた所から自分が観察するという感覚がしばしば起こり、これは自分の体から自分が抜け出す体外離脱体験として感じられることもあります。

現実感消失は、自分を取り巻く外の世界や自分自身に対する現実感が薄れ、大きく分けて3つの意識が変化することです。1つは自分の外の世界に対する意識の変化で、「自分の周囲の世界が生き生きと感じられない」、「自分と外の世界との間にベールがあるようで実感がない」などと感じます。

2つめは、自分の内界の意識の変化で、「喜怒哀楽の感情がなくなって、何を見ても感動しない」、「自分が自分でないような感じがする」、「自分が存在する実感がない」、「自分が見知らぬ人間であるように感じる」、「自分が生きている感じがしない」などと感じます。

3つめは、自分の身体意識の変化で、「自分の手足が自分のものではないような感じがする」、「鏡で自分の顔を見ても、自分のものという実感がない」、「自分の体が死体やロボットのように感じる」、「自分の体が大きく、あるいは小さく感じる」 などと感じます。

離人症状しかない示さない離人症性障害の場合もありますが、軽い生理的な離人症の症状というものは、疲労の極限状態、見知らぬ土地への旅行、宗教的瞑想(めいそう)などによって、正常な状態でも出現することがあります。そして、精神発達過程の青年期では70パーセント以上の人に離人症が出現するといわれ、必ずしも病的な現象ではありません。

一方、離人症も現実感消失も、いくつかの精神的な疾患や脳の疾患に関連して出現することもあります。例えば、パニック障害、統合失調症、境界性人格障害、強迫神経症、薬物乱用、てんかんなどに認められます。

従って、離人症性障害は、発症者の著しい苦痛を引き起こしている場合や、日常生活や社会生活に障害を引き起こしている場合に適用されます。

生理的な離人症の出現には、男女差はないといわれています。病的な離人症の出現は、少なくとも男性より女性に2倍以上多いといわれています。離人症性障害の発症の平均年齢は16歳で、40歳以上に出現することはほとんどありません。

離人症性障害についてはあまり研究が行われていないため、その原因や発症率は今のところ不明です。

事故、暴行、重大な疾患、けがなど、生命を脅かす危険な事態を経験した後にしばしば起こり、強烈な精神的葛藤(かっとう)、強度の不安、欲求不満、急激な感情変動、持続的な感情緊張などが、発症の誘因として挙げられます。

症状の始まりは通常突然であり、睡眠からの覚醒途中で起こることもあります。症状は一過性のこともあれば、何年間にもわたって継続したり、あるいは休止期を挟んで繰り返し生じる場合もあります。症状が消える時は、数日かかって徐々に消える傾向があります。

中には自分の障害に適応し、その影響を押しとどめることができる人もいます。一方、自分の精神状態についての不安に絶えず苦しめられ、正気を失うのではないかと心配し、自分の体についてのゆがんだ認識や、自分自身と周囲からの現実感の消失について思い悩む人もいます。精神的苦悩が高じたために、何もできなくなる場合もあります。症状の持続や再発に悩む発症者には、自傷行為、自殺行為がしばしば随伴します。

一過性のものは軽微で、心配ありません。症状が気になる時は、続いている期間などにかかわりなく、精神科、神経科、心療内科を受診しましょう。他の障害が原因となっていることもあります。

離人症性障害の検査と診断と治療

精神科、神経科、心療内科の医師による診断は、主に症状に基づいて行われます。まず各種の検査を行って、体の異常、薬物の乱用、ほかの精神的な疾患がないかどうかを確認します。心理検査や特殊な面接法を行うこともあります。

精神科、神経科、心療内科の医師による治療は、本人の苦痛を伴っている場合や、症状が持続したり再発して日常生活や社会生活に支障を来している場合に行います。

支持的精神療法や認知行動療法などの精神療法、催眠療法が、効果を示すこともあります。抗うつ剤や抗不安剤も、有効な場合があります。

離人症性障害は、ほかの精神的な疾患に伴って生じたり、ほかの精神的な疾患が引き金となって起こる場合も多く、このような場合も治療が必要です。何らかのストレスが発症にかかわっている場合には、その対処も必要となります。

治療により、通常はある程度の効果が得られます。多くの人が完全に回復し、特に発症に関連するストレスの要因が治療中に突き止められた場合には、ほぼ確実に回復します。

治療を行ってもあまり効果がみられない人もいますが、やがて自然に快方へ向かう場合もあります。どんな治療でも効果がみられず、症状が慢性化し、その程度もあまり変化しない人も存在します。

☦離断性骨軟骨炎

関節軟骨の下にある軟骨下骨が壊死し、関節軟骨の一部とともに関節内にはがれ落ちる疾患

離断性骨軟骨炎とは、関節軟骨の下にある軟骨下骨が壊死(えし)を起こし、その部分の骨が表面の関節軟骨の一部とともに、関節の中にはがれ落ちる疾患。多くの場合、剪断(せんだん)型骨端症と見なされています。

>軟骨下骨が壊死を起こす原因には、かかりやすい素質と外傷が考えられます。関節の運動によって、はさみ切る力である剪断力が働くと、壊死部は離断されて関節遊離体(関節ねずみ)になります。遊離体の数は1個ないし数個で、多数のことはありません。

発生部位は膝(しつ)関節、肘(ちゅう)関節に多く、股(こ)関節、足(そく)関節にもみられます。骨と関節軟骨の結合がまだ不完全な思春期ごろの男子に多く、しばしば両側性にみられます。

膝関節にみられる離断性骨軟骨炎は、大腿骨顆間窩(だいたいこつかかんか)の内側顆に面する関節面に好発します。10~20歳のスポーツをする男子に多く、関節面間での衝突や繰り返される外力によって、軟骨下骨の損傷と壊死が生じ、骨軟骨片が離断すると考えられます。

初期の症状は、軽い膝関節痛や腫(は)れを自覚する程度で、安静にしていると痛みは落ち着きます。しかし、夜に痛みが出ることも少なくありません。壊死が進行すると、階段の昇降や走ることが困難になります。病巣が離断して遊離体になり、この骨軟骨片が関節内を動き回って関節軟骨の間に挟まると、激痛が生じます。歩行の時にも痛みを感じるようになり、膝の曲げ伸ばしができなくなったり、関節水症なども起こります。

肘関節にみられる離断性骨軟骨炎では、壊死の大部分が上腕骨小頭の軟骨下骨に生じ、大きさは直径1cm程度です。13~17歳の男子によくみられ、特に野球の投手に多くみられるため、野球肘(ひじ)とも呼ばれます。症状は、膝関節の場合とほぼ同様です。

整形外科の医師による離断性骨軟骨炎の診断は、症状とX線所見によります。詳しい情報を得るためには、X線断層撮影やMRI、CT、骨シンチグラフィなどを行います。

膝関節にみられる離断性骨軟骨炎の治療は、年齢と進行の程度によって異なります。10歳前後の骨の成長期に当たる骨端線閉鎖以前で、骨軟骨片が動いていない初期から中期では、ギプスで膝を固定して松葉杖(づえ)を使い、体重による負荷をかけないようにする免荷療法を長期間行います。

関節鏡を使っての骨穿孔(せんこう)術(ドリリング)も有用で、骨軟骨片への血流改善が期待できます。病巣が進行すれば、自分の骨で作った釘(くぎ)や骨に変わる人工のピンなどで、骨軟骨片を固定する骨釘(こってい)固定術という手術を行います。

すでに離断して長期間たってしまった場合は、骨軟骨片の固定は困難で、骨軟骨片を手術で摘出します。最近は骨軟骨移植が行われるようになり、手術成績も向上しています。

肘関節にみられる離断性骨軟骨炎の治療は、発症早期には肘の安静を保つ保存療法を行います。進行すると、手術が必要になります。

⚾リトルリーグ肩

少年期の野球のピッチャーに最も多くみられる肩の障害

リトルリーグ肩とは、少年期の野球のピッチャーに最も多くみられる肩の障害の総称。リトルリーガーズショルダーと呼ばれます。

特に、満9歳から12歳までの少年少女たちを対象とした野球組織であるリトルリーグに所属していたりする、小学生高学年から中学生の野球のピッチャーなどが、利き腕を後方に引き上げてから力を入れて前方に振り下ろす動作を繰り返すことで、肩を酷使して発症することが多くみられます。バレーボールやバドミントンの選手が発症することもあります。

15歳未満の成長期では、骨や関節、筋肉がまだ未発達なため、繰り返すボールの投球動作などでストレスを繰り返し受けることによって、利き腕の上腕骨上端部の成長軟骨に障害が起こり、肩の痛みを発生します。

まず、上腕骨骨頭の成長軟骨である骨端(こったん)線に損傷が起こり、投球動作をした時や肩周辺を押した際に痛みを感じます。放置したまま投球動作を続けると、骨端線が離開して骨折のような状態になることがあります。

初めは、投球動作をした時だけの痛みであることが多く、肩の付け根の前方に鈍い痛みがあって速いボールを投げることができなくなります。そのほかの日常動作ではほとんど痛みが出ないのですが、損傷や離開が進行していくと日常の動作でも痛みを訴えるようになります。痛みの範囲は、肩関節を中心に肩甲骨や鎖骨周囲、上腕外側にみられ、前腕に至る場合もあります。

肩にだるさを感じ、腕が上がらないこともあります。発症初期はみられませんが、症状が進行するとともに、肩周囲の筋肉の委縮を起こす場合があります。

骨端線は骨を成長させる重要な部分なため、治療せずに放置すると上腕骨の成長障害を起こすことがあり、腕の長さが短くなったり、肩の動きが悪くなったりすることがあります。

リトルリーグ肩の症状としては、まず一球の投球動作で急に痛みが出ることは少ないので、徐々に痛みがある時は要注意です。

リトルリーグ肩の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、上腕の内旋運動と外旋運動を強制して関節の動きを調べ、上腕上端部の成長軟骨に沿って圧痛がある場合に、リトルリーグ肩を疑います。

X線(レントゲン)検査を行い、成長軟骨やその隣接する骨に損傷がみられれば骨端線損傷、いわゆるひびや骨折状態であれば、完全な離断がなくても骨端線離開と確定します。

整形外科の医師による治療では、安静が基本となります。従って、投球動作の禁止を指示した上で、除痛や消炎目的で消炎鎮痛剤を処方したり、三角巾による固定を行います。また、転位のある骨端線離開では、整復処置とギプス固定などを行う場合もあります。

固定後約3週間が経過したら、自動運動による運動療法を開始します。骨端線の修復が完成されるのに要する期間は、その損傷の程度により3カ月から6カ月と見なされています。

修復の完成後にキャッチボールを許可し、完全復帰までは早くても6カ月、場合によっては1年以上を要することもあります。また、スポーツに復帰する場合には、再発防止のために投球フォームなどのスポーツ動作のチェックや指導を行い改善していくことがあります。

🏏リトルリーグ肘

少年期の野球のピッチャーに多く、肘の酷使によって発生する疾患

リトルリーグ肘(ひじ)とは、小児期の野球のピッチャーなどが肘を酷使すると発生し、肘の外側にある上腕骨小頭の骨軟骨が壊死(えし)する疾患。少年野球肘、野球肘、上腕骨小頭離断性骨軟骨炎、上腕骨小頭骨軟骨障害、肘離断性骨軟骨炎、離断性骨軟骨炎とも呼ばれます。

特に、満9歳から12歳までの少年少女たちを対象とした野球組織であるリトルリーグに所属していたりする、小学校高学年から中学校低学年の野球のピッチャー、あるいはキャッチャーなどが肘を酷使して発症することが多く、外側(がいそく)型野球肘の代表的なものに相当します。

小学校高学年から中学校低学年では、骨と関節軟骨の結合がまだ不完全なため、繰り返すボールの投球動作における微小な外反ストレスの蓄積により、利き腕の上腕骨小頭の骨軟骨、すなわち肘関節を形成する上腕骨の遠位端の外側部にある球状の部位に変性、壊死が生じます。

症状として、肘関節を伸ばしたり、曲げたりする時に痛みが出たり、動きが悪くなったりします。この初期の段階では、投球動作を中止することのみで、自然治癒が促されることがあります。

実際は、練習や試合での投球動作の終了後は速やかに痛みが消失するために、単なる使いすぎによる痛みと勘違いされることが多く見受けられます。

放置して投球動作を続けると症状が進行し、壊死を起こした骨軟骨片が肘の関節面から遊離して関節内遊離体となり、関節の中をあちらこちらと移動することになります。

この関節遊離体に最も特有な症状が、嵌頓(かんとん)症状。肘関節の運動の最中に、突然、遊離体が関節の透き間に挟まってしまい、激しい痛みを起こして関節の運動が不能となる状態です。何かの拍子に遊離体が外れれば、急速に痛みは治まりますが、嵌頓症状を繰り返していると、滑膜炎と呼ばれる関節内の炎症や変形性関節症を起こしやすくなります。しかし、遊離体があっても、嵌頓症状が必す起こるわけでもありません。

そのほか、関節遊離体の症状として、関節の痛みや、だるさ、はれを感じたり、肘の曲げ伸ばしができなくなったり、関節に水がたまったりすることもあります。

リトルリーグ肘が進行してしまうと、投球動作にかかわるスポーツが十分できなくなるどころか、遊離したことで生じた上腕骨小頭の骨軟骨の欠損は成人期以降も肘の変形性関節症を発症し、痛みが出たり、動きが悪くなったりする後遺障害を残しやすくなります。

早期発見、早期治療を行う必要がある典型的な疾患が、リトルリーグ肘です。野球少年が投球時に肘の痛みを訴える場合は、早めに整形外科を受診することが勧められます。

リトルリーグ肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、問診をしたり、関節の動きを調べ、上腕骨小頭部の圧痛がある場合にリトルリーグ肘を疑います。

確定診断は、X線(レントゲン)検査により行います。病巣は、初期には骨の陰が薄くなった状態として、進行すると病巣部の骨軟骨片が上腕骨小頭から分離、遊離した状態として撮影されます。しかし、初期には病変を認識することが難しいこともあります。また、正面と側面からの肘関節2方向撮影法、肘関節を45度屈曲した位置で正面像を撮影する撮影法が有用です。

そのほか、CT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査は、骨軟骨がはがれやすい状態であるかどうか確認するなど病態を調べるのに有効です。

整形外科の医師による治療では、初期の場合、局所安静、投球禁止により病巣の修復、治癒が期待できます。しかし、実際には6カ月から1年間、場合によっては1年以上の長期にわたり投球動作を禁止することもあり、投球の再開により再発するケースもあります。

従って、初期の場合であっても長期の投球禁止を望まないケースや、再発例では、手術を行うこともあります。

進行した場合では、再び投球を可能にし、将来的な障害を残さないために、手術を行うことになります。具体的な手術法としては、壊死した骨軟骨を切除し関節遊離体を取り除く方法を基本として、遊離しかけた骨軟骨片を再固定し、病巣部に新たな骨ができることを促す方法、遊離した骨軟骨片の再固定が困難な場合に、欠損した肘の関節面に体の他の部位から骨軟骨を移植し、関節面を形成する方法などがあります。

手術後のリハビリテーション、投球再開の時期は病期、手術法により異なりますが、おおむね6カ月程度で全力投球が可能になります。

リトルリーグ肘の発生の予防には、基本的には肘関節の使いすぎによるところが大きいため、練習日数と時間、投球数の制限が重要です。また、投球フォームにより肘に負担がかかりすぎるケースも多くあり、適切な筋力トレーニングと投球フォームの指導、正しいスケジュール決定も必要です。

🦶リベドー

下肢の皮膚に赤紫色の網目状や樹枝状の模様がみられる状態

リベドーとは、赤紫色の網目状もしくは樹枝状の模様の皮疹(ひしん)が主に下肢の皮膚にみられる状態。

温風ヒーターや赤外線電気こたつなど比較的低温の温熱刺激が長時間、あるいは繰り返し皮膚表面に作用することで、紫紅色の網目状あるいは斑(まだら)状の色素沈着が下肢に生じる温熱性紅斑(火だこ)とは、一応区別されるものとされています。

皮膚の末梢(まっしょう)循環障害による症状の一つで、冬季の寒冷刺激やさまざまな基礎疾患によって血液の流れが悪くなり、酸素含有量の少ない血液がたまることで、毛細血管の拡張や皮膚の赤紫色の網目状もしくは樹枝状の変化が起こります。

リベドーは、大理石様皮膚、網状皮斑(もうじょうひはん)、樹枝状皮斑の3つのタイプに分類されます。

大理石様皮膚は、冬季の寒冷刺激によって一過性に小児や若い女性に生じ、輪が閉じた網目模様をつくります。寒冷刺激によって血液の流れが悪くなり、酸素含有量の少ない血液がうっ滞することで、網状構造が保たれます。

網状皮斑と樹枝状皮斑は持続性で、原因になる基礎疾患がある症候性のものが多く認められます。

網状皮斑は、大理石様皮膚と樹枝状皮斑の中間と考えられるタイプで、冬季の寒冷刺激とは関係なく網状構造は完全に閉鎖され、大理石様皮膚より皮疹が持続的です。とはいえ、夏になって気温が上昇すると、網目状の皮疹が消失することもあります。

樹枝状皮斑は、網状構造が完全に閉鎖しておらず、所々で途切れて樹枝状の構造をしています。

網状皮斑と樹枝状皮斑は、毛細血管や小静脈などの拡張、血液のうっ滞だけでなく、いろいろな基礎疾患が原因となって、小動脈に炎症が生じた状態です。症状が進行すれば、血管の器質的変化にも至り、上部皮膚の炎症や潰瘍(かいよう)になることもあります。

網状皮斑と樹枝状皮斑を引き起こす基礎疾患としては、血管炎や慢性関節リウマチなどの膠原(こうげん)病、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、多発性骨髄腫(しゅ)、プロテインC欠損症、アンチトロンビンⅢ欠損症、播種(はしゅ)性血管内凝固症候群(DIC)などが挙げられます。

そのほかにも、膠原病の一つの全身性エリテマトーデス、皮膚筋炎、多発性硬化症やパーキンソン病などの神経疾患、結核やC型肝炎などの感染症、薬剤も原因となり得ます。

冷気や冷水などの寒冷刺激によって悪化する傾向があり、逆に温めることで症状が緩和することもあります。見た目の変化に加えて、しびれや感覚まひといった感覚障害が現れるケースもあります。

リベドーのいずれのタイプにしても、症状を生じる人は、元来血管系が不安定と考えられ、ちょっとした打撲や擦過で内出血を起こす可能性があります。原因を正確に判断し、適切な治療につなげるためにも、単なる皮膚症状と自己判断するのではなく、皮膚科専門医の診察を受けることが勧められます。

リベドーの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、皮膚の見た目を詳細に調べます。また、網状皮斑と樹枝状皮斑を引き起こす原因となっている基礎疾患の有無を調べることも、重要です。

状況をより詳細に評価するために、皮膚の一部を採取して顕微鏡で確認する病理検査を行うこともあります。

原因となっている基礎疾患を特定し、皮膚以外にも症状が現れていないかどうかを確認するため、血液検査、尿検査、X線(レントゲン)検査など、必要に応じて検査を追加することもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、原因になる基礎疾患がないリベドーだけの場合は、下肢の保温、マッサージ、弾性包帯や弾性ストッキングの着用しなど、うっ血の防止を主体に改善を図ります。

リベドーでは寒冷刺激を避けることが重要で、外に出る際だけではなく、冷房の使用や冷蔵庫を開けるなどちょっとした日常動作に関連して皮膚症状が悪化する可能性があるため、注意を払うことが大切です。

症候性のものは、原因となっている基礎疾患の根本的な治療を第一にして改善を図ります。例えば、膠原病が原因となっている場合には、膠原病の治療が検討されます。

2022/07/12

☦隆起型びらん性胃炎

びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面に多数の隆起が現れる疾患

隆起型びらん性胃炎とは、びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面が隆起して、中心部にびらんと呼ばれるただれた状態を浅く認める疾患。いぼ状胃炎、ゆう状胃炎、たこいぼ胃炎とも呼ばれます。

多数の隆起が現れることが多く、胃の出口近くの幽門前庭部に主として生じるほか、胃底腺(せん)、幽門腺境界領域にも生じます。

隆起の形状から、足の裏にできるたこ、いぼのような形を示すたこいぼ型、棍棒(こんぼう)型、ポリープ型(球型)、蛇行型(数珠型)に分類されます。

また、胃の粘膜表面の隆起が低めで3カ月以内の短期間に消える消失型と、隆起が高めで長期間にわたって消えない存続型とがあります。消失型をびらん性胃炎と呼び、存続型のみを隆起型びらん性胃炎と呼ぶ場合もあります。

原因としては、アルコールの摂取などの食習慣、胃酸の過分泌、ストレスなどが考えられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が原因となることは、まれです。

症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。

胃・十二指腸潰瘍(かいよう)を合併することもあります。

隆起型びらん性胃炎の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査を行い、多発性で隆起性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、隆起型びらん性胃炎と確定します。場合によっては、内視鏡観察下でびらんの一部を採取して、顕微鏡で組織を調べる生検を行います。

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、無症状であれば経過観察となります。

症状が強ければ、アルコールといった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。

なお、存続型の隆起型びらん性胃炎では長期間その変化が見られないことが多く、ケースによっては良性有茎性ポリープへ病変することもあります。

胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、生活習慣の改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。

食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。

十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。

運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。

👁流行性角結膜炎

流行性角結膜炎とは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルスによって、主に引き起こされる急性の結膜炎です。上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている結膜の炎症に加えて、黒目の部分を覆っている角膜に炎症を起こすため、角結膜炎と呼ばれます。別名は、はやり目。

非常に感染力が強く、しばしば集団発生することがあります。学校伝染病の一つに指定されており、感染者は伝染の恐れがなくなるまで登校禁止となります。1歳から5歳を中心とする小児に多く発症しますが、成人も含め幅広い年齢層で認められます。

以前は、プールで移る夏の病気として知られ、大きな流行があった1980年代から90年代までは、6月中旬から下旬にかけて増え始め、7月下旬から8月下旬をピークとした季節性が見られました。近年では、かつてのような明確な季節性は見られず、一年中、感染者が出るようになっています。

感染してから1~2週間で発症し、結膜の充血や、上下のまぶたの裏側を覆っている眼瞼(がんけん)結膜に細かいブツブツができて、目がゴロゴロするような異物感が生じます。目やにも多くなります。

10日~2週間程度で、症状は治まります。時には、黒目の角膜に斑点(はんてん)ができることもありますが、だいたい2週間前後で消失します。

医師による治療では、結膜炎の段階での有効な薬剤がないため、対症療法的に抗炎症剤の点眼を行い、細菌による混合感染を防ぐために抗菌剤の点眼を行います。さらに、角膜炎の症状が認められる際は、ステロイド剤の点眼を行います。

この流行性角結膜炎は感染力が強いため、早めに治療を行い、周囲の人に感染させないように注意しましょう。特に、新生児や乳幼児では、細菌の混合感染で角膜穿孔(せんこう)を起こすことがあるので、注意が必要です。

感染を予防するには、感染者本人は手をよく洗い、手で目をこすったり、顔に触れたりしないことです。周囲の人も手洗いをしっかりと行い、感染者のタオルを共有しないなど、清潔にするよう心掛けましょう。

👹流行性耳下腺炎(おたふく風邪)

耳下腺が腫れる合併症の多い感染症

流行性耳下腺(じかせん)炎とは、ムンプスウイルスによる急性ウイルス感染症で、耳の前から下にかけての腫(は)れを特徴とします。しっかり腫れると、おたふくのお面のように、下膨れします。おたふく風邪、ウイルスの名前をとってムンプスとも呼ばれます。

感染者の唾液(だえき)から、飛沫(ひまつ)感染します。流行に周期性はなく、季節性も明確ではありませんが、春先から夏にかけて比較的多く発生します。かかりやすい年齢は1~9歳、とりわけ3~4歳。感染しても発病しない不顕性感染が、30~40パーセントの乳幼児、学童にみられます。

耳の下の唾液腺の一種である耳下腺が腫れることで知られますが、ムンプスウイルスは、体中を回って、ほかのいくつかの臓器にも症状を起こします。

突然、37~38℃の発熱が1~2日続いた後に、耳の下に痛みを訴え、片側の耳下腺が腫れてきます。子供は口を開けたり、触ったりすると痛がります。発熱せず、最初から耳下腺が腫れてくるケースもあります。

一般的に、1~3日して、もう片方の耳下腺が腫れてきますが、4人に1人は片方の耳下腺しか腫れません。腫れは3日めぐらいがもっともひどく、その後、徐々にひいて、5~7日で消えていきます。

発熱がある間は、水分を十分に与え、静かに過ごさせましょう。耳下腺の腫れたところは、冷湿布などで冷やして痛みを和らげます。食事は流動食、ないし軟らかい物とし、刺激物は避けましょう。特に酸っぱい物や香辛料は、耳下腺からの唾液の分泌を増加させ、痛みが強くなります。

一度下がった熱が再発し、腹痛、嘔吐(おうと)、頭痛、精巣の腫れなどを生じた場合、無菌性髄膜炎、膵(すい)炎、精巣炎などの合併症が起きた可能性がありますので、医療機関を受診しましょう。

ムンプスウイルスに効く薬はありませんが、精巣炎を起こしていれば副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬を使ったり、頭痛や耳下腺の痛みに対して鎮痛薬を使うことがあります。

流行性耳下腺炎は合併症の多い感染症ですから、全身状態がよくても安静、保温、栄養など、乳幼児、学童に対する基本的な看護が大切です。

🌀良性発作性めまい

頭の位置加減によって、突然めまいが起こる良性の障害

良性発作性めまいとは、急に頭を動かすなど頭の位置加減によって、突然めまいが起こる障害。良性発作性頭位めまい、良性発作性頭位変換性めまいとも呼ばれます。

耳が原因で起こるめまいの中で最も頻度の高いもので、発症年齢は20~70歳代までに渡り、好発年齢は50~70歳代です。男女比では、女性が男性の1.8倍とやや多くなっています。

ほとんどの場合、起き上がる、横たわる、寝返りを打つ、見上げるために頭を後ろに反らすなど、頭の位置を変える動作が引き金になって、急激に回転性の激しいめまいが起こります。人によって、めまいが起こりやすい頭の位置があります。

症状は数秒から数分で自然に落ち着くことがほとんどですが、また頭を動かすとめまいが反復します。吐き気を伴うこともあります。通常、耳鳴りや難聴などの聴覚の症状、頭痛、しびれ、体のふらつきは自覚しません。2~3週間くらいは、何度かめまいが起こります。

この良性発作性めまいは、内耳の中の耳石が頭の位置により、バランス機能を補助している三半規管の中に入り込んで、三半規管の有毛細胞を刺激するために起こります。

耳の一番奥にある内耳は、聴覚器官である蝸牛(かぎゅう)と、平衡器官である前庭という二つの部分から構成されています。そして、前庭器官にある耳石器の上には、炭酸カルシウムでできている耳石が多数乗っています。正常であれば、頭が動くと耳石が三半規管の内側にある神経受容体(毛細胞)を刺激し、これらの細胞が頭の動いた方向を示す信号を脳へ送ります。

しかし、この耳石が何らかの原因で本来の位置からずれ、入り込んだ三半規管内の1カ所で塊になって浮遊したり、三半規管内のクプラと呼ばれる部位に付着することがあります。この状態で頭を動かすと、過大な信号が送られ、頭が実際以上に動いたとする誤った情報が脳へ伝わります。この誤った情報と目からの情報にずれが生じると、回転性めまいの発作が起こるのです。

良性発作性めまいを起こしやすいのは、交通事故などで頭部外傷を負った人、慢性中耳炎を患う人、過去に結核を患いストレプトマイシンでの治療を受けたことのある人、中耳ないし、あぶみ骨の手術を受けた人とされています。

回転性めまいを起こす姿勢をとらなければ避けられますので、めまい発作の起こる頭の位置を見付け、その頭位を避けるようにして対処します。

良性発作性めまいの検査と診断と治療

良性発作性めまいは、次第に症状が軽くなってくることが多く、それほど深刻な疾患ではありません。通常は2~3週間で治癒しますから、心理面でもそれほど怖くないのですが、中には、まためまい発作が襲ってくるのではないかと不安を募らせ、恐怖心を抱く人もいます。また、この疾患に似た症状で、内耳の障害ではなく脳の疾患の場合もありますので、耳鼻咽喉(いんこう)科の専門医の診断を受けます。

医師による検査では、めまいが起こる頭の位置で眼振(がんしん)が現れ、次第に増強、減弱します。眼振というのは、眼球が不随意に小刻みに揺れ動く状態。ほとんどの場合、聴力検査、温度眼振検査で異常を認めることはありません。まれに、温度眼振検査で患っている側の耳の温度反応が高度に低下したり、反応がなくなったりすることもあります。体全体のバランスが悪くなることはありません。

治療としては、内耳の機能を改善するための抗めまい剤や脳循環改善剤、ビタミン剤、めまいに伴う吐き気を抑える抗ヒスタミン剤などが用いられます。めまい発作ががまた出るのではないかという不安、恐怖心が強い人には、心理的不安を取り除くための抗不安剤などが用いられることもあります。

めまいが少し軽くなってきたら、積極的にめまいが起こりやすい頭の位置をとるといった理学療法によるリハビリテーションをすることも治癒を早めます。その頭位を何度も繰り返しとると、その都度めまいは出現するものの、次第に軽くなって、やがてめまいは消失します。

最近では、エプリー法、パーンズ法、セモン法などといって、頭位と体位を変換する姿勢をとることで、遊離した耳石の塊をほぐして三半規管全体に再度行き渡らせる理学療法が開発され、良好な成績を上げています。エプリー法などにより、およそ9割以上の発症者は薬を使わずに、回転性めまいが治っています。発症者の一部は回転性めまいを再発するため、エプリー法などを自宅で繰り返し行う必要があります。

理学療法が全く効果を発揮しないで、めまいの症状が反復して起こる場合には、手術が行われることもありますが、きわめてまれなケースです。このような場合、手術を検討する以前に、この疾患と同様な症状であっても、内耳障害ではなく脳障害の場合があるので、専門医の診断が必要となります。

2022/07/11

🇦🇨両側性遅発性太田母斑様色素斑

顔面に青みがかった茶褐色の色素斑がいくつかまとまって出現する皮膚疾患

両側性遅発性太田母斑様色素斑(りょうそくせいちはつせいおおたぼはんようしきそはん)とは、顔面に青みがかった茶褐色の色素斑がいくつかまとまって出現する皮膚疾患。後天性真皮メラノサイトーシスとも、ADM(Acquired Dermal Melanocytosis)とも呼ばれます。

従来は、両側性太田母斑の亜型とされていましたが、現在は、独立疾患として扱うのが標準的になってきています。

幼少期よりできるそばかす(雀卵〔じゃくらん〕斑)と似ていることもありますが、顔に発生する後天性皮膚疾患の一つで、20〜30歳代から中年の女性に多く見られ、特に日本人や中国人に多いといわれています。

通常は表皮にあって、メラニン(メラニン色素)という皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)が、表皮に出ていけずに顔の皮膚の深い位置にある真皮にとどまって増殖しているために、色素斑が出現します。

遺伝性も高いとされるものの、加齢、日焼け、ホルモンバランスの崩れなどの影響が考えられています。

額の両端、頬骨(ほおぼね)部、鼻翼部などに、直径1〜3ミリのおよそ茶褐色の色素斑が、いくつかまとまって出現します。顔面の両側に左右対称に多発することもよくあります。

小さな点の集合であるために染みのようにも見えますが、実際はあざの一種として分類されます。

真皮に存在するメラノサイトの深さの程度により、茶褐色から灰色、さらに青色へと進行変化するため、色素斑の色はさまざまです。

両側性遅発性太田母斑様色素斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。患部に、染みの一種である肝斑(かんぱん)や、老人性色素斑(日光性黒子)、そばかすなどが混在していると判別が難しいものの、多くは左右対称に出現することなどから判断します。色素斑をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮層に色素含有メラノサイトが認められます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。

Qスイッチレーザー治療は、レーザー光線を皮膚に当てるもので、皮膚の表面にはダメージを与えず、その下の真皮層にあるメラノサイトを選択的に焼灼(しょうしゃく)することができます。ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザー、フラクショナルレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。

いずれのQスイッチレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行い、2〜3カ月の間隔で、少なくとも3~5回の照射を行います。まれに軽い色素沈着を残したり、白色に変化する色素脱出を来すこともありますが、外用剤を使用すると、1・5〜3カ月程度でレーザーの跡が薄くなります。

色素斑の消失率はほぼ70パーセントとされ、消えた色素斑は再発しません。

液体窒素で色素斑の凍結、融解を繰り返す凍結治療や、外科的に切除し他の部位から皮膚を移植する方法もあります。

💅緑色爪

爪が緑膿菌に感染し、緑色になる状態

緑色爪(りょくしょくそう)とは、細菌の一種である緑膿(りょくのう)菌が感染して、爪(つめ)の甲が緑色になる状態。

この緑膿菌は腸内細菌の一種で、湿潤な自然環境中に広く存在している常在菌の一つであるため、健康な爪には感染することはありません。緑色の色素を持つ緑膿菌が感染して、爪の甲の色が緑色に変色したように見える緑色爪は、爪が何らかの疾患にかかって傷付いている場合や、爪が常に湿っていて軟らかい状態の場合に起こります。

元になる爪の疾患として多いのは、爪カンジダ症や爪白癬(はくせん)、爪乾癬(かんせん)、爪甲剥離(はくり)症で、これらの疾患に合併して緑膿菌が爪の甲の下に侵入、繁殖して、緑色爪を起こします。

水仕事をする女性に多くみられ、抵抗力が低下している時には、感染した爪から、ほかの爪へ感染することもあります。時に爪囲炎を伴うと、圧痛が生じます。

女性が指先のおしゃれとして、爪の甲の上に付け爪(人工爪)をしている場合も、付け爪と爪の甲との間に透き間ができてきて、そこに水仕事や手洗いや入浴時に水が入り込んで湿潤した環境ができると、緑膿菌が侵入、繁殖して、緑色爪を起こします。

緑色爪になると、最悪の場合には爪を失ってしまうこともありますし、体内に入り込んでしまう可能性もあります。体内に感染すると、角膜炎や外耳炎、発疹(はっしん)、肺炎、敗血症、心内膜炎を引き起こしてしまう可能性があります。

緑膿菌は、消毒や抗生物質に対して抵抗力が強いため、治療が困難であるとされています。免疫不全や栄養状態が悪い場合は、重篤な全身感染症を引き起こし、致死的ともなります。また、ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性緑膿菌も多いのが特徴で、院内感染を引き起こす起因菌となっています。

まずは、爪の緑色の変色に気付いたら、付け爪をしている場合は使用をやめ、自然治癒を待つことです。そして、変色した爪とその周囲も清潔に保つこと、水仕事や手洗いや入浴後は、ぬれたまま放置せず、しっかり乾燥させることが大切です。それでも改善がみられない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科での治療が必要になります。

元になる爪の疾患に合併して生じている緑色爪の場合は、自然治癒しないので、自己判断で間違った対処をしたり、たかが爪とほうっておかないで、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で治療を受けることが必要になります。

緑色爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状や問診で緑色爪と判断できます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、緑膿菌は湿潤な環境で増殖するため、患部を乾燥させます。また、元になっている爪の疾患を治します。

爪カンジダ症で爪の甲が緑色になっている時は、浮き上がっている爪の甲をニッパー型の爪切りで取り除いて乾燥させ、緑膿菌に感受性のある外用抗真菌剤を半年ほど毎日、爪が伸びて緑色に変色した部分がなくなり、健康な爪に生え変わるまで塗ります。また、症状によっては、血液検査などで状態をよく見極めて、経口抗真菌剤を内服するケースもあります。

爪白癬で爪の甲が緑色になっている時は、水虫の外用剤はほとんど効果がないため、経口抗真菌剤を内服します。少なくとも、3〜6カ月間は内服します。硬く厚くなった爪の外側から外用剤を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分がゆき渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができますす。

爪乾癬で爪の甲が緑色になっている時は、爪乾癬に対する根本的な治療法はまだなく、完治させることは難しいと考えられているため、症状に合わせて外用剤、内服剤、光線療法などいろいろな治療を行います。

爪甲剥離症で爪の甲が緑色になっている時は、カンジダ菌の感染の可能性が強い場合には、外用抗真菌剤を塗ります。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの内服剤を使用する場合もあります。完治には1年程度を要します。

付け爪(人工爪)で爪の甲が緑色になっている時は、付け爪を取り除いて、患部を乾燥させます。自然の爪の甲の表面が変色していれば、爪やすりで着色部分を削り、緑膿菌に感受性のある外用抗菌剤を塗ります。

🕶緑内障

●緑内障とは

 緑内障とは、一般に眼圧が高くなることによって視神経が侵され、視野が狭くなったり欠けたりする病気です。しかし、眼圧が正常値範囲内でも緑内障が起こる場合がありますので、注意が必要です。

 また、先天性のものや目のほかの病気、外傷が原因で起こるものなど、さまざまなタイプがあり、原因がはっきりわかっていないものもあります。

日本では、失明原因の第2位ともなっており、「あおそこひ」とも呼ばれています。中高年の人に多く見られ、40歳以上の人の30人に1人がかかっているといわれています。

●その症状は

 緑内障は、慢性と急性で症状の現れ方が異なります。

【慢性の場合】

視野が狭くなることが代表的な症状。徐々に進行するので、初期にはほとんど自覚症状がなく、視野が狭くなってきたことに気付いた時には、すでに緑内障がかなり進んだ状態になっていることが多いので、注意が必要です。

また、「何となく目が重い、目が疲れる、目に不快感がある」などの症状がある場合もあります。

【急性の場合】

急激に眼圧が上がるため、突然、目の充血や激しい頭痛、吐き気などが起こります。緑内障と気付かずに、内科を受診しがちですが、眼科で至急に処置しなければ失明する恐れもありますので、注意が必要です。

●治療方法は

 緑内障は、薬物療法やレーザー治療、手術などの、眼圧を下げる治療を行うことで、それ以上視野が狭くなったり、欠けたりするのを食い止めることができます。

 しかし、一度欠けた視野は元には戻りません。しかも治療は一生続くことになります。ですから、早期発見、早期治療が何よりも大切です。

 自覚症状がないまま進行する場合が多いので、40歳を過ぎたら1年に1回は必ず、眼科で眼底や視野などの検査を受けることが大切です。特に家族に緑内障の方がいる人や、近視の強い人、糖尿病の人、眼圧の高い人は、注意が必要です。

👁緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)

突然眼圧が高くなり、激しい目の痛みや頭痛が生じる緑内障

緑内障発作とは、眼内液である房水の出口を虹彩(こうさい)の根部がふさぎ、房水の流出が障害されて、急激に眼圧が上昇する疾患。急性閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障、閉塞隅角緑内障とも呼ばれ、放置すれば短期間に失明する可能性がある疾患です。

房水の出口である前房隅角部が狭くなっている場合に、起こりやすくなります。その原因としては、生まれ付きの素因、また、強い遠視や老化のために、水晶体が膨らんで虹彩を持ち上げ、隅角部が狭くなることが挙げられます。さらに、精神的過労、睡眠不足、精神的な興奮、さまざまな生活上の誘因も考えられます。

高頻度でみられるのは、50歳以上の遠視の女性です。

自覚症状としては、急激な視力障害と、裸電球を見ると回りに虹(にじ)が見える虹視が特徴的。黒目の白濁、白目の充血、瞳孔(どうこう)の散大が起こるほか、激しい眼痛、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などを伴うこともあります。頭痛や嘔吐が激しい時は、ほかの内科的疾患と誤りやすいので、注意が必要です。

この緑内障発作の経過は急激で、視神経の急激な血行不良から神経線維が一気に、大量に死滅し、時には1日で失明してしまいます。発作が起きたら、数時間以内に専門医を受診します。

緑内障発作の検査と診断と治療

緑内障発作(急性閉塞隅角緑内障)では、目の症状以外に頭痛、吐き気、嘔吐などの全身症状がみられるため、眼科以外の内科や脳外科などの診療科を受診してしまうことがありますが、視覚障害がないかどうかの確認をすることが重要です。

眼科の医師による検査では、通常は60〜80mmHgの急激な眼圧上昇と、隅角検査で閉塞隅角、充血や瞳孔の散大を認めます。

治療では、まず目を冷やし、グリセリンの内服、縮瞳剤の点眼、高浸透圧剤の点滴などで、眼圧を下げるようにします。しかし、多くは再発するため、眼圧が下がったら、房水の出口を閉じている周囲虹彩切除を主とした手術や、レーザーによる虹彩切開を行います。

最初は片方の目だけに発作が起こっても、早晩、両目に起こることが多いので、予防のために、もう一方の目の虹彩切除、またはレーザー切開が必要です。

あらかじめ、緑内障発作を起こす危険性があることがわかれば、予防的処置を講ずることができますので、強い遠視の人、40歳すぎの人、眼球の前部にある前房が浅い、眼球が小さいなど生まれ付きの素因があると指摘されたことのある人では、定期的に緑内障の眼圧検査を受けることが大切です。

日常生活では、紅茶、酒、コーヒーなどを大量にとることを控え、水分も控えます。

✈旅行者血栓症

飛行機内などで長時間、同じ姿勢を取り続けて発症する一連の症候群

旅行者血栓症とは、飛行機内などで長時間、同じ姿勢を取り続けて発症する一連の症候群。エコノミークラス症候群、ロングフライト血栓症、静脈血栓塞栓(そくせん)症、深部静脈血栓症とも呼ばれます。

飛行機のエコノミークラス以外の座席、飛行機以外の交通機関や施設の座席でも、発生が報告されています。

長時間、座ったままの同じ姿勢でいると、血液の流れが徐々に悪くなり、脚や腕などの静脈に、血の固まりである血栓が生じやすくなります。この血栓が血流に乗って肺へ流れ、肺動脈が詰まると、肺塞栓(そくせん)症となります。

肺動脈が詰まると、その先の肺胞には血液が流れずガス交換ができなくなる結果、換気血流に不均衡が生じ、動脈血中の酸素分圧が急激に低下、呼吸困難を起こします。また、肺の血管抵抗が上昇して、全身の血液循環に支障を起こします。

軽度であれば胸焼けや発熱程度で治まりますが、最悪の場合は死亡します。

飛行機内などでは、血液が固まりにくいように水分を補給したり、長時間に渡って同じ姿勢を取らないようにし、着席中に足を少しでも動かして血液循環をよくすることで、旅行者血栓症は予防できます。

🧳旅行者下痢症

海外旅行をした際、体調の変化、飲食物の違い、病原体の感染などによって、下痢症を引き起こした場合の総称。

旅行する国や地域によって若干の違いはありますが、海外旅行に行った人の半数以上は、旅行先に到着してから5日以内に下痢をするといわれています。旅行先を発展途上国に限った場合には、7~8割に達するともいわれます。

旅行者下痢症の原因には、(1)旅行の準備など、疲労による体調の変化や低下(2)旅行中の不安やストレスなどからくる精神的な胃腸障害(3)渡航先の飲食物の違いによる一過性の胃腸障害(4)ウイルスや細菌あるいは寄生虫による病的なもの、などが考えられます。

このうち、(1)と(2)は、旅行前から始まることも多く、体調の回復やストレスの緩和などの原因を取り除くことによって、比較的短時間で改善されます。

(3)の飲食物による下痢は、病原体によるものではなく、水質の違いによる場合や食物の違いによるものが多いようです。水については、海外の水はミネラル分が多い硬質で、一過性の下痢を起こしやすいのです。また、油と香辛料も下痢の原因になります。油は、未精製のものや、保存状態が悪く変性した油など原因になり、香辛料の取りすぎも胃腸障害の原因になります。

このような下痢の場合、早い人で3~4日で慣れて回復しますが、遅い人では10日以上下痢が持続し、帰国後もなかなか治らない人がいます。

(4)の病原体による下痢は、旅行者下痢症の2割程度を占めています。

発展途上国の場合、以下の菌が主な原因になります。 腸炎ビブリオ、ナグビブリオ菌 、サルモネラ菌属 、病原大腸菌、ブドウ球菌、赤痢アメーバ 、赤痢菌、チフス菌。

北米やヨ-ロッパなどの先進国の場合は、以下の菌が主な原因になります。腸炎ビブリオ、ビブリオ菌 、サルモネラ菌属 、ウェルシュ菌 、病原大腸菌、セレウス菌、赤痢菌、チフス菌。

旅行中は時差やハードスケジュール、環境の変化によるストレスなどで体の抵抗力が弱まり、通常なら問題にならない量の病原体で病気になることがあります。旅行者下痢症を防ぐには、加熱されていない生水や生食を摂取しないように心掛けることが、重要となります。

軽い下痢は、1~2日様子を見れば、たいてい治まります。しかし、激しい下痢、頻回の下痢、血液が多量に混じっている下痢の場合には、速やかに医師と相談することをお勧めします。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...