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2022/07/18

☪ユーイング肉腫

進行が早く、悪性度の高い骨のがん

ユーイング肉腫(にくしゅ)とは、進行が早く、悪性度の高い骨の悪性腫瘍(しゅよう)、すなわち、がん。1921年、アメリカのジェームズ・ユーイング医師によって、初めて発見されました。

10歳前から20歳代に多くみられ、最も発症数の多い年齢は10歳代で、次は10歳未満です。同じ悪性腫瘍である骨肉腫と同じように若い年代にみられますが、骨肉腫と異なる特徴は、関節部分から遠い骨の中心に起こることと、骨の腫瘍にもかかわらず筋肉や神経などの軟らかい組織への進展が速いことです。

ユーイングは骨髄の血管細胞が腫瘍化したものと考えましたが、現在もその腫瘍細胞の起源は不明です。ただし、特有の遺伝子異常が関与していることが示唆されています。

発生しやすい部位は、骨盤、肩甲骨などの偏平骨と、太ももの大腿(だいたい)骨、上腕骨、すねの脛(けい)骨などの大きくて長い筒状の長管骨です。

初期の症状は、ほとんどが痛みです。悪性腫瘍に共通する症状は、痛みが次第に強まることで、ユーイング肉腫の場合も同じ経過をたどります。さらに、腫瘍のある部位が熱い感じがし、発熱、白血球の増加など、炎症のような症状がみられることもあります。周囲の軟部組織へ伸展すると、神経刺激症状が現れることもあります。

ユーイング肉腫が疑われる場合には、ぜひ、専門の整形外科腫瘍専門医を受診してください。

医師による診断では、単純X線像のほかに、CT、MRI、骨シンチグラフィー(アイソトープによる画像で腫瘍を見付ける検査)などの画像検査、悪性骨腫瘍に対する一連の検査を行います。

骨肉腫との見分けがつきにくい場合もあり、最終的には、腫瘍の一部を採取して顕微鏡で調べる生検が必要となります。多くの場合、腫瘍に針を刺してその一部を吸引して、細胞を調べる吸引生検を行います。診断に必要な検体を確実に採取するため、時には外科的な手術による生検が必要になることもあります。

治療では、まず抗がん剤などによる化学療法が行われます。悪性の程度が高いために、非常に早い時期に他の骨や肺などの遠いところへの遠隔転移を起こしやすいので、全身を相手にしなければならないからです。

強力な化学療法を行って、遠隔転移を防ぐようにした後に、手術療法で腫瘍を切除します。手足を残す方法が一般的ですが、腫瘍のできた場所や大きさによっては、切除を免れないこともあります。手術の後も、転移を防ぐために化学療法が続けられます。

手術で腫瘍の切除が不可能な場合には、放射線照射で、腫瘍を殺す治療が行われます。

化学療法が行われるようになった1960年代まで、ほとんどの発症者が死に至っていましたが、今では、半数以上が助かるようになっています。しかし、まだ十分ではなく、腕や脚にユーイング肉腫が発生した場合、手術後の5年生存率は60パーセントなのに対して、10年後の生存率は36パーセントにすぎません。

☦有鉤骨骨折

手のひらの根元部分にある有鉤骨の突起部分に生じる骨折

有鉤骨(ゆうこうこつ)骨折とは、手のひらの中央からやや下、小指寄りにある有鉤骨の体部から、手のひら側にマストのように突出した鉤に生じる骨折。有鉤骨鉤骨折とも呼ばれます。

有鉤骨は手のひらの根元部分にある手根骨の一つであり、野球、ゴルフ、テニス、体操、自転車レースなどのスポーツで手のひらに衝撃が加わった場合や、スポーツ中や交通事故で転倒して手のひらを強く突いた場合に、手根部の横アーチに強い緊張がかかって有鉤骨骨折が生じます。

野球ではしばしばみられ、打者がボールを打つ時に直接手のひら、特に小指側の手のひらの筋肉の膨らみである小指球に強い衝撃を受けたり、バットを強く握った手の中でグリップエンドがずれることで、有鉤骨の鉤状に突出した部分を骨折することがあります。中でもファールチップをした時は、バットを振った力がボールに伝わらずバットを持った手のひらに負荷がかかるため、骨折しやすくなります。

ゴルフでは、ゴルフクラブで芝生を打ち付けたりした際に、手のひらに強い衝撃を受けるため、有鉤骨の鉤を骨折することがあります。

ボールとラケットの質量が小さいテニスでは、手のひらへの1回の衝撃というよりも繰り返し衝撃を受けることが原因となって、有鉤骨の鉤を疲労骨折することがあります。野球やゴルフでも、バットやゴルフクラブを長期間にわたって熱心に振り続けた結果、有鉤骨の鉤を疲労骨折することもあります。

有鉤骨の鉤を骨折すると、折れた骨が有鉤骨の近くにあるギヨン管(尺骨〔しゃくこつ〕神経管)の中を通る尺骨神経を圧迫することもあり、この場合にはギヨン管(尺骨神経管)症候群を起こし、手首の手のひら側から小指、薬指の小指側に痛み、しびれが出現します。進行とともに、筋肉の委縮、握力の低下、巧緻(こうち)運動障害、小指が曲がったままになる鉤爪(かぎづめ)変形と呼ばれる現象も起こります。

有鉤骨骨折はまれに起こる骨折ですが、1回の強い衝撃がなくても、小さい負荷が繰り返し長期間かかり続けて疲労骨折することもあるため、骨折と気が付かず手首の捻挫(ねんざ)と勘違いすることもあります。スポーツのスイングなどで手首が痛くなり、痛みがなかなか引かないような場合は、重篤な症状になる前に整形外科を受診し、正確な診断を受けることが勧められます。

有鉤骨骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、まずX線(レントゲン)検査を行います。ただし、有鉤骨の鉤の構造上の位置関係から、普通に正面や横から撮影しただけでは骨折が判別できず、手関節を最大背屈位や軽度回外位にし、特殊撮影を行うことで明らかになる場合もあります。

より正確に診断するには、CT(コンピュータ断層撮影)検査、またはMRI(磁気共鳴画像撮影)検査が有効で、完全に骨折していないヒビの入った状態でも判別できます。

整形外科の医師による治療では、受傷直後に診断され、骨の位置のずれ(転位)が少ない場合には、6週間の前腕以下のギプス固定で骨癒合することも考えられます。骨癒合すれば、十分にスポーツ活動への復帰は可能です。

骨の位置のずれ(転位)が大きい場合や、早期にスポーツ活動や社会生活への復帰を希望する場合には、手術が行われます。有鉤骨は血流の乏しい部位であるために骨癒合しにくく、手術をしたほうが復帰が早くなる上に、ギヨン管(尺骨神経管)症候群などの合併の防止にもつながるからです。

手術の方法には、骨接合術と鉤切除術の2つがあります。ただし、有鉤骨の鉤の断面が湾曲していることや、骨そのものが小さいこともあり、骨接合術はかなり難しくなります。うまくいかなかった場合は、骨折部の血流が悪いために骨がくっつかないまま、関節部ではないのに関節のようになる偽関節形成や、屈筋腱(けん)の皮下断裂を起こす可能性もあるため、鉤切除術を第1選択とし、有鉤骨の鉤部分を取り除きます。

鉤切除術を行った場合、1週間のギプス固定の後に手の使用を開始できますが、4~6週間は手のひらの根元部分の小指側に力をかけないように注意します。有鉤骨骨折から復帰するためには、6~12週間の安静とリハビリテーションが必要となります。

☪ゆう状胃炎

びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面に多数の隆起が現れる疾患

ゆう状胃炎とは、びらん性胃炎の一種で、胃の粘膜表面が隆起して、中心部にびらんと呼ばれるただれた状態を浅く認める疾患。いぼ状胃炎、たこいぼ胃炎、隆起性びらん性胃炎とも呼ばれます。

多数の隆起が現れることが多く、胃の出口近くの幽門前庭部に主として生じるほか、胃底腺(せん)、幽門腺境界領域にも生じます。

隆起の形状から、足の裏にできるたこ、いぼのような形を示すたこいぼ型、棍棒(こんぼう)型、ポリープ型(球型)、蛇行型(数珠型)に分類されます。

また、胃の粘膜表面の隆起が低めで3カ月以内の短期間に消える消失型と、隆起が高めで長期間にわたって消えない存続型とがあります。消失型をびらん性胃炎と呼び、存続型のみをゆう状胃炎と呼ぶ場合もあります。

原因としては、アルコールの摂取などの食習慣、胃酸の過分泌、ストレスなどが考えられます。ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が原因となることは、まれです。

症状としては、特に決まったものはなく、自覚症状がない場合もあります。一般的には、上腹部の不快感やもたれ、食後の胸焼け、胃痛、吐き気や嘔吐(おうと)がみられます。

胃・十二指腸潰瘍(かいよう)を合併することもあります。

ゆう状胃炎の検査と診断と治療

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による診断では、内視鏡検査を行い、多発性で隆起性の斑(まだら)状また点状のびらんを認めれば、ゆう状胃炎と確定します。場合によっては、内視鏡観察下でびらんの一部を採取して、顕微鏡で組織を調べる生検を行います。

内科、胃腸科、消化器内科、消化器外科の医師による治療では、無症状であれば経過観察となります。

症状が強ければ、アルコールといった原因物質の除去と、胃酸の分泌を抑える胃酸分泌抑制剤であるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤、あるいはプロトンポンプ阻害剤を投与します。

なお、存続型のゆう状胃炎では長期間その変化が見られないことが多く、ケースによっては良性有茎性ポリープへ病変することもあります。

胃炎の治療には生活習慣が密接にかかわってくるため、生活習慣の改善を心掛け、再発の予防をする必要もあります。

食事を抜くと胃腸の運動に変化が起こり、胃酸の刺激を受けやすくなったり、胃酸が出すぎたりします。きちんとした食生活に努め、刺激性の強い食べ物の摂取を控えます。塩辛い食べ物、甘すぎる食べ物、冷たすぎる飲み物、熱すぎる飲み物、炭酸飲料などは控えるようにします。コーヒー、お茶などカフェインを多く含む飲み物には、胃粘膜を刺激する働きがあり、特に空腹時には控えたほうがいいようです。

十分な睡眠時間の確保は、胃炎の再発防止に欠かせません。睡眠不足が続くと夜間に胃酸の分泌が促され、胃の粘膜に悪影響を与えます。睡眠不足自体が、ストレスの原因にもなります。

運動は血行を促進し、消化管の機能を活発にします。また、ストレスの発散にも有効です。休養や運動を含め、ゆとりあるライフスタイルを心掛けることも、再発防止には重要です。

☦優性遺伝性若年性視神経委縮症

常染色体優性遺伝性を示し、10歳未満で発症する視神経症

優性遺伝性若年性視神経委縮症とは、常染色体優性遺伝性の形で遺伝し、10歳未満で発症する視神経症。常染色体優性遺伝性視神経委縮、若年性家族性視神経委縮とも呼ばれます。

種々のものがあり、いずれもまれで、難治な疾患である遺伝性視神経症の一種で、その中では最も多いと考えられており、有病率は1万人から5万人に1人の割合とされています。

日本で確認された家系数は少なく、男女差はないとされます。遺伝性ですが、必ずしも同一家系内に類似した症状の発症者がみられるとは限りません。

発症の初期には、早発の視神経の変性により両眼の視力障害が生じます。中心視カの低下のほかに中心視野が侵されるために、第3色覚異常様の色覚異常を示し、青と黄と灰色が同じに見える青黄色盲の症状を生じます。網膜の変化は少なく、視カ低下は緩やかに進行し、多くのケースでは0・2〜0・3以上の視カを保持します。

しかし、やがて視力の回復を十分に示さぬまま、視神経が委縮を強めていきます。網膜の神経線維が集まっている視神経乳頭は、耳側から次第に退色して蒼白(そうはく)となり、血管が見られないのが特徴です。

通常、晩年に至るまで視力低下は軽度ですが、高齢になると視力低下がさらに進行するケースもあります。

ほとんどの発症者は神経症状を合併しないものの、時には、自分の意思とは関係なく眼球が動く眼振(がんしん)、及び難聴を合併する場合もあります。

優性遺伝性若年性視神経委縮症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、蛍光眼底造影検査、視力検査、視野検査、画像検査、電気生理学的検査、心電図検査が行われます。確定診断のために、遺伝子検査が利用可能です。

眼科の医師による治療では、明らかな有効性が確認された治療法はないので、ビタミン剤、循環拡張剤などの処方が行われます。

色覚異常に関しても、遺伝子の変異であるため、明らかな有効性が確認された治療法はありません。

2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。しかし、確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際は不十分な診断が行われて問題がありました。

2003年以降は、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。

🇦🇿優性遺伝性ドルーゼン

常染色体優性遺伝性を示し、網膜にある黄斑に進行性の変性がみられる目の疾患

優性遺伝性ドルーゼンとは、常染色体優性遺伝性を示し、眼球内部の網膜にある黄斑(おうはん)に進行性の変性がみられる目の疾患。家族性ドルーゼン、網膜ジストロフィーとも呼ばれます。

まれな疾患で、その発症原因はEFEMP1遺伝子のミスセンス変異(R345W)です。しかし、同じ家系内であっても症状の程度には個人差があり、軽症から重症まで一定しない傾向があることから、遺伝子変異と病態の関連性については、さらなる検討が必要と考えられています。

20~30歳代で、両目の眼底にドルーゼンといわれる小さく境界鮮明な白点が認められ、このドルーゼンが徐々に融合したり、増加していきます。加えて、黄斑の網膜色素上皮に変性がみられて、色素異常によるむらや色素沈着が認められます。

進行状況により、さまざまな程度の視力低下を示しますが、まれにドルーゼンから異常な血管である新生血管が生じると、著しい視力障害を示すことがあります。

新生血管は正常な血管ではないため、血液の成分が漏れやすく、破れて出血を起こしてしまいます。初期では、物がゆがんで見える変視症や、左右の目で物の大きさが違って見えるなどの症状を自覚するケースが多くみられます。新生血管が破れて黄斑に出血を起こすと、見たい物がはっきり見えない急激な視力低下や、見ようとする物の中心部分が丸く黒い影になって見えなくなる中心暗点という症状が出現します。

病巣が黄斑に限られていれば、見えない部分は中心部だけですが、大きな出血が起これば、さらに見えにくい範囲が広がります。病状が進行すると、視力が失われる可能性があります。

優性遺伝性ドルーゼンの検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、両眼対称性であること、進行性であること、家族にかかった人がいること、薬物や感染症など外因がないことなどが重要な手掛かりになります。眼底検査、フルオレセイン蛍光眼底検査、網膜電図などの電気生理学的検査も、診断を確実にするには必須です。異常を起こす遺伝子が突き止められている優性遺伝性ドルーゼンでは、遺伝子の検索も決め手になります。

ドルーゼンには、老人性ドルーゼン、続発性ドルーゼンもありますが、網膜の神経線維が集まっている視神経乳頭の鼻側に、眼底検査でドルーゼンが認められた時には、優性遺伝性ドルーゼ ンと診断する大きな根拠になるとされています。

今まではあまり有効な治療法はありませんでしたが、近年、優性遺伝性ドルーゼンは加齢黄斑変性症に近い病態であることが判明し、新しい方法が試みられるようになり、早期発見、早期治療によって視力低下を最小限に抑えられる可能性が期待できるようになってきました。

優性遺伝性ドルーゼンの治療では、レーザーによるレーザー光凝固術や、場合によっては手術が行われます。近年、経瞳孔(けいどうこう)温熱療法(TTT)や光線力学療法(PDT)などといった新しい治療法が一部の施設で試みられ始めており、この疾患の予後の向上が期待されるようになってきています。

レーザー光凝固術は、新生血管をレーザー光で焼き固める治療法です。正常な周囲の組織にもダメージを与えてしまいますので、新生血管が黄斑の中心窩(か)にある場合はほとんど実施されません。

手術には、新生血管抜去術と黄斑移動術があります。新生血管抜去術は、新生血管を外科的に取り去る治療法です。新生血管が中心窩にある場合も実施されますが、中心窩を傷付けてしまう可能性もあります。

黄斑移動術は、中心窩の網膜を新生血管から離れた場所に移動させることにより、中心窩の働きを改善する治療法です。新生血管が中心窩にある場合に実施されますが、物が二つに見えるなどの副作用が起こる場合もあります。

新しい治療法の経瞳孔温熱療法は、弱いレーザーを新生血管に照射し、軽度の温度上昇によって、新生血管の活動性を低下させる治療法です。

光線力学療法のほうは、光に反応するビスダイン(一般名:ベルテポルフィン)という薬剤を体内に注射し、それが新生血管に到達した時にレーザーを照射する治療法です。弱いレーザーによって薬剤が活性化され、新生血管を閉塞(へいそく)します。使用するレーザーは通常のレーザーとは異なり、新生血管周囲の組織にはほとんど影響を及ぼしません。継続的に行う治療法であり、3カ月ごとに検査を行い、その結果により必要に応じて再度実施されます。

薬物療法として、ステロイド剤や、アバスチン(一般名:ベバシズマブ)という血管新生阻害剤などの硝子体への注入が試みられています。効果を得るには繰り返しの注入が必要で、経瞳孔温熱療法との併用も考えられています。

治療後の視力は、病状の進行度によってさまざまです。一般に早期に治療を開始すると、良好な視力が保たれる傾向にあります。黄斑の中でも特に重要な中心窩に病態が現れている場合は、視力の低下は著明です。

🇧🇮疣贅(いぼ)

ウイルスの感染や老化現象によって、皮膚にできる出来物

疣贅(ゆうぜい)とは、ヒトパピローマウイルスウイルスの感染や皮膚の一種の老化現象によって、皮膚にできる出来物。普通、いぼと呼ばれます。

ヒトパピローマウイルスの感染によって起こるものは一般的にウイルス性疣贅と呼ばれ、尋常性疣贅、青年性偏平疣贅、水いぼ(伝染性軟属腫〔しゅ〕)があります。ほかに、ウイルス性ではない老人性疣贅があります。

◆尋常性疣贅

普通、いぼといわれるものの多くは、この疣贅です。手足や顔によくみられ、皮膚面から盛り上がって、表面がザラザラしています。他人には簡単に移りませんが、自分の皮膚では移っていきやすいものです。いじっているうちに、数が増えてきます。

また、足の裏にできると、魚の目と間違いやすい状態になりますが、疣贅は押しても痛みはないので区別ができます。

◆青年性偏平疣贅

思春期前後の男女の顔や手の甲によくみられる疣贅で、皮膚面からほんのわずかに盛り上がり、表面は平らで褐色調をしています。この疣贅も、かくことによって自分の皮膚に移っていき、線上に並ぶこともあります。

◆老人性疣贅

ウイルス性ではなく、皮膚の一種の老化現象として現れます。褐色、または黒色の軟らかい疣贅で、表面に脂性の光沢がみられます。

◆水いぼ

幼児に多いウイルス性の疣贅で、半球状に盛り上がり、中央にへそのようなくぼみがあります。でき初めは水っぽく見えるので、水いぼという名前があります。

自分の皮膚に移って広がるだけでなく、温水プールなどで他人にも移りやすい疾患です。

疣贅(いぼ)の検査と診断と治療

青年性偏平疣贅と老人性疣贅は、治療を必要としませんが、よく似たものでがんに発展するようないぼ状の疾患もあるので、皮膚科などの専門医に診てもらいます。水いぼ(伝染性軟属腫)は、長い間には自然に治ることもあります。治療は家庭で簡単にでき、ピンセットで水いぼをつぶし、その後消毒するだけですから、早めに治しておくとよいでしょう。

尋常性疣贅の家庭での治療としては、スピール膏(こう)を使用します。スピール膏を健康な皮膚にはみ出さないよう、疣贅の形に切って皮膚に張り、上から絆創膏(ばんそうこう)で固定します。2〜3日たってから、白くふやけた個所をナイフかはさみで削り取ります。

皮膚科の医師による治療としては、液体窒素による凍結療法、電気焼灼(しょうしゃく)などがあり、疣贅の数や発生部位に応じて行います。ほかにも、はと麦の種を成分とする漢方薬ヨクイニンの内服が効果があるとされていますが、個人差が大きいと見なされています。

凍結療法は、液体窒素で患部の凍結、融解を繰り返す方法です。疣贅の部分を超低温で瞬間的に凍結させ、部分的にやけどの状態を起こすことで、皮膚内部の疣贅の芯(しん)を表面に押し上げ、徐々に縮小させます。処置そのものにかなりの痛みを伴うほか、場合によっては水膨れが発生し、処置後も患部に激痛が伴うこともあります。 また、場合によっては水膨れ内部に出血が発生し、黒く変色することもありますが、この状態になると激痛こそあるものの、治りは早くなります。

通常、凍結療法は4~7日が効果のピークであるために、定期的に通院しなければならず、効果に個人差こそありますが、およそ数週から2カ月以上と長い日数が必要とされます。

電気焼灼は、レーザーメスや電気メスで疣贅を焼く方法です。液体窒素による凍結療法と違って一度で治るものの、麻酔が必須です。凍結療法などと異なり、保険適応外でもあります。

なお、通常、疣贅は痛みを伴わないので、特に何の治療もしていない疣贅が痛み出す時は、細菌感染などが疑われます。疣贅が広範囲に急速に広がる時は、免疫力が低下する基礎疾患がある可能性があります。

🇦🇫遊走腎

腎臓の上下の移動性が大きく、立位での位置が大きく下がる状態

遊走腎(ゆうそうじん)とは、腎臓の上下の移動性が大きく、臥位(がい)での位置に比べて立位での位置が約10センチ以上下がる状態。腎臓が下がることから、腎下垂とも呼ばれます。

健康な人でも、寝ている状態から急に立ち上がると、腎臓の位置は約2~3センチ下がるのが普通です。腎臓は周囲が脂肪組織で支えられているため、体の動きによって上下に移動するためです。しかし、腎臓を支えている周囲の組織が弱い人では、もっと下がって遊走腎を生じます。

立位では元来、肝臓など重量に富む臓器の荷重負荷がかかるなどのさまざまな要因から、右側の腎臓は左側の腎臓と比較して下垂しやすくなっています。腹壁筋(腹筋)の発達が悪く、やせていて体脂肪の乏しい人は、簡単に腎臓は下垂する傾向にあります。
 
女性の1~2割は遊走腎といわれ、やせた若い女性にしばしば認められます。特に20歳以上で、出産経験のある女性では、出産によって腹壁筋が弱くなるために右側の腎臓に認められやすくなります。男性でも、腹壁筋が弱い人に認められることがあります。

症状としては、長く立っていると腰痛、側腹部痛、腰背部痛がみられ、臥位(がい)になる、あるいは腎臓を押し上げてやると、これらの鈍痛が減少するのが特徴です。また、立った時に腎臓の位置が下がるため、血管や尿管が圧迫されます。立位歩行や荷重などで、症状は持続または増悪します。

血尿もよくみられる症状ですが、目に見えない顕微鏡的血尿が主体です。肉眼的血尿がみられることがあっても、軽度です。立位で背中を反る体位をとった時に、軽微な蛋白(たんぱく)尿がみられることもあります。尿路症状として、頻尿、残尿感、排尿痛、排尿困難、尿失禁などがみられることもあります。そのほか、食欲不振、吐き気、下痢、便秘、胃部膨満感などがみられることもあります。

症状がなければ、治療をする必要はありません。症状がある場合は泌尿器科を受診し、専門医から説明を受け、治療法に関して相談をして下さい。

遊走腎の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、臥位と座位における腎臓の触診を行い、静脈性尿路造影で臥位と立位での腎臓の位置を比較し下垂の程度を観察します。

症状の軽い場合は、治療を行わず、そのまま経過観察します。症状の強い場合には、腹帯、コルセットなどを使用して腹壁筋の緊張を保持します。同時に、腹筋、背筋を強化するための運動療法を行うこともあります。やせている人は、腎臓の周囲の脂肪を増加させ、腎臓の支持、補強を行うために体重を増加させます。

 以前は腎臓を固定する手術も行われましたが、今日ではあまり行われていません。

🇦🇷遊走精巣

男児の精巣が陰嚢の底まで降りているものの、外的刺激で動きやすい状態

遊走精巣とは、男児の精巣が陰嚢(いんのう)の底まで下降しているものの、外的刺激で動きやすい状態。移動性精巣とも呼ばれます。

遊走精巣は、発生学的な異常ではありません。これに対して、精巣が陰嚢まで下降していない状態を停留精巣といい、こちらは発生学的な異常です。

性腺(せいせん)に相当する精巣は本来、妊娠3カ月ごろから9カ月ごろまでの胎児期に、腹腔(ふくくう)の腎臓(じんぞう)に近いところから次第に下降し、鼠径管(そけいかん)という下腹部の決まった道を通ってから陰嚢まで下降し、出生時には陰嚢内に位置するようになります。陰嚢からの牽引(けんいん)、ホルモン(内分泌)などの働きにより精巣は下降しますが、何らかの原因によって下降が途中で止まったものが停留精巣です。

陰嚢内に位置する正常な精巣は、精索というヒモ状の構造の周囲に、絡み付くように存在している精巣挙筋という腹筋の一部が変わった筋肉により、腹腔につながっています。精巣は普段、寝ている時や風呂に入っている時、リラックスして座っている時などには陰嚢に位置しますが、精巣を触る、寒い、運動をする、性的に興奮するなど外的刺激や緊張が加わると、精巣挙筋が収縮して精巣は腹腔側に引き上げられます。これは精巣を守ろうとする一種の防御反射といえ、反射が強いと精巣が動きやすくなって鼠径部まで引き上げられるのが、遊走精巣です。

遊走精巣は、発生学的な異常ではないので、精巣、精巣動静脈、精管、鼠径管は正常に形成されています。だから、精巣が引き上げられても鼠径部にあり、鼠径管内あるいは腹腔内まで引き上げられることはありません。従って、必ず精巣を触れることができ、また精巣をつかんで陰嚢の底まで引き下ろせます。引き下ろせない場合は、停留精巣です。

陰嚢の中に精巣がある場合に比べ、それ以外のところに精巣がある停留精巣の場合は、2〜4度高い温度環境にさらされていることになります。陰嚢内にあると33度、鼠径管内にあると35度、腹腔内にあると37度というデータもあります。高い温度環境にある停留精巣を放置しておくと、精巣は徐々に委縮してしまいます。精子を作る細胞も少しずつ機能を失い、数も減少してゆきます。この変化は高い温度環境では常に進行してゆき、成人になってからの男性不妊の原因になると考えられています。

さらに、停留精巣から悪性腫瘍(しゅよう)ができやすい、停留精巣が外傷を受けやすく、精巣捻転(ねんてん)を起こしやすいなどともいわれます。

遊走精巣の場合でも、精巣挙筋の収縮が強くて1日のうちほとんど鼠径部に引き上げられていると、精巣の正常な機能の発育が妨げられかねないとされています。しかし、1日のうち何時間引き上げられたままなら病的で、それ以下なら正常範囲なのか、はっきりした基準がないのが現状です。

1歳の誕生日を過ぎても精巣が陰嚢内に触れないことがある場合には、遊走精巣と停留精巣の区別が難しいことも多いため、小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診察を受け、正しい治療方針を立ててもらうことが勧められます。

遊走精巣の検査と診断と治療

小児科、泌尿器科、小児外科の医師による診断では、陰嚢の中に精巣を触れない場合に、鼠径部にあるのかどうかをよく触診します。この触診で精巣を触知する場合には、遊走精巣(移動性精巣)か停留精巣です。陰嚢内に容易に引き下ろすことができ、手を離してもしばらくとどまっている場合には、遊走精巣と確定されます。

もし鼠径部に精巣を触れない場合には、精巣がない疾患である無精巣症と区別する必要があるため、超音波検査、MRI検査、腹腔鏡などにより、腹腔内に精巣があることを確認することがあります。同じ目的で、精巣を刺激するホルモンを注射して、男性ホルモンの分泌能力をみるホルモン検査を行う場合もあります。

小児科、泌尿器科、小児外科の医師による治療では、普段どの位置に精巣があるのか、24時間のうちどれくらいの時間、精巣が引き上げられているのかを、家族に1カ月ほど観察してもらいます。 就寝時、入浴時、入浴後など安静にしている時に陰嚢に存在しているようであれば、まず問題なく遊走精巣と見なされ、多くは治療の必要はありません。

24時間のうちほとんどの時間引き上げられている場合や、両側性の遊走精巣で程度が強い場合に、精巣機能の温存の意味から、4~5歳ごろまでに陰嚢内に皮下ポケットを作成し、精巣を収納して固定する手術を行う医師もいます。遊走精巣に対して手術を適用するかどうかは、医療機関によってまちまちで、5パーセントから25パーセントくらいと見なされています。

手術でなく男性ホルモンを使って精巣の下降を促す方法もありますが、外性器に変化を来す副作用があったり、保険診療として認められていないことから、日本ではあまり行われていません。

なお、幼児期に遊走精巣で治療が不要と判断されたケースで、その後何年も経ってから精巣が再び引き上げられることがあり、程度の強い遊走精巣では長期間のフォローが必要となります。

🇦🇨有痛性外脛骨

足関節の内くるぶし前下方にある外脛骨に痛みを感じる疾患

有痛性外脛骨(がいけいこつ)とは、足関節の内くるぶし前下方にある、舟状骨(しゅうじょうこつ)という骨の内側に存在する外脛骨に痛みを感じる疾患。外脛骨は、普通には退化して存在しない余分な骨である過剰骨に相当します。

過剰骨である外脛骨は、日本人の15〜20パーセントの人に認められるものの、多くは足部中央の内側に骨の出っ張りがみられるだけです。しかし、スポーツ活動が盛んになる小学校高学年から中学生になると、スポーツによる使いすぎや、シューズによる圧迫、さらには捻挫(ねんざ)などの外傷を契機に、外脛骨に痛みを感じる有痛性外脛骨を生じることがあります。

原因の多くは、比較的大きな外脛骨と舟状骨とを結合している薄い線維軟骨が損傷されるためで、外脛骨がわずかに動くことにより痛みを生じます。

圧倒的に女子に多く発症し、土踏まずが低くアーチのない足、いわゆる偏平足の傾向のある人も、体重がより内側にかかるために発症しやすくなります。

症状は、足の内側に骨性の隆起があり、ここを押した時の圧痛や、シューズを履いた時の痛み、スポーツをした時の痛みがあり、足全体のだるさを覚えることもあります。激しい痛みではありませんが、痛みを避けるために、外側に体重をかけて歩いていることがあります。

有痛性外脛骨は若年性のスポーツ障害として数多く見られる疾患の一つですが、成人になって痛みが発症することも少なくありません。多くは捻挫を契機として足部中央の内側に痛みが出現しますが、時には明らかな誘因がなく痛みが生じることもあります。

有痛性外脛骨の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、足の内側に骨性の隆起と同部位の圧痛があり、単純X線検査で外脛骨が確認されると、比較的容易に有痛性外脛骨と確定できます。

区別すべき他の障害としては、外脛骨の存在しない外反偏平足、後脛骨筋腱(けん)炎、シンスプリント、膝蓋骨亜脱臼(しつがいこつあだっきゅう)症候群があります。

整形外科の医師による治療では、まず局所の安静を行い、鎮痛剤、温熱療法などの保存療法で痛みの改善を図ります。症状が長引くケースや、繰り返し痛みが出現するようなケースでは、ギプス固定を行ったり、土踏まずの部位を持ち上げる足底板(アーチサポート)を装着する方法が有効なこともあります。

4カ月以上適切な保存療法を行っても一向に症状の改善がないケースや、何度も再発を繰り返し、日常生活やスポーツ活動に支障を来すようなケースでは、手術的に外脛骨の摘出術や接合術を行うこともあります。

有痛性外脛骨を発症した少年少女は、症状は骨の成長とともに改善することが多いので、焦らずに痛みを生じない程度のものだけに運動を制限して回復するのを待ちましょう。ジャンプやダッシュなど足部に負担のかかるスポーツ活動を3週間程度中止し、筋力トレーニングなど局所に負荷のかからないものに限るようにします。

スポーツ活動における練習量と練習メニューの見直しや、シューズが適しているかどうかをチェックすることも必要です。特に野球やサッカーなどで使用するスパイクシューズは、靴の足底部が堅く衝撃吸収に劣ることが多く、さらに土踏まずの部分の盛り上がりがほとんどないため、足にかなりのストレスがかかります。そこで、ランニングや筋力トレーニングなど本来の競技特性に関係のない練習では、なるべく通常のジョギングシューズに履き替えるようにするだけでも、症状を和らげることができます。

🇧🇭有痛性筋けいれん

運動中や睡眠中に、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態

有痛性筋けいれんとは、ふくらはぎの筋肉が突然、けいれんして激しい痛みを伴う状態。腓腹(ひふく)筋けいれん、こむら返り、こぶら返り、筋クランプとも呼ばれます。

同じような有痛性の筋肉のけいれんは、太もも、足の裏、首、腹などにも起こります。有痛性筋けいれんが起こりやすいのは、登山や水泳などの運動中や睡眠中。立ち仕事の多い人や、高齢者に多くみられます。局所的けいれんは無痛なケースが多いものの、一般的には激痛を伴います。

原因の多くは筋肉の疲れや冷え、運動不足、いつもと違う動きをしたことなどによるものです。血液の電解質異常、腎臓(じんぞう)や心臓の病気、糖尿病、腰椎(ようつい)の病気などが原因で起こる場合もあります。

人間の体は、筋肉の収縮と弛緩(しかん)を調節することによって、バランスのとれた動きをします。この筋肉の調節の仕組みは、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経からの信号が末梢(まっしょう)神経を通って筋肉に送られて、筋肉の収縮が起こり、次に筋肉や腱(けん)のセンサーから逆方向に信号が中枢神経に送られ、どれくらい収縮するか弛緩するかが決められています。

有痛性筋けいれんは、この仕組みの中で起こる異常収縮で、ふくらはぎの腓腹筋が異常な緊張を起こし、収縮したまま弛緩しない状態になり、激しい痛みを伴います。

筋肉の異常収縮が起こる理由は、2つ考えられます。1つは、神経や筋肉が刺激を受けやすい状態になっていることです。運動などで多量の汗をかいた時は、血液中のナトリウムやカリウムなどの電解質のバランスが崩れ、神経や筋肉が興奮しやすくなります。

もう1つは、筋肉や腱のセンサーがうまく作動しないことで、立ち仕事の後や、久しぶりに運動した後、加齢とともに夜に起こりやすくなる有痛性筋けいれんなどに相当します。足の筋肉が緊張した状態が長時間持続すると、センサーが常に刺激された状態に置かれ、やがてセンサーがうまく働かなくなります。この時に、ふくらはぎに余分な力がかかるとセンサーが過剰に反応し、異常な収縮が引き起こされ有痛性筋けいれんが起こります。

高齢者では、慢性の運動不足のために常に腓腹筋が緊張した状態にあり、少し脚を伸ばしたりふくらはぎを打っただけでも、有痛性筋けいれんを起こすことがあります。

また、寝ている時は脚の温度が低下し、センサーの感度が鈍くなることも理由に挙げらます。布団の重みや重力のため足先が伸びた状態になっていることも、有痛性筋けいれんを起こしやすくします。寝ていて伸びをする時に、かかとを前に出すようにすると少なくなります。

ほとんどの有痛性筋けいれんは病気とは無関係に起こるものですが、健康な人でも夏に多量の汗をかいた時に水だけ飲んで電解質が補給されないと、熱けいれんと呼ばれる有痛性筋けいれんを起こすので危険です。妊娠中のカルシウム不足、下痢によるカリウム不足などでも起こりやすくなります。

利尿剤やある種の漢方薬、民間薬などの薬剤も、電解質バランスを崩すことがあります。アルコール依存症や胃摘出後数年たってからビタミン欠乏によって起こることもあり、近年では、若者の食生活の偏りによるビタミンB1不足によって起こることも増加しています。

腎臓や心臓の病気、糖尿病のほか、ある種の筋肉や神経の病気、甲状腺の病気でも、有痛性筋けいれんが起こりやすくなることがあります。腰椎の変形が原因で、脊髄神経を圧迫するために神経の異常な興奮が起こりやすくなり、有痛性筋けいれんを起こすこともあります。

有痛性筋けいれんの対策と軽減策

頑固な有痛性筋けいれんや、足以外の筋肉にけいれんが起こる場合は、整形外科、内科、内分泌代謝科、老人科などの医師による診察が必要です。

医師による治療では、基礎疾患があればその改善を図るのが原則で、有痛性筋けいれんがひどい時には、筋弛緩薬、抗不安薬、漢方薬などを用い、電解質を改善する薬、タウリン、糖尿病の合併症に使用する薬を用いることもあります。一般的には、ビタミンEを摂取すると効果的といわれています。

薬の内服で症状が改善すれば、薬は減量または中止することが望ましく、再発するようであればその都度内服するようにします。

スポーツや立ち仕事の後では、筋肉の疲労をとることが予防に大切。血行をよくする意味からスポーツマッサージや指圧などを早めに行い、スポーツドリンクなどで水分と電解質の補給を心掛けます。

また、慢性的な有痛性筋けいれんでは運動不足の注意信号と考え、ふだんから脚のストレッチやマッサージをすることが予防になります。寝る前に、軽いストレッチやマッサージをするのもお勧めです。

カリウムやカルシウム、マグネシウムなどの電解質を補給するために、野菜や果物、海藻類、牛乳、小魚などをバランスよく食べることも、予防に役立ちます。ビタミンB1も筋肉代謝には重要な成分といえるので、多くを含む卵や豚肉、ぬか漬けなどを食べるようにします。

予防に心掛けても有痛性筋けいれんが起きてしまった時は、片方の手で痛いところを優しくさすって、もう片方の手で足のつま先をゆっくり顔の方へ曲げるようにして、ふくらはぎの筋肉をよく伸ばします。そうすれば、少しずつ痛みは治まります。

🇧🇭有痛性分裂膝蓋骨

運動中などに、膝の皿に相当する膝蓋骨のやや外側上方がズキズキと痛む障害

有痛性分裂膝蓋骨(しつがいこつ)とは、運動中などに、膝(ひざ)の皿に相当する膝蓋骨のやや外側上方がズキズキと痛む障害。

成長期の10~17歳の男子に多くみられる障害で、何らかの原因により分裂した膝蓋骨に痛みが生じ、運動や歩行に障害を来すものです。

膝蓋骨の分裂部分は、外側に多く、特に大腿(だいたい)四頭筋の外側広筋が付着している外側上方で最も多く認められます。また、2分裂だけではなく、3分裂やそれ以上の多分裂も認められることがあります。膝蓋骨の分裂が認められる人のうち、約40パーセントの人は両膝に分裂が認められるといわれています。

正常では1つの骨である膝蓋骨が2つ以上に分裂する分裂膝蓋骨の原因は、まだはっきりわかっていません。先天性異常、後天的癒合不全、外傷性癒合不全など諸説があります。

ただし、分裂膝蓋骨は、無症状の場合も多く、必ず障害をもたらすわけではありません。痛みや機能障害を生じる分裂膝蓋骨を、特に有痛性分裂膝蓋骨と呼びます。

膝蓋骨は、成長軟骨より骨が形成される元になる部分である小さな骨核(こつかく)と、大部分の成長軟骨から始まり、成長とともに徐々に成長軟骨部分の骨化が進み、成人と同様の形に形成されていきます。その過程で、外側上方の骨形成が最も遅いのが起因となって、有痛性分裂膝蓋骨が外側上方に発症する確立が高くなると考えられています。

また、骨形成が完成する前の成長軟骨部分は耐久性に劣るため、外力に対する抵抗力が完成された骨と比較して物理的にもろく、さらに、膝蓋骨の外側上方には強力な大腿四頭筋の外側広筋が付着し、その外側広筋の張力の影響を受けやすいことから、骨形成が部分的に阻害された結果、有痛性分裂膝蓋骨が外側上方に発症する確立が高くなると考えられています。

有痛性分裂膝蓋骨は、その多くで事故や転倒などの外傷や、スポーツによる過剰負荷など何らかの外力がさらに加わることで 、分裂骨片と膝蓋骨本体の間をつなぐ軟骨や線維を損傷し、症状が出現します。

症状としては、膝蓋骨の外側上方もしくは下端に痛みを生じます。痛みは運動で誘発され安静で軽快しますが、ひどくなると階段の昇降や歩行で痛みが誘発され、日常生活に支障を来すことがあります。膝蓋骨の盛り上がりを触知することがあり、指で押すと痛みます。

有痛性分裂膝蓋骨を生じやすいスポーツとしては、野球、サッカー、バレーボール、バスケットボール、陸上競技が挙げられます。

有痛性分裂膝蓋骨の検査と診断と治療

整形外科、ないし形成外科の医師による診断では、触診で膝蓋骨の分裂部分に骨性の盛り上がりを感知することがあります。また、癒合不全により骨の位置のずれ(転位)がある場合は、異常可動性を感知することもあります。

X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、分裂した膝蓋骨が確認できます。

整形外科、ないし形成外科の医師による治療では、症状が軽度の場合は、痛みが治まるまでスポーツを中止して安静を保つことで、自然と痛みは治まります。

症状がより積極的な治療を必要とする場合は、炎症を抑える目的で、膝蓋骨を温める温熱療法、消炎鎮痛剤入りのシップ薬や塗り薬による薬物療法を行います。膝への負担を軽くするには、膝をテーピングやサポーターで固定する装具療法、外側広筋を中心に筋肉を鍛え、柔軟性をつける運動療法を行います。

これらで症状が改善しない場合は、膝蓋骨の分裂部分への局所麻酔剤の注射や、副腎(ふくじん)ステロイド剤の注射を行います。

それでも痛みなどの症状が改善しない場合や、何度も再発を繰り返す場合は、膝蓋骨の分裂骨片の摘出、分裂骨片の接合、外側広筋や外側支帯という腱(けん)の切離などの手術を行います。外側広筋や外側支帯を切離する手術によって、膝蓋骨の外側上方にかかる筋肉の張力を除外することで、痛みが消失したり、分裂した部分の癒合が起こるなどの改善がみられることもあります。

予防法としては、膝への負担を減らすことが第一です。運動前後のウォームアップとクールダウンはしっかり行い、膝を急激に動かしたり、ジャンプ動作を繰り返したり、長時間のランニングを行うなど、膝を酷使する無理な運動は避けるようにします。

🇦🇽有痛性ベネット病変

野球などでの肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげが形成され、痛みを伴う状態

有痛性ベネット病変とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげである骨棘(こっきょく)が形成され、痛みを伴う状態。

有痛性ベネット病変は、上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じ、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。

オーバーヘッドスローイング動作では、ボールなどを投げると同時に腕全体も放り投げてしまう状態になるため、腕の裏側の筋肉である上腕三頭筋や肩関節内部にある関節包、関節唇といった軟部組織は腕を支えようとします。その時にこれらの筋がついている肩甲骨後下方あたりには常に引っ張られる力が加わり、関節包付着部が硬くなります。硬くなった関節包付着部は骨化現象を起こし、骨棘が形成されて骨が盛り上がり、弾力性を失うことがあります。これをベネット病変といいます。

野球などを長年続けてきた人には、ベネット病変がみられることがあり、通常痛みを伴うことはありません。

ベネット病変が進行して、痛みを伴う有痛性ベネット病変を生じると、野球のピッチャーの投球動作では、ワインドアップ時に肩の後ろに痛みが走り、加速時とフォロースルー時に肩の外後方から上腕外側の上腕三頭筋部にかけて激痛が走ります。全力投球ができなくなり、一度痛みが出ると、数日投げられなくなることもあります。

痛みの発現には、上腕に走行する腋窩(えきか)神経による刺激が関与し、後方関節唇の損傷や、肩関節で上腕を保持している腱板(けんばん)という筋肉と腱の複合体の損傷を伴っている場合が多くみられます。

有痛性ベネット病変の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、触診で肩甲骨後下方の関節包付着部に骨性の盛り上がりを感知することがあります。また、上腕の水平内転・内旋時の痛みと、肩関節の運動制限を感知することもあります。

X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、関節包付着部の骨棘が確認できます。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、後方関節唇と腱板後方の損傷を確認できることがあります。

整形外科の医師による治療では、特に痛みがひどくない場合は、骨棘部への局所麻酔剤の注射や、ステロイド剤の注射を行います。リハビリで、後方関節包の拘縮に対するストレッチング、腱板の強化訓練を目的として、上腕三頭筋や肩関節により近いローテーターカフである後方の小円筋や棘下筋の強化訓練、肩に負担のかからない投球フォームの指導を行います。

痛みがひどい場合や、スポーツへの復帰を希望する場合は、関節鏡手術で骨棘を切除したり、腋窩神経を剥離したりする場合もあります。

なお、骨化現象があるだけで痛みのないベネット病変の場合は、異常とは判断せず治療対象としません。

🇦🇼幽門狭窄

胃の出口の幽門が狭くなり、胃の内容物が停滞

 幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)とは、胃と十二指腸の境界部にある幽門が狭くなっている状態。胃幽門狭窄とも呼ばれます。

幽門狭窄があると、胃液と混ざった食べ物は十二指腸への移行ができないか、通りが悪くなって、胃の中に停滞しやすくなります。

軽いものでは、あまり症状が出ません。ひどくなると、胃部不快感、膨満感、胸焼け、げっぷ、しゃっくりなどが食後に生じます。狭窄が強いと、嘔吐(おうと)が起こり、食欲も減退します。嘔吐物には、強い酸臭、腐敗臭を伴います。このような状態が続くと、栄養状態が低下し、皮膚が乾燥してきます。水を飲んでも吐くようになれば、尿量も減ってきます。

原因としては、胃と十二指腸の器質的疾患、外部臓器の圧迫と癒着、胃運動機能の異常に分けられます。

胃と十二指腸の器質的疾患で頻度が最も多いのは、十二指腸潰瘍(かいよう)。潰瘍が治ってくる際に、十二指腸の変形で狭窄が起こってきます。幽門部に生じた胃潰瘍、がん、まれにポリープ、筋腫(きんしゅ)なども原因となります。また、先天的に幽門輪という部分の筋肉が肥大していて、新生児期に噴水状に嘔吐するものもあります。新生児の2000人に1人の割合でみられ、男の子に多くみられます。

外部からの圧迫と癒着は、胃の周囲臓器である膵臓(すいぞう)、大腸などに大きい腫瘍などができ、胃壁外から圧迫することで幽門狭窄が生じるものです。

胃運動機能の異常は、神経症、ショック、薬物、外傷、過度の飲酒などを原因として、胃自体の運動機能異常や幽門部の機能不全によって、幽門狭窄が生じるものです。

幽門狭窄の検査と診断と治療

できるだけ早く内科の専門医の診察を受け、幽門狭窄の原因を確認して、それに適応する治療を行うのが原則です。新生児の吐き方が激しい場合には、すぐに小児科の専門医に連れてゆきます。

医師の診断では、X線検査で幽門狭窄かどうかは判断できますが、その原因となる疾患を見付けるために、上部消化管内視鏡やガストログラフィンなど低張造影剤による造影検査を行い、病変の評価を行います。幽門の粘膜面に病変がないものの狭窄部が存在する場合には、腹部CT検査なども行います。胃運動機能の異常が原因となるものは、問診することでおおよその予想がつきます。

治療ではまず、嘔吐による脱水や電解質のバランスの乱れを補正するために輸液が行われます。また、安静と流動食などへの変更による食事調整によって、経過をみます。器質的疾患による幽門狭窄は、原疾患の治癒を行って改善を図ります。

胃運動機能の異常による幽門狭窄は、一過性のことが多く、輸液、安静、食事調整で早期に改善します。長引く際には、神経症、アルコールもしくは薬物依存、自律神経系異常などの原因となる疾患を確定し、その治療を行います。

新生児の吐き方が激しい先天性の幽門狭窄で、その程度が著しくて食べ物が摂取できない場合には、輸液で栄養を補給してから、手術をすることが基本的な治療法になります。まず点滴をして体液のバランスを改善し、次に胃の幽門の筋肉に切り込みを入れて狭くなっている部分を広げます。手術は1時間くらいで終わり、入院は1週間から10日くらいすることになります。この疾患による後遺症などの心配は、ありません。

2022/07/17

🇦🇽雪目(雪眼炎)

スキー場などで紫外線が作用して、目の角膜に生じる炎症

雪目とは、スキー場や雪山などで多量の紫外線を含む太陽光線の反射を受けて、角膜に起こる炎症。雪眼炎、雪盲(ゆきめくら)、光誘発角膜炎とも呼ばれます。

いわば、目の日焼けであり、スキーやスノーボード、雪山登山をする際に、サングラスやゴーグルをかけないで長時間過ごすと、雪面による多量の紫外線を含む太陽光線の反射を強く受けることになり、黒目の表面を覆う角膜に炎症が起こります。太陽光線以外に、電気溶接の火花や殺菌灯の光線によっても起こります。

多くは、紫外線に目がさらされて10時間ぐらいして発症します。そのため、スキーなどをしている日中はあまり自覚症状がなく、夜半から真夜中にかけて急に目が痛み出し、目が開けられなくなることもあるので、慌ててしまうケースが多くみられます。

角膜は神経が豊富なため、痛みが非常に強く出るのが特徴ですが、両目のまぶたがはれて、常に涙が流れ出ている状態となり、白目の表面を覆う結膜は充血します。角膜の表面には細かい多数の傷がつき、全体に薄く白濁が起こることもあります。

キラキラと目を開けていられないような好天気の日に、一日中ゲレンデや雪山にいても雪目にならない人がいる一方で、どんよりと曇った日に数時間スキーやスノーボードをしただけで雪目になる人もいます。一般的に、若い人のほうが雪目になりにくく、年齢が上がってくると目が紫外線に弱くなる傾向があります。

雪目の検査と診断と治療

雪目(雪眼炎)になった際には、アスピリンやセデスなどの鎮痛剤を内服し、なるべく目を閉じた状態を保ち、冷やしたタオルを目に当てて休みます。涙は出るほうがよいので、目を水で洗わないようにします。通常、痛みは次第に和らぎますが、翌日も強い痛みが続く時には、眼科で適切な治療を受けます。

医師による検査では、特殊な染色液で染めると角膜表面は点状に染まります。治療では、ヒアルロン酸の入った角膜を保護する目薬を主に使います。そのほか、抗生剤の目薬や眼軟こうも併用します。黒目の表面は修復能が高いので普通、数日で症状は回復します。

過度の紫外線は、シミやシワといった肌の老化を早めると同様、目の老化とも関連が深く、白内障や加齢性黄斑変性を進行させると考えられています。これを防止するためには、目にも紫外線対策が必要になります。

スキー場や雪山を始め紫外線にさらされるような場所では、帽子をかぶり、UVカット加工したサングラスやゴーグルをかけたり、紫外線カットのコンタクトレンズを用います。また、太陽光線、電気溶接の火花、殺菌灯の光線を直視しないように気を付けます。

🇩🇴ゆさぶられっこ症候群

ゆさぶられっこ症候群(Shaken baby syndrome)は、2歳以下の乳幼児、特に6カ月以下の乳児の頭部を激しく揺することによって、頭蓋(とうがい)内出血や眼底出血、脳損傷が引き起こされる症候群です。その予後は悪く、脳性まひ、精神遅滞、視力障害、さらには死を招くケースも。

乳幼児には、体に比べて頭部が相対的に大きく重い、頸部(けいぶ)の筋肉が未発達で支持力が弱い、未発達な脳組織が揺れや打撲で大きく移動するといった解剖学的な特徴があり、過度に揺さぶると、脳組織に損傷を与えるのが原因とされています。

アメリカでは30年ほど前から事例が報告され、乳幼児の身体虐待の一つとする考え方が一般的ですが、ふだんの子育て中にも、高い高いをしたり、強く揺するなど、不注意な子供のあやし方や親の認識不足から、ゆさぶられっこ症候群を引き起こしてしまうケースもあります。

乳児も6カ月を過ぎてくると、首も座り、高い高いなどをすると喜ぶようになります。少なくとも1歳を過ぎるまでは、むやみに揺さぶらない配慮が必要とされます。伝え歩きをする頃には、乳幼児が不意に転んで頭部を打たないよう、注意深い観察が必要とされます。

2022/07/16

🇦🇩癒着性中耳炎

外耳と中耳の境界にある鼓膜がへこんで、中耳の壁にくっつくために、難聴を来す疾患

癒着性中耳炎とは、外耳と中耳の境界にある鼓膜がへこんで、中耳の壁にくっつくために、難聴を来す疾患。

滲出(しんしゅつ)性中耳炎が治り切らない場合に、この癒着性中耳炎に移行することが多くみられます。滲出性中耳炎は真珠腫(しゅ)性中耳炎の原因にもなりますが、真珠腫性中耳炎よりも、癒着性中耳炎に移行することのほうが多くみられます。

滲出性中耳炎では、中耳の内圧が下がって、鼓膜がややへこみます。癒着性中耳炎に移行すると、耳管の空気の通りが悪いため、中耳の内圧が低くなって、鼓膜がひどくへこみ、中耳の主体である鼓室の裏側の粘膜と接着し、そのうちに癒着が起こります。癒着が長期間続くと、鼓膜がほとんど中耳を覆う形になります。

症状としては、聴力が低下する難聴があります。鼓膜が鼓室に張り付いているため、外から音が入ってきても、鼓膜がきちんと振動することができません。その上、音を鼓膜から内耳に伝える働きをする耳小骨も鼓膜に押さえ付けられるので、振動が内耳に伝わらず、かなり強い伝音難聴が起こります。

ただし、癒着性中耳炎は片側だけに起こることが多いので、両方の耳が聞こえなくなることは、ほとんどありません。また、耳垂れや痛みなどの症状はあまりありません。

音の聞こえ方がいつもと比べ違うなどの症状が数日続く場合は、癒着性中耳炎を来している可能性があるので、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して下さい。

癒着性中耳炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、鼓膜の観察、聴力検査を行うほか、CT(コンピューター断層撮影)検査を行って、鼓膜の癒着の程度、耳小骨の破壊の程度、障害の程度を調べます。この検査結果から、接着期、癒着初期、癒着中期、癒着後期、癒着末期の5段階に分類し、段階に合わせた治療を行います。

耳鼻咽喉科の医師による接着期の治療では、顕微鏡で鼓膜を観察し、鼓膜切開を行って鼓膜を吸引すると、鼓室から鼓膜を持ち上げることができます。次いで、鼓膜チューブを長期間留置すると、へこんだ鼓膜が正常な位置にまで戻ることが多いのですが、治るまで年単位の期間が必要です。

癒着初期の治療では、一度癒着が起こると鼓膜を正常な位置に戻すことはできないため、聴力が正常であれば、特に治療をせず、経過を観察します。滲出性中耳炎を伴う場合は、さらに悪化しないように鼓膜チューブ留置を行います。風邪を引いた後は滲出性中耳炎が必ず起こるため、鼓膜チューブ留置と耳管通気療法を併用して行い、耳小骨が破壊されないようにします。

癒着中期の治療では、鼓膜が癒着してさらに長期間が経過し、耳小骨が破壊されて中等度の伝音難聴が起こっている段階のため、入院して、癒着した鼓膜を剥離(はくり)挙上するとともに、耳小骨連鎖の再建を行う聴力改善手術を行います。

癒着後期の治療では、さらに長期間が経過し、中耳の炎症が内耳にも波及して混合難聴が起こっている段階のため、耳小骨の離断が明らかであれば、鼓室形成術を行います。

癒着末期の治療では、普通の会話の10倍以上の音が聞こえない高度難聴である聾(ろう)になっている段階のため、鼓室形成術による聴力改善の望みはありません。左右両方が聾になった場合は、人工内耳を入れる手術を行います。

🇦🇨輸入感染症

海外旅行者が渡航先で感染し、帰国に際して持ち込んだ感染症で、日本には存在しないか、存在してもまれなものを指します。人間が海外での食べ物や水、蚊の媒介などが原因で発症し、病原体を持ち込む事例以外にも、輸入した動物が病原体を持っていて感染が起こる場合、輸入した食品・食材が原因となって感染する場合もあります。

該当する輸入感染症は、マラリア、赤痢、コレラ、腸チフス、黄熱、デング熱、ラッサ熱・エボラ出血熱といったウイルス性出血熱、ウイルス性肝炎、条虫症・アニサキス症といった寄生虫症など。

🇦🇪指曲がり症

手指の関節軟骨が擦り減って、周囲の骨が変形する疾患

指曲がり症とは、手指の関節軟骨が擦り減って、周囲の骨が変形する疾患。手指の変形性関節症とも呼ばれます。

手指の先端の第1関節(DIP関節)に生じる指曲がり症はへバーデン結節と呼ばれ、手指の中央の第2関節(PIP関節)に生じる指曲がり症はブシャール結節、親指の付け根の第1手根中手骨(しゅこんちゅうしゅこつ)関節(母指CM関節、MP関節)に生じる指曲がり症は母指CM関節症です。

一番多いのがヘバーデン結節で、指が節くれ立って、しかも第1関節のところで曲がってくる疾患。約200年前に、英国の医師ヘバーデンが初めて報告しました。

かつては珍しい疾患でしたが、最近は日本でも患者が増えています。しばしばリウマチと間違われますが、実体は変形性関節症です。

程度の差こそあれ、親指から小指にかけてどの指も、第1関節の部分が節くれ立ちます。また、その関節で変形し、横に曲がります。変形の型は屈曲変形、側方への曲がりと多様で、変形の程度もいろいろです。

痛みを伴うこともあり、第1関節の動きも悪くなります。また、痛みのために強く握ることが困難になりますが、ある時期になると、痛みがなくなります。

同時に、第1関節の背側に骨の変形によってできる盛り上がりである結節ができ、時に柔らかいはれを伴うことがあります。それぞれ骨棘(こっきょく)、粘液のう胞(ミューカスシスト)とも呼ばれています。

原因は不明です。一般に40歳代以降の女性、特に更年期後の女性に多く発症します。男女比は1対10と圧倒的に女性に多く、男性には発症の平均年齢が高くなる傾向があります。

手をよく使う人には、なりやすい傾向があります。遺伝性は証明されてはいませんが、母や祖母、姉妹がヘバーデン結節になっている人は、体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意する必要があります。

全身の関節に変化が起きることがあるリウマチと違って、ヘバーデン結節がほかの部分の関節に波及することはありません。

手指の中央の関節である第2関節に生じる類似の指曲がり症がブシャール結節で、はれ、痛み、こわばり、変形などの症状が現れます。

長年の指の使用や繰り返される過度の負担のために、加齢に伴って第2関節の軟骨が擦り減て、周囲の骨が変形するために、ブシャール結節を発症します。

進行すると、手指の曲げ伸ばしができなくなったり、手指が横に曲がった状態で固まってしまったりします。同時に、指関節の背側の一部がこぶのように盛り上がってしまうことがあります。ぞうきんを絞ることができなかったり、字を書くことが不便になったりすることもあります。

通常、ブシャール結節は一つの手指から始まり、次第に両側の手指の第2関節に広がっていく特徴があります。

中高年、特に女性に多く発症します。また、手指の第1関節に現れるへバーデン結節の20パーセント程度に合併して、ブシャール結節が現れます。

手指の第2関節のはれ、痛み、こわばり、変形が続く場合には、関節リウマチやほかの膠原(こうげん)病の可能性もあるため、整形外科を受診し、関節リウマチなどと見分けた上で、対処することが勧められます。

さらに、親指の付け根の第1手根中手骨関節に生じる指曲がり症が母指CM関節症で、関節軟骨が擦り減り、骨同士が直接ぶつかり合うことで痛みを覚える疾患。

第1手根中手骨関節は、手指の手前の甲の骨である第1中手骨と、手首の小さい骨である大菱形骨(だいりょうけいこつ)の間にある関節で、親指が他の指と向き合って、物をつまんだり、握ったりなどの動作をする上で、大きな働きを担っています。

そのぶん使いすぎや老化に伴って、関節軟骨の摩耗が起きやすく、進行すると関節がはれ、第1中手骨の基部が外側に亜脱臼(あだっきゅう)してきて、親指が変形してきます。

母指CM関節症を発症すると、物をつまむ時や瓶のふたを開ける時など親指に力を必要とする動作で、親指の付け根付近に痛みが出ます。進行すると、この付近が膨らんできて、親指が横に開きにくくなります。また、親指の指先の関節が曲がり、手前の関節が反った白鳥の首と呼ばれる変形を示してきます。

ひどくなると安静時にも痛かったり、変形が気になるようになってきます。

中高年女性に多く見られ、手芸や園芸など手をよく使う趣味を持つ人だけでなく、特に何もしていない人でも発症します。近年は高齢化により、発症者数は急増しています。

指曲がり症の検査と診断と治療

整形外科の医師による指曲がり症の一つであるヘバーデン結節の診断では、手指の第1関節の変形、突出、痛みがあり、X線(レントゲン)写真で関節の透き間が狭くなったり、関節を形成する軟骨が壊れたり、骨棘があることが認められれば、へバーデン結節と確定できます。

整形外科の医師によるヘバーデン結節の治療では、保存的療法として局所の安静や固定、投薬、局所のテーピング、温熱療法、運動療法などが行われます。急性期では、局所の固定、非ステロイド消炎鎮痛剤の投与、軟こう塗布、少量のステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の関節内注射などが行われます。

保存的療法で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す場合は、第1関節を固定する手術、骨棘と粘液のう胞を切除する手術が行われることもあります。

対処法としては、第1関節が痛む時は安静を心掛けます。痛くても使わなくてはならない時は、テーピングがお勧めです。ふだんでも、指先に過度な負担が生じることを避けます。

整形外科の医師による指曲がり症の一つであるブシャール結節の診断では、手指の第2関節のはれ、痛み、こわばり、変形、盛り上がりがあり、X線(レントゲン)検査で関節の透き間が狭くなったり、関節を形成する軟骨が擦り減ったり、骨棘があることが認められれば、ブシャール結節と確定できます。

関節リウマチやほかの膠原病との鑑別のために、血液検査を行う場合もあります。関節リウマチでは、手指の第2関節のほか、手首、肘(ひじ)など全身の関節に症状が現れます。

整形外科の医師によるブシャール結節の治療では、ヘバーデン結節の治療と同じく、保存的療法として局所の安静や固定、投薬、局所のテーピング、温熱療法、運動療法などが行われます。急性期では、局所の固定、非ステロイド消炎鎮痛剤の投与、軟こう塗布、少量のステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の関節内注射などが行われます。

保存的療法で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す場合は、手術療法として、第2関節の固定をする関節固定術や、骨棘を切除して関節を整える関節形成術などを行うこともあります。

対処法としては、第2関節が痛む時は指を動かさないように安静を心掛けます。痛くても使わなくてはならない時は、テーピングがお勧めです。ふだんでも、指先に過度な負担が生じることを避けます。

整形外科の医師による指曲がり症の一つである母指CM関節症の診断では、X線(レントゲン)検査を行います。X線写真で、第1手根中手骨関節の透き間が狭く、関節軟骨が擦り減って骨が直接ぶつかり合った部位に、小さな突起である骨棘があったり、時に亜脱臼が認められると、確定できます。

区別しなければならない疾患には、手首の親指側の腱鞘(けんしょう)炎であるドケルバン病や、リウマチによる関節炎があります。

整形外科の医師による母指CM関節症の治療では、痛みが軽いうちは消炎鎮痛剤入りの湿布剤などの外用薬を用います。関節保護用の軟性装具を着けるか、固めの包帯を親指から手首にかけて8の字型に巻いて動きを制限することもあります。

それでも不十分な際は、消炎鎮痛剤の内服、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)の関節内注射を行います。

痛みが強く、亜脱臼を伴う高度な関節の変形や親指の白鳥の首変形が見られる際には、大菱形骨の一部を取り除いて関節を作り直す関節形成術、関節を動かないように固定する関節固定術、人工関節を使う人工関節置換術などの手術を行うこともあります。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...