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2022/08/08

🇰🇪空気嚥下症

唾液とともに空気を飲み込む量が増え、げっぷや腹部膨満感が現れる状態

空気嚥下(えんげ)症とは、唾液(だえき)とともに空気を飲み込む量が増え、げっぷや腹部膨満感が現れる状態。呑気(どんき)症とも呼ばれます。

頻度はそれほど多くありませんが、ほとんどは精神的な要因によって生じ、治療が難しいこともあります。

また、空気嚥下症に加えて、無意識のうちに奥歯を噛(か)みしめる動作による緊張が首や肩に波及し、肩凝り、側頭部痛、頭痛、あごや目の痛み、腕のしびれなどをもたらすことがあり、これを噛みしめ呑気症候群と呼びます。

正常な人でも、食事の際に食べ物と一緒に多少の空気を飲み込みますが、空気嚥下症の人では、食べ物の摂取とは無関係に無意識に大量の空気を嚥下します。

精神的に不安定な状態である抑うつ、神経症(神経症性障害)、ヒステリーなどの時に、起こりやすくなります。そのほかには、呼吸不全、心不全などを起こした時に現れることもあります。原因については、ほかの機能性疾患に比べて明らかにされているとはいいにくいのが現状です。

異常に大量の空気を繰り返し飲み込むことによって、げっぷや腹部の膨満感、上腹部の不快感、腹鳴、吐き気などの症状を起こします。上腹部の不快感を紛らわすために空気の飲み込みを繰り返すことが多く、食道や胃に飲み込んだ空気を繰り返しげっぷとして吐き出す習慣があります。げっぷをしても、必ずしも腹部の膨満感が軽減するわけではありません。

同様の症状が食道や胃腸などの消化器官の疾患でも起こることがあるので、まず消化器科を受診することが勧められます。消化器官に器質的疾患がないことが判明したら、まず心配はありません。どうしても気になる場合は、心療内科や精神科を受診することが勧められます。

噛みしめ呑気症候群の場合は、口腔(こうくう)外科、歯科を受診するとよいでしょう。

空気嚥下症の検査と診断と治療

消化器科、あるいは心療内科、精神科の医師による診断では、まず腹部X線(レントゲン)検査、胃X線造影(胃バリウム)検査あるいは内視鏡検査、腹部超音波(エコー)検査、腹部CT(コンピュータ断層撮影)検査などを行い、食道や胃腸などの消化器官に器質的な疾患がないことを確認します。

消化器科、あるいは心療内科、精神科の医師による治療では、原因が未解明で特有の改善方法がないため、症状の理解、空気を嚥下する習慣や食生活の改善、不安や緊張の緩和などを図ります。食事はゆっくりとよく噛んで食べるようにすること、ビール、炭酸飲料、甘い物、脂の多い物、香辛料などは避けるようにすることを勧めます。

薬物療法としては、比較的症状の軽い場合には消泡薬、消化酵素薬、消化管機能改善薬などを使用し、重い症状の場合には抗うつ剤や抗不安剤などの向精神剤を使用します。

噛みしめ呑気症候群では、マウスピース(スプリント)の装着によって症状が改善する場合があります。

🇸🇴櫛状胃炎

胃の粘膜の表面だけに炎症が起こっている疾患

櫛状(くしじょう)胃炎とは、胃の粘膜の表面に慢性の炎症が起こっている疾患。表層性胃炎とも呼ばれます。

慢性胃炎の初期症状ともいえる状態で、胃腺(せん)の委縮はあまり目立たず、胃の出口近くの粘膜の表面に、櫛で引っかいたような線状の発赤や、斑状(まだらじょう)の発赤、むくみなどの症状がみられるのが特徴です。

飲酒やたばこ、香辛料の摂取、熱い飲食物の刺激、薬物による刺激が原因になるほか、感染したピロリ菌に対して、人体の免疫が反応している状態であるために炎症が起こっているのが原因の場合もあります。また、櫛状胃炎は不安やストレスなどの精神的な状態との関連もあるようです。

胃の粘膜の表面のみの炎症ですから、それほど症状は強くなく、自然と改善していく場合もあります。しかし、そのまま進行して長期化してくると、胃粘膜は次第に委縮し、胃液(胃酸)や粘液を分泌しない状態になり、委縮性胃炎になってしまう恐れがあります。

櫛状胃炎はどちらかといえば若い人に多く、胃に不快感があり、胃もたれを起こしたり、食後に腹痛を起こすことがあります。場合によっては、胃潰瘍(かいよう)と同様に空腹になると胃に痛みを感じたり、重苦しさが起こってくることがあります。食事をすると軽減されますが、げっぷや胸焼けなどを伴うこともあります。

胃の炎症症状の強い時には、食欲不振に陥ることもありますし、吐き気を覚えることもあります。このような症状は、1〜2年に及ぶこともあります。

櫛状胃炎の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃の出口近くの粘膜に多数の発赤や、むくみが観察されます。正確な診断には、組織の一部を採取して調べる生検による病理学的検索が必要です。組織を調べると、原因となるピロリ菌がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科、内科の医師による治療では、症状がみられるようであれば、胃液の分泌を抑える制酸剤や抗コリン剤(自律神経遮断薬)を使用します。食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

薬の効果によって一時的に回復しますが、炎症が治まっていなければ、薬の服用をやめれば再発することも考えられます。薬の服用が必要だと判断された場合では、医師の指示を守り正しく服用することが必要です。

日常生活では、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、酒や香辛料など刺激の強いものは控えめにします。

可能ならば禁煙し、ストレスを改善する方法も見付けましょう。

🇸🇴クッシング症候群

副腎皮質から分泌されるグルココルチコイドの過剰分泌によって、引き起こされる疾患

クッシング症候群とは、副腎(ふくじん)皮質から分泌されるホルモンのうち、グルココルチコイド(糖質コルチコイド)の過剰分泌によって起こる疾患。アメリカの脳神経外科医ハーヴェイ・ウィリアムス・クッシングによって、初めて報告されました。

下垂体(脳下垂体)に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから副腎皮質刺激ホルモンがたくさん出るために起こる場合と、副腎皮質に腫瘍ができて起こる場合が主なものです。前者はクッシング病とも呼ばれます。

クッシング症候群の原因としては、クッシング病が約35パーセント、副腎腫瘍が約50パーセントを占めるほか、時には、肺や膵(すい)臓、消化管にできた腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが多量に分泌され、副腎に働いてグルココルチコイドが過剰に分泌される場合もあります。女性に多くみられます。

近年、ステロイド剤(副腎皮質ホルモン)がネフローゼや白血病などの治療に、大量に用いられるようになったために人工的な副腎皮質ホルモン過剰が起こり、同じ症状を起こすことがあります。

クッシング症候群の症状としては、顔が丸くなり、にきびができやすくなります。肥満してきますが、手足はあまり太くならず、胴体が太いのが特徴です。また。肩や尻(しり)、太ももの筋肉が薄くなり、階段の上りなどがつらくなります。

そして、腹や太ももなどに皮膚伸展線である赤紫色のすじがみられ、皮膚が薄くなって、ちょっとしたことで青あざができやすくなります。高血圧、糖尿病が起こることもあります。骨が薄くなって背骨の圧迫骨折を起こし、身長が低くなったり、背部痛が起こることもあります。

女性では、月経が不順になったり、無月経になったり、毛深くなります。

クッシング症候群の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、副腎からグルココルチコイドが過剰に分泌されていることを確認するために、血液検査や尿検査を行います。

下垂体の腫瘍や肺、膵臓などの腫瘍から副腎皮質刺激ホルモンが出て起こっている場合は、副腎皮質刺激ホルモンが増えています。一方、副腎の腫瘍からグルココルチコイドが出ている場合は、副腎皮質刺激ホルモンはかえって減っています。このどちらであるかを調べて、どこに原因があるかを明らかにします。

下垂体の腫瘍の場合は、頭部のMRIの検査を行います。副腎の腫瘍の場合は、腹部のCTの検査などを行います。

医師による治療としては、腫瘍の場合は下垂体でも副腎でも、手術を行って過剰なホルモンを作っている腫瘍を摘出することが最もよい方法です。

下垂体の腫瘍の場合は、経蝶形骨洞的手術という、鼻の穴から下垂体に達し頭を開けずに、顕微鏡や内視鏡で見ながら腫瘍を摘出する方法によって、以前に比べ楽に手術できるようになっています。手術で摘出し切れない場合や、体力的に手術が困難な人の場合は、注射や内服薬による治療、放射線療法などが行われます。

副腎の腫瘍の場合は、大きくなくて適応できれば、開腹せずに腹部に小さい穴を3カ所くらい開けて内視鏡と手術の道具を通し、副腎を摘出する内視鏡手術が数多く行われています。内視鏡手術の適応ができない時は、開腹や背中を開けて副腎を摘出します。体力的に手術が困難な場合などは、グルココルチコイドを作る副腎の働きを抑える薬を内服します。

🇩🇯くも膜下出血

くも膜下出血とは、脳を覆う軟膜にできた動脈瘤(りゅう)が高血圧などのために破裂して、出血する病気です。

脳は外側から順に硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜で覆われており、くも膜とその下の軟膜との間を、くも膜下腔(くう)といい、ここには髄液が満たされています。血管のこぶである動脈瘤が破裂すると、血液がくも膜下腔に一気に流出するため、頭がい内圧(頭がい骨の内部の圧力)が上がって、激しい頭痛が起こります。

バットか金づちで殴られたような、今までに経験したことのないひどい痛みに襲われ、その頭全体に感じる痛みがしばらく続きます。頭がい内圧が急激に上がって脳全体が圧迫されると、意識障害が起こったり、吐いたりします。重症の場合、意識障害から、こん睡状態に進んだまま死亡することもあります。

病院に急行しなくては命にかかわる頭痛の代表が、くも膜下出血による頭痛なのです。発症後、数時間以内に手術など適切な処置を行い、再出血を防ぐことが、非常に大切です。出血は、いったん止まりますが、再び破裂することが多く、再出血を起こすと、死亡率が非常に高くなるからです。

今まで経験したことのない突然の頭痛が起きたら、すぐにCT設備のある病院で受診することです。40~50代で、家族や親類にくも膜下出血を起こした人がいる人は、特に注意してください。

少量の出血を繰り返すタイプのくも膜下出血では、あまり激しくない痛みが反復するために、片頭痛と紛らわしい場合があります。

くも膜下出血の状況は、CT(コンピューター断層撮影法)検査によって判明します。出血量が少ない時は、CTでははっきりしないこともあり、症状からみて、くも膜下出血が疑われる場合は、髄液を採取して検査します。

出血が確認された時は、破裂した動脈瘤を血管撮影によって探し出し、頭がい骨を切開し、こぶの根元をクリップで挟むクリッピング法という手術が行われます。

出血によって髄液の流れが妨げられた急性水頭症の場合は、髄液を外に排出する手術を行うこともあります。また、発作後4日ほど経つと、脳の血管が細くなり、脳梗塞(こうそく)を起こすこともあるので、それを予防する薬が用いられます。

🇩🇯クラインフェルター症候群

男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで生じる先天的な疾患

クラインフェルター症候群とは、男性の性染色体にX染色体が1つ以上多いことで、女性化とみられる特徴を生じる一連の症候群。

1942年に、ハリー・クラインフェルターによって初めて紹介された性染色体異常です。

通常の男性の性染色体XY、通常の女性の性染色体XXに対して、クラインフェルター症候群の男性の性染色体はX染色体が1つ多いXXYとなっています。一般に染色体すべてを総合して、47, XXYと表現されます。また、X染色体が2つ以上多い48, XXXY、49, XXXXYや、48, XXYY、さらに46, XY/47, XXYのモザイク型もあります。

細胞分裂期の性染色体不分離で過剰に生じたX染色体が、クラインフェルター症候群の原因です。過剰に生じたX染色体の由来は、父母半々とされており、高齢出産がその一因とされています。

クラインフェルター症候群の80〜90パーセントを占めるXXY染色体の発生頻度は、新生児の男児1000人から2000人に1人とされ、決して珍しい異常ではありません。

過剰に生じたX染色体が多いほど、障害の傾向も強くなります。しかし、X染色体の数の異常があればクラインフェルター症候群の症状が高確率で出るわけではなく、X染色体が1つ以上多い組み合わせの染色体を持ちながら症状が全く出ないケースのほうが多く認められます。

アンドロゲン不応症と似通っていますが、アンドロゲン不応症は染色体異常ではなく、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群であり、別の疾患です。

クラインフェルター症候群の男児は、通常の男性器を持って生まれ、幼児期、学童期には特に症状はみられず、ほぼ正常な第二次性徴的変化を認めます。しかしながら、第二次性徴ごろから胴体の成長が止まる一方で、首や手、足などが成長するため、肩幅が狭く高身長で、手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

原発性の性腺(せいせん)機能低下症(高ゴナドトロピン性性腺機能低下症)を示すために、思春期から精巣の発達が進まず、精巣が小さいために無精子症となります。そのため、正常な勃起(ぼっき)能力と射精能力などの完全な性能力を持ちながら、男性不妊となります。

そのほか、ひげや恥毛の発育不全、乳腺(にゅうせん)がいくらか発達した女性化乳房、腹壁脂肪過多、筋力低下、性欲低下、骨密度の低下など多彩な症状を示します。男性乳がんやメタボリック症候群、糖尿病などを成人期に発症しやすい体質も伴います。さらに、男性ホルモン不足による更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を中年以降に発症しやすい体質も伴います。

発語の障害、言語の障害の可能性も高く、これが学校や社会での学習障害の原因となります。性自認は大多数が通常男性ですが、性同一性障害を伴う人もいます。

なお、46, XY/47, XXYのモザイク型で正常なXYの染色体が混在するタイプの場合には、少ないながらも精巣内で精子形成も認められ、子供を持つことができる人もいます。

外見上からの診断が難しく、思春期前にクラインフェルター症候群と診断されるのは、10パーセントに満たないともされています。多くは成人となり、男性不妊の原因精査によって診断されています。

クラインフェルター症候群の検査と診断と治療

小児科、ないし内分泌科の医師による診断では、通常、血液を用いた染色体検査を行い、クラインフェルター症候群と確定します。

また、血液検査を行い、男性ホルモンのテストステロンの低値、黄体化ホルモン(LH)と卵胞刺激ホルモン(FSH)高値を確認します。精液検査を行い、無精子症または極乏精子症を確認します。

小児科、内分泌科の医師による治療では、テストステロン補充療法を行います。通常、一生涯継続することになります。思春期に治療開始できた場合、正常な第二次性徴の発達など、良好な効果が期待できます。

男性不妊症に対する治療として、卵細胞質内精子注入法を行うと、健常児の出産も可能になってきています。

🇪🇷クラッシュ症候群

四肢の筋肉に持続的な圧迫が加えられ、その圧迫から解放された後に起こる全身障害

クラッシュ症候群とは、体の一部が長時間にわたって何かに挟まれるなどして、四肢の筋肉に持続的な圧迫が加えられ、その圧迫から解放された後に起こる各種の全身障害。挫滅(ざめつ)症候群とも呼ばれます。

地震や台風、竜巻などの災害時には、倒壊した建物や家具の下敷きになって多発します。災害時以外では、交通事故などで何かに挟まれ、救出までに時間を要した場合にも発症します。まれに、特定の筋肉を過度に酷使する運動を行うことにより発症する場合もあります。

体の一部、特に四肢が長時間にわたって持続的な圧迫を受けると、筋肉が損傷を受け、組織の一部が壊死(えし)します。その後、圧迫された状況から解放されると、壊死した筋細胞からカリウム、ミオグロビン、乳酸などが血液中に大量に漏出します。

そのため、クラッシュ症候群を発症すると意識の混濁、唇や指先が紫色になるチアノーゼ、失禁などの症状がみられるほか、高カリウム血症、ミオグロビン血症、凝固障害などの全身的な異常を示します。高カリウム血症により心室細動、心停止が引き起こされたり、ミオグロビン血症により腎臓(じんぞう)の尿細管が壊死し、急性腎不全が引き起こされたりします。

圧迫から解放された直後は、意識があるために軽傷とみなされ、その後突然、容体が悪化して重篤となり、死に至ることも少なくありません。

両下肢に起こったクラッシュ症候群では、損傷部にはれと点状出血を生じ、両下肢はまひします。下肢の知覚障害、運動障害もみられますが、少なくとも多少の左右差があります。

クラッシュ症候群の検査と診断と治療

整形外科、形成外科の医師による診断では、受傷した時の状況や、損傷部のはれ、知覚まひや運動まひから判断可能ですが、導尿により赤褐色のミオグロビン尿を認めれば確定できます。

血液検査では、血液が酸性になる代謝性アシドーシス、血液濃縮、高カリウム血症、低カルシウム血症、高クレアチンキナーゼ血症、凝固障害などの異常が現れます。

整形外科、形成外科の医師による治療では、高カリウム血症、代謝性アシドーシスを改善するために、炭酸ナトリウム、グルコン酸カルシウムを投与します。高度で持続する高カリウム血症には、緊急の血液透析を行います。

損傷した四肢のはれは時間がたつとともに進行しますので、筋肉の圧力が高ければ、圧力を抜くための筋膜切開を行います。

受傷から救出までに時間がかかり、治療が遅れた場合は、軽症でも腎不全が起こり、肺水腫(すいしゅ)を合併することもあるため、人工呼吸器による呼吸管理と人工腎臓による血液浄化を行います。

🇸🇸クラミジア感染症

クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマーティスという微生物を原因とする性(行為)感染症です。今日の性感染症のうち、日本においても、世界においても最も多い疾患で、人々の間で流行しています。

性器に感染した場合、性器クラミジア感染症、喉(のど)に感染した場合、咽頭(いんとう)クラミジア感染症と呼ばれます。また、クラミジア感染症は自覚症状がほとんどないので、感染や発病に気が付かないまま進行しますので、検査による早期発見、早期治療が必要になります。

性の場合は、ほとんど症状はありませんが、下り物が増える、下り物が黄色くなる、下腹部に痛みがある、排尿時に痛むといった軽度の症状が現れることもあります。感染したことに気付かず、治療せずにいると、子宮頚管(けいかん)炎を引き起こし、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎になり、将来、不妊症、子宮外妊娠になる恐れがあります。

また、妊婦が感染していると、出産時、新生児が産道を通る際に感染します。感染した新生児は、生後2~3週間ころに結膜炎、生後3~4カ月ころに肺炎を発症する危険性があります。

男性の場合は、性交の1~3週間後に、排尿時に痛む、透明もしくは白いさらさらした分泌液が出る、といった症状が現れます。症状が現れても治療せずにいると、尿道炎、前立腺(ぜんりつせん)炎、精巣上体炎といった病気になる恐れがあります。

肛門に感染すると、痛みが起こり、黄色い膿(うみ)と粘液の分泌物が出ます。そのほか、口を使った性行為により、喉に感染する場合があります。この咽頭への感染により、喉が痛いといった症状が現れることがありますが、症状が出ない場合もあります。

医師による診断では、感染箇所により検査方法が異なります。性器に感染している場合、男性では尿による検査、女性では子宮頚管から採取した分泌物による検査ですが、喉に感染している場合、咽頭のぬぐい液による検査になります。

治療では、キノロン系、テトラサイクリン系の抗生物質が非常に有効です。通常は、7~14日間服用します。また、性的パートナーへの治療も大切です。

2022/08/04

🇨🇴クラミジア結膜炎

性行為によって、微生物のクラミジア・トラコマーティスが目に感染し、引き起こされる結膜炎

クラミジア結膜炎とは、性行為によって、細菌よりも微細なクラミジア・トラコマーティスという微生物が目に感染し、引き起こされる結膜炎。

封入体結膜炎とも呼ばれます。この疾患名は、まぶたの裏側から眼球につながる結膜の上皮細胞内に寄生し、増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が「封入体」と呼ばれることに、由来しています。

同じクラミジア・トラコマーティスによって引き起こされる結膜炎にトラコーマがありますが、こちらはクラミジア・トラコマーティス血清型A、B、Ba、Cによって起こり、年齢的には10歳未満の小児や子供に多くみられます。

クラミジア結膜炎は、クラミジア・トラコマーティス血清型D、E、F、G、H、I、J、Kによって起こり、成人に多くみられます。同じクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kは、性行為により性器に感染して性器クラミジア感染症も引き起こします。

クラミジア結膜炎はほとんどの場合、性器にクラミジア・トラコマーティス血清型D〜Kの感染を持っている人との性行為の後、発症します。まれに、汚染されたプールの水から伝染し、発症することもあります。また、新生児が母親から産道感染して、発症することもあります。

2〜19日の潜伏期の後、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆う結膜の急性の炎症として、まぶたがはれ、まぶたの裏側の眼瞼(がんけん)結膜が充血してむくみ、膿性(のうせい)の目やにが出ます。

かゆみやヒリヒリした痛みが生じ、涙が多く出ます。下のまぶたの眼瞼結膜には、多数の小さなぶつぶつ(ろ胞)が現れます。明るい光に対して過敏になり、まぶしく感じます。

眼球の黒目の前面を覆う透明な膜である角膜の上皮下に、点状混濁ができることもあります。小さなぶつぶつが大きくなり、血管が徐々に発達して結膜から角膜の上にまで侵入する新血管形成が現れることもあります。

目やにが出ると、特に朝、目が開けにくくなります。視界もぼやけますが、目やにを洗い流すと元のように見えます。角膜にまで感染が広がった場合、視界のぼやけは目を洗っても解消しません。

非常にまれですが、重度の感染により結膜に瘢痕(はんこん、ひきつれ)ができて荒れた粘膜となると、涙液の層に異常が生じることがあり、長期間に渡って視力が障害されます。

通常、初めは片目だけに症状が現れることが多いものの、放置しておくと両目ともに症状が現れることもあります。

目の症状のほか、多くの場合、感染した目と同じ側の耳の前のリンパ節がはれ、痛みを伴います。通常、このような症状が1~3週間続きます。

出生時に、母親の産道を通る際に感染した新生児では、生後1週間前後で発症し、まぶたのはれ、充血、膿性の目やになどが起こります。しばしば、偽膜という分泌物の塊が結膜にできます。

中耳炎や肺炎を合併することもあります。性器クラミジア感染症にかかり、十分な治療をしていない母親の場合、出産時に産道のクラミジア・トラコマーティスが新生児の結膜のほか、のど、肺などにも付着するためです。

なお、新生児のクラミジア結膜炎では、眼瞼結膜に多数の小さなぶつぶつが現れる、ろ胞性結膜炎とはなりません。

クラミジア結膜炎に気付いた、早めに眼科の専門医の診察を受けることが勧められます。

クラミジア結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、症状の視診と目の検査を行います。目の検査では、目の表面を拡大して見るスリットランプという機器を用いて、詳細に調べます。スリットランプを使うと、結膜の炎症や、角膜、目の前方部分に当たる前房への感染の様子を観察できます。

また、点眼麻酔後、結膜表面から綿棒で擦過して得られた上皮細胞サンプルを顕微鏡で調べると、封入体と呼ばれる増殖するクラミジア・トラコマーティスの塊が見付かります。血液検査でクラミジア・トラコマーティス抗原のタイプを調べると、より綿密な治療方針を決めることができます。上皮細胞サンプルからクラミジア・トラコマーティスを培養する方法もありますが、時間がかかります。

性行為の相手に、性器クラミジア感染症があるかないかの情報も重要です。最近では特に、不特定多数との性行為とクラミジア結膜炎の関係が注目されているところです。新生児の発症では、母親の性器に性器クラミジア感染症があります。

眼科の医師による治療では、クラミジア・トラコマーティスに有効な、エリスロマイシンやアジスロマイシンなどのマクロライド系、ドキシサイクリンやミノサイクリンなどのテトラサイクリン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)の点眼剤や、眼軟こうが用いられます。

点眼剤は涙で洗い流されてしまうので、2~3時間ごとに点眼します。軟こうは長くとどまるので、6時間ごとの使用ですみますが、ものがぼやけて見えるという難点があります。

重篤な場合や性器クラミジア感染症があれば、抗生物質の内服も一緒に行います。点眼剤と内服薬が同時に処方される理由は、新生児の場合、のどや肺にも感染が起きていることが多いからです。大人の場合は、性器から感染し、女性では子宮の入り口に当たる子宮頸管(けいかん)、尿道などでクラミジア・トラコマーティスが増殖しているからです。

治療の原則は、抗生物質の眼軟こうを8週、抗生物質の内服薬を3週ほど続けることです。新生児の場合、2カ月ほど毎日点眼することが原則で、かなり根気が必要です。病原体のクラミジア・トラコマーティスそのものを除去し、完治するには少し時間がかかり、数週間から数か月ぐらい薬が必要となります。

クラミジア結膜炎にかかったら、まぶたを水道水ときれいな布でやさしく洗って、目やにのない清潔な状態に保ちます。冷湿布をすると目のかゆみや痛みが和らぐことがあります。感染力が強いので、目を洗ったり薬を塗った後には、手をよく洗う必要があります。

さらに、感染している目に触れた後で、感染していない目に触れないように気を付けます。感染している目をふいたタオルや布は、ほかのタオル類と別にしておかなくてはいけません。

クラミジア結膜炎にかかった場合は、風邪を引いた時と同じように学校や仕事を数日間休むようにします。疾患を完全に治し、感染を防ぐために、性交渉のパートナーの検査、治療も必要です。

🇵🇦クラミジア肺炎(オウム病)

微生物のクラミジアを吸入して、肺に起こる感染症

クラミジア肺炎とは、ウイルスに近いクラミジア・シッタシという微生物が原因となって生じる肺炎。オウム病とも呼ばれます。

クラミジア肺炎は本来、動物の疾患であり、人はクラミジア・シッタシに感染したオウムやインコなどの鳥類から感染する人畜共通の感染症の一つです。病原体がオウムから初めて分離されたことからオウム病と名付けられましたが、インコ、ハト、ニワトリ、ガチョウ、シチメンチョウ、アヒルなどオウム以外のペット鳥、家禽(かきん)類、野鳥でも、クラミジアに感染した鳥が確認されています。

クラミジアに感染している鳥は、糞便(ふんべん)中にクラミジアを排出します。乾燥した糞便が、ほこりや羽毛などとともに舞い上がり、人はそれを吸入することで感染します。感染している鳥に口移しで餌(えさ)を与えたり、鳥の羽根や排出物や鼻汁に直接触れたりなど、鳥との濃厚な接触で感染することもあります。

クラミジア肺炎は小児よりは成人に、男性よりは女性に多くみられ、発症は5〜6月に多い傾向がみられます。地域的に流行することもあれば、散発的に発生することもあります。肺炎に占めるクラミジア肺炎の頻度は、1〜2パーセント程度。

症状は軽度のインフルエンザ様から、多臓器障害を伴う劇症型まで極めて多彩です。 一般的には、感染後1〜2週間の潜伏期間を経て急激に発症します。頭痛や筋肉痛、関節痛を伴って、発熱、せき、胸痛、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、血たんなどの症状が現れます。重症になると、肺臓を主体に、全身の臓器に病変が認められるようになります。特に、肝臓、脾臓(ひぞう)、心臓が炎症を起こし、さらに、脳神経に異常を来して意識障害が現れ、死亡するケースもあります。

クラミジア肺炎の検査と診断と治療

鳥との接触歴があったり、鳥の飼育をしている人に発熱、せきが現れた場合はクラミジア肺炎(オウム病)が疑われるので、内科、呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。ペット鳥、家禽類が死んでいる場合は、特に疑いが濃くなるので、そのことを受診先の医師に伝えます。

医師による診断では、原因菌に対する抗体の検出のほか、原因菌の分離、原因菌の遺伝子の検出が行われることもあります。

治療には、テトラサイクリン系の抗生物質、またはマクロライド系の抗生物質が用いられます。ニューキノロン系の抗生物質も有効ですが、セファム系の抗生物質は無効です。早期診断と早期治療で完治できます。

クラミジア肺炎の予防ワクチンは、開発されていないので、感染している鳥への接触には注意が必要です。鳥ではクラミジア菌を保有していても、外見上ほとんど健常にみえます。弱った時や、ヒナを育てる時期などでストレスが加わった時、他の感染症を合併した時などに、糞便中に菌を排出し、人への感染源になります。

鳥への過度の接触を避けること、鳥にストレスを与えないように飼育すること、鳥に触れたらよく手を洗うこと、かごや飼育舎の掃除をこまめに行うこと、素手で糞便に触れないことなどが、予防のために大切となります。

🇵🇦グリーンネイル

爪が緑膿菌に感染し、緑色に変色する状態

グリーンネイルとは、細菌の一種である緑膿(りょくのう)菌が感染して、爪(つめ)の甲が緑色になる状態。 緑色爪(りょくしょくそう)とも呼ばれます。

この緑膿菌は腸内細菌の一種で、湿潤な自然環境中に広く存在している常在菌の一つであるため、健康な爪には感染することはありません。緑色の色素を持つ緑膿菌が感染して、爪の甲の色が緑色に変色したように見えるグリーンネイルは、爪が何らかの疾患にかかって傷付いている場合や、爪が常に湿っていて軟らかい状態の場合に起こります。

元になる爪の疾患として多いのは、爪カンジダ症や爪白癬(はくせん)、爪乾癬(かんせん)、爪甲剥離(はくり)症で、これらの疾患に合併して緑膿菌が爪の甲の下に侵入、繁殖して、グリーンネイルを引き起こします。

水仕事をする女性に多くみられ、抵抗力が低下している時には、感染した爪から、ほかの爪へ感染することもあります。時に爪囲炎を伴うと、圧痛が生じます。

女性が指先のおしゃれとして、爪の甲の上に付け爪(人工爪)をしている場合も、付け爪と爪の甲との間に透き間ができてきて、そこに水仕事や手洗いや入浴時に水が入り込んで湿潤した環境ができると、緑膿菌が侵入、繁殖して、グリーンネイルを引き起こします。

グリーンネイルになると、最悪の場合には爪を失ってしまうこともありますし、体内に入り込んでしまう可能性もあります。体内に感染すると、角膜炎や外耳炎、発疹(はっしん)、肺炎、敗血症、心内膜炎を引き起こしてしまう可能性があります。

緑膿菌は、消毒や抗生物質に対して抵抗力が強いため、治療が困難であるとされています。免疫不全や栄養状態が悪い場合は、重篤な全身感染症を引き起こし、致死的ともなります。また、ほとんどの抗生物質が効かない多剤耐性緑膿菌も多いのが特徴で、院内感染を引き起こす起因菌となっています。

まずは、爪の緑色の変色に気付いたら、付け爪をしている場合は使用をやめ、自然治癒を待つことです。そして、変色した爪とその周囲も清潔に保つこと、水仕事や手洗いや入浴後は、ぬれたまま放置せず、しっかり乾燥させることが大切です。それでも改善がみられない場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科での治療が必要になります。

元になる爪の疾患に合併して生じているグリーンネイルの場合は、自然治癒しないので、自己判断で間違った対処をしたり、たかが爪とほうっておかないで、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科で治療を受けることが必要になります。

グリーンネイルの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状や問診でグリーンネイルと判断できます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、緑膿菌は湿潤な環境で増殖するため、患部を乾燥させます。また、元になっている爪の疾患を治します。

爪カンジダ症で爪の甲が緑色になっている時は、浮き上がっている爪の甲をニッパー型の爪切りで取り除いて乾燥させ、緑膿菌に感受性のある外用抗真菌剤を半年ほど毎日、爪が伸びて緑色に変色した部分がなくなり、健康な爪に生え変わるまで塗ります。また、症状によっては、血液検査などで状態をよく見極めて、経口抗真菌剤を内服するケースもあります。

爪白癬で爪の甲が緑色になっている時は、水虫の外用剤はほとんど効果がないため、経口抗真菌剤を内服します。少なくとも、3〜6カ月間は内服します。硬く厚くなった爪の外側から外用剤を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分がゆき渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができますす。

爪乾癬で爪の甲が緑色になっている時は、爪乾癬に対する根本的な治療法はまだなく、完治させることは難しいと考えられているため、症状に合わせて外用剤、内服剤、光線療法などいろいろな治療を行います。

爪甲剥離症で爪の甲が緑色になっている時は、カンジダ菌の感染の可能性が強い場合には、外用抗真菌剤を塗ります。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤をこまめに塗ったり、ビタミンEの内服剤を使用する場合もあります。完治には1年程度を要します。

付け爪(人工爪)で爪の甲が緑色になっている時は、付け爪を取り除いて、患部を乾燥させます。自然の爪の甲の表面が変色していれば、爪やすりで着色部分を削り、緑膿菌に感受性のある外用抗菌剤を塗ります。

🇵🇦クリグラー・ナジャール症候群

遺伝的体質により、ビリルビンが体内から排出されにくいために黄疸を生じる疾患の一つ

クリグラー・ナジャール症候群とは、遺伝的体質により、生まれながらにしてビリルビン(胆汁色素)が体内から排出されにくいために、黄疸(おうだん)を生じる疾患。先天性ビリルビン代謝異常症とも呼ばれ、体質性黄疸の一つに相当します。

血液の赤血球の中には、ヘモグロビン(血色素)という物質が含まれています。ヘモグロビンは酸素を運ぶ役割を担っているのですが、寿命を120日とする赤血球が古くなって壊される際に、ヘモグロビンが分解される過程でビリルビンが作られます。

本来、脾臓(ひぞう)などで作られたビリルビンは血液に入ってアルブミンと結合し、肝臓に運ばれグルクロン酸抱合(ほうごう)を受けて解毒され、続いて、肝臓で生成される消化液である胆汁の中へ排出され、その胆汁の成分として胆道を通って小腸の一部である十二指腸の中に排出され、最終的には便と一緒に体外へ排出されます。便の黄色は、このビリルビンの色です。

ビリルビンが体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなり、これを黄疸といいます。

従って、赤血球や肝臓の細胞が急に壊された時や、胆道が結石や悪性腫瘍(しゅよう)などで閉塞(へいそく)した時などに、黄疸はよく現れます。しかし、このような疾患がないにもかかわらず、しばしば黄疸を認める場合はクリグラー・ナジャール症候群などの体質性黄疸が疑われ、その原因はビリルビンの肝臓の細胞の中への取り込みや、十二指腸の中への排出がほかの人より行われにくいという遺伝的なものと見なされます。

クリグラー・ナジャール症候群では、新生児期から発症し、黄疸を生じます。

特徴は、脂溶性で細胞毒性の強い間接型ビリルビン(非抱合型ビリルビン)を、水溶性で細胞毒性の弱い直接型ビリルビン(抱合型ビリルビン)に変換するグルクロン酸抱合酵素の活性が低下しているため、グルクロン酸抱合を受けていない間接型ビリルビン優位の高ビリルビン血症を示すことです。

変換酵素の活性が完全に欠けているため、生後まもなくから長引く核黄疸、もしくはビリルビン脳症と呼ばれる状態を示す生命予後の不良な重症型と、酵素の活性は正常の10パーセント未満を示すものの、問題なく成長し、黄疸以外の症状は認められない軽症型があります。

変換酵素の活性がゼロの場合には、高度の新生児黄疸を来してビリルビンが脳細胞まで侵すことがあり、後遺症を残したり、幼児期のうちに死亡してしまうこともあります。

クリグラー・ナジャール症候群の検査と診断と治療

小児科、あるいは内科の医師による診断では、血清中の間接型ビリルビン値の上昇、および胆汁中の直接型ビリルビン値の低下により判断します。重症型と軽症型の区別には、フェノバルビタールという薬剤を投与し、間接型ビリルビンを直接型ビリルビンに変換する酵素の有無を調べる方法があり、酵素の活性が残っている場合には活性の上昇が認められます。

小児科、内科の医師による治療では、クリグラー・ナジャール症候群の重症型の場合、間接型ビリルビン値を下げるために、光エネルギーでビリルビンをサイクロビリルビンに変化させて排出させる光線療法を行ったり、ビリルビン合成を抑えるための薬剤、便への排出を促すための薬剤を投与します。

しかし、成長とともにこれらの治療効果が低下し、最終的には肝移植療法が必要になります。

クリグラー・ナジャール症候群の軽症型の場合、フェノバルビタールの投与が有効です。

🇨🇷グリシン脳症

血液中に高濃度にグリシンが蓄積し、けいれん、呼吸障害などの神経症状を引き起こす疾患

グリシン脳症とは、脳や肝臓に存在するグリシン開裂酵素系の遺伝的な欠損のために、血液中や脳にグリシンが大量に蓄積することにより発症する疾患。高グリシン血症とも呼ばれ、先天性代謝異常症の一種です。

グリシンは人間の体内で合成できる非必須(ひっす)アミノ酸の一つであり、中枢神経系で神経伝達物質として働くため、グリシンの蓄積が重篤な神経障害をもたらします。新生児期に無呼吸となり突然死に至る重症型(新生児型)と、筋緊張の低下と精神発達の遅滞のみを示し、成人で偶然診断されることもある軽症型(乳児型、遅発型)が存在します。いずれも常染色体の劣性形質として遺伝します。

日本における発症率は、新生児60~70万人当たり1人と見なされます。欧米では新生児25万人当たり1人の割合で発症しますが、国によって大きな差があり、フィンランド北部で発症頻度が高く、発症率は新生児1万人当たりに1人となっています。カナダのブリティッシュ・コロンビア州で、新生児6万人当たり1人という報告もあります。

グリシン開裂酵素系はT蛋白(たんぱく)質、P蛋白質、L蛋白質、H蛋白質という4種類の蛋白質から形成される複合酵素で、GLDC、AMT、GCSH、DLDの4つの遺伝子にコードされる酵素により構成されています。遺伝子に変異が生じると、遺伝子情報に基づいて合成された蛋白質を基にして構成されている酵素にも変異が生じ、グリシンの分解反応を進めることが不可能になる結果、分解されなかったグリシンが血液中に蓄積し、グリシン脳症を発症します。

グリシン脳症の約6割ではGLDC遺伝子に変異を認め、残りの約2割ではAMT遺伝子に変異を認めます。GCSH 遺伝子の変異は極めてまれです。DLD遺伝子変異はリー脳症を引き起こしますが、グリシン脳症とはなりません。

重症型は、生後数日以内に活力低下、筋緊張の低下、無呼吸、しゃっくり、昏睡(こんすい)などが始まり、後に30分以上けいれんが持続するけいれん重積が起こり、しばしば死に至ります。

人工換気などの治療で新生児期を乗り切ると、自発呼吸が出てきます。その後、成長は認められますが、精神機能や運動機能の発達の遅れが目立つようになります。

重症型には、左右の大脳半球をつなぐ脳梁(のうりょう)の欠損、大脳皮質にあるシワの隆起した部分である脳回(のうかい)の異常、水頭症などの脳形成異常が高率に合併します。

軽症型は、新生児期をほぼ無症状に過ごし、乳幼児期から発達の遅れや筋緊張の低下が現れます。診断の手掛かりとなる特異的な症状を欠くため、多くは未診断のままと考えられます。軽症型では、多動、衝動的行動などの注意欠損多動症候群に類似した行動異常を伴います。

グリシン脳症の検査と診断と治療

小児科、小児神経科の医師による診断では、CTやMRIなどの頭部画像検査、血液検査、尿検査、脳脊髄(せきずい)液検査、脳波検査などを適宜行います。最近では、13Cグリシン呼気試験によって残存酵素の活性の程度を検査することもあります。

小児科、小児神経科の医師による治療では、有効な治療法が確立していないため、体内に蓄積したグリシンの排出目的で安息香酸(あんそくこうさん)ナトリウムの大量投与を行います。

グルタミン酸受容体の一種のNMDA型グルタミン酸受容体の拮抗(きっこう)剤(ブロッカー)であるデキストロメトルファン、ケタミンなどの投与による治療が、重症型のグリシン脳症の早期新生児期の障害を軽減してくれますが、長期予後はよくありません。

🇨🇷クリプトコックス症

ハトの糞中などにいる真菌を吸い込んで起こる感染症

クリプトコックス症とは、ハトの糞(ふん)などにいるクリプトコックスという真菌(かび)を吸い込むことが原因となって、発症する感染症。

クリプトコックス菌は自然界に広く存在する酵母状真菌で、日本では特に神社仏閣などのハトの糞の中から高率に見付けられています。ハトなど鳥の糞に含まれる窒素成分があると、クリプトコックス菌は大変よく増殖し、鳥の活動範囲の土が乾燥すると細かい微粒子となって、少しの風で舞い上がり、人間が気道から吸い込むこととなります。

鳥自身はクリプトコックス菌を運ぶことはあっても、体温が高いためにクリプトコックス菌の増殖が難しいために、クリプトコックス症にはなりません。猫などの動物も、人間と同じく発症します。

初めての感染は肺で感染を引き起こすことが多いものの、肺での初感染は何の症状もないことが多くみられます。健康診断や他の疾患で病院にかかった時に、偶然発見されたりします。 多くは体力や免疫力が落ちた時か、体力を消耗する疾患の二次感染として、初めて症状が出ます。まれに、健康な人にも症状が出ることがあり、必ずしも体力、免疫力の低下と関係しているとは限りません。

発症した場合には、発熱、せき、喀(かく)たん、頭痛、徐々に進行する倦怠(けんたい)感や食欲不振が現れます。次いで、急性または亜急性に髄膜脳炎を発症すれば、吐き気、嘔吐(おうと)を起こします。また、病巣が大脳皮質、脳幹、小脳にも及ぶ場合は、脳神経まひ、意識障害を起こします。重症になると、脳、脊椎(せきつい)髄膜の病巣により死亡に至ることもあります。肺で発症する場合、肺の中に単一または複数の腫瘤(しゅりゅう)ができたり、肺炎を起こすことがあります。

一般人口での発症者は、10万人につき年間0.2〜0.9人と見なされています。なお、自然条件では、クリプトコックス症になった人や動物から、他の人や動物への感染は起こりにくいと考えられています。

クリプトコックス症の検査と診断と治療

クリプトコックス症の症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。早期に診断されない場合は急速に病状が進行することもありますので、注意が必要です。

医師による診断に際しては、胸部X線検査やCT検査が行われ、たん、髄液、皮膚滲出(しんしゅつ)物から原因となるクリプトコックス菌を調べ、円形の酵母様細胞が検出されれば、診断が確定します。

治療に際しては、一般に抗真菌剤が用いられ、フルコナゾール、イトラコナゾール、フルシトシンを始めとするアゾール系抗真菌剤が第一選択となります。このほか、アムホテリシンBなどの抗真菌剤も使われ、静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、肺のクリプトコッカス症では、自然治癒する場合もあります。

予防のためには、体力や免疫力が落ちた人、他の疾患を持っている人は、ハトが集まるような場所に近寄らない注意が必要です。周囲の人たちには、そういう人が治療を受ける医療機関の近くで、ハトにエサをあげるのをやめる配慮が必要です。

2022/08/02

🇲🇱クルーゾン症候群

遺伝が原因として考えられる先天性の異常疾患

クルーゾン症候群とは、遺伝が原因として考えられている先天性の異常疾患。生まれ付き、頭や顔、あご、手足の異常を起こします。

クルーゾン症候群の主な症状としては、頭蓋(とうがい)骨縫合早期癒合症が挙げられます。

乳児の頭蓋骨は何枚かの骨に分かれており、そのつなぎを頭蓋骨縫合と呼びますが、乳児期には脳が急速に拡大しますので、頭蓋骨もこの縫合部分が広がることで脳の成長に合わせて拡大します。成人になるにつれて縫合部分が癒合し、強固な頭蓋骨が作られるわけです。

頭蓋骨縫合早期癒合症は狭頭症とも呼ばれ、染色体や遺伝子の異常が原因となって、頭蓋骨縫合が通常よりも早い時期に癒合してしまう疾患。その結果、頭蓋骨や顔面骨に形成不全がみられて、頭、顔、あごに変形が生じます。頭蓋骨の変形は、早期癒合が起こった縫合線と関係があり、長頭、三角頭、短頭、斜頭などと呼ばれる変形が生じます。

眼球突出、両目の離間、気道狭窄(きょうさく)、歯列のかみ合わせ異常、高口蓋や口蓋裂など、さまざまな症状もみられます。また、頭蓋骨の変形によって脳が圧迫されるなどの障害が発生し、水頭症の合併、頭蓋内圧の上昇を認めることも少なくありません。

乳児の頭蓋骨は、子宮内での圧迫、産道を通る際の圧迫、また寝癖などの外力で容易に変形します。こうした外力による変形は自然に改善することが多いので心配ありませんが、クルーゾン症候群における頭蓋骨縫合早期癒合症との鑑別が大切です。

クルーゾン症候群の検査と診断と治療

乳幼児の頭の形がおかしいと心配な場合は、形成外科や小児脳神経外科の専門医を受診します。

クルーゾン症候群の症状には、軽度なものから重度なものまであり、形成外科や脳神経外科の領域のほか、呼吸、循環、感覚器、心理精神、内分泌、遺伝など多くの領域に渡る全身管理を要します。乳幼児の成長、発達を加味して適切な時期に、適切な方法で治療を行うことが望ましいと考えられ、関連各科が密接な連携をとって 集学的治療が行われます。

頭蓋骨縫合早期癒合症の治療は、放置すると頭の変形が残ってしまうばかりでなく、脳組織の正常な発達が抑制される可能性があるため、外科手術になります。

手術法としては従来から、変形している頭蓋骨を切り出して、骨の変形を矯正することで正常に近い形に組み直す頭蓋形成術が行われています。乳幼児の骨の固定には、できるだけ異物として残らない吸収糸や吸収性のプレートが用いられます。

近年では、この頭蓋形成術に延長器を用いた骨延長術も行われています。具体的には、頭蓋骨に刻みだけ入れて延長器を装着し、術後に徐々に刻みを入れた部分を延長させ、変形を治癒させるという方法。

骨延長術のメリットとして、出血が少なく手術時間の短縮が図れる、骨を外さないため血行が保たれるので委縮や変形が少ない、骨欠損が比較的早期に穴埋めされる、皮膚も同時に延長可能である、術後に望むところまで拡大可能であるなど挙げられます。一方、デメリットとして、頭蓋形成術より治療期間が長く1カ月程度は入院しなければならない、延長器を抜去する手術が必要となるなどが挙げられます。

さらに、内視鏡下で骨切りを行い、ヘルメットで頭の形を矯正するなどの手術方法も開発されています。

頭蓋骨の手術だけでなく、顔面骨を骨切りして気道を拡大し、眼球突出や不正咬合(こうごう)を適切な位置へ移動させる手術も行われます。

単純な頭蓋骨縫合早期癒合であれば、適切な時期に適切な手術が行われれば、一度の手術で治療は完結することが期待できることがあります。クルーゾン症候群性の頭蓋骨縫合早期癒合症では、複数回の手術が必要になることもまれではありません。頭蓋骨、顔面骨の形態は年齢により変化しますので、長期に渡る経過観察が必要です。

🇲🇼グルカゴノーマ

膵臓のランゲルハンス島の腫瘍で、グルカゴンを過剰に分泌

グルカゴノーマとは、グルカゴンを過剰に分泌する膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の腫瘍(しゅよう)。グルカゴン産生腫瘍とも呼ばれ、血糖値が上昇し特有の発疹(はっしん)が現れます。

グルカゴンは、エネルギー代謝に必要なグリコーゲンを分解して、血糖値を上昇させる作用を持つホルモンの一つ。29個のアミノ酸よりなるペプチドホルモンであり、炭化水素の代謝に重要な機能を持ちます。膵臓の組織内に島状に散在すランゲルハルス島にあるA細胞(α細胞)で生合成、分泌されて血液中に放出されます。

同じランゲルハンス島にあるB細胞(β細胞)から分泌され、糖尿病の特効薬として知られるインシュリンとともに、血糖値を一定に保つ作用をするホルモンですが、インシュリンとは逆に、血糖値が下がって糖を必要とするようになった際、肝臓の細胞に作用してグリコーゲンの分解を促進します。つまり、グルカゴンの分泌は低血糖により促進され、高血糖により抑制されます。

このグルカゴンを分泌するグルカゴノーマが発生すると、グルカゴンを過剰を分泌して血糖値が高くなるために、糖尿病症状が出て、体重も減ります。ほとんどの発症者に、慢性的な赤茶色の発疹(はっしん)の症状も出て、発疹は水疱(すいほう)を作って破れ、かさぶたとなり、鼠径(そけい)部から始まって臀(でん)部、脚、上腕へと広がります。

また、口内炎、口角炎もでき、貧血、低アミノ酸血症を示すようになります。

グルカゴノーマは70パーセントから80パーセントが悪性で、単発性が多く認められます。直径は1センチから35センチで、通常3センチ以上になります。腫瘍の大きさと症状の強さは相関せず、小さいものでも肝臓やリンパ節に転移することがあります。

腫瘍の成長が遅いので、ほとんどの人が発症後15年以上生存しています。症状が出始める平均年齢は50歳で、患者の約80パーセントは女性。閉経期あるいは閉経後の女性に多くみられます。

グルカゴノーマの検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断は、血中グルカゴン値が高いことから判断します。続いて、グルカゴノーマの位置を確認するために、CT検査、超音波検査、動脈に造影剤を注入してX線撮影を行う動脈造影検査を実施します。試験開腹手術が必要となる場合もあります。

医師による治療は、腫瘍を手術で切除して症状をなくすことが理想的ですが、根治的な切除が行えるのは30パーセント前後とされています。切除可能な腫瘍に対しては、膵頭十二指腸切除術または膵体尾部切除術が行われます。

根治的な切除が行えない場合にも、グルカゴンの分泌量の減少を目的に可能な限りの切除が行われます。肝臓への転移に対しては、可能な限り評価可能な転移巣の切除が行われます。

癒着が著しく切除が行えない場合や転移している場合は、化学療法で抗がん剤のストレプトゾシンとドキソルビシンの組み合わせを投与し、グルカゴン値を下げて症状の軽減を図ります。しかし、化学療法では延命は期待できません。

ホルモン産生を抑制する薬剤のオクトレオチドを投与してグルカゴン値を下げると、発疹が消えて食欲が増し体重も増えてきます。ただし、オクトレオチドの投与によるインシュリン分泌の影響で、体内のブドウ糖代謝能力である耐糖能が低下して、逆に血糖値が上がってしまうこともあります。

発疹に対しては、亜鉛軟こうを塗ったり、アミノ酸や脂肪酸の静脈投与で治ることもあります。

🇲🇼グルカゴン産生腫瘍

膵臓のランゲルハンス島の腫瘍で、グルカゴンを過剰に分泌

グルカゴン産生腫瘍(しゅよう)とは、グルカゴンを過剰に分泌する膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の腫瘍。グルカゴノーマとも呼ばれ、血糖値が上昇し特有の発疹(はっしん)が現れます。

グルカゴンは、エネルギー代謝に必要なグリコーゲンを分解して、血糖値を上昇させる作用を持つホルモンの一つ。29個のアミノ酸よりなるペプチドホルモンであり、炭化水素の代謝に重要な機能を持ちます。膵臓の組織内に島状に散在すランゲルハルス島にあるA細胞(α細胞)で生合成、分泌されて血液中に放出されます。

同じランゲルハンス島にあるB細胞(β細胞)から分泌され、糖尿病の特効薬として知られるインシュリンとともに、血糖値を一定に保つ作用をするホルモンですが、インシュリンとは逆に、血糖値が下がって糖を必要とするようになった際、肝臓の細胞に作用してグリコーゲンの分解を促進します。つまり、グルカゴンの分泌は低血糖により促進され、高血糖により抑制されます。

このグルカゴンを分泌するグルカゴン産生腫瘍が発生すると、グルカゴンを過剰を分泌して血糖値が高くなるために、糖尿病症状が出て、体重も減ります。ほとんどの発症者に、慢性的な赤茶色の発疹(はっしん)の症状も出て、発疹は水疱(すいほう)を作って破れ、かさぶたとなり、鼠径(そけい)部から始まって臀(でん)部、脚、上腕へと広がります。

また、口内炎、口角炎もでき、貧血、低アミノ酸血症を示すようになります。

グルカゴン産生腫瘍は70パーセントから80パーセントが悪性で、単発性が多く認められます。直径は1センチから35センチで、通常3センチ以上になります。腫瘍の大きさと症状の強さは相関せず、小さいものでも肝臓やリンパ節に転移することがあります。

腫瘍の成長が遅いので、ほとんどの人が発症後15年以上生存しています。症状が出始める平均年齢は50歳で、患者の約80パーセントは女性。閉経期あるいは閉経後の女性に多くみられます。

グルカゴン産生腫瘍の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断は、血中グルカゴン値が高いことから判断します。続いて、グルカゴン産生腫瘍の位置を確認するために、CT検査、超音波検査、動脈に造影剤を注入してX線撮影を行う動脈造影検査を実施します。試験開腹手術が必要となる場合もあります。

医師による治療は、腫瘍を手術で切除して症状をなくすことが理想的ですが、根治的な切除が行えるのは30パーセント前後とされています。切除可能な腫瘍に対しては、膵頭十二指腸切除術または膵体尾部切除術が行われます。

根治的な切除が行えない場合にも、グルカゴンの分泌量の減少を目的に可能な限りの切除が行われます。肝臓への転移に対しては、可能な限り評価可能な転移巣の切除が行われます。

癒着が著しく切除が行えない場合や転移している場合は、化学療法で抗がん剤のストレプトゾシンとドキソルビシンの組み合わせを投与し、グルカゴン値を下げて症状の軽減を図ります。しかし、化学療法では延命は期待できません。

ホルモン産生を抑制する薬剤のオクトレオチドを投与してグルカゴン値を下げると、発疹が消えて食欲が増し体重も増えてきます。ただし、オクトレオチドの投与によるインシュリン分泌の影響で、体内のブドウ糖代謝能力である耐糖能が低下して、逆に血糖値が上がってしまうこともあります。

発疹に対しては、亜鉛軟こうを塗ったり、アミノ酸や脂肪酸の静脈投与で治ることもあります。

🇲🇬グルテン腸症

小麦に含まれる蛋白質のグルテンが小腸粘膜に障害を起こし、栄養素の吸収が減少する疾患

グルテン腸症とは、小麦に含まれる蛋白(たんぱく)質のグルテンが小腸粘膜に障害を起こし、栄養素の吸収不良が現れる疾患。グルテン過敏性腸炎、グルテン腸症候群、グルテン不耐症、スプルー、セリアック病、セリアックスプルーなどとも呼ばれます。

グルテンは主に小麦に含まれ、大麦、ライ麦、オート麦など他の麦類では含有量が比較的少量です。このグルテンに対する遺伝性の不耐症がグルテン腸症であり、発症した人がグルテンを含んだ食品を摂取すると、グルテンの分解ができず、腸管免疫システムがそれを異物と認識して過剰に働くことで、産生された抗体が小腸の絨毛(じゅうもう)を攻撃し、慢性的な炎症が起こります。

この炎症によって、上皮細胞が変性したり、絨毛が委縮して、その突起が平坦(へいたん)になったりします。その結果、平坦になった小腸粘膜は糖、カルシウム、ビタミンB群などの栄養素の吸収不良を起こし、小腸がしっかり機能しなくなることで、さまざまな症状が出てきます。

しかし、グルテンを含んだ食品の摂取をやめると、正常な小腸粘膜のブラシ状の表面とその機能は回復します。

グルテン腸症は、小児のころに発症する場合と、成人になるまで発症しない場合とがあります。症状の程度は、炎症によって小腸がどれだけ影響を被ったかで決まります。

成人で発症する場合は通常、下痢や栄養失調、体重減少が起こります。中には、消化器症状が何も現れない人もいます。グルテン腸症の発症者全体のおよそ10パーセントに、小さな水疱(すいほう)を伴い痛みとかゆみのある湿疹(しっしん)がみられ、疱疹性皮膚炎と呼ばれます。

小児のころに発症する場合は、グルテンを含む食品を食べるまでは症状が現れません。通常、パンやビスケット、うどんなどによってグルテンを摂取するようになる2歳から3歳の時に発症します。

子供によって、軽い胃の不調を経験する程度から、痛みを伴って腹部が膨張し、便の色が薄くなり、異臭がして量が多くなる脂肪便を起こすこともあります。

グルテン腸症による吸収不良から起こる栄養素の欠乏は、全身の栄養状態の悪化を招いて栄養失調を起こし、さらに別の症状を起こします。別の症状は、特に小児で現れやすい傾向にあります。

一部の小児は、成長障害を起こし身長が低くなります。鉄欠乏による貧血では、疲労と脱力が起こります。血液中の蛋白質濃度が低下すると、体液の貯留と組織の浮腫(ふしゅ)が起こります。

ビタミンB12の吸収不良では、神経障害が起こり、腕と脚にチクチクする感覚を生じます。カルシウムの吸収不良では、骨の成長異常を来し、骨折のリスクが高くなり、骨と関節が痛みます。

また、カルシウムの欠乏では、歯のエナメル質の欠陥と永久歯の障害を起こします。グルテン腸症の女児では、エストロゲンなどのホルモン産生が低下し、初潮がありません。

下痢、脂肪便、体重減少、貧血などのグルテン腸症を疑わせる症状に気付いたら、消化器内科を受診します。

グルテン腸症の検査と診断と治療

消化器内科の医師による診断では、小腸のX線検査と小腸の内視鏡検査を行います。小腸の繊毛が委縮、平坦化している状態が認められることと、グルテンを含む食品の摂取をやめた後に小腸粘膜の状態が改善していることにより確定します。また、グルテンを含む食品を摂取した時に産生される特異抗体の濃度を測定する検査を行うこともあります。

消化器内科の医師による治療としては、グルテンを含まない食事を摂取し、各種の栄養剤、ビタミンを補給します。

少量のグルテンでも症状を起こすので、グルテンを含む食品をすべて避けなければなりません。グルテンを含まない食事への反応は迅速に起こり、小腸のブラシ状の表面とその吸収機能は正常に戻ります。

ただし、グルテンはさまざまな食品中に広く含まれているので、避けるべき食品の詳細なリストと栄養士の助言が必要です。

グルテンを含む食品の摂取を避けても症状が継続する場合は、難治性グルテン腸症と呼ばれる状態に進んだ可能性があり、プレドニゾロンなどのステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)で治療します。

まれに、グルテンを含む食品の摂取を避け、薬物療法を行っても改善しなければ、静脈栄養が必要となります。小児では初診時に非常に重篤な状態になっている場合もあり、グルテン除去食を開始する前にしばらく静脈栄養の期間が必要になります。

グルテンを避ければ、グルテン腸症のほとんどの発症者はよい状態を保てますが、長期間にわたってグルテン腸症が継続すると、まれに腸にリンパ腫(しゅ)を形成し、死に至ることもあります。グルテン除去食を厳格に守ることで、腸のリンパ腫やがんなどの長期間にわたる合併症のリスクを減少させられるかどうかは、不明です。

グルテン腸症の人は、グルテンを含まない穀物である米やトウモロコシを中心に、卵、肉、魚、牛乳、乳製品、果物類、野菜類、豆類を中心に摂取することになります。加工食品の場合、グルテンを含まないと表示されている物以外は注意が必要。

摂取できない食品としては、パン、うどん、ラーメン、ヌードル、パスタ(スパゲッティ、マカロニ)、ビスケット・クッキー・クラッカーなどの菓子、ケーキ、ビール、大麦水などが挙げられます。

グルテンを含んでいる可能性がある食物としては、豚肉(ソーセージ、ボローニャソーセージ)、缶詰のパテや肉、ミートボール、ハンバーガー、ホットドッグ、ソース、トマトソース、調味料、コーヒー代用品、チョコレート、ココア、アイスクリーム、キャンディー、食品色素などが挙げられます。

🇲🇬くる病(骨軟化症)

カルシウム不足から骨が軟らかくなって、変形

くる病とは、骨が軟らかくなり、変形を起こしてくる疾患。骨成長期にある小児の骨のカルシウム不足から起こる病的状態で、成人型のくる病は骨軟化症と呼びます。

カルシウム不足による骨の代謝の病的状態というのは、骨基質という蛋白(たんぱく)質や糖質からなる有機質でできた骨のもとになるものは普通に作られているのに、それに沈着して骨を硬くする骨塩(リン酸カルシウム)が欠乏している状態です。このような状態では、骨が軟らかく弱くなります。

子供では、骨が曲がって変形したり、骨幹端部の骨が膨れてくることがあります。成人でも、骨が曲がったり、骨粗鬆(そしょう)症と同様に、ちょっとした外部の力で骨折が起こるようになります。

くる病の原因は、いろいろあります。ビタミンD欠乏による栄養障害、腎(じん)臓の疾患、下痢や肝臓病などの消化器の疾患、甲状腺(せん)や副腎などのホルモンの異常に由来するものや、妊娠、授乳などによるカルシウム欠乏に由来するものがあります。

骨粗鬆症と同時に存在することも多く、その場合には骨粗鬆軟化症と呼んでいます。

くる病の検査と診断と治療

確定診断のためには、X線写真で確かめるほか、血液検査や尿検査、血清生化学検査などにより、ビタミン、ホルモン、カルシウム、リン、血清アルカリホスファターゼなどの数値を測定します。

治療では、原因に応じて対処することになります。一般には、ビタミンDなどの薬剤投与を行い、小魚や牛乳などのようにカルシウムの多い食べ物を摂取し、日光浴をします。ビタミンDには、カルシウムやリンが腸から吸収されるのを助け、骨や歯の発育を促す働きがあります。このビタミンDは食べ物の中にあるほか、皮膚にあるプロビタミンDという物質が、紫外線を受けるとビタミンDになります。

骨が軟らかくなるのが治っても、骨の湾曲、変形などが強く残ったものは、骨を切って変形を矯正する骨切り術を行うこともあります。

🇲🇭くるみ割り症候群

左側の腎臓の静脈が動脈に圧迫されることが原因となって、目で見て赤い尿が出る疾患

くるみ割り症候群とは、左側の腎臓(じんぞう)からの出血のために、目で見て明らかに赤い尿が出る疾患。ナットクラッカー症候群、ナッツクラッカー症候群、左翼腎静脈わな症候群、左腎静脈捕捉(ほそく)症候群などとも呼ばれます。

まれな疾患で、その多くは小児から思春期前後に発症します。成人では、やせた人によくみられるともいわれています。

右側の腎臓の静脈は下大静脈(かだいじょうみゃく)にすぐに合流しますが、左側の腎臓の静脈は下大静脈に合流する途中で、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間を通り、くるみ割りの器具(ナットクラッカー)に挟まったような状態になっています。この静脈が2つの動脈に挟まった部位で、動脈圧が高く静脈圧が低いために静脈が押しつぶされると、静脈内圧が上がって静脈の血液の流れが悪くなるために、左側の腎臓の毛細血管がうっ血や出血を来し、排尿時に赤い尿が出ます。

身体的には無症状で、目で見て赤い肉眼的血尿のみが認められる場合が多く、一定の時を置いて起こる間欠的な血尿が認められます。血尿は、ピンク色から鮮紅色で、コーラのように色の濃いこともあります。

尿の中に混ざる赤血球の程度によって、多ければ目で見て明らかに赤い肉眼的血尿となり、少なければ見た目は正常な尿の色でも赤血球が混ざっている尿潜血、または顕微鏡的血尿の状態になります。くるみ割り症候群でも、検診などによって尿潜血を認めることによって発見されるケースが多くみられます。

症状が重いケースでは、血尿のほかに、片腹部痛、腰痛、貧血、精巣静脈瘤(りゅう)、卵巣静脈瘤、起立性蛋白(たんぱく)尿がみられることもあります。精巣静脈瘤、卵巣静脈瘤があると、不妊の原因になることもあります。

こうした一部のケースを除き、くるみ割り症候群の予後は良好で、多くは時間の経過とともに、他の静脈への側副血行路といわれる血液の別ルートが発達しますので、自然に治ることがほとんどです。

くるみ割り症候群の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、出血の部位が左側の腎臓であることを膀胱(ぼうこう)鏡で確認後、造影剤を静脈注射して撮影する造影CT(コンピューター断層撮影)検査、腹部超音波(エコー)検査などを行います。

腹部超音波検査の際には、左側の腎臓静脈、卵巣静脈、副腎をよく観察し、それぞれの拡張や、腎臓静脈の周囲の循環系による圧迫、狭窄(きょうさく)がないかどうかに注意します。超音波検査法の一種である超音波ドップラー法という検査を行い、腎臓静脈を観察し、狭窄部位から下大静脈への血流速度の計測をすることもあります。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療は、基本的には不要で、側副血行路が発達し自然に治ることが多いものの、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。

貧血が進行するほどの肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂(じんう)内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。

それでもうまく出血のコントロールができない場合には、左側の腎臓静脈の狭窄部位に、血管の中で拡張して適切な太さに保つステントと呼ばれる機器を挿入する手術を行うこともあります。あるいは、左側の腎臓静脈が下大静脈に合流する部位を切り離し、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間の距離が広い下側につなぎ直す、左腎静脈転位術という手術を行うこともあります。

🇲🇭クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)

生まれつき甲状腺の働きが弱い疾患

クレチン症とは、生まれつき甲状腺の働きが弱いために、甲状腺(せん)ホルモンの分泌が不足している疾患。知能低下や発育障害が起こる重症から軽症まで、症状の出方はさまざまです。別名、先天性甲状腺機能低下症。

発生頻度は、出生児5000~6000人に1人の割合と推測されています。男女比は1:2で、女児に多いようです。

胎児期における発生の異常によって、甲状腺そのものが形成されていない、甲状腺があっても十分な大きさがない,甲状腺が舌根部など別の場所にあって働かない、甲状腺があっても甲状腺ホルモンの合成に障害があるなどのために、甲状腺ホルモンが不足の状態になります。まれに、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に、原因があるケースもあります。

出生時体重は正常ですが、次第に成長、発達が遅れてきます。新生児黄疸(おうだん)から引き続き、黄疸がなかなかとれません。

顔つきは特徴があり、まぶたがはれぼったく、鼻は低く、いつも口を開け、大きな舌を出しています。これをクレチン顔貌(がんぼう)と呼びます。皮膚は乾燥し、あまり汗をかかず、腹部は大きく膨れています。また、臍(さい)ヘルニア、頑固な便秘があります。

また、四肢、特に手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず、あまり泣かずによく眠ります。体動も不活発で、おとなしい子供です。

これらの症状は乳児期以後に認められるものが多く、新生児期にははっきりした症状を示しにくいものです。

そのまま放置しておくと、運動機能の発達の遅れ、発育障害がみられ、おすわりや歩行が遅れ、知能も障害されます。また、骨の成熟が著しく遅れ、身長が伸びずに小人症になります。

検査と診断と治療

現在の日本では、新生児の集団スクリーニングが全国的に行われており、クレチン症(先天性甲状腺機能低下症)の症状が現れる前に、ほとんどが発見されます。

この集団スクリーニングは生後5~7日に、足の裏から一滴の血液を濾(ろ)紙で取り、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定によって行われます。このスクリーニングのみでは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)遅発上昇型などの症例や、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に原因があるケースが見逃されますので、症状があれば要注意です。地域によっては、遊離サイロキシン(FT4)の測定を同時に行っています。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であると、再採血あるいは精密検査になります。集団スクリーニングで精密検査の通知が届いたら、速やかに指定された医療機関を受診します。

医療機関によっては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離サイロキシン(FT4)などの再検査、大腿(だいたい)骨遠位骨頭核のX線検査、甲状腺の超音波検査などを行います。一般に、クレチン症では、骨の発育が遅延し、大腿骨遠位骨頭核が出現していないか、小さいと見なされています。

一過性甲状腺機能低下症、一過性高TSH血症、ごく軽度のクレチン症との区別のため、母親の甲状腺疾患、母親がバセドウ病の場合には抗甲状腺剤内服、胎児造影、イソジン消毒などによるヨード大量曝露(ばくろ)の有無などが、確認されます。

症状がそろっていて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が高く、甲状腺ホルモン値が低いと、診断が確定します。

診断が確定したら治療を開始し、1日1回、甲状腺ホルモン剤の内服を行います。一般に、生後3カ月以内に薬剤の内服が開始できれば、知能障害や発育障害を残さずに正常の発達を期待できますので、経過を見ながら薬剤の量を加減します。生後12カ月以後では、知能障害を残してしまいます。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...