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2022/09/12

🇰🇭水いぼ

幼児に多いウイルス性のいぼで、他人にも移りやすい疾患

水いぼとは、6歳以下の子供の皮膚に多くできる小さな、丸い突起物。正式には、伝染性軟属腫(しゅ)といいます。

でき初めは水っぽく見えるので、水いぼという名前があります。ウイルス感染が原因で起こり、自分の皮膚に移って広がるだけでなく、プールなどで他人にも移りやすい疾患です。

背中や首、ひざの裏など皮膚の薄いところにできやすく、直径1~3ミリほど、肌色や白色、赤みがかったものがあります。半球状に盛り上がり、表面は滑らかで光沢があり、成長したものでは中央にへそのようなくぼみができるのが特徴です。

自覚症状は少ないものの、時に多少のかゆみを伴うこともあります。気になって絶えずいじることも多く、このため自分の体に次々と移して数を増やすことになります。

放っておいて自然治癒することもあります。しかし、半年から2年、長いと4年ほどかかりますし、その間に水いぼの数が増えてしまう恐れもあります。早めに皮膚科の専門医を受診することが勧められます。

水いぼの検査と診断と治療

先が輪っかになった特殊なピンセットで、水いぼをつまみ取るのが、最も早く効果的な方法です。いぼの中にあるウイルスの白い塊を取り除くのです。ただ、痛みがあるので、泣いたり暴れたりする子供もいます。痛みを和らげるために、事前に局所麻酔剤付きのテープを張った後に行うこともあります。

一部の医師では、痛くない治療として、いぼを液体窒素で凍らせウイルスを死滅させる方法や、硝酸銀溶液を塗って焼き取る方法などをしています。しかし、治療期間が長くなったり、効果が出にくかったり、硝酸銀の場合、患部回りの皮膚にまで薬剤がついてしまい、軽いやけどの跡が残ってしまうこともあるなど一長一短です。治療内容を問い合わせてから、受診するとよいでしょう。

家庭での注意としては、軽いかゆみを感じることがあっても、いじって、いぼをつぶさないこと。ウイルスが散って症状が広がったり、他人に移すことになります。 水を介して移ることはなく、裸同士の接触で感染すると考えられています。治るまで入浴は兄弟姉妹と別々にし、タオルも使い分けます。保育園などのプールは、治療がすむまで控えることが望まれます。

2022/08/03

🇧🇲味覚障害

味覚障害とは、食べ物の味を感じなくなったり、何を食べても嫌な味になったり、甘いものを苦く感じたりといった、舌に感じる味覚の障害を指します。

人間の味覚には塩味、甘味、苦味、酸味の四つの基本的な要素があり、それぞれの刺激に対して、より反応しやすい味蕾(みらい)が、舌の表面の乳頭内に存在します。味蕾が刺激されると、延髄、間脳を経由して大脳の側頭葉味覚中枢に味覚が伝達され、私たちは味を感じています。

味蕾では絶えず新しい感覚細胞が作られ、この感覚細胞は新陳代謝を繰り返し行うことで、味覚を正常に保っています。新陳代謝がうまくいかなかったり、大脳への伝達経路が障害されると、味覚障害が起きます。

新陳代謝に必要な酵素を作り出すために必要なのは、ミネラルの一種である亜鉛。亜鉛の摂取が不足すると、新陳代謝が滞って新しい感覚細胞が作られにくくなります。

貧血、肝不全、糖尿病などの疾患や低亜鉛血症、薬物の副作用などで生じるほか、喫煙や舌の乾燥が原因となることもあります。中でも、亜鉛不足の原因で最も多いのは、薬物による副作用です。疑わしい時は、服用している薬について医師に相談してみましょう。

医師の側では、舌の上に甘味(砂糖)、酸味(レモン汁)、塩味(塩)、苦味(アスピリン、キニーネ、アロエなど)の4種類を乗せて味覚検査をするほか、正確には電気味覚計を用います。

🇺🇸ミクリッツ症候群

耳下腺、顎下腺、涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患

ミクリッツ症候群とは、唾液腺(だえきせん)である両側の耳下(じか)腺、顎下(がくか)腺と涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患。

白血病、悪性リンパ腫(しゅ)、結核、サルコイドーシス、軟部好酸球肉芽(にくげ)腫症(木村病)、シェーグレン症候群などが基礎にあって起こるものと、疾患の本体を明らかにできない原因不明ものとがあります。

白血病、悪性リンパ腫などが原因のミクリッツ症候群の時は、発熱、全身倦怠(けんたい)感、強い口内乾燥がみられることがあります。両側対称的に耳下腺、顎下腺、眼瞼(がんけん)部がはれるため、特徴的な顔貌(がんぼう)になります。

疾患の本体を証明できない原因不明のミクリッツ症候群は、ミクリッツ病、ないし良性リンパ上皮性疾患と呼ばれています。両側または片側の耳下腺、顎下腺、涙腺がはれる症状が現れ、痛みは伴いません。はれが増すにつれ、唾液が出にくくなり、口やのどの渇きなどが発生して耳下腺炎を起こし、涙が出にくくなって結膜炎を起こします。口内や目の乾燥感は強くありませんが、顔全体が熱っぽい感じになり、不快になります。

病理学的には、ミクリッツ病はシェーグレン症候群に類似しています。良性の病変で、唾液腺や涙腺にリンパ球が浸潤することで、慢性の炎症に類似した症状が現れます。リンパ球の浸潤の原因は、不明です。性別では、男女で症状の現れ方や、症状の現れる頻度に差はありません。経過をみている間に症状が消えることも、まれではありません。

長い期間、耳の前や顎(あご)の下がはれているようであればミクリッツ症候群、ミクリッツ病(良性リンパ上皮性疾患)の可能性もありますので、耳鼻咽喉(いんこう)科か歯科口腔(こうくう)外科、上まぶたがはれているのであれば眼科を受診することが勧められます。

ミクリッツ症候群の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査や超音波検査を始めとするさまざまな検査で、腫脹(しゅちょう)がある部位と全身的な広がりを確認します。

確定診断には、腫脹した組織の一部を切り取って顕微鏡検査を行う細胞診の必要がありますが、白血病などが原因であるとわかっていれば判断しやすくなります。

白血病、悪性リンパ腫などの基礎疾患が明らかになった際はミクリッツ症候群と確定し、これらの基礎疾患を除外するとミクリッツ病(良性リンパ上皮性疾患)と判断します。従来、シェーグレン症候群と診断されていた中に、ミクリッツ病がみられる場合もあります。シェーグレン症候群とは異なり、血液検査で高IgG4血症を認め、唾液腺と涙腺組織の細胞診で明らかなIgG4陽性形質細胞浸潤を認めます。

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による治療では、基礎疾患が明らかになった際は、その白血病、悪性リンパ腫などの治療を行います。

基礎疾患が不明の場合は、ステロイド剤(副腎〔ひくじん〕皮質ホルモン)による薬物治療を行います。ステロイド剤に対する治療反応性は良好で、唾液腺と涙腺機能の回復がみられます。悪性リンパ腫に変化する可能性があるので、定期的な検査が必要です。

🇦🇱ミクリッツ病

耳下腺などの唾液腺と涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患

ミクリッツ病とは、両側または片側の唾液腺(だえきせん)と涙腺に、慢性の痛みのないはれができる疾患。自己免疫疾患であるIgG4関連疾患の一種と見なされます。

唾液腺の耳下(じか)腺にはれが好発し、時に唾液腺の顎下(がくか)腺、舌下(ぜっか)腺、涙腺にもはれが発生し、まれには複数の腺に同時にはれが発生することがあります。

はれが増すにつれ、唾液が出にくくなり、口やのどの渇きなどが発生して耳下腺炎を起こし、涙が出にくくなって結膜炎を起こし、視力障害が出ることがあります。口内や目の乾燥感は強くありませんが、顔全体が熱っぽい感じになり、不快になります。

唾液腺や涙腺にリンパ球が浸潤することで、慢性の炎症に類似した症状が現れます。リンパ球の浸潤の原因は、不明です。性別では、男女で症状の現れ方や、症状の現れる頻度に差はありません。

従来、このミクリッツ病は、目と口が乾燥する自己免疫疾患であるシェーグレン症候群の亜型または同一の病態として認識されてきました。しかし、21世紀に入り、ミクリッツ病を発症すると、血中に免疫蛋白(たんぱく)IgG4が多くなり、唾液腺、リンパ節、膵臓(すいぞう)や胆管などにIgG4を分泌する細胞が多数集まっていることがわかったことから、IgG4関連疾患の一種と考えられるようになりました。

ミクリッツ病として症状が表に現れた場合、IgG4関連疾患をしばしば合併し、時間経過を経て、膵臓、腎臓(じんぞう)、肺臓、後腹膜など全身のさまざまな臓器にこぶやはれが見付かることも多くなります。

IgG4関連疾患は、全身性の慢性炎症性疾患であり、ミクリッツ病や自己免疫性膵炎、自己免疫性下垂体炎、リーデル甲状腺炎、間質性肺炎、間質性腎炎(じんえん)、後腹膜線維症などがあり、悪性腫瘍(しゅよう)が潜在していることもあります。

長い期間、耳の前や顎(あご)の下がはれているようであればミクリッツ病の可能性もあり、耳鼻咽喉(いんこう)科か歯科口腔(こうくう)外科、上まぶたがはれているのであれば眼科を受診することが勧められます。

ミクリッツ病の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による診断では、MRI(磁気共鳴画像)検査や超音波検査を始めとするさまざまな検査で、腫脹(しゅちょう)がある部位と全身的な広がりを確認します。

悪性リンパ腫を始めとする悪性腫瘍、白血病などの除外を慎重に行い、IgG4関連疾患の合併を念頭に置き、確定診断には、血液検査と、腫脹した組織の一部を切り取って顕微鏡検査を行う細胞診を行います。

従来、シェーグレン症候群と診断されていた中に、ミクリッツ病がみられる場合もあります。シェーグレン症候群とは異なり、血液検査で高IgG4血症を認め、唾液腺と涙腺組織の細胞診で明らかなIgG4陽性形質細胞の浸潤を認めます。

耳鼻咽喉科、歯科口腔外科、眼科の医師による治療では、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)による薬物治療を行います。ステロイド剤に対する治療反応性は良好で、唾液腺と涙腺機能の回復がみられます。しかし、ステロイド剤を減量すると再燃することが多くみられます。複数の臓器障害を伴う場合は、ステロイド剤を増量します。

ミクリッツ病から悪性リンパ腫を始めとする悪性腫瘍に変化する可能性があるので、厳重な経過観察と定期的な検査が必要です。

🇸🇮ミクロペニス

ペニスが基準よりも小さい状態にある性機能疾患

ミクロペニスとは、男性のペニス(陰茎)が基準よりも大幅に小さい状態にあり、生殖や性行為に支障を来す性機能疾患。マイクロペニス、矮小(わいしょう)陰茎とも呼ばれます。

短小ペニスという呼び方もありますが、こちらは俗語であって医学的に定義されたものではなく、個人差の範囲にすぎないものを指している場合が多く認められます。これに対して、ミクロペニスは医学的に定義されたもので、性機能疾患として認められている疾患の一つです。

ペニスの形態は正常であるものの、その大きさが平常時はもちろん、勃起(ぼっき)時でも一定の基準よりも小さく、成人男性で勃起時の長さが5センチ以下のものが、ミクロペニスと定義されています。勃起時でも長さ太さともに5ミリに達せず、陰嚢(いんのう)に埋没して、外見上は生まれ付きペニスを所有しない陰茎欠損症に見える極端な例もあります。

性腺(せいせん)からのホルモンの分泌不足によって起こる性腺機能低下症が、最も多い原因と考えられています。また、全身的な症候群の一症状として、ミクロペニスがみられることもあります。積極的な治療を必要とするミクロペニスは、男児250人に1人程度に認められるとされています。

ペニスの発達はまず、胎生期における生殖茎の分化、成長が基軸にあります。排泄腔(はいせつくう)ひだが左右ともに癒合し合って、生殖結節が形成され、その生殖結節が伸びた状態が生殖茎であり、その生殖茎が男性のペニス、女性のクリトリス(陰核)のベースになります。

生殖茎は、おおよそ胎生12週までは男女ともに同様の分化、成長を続けます。その後、男性では胎児精巣(睾丸〔こうがん〕)から分泌される男性ホルモンの一種であるテストステロンの影響で、生殖茎が伸びていき、ペニスの形状をなしていきます。生殖茎は伸長に並行して、尿道ひだを引き込んで尿道を形成し、それに応じて尿道口が亀頭の先端に形成されます。

この生殖茎の伸長と尿道ひだの引き込みが、テストステロンの分泌量が足りない場合に不十分に進行して、ミクロペニスと、尿道の出口が亀頭の先端になくてペニスの途中や陰嚢などにある尿道下裂の原因になります。

また、第二次性徴期におけるテストステロンの分泌障害もまた、ペニスの成長発達を阻害し、結果としてミクロペニスを示すことがあります。

胎生期ならびに出生後に発生するテストステロンの分泌障害は、精巣自体に問題がある原発性性腺機能低下症と、テストステロンの上位ホルモンで、脳下垂体から出される性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの分泌障害などが原因の続発性性腺機能低下症があります。

こうしたテストステロンの分泌不足によって発生するミクロペニスなどの障害は、テストステロンの受容体の障害でも同様に発生します。

原発性性腺機能低下症によってミクロペニスを示す疾患には、類宦官(るいかんがん)症や、クラインフェルター症候群などの染色体異常を示す疾患があります。クラインフェルター症候群では、第二次性徴の障害は続発性性腺機能低下症などに比較して少ないことが多く、成人後の勃起障害(ED)や男性不妊症で、クラインフェルター症候群自体が発見されることも珍しくありません。

ミクロペニスでは、ペニスが小さすぎるために性交障害を生じる時があります。また、テストステロンの相対的な不足は勃起障害(ED)を引き起こし、これもミクロペニス同様の性交障害の原因になります。

通常は新生児期に、医師や看護師による性別の確認が行われる際に見付かり、専門医に紹介されて治療が行われます。

ミクロペニスの検査と診断と治療

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、内分泌代謝科の医師による診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン(男性ホルモン)受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。

また、埋没陰茎、翼状陰茎などと鑑別します。これらの疾患は、いずれもペニスが一定の基準より小さい、もしくは小さく見えるという疾患になります。

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、内分泌代謝科の医師による治療では、ミクロペニスは男性ホルモンであるテストステロンの分泌不全、もしくは機能不全が問題であることがほとんどなので、幼少期のテストステロン製剤による刺激療法を行います。テストステロン製剤には塗布薬と注射薬があり、病態に合わせて局所塗布か全身投与かを決めます。

注射薬を用いて全身投与を行う場合、骨の成長を進行させる副作用があり、骨の発達が早期に完了してしまうリスクがあります。身長が伸びる思春期以前に、このホルモン療法を行うと、背が十分伸びないことがあります。

また、子供をつくる生殖能力を獲得するために、性腺刺激ホルモンであるゴナドトロピンの注射など、上位ホルモンから性腺に刺激を与える治療を行うこともあります。

ミクロペニスの成人以降の処置としては、自家移植手術の陰茎海綿体延長術が行われることもあります。大腿(だいたい)部や腹部から採取した真皮を使用して、ペニスの勃起機構の主体をなす陰茎海綿体に移植して、ミクロペニスの伸長を図ります。

🇭🇷水ぼうそう(水痘)

全身に水膨れが現れ、かゆみを伴う感染症

水ぼうそう(水痘)とは、ヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で起こる疾患。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。

一般に冬から春にかけて、子供に流行する疾患で、時折、大流行することもあります。感染経路は、主に空気感染、飛沫(ひまつ)感染で、水疱液の接触感染もあります。ウイルスは強い感染力を持っているため、病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触と見なします。

従って、水ぼうそうにかかった時には、水膨れが完全にかさぶたになるまで、幼稚園や学校、会社などは休まなければなりません。通常は1週間くらいで治り、免疫力が低下している場合には、重症化することがあります。

ほとんどの人が子供の時にかかりますが、最近では、小児期に感染する機会が減ってきていることから、大人になってから初めてかかる例も増えてきています。大人の水ぼうそうは、脳炎や肺炎の合併が多くて重症となることが多いので、注意が必要です。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水ぼうそうになりやすいため、緊急の処置が必要になります。

潜伏期間は11~21日で、発疹(はっしん)の現れる1日前から、軽い発熱、だるさ、食欲低下がみられます。症状の初めは、数個の発疹がみられるだけですが、その後数時間で、全身に円形の赤い発疹が現れ、すぐにエンドウ豆大の水膨れになります。水膨れは数日でかさぶたとなりますが、次々と新しく発疹が現れるので、新旧さまざまな発疹が混在してみられるのが特徴です。

発疹は胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。発疹の数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

一度かかると免疫ができるため、再び水ぼうそうにかかることはほとんどありません。しかし、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかのきっかけにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水ぼうそうのように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。

水ぼうそうの治療法

水ぼうそう(水痘)は軽いものから重いものまであり、発症者によってさまざまな症状が現れるので、医師の判断の下に症状に合わせた治療を受けるようにしましょう。

水ぼうそうの典型例では多くの場合、その皮膚症状から容易に診断できます。非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取し、蛍光抗体法を用いて水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出します。また、抗体検査を水ぼうそうの発症者に行えば、ウイルスの初感染であることが確認できます。

治療には対症療法しかありませんが、原因となるウイルスの増殖を抑える治療と、発熱、かゆみなどの症状を和らげる治療があります。

乳幼児期の水ぼうそうは軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やフェノール亜鉛華軟膏(なんこう)などが処方され、安静などによる対症的な治療が行われます。

年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル、バラサイクロビルなどの内服を行います。

悪性腫瘍(しゅよう)やその他の疾患により免疫状態が低下している場合では、致死的になることがあるので、入院した上でアシクロビル、ビダラビンなどの点滴静脈注射が行われる場合があります。

水膨れが壊れたら、抗生剤入りの軟膏で二次感染を防ぎます。また、化膿(かのう)がなければ、ドレッシング材などで覆って湿潤環境を維持することで、皮膚に跡が残りにくくなる場合があります。

予防手段としては、水痘ワクチンが使用されます。水痘ワクチンは弱毒化生ワクチンであり、接種により80~90パーセント程度の発症阻止効果があります。発症した場合も症状は軽くてすみますし、ワクチンによる重い副作用もほとんど発生していません。

日常生活で注意すること

全身症状が軽くても、発疹がすべてかさぶたになって症状が治まるまで、安静にしていることが大切。熱が高い場合には、両脇(わき)を冷やすなどとともに、脱水状態にならないように水分を十分取るようにします。

水ぼうそう(水痘)はかゆみを伴うため、つい引っかいてしまいがちですが、水膨れをつぶすと、化膿したり、跡が残ることもあります。水膨れはつぶさないようにし、手などを清潔にして細菌感染を起こさないようにします。引っかいてしまわないように、爪(つめ)を丸く切ったり、手袋をするのもよいでしょう。

また、水痘・帯状疱疹ウイルスは伝染力が強いので、発疹が現れる1日前からかさぶたになるまでのおよそ1週間くらいは、他人に感染する可能性があります。くしゃみや咳(せき)、会話などによって飛び散ったウイルスが、気道から吸引されて移るため、水ぼうそうにかかったことのない人の近くに寄らないようにします。

特に、家族の中に水ぼうそうにかかったことのない人がいる場合には、感染する可能性が高く、家族から感染した場合は重症化することが多いので、注意が必要です。

熱がある時や新しい水膨れが増えている間は、入浴は控えます。ほとんどの水膨れがかさぶたになれば、これらを破らないように気を付けながら入浴してもよいでしょう。入浴した後には、皮膚から細菌が入らないように処置が必要なこともあるので、医師に相談して指示を受けましょう。

学校保健法による第2類学校伝染病に指定され、すべての発疹がかさぶたになるまでは、幼稚園や学校を休ませることになっていますので、それまでは子供が元気でも休まなければなりません。すべての発疹がかさぶたになれば、人に移すこともないので、集団の中に入っても大丈夫です。

通常、1週間程度で治りますが、もし4~5日を過ぎても発熱が続いたり、体がだるいなど具合が悪いような場合には、他の病気を合併している可能性がありますので、すぐに医師に相談しましょう。

🇲🇪水虫(足白癬)

足に生じる感染症で、日本人の4人に1人が発症者

水虫(足白癬)とは、真菌の一種である白癬(はくせん)菌で足に生じる感染症。白癬菌で皮膚に生じる白癬の中では圧倒的に多く、全白癬発症者の65パーセント程度を占めます。さらに、水虫にかかっていても皮膚科を受診しない人も多く、日本人の4人に1人くらいがかかっているというデータもあります。

この水虫(足白癬)は、趾間(しかん)型、小水疱(しょうすいほう)型、角質増殖型に病型分類されます。複数の病型を示すことも、多くみられます。

趾間型は、足の指の間に浸軟、あるいは乾いた鱗屑(りんせつ)を付着する紅斑性局面を示し、びらん(ただれ)や亀裂を伴うことがあります。小水疱型は、足の底から足の側縁にかけて、半米粒大までの集まったり癒合する傾向のある水疱、膿疱(のうほう)を伴う紅斑性局面を示します。ともに春から夏にかけて発症したり悪化しやすく、かゆみを伴うことが多いのですが、必ずではありません。角質増殖型は、かかとを中心に足の底全体の皮膚の肥厚と角化、細かく皮膚がむける落屑を特徴とします。かゆみは少なく、冬もあまり軽快しません。

水虫(足白癬)を放置していると、白癬菌が爪(つめ)を侵し、爪(そう)白癬になります。爪にできることはまれと従来いわれていましたが、最近の統計によると水虫(足白癬)を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。高齢者に多くみられます。爪の甲の肥厚と白濁を主な特徴とし、自覚症状はありません。まれに、爪の甲の点状ないし斑(まだら)状の白濁のみのこともあります。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。

水虫(足白癬)と区別すべき主な疾患は、接触皮膚炎、汗疱(かんぽう)、異汗性湿疹(しっしん)、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症、掌蹠角化症などです。炎症症状の強い水虫(足白癬)の悪化時に、手あるいは白癬病変のない足に小水疱が左右対称に生じることがあります。この病変中からは白癬菌は検出されず、一種のアレルギー反応と考えられ、白癬疹と診断されます。

水虫の検査と診断と治療

医師による水虫(足白癬)の検査では、水疱部の皮膚を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。手足に水ぶくれがみられ、原因が明確になっていない汗疱との区別が、水虫(足白癬)の検査では必要とされます。

治療法としては、白癬菌を殺す働きのある抗真菌薬の外用が一般的です。4週間で症状が改善しますが、皮膚が入れ替わる数カ月間の外用が必要です。広範囲のもの、抗真菌薬でかぶれるもの、爪白癬では、内服療法を行います。爪白癬の場合、少なくても3〜6カ月間の内服が必要です。肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

生活上で水虫(足白癬)に対処する注意点を挙げると、真菌(カビ)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。ふだんから足の清潔を心掛けることは、予防のためにも大事です。家族で他に水虫(足白癬)の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。

🇷🇸三日ばしか(風疹)

急性ウイルス性疾患で、発疹、リンパ節のはれ、発熱が主要な兆候

三日ばしかとは、発疹(ほっしん)、リンパ節のはれ、発熱を主な兆候とする急性ウイルス性疾患。風疹(ふうしん)とも呼ばれます。

はしか(麻疹)より感染力が弱く、通常3日程度で発疹が消えて治るため、三日ばしかと呼ばれます。怖いのは妊娠初期の女性が感染した場合で、流産したり、風疹ウイルスが胎盤を介して胎児に感染し、生まれた新生児に先天性風疹症候群と呼ばれる形態異常を起こす確率が高くなります。症状や重さは感染時期によって異なり、妊娠2カ月以内だと白内障、心臓の形態異常、聴力障害のうち2つ以上を抱えて生まれることが多くなります。妊娠3~5カ月でも聴力障害がみられます。

こうした新生児は1965年に、沖縄県で400人以上生まれました。また1977~79年の全国的な大流行の際は、影響を恐れた多くの妊婦が人工妊娠中絶をしました。

三日ばしかは例年、春先に流行し始め、ピークは5、6月。かかりやすい年齢は5~15歳ですが、成人になってからかかることもあります。感染力はそれほど強くなく、かかっても症状の現れない不顕性感染が約15パーセントあります。一度自然にかかれば、一生免疫が続くと考えられています。

かつてはほぼ5年ごとに全国的な流行を繰り返しましたが、1994年以降は局地的、小規模な流行にとどまっています。患者の全数把握が始まった2008年は294人。その後、2009年147人、2010年90人と減少しましたが、2011年は12月11日までの集計で362人と増加し、特に予防接種政策の影響でワクチンを打たずにきた成人の男性が職場で集団感染するケースが目立ちました。

14~21日の潜伏期間の後、全身の淡い発疹、耳の後ろや後頭部の下にあるリンパ節のはれ、発熱などの症状が現れます。人に移るのは発疹の出現数日前から出現後5日間で、感染者の唾液のしぶきなどに接触することで移ります。一般に症状は軽く、初期はごく軽い風邪症状のこともありますが、気付かれないことも多く、発疹が出て初めて気付くくらいです。

しかしながら、発疹に先立ってリンパ節のはれや圧痛が耳や首の後ろ、または後頭部に起こるのが特徴です。リンパ節のはれは、発疹が消えてからも数週間に渡って続くことがあります。一般に発熱は軽度で高熱をみることは少なく、40〜60パーセントは無熱で経過します。そのほか、全身倦怠(けんたい)感や、のどの痛み、結膜の充血がみられることがあります。

発疹は、はしかと比べると小さめで、色も薄く桃色をし、3日間くらいで色素沈着を残さずに消えます。

まれに、重い合併症が起きます。主なものには脳炎、髄膜炎、血小板減少性紫斑(しはん)病、関節炎があります。特に注意を要するのは脳炎で、三日ばしかの流行期に5000〜6000例に1例の頻度でみられます。発疹の出現後2〜7日で発症しますが、予後はよく、後遺症を残すことはまれです。

三日ばしか(風疹)の検査と診断と治療

小児科や内科、感染症内科の医師による診断では、一般的に、保険適用されている血清診断を行います。ウイルスの分離が基本ですが、通常は行わず、保険適応もされていません。

血清診断では、急性期と回復期の抗体価が4倍以上上昇することにより確定診断する赤血球凝集抑制反応や、急性期に三日ばしか(風疹)に特異的なIgM抗体を検出することで確定診断する酵素抗体法などの方法がよく用いられます。はしか(麻疹)や水痘(水ぼうそう)と違い、三日ばしかは症状や所見だけで診断することの難しい疾患の一つです。

医師による治療では、特別な方法はないため、対症的に行います。発熱、頭痛、関節炎などに対しては、解熱鎮痛剤を用います。治療を必要としない場合も多くみられ、子供では一般に症状は軽いので、安静だけで3〜5日で自然に治ります。

三日ばしかは第二種の伝染病に定められており、幼稚園や学校を休む必要があります。発疹がなくなることが目安になるため、発症後6日目ごろから登園、登校してもよいのですが、1カ月くらいは無理をさせないで合併症に気を付けます。

予防法として、風疹(三日ばしか)ワクチンの接種があります。風疹ワクチンの接種の対象は1977年から94年までは中学生の女子のみでしたが、同年の予防接種法改正以来、その対象は生後12カ月以上~90カ月未満の男女とされました。さらに、2006年以降は、風疹ワクチンは麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)として接種、第1期(1歳児)と第2期(小学校入学前年度の1年間に当たる子)に計2回接種しています。これは1回の接種では免疫が長く続かないため、2回目を接種して免疫を強め、成人になってから三日ばしか(風疹)やはしか(麻疹)にかからないようにするためです。

2008年4月1日から5年間の期限付きで、麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種対象が、第3期(中学1年生相当世代)、第4期(高校3年生相当世代)にも拡大され、接種機会を逸し1回しか接種されていない子も2回接種が可能になっています。

先天性風疹症候群を始め、脳炎、髄膜炎、血小板減少性紫斑病などの発症予防のために、麻疹・風疹混合ワクチンの接種が勧められます。

また、妊娠を望むものの風疹抗体がないか少ない成人女性も、積極的に麻疹・風疹混合ワクチンの予防接種を受けることが望まれます。ただし、妊婦の風疹ワクチン接種は禁忌で、風疹ワクチン接種後2~3カ月間は妊娠は避けることが望ましいでしょう。風疹抗体がないか少ない女性が妊娠した場合、三日ばしかの流行期は特に注意が必要で、抗体価検査を定期的に行い、経過観察を続ける必要があります。

身近に妊娠を望む女性がいる場合、麻疹・風疹混合ワクチン未接種で三日ばしかにかかったことがない成人の男性も、ワクチンを接種して予防することが望まれます。

🇸🇮三つ口

上唇の一部に裂け目が現れ、唇が三つに分かれているような形を示す先天性異常

三つ口とは、上唇(うわくちびる)の皮膚と筋肉の一部に縦の裂け目が現れ、鼻の下で唇が三つに分かれているような形を示す先天性異常。口唇裂、唇裂、兎唇(としん)、いぐち、欠唇(けっしん)とも呼ばれます。

妊娠初期に複雑な発生の過程をへて、胎児の顔面が形成されます。胎生期第4~7週ころに、前頭突起(内側鼻隆起)と左右の上顎(じょうがく)突起が癒合して上唇ができます。この癒合が障害されると、三つ口になります。三つ口といえば通常、上唇の皮膚と筋肉の一部に裂け目が現れる上唇裂をいい、下唇に裂け目が現れる下唇裂は非常にまれです。

この三つ口は、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂、裂け目が鼻まで達しない不完全口唇裂、左右の唇のどちらか一方に裂け目がある片側口唇裂、左右両側に裂け目がある両側口唇裂、さらに、唇の縁の小さなへこみや、唇から鼻の穴までの傷跡のように見える軽微な三つ口である痕跡(こんせき)口唇裂に分けられます。

三つ口は、さまざまな要因が複雑に絡み合って現れると考えられており、特定の原因があるわけではありません。口腔(こうくう)の発生にかかわる遺伝子の変異が関係したり、妊娠中の喫煙、胎内での風疹(ふうしん)感染、胎児脳内圧の異常高進、薬物、放射線障害などの環境要因が関係していると考えられています。染色体異常に伴う場合は、内臓疾患や生後の発育、発達の遅れがみられる場合があります。

三つ口は単独でみられることもありますが、口と鼻を隔てている上顎(うわあご)に先天性に破裂が現れる口蓋裂(こうがいれつ)と合併した口唇口蓋裂が多くみられます。さらに、歯を支えている顎骨である歯槽骨の破裂が現れる顎裂(歯槽裂)を合併することもあります。

三つ口の発生頻度は、全出産の0・08パーセントといわれています。三つ口、口蓋裂、口唇口蓋裂、顎裂を含めた発生頻度は、全出産の0・2パーセントといわれています。

胎児の顔面の口や鼻が形成された後、胎生期第7~12週ころの間に、口の中では口蓋がつくられます。口腔と鼻腔の間に口蓋突起が左右から伸び、前方から後方へと癒合が進んで上顎(口蓋)が形成されます。この過程が障害されると、口蓋突起が最期まで癒合せずに口腔と鼻腔が破裂したままになり、口蓋裂ができます。

口蓋裂は、口蓋の奥の部分の軟口蓋に破裂があるもの、口蓋の前方3分2の部分の硬口蓋に破裂があるもの、軟口蓋と硬口蓋の両方に破裂があるものに分けられます。

生後すぐ、あるいは胎児期の超音波検査で、三つ口が認められます。

口唇口蓋裂があると、歯の形態異常、欠損、歯列不正などが認められます。授乳障害もあり、母乳やミルクが鼻から逆流しやすくなったり、発音が鼻に抜けたりする症状がみられ、中耳炎、誤嚥(ごえん)性肺炎を合併することが多くみられます。

出生後、三つ口のほか、口蓋裂、口唇口蓋裂、痕跡口唇裂が認められた場合は、口唇口蓋裂を専門に治療し、発育、発達の定期的なフォローも含め、総合的に診療している口腔外科、形成外科を紹介してもらい、受診することが望まれます。痕跡口唇裂の場合、外見上は軽微な変化であっても、その下にある口輪筋への影響があり、深刻度を判断してもらう必要があります。

三つ口の検査と診断と治療

口腔外科、形成外科の医師による治療は、矯正歯科、小児歯科、耳鼻咽喉(いんこう)科、言語聴覚士、小児科など各科の医師とのチーム医療で行われることが一般的です。

口腔外科、形成外科の医師による治療は、形成手術が主体で、手術前にはホッツ床という柔らかい樹脂でできた入れ歯のようプレートを上顎にはめて、授乳しやすくします。

手術時期は、三つ口と口蓋裂で異なり、発音機能と上顎の発育の両面を考えながら決めます。一般的には、三つ口はミラード法などで生後3カ月以後、体重5キログラムを目安に実施し、裂けた口唇の閉鎖と再建、変形した鼻の位置の適正化、口輪筋の連続性の再建を図ります。

口蓋裂は1歳以降に、ファーロー法などの手術を実施し、口蓋部分における口腔と鼻腔の閉鎖、軟口蓋における口蓋帆挙筋などの左右に分かれた筋群の再建を図ります。

高度な三つ口で、裂け目が鼻まで達する完全口唇裂では、初回の手術だけで完全な形態の再建が完成するとは限らず、就学前あるいは青年期に、口唇や鼻の二次的な修正手術を必要とすることがあります。言語聴覚士による発音の訓練も必要です。

🇭🇷未破裂脳動脈瘤

脳の血管にこぶができた病態で、破裂するとくも膜下出血を発症

未破裂脳動脈瘤(りゅう)とは、脳の動脈の一部が内側からの圧力によって、こぶのように膨らんでいる病態。小さいものを含めると、成人の4~6パーセントに発生していると見なされています。

この未破裂の脳動脈瘤は近年、脳ドックや人間ドックの普及に伴って、MRA(磁気共鳴血管撮影)を行った時にたまたま発見されるケースが、急速に増加しています。中には、脳動脈瘤が大きくなって脳の神経を圧迫して障害を生じたために、発見されるケースもあります。

脳動脈瘤が発生する原因はまだはっきりとはしていませんが、遺伝的な要素で血管の壁が弱くなる、加齢や高血圧などにより動脈硬化が起こり血管の壁に弱い部分ができる、血流が当たる影響で血管の壁がもろくなど、いくつかの原因が考えられています。内頸(ないけい)動脈、脳底動脈、中大脳動脈、後大脳動脈、あるいはそれらの動脈の分枝などに起こり、血管の分かれ目など、血流がぶつかりやすく、また血管の弱い部分にできることが多いようです。

脳動脈瘤の大きさは、径2ミリ程度の小さなものから25ミリ以上の大きなものまでさまざまで、75パーセント以上は10ミリ未満です。

そのまま破裂しない状態では、脳動脈瘤自体には痛みや違和感などの自覚症状はありませんが、動脈瘤の大きさによっては何らかの症状が出ます。例えば、動眼神経の近くの内頸動脈に未破裂脳動脈瘤が発生すると、動眼神経を圧迫して片側の目が外方以外には動かなくなり、瞳孔(どうこう)が大きくなり、対光反射がなく、まぶたが下がってくる眼瞼(がんけん)下垂などの動眼神経まひの症状が起こることがあります。

未破裂の脳動脈瘤が破裂した場合には、脳の中にくも膜下出血というタイプの出血を来します。脳は外側から順に硬膜、くも膜、軟膜という3層の膜で覆われており、くも膜とその下の軟膜との間を、くも膜下腔(くう)といい、ここには脳脊髄(せきずい)液が満たされています。脳動脈瘤が破裂すると、血液がくも膜下腔に一気に流出するため、頭蓋(ずがい)内圧(頭蓋骨の内部の圧力)が上がって、激しい頭痛が起こります。

バットか金づちで殴られたような、今までに経験したことのないひどい痛みに襲われ、その頭全体に感じる痛みがしばらく続きます。頭蓋内圧が急激に上がって脳全体が圧迫されると、意識障害が起こったり、吐いたりします。重症の場合、意識障害から、昏睡(こんすい)状態に進んだまま死亡することもあります。

くも膜下出血では、半数以上の人が死亡するか社会復帰不可能な障害を残しています。

未破裂脳動脈瘤が自然に破裂して、くも膜下出血を起こす確率は、大きさや形などでも違いますが、平均して年に1パーセント程度といわれています。例えば、62歳の男性に発見された場合、平均余命が20年あるとすると、生涯でくも膜下出血を起こす可能性は20パーセントということです。

脳ドックなどの医療検査で発見された場合は、信頼できる脳神経外科医と相談してください。

未破裂脳動脈瘤の検査と診断と治療

脳神経外科の医師による診断では、MRA(磁気共鳴血管撮影)などで未破裂脳動脈瘤が疑われたら、三次元造影CT血管撮影で脳動脈瘤の大きさや形を確認します。手術のために脳動脈瘤や周囲の血管の情報がさらに必要な場合は、脳血管撮影を行うこともあります。

日本脳ドック学会のガイドライン(2008)では、1)余命が10~15年以上ある、2)動脈瘤の大きさが5~7ミリ以上、3)動脈瘤の大きさが5~7ミリより小さい場合でも、症状のあるものや特定の部位にあるもの、一定の形態的特徴を持つものという条件がそろえば、手術を勧めています。

手術は通常、頭蓋骨を切開し、こぶの根元を金属のクリップで挟むクリッピング法が行われます。近年では、血管内手術といって血管の中へ細いカテーテルを挿入し、プラチナの細いコイルを入れて動脈瘤の内側に詰める塞栓(そくせん)術を行うこともあります。

また、治療をせずに半年後、1年後などにMRAで経過をみるというのも一つの方法です。通常の手術や血管内手術も、治療後にまひや重篤な合併症を来す危険性がゼロというわけではないためです。

🇷🇴耳詰まり

耳が詰まったり、耳がこもったりする感じが生じる症状

耳詰まりとは、耳が詰まったり、耳がこもったりする感じが生じる症状。耳閉感とも呼ばれます。

耳詰まりはごく有り触れた症状で、耳がふさがれた感じ、音が耳や頭に響く感じ、さらに耳の圧迫感、軽い痛みを感じることもあり、誰でも何度か経験していることと思いますが、原因はいろいろなことが考えられます。

外から見える耳の部分から鼓膜までの外耳に原因のある耳詰まりとしては、耳垢(みみあか)が塊になって耳の穴をふさぐ耳垢栓塞(じこうせんそく)、外耳炎、水滴・髪の毛・綿棒の先端・子供ではプラスチックのおもちゃや消しゴムなどが耳の穴に詰まる外耳道異物で起こります。

鼓膜の内側から耳小骨あたりまでの中耳に原因のある耳詰まりとしては、滲出(しんしゅつ)性中耳炎で最も多く起こります。大人も風邪引き後などに滲出性中耳炎になることがあり、耳管の働きが悪くなるために耳詰まりを生じます。

そのほかの中耳疾患では、好酸球性中耳炎で高率に耳詰まりを生じます。好酸球中耳炎は喘息(ぜんそく)に伴いやすい中耳炎で、中耳に粘液がたまることにより難聴を生じます。滲出性中耳炎に似ていますが、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけて障害が生じたために起こる感音難聴も合併しやすいので注意が必要です。

体の平衡感覚を保つ三半規管や脳に音を直接伝える蝸牛(かぎゅう)などの器官がある内耳に原因のある耳詰まりとしては、急性低音障害型感音難聴で片側、まれに両側の耳詰まりを生じます。

メニエール病の発作時にも、耳詰まりが起こります。耳鳴りやめまいを伴うのが特徴です。

耳詰まりの検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、まず問診で、耳の聞こえは悪くないか、風邪を引いていなかったか、耳に何か入れなかったか、ストレスが多くなかったかなど確認します。

次に視診で、顕微鏡を使用して耳の中を丹念に診ることにより、外耳や中耳の病変はおおよそ把握できます。外耳、中耳に異常がなければ、消去法で内耳の疾患の可能性が高くなります。中耳炎があれば、鼻の中もよく診ます。

標準純音聴力検査で、難聴の有無も調べます。もし難聴があれば、音を聴神経へ伝える外耳・中耳・鼓膜に障害が生じたために起こる伝音難聴なのか、音を感じる内耳から聴覚中枢路にかけて障害が生じたために起こる感音難聴なのかを調べます。

伝音難聴であれば、滲出性中耳炎の可能性が高くなりますので、耳の穴に耳栓をして外耳道を加圧、減圧しながら鼓膜の響きやすさを調べるティンパノメトリィ検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳垢栓塞や外耳道異物の場合、耳垢や異物を取り除けば耳詰まりは治ります。

外耳炎の場合、耳の消炎処置と抗生剤内服などを行います。

滲出性中耳炎、好酸球性中耳炎の場合、まずは鼓膜切開や、鼓膜の一部を切開して中耳を換気するためのチューブを入れる鼓膜チューブ留置術(チュービング)で、鼓室内の貯留液を除去します。

鼻や副鼻腔(ふくびくう)に炎症を伴っていることが多いので、鼻処置や、副鼻腔に抗生物質、ステロイド剤(副腎〔ひくじん〕皮質ホルモン)などの薬液を吸入するネブライザー療法を行い、炎症やはれを抑えます。マクロライド系抗生物質の少量長期療法や、抗アレルギー剤内服を行うこともあります。

内耳疾患で耳詰まりを生じた場合、内リンパ水腫(すいしゅ)という病態が原因のことが多いため、これを取り除くことが必要です。具体的にはストレスを避けることと、高浸透圧利尿剤の内服です。そのほかには、内耳の代謝を助けるために、ビタミンB12や、アデホスという代謝を促進する薬などを内服することもあります。

🇧🇬耳鳴り

●耳鳴りの音から病気を知る

小さい耳鳴りではあっても、背後に病気が潜んでいることもあります。鳴り方や起こり方が、その原因を知る手立てになるのです。

耳鳴りとは、外部からではない音の知覚です。ほとんどの場合、難聴を伴います。日本人の1200万人以上が何らかの耳鳴りがあり、そのうち約20パーセントの人は苦痛を伴う耳鳴りがあるといわれています。

私たち人間の耳は、20ヘルツから2万ヘルツという非常に幅広い音を聞き分けています。音を感知する細胞は、周波数によって役割分担をしています。

ところが、ある音を担当する感覚細胞が障害を受け、その音が聞こえなくなってしまうと、ほぼ同じ高さの音の耳鳴りが起こるのです。

その仕組みはよくわかっていませんが、障害を受けた細胞が異常な刺激を出し、耳鳴りになると考えられています。従って、耳鳴りの音の高さが、原因となる病気を想定する手掛かりになるのです。

●症状をチェック

【「キーン」「チー」など高い音】

日常会話では使わない高い周波数の音から聞こえにくくなるのが、「老人性難聴」。両耳に起こり、初期は「キーン」といった高音の耳鳴りがします。耳鳴りは慢性的で、進行すると低い音も聞こえにくくなります。

長期間に渡って騒音にさらされた場合の「騒音性難聴」、一時的に大きな音にさらされた時に起こる「音響性難聴」でも、高音の耳鳴りを訴えます。

【「ゴー」「ブーン」など低い音】

回転性のめまいを伴うのが、「メニエール病」。最初は低音が聞こえなくなり、時々「ゴー」、「ブーン」などの低音の耳鳴りがします。多くは片耳で起こり、めまいや耳鳴りの発作を繰り返すうちに高音も聞こえにくくなり、耳鳴りの音も変化します。

メニエール病と同じタイプの耳鳴りで、めまいはないのが「急性低音障害型感音難聴」。発作を繰り返すと、メニエール病に移行します。

【「ザー、ザー」など拍動と一致】

脈拍と一致した耳鳴りは、血液の流れる音が聞こえているもの。これは耳の近くに音源があり、増幅すれば他人も聞くことができる他覚的な耳鳴りです。

脳の動脈にこぶができる「脳動脈瘤(りゅう)」や、「脳腫瘍」などの病気が隠れている可能性もあり、長く続いたら病院へ。

【さまざまな音】

耳鳴りの音が人によりさまざまなのが、「突発性難聴」。突然、片耳に難聴や耳鳴りが起こり、めまいを伴うこともあります。繰り返すことはないものの、早めに治療をしないと難聴や耳鳴りが残ります。

「内耳炎」や「聴神経腫瘍」の場合も、さまざまな耳鳴りがします。「動脈硬化」や「糖尿病」で血管が痛み、慢性的に耳の血流が悪くなって、耳鳴りがするケースもあります。

●対策へのアドバイス

【ストレス、疲労をためない】

誰でも静かな場所にいると、耳鳴りがすることがあります。また、疲れた時に一時的に「キーン」という耳鳴りがするのも、心配はありません。

しかし、「メニエール病」や「急性低音障害型感音難聴」、「突発性難聴」などは、ストレスや疲労が引き金となるケースが多いといわれています。ですから、日頃からストレスをためないこと、睡眠を十分にとることが、予防につながります。

【急性のケースは耳鼻咽喉科へ】

メニエール病や突発性難聴など急性の病気では、安静を保つことが重要になります。入院して、薬物療法を受ける必要のあることもあります。

突発性難聴の場合、発作から2週間以上放置すると、聴力が戻りにくくなります。異常に気付いたら、早めに耳鼻咽喉科へ。

【耳鳴りが慢性化したら】

耳鳴りは気にすることでさらに大きく感じられるという、悪循環に陥りがちです。その場合、治療の中心になるのはカウンセリングなどの心理療法。気持ちをリラックスさせ、耳鳴りに気持ちが集中しないようにします。

関心のある音だけを選別し、それ以外の音を素通りさせる脳の性質を利用したのが、TRTという治療法。補聴器サイズの器具を耳に装着し、毎日、一定時間、耳鳴りより小さな音を聞き、脳が音に慣れて、耳鳴りを意識しない状態にします。心理療法だけでは苦痛が改善しない場合に、TRTは有効です。

🇭🇺耳ヘルペス

耳を中心に起こった帯状疱疹で、耳介や外耳道に痛み、水膨れが出現

耳(みみ)ヘルペスとは、耳を中心に起こった帯状疱疹(たいじょうほうしん)。耳性(じせい)帯状疱疹とも呼ばれます。

ヘルペスウイルス属の1つである水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルスに乳幼児期に初感染すると、水ぼうそう(水痘)になります。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。水膨れは胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。水膨れの数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

乳幼児期に一度かかると免疫ができるため、この水ぼうそうに再びかかることはほとんどありません。しかし、水ぼうそうの原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうが治った後も体のいろいろな神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかの切っ掛けにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水ぼうそうのように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。体のどこにでも帯状疱疹の症状は現れますが、胸から背中にかけてが一番多く、顔や手足、腹や尻(しり)の下などに現れることもあり、耳を中心に起こった帯状疱疹が耳ヘルペスに相当します。

耳ヘルペスを発症すると、発熱、寒けなどとともに、外に張り出している片側の耳介や、耳の穴から鼓膜まで続く外耳道に激しい痛みが現れ、数日の内に小さな水膨れができます。軟口蓋(なんこうがい)や舌など、口の中にも発生することがあります。また、顔面神経まひを伴うこともあります。

顔面神経まひのほかに、感音難聴、耳鳴り、めまいなどの内耳障害を伴うものをラムゼー・ハント症候群(ハント症候群)といいます。これは、顔面神経の膝(しつ)神経節という場所に潜んでいた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し、顔面神経やその周辺の聴神経に感染して起こるものです。

片側の耳に痛みや水膨れができ、片側の顔の動きが悪いことに気付いた時には、早期に耳鼻咽喉(いんこう)科の医師の診察を受けることが勧められます。

耳ヘルペスの検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、耳や口の中などの視診により帯状疱疹の有無を調べます。水膨れ中か唾液(だえき)中の水痘・帯状疱疹ウイルスのDNAを検出するのが最も確実な診断法で、中の抗水痘帯状疱疹ウイルスIgM抗体価の上昇を確認するのも、診断の助けになります。

顔面神経まひがあれば、筋電図検査、神経興奮性検査を行って、まひの程度、顔面神経の障害部位を診断します。難聴、めまいがあれば、聴力検査、平衡機能検査、脳神経検査など通常の耳科的検査も実施し、他の脳神経に異常がないかどうかを調べます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因であることがはっきりすれば、アシクロビル製剤、バラシクロビル製剤などの抗ウイルス薬を注射します。発症から約3~4日以内に投与すれば回復が早いとされています。

これに加え、神経周辺の炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の注射か内服、ビタミンB12剤、代謝を活性化するATP剤、鎮痛薬の内服、病変部への軟こうの塗布(とふ)などを行うこともあります。

顔面神経まひには、顔面マッサージが行われます。これらの治療を行っても、顔面神経まひが治らず、発症者が希望した場合は、顔面神経減荷術という手術が行われ、まひが回復することもあります。

後遺症として、耳介や外耳道の水膨れが治った後も長期間にわたって、痛みが続く帯状疱疹後神経痛が起こることは、胸部に起こる帯状疱疹に比べて少ないといえます。

なお、水痘・帯状疱疹ヘルペスウイルスは体内の神経節に潜み、体力や抵抗力が低下した時に増殖し、発症する特徴があるので、再発を防ぐ上でも疲労、ストレス、睡眠不足を避け、免疫力を維持しておくことも大切です。

🇭🇺脈なし病

大動脈とその主要な分枝に狭窄を生じる特異な血管炎

脈なし病とは、大動脈とその主要な分枝に狭窄(きょうさく)を生じる特異な血管炎。手首の動脈の脈が触れないことがよくあるために脈なし病と呼ばれていますが、疾患の最初の報告者の名前に由来して高安(たかやす)病、あるいは大動脈炎症候群とも呼ばれています。

この脈なし病は若い女性に多く、特に日本ではかつてから頻度が高かったために、明治の末期から学者の間で注目され、1908年に欧米に報告されたものです。現在でも、日本が世界で最も発症者が多いといわれ、インド、中国などのアジア諸国でもみられるほかに、メキシコ、南アフリカなどでも少なくないようです。

日本での発症者の約9割は女性で、発症年齢は20歳代が最も多く、次いで30歳代、40歳代の順。特定疾患であり、医療費は公費負担助成の対象となります。

原因は不明ながら、自己免疫機序が関与しているという説が有力です。炎症のために、動脈にひきつれができて壁が厚くなり、内腔(ないくう)が狭くなったり、詰まったりするために起こります。

炎症が起きる場所については、主に脳や腕に血液を送る動脈に起きると、かつては考えられていました。動脈造影法といった検査技術の進歩した近年では、炎症は大動脈全体と、そこから枝分かれしている腹部の内臓や腎(じん)臓の動脈、さらには肺動脈にも及ぶことがわかっています。時には、動脈が拡張して動脈瘤(りゅう)を作ることもあります。

最初の急性期は、発熱、全身倦怠(けんたい)感、食欲不振、体重減少などの症状から始まることもあります。発症が潜在性で気付かないことも多く、健康診断で「脈なし」を指摘されて、初めて診断されることがしばしばあります。その後、慢性の経過をたどるようになると、動脈の炎症がどの血管に起こったかによって、さまざまな症状が現れてきます。

脳へいく血管である頸(けい)動脈が狭くなったケースでは、視力が低下したり、めまい、立ちくらみ、頭痛などが起こります。また、頸動脈を圧迫したり、上を向く姿勢をとったりすると、めまいや気が遠くなるような感じの発作が生じます。まれに、脳梗塞(こうそく)や失明などが起こることもあります。鎖骨下動脈が狭くなったケースでは、上肢のしびれ感、脱力感、冷感、重い物を持つと疲れやすいなどの症状が起こります。

腹部の大動脈が狭くなったケースでは、上下半身で血圧の著しい差がみられ、上半身は血圧が高いのに下半身では血圧が低くなります。この状態では、足の動脈に脈が触れなくなって、少し歩くとふくらはぎが張って重くなったり、痛んだりする間欠性跛行(はこう)の症状が出ることもあります。腎臓へいく動脈が詰まったケースでは、血圧を高くする物質が血液中に増えるために、高血圧になります。

脈なし病の検査と診断と治療

内科、ないし循環器科の医師による診断では、腕の動脈に狭窄があると、血圧に左右差が認められます。狭窄による血管雑音は、頸部、鎖骨上窩(じょうか)などで聞かれます。血液検査では、赤沈(血沈)高進、CRP(C反応性蛋白〔たんぱく〕)陽性、高ガンマグロブリン血症など通常の炎症反応がみられます。

X線検査では、大動脈の拡大や石灰化が認められます。血管造影検査では、動脈の狭窄、閉塞、拡張、動脈瘤などの病変部位や程度がわかり、脈なし病の診断に最も有用です。心エコーや心臓カテーテル検査では、心臓合併症の有無を調べます。

急性期には、炎症を鎮めるための副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)が用いられます。CRP、赤沈を指標とした炎症反応の強さと臨床症状に対応して、投与量を加減しながら、継続的あるいは間欠的に投与します。慢性期には、血栓予防のため抗血小板薬や抗凝固薬を用います。

内科的治療が困難と考えられる場合で、特定の血管病変に起因することが明らかな症状がある場合には、外科的治療が考慮されます。頸動脈狭窄による脳虚血症状、腎動脈や大動脈の狭窄による高血圧、大動脈弁閉鎖不全、大動脈瘤などが、主な手術対象になります。

脈なし病はある程度までは進行しますが、その後は極めて慢性の経過をとるのが通常で、多くは長期の生存が可能です。しかし、脳への血流障害や心臓の合併症を生じた場合や、高血圧が合併する場合は、厳重な管理が必要になります。また、血管炎が再発することもあります。

🇻🇦ミューカスシスト

手指の先端にできる良性腫瘍で、中年以降の女性に多く発生

ミューカスシストとは、主に手指の先端の第1関節(DIP関節)の甲側、時に足趾の甲側に、水膨れのような形状の膨らみが生じる良性の疾患。指趾粘液嚢腫(ししねんえきのうしゅ)とも呼ばれます。

中年以降の女性に多くみられる傾向があります。

膨らみは直径1センチ以下のものが多く、膨らみの内部は透明なゼリー状の粘液で満たされています。

多くは膨らみを触知するだけで無症状ですが、大きくなると皮膚が引き延ばされて薄くなり、内部が透けて見えるようになったり、痛みを伴ったりすることがあります。皮膚が破れると、細菌が第1関節内に入って関節を壊し、化膿(かのう)性関節炎や骨髄炎に至る可能性があります。

また、爪(つめ)の付け根近くに膨らみが生じ、爪を作る爪母を圧迫した場合は、爪に縦方向の溝が入ったり、変形したりすることもあります。

このミューカスシストには、線維芽細胞がヒアルロン酸を過剰に分泌して、皮膚下にたまる粘液腫性型と、骨性の盛り上がりの骨棘(こっきょく)の刺激により関節内の潤滑剤として働く滑液が周囲の組織に漏れ出し、貯留して膨らみを形成するガングリオン型があります。

さらに、第1関節の変形性関節症であるへバーデン結節に伴う変形や炎症が刺激となって、ミューカスシストが合併して生じるケースも多く見受けられます。

外傷が元になって生じるケースも多く見受けられるものの、複数の指に指趾粘液嚢腫ができます。

ミューカスシストは自然に治る傾向がほとんどないため、治療の希望があれば皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは整形外科の専門医を受診します。

ミューカスシストの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による診断では、病変の見た目から判断することもよくあります。ただし、確定診断のためには、ゼリー状の粘液を注射器で吸引して顕微鏡で調べる生検を行い、ヒアルロン酸などを確認することが必要です。

このほか、小さな病変の確認や、より詳しい評価のために、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを実施するケースもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による治療では、健康に悪影響を及ぼすことが少ない良性疾患であり、治療を行わなければいけないというわけではありません。

膨らみが自然に消えることは少ないため、肥大した膨らみが神経や腱(けん)を圧迫して痛みがある場合や患者が希望する場合には、保存的治療、凍結療法、摘出手術のいずれかを行います。

保存的治療では、注射器でゼリー状の粘液を穿刺(せんし)吸引します。麻酔をかける必要はなく、痛みも少ないという特徴があります。しかし、根本的な治療方法ではないため、繰り返し行う必要がありますが、複数回実施することで治癒するケースもあります。粘液を吸引した後、少量のステロイド薬を注入することもあります。

凍結療法では、液体窒素を用いて、病変組織を凍結して破壊します。治療時に痛みを伴いますが、副作用は少なく安全性の高い方法とされます。

摘出手術では、局所麻酔をかけ、根治を目的として病変組織を十分に切除します。ガングリオン型のミューカスシストの場合は、病変組織が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな病変がたくさん付属していることがあるため、十分に注意を払って骨性の盛り上がりの骨棘を切除すると、治癒することが多くあります。

へバーデン結節に合併したミューカスシストの場合は、保存的治療で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す時は、第1関節を固定する手術、骨棘と病変組織を切除する手術を行うことがあります。

🇸🇲ミュンヒハウゼン症候群

重症慢性型の虚偽性障害で、疾患を装うのが特徴

ミュンヒハウゼン症候群とは、自分に周囲の関心を引き寄せるために虚偽の話をしたり、自らの体を傷付けたり、疾患を装ったりする重症慢性型の虚偽性障害。

1951年にイギリスの医師、リチャード・アッシャーによって発見され、ビュルガーの著作から「ほら吹き男爵」の異名を持ったドイツ貴族・ミュンヒハウゼンにちなんで、疾患名が付けられました。自分以外の子供や配偶者などを傷付けたり、病人に仕立て上げて、周囲の関心を引き寄せる虚偽性障害は、代理ミュンヒハウゼン症候群と呼ばれます。

ミュンヒハウゼン症候群の発症者は、疾患を創作、もしくはすでに罹患(りかん)している疾患を殊更に重症であるように誇張し、病院に通院、入院します。一つの疾患の問題が解決したり、虚偽が見破られたり、小康状態に陥ると、さらに新たな疾患を作り出します。例えば、心筋梗塞(こうそく)、吐血、喀血(かっけつ)、下痢、不明熱、幻覚、妄想、心的外傷後ストレス障害。

重篤な発症者と見せ掛けるために、自傷行為や検査検体のすり替え、偽造工作といったものを繰り返し行うこともあります。発症者の腹壁には縦横に傷跡が走っていたり、指や手足が切断されていることもあります。下痢、不明熱は、自分で大腸菌などのバクテリアを注入したことが原因である場合もしばしばあります。

発症者はけがや疾患という口実を利用して、周囲の人間関係を操作することを目的に、同情をかったり、懸命に疾患と闘っている姿を誇示します。また、疾患に関わること、関わらないことに関係なく、独特の世界を作り上げるエピソードを創作する空想虚言癖を伴うことが多くみられます。エピソードによる病歴は多彩であり、多種多様な既往歴を話すことが多くみられます。ただし、そのエピソードや時期に関してはあいまいなことが多く、時期や内容も話す相手によって異なることが多くみられます。

発症者は、自らの診断と病院の診断が異なった場合、病院をすぐに変えるドクターショッピングを日常的に繰り返し、検査や手術などを繰り返します。また、さまざまな診療科を受診するなどの行動をとる場合があります。

そのため、病院遍歴を調べなければミュンヒハウゼン症候群を見付けることは難しく、主に入院、検査時の自傷行為、検体のすり替えの目撃、発覚などによって、初めて疑いが持たれるケースが多くなります。大半の症例は、精神科ではなく内科、外科といった診療科で発見されます。

ストレスおよび境界性人格障害がしばしば関連があるとされますが、正確な原因は不明。罹患する切っ掛けは小児期の手術の経験であることが多く、その時の記憶から周囲の同情や気を引くために、手術や入院を要する疾患を作り出す行為を繰り返すことが認められています。幼い頃に、精神的な虐待、身体的な虐待を経験しているケースもあります。治療による薬剤や手術の副作用が蓄積されていくため、予後はよくありません。

似たような疾患に詐病が存在しますが、疾患を装うことによって主として経済的利益の享受や病欠などを目的とするため、大きなリスクを避ける傾向にあります。ミュンヒハウゼン症候群では、疾患を装うことによって同情を引くといった精神的利益を目的とするため、手術や検査といったリスクをいとわず、むしろ積極的に協力する点が大きな違いとして挙げられます。

ミュンヒハウゼン症候群の検査と診断と治療

医師による診断は、身体疾患を除外するために必要なあらゆる検査を含め、病歴と診察に基づいて行われます。

治療が成功することは、まれです。決定的な治療法が存在せず、医師と発症者が協力して問題を解決できるということを伝えるのは有益なものの、自分で自分を重症の疾患にしようとして自らの体を傷付けたり、手術を受けたり、薬剤を飲んだりするので、さまざまな副作用、機能障害が出てくる危険があります。

発症者は、治療への要求が満たされることによって最初は症状緩和をみても、その要求はエスカレートするのが典型であり、ついには医師の意思や能力の範囲を超えてしまいます。治療の要求に正面から対決したり拒否したりすると、しばしば怒りの反応を導くことがあり、一般には医師や病院を替えてしまいます。

精神科治療は通常拒否されたり避けられたりしますが、危機打開の最低限の手助けとして、障害を早くに認識し、危険な処置や、過剰または不要な薬物の使用を避けるようにという助言と、フォローアップケアは受け入れられることがあります。

🇲🇹ミリタリーネック

首の骨である頸椎が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれが起こる障害

ミリタリーネックとは、首の骨である頸椎(けいつい)が真っすぐな状態に近くなり、肩凝りや手のしびれなどが起きる障害。アーミーネック、ストレートネックとも呼ばれます。

通常、頸椎は前に向かって軟らかに湾曲している前湾構造をしており、これにより頭の重さを分散させ、体全体のバランスを取っています。しかし、パソコンや携帯電話、スマートフォンを使うなどで前かがみになって、うつむく姿勢を続けていると、頸椎が頭の重さを支えられなくなるために、生理的に正常な前湾構造が失われてゆがみ、真っすぐな状態に近くなるミリタリーネックとなります。

生理的に正常な頸椎の前湾角度は30~40度であるのに対して、ミリタリーネックになった頸椎の前湾角度は30度以下を示します。つまり、首の骨である頸椎の形は、陸軍の軍人が頭のてっぺんからかかとまで真っすぐな姿勢になる気を付けをして、あごを手前に引いたような状態になります。

ミリタリーネックになると、歩行などの緩やかな動作を行う際にも、分散しない頭の重さが常時、首回りの筋肉に加わることになります。この負担が長期間にわたって継続すると、首回りの筋肉や神経を徐々に圧迫し、血流も悪くなって、肩凝りや手のしびれが起きることがあります。

パソコンや携帯電話、スマートフォンの普及と比例して発症するケースが多くなっている点も、ミリタリーネックの大きな特徴であり、仕事中に限らず休憩中や移動中も画面を見詰める20~40歳代の働き盛りに多く、特に女性は男性の2倍ほど多いといわれています。女性は首が細いため、筋肉の疲労が蓄積しやすいのが原因と見なされます。

ミリタリーネックの症状としては、肩凝り、手のしびれ、頭痛、めまいのほか、首の痛み、首の傾き、首の動かしにくさ、上方の向きにくさ、寝違い、枕の不一致、吐き気、自律神経失調症などがあります。

また、ミリタリーネックが引き金となって、頸椎の椎間板の一部が後方へずれて神経を圧迫する頸椎椎間板ヘルニアや、頸椎の椎間板と椎骨の変性によって脊髄や神経根が圧迫される頸椎症が起きることもあります。

ただし、一時的に症状が改善したように感じられるケースや、症状が度々治まるケースもあることから、症状が慢性化しない限りミリタリーネックを見極めることが難しい面もあります。

ミリタリーネックの検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線(レントゲン)検査を行い、頸椎の形状を確認します。頸椎の前湾の角度が少なく、生理的に正常な前湾の角度の欠如が確認された場合は、ミリタリーネックと確定されます。

確定された場合は、さらにMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、症状の進行状況を確認します。また、ミリタリーネックが要因となって頸椎に負担がかかり、合併する可能性を持つ頸椎椎間板ヘルニアや頸椎症などの有無も確認します。

整形外科の医師による治療では、前かがみになって、うつむくという不適当な姿勢を長時間継続することが大きな要素を占める障害のため、姿勢を改め、スマートフォンの画面を見詰め続けたりする悪い習慣を避けることが根本となります。根本を解決しない限り、どのような治療を行っても再発の危険性がぬぐえないためで、実際、ミリタリーネックを発症した人の半数以上が再発を経験しています。

具体的には、パソコンを使って長時間のデスクワークをする人の場合は、画面を視線の高さに合わせるようにし、負担のかかる前かがみの姿勢が続かないようにしていきます。また、一定時間おきにストレッチを行い、頸部周囲の筋肉の緊張を和らげるようにしていきます。重症ではない限り、姿勢に注意しストレッチを行うことで十分改善できます。

継続的な負担から頸部に炎症を起こし、痛みが強い場合は、非ステロイド性消炎鎮痛剤や筋弛緩(きんしかん)剤を用いて治療します。局所の安静のために、頸椎固定用のカラー(えり巻き式補装具)を首に装着することもあります。

ミリタリーネック対策の矯正枕(まくら)もあり、睡眠時を利用して、首に当たる部位の枕の高さを調節することによって、首に正常な湾曲を強要させて矯正していきます。背筋を強制的に伸ばす働きを持つ姿勢矯正ベルトもあります。

そのほかの理学療法としては、外部から温めることによって血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するホットパックなどの温熱療法、首の牽引(けんいん)と休止を繰り返すことによって首の痛みや手のしびれを緩和する頸椎牽引療法、低周波治療、レーザー治療などがあります。

2022/07/16

🇦🇪ミルメシア

子供の足の裏や手のひらに生じるウイルス性いぼで、魚の目に類似

ミルメシアとは、ヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)1型が皮膚に感染して、子供の足の裏や手のひらにいぼができる疾患。

ウイルス性いぼ、すなわちウイルス性疣贅(ゆうぜい)の一種で、足の裏や手の平に多くは単発性に生じ、多発しても融合することはありません。

足の裏にできるミルメシアは学童期の子供に多く発症し、素足になる学校のプールサイドや脱衣所の床などで接触感染するとみられます。皮膚の弱い子供やアトピーを持つ子供に、比較的多く感染すると見なされます。

皮膚面からドーム状に非常に硬く隆起したいぼで、全体は赤色調ですが、中央部がややへこんで白っぽい色で、形が蟻塚(ありづか)に似ています。

足の裏にミルメシアができた場合は、体重が掛かって、いぼがめり込んでしまうため、歩く時に不快を感じたり、小石を踏んでいるように痛むことがあります。

しばしば魚(うお)の目(鶏眼〔けいがん〕)と間違われるものの、魚の目は靴などによる長期間の摩擦や圧迫が原因で、ミルメシアはウイルス感染症という違いがあります。

ちなみに、子供には魚の目は、まずできません。魚の目は、加重による皮膚表面の角質層の部分的な角化であり、一種の老化現象として大人にできるものです。

ミルメシアを放置しておくと、ほかの部位に移ります。自分で削ったりいじったり、市販の薬で取ろうとしたりすると、いぼが周囲やほかの部位により広がることになります。素人判断は禁物で、まず皮膚科、皮膚泌尿器科の医師を受診し、適切な治療を受けるべきです。

ミルメシアの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、皮膚症状から判断します。確実に診断する方法は、いぼを切除して組織学的に診断するか、ウイルス抗原または核酸を検出します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、いぼを凍結して取る凍結療法や、電気焼灼(しょうしゃく)が一般的に行われます。

凍結療法は、液体窒素を綿棒に含ませて、いぼの凍結、融解を繰り返す方法です。いぼの部分を超低温で瞬間的に凍結させ、部分的にやけどの状態を起こすことで、皮膚内部のいぼの芯(しん)を表面に押し上げ、徐々にいぼを縮小させます。

処置そのものにかなりの痛みを伴うほか、場合によっては水膨れが発生し、処置後も患部に激痛が伴うこともあります。 また、場合によっては水膨れ内部に出血が発生し、黒く変色することもありますが、この状態になると激痛こそあるものの、治りは早くなります。

通常、凍結療法は4~7日が効果のピークであるために、1~2週間に1回の通院で治療しなければならず、効果に個人差こそありますが、およそ数週から2カ月以上と長い日数が必要とされます。治癒率の低いことも欠点で、特に足底ではなかなか治りません。

なお、家庭用のいぼ治療薬として知られるイボコロリは、角質を溶かすだけなのでかえって広げてしまうことがあります。凍結療法と組み合わせると、よい結果が得られます。

電気焼灼は、レーザーメスや電気メスでいぼを焼く方法です。液体窒素による凍結療法と違って一度で治るものの、麻酔が必須で、傷跡を残すことがあります。凍結療法などと異なり、保険適応外でもあります。

一部の医療機関では、凍結療法で治りにくいケースや痛みに耐えられないケースで、DNCB(2.4-ジニトロクロロベンゼン)という薬を塗布していぼを取る治療法を行っています。DNCBは本来、かぶれの状態を見る検査薬で、これを治療に応用し、いぼをかぶれた状態にして取ります。多少かゆみを伴ったり、じくじくした状態になったりすることがありますが、痛みはありません。

ほかにも、抗生物質のブレオマイシン剤などの軟こうの塗布、ブレオマイシン剤の局所注射、ウイルス消毒薬の使用、はと麦の種を成分とする漢方薬ヨクイニンの内服、免疫療法などいろいろの治療法があります。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...