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2022/08/14

🇸🇦水晶体嚢性緑内障

高齢者に多くみられる続発性緑内障の一つ

水晶体嚢性(のうせい)緑内障とは、偽落屑(ぎらくせつ)症候群の目であることが原因となって、眼圧が上昇するタイプの続発性緑内障。眼圧が上昇することによって視神経が侵され、視野が狭くなったり欠けたりします。

偽落屑症候群は70歳以上に約5パーセントみられ、その約半数に水晶体嚢性緑内障がみられます。偽落屑症候群は、片目ないし両目の水晶体の前嚢、虹彩(こうさい)、隅角(ぐうかく)などに、フケのような白い物質である偽落屑が粉状から膜状に沈着している状態で、この偽落屑が線維柱帯という、眼内液である房水(ぼうすい)の排出路に詰まることで、房水が流出しにくくなって眼圧が上昇します。偽落屑の本体は、不明です。

偽落屑症候群の眼球では、瞳孔(どうこう)の縁が白く見え、そうでない眼球よりも緑内障、白内障になりやすい性質があります。また、水晶体を回りから支えているチン小帯という多数の細い線維が弱くなることが多く、白内障手術の際にチン小帯断裂という合併症を起こしやすくなります。

水晶体嚢性緑内障の検査と診断と治療

偽落屑症候群だけでは何の自覚症状もなく視力も視野も正常ですので、他の疾患でたまたま眼科を受診した時や、人間ドックの眼科検診で発見されます。偽落屑症候群といわれても治療の必要はありませんが、眼科医の指示通りに定期検査を受け、水晶体嚢性緑内障の合併を早期に発見することが大切です。

眼科の医師による水晶体嚢性緑内障の検査では、30〜40mmHgの高めの眼圧上昇と、水晶体、虹彩、隅角などにフケ状の偽落屑が沈着しているのを認めます。

治療としては、眼圧を下降させるために薬物療法、レーザー治療、手術療法を適宜行います。薬剤としては、局所に投与する点眼剤(縮瞳剤)や全身に作用する炭素脱水酵素阻害剤やグリセリンを用い、房水圧の抑制によって眼圧を下げます。

主に点眼剤でコントロールできなくなった水晶体嚢性緑内障に対しては、レーザー治療のレーザー線維柱帯形成術が行われ、隅角の先にある線維柱帯にアルゴンレーザーを照射し、熱凝固により房水流出抵抗を減少させ、眼圧下降を図ります。

🇸🇦水腎(すいじん)症

尿が腎杯や腎盂内にたまり、膨らむ疾患

水腎(すいじん)症とは、結石、尿管狭窄(きょうさく)など尿路の通過障害があるために、尿が腎杯や腎盂(じんう)内にたまり、膨らむ疾患。

大きくなると腎臓の実質が圧迫され、腎臓機能が低下します。両側性のものでは尿毒症になります。

軽いものは症状がありませんが、大きくなると腎臓部や腰部が痛み、吐き気、嘔吐(おうと)、食欲不振が起こります。

水腎症の検査と診断と治療

超音波診断装置が普及した今日では、容易に水腎症の診断ができます。治療としては、原因となっている尿路の通過障害を早く除去します。高度のものや感染のあるものは、腎臓を摘出することもあります。

🇸🇦膵臓がん

胃の後ろに位置する膵臓に発生する、予後不良のがん

膵臓(すいぞう)がんとは、胃の後ろに位置する消化腺(せん)である膵臓に発生するがん。

膵臓は十二指腸とくっついていて、横に細長くなって脾臓(ひぞう)に接する臓器で、直径15センチ、重さ100グラムほどとサイズこそ小さいものの、外分泌と内分泌という2つのホルモン分泌を行う機能があります。

外分泌機能は、消化液である膵液を分泌して十二指腸へ送り込み、食物の消化、吸収を助けるもの。膵液には、炭水化物を分解するアミラーゼ、蛋白(たんぱく)質を分解するトリプシン、脂肪を分解するリパーゼといった消化酵素が含まれています。

一方、インシュリン(インスリン)やグルカゴンなどのホルモンを分泌して、血糖値を調節するのが内分泌機能です。インシュリンは血糖値を下げ、グルカゴンは血糖値を高くします。

この膵臓を便宜上、ちょうど3等分して、十二指腸側に接する右側を頭部、中央を体部、脾臓に接する左側を尾部と呼びます。膵臓がんの3分の2以上は、膵頭部に発生します。

また、膵臓がんの90パーセント以上は、十二指腸への膵液の通り道である膵管から発生します。まれには、ホルモンを作るランゲルハンス島(膵島)から発生します。

この膵臓がんは、消化器がんの中で最も予後不良のがんで、近年増加傾向にあります。日本のがんにおける死因としては、平成14年の段階で男性では第5位、女性では第6位。50歳以上の男性に多い傾向にあり、60歳代にピークがあります。

予後不良の原因としては、後腹膜にある臓器であるために早期発見が困難であり、また極めて悪性度が高く、例えば2センチ以下の小さながんであっても、すぐに周囲の血管、胆管、神経への浸潤や、近くのリンパ節への転移、肝臓などへの遠隔転移を伴うことが多いからです。

原因は明らかではありませんが、喫煙、慢性膵炎、糖尿病との関係が報告されています。

食欲不振、体重減少、上腹部痛、腰痛、背部痛などの症状以外に、膵頭部がんでは、目や皮膚が黄色くなる閉塞(へいそく)性黄疸(おうだん)、無胆汁性の灰白色便が特徴のある症状です。

肝臓で作られた胆汁は、胆管を通って十二指腸へ排出されますが、胆管は膵頭部の中を走行するため、膵頭部にがんができると胆管を圧迫したり閉塞したりして、胆汁の通過障害を起こし、閉塞性黄疸が現れます。そこに細菌が感染すると発熱があります。

また、膵管も胆管と同様に閉塞して二次性膵炎を起こし、耐糖能異常すなわち糖尿病の悪化がみられることがあります。さらに進行すると、胃や十二指腸、小腸に浸潤すると、そこから出血して血を吐く吐血、便に血が混じる下血が起こります。胃の出口や、十二指腸が狭くなると食物の通過障害が生じることもあり、食べた物を戻したりします。

一方、膵体部や膵尾部に発生したがんは症状があまり現れず、腹痛が現れるまでにはかなり進行していることが少なくありません。

膵臓がんの検査と診断と治療

早期発見が何よりも大切なので、40歳以上で胃腸や胆道の病変がなく、上腹部のもたれや痛みがある人、体重が減少して腰痛、背部痛のある人、中年以後に糖尿病が現れた人や、糖尿病のコントロールが難しくなった人は、できるだけ早期にスクリーニング(振るい分け)検査を受けます。

従来の血液検査、超音波検査による検診では、有効なスクリーニング検査がなかったため膵蔵がんの検診は不可能でしたが、最新鋭のMDCTと呼ばれるCTを用いて検査をすれば、切除できるくらいの膵蔵がんの診断が可能になっています。

医師による血液検査では、閉塞性黄疸に伴う肝機能異常や、アミラーゼ値の異常、血糖異常が認められることが多くあります。腫瘍マーカーとしては、CA19—9、DUPAN2、SPAN1、CEAなどが高値を示します。しかし、がんがある程度のサイズになるまでは産生量が少ないため、それほど高値にはならず、いずれも早期診断にはあまり役立ちません。

スクリーニング検査としては、腹部超音波(エコー)、CT、内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)、内視鏡的超音波(EUS)、磁気共鳴画像(MRI、MRCP)、ポジトロン放射断層撮影(PET)などがあります。特に、閉塞性黄疸がある場合は、黄疸を減らす治療のために経皮経肝胆管ドレナージ(PTBD)、内視鏡的逆行性胆管ドレナージ(ERBD)をすることにより、診断も可能です。

区別すべき疾患としては、粘液産生膵腫瘍や、肝炎、胆石症、胆管炎、胆管腫瘍、十二指腸乳頭部がん、腫瘤(しゅりゅう)形成性慢性膵炎など黄疸の出現する疾患が挙げられます。

膵臓がんは難治性がんの代表で早期診断が難しく、外科的切除術以外は有効な治療法が確立されていません。膵頭部のがんは、膵頭十二指腸切除術が行われ、膵臓の半分、胃の半分、十二指腸の3分の2、胆嚢(たんのう)、胆管を切除します。膵体部、膵尾部のがんは、膵臓の半分を切除する膵体尾部切除術と脾臓摘出術が行われます。

発見された時に切除可能なのは40パーセント前後で、切除できても再発することが多く5年生存率は数パーセント程度です。

黄疸の治療には、肝臓から胆管にチューブを通して胆汁を体の外に逃がす必要があります。あるいは、内視鏡的に狭くなった胆管にチューブを留置します。十二指腸が狭くなって食べ物が通らなくなった時には、バイパス手術を行うか、内視鏡を用いて金属のチューブを狭くなった部位に入れて拡張します。

がんの切除が不能な場合、放射線療法と抗がん剤による化学療法が行われます。放射線療法はがんを小さくして痛みをとる効果がありますが、完全に治ることはありません。肝臓や腹膜への転移がなければ、放射線と抗がん剤との併用療法が効果的なことがあります。

2001年よりジェムザールという新しい抗がん剤が使用できるようになり、1年以上生存する発症者も増えてきています。肝臓に転移があれば、肝臓に直接抗がん剤を注入することもあります。

放射線療法や抗がん剤による化学療法では、副作用に注意しなければなりません。骨髄機能が抑制され、白血球や赤血球、血小板が減少したり、肝機能が悪化したり、下痢、発熱、食欲不振、吐き気などがよくみられる副作用で、治療の前には必ず血液検査や問診で副作用を確認する必要があります。

🇵🇰水痘(水ぼうそう)

全身に水膨れが現れ、かゆみを伴う感染症

水痘(水ぼうそう)とは、ヘルペスウイルスの一種の水痘・帯状疱疹(たいじょうほうしん)ウイルスが原因で起こる疾患。全身に次々と小さな水膨れが現れ、かゆみ、発熱を伴います。

一般に冬から春にかけて、子供に流行する疾患で、時折、大流行することもあります。感染経路は、主に空気感染、飛沫(ひまつ)感染で、水疱液の接触感染もあります。ウイルスは強い感染力を持っているため、病院などでは同一フロアにいるだけで軽度の接触と見なします。

従って、水痘にかかった時には、水膨れが完全にかさぶたになるまで、幼稚園や学校、会社などは休まなければなりません。通常は1週間くらいで治り、免疫力が低下している場合には、重症化することがあります。

ほとんどの人が子供の時にかかりますが、最近では、小児期に感染する機会が減ってきていることから、大人になってから初めてかかる例も増えてきています。大人の水痘は、脳炎や肺炎の合併が多くて重症となることが多いので、注意が必要です。また、妊婦が出産直前に感染すると、生まれた新生児は重症水痘になりやすいため、緊急の処置が必要になります。

潜伏期間は11~21日で、発疹(はっしん)の現れる1日前から、軽い発熱、だるさ、食欲低下がみられます。症状の初めは、数個の発疹がみられるだけですが、その後数時間で、全身に円形の赤い発疹が現れ、すぐにエンドウ豆大の水膨れになります。水膨れは数日でかさぶたとなりますが、次々と新しく発疹が現れるので、新旧さまざまな発疹が混在してみられるのが特徴です。

発疹は胸の辺りや顔に多くみられるほか、頭髪部や外陰部、口の中の粘膜など、全身の至る所にみられます。発疹の数が少なく軽症な場合には、熱も38~39℃くらいで3~4日で解熱します。重症の場合には、39℃前後の熱が1週間ほど続くこともあります。

また、かゆみを伴うために引っかいてしまうと、細菌の二次感染を起こす危険性があります。水膨れが乾燥し、かさぶたになってから、2週間くらいでかさぶたはとれます。少し跡が残ることがあります。

一度かかると免疫ができるため、再び水痘にかかることはほとんどありません。しかし、水痘の原因である水痘・帯状疱疹ウイルスは、初感染した水痘が治った後も神経節に潜伏しています。そして、数十年後に、疲れがたまったり、体の抵抗力が落ちたりするなど、何らかのきっかけにより、潜んでいたウイルスが再び暴れ出すと症状が現れます。

この場合、水痘のように全身に水膨れが現れることはなく、神経に沿って帯状に水膨れが現れる帯状疱疹として発症します。

症状に合わせた治療法

水痘(水ぼうそう)は軽いものから重いものまであり、発症者によってさまざまな症状が現れるので、医師の判断の下に症状に合わせた治療を受けるようにしましょう。

水痘の典型例では多くの場合、その皮膚症状から容易に診断できます。非典型例でほかの病気との区別を要する場合や、早期に診断を確定する必要がある場合などには、水疱の底にある細胞を採取し、蛍光抗体法を用いて水痘・帯状疱疹ウイルス抗原を検出します。また、抗体検査を水痘の発症者に行えば、ウイルスの初感染であることが確認できます。

治療には対症療法しかありませんが、原因となるウイルスの増殖を抑える治療と、発熱、かゆみなどの症状を和らげる治療があります。

乳幼児期の水痘は軽症である場合が多いので、非ステロイド性解熱鎮痛薬、かゆみ止めの抗ヒスタミン薬やフェノール亜鉛華軟膏(なんこう)などが処方され、安静などによる対症的な治療が行われます。

年長児あるいは成人などでは、比較的に重症化することが多いので、抗ウイルス薬のアシクロビル、バラサイクロビルなどの内服を行います。

悪性腫瘍(しゅよう)やその他の疾患により免疫状態が低下している場合では、致死的になることがあるので、入院した上でアシクロビル、ビダラビンなどの点滴静脈注射が行われる場合があります。

水膨れが壊れたら、抗生剤入りの軟膏で二次感染を防ぎます。また、化膿(かのう)がなければ、ドレッシング材などで覆って湿潤環境を維持することで、皮膚に跡が残りにくくなる場合があります。

予防手段としては、水痘ワクチンが使用されます。水痘ワクチンは弱毒化生ワクチンであり、接種により80~90パーセント程度の発症阻止効果があります。発症した場合も症状は軽くてすみますし、ワクチンによる重い副作用もほとんど発生していません。

日常生活で注意すること

全身症状が軽くても、発疹がすべてかさぶたになって症状が治まるまで、安静にしていることが大切。熱が高い場合には、両脇(わき)を冷やすなどとともに、脱水状態にならないように水分を十分取るようにします。

水痘(水ぼうそう)はかゆみを伴うため、つい引っかいてしまいがちですが、水膨れをつぶすと、化膿したり、跡が残ることもあります。水膨れはつぶさないようにし、手などを清潔にして細菌感染を起こさないようにします。引っかいてしまわないように、爪(つめ)を丸く切ったり、手袋をするのもよいでしょう。

また、水痘・帯状疱疹ウイルスは伝染力が強いので、発疹が現れる1日前からかさぶたになるまでのおよそ1週間くらいは、他人に感染する可能性があります。くしゃみや咳(せき)、会話などによって飛び散ったウイルスが、気道から吸引されて移るため、水痘にかかったことのない人の近くに寄らないようにします。

特に、家族の中に水痘にかかったことのない人がいる場合には、感染する可能性が高く、家族から感染した場合は重症化することが多いので、注意が必要です。

熱がある時や新しい水膨れが増えている間は、入浴は控えます。ほとんどの水膨れがかさぶたになれば、これらを破らないように気を付けながら入浴してもよいでしょう。入浴した後には、皮膚から細菌が入らないように処置が必要なこともあるので、医師に相談して指示を受けましょう。

学校保健法による第2類学校伝染病に指定され、すべての発疹がかさぶたになるまでは、幼稚園や学校を休ませることになっていますので、それまでは子供が元気でも休まなければなりません。すべての発疹がかさぶたになれば、人に移すこともないので、集団の中に入っても大丈夫です。

通常、1週間程度で治りますが、もし4~5日を過ぎても発熱が続いたり、体がだるいなど具合が悪いような場合には、他の病気を合併している可能性がありますので、すぐに医師に相談しましょう。

🇵🇰水頭症

水頭症(すいとうしょう)とは、脳脊髄(せきずい)液の産生、循環、吸収などいずれかの異常によって、髄液が頭蓋(とうがい)内にたまり、脳の内側で4つに分かれて存在する脳室が正常より大きくなる病気です。脳脊髄液による脳の圧迫が、脳機能に影響を与えます。

生まれ付きの異常で起こっている場合を先天性、生まれてから生じた異常で起こってきた場合を後天性と区別しています。

先天性水頭症の原因としては、先天的な障害(奇形)や、母胎内での感染が挙げられます。いくつかの骨が結合してできている頭蓋骨は、生まれてしばらくの間、骨同士の結合が弱く、軟らかく組み合わさっています。生まれ付き水頭症を持っている乳児や、頭蓋骨の結合が軟らかい時期に水頭症になった乳児は、脳脊髄液が余分にたまって大きくなった脳室の圧力によって、頭蓋骨を押し広げる状態が続く結果、頭が大きくなることが起こります。

後天性水頭症の原因としては、頭蓋内出血(脳室の内部への出血の波及、けがによる硬膜下血腫(けっしゅ)など)、炎症(髄膜炎に代表される感染症など)、脳腫瘍(しゅよう)などが、年齢を問わず挙げられます。

頭の拡大が目立つ乳児までの時期以降、余分な脳脊髄液による内圧の上昇は、脳を直接圧迫する力となり、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)を引き起こします。食欲不振、体重減少、全身倦怠(けんたい)感など頭の症状とは考えにくいことも起こり、長い間、気付かれない場合もあります。また、神経への影響から、視力の低下、眼の動き方の不自由などを起こします。

一方で、大人の水頭症には、頭の圧力が上がった症状を示さない正常圧水頭症があります。脳室が大きくなっていて、認知障害、歩行障害、尿失禁といった特徴的な症状がありながらも、頭の圧力は高くなりません。くも膜下出血後や髄膜炎の治った後に認められることが多く、原因不明の特発性のものもあります。

水頭症そのものに対する治療としては、一時的な、緊急避難的な治療と、永続的な治療が行われます。

一時的な治療では、ドレナージと呼ばれる方法が一般的で、余分な脳脊髄液の一部分を頭蓋骨の外へ流す処置の総称です。先天的、後天的を問わず、頭の圧力が急上昇した状態による病状の不安定さを解除するために、救急処置として行われます。

永続的な治療では、シャントと呼ばれる手術法が一般的で、乳幼児から大人まで、年齢、原因を問わず行われています。本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ脳脊髄液を流す仕組みを作ります。

内視鏡手術も行われています。神経内視鏡を用いて、脳の内部に本来ある脳脊髄液の流れ方の経路とは別に、新しい経路を作ります。治療できる年齢や原因に制約があり、シャントにとって変わる治療法にはいまだ至っていません。

🇵🇰随伴性肥満

何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こる肥満

随伴性肥満とは、何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こるタイプの肥満。二次性肥満、症候性肥満とも呼ばれます。

一方、原因となる特別の疾患がなくて起こるタイプの肥満は、原発性肥満、あるいは単純性肥満と呼ばれています。こちらのタイプの肥満の多くは、食べすぎと運動不足が主な原因となって起きます。肥満している人の大部分が原発性肥満であり、二次性肥満は肥満者全体の5パーセント程度にしか認められません。

随伴性肥満の原因も過食によるものですが、基礎にある疾患が食欲を増加させて脂肪を蓄積し、肥満してきたものです。基礎にあって影響を与える疾患としては、ホルモンの疾患や遺伝性の疾患、食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患が挙げられます。ホルモンの疾患では、ホルモン作用の高進や低下によってエネルギーの摂取や消費のバランスが障害され、随伴性肥満を発症します。遺伝性の疾患では、遺伝的要因の異常によりエネルギー代謝調節系が破綻し、随伴性肥満を発症します。視床下部の疾患では、食行動の調節機能を有する視床下部の器質的および機能的異常に基づいて、随伴性肥満を発症します。

基礎にあって影響を与える薬物としては、抗精神病薬や副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬などがあります。抗うつ剤の服用による副作用で食欲が増して肥満になることがあり、膠原(こうげん)病などで用いられる副腎皮質ホルモン薬は使用量が多いと肥満を起こします。

ホルモンの疾患には、インスリノーマ(インスリン産生膵島〔すいとう〕細胞腫〔しゅ〕)、高インスリン血症、クッシング症候群、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、性腺機能低下症があります。

インスリノーマでは、インスリンによる低血糖発作を回避するために過食を生じ、随伴性肥満を発症します。高インスリン血症による脂肪蓄積作用も、随伴性肥満に関与します。しかし、多くのケースで肥満は顕著ではなく、インスリン自体は中枢神経系で摂食抑制性に働いています。クッシング症候群では、副腎皮質からグルココルチコイドというホルモンが過剰に分泌され、丸顔と上半身の肥満を特徴とする随伴性肥満を発症します。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの低下によって体重増加を来します。この体重増加は脂肪蓄積ではなく、体液貯留やムコ多糖類の蓄積が原因であるとされます。

遺伝性の疾患には、ターナー症候群、糖尿病などがあります。食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患には、松果体腫瘍(しゅよう)、フレーリッヒ症候群、キアリ・フロンメル症候群といった疾患があります。

随伴性肥満の検査と診断と治療

内科の医師は、肥満者を診察する際には、今までの病歴や家族歴、生活歴、身体検査の結果から、随伴性肥満か原発性肥満かを区別します。

随伴性肥満の場合は、主として原因となっている疾患の治療が必要になるので、入院の上、精密検査を行うことが必要になります。ホルモンの疾患による肥満や、視床下部の疾患による肥満では、各種内分泌学的検査、神経学的検査、CTやMRIなどの画像検査が必要となります。遺伝性の疾患による肥満、および遺伝性の視床下部の疾患による肥満では、必要に応じて染色体検査や各種遺伝子の検査を行います。

随伴性肥満に対する治療は、原因となっているクッシング症候群、甲状腺機能低下症などの疾患の治療が中心になります。ホルモンの疾患に対しては、ホルモン補充療法を行います。薬剤の服用による肥満に対しては、薬剤の減量、または体重増加の少ない、ほかの薬剤に変更します。

肥満自体には原発性肥満と同様に食事療法、運動療法および行動療法を用いますが、遺伝性の疾患による肥満など知能障害を伴うケースでは、それらの遂行が困難な場合も多くなります。

🇵🇦水疱性角膜症

角膜の内側にある角膜内皮細胞の機能不全により、角膜が浮腫状に混濁し、視力が下がる疾患

水疱(すいほう)性角膜症とは、角膜の内側にある角膜内皮細胞の機能不全により、角膜が浮腫(ふしゅ)状に混濁し、視力が下がる疾患。

角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、表面から内側に向かって上皮細胞層、角膜固有層、デスメ層 、そして内皮細胞層という4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら眼の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

角膜の一番内側にある内皮細胞層を構成している角膜内皮細胞は、角膜内の水分量を調節する役割を果たしています。具体的には、角膜に入ってくる眼内の水(房水)をポンプ機能により眼内へ戻す役割を担っています。この機能により、角膜の水分量は一定に保たれ、角膜の厚みや透明性が維持されています。

しかし、何らかの原因で角膜内皮細胞の機能不全が起こり、そのポンプ機能が障害されますと、角膜内の水分が排出できなくなるため、角膜はむくんで厚くなり、透明性も低下します。

角膜が浮腫状に混濁することにより、外界の光が通りにくくなりますし、角膜の表面を覆っている角膜上皮にも水がたまって、水疱ができます。そのため、視力が低下しますし、表面の水疱のために痛みもあります。また、角膜上皮がはがれやすくなり、はがれてしまうと非常に強い痛みを生じます。原因によって、両眼性であったり片眼性であったりします。

角膜の内皮細胞は、生まれてから死ぬまで増えることはないので、フックス角膜内皮ジストロフィなどの角膜内皮疾患で遺伝的に内皮細胞が弱かったり、眼内の手術や炎症、外傷、角膜感染など外的な原因で内皮細胞が障害されたりすることにより、水泡性角膜症が生じます。

最近では、白内障の手術後や、緑内障に対するレーザー治療後に、水泡性角膜症が生じることも増えています。コンタクトレンズの長期装用によっても、内皮細胞は少しずつ減少するので、注意が必要です。

水疱性角膜症の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、眼球内を観察する細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査を行い、角膜の浮腫状の混濁、角膜の厚さの増加、角膜内皮細胞の密度の低下もしくは測定不能により確定します。

年齢にもよりますが、角膜内皮細胞の密度の正常値は2500〜3000個/mm2程度ですが、密度の値が約500個/mm2以下になると水泡性角膜症と見なされます。

眼科の医師による治療では、非常に初期の場合、濃度の濃い生理食塩水の点眼や眼軟こうで角膜内の水分を吸い取ることによって、視力の改善を図ります。痛みに対しては、治療用ソフトコンタクトレンズを装用します。

根本的な治療としては、角膜内皮細胞は増えて再生しないために、角膜移植が必要になります。従来は、全層角膜移植のみが行われていましたが、最近では、角膜の内皮側だけを入れ替える角膜内皮移植も行われるようになっています。

🇵🇦水疱性鼓膜炎

外耳と中耳の境界にある鼓膜に、急性に水疱ができ、炎症が起きる疾患

水疱(すいほう)性鼓膜炎とは、外耳と中耳の境界である鼓膜の薄い膜の外側表面に、急性に水疱ができ、炎症が起きる疾患。

鼓膜は、耳に入ってくる音を振動に変換し、耳小骨経由で内耳に伝える働きのほか、外耳と中耳を境界する役目をしている器官です。その構造は、直径約9ミリ、厚さ0・1ミリの薄い膜状で、耳の入り口から約3センチのところに位置しており、外耳道のほうに向かって開いたパラボラアンテナのような形態をしています。

体の中には、いくつかの膜状構造物がありますが、鼓膜は常に外界に交通しているため、外力に弱い器官といえるでしょう。

この水疱性鼓膜炎が単独で起こることは比較的少なく、多くは風邪やインフルエンザなどに伴って起こります。子供よりも20〜40歳代の成人女性に多く、両側の耳に起こることはまれです。

原因は、風邪やインフルエンザなどによるウイルス感染が原因と疑われていますが、まだはっきりしていません。耳かきのしすぎなどが原因で鼓膜に傷が付くことで、細菌が感染して炎症が起こることもあります。

水疱性鼓膜炎が引き起こされると、鼓膜の表面に急性に、小さな液体の詰まった水疱が1個から数個でき、突発的に激しい耳の痛みが生じるのが特徴で、耳の奥が詰まったような不快感も覚えます。耳垂れ(耳漏)は、あまりありません。

まれに、音を感じる内耳に影響を与えて、感音難聴を起こすことがあり、耳鳴りなどの症状を伴います。時々、中耳炎を合併することもあり、その場合は伝音難聴や発熱を覚えます。

水疱性鼓膜炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、顕微鏡やファイバースコープで鼓膜を拡大して観察し、似た症状の中耳炎と鑑別します。観察すると、鼓膜は出血性に赤くなり、さらに表面に水疱が認められるので、すぐに鑑別できます。

感音難聴を起こして耳鳴りなどの症状を伴っている場合には、聴力検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、抗生剤、鎮痛薬の内服を行います。痛みの強い場合には、痛みを緩和するために綿棒で水疱をつぶすか、小さなメスで水疱を切開して排液を行うことがあります。通常、耳に薬剤を入れる点耳などの局所処置は必要ありません。

感音難聴が生じた場合は、突発性難聴に準じて、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン剤)、ビタミン剤、循環改善薬などを使用します。

水疱性鼓膜炎の予防法は、解明されていません。いったん発症した場合は、耳に水が入らないように気を付けることが重要です。

🇵🇦髄膜炎

人間の脳は、内側から軟膜、くも膜、硬膜の三層の髄膜で覆われています。髄膜炎とは、ウイルスや細菌などの感染によって、脳を取り巻いている髄膜に炎症が起こる病気です。別名は、脳脊髄(せきずい)膜炎、脳膜炎。

よくみられるのは、風邪や中耳炎、副鼻腔(びくう)炎などにかかったことをきっかけに発症するケースです。風邪を引いた際に発熱と頭痛が一緒に起こることがありますが、熱に激しい頭痛を伴う時は、髄膜炎の可能性もあります。

髄膜の炎症が広がると、首が強く突っ張る項部強直(こうぶきょうちょく)で、首が曲がらなくなり、さらに炎症が脳そのものまでに及ぶと脳炎を合併し、意識障害や手足のけいれんを起こすこともありますので、すぐに神経内科や内科、小児科の専門医に診てもらうようにしましょう。

髄膜炎の原因は、ウイルスによるものと、細菌によるものに大別されます。髄膜炎を起こすウイルスは、夏かぜ、はしか、風疹(ふうしん)、おたふくかぜ、ヘルペス、日本脳炎などのウイルスで、神経に感染しやすい性質があります。しかし、それらが感染しても髄膜炎にかかるのは、ごく一部です。脳炎を合併するのは、ウイルスが大部分の原因です。

髄膜炎を起こす細菌は、インフルエンザ菌や肺炎双球菌、髄膜炎菌、結核菌、大腸菌、真菌(かびの一種)などで、鼻やのど、肺にくっつき、そこから血管内へ進入して髄膜に到達し、髄膜炎を起こします。

専門医の診断で髄膜炎が疑われた時は、入院して脊髄液の検査を行います。脊髄液を腰椎(ようつい)から採取して、白血球や糖を調べ、髄膜炎ならば、その病原は何かの判断をした上で、ウイルスや細菌を見付けます。髄膜炎や脳炎の程度を見るために、CT(コンピューター断層撮影法)やMRI(核磁気共鳴画像法)の検査も行います。

原因がウイルスの場合は抗ウイルス薬を使うことが多く、原因が細菌の場合は抗生物質を用います。髄膜炎を引き起こしたもとになる病気があれば、その治療も並行して行います。

髄膜炎は、早期に発見して早期に治療すれば予後の改善が期待できますが、時期を失したり、脳炎を合併したりすると、治ったとしても記憶障害などが残ってしまいます。大人では激しい頭痛が続き、熱がなかなか下がらない場合、乳幼児ではかん高い泣き声を上げたり、大泉門(だいせんもん)という前頭部にある頭がい骨の透き間が膨らんで硬く張った場合は、すぐに専門医を受診することが大切です。

🛏睡眠時遺尿症

5〜6歳を過ぎても夜間のお漏らしがある状態

睡眠時遺尿症とは、肉体的にも知能的にも正常なのに、5〜6歳を過ぎても継続的に夜間のお漏らしがある状態。排泄(はいせつ)障害の1つで、夜尿症とも呼ばれます。

睡眠中に無意識に排尿してしまうのは、膀胱(ぼうこう)に尿がいっぱいになったのが自覚できなかったり、膀胱に尿が十分にたまっていないのに我慢できないために起こります。

乳児のお漏らしは当たり前のことで、成長するに連れて夜尿の回数は減っていき、ほとんど5〜6歳までにはなくなります。しかし、その年齢にはかなり個人差があり、5歳を過ぎて夜尿があっても、必ずしも病的というわけではありません。経過をみて、次第に回数が減ってくるようであれば、睡眠時遺尿症として大騒ぎすることはありません。

一説では、5〜6歳児では約20パーセント、小学校低学年では約10パーセント、小学校高学年では約5パーセントに睡眠時遺尿症がみられるとされています。男女別では、児童・学童では男子のほうが多く、約1パーセントにみられる成人では女性のほうに多いとされ、遺伝する傾向も指摘されています。

児童・学童では60パーセントは夜間だけですが、残りは昼間も漏れることがあります。昼間に漏れる時は、排尿を我慢している時や、何かに夢中になっている時に起こります。

原因としては、いくつかのことが考えられています。一つには、排尿のメカニズムに関係する自律神経の緊張状態が考えられます。自律神経の一つである副交感神経が過敏で、排尿を促す信号をすぐに出してしまう状態です。二つ目は、普通は尿は夜間に作られる量が減るはずですが、ホルモンの調節が未熟で脳下垂体から出る抗利尿ホルモンが少ないため、夜中にもたくさんの尿ができるのも一つの原因と考えられています。

さらに、先天的に膀胱の容量が小さいことも、睡眠時遺尿症の原因になります。これらの原因が発症者個人について、必ずしも明確にわかるわけではありません。

以上の原因のほかに、夜尿が尿路感染症や尿崩症の症状としてみられる場合があります。睡眠時遺尿症の治療を希望する場合は、小児科の専門医を受診します。

睡眠時遺尿症の検査と診断と治療

医師はまず、尿路感染症や尿崩症などの基礎疾患がないことを確かめた上で、睡眠時遺尿症(夜尿症)の治療に取り掛かります。

医師による治療では、原因を想定して、順次それに応じた対策を試みていくことになります。副交感神経が過敏なためと考えられる場合は、緊張状態を解くために三環系抗うつ剤や抗コリン剤、精神安定剤を試します。三環系抗うつ剤の有効率は40〜50パーセント程度で、飲んでいる時は尿意で起きたり、朝まで尿を我慢できるようになりますが、中止すると元に戻ることが多い薬です。

抗利尿ホルモンの分泌が少ないためと考えられる場合は、夜の就寝前に抗利尿ホルモンを投与します。これには点鼻薬があり、寝る前に鼻にスプレーするだけなので簡単に治療を行うことができます。有効率は40〜50パーセント程度で、尿量を減らす薬なので使用している時は夜尿は減りますが、短期間で中止すると元に戻ることも多い薬です。また、使用時に水分を取りすぎると水中毒という合併症を起こすため、使用2〜3時間前から次の朝まで水分を制限し、コップ一杯程度にする必要があります。

膀胱の容量が小さいためと考えられる場合は、昼間たくさん水を飲ませて、できるだけ排尿を我慢させる方法がとられます。また、排尿時に一時的に排尿をストップさせることにより、排尿をコントロールする訓練も行われます。

眠った後に無理やり起こして排尿させる方法は、目が覚めない状態で排尿するというパターンが身に着いてしまうといわれ、今は行われていません。尿が少し漏れるとアラームが鳴る夜尿アラームという装置が開発されており、これを用いた療法が有効であることがわかっています。夜尿アラーム療法は睡眠中の膀胱容量を増やし、尿意により起きやすくする効果がある方法で、少なくとも3カ月間行い、有効率は約60パーセントです。ただし、アラームでは患児本人は起きないことがほとんどのため、家族が起こす必要があり、毎日行うとかなりの負担になります。

夜尿症が精神的、心理的原因で起きるという考え方は、今ではあまりいわれなくなりました。従って、育児に問題があるとか、何か心理的要因があるというふうに考える必要はありません。睡眠時遺尿症は膀胱や排尿にかかわるメカニズムが未熟なために生じていることで、体の発育とともにいずれは治るのだという考え方が大切です。お漏らしをしたからといって子供をしからず、本人に引け目を感じさせないようにします。親や子供が神経質になって、治るものも治りにくくすることがあるので、注意が必要です。

🛏睡眠時無呼吸症候群

睡眠中に無呼吸が頻回に起こって睡眠が障害され、さまざまな症状が現れる疾患

睡眠時無呼吸症候群とは、睡眠中に無呼吸状態がしばしば起こる疾患。睡眠不足や、眠りが浅いと感じる人の中にみられることがあります。

睡眠中にしばらく呼吸が起こらなくなる、つまり短い無呼吸が起こることは、決してまれではなく、軽度のものは健康な人にもみられます。しかし、この睡眠時無呼吸症候群では、一晩7時間の睡眠中に10秒以上呼吸が停止し、30回以上も繰り返します。呼吸停止と呼吸再開は、眼球が速く動くレム睡眠、眼球は動かず大脳が休むノンレム睡眠の両方に現れます。

原因により、睡眠中の呼吸運動が停止するために無呼吸となる中枢型、呼吸運動は持続しているものの上気道がふさがるために無呼吸となる閉塞(へいそく)型、両者の混合型の3型に分類されます。

中枢型は呼吸中枢の障害によって起こりますが、極めてまれな病態です。一般に問題になる場合のほとんどは、咽頭(いんとう)や喉頭(こうとう)などに原因があって、特徴的ないびきとともに、一時的に上気道がふさがる閉塞型です。いびきは、呼吸停止時と呼吸再開時に反復して起こります。

無呼吸により動脈血の酸素飽和度が低下するとともに、眠りが浅くなったり、途中で目覚めたりするため、夜間に十分に眠れず、昼間に強い眠気や集中力の低下、注意力の低下、活力の喪失、抑うつ症状などを招きます。また、運転中や仕事中の居眠りから事故を起こすケースもあり、社会的問題にもなっています。

30~60歳の男性では4パーセント、女性では2パーセントくらいの頻度でみられるとされますが、成人の発症者には首が太くて短い、肥満している人が多いことから、肥満との関係が指摘されています。小児では、アデノイド(咽頭扁桃〔へんとう)〕との関係も指摘されています。

睡眠時無呼吸症候群は睡眠不足だけでなく、高血圧や肺性心、糖尿病になりやすく、不整脈、心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などを起こす危険が高まるため、専門医に診てもらうことが大切になります。

医師による診断では、日中の強い眠気、夜間の不眠、大きないびきと呼吸停止などの症状を確認した上で、睡眠中のさまざまな生理学的指標を測定するポリソムノグラフィーによって検査が行われます。

ポリソムノグラフィーでは、睡眠中の脳波、眼電図、筋電図、口と鼻の気流、胸腹部の呼吸運動、心電図、酸素飽和度などを終夜に渡ってモニターします。無呼吸が一晩に30回以上か、1時間当たりの無呼吸の回数が5回以上の場合に、睡眠時無呼吸症候群の診断が確定します。

医師による治療では、肥満している人に対してはまず体重を減らし、脂肪によってのどがふさがれないようにします。アデノイド、口蓋(こうがい)扁桃肥大、形態異常などが上気道の閉塞の原因である場合は、その手術を行います。

また、睡眠中に鼻を覆う特殊なマスクから空気を送り、上気道を広げて閉塞を起こさないようにするシーパップ(CPAP)療法が行われます。下あごを前方に移動させる歯科装具を用いて、上気道に透き間を作って換気を助ける治療法が行われることもあります。薬物療法により、呼吸を促進させることもあります。

飲酒後や睡眠剤、鎮静剤の服用後に起こることが多いので、これらをなるべく控えることも、発症者には必要です。

🛏睡眠時遊行症

就寝中に起きて歩き回るなど、まるで目的があるような行動を起こす症状

睡眠時遊行(ゆうこう)症とは、就寝中に起きて歩き回ったりするなど、まるで目的があるような行動を起こす症状。睡眠時随伴症のうちの覚醒(かくせい)障害の一種で、夢遊症、夢遊病、夢中遊行症とも呼ばれます。

症例としては、毛布やシーツをきちんと直す、電気をつける、歩き回る、服を着る、ドアを開ける、トイレに行って排尿する、何かを食べる、外出するなどの行動をします。

うつろな表情で視線を動かさず、いくら呼び掛けても反応しません。数分で目を覚ますことがありますが、大抵の場合は30秒~30分程度の行動の後に再び眠り続け、翌朝、目が覚めた時には、本人には行動した記憶がまったくありません。

通常、深い眠りのノンレム睡眠の時に睡眠時遊行症は起こり、就眠後1時間前後に認められます。見ている夢と関係していると思われがちですが、夢とは関係なく起こります。

原因は現在、はっきりと解明されていませんが、過度のストレスや疲労、大量のアルコール摂取により脳が興奮状態になると、ノンレム睡眠中に運動抑制機能の働きが低下し、症状が起こると見なされています。脳内のセロトニンの不足が原因という説もあります。

この睡眠時遊行症は、幼児期~青年期前までに起きやすく、だいたい約3割が4歳から8歳くらいまでに発症します。大半の子供は遅くても思春期までに、ほどんど自然に消失します。約1パーセント程度は大人になっても、睡眠時遊行症の症状を持ち続けるといわれます。

対処法は、歩き回って本人が転倒したり、壁などにぶつかってけがなどしないように、周りを片付けて危険を回避することです。よほどの危険な状態にならない限り無理に起こすことはよくありませんので、静かに布団まで連れていくか、別の場所で横にさせることが望まれます。問題は自宅以外で寝泊りする場合で、幼稚園や小学校の外泊時には、事故を起こさないよう注意する必要があります。

大人になっても睡眠時遊行症の症状を持ち続けている場合は、無理に起こしたり制止しようとすると、危害を加えられる恐れがあり、過去には殺害事件も起きています。危険がない限りそっとしておくか、危急の場合は警察や救急車を呼んで対処することが望まれます。

子供では、てんかんなどの他の疾患による場合もあることに注意が必要で、症状がひどい場合には小児科、神経内科、精神科の医師に相談することが勧められます。

医師による治療では、ベンゾジアゼピン系の抗不安薬による薬物療法が行われます。抗不安薬は睡眠時の緊張を緩和させることから、睡眠薬として利用されたり、抗てんかん薬として利用されたりする場合もあります。

2022/08/09

🇳🇦睡眠相後退症候群

夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計が固定されている睡眠障害

睡眠相後退症候群とは、夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計がセットされている睡眠障害。概日リズム睡眠障害とも呼ばれています。

毎日の生活習慣の中で、この時間までに眠りたいと望む時間には眠ることができず、そのため、朝は起きなければいけない時間に目覚めることができません。しかし、休日や起きる時間がふだんより遅くてもよい日には、必要な睡眠時間が経過した後に自然と、すっきりと目覚めることができます。

つまり、体内時計(サーカディアンリズム)が他の人より後ろへずれた状態で固定されて、狂ったまま24時間のリズムを刻んでいるのです。

体内時計を正常な状態に戻すことが難しくなってしまう病理的な原因は、はっきりしていません。体の中にいくつも存在している体内時計を同調させる機能が正常に働いていないことが、誘因の一つと推測されています。

パソコンやテレビなど体内時計のリズムを狂わせてしまう強い光を夜遅い時間まで浴びていたり、知らないうちに毎日かなりの量のカフェインを摂取していたり、太陽の光を浴びることのないい生活が長いなど、体内時計の調節機能を阻害する要素が多い生活習慣を送っていることが、誘因になっているとも推測されています。

正常な人の場合、夏休みなどの長期休暇の間に少しずつ体内時計が遅れてしまっても、数日間、早寝早起きをすることで、苦痛なく体内時計を修正することができます。しかし、睡眠相後退症候群と見なされる人は、体内時計が送れた状態が2週間~1カ月以上も続き、修正しようとしても修正できません。

また、起きなければいけない時間に無理に早起きしても、体内時計は後ろへずれたままなので、頭がボーっとしたり、集中力が続きません。次第に朝起きることができなくなり、学校や会社に遅刻したり、欠席、欠勤するといった状態に陥ってしまうこともあります。

体内時計のリズムが後ろへずれて固定された状態になっていると、朝起きるのは苦痛だし、日中眠気を感じるしと睡眠不足状態になりがちですが、睡眠相後退症候群は夜間眠れない不眠症ではありませんので、睡眠導入剤や睡眠薬など眠気を誘う薬では改善することができません。

さらに、日中の眠気を追い払うために、コーヒーや栄養ドリンクなどカフェインを多く含んでいるものを飲んでいると、眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌が乱れてしまう結果、体内時計が正常に戻りにくくなります。

自分でできる対策としては、生活習慣の改善による時間療法が有効です。夜は早く眠るための工夫をし、朝起きた時には太陽の光をしっかりと浴びる習慣をつけます。例えば、眠くなるための工夫として、食事は目標とする就寝時間の3時間前までにすませる、入浴は目標時間の1時間~30分前までにすませる、就寝30分前から部屋の明かりを落としてリラックスするなどがあります。目標とする起床時間には、カーテンを開けて太陽の光を部屋に取り込むように工夫します。

専門の病院などで行われ高照度光療法も、睡眠相後退症候群の治療として有効です。毎日決まった朝の時間帯に太陽の光と同じ効果のある光を照射することで、メラトニンタイマーをリセットさせ、体内時計を早送りして調整する方法です。その際には、眠りのパターンやリズムを日誌などに書き留めておくことで眠りの状態を把握し、きちんと決められた期間続けることが必要です。

眠気を催すメラトニンの分泌量や働きが低下している場合には、メラトニンやギャバ(GABA)、ビタミン剤などといった薬を併用することもあります。

これらの治療でいったん睡眠時間帯が正常化しても、不規則な生活をすると再び入眠時間が遅れてしまうことが多いので、睡眠時間帯が安定するまで休日に夜更かししないように生活習慣を見直すことも大切となります。

🇿🇦水無脳症

脳の先天的な発育不全により、大脳半球が高度に欠如する奇形症

水無脳症(すいむのうしょう)とは、脳の先天的な発育不全により、頭蓋骨(とうがいこつ)半球は形成されるものの、大脳半球が高度に欠如する奇形症。水頭症性無脳症とも呼ばれます。

人間の脳は、脊髄(せきずい)の先端が膨らんで発達してきたものです。脊髄の上には、延髄、中脳、間脳があり、その上には両側に大脳半球が存在しています。延髄の後方には小脳があり、後頭部に位置しています。

水無脳症は、胎児期に内頸(ないけい)動脈に形成不全が起こって、閉塞(へいそく)するために起こります。血液が供給されないために、一度は形成されたはずの大脳が突然退化したり、発育が止まったりして欠如し、本来あるべき部位は脳脊髄液を満たして極めて大きくなった脳室が占め、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の遺残物が薄い膜様物となって、脳室を覆います。大脳の欠如は、本来なら前大脳動脈、中大脳動脈から血液の供給を受ける部位に発生する傾向があります。

通常、小脳および延髄などの脳幹は正常に発育し、頭蓋円蓋部を覆う髄膜、骨、皮膚も正常に発育します。

原因については、詳しく解明されていません。遺伝的な要因が関係すると考えられているほか、妊娠初期における母体の栄養摂取の不足との因果関係も指摘され、飲酒や喫煙、薬剤、放射能被曝(ひばく)、ダイオキシなどが関与しているとも考えられています。

この水無脳症の胎児は、多くが死産します。出産した場合は、平均寿命3歳とされているものの、10歳を超えて生存するケースもあります。

生まれ付き水無脳症を持って生まれた乳児の症状としては、一般的な頭囲の成長の範囲を超えて頭が異常に大きくなることです。

いくつかの骨が結合してできている頭蓋骨は、生まれてしばらくの間、骨同士の結合が弱く、軟らかく組み合わさっています。水無脳症の乳児は、脳脊髄液が頭蓋内に余分にたまって極めて大きくなった脳室の圧力によって、頭蓋骨を押し広げる状態が続く結果、頭が異常に大きくなることが起こります。

嚥下(えんげ)、唾液、呼吸、循環、消化の中枢を担っている延髄は正常に発育しているため、心臓を動かす、呼吸をするなどの生命維持に関しては支障はなく、嚥下や啼泣(ていきゅう)がみられ、音刺激、痛覚に反応を示します。

しかし、大脳が高度に欠如しているため、空腹や痛みを訴えることがあっても、人間としての感情を欠きます。乳児の正常な発達は、不可能です。

水無脳症の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断では、妊婦の出生前の超音波(エコー)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査で、水無脳症の診断がつくことがあります。

胎児が水無脳症と確定した場合、多くはその時点で妊娠を継続するかどうかを選択することになります。その致死性の高さから、人工中絶を選択する妊婦が多く、出産まで進むケースはごくまれな状況となっています。

出生後は、神経学的検査を行うと、異常がみられます。頭部の外観からは正常に見えますが、懐中電灯を頭に当てる透光試験を行うと、頭蓋内全体を光が透過します。診断の確定には、超音波検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI検査を行います。

産科、産婦人科の医師による治療に関しては、残念ながら水無脳症の胎児を母体の中で治療する方法はなく、自然治癒したケースもありません。

脳外科、脳神経外科の医師による治療では、頭部の拡大が過度の場合に、シャントと呼ばれる手術を行います。本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シリコンでできたシャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、脳内と腹部をつなぎ、脳脊髄液を流す仕組みを作ります。

🇿🇦スウィート病

発熱とともに、痛みを伴う隆起性の紅斑が急に発生する疾患

スウィート病とは、急な発熱、痛みを伴う隆起性の紅斑(こうはん)、血液中での好中球の増加を特徴とする炎症性の疾患。難治性の皮膚疾患で、急性熱性好中球性皮膚症とも呼ばれます。

 1964年、イギリスの皮膚科医であるスウィート氏が初めて報告しました。原因は、細菌などに対して、白血球の一種である好中球の機能が高まって生じる過敏反応と考えられます。

約20パーセントのケースで、血液疾患や悪性腫瘍(しゅよう)を伴います。特に白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患を伴うことが多く、関節リウマチや膠原(こうげん)病を始めとする自己免疫性疾患を伴うこともあります。内臓病変と関係する皮膚変化を意味するデルマドロームの一つと考えられています。

上気道感染、いわゆる風邪に似た症状が先行して現れ、数日から数週間で39度前後の発熱とともに顔、首、四肢に、境界がはっきりした、周囲から隆起した紅斑、または毛穴の炎症である毛嚢(もうのう)炎に似た丘疹(きゅうしん)が多発します。

紅斑の大きさは1センチから3センチで、しばしば痛みや圧痛がみられます。紅斑の上に、水膨れや、膿(うみ)を持った水膨れである膿疱(のうほう)を伴うこともあります。

色調は鮮紅色ですが、経過とともに暗紅色ないし紫紅色に変わります。治療をしないと、高熱が続き、紅斑が小さくなったり大きくなったりを繰り返します.

スウィート病の症状に気付いた場合、できれば入院可能な病院の皮膚科を受診することが勧められます。スウィート病が治った後に、白血病や骨髄異形成症候群などの血液疾患が発症することがあり、注意が必要です。

スウィート病の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、病変部の皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検を行い、真皮に好中球やその核の破片が密に浸潤していること、血管炎がないことを確かめます。

血液検査を行うと、好中球を主体とする白血球数の増加、赤沈(血沈)やCRPなどの炎症反応の高進が認められます。CRPは蛋白( たんぱく)質の一種で、体内に炎症が起きたり組織の一部が壊れたりした場合に、血液中に現れます。

時に、原因不明の膠原病類縁疾患であるベーチェット病などとの区別が難しいことがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、軽症の場合、非ステロイド系消炎鎮痛剤などの内服を行います。一般的には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の点滴注射、または内服を行います。ヨウ素を補給するヨードカリや、皮膚の組織を守るDDS(レクチゾール)も、多くの症例で有効です。

🇸🇿スーパー女性症候群

女性だけにみられる性染色体異常で、言葉の障害や運動機能の遅れがみられる疾患

スーパー女性症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患群。XXX症候群、トリプルX症候群、スーパー女性、超女性とも呼ばれます。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで、全部で46対の染色体を持つことになります。

性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

スーパー女性症候群の女性の場合は、性染色体がXXXと1本多く、女性約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってXが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でXが1つ多くなることで起こるとされます。母親の高齢出産で、スーパー女性症候群の新生児女児が生まれる頻度が高いともいわれています。

このスーパー女性症候群は、パトリシア・ジェイコブズらがイギリスのスコットランドで、染色体構成47XXXを持つ2人の女性を見付け、1961年に最初に報告しました。

染色体構成47XXXを持つ新生児女児のほとんどは、スーパー女性症候群の症状をいくつかしか持っていないか、全く持っていません。

新生児女児のほとんどは、身体的には誕生時から正常に発育します。ただし、誕生時の平均体重値は、正常な染色体を持つ女児よりわずかに低くなっています。8歳までは、正常な染色体を持つ女児よりやや身長の伸びが速く、最終的に2、3cm高くなり、高身長で手足の長い細身の体形になる人が多いとされます。

ほとんどは、性関連と性ホルモン条件に関して、正常な染色体を持つ女児と違いはありません。外陰部や卵巣、子宮、膣(ちつ)に異常はなく、一般的な胸部、体毛の成長、そして第二次性徴も普通に現れます。妊娠、出産も可能で、その子供の大部分は正常な染色体を持って生まれます。

染色体構成47XXXを持つ女児のほとんどは、通常の知能、もしくは低くても通常の範囲の知能を持っています。しかし、その多くは、言葉の障害や学習障害を持ち、運動機能や感情の発達の遅れがみられます。数は少ないものの、軽い知的障害を持っていることもあります。

なお、スーパー女性症候群の症状の現れ方は人によって大きく異なり、筋緊張低下によって上まぶたにしわが寄ったり、小指が短く内側に曲がった斜指症がみられることがあります。中には、発作や、腎臓(じんぞう)を含む泌尿生殖器の奇形など、より深刻な状態がみられることもあります。

普通、スーパー女性症候群のほとんどは、治療の必要はありません。

🇸🇿スーパー男性症候群

男性だけにみられる性染色体異常で、背が高く、言語発達の遅れがみられたりする疾患

スーパー男性症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の疾患で、男性にだけ起こる先天的な疾患群。XYY症候群、スーパー男性、超男性、Y過剰男性とも呼ばれます。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には、22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで、全部で46対の染色体を持つことになります。

性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

スーパー男性症候群の男性の場合は、性染色体がXYYと1本多く、47XYYということになります。性染色体が3本ある異常で、性染色体トリソミーにも該当します。トリソミーとは、3本という意味です。

47XYYの完全型のほか、性染色体異常の細胞と通常の細胞が混在する47XYY/46XYのモザイク型もありますが、大半が完全型です。

スーパー男性症候群の男性は、約1000人に1人の割合で生まれるといわれます。

正確な原因は不明ですが、減数分裂の際に2対の染色体が分裂し損なってYが1つ多い卵子もしくは精子を作り出す、もしくは減数分裂後の受精段階で、胎児の前身の胎芽の細胞分裂でYが1つ多くなることで起こるとされます。

スーパー男性症候群の男性は身長が高くなるのが特徴といわれ、出生時の身長は平均的なので、思春期に急速に伸びると考えられます。これは、Y染色体にあって身長を高くするSHOX (身長伸長蛋白〔たんぱく〕質)遺伝子が二重に働き、身長伸長蛋白質が多く作られるためと考えられます。

知能指数がほかの家族よりやや低い傾向があり、軽い言語発達の遅れがみられたりします。軽度の行動障害、多動性、注意欠陥障害、および学習障害を来すこともあります。

男性ホルモンの一種であるテストステロンのレベルは、先天的にも後天的にも一般の男性と同じ値で、精子の造成機能にやや難があり精子の数が少ないものの、子供を作ることは可能です。

スーパー男性症候群の男性のほとんどは、原則として知能と生殖能力は正常で、一般の人と変わりはありません。障害が全くないこともあり、本人も家族も気が付かないまま通常に学校を卒業し、通常に就職し、通常に結婚して、一生を通じて全く気が付かないこともあります。性染色体は1本多いトリソミーになっても不活性化し、症状が軽くなるためです。

一説によると、スーパー男性症候群の男性は男性としての特徴が極端に出て、背が高くて、攻撃的、または活動的な性格になりやすく、この性格が良い方向に向かえば成功者になる確率が高くなる一方、悪い方に向かえば犯罪に結び付くこともあるとされています。この説に対しては、現在では否定的な意見が多いようです。

1960年代のアメリカでは、1966年にシカゴの看護婦寮に押し入り8人の女性を殺害した事件など、いくつかの殺人事件の犯人が47XYYの染色体構成を持つ男性だったという報告があり、注目を集めました。

このため、要注意の染色体異常であるというイメージが広まり、47XYY型の男性に対する偏見、差別が生まれました。しかし、現在では、検査ミスであったと判明し、スーパー男性症候群の男性と犯罪との関連性は否定されています。

スーパー男性症候群の男性のほとんどは、普通に日常生活を送っていますので、治療の必要はありません。

🇪🇪スーパー便秘

直腸がポケット状に膨らんだり、肛門周辺の筋肉の機能が悪化することが原因で起こる便秘

スーパー便秘とは、直腸がポケット状に膨らんだり、肛門(こうもん)周辺の筋肉の機能が悪化することが原因で起こる便秘。

便は肛門近くまできていて便意があるにもかかわず、腹部に力を入れて息んでもなかなか排便できないタイプの便秘で、普通の便秘の原因となる大腸の運動能力には問題はなく、便の最終的な通り道である直腸に問題があるために起こります。そのため便秘を治すために食物繊維や水分を多量に補給したり、便秘薬を飲んでも解消されず、逆に便がたまって悪化させることになります。

このスーパー便秘は、直腸瘤(りゅう)とアニスムスが原因で起こります。

まず、直腸瘤は、直腸と膣(ちつ)の間にある直腸膣隔壁が弱って、排便しようと息んだ際に直腸の前側が膣の中に向かってポケット状に膨らむ状態。直腸膣壁弛緩(しかん)症、直腸ポケットとも呼ばれます。

隣り合わせにある直腸と腟の間にある直腸膣隔壁が弱くなったために起こる現象で、直腸そのものの疾患ではありません。

直腸瘤は、婦人科医の間では以前から知られていましたが、息んでも出にくいタイプの便秘の原因として、最近では大腸肛門病の専門医にも注目されています。

ごくまれに男性にも直腸瘤がみられますが、ある程度の大きさの直腸瘤は、女性に限られます。また、比較的中高年の女性に多くみられますが、小さな直腸瘤は無症状の若い女性にもまれにみられます。

直腸と腟の間にある結合組織や筋膜からなる直腸膣隔壁が弱くなる原因としては、加齢、出産、習慣的な息みなどが考えられています。女性ホルモンの低下が、結合組織のもとであるコラーゲンの脆弱(ぜいじゃく)化に影響するという説もあります。

息んでも便が出にくいといった排便困難が主な症状で、そのほかに残便感、腟の違和感、会陰(えいん)部の重苦しさといった症状が現れます。

排便困難は、便が直腸瘤に入り込むために起こり、入り込んだ便はどんどん水分を奪われて硬くなり、ますます排出しにくい状態になります。指で会陰を押さえたり、腟の中に指を入れて押さえると、排便しやすくなります。

直腸瘤がある人の多くは、肛門括約筋の強さは正常ですが、中には肛門括約筋が弱いため便失禁を伴う場合もあります。

排便時の出血や、肛門の外に直腸の粘膜や筋層が飛び出すのは直腸瘤の症状ではなく、痔核(じかく、いぼ痔)などの肛門疾患を伴う場合にみられます。

次に、アニスムスは、肛門周辺の筋肉の機能が悪化し、排便時にうまくコントロールできないために便秘が起こる状態。骨盤底筋協調運動障害、協調障害性排便障害とも呼ばれます。

正常な排便ならば、便意の起きたタイミングで洋風便座に座れば、特に息む必要もなくスムーズに便が出ます。少し便が出にくい際は腹部に力を入れて息めば、肛門周辺の筋肉である骨盤底筋や肛門括約筋はリラックスしている状態なので協調して緩み、肛門が開いて便が出てきます。

この排便に際して息めば息むほど、骨盤の底にあって下腹部の臓器を支えている骨盤底筋や、普段は収縮し排便時に広がる肛門括約筋、肛門括約筋の一つである恥骨直腸筋が緊張して収縮し、肛門が閉じるために排便が困難になるのが、アニスムスです。

骨盤底筋は排便に際して緩むことで、直腸と肛門を真っすぐにつなげる役割を持ち、その作用で便をスムーズに送り出すことが可能になっています。この骨盤底筋の機能が悪化して、排便時に緩まずに緊張した状態が続くと、便の通り道ができなくなり、排便が困難な状態になります。

便意はあるのに、便がなかなか出ず、残便感もあります。便秘薬を飲むと、一転して下痢をします。これは大腸の運動能力には問題がないため、正常な大腸が便秘薬で刺激されて、動きが活発になりすぎるためです。

また、便秘を治すために食物繊維や水分をいくら補給しても、便の通り道がなくては腸内にたまる一方で、便秘を逆に悪化させることになります。

アニスムスは、女性に多いものの男性にも起こります。無意識の内に習慣化していることが多く、自分では気付きにくい症状です。

便がなかなか出ないために、むやみやたらに息むと肛門が閉じてしまうので逆効果。便秘が長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、食欲の低下などの症状がみられます。また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。

スーパー便秘の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは肛門科の医師によるスーパー便秘の1つである直腸瘤の診断では、直腸の指診で腟の後壁の膨らみを調べます。肛門から指を入れて直腸の前側を膣方向に押すと、膣の後壁がポケット状に飛び出してくるので、それだけでほとんど直腸瘤の見当がつきます。

直腸瘤の大きさをより客観的に調べるためには、造影剤を混ぜた模擬便を直腸に入れて、排便時の直腸の形や動きをX線透視下で観察する排便造影検査(デフェコグラフィー)を行います。さらに状況に応じて、大腸内視鏡検査、肛門内圧検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことがあります。

婦人科、産婦人科、あるいは肛門科の医師による治療では、軽度の場合、緩下剤や食物繊維の作用を持つ薬、座薬を用いて便通をコントロールする方法を取ります。

それでも排便困難が解消せず、腟の中に指を入れて息むと便が出やすいという重度の場合、手術を考慮します。手術は腟と直腸の間の組織を縫い合わせて直腸瘤の前に堅い壁を作ることで、強く息んでも直腸が膣側に飛び出さないようにするもので、肛門から行う方法と腟から行う方法があります。

肛門科、あるいは婦人科、産婦人科の医師によるスーパー便秘の1つであるアニスムスの診断では、肛門から指を入れる直腸の指診で、息む動作を行った時に肛門が緩まずに肛門括約筋と恥骨直腸筋が収縮するのを確認できれば、ほぼ診断可能です。

より客観的に調べるためには、造影剤を混ぜた模擬便を直腸に入れて、排便時の直腸の形や動きをX線透視下で調べる排便造影検査(デフェコグラフィー)や、小さな錠剤のようなX線マーカーを服用して大腸における通過時間を調べる検査を行います。排便造影検査では、息んだ際に直腸から肛門に連なる直腸肛門角の角度が緩まず、鋭角になるのがわかります。

また、肛門内圧検査(マノメトリー検査)を行うことがあります。肛門管に圧力を感知するカテーテルを入れて、息んだ際や肛門を締めた際の圧力の変化を測定します。アニスムスの人は、排便しようとする時に骨盤底筋が緊張し、緩めるところを逆に力が入ってしまうため、圧力のかかり方を測定することで確認できます。正常な人ならば、息んでも骨盤底筋は緩んだ状態で、ほとんど力は入りません。

さらに状況に応じて、大腸内視鏡検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うことがあります。

肛門科、あるいは婦人科、産婦人科の医師による診断では、排便時の姿勢や息み方を正して骨盤底筋を矯正する指導をしたり、座薬などを用いて治療します。

まずは、和風便所を使い、しゃがんだ排便姿勢をとることが、直腸肛門角が開くために推奨されます。より一般的な洋風便所で骨盤底筋を矯正する手順は、1)排便時には上体を前傾させて両ひじを太ももの上に置く(前傾姿勢になると直腸肛門角が開いて便がスムーズに直腸へ送られるため)、2)かかとをおよそ20度上げる(腹筋の力を腸にかけやすくなるため)、3)息む時は、腰に手を当ててせきをした時に動く筋肉である腹筋だけに力を入れる(肩や背中に力を入れて全身で踏ん張らないようにするため)。

トイレに行った時に、この手順を繰り返すようにすることで、骨盤底筋の機能を回復させることができます。

正しい排便姿勢や息み方を身に着けるために、バイオフィードバック療法(直腸肛門機能回復訓練)を行うこともあります。これは肛門筋電計という圧力センサーを肛門管から差し入れて、息んだ時の肛門括約筋や恥骨直腸筋の動きを、医師と一緒にモニターで視覚情報として確認し、排便時に緩めるべき肛門周辺の筋肉を無意識に締めないで腹圧をかける感覚をつかみます。

次に、直腸内に入れたバルーン(風船)を50ccほどの空気や水で膨らませて便に見立て、そのバルーンを排出する訓練を行います。水を入れるとバルーンの重みや形状が便に似てくるため、便意を感じる、我慢する、便を出すという排便に関係する筋肉の正常な協調運動を実践的に練習できることになります。

🇦🇺スキーン腺嚢胞

膣の上部に位置する左右一対のスキーン腺の排出管が詰まり、尿道口付近に嚢胞が生じる疾患

スキーン腺嚢胞(せんのうほう)とは、女性の膣(ちつ)の上部に位置する左右一対の分泌腺であるスキーン腺の排出管が詰まり、尿道口付近に嚢胞が生じる疾患。スキーン管嚢胞とも呼ばれます。

スキーン腺は、スケネー腺、小前庭腺、傍尿道腺とも呼ばれ、陰核(クリトリス)と腟口の間に位置する尿道口の左右両側に、小さな穴として開口しています。開口部の大きさは一人一人ばらつきがあり、完全に消失している女性もいるとされています。

スキーン腺からは、性的刺激によって粘液が分泌され、膣から分泌される粘液とも混ざり合い、性交時の潤滑液としての役割を果たしています。

また、スキーン腺のある位置は、女性の膣の内部にある快感スポット、いわゆるGスポット(グレフェンベルグ・スポット)として知られています。スキーン腺は発生学的に男性の前立腺に相当し、女性の射精中、俗にいう潮吹き現象で現れてくる透明、あるいは乳白色の液体は、男性の前立腺で産出される液体と非常によく似た酸性フォスファターゼなどの構成成分を持っています。この液体は、オーガスムの際に時々緊張から解放されて放たれる尿の中に混ざります。

このスキーン腺の開口部から、細菌などが侵入し、それらの細菌に感染すると、急性期には排出管に炎症が起こり、開口部が発赤して、はれが現れます。炎症が治まった後に、開口部の閉鎖が起こると、本来は外に分泌される粘液が排出管内部にたまり、拡大して嚢胞を形成します。嚢胞は液体を満たした袋を意味し、これがスキーン腺嚢胞です。

スキーン腺嚢胞はまれで、主に成人に発症します。ほとんどの嚢胞は、大きさが直径約1センチメートル未満で、症状はありません。大きくなると、性交時に痛みを感じたり、排尿のトラブルが生じることがあります。

こうした場合の初期症状には、尿道を通る尿の流れをスキーン腺嚢胞が遮るために、なかなか尿が出ない、排尿が終わる時に尿がポタポタと滴る、尿が出なくなるなどがあります。尿路感染症が生じ、切迫した尿意が頻繁にみられたり、排尿時に痛みを感じることもあります。

さらに、スキーン腺嚢胞内に細菌感染が起きると、うみが排出管内部にたまって、膿瘍(のうよう)を形成することがあります。膿瘍はうみの塊を意味し、これをスキーン腺膿瘍といいます。

膿瘍ができるとスキーン腺がある部分の皮膚は赤くなり、はれが生じ、何もしていなくても痛む自発痛と、押すと痛む圧痛が生じます。発熱はほとんどみられません。膿瘍が大きくなりすぎて自然に破裂して、うみが出ることもあります。

スキーン腺嚢胞、スキーン腺膿瘍の症状に気付いたら、婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科を受診することが勧められます。

スキーン腺嚢胞の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科の医師による診断では、嚢胞や膿瘍が大きくなって症状が現れるようになると、通常、内診の際に触れることができます。

ただし、診断を確定するために、超音波(エコー)検査や、柔軟性のある内視鏡で膀胱(ぼうこう)を観察する膀胱鏡検査を行うこともあります。鑑別すべき疾患には、女性の尿道の前部3分の1に発生する遠位尿道の憩室があります。

時には、スキーン腺の排出管内部にたまっている粘液やうみを培養して、原因となっている菌を特定する細胞検査を行うこともあります。

婦人科、産婦人科、あるいは泌尿器科の医師による治療では、症状のあるスキーン腺嚢胞ができている場合、切除します。切除は、外来の処置室や手術室で行います。処置室で切除を行う場合は、通常、局所麻酔を用います。

膿瘍ができている場合は、抗生物質(抗生剤、抗菌剤)のセファレキシンなどの経口剤を7~10日間投与し、その後切除を行います。あるいは、膿瘍を小さく切開して、切開創の縁を外陰部の表面に縫い合わせる造袋を行い、膿瘍内の液を出すこともあります。

2022/08/04

🇬🇩スキルス胃がん

胃の壁全体が硬くなる胃がんで、胃がんの中で発見が非常に難しいタイプ

スキルス胃がんとは、胃の壁全体が硬くなる胃がん。スキルスとは、硬いという意味です。

スキルス胃がんは、胃の粘膜面から隆起することなく、がん細胞が粘膜の下をはうように広がっていきます。そのため、粘膜が荒れるために出てくる胃炎や胃潰瘍(かいよう)のような症状にも乏しく、初期では自覚症状がほとんどないのが特徴です。発見された時には、がん細胞が胃の粘膜の下で胃全体に広がっていることがしばしばあり、治療成績がよくない原因になっています。

通常、がんは、粘膜面に発生します。胃がんなら、胃の粘膜に最初の兆候が現れ、発生したがん細胞は、浸潤といって周囲の細胞に染み込むように広がるとともに、増殖して塊を作ります。この過程で、胃の粘膜から出血したり、胃潰瘍などの症状が出ることがあります。

通常は、がん細胞の塊は粘膜面から隆起する形で出てきますので、内視鏡検査(胃カメラ)や胃X線造影(胃バリウム)検査での早期発見が可能ですし、内視鏡下胃粘膜切除術など胃カメラによる治療も可能で、治療成績の向上につながっています。

現在、スキルス胃がんは、胃がん全体の10パーセント程度を占めます。特徴としては、男女比2対3と女性に多いこと、ほかの胃がんに比べて発症年齢が3~4歳低く、特に女性にその傾向が強いことが挙げられます。

卵巣から分泌される女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の関与や、スキルス胃がんに特有な遺伝子変化も徐々に解明されてはいますが、詳しい発がんの過程はわかっていません。ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の関与は、胃がん全体の90パーセント程度を占める分化型腺(せん)がんよりは低いものの、関連はあると考えられています。

スキルス胃がんの初期症状は、何となく食欲がない、胃がもたれるといった一般的な症状が多く、特有の症状はありません。病状が進行してくると、胃全体が硬くなり、食物をたくさん受け入れられなくなるため、食欲不振や体重減少が起こってきます。

また、胃の内側から外側に向かってがん細胞が広がった結果、胃を覆っている膜を越えると、腹膜播種(はしゅ)といって腹部全体にがん細胞が散らばるケースがあります。この腹膜播種の場合には、下痢止めや便秘薬ではあまり改善されない下痢や便秘の症状がみられるようになります。

食欲不振、体重減少、便通異常といった自覚症状や、喫煙、過度の飲酒といった生活習慣、がん家系など少しでも気になることがある場合には、まずは、内科を受診することが勧められます。

スキルス胃がんの検査と診断と治療

内科、外科、消化器科の医師による診断では、ほかの胃がんと同様に、内視鏡検査(胃カメラ)と胃X線造影(胃バリウム)検査を行います。

進行したスキルス胃がんの場合は、診断は容易です。胃の一部に病変が限られている比較的初期のスキルス胃がんの場合は、がん細胞が胃の粘膜の下で増殖するために粘膜面の変化が乏しく、胃に細いファイバースコープを挿入し、患部を直接観察する内視鏡検査(胃カメラ)では、なかなか発見されにくいケースもあります。

比較的多いのは、バリウム(造影剤)と発泡剤を飲んで、胃全体の形や動きを観察する胃X線造影(胃バリウム)検査で、胃の壁が硬くなっているために、胃の動きが通常と違うことが確認され、早期発見につながるというケースです。

また、腹膜播種によって腹水が発生していて、CT(コンピュータ断層撮影)検査や腹部超音波(エコー)検査で発見されるケースや、肝臓や肺への転移巣が先に見付かって、いろいろ調べていく過程で発見されるケースもあります。

内科、外科、消化器科の医師による治療では、ほかの胃がんと同様に、手術、抗がん剤治療、放射線療法の3大療法を組み合わせ、がんの進行度に合わせて施していきます。

ほかの臓器に転移がないと判断された場合は、まず手術を行いますが、胃での広がりが進んでいる場合は、先に点滴や内服薬での抗がん剤治療を行ってから手術を予定するケースもあります。

腹膜播種の場合は、手術が難しく、手術でがん細胞を切除できたとしても、5年生存率は10パーセント程度で、予後は不良です。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...