角膜の内側にある角膜内皮細胞の機能不全により、角膜が浮腫状に混濁し、視力が下がる疾患
水疱(すいほう)性角膜症とは、角膜の内側にある角膜内皮細胞の機能不全により、角膜が浮腫(ふしゅ)状に混濁し、視力が下がる疾患。
角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、表面から内側に向かって上皮細胞層、角膜固有層、デスメ層 、そして内皮細胞層という4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら眼の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。
角膜の一番内側にある内皮細胞層を構成している角膜内皮細胞は、角膜内の水分量を調節する役割を果たしています。具体的には、角膜に入ってくる眼内の水(房水)をポンプ機能により眼内へ戻す役割を担っています。この機能により、角膜の水分量は一定に保たれ、角膜の厚みや透明性が維持されています。
しかし、何らかの原因で角膜内皮細胞の機能不全が起こり、そのポンプ機能が障害されますと、角膜内の水分が排出できなくなるため、角膜はむくんで厚くなり、透明性も低下します。
角膜が浮腫状に混濁することにより、外界の光が通りにくくなりますし、角膜の表面を覆っている角膜上皮にも水がたまって、水疱ができます。そのため、視力が低下しますし、表面の水疱のために痛みもあります。また、角膜上皮がはがれやすくなり、はがれてしまうと非常に強い痛みを生じます。原因によって、両眼性であったり片眼性であったりします。
角膜の内皮細胞は、生まれてから死ぬまで増えることはないので、フックス角膜内皮ジストロフィなどの角膜内皮疾患で遺伝的に内皮細胞が弱かったり、眼内の手術や炎症、外傷、角膜感染など外的な原因で内皮細胞が障害されたりすることにより、水泡性角膜症が生じます。
最近では、白内障の手術後や、緑内障に対するレーザー治療後に、水泡性角膜症が生じることも増えています。コンタクトレンズの長期装用によっても、内皮細胞は少しずつ減少するので、注意が必要です。
水疱性角膜症の検査と診断と治療
眼科の医師による診断では、眼球内を観察する細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査を行い、角膜の浮腫状の混濁、角膜の厚さの増加、角膜内皮細胞の密度の低下もしくは測定不能により確定します。
年齢にもよりますが、角膜内皮細胞の密度の正常値は2500〜3000個/mm2程度ですが、密度の値が約500個/mm2以下になると水泡性角膜症と見なされます。
眼科の医師による治療では、非常に初期の場合、濃度の濃い生理食塩水の点眼や眼軟こうで角膜内の水分を吸い取ることによって、視力の改善を図ります。痛みに対しては、治療用ソフトコンタクトレンズを装用します。
根本的な治療としては、角膜内皮細胞は増えて再生しないために、角膜移植が必要になります。従来は、全層角膜移植のみが行われていましたが、最近では、角膜の内皮側だけを入れ替える角膜内皮移植も行われるようになっています。
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