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2022/08/31

🇭🇺マタニティーブルー

■短期間に消失する気分障害■

産後2~3日目になると、訳もなく涙が出てきたり、家族のちょっとした言葉が気に障って悲しくなるのが、マタニティブルーと呼ばれる気分障害です。

出産を境にして、今まで盛んに分泌されていた女性ホルモンが急激に低下し、ホルモンの状態が激変するために、自律神経系に影響をおよぼし、本人の自覚のあるなしにかかわらず感情の変化として現れます。

そのほかにも、出産や慣れていない育児の疲れ、睡眠不足、家で独り育児に取り組まなければならない孤独感や不安などのストレスが重なり、感情が不安定になるのです。

主な症状は、情緒の不安定と涙もろさで、不眠や食欲不振、軽いうつ状態になったりもします。しかし、ピークは産後2~3日目で、産後2週間以内に治まります。短期間に消失する一過性の正常な反応であり、産後のうつ病とは違うものと考えられていますが、マタニティブルーから産後うつ病に移行するケースも。

産後うつ病のほうは、出産直後の数週間~数カ月の時期にみられるもので、強い悲嘆と、それに関連する心理的障害が起きている状態です。原因はいまだ、よくわかっていません。女性ホルモンの一種、エストロゲンとプロゲステロンが急激に減ることが一因、とも考えられています。

2022/08/16

🇫🇯マイコプラズマ肺炎

微生物のマイコプラズマの感染で、子供に多く起こる肺炎

マイコプラズマ肺炎とは、微生物のマイコプラズマの感染によって起こる肺炎。マイコプラズマは細菌より小さくウイルスより大きな微生物で、生物学的には細菌に分類されますが、ほかの細菌と異なるところは細胞壁がない点です。

感染している人との会話や、せきに伴う唾液(だえき)の飛沫(ひまつ)によって感染します。インフルエンザのような広い地域での流行はみられず、学校、幼稚園、保育所、家庭などの比較的閉鎖的な環境で、散発的に流行します。日本では一時期、4年ごとのオリンピックの開催年に一致してほぼ規則的な流行を認め、オリンピック病とかオリンピック肺炎と呼ばれたこともありましたが、1990年代に入るとこの傾向は崩れて毎年、地域的に小流行を繰り返すようになっています。

季節的にはほぼ1年中みられ、特に初秋から早春にかけて多発する傾向がみられます。好発年齢は、幼児から学童、特に5~12歳に多くみられます。4歳以下の乳幼児にも感染はみられますが、多くは不顕性感染または軽症です。潜伏期間は1~3週間。

風邪に似た症状が現れ、中でもせきが激しいのが特徴。たんは少なめです。たんの出ない乾いたせきが激しく、しかも長期に渡って続き、発作性のように夜間や早朝に強くなります。胸や背中の筋肉が痛くなることも、珍しくありません。

38〜39度の高熱、のどの痛み、鼻症状、胸痛、頭痛などもみられますが、肺炎にしては元気で全身状態も悪くなく、普通とは違う肺炎という意味で非定型肺炎とも呼ばれます。

マイコプラズマ肺炎の検査と診断と治療

学校、幼稚園、保育所などで小流行することが多いので、子供のにせきや発熱などの症状がみられたら、早めに呼吸器科や小児科を受診します。比較的軽症なために普通の風邪と見分けがつきにくく、診断が遅れることがありますが、まれに心筋炎や髄膜炎などを併発することもありますので、油断はしないほうがいいでしょう。

胸部X線撮影によって肺炎自体の診断はつきますが、原因を確定するのに時間がかかります。咽頭(いんとう)から採取した液を培養してマイコプラズマを検出するまでに、通常1~2週間を要するためです。

一般に自然治癒傾向の強い疾患ですが、マイコプラズマが検出できない間は、細菌性肺炎とマイコプラズマ肺炎の両方を想定した治療が行われます。細菌性肺炎と同様、抗生物質によってマイコプラズマを排除しますが、有効な薬を選ばなければ効果が得られません。

マイコプラズマは細胞壁を持たないので、細胞壁合成阻害剤であるペニシリン系やセフェム系の抗生物質は効果がありません。蛋白(たんぱく)合成阻害剤を選択しなければなりません。中でもマクロライド系、テトラサイクリン系、ニューキノロン系の抗生物質が効果を上げます。小児では、副作用のことも考慮してマクロライド系の抗生物質が第1選択薬です。ニューキノロン系も有効ですが、小児への適応のないものがほとんどです。

ほとんどの場合、外来の内服治療でマイコプラズマ肺炎は治ります。ただし、小児では重症例や合併症も多く、高熱で脱水症状があるとか、激しいせきで眠れなかったり、食欲が大きく妨げられているような場合は、入院が必要になります。

子供が学校などからマイコプラズマを持ち帰ると、1〜3週間の潜伏期間を経て、家族に感染することがよくあります。予防接種はなく、決定的な予防法はありません。家庭ではマスクやうがい、手洗い、発症者の使うタオルやコップを使わないなど、普通の風邪と同じような予防法を心掛けます。

🇫🇯埋没陰茎

下腹部に陰茎が埋もれて、実際のサイズよりも小さく見える疾患

埋没陰茎とは、男性の陰茎が周囲の皮下脂肪に埋もれたり、恥骨上の過剰な皮下脂肪に埋もれたりして、実際のサイズよりも小さく見える疾患。

先天的に発症する場合と、後天的に発症する場合があり、先天的な発症は幼小児に多くみられます。

幼小児にみられる埋没陰茎では、陰茎は皮下脂肪に埋もれながらも、そのサイズは長さ、太さとも年齢相応に発育していくケースが多いとされています。陰茎を持ち上げると、正常の外観となります。

陰茎は基本的に、陰茎ワナ靭帯(じんたい)と陰茎提靭帯という靭帯で、骨盤の前面にある左右2つの恥骨とつながっています。靭帯と恥骨とのつながり方が先天的に悪い場合には、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。

また、陰茎を包み込む皮膚の内側にある浅陰茎筋膜(ダルトス筋膜、コーレス筋膜 )、深陰茎筋膜(バック筋膜)という筋膜の付着異常で先天的に進展性が悪い場合にも、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。

程度にもよりますが、基本的には埋没陰茎に包茎を伴います。仮性包茎ならば、思春期以後から包皮を押しのけて亀頭が現れるようになりますが、真性包茎を伴っていると、陰茎が年齢相応に発育せず亀頭も露出しません。

埋没陰茎に真性包茎を伴って、生殖年齢になっても埋没陰茎が自然に改善していない場合、表面に出ているいる陰茎が短いために、パートナーの女性との性行為の際に陰茎を膣(ちつ)に挿入することが困難となり、性交困難症の原因になることがあります。このことがコンプレックスとなり、心因性(機能性)勃起障害(ED )の原因となる場合もあります。

一方、後天的に発症する埋没陰茎は、肥満によって起こります。恥骨付近に皮下脂肪がたまったり、肝臓や腸管などの内臓の周囲に脂肪がたまったりした結果、陰茎が下腹部に埋もれ、表面に出ている陰茎が割合として少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。皮下脂肪が厚ければ厚いほど、つまり肥満であればあるほど陰茎が埋もれた状態になります。

肥満をベースとするので、多くは後天的に発症する埋没陰茎ですが、まれにプラダー・ウィリー症候群という先天的な肥満疾患が、埋没陰茎の原因となる場合もあります。

なお、外傷によっても埋没陰茎が生じることがあり、この場合は外傷性埋没陰茎として、別に扱われます。埋没陰茎といった場合は、一般的に非外傷性を指します。

先天的に発症する埋没陰茎の多くは、両親などが気付いて心配し、小児泌尿器科、小児外科などを受診します。後天的に発症する埋没陰茎の場合は、生殖年齢になって本人が悩み、泌尿器科、外科などを受診します。

埋没陰茎の検査と診断と治療

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による診断では、ほとんどのケースで、体形や陰茎の視診と触診、生下時からのエピソードの問診によって判断します。陰茎の根元周囲や恥骨上の皮膚を抑えて、陰茎を引き出して触診すると、年齢相応のサイズの陰茎と亀頭を触知することが可能です。

診断に際しては、矮小陰茎(ミクロペニス)との鑑別を行い、矮小陰茎の原因となる疾患である性腺(せいせん)機能低下症、類宦官(るいかんがん)症、クラインフェルター症候群などを除外します。

小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による治療では、基本的に形成手術は必要ないとされ、問題の多い重症例が形成手術の対象になります。

形成手術を行う場合は、陰茎の根元周囲の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法、恥骨上の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法があります。

さらに、陰茎と恥骨の結合部にある靭帯の一部を剥離(はくり)し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定す方法、浅陰茎筋膜や深陰茎筋膜を剥離、切除し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定する方法などがあります。

通常の包茎として間違えて包皮切除術を行うと、埋没陰茎自体に対する改善処置が行いにくくなってしまう場合があるので、 その鑑別は慎重に行います。

一方、肥満によって後天的に陰茎が埋もれている場合は、食生活など生活習慣を改善することによる減量が治療となります。重症例では、恥骨付近の皮下脂肪を減らす脂肪吸引なども行います。

💅巻き爪

つめの甲が高度に弓なりに曲がり、両側縁に食い込んだ状態

巻き爪(づめ)とは、爪の甲が両側縁に向かって深く湾曲して、側爪廓(そくそうかく)に巻き込み、爪廓部を損傷する状態。

側爪廓に食い込んでいるものは陥入爪(かんにゅうそう)といい、側爪廓に巻き込んでいて爪の両端が丸まっている巻き爪は、陥入爪の変形です。巻き爪と陥入爪は、合併して起ることもあります。

巻き爪は足の爪に起こることがほとんどで、まれには手の爪にもみられます。統計的に欧米人に多く、また3対1の割合で男性に多いとされていましたが、近年では、日本人の間にも老若男女を問わず急速に増加し、ことに若い女性での発生が目立ちます。

主な原因は、先天的な爪の異常、爪の外傷、爪の下がうむ疾患であるひょうそ後の変形です。これに、窮屈な先の細い靴による爪の圧迫、不適当な爪切り、立ち仕事や肥満による過度の体重負荷ないし下肢の血流障害、あるいは、爪の水虫による爪の甲の変形などが加わって、悪化します。

爪の甲の端が爪廓に巻き込むと、圧迫によって痛みを生じます。また、巻き込んだ爪の甲が爪廓の皮膚を突き刺すようになると、指の回りがはれたり、その部分を傷めて痛みが増強します。

爪の甲の端が変形して起こるため、肉眼で確認しづらい状態で進行していくことが多く、気付いた時には皮膚に深く巻き込んでしまっていることもあります。場合によっては、出血を起こすほどに爪が深く突き刺さってしまうこともあります。

この傷に、ばい菌が入ると、より赤くはれ上がってくるとともに、赤い出来物を生じるようになります。これを化膿性肉芽腫(かのうせいにくげしゅ)と呼びます。

ひょうそなどの感染は、巻き爪や陥入爪を誘発したり、悪化させたりするため、早期に適切な治療を必要とします。巻き爪や陥入爪の再発を繰り返す場合や、側爪廓の盛り上りが強すぎて歩行に支障を来すような場合には、皮膚科専門医による外科的治療を行わないと完治しません。

巻き爪の検査と診断と治療

皮膚科の医師による治療の基本となるのは、爪の端を皮膚に刺さらないように浮かせて伸ばし、とげ状の部分をカットする方法と、手術で爪の端を取り除く方法です。爪の変形が強くなるため、原則的に抜爪は行われません。

巻き爪の矯正にはさまざまな方法があり、プラスチック製のチューブを爪の端に装着するガター法も行われています。爪を切開して、爪の端をチューブで包むことで指の組織を保護するのが目的で、傷口が化膿している場合などに、ガーター法は行われます。

形状記憶合金のワイヤーやプレートを使用する方法もあります。ワイヤー法は、爪の先端に2カ所穴を開け、太さ0・5ミリ程度の特殊なワイヤーを通して矯正する方法です。早ければワイヤーを装着した直後に痛みが治まり、ほとんどが数日中には痛みなどの症状が軽くなります。2~3カ月に1度、ワイヤーを入れ替えて爪を平らな状態に近付けていきます。ワイヤーの装着後も通常、運動の制限や入浴の制限などありません。

プレート法は、主に巻き爪と陥入爪を併発して症状がひどく、痛みもひどい場合や、ワイヤーの穴を開ける余裕がない場合などに行われます。爪の表面に、形状記憶合金製のプレートを医療用の接着剤を使用して接着します。後は自宅で、ドライヤーなどの熱を利用して1日に2〜3回、巻き爪の部分に熱を加えてプレートを伸ばすだけです。

また、深爪した爪、巻き込んでいる爪の先端にアクリル樹脂の人工爪を装着して、人工的に爪が伸びた状態を作り、周囲の皮膚への巻き込みを緩和し、巻き爪を矯正する人工爪法もあります。

矯正や人工爪による治療は時間がかかりますが、手術と違ってメスを使わないので痛みもほとんどなく、見た目も正常にになるという利点があります。

巻き爪を治療するためではなく、化膿した組織を治すためには、硝酸銀が使われます。硝酸銀を巻き爪でできた傷口に滴下し、傷口を溶かし正常な組織への再生を促します。硝酸銀が滴下された皮膚は、しばらくの間、黒く染色されます。

巻き爪がひどい場合、激しい痛みがある場合には、爪の元となる組織である爪母を除去する外科手術を行って、改善を図ることがあります。爪母を外科手術で除去する鬼塚法と、薬品で爪母を焼き取るフェノール法がありますが、どちらも再発する可能性があるというデメリットがあります。近年では、レーザーメスを使って爪母を切除する方法も開発されています。いずれにしろ、外科手術は最後の手段となる場合がほとんどです。

生活上の注意としては、まず足指を清潔に保つことが大切なので、多少ジクジクしていても入浴し、シャワーでばい菌を洗い流します。ばんそうこうなどで傷口を覆うと、かえって蒸れてばい菌が増殖します。消毒した後、できれば傷を覆わないか、風通しのよい薄いガーゼ1枚で覆います。

窮屈な靴、特にハイヒールや先のとがった革靴などは、爪を過度に圧迫するので避けます。爪切りの際には、かえって巻き爪を増強させる深爪にしないように気を付けます。

🇬🇺麻疹

麻疹ウイルスによって引き起こされる小児期に多い急性の感染症

麻疹(ましん)とは、麻疹ウイルスによって引き起こされる小児期に多い急性の感染症。麻疹と書いて「はしか」とも読み、こちらのほうが一般に知られています。

麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染で、その感染力は極めて強く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100パーセント発症します。一度感染して発症すると、一生免疫が持続するといわれています。

流行するのは初春から初夏にかけてで、秋から冬にかけては流行はみられません。好発年齢は1歳代が最も多く、次いで6~11カ月、2歳の順です。生後5〜6カ月までは母親の免疫抗体が体内に残っているので、かかりません。近年は、成人麻疹の増加が問題となっており、10歳代、20歳代での発症が多くなっています。

10~12日の潜伏期の後、発熱で発症します。発熱期はせき、鼻水、結膜の充血、目やにの症状が強く、38℃以上の発熱が数日続きます。疾患の経過中、最も感染力が強い時期です。その後、いったん解熱傾向を示しますが、すぐに耳後部付近から発疹が現れるとともに、39℃以上の発熱が数日続きます。

発疹の出現前後1、2日間に、臼歯(きゅうし)の横付近の口腔(こうくう)粘膜にコプリック斑(はん)と呼ばれる白い粘膜疹が現れます。この粘膜疹は麻疹に特徴的であるため、早期診断に役立ちます。

発疹はその後、顔面、体幹、手足に広がって全身の発疹となります。発疹は鮮紅色で少し盛り上がったものが点在しますが、数が多くなると部分的に融合して地図状になる傾向があります。

発疹の出現後、熱は3、4日で下がり、発疹もやや遅れて暗赤色からさらに薄くなり始め、褐色の色素沈着を残して回復に向かいます。色素沈着以外の症状は7〜10日で回復し、色素沈着も徐々に薄れていきます。

麻疹の後、肺炎、中耳炎を合併することが多く、1000人に0・5~1人の割合で脳炎を合併することがあり、中にはこのために死亡することもあります。

また、麻疹ウイルスに感染後、5~10年の潜伏期間を経て特に学童期に発症することの多い中枢神経疾患として、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)があります。知能障害、運動障害、けいれん発作などの症状を示し、発症から平均6~9カ月で死亡する進行性の予後不良な疾患で、発症頻度は麻疹にかかった10万人に1人程度といわれています。

ワクチンの予防接種が、有効です。ワクチンを接種する前に麻疹の発症者と接触したことが判明した場合は、48時間以内に麻疹含有ワクチンを接種することも、効果的です。接触後5、6日以内であれば、γ(ガンマ)-グロブリン製剤の注射で発症を抑える、あるいは軽くすませる可能性があります。が、安易にとれる方法ではありません。ただし、家族内感染の場合は、これらの予防法では間に合わないことがほとんどです。

麻疹を発症してしまった場合は、早急に掛かり付けの小児科、成人の場合は内科あるいは皮膚科を受診し、入院の必要性を含めて対応を相談することが必要です。

麻疹の検査と診断と治療

小児科、内科、皮膚科の医師による診断は通常、二峰性発熱、せき、鼻水、目やになどの症状、発疹の性状や特にコプリック斑だけで、ほぼ確実につきます。コプリック斑や発疹が出る前の時期は、風邪と似た症状のため診断がつきにくいことがあります。ただし、地域で麻疹の流行が確認されている場合は、かなり早い時期から麻疹の疑いがもたれます。

診断を確定する必要がある場合は、急性期の血液や咽頭(いんとう)ぬぐい液、尿から麻疹ウイルスを分離したり、RT‐PCR法で麻疹ウイルスの遺伝子(RNA)を検出することで、証明します。この検査は全国の地方衛生研究所(地研)で実施されており、麻疹を疑った場合は、保健所を通して地研に臨床検体を搬送します。地研での実施が困難な場合は、国立感染症研究所で実施します。急性期と回復期に採血して、麻疹ウイルスに対するIgG抗体が陽性に転じたことで診断する場合もあります。

近年、成人での麻疹の発症が増えていますが、内科医が麻疹患者を見慣れていないという事情もあり、診断が遅れがちです。成人の麻疹の場合、腹痛、黄疸(おうだん)、肝機能障害といった腹部症状が通常の麻疹の症状とともによくみられます。

小児科、内科、皮膚科の医師による治療では、発症してしまった場合はウイルスに特異的な治療方法がないため、対症療法と細菌感染の予防を行います。対症的薬物療法としては、高熱や頭痛には解熱剤、鎮痛剤、不安や興奮には鎮静剤、せきには鎮咳(ちんがい)、去たん剤を使用します。肺炎、中耳炎を合併することも多く、入院率は約40パーセントといわれています。

なお、麻疹は2008年1月1日から、全数報告の感染症となり、診断したすべての医師が最寄りの保健所に1週間以内に届け出ることが義務付けられました。

熱が続いている間は安静にし、水分補給を心掛けます。部屋の加湿は、せきを軽減させる効果があります。部屋の温度は、涼しくしすぎないよう注意します。光をまぶしがる時は、部屋の中をやや暗めにします。小学生以上の場合、麻疹と診断されれば出席停止となります。解熱後3日以上たてば登校できるようになりますが、その際には医師による登校許可が必要となります。

ワクチンを接種して発症そのものを予防することが、最も重要です。接種時期は、1歳になったらできる限り早く接種することが望まれます。日本では、2006年からMR(麻疹・風疹混合)ワクチンが広く使用されるようになり、2006年6月からは、1歳児と小学校入学前1年間の幼児を対象とした2回接種制度が始まっています。これらの時期に受けるワクチンは、定期接種として通常、無料で接種が受けられます。

また、2007年の全国的な麻疹流行は10歳代、20歳代が中心で、大学や高校で休校が相次いで問題になったため、国の麻疹対策が大きく変わりました。2008年度から5年間の時限措置として、10歳代への免疫強化を目的に、中学1年生(13歳)と高校3年生(18歳)に対する2回目の予防接種(原則としてMRワクチン)が、予防接種法に基づく定期接種に導入され、2012年度で終了しました。

🇬🇺マタニティブルー

産後2~3日目になると、訳もなく涙が出てきたり、家族のちょっとした言葉が気に障って悲しくなるのが、マタニティブルーと呼ばれる気分障害です。

出産を境にして、今まで盛んに分泌されていた女性ホルモンが急激に低下し、ホルモンの状態が激変するために、自律神経系に影響をおよぼし、本人の自覚のあるなしにかかわらず感情の変化として現れます。

そのほかにも、出産や慣れていない育児の疲れ、睡眠不足、家で独り育児に取り組まなければならない孤独感や不安などのストレスが重なり、感情が不安定になるのです。

主な症状は、情緒の不安定と涙もろさで、不眠や食欲不振、軽いうつ状態になったりもします。しかし、ピークは産後2~3日目で、産後2週間以内に治まります。短期間に消失する一過性の正常な反応であり、産後のうつ病とは違うものと考えられていますが、マタニティブルーから産後うつ病に移行するケースも。

産後うつ病のほうは、出産直後の数週間~数カ月の時期にみられるもので、強い悲嘆と、それに関連する心理的障害が起きている状態です。原因はいまだ、よくわかっていません。女性ホルモンの一種、エストロゲンとプロゲステロンが急激に減ることが一因、とも考えられています。

🇬🇺末梢神経腫瘍

末梢神経の中に発生する腫瘍で、最も多いのは神経鞘腫

末梢(まっしょう)神経腫瘍(しゅよう)とは、末梢神経の中に発生する腫瘍。

神経系を電気に例えると、脳は発電所、脊髄(せきずい)は変電所、末梢神経は変電所から各家庭に電気を届ける電線に相当します。脳からは12対の脳神経、脊髄からは31対の脊髄神経が出ています。そして交通整理されながら、道路のように体の隅々にまで末梢神経が走っています。末梢神経には、運動神経や感覚神経、自律神経が含まれます。

この末梢神経に発生する腫瘍は比較的少ないのですが、その中で最も多くみられるものは、神経鞘腫(しょうしゅ)です。神経鞘腫は、末梢神経の表面にあって、中心部の軸索といわれる部分を包んでいる髄鞘(ずいしょう)に腫瘍ができるものです。わりあい良性のものながら、経過は数十年に渡るものが多いようです。

聴神経腫などの脳神経に現れて障害を起こす場合のほかに、末梢神経の神経根に現れて脊髄障害を起こす場合、さらに皮膚神経に現れて皮膚障害を起こす場合があります。

代表的なものにレックリングハウゼン病(神経線維腫症)があります。これは遺伝性に現れてくるもので、母斑(ぼはん)とともに皮膚神経の神経鞘腫が全身に多発して、特異な所見を示します。

整形外科、ないし神経内科の医師による末梢神経腫瘍の治療法は、腫瘍が少ない場合は手術的に切除します。

🇹🇴末梢神経障害

体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態

末梢(まっしょう)神経障害とは、脳や脊髄(せきずい)から分かれた後の、体中に分布する末梢神経に障害が起こった状態。ニューロパチーと呼ばれることもあります。

末梢神経には、筋肉を動かす運動神経のほか、感覚神経、自律神経の3種類があります。その末梢神経障害による症状は、多彩で、複雑です。

老人には、手や足のしびれや運動まひを起こす末梢神経障害がよくみられます。原因には、栄養障害、貧血、糖尿病、中毒、各種のがん、骨の変形などが挙げられます。

末梢神経障害の原因としては、外傷、圧迫など機械的原因によるもの、動脈周囲炎や全身性エリテマトーデスなどが原因となる血管性のもの、および糖尿病、栄養障害、中毒によるもの、がん性のもの、遺伝性のものなどがあります。

症状としては、運動障害や感覚障害などが一時的なものも、進行して重度になるものもありますが、頭から足の指まで体のあらゆる部位に現れます。運動神経に障害が起こると、筋力が低下したり筋肉が委縮します。感覚神経に障害が起こると、しびれや痛みが現れたり、逆に、痛みや熱さ、冷たさなどの感覚が鈍くなったりします。深部感覚の末梢神経障害では、スリッパが脱げても気が付かないなどの症状が現れます。自律神経の障害では、立ちくらみ、排尿障害、発汗異常などが現れます。

実際には、どの神経にも平等に末梢神経障害が起こるわけではなく、主に感覚のほうに障害が強いといった感覚優位、あるいは運動優位といった特徴があるのが普通です。

しびれや痛みは、神経に故障が起こったことを知らせる警告信号といってよいでしょう。神経症状の現れ方は、末梢神経障害の分布によって、全身の末梢神経が障害を受ける多発神経炎と、一つの神経だけに障害が起こる単神経炎、および単神経炎があちこちに起こる多発性単神経炎に分類されます。

末梢神経障害の中で、よくみられる糖尿病性ニューロパシーは、注意が必要です。下腿(かたい)や足に強いしびれ感、痛みが起こり、進行すると、足部の感覚低下、栄養障害に循環障害が加わって、ちょっとしたけがから壊疽(えそ)に陥ったりします。放置しておくと、内臓の神経も侵されます。

末梢神経障害の検査と診断と治療

内科、神経内科の医師による診断では、しびれや痛みを感じる部位、発症の様子、進行度などを聞きます。その痛みに沿って皮膚の変化があるかないか、末梢動脈の脈を触れるかどうかを診ます。さらに、触覚、痛覚、温度感覚、振動感覚や手足の運動を神経学的所見から把握します。

これらの所見から推測される原因によって、必要な検査を進め、骨の単純レントゲン撮影、MRI、CT、血管造影検査、脳脊髄液検査、血液検査などを行います。

医師による治療は、原因によって多様です。冷湿布、局所麻酔剤の注射、神経ブロック、骨の変形や脊髄腫瘍などの手術療法、消炎鎮痛剤などの薬物療法などが行われます。外傷による神経の痛みは日数がたてば自然治癒しますが、がん性の痛みはモルヒネなどの薬でも軽減できないこともあります。

糖尿病性ニューロパシーの場合は、糖尿病の治療として、食事療法と運動療法でコントロールを保ち、必要に応じてインシュリン注射か内服薬を用います。対症療法としては、ビタミンB複合体の大量投与が有効。そのほか、鎮痛剤、末梢血管拡張剤なども効果的です。

🇹🇴末梢性思春期早発症

早期に性ホルモンの分泌が盛んになり、性的に早熟する疾患

末梢(まっしょう)性思春期早発症とは、性腺(せいせん)刺激ホルモンの影響を受けることなく、早期に女性ホルモンまたは男性ホルモンの分泌が盛んになり、第二次性徴が早く起こる疾患。仮性思春期早発症、偽性思春期早発症とも呼ばれます。

末梢性思春期早発症に対して、中枢性(真性)思春期早発症があります。中枢性思春期早発症は、下垂体(脳下垂体)から性腺刺激ホルモンが早期に分泌され、それにより性腺から性ホルモンが分泌されて引き起こされ、性的に早熟する疾患を指します。

末梢性思春期早発症の場合は、下垂体から性腺刺激ホルモンが分泌されていないにもかかわらず、性腺または副腎(ふくじん)で性ホルモンがつくられて、性的に早熟します。

副腎腫瘍、卵巣腫瘍、精巣( 睾丸〔こうがん〕)腫瘍、治療不十分な先天性副腎皮質過形成症、特殊な遺伝子異常によるマッキューン・オルブライト症候群、家族性男性性早熟症などが、その原因です。

女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が思春期の開始ですが、この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、末梢性思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。

乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。

男子では、精巣( 睾丸)が4ミリリットル以上の大きさになった時が思春期の開始ですが、この精巣の発育が9歳未満で起こった時、末梢性思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。

女性ホルモンまたは男性ホルモンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。

未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。

低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。

末梢性思春期早発症の検査と診断と治療

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。

また、ホルモン検査で血液中の性ホルモンの分泌状態、腹部超音波(エコー)検査で副腎腫瘍や卵巣腫瘍、精巣(睾丸)腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。

 ホルモン検査では、性ホルモンの上昇は認められますが、性腺刺激ホルモンの分泌は抑制されています。

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、原因となる病変がある場合、それを治療します。先天性副腎皮質過形成症が原因であれば、副腎皮質ホルモンを投与します。

副腎腫瘍、卵巣腫瘍、精巣( 睾丸)腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出した後に、ホルモン剤を投与して症状を緩和します。腫瘍の摘出が不可能な場合には、放射線療法も行います。

すでに起きている早発月経や陰茎発育などの症状については、特別な治療をせず、社会的心理的サポートを行います。

🇹🇴末梢動脈疾患(PAD)

血管の病変が手足の動脈に慢性的に起こっている疾患

末梢(まっしょう)動脈疾患とは、手足の血管の動脈硬化によって引き起こされる疾患。PAD(Peripheral Artery Disease)とも呼ばれます。

日本では閉塞(へいそく)性動脈硬化症、もしくは慢性動脈閉塞症と呼ばれている疾患ですが、海外ではPAD、すなわち末梢動脈疾患という疾患名が一般的です。 主に40〜50歳以降に発症します。

動脈に脂肪分が沈着して粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)が起こると、血管の内膜が肥厚して内腔(ないくう)が狭くなったり、潰瘍(かいよう)ができたりします。結果として、血流に障害が起き、血液が固まって血栓を生じ、詰まりやすい状態になります。こういった血管の病変が末梢(まっしょう)動脈、すなわち手足の動脈に慢性的に起こっているのが、末梢動脈疾患です。

末梢動脈疾患のある人は、手足の動脈だけでなく、全身の血管にも動脈硬化を来している場合が少なくありません。3割の人で冠動脈疾患の合併、2割の人で脳血管障害の合併が認められます。

発症しやすいのは、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙などの動脈硬化の危険因子を持っている人。食生活やライフスタイルの欧米化により、動脈硬化を基盤とする末梢動脈疾患が急速に増えています。

初期の症状は、足の冷感やしびれです。進行すると、短い距離を歩いただけで、ふくらはぎや太ももの裏側が重くなってきたり、痛みを感じるようになります。2〜3分休むとよくなり、再び歩くことができます。この間欠性跛行(はこう)や足のしびれなどの症状が神経痛の症状と似ているために、勘違いされて見逃されることも多く見受けられます。

さらに進行すると、安静時にも痛みが現れるようになります。病変がある動脈で、急に血液が固まって急性閉塞が起きた場合には、24時間を経過した後で、筋肉に壊死(えし)が起こることもあります。

末梢動脈疾患の検査と診断と治療

歩くと下肢が痛くなる原因にはいろいろあり、神経痛などほかの疾患と勘違いして、末梢動脈疾患(PAD)を悪化させてしまうこともまれではありませんので、循環器科や心臓血管外科を受診します。

医師による検査では、血管が閉塞した部位より先の動脈は、拍動が触れなくなります。四肢の血圧から足関節/上腕血圧比を測ることにより、さらに詳しく下肢の虚血を診断できます。確定診断には、血管造影検査が必要になります。

初期の冷感やしびれに対しては、血管を広げる血管拡張薬や、血液を固まりにくくする抗血小板薬を中心に治療が行われます。手足の痛みが強く、ひじや、ひざから上の比較的狭い範囲で慢性の動脈閉塞が起きている場合には、カテーテル治療、レーザー血管形成術、バイパス手術、血管新生療法などが行われます。

カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞(こうそく)の治療で行われるバルーン療法と同じ血管内治療。閉塞した部位にカテーテルを通し、そこで風船を膨らませて閉塞を治した後、再閉塞を防ぐためにコイルを留置します。レーザー血管形成術は、閉塞部近くまでカテーテルを挿入し、レーザー光を発して血栓や肥厚した内膜を霧状に散らす療法。

バイパス手術は、閉塞した動脈の代わりに静脈や人工血管を使ってバイパスを作り、動脈の血行を再建する治療。血管新生療法は、肝細胞を増殖させる物質の遺伝子が血管を新しく作ることがわかったため、それを使って行う新しい治療。血管を新生する因子(HGF)を産生する遺伝子を含む医薬を筋肉に注射し、新しい血管を誕生させて血流をよみがえらせます。

治療方法は数多くあるものの、末梢動脈疾患が重症になり、壊死が進行した場合は、足の切断が必要になることがあります。日本では毎年、1万人程度が足の切断を余儀なくされていると推定されます。

この末梢動脈疾患は、糖尿病や高血圧、高脂血症がある人に起こりやすいので、このような既往症のある人は、食生活を正して食べすぎを避け、減塩を守ること、ストレスを解消すること、禁煙をすることが必要です。

また、足の症状が出るまでは、休みながらも繰り返し歩くように心掛けます。歩くことにより、側副血行路が発達し血行が改善します。靴下、毛布などを使って、足の保温にも努めます。寒冷刺激は足の血管をさらに収縮させ、血液の循環を悪くさせるからで、入浴も血行の改善に役立ちます。足はいつも清潔にしておき、爪(つめ)を切る時は深爪をしないようにし、靴も足先のきつくないものを選ぶようにします。

なお、末梢動脈疾患(PAD)の日本における保険適応上の疾患名は、閉塞性動脈硬化症もしくは慢性動脈閉塞症となります。

🇰🇮末端肥大症

骨の発育が止まった後に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰分泌されて起こる疾患

末端肥大症とは、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されるために起こる疾患。先端巨大症とも呼ばれます。

この末端肥大症は、骨の末端部分の骨端線が閉鎖して骨の発育が止まった後、すなわち思春期が終了した後に起こります。一方、骨端線が閉鎖する前の発育期に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されると、巨人症が起こります。末端肥大症、巨人症とも大部分は、脳下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから成長ホルモンが過剰に分泌された場合に起こります。

脳下垂体に成長ホルモンを作る腫瘍が生じる原因ははっきりわかってはいませんが、もともと成長ホルモンを作っている細胞が腫瘍化して、成長ホルモンを過剰に産生、分泌するようになるとの考えがあります。膵臓(すいぞう)や肺に、まれに発生する特定の腫瘍でもホルモンが産生され、脳下垂体を刺激して過剰な成長ホルモンが作られこともあります。

末端肥大症は多くの場合、骨の発育が止まって長い年月が経過した30〜50歳で発症します。発症すると、手足が大きくなり、特有な顔や体形を示します。普通、少しずつ変化が生じるために、自分や周囲の人が気付くころにはかなり進んでいることも多いようです。

手足が大きくなるために、より大きいサイズの指輪、手袋、靴、帽子が必要になります。あごの骨の成長過剰で、あごが突き出ます。声帯の軟骨が厚くなるため声は太く、かすれます。肋骨(ろっこつ)が肥厚すると、樽(たる)のように胸板が厚くなります。関節の痛みがあり、長年経過してから体が不自由になる変形性関節炎になることがあります。

舌は肥大して、溝ができます。体毛は硬く濃くなり、皮膚の肥厚で増加します。皮膚の皮脂腺(せん)と汗腺は肥大し、大量の発汗と不快な体臭を発します。心臓が肥大し、機能が著しく損なわれると心不全を起こすことがあります。時には、肥大した組織が神経を圧迫し、腕や脚に不快な感触や脱力感を覚えます。目から脳へ情報を伝える神経も圧迫されることがあり、視覚、特に視野の外側が損なわれます。脳が圧迫されると、ひどい頭痛が生じることがあります。

そのほか、性機能の低下、女性の場合は無月経などの症状を生じることもあります。また、糖尿病や高血圧症で治療中の人の中に発見されることもあります。

末端肥大症では腸のポリープ、悪性腫瘍、糖尿病、心血管系の合併症が多くみられ、そのまま放置しておくことは危険なので、早期に治療が必要です。 内科ないし内分泌科の専門医の診察を受けて下さい。

末端肥大症の検査と診断と治療

医師による診断は、症状、血中ホルモンの測定、および画像検査により行われます。検査では、まず血中の成長ホルモンを測ります。ブドウ糖液を飲んで、血中の成長ホルモンを測定する検査も行われます。血中の成長ホルモンは正常者ではブドウ糖により低下しますが、末端肥大症では低下が認められません。また、血中の成長ホルモンは分泌が不規則なために、最近は、成長ホルモンにより作られるインスリン様成長因子(IGF―I)というホルモンの信頼性が高いといわれており、診断のために測定されています。

画像検査として、X線写真で骨や軟部組織の肥厚の評価をし、MRIやCTで脳下垂体の腫瘍を見付けることも重要です。

医師による治療は、第一に手術が考慮されます。鼻腔(びくう)から脳下垂体と接している骨を削り、脳下垂体の腫瘍を摘出する方法が一般的に行われています。腫瘍が小さいと完治させることも可能ですが、大きい場合や周囲に広がっている場合は、完全に取り除くことは難しくなります。

その場合は、放射線や薬による追加治療が行われます。コバルトやリニアックを照射する放射線治療では、効果が出るまでに数年かかり、ほかの脳下垂体ホルモンの分泌が低下することがあります。

薬による治療でも、時にはブロモクリプチンなどのドーパミン作用薬が有効で、錠剤を服用することで成長ホルモンの量を減らせます。最も有効なのは、成長ホルモンの産生と分泌を正常に遮断するソマトスタチン系のホルモンの皮下注射です。注射薬にはオクトレオチドや、持続型インスリンアナログもあり、1カ月に1回程度の投与ですみます。これらの薬で治癒するわけではありませんが、使用し続けている限り、多くの人で末端肥大症を制御する効果があります。

🇰🇮魔乳

生後間もない新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌される現象

魔乳(まにゅう)とは、生後2~3日ころから1週間ころの間に、新生児の胸が膨らむとともに、乳頭(乳首)から乳汁様の半透明から白色の液体が分泌される状態。奇乳、鬼乳とも呼ばれます。

妊娠中、母体では女性ホルモンの一つである卵胞ホルモン(エストロゲン)が卵巣から多量に分泌され、これが乳腺(にゅうせん)を発達させるとともに、脳下垂体に作用して乳汁分泌を促すプロラクチンの分泌を抑制しています。ところが、出産とともに、卵胞ホルモンの分泌が急速に低下し、プロラクチンの分泌の抑制がなくなるために、プロラクチンの分泌が増加し、乳汁(母乳)の分泌が開始されます。

妊娠中、母体の卵胞ホルモンは胎盤を通じて胎児の血液にも移行していますが、出生後、臍帯(さいたい)が切断され、母体との関係が絶たれると、卵胞ホルモンが急激に減少して、その影響が急速に失われるため、母体と同様な機構でプロラクチンが少量分泌され、これが作用して乳腺が刺激され、新生児の乳頭から乳汁様の液体が分泌されるのです。乳汁様の液体の成分は、乳汁と同一です。

魔乳は生後2~3日ころから分泌され始めることが多く、搾ったりせずに放置すれば数日から1週間程度で出なくなります。中には、5~6週間にわたって分泌がある場合もあります。新生児の体質や、母体から移行していたホルモンの量で、期間は変わってきます。

成熟した新生児では、生まれた当初から左右の乳房が大きな場合がありますが、これも胎盤経由のホルモンと自分自身のホルモンによって乳腺が発達したものと考えられています。

この時期の乳腺の発達には男女差はなく、男の子の新生児でも乳房が膨らんだり、魔乳が見られたりすることがあります。

ヨ-ロッパでは昔、魔女信仰の影響から、新生児の乳頭から分泌される乳汁様の液体が魔女の薬の材料になるとされて「Witch’s milk(魔女のミルク)」と呼ばれていたことから、日本では魔乳と呼ばれるようになったようです。ヨーロパでは魔法使いの女が採りに来る前に早く搾ってしまわなくてはならないと信じられていたそうですが、近年では搾ったり、触ったりすると、かえって乳腺が刺激されていつまでも液体が出続けたり、細菌が入って感染を起こすことがあるため、搾ったり、触ったりしてはいけないものとされています。

新生児の魔乳は自然に止まるのを待てばよく、特別な処置は必要ありません。乳汁とは少し違うような色の液体が出てくる場合は、乳腺などが傷付いている可能性がありますので、一度、産科、または小児科を受診し診察を受けてください。

🇰🇮マヨッキー紫斑

下肢に環状の紫斑ができ、慢性化して褐色調の色素斑をみる皮膚疾患

マヨッキー紫斑(しはん)とは、主に下肢の両側に紫色の点状斑が多発して環状に配列し、慢性化するうち、次第に褐色調の色素斑をみるようになる皮膚疾患。血管拡張性環状紫斑、マヨッキー血管拡張性環状紫斑とも呼ばれます。

このマヨッキー紫斑は、慢性(特発性)色素性紫斑という疾患群の一つに分類されています。その慢性色素性紫斑には、マヨッキー紫斑のほかに、不規則な斑(まだら)ができるシャンバーグ病、丘疹(きゅうしん)状の皮疹をみる色素性紫斑性苔癬(たいせん)様皮膚炎(グージュロー・ブルム病)、かゆみの強い瘙痒(そうよう)性紫斑など、いくつかの型があります。

マヨッキー紫斑は比較的まれな皮膚疾患ですが、中年以降の人に好発し、やや女性に多くみられます。時に小児、若年者にもみられます。

真の原因は不明ながら、静脈性の微小循環障害と毛細血管壁の弱さが関係するものと考えられています。また、何らかの遅延型過敏反応であるという説もあり、衣類の接触、扁桃(へんとう)炎などからの病巣感染、ある種の薬剤の関与などを指摘する報告などがあります。

紫色の点状斑の多発で始まり、毛細血管が拡張し、次第に進行して環状に配列する紫斑となります。この環状の紫斑が主体で、通常、かゆみなどの自覚症状はありません。紫斑は赤血球を主とする血液が皮膚の表面近くの微小な毛細血管壁から漏れた状態で、皮膚に出血がみられますが、血液学的に異常はなく、内臓などの全身臓器からの出血はありません。内臓疾患、他の全身症状を伴うことはなく、予後も心配ありません。

基本的に下肢、特に下腿(かたい)の裏側が好発部位で、おおかたは両脚に発症します。紫色の環状斑が大腿、腰臀(ようでん)部へと拡大することもあり、ひどいと手や上半身にも出ることもあります。色はやがて薄れてゆきますが、しばしば新生を繰り返して慢性化し、数年に渡ることもあります。

慢性化すると、褐色調の色素沈着を来します。沈着する色素は、メラニンだけでなく主にヘモジデリン。ヘモジデリンは、赤血球の中にあるヘモグロビンに由来する褐色調の顆粒状あるいは結晶様の色素であり、鉄を含んでいます。

血液の疾患や血管の疾患で、マヨッキー紫斑と似たような症状が出ることもあります。マヨッキー紫斑に気付いたら、疾患を正しく把握するためにも、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師に相談してみることが勧められます。

マヨッキー紫斑の検査と診断と治療

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による診断では、出血傾向の一般検査を行い、血液学的に異常をみないことを確認します。組織を病理検査すると、慢性的な出血性の炎症がみられ、真皮上層の血管周囲にリンパ球浸潤、血管拡張および出血を認めます。病変部は明らかな色素の沈着を残すので、診断は比較的容易です。うっ滞性紫斑との鑑別が必要です。

積極的な治療の必要はありません。症状の程度によって、ビタミンCなどの血管強化剤、止血剤、抗プラスミン剤、抗炎症剤などが使用されます。病因を絶つ根本治療ではなく、対症的治療にとどまります。

適当な強さの副腎(ふくじん)皮質ホルモン剤(ステロイド剤)の外用が有効なことがあります。慢性かつ進行性で一進一退を繰り返し難治性ですが、自然軽快もあり得ます。

対症的治療にとどまるため、症状が悪化しないように下肢の安静や、足先を少し高くして休むようにする挙上を心掛けることが重要です。弾性ストッキングの着用が有効な場合もあります。

衣類の接触とともに、使用中の薬剤などが疾患を悪化させているかどうかを観察し、日常生活の中で関係していると思われるものがあれば、それを避けるようにします。下肢の血液の循環に負担をかけないように心掛けることが大切で、長時間の歩行、立ち仕事などは避けるようにします。

🇲🇹マラセチア毛包炎

胸や背中、顔などに、小さく赤い丘疹がまばらに多発する皮膚疾患

マラセチア毛包炎とは、胸や背中、顔などに毛穴と一致して、小さく比較的均一な紅色丘疹(きゅうしん)や小膿疱(しょうのうほう)が多発する皮膚疾患。

皮膚に住み着く常在菌で、真菌の一種であるマラセチア(癜風〔でんぷう〕菌)が、胞子の形のままで、毛穴の奥で毛根を包んでいる毛包内で増殖するために、マラセチア毛包炎が生じます。現在のところ10種類のマラセチアが確認されていますが、実際に皮膚の炎症に関係するのは、マラセチア・ファーファー、マラセチア・グロボーサ、 マラセチア・レストリクタ、マラセチア・シンポディアリス、マラセチア・ダーマティスの5種類と見なされています。

増殖には脂質が必要であることから、マラセチアは皮膚表面や毛穴の皮脂を好み、栄養にします。そのため比較的皮脂が多く出やすい胸、背中、額、こめかみ、首、肩から二の腕にかけての毛穴の奥の毛包内でマラセチアが増えると、分解された皮脂は遊離脂肪酸という肌にとって刺激になり得るものに変わります。この刺激に強く反応すると、炎症が起き、小さな紅色丘疹がまばらにできたり、うみがたまる小さな膿疱ができたりします。

一般に夏場の高温多湿の条件下で、汗をかいたり、不潔にしていると、マラセチア毛包炎を生じます。

生じる部位が同じだったり、小さな赤い丘疹ができたり、うみがたまる点で、いわゆるにきび(尋常性痤瘡〔ざそう〕)に似ています。にきびが思春期以降に出やすくなるのに対し、マラセチア毛包炎は9~10歳からの若年層でも、中年層でも、幅広い年齢層でみられます。かゆみは軽度のことが多いとされていますが、時として強いかゆみを覚えることもあります。

また、マラセチア毛包炎を起こす人は、アトピー性皮膚炎や癜風(でんぷう、黒なまず)、脂漏性皮膚炎といった、ほかの皮膚症状を同時に起こすこともあります。マラセチアは、マラセチア毛包炎の原因になるとともに、癜風、脂漏性皮膚炎の原因になることもありますし、アトピー性皮膚炎の発症への関与も疑われています。

体幹の治りにくい丘疹や膿疱はマラセチア毛包炎の可能性があるので、皮膚科、皮膚泌尿器科の医師を受診して下さい。的確な診断、それに見合った治療をすることで、著しくよくなることも多くみられます。にきびの症状と似ていますが、アクネ桿菌(かんきん)という細菌が関係するにきびとは発生原因が異なるため、治療法にも違いがあります。

マラセチア毛包炎の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、丘疹や膿疱の内容物を顕微鏡で観察すると、マラセチア(癜風菌)のイースト型(丸い型)の胞子を多数認めます。ズームブルーという真菌染色用試薬を用いると、マラセチアが染色され顕微鏡での観察に有用です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、マラセチアに抗菌力のあるイミダゾール系のケトコナゾール(ニゾラールローションなど)といった外用剤を主に用います。外用剤だけで治りにくい場合には、イトラコナゾール(イトリゾール)を1週間程度内服します。また、清潔、洗浄、乾燥などのスキンケアも重要です。

外用剤の使用に際しては、1~2カ月の間、完全に症状がなくなるまで、コツコツ塗り続けるのがコツです。中途半端で塗るのをやめてしまうと、再発を繰り返すことも多くなります。再発を繰り返すと、黒い色素沈着がなかなか消えないこともあります。

予防法としては、皮膚を清潔にすることでマラセチア毛包炎の発生を抑制できます。マラセチアは皮脂や湿気の多い部位で増殖する性質があるため、特に夏場などは汗をかいたらこまめに皮膚を洗浄して、菌の繁殖を抑えることが大切です。

エアコンなどで温度と湿度をコントロールするのも有用。ただし、冷えすぎるのも代謝にとって悪影響があるため、28度以下にならないようにします。

🇲🇹マラリア

マラリアは、寄生虫のマラリア原虫(プラスモジウム)が原因の感染症で、特徴的な発熱のほか、悪寒、頭痛、吐き気などの症状が現れます。メスのハマダラカが感染者の血液を吸い、別の人を刺して広がります。原虫の種類により、熱帯熱マラリア、四日熱マラリア 、三日熱マラリア 、卵型マラリア の四種類があり、種類ごとに熱の出方が異なります。

熱帯、亜熱帯地域に広く分布し、世界100カ国余りの国々で流行しています。WHO(世界保健機関)の推計では、全世界で毎年、3・5億~5億人の感染者、150万~270万人の死者があると報告されています。また、そのうちの90パーセントはアフリカ熱帯地方で発生していると報告され、エイズ、結核と並ぶアフリカの三大感染症に数えられます。

日本においても、1935年ころまでは年間数万人の患者が発生していましたが、媒介する蚊の撲滅などの結果、現在では海外で感染する、いわゆる輸入マラリア感染者のみの発生であり、毎年100人~150人が報告されています。感染者数が少ないために医師の認識が低く、風邪などと誤診されて治療が遅れ、死亡するケ-スもいくつあります。

効果的なワクチンはありませんが、抗マラリア薬で治療します。しかしながら、薬が効かない薬剤耐性マラリアが増えており、WHOでは二剤併用療法の導入を進めています。

🇲🇹マルファン症候群

全身性の結合組織障害で、特徴のある体形を示す遺伝性の疾患

マルファン症候群とは、体を構成する組織や器官をつなぐ結合組織に、異常を来す遺伝性の疾患。主に骨格系、視覚器系、心臓血管系に異常が認められ、特徴のある体型を示します。

染色体の異常な遺伝子による疾患で、常染色体優性遺伝を示します。フィブリリン遺伝子の異常により、体に必要な結合組織を作るフィブリリンという物質に異常が起こるため、正常な蛋白(たんぱく)質を生産できなくなり、結合組織が弱くなります。

また、TGFβ(ベータ)R2という別な遺伝子の異常によることもあります。約25パーセントは遺伝ではなく、卵子または精子での異常遺伝子の出現、すなわち自発的な新たな突然変異によって引き起こされると見なされています。

人種や民族にかかわらず男性にも女性にも等しく現れるものとして1896年、マルファン博士により初めて報告された疾患で、日本人では2万5000人から4万1000人の発症者が存在すると見なされています。

骨格系の異常により、背が高くやせており、長い手足と指を持つ体形を示します。脊椎(せきつい)側湾や、脊椎の胸椎部が後方へ曲がって突き出している亀背(きはい)などの背骨の異常、鳩胸(はとむね)や漏斗胸、関節痛や脱臼(だっきゅう)を起こしやすい関節の過可動性などがよく認められます。

生命にかかわる心臓血管系の疾患が、重要です。無症状の段階で診断されやすいものとしては、大動脈弁を含む大動脈基部の拡張、大動脈弁閉鎖不全、僧帽弁閉鎖不全があります。血管壁の結合組織が弱くなっている場合には、血管内の圧力により少しずつ大動脈が拡張して、大動脈弁が閉じなくなり、血流の逆流を生じたり、血管壁に解離が起きて危険な状態になることがあります。胸背部の激痛がみられた時には、大動脈解離を考える必要があります。

視覚器系の症状としては、目の水晶体亜脱臼、偏位、近視などがみられます。また、腰椎仙骨部の硬膜の拡張により、腹部や足の痛みが起こることもあります。

ただし、マルファン症候群になったからといってすべての症状や特徴が必ず現れるわけではなく、症状が現れたとしても、その度合いは個人差があり、人によって異なります。そのために、マルファン症候群であると気付くのが遅れたり、自分はマルファン症候群ではないと考えてしまうことがあり、心臓血管系に現れる症状などは年が経つにつれて進行することがあるので、最悪の結果になることがあります。

マルファン症候群の検査と診断と治療

小児科、内科などの医師による診断は、家族歴と多臓器における特徴的所見に基づいて臨床的に行われます。加えて、骨格系のX線検査、心エコー検査、眼科的検査、腰椎仙骨部のCTやMRIなどが行われます。遺伝子検査も、原因を調べるために行われます。

生命にかかわる突然の事態を少しでも回避するには、心臓血管系の対策が最も重要です。大動脈基部が5センチ以上に拡張したり、大動脈解離を生じた時は手術が勧められます。手術の成績は、昔に比べて非常によくなっています。

治療に使用される薬剤は、血圧を下げたり血管の保護を目的として、β遮断薬やACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬などが主に使用されます。

このマルファン症候群は人によって症状が異なるため、定期的に主治医と相談し、症状や心臓血管系の状態に合わせて生活管理をする必要があります。血圧を上げる動作や激しい運動、体が接触する運動は避けて、大動脈や目、骨が傷付く危険を回避することも必要です。適切な治療により、発症者の平均余命は一般人の平均余命に近いものになります。

喫煙はマルファン症候群の人にもともと不足している蛋白質であるエラスチンを破壊しますので、避けたほうがよいでしょう。

🇭🇳マロリー・ワイス症候群

激しい嘔吐により、食道と胃の境界付近の粘膜が裂けて出血する疾患

マロリー・ワイス症候群とは、激しい嘔吐(おうと)によって、食道と胃の境界付近の粘膜が裂けて出血する疾患。出血により吐血、または下血を起こします。

疾患名は、1929年に初めて報告した2人の医師、ジョージ・ケネス・マロリーとソーマ・ワイスに由来します。日本における発症は男性に多く、発症年齢は平均45〜50歳とされています。

一般に酒を飲んだ後に嘔吐して起こることが多いのですが、胃と十二指腸の境界部にある幽門に狭窄(きょうさく)があるために、胃から十二指腸への食べ物の通過が悪くなって嘔吐する時や、食中毒、乗り物酔い(動揺病)、妊娠中のつわりで嘔吐する時、腹部を打撲した時、排便時に力んだ時にも起こります。

むかつきがあるなど強い圧力が胃に加わると、胃の幽門は閉じて、幽門近くから縮まり、胃の中のものを上に押し上げます。これによって、食道と胃の境界付近がアコーディオンのように押し込められて、中の圧力が著しく高くなり、ついには粘膜に縦長の裂傷ができて出血します。

症状は、吐血、下血のほか、鋭い胸の痛み、呼吸困難、立ちくらみなどがあります。吐血は強い嘔吐を何度か繰り返した後にみられますが、1回目の嘔吐で吐血することもあります。鋭い胸の痛みを伴う場合は、特発性食道破裂の可能性があります。

大量出血した場合は、精神的な影響も加わってショック状態となり、意識はもうろうとなります。

マロリー・ワイス症候群の検査と診断と治療

ほとんどのケースで保存的治療が可能ですので、嘔吐した時や出血した場合は、なるべく早く内視鏡検査が行える診療所、病院を受診します。

医師は一般の血液検査で、貧血の状態をみます。裂傷部分の判定には、以前は胃X線検査を行っていたのですが、裂傷部が浅い場合はわからないため、現在は上部内視鏡検査(胃カメラ)を行っています。内視鏡検査では、どこから出血しているか、裂傷の深さ、大きさ、出血がどのような形態か、すなわち動脈性か、じわじわとした出血か、すでに止まっているかなどを観察します。

治療としては、軽症で出血が少ない場合は入院して、安静と絶食をしながら点滴を受け、裂けてしまった粘膜が自然に止血して回復するのを待ちます。出血が多く続く場合や、出血が止まっていても避けている部分が大きくて再出血する可能性が高い場合は、内視鏡下でレーザーを使って粘膜の裂傷部分を閉じ止血処置をします。止血処置には、裂傷の露出している血管にクリップをかける方法、血管を電気焼灼(しょうしゃく)する方法などがあります。

処置後は、安静、絶食、点滴などの治療を行い、裂傷の治療としてH2ブロッカーなどの胃酸分泌抑制剤を服用します。

大量出血した場合は、輸血が必要となることもあります。止血に時間がかかる場合は、内視鏡下で止血し、それでもなお止血が困難であれば手術をすることもあります。なお、食道破裂の場合は、すぐに手術する必要があります。

🇭🇳慢性胃炎

長い年月をかけて進行し、はっきりとした症状がみられない胃炎

慢性胃炎とは、症状がはっきりせず、胃のもたれ、不快感、食欲不振などが何となく起こるといった不定愁訴が、特徴的に認められる疾患。

それらの症状のほとんどは、いつから始まったのか、はっきりしません。また、全く症状がないこともあります。日本人にみられる慢性胃炎のほとんどは、ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染が原因であることが、1980年代の初めから解明されています。ピロリ菌に感染し、その後、長い年月をかけて胃炎が進行して、慢性胃炎となるのです。

ピロリ菌は、胃の粘膜に生息している細菌。1980年代の初めに発見され、慢性胃炎や胃潰瘍(かいよう)の発生に関係していることがわかっています。通常、胃の中は、胃酸が分泌されて強い酸性に保たれているため、細菌が生息することはできません。しかし、ピロリ菌は、胃の粘膜が胃酸から胃壁を守るために分泌している、中性の粘液の中に生息し、直接胃酸に触れないように身を守っているのです。

ピロリ菌はウレアーゼという尿素分解酵素を分泌して、胃の中に入ってくる食べ物に含まれる尿素を分解し、アンモニアを作り出します。このアンモニアも胃の粘膜に影響を及ぼし、慢性胃炎の原因の一つになるのだと考えられています。

ただし、ピロリ菌に感染している人すべてに、症状が現れるわけではありません。感染しても、自覚症状がない場合、そのまま普通の生活を送ることができます。

ピロリ菌に感染している人の割合は、年を取るほど高くなる傾向があり、中高年の場合、70~80パーセントにも上ります。このように、年齢によって感染率に違いがあるのは、育った時代の衛生環境に関係していると見なされています。

慢性胃炎の検査と診断と治療

 慢性胃炎では、はっきりとした症状がないことが多いため、以下のような検査で胃に炎症が起きているかどうか調べます。

(1) 内視鏡検査:内視鏡で、胃の粘膜の様子を直接観察します。進行した慢性胃炎である委縮性胃炎では、粘膜が委縮して、薄くなり、血管が透けて見えたり、白っぽく見えます。

(2)組織診:内視鏡の中に器具を通し、胃の粘膜から組織の一部を採取してきて、顕微鏡で炎症があるかどうか調べます。また、慢性胃炎のほとんどの人はピロリ菌に感染していることがわかっていますから、慢性胃炎であるかどうかをより確実に知るためには、ピロリ菌に感染しているかどうかを調べることが必要になります。

ピロリ菌に感染しているかどうか調べる検査には、次のような方法があります。

内視鏡を使う方法

内視鏡によって胃の粘膜の組織を採取し、そこにピロリ菌がいるかどうかを調べる検査です。次の3つの方法があります。

1.ウレアーゼ試験:採取した組織を、尿素とpH指示液(酸性度、アルカリ性度を調べる)の入ったテスト溶液の中に入れて、色の変化を調べます。もし、ピロリ菌がいれば、ピロリ菌の出すウレアーゼによって、アンモニアが発生し、テスト溶液がアルカリ性になり、その結果、色が変わります。

2.組織診:採取した胃の粘膜の組織を顕微鏡で観察し、ピロリ菌の有無を調べます。

3.培養検査:採取した組織をピロリ菌が繁殖しやすい環境で培養し、その後、顕微鏡でピロリ菌の有無を調べます。

内視鏡を使わない方法

 内視鏡で組織を採取する方法に比べて、発症者の肉体的負担が軽い検査です。次の3つの方法があります。

1.血液検査:ピロリ菌に感染すると、それに対する抗体ができます。血液中にこの抗体があるかどうか調べる検査です。

2 .尿検査:血液検査と同様に、尿中にピロリ菌の抗体があるかどうかを調べます。

3.尿素呼気テスト:ピロリ菌はウレアーゼを分泌し、それによって、尿素をアンモニアと炭酸ガスに分解します。この炭酸ガスは、呼気にも出てきます。そこで、特殊な炭素を含んだ尿素(標識尿素)を飲み、15~20分後に呼気を採取して、その成分を調べます。ピロリ菌に感染している場合、標識された炭素を含む炭酸ガスが呼気の中に出てきます。

慢性胃炎の治療法としては、従来は対症療法だけが行われてきましたが、ピロリ菌が原因となることがわかってからは、抗生物質による根本治療も行われるようになっています。

(1)対症療法:急性胃炎と同様に、胃酸分泌抑制薬、胃粘膜保護薬、運動機能改善薬を服用します。

(2) 根本治療:2~3種類の抗生物質を、同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。2~3種類の抗生物質を用いるのは、1種類だけよりも効果が高いのと、その抗生物質に対する耐性菌(抗生物質が効かない菌)ができてしまうのを防ぐためです。

🇭🇳慢性陰茎海綿体炎

男性の陰茎の内部にある海綿体が炎症を起こして、慢性的にはれ上がっている状態

慢性陰茎海綿体炎とは、男性の性器である陰茎の内部にある海綿体が炎症を起こして、慢性的にはれ上がっている状態。単に陰茎海綿体炎とも呼ばれます。

陰茎は、主に3つの海綿体で構成されています。陰茎の下側に尿道海綿体があり、中に尿道が通っています。その尿道海綿体の上方に、勃起(ぼっき)に関係する左右一対の陰茎海綿体があります。

細菌の感染によって発症するほか、事故などによる外傷のために、あるいは勃起した陰茎に過度の力が加わったために、発症することがあります。さらに、ブドウ球菌やクラミジアなどに感染して尿道炎を起こしたために、急性陰茎海綿体炎を生じ、それを放置したり、適切な治療をしなかったことを原因として、慢性化して発症することもあります。

また、陰茎がんや尿道がんなどの泌尿生殖器系の悪性腫瘍(しゅよう)の海綿体への直接浸潤、勃起不全に対する海綿体注射などにより発症することがあります。原因不明のことも多く、病像は明確ではありません。

慢性陰茎海綿体炎を発症すると、陰茎海綿体に慢性的な炎症が起きるために、発熱、陰茎部痛、会陰(えいん)部から陰茎部の発赤や圧痛を伴うはれ、膿(うみ)が混じった膿尿(のうにょう)などの症状が発生します。

炎症が長引くと、陰茎が勃起した時に根元や途中から曲がる陰茎湾曲や、尿道の内腔(ないくう)が狭くなって尿が出にくくなる尿道狭窄(きょうさく)につながり、勃起機能の低下の原因となることもあります。

慢性陰茎海綿体炎の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、陰茎部の症状の視診、触診を行います。以前に打撲などによる外傷や炎症があったかどうかが、参考になります。

次に、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行って、陰茎の内部を観察し、正確に診断するために、病変部の一部を切除して組織検査を行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、細菌の感染で発症している場合には、抗生物質(抗生剤)を投与します。多くの症例では、完全に治療することができます。

陰茎部に膿瘍(のうよう)がある場合には、外科手術によって切開して排膿します。悪性腫瘍の陰茎海綿体への直接浸潤などで症状が悪化した場合には、外科手術によって病変部を切除することもあります。

重い勃起障害がある場合には、陰茎海綿体の中にシリコンの支柱材を埋め込むプロステーシス手術も検討されます。

プロステーシス手術には、半固定式と膨張式の2種類があり、半固定式の場合は、陰茎は常に約80パーセントの勃起状態のままになります。シリコンの中には針金が通っているので、性交以外の時には、陰茎を上や下に折り曲げて、目立たせなくすることが可能です。

一方、膨張式の場合は、小型ポンプで生理食塩水などの液体を送ってシリコンの支柱材を伸縮させることができるため、陰茎の硬さを自由に調整できます。

🇮🇩慢性円板状エリテマトーデス

皮膚限局型エリテマトーデスの一つで、慢性型のサブタイプに属する皮膚疾患

慢性円板状エリテマトーデスとは、日光露出部である頭部、顔面、四肢などに、円板状の紅斑(こうはん)が好発する原因不明の皮膚疾患。円板状エリテマトーデス、円板状紅斑性狼瘡(ろうそう)とも呼ばれます。

膠原(こうげん)病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスと異なり、皮膚症状のみ出現する皮膚限局型エリテマトーデスの1つであり、慢性型のサブタイプに相当します。皮膚限局型エリテマトーデスには、急性型、亜急性型、中間型のサブタイプもあります。

慢性円板状エリテマトーデスの症状は、類円形ないし不整形で、魚の鱗(うろこ)のようにはがれる鱗屑(りんせつ)を伴う円板状の紅斑が多発することを特徴とします。

円板状の紅斑は境目がはっきりしていて、頬(ほお)、鼻、下唇、首、耳、頭部など、日光が当たる部位にできます。皮膚面より少し盛り上がり、中心部は硬くなったり委縮していたりして、引きつったようになっています。口唇に症状が出る時はびらん、頭皮に症状が出る時は毛包破壊による脱毛を伴うことがあります。

ほとんどはかゆみがないのですが、時にかゆくなることがあり、かいたり刺激を与えたりすると、その部位に新たな円板状の紅斑が広がる傾向にあります。

この皮膚病変は、治癒過程で色素沈着ないし色素脱失、委縮を生じ、瘢痕(はんこん)を残します。ほかの症状として、発熱や倦怠(けんたい)感がみられることもあります。

全身性エリテマトーデスと異なり、全身の臓器障害はみられませんが、一部が全身性エリテマトーデスへ移行することがあります。全身性エリテマトーデスへ移行すると、円板状の紅斑が全身に広がり、内臓の炎症、腎臓(じんぞう)の機能障害が起こります。

慢性円板状エリテマトーデスは、35~45歳の女性が発症しやすいとされています。

現在のところ、慢性円板状エリテマトーデスを発症する原因はわかっていません、しかし、紫外線や寒冷刺激、美容整形、妊娠・出産、タバコ、ウイルス感染、薬物などが関係していると考えられています。/p>

全身性エリテマトーデスは、免疫システムが自己の細胞を攻撃する自己免疫が原因だとされていますが、慢性円板状エリテマトーデスは自己免疫とは無関係と考えられています。皮膚が抗原刺激や物理的刺激を受けることで、白血球のうち、リンパ球と呼ばれる細胞の一種である細胞が増殖し、細胞間で情報を伝えるタンパク質であるサイトカインの生成が促進され、症状が現れると推測されています。遺伝との関係は親族内や双子で発症する例が少ないことから、可能性は低いと考えられていますが、遺伝的要素からも分析研究が進められています。

円板状の紅斑ができて治りにくい場合、慢性円板状エリテマトーデスの可能性があります。日光を避けて、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診しましょう。治った後でも、まれに皮膚がんである有棘(ゆうきょく)細胞がんの発生母地となることがあるため、症状が軽くてもしっかり治療をすることが大切となります。

慢性円板状エリテマトーデスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、視診をした上で、皮膚生検といって皮膚の一部を採取して顕微鏡で調べる検査を行い、慢性円板状エリテマトーデスと確定します。

血液検査を行うこともありますが、発症者の多くはほかの臓器に変化を伴わず正常です。しかし、一部の患者では、血液沈降速度(血沈)の高進、抗核抗体陽性、白血球減少がみられ、全身性エリテマトーデスに移行することがあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、瘢痕が残った皮膚病変を治すことはできませんが、新しい円板状の紅斑が広がらずに限られた範囲にできている場合は、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。

また、内服薬ではヒドロキシクロロキンなどのマラリア治療薬が皮膚症状に有効であり、欧米では第1選択薬の1つです。以前の日本では副作用のために使用が禁止され保険適応がありませんでしたが、2015年に承認されました。ヒドロキシクロロキンの長期間の効果としては半数弱の人に有効であり、残りの半分強は内服のステロイド薬などが必要になります。

免疫抑制剤の1つであるレクチゾールやミゾリビンの内服薬も有効なことがわかっていますが、貧血などの副作用が現れやすいため、慎重に使用する必要があります。

全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。炎症が強くて症状が重い場合には、大量に投与し、症状が安定すれば徐々に量を減らしていきます。腎臓の障害に対して、免疫抑制剤を用いたり、血漿(けっしょう)交換療法を行うこともあります。

慢性円板状エリテマトーデスの悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、サングラス、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。

寒冷による刺激も極力受けないほうがいいため、しっかりと防寒することが重要で、夏場は清潔な服を着る、通気性のよい天然素材の洋服を着るなどの対策も大切です。加えて、ストレスを避け、適度な運動と休養をとり、バランスのとれた食事をします。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...