下腹部に陰茎が埋もれて、実際のサイズよりも小さく見える疾患
埋没陰茎とは、男性の陰茎が周囲の皮下脂肪に埋もれたり、恥骨上の過剰な皮下脂肪に埋もれたりして、実際のサイズよりも小さく見える疾患。
先天的に発症する場合と、後天的に発症する場合があり、先天的な発症は幼小児に多くみられます。
幼小児にみられる埋没陰茎では、陰茎は皮下脂肪に埋もれながらも、そのサイズは長さ、太さとも年齢相応に発育していくケースが多いとされています。陰茎を持ち上げると、正常の外観となります。
陰茎は基本的に、陰茎ワナ靭帯(じんたい)と陰茎提靭帯という靭帯で、骨盤の前面にある左右2つの恥骨とつながっています。靭帯と恥骨とのつながり方が先天的に悪い場合には、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。
また、陰茎を包み込む皮膚の内側にある浅陰茎筋膜(ダルトス筋膜、コーレス筋膜 )、深陰茎筋膜(バック筋膜)という筋膜の付着異常で先天的に進展性が悪い場合にも、陰茎が根元周囲の皮下脂肪の中に引き込まれ、表面に出ている陰茎の部分が少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。
程度にもよりますが、基本的には埋没陰茎に包茎を伴います。仮性包茎ならば、思春期以後から包皮を押しのけて亀頭が現れるようになりますが、真性包茎を伴っていると、陰茎が年齢相応に発育せず亀頭も露出しません。
埋没陰茎に真性包茎を伴って、生殖年齢になっても埋没陰茎が自然に改善していない場合、表面に出ているいる陰茎が短いために、パートナーの女性との性行為の際に陰茎を膣(ちつ)に挿入することが困難となり、性交困難症の原因になることがあります。このことがコンプレックスとなり、心因性(機能性)勃起障害(ED )の原因となる場合もあります。
一方、後天的に発症する埋没陰茎は、肥満によって起こります。恥骨付近に皮下脂肪がたまったり、肝臓や腸管などの内臓の周囲に脂肪がたまったりした結果、陰茎が下腹部に埋もれ、表面に出ている陰茎が割合として少なくなり、実際のサイズよりも小さく見えます。皮下脂肪が厚ければ厚いほど、つまり肥満であればあるほど陰茎が埋もれた状態になります。
肥満をベースとするので、多くは後天的に発症する埋没陰茎ですが、まれにプラダー・ウィリー症候群という先天的な肥満疾患が、埋没陰茎の原因となる場合もあります。
なお、外傷によっても埋没陰茎が生じることがあり、この場合は外傷性埋没陰茎として、別に扱われます。埋没陰茎といった場合は、一般的に非外傷性を指します。
先天的に発症する埋没陰茎の多くは、両親などが気付いて心配し、小児泌尿器科、小児外科などを受診します。後天的に発症する埋没陰茎の場合は、生殖年齢になって本人が悩み、泌尿器科、外科などを受診します。
埋没陰茎の検査と診断と治療
小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による診断では、ほとんどのケースで、体形や陰茎の視診と触診、生下時からのエピソードの問診によって判断します。陰茎の根元周囲や恥骨上の皮膚を抑えて、陰茎を引き出して触診すると、年齢相応のサイズの陰茎と亀頭を触知することが可能です。
診断に際しては、矮小陰茎(ミクロペニス)との鑑別を行い、矮小陰茎の原因となる疾患である性腺(せいせん)機能低下症、類宦官(るいかんがん)症、クラインフェルター症候群などを除外します。
小児泌尿器科、小児外科、泌尿器科、外科などの医師による治療では、基本的に形成手術は必要ないとされ、問題の多い重症例が形成手術の対象になります。
形成手術を行う場合は、陰茎の根元周囲の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法、恥骨上の脂肪組織を切除して陰茎の皮下組織を固定する方法があります。
さらに、陰茎と恥骨の結合部にある靭帯の一部を剥離(はくり)し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定す方法、浅陰茎筋膜や深陰茎筋膜を剥離、切除し、埋没してたるんでいた陰茎を引き出し、陰茎の皮下組織を吸収糸で固定する方法などがあります。
通常の包茎として間違えて包皮切除術を行うと、埋没陰茎自体に対する改善処置が行いにくくなってしまう場合があるので、 その鑑別は慎重に行います。
一方、肥満によって後天的に陰茎が埋もれている場合は、食生活など生活習慣を改善することによる減量が治療となります。重症例では、恥骨付近の皮下脂肪を減らす脂肪吸引なども行います。
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