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2022/08/26

🇸🇸メタボリック症候群

■数倍に跳ね上がる生活習慣病リスク■

 メタボリック症候群(メタボリック・シンドローム)は、内臓脂肪症候群、代謝異常症候群、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群などとも呼ばれています。内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」の人が、高血糖や高血圧、高脂血症の芽を二つ以上持っている状態を指します。

 高血糖症、高血圧症、高脂血症……いずれも中高年がかかりやすい生活習慣病ですが、これら三つの病気は、共通の根っこから発症すると考えられています。すなわち、脂質代謝異常、糖代謝異常、血圧異常、内臓肥満……など。

 こうした根っこが一つならまだしも、複数持ち合わせている場合は、病気のリスクが高くなります。メタボリック症候群は、まさにこうした複数の危険因子を抱えている状態を指すわけです。

 実際、メタボリック症候群の人では、 動脈硬化の危険因子である「肥満」、「高血圧」、「高血糖」、「高中性脂肪(トリグリセリド)血症」、または「高コレステロール血症」が重複して発症していることがあり、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいのです。危険度が高まるとさまざまな生活習慣病が同時に発症し、場合によっては死につながることも。

 肥満に関しては、上半身肥満のうち内臓脂肪型肥満が、メタボリック症候群になりやすいとされています。肥満には大きく分けて、二つのタイプがあります。女性に多い洋ナシ型と、男性に多いタル型で、洋ナシ型ではおしりや下腹部など皮下に脂肪がつきますが、タル型では内臓回りに脂肪が蓄積されます。

 WHO(世界保健機構)によれば、このメタボリック・シンドロームにかかっている人は、現在、世界的に増え続けているといいます。米国では、実に成人の4人に1人が該当するほど。

 食事が欧米化している日本人も、決して無縁ではありません。厚生労働省の調査によれば、メタボリック症候群の疑いが強い人は、予備軍を含めると中高年男性の約半数に達します。

■日本と海外での診断基準■

 自分の状態を知るには、体重やおなかの回りをチェックするとよいでしょう。   

 日本でのメタボリック症候群(メタボリック・シンドローム)の診断基準(2005年4月8日に策定)を下記に示します。

 下記4項目のうち、 1)肥満が必須条件で、さらに以下の3項目のうち、2項目以上が該当すると、メタボリック症候群と診断されます。

 1)肥満:ウエスト(おへその高さでの腹囲)が男性で85cm以上、女性で90cm以上

 2)高脂血症:中性脂肪150mg/dl以上 、または HDL(高比重リボタンパク:high density lipoprotein)コレステロール40mg/dl未満

 3)高血圧:最大血圧(収縮期血圧)で130mmHg以上、または最小血圧(拡張期血圧)で85mmHg以上、いずれか、または両方。

 4)糖尿病:空腹時血糖値が110mg/dl以上

 海外でのメタボリック症候群の診断基準としては、米国高脂血症治療ガイドライン(2001年)と、WHOによる診断基準の2種類があります。

 米国高脂血症治療ガイドラインでは、下記5項目のうち3項目が該当すると、メタボリック症候群と診断されます。

 1)ウエスト(腹囲)が男性で102cm以上、女性で88cm以上

 2)中性脂肪が150mg/dl以上

 3)HDLコレステロールが男性で40mg/dl未満、女性で50mg/dl未満

 4)血圧が最大血圧で130mmHg以上、または最小血圧で85mmHg以上

 5)空腹時血糖値が110mg/dl以上

 WHOによる診断基準は、下記のようになります。

 高インスリン血症、または空腹時血糖値110mg/dl以上に加え、以下のうちの2つ以上を持つものです。

 1)内臓肥満:ウエスト/ヒップ比>0.9(男性)、>0.85 (女性)、またはBMI(体格指数:body mass index)30以上、または腹囲94cm以上

 2)脂質代謝異常:中性脂肪150mg/dl以上、またはHDLコレステロール35mg/dl未満(男性)、39mg/dl未満(女性)

 3)高血圧:140/90mmHg以上か、降圧剤内服中

 4)マイクロアルブミン尿症:尿中アルブミン排泄率20μg/min以上か、尿中アルブミン/クレアチニン比30mg/g.Cr以上

 それでは、メタボリック症候群はどうして起こるのでしょうか。はっきりとはわかっていませんが、大きな要因は主に体質と生活習慣の二つです。

 体質については不明な点が多いのですが、今のところ有力視されている説では、すい臓から分泌されるホルモンであるインスリンの抵抗性や、脂肪細胞の機能異常が関わっている、と見なしています。 

 まず、私たちが肥満になると、脂肪組織や筋組織における糖の取り込み能力が低下してしまうため、糖を代謝する時に必要なインスリンがうまく働かなくなります。肥満はさらに、筋肉や肝臓でのグリコーゲン合成酵素の活性も低下させます。

 結果的に、血糖値が高くなり、ますますインスリンの働きが阻害されてしまいます。インスリンがうまく機能しないと、糖尿病や高血圧、高脂血症の危険が高まります。動脈硬化が促進され、冠動脈疾患にかかる可能性も出てきます。

 歴史的に見れば、肥満が問題にされているのは、ごく最近のことにすぎません。人類は太古の昔から、ずっと飢餓の歴史に耐えてきました。お陰で、エネルギーが枯渇した場合の身体システムは発達しましたが、近代の飽食に直面して以降、エネルギーがあふれた状態を解消する仕組みができていないために、新たな病も派生しているのではないでしょうか。

■ライフスタイルの見直しを■ 

 メタボリック症候群の主原因は、高カロリー食・高脂肪食のとりすぎと、運動不足という生活習慣に尽きます。

 メタボリック症候群にかかっている人や、疑いが強い人は、三食とも規則正しく、いつもと同じ時間に、摂取カロリーを抑制した食事をとりましょう。外食やファーストフードは、ほどほどに。

 体重減少のために、日ごろから掃除、庭仕事、洗車、子供と遊ぶ、犬の散歩などで、こまめに体を動かすように心掛け、中等度の運動を毎日30分以上、最低でも10分以上行いましょう。ウエストの減少、肥満防止には、出勤前のジョギングもお勧め。中性脂肪、血圧、血糖値を減らし、禁煙するよう努力しましょう。

 厚生労働省の「健康日本21」によると、健康維持に最適な運動消費カロリーは1週間で2000kcal、 1日あたり約300kcalとされております。1日300kcalを消費するために、1日で1万歩を歩きましょう。同じく厚労省の調査によると、メタボリック症候群の予防に効果があるとされる運動習慣がある人は、約3割にとどまっています。

 内臓脂肪型肥満の別名は「タル型肥満」であり、「りんご型肥満」ともいいます。腹部がふくらんでいるのが特徴で、特に男性に多いとされていますが、肥満の予防が健康維持に大切なのは、女性にとっても同じこと。

 「昔に比べて、おなか回りに脂肪がついてきた」、「年々ウエストがきつくなっている」といった場合は、無理なく体重を落とすことから始めたいものです。

 メタボリック・シンドローム予防の10か条

●適正体重を維持する

●野菜や乳製品や豆類などをしっかり食べ、バランスのとれた食事を

●規則正しく食事をし、朝食を抜いたり、寝る直前に夜食を食べたりしない

●脂肪のとりすぎに気を付ける

●塩辛い味付けを避ける

●ジュースやお菓子など、糖分の多い食品を食べすぎない

●ウォーキングやジョギング、水泳など、毎日適度な運動を

●睡眠、休養は十分に

●たばこは百害あって一利なし。思い切って禁煙を

●お酒はほどほどに。週に2回は休肝日を設けて 

 診断のめやすは、次の5項目のうち3つを満たしている場合です(米国の診断基準による)。 

□耐糖能異常(または2型糖尿病)

□高中性脂肪血症

□低HDL(善玉)コレステロール血症

□内臓肥満

□高血圧 

 もし該当する場合、糖尿病を発症するリスクは通常の9倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは3倍。また、それぞれの異常度はさほど高くない、という人も含まれるので警戒が必要です。

 日本の企業労働者12万人の調査では、軽症であっても「肥満」、「高血圧」、 「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を1つ持つ人は心臓病の発症リスクが5倍、2つ持つ人は10倍、3~4つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることがわかりました。

 厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3900万人、高脂血症は2200万人、糖尿病(予備軍を含め)は1620万人、肥満症は468万人といわれております。これらの患者は 、年々増加しております。

🇦🇷めまい

■脳からのサインを見逃さずに■

 めまい(目眩、眩暈)は、「目がまわること、眼がくらむこと、げんうん」などと、辞書では定義されています。

 「目舞い」と当て字をすることもあるように、「目がぐるぐると舞ったような感じ」のことを指します。ただし、人によっては、「ふわふわした感じ」や「立ちくらみ」などをめまいと呼ぶこともあり、感じ方は一様ではありません。

 一般的には、周囲や天井がぐるぐると回る「回転性めまい」と、体がふらついて真っすぐに歩けない「浮動性めまい」に大別され、主として耳と脳の病気で起こります。

 私たち人間は、両耳の内耳と、脳の中の小脳・脳幹とに、体の平衡感覚をつかさどる機能を備えています。そのいずれかにトラブルが発生し、体のバランスが崩れた場合に、めまいが起こりやすい、と見なされているのです。

 耳の最深部で、側頭骨の岩様部に囲まれた内耳には、体の平衡感覚に関係する三半規管と耳石、音の受容に関係して、その内側にリンパ液を満たす蝸牛(かぎゅう)管などの器官があります。三半規管、耳石、蝸牛管などの情報は脳の神経に伝えられるので、自分の頭や体がぐるぐる回転したように感じるめまいの症状は、内耳障害の可能性が高いのです。内耳に原因があると、音の聞こえが悪く、耳鳴りがして、耳が詰まるように感じることも、多くなります。 

 専門医の見解では「めまいの強さは必ずしも、危険度と一致しない」とされ、顔面や手足のしびれ、舌のもつれ、物が二重に見える複視、頭痛などの症状を伴う時に、注意が必要となります。脳の小脳や脳幹など生命維持に重要な部分のほうに、問題が発生している場合があるからです。

 ちなみに、脳の小脳の役割は、 大脳の命令で筋肉が動く時に、筋肉をうまく動かすためのコーディネーター。アルコールで小脳が麻痺(まひ)すると、舌と唇の動きが合わなくなり、うまく話せなくなります。脳幹のほうは、いわゆる「脳の幹」。大脳で発せられた命令は、小脳のコーディネートによって脳幹を通って、知覚・運動をつかさどる神経に伝達されるのです。 

■めまいの原因をチェック■

●内耳の疾患に起因するめまい 

 めまいを感じた場合、めまい以外の症状を確かめることが、必要となります。その症状によって、どんな病気かチェックし、受診する科を判断するといいでしょう。

 なぜなら、めまいを引き起こす病気は極めて多彩なため、医師側にとっても診断が難しく、間違いやすいとされているからです。 

 めまいと同時に、耳鳴り、難聴の症状が伴う場合には、内耳に障害がある可能性が高くなります。考えられる病気は、突発性難聴、メニエール病、内耳炎、聴神経腫瘍(しゅよう)、外リンパろうなどが挙げられます。

 まずは、耳鼻咽喉科へ行くのがいいでしょう。顔面神経麻痺、吐き気、嘔吐(おうと)、「真っすぐ歩けない」といった歩行障害などがある場合も、耳鼻咽喉科へ。   

●めまいを起こす代表的な内耳疾患  

 メニエール病  フランスの内科医メニエールによって発見された病気で、吐き気や嘔吐を伴うぐるぐる回るようなめまいを繰り返し、内耳の中に水腫(すいしゅ)、すなわち、むくみができるもの。肉体的・精神的ストレスが誘因となって、メニエール病が起こることもあります。

 良性発作性頭位(とうい)めまい症  めまいでは、メニエール病が著名ですが、実はそれほど多くはありません。最も多いのは、良性発作性頭位めまい症なのです。

 40歳以上の女性に多く、布団から急に起き上がった時や、お辞儀をした時、上のほうを向いた時、シャンプーをしている時、あるいは車をバックさせるために後ろを見た時などという同じような動作の後、数十秒にわたって回転性のめまいが続きます。ほとんどは自然に治りますが、再発して発作を繰り返す場合には、良性発作性頭位めまい症の可能性が高くなります。

 内耳にある耳石に障害がある時になりやすいため、耳鼻咽喉科へ行くのがいいでしょう。頭を動かす理学療法により、短期でよくなるケースもあります。

●脳の疾患に起因するめまい

 話し方が少しゆっくりになる、ろれつが回らないといった言語障害や、歩く際にふらつく、立ちくらみを覚えるといった平衡障害、また激しい頭痛を伴うような場合には、脳梗塞や小脳出血を始めとする脳血管障害、聴神経腫瘍などが疑われます。

 めまい外来、神経内科、脳外科での受診が、お勧めです。視力障害、手足のしびれや麻痺、不眠などを伴う場合も、そちらへ。

とりわけ小脳出血は危険ですので、緊急に神経内科や脳神経外科に行く必要があります。小脳に障害があると、回転性のめまいに加えて、ふらつく、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどの症状がありますが、小脳出血では激しい頭痛、嘔吐を伴うのが特徴で、麻痺を伴う場合もあります。

 とにかく、以下のような症状が見られる、危険なめまいの場合には、すぐに専門医に掛かることです。

□激しい頭痛や吐き気

□手足の運動障害

□顔面神経の麻痺

□眼振(目がひとりでに動いてしまう) 

●全身に疾患に起因するめまい

 脳梗塞や小脳出血などの脳血管障害のほか、血圧の上昇・下降、不整脈などの循環器病、心筋梗塞などの虚血性心疾患、糖尿病などでも、めまいを起こす場合があります。

 さらに、夜更かし、暴飲暴食、大量喫煙、過労、睡眠不足、職場などでの対人関係ストレス、自律神経失調症、更年期障害、高血圧症、低血圧、貧血、アレルギー体質、高脂血症などが原因となって、めまいを起こす場合があります。 

■対策へのアドバイス■ 

●めまいを感じたら、体を横たえる

 まず、横になって休むこと。左右どちらかを下にして、めまいがひどくなるようなら仰向けに寝ます。休んでいてもめまいが治まらないようであれば、近くの内科か耳鼻咽喉科で診察してもらいましょう。 

 めまいが少し治まってきたら、天井や壁などを見てみましょう。模様が揺れて見えないか、揺れて見える場合にはその揺れ方などをチェック。受診の際に、医師に伝えましょう。

●専門医によるめまいの検査を

 めまいの時には、「めまい外来」のある病院が近くにあるなら、そこへ行きましょう。なければ、めまい以外の症状によって受診する科を判断して、耳鼻咽喉科、神経内科、脳外科などを受診しましょう。

 病院では、めまいの原因となる病気が内耳にあるのか、脳にあるのかを検査します。目が左右に激しく動くかどうかの眼振検査、体のバランスが乱れているかどうかの体平衡検査、聴力検査、耳に注水して人工的に三半規管を刺激する温度刺激検査などを行います。脳の検査としては、目の動きの検査(ENG検査)や画像検査(CT検査、MRI検査)などを行います。 

●病院での受診時にはメモの用意を 

 病院で診察を受ける時には、めまいが治まっていることが多く、問診でその症状を詳しく尋ねられることがあります。そこで、次のような点をメモしておくとよいでしょう。 

□ いつ、どこで、何をしていた時に起こったか

□どんなめまいだったか(「ぐるぐる回る」、「ふわふわする」、「真っすぐ歩けない」など)

□めまい以外の症状(吐き気、耳鳴り、手足のしびれなど)

□ めまいが起こる前の生活状況(体調、ストレス、睡眠状況など)

●日常生活にも工夫を

□早寝早起きで睡眠を十分にとる

 不眠症も、立派なめまいの原因となります。睡眠は人間が生きていく上で大切ですが、最近では夜型人間が増え、同時に睡眠障害を訴える人も増えています。これら睡眠が規則正しくない人は、めまいを起こすこともあります。まさに、生活習慣の乱れがめまいを起こすので、めまいも「生活習慣病」の一つに数えてもいいかもしれません。

 意外と不眠症や不規則な睡眠がめまいの原因だと気が付かない人も多いので、めまいを感じたら、自分の睡眠を一度、振り返ってみることが必要です。

□適度の運動を心掛ける

 どの年代にもお勧めの運動は、ウオーキング。ぺたぺた歩かず、両足は踵(かかと)から地面に着いて、爪先(つまさき)でけるようにします。腕を振りながら、上半身も使って、一分間に80メートル以上の速さで歩きましょう。

□ストレスをためず、気分転換を図る

 先にも触れたように、対人関係などによるストレスによっても、めまいが引き起こされます。過度のストレスが続くと、メニエール病や自律神経失調症やパニック障害、起立性調節障害などの心身症が起こり得ますが、それらの障害はめまいを伴うことがあるので、うまく気分転換を図りましょう。

2022/07/21

🇮🇹メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群

子宮の発育が不完全で、膣が全くない先天性の障害

メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群とは、先天的に女性の腟(ちつ)全部が欠損し、機能性子宮を持たない疾患。ロキタンスキー症候群、ロキタンスキー・キュストナー・ハウザー症候群とも呼ばれます。

このメイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群は、先天的に女性の腟の一部、または全部が欠損した腟欠損症の一種で、その中で最も頻度の高いものです。

腟欠損症の女性では、先天的な原因により腟や子宮の異常がさまざまな程度に起こります。染色体は正常女性型で、卵巣はほとんど正常にあり、女性ホルモンも正常に出ています。外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常です。

母親の子宮の中にいる胎児の時には、卵巣、腟・子宮・卵管、外陰部は別々に発生してきて、本来はこれらがうまくつながります。このうち、腟・子宮・卵管はミュラー管という組織が分化して形作られますが、たまたま分化が行われずに発生不全が起きると、子宮はわずかに痕跡(こんせき)を残す程度にしか発育せず、腟も長さが2~3センチと短いか、全くない状態になります。これが腟欠損症です。

はっきりした原因はまだわかっていませんが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなり、正常な発生ができなくなると推測されています。

腟欠損症は、医学的には上部腟欠損、下部腟欠損、全腟欠損に分類されます。頻度は4000~5000人に1人とされ、そのうち95パーセントは月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。

機能性子宮を持たず、全腟が欠損しているメイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群は、月経機能を失っている状態で、月経血の貯留による症状はみられず、無月経がほぼ唯一の症状となります。

卵巣からの排卵はありますが、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。また、先天的に腟全部が欠損していますので、普通の性行為はできません。まれに、骨の異常があることもあります。

自然妊娠はできませんが、メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群では膣や子宮に問題があっても、卵巣機能に異常はなく正常に機能している場合がほとんどですので、当然卵子は正常に作られています。つまり、卵子を採取して体外受精を行い、代理出産すれば、遺伝的につながった自分の子供を持つことは可能です。

倫理的な問題や、代理出産に伴うリスクなど課題を残しながらも、不妊に悩む人にとって代理出産は最後の切り札ともいえます。

メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群に気付いたら、婦人科医、ないし産婦人科医を受診してください。

メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー症候群の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓(じんぞう)と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、性行為ができるように人工的に膣を造る造腟手術を行います。子宮に異常を伴うため自然妊娠は不可能で、造腟手術により性行為を可能にして患者の精神的不具感をいやすことが治療の主眼となります。手術は、思春期以降の性的関係を持つ時期を目安に行われます。

造腟手術には数多くの術式があり、今なおさまざまな工夫が試みられています。主な術式は、フランク法、マッキンドー法、ダビドフ法、ルーゲ法の4つです。

フランク法は、腟前庭(ぜんてい)をヘガール持針器などで圧伸して腟腔(ちつくう)を形成したのち、その腟腔を拡張する方法。マッキンドー法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、皮膚移植により腟壁を形成する方法。ダビドフ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、骨盤腹膜を利用して腟壁を形成する方法。ルーゲ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、開腹してS状結腸を切り離し、腟管として利用する方法。

以上4つの方法が従来行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術が行われることも増えてきました。患者の体にかかる負担を軽減し、骨盤腹膜やS状結腸を使った手術が可能となっています。

このような手術の後には、膣管の状態を維持する必要があります。定期的な性交渉やプロテーゼ(腟ダイレーター)により、状態を保たなければいけません。プロテーゼ(腟ダイレーター)とは、筒状の拡張器具のことを指し、皮膚を伸展させて腟腔を形成する目的で使用されます。

🇨🇦メープルシロップ尿症

一部のアミノ酸を分解できないために、新生児期から神経系の異常を生じる疾患

メープルシロップ尿症とは、一部のアミノ酸を分解できないために、新生児期から神経系の異常を生じる疾患。先天性代謝異常症の一種で、楓(かえで)糖尿症とも呼ばれます。

人間が成長、発育していくには、蛋白(たんぱく)質、糖質、脂肪、ビタミン、ミネラルなどの栄養分が必要であり、これらの栄養分は胃、腸で分解され、小腸より吸収されて、肝臓などの内臓や脳、筋肉に運ばれます。内臓ではさらに、それぞれの臓器を構成するのに必要な成分に分解、合成されます。

このように栄養分を分解、合成する代謝には酵素の働きが必要ですが、この酵素が生まれ付きできないために、その酵素が関係する成分の蓄積が起こって、いろいろな症状が現れるのが、先天性代謝異常症です。

先天性代謝異常症の種類はたくさんありますが、その中でメープルシロップ尿症は比較的頻度が高く、早期発見により正常な発育を期待できるため、新生児の集団スクリーニングの実施対象疾患となっています。新生児の約40万人から50万人に1人の割合で、メープルシロップ尿症を発症するとされています。

口から摂取した蛋白質は胃でアミノ酸に分解され、腸より吸収されます。そのアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸と呼ばれるロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の必須アミノ酸を分解するα(アルファ)−ケト酸脱水素酵素の活性が、先天的な遺伝子の異常によって低下するために、メープルシロップ尿症は起こります。

3種類のアミノ酸を分解、合成する代謝ができず、これらのアミノ酸とα−ケト酸からなる代謝産物が蓄積し、血液中の量が増えます。

このため神経系に変化が起こり、けいれんや精神遅滞なども起こります。こうした代謝産物によって、尿や汗などにメープルシロップ(楓シロップ)とよく似た特有の甘いにおいがします。

メープルシロップにはさまざまな病型があり、最も重症な古典型から、症状の軽い間欠型、中間型、ビタミン反応型(サイアミン反応型)などがあります。

最も重症な古典型では、生後1週目で授乳不良、活気不良、嘔吐(おうと)、けいれん、多呼吸、意識障害、昏睡(こんすい)、低血糖などの神経系の異常を起こし、治療をしなければ数日から数週間以内に死亡します。

これより軽症の型の場合、初期には正常のようにみえますが、乳幼児期以降に感染症や手術などで身体的なストレス状態になると、嘔吐、よろめき歩行、錯乱、昏睡、尿のメープルシロップに似たにおい、徐々に発達が遅れるなどの症状が現れます。

メープルシロップ尿症の検査と診断と治療

メープルシロップ尿症は、新生児の集団スクリーニングという集団検診の対象疾患になっています。具体的なスクリーニングの流れは、まず産科医療機関で生後4~7日目の新生児のかかとからごく少量の血液をろ紙に採り、スクリーニングセンターに郵送します。センターでスクリーニング検査を行い、血液中のロイシンの量が4ミリグラムを超えていたら、精度の高いアミノ酸分析計を用いて、血液や尿中の分枝鎖アミノ酸の増加を調べます。

結果に異常のある場合、小児科の医師による精密検査を受け、メープルシロップ尿症と診断されると、ロイシン、イソロイシン、バリンの3種類の分枝鎖アミノ酸を制限した特別なミルクと、蛋白制限食による食事療法を行います。

重症の場合には、血液透析や交換輸血を行って体内に蓄積した分枝鎖アミノ酸とα−ケト酸を排除すれば、神経系の異常なども改善されてきます。軽症の場合には、ビタミンB1(チアミン)の注射が効果的な場合もあります。薬物により疾患を抑えることができた後も、特別なミルクと蛋白制限食を常に摂取しなければなりません。

乳児期では、蛋白質を除去した上で、3種類の制限対象以外のアミノ酸の混合物を加えた各種の治療用除去ミルクを与え、血液中のロイシンの量を2~4ミリグラムに保つように調節します。制限対象のアミノ酸はいずれも必須アミノ酸であるため、全く摂取しないわけにはいきません。残された酵素機能の程度に応じて、母乳や通常の粉ミルクを併用することになります。

離乳期では、自然の食品から3種類のアミノ酸だけを取り除くことはできないため、各食品中の3種類の制限対象のアミノ酸含有量を測定した資料を参考にして、摂取量を計算しながら献立を作ることになります。このような献立で、蛋白質やエネルギーの必要摂取量を確保することが難しい場合は、幼児期以降も治療用除去ミルクで補う必要があります。

一部のビタミン反応型に限られますが、特定のビタミンを服用することで食事制限の緩和が可能となる場合があります。ビタミン投与前後の症状や、検査値によって有効性を評価します。

新生児期に発見、診断して治療することにより、嘔吐や意識障害などの急性症状の出現を防ぎ、良好な発達につなげていくことができます。 感染症などで状態が悪化するので、慎重な育児は必要です。

🇨🇦メタノール中毒

メタノールを飲んだり、吸い込んで引き起こされる食中毒

メタノール中毒とは、酒(エタノール)と間違えるなどしてメタノールを誤って飲んだり、管理の悪い工場や事故などで高濃度のメタノールの蒸気を吸い込んで、引き起こされる食中毒。

メタノールはアルコールの一種で、別名としてメチルアルコール 、木精、カルビノールメチールとも呼ばれます。

このメタノールは、アルコールランプなどの燃料、自動車のフロントガラス用などの洗浄剤、溶剤として、またフェノール樹脂、接着剤、酢酸、ホルマリンなど各種の化学薬品、医薬品の原料として広く用いられています。そのために、誤飲する機会も多く、工場などで急性、慢性に吸入することも多くあります。

エタノールと同様に、メタノールも体に入ると酔いをもたらします。ただし、エタノールが体内で比較的害の少ないアセトアルデヒドから無害の酢酸に分解されるのに対して、メタノールは有害なホルムアルデヒドから有害な蟻酸(ぎさん)に分解されます。

この蟻酸がたまることにより、視神経を傷付けて、視力障害さらには失明を引き起こします。それ以外に、急性下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、出血性胃炎、急性膵(すい)炎、頭痛、めまいなど、さまざまな症状を引き起こします。

急性中毒の場合、メタノールを故意に、あるいは間違って飲んだり、吸い込んだりしてから半日〜1日程度は、エタノールを飲んだ時と同じような酔いが起こるだけで、ほかには特に症状は出ません。ただし、吸い込んだ場合には、目や鼻の刺激を覚えることがあります。

翌日から吐き気、嘔吐、頭痛、めまいのほか、目がかすんだり、物が二重に見えたりし始めます。また、血液が酸性になる代謝性アシドーシスも生じます。1週間以内に、視神経委縮と視野狭窄(きょうさく)のため著しい視力障害が起こり、しばしば症状が進んで失明します。

多量に摂取した場合は、けいれん、循環障害、呼吸まひを起こし、死ぬこともあります。慢性中毒の場合は、視力障害が起こります。

メタノール中毒の検査と診断と治療

メタノール中毒に気付いたら、まずできるだけ吐かせ、次に酒(エタノール)をたくさん飲ませて、症状がなくても必ず救急病院に搬送します。

医師による急性中毒の診断では、発症者の話をよく聞いて、飲んだり吸い込んだりしたものがメタノールであることを知ることが大切です。それが困難な場合は、尿中にメタノールを検出することが役立ちます。さらに、目などの症状と代謝性アシドーシスが診断の手掛かりになります。視力障害がみられる時は、視神経の委縮と視野の狭窄の有無を調べます。慢性中毒の場合は、目の所見と尿中のメタノールの量を調べます。

急性中毒の治療では、エタノールを経口または点滴で多量に与えることが最も有効な治療になります。メタノールもエタノールもアルコール脱水素酵素などの同じ酵素で分解されるので、エタノールがたくさんあるとメタノールの分解が阻害されて遅くなり、有毒な蟻酸などができにくくなるためです。また、必要に応じて胃洗浄を行ったり、下剤を投与して、メタノールを排出させるようにします。

重症の場合には、人工透析を行って血液中のメタノールを取り除く場合もあります。そのほか、代謝性アシドーシスに対して炭酸水素ナトリウム(メイロン)を投与するなどの対症療法も行います。

🇨🇦メタボリックシンドローム

内臓脂肪型肥満(内臓に脂肪が蓄積した肥満)によって、さまざまな病気が引き起こされやすくなった状態のこと。

肥満・高血糖・高中性脂肪血症・高コレステロール血症・高血圧の危険因子が重なった状態で、複合することによって糖尿病・心筋梗塞・脳卒中などの発症リスクが高まります。

高カロリー・高脂肪の食事と運動不足が原因といわれています。

🌀メニエール病

■回転性のめまい。聴力低下も■

メニエール病とは、「めまい」や「耳鳴り」、「難聴」、「吐き気」などを伴う発作が繰り返し起こる病気です。フランスの医師メニエールが1861年、初めて報告したために、この病名が付けられました。メニエール症候群ともいわれ、耳の奥の内耳に異常が生じて現れます。

 突然、トンネルに入った時や飛行機が下降する時のような塞(ふさ)がった感じが、片方の耳に生じます。これに伴って、耳鳴りや回転性のめまいが起こります。同時に、嘔吐(おうと)や冷や汗、下痢を起こすこともあります。

 こうした症状には個人差があり、自律神経の働きの弱い人や、乗り物酔いをよくする人は、ひどくなる傾向があります。発作の時間はそれほど長くはなく、数分で治まりますが、数時間続くこともあります。また、長期間にわたって何度も発作を繰り返す人もいれば、発作が一回限りの人もいます。

 30~50歳代の働き盛りに多く、緊張感の続く状況にある人がかかりやすいと見なされています。以前は男性に多く見られましたが、現在では男女差がほとんどありません。高齢者にはあまり見られないのも、特徴の一つです。

 地域的には都市部に多く、中でもストレスをためやすい職業に就いている人や、不規則な生活を送っている人に多い傾向があります。

突然、天井や床がぐるぐる回るめまいに襲われるため、「大変な病気に違いない」と恐怖心を募らせてしまう方も多いのですが、生命にかかわるほどの病気ではありません。

 ただし、放っておいて発作を何度も繰り返すと、耳鳴りが残ったり、難聴が進んだりすることもあります。発作が起こるたびに、耳の中で音を感じ取る役割を担う蝸牛(かぎゅう)が、壊れます。特に低音が聞こえにくくなり、初めのうちは修復されて聴力も回復しますが、発作を何度も繰り返すと、めまいが治まっても回復せず、難聴になってしまうこともあるのです。

 耳鳴り  めまいの発作が起こる前に、ひどくなるようです。発作を繰り返すうちに、慢性的な耳鳴りになっていきます。

 難聴  発作とともに難聴になる場合と、発作を繰り返すうちに聴力が落ちてくる場合があります。一般的には、低音が聞きとりにくくなります。

 ふわふわ感  体が傾く感じになって、実際によろけてしまったり、静止している物が動いているように見えたりします。

 その他  発作の時には自律神経の働きがおかしくなり、吐き気や顔面蒼白、冷や汗、頭重(ずじゅう)、肩凝り、頭痛、下痢などの症状が現れることがあります。 

■内耳の内リンパ液が増加し、膜が破れるのが原因■

 外界の音を感じ取ったり、自らの体の傾きや回転を感知したりするのが、内耳の役割です。この内耳の感覚細胞の周りを満たす内リンパ液が増えてたまり、やがては内耳の中の膜が持ちこたえられずに破れてしまった結果、めまいが起こると見なされています。

 内リンパ液がたまってしまう理由は、よくわかっていません。ただし、ストレス、過労、不規則な生活などによって体調が悪い時に、発作が起こりやすく、昼夜逆転したような生活を送っている人は、特に注意が必要です。 

■早めの対処と、ストレスをためない工夫が必要■

 もしメニエール病の発作が起きても、慌てないこと。めまいがしている時は、動かずに体をじっと横たえるなど、最も楽な姿勢で安静にしましょう。「冷たい濡れタオルなどで目を覆って、冷やすと楽になる」という人も、います。

 「めまい」の経験は、健康な人にもあります。それだけに、「この程度で休んでいられない」といった無理解や誤解も多いようで、無理をして仕事に出たり、学校へ行ったりということも、ありがちです。

日常生活においては、細かいことにとらわれず、「病気と気楽に付き合っていく」くらいの気の持ち方が、必要かもしれません。 

 日常、気を付けて置きたいこと!

□過労や睡眠不足に注意する

□ストレスをため込まない

 夜はなるべく12時前に寝て、リズム感のある規則正しい生活を送りたいもの  

 です。一度かかってしまっても、睡眠を十分にとって体を休め、ストレスをた 

 め込まないように心掛ければ、再発を防ぐことができます。

 さらに、

□バランスのとれた食事をする

□タバコは禁物、アルコールはほどほどに

□週1回はスポーツで汗を流すなど、気分転換を図る

■薬物による対症療法■

 残念ながら、メニエール病の根本的な治療法は、見付かっていません。基本は、発作時にその症状を抑えるための薬物による対症療法になります。

 発作を起こしている時には、まず、めまいを止める薬を点滴します。落ち着いたら、内リンパ液を減らす薬を点滴。それで聴力が回復したなら、メニエール病であることがはっきりするので、ステロイド中心の薬による治療が行われます。

 具体的には、循環改善剤、血管拡張剤、ビタミン剤、利尿剤などが使われ、末梢血管の血行をよくしたり、体内の余分な水分を排出することで、内リンパ水腫の状態を緩和します。また、発作時には、鎮痛剤を使用することもあります。

 薬で症状が改善せず、頻繁に再発を繰り返す場合は、内耳の過剰なリンパ液を取り除くなどの手術も行われますが、メニエール病は症状の現れ方や程度にかなり個人差があります。

 最近は、「めまい外来」という診療窓口も出てきていますので、専門医に相談しながら、自分に合った治療法を根気よく見付けていくことが大切です。

■メニエール病と紛らわしい病気■

●聴神経腫瘍(しゅよう)

 聴神経に発生する良性腫瘍で、耳鳴り、聴力低下、顔面の感覚異常などの症状があります。進行すると、ふらついたり、立ちくらみのめまいを起こします。

 対処法としては、腫瘍が脳のほうへ広がる前に、手術をしなければなりません。

●小脳の障害

 回転性のめまいに加えて、ふらつく、ろれつが回らない、物が二重に見える、などの症状があります。

 とりわけ、小脳出血は危険です。回転性のめまい、激しい頭痛、嘔吐が特徴で、麻痺(まひ)を伴う場合もありますから、緊急に神経内科や脳神経外科に行く必要があります。

🇪🇸メネトリエ病

胃の粘膜がはれて、肥厚し、巨大なひだを形成する疾患

メネトリエ病とは、胃の粘膜がはれて、肥厚し、巨大なひだを形成する疾患。巨大肥厚性胃炎、胃巨大皺襞(しゅうへき)症、胃粘膜肥厚症とも呼ばれます。

肥厚した粘膜から、血液の蛋白(たんぱく)質が漏れるために、低蛋白血症となることがあります。その結果、体にとって重要な栄養分である蛋白質濃度が低下して、初期では主に胃もたれ、上腹部痛、吐き気、嘔吐(おうと)、あるいは下痢などの消化器症状が現れます。無症状のこともあります。

進行すると、低蛋白血症のために貧血や、疲れやすい、食欲の低下、体重の減少、全身がむくむなどの症状が出てきます。さらに進行すると、胃液を分泌する胃腺(せん)が委縮し、塩酸とも呼ばれる胃酸、および酸性条件下で活性化する蛋白分解酵素のペプシンの分泌が減少し、食べ物を消化するために胃で分泌される胃液の量が少ない低酸症、あるいは胃液から胃酸が消失する無酸症が起こります。

胃がんのリスクが高くなる可能性があり、メネトリエ病の発症者の約10パーセントが数年後に、胃がんを発症します。

まれに小児にもメネトリエ病が起こることがありますが、一般的には中年以降の男性に多く発症します。

成人例では、免疫反応の異常が原因だと考えられているほか、グラム陰性菌のヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)感染とも関連があるといわれています。小児例では、ヒトヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルス感染との関連があるとされています。

メネトリエ病は、無症状のまま健診などで偶然に発見されることも多い疾患です。消化器症状や、疲れやすさなどがあったら、消化器科、消化器内科、内科を受診しましょう。

メネトリエ病の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科の医師による診断では、胃内視鏡検査が最も重要で、胃粘膜の巨大な肥厚が観察されます。また、胃内視鏡検査の時に胃の粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、胃粘膜の最も表層にある被蓋(ひがい)上皮細胞(粘液産生細胞)の過形成とともに、固有胃腺の委縮が認められます。生検を行うと、原因となるヘリコバクター・ピロリがいるかどうかを確認することもできます。

さらに、血液検査で低蛋白血症があれば、その検査を進めます。また、胃液検査により低酸または無酸を確認します。

メネトリエ病と区別すべき疾患としては、胃がんや胃リンパ腫(しゅ)が最も重要です。

消化器科、消化器内科、内科の医師による治療では、消化器症状がみられるようであれば、胃の中に放出された胃酸(塩酸)を中和する制酸剤や、胃酸の分泌を減少させる抗コリン剤(自律神経遮断薬)、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)、プロトンポンプ阻害薬などを使用します。食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

低蛋白血症に対しては、高カロリー高蛋白食を数回に分けて摂取するようにします。食欲不振などにより摂取が不十分な場合は、高カロリー輸液などの栄養療法を行います。

ヘリコバクター・ピロリやサイトメガロウイルスが感染した場合は、それぞれの治療を行います。

ヘリコバクター・ピロリに対しては、2~3種類の抗生物質(抗菌剤)を同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。低蛋白血症ばかりでなく、胃粘膜の巨大な肥厚も改善し、完全に治ることもあります。

これらの内科的治療が無効な場合で、肥厚した胃粘膜からの蛋白漏出の程度が強い場合は、外科的治療として胃の部分切除術または胃全摘術が行われます。

🇮🇩メラノーマ

メラニンを作り出す皮膚細胞から発生するがん

メラノーマとは、メラニンを作り出す皮膚細胞(メラニン細胞、メラノサイト)から発生するがん。悪性黒色腫(しゅ)とも呼ばれ、俗に、ほくろのがんと呼ばれることもあります。

メラニン細胞は、色素を作り、皮膚の色を決める色素細胞です。日光がメラニン細胞を刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られて、メラノーマを発生するリスクが高まります。

メラノーマは最初、正常な皮膚に新しくできた小さな濃い色の皮膚の増殖性変化として現れます。多くの場合、日光にさらされる皮膚にできますが、もともとあったほくろに発生する場合もあります。体のほかの部位に非常に転移しやすく、転移した部位でも増殖を続けて組織を破壊します。また、メラノーマは遺伝することがあります。

日本でのメラノーマの発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。

日本でのメラノーマによる死亡者は、年間約450人。40歳以上になると発症が多くなり、60~70歳代が最も多くなっています。男女差はありません。

メラノーマの外観は、さまざまです。平らで不規則な形の茶色の皮疹(ひしん)の中に黒い小さな点がある場合もあれば、盛り上がった茶色の皮疹の中に赤、白、黒、青などさまざまな色の点があるものもあります。黒か灰色の硬い塊ができることもあります。

その外観や色などによって、いくつかのタイプに分類されています。悪性黒子型は高齢者の顔などの露出部に色素斑が発生するタイプ、表在拡大型はやや盛り上がった不整型の色素斑が発生するタイプ、結節型は盛り上がるタイプ、末端黒子型は手や足から発生するタイプ、粘膜型は口腔(こうくう)や陰部などの粘膜に発生するタイプ、またメラニン欠乏性は色素を持たないので発見されにくいタイプです。

このようにいろいろなタイプがあるものの、それぞれに対応したよく似た良性腫瘍(しゅよう)が多数存在しています。悪性か良性かを一応判別する目安として、足の裏などのほくろの場合、一般に大きさが5ミリ以下であればほとんど心配はないが、7ミリ以上では要注意と考えられます。さらに、皮疹が数カ月以内に急速に大きくなったり、出血するようになったり、色調に異変などが認められた場合は、悪性化の兆候の可能性があるので、皮膚科の専門医を受診します。

メラノーマの検査と診断と治療

皮膚科の医師による診断では、メラノーマが疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もしメラノーマだった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。

一方、メラノーマの周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診で診断する医師もいます。

医師による治療は原則的に、メラノーマの部位を外科手術によって円形に切除します。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまでメラノーマが侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅いメラノーマであれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入しているメラノーマの場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移したメラノーマは致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。

とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえメラノーマが転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。

一度メラノーマを発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科で検査を受けるべきです。ほくろが多い人も、全身のほくろの検査を年に1回は受けるほうがよいでしょう。

メラノーマをはじめ、その他の皮膚がんの発生数も年々増加傾向にあり、今まで紫外線に対する防御対策をしてこなかったことが増加の一因であると考えられます。海水浴やスポーツ、仕事などで長時間、過度の紫外線を受ける場合は、皮膚を紫外線から防御することが非常に大切です。日焼け止めクリームの使用、帽子や日傘の使用、長袖(ながそで)で腕を覆うなどの予防策があります。

2022/07/16

🇦🇩メルカーソン・ローゼンタール症候群

口唇のはれ上がり、溝状舌、顔面神経まひの3つを特徴とする疾患

メルカーソン・ローゼンタール症候群とは、口唇が大きくはれ上がる肉芽腫(にくげしゅ)性口唇炎、舌の表面に多数の溝(みぞ)ができる溝状舌(こうじょうぜつ)、顔面神経まひという3つの症状が特徴の疾患。

1928年にスウェーデンの神経科医のE・メルカーソンが口唇のはれ上がりと再発性顔面神経まひのある疾患を報告し、その後、C・ローゼンタールが遺伝的素因と溝状舌を加えました。これらを含めたのが、メルカーソン・ローゼンタール症候群です。

3つの症状が特徴ですが、発症時に3つの症状がすべて現れることはまれです。口唇のはれ上がりには、痛みを伴いませんが、顔面神経まひの影響で表情が変化します。口唇のはれ上がりのほか、頬(ほお)、眼瞼(がんけん)、前額にも、はれ上がりや紅潮の病変が生じることがあります。顔面神経まひは再発性で、片側だけに起こることも多く、末梢(まっしょう)型です。

病変の強さはさまざまで、症状は慢性的に経過します。口唇のはれ上がりは数日で元通りになりますが、何回も再発を繰り返すうちに、徐々に弾性のある硬いはれ上がりとなっていきます。

メルカーソン・ローゼンタール症候群が引き起こされる原因としては、主に口腔(こうくう)内に存在する虫歯が悪化することが挙げられています。虫歯が悪化し口腔内の神経に影響を及ぼすことで、発症するケースが多くなっています。歯科治療のための歯冠や矯正具の金属にアレルギーを起こして、発症するケースもあります。

また、鼻や副鼻腔の疾患が悪化することでも発症するリスクが存在しており、歯周炎や鼻炎、扁桃(へんとう)炎など口や鼻の疾患によっても症状が引き起こされています。

メルカーソン・ローゼンタール症候群の検査と診断と治療

歯科口腔外科、口腔内科などの医師による診断では、膨張した口唇から組織の一部を採取し顕微鏡で調べる生検を行います。
 そのほか、慢性の病巣感染の有無についての検査や、歯科金属貼付(ちょうふ)試験なども行います。また、血液検査などによって、ビタミン欠乏などの状態も調べます。

歯科口腔外科、口腔内科などの医師による治療では、虫歯や歯周炎、鼻炎、扁桃炎などが原因である場合は、その治療を行います。

顔面神経まひによって顔のはれ上がりが再三にわたって起こる場合は、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)の内服、ないし局所注射を行います。

歯科金属貼付試験で陽性を示した場合は、歯科治療のための金属を速やかに除去します。対症療法的に抗ヒスタミン薬の内服を行うこともあります。

舌の表面に多数の溝ができる溝状舌を生じている場合には、清潔にするために舌ブラシなどを使い舌苔(ぜったい)を取り除きます。舌苔を取り除いてもすぐに復活してしまう場合には、洗浄液を用いて口腔内にいる細菌を除去し、舌苔だけでなく雑菌も除去しておきます。

舌ブラシで舌苔を除去する時は軽くこすることが大切で、舌の表面に負担をかけないようにします。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...