口唇のはれ上がり、溝状舌、顔面神経まひの3つを特徴とする疾患
メルカーソン・ローゼンタール症候群とは、口唇が大きくはれ上がる肉芽腫(にくげしゅ)性口唇炎、舌の表面に多数の溝(みぞ)ができる溝状舌(こうじょうぜつ)、顔面神経まひという3つの症状が特徴の疾患。
1928年にスウェーデンの神経科医のE・メルカーソンが口唇のはれ上がりと再発性顔面神経まひのある疾患を報告し、その後、C・ローゼンタールが遺伝的素因と溝状舌を加えました。これらを含めたのが、メルカーソン・ローゼンタール症候群です。
3つの症状が特徴ですが、発症時に3つの症状がすべて現れることはまれです。口唇のはれ上がりには、痛みを伴いませんが、顔面神経まひの影響で表情が変化します。口唇のはれ上がりのほか、頬(ほお)、眼瞼(がんけん)、前額にも、はれ上がりや紅潮の病変が生じることがあります。顔面神経まひは再発性で、片側だけに起こることも多く、末梢(まっしょう)型です。
病変の強さはさまざまで、症状は慢性的に経過します。口唇のはれ上がりは数日で元通りになりますが、何回も再発を繰り返すうちに、徐々に弾性のある硬いはれ上がりとなっていきます。
メルカーソン・ローゼンタール症候群が引き起こされる原因としては、主に口腔(こうくう)内に存在する虫歯が悪化することが挙げられています。虫歯が悪化し口腔内の神経に影響を及ぼすことで、発症するケースが多くなっています。歯科治療のための歯冠や矯正具の金属にアレルギーを起こして、発症するケースもあります。
また、鼻や副鼻腔の疾患が悪化することでも発症するリスクが存在しており、歯周炎や鼻炎、扁桃(へんとう)炎など口や鼻の疾患によっても症状が引き起こされています。
メルカーソン・ローゼンタール症候群の検査と診断と治療
歯科口腔外科、口腔内科などの医師による診断では、膨張した口唇から組織の一部を採取し顕微鏡で調べる生検を行います。
そのほか、慢性の病巣感染の有無についての検査や、歯科金属貼付(ちょうふ)試験なども行います。また、血液検査などによって、ビタミン欠乏などの状態も調べます。
歯科口腔外科、口腔内科などの医師による治療では、虫歯や歯周炎、鼻炎、扁桃炎などが原因である場合は、その治療を行います。
顔面神経まひによって顔のはれ上がりが再三にわたって起こる場合は、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)の内服、ないし局所注射を行います。
歯科金属貼付試験で陽性を示した場合は、歯科治療のための金属を速やかに除去します。対症療法的に抗ヒスタミン薬の内服を行うこともあります。
舌の表面に多数の溝ができる溝状舌を生じている場合には、清潔にするために舌ブラシなどを使い舌苔(ぜったい)を取り除きます。舌苔を取り除いてもすぐに復活してしまう場合には、洗浄液を用いて口腔内にいる細菌を除去し、舌苔だけでなく雑菌も除去しておきます。
舌ブラシで舌苔を除去する時は軽くこすることが大切で、舌の表面に負担をかけないようにします。
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