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2022/07/10

🤞レイノー病

手足の指が変色し、しびれや痛みを感じる疾患

レイノー病とは、寒冷刺激や精神的ストレスに反応して、手や足の指が真っ白になったり、青紫色になったりし、しびれ、冷感、痛みなどの症状を伴う疾患。虚弱体質で比較的若い女性に多くみられ、左右対称に現れるのが特徴です。

冷たい水に触る、冷気に触れるなどの寒冷刺激、精神的ストレスなどを受けると、指の先の細い動脈が過敏に反応、収縮して血液が滞るために起こります。なぜ細い動脈に過敏な発作が生じるのかは不明ですが、交感神経や副交感神経中枢の異常によると考えられています。

こういうレイノー症状が、膠原(こうげん)病の人や、振動工具を使って作業をした人に起きることもあります。こちらはレイノー症候群といって、レイノー病と区別しています。

レイノー病の症状は秋から冬に多くみられ、突発的に手の指が真っ白になり、次いでチアノーゼのように青紫色に変色し、通常10〜30分の経過で肌色に戻って正常に回復します。中には、白い変色のみを示したり、しびれ、冷感、痛みを左右の手に示す場合もあります。進行すると、足の指や口唇などにも症状が現れるようになります。重症な場合、指先の潰瘍(かいよう)や変形を起こすことがまれにあります。

レイノー病の検査と診断と治療

医師による診断では、症状からレイノー病を考えます。次いで、血液検査や血管造影により、膠原病や血管疾患などの基礎疾患を除外するための検査を行います。冷水に手を入れる冷水誘発試験や指尖(しせん)容積脈波・サーモグラフィーを行うこともあります。皮膚の色調変化が左右対称に突然生じ、ほかに原因と考えられる疾患がない時に、レイノー病と確定します。

細い動脈に過敏な発作が生じる原因がわからないので、根本的な治療法はありません。薬物療法としては、さまざま種類の血管拡張剤を用います。重症の場合には、交感神経切除術が行われます。β(ベータ)遮断薬や経口避妊薬の使用は避けます。

発作時以外には臨床的な問題はありませんが、症状の繰り返しを避けて悪化させないようにするには、手袋や靴下などで手足の保温を心掛け、寒冷刺激を避けます。また、たばこnter、香辛料、コーヒー、紅茶などの刺激物も控えます。精神的ストレスをためない注意も必要です。

一般的に予後は良好ながら、医師と相談しながら経過を追っていくことも必要です。当初は原因となる基礎疾患が不明であっても、数年後に膠原病などの疾患が明らかになることもあるからです。

👁レーベル先天性黒内障

生後早期から強い視覚障害がある先天性の疾患

レーベル先天性黒内障とは、生後早期から強い視覚障害がある先天性の疾患。レーバー先天性黒内障とも呼ばれます。

1869年にレーベルが初めて報告しました。黒内障とは、見た目には眼球に異常がないのに、目が見えないことを表した古い言葉です。レーベル先天性黒内障の大部分は、遺伝子の異常によって起こる常染色体劣性遺伝の疾患であると考えられており、現在までに複数の原因遺伝子が見付かっています。

常染色体劣性遺伝の仕方は、両親に同じ疾患が認められず、兄弟姉妹に同じ疾患の人がいる場合に疑われます。両親が血族結婚であったり、同じ地域の出身同士、親戚同士であったりすると、可能性が高くなります。父親由来の遺伝子と母親由来の遺伝子がありますが、常染色体劣性遺伝の仕方をとる場合は片方の変化だけでは発症せず、レーベル先天性黒内障を起こす遺伝子の同じ変化を両親からそれぞれ受け取ると発症します。

レーベル先天性黒内障は、8万人から10万人に1人くらいの頻度で発症するといわれています。遺伝子の異常による代謝障害のために、網膜などが委縮、変性するのが原因です。

時に白内障や円錐(えんすい)角膜の疾患を合併していることもありますが、見た目には眼球の異常が明らかでないことがほとんどです。しかし、色調の暗い眼底、網膜色素が沈着している眼底、黄斑(おうはん)変性を伴う眼底が認められることもあります。

生後2〜3カ月以内より重い視覚障害を示し、普通は両眼性です。視力は0・1未満で、時に遠視や近視、乱視の強い屈折障害を示して、視線が合わず、黒目が振り子のように動き続ける振子様眼振(がんしん)がみられ、光を受けた時に瞳孔(どうこう)が小さくなる対光反射が弱いか、消失しているために、光をまぶしがります。失明を起こすこともあります。

また、目を指で強く押したり、こすったり、たたいたり、枕(まくら)や机に押し付けたりする行為を好む場合もあります。眼球周囲の脂肪組織が少ないために、眼球が落ちくぼんで見えることもあります。

そのほか、精神発達遅滞、てんかん、難聴、腎臟(じんぞう)病、肝臓の機能障害など、複数の合併症を抱えていることもあれば、体の合併症が全くないこともあります。

レーベル先天性黒内障の検査と診断と治療

小児眼科、あるいは眼科の医師による診断では、問診と眼底検査を行いますが、眼底にも目立った異常が見られないことがあります。確実な診断をするためには、眼底の網膜の生体電気を調べる網膜電図という検査を行います。ただし、この検査を小さい子供に行っている医療機関は限られていますので、まずは近くの眼科医に相談して下さい。

小児眼科、あるいは眼科の医師による治療では、明らかな有効性が確認された治療法は見付かっていないので、遠視などの屈折障害を矯正する眼鏡や遮光眼鏡をかけて、少しでも視力を伸ばすようにします。また、目を指で強く押したり、こすったり、たたいたり、枕や机に押し付けたりする行為は、白内障や網膜剥離(はくり)の原因になり、将来の治療の可能性を奪ってしまうことになるので、ゴーグルなどで防ぐようにします。

遺伝子変異が見付かった患者に対し、2007年に英国と米国で、片目に光を感受する色素を作るための酵素をつかさどる遺伝子を入れる遺伝子治療が実施され、治療前に比べ治療後に視機能が改善していることが 2008年に報告されました。

米国のペンシルベニア大学医学部が実施した遺伝子治療は、8歳から44歳までのレーベル先天性黒内障で失明しつつある患者12人に対して、遺伝子操作で無毒化した風邪ウイルスに矯正遺伝子を入れ、視力の弱いほうの眼球に注入するというもの。眼球に注入された改変ウイルスは視力障害の原因となっている細胞に感染し、いわばコンピューターウイルスの「トロイの木馬」に似た働きで、正常な遺伝子を網膜に伝達しました。 

その結果、完ぺきに正常な視力を回復できた患者はいませんでしたが、光が目に入った時の瞳孔の収縮度を示す対光反射に関しては、全員が100倍以上増加しました。また、半数の6人は、法的には視覚障害者に分類されないレベルまで、視力が回復したといいます。最も著しい回復がみられたのは、8歳、9歳、10歳、11歳の子供の患者で、薄明かりの通路を4人とも介添えなしに歩行することができたといいます。

👁レーベル病

比較的急激な視力低下で始まり、視神経が委縮する遺伝性視神経症

レーベル病とは、片目また両目の比較的急激な視カ低下で始まる遺伝性視神経症。レーベル遺伝性視神経症とも呼ばれます。

主として、青年から中年の男性に多くみられます。母系遺伝を示す遺伝病であり、ミトコンドリアDNAの塩基配列に点突然変異が起こり、酸化的リン酸化効率の低下により、同一家系内で発症することがあります。誘因として、多量のアルコールや、たばこの摂取、糖尿病、頭部外傷などの環境因子が関与します。特発性視神経炎が発症の契機となることもあります。

症状としては、片目また両目に、急性または亜急性の視力低下が起こり、視野の中心部分が欠ける中心暗点を伴います。その後、数カ月の間に、眼底にある視神経乳頭の耳側より委縮が徐々に始まり、1年以内に視神経全体が委縮に至ります。最終的には、視野の中心部分が強く欠ける中心暗点となって、多くの場合は視力は0.1以下となります。

レーベル病の検査と診断と治療

レーベル病の検査 としては、蛍光眼底造影、視力検査、視野検査、画像検査、電気生理学的検査、心電図検査、遺伝子検査が行われます。

レーベル病の急性期では、通常両目に異常が認められ、視神経乳頭は発赤、腫張(しゅちょう)し、血管は著しく拡張しています。委縮期では、視神経乳頭の耳側の蒼白(そうはく)化が進行し、血管の拡張はみられなくなります。

視神経乳頭の変異、比較的急激な視力低下、遺伝子解析による特異的なミトコンドリアDNAの変異が確認されれば、レーベル病と診断できます。

明らかな有効性が確認された治療法はないので、ビタミン剤、循環拡張剤などの処方が行われます。副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の投与もされていますが、多くの場合は無効です。コエンザイムQ剤の投与も試みられていますが、有効性が確認されているわけではありません。

西洋医学では視力回復が難しいとされていますが、東洋医学の鍼灸(しんきゅう)治療では、視力がかなり回復しているケースも報告されています。

生活上の注意点として、過度の喫煙、過度の飲酒を避けます。また、糖尿病や高血圧を合併した場合は、コントロールを十分によくすることが大切です。

🛀レジオネラ症

レジオネラ症とは、循環水を利用した風呂に入浴した際などに、レジオネラ・ニューモフィラ(Legionella pneumophila)に代表されるレジオネラ属菌に汚染されたエアロゾル(小さな水滴)を、気道から吸入することで発病する感染症です。劇症型のレジオネラ肺炎と、一過性のポンティアック熱に大別されます。

レジオネラ属菌はもともと、土の中、河川、湖沼など自然界に広く生息している菌であり、温水タンク、給水塔、冷却塔などの人工環境においても、配水管のバイオフィルム(ぬめり)に生息するアメーバなどの微小生物に寄生し、増殖しています。20~50℃の水温で生育し、最も増殖に適した温度は36℃前後といわれています。

レジオネラ肺炎は発熱、呼吸困難、筋肉痛、下痢などの症状が出て、発症はまれでも、急激に重症化することが少なくありません。一方、ポンティアック熱は発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛などの症状が出ますが、一般に数日で自然に治ります。

高齢者、乳幼児、糖尿病患者、慢性呼吸器患者、免疫不全者などの抵抗力が低下している人や、健康な人でも疲労などで体力が落ちている人が発病しやすいといわれています。人から人へ感染することはありません。

国や地方公共団体の調査によると、公衆浴場、旅館などの入浴施設では、衛生管理が徹底していない循環式浴槽、循環浴槽水を利用した気泡発生装置付浴槽・ ジェット噴射装置付浴槽、打たせ湯、足湯、ビルなどの一般施設では、給水塔、冷却塔、給水・給湯設備などが、レジオネラ症の感染源として報告されています。

家庭においても、エアロゾルを発生させる24時間風呂や加湿器などの衛生管理を徹底しないと、感染源となることがあります。

😹レジューン症候群

5番染色体の短腕の一部分が欠損していることが原因で、引き起こされる重度の先天性障害

レジューン症候群とは、22対ある常染色体のうち、5番染色体の短腕(5p〔ごぴー〕)の一部分が欠損していることが原因で、引き起こされる重度の先天性障害。5pモノソミー、5p欠失症候群、5pー(まいなす)症候群、猫(ねこ)鳴き症候群とも呼ばれます。

常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、5番染色体の短腕の末端の一部分が欠損している状態が5pモノソミーに相当し、レジューン症候群を引き起こします。

5pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。

5pモノソミーから引き起こされるレジューン症候群の主な原因は、突然変異による5番染色体の変化が原因で、なぜ突然変異が起こるのかまではわかっていません。

まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が5番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。

レジューン症候群は、フランス人のジェローム・レジューンによって1963年に初めて発見されました。レジューンは、1959年にダウン症の原因を発見したことでよく知られる人物です。

レジューン症候群の新生児は、出生時に子猫の鳴き声のような甲高いニャーニャーという泣き声を発します。特有の泣き声は喉頭(こうとう)の変化が原因とされ、数週間継続して消失します。

新生児は子宮内発育不全のため低出生体重であり、医学的な症状としては重度の精神発達遅滞、小頭症、成長不全、筋緊張低下、両目の離れた円形の顔、眼瞼(がんけん)裂斜下、内眼角贅皮(ぜいひ)、外斜視、鼻根部偏平、耳介低位、副耳などが認められます。多指、心奇形、腎(じん)奇形、脊柱側湾などが認められることもあります。発語は3歳以降で、言葉の出ないこともあります。

身体的な合併症がみられる場合は、専門医による適切な治療が必要ですが、乳幼児期の頻繁な呼吸器感染症、筋緊張が弱いことによる便秘を除けば、おおむね健康に育っていき、多くが成人期まで生存します。

🛏レストレス・レッグス症候群

下肢を中心に不快な感覚、むずむずする運動が発生

レストレス・レッグス症候群(RLS:Restless legs syndrome)とは、夜間の睡眠時などに下肢を中心に不快な感覚が起こり、むずむずする不穏な運動を生じて、慢性的に寝付けない病状。むずむず脚症候群、下肢静止不能症候群とも呼ばれています。

調査によると、日本では人口の3~5パーセントにみられ、およそ130万人の発症者がいます。症状の軽い人も含めると、200万人近くになります。年代別と性別でいえば、40歳以上の中高年に多く、特に40~60歳の女性に多くみられます。不眠症の発症者の10人に1人の割合で、レストレス・レッグス症候群の人がいるともいわれています。

正確な原因は不明ですが、神経伝達物質であるドーパミンの機能低下、中枢神経における鉄分の不足による代謝の異常、脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経の異常、遺伝的な要素などが考えられています。 鉄欠乏性貧血、パーキンソン病、尿毒症、妊娠、糖尿病、痛風、結核、肝炎、肺炎、関節リウマチ、胃切除後の下肢静脈血栓などの状態にある人や、慢性腎(じん)不全で人工透析をしている人、抗うつ薬や抗精神病薬を服用している人などに多くみられます。

症状としては、足の裏、ふくらはぎ、太ももに、虫がはっているような感覚や、むずむず感、ほてり感などの不快な感覚が起こるために、じっとしていられません。横になっている時や座っている時などに起こり、多くは夕方から夜にかけて強くなります。立って歩いたり、脚を動かすと症状が治まったりして楽になるものの、じっとしていると再び症状が現れます。

症状が最も現れやすいのが、夜、寝床に入っている時です。最初は時々起こる程度ですが、悪化すると毎日起こるようになり、不眠症や日中の眠気の原因となります。次第に、夜だけでなく昼間でも、テレビを見ている時、会議の最中、電車での移動中など、座ってじっとしていると症状が起こるようになり、日常生活のあらゆる場面で支障を来すようになります。また、不快感が下肢だけでなく、腰から背中、腕、手など全身にまで広がることもあります。

このレストレス・レッグス症候群の診断は、国際RLS研究班が考案した診断基準に従って行います。以下の4つが、その必須項目です。

1、脚を動かしたいという強い欲求が、かゆみや痛みなどの不快な下肢の異常感覚に伴って生じる。2、その症状は、安静にして静かに横になったり座ったりしている状態で始まる、あるいはひどくなる 。3、その症状は、歩いたり脚を伸ばすなどの運動を続けている間は改善する、または治る。4、その症状は、日中より夕方から夜間にかけて強まる、または夕方から夜間のみに起こる。

なお、レストレス・レッグス症候群は、皮膚の乾燥によってかゆみを感じる乾皮症との区別が必要です。高齢になると、皮膚が乾燥してかゆみが起こりやすくなります。特に、空気が乾燥しやすい冬は、かゆみに悩まされる人が多くなります。こういう乾皮症によるかゆみは、皮膚の表面に起こるものです。通常、保湿剤を塗ってスキンケアしたり、室内の乾燥を防ぐなど、日常生活の中で注意することで改善します。

一方、レストレス・レッグス症候群でのむずむず感は、皮膚の表面ではなく、脚の内部に起こります。症状が重い場合には、脚の中に手を入れてかき回したいと表現されるほどです。

また、レストレス・レッグス症候群では多くの場合、周期性四肢運動障害を伴います。睡眠中に、片側または両側の足首から先が何かをける時のようにピクッと動き、この不随意な動きを1時間に15回以上繰り返すために眠れなくなる疾患です。

通常、20~30秒周期で脚の動きを繰り返します。悪化すると回数が増え、多い人では1時間に100回以上起こる場合もあります。脚が動いても、多くの場合本人は気付きませんが、脚がピクッと動くと、脳は目覚めてしまうので眠りが妨げられます。熟睡感が得られず、昼間に眠気が起こるようになります。

レストレス・レッグス症候群の検査と診断と治療

レストレス・レッグス症候群や周期性四肢運動障害で起こる不眠は、睡眠薬を服用しても解消されません。レストレス・レッグス症候群の場合は、睡眠障害を専門にしている医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。

一番の問題点は、医師による身体所見や検査で異常が認められず、レストレス・レッグス症候群と診断できずに、無駄な投薬治療と時間を費やすことがある点です。ドクターショッピングをする発症者がいることも、まれではありません。もし、近くに睡眠障害の専門医療機関がない場合は、精神科もしくは神経内科に相談してみましょう。

医師による診断では、1週間における脚の不快な感覚の程度や動き回りたい欲求の程度、睡眠の障害や日中の疲労感、眠気を聞くことにより重症度がわかり、治療効果の判定に活用されます。睡眠ポリグラフ検査を行うと、周期性四肢運動障害の合併が50〜80パーセントで認められます。その他、MRI(機能性磁気共鳴画像装置)を利用した検査を行い、診断します。

レストレス・レッグス症候群の治療は、原因となる疾患がある場合にはその治療と、症状を抑えて不眠を改善することが基本になります。軽症の場合、多くは日常生活の改善で解消されます。症状が強い場合は、薬による治療を行います。

薬で主に使われるのは、パーキンソン病の治療薬であるカルビドパ/レボドパ合剤(メネシット)。脳神経に指令を伝えるドーパミンの働きを改善する薬で、パーキンソン病の治療で使うよりも少ない量を服用します。

十分な効果が得られない場合は、抗てんかん薬であるクロナゼパム(リボトリール、ランドセン)やバルプロ酸をさらに用いることもあります。また、鉄分不足が原因となっていると考えられる場合には、鉄分を補充するための鉄剤を使います。これらの薬物療法で、9割以上の人に症状の改善がみられます。

睡眠導入剤や抗うつ薬を用いると、むずむず感が解消されないまま眠気だけがどんどん増し、かえって症状を悪化させる可能性があるため、一般には処方されません。

日常生活の改善としては、カフェインは脚の不快感を強くしたり、眠りを浅くすることがあるので、コーヒーや紅茶などの摂取を制限します。たばこに含まれるニコチン、アルコールも同様ですので、特に症状が現れやすくなる夕方以降は摂取を控えるようにします。

起床時と就寝前に、ストレッチやヨガなどの軽い運動やマッサージをすれば、症状が治まります。ただし、体を激しく動かすスポーツなどを行うと、その反動が夜寝てから現れて、かえって症状が悪化してしまいますので、注意が必要となります。症状の軽い人なら、ウォーキング程度で十分で、自転車やエアロバイクも太ももやふくらはぎの筋肉を使うので同様の効果が期待できます。

💨レッグ・カルベ・ペルテス病

主に4~8歳ごろの男の子の股関節に起こり、足の引きずり、痛みが生じる疾患

レッグ・カルベ・ペルテス病とは、主に4~8歳ごろの男の子の股(こ)関節に起こる疾患。成長期の子供の成長軟骨に障害が起きる骨端症の一つです。

1910年に、アメリカのレッグ、フランスのカルベ、ドイツのペルテスという3名の医師が別々に報告し、正式にはレッグ・カルベ・ペルテス病と呼ばれますが、国によって呼び名が異なり、日本では慣用的にペルテス病とも呼ばれています。

ぶつけたり、歩きすぎたなどの特別な原因はないのに、歩く時に足を引きずったり、股(また)の付け根や太もも、時に膝(ひざ)を痛がります。引きずりや痛みは少し休むと取れますが、よく見ると太ももの筋肉がやせていたり、太ももを外側に倒したり、内側にひねる時に痛みを強く感じるために、あぐらがかけなかったりします。

股関節の血流不足によって、太ももの骨である大腿(だいたい)骨近位骨端部という、骨の頭が球形に成長する部位が崩れて、壊死(えし)するために起こります。血液の流れが悪くなる血行障害の原因については諸説ありますが、いまだは不明。

骨頭がどんどん崩れていきますが、ある時期を経て、血液の流れが再びよくなると骨のほうも修復してきます。2〜3年以内に、壊死した骨が吸収された新たな骨が形成され、元のように回復します。

ただし、壊死が進行している間に股関節に体重をかけていると、骨頭に変形を残したまま治るので、できるだけ崩れが少なくすむように、一定期間体重を股関節にかけないでいることが必要となります。骨頭の変形を残すと将来、股関節の障害が出現し、40〜50歳以降には人工股関節置換術を余儀なくされます。

成長期の子供に足の引きずり、痛みの訴えがある場合は、整形外科などを受診し適切な経過観察や治療を受けるべきです。

レッグ・カルベ・ペルテス病の検査と診断と治療

整形外科、ないし形成外科の医師による診断では、壊死範囲や修復の程度を評価するために、X線(レントゲン)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行います。

レッグ・カルベ・ペルテス病は両側の股関節に発症することもありますが、この場合でも両側同時に起こるわけではなく、左右でX線画像が異なります。このことが鑑別診断の際に重要です。

鑑別が必要な疾患には、骨端異形成症などの骨系統疾患、マイヤー病、血友病などの血液疾患による骨頭の変化、甲状腺(せん)機能低下症に伴う骨頭変形など多数の疾患があります。

整形外科、ないし形成外科の医師による治療では、痛みの程度、足の引きずり具合など数年にわたる観察が必要で、年齢と壊死した範囲によって治療方法は変わります。

5歳以下で発症したものは、放っておいても訴えは軽く、骨もきれいに修復されるので経過をみます。骨頭の崩れた範囲が2分の1から3分の1以下の時も、何もせずに経過をみます。それ以上崩れた時は、骨頭を保護しながら、骨頭が球形に矯正されるのを待ちます。

骨頭を保護する方法には、装具の装着と手術があります。装具にはいろいろな種類がありますが、装具は一度つけると生活が不自由で、何年もつけなければなりません。

手術では、大腿骨を骨頭近くで切って、骨頭が関節の中に納まるように骨の角度を整えます。骨がつくまでの間は運動が制限されますが、それ以後は元の生活に戻れます。治療成績は手術療法が圧倒的に良好であり、股関節の良好な可動性が維持されます。

骨頭の崩れた範囲が広い場合や、8歳以上で発症した場合は、適切な治療を行っても骨頭の最終的な形が球形に矯正されにくくなります。同年齢での発症では、骨成熟までの年数が少ない女の子のほうが球形に治りにくい傾向にあります。

☮裂肛(切れ痔)

肛門部の皮膚の外傷で、強い痛みがあるのが特徴

裂肛(れっこう)とは、肛門部の皮膚が切れたり裂けたりした外傷で、ひりひりとした強い痛みがあるのを特徴とする痔疾。一般的には、切れ痔(じ)とも呼ばれます。

肛門周辺の疾患の総称である痔は、虫歯に次ぐ第2位の国民病といわれており、その症状には成人の3人に1人が悩んでいるとされています。痔には大きく分けて3種類、痔核(いぼ痔)、この裂肛(切れ痔)、痔瘻(じろう:あな痔)があります。痔核が最も多く、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

裂肛は、便秘している硬い大便が肛門を無理に通過する際に、肛門管の粘膜面が傷付いて出現します。具体的には、肛門上皮の出口である肛門縁から約2センチ奥にあって、肛門上皮と直腸粘膜の境界部分である歯状線よりやや前にある肛門上皮が傷付きます。ここは普通の皮膚より薄いため、硬い便によって切れたり裂けたりしやすいのです。

放置して慢性化すると、大腸菌などの感染によって傷は深くなり、内括約筋を含めて硬くなって、肛門は狭くなります。そのためますます便が出にくく、傷も治りにくくなり、排便後、強い肛門痛が起こります。ひどくなると、数時間から半日以上続きます。

そのため、肛門上皮の側と直腸粘膜の側に、いぼ状の突起ができたり、小さな潰瘍(かいよう)ができたりします。裂肛の肛門上皮の側にあるいぼは、直腸粘膜の側にも裂肛があることを示すので、見張りいぼといわれます。まれに出血することもあるものの、トイレットペーパーでふいた時に少量の鮮血が付着する程度です。

裂肛は普通、肛門の後ろにできますが、女性では前にもできます。

裂肛の検査と診断と治療

裂肛(切れ痔)などの痔では、何が原因で起こっているのかを見極めることが大切になります。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えていますので、ほかの疾患が隠れていないのかどうかを確認するためにも、肛門科の専門医を受診します。

どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

医師による治療では、出血や痛み、はれに対して座薬や軟こうを局所に用います。消炎剤の服用も、時に痛みやはれなどに効果があります。便を軟らかくすることを目的に、弱い下剤である緩下剤、軟便剤を服用することもあります。医師が薬を使うのは、痛みや出血、はれを和らげるほかに、肛門内を薬の膜で覆って、排便時の刺激を減らす目的もあります。

初期のうちの裂肛は、薬と排便の調整によって、たいてい治ります。裂肛の治療中は、排便後に入浴するなどして、肛門周辺を清潔にしておくことが望まれます。

薬と排便調整による保存療法を行っても、効果や改善がみられないケース、肛門が狭かったり潰瘍ができて進行したケース、再発を繰り返すケースでは、手術ということになります。とはいえ、なるべく手術をしないで治すのが医師側の主流となっており、最近では炭酸ガスレーザーによる、切らない手術で裂肛を治療している施設もあります。

手術でも、単純なものは内括約筋をわずかに切開するだけです。複雑なものは潰瘍とその周囲の組織を取り除き、近くの皮膚をずらして覆います。

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。裂肛は、悪化させない生活習慣が大切です。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、裂肛を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。食物繊維を多く取るなど、食事を見直すことも大切。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分にとり、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫を。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。

🤏裂手症

手の中央部分の指が欠損して、指間にV字状の切れ込みが生じ、手指が2つに裂けたような外観を示す疾患

裂手(れっしゅ)症とは、手の先天異常で、手の中指(第3指)が欠損して、指間(指の股〔また〕)にV字状の切れ込みが生じ、手指が2つに裂けたような外観を示す疾患。

中指の欠損に、人差し指(第2指)や薬指(第4指)の発育不全を伴うこともあります。重症になると、人差し指、中指、薬指の3指が欠損したり、隣り合う2つの手指がくっ付く合指症や、手指の数が6本以上となる多指症を合併します。両手の手指に生じたり、足指の欠損が生じる裂足症を合併することもあります。

出生2万人に対し1人の頻度で裂手症は生じ、男児に多くみられます。優性遺伝が認められる場合もあります。

形成障害(発育停止)に分類されるものの、しばしば合指症を合併することから、分化障害(分離不全)に近い状態と考えられています。

単独でみられるほか、EEC症候群(裂手裂足・外胚葉異形成・口唇口蓋裂症候群)などの先天奇形症候群の症状の一部としてみられることもあります。

中指などが欠損しても、機能的にはよく保たれていることが多く、ほかの手指を開いたり、ほかの手指で物をつかんだりすることは可能です。

生後すぐ、裂手症は産科で気付かれることが多いため、手指以外に内臓疾患の合併がないか、小児科でも診てもらうことが勧められます。また、整形外科などでも診てもらい、美容的、機能的な観点から手術を行うべきかどうか相談することが勧められます。

裂手症の検査と診断と治療

整形外科、ないし形成外科、手の外科の医師による診断では、視診で容易に判断できますが、指骨の状態をみるためにX線(レントゲン)検査を行います。

整形外科、ないし形成外科、手の外科の医師による治療では、外見上の改善と手指の運動機能向上を目的に、手術を行うことが第1選択となります。

手術では一般的に、離れた手指を引き寄せ、指間の高さをそろえつつ、V字状の切れ込みを閉鎖ないし狭くします。手指の付け根の骨である中手骨(ちゅうしゅこつ)を切除し、移動することもあります。

親指(母指)と人差し指(示指)などの間に合指がある場合は、同時に、隣り合う2つの手指を分離し、指間を作る手術を行います。

裂手症では、機能を持つ手指の数を5本にすることはできません。V字状の切れ込みの形態を整え、少ない手指の数で形態的にバランスの取れた、役に立つ手にすることが手術の目標となり、手指の運動パターンが完成する前の2、3歳までに手術を行うのがよいと見なされています。

👣裂足症

足の中央部分の足指が欠損して、指間にV字状の切れ込みが生じ、足指が2つに裂けたような外観を示す疾患

裂足(れっそく)症とは、足の先天異常で、足の中指(第3指)が欠損して、指間(指の股〔また〕)にV字状の切れ込みが生じ、足指が2つに裂けたような外観を示す疾患。

中指の欠損に、人差し指(第2指)や薬指(第4指)の発育不全を伴うこともあります。重症になると、人差し指、中指、薬指の3指が欠損したり、隣り合う2つの足指がくっ付く合趾(し)症(合指症)や、足指の数が6本以上となる多趾症(多指症)を合併します。

両足の足指に生じたり、手の手指の欠損が生じる裂手症を合併することもあります。

出生2万人に対し1人の頻度で裂足症は生じ、男児に多くみられます。優性遺伝が認められる場合もあります。

形成障害(発育停止)に分類されるものの、しばしば合趾症を合併することから、分化障害(分離不全)に近い状態と考えられています。

単独でみられるほか、EEC症候群(裂手裂足・外胚葉異形成・口唇口蓋裂症候群)などの先天奇形症候群の症状の一部としてみられることもあります。

軽症では、普通の靴が履きにくい、あるいは履けないなどの支障がみられます。重症では、歩行困難などの機能障害がみられます。

生後すぐ、裂足症は産科で気付かれることが多いため、足指以外に内臓疾患の合併がないか、小児科でも診てもらうことが勧められます。また、整形外科などでも診てもらい、美容的、機能的な観点から手術を行うべきかどうか相談することが勧められます。

裂足症の検査と診断と治療

整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による診断では、視診で容易に判断できますが、趾骨の状態をみるためにX線(レントゲン)検査を行います。

整形外科、ないし形成外科、足の外科の医師による治療では、外見上の改善と足指の運動機能向上を目的に、手術を行うことが第1選択となります。

手術では一般的に、離れた足指を引き寄せ、指間の高さをそろえつつ、V字状の切れ込みを閉鎖ないし狭くします。普通の靴が履けずに困る場合は、足指の付け根の骨である中足骨(ちゅうそくこつ)を切除し、移動することもあります。

親指(第1指)と人差し指などの間に合趾がある場合は、同時に、隣り合う2つの足指を分離し、指間を作る手術を行います。

裂足症では、機能を持つ足指の数を5本にすることはできません。V字状の切れ込みの形態を整え、少ない足指の数で形態的にバランスの取れた、役に立つ足にすることが手術の目標となります。

☦レネグレ・レブ病

心臓の刺激伝導系の障害が進行性に出現し、心臓の拍動がゆっくりになる疾患

レネグレ・レブ病とは、心臓の刺激伝導系が徐々に障害されることにより、心房から心室に刺激が伝わらない、または刺激伝導が遅延する房室ブロックによって、心臓の拍動がゆっくりになる徐脈を来す疾患。

レネグレ病、進行性心臓伝導障害、進行性家族性心臓ブロック、PCCD(Progressive cardiac conduction defect)と呼ばれることもあります。

心臓の刺激伝導系は、心臓を収縮させるために必要な電気刺激を発生させ、伝える働きを持つ特殊な心筋。レネグレ・レブ病は遺伝性の疾患ですが、極めてまれで正確な発生頻度は明らかになっていません。

レネグレ・レブ病の症状は、若いころから発症し重症化するものから、徐々に進行していくものまで、経過はさまざまです。

軽症の場合は無症状ですが、心臓の刺激伝導系の障害が進行すると、脈が遅くなって、めまい、ふらつき、立ちくらみや失神などの症状がみられます。また、心房粗動や心房細動を合併することがあり、脳梗塞を起こすこともあります。時に、心室頻拍や心室細動などから突然死を来したり、心臓の機能が低下して心不全を来すこともあります。

レネグレ・レブ病の一部の発症者には、ラミン(LMNA) 、心筋ナトリウムチャネル(SCN5A)、コネキシン(Cx40)などいくつかの遺伝子異常が存在することが知られています。それらの詳しい病態メカニズムは、完全には解明されていません。

レネグレ・レブ病の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、レネグレ・レブ病は軽症なものから徐々に重症化していくものまでさまざまなので、個々に合わせて普通の心電図検査を中心に、胸部X線検査、血液検査、さらにホルター心電計、携帯型心電計、運動負荷検査、心臓超音波検査などを行います。

循環器科、循環器内科、心臓血管外科、心臓血管内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、心電図異常の一つでそのものが治療の対象となることは少ない脚(きゃく)ブロックが認められるだけで、伝導障害の程度が軽い場合は、定期的な経過観察を行います。

伝導障害が進行して房室ブロックが認められて、症状を伴う徐脈が出現した場合は、ペースメーカーの植え込み手術を行います。ペースメーカーは、遅くなった自分の脈の代わりに、心臓の外から電気刺激を与える装置。この装置の植え込み手術は、肩の皮膚の下に電気刺激を発する小さな電池と、その刺激を心臓に伝えるリード線を入れるだけですから、局所麻酔で簡単にすますことができます。

また、心室頻拍や心室細動が出現した場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術も考慮します。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置。

心不全が進行すれば、薬物療法や心臓再同期療法(CRT)を行うこともあります。心臓再同期療法は、特殊なペースメーカーを植え込むことによって、左心室と右心室に同時に電気刺激を加え、心室の動きを正常に戻す治療法。

なお、最近では、医療機関により、レネグレ・レブ病を含めた遺伝性不整脈疾患の遺伝子解析を実施しています。通常は採血10ミリリットル程度の血液で、主要な原因遺伝子の変異の有無の解析が可能で、予後を推測することもできるようになっています。

☪レノックスガストー症候群

幼少期に始まるてんかんの重症型

レノックスガストー症候群とは、通常、幼少期に始まるてんかんの重症型。レンノックス・ガストー症候群とも呼ばれます。

てんかんは、脳の神経細胞の伝達システムに一時的な機能異常が発生して、反復性の発作が起こる疾患です。発作時には意識障害がみられるのが普通ですが、動作の異常、けいれんなどだけの場合もあります。こうした異常な症状が長期間に渡って何度も繰り返し現れるのが、てんかんの特徴です。

レノックスガストー症候群は、てんかん性脳症の一つにも分類され、頻回に続く全般性の発作、激しい脳波異常、高率な知的機能の低下が特徴で、極めて治りにくいタイプのてんかん群に相当します。

全般性の発作は、いつも同じ1種類だけではなく、急に手足を突っ張るようにする強直けいれんを主体にして、意識だけがぼーっとする非定型欠神(けっしん)発作、手足をピクピクさせるミオクロニー発作、突然力が抜けて倒れる転倒(脱力)発作など、いろいろな形のけいれん発作がみられます。

脳波検査を行うと、遅い棘徐波結合(きょくじょはけつごう)など特徴的な波形が出現します。重篤な知的機能の低下を残すことも、少なくありません。

多くは3~5歳をピークに、2~8歳で発症しますが、成人になって発症することもあります。しかし、頻度の少ない、まれな疾患です。

レノックスガストー症候群の一部は、ウエスト症候群(点頭てんかん)などの他のてんかん性脳症から移行してきます。脳炎、脳症などの疾患の後遺症として起こることもあります。

このレノックスガストー症候群で生じる複数の発作の中でも、転倒発作が最も生活に支障を来します。前兆なく突然意識を消失し、全身の意識が抜けて激しく転倒するために、生傷が絶えず、頭の保護のためにしばしば保護帽を必要とします。

症状がある場合は、小児科、あるいは神経内科を受診します。

医師による診断では、脳波検査を最も重視します。てんかんは脳の神経細胞の電気的発射によって起きますので、この過剰な発射を脳波検査で記録することができます。診断のみでなく、てんかんの発作型の判定にも役立ちます。脳波検査のほかにも、CT検査やMRI検査などは、脳腫瘍(しゅよう)や脳外傷などを画像で確認できるため有効です。

医師による治療では、いろいろな抗けいれん薬が発作の症状を抑えるために使用されますが、レノックスガストー症候群ではけいれんが治まりにくいことが多く、部分的にしか成功していません。副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)を使用するホルモン療法が奏効することもあります。

発作を軽くするために、脳梁(のうりょう)離断術という手術を行うこともあります。全般性のてんかん発作では、短時間で異常波が対側の脳へ伝わり、その異常波が両方の脳で同期したてんかん波となるために、脳梁という場所が重要であると考えられています。そこで、転倒発作を防ぐためには、脳梁の部分で左右の脳の連絡を絶つ方法をとります。大人では脳梁を前から3分の2を部分的に切りますが、子供では脳梁をすべて切ります。

脳梁離断術は根治術ではなく緩和術であるため、発作すべてをなくすことはできません。しかし、発作の症状を減らすことによって、生活の質を向上させることが可能です。

♾レビー小体型認知症

運動障害や幻視も現れる認知症の一種

レビー小体型認知症とは、脳の神経細胞が委縮する変性性認知症の一種。変性性の認知症の中では、アルツハイマー型認知症に次いで多く、変性性認知症全体の約2割を占めるといわれるほど、比較的頻度の高い疾患です。以前は、びまん性レビー小体病と呼ばれていました。

高齢者に多くみられますが、40歳前後で発病する場合もあり、男性は女性より約2倍多いと見なされています。出現する症状に物忘れもあり、一見アルツハイマー型認知症に似ています。

レビー小体とはもともと、運動障害を主な症状とするパーキンソン病において、脳の下のほうにある脳幹を構成する中脳に現れる特殊な構造物(封入体)を指す言葉ですが、レビー小体型認知症を発症した人の脳では、この構造物が認知機能をつかさどる大脳皮質にも広く見られることから命名されました。

レビー小体型認知症の認知機能障害は、アルツハイマー型認知症とは異なる特徴がみられます。

アルツハイマー型認知症では特に初期において、比較的近い時期の記憶をとどめておくのが難しくなる物忘れの症状で始まることが多いのですが、レビー小体型認知症では、物忘れの症状ばかりではなく、初期より幻覚、特に幻視や、妄想が現れることがしばしばです。

幻視とは、実際には存在していないものがあるものとして生々しく見える症状で、「壁に虫がはっている」、「子供が枕元(まくらもと)に座っている」、「座敷で3人の子供たちが走り回っている」、「男たちがどかどか部屋に入り込んでくる」など、レビー小体型認知症では非常にリアルな幻視が比較的よくみられます。

「布団が人の姿に見える」といった錯視の症状も、しばしばみられます。これらの視覚性の認知障害は、暗くなると現れやすくなります。

また、日によって症状に変動がある上、日内変動も激しいのが特徴です。日によって症状が良かったり、悪かったり、一日の中でも一見全く穏やかな状態から無気力、興奮、錯乱状態を示すといった気分や態度の変動を繰り返したり、日中に惰眠をむさぼったりすることも認められます。

もう一つの大きな特徴は、病態が進行すると運動機能障害を伴う点。体が硬くなる、動作が遅くなる、小またで歩く、体のバランスが悪くなる、手が不器用になる、手足が震える、猫背になるなど、パーキンソン病に似た運動障害が出てきます。

このパーキンソン病の症状が出現してくる時点で、アルツハイマー型認知症ではなくレビー小体型認知症と気付かれる場合が少なくありません。

運動機能障害を伴うため、アルツハイマー型認知症の人と比べて、転倒の危険が高く、また寝たきりにもなりやすいといえます。

自律神経の機能障害を伴う点も、レビー小体型認知症の特徴です。便秘、尿失禁、血圧の調節障害、性的機能障害がみられますが、最も日常生活を阻害するのは起立性低血圧です。立ち上がった時に、血圧の大幅な低下がみられるのが起立性低血圧の症状で、ひどい場合には失神を起こすことがあります。これが原因で、立位歩行が困難になることもあります。

レビー小体型認知症の検査と診断と治療

レビー小体型認知症の診断は難しく、初期の段階でアルツハイマー型認知症と診断されたり、運動機能障害が出現した段階でパーキンソン病と診断されたりするほか、初期の段階でうつ症状が出てうつ病と診断されることもあります。

早期発見と適切な治療が進行を遅らせて、症状を和らげ、中には見違えるほど元気になる人もいる疾患ですので、専門医に相談することが大切です。

医師による診断では、脳血流検査が行われます。アルツハイマー病に似た特徴である頭頂葉・側頭葉の血流低下に加え、視覚に関連の深い後頭葉にも血流低下がみられると、レビー小体型認知症の判定基準の一つとなります。

治療では、認知機能障害などの精神症状に対する抗精神薬によるコントロール、運動機能障害に対する抗パーキンソン病薬によるコントロール、自律神経障害に対する血圧コントロールなどが行われます。

薬剤調節が難しく、注意が必要な場合があるのが、レビー小体型認知症の治療における特徴です。抗精神薬への反応が過敏である場合もあり、少量より時間をかけて試みることが必要とされます。また、抗精神薬は運動症状を悪化させる作用があるものが多く、逆に抗パーキンソン病薬は精神症状を悪化させることがあるため、個々の発症者の生活や介護がしやすいように薬をうまく調節することが必要とされます。

アルツハイマー型認知症の治療薬が効果的な場合もあり、通常量以下での投与が試みられることもあります。

2022/07/09

☦レプトスピラ病

病原性レプトスピラの感染によって起こる急性発熱性の感染症

レプトスピラ病とは、病原性レプトスピラの感染によって起こる急性発熱性の感染症。レプトスピラによる感染症を総称して、レプトスピラ病、ないしレプトスピラ症と呼びます。

レプトスピラは、螺旋(らせん)状の特殊な細菌の一群であるスピロヘータの一種です。レプトスピラの血清型の違いによってレプトスピラ病はいくつかの種類に分けられ、重症型のワイル病(黄疸〔おうだん〕出血性レプトスピラ病)を始め、軽症型の秋季レプトスピラ病やイヌ型レプトスピラ病などがあります。

病原性レプトスピラは、ネズミ、イヌ、ウシ、ウマ、ブタなどの保菌動物の腎臓(じんぞう)に保菌され、尿中に排出されます。人間には、保菌動物の尿で汚染された水や土壌から経皮的、経口的に感染します。人から人への感染はありません。

ドイツの医師ワイルにより、1886年に初めて報告され、日本の稲田龍吉、井戸泰両博士により、1915年に世界で初めて病原体が発見されました。

日本では古来より、秋疫(しゅうとう、あきやみ)、用水病、七日病(なのかびょう、なぬかやみ)と呼ばれる地方病として、農作業や土木従事者の間で発症し、1970年代前半までは年間50人以上の死亡が報告されていましたが、近年では感染者数、死亡者数とも激減しました。現在は沖縄県などで、散発性に発生するのみです。

2003年の感染症法の改正により、レプトスピラ病は4類感染症に位置付けられ、保健所への届出が必要になりました。それ以降4年間で93例の届出があり、うち87例の国内発症例の約半数が沖縄県での感染と推定されています。

国外では、現在でも全世界的にレプトスピラ病が流行しており、ブラジル、ニカラグアなどの中南米や、フィリピン、タイなどの東南アジアなど、熱帯、亜熱帯の国々での大流行が挙げられます。

病原性レプトスピラの種類によって、症状は軽症から重症までさまざまです。軽症型では、風邪のような症状だけで軽快します。

重症型の代表であるワイル病の主症状は、発熱、黄疸、出血傾向、腎障害、蛋白(たんぱく)尿などで、感染後3〜14日の潜伏期をへて悪寒を伴う発熱で発症します。ふくらはぎの筋肉痛、眼球結膜の充血が特徴的ですが、全身倦怠感(けんたいかん)、頭痛、腰痛などのさまざまな症状が現れます。発症して4~5日後に、黄疸や出血傾向が増強する場合もあります。進行すると、腎不全、心不全が起こる場合もあります。

ワイル病の感染の機会があり、ふくらはぎの筋肉痛や、眼球結膜の充血を伴う発熱が現れた場合には、早急に内科、消化器科を受診することが必要になります。

レプトスピラ病の検査と診断と治療

内科、消化器科の医師による診断では、症状とレプトスピラ病の流行地への旅行歴、保菌動物の尿に汚染された水への接触などが診断の助けとなります。

ワイル病では、発病初期から蛋白尿がみられ、血液検査で白血球数が増え、体の中の炎症反応を調べる検査であるCRP(C反応性蛋白)が陽性になります。確定診断には、血液、髄液、尿からの病原体の分離、血清診断、遺伝子増幅検査を行います。

内科、消化器科の医師による治療では、ワイル病の場合は抗生剤(抗生物質)を早期に投与します。感染早期ではペニシリン系、テトラサイクリン系など多くの抗生剤の効果が認められ、ストレプトマイシンが最も有効です。合併症では、その治療を行います。

ワイル病などのレプトスピラ病を予防する上では、中南米や東南アジアなど流行地域へ旅行した場合には、不用意に水の中に入らないことが重要です。特に洪水の後は、感染の危険性が高まります。

また、1999年夏に沖縄八重山地域において、観光ガイドやカヤックインストラクターなど、河川でのレジャー産業に従事する人たちの集団感染が報告されていますので、水辺のレジャーにも注意が必要です。海外では、トライアスロンなどのウオータースポーツによる集団感染も報告されています。

水田作業、土木工事、野外調査などを目的に海外の流行地域へ行く場合、可能なら感染症の予防に用いるワクチンを接種します。また、薬物による予防として、テトラサイクリン系に属する抗生剤であるドキシサイクリンの効果が報告されています。

🛏レム睡眠行動障害

夢の内容に反応して、異常行動が出現する睡眠障害

レム睡眠行動障害(RBD:Rapid Eye Movement Sleep Behavior Disorder)とは、睡眠中、夢体験と同じ行動をとってしまう疾患。発症者は多くの場合、夢の内容を覚えています。

健康な人であれば、浅い眠りの状態であるレム睡眠中には、骨格筋が脱力して動きません。しかし、レム睡眠行動障害では、夢の内容に反応して筋肉が動かないようにしている抑制機構が障害されるため、夢の中での行動がそのまま現実の行動となって現れてしまいます。

大声で寝言をいったり、腕を上げて何かを探す仕草をしたりします。症状が強い場合では、起き上がって歩き回る、壁を殴る、立ち上がった際に家具にぶつかって頭にけがを負う、窓から飛び出して骨折する、あるいは、ベッドパートナーに殴る、けるなどの暴力を振るってけがを負わせるなど、危険を伴うこともあります。

多くの場合、恐怖感を伴う悪夢に合わせて声を上げて暴れたり、何かと闘っているつもりで、暴力的な行為をしてしまいます。

人間は眠っている際、レム睡眠とノンレム睡眠という2つのタイプの睡眠を繰り返しています。レム睡眠は、体が深く眠っているにもかかわらず、脳が起きているような状態です。そのため、よく夢を見たり、眼球がキョロキョロ動いたりします。一方、ノンレム睡眠は、脳が眠っている状態です。夢はほとんど見ず、もし見たとしても覚えていないことが多いでしょう。

一般的には、入眠してから60~120分で、最初のレム睡眠が出現。その後、深い眠りのノンレム睡眠と浅い眠りのレム睡眠が、交互に現れて、1セット約90分で繰り返されます。

レム睡眠行動障害の発症は、50歳代以降の中高年の男性に集中しています。60歳代半ばごろが多く、80歳代でも発症します。

原因のわからない原発性のほか、頭部外傷、脳炎、髄膜炎など頭部の炎症性疾患、アルコールの摂取、睡眠の不足、抗うつ薬の服用など二次的要因によるものがあります。最近では、パーキンソン病、レビー小体病(レビー小体型認知症)、他系統委縮症などの神経疾患との関連が指摘され、これらの神経疾患の発症に先立ってレム睡眠行動障害がみられることもあるとされています。

手足を軽く動かす程度の軽症であればあまり問題にはなりませんが、自傷行為や暴力的な行為の症状がひどいようであれば、早めに睡眠科や精神科、神経内科などを受診することが勧められます。現状では専門医が少ないのも課題になっていますが、検査ができる認定施設は日本睡眠学会のホームページに記載されています。

医師による診断は、病歴の聴取により夢の内容と行動が一致するかどうかを調べることで可能です。レム睡眠行動障害では、寝言や睡眠時の異常行動が本人の見ていた夢と一致します。また、異常行動中に覚醒(かくせい)させることも容易であるため、周囲の人が本人に夢の内容を確認しておくことが参考になります。ビデオ記録も参考になります。

一方、睡眠時の異常行動としてよく知られている夢遊症(夢遊病、睡眠時遊行症)は覚醒させることが困難な上、行動中の記憶はほとんどありません。夢遊症は通常、深い眠りのノンレム睡眠の時に起こり、夢とは関係なく起こります。これが両者の違いであり、重要な診断基準となります。

終夜睡眠ポリグラフ検査により、レム睡眠中の筋活動高進も確認します。

医師による治療には、誘発因子の除去と薬物療法があります。誘発因子の除去においては、ストレスやアルコールが症状を悪化させるため、深酒などを控えます。薬物療法においては、抗てんかん薬のクロナゼパムを就寝時に服用するのが有効です。完全に治ることは少ないものの、服用を開始後1週間ほどで約8割の人は異常行動がなくなったり、頻度が減少したりします。

ただし、クロナゼパムは睡眠時無呼吸を増悪させるので、いびき、睡眠時の無呼吸がある場合は、クロナゼパムによる治療の前に睡眠時無呼吸症候群の評価が必要です。

クロナゼパムで症状が十分に改善されなかったり、副作用が問題とされる場合には、不眠治療に用いられることがあるホルモン剤のメラトニンや、ドーパミン神経の促進薬などを組み合わせて服用します。

薬は飲み続ける必要があり、よくなったからといってやめると、再び悪くなります。なお、レム睡眠行動障害では、周囲の環境を安全にしておくことが重要になります。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...