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2022/08/29

🇲🇩膝痛

■なぜ多い?中高年の膝の痛み

●膝の関節軟骨がすり減って発症

中高年の方々は、膝の不快な痛みを「年のせい」とあきらめていませんか。あきらめてしまう前に、日常生活の見直しをしたいところです。

私たちが体を動かすために欠かせない部分が、関節です。骨と骨とが連結している部分のことですが、実は、関節では骨と骨は直接ぶつかっていないのです。

関節の骨と骨の透き間を埋めているのは、軟らかくて弾力性のある「関節軟骨」と、「滑膜(かつまく)」という薄い膜から分泌される「関節液」。関節軟骨は関節部分の骨を覆っていて、厚さは3~4ミリで、非常に弾力性があります。そして、関節液が潤滑油の役割を果たし、私たちは関節をスムーズに動かすことができるのです。

とはいえど、膝の関節の場合は、肩や腰など全身の関節の中でも特に大きな負担がかかっていて、痛みを起こしやすいものです。常に体重を支えながら、立ったり歩いたり、階段を上ったり下りたりするのですから、かかる負担は大。平地を歩行する時で体重の約2~3倍、階段を上り下りする時では約3~4倍、走る際には約6倍もの力がかかっています。

同時に、膝関節は広い範囲の曲げ伸ばし運動など、複雑な動きを行うことを強いられています。歩行時には約60度、しゃがむ動作では約100度、正座では約140度の曲げ伸ばしとなります。

衝撃を柔らげる役割を果たしている関節軟骨も、加齢とともに水分が失われ、弾力性がなくなってしまいます。そこに体重の増加、仕事や運動などによる負担が加わると、関節軟骨は次第に、すり減ります。

結果として、関節に炎症を起こしたり、骨が変形したりして、痛みが生じることになります。この変形性膝(しつ)関節症が、膝の痛みの原因として最も多いのです。ほかにも、けがや免疫の病気、代謝の病気が、原因として考えられます。

軟骨は一度すり減ると、残念ながら再生しません。「年齢」、「体重」、「習慣」が変形性膝関節症の三大要因といわれていますので、膝への負担を少しでも減らすことが、日常生活で大切になります。

●疑われる関節の病気

◆変形性膝(しつ)関節症

関節の軟骨がすり減ったために、痛みが生じる病気が変形性関節症で、中でも一番多いのが、膝の部分に痛みが出る変形性膝関節症。膝が痛む病気としても、最多です。

加齢で増加する病気であり、通常は50代から発症するケースが多いのですが、肥満の人は40代でも発症します。

初期では、立ち上がる際や歩き始めに痛みますが、時間がたてば治まります。進行すると、正座や階段の上り下りで感じる痛みが大きくなり、膝を真っすぐに伸ばしたり、十分に曲げたりできなくなります。悪化すると、じっとしていても痛みを感じ、歩けなくなれば手術も必要となります。

O脚の人の場合、膝の内側に圧力がかかるため、内側の関節軟骨がすり減って発症しやすく、女性に多いのが特徴ですが、はっきりした理由は不明です。

◆半月板損傷

膝の関節内でクッションの役割を担っているのが、半月板です。この繊維性の軟骨は、スポーツなどで急に方向転換をしたり、膝を素早く曲げ伸ばししたりすると、切れることがあります。

切れた場合には、膝の全体が腫れて痛みが出たり、ロックされたように膝が動かなくなったりし、自然に治癒することはありません。損傷がひどいケースでは、手術が行われます。

加齢によって柔軟性がなくなるので、中高年は半月板の損傷に注意が必要。半月板損傷と変形性膝関節症とが合併する例も、みられます。

◆関節リウマチ

自己免疫反応の異常により、膝だけでなく全身の関節が炎症を起こす病気が、関節リウマチ。膝、指、手首、肘(ひじ)などの関節の滑膜に炎症が起こり、そこから出る物質が関節軟骨や骨を破壊するため、痛みや腫れが生じ、関節が変形します。

40代以上の女性に多くみられ、出産後に発病することも。朝、手や指がこわばって動かしにくいのが、症状の特徴となります。こわばりが30分以上、6週間続く、腫れが3カ所以上ある、腫れが左右対称である、などのケースでは、関節リウマチが疑われます。

◆化膿性関節炎

体のある部分が黄色ブドウ球菌などの細菌によって化膿(かのう)した場合、その感染が関節におよび、炎症を起こすことがあります。炎症は膝だけでなく、全身の関節で起こります。

関節が赤く腫れ上がって熱を持ち、痛みも徐々に強くなって自由に動かせなくなります。体温も上がり、緊急手術が必要。熱があって激しい痛みがあれば、すぐに医療機関へ行くべきです。

◆大腿(だいたい)骨顆骨壊死

大腿骨顆骨という、膝の上側の骨の一部が壊死して、強い痛みが生じます。50歳以上の女性に多く、症状が変形性膝関節症に似ています。

◆痛風

血液中の尿酸が関節にたまることで、炎症を起こします。尿酸は細胞の燃えカスで、プリン体という物質からできています。

炎症はまず、足の親指の付け根に起こることが多く、中高年の男性に多い病気です。

■心掛けたい「膝痛」対策

●原因を明白にさせる

まずは、膝の痛みの原因を突き止めることです。歩きすぎなどのはっきりした原因があり、2~3日で治るようであれば、それほど心配はありません。

心当たりがないのに激しく痛んだり、だんだん痛みが増してきたりしたら、専門医を受診しましょう。

膝の痛みが急に悪化し、腫れや熱を持っている場合は、氷などで冷やして炎症を抑えましょう。慢性的な痛みの場合は、ゆっくり入浴して膝を温め、血行をよくしましょう。

●膝への負担を減らす

膝の関節に負担をかけないためには、日常生活の改善が最も大事です。

体重をかけて膝を曲げることが膝関節への一番の負担になりますので、椅子や洋式トイレを使用して、しゃがまない、正座をしない、横座りをしないように心掛けましょう。

長時間、立ち続けるのもよくありませんし、重い荷物を持つのもよくありません。肥満の人は、減量を試みましょう。

階段を上り下りする時は、体重の3~4倍の負担が膝にかかります。膝の悪い人が外出する際には、エスカレーターやエレベーターを利用しましょう。負担がかからない靴を履くようにし、関節の保護と保温のためにサポーターを利用するのもよいでしょう。

寒い季節には、体を冷やさないように注意し、入浴で血行をよくしましょう。

●筋トレで太ももを鍛える

膝は筋肉によって支えられています。太ももの筋肉を柔軟にし、筋力を向上することで、膝への負担を減らすことが可能になります。

高低差の少ないコースでのウオーキングや水泳が、お勧めのトレーニングです。水中ウオーキングも、膝への体重の負担が少なくてよいでしょう。

家でできる筋トレもあります。寒くて家に閉じこもりがちな季節の場合、じっとしているだけでは関節は弱る一方です。簡単な体操や適度な運動で、関節痛を解消、ないし予防しましょう。変形性膝関節症の慢性期は、適度なトレーニングで症状が改善します。

まずは、太ももの前側の筋力を強化する方法の紹介。足の裏がちょうど床につく程度の高さの椅子に座って、足首を上に曲げたまま片脚を5秒くらいかけてゆっくり上げ、膝が伸びたところで10秒静止します。同様に、ゆっくり下ろし、反対側の脚の上げ、止め、下げを行います。これを1セット10~20回、朝、昼、晩に行いましょう。

関節軟骨の一カ所に負担が集中することがなくなり、膝の曲げ伸ばしの力も強くなります。注意すべき点は、・沈み込まない椅子を選ぶ、・腰などに痛みがある人、膝が伸びない人は無理をしない、・膝の症状が進行している人は医師と相談の上行う、ことです。

太ももを強化する他の方法としては、・畳やカーペットに仰向けに寝て、片脚は膝を曲げたまま、もう一方の脚をゆっくり上げる、・横向きに寝て、股を開けるようにゆっくりと片脚を上げる。上げない方の脚は、曲げていてもよい、・太ももでボールやまくらをはさみ、膝を内側にねじったり曲げたりしないようにしながら、ボールなどを押すように力を入れる、などを試してもよいでしょう。

次は、太ももの背面の筋肉を柔軟にするストレッチ。両膝を真っすぐに伸ばして、床に座ります。右の手のひらを右膝、左の手のひらを左膝に当て、膝のお皿の上あたりを押すと、膝の後ろ側が伸びます。反動をつけず、ゆっくり行いましょう。

膝の曲げ伸ばしをお風呂の中でするのも、よい方法です。関節を伸ばす時に力を入れながら、ゆっくりと行うのが要領。

●関節によい成分をとる

痛み止めを使わずにいると、しばらくするとまた関節が痛くなってくる…そんな経験を持つ人も多いのでは。これは薬で痛みや炎症を抑えていても、軟骨がすり減っている、という根本的な原因が解決されていないから。

ここで注目したいのが、最近話題のグルコサミンやコンドロイチン、MSM(メチルスルフォニルメタン)など。軟骨の成分でもあるこれらには、軟骨細胞の再生を促す作用があるのです。

グルコサミンは、軟骨の原料となる物質を作る。アミノ糖の一種。生体内に広く分布しているが、特に軟骨細胞に多い。若いうちは体内でスムーズに作られますが、加齢とともに生成量が減り不足気味に。

コンドロイチンは、細胞に水分を補給し、栄養を与えて老廃物を排出する。ムコ多糖の一種。骨や軟骨、皮膚など広く生体内にある。加齢とともに生成量が減り不足気味に。また、目の角膜や水晶体の透明感や弾力性の維持の働きもあります。

MSM(メチルスルフォニルメタン)は、たんぱく質やコラーゲンの生成に不可欠。有機イオウ化合物の一種で、人間を含むほとんどの動植物にとって必須の成分。調理により大部分が失われるので、通常の食事だけでは不足しがち。

サプリメントでとる場合、グルコサミンとコンドロイチンは、食後ならいつでもOK。1日分をまとめて飲んでも、分けて飲んでもOK。MSMは朝食後、夕食後と分けて飲むとよいでしょう。

2022/08/25

🇺🇸肥満

■内臓脂肪型の肥満に注意を

●病気にかかる割合が倍増

あなたは最近、おなかの回りが気になりませんか? 現代人の多くが悩んでいるのが太りすぎで、肥満に伴う生活習慣病も増加しています。

 この肥満とは、体内に占める脂肪の割合が多い状態のことです。食事から得た摂取エネルギーが消費エネルギーよりも多い時、脂肪細胞は余ったエネルギーを蓄えます。その状態が続くと、脂肪細胞の数が増え、一つ一つの脂肪細胞も大きくなるのです。肥満の人においては、エネルギーの摂取、利用、蓄積、放出というメカニズムが、正常に機能していないことになります。

 肥満には、皮下に脂肪がたまる「皮下脂肪型」と、肝臓や腸管などの周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型」があります。

 皮下脂肪型肥満は若い人や女性に多く見られ、付きにくくて落ちにくいのが皮下脂肪の特徴。

 一方、内臓脂肪型肥満は男性や閉経後の女性に多く見られ、付きやすくて、かつ落ちやすいのが内臓脂肪の特徴で、40~50代から徐々に増えていく傾向があります。

 後者の内臓脂肪型の肥満が特に健康に悪影響をおよぼすことが、近年わかってきました。このタイプの肥満の人は、健康な人に比べて1・5~2倍近く、病気にかかりやすいと見なされています。   

●内臓脂肪型肥満とは 

 内臓脂肪が増加すると、脂肪細胞から糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化などを引き起こす「生理活性物質」が、体内に多量に放出されます。高尿酸血症や脂肪肝にもつながります。

 その他の肥満のリスクを挙げれば、まず心臓などの臓器に負担がかかります。腰や脚の関節も痛めやすくなります。脂肪がたまって胸郭の動きが悪くなると、呼吸の力が弱まるため、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすケースもあります。女性の場合は、生理不順を招きやすくなります。 

 太り方で肥満の型を見分ける場合、下半身に脂肪が付いた「洋ナシ型」は皮下脂肪型肥満、おなかの回りがポッコリ張り出してくる「リンゴ型」、いわゆる太鼓腹は内臓脂肪型肥満の可能性が高い、と考えられます。

 次に、肥満男性の場合、おなかを指でつまんで、つまめる脂肪が薄いほど皮下脂肪が少なく、危険な内臓脂肪がたまっています。特に、おへそ回りの腹囲が85センチ以上の男性は、注意が必要です。

 女性の場合、女性ホルモンの働きで内臓脂肪は付きにくいのですが、肥満になると皮下脂肪とともに内臓脂肪も増えます。そのため、腹囲が大きいほど内臓脂肪がたまっており、特に、おへそ回りが90センチ以上の女性は、注意が必要になります。 

●肥満度チェック

BMI(体格指数)

 体重と身長から肥満度を判定するのがBMI(=Body Mass Index)。成人にのみ当てはまり、個人差があるので目安として利用します。

 BMI=体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)

 日本肥満学会による判定基準では、

 18.5未満    ⇒⇒やせ 

 18.5以上25未満⇒⇒普通(22が最も有病率が低い)

 25 以上    ⇒⇒肥満

体脂肪率

 電気が流れにくいという脂肪の性質を利用し、体に微弱な電流を流して計測するのが体脂肪率。正確に測ることは難しく、あくまでも目安として利用します。内臓脂肪などの状態をきちんと調べるためには、CTスキャン検査が必要となります。

 成人男性 25パーセント以上⇒⇒肥満

 成人女性 30パーセント以上⇒⇒肥満

■心掛けたい「肥満」対策

●体重を5パーセント減らす

健康で長生きするためにも、肥満の解消は重要なことです。肥満により糖尿病になった人でも、体重を5パーセント減らすだけで、かなり症状が改善します。例えば、体重が80キロの人ならば、月に1キロ弱ずつ減らすようにして、3カ月から半年間で76キロにすればよいでしょう。

急な減量を試みると、必要な栄養素を摂取することができず、かえって体調を崩してしまうので、ゆっくりと減らすように心掛けましょう。

●バランスのとれた食事を

食事の内容は、年齢相応の適切な摂取カロリーを考え、栄養バランスのよいものに。砂糖や脂肪分のとりすぎに注意し、緑黄色野菜を積極的にとります。

反対に、まとめ食い、とりわけ一日の食事量の半分以上を夜間に食べるのは、内臓脂肪を蓄積するので禁物。

また、タバコを吸うと体脂肪の分布が変化し、内臓脂肪が付きやすくなるので、注意しましょう。

肥満が気になる人は、毎回の食事量を2~3割減らし、ゆっくり、よくかんで食べることを実践しましょう。間食の多い人の場合は、毎食の食事をきちんととり、間食は量と時間を決めて1回に。

揚げ物、脂の多い物は、控えます。また、味付けが濃いとご飯もお酒も進んで、食べすぎにつながりがちですので、だしをしっかりとり、塩分、糖分を控えた薄味にしましょう。

ワカメ、寒天、ヒジキ、昆布などの海藻、青菜、根菜といった野菜類など食物繊維の多い食材を毎食、とり入れましょう。さらに、動物性脂肪を減らして、魚、豆類をとり、穀類は大麦やヒエ、アワといった雑穀などを加えて、食物繊維やミネラルを増やしましょう。油脂では、植物性のオリーブオイルや魚の油脂がお勧めです。

●有酸素運動を行う

肥満が気になる人にとっては、食事の見直しだけでなく、有酸素運動も必要です。運動不足になると、基礎代謝が減少し、貯蔵エネルギーが増えやすくなるからです。

運動を併せて行えば、筋肉を落とさず、さらに脂肪を燃焼することができます。短距離走や重量挙げのような無酸素運動は筋力を増やし、ウオーキングなどの有酸素運動は脂肪を燃やします。特に、内臓脂肪は運動で減りやすく、これもまた欠かせないのです。

どなたにもお勧めできる運動としては、ウオーキング、ジョギング、ラジオ体操、水泳などの全身を使う有酸素運動が挙げられます。これらの運動は週に3回以上行う必要があり、軽い運動なら毎日から1日置きとし、休日などを利用して十分な時間をとるのがよいでしょう。

運動の強度については、いきなり強い運動をしないこと。軽い運動から始めて、徐々に慣らしていくのがよいでしょう。ウオーキングを主体にして、ダンベルなどを利用した筋力トレーニング、ストレッチも併用するのが、一番のお勧めです。

2022/08/19

🇮🇳非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)

大量の飲酒習慣がないのに脂肪肝になり、慢性肝炎に至った状態

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Steato Hepatitis、ナッシュ)とは、大量の飲酒習慣がないにもかかわらず脂肪肝になり、慢性肝炎に至った病態。自覚症状がないまま、肝硬変や肝臓がんに進むこともあります。

肝細胞に中性脂肪が沈着して、肝障害を引き起こす病態を脂肪性肝疾患といいます。そして、肝臓の組織で、脂肪滴を伴う肝細胞が30パーセント以上認められる場合を脂肪肝といいます。現在、検診受診者の20〜30パーセントは脂肪肝であり、頻度は年々増加しています。

この脂肪肝は、以前は大量のアルコールを摂取する人に多かったのですが、肥満や糖尿病など生活習慣病の表現形として発症することが多くなり、アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にもアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害がみられる病態をまとめて、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)と呼ぶようになりました。

成人の8パーセント程度は非アルコール性脂肪性肝疾患であるといわれ、国内に約1000万人いると推定されています。

非アルコール性脂肪性肝疾患は、肝細胞に脂肪が沈着するのみの単純性脂肪肝(Simple Fatty Liver)と、肝細胞に脂肪が沈着するとともに炎症を起こし、線維化が進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に大別されます。

非アルコール性脂肪性肝炎は肝硬変に至り、肝臓がんを引き起こす可能性があり、成人の1パーセント程度にみられ、国内に約100〜200万人の発症者がいると推定されています。

非アルコール性脂肪性肝炎の発症に至る原因はまだはっきりとはわかっていませんが、2つのヒット理論が広く受け入れられています。肥満、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などにより、肝臓に中性脂肪が蓄積し、脂肪肝になるのが第1のヒット。さらに、炎症を起こす免疫物質や腸内細菌の毒にさらされたり、体内の活性酸素が増える酸化ストレスになったりする第2のヒットの刺激を受けると、非アルコール性脂肪性肝炎に進みます。

非アルコール性脂肪性肝炎は、脂肪肝と同じく自覚できる症状はほとんどありません。しかし、一部の発症者では疲れ、だるさ、または右上腹部の不快感を感じることがあります。

40〜60歳の中年女性に最もしばしばみられ、その多くは肥満、2型糖尿病、または脂質異常症を示しますが、すべての年齢の男女に起こり得ます。

非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の検査と診断と治療

消化器内科、消化器科、内科の医師による診断では、脂肪肝の程度が進み脂肪性肝炎が疑われる場合、画像検査や血液検査だけでは脂肪肝か脂肪性肝炎か判断が付かないため、確定診断には、針を皮膚から肝臓へと突き刺し、肝臓の組織の一部を採取する肝生検を行います。

最も多くみられる検査所見の異常は、アミノトランスフェラーゼ(アミノ基転移酵素)値の上昇。肝酵素のAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)値とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)値の軽度の上昇もみられます。AST/ALT比は通常、1・0以下です。

アルコール性肝障害との鑑別が最も重要で、問診によってアルコール摂取量を把握することと、アルコール性肝障害ではAST/ALT比が1・0以上となることで鑑別します。ウイルス性肝炎B型、ウイルス性肝炎C型、自己免疫性肝炎、薬物性肝障害などとの鑑別も必要です。

消化器内科、消化器科、内科の医師による治療では、脂肪肝と同じく、ライフスタイルの見直しを行い、低カロリーで栄養バランスのよい食事を心掛け、適度な運動を取り入れます。

肝臓に炎症や線維化がみられる場合は、そのまま放置すると悪化する恐れがあり、原因となる肥満、2型糖尿病、脂質異常症を食事療法、運動療法で改善することが重要です。

ライフスタイルを見直しても肝機能異常が治らない場合は、薬物療法が行われる場合もあります。抗酸化剤のビタミンE、ビタミンC、糖尿病治療薬のチアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、シダグリプチン、脂質異常症治療薬のフィブレート系薬剤、エゼチミブ、EPL、肝庇護(ひご)剤のウルソ、グリチルリチンなどが使用されるほか 、非アルコール性脂肪性肝炎では過剰な鉄が肝臓に負担を掛けますので、1日の食事中の鉄を6〜7ミリグラム以下に減らします。

また、脂肪性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進むことがあるため、肝機能を検査して常に確認しておくことが大切になります。

🇮🇳非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)

アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲む人に脂肪性肝障害がみられる病態

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD:Non-Alcoholic Fatty Liver Disease)とは、アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にもアルコール性肝障害に類似した脂肪性肝障害がみられる病態。

肝細胞に中性脂肪が沈着して、肝障害を引き起こす病態を脂肪性肝疾患といいます。そして、肝臓の組織で、脂肪滴を伴う肝細胞が30パーセント以上認められる場合を脂肪肝といいます。現在、検診受診者の20〜30パーセントは脂肪肝であり、頻度は年々増加しています。

この脂肪肝としては、以前は大量のアルコールを摂取する人に多くみられるアルコール性脂肪肝や、脂肪肝に肝炎を伴ったアルコール性脂肪性肝炎(ASH:Alcoholic Steato Hepatitis)が知られていましたが、アルコールを全く飲まない人や、少しだけ飲むという人にも、肥満や糖尿病などの生活習慣病の表現形として、飽食と運動不足による過栄養を基盤とした内臓脂肪の蓄積によって、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)を発症することが多くなりました。

現在、成人の8パーセント程度は、非アルコール性脂肪性肝疾患であるといわれ、国内に約1000万人いると推定されています。

非アルコール性脂肪性肝疾患は、肝細胞に中性脂肪が沈着するのみの単純性脂肪肝(Simple Fatty Liver)と、肝細胞に脂肪が沈着するとともに炎症を起こし、線維化が進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH:Non-Alcoholic Steato Hepatitis、ナッシュ)に大別されます。

後者の非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、成人の1パーセント程度にみられ、国内に約100〜200万人の発症者がいると推定されています。非アルコール性脂肪性肝疾患の重症型と考えられており、自覚症状がないまま、肝硬変に至り、肝臓がんを引き起こす可能性もあります。

単純性脂肪肝から非アルコール性脂肪性肝炎の発症に至る原因はまだはっきりとはわかっていませんが、2つのヒット理論が広く受け入れられています。肥満、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などにより、肝細胞に中性脂肪が蓄積し、脂肪肝になるのが第1のヒット。さらに、炎症を起こす免疫物質や腸内細菌の毒にさらされたり、体内の活性酸素が増える酸化ストレスになったりする第2のヒットの刺激を受けると、非アルコール性脂肪性肝炎に進みます。

非アルコール性脂肪性肝炎は、単純性脂肪肝と同じく自覚できる症状はほとんどありません。しかし、一部の発症者では疲れ、だるさ、または右上腹部の不快感を感じることがあります。

40〜60歳の中年女性に最もしばしばみられ、その多くは肥満、2型糖尿病、または脂質異常症を示しますが、すべての年齢の男女に起こり得ます。

非アルコール性脂肪性肝疾患そのものでは自覚症状が出ることはほとんどないので、健診でチェックされるか、ほかの疾患で血液検査をした時に肝機能異常があって、発見の契機になることがあります。中には血液検査では肝機能正常の非アルコール性脂肪性肝疾患もあり、この場合は健診の超音波検査で指摘されることもあります。

非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の検査と診断と治療

消化器内科、消化器科、内科の医師による診断では、単純性脂肪肝の程度が進み非アルコール性脂肪性肝炎が疑われる場合、画像検査や血液検査だけでは脂肪肝か脂肪肝炎か判断が付かないため、確定診断には、針を皮膚から肝臓へと突き刺し、肝臓の組織の一部を採取する肝生検を行います。

非アルコール性脂肪性肝炎で最も多くみられる検査所見の異常は、アミノトランスフェラーゼ(アミノ基転移酵素)値の上昇。肝酵素のAST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)値とALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)値の軽度の上昇もみられます。AST/ALT比は通常、1・0以下です。

アルコール性肝障害との鑑別が最も重要で、問診によってアルコール摂取量を把握することと、アルコール性肝障害ではAST/ALT比が1・0以上となることで鑑別します。ウイルス性肝炎B型、ウイルス性肝炎C型、自己免疫性肝炎、薬物性肝障害などとの鑑別も必要です。

消化器内科、消化器科、内科の医師による治療では、ライフスタイルの見直しを行い、低カロリーで栄養バランスのよい食事を心掛け、適度な運動を取り入れます。

肝臓に炎症や線維化がみられる場合は、そのまま放置すると悪化する恐れがあり、原因となる肥満、2型糖尿病、脂質異常症を食事療法、運動療法で改善することが重要です。

ライフスタイルを見直しても肝機能異常が治らない場合は、薬物療法が行われる場合もあります。抗酸化剤のビタミンE、ビタミンC、糖尿病治療薬のチアゾリジン系薬剤、ビグアナイド系薬剤、シダグリプチン、脂質異常症治療薬のフィブレート系薬剤、エゼチミブ、EPL、肝庇護(ひご)剤のウルソ、グリチルリチンなどが使用されるほか 、非アルコール性脂肪性肝炎では過剰な鉄が肝臓に負担を掛けますので、1日の食事中の鉄を6〜7ミリグラム以下に減らします。

また、非アルコール性脂肪性肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進むことがあるため、肝機能を検査して常に確認しておくことが大切になります。

🇧🇹冷え性

冷え性とは、体のほかの部分は冷えを感じないのに、腰や手足など体の一部分だけ冷たく感じる状態のこと。手足が冷たいということとは違い、いわゆる寒がりとも違います。

腰から下に冷えを感じる際に、特別の温度計を用いて皮膚温度を測ると普通であることが多く、ホルモンバランスの乱れやストレスによる自律神経の乱れから、毛細血管が収縮し、血行が悪くなって冷えを感じます。

一般に女性に多く、女性の半数以上にみられますが、男性にもみられることがあります。女性は男性に比べて皮下脂肪が多く、熱を通しにくい脂肪はいったん冷えると温まりにくい性質があること、加えて、男性に比して血流の多い筋肉が少ないことも原因します。

現代の西洋医学には冷え症という病名はなく、冷え症自体は治療の対象にはなっていません。何らかの病気が原因で冷え性が起きている場合には、まず隠れた病気がないかどうかを確認します。冷えを起こす病気としては、貧血、甲状腺(せん)の病気、膠原(こうげん)病、心臓病、胃腸障害などがあります。これらの病気に対しては、西洋医学的な治療が優先して行われます。

間違ったダイエットが原因で、冷え性が起きていることもあります。これはタンパク質、ビタミン、ミネラル、脂肪などの摂取不足から栄養失調を生じるために起こります。

また、もともと持っている病気が、冷えで悪化することがあります。冷えで悪化する病気としては、関節リウマチ、ぜんそく、膀胱(ぼうこう)炎、花粉症などがあります。

さらに、冷えが心身の不調を引き起こすことがあります。特に冷えと痛みは関係が深く、月経痛、頭痛、腹痛、腰痛などが起こりやすいといえます。

漢方では、冷える体質のことを冷え性と呼び、冷えが症状として現れた場合を冷え症と呼んでいます。冷えは放置せず早めに治療し、病気の悪化を防いだり、心身の不調を予防、改善することが大切として、積極的に治療を行っています。

具体的には、気虚、気滞、血虚、瘀血(おけつ)、水滞などの症候が影響し、体を温め血の量を増やすとよいと見なし、それぞれの症候に合わせて補中益気湯(ほちゅうえっきとう)や婦宝当帰膠(ふほうとうきこう)などの漢方薬を処方し、生活習慣の改善を勧めます。

🇧🇹鼻炎

鼻の粘膜が炎症を起こした疾患。別名は、鼻風邪

鼻炎とは、鼻腔(びくう)の粘膜にさまざまな原因で炎症が生じた疾患。急性鼻炎と慢性鼻炎に分けられます。

急性鼻炎は、鼻腔粘膜の炎症が急激な経過をとるもの。急性鼻炎の多くは、いわゆる鼻風邪と同じと考えられます。

大部分が、風邪のウイルスによって引き起こされます。代表的なウイルスとして、ライノウイルス、RSウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、コロナウイルスがあります。ウイルス感染に合併して、細菌感染を生じることもあります。

症状として、まず鼻の中が乾いたような感じがし、次いで、くしゃみ、鼻汁(びじゅう)、鼻詰まりが起こります。鼻汁は初め水性で、それが数日後には黄色く粘性に変わり、細菌感染を合併すると青緑色っぽい膿(のう)性の鼻漏(びろう)になります。

咽頭(いんとう)痛、咳(せき)、たん、しわがれ声、発熱、食欲不振、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、筋肉痛などを伴うこともあります。小児では、いびきが大きくなることもあります。

一方、慢性鼻炎は、鼻腔粘膜が炎症を起こした状態が長引いているもの。普通、急性鼻炎を繰り返しているうちに慢性化すると見なされますが、はっきりと急性鼻炎の症状がないのに、いつの間にか慢性鼻炎になるケースもあります。

慢性鼻炎には、粘膜が赤く腫(は)れている状態が続く単純性鼻炎(鼻カタル)と、炎症が長引いて粘膜が厚く、硬くなった肥厚性鼻炎があります。アレルギー性のものや、副鼻腔炎を伴うものは、含みません。

局所的な原因としては、機械的刺激の反復、細菌の感染、副鼻腔炎、アデノイド(増殖性扁桃〔へんとう〕肥大症)などと関係があるとされています。全身的な原因としては、風邪のほか、糖尿病、肝臓病などの疾患、アレルギー体質が指摘されています。

症状としては、鼻詰まり、嗅覚(きゅうかく)障害、鼻漏、前頭部の頭痛などがみられるほかに、鼻部の不快感、イライラ感、鼻出血なども生じることがあります。

単純性鼻炎の場合の鼻詰まりは、片側のみ、あるいは左右交代に起こります。肥厚性鼻炎の場合の鼻詰まりは、常に両側に起こります。鼻漏は粘性が多く、鼻がかみきれないこともあります。また、鼻漏がのどに落ちる、すなわち後(こう)鼻漏もよく起こります。

鼻炎の検査と診断と治療

風邪に伴って急性鼻炎の症状の鼻汁や鼻詰まりがなかなか治らない、あるいはいびきが続くなどの症状がある場合は、合併症を起こしている可能性があるので、一度耳鼻咽喉(いんこう)科を受診したほうがよいでしょう。

鼻鏡による鼻やのどの所見で、おおかたの診断がつきます。花粉症と紛らわしいことがありますが、花粉症の場合は目の症状を伴うことが多いため、この有無が診断のポイントになります。鼻汁の細胞診で、急性鼻炎の場合は白血球の一種の好中球や、脱落した鼻粘膜上皮細胞がみられますが、花粉症の場合は白血球の一種の好酸球がみられます。

急性鼻炎の治療は風邪と同様、対症療法が主体になります。患部に直接、薬の注入、塗布を行います。鼻汁を抑えるために抗ヒスタミン薬を、鼻をかみやすくするために粘液溶解薬を投与します。そのほか、鎮痛剤、解熱剤、抗生物質の処方など、全身的な治療もします。小児は鼻をかめないため、後鼻漏となって咳の原因となりがちなので、鼻をよく吸引することが大切です。

通常は数日間で治りますが、副鼻腔炎を併発すると膿性の鼻漏がなかなか治りません。また、特に小児は急性中耳炎を起こしやすくなります。

急性鼻炎にかかったら、安静が第一です。鼻やのどに適当な温度、湿度、きれいな空気も必要。特に、室内を乾燥させないように気を付けます。

初期はウイルスが飛び散って伝染するので、感染防止への配慮が必要。マスクは伝染にはたいした効果はありませんが、吸気の清浄化、加温、加湿という面では多少の効果があります。

慢性鼻炎のうち、単純性鼻炎の治療では薬物療法が中心で、鼻にネブライザーなどで薬を入れたり、薬を内服したりします。局所に血管収縮薬を用いると、鼻の粘膜の腫れがひき、鼻詰まりは改善されます。

肥厚性鼻炎になると、血管収縮薬でも改善しなくなるため、症状が強いケースでは手術療法も行われます。肥厚した粘膜を電気やレーザーで焼いて取り除いたり、鼻甲介(びこうかい)の切除が行われます。

🇧🇹光誘発角膜炎

スキー場、海水浴場などで紫外線が作用して、目の角膜に生じる炎症

光誘発角膜炎とは、スキー場や雪山、海水浴場などで多量の紫外線を含む太陽光線の反射を受けて、角膜に生じる炎症。雪目、雪眼炎、雪盲(ゆきめくら)とも呼ばれます。

いわば、目の日焼けであり、冬にスキーやスノーボード、雪山登山をする際に、サングラスやゴーグルをかけないで長時間過ごすと、雪面による多量の紫外線を含む太陽光線の反射を強く受けることになり、黒目の表面を覆う角膜に炎症が起こります。

夏に海水浴場に赴いて水泳や日光浴、ビーチバレーをする際にも、サングラスをかけなかったりサンバイザーをかぶらないで長時間過ごすと、海面に反射した多量の紫外線を含む太陽光線の反射を強く受けることになり、黒目の表面を覆う角膜に炎症が起こります。

太陽光線以外に、電気溶接の火花や殺菌灯の光線によっても、角膜に炎症が起こることもあります。

多くは、紫外線に目がさらされて10時間ぐらいして発症します。そのため、スキーなどをしている日中はあまり自覚症状がなく、夜半から真夜中にかけて急に目が痛み出し、目が開けられなくなることもあるので、慌ててしまうケースが多くみられます。

角膜は神経が豊富なため、痛みが非常に強く出るのが特徴ですが、両目のまぶたがはれて、常に涙が流れ出ている状態となり、白目の表面を覆う結膜は充血します。角膜の表面には細かい多数の傷が付き、全体に薄く白濁が起こることもあります。

キラキラと目を開けていられないような好天気の日に、一日中ゲレンデや雪山、海水浴場にいても光誘発角膜炎にならない人がいる一方で、どんよりと曇った日に数時間スキーやスノーボードをしただけで光誘発角膜炎になる人もいます。一般的に、若い人のほうが光誘発角膜炎になりにくく、年齢が上がってくると目が紫外線に弱くなる傾向があります。

光誘発角膜炎の検査と診断と治療

光誘発角膜炎(雪目)になった際には、アスピリンやセデスなどの鎮痛剤を内服し、なるべく目を閉じた状態を保ち、冷やしたタオルを目に当てて休みます。涙は出るほうがよいので、目を水で洗わないようにします。通常、痛みは次第に和らぎますが、翌日も強い痛みが続く時には、眼科で適切な治療を受けます。

眼科の医師による検査では、特殊な染色液で染めると角膜表面は点状に染まります。治療では、ヒアルロン酸の入った角膜を保護する目薬を主に使います。そのほか、抗生剤の目薬や眼軟こうも併用します。角膜の表面の上皮細胞は修復能が高いので普通、数日で症状は回復します。

過度の紫外線は、シミやソバカス、シワといった肌の老化を早めると同様、目の老化とも関連が深く、白内障や加齢性黄斑変性を進行させると考えられています。これを防止するためには、目にも紫外線対策が必要になります。

スキー場や雪山、海水浴場を始め紫外線にさらされるような場所では、帽子をかぶり、UVカット加工したサングラスやゴーグルをかけたり、紫外線カットのコンタクトレンズを用います。また、太陽光線、電気溶接の火花、殺菌灯の光線を直視しないように気を付けます。

🇳🇵脾機能高進症

脾臓がはれることによって機能が高進し、血球が減少する状態

脾(ひ)機能高進症とは、何らかの原因によって脾臓がはれて大きくなる脾腫(しゅ)によって、脾臓の機能が高進した状態。

脾臓は、左横隔膜の下、左肋骨弓(ろっこつきゅう)のところにある100グラムほどの臓器。健康な人では腹壁の上から触れることはできませんが、500グラムまたはそれ以上に大きくはれると触れることができます。

脾臓は、古くなった血球、すなわち赤血球、白血球、血小板を破壊して処理したり、細菌や異物に対して抗体を作るなど、防御作用を持っています。脾臓が大きくはれると、脾臓の機能が高進して血球を破壊する力が強くなり、古くなった血球だけでなく正常な血球まで破壊するようになる結果として、血液中の赤血球、白血球、血小板すべてが減少します。このような状態が、脾機能高進症です。

感染症、例えば伝染性単核球症、腸チフスなどの敗血症、マラリアなどで、脾臓がはれ、脾機能高進症が誘発されます。また、溶血性貧血、白血病、リンパ腫(しゅ)、骨髄(こつずい)線維症といった血液の疾患でも、脾臓がはれ、脾機能高進症が誘発されます。

鳥やネズミでは脾臓で赤血球や白血球を作っていますが、成人では脾臓ではリンパ球を作るだけで、赤血球や白血球は骨髄で作られているものの、骨髄線維症や白血病の際には、脾臓でも造血を行うようになって、脾臓がはれ、脾機能高進症が誘発されることがあります。

そのほか、肝硬変や慢性肝炎でも、脾臓がはれ、脾機能高進症が誘発される場合も少なくありません。

脾臓がはれて大きくなったぶん、血液中から取り込む血球の量が増えて、大量の血球が血液から取り除かれると、さまざまな問題が生じます。赤血球が減少すれば貧血症が現れ、白血球が減少すれば感染症にかかりやすくなり、血小板の減少があれば出血が起こりやすくなります。

脾臓のはれ方が強くなれば、隣にある胃を圧迫するため、少量食べただけで、あるいは何も食べていなくても満腹感を感じるようになります。また、脾臓のある付近に膨満感が生じたり、左上腹部や背部に痛みが生じることがあります。脾臓の一部に血液が十分に供給されず、壊死が起こり始めると、痛みが左肩へと広がります。

肝臓に血液を供給する門脈圧が上昇して脾腫がある時は、狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)によって肝臓に流れ切れない血液が食道静脈に流れ込むため、しばしば食道の下端に静脈瘤(りゅう)ができます。これが破れると、吐血や下血を起こし、危険な状態に陥ります。

脾機能高進症の検査と診断と治療

消化器内科の医師による診断では、脾腫に加えて、貧血または血球の減少がある際に脾機能高進症を疑います。大抵の場合、脾腫は触診でわかり、腹部X線検査でも診断がつきます。

脾臓の大きさを確認し、他の臓器を圧迫しているかどうかを調べるために、超音波検査やCT検査が必要になることもあります。MRI検査では、CT検査と同様の情報が得られるだけでなく、脾臓を通過する血流をたどることもできます。弱い放射性の粒子を使用して脾臓の大きさと機能を調べ、大量の血球を取り込んでいるか、または破壊しているかどうかをみる検査もあります。

血液検査では、赤血球、白血球、血小板の数に減少がみられます。顕微鏡で調べた血球の大きさや形が、脾機能高進症を誘発する脾腫の原因を突き止める手掛かりとなることもあります。骨髄検査では、白血病やリンパ腫といった血液細胞のがんを確認することができますし、血中たんぱく質の測定では、マラリア、結核など脾腫を起こす他の疾患の有無を判定することができます。肝機能検査は、肝臓も障害を受けているかどうかを調べるのに役立ちます。

消化器内科の医師による治療では、脾機能高進症を誘発する脾腫の原因となった基礎疾患が特定でき、治療可能なものであれば、その疾患を治療します。

原因となった疾患にもよりますが、脾腫が周囲の臓器に悪影響を及ぼしている時や、脾腫があって食道静脈瘤から出血するような時には、消化器外科などの医師による手術を行って脾臓を摘出することがあります。脾臓を摘出すると、細菌やウイルスに対して防御する働きが失われ、感染を起こしやすくなるなどのリスクが生じますが、命にかかわるような問題がある場合は手術を行う価値があります。

手術の代わりに、放射線療法を行って脾臓を小さくすることもできます。

脾臓が腫れて大きくなっている場合は、破裂する危険性があるために、激しい運動は避けるようにします。

🇳🇵非機能性副腎腫瘍

ホルモン活性がなく、ホルモン値に異常がない副腎腫瘍

非機能性副腎腫瘍(ふくじんしゅよう)とは、ホルモン検査においてホルモン活性がなく、ホルモン値に異常がないと判断される副腎腫瘍。

副腎は、左右の腎臓の上に位置する小さな内分泌臓器。副腎の内部を構成する髄質と、髄質を包む皮質からできており、皮質からはグルココルチコイド(糖質コルチコイド)とアルドステロン(鉱質コルチコイド)という生命の維持に必要な2種類のホルモンのほかに、男女を問わず、男性化作用のあるアンドロゲンというホルモンを分泌しています。髄質からはアドレナリン(エピネフリン)、ノルアドレナリン(ノルエピネフリン)を分泌しています。

副腎腫瘍は、ホルモンを過剰に分泌する機能性副腎腫瘍と、ホルモン活性がなくホルモンを過剰に分泌しない非機能性副腎腫瘍に分類されます。副腎腫瘍のほとんどは、非機能性副腎腫瘍です。

機能性副腎腫瘍がホルモンを過剰に分泌する場合には、さまざまな疾患の原因となります。代表的なのは、血圧を上げるホルモンであるアルドステロンが多く作られる原発性アルドステロン症という疾患です。高血圧患者の1割弱を占めるともいわれています。

また、グルココルチコイドが多く作られるクッシング症候群、アドレナリンやノルアドレナリンが多く作られる褐色細胞腫という疾患も多くみられ、高血圧や糖尿病などを引き起こします。

一方、これらのホルモンを過剰に分泌する機能性副腎腫瘍と比べ、特徴的な症状を示さず、あるいは自覚症状を示さずに、健康診断や、胃腸、肝臓、腎臓などの腹部の疾患に対するCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査、超音波(エコー)検査などの画像診断による精査過程で偶然、発見される副腎偶発腫瘍(無症候性副腎腫瘍)の中で、ホルモン検査において異常を示さない非機能性副腎腫瘍も少なくありません。

非機能性副腎腫瘍には、皮質腺腫(せんしゅ)、骨髄脂肪腫、神経節腫、囊胞(のうほう)、血管腫、過誤腫、線維腫、転移性腫瘍などがあります。このほか、副腎皮質がんの中にも非機能性副腎腫瘍が存在します。

さらに、非機能性副腎腫瘍と鑑別を要する疾患として、目立った症状を示さないにもかかかわらず数年かけて高血圧や糖尿病などを引き起こす可能性があるプレ(サブ)クリニカルクッシング症候群(グルココルチコイド産生腺腫)と無症候性の褐色細胞腫があります。

手術によって非機能性副腎腫瘍を摘出する必要があるか否かは、ホルモン分泌の過剰の有無と、悪性腫瘍(原発性副腎がんや転移性副腎がん)の可能性の2点により判断されます。

非機能性副腎腫瘍の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による診断では、悪性腫瘍の可能性は腫瘍の大きさが3センチ以上であることや、CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査での悪性を疑わせる所見の有無で判断します。

ホルモン分泌の過剰の有無については、原発性アルドステロン症、クッシング症候群、褐色細胞腫の3つの疾患について内分泌検査を行います。

内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科などの医師による治療では、検査の結果、ホルモンを過剰に分泌している所見がなく、最も一般的な非機能性副腎腫瘍である皮質腺腫や骨髄脂肪腫などの良性腫瘍の大きさが3センチ未満であれば、その時点では手術を行わずに経過を観察します。そして、半年から1年ごとにホルモン検査と画像検査を行います。やがて増大傾向を認める場合、ホルモン活性を認める場合は、手術による腫瘍摘出を検討します。

一方、腫瘍の大きさが3センチ以上、またはホルモンを過剰に分泌している所見がある場合は、手術による腫瘍摘出を適応と判断します。

また、検査でプレ(サブ)クリニカルクッシング症候群と診断された場合も、目立った症状を引き起こすことがなくとも、数年かけて高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、骨粗鬆(こつそしょう)症などを引き起こす可能性がありますので、腹腔(ふくくう)鏡下の手術による腫瘍摘出が勧められます。

🇳🇵非結核性抗酸菌症

結核菌以外の抗酸菌によって引き起こされ、肺などに病変ができる疾患

非結核性抗酸菌症とは、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌によって引き起こされ、肺などに病変ができる呼吸器感染症。非定型抗酸菌症とも呼ばれます。

抗酸菌とは、結核の原因である結核菌の仲間を指し、水中や土壌など自然環境に広く存在して、酸に対して強い抵抗力を示す菌です。結核菌よりもかなり病原性が低く、健康な人では気道を介して侵入しても通常は速やかに排除されて、ほとんど発症しません。

結核と症状が似ているために間違えられることもありますが、結核と非結核性抗酸菌症の大きな違いは、人から人へ感染しないこと、疾患の進行が緩やかであること、抗結核剤があまり有効でないことなどがあります。

非結核性抗酸菌症の原因は通常、非結核性抗酸菌(マイコバクテリウム)と呼ばれる抗酸菌で、約150種類が知られており、人に病原性があるとされているものだけでも10種類以上あります。日本で最も多いのはマイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ(MAC菌)で、約80パーセントを占めます。次いでマイコバクテリウム・カンサシイが約10パーセントを占め、その他が約10パーセントを占めています。

リンパ節、皮膚、骨、関節など全身どこにでも病変を作る可能性はありますが、結核と同様、最も病変ができやすいのは肺です。発症様式には2通りあり、1つは体の弱った人あるいは肺に古い病変のある人に発症する場合、もう1つは健康と思われていた人に発症する場合です。感染系路として、非結核性抗酸菌の吸入による呼吸器系からの感染と、非結核性抗酸菌を含む水や食物を介する消化器系からの感染があると見なされています。

自覚症状が全くなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然、見付かる場合があります。症状として最も多いのは咳(せき)で、次いで、痰(たん)、血痰、喀血(かっけつ)、全身倦怠(けんたい)感など。進行した場合は、発熱、呼吸困難、食欲不振、やせなどが現れます。一般的に症状の進行は緩やかで、ゆっくりと、しかし確実に進行します。

結核の減少とは逆に、非結核性抗酸菌症の発症者は増えてきており、確実に有効な薬がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。特に、気管支を中心に病変を作る肺MAC症が中年以降の女性に増えていますが、近年は若年者にも見付かっています。

症状に気付いたら、呼吸器科の医師、あるいは内科、呼吸器内科、感染症内科の医師を受診するのがよいでしょう。

非結核性抗酸菌症の検査と診断と治療

医師の診断の糸口は、胸部X線やCTなどの画像診断です。最も頻度の高い肺MAC症は、特徴的な画像所見を示します。異常陰影があり、喀痰(かくたん)などの検体から非結核性抗酸菌を見付けることにより、診断が確定されます。

ただし、非結核性抗酸菌は水中や土壌など自然環境に広く存在しており、たまたま喀痰から排出されることもあるので、ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床所見と一致することが必要です。

2008年に肺MAC症の診断基準が緩やかになり、特徴的画像所見、他の呼吸器疾患の否定、2回以上の菌陽性で診断できることになっています。菌の同定は、PCR法やDDH法などの遺伝子診断法により簡単、迅速に行われます。

非結核性抗酸菌症と最も鑑別すべき疾患は、結核です。そのほか、肺の真菌症、肺炎、肺がんなども重要です。

医師による治療は、結核に準じて行われます。非結核性抗酸菌の多くは抗結核剤に対し耐性を示しますが、治療に際しては、菌によって効果があるので、まずは抗結核剤をいくつか併用します。

最も一般的なのはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシンの4剤を併用する方法です。この方法による症状、X線像、排菌の改善率は、よくても50パーセント以下にすぎません。治療後、再び排菌する例などもあり、全体的な有効例は約3分の1、副作用の出現率も3分の1程度あります。

薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があり、確実に有効な治療法がないので患者数は増え、進行例が増えてきているのが現状です。完全に治すことは難しく経過観察が必要ですので、非結核性抗酸菌症と診断された場合には、通院不要と判断されることはありません。自覚症状がないまま悪化する場合もあるので、症状がなくても通院を中断しないことが重要です。

症状が特に強く、肺病変が著しい場合には、肺切除などの外科療法が行われます。

生活は普通通りにできますし、人から人へ感染しないので、自宅で家族と一緒に生活してもかまいません。水中や土壌など自然環境に存在している非結核性抗酸菌が感染するということは、体が弱っている、すなわち免疫が落ちていることが考えられますので、過労を避けつつ適度な運動を心掛けて、体力を増強させるような生活が望まれます。

🇵🇰肥厚性胃炎

胃の粘膜表面が正常より厚くなった状態

肥厚性胃炎とは、胃の粘膜の筋肉が緊張して、胃の粘膜表面が正常より厚く、硬くなった状態。慢性肥厚性胃炎とも呼ばれます。

肥厚性胃炎は慢性胃炎の一種で、慢性胃炎は胃の粘膜が持続的に炎症を起こして、粘膜の性状が変質し、胃が重いとか軽い痛みなどの症状を伴うこともある疾患です。

肥厚性胃炎では、胃液やその中の胃酸の分泌が増加し、過酸症がみられることがあります。原因の多くはピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)の感染と考えられていますが、病態は完全には解明されていません。

症状としては、みぞおちから胸にかけて焼けるような不快感がある胸焼け、げっぷ、胃の酸っぱい液体が口まで逆流してくる呑酸(どんさん)、空腹時の胃の痛み、胃もたれなどの症状が現れます。大きな自覚症状が出ない場合もあります。

肥厚性胃炎に過酸症を伴う場合は、酸度の高い胃酸が食後に大量に分泌されることが一般的なため、食後1~2時間で胸焼け、げっぷ、呑酸の症状が現れます。また、食べ物が胃に入っていない空腹時に胃液が大量分泌し、とりわけ夜間に分泌量が増える傾向がある過酸症を伴う場合は、空腹時の胃の痛み、胃もたれ、食欲減退などの症状が現れます。

これらの症状は肥厚性胃炎だけではなく、十二指腸潰瘍(かいよう)、食道がん、胃がんなどでもみられる症状なので、検診などで肥厚性胃炎が発見された際には、消化器科、消化器内科、内科を受診することがお勧めです。

肥厚性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科などの医師による診断では、胃内視鏡検査を行うと、胃粘膜の筋肉の緊張による粘膜表面の肥厚が観察されます。

また、胃内視鏡検査の時に胃粘膜の一部を採取し、顕微鏡で調べる生検を行うと、原因となるピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)がいるかどうかを診断することもできます。

消化器科などの医師による治療では、胃の粘膜の状態に応じて、胃の中に放出された胃酸を中和する制酸剤や、胃酸の分泌を減少させる抗コリン剤(自律神経遮断薬)、ヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)薬(H2ブロッカー)、プロトンポンプ阻害薬(PPI)などを使用します。

食後に胃のもたれが起こるようであれば、消化剤を使用することも有効で、症状に合わせて、傷みを和らげる鎮痛剤も使用します。

ピロリ菌(ヘリコバクター・ピロリ)が胃に感染している場合には、根本的な治療の見地から、抗生物質(抗菌剤)の投与によるピロリ菌の除去が選択肢の一つになります。

ピロリ菌に対しては、2~3種類の抗生物質を、同時に1~2週間服用し続けることで、胃の中に生息しているピロリ菌を除菌します。

肥厚性胃炎、過酸症において日常で注意することは、脂肪食、香辛料、コーヒー、炭酸飲料、漬物、アルコール、たばこなどの胃酸の分泌を促進するものと、精神的疲労によるストレスを避けることです。ストレスがあると、血流が悪化し胃粘膜の防御機能が低下します。

🇵🇰肥厚性腱鞘炎

手の指に起きる腱鞘炎の一種で、手の指を曲げ伸ばしする際にばね現象が発生

肥厚性腱鞘(けんしょう)炎とは、手の指に起きる腱鞘炎の一種。ばね指、弾発指(だんばつし)とも呼ばれます。

手の指には、指の関節を曲げたり伸ばしたりする腱というものが備わっています。手を握ったりする強い力を発揮する筋肉は前腕にあり、その力を筋肉と骨を結び付けている腱が伝えます。腱のうち指を曲げる腱を屈筋腱といい、親指には1本あり、人差し指から小指には深指(しんし)屈筋腱と浅指(せんし)屈筋腱の2本がそれぞれあります。

計9本の屈筋腱の外囲には、筒状に包む腱鞘という組織があります。腱鞘には、指を曲げる時に腱が浮き上がらないようにする硬い靭帯(じんたい)性腱鞘と、靱帯性腱鞘を裏打ちしている滑膜性腱鞘があり、滑液という油のようなものを分泌して、屈筋腱と靱帯性腱鞘が擦れて摩擦が生じにくいようになっています。そのほかの腱の周囲は、パラテノンという軟らかい軟部組織が覆う構造になっています。

しかし、指の付け根の手のひら側で、機械的刺激によって力が掛かりやすい部位で、屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると腱鞘炎になります。腱の動きがスムーズでなくなり、指の付け根に痛み、はれ、熱感が生じます。朝方に症状が強く、日中は手を使っていると症状が軽減することも少なくありません。

この腱鞘炎が進行して、指を動かす時の痛みとともに腱の動きが悪くなって、腱が厚く硬くなったり、腱鞘が厚くなると、ばね現象を現すようになり、肥厚性腱鞘炎となります。ばね現象とは、腱鞘炎のために動きの悪くなった指が伸びたままになったり、曲がったままになって、それを無理に伸ばそうとしたり、曲げようとしたりすると抵抗があり、ばね仕掛けのようにピクンと曲がったり、伸びたりする現象です。

指の付け根に腫瘤(しゅりゅう)を触れ、圧痛があります。重症例では、安静時にも痛みがあったり、発赤などの症状があったり、指が動かない状態になることもあります。

肥厚性腱鞘炎は手の酷使による機械的刺激で発生しますが、主に妊娠時、産後や更年期の女性に多く発生することから、ホルモンバランスの影響も考えられています。ゴルフ、テニス、野球などのスポーツをする人や、指をよく使う仕事の人にも多いのも特徴で、最近ではパソコンや携帯電話で指を酷使する人にも発生します。糖尿病、リウマチ、透析患者にもよく発生します。

小児にも肥厚性腱鞘炎は発生しますが、親指以外の発生は多くありません。親指に発生する肥厚性腱鞘炎はばね母指とも呼ばれ、先天性で、靭帯性腱鞘の入り口で屈筋腱がこぶのように大きくなって引き起こされると考えられています。親指の関節が曲がったままで、無理に伸ばすとばね現象がみらます。指の付け根に軟骨のような硬い腫瘤を触れますが、痛み、圧痛はありません。

肥厚性腱鞘炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断は、指の付け根に腫瘤や圧痛があり、ばね現象があれば容易につきます。小児の場合は、握り母指症や先天性母指屈指症との区別が必要です。

整形外科の医師による治療は、成人の肥厚性腱鞘炎の場合、まず指の過度の使用を避けるよう指導します。また、湿布剤、軟こうなどの使用、非ステロイド性鎮痛消炎剤の投与を行います。時には、副木(ふくぼく)を当てて固定することもあります。

症状が強い時には、局所麻酔薬入りステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を発症している腱鞘に直接注射するのが有効です。3回以上の直接注射は、腱の損傷を起こすことがあるので避けます。

以上の保存療法で効果のない時、慢性化して治りにくい時には、腱鞘を切開する手術が行われる場合があります。手術は局所麻酔を用い、腫瘤が触れる指の付け根に約1cmほどの皮膚切開を入れて、靭帯性腱鞘を縦に切ってトンネルを開放し、腱の滑りをよくします。手術後はすぐに、指の曲げ伸ばしを行うことになります。

幼児のばね母指の場合、全身麻酔を用いた手術で腱鞘切開をすることがありますが、成人になると自然に治るのが普通なので、気長に親指を伸ばしたり、曲げたりする訓練をするのも一つの方法です。

成人の肥厚性腱鞘炎を予防するには、手の酷使を避けることが一番大切です。

🇵🇰肥厚性瘢痕

皮膚の傷が治る過程で、本来は傷を埋めるための組織が増殖して、しこりになったもの

肥厚性瘢痕(はんこん)とは、傷が治る過程において、本来は傷を埋めるための組織が過剰に増殖し、皮膚がやや赤く盛り上がってしこりになったもの。

肥厚性瘢痕の症状はケロイドに似ていますが、組織の過剰増殖が一時的で、傷の範囲内に限られ、周囲の正常な皮膚にまで拡大していくことはないものが肥厚性瘢痕に相当し、ゆっくりしながらも持続的、進行性で傷の範囲を超えて、周囲の正常な皮膚にまで拡大するものがケロイドに相当します。

皮膚の表皮の下にある真皮に達する外傷や手術などで損傷が加わると、損傷部位では毛細血管がつながって線維組織(線維芽細胞)による修復が行われて治癒しますが、この修復された傷跡を瘢痕と呼びます。瘢痕は通常約3~6カ月間、やや赤く硬さを帯びているものの、徐々に白く柔らかい成熟した瘢痕となっていきます。その過程を創傷治癒と呼びます。

この創傷治癒がうまく進まずに、傷を埋める線維組織が過剰に増殖して、やや赤く硬い状態が長く続き、徐々に赤みや硬さが強くなっていくのが、肥厚性瘢痕です。時には、かゆみや痛みなどを伴うことがあります。

また、瘢痕は縮もうとする性質があるため、損傷が関節にまたがるような場合には、肥厚性瘢痕が縮むことによって関節の曲げ伸ばしが制限される瘢痕拘縮(こうしゅく)が生じることがあります。

同じような外傷や手術を経験しても、きれいに治癒する人がいる一方で、肥厚性瘢痕を生じる人がいます。この体質は遺伝することがありますが、遺伝しないこともあります。

同じ個人であっても、小学校高学年から思春期に生じやすく、高齢になると生じにくいという年齢的な要素もあります。また、同じ個人でも、肥厚性瘢痕を生じやすい部位と、生じにくい部位とがあります。一般的には、前胸部、背部、下腹部、耳など皮膚が引っ張られる部位に肥厚性瘢痕は生じやすく、手のひらや足底、顔面、頭部、下腿(かたい)などの部位には肥厚性瘢痕は発生しにくいと見なされています。

さらに、皮膚にかかる力学的緊張や炎症の強弱も関連します。外傷や手術後、特に1~2カ月のうちに、活発な運動によって皮膚の引き伸ばしが反復された場合や、傷跡が化膿(かのう)して創傷治癒するまでに時間がかかった場合などには、肥厚性瘢痕が生じやすくなります。

数年から数十年の経過で、肥厚性瘢痕は自然に縮小することがあります。

肥厚性瘢痕の見た目が気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科の医師を受診し、病変部の大きさや時期に適した治療を受けることが勧められます。

肥厚性瘢痕の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、通常、見た目だけで確定できます。ほかの疾患、特に悪性腫瘍(しゅよう)などの可能性を捨て切れない際には、組織の一部を採取して検査します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、圧迫療法、薬物治療、外科的治療が主となります。

圧迫療法は、スポンジ、シリコンゲルシート・クッションなどを病変部に当て、サポーター、包帯、粘着テープなどで圧迫する方法です。外傷や手術後では、傷が治ったら早いうちに圧迫療法で傷跡のケアをすると、肥厚性瘢痕になる率を低く抑えることができます。

薬物治療としては、ステロイド軟こう(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン軟こう)を病変部に塗ったり、ステロイド剤を病変部に直接注射する方法が効果的です。ステロイド軟こうには、炎症を抑制する効果、組織を委縮する効果などがあり、痛みやかゆみの症状軽減、盛り上がりや発赤の改善などの効果を認めます。ステロイド剤を注射する場合、多くは1~2回の注射によって痛みやかゆみの症状が軽減し、病変が平らになります。

肥厚性瘢痕の発生や進行、痛みやかゆみなどの症状にはアレルギー反応が関与しているため、トラニラストという抗アレルギー剤の内服が行われることもあります。

圧迫療法、薬物治療による保存的治療が一般的ですが、1つの治療法では不十分なことが多く、症状に応じていくつかの治療法を併せて行います。近年では、放射線の一種である電子線照射や、レーザー治療もしばしば行われています。

外科的治療は、手術で肥厚性瘢痕を切除し、皮膚をZ字のようにジグザグに縫い合わせると、引っ張られる力を分散させることができ、再発を防ぐことができます。体のほかの部分から皮膚を取ってきて、足りない部分に移植する植皮術も行われます。瘢痕拘縮がある場合には、手術を行うほうがよいとされます。

手術の後は、半年から1年間は傷に力が入らないような生活を心掛け、粘着テープを張るなどして皮膚を圧迫します。運動や仕事を切っ掛けに再発する例もあり、しばらく安静な生活を送る必要があります。

🇧🇩肥厚性鼻炎

肥厚(ひこう)性鼻炎とは、鼻粘膜の炎症が長引いて、粘膜が厚く、硬く、ごつごつと肥厚した病状です。

ウイルスや細菌感染による急性鼻炎を繰り返した場合、あるいは長引いた場合に起こります。また、鼻中隔(びちゅうかく)湾曲症があれば、湾曲によって広くなった鼻腔(びこう、びくう)側の粘膜が腫(は)れて、慢性肥厚性鼻炎が起こります。化学物質や物理的な刺激、さらに降圧剤や末梢(まっしょう)血管収縮薬の副作用でも起こります。

症状としては、鼻詰まり、嗅覚(きゅうかく)障害、鼻漏(びろう)、前頭部の頭痛などがみられるほかに、鼻部の不快感、イライラ感、鼻出血なども生じることがあります。鼻漏は粘性が多く、鼻汁がかみきれないこともあります。鼻漏がのどに落ちる、すなわち後鼻漏(こうびろう)もよく起こります。

この肥厚性鼻炎は、薬ではなかなか治りません。病状の原因を除去し、少しずつ炎症を鎮めていくことになります。症状がひどいケースでは、手術が行われます。肥厚した粘膜を減らすために、電気やレーザーで焼いて取り除いたり、アルゴンプラズマで凝固したり、切除したりして、鼻詰まりをとります。

🇧🇩肥厚性幽門狭窄症

胃の出口の幽門の筋肉が先天的に厚くなり、胃の内容物が停滞する疾患

肥厚性幽門狭窄(ゆうもんきょうさく)症とは、胃と十二指腸の境界部にある幽門の幽門輪という部分の筋肉が先天的に厚くなっていて、新生児の母乳やミルクの通りが悪くなる疾患。単に幽門狭窄症とも呼ばれます。

新生児の2000人に1人の割合でみられ、新生児が飲んだ母乳やミルクを噴水状に嘔吐(おうと)するケースもあります。

肥厚性幽門狭窄症の原因は、胃の出口で十二指腸につながる幽門の異常です。通常は食道から胃に食べ物が届くと、幽門を通って十二指腸に運ばれます。しかし、幽門の幽門輪の筋肉が厚くなって幽門が狭くなると、食べ物は先へ進めず逆流します。

なぜ幽門に筋肉が作用してしまうのか、根本的な理由はまだはっきりしていません。筋肉の肥厚は先天的な理由とされていますが、確定していません。しかし、統計的には男の子、特に第一子の男の子に多くみられるとされています。

肥厚性幽門狭窄の症状は、生後2~3週ころから1カ月にはわかるようになり、母乳やミルクを欲しがって飲んでも吐くようになります。最初はダラッと戻す程度ですが、嘔吐は治まらず、やがて口や鼻から噴水のように勢いよく吐き出します。

胃で消化する時間もないまま吐いてしまうので、空腹でまた飲みたがり、そして、母乳やミルクが胃にいっぱいたまったら嘔吐するという繰り返しを続けます。

結果、どんなに母乳やミルクを与えても、栄養を摂取できずに脱水します。栄養不足から体重も増加せず、元気がなくなってしまいます。

嘔吐が徐々にひどくなる、顔色が土色になる、尿量や排便量が減ってくるなどの症状がみられたら、すぐに小児科の医師を受診しましょう。

これらの症状を発見できずにいると、胃にたまった内容物が胃拡張を引き起こす恐れもあります。症状が軽いと、生理的な嘔吐と見分けが付かず、噴水状に吐き出して初めて肥厚性幽門狭窄症に気が付くこともあります。

また、噴水のような嘔吐が目立たないケースもあります。しかし、嘔吐量や鼻からもミルクが戻ってしまうことも、診断ポイントです。授乳時の様子に少しでも違和感を感じた時は、早急に医師に相談すると安心です。

新生児が栄養を摂取できずに嘔吐を繰り返すと、低カリウム血症の恐れが出てきます。肥厚性幽門狭窄症での激しい嘔吐により、体内のカリウムが消化液とともに吐き出されます。カリウムが欠乏すると、嘔吐や倦怠(けんたい)感が増します。

低カリウム血症は悪化すると、全身の至る個所に不具合が生じます。重症に陥ると、不整脈や四肢まひを引き起こします。

肥厚性胃幽門狭窄症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断は、比較的容易であり、最近では超音波検査で幽門筋の肥厚の程度まで測定することができます。

小児科の医師による治療は、新生児の吐き方の程度が著しくて食べ物が摂取できない場合には、輸液で栄養を補給してから、手術(ラムステット手術)をすることが基本になります。

まず点滴をして、体液のバランスを改善します。点滴と母乳やミルクの経口摂取を中止すれば、次第に嘔吐は治まります。次に胃の幽門の筋肉に切り込みを入れて、狭くなっている部分を広げます。手術は1時間くらいで終わり、入院は1週間から10日くらいすることになります。この疾患による後遺症などの心配は、ありません。通常の手術は1回だけで済み、手術後は母乳もミルクも飲めるようになります。

また、近年は内視鏡を使って幽門筋を広げたり(鏡視下手術)、アトロピン(硫酸アトロピン)という薬を静脈内に注射することにより、幽門筋を弛緩させて治療する方法を使うこともあります。

低カリウム血症に対する治療は、原因となる先天性肥厚性幽門狭窄症を改善することが有効ですが、新生児が自力で回復できない場合はカリウムを補充します。 

💅肥厚爪

爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態

肥厚爪(そう、つめ)とは、爪の甲の表面の中央部分が肥大化し、極端に盛り上がる状態。爪肥厚症、巨爪症、オニキクシス、ハイパートロフィーとも呼ばれます。

爪の甲は先端に向かって押し進むように長く伸びますが、何らかの原因で圧迫されて伸びが妨害されると、成長する部分が厚くなったりします。厚くなった部分は、後から伸びてくる爪の甲の成長を阻害し、さらに盛り上がってくるという悪循環になります。

肥厚爪の原因は、遺伝、物理的圧迫、けが、糖尿病、内臓の疾患、細菌感染、血行不良、栄養不足などさまざまです。

中でも、長期間にわたって爪に何らかの物理的圧迫が加わって、肥厚爪になることが多く、手の爪よりも足の爪でしばしばみられます。原因となる物理的圧迫としては、足の形に合っていない靴が挙げられます。特に、先端が細くなったハイヒールを履き続けた時、足の指先に体重がかかりやすく、足先に持続的に圧力がかかることになり、爪の甲がはがれてしまうことがあります。これを何回も繰り返した場合に、肥厚爪が起こることがあります。

同様の理由で、足の形に合っていないシューズで長距離ランニングした場合に、肥厚爪や、爪の両端が指の肉に食い込む陥入爪が起こることがあります。陥入爪、深爪が原因で、正常な爪の成長が妨げられ、肥厚爪が起こることもあります。

肥厚爪があると、爪が割れやすくなったり、はがれやすくなったりします。そのため、割れた爪が衣服や布団に引っ掛かり、はがれた部分から細菌が入って化膿(かのう)などのトラブルを起こすことがあります。

この場合、盛り上がった部分に触ると、激しい痛みがあり、ほかの爪にも移ります。靴を履くのが困難になるのはもちろんのこと、布団がこすれても痛みを感じます。また、肥厚爪の症状として、爪の変色も挙げられます。

この肥厚爪はたまに、爪白癬(そうはくせん、つめはくせん)と間違えられることがあります。白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)が感染して起こる爪白癬は、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもので、爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。症状が似ていても違う疾患ですので、水虫用の治療を独自で行うと、肥厚爪が完治するまでに時間がかかるなど、さらに厄介なことになる可能性があります。

肥厚爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、肥厚爪の原因がかなり多岐にわたっているため、その原因を見極めることがポイントになります。

症状が似ている爪白癬と鑑別するためには、皮膚真菌検査を行うのが一般的。ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察します。時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、肥厚爪の症状が軽い場合は、保湿してマッサージすることで少しずつ改善します。また、爪やすりで厚い部分を滑らかに磨いたり、磨き粉で仕上げ磨きしたりして、爪の成長を阻害する盛り上がっている部分を平らにすれば、正常な爪の甲が再生してきます。

肥厚爪の症状が重い場合は、局所麻酔下で爪の甲を根本から抜きます。手術後は、3カ月から半年程度、爪を薄く生やすための処置を続けます。

原因となる菌が同定された場合は、その増殖を止めたり、死滅させる抗生物質(抗生剤)を用います。

栄養不足が原因で肥厚爪を生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

内臓などの疾患が原因で肥厚爪を生じている場合は、その原因となる疾患を治療することが先決です。

自分でできる対処法としては、むやみに肥厚爪になった患部を触らないようにします。刺激を与えないことはもちろん、ほかの隣接する指と接しないように気を付けます。

肥厚爪にならないためには、いつも清潔を心掛け、正しい爪の切り方をしていることが大切で、自分の足に適した履きやすい靴を選ぶことも予防となります。どうしてもハイヒールを履く必要がある時は、なるべく長く歩かないようにします。

🇧🇩腓骨神経まひ

自力で足首、足指を上げることができなくなり、感覚の障害、しびれが生じる疾患

腓骨(ひこつ)神経まひとは、足関節と足指、下腿(かたい)外側に支配領域を持っている腓骨神経がまひし、自力で足首や足指を上げることができなくなる疾患。

腓骨神経は、下腿を走行する神経であり、膝(ひざ、しつ)関節の後方で坐骨(ざこつ)神経から分岐し、膝の外側を通り、腓骨の側面を下降して、足関節を通り足指に達します。

腓骨神経まひの原因として最も多いのは、膝の外側(腓骨頭部)への外部からの圧迫により生じるものです。車に同乗中、交差点で出合い頭の衝突事故が起こり、膝の外側をダッシュボードに打ちつけるといった形での腓骨頭骨折や、その他の膝の外傷、開放創や挫傷(ざしょう)などによって生じます。下肢の牽引(けんいん)などで仰向けに寝た姿勢が続いたり、ギプス固定をしている時に、膝の外側が後ろから圧迫されて生じることもあります。

長時間に渡って足を組む姿勢をとることや、草むしりのような膝を曲げた姿勢をとること、硬い床の上で横向きに寝ることで生じることもあります。関節リウマチによる関節の変形、ガングリオン(結節腫〔しゅ〕)などの腫瘤(しゅりゅう)、腫瘍(しゅよう)によっても生じます。

腓骨神経まひが生じると、足首や足指が下に垂れたままの状態となり、自力で背屈ができなくなります。これを下垂足(垂れ足)といいます。下腿の外側から足背(足の甲)ならびに小指を除いた足指背側にかけて感覚が障害されて、しびれたり、触った感じが鈍くなります。

具体的には、下垂足が明らかでない時でも、障子の敷居で足を引っ掛けたり、スリッパやサンダルが歩いているうちに脱げやすいといった症状がみられることがあります。

下垂足が明らかになると足首と足指が下に垂れた状態となるため、靴下や靴を履く際には、その都度座って片手で足を支えないと、うまく履くことができません。車の運転でも、右足にまひが起こればアクセルやブレーキを踏むことはできません。

重症になると、正座、和式トイレの使用はできず、下腿をしっかり保持できないので、杖(つえ)の使用が常時必要となります。深刻なのは、下腿部の疼痛(とうつう)と筋拘縮(こうしゅく)です。下腿部には常にしびれたような疼痛が持続して、血流障害が発生し、下腿全体の筋肉が拘縮、委縮を示します。放置すれば、下腿は廃用性委縮となり、スカートを身に着けることができなくなります。

腓骨神経まひの検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、下垂足を示して感覚障害があり、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。

腰椎椎間板(ようついついかんばん)ヘルニアや坐骨神経障害との鑑別診断が、必要なこともあります。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行います。

整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものは、保存療法を行います。保存療法には、圧迫の回避・除去、局所の安静、薬剤内服、運動療法などがあります。症状が軽く、足を組むなどの明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善で軽快することがほとんどです。

3カ月ほど様子を見て回復しないもの、まひが進行するものでは、手術が必要になります。骨折などの外傷や腫瘤によるものは、早期に手術が必要です。

神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術が行われます。神経の手術で回復の望みの少ないものは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術が行われます。下垂足のままだと、歩くことも困難で日常生活を送るのにも非常に不便ですから、足首を固定する距腿(きょたい)関節固定術が行われることもあります。

🇲🇳皮脂欠乏症

全身の皮膚が乾燥してカサカサし、細かくはがれ落ちてくる疾患

皮脂欠乏症とは、皮膚の表面の脂肪分が減っていくことで水分量も減っていき、全身の皮膚が乾燥してカサカサし、表面が細かくはがれ落ちてくる疾患。乾皮(かんぴ)症とも呼ばれます。

冬の寒い時期にできることが多く、中高年者に多くみられます。女性のほうが男性よりやや早い40〜50歳代から起こってきますが、強く出るのは60歳以降の男性です。

初期の症状としては、手足、特に下肢の皮膚がカサカサして脂気がなくなり、表面にウロコ状の鱗屑(りんせつ)が付着し、はがれ落ちてきます。かゆみもわずかにあるため、何となくかかずにはいられなくなり、そのために症状が悪化するという状態になり、二次的に湿疹(しっしん)の症状がみられることも多くなります。

進行すると、 亀(かめ)の甲羅のように皮膚がひび割れて、赤みが生じ、かゆみはかなり強くなります。さらに進行すると、乾燥性湿疹になり、夜中に目覚めるほどのかゆみが出ます。

この皮脂欠乏症は、皮膚の潤いを保っている3つの物質が減ることで起こります。皮膚は通常、皮膚の表面を覆っている皮脂膜、角質細胞と角質細胞の透き間を埋めている角質細胞間脂質、水分をつかまえて離さない天然保湿因子の3つの物質によって、潤いが保たれています。加齢とともに、皮脂、角質細胞間脂質、天然保湿因子ともに減り、角質で水分が保てなくなって、角質細胞がはがれて透き間ができ、その透き間から水分が逃げてしまうために起こります。

そして、種々の環境因子が、皮脂欠乏症を悪化させます。第一の因子が、日本の冬の低温、低湿という気象条件。そもそも、高齢者の皮膚は皮脂腺(せん)と汗腺の働きの低下のために、皮膚の表面の脂肪分が少なくなり、水分を保つことも困難になって乾燥を防止できず、カサカサしています。これが冬にはさらにひどくなるわけで、皮膚が非常に敏感になり、非常に弱い刺激でもかゆみの原因となってしまうのです。

皮脂欠乏症は、大気が乾燥する秋から冬に始まり、真冬になると症状はひどく、多くは春先まで続きます。しかし、高温、高湿で汗をかきやすい夏は、症状が軽くなり、自然に治ったりもします。

第二の悪化因子が、入浴です。高齢者は一般的に入浴が好きで、1日2回入ったり、長湯をする人が多いようです。入浴そのものはかまわないのですが、脂肪分の少ない皮膚は入浴により、さらに皮膚の表面の脂肪分が流れ落ちてしまうのです。

第三の悪化因子は、エアコンや電気毛布、電気シーツ、ホットカーペット。これらの電熱のために皮膚の水分が蒸発し、皮膚の乾燥化が進み、加温のために皮膚の表面の血行が促進されて、かゆみが増加します。

第四の因子が、下着です。高齢者は保温のためにラクダの下着を使用している人が多いようですが、直接、下着の繊維が皮膚に触ると、その刺激でかゆみを感じることがあります。

その他の悪化因子として、精神的な不安、イライラもかゆみに影響します。

皮脂欠乏症の検査と診断と治療

かゆみの原因が皮膚のカサカサにあるため、皮膚の表面に脂肪と水分を補って、人工の保護膜を作る必要がありますので、市販の保湿剤を使います。

保湿剤として、昔はワセリンとか硼酸(ほうさん)亜鉛華軟こうなどというベタベタした軟こうを塗ったのですが、最近は尿素軟こうを使うことが多くなっています。尿素は水分と結合する力が非常に強いので、尿素を含有した軟こうを皮膚の表面に塗っておけば、空気中の水分を吸収して皮膚の表面に薄い膜を作り、皮膚のカサカサを緩和してくれます。湯上がり、まだ肌に水気が残っているうちに塗ることが、効果的です。一日に、何回塗ってもかまいません。

それでも治まらずに、かゆみや赤みがある時は、皮膚科の専門医を受診します。医師の治療では、外用剤として保湿剤を用い、かゆみの強い時に抗ヒスタミン剤の内服を併用したり、湿疹の炎症症状の強い時に副腎(ふくじん)皮質ホルモン含有軟こうを用います。ホルモン含有軟こうの長期使用は避けるべきで、強い炎症症状が治まったら、ホルモンを含まない外用剤に変えます。

次のような工夫で、皮膚の乾燥はかなり予防することができますので、スキンケアを習慣にします。

毎日入浴する場合は、よほど脂ぎった人でもない限り、せっけんでゴシゴシ洗わないほうが、皮膚にとっては安全です。せっけんは洗浄力の強いものを避け、保湿剤入りのものを使うのが、お勧めです。保湿剤入りの入浴剤もあります。ナイロンタオル、ボディソープを使用すると、皮脂が取れ過ぎて悪化することがあるので、お勧めできません。

エアコンや電気毛布、電気シーツ、ホットカーペットなどの電気器具は、室内を乾燥させる元凶です。まず使い過ぎをセーブすることですが、加湿器、ぬれタオル、湯タンポ、観葉植物、水槽などで加湿の工夫をします。ただし、加湿器はカビが発生しやすいので手入れはまめに。

ラクダの下着を使用している人は、繊維の刺激でかゆみを感じることがありますので、肌に優しい木綿の下着を下につけることが大切です。ぴったりと長めの下着で、特にひざから下を覆えば乾燥を防ぐことができます。

できるだけ皮膚をかかないように気を付け、つめは短く切ります。精神的な不安、イライラもかゆみに影響しますので、安らかな気持ちで生活を送ることも必要です。規則正しい生活を心掛け、十分な睡眠を確保し、バランスの良い食事を取ります。刺激の強い食品、辛い食品はかゆみが増すので、避けるようにします。

🇲🇳肘関節内側側副靭帯損傷

野球の投球動作の繰り返しによって、肘関節の内側を支える靱帯に生じる障害

肘関節内側側副靭帯(ひじかんせつないそくそくふくじんたい)損傷とは、野球の投球動作の繰り返しによって肘関節の内側を支える靱帯に生じる障害。肘関節肘尺側(ちゅうしゃくそく)側副靭帯損傷とも呼ばれます。

肘関節は、上腕骨と橈(とう)骨と尺骨という3骨の間に生じた複関節であり、その周りは靭帯や腱(けん)などによって支えられています。

野球の投球動作では、テークバックからの加速期には、腕が前方に振り出される際に肘を外側に広げ、さらにその後のボールリリース期からフォロースルー期には、手首を手のひら側に曲げ、前腕を内側にひねるため、手首を曲げる作用をする屈筋と、前腕をひねる作用をする回内筋が付着している上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)という、肘関節の内側にある骨性の隆起に牽引(けんいん)力が働きます。

この投球動作の長年にわたる繰り返しにより、肘関節の内側にあって上腕骨と尺骨をつなぎ、肘関節の横ぶれを防ぐ役目をしている内側側副靱帯が損傷します。回内・屈筋群筋筋膜炎を起こしたり、上腕骨内側上顆炎を起こすこともあります。

野球の投球動作での肘関節内側側副靭帯損傷では、繰り返す牽引により内側側副靱帯が伸びた状態になっていることがほとんどです。これは、小さな断裂の繰り返しや靭帯組織の劣化によるもので、投球歴の長いピッチャーに多く発症します。

バランスのとれたフォームでの投球動作ならば、投球歴の長いピッチャーでも肘関節への負担は少なくなりますが、フォームのバランスが悪かったり、変化球を多投したりすると、肘関節内側側副靭帯損傷を発症する可能性が高くなります。

投球時の肘関節内側痛が、主な症状です。特に、テークバックからの加速期に痛みが起こります。通常、徐々に痛みが起こりますが、急に痛みが起こり投球が不能になることもあります。

日常動作では無症状のことがほとんどなものの、重症例では日常動作で肘がぐらつくような不安定性が生じたり、痛みが起こることもあります。

また、頻度は低いものの、不安定性により肘の内側の表面近くを走行する尺骨神経が損傷され、手の小指側(尺側)にしびれや感覚障害、握力が落ちるなどの運動動障害が生じることもあります。

野球によって肘関節内側側副靭帯損傷が生じるほか、転落などで手を突いて肘に外力が加わった時、スキーで転倒して肘に外力が加わった時、柔道などで肘の固め技を受けた時、アームレスリングで肘に強い外力が加わった時など、1回の外力で内側側副靱帯が損傷したり、完全に断裂することもあります。

外傷性の肘関節内側側副靭帯損傷では、受傷後すぐに肘が痛くなり、はれが生じ、痛みのため肘関節の運動が制限されます。

投球時に肘の内側が痛む場合は、肘関節内側側副靭帯損傷が疑われます。適切な治療を受けないと、競技生活を引退しても変形性肘関節症により肘の可動域が低下したり、尺骨神経遅発性まひを起こし、日常生活にも支障を来すことがありますので、早期に整形外科を受診することが勧められます。

肘関節内側側副靭帯損傷の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、投球時の痛みに加え、肘関節の内側にある骨性の隆起である上腕骨内側上顆の下端前方に圧痛があり、肘を外側に開くように力を加えると痛みが誘発される場合に、肘関節内側側副靭帯損傷を疑います。

X線(レントゲン)検査を行うと、靭帯付着部から剥離(はくり)した小さな骨片を認めることもありますが、正常な場合もあります。肘を外側に開くように力を加えて行うストレスX線(レントゲン)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査により、靭帯付着部に異常が認められることもあります。

整形外科の医師による治療では、投球禁止をした上、テーピングやギプスによる外固定を行って局所安静を図り、その後の筋力トレーニングで、手首を動かす屈筋と、前腕を内側にひねる回内筋の強化を行います。

ハイレベルの競技活動の継続を希望する野球選手などの場合や、不安定性により肘の内側を走行する尺骨神経に障害を来す場合、強い痛みと不安定性により日常生活に支障を来す場合には、膝(ひざ)や爪先(つまさき)の靱帯、腱、あるいは長掌(ちょうしょう)筋という前腕の筋肉にある腱を移植し、靱帯を再建する手術を行うことがあります。

スキーでの転倒、柔道などの固め技による外傷性の肘関節内側側副靭帯損傷の場合は、軽度から中等度の損傷であれば、テーピングやギプスによる外固定を2〜3週間行い、その後、徐々に筋力トレーニングを始めます。

🇲🇳肘トンネル症候群

肘の皮膚表面近くを通る尺骨神経が狭いトンネル内で圧迫されて起こる障害

肘(ひじ)トンネル症候群とは、肘の内側の皮膚表面近くを通る尺骨(しゃくこつ)神経が圧迫されて起こる障害。肘部管(ちゅうぶかん)症候群とも呼ばれます。

腕に走る大きな神経の1つである尺骨神経は、肘の内側にある内側上顆(ないそくじょうか)という骨の出っ張りの後ろを通り、その先にある骨と靭帯(じんたい)などで形成された肘部管という狭いトンネルをくぐって、手に伸びていきます。トンネル内は狭くゆとりがないため、慢性的な圧迫や引き延ばしが加わると、容易に尺骨神経まひが発生します。

肘トンネル症候群の原因は、現在では変形性肘関節症による肘関節の変形がその多くを占めています。変形性肘関節症は肘をよく使う人に発症しやすいことから、肘トンネル症候群は30歳以上の男性に多くみられます。一般に、利き手側に起こり、両手に同時に発症することはめったにありません。

尺骨神経は肘の皮膚表面近くを通っていて、何度も肘をついたり、長時間に渡って肘を曲げたままでいたりして、簡単に障害されます。野球のピッチャーは、スライダーを投げる際に腕を過剰にひねるため、肘トンネル症候群になりやすい傾向があります。

そのほか、肘関節部の骨折、肘部管を構成する骨が隆起した骨棘(こつきょく)、靭帯の肥厚、肘部管内外にできたガングリオン(結節腫〔しゅ〕)、外傷などから起こる場合もあります。 小児期の骨折によって生じた外反肘(がいはんちゅう)という、肘を伸展させると過剰に外側に反る変形によって、神経が引き延ばされて起こる場合もあります。

尺骨神経の働きは、手首の屈曲、小指と薬指の屈曲、親指を人差し指の根元にピッタリつける内転、親指以外の4本の指を外に開く外転、4本の指を互いにくっつける内転です。 知覚神経は、小指、薬指の小指側半分、手のひらの小指側半分を支配します。

尺骨神経が圧迫されたり引き伸ばされると、ほとんどの場合、最初は小指と薬指の小指側半分のしびれや痛み、感覚障害が起こってきます。また、尺骨神経は手のひら側と甲側の両方を支配しているので、指全体がしびれるのが特徴です。寝て起きた際にしびれていることが、しばしばあります。肘周辺のだるさ、前腕内側の痛みやしびれが出現することもあります。

尺骨神経の障害が進むと、親指の付け根の母指球筋以外の手内筋が委縮して、やせてきます。特に、手の骨と骨との間の筋肉がやせるので、指を開いたり閉じたりする力が弱くなったり、親指の内転困難によって親指と人指し指で物をつまむ力が弱くなったり、はしが使いづらくなったりなど、細かい動きがうまくできない巧緻(こうち)運動障害が生じます。顔を洗うために手で水をすくったりする動作も、難しくなってきます。

そのほか、手の筋肉が固まって指が曲がったままになる鉤爪(かぎづめ)変形(鷲手〔わして〕変形)と呼ばれる独特の現象が起こることもあります。

小指や薬指にしびれや痛みがあり、肘の内側にある内側上顆の後ろをたたくとしびれや痛みが走ったら、整形外科を受診して下さい。一般に、症状が軽いほど、早い回復が見込めます。手指の筋肉にやせ細りがあれば、急を要します。

肘トンネル症候群の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、損傷した神経の位置の特定するために、神経伝導試験を行います。親指の付け根の母指球筋以外の手内筋の筋委縮や鉤爪変形、両手の親指と人差し指で紙をつまみ、医師が紙を引く時に親指の第1関節が曲がるフローマンサインがあれば、診断がつきます。

感覚の障害がある時は、皮膚の感覚障害が尺骨神経の支配に一致していて、チネルサインがあれば、傷害部位が確定できます。チネルサインとは、破損した末梢(まっしょう)神経を確かめる検査で、障害部分をたたくと障害部位の支配領域に放散痛が生じます。

確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI検査、超音波検査など必要に応じて行われます。X線検査では、変形性肘関節症や骨折の経験などがわかりますし、肘を曲げた姿勢でX線検査を行うと、肘部管の狭窄(きょうさく)などもわかります。

首の病気による神経の圧迫や、糖尿病性神経障害などとの鑑別が必要で、問診で首の痛みや肩凝りがあるかなどを聞くこともあります。

整形外科の医師による治療は通常、筋肉の硬直を防ぐために理学療法で治療します。超音波治療、電気治療、ストレッチング、アイスマッサージ、アイシングを主に行い、夜間に肘が過度に曲がるのを避けるために添え木で固定したり、肘の負担を避ける肘用のパッドを着用したりします。

肘の圧迫や長時間の肘の屈曲など、明らかな誘因がある場合には、生活習慣の改善と局所の安静で軽快することが多い傾向にあります。ビタミン剤の内服も有効と考えられます。

筋委縮を起こしている場合や、肘関節部の骨折やガングリオンなどよって肘関節に変形を起こしている場合では、手術が必要になります。手術方法には、ガングリオンの切除、腱弓(けんきゅう、オズボーンバンド)の切開、内側上顆の切除、神経の前方移行術などがあります。

腱弓の切開は、尺骨神経を圧迫している膜状の組織を切る手術です。ほかの手術に比べて簡単ですが、再発する場合があります。手術後は、1週間ほど肘を固定します。

内側上顆の切除は、肘を曲げた時に内側上額で尺骨神経が引っ張られ、圧迫されないように、内側上顆を切除します。再発も少なく、肘トンネル症候群の手術としては、日本では最もよく行われています。手術後は、1週間程度の肘の固定が必要です。

神経の前方移行術は、尺骨神経を内側上顆の後ろから前側に移す手術です。手術方法には、前側の皮膚の下に神経を移す皮下前方移行術と、指を握る筋肉の下に移す筋層下前方移行術があります。皮下前方移行術では3週間程度、筋層下前方移行術では1カ月程度、それぞれ肘を固定します。

手術後は、神経の回復を促すために、ビタミンB12剤を服用したり、低周波療法などを行うこともあります。回復の早さは、神経の障害の程度によって異なります。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...