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2022/08/31

🇷🇺便の変化

●腸の働きについて

 人体の下半身からの出物として、腸からの大便という固形物、すなわちウンコがある。

 この大切な排泄物の出具合が悪くて、朝から「やれ下痢だ」、「また便秘だ」と、腹を抱えてうずくまったり、苦しんでいたのではいただけない。人間が健康を手に入れるには、やはり内臓の正常な働きが必要なわけである。

 そこで、腸の仕組みについて、まずは小腸から探っていこう。

 最近の生理学の教えるところによると、人間の小腸という消化器官は、取り出せば、七~八メートルにもなるという、とんでもなく長い管状の臓器である。自分の腹に手を当ててみても信じられないほどだろうが、通常、体の中では、およそ三メートルほどの長さに縮んで収まっている。

 なぜそんなに長いかといえば、人間が生きていくためには、胃で消化された食物から栄養やエネルギーを摂取、吸収しなければならないからである。 

しかも、小腸の内側は、絨毛(じゅうもう)の表面をまた絨毛でおおうという、無数の絨毛で埋め尽くされた構造で、必死に表面積を稼いでいる。その表面積は、何とテニスコート二面分に相当するという。さらに、一本の絨毛は約五千個の栄養吸収細胞からできており、小腸全体で千五百億個と推定される。驚くべきは、人体の機能、働きの素晴らしさである。

 こうした構造を持つ消化管である小腸は、胃から、かゆ状となって送り込まれた食物を、改めて消化したり、栄養を吸収し、大腸へ送り出す重要な役割を持つ。

 詳しくいうと、胃のほうから十二指腸、空腸、回腸に、小腸は大きく分けられる。それぞれが消化酵素を多量に含んだ腸液を分泌し、あるいは膵臓(すいえき)からの膵液、胆嚢(たんのう)からの胆汁も一緒に合わせて、最終的には、かゆ状食物から栄養を取り入れていくのである。

●栄養を吸収する小腸、便を形作る大腸

 かゆ状の食物が栄養のほとんどを吸収され、小腸を後にするのは、食後四~六時間といわれている。身ぐるみはがされた残滓、液状のカスとなって、大腸に到達する。

 盲腸から始まる大腸は、時計回りに上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、そして直腸に区別できる。

 この大腸の大きな役割は、先の液状のカスから水分と電解質を吸収し、固形物、すなわちウンコを作ることである。

 ウンコは、下行結腸からS状結腸にとどまる。その後、ある一定の量にウンコが達した場合や、胃に食物が入った刺激で起こる大きな蠕動(ぜんどう)運動があると、ウンコは直腸に送られる。この時の圧力を自律神経が察知して大脳に伝えると、便意を催すという仕組みだ。

この間、およそ二十四時間から七十二時間。口にした食物がようやく、腸の末端の肛門(こうもん)から出てくるのである。

このようにして、我々日本人は、一日に平均で百五十グラムから二百グラムほどのウンコを出すのである。一日当たり百五十グラムとして、八十年間生きれば、単純計算で五トン近くの排出となる。

 では、出てきた我々人間のウンコは、なぜ一様に臭いのであろうか。実はみな、腸に住む細菌のせいである。

 特別な環境で出生、飼育された無菌動物のウンコは、栄養を吸収された食べ物の残りカスだけだから、臭くない。一方、我々のするウンコは普通、三分の一から二分の一が腸内細菌ともいわれており、特有のにおいは腸内細菌の分泌物が原因なのである。

 言い換えれば、人間のウンコは細菌のウンコによって臭い、ともいえるのである。

 ところで、人間は誰でも、一生に一度だけ臭くない通じをする。生まれて一番最初にするウンコが、それである。

 胎内で、母親の免疫系に守られている胎児は、いわば無菌状態で、腸にも細菌がいない。そのため、赤ちゃんが胎内でためていて、生まれてすぐするウンコは、臭くないのである。

 しかし、生まれた翌日のウンコには、すでに大腸菌を始め、腸球菌や乳酸桿菌(かんきん)など、一グラム当たり一千億個の菌が見られるのである。 

●便という体からの情報は役に立つ

 先に、日本人の一日のウンコの量は平均で、百五十グラムから二百グラムと述べたが、アメリカ人はせいぜい百五十グラムである。

 これは、日本人のほうが植物繊維を含む食べ物を多くとっているからなのだ。人間の腸は、植物繊維を分解する酵素を持っていない。だから、植物繊維はそのままカスとして出てくるのである。「便秘気味の人は野菜を食べよ」といわれるのは、繊維質が残ったほうが便がかさばって出やすくなるからなのだ。

 よって、便秘も日本人よりアメリカ人のほうが多いのである。植物繊維を多くとっているアフリカ原住民には、一日に七百五十グラムもの便をする種族がいるとのこと。 

 比較ついでに、日本人とアメリカ人の一物はどちらが臭いかというと、ずばり答えはアメリカ人である。

 一般の日本人の食事は、低蛋白、低脂肪、高炭水化物、高食塩、高繊維。欧米人はその逆で、高蛋白、高脂肪、低炭水化物、低繊維。ウンコのにおいで特に臭いインドールや硫化水素は、みな蛋白質のアミノ酸が細菌によって代謝されてできるのである。

 また、植物繊維には、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を増やし、同時に悪玉菌が繁殖する前に排泄をうながすという働きも期待できる。加えて、ウンコの量を増すということは、薄めるということでもあるから、蛋白を多く摂取するアメリカ人のほうが一物が濃い。すなわち臭いといえるだろう。

 しかし、最近は日本人の食生活も急速に欧米化しているから、排泄物もどんどん臭くなっているはずである。 

 もう一つ比較すると、動物はみんな排泄行為をするのに、お尻(しり)をふくのは人間だけである。が、動物も人間も、消化器官の仕組みはたいして変わらない。

 コロコロとした丸いウンコができるウサギは、腸が長いために、水分を絞りとってしまうのである。我々人間も、便秘をすると固くてコロコロした一物が出るのは、徹底的に大腸で水分を絞りとられた結果のようである。

 さて、体内で不要になって排泄された大便も、実は、体外に出た後も役に立つ存在なのである。今、世の中はリサイクル・ブームであるが、ウンコも負けてはいない。自然農法やウンコを飼料にした豚や牛の飼育が見直されているし、リンやビタミンB12を大量に含む資源としても注目されている。 

 リサイクルの極端な例は、先のウサギのコプロファジー(食糞症)である。ウサギは一日一回、普通の便とは違うコプロファジー用の便をするが、それを食べられないようにしてしまうと、衰弱して死んでしまう。ウサギは草や木の葉を一度体内のバクテリアで発酵させ、出てきたウンコを食べることで、不可欠な蛋白質やビタミンを補っているようだ。

 人間の場合はそういう極端なリサイクルは無理にしても、体からの黄金の出物は健康の指標として役に立つのである。

 ウンコはいわば食べ物の残滓であり、カスであるが、二十四~七十二時間にわたる自分の体の情報、とりわけ胃腸のメカニズムがはっきりと現れる。

 体からのメッセージの解読法を心得ておくのは、誰にとっても決して無駄にはならないはずである。

 基本となる正常便の量は、一日に百~二百五十グラム。形は太めのバナナ状で、色は黄褐色が理想的だ。水洗便所の水に浮けば、もういうことはない。一日にちょっと茶色いバナナ二、三本も出ていれば、内臓はたいそう健康である証拠。

 平均百五十~二百グラムといわれる便の組成は、約七十五パーセントが水分、残り二十五パーセントが固形成分であり、意外なことに便の大部分は水分なのである。 

●厄介な下痢が起こるメカニズム

 健康の証(あかし)の正常便に対して、誰もが経験したことがある便のトラブルは、便秘と下痢であろう。

 二つの厄介な症状は、大腸の機能が正常に働かなくなった時に起こる。食べ物の栄養の約九割を吸収してしまう小腸に、トラブルはほとんど見当たらないといわれ、問題が生じるのは残りカスをウンコにして排泄する大腸なのである。

 まず、いわゆる下痢の原因は、大腸が水と酸・アルカリ・塩類の電解質を正しく吸収できないことによる。正常な便は七十五パーセント程度の水分を含んでいるが、この割合がさらに高くなると泥状になったり、液状になったりするのである。水分を大量に含んだままでは、便は固まらないという単純な理屈だ。

 しかしながら、下痢に至る過程は、主に二つが挙げられる。

 一つは、ストレスなどが原因で、腸の蠕動運動が激しくなり、水分を吸収し切れないまま内容物が直腸に向かってしまうもの。試験の前になると決まって、トイレにゆきたくなったなどという経験がある人も、多いことだろう。

 二つ目は、膵臓疾患などで、腸粘膜からの水分吸収が妨げられた時に起こるもの。二日酔いの下痢もこれに当たり、アルコールの作用によって、膵液の分泌が後退し、脂肪が分解されずに大腸へ送られるために、水分の吸収が妨げられるのである。

 牛乳を飲むと下痢をしてしまう人も、多いだろう。これは乳糖不耐症と呼ばれ、日本人では五人に一人の割合で存在する。牛乳に含まれる乳糖は、小腸で分泌されるラクターゼという消化酵素によって分解され、吸収される。乳糖不耐症の人は、このラクターゼが少ないため、乳糖は大腸で細菌によって分解される。この時に作られた乳酸や炭酸ガスが、腸を刺激して、腹痛や下痢を引き起こしてしまう。  

 ともあれ、アルコールや牛乳によるものはじきに治ってしまうが、下痢をともなった腹痛が起こったら食中毒、左下腹部が痛み、頻繁に下痢をする場合は急性大腸炎の疑いがあるので、注意を促しておきたい。専門医の診断を仰ぐのが賢明である。

 また、激しい下痢などのため脱水症になったら、常識にこだわらず大いに水を飲むことを勧めたい。体の水分が尿になって排出されるのは健康な生理的現象であるが、この下痢をしたり、吐いたりというのは、脱水作用といって非生理的なものであるといわれる。

 ことに子供の体には水分の予備が少ないから、十回ぐらい下痢をすると脱水症状を起こしてしまうことが多い。下痢の時には、余計に水を飲ませるべきである。 

●便秘を極度に気にする必要はない

 一方の便秘の原因を探ろう。例えば、消化のいいものばかりを食べて、繊維が足りない場合、材料不足のためになかなか便にならない。排泄まで時間がかかるのである。それでも、腸は水分をとれるだけとろうと律義に働く。結局、水分のないカチカチウンコになってしまうのである。

 トイレにゆくのを我慢して、便意を無視し続けることも原因。おおげさにいうと、しまいには便意の感覚がマヒする。せっかくウンコの元が直腸まで到達しても、便意が起こらなければ、ウンコはそのまま滞ってしまうわけである。

 この便秘には、個人差がある。仮に二日、三日出なくても、便が硬くなく、不快感がなければ正常といえる。昔から三、四日に一回の通じを習慣にしてきたが、全く不都合を感じないし、ずっと内臓の健全と体の健康を維持し続けている、という百歳人もいる。 

 東京都新宿区にある日本百歳会が、平成五年に新百歳人になった四百六十五人を対象に実施したアンケート調査で、便通についての有効回答を見ると、「毎日」が百八十六人、「一日置き」が七十一人、「二、三日に一回」が二十七人。「便秘がち」の人も九十八人いた。

 高齢になるにつれて、食事の量も運動の量も減り、従って排便の回数も少なくなるのは当然としても、若い頃からずいぶん間遠な百歳人もいた。一般に、排便は毎日、一定の時間にあったほうがいいようにいわれるが、それは望ましい形であって、必ずしもそうでなくてもいいようである。

 女性の中には、一週間くらいウンコが出なくても平気な人さえいる。それでも本人が苦痛でないならば、便秘とはいえない。少ししか食べなければ、内容物は少ないわけだから、なかなか出ないということもあるのだ。

 極端な例を挙げれば、宇宙食のような無駄を省いた食べ物を食べると、便の量は二分の一から四分の一に減るという。 

 俗に、便秘を長く続けると、糞便が腐敗して毒素が吸収されるというようなことがいわれるが、必ずしもそうではないようである。

 むしろ、便秘をすると体に悪いとか、おなかに汚いものがたまっているという気持ちそのものが、精神に悪影響を与え、さらに便秘が続くということもある。

 皮膚などは精神の影響を大きく受けるから、便秘はいけない、便秘で毒素が体に回ると肌が汚くなるなどと気にすること自体が、肌を悪くしていて、不健康でザラザラした皮膚の感じを与えるようにも思われる。

 事実、誰にとっても、快便というのは気持ちのよいものであるし、体の汚いものが一気に出ていったような気分がする。しかし、便秘気味でも、極度に気にするのはかえって体を不健康にしたり、社会生活、対人関係に悪い影響を与え、いろいろなことがうまくゆかない原因になったりすることは、よく覚えていただきたい。

●便の色と形で内臓の機能障害を知る

 世の中で、こういった便秘の悩みを持つ人は、男性より女性に多いようである。女性は生殖のために子宮と卵巣という器官を抱えているが、けっこう重さがある上に、生理時には多少膨張したりするので、隣り合った腸の蠕動運動を圧迫して便秘につながるのである。

 男性の精子を作るための生殖器官は、性器周辺にコンパクトにまとまっているのに対して、女性の生殖器官は形も大きく、メカニズムも複雑になっている。従って、腸に影響があるのも致し方ないことかもしれない。生理的には、ホルモンバランスも影響してくることなのである。

ただ、医師たちは女性たちの便秘に対して、心理的な理由もあると指摘している。特に、働く女性に多い「独特な羞恥(しゅうち)心」だというのだ。朝、ろくに朝食もとらずに家を出る。朝食をとったとしても、トイレの時間をゆっくりと確保できない。実際、何よりも化粧を優先させる女性が多いのである。

 仕事場では、便意を催しても、会社のトイレでは嫌なのである。男性から見たら不可解なことかもしれないが、「ウンチしている」というのは同性にも悟られたくないのだという。我慢していると、そのうち便意が消える。そんなことを繰り返しているうちに、習慣性の便秘になることも少なくないというわけだ。 

 習慣性の便秘はともかくとして、一般の人の便秘の主要原因は、結局、水分の吸収異常であった。このトラブルを防ぎ、大腸の機能を正しく保つには、食物繊維と乳酸菌が不可欠である。

 食事で野菜や海草を多くとるように心掛け、広く出回っているヤクルト菌、ビフィズス菌などの乳酸菌を含む飲料やヨーグルトも利用したらよいだろう。乳酸菌は乳酸や酢酸を作り出し、腸内を酸性に保つ。この酸性の刺激が腸の蠕動運動を盛んにし、感染予防にも一役買う。

 大腸の調子が整えば、立派な便が規則正しく出る。踏ん張れる。快調な毎日を送れるのである。  

 さて、下痢や便秘のほかにも、自分の体からの黄金の出物は、その色や形で胃腸のメカニズムの異常を知らせてくれる。自分の便を見れば、病気を発見できる場合もあるのだ。

 ふだんの正常便と違う白っぽい便が出たら、肝臓や胆嚢などの異常によって、胆汁が腸に送られなくなったことを意味する。要するに無着色のウンコだ。

 次に、脂肪分をとりすぎれば、すっぱいにおいのベタベタした便になるし、白いブツブツがあり、しかもプカプカ浮くウンコが出たら、脂肪便である。これは、膵臓から分泌され脂肪を分解する膵液の不足によるもので、特に高カロリー食を好む美食家は用心が必要。  

 ほかに、肉眼で見る便の色で注意したいのが、血の混ざった便。これには二種類あって、一つは真っ赤な血便。これは肛門に近いところの出血によるもので、粘液便なら直腸ガン、それ以外なら痔(じ)の疑いがある。

 もう一つは、同じ出血でも黒い便が出る場合。こちらは胃や小腸、大腸が出血し、それが腸管を通過するうちに酸化して黒色になるというパターンである。その他、黒い便は、肉食を好む人にも多いという。

 形で注意したいのは、大腸ガンで腸狭窄(きょうさく)を起こせば、便が細くなること。

 いきなり病院に担ぎ込まれる前に、毎日自分の目で、便からのメッセージを読み取る能力を養っておくのが、内臓へのいたわりというものである。

2022/08/16

🇹🇼閉経後膣委縮症

閉経後に女性ホルモンのレベルが低下し、膣粘膜の内層が委縮して薄くなる状態

閉経後膣委縮症とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、膣壁が委縮して薄くなり、弾力性を失う状態。膣委縮症とも呼ばれます。

生理が止まった閉経後の女性は、エストロゲン(卵胞ホルモン)やプロゲステロン(黄体ホルモン)などの女性ホルモンの減少によって、さまざまな体の変化を経験します。その中でも、多くの女性が経験するのが、閉経後膣委縮症です。

女性生殖器系の器官である膣は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。膣の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。膣壁の内層は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この膣の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、膣には自浄作用という働きがあります。膣壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、膣内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより膣内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

閉経後の女性の場合、膣壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、エストロゲンが不足してくると膣のひだが少なくなるとともに、膣壁そのものも委縮して薄くなり、膣分泌物の低下などが原因でコラーゲンが少なくなり、膣の乾燥感も起こります。

それとともに自浄作用も低下して、細菌やカビが繁殖するために、充血して炎症を生じる膣炎が半数に起こります。これは、委縮性膣炎、あるいは老人性膣炎と呼ばれます。

委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。膣壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、膣入口や外陰部の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感、痛みなどの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。

エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。

閉経後膣委縮症、委縮性膣炎は必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。

閉経後膣委縮症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣の内部や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。さらに、細菌検査を行い、カビや細菌の有無を調べます。同時に、がん細胞の有無も確認します。

明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。

近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に、膣健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付(ちょうふ)剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。

軽度の閉経後膣委縮症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った膣錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。

閉経後膣委縮症、委縮性膣炎の多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。

外陰炎、外陰掻痒症を併発している時は、平行した治療で症状の改善を図ります。子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。

🇹🇼閉塞隅角緑内障

突然眼圧が高くなり、激しい目の痛みや頭痛が生じる緑内障

閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障とは、眼内液である房水の出口を虹彩(こうさい)の根部がふさぎ、房水の流出が障害されて、急激に眼圧が上昇する疾患。緑内障発作、急性閉塞隅角緑内障とも呼ばれ、放置すれば短期間に失明する可能性がある疾患です。

房水の出口である前房隅角部が狭くなっている場合に、起こりやすくなります。その原因としては、生まれ付きの素因、また、強い遠視や老化のために、水晶体が膨らんで虹彩を持ち上げ、隅角部が狭くなることが挙げられます。さらに、精神的過労、睡眠不足、精神的な興奮、さまざまな生活上の誘因も考えられます。

高頻度でみられるのは、50歳以上の遠視の女性です。

自覚症状としては、急激な視力障害と、裸電球を見ると回りに虹(にじ)が見える虹視が特徴的。黒目の白濁、白目の充血、瞳孔(どうこう)の散大が起こるほか、激しい眼痛、頭痛、吐き気、嘔吐(おうと)などを伴うこともあります。頭痛や嘔吐が激しい時は、ほかの内科的疾患と誤りやすいので、注意が必要です。

この閉塞隅角緑内障の経過は急激で、視神経の急激な血行不良から神経線維が一気に、大量に死滅し、時には1日で失明してしまいます。発作が起きたら、数時間以内に専門医を受診します。

閉塞隅角緑内障の検査と診断と治療

閉塞隅角緑内障(緑内障発作)では、目の症状以外に頭痛、吐き気、嘔吐などの全身症状がみられるため、眼科以外の内科や脳外科などの診療科を受診してしまうことがありますが、視覚障害がないかどうかの確認をすることが重要です。

眼科の医師による検査では、通常は60〜80mmHgの急激な眼圧上昇と、隅角検査で閉塞隅角、充血や瞳孔の散大を認めます。

治療では、まず目を冷やし、グリセリンの内服、縮瞳剤の点眼、高浸透圧剤の点滴などで、眼圧を下げるようにします。しかし、多くは再発するため、眼圧が下がったら、房水の出口を閉じている周囲虹彩切除を主とした手術や、レーザーによる虹彩切開を行います。

最初は片方の目だけに発作が起こっても、早晩、両目に起こることが多いので、予防のために、もう一方の目の虹彩切除、またはレーザー切開が必要です。

あらかじめ、閉塞隅角緑内障を起こす危険性があることがわかれば、予防的処置を講ずることができますので、強い遠視の人、40歳すぎの人、眼球の前部にある前房が浅い、眼球が小さいなど生まれ付きの素因があると指摘されたことのある人では、定期的に緑内障の眼圧検査を受けることが大切です。

日常生活では、紅茶、酒、コーヒーなどを大量にとることを控え、水分も控えます。加えて、精神的ストレスのたまらない生活を送るように心掛けます。

🇹🇼閉塞性血栓血管炎(バージャー病)

手足の指の動脈が詰まって、指が腐ってくる疾患

閉塞(へいそく)性血栓血管炎とは、手足の爪(つめ)の周囲や指の間に、治りにくい傷ができて、ひどくなると足の指が腐ってくる疾患。1900年に最初に報告者したアメリカ人の名前からバージャー病とも、特発性脱疽(だっそ)とも呼ばれます。

脱疽または壊疽(えそ)とは体の組織の一部が生活力を失う状態のことで、このような病変が手足の指に起こるのは動脈が詰まるためです。特に膝(ひざ)から下の足と腕の動脈が、原因不明の炎症によって血管の壁が厚くなり、血流障害ができるために、そこで血液が固まり、詰まってきます。

閉塞性血栓血管炎の原因は不明ですが、発症には喫煙が深く関係しており、たばこをやめると疾患が進行しない特徴があります。一説では、原因は口腔内の細菌、特に歯周病菌にあると指摘されています。発症者数は、日本国内で推定約1万人。男女比は10対1と男性が多く、20〜40歳代を中心に発症しています。

症状としては、膝の下の血管が詰まった場合、足先が腐ってきます。ほとんどの場合、両方の足先に病変が出現します。腕の動脈が詰まれば、手の指に壊疽が出現します。

壊疽は血管に閉塞性の病変が起きた後、数年間この閉塞に近い状態が続いた場合に起こるので、閉塞性血栓血管炎の始まりの血管炎では、指先のしびれ感、冷感として自覚されます。進行すると、長い距離を歩くと痛みが起こるようになり、休息しながら歩くようになる間欠性跛行(はこう)を生じます。さらに進行すると、手足の静脈にも炎症を起こし、静脈に沿って赤く腫(は)れ、安静にしていても激しく痛み、壊疽の状態となります。

動脈硬化によって下肢の動脈が詰まる閉塞性動脈硬化症も、閉塞性血栓血管炎と同じような症状を来しますが、閉塞性動脈硬化症は高齢者に多く、40歳以下の青年や壮年にはほとんど発症していません。

閉塞性血栓血管炎の検査と診断と治療

検査をすると、血管が閉塞した部位より先の動脈は、拍動が触れなくなります。四肢の血圧から足関節/上腕血圧比を測ることにより、下肢虚血の重症度の判定に役立ちます。確定診断には、血管造影検査が必要になります。血液検査では、特徴的な所見はありません。

壊疽、脱疽というと、すぐに手足の切断を思い浮かべる人が多いようですが、傷が治りにくくても、疾患が指先などに限られている間は治療が可能です。

薬物療法としては、血液の循環を改善して血栓を予防するために、血管拡張薬や抗血小板薬が用いられます。重症例に対しては、多くの場合、詰まっている動脈を元通りに開通させることは不可能ですが、閉塞している部位の状態によって可能であれば、バイパス手術などの血行再建を行います。

バイパス手術が適さない場合は、交感神経を切除することによって、末梢(まっしょう)血管を拡張させ、血流をよくすることを目的に交感神経節ブロックが行われています。足の場合には腰の交感神経、手の場合には胸の交感神経を手術で切除します。壊疽が進行して各種の治療が無効な場合には、手足の切断が必要になります。

治療後の生活上の注意としては、手足の保温と清潔を心掛けます。傷を付けると、壊疽の再発の引き金となりますので、靴下を履く、靴擦れを起こさないように大きめの靴を履くなど、注意が必要です。散歩などの適度な運動は、お勧めです。また、この閉塞性血栓血管炎はたばこを吸う人の発症率が高いので、禁煙を守ることも必要です。

発症した人のうち、多くは動脈の病巣は詰まったままの状態で、血行再建のバイパス手術などができるのはごく少数です。しかしながら、日ごろの注意をよく守れば、疾患の進行を食い止め、再発を減らすことができます。直接、生命に関係するような大切な臓器である心臓、脳、内臓などの動脈が侵されることはありません。予後も同年代の健常人と変わりありませんが、指の切断を必要とすることもあり、生活の質(QOL)が脅かされることは否めません。

🇲🇴閉塞性動脈硬化症

血管の病変が手足の動脈に慢性的に起こっている疾患

閉塞(へいそく)性動脈硬化症とは、手足の血管の動脈硬化によって引き起こされる疾患。主に40〜50歳以降に発症します。

動脈に脂肪分が沈着して粥状(じゅくじょう)硬化(アテローム硬化)が起こると、血管の内膜が肥厚して内腔(ないくう)が狭くなったり、潰瘍(かいよう)ができたりします。結果として、血流に障害が起き、血液が固まって血栓を生じ、詰まりやすい状態になります。こういった血管の病変が末梢(まっしょう)動脈、すなわち手足の動脈に慢性的に起こっているのが、閉塞性動脈硬化症です。

閉塞性動脈硬化症のある人は、手足の動脈だけでなく、全身の血管にも動脈硬化を来している場合が少なくありません。3割の人で冠動脈疾患の合併、2割の人で脳血管障害の合併が認められます。

発症しやすいのは、糖尿病、高血圧、高脂血症、喫煙などの動脈硬化の危険因子を持っている人。食生活やライフスタイルの欧米化により、動脈硬化を基盤とする閉塞性動脈硬化症が急速に増えています。

初期の症状は、足の冷感やしびれです。進行すると、短い距離を歩いただけで、ふくらはぎや太ももの裏側が重くなってきたり、痛みを感じるようになります。2〜3分休むとよくなり、再び歩くことができます。この間欠性跛行(はこう)や足のしびれなどの症状が神経痛の症状と似ているために、勘違いされて見逃されることも多く見受けられます。

さらに進行すると、安静時にも痛みが現れるようになります。病変がある動脈で、急に血液が固まって急性閉塞が起きた場合には、24時間を経過した後で、筋肉に壊死(えし)が起こることもあります。

閉塞性動脈硬化症の検査と診断と治療

検査では、血管が閉塞した部位より先の動脈は、拍動が触れなくなります。四肢の血圧から足関節/上腕血圧比を測ることにより、さらに詳しく下肢の虚血を診断できます。確定診断には、血管造影検査が必要になります。

初期の冷感やしびれに対しては、血管を広げる血管拡張薬や、血液を固まりにくくする抗血小板薬を中心に治療が行われます。手足の痛みが強く、ひじや、ひざから上の比較的狭い範囲で慢性の動脈閉塞が起きている場合には、カテーテル治療、レーザー血管形成術、バイパス手術、血管新生療法などが行われます。

カテーテル治療は、狭心症や心筋梗塞(こうそく)の治療で行われるバルーン療法と同じ血管内治療。閉塞した部位にカテーテルを通し、そこで風船を膨らませて閉塞を治した後、再閉塞を防ぐためにコイルを留置します。レーザー血管形成術は、閉塞部近くまでカテーテルを挿入し、レーザー光を発して血栓や肥厚した内膜を霧状に散らす療法。

バイパス手術は、閉塞した動脈の代わりに静脈や人工血管を使ってバイパスを作り、動脈の血行を再建する治療。血管新生療法は、肝細胞を増殖させる物質の遺伝子が血管を新しく作ることがわかったため、それを使って行う新しい治療。血管を新生する因子(HGF)を産生する遺伝子を含む医薬を筋肉に注射し、新しい血管を誕生させて血流をよみがえらせます。

治療方法は数多くあるものの、閉塞性動脈硬化症が重症になり、壊死が進行した場合は、足の切断が必要になることがあります。日本では毎年、1万人程度が足の切断を余儀なくされていると推定されます。

この閉塞性動脈硬化症は、糖尿病や高血圧、高脂血症がある人に起こりやすいので、このような既往症のある人は、食生活を正して食べすぎを避け、減塩を守ること、ストレスを解消すること、禁煙をすることが必要です。

また、足の症状が出るまでは、休みながらも繰り返し歩くように心掛けます。歩くことにより、側副血行路が発達し血行が改善します。靴下、毛布などを使って、足の保温にも努めます。寒冷刺激は足の血管をさらに収縮させ、血液の循環を悪くさせるからで、入浴も血行の改善に役立ちます。足はいつも清潔にしておき、爪(つめ)を切る時は深爪をしないようにし、靴も足先のきつくないものを選ぶようにします。

🇲🇴閉塞性無精子症

精巣の中で精子が作られているものの、精子を運ぶための精路が途中で閉塞している状態

閉塞(へいそく)性無精子症とは、男性の精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精子が作られているものの、精子が精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞して状態。精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、射出精液中に、卵子と結合して個体を生成する精子が認められません。

男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。

運動能力を持つ男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。

男性の100人に1人は、射出精液中に精子が認められない無精子症といわれています。この無精子症は、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。

閉塞性無精子症は精巣自体の造精機能に障害がないのに対して、非閉塞性無精子症は精子が精巣から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射出精液中に精子が認められない状態を指しています。

閉塞性無精子症は、無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。非閉塞性無精子症のほうは、無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。

閉塞性無精子症の原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。

一方、非閉塞性無精子症の原因となる疾患は、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張した精索静脈瘤(りゅう)などです。

閉塞性無精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。加えて、精巣の大きさに問題がなく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が正常値で、精路に閉塞部位が認められれば、ほぼ閉塞性無精子症と判断できます。

ただし、性腺刺激ホルモンの値が正常値でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。

泌尿器科の医師による閉塞性無精子症の治療では、精子が精巣から体外へ出ていく精路を再開させる精路再建手術を行います。閉塞部位が短く手術でつなぎ合わせることができれば、精液に精子が出るようになり、夫婦生活による自然妊娠も期待できます。

先天性の精管欠損症などで閉塞部位が長い場合は、手術では治療できません。この場合は、閉塞性無精子症の人では精巣で精子が作られているため、精巣精子採取法によって、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出し、人工授精、体外受精、顕微授精などという方法を用いて妊娠を期待します。

    閉塞性無精子症と診断された段階で、我が子をあきらめる必要はありません。 

🇲🇴ページェット病

乳房、外陰部、肛門部に発生する皮膚の異常

ページェット病とは、乳房、わきの下、外陰部、肛門(こうもん)部などに発生する皮膚の異常。

通常、乳房(にゅうぼう)ページェット病と、乳房外ページェット病に分けられます。前者は、乳がん、すなわち乳管浅部がんの皮膚への浸潤で、イギリスの外科医ジェームス・ページェットによって発見されました。後者の多くは、がん前駆症と見なされます。

症状は一般に、かゆみやムズムズする違和感から始まり、淡紅褐色から鮮紅色の赤色調の色素斑(はん)として、病変が皮膚に現れます。乳房にできるものは、湿疹(しっしん)様の変化のほか、乳頭のびらんがあります。腫瘤(しゅりゅう)は触れません。

乳房外にできるものは、男女ともに外陰部を中心に発生し、わきの下も含めて、体臭のもとであるアポクリン汗腺(かんせん)の多い皮膚に同時に多発することもあります。男性ではペニスの根元に病巣の中心を持つことが、また、女性では太ももの根元に左右同時に発生することが多いようで、時に脱色素斑もみられます。

いずれも赤みの強い、ジトジトした局面で、湿疹として治療されている場合が多いので、注意が必要です。乳房外にできるものは、男性ならば、いんきんたむし、女性ならば、カンジダ症と間違いやすく、市販の湿疹や水虫の薬を塗り、医師に診せてもページェット病と診断が確定できずに時間がたってしまいがちです。

診断や治療が遅れれば、真皮内に浸潤してページェットがんになり、びらんや潰瘍(かいよう)を伴うようになり、予後不良となる場合があります。乳房外ページェット病の場合、日本では高齢者に好発して、男性が女性の2倍ほど多く、女性のほうが多い欧米と異なっています。

ページェット病の検査と診断と治療

長い間続いていた皮膚の異常が急に変化して、びらん、潰瘍を生じたり、大きさが増した時には、すぐに皮膚科専門医の診断を受けます。

乳房外ページェット病の場合、病変が外陰部であるため病院に行くのが恥ずかしく、いんきんたむし、湿疹、カンジダ症と自己診断して市販薬を購入し、使用している発症者を多く見掛けます。当然のことながら、これらの自己治療には反応しません。

専門医が視診すると診断がつくことが多いのですが、湿疹など他の皮膚病との鑑別は必ずしも簡単ではありません。確実に診断するためには、病変の一部を切り取って組織検査をする生検が必要です。

 ページェット病の治療法としては、外科的切除が原則です。外科手術以外の方法として、体力のない高齢者に対する放射線照射、抗がん剤による化学療法などが行われていますが、あまり効果は期待できないとされています。

切除範囲の決定には、手術前に病巣辺縁部から少し離れた部位で、多数箇所の生検を行います。乳房外ページェット病では、組織学的には乳房ページェット病ではみられない表皮内におけるページェット細胞のスキップ現象がみられることが多いため、切除範囲を決定するのが容易ではありません。

ページェット病の原発巣が大きい場合は、ページェットがんに進行していることもあり、特に隆起性病変となっている時は、進行がんを疑います。一方で、意外に早く浸潤してリンパ節に転移する場合がありますので、MRI検査あるいはCT検査により、リンパ節の検索も行ったほうがよいとされています。

手術では、病巣辺縁から3~5センチ離して、皮下脂肪組織の中層の深さで切除します。広範な欠損となりますが、一般的には植皮で修復されます。リンパ節転移が疑われる場合には、リンパ節郭清(かくせい)術を行います。

女性の乳房外ページェットがんの進行例では、時に尿路変更や人工肛門の造設を必要とし、会陰部の組織欠損に対しては筋皮弁などを用いた再建手術を行います。

予後は、ページェット病かページェットがんかで全く異なります。ページェット病であれば、根治手術さえなされれば予後は良好です。ページェットがんでは、転移の程度にもよるものの予後は良好とはいえません。

🇭🇰ベーチェット病

多彩な症状を示す膠原病類縁疾患

ベーチェット病とは、原因不明の膠原(こうげん)病類縁疾患。目のぶどう膜炎に加えて、口腔(こうくう)粘膜のアフタ性潰瘍(かいよう)、皮膚症状、外陰部潰瘍を主症状とし、血管、神経、消化器などの病変を副症状として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とします。

疾患名は、トルコの医師フルス・ベーチェットが1936年、初めて報告したことに由来しています。日本では現在、厚生労働省の特定疾患医療に認定されている難病の一つで、平成19年3月末現在、ベーチェット病の特定疾患医療受給者数は16638人を数えます。

地域的には、中近東諸国や地中海沿岸諸国、日本、韓国、中国に多くみられるため、シルクロード病ともいわれています。日本においては北海道、東北に多くて、北高南低の分布を示し、男女比は1対1、20歳代後半から40歳代にかけての働き盛りに、多く発症しています。

疾患の原因は、現在も不明です。しかし、遺伝因子など何らかの内因と、感染病原体やそのほかの環境因子など何らかの外因が関与して、白血球の異常が生じるために発症すると考えられています。単純な遺伝性疾患と捕らえるのは、妥当ではありません。

内因中の遺伝因子で一番重要視されているのは、ヒトの組織適合性抗原であるヒト白血球抗原(HLA)のHLA-B51というタイプです。HLAのうちB51を持っている日本人の一般的割合は10~15パーセントですが、べーチェット病の発症者では50~60パーセントと非常に高い割合になっています。

また、そのほかの遺伝因子についても、発症や病状に影響を及ぼす可能性が指摘されています。

外因としては、ある種の工業汚染物質の影響を考える説もありますが、虫歯菌を含む細菌やウイルスなどの微生物が関わっているのではないかという考え方が有力です。

ベーチェット病の主な症状は、以下の4症状です。

●目の症状 

この疾患で最も重要な症状が目のぶどう膜炎で、ほとんど両目が侵されます。ぶどう膜とは、虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜の総称です。

目に最初に出現する自覚症状として最も多いのは、目のかすみや視力低下。医師が細隙燈(さいげきとう)顕微鏡で見ると、角膜と虹彩とに囲まれた前眼房が混濁し、ベーチェット病のぶどう膜炎特有の白色の蓄積物が認められます。これを前眼房蓄膿(ちくのう)といいます。

再発を繰り返しながら、徐々に視力低下を来しますが、発症者本人がその再発を直接的に自覚する場合が多く、眼発作と呼ばれています。障害が蓄積され、網膜脈絡膜炎に進む例では、失明に至ることもあります。

●口腔粘膜のアフタ性潰瘍

頬(きょう)粘膜、舌、口唇、歯肉に白く、痛みのある、アフタという円形の潰瘍ができます。初発症状として最も頻度の高い症状ですが、経過を通じて繰り返しできることも特徴です。

●皮膚の症状

皮膚に結節性紅斑(こうはん)や、にきびのような発疹(はっしん)がみられます。結節性紅斑は、隆起性で圧痛を伴う紅斑が手足に現れます。にきびのような発疹は、前胸部、背部、頸部(けいぶ)などに現れます。

皮膚は過敏になり、かみそり負けを起こしやすかったり、針反応といって、注射や採血で針を刺した後、赤く腫(は)れたりすることがあります。

●外陰部の潰瘍

男性では陰嚢(いんのう)、陰茎、亀頭に、女性では大小陰唇、膣(ちつ)粘膜に有痛性の潰瘍がみられます。外見は口腔粘膜のアフタ性潰瘍に似ていますが、深掘れになることもあり、傷跡を残すこともあります。ベーチェット病に特徴的な症状で、しばしば発症者が自らの病気を自覚するきっかけになります。

4つの主症状以外に、以下の副症状があります。後期に起こる症状であり、生命や予後に影響を及ぼします。

●関節炎

膝(ひざ)、足首、手首、肘(ひじ)、肩などの大関節が侵され、一般的には、むくみがみられます。急性、亜急性で繰り返す場合と、慢性に持続する場合があります。非対称性で、変形や剛直を残さず、手指などの小関節が侵されない点で、関節リウマチとは異なります。

●血管病変

この疾患で大きな血管に病変がみられた時、血管型ベーチェット病といい、圧倒的に男性に多い病型です。動脈、静脈ともに侵されますが、静脈病変が多く、深部静脈血栓症などの原因となることがあります。深部静脈血栓症は下肢に多くみられ、皮下静脈に沿った発赤、圧痛と周囲のむくみが主な症状です。

動脈病変は少ないのですが、大動脈炎を起こしたり、肺動脈炎から大量喀血(かっけつ)を来すことがあります。血管病変に伴う脳血管障害や心筋梗塞(こうそく)を起こす場合もあります。

●消化器病変

腸管の潰瘍を起こした時、腸管型ベーチェット病といいます。主症状は、腹痛、下痢、下血など。部位は右下腹部に当たる回盲部が圧倒的に多く、上行結腸、横行結腸にもみられます。潰瘍は深く下掘れし、消化管出血や腸管穿孔(せんこう)により、緊急手術を必要とすることもあります。

●神経病変

神経症状が前面に出た時、神経型ベーチェット病といいます。難治性で、男性に多い病型です。髄膜(ずいまく)炎、脳幹脳炎として急性に発症するタイプと、片まひ、小脳症状などの神経症状に加えて認知症などの精神症状を来し、慢性的に進行するタイプに大別されます。慢性的に進行するタイプは特に予後不良で、あまり治療も効きません。

●副睾丸(こうがん)炎

男性に頻度が高く、特徴的症状として挙げられています。睾丸部の圧痛と、むくみを伴います。

ベーチェット病の検査と診断と治療

ベーチェット病の主症状が2つ以上あれば、定期的な経過観察が重要となりますので、リウマチ・膠原病科、眼科、皮膚科の専門医を受診します。

診断のための特殊な検査はなく、これがあればベーチェット病だと診断できる特別な症状もありませんが、主症状と副症状から総合的に診断が行なわれます。HLA―B51陽性や針反応は、診断の参考になります。

主症状がすべて出現した時は診断はそれほど難しくはありませんが、副症状が主体になる時は診断が困難なことがあります。また、多彩な症状は一度に出てくるわけではなく、長い年月をかけて症状がそろい、初めてベーチェット病と診断される場合も少なくありません。

目、口、皮膚、外陰部の4主症状すべてがそろったものを完全型ベーチェット病、2~3主症状に加えて2副症状を示したものを不全型ベーチェット病と呼ぶこともあります。

ベーチェット病の症状は非常に多彩ですので、現在のところ、すべての症状に対応できる単一の治療はありません。急性炎症性発作を完全に食い止める治療法もなく、いかに発作を軽症化し、回数を減らすかが治療の最大の課題となっています。

現在の治療は、ステロイド剤(副じん皮質ホルモン)と免疫抑制剤が中心となっています。生命に影響を及ぼす臓器病変や、重篤な目の病変などでは、高用量のステロイド剤や免疫抑制剤を含む強力な治療が行なわれます。

一度臓器病変を起こした場合や、血管型、神経型、腸管型に分類される特殊型ベーチェット病の場合は、症状が軽減、解消した後も容易に再燃するのを防ぐため、少量のステロイドを飲み続けるケースが多くなります。

難治性の目の病変に対しては、抗腫瘍(しゅよう)壊死因子抗体のインフリキシマブを使用することもあります。インフリキシマブは世界に先駆けて2007年1月、日本で保険適用となったもので、まだ長期成績は出ていませんが、従来の治療薬にない効果が期待されています。

皮膚などの軽度の症状や、症状が軽減、解消した時期には、コルヒチン、サラゾピリンなども用いられます。

主症状に関しては、慢性的に繰り返し症状が出現するものの、一般に予後は悪くありません。10年くらい経つと疾患の勢いは下り坂となり、20年くらいを越えるとほぼ再燃しないと見なされています。ただし、目の病変については、治療が遅れるなどすると失明することもあり、若年者の失明の重大な原因の一つです。特殊型ベーチェット病も、いろいろな後遺症を残すことがあります。

🇭🇰ベッカー母斑

思春期前後になってから肩などに生じる褐色調のあざで、発毛を伴うことも

ベッカー母斑(ぼはん)とは、思春期前後になってから、肩や胸などに生じる比較的大きな褐色調のあざ。

いわゆる茶あざの一種で、先天的もしくは後天的に、顔面および四肢、体幹の体表面に生じる淡褐色から褐色の平らなあざである扁平(へんぺい)母斑に類似しており、色素細胞の機能高進により、表皮基底層でメラニン色素が増加するために、ベッカー母斑が生じます。

多くは、体の片側に10~20セント前後の大きさで出現します。周囲の正常な皮膚との境界がはっきりしており、表面はザラザラとしています。好発部位は、肩、胸、背中、上腕など体幹と四肢の境界部。

女性よりもやや男性に多く、過半数に少し濃い発毛を伴うという点が特徴といえます。あざの部分に、髪の毛くらいの太さの毛が密に生えることもあります。皮膚から盛り上がることはありません。

発毛を伴う場合は、毛包という毛を包んでいる組織に、メラニン色素を作る色素細胞も入っています。

海水浴や強い日光にさらされた後などに、ベッカー母斑が現れることもあります。通常、悪性化することはありません。

ベッカー母斑は、多少の色の変化はありますが、自然に消えるあざではありません。色が淡褐色で、肌と違和感が少ないため気にならなければ、強いて治療する必要はありません。気になる場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科を受診することが勧められます。

ベッカー母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、医療レーザーによる治療が第一選択とされます。レーザー治療の長所は、治療を行った部位に傷跡ができにくいことです。

Qスイッチルビーレーザー、Qスイッチヤグレーザー、炭酸ガスレーザーなどを照射すると、メラニン色素に選択的に吸収され、多くのケースでベッカー母斑が消失したり軽快します。

有毛性のベッカー母斑では、レーザー治療の前に脱毛するなどの処理できれいにすることが、重要になります。

有毛性のベッカー母斑に対して、脱毛処理を行わずにレーザー治療を行うと、最初は周囲の正常な皮膚と同じ肌色になりますが、時間が経つにつれて、ポツンポツンと毛穴に一致して色素沈着が出てきます。毛包の中のメラニン色素を作る色素細胞が、過剰に反応してしまうためです。

医療機関によっては、剛毛が生えていたり、多毛である際には、Qスイッチヤグレーザーなどと医療脱毛用のレーザーを併用することもあります。

レーザー治療が無効でベッカー母斑が再発する場合には、ドライアイスや液体窒素を使用した治療や、グラインダーで皮膚を削る皮膚剥削(はくさく)術という手術、植皮術などが行われます。傷跡を残すことがあるので、第一選択ではありません。

🍾ペットボトル症候群

継続して大量に清涼飲料水を摂取することで、血糖値が上昇し、倦怠感や昏睡などが起こる疾患

ペットボトル症候群とは、ペットボトルに入った清涼飲料水やスポーツドリンクなどを大量に飲み続けることによって、糖尿病の悪化した状態が起こる急性疾患。医学上の正式名称では、軽症の場合を清涼飲料水ケトーシス、重症の場合を清涼飲料水ケトアシドーシスと呼びます。

継続して大量に、糖分の多いジュースなどの清涼飲料水を摂取することで、水に溶けている糖分は吸収されやすいために血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つホルモンで、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの働きが一時的に低下します。インスリンが欠乏すると、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解します。その際に、脂肪酸からできるケトン体と呼ばれる代謝成分が、血液中に過剰に増えます。ケトン体は酸性物質で、血液が酸性化(ケトーシス)したり、ひどく酸性化(ケトアシドーシス)したりして、ペットボトル症候群が発症します。

症状としては、のどが異常に渇くことから多量の清涼飲料水を欲しがるようになり、上昇した血糖値によって尿量が増え、体重が急激に減少し、倦怠(けんたい)感を覚えます。週単位から1、2カ月の経過で発症し、意識の混濁や昏睡(こんすい)に陥るケースもあります。

発症者の多くは10~30歳代の男性ですが、高齢者にも起こり得ます。発症する人には血縁者に糖尿病のある場合が多く、本人も糖尿病の遺伝素因を持っていると考えられます。

また、特に発症しやすいのは肥満体型の人で、この糖尿病予備軍と呼ばれる人はインスリンの働きが悪く、よりリスクが高まります。

もともと糖尿病の遺伝素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が糖質を多量に摂取していると血糖値が高くなります。すると、高血糖によるのどの渇きから、さらに清涼飲料の摂取が進むという悪循環が形成されます。

肥満が男性ほど多くなく、人前で清涼飲料水をあまりがぶ飲みしない女性より、男性の方が圧倒的に多くなっており、年々増えています。ペットボトル症候群が報告され始めたのは、ペットボトルと自動販売機が普及し、清涼飲料水を飲みやすくなった1980年代半ばからです。

一般的な清涼飲料水は、1リットル当たり100グラム前後の糖分が含まれていると考えられます。角砂糖1個が5グラムとすると、1リットルの清涼飲料水をがぶ飲みすると、角砂糖20個をかじっているのと同じことになります。また、スポーツ飲料やフルーツ果汁の入った野菜ジュースなどにも、糖分は入っています。

のどが非常に渇く、多量の水分を欲する、急激な体重減少といった異常に気付いたら、早めに医療機関を受診することです。

医師による治療では、血液中の糖分を低下させるホルモンのインスリンを静脈に注射し、血糖値を下げます。この場合、回復までは通常1カ月程度かかります。

🇭🇰ペニス結核疹

男性のペニスの先に当たる亀頭部に、結核疹が発生して硬くなる結核アレルギー性の皮膚疾患

ペニス結核疹(しん)とは、男性のペニス(陰茎)の先に当たる亀頭(きとう)部に、結核疹が発生して硬くなる疾患。陰茎結核疹、陰茎結核とも呼ばれます。

結核疹は、結核に対するアレルギー反応によって生じる皮疹です。この結核疹の一種であるペニス結核疹は、結核に元来過敏性を有している人が結核菌に感染した際、病巣部より少量の結核菌、あるいは結核菌由来の抗原物質が血行性に運ばれて、ペニス亀頭部に到達し、そこでアレルギー反応を起こして発症します。その多くは、腎(じん)結核や膀胱(ぼうこう)結核など泌尿器系の結核に続発、合併して発症します。

ペニス結核疹を発症すると、亀頭部に米粒大よりやや小さな皮疹が発生して、硬いしこりとなり、やがて膿疱(のうほう)、潰瘍(かいよう)を経て、亀頭部の形状が不整形の凸凹となり、醜い瘢痕(はんこん)となって治癒します。軽度の圧痛がある程度で、痛みはほとんどありません。

潰瘍はあまり増大せず、比較的速やかに搬痕となって治癒しますが、再発しやすく新旧の皮膚病変が並列することもあります。陰茎形成性硬結症、陰茎海綿体炎を合併することもあります。

明治時代から昭和20年代にかけて、長らく死因のトップで国民病、亡国病とも呼ばれていた結核が減少している近年では、ペニス結核疹は極めてまれな疾患です。

ペニス結核疹の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、硬いしこりの視診、触診を行うとともに、皮膚病変部からは結核菌が発見されないものの、病理組織像は結核性肉芽腫(にくげしゅ)あるいは類上皮細胞性肉芽腫を示し、ツベルクリン反応はほぼ100パーセント陽性であることから、ペニス結核疹と確定します。

先行する結核感染巣の特定、陰茎がんとの鑑別も行います。

泌尿器科の医師による治療では、肺結核に準じて、抗結核剤のリファンピシン、イソニアジド、ピラジナミドの3剤、もしくは2剤を用いた初期化学療法を行います。抗結核剤を投与すると、よく反応して大部分が1カ月から5カ月で治癒し、再発もみられなくなります。

皮膚結核の治療薬である丸山ワクチンの投与や、ツベルクリン減感作療法(免疫療法)を行うこともあります。

抗結核剤が無効な場合は、外科的な治療で皮膚病変部を切除することもあります。

🗼ベネット骨折

母指の中手骨の根元にある母指CM関節で関節内骨折が起こり、脱臼も生じる外傷

ベネット骨折とは、母指(親指)の先端部から根元に向かって強い力が加わったことにより、母指の中手骨(ちゅうしゅこつ)の根元にある母指CM関節で関節内骨折が起こり、脱臼(だっきゅう)も生じる外傷。母指CM関節脱臼骨折、第1中手骨基底部骨折とも呼ばれます。

ベネット骨折という疾患名は、1882年に初めて報告したアイルランドの外科医エドワード・ベネットにちなみます。

ボクシングやけんかでパンチを出して自らの母指の先端部に衝撃が加わった時や、野球でボールが母指の先端部に当たった時、スキーでストックを握った状態で手を突いた時、自転車やバイクのハンドルを握ったまま転倒して母指の根元を打撲した時などに発生します。

母指CM関節は第1手根中手骨関節とも呼ばれ、母指の手前の甲の骨である第1中手骨と、母指の手根骨で手首にある第1手根骨(大菱形骨〔だいりょうけいこつ〕)の間にある関節で、母指が他の指と向き合って、物をつまんだり、握ったりなどの動作をする上で、大きな働きを担っています。

ベネット骨折が発生すると、関節周辺に、はれや痛みが起こり、母指を動かしにくくなります。さらに、第1中手骨の根元に連結する筋肉である長母指外転筋が、母指を手首の方向に引っ張るので、第1中手骨の根元が外側に脱臼してきて、母指が変形してきます。

適切に治療せずにほうっておくと、脱臼を繰り返したり、関節の変形を生じたり、不安定性が残って痛みの原因となることがあります。けがで母指の根元に、はれや痛みが起こったら、早めに整形外科、ないし手の外科を受診することが勧められます。

ベネット骨折の検査と診断と治療

整形外科、ないし手の外科の医師による診断では、症状からベネット骨折と判断し、X線(レントゲン)検査を行って確認します。

整形外科、ないし手の外科の医師による治療では、手で徒手整復して骨を元の位置に戻し、整復した状態が維持できる場合は、母指(親指)と示指(人差し指)を離した格好でギプス固定を施します。ギプス固定期間は、約4~5週間となります。

痛みに対しては、消炎鎮痛剤の内服、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の関節内注射を行います。

整復した状態が維持できず、骨折部がずれたり、関節内の骨片が安定しない場合は、鋼線と呼ばれる金属で骨を固定する手術か、金属のネジで骨を固定する手術を行います。その後、ギプス固定を施し、骨折が治癒した後に固定具の鋼線、ネジを除去します。

痛みが強く、脱臼、亜脱臼を伴う高度な関節の変形が見られる場合には、第1手根骨(大菱形骨)の一部を取り除いて関節を作り直す関節形成術、関節を動かないように固定する関節固定術、人工関節を使う人工関節置換術などの手術を行います。

🗼ベネット病変

野球などでの肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげが形成された状態

ベネット病変とは、野球のピッチャーなどの投球動作による肩の使いすぎにより、肩甲骨後下方に骨のとげである骨棘(こっきょく)が形成された状態。

ベネット病変は、上腕を肩より上に上げてボールなどを投げたり、打ったりするオーバーヘッドスローイング動作を行うスポーツ全般で生じ、野球のピッチャー、キャッチャーのほか、バレーボールのアタッカー、アメリカンフットボールのクォーターバック、あるいはサーブやスマッシュを行うテニス、ハンドボール、陸上競技のやり投げ、水泳のクロールとバタフライなどでも生じます。

オーバーヘッドスローイング動作では、ボールなどを投げると同時に腕全体も放り投げてしまう状態になるため、腕の裏側の筋肉である上腕三頭筋や肩関節内部にある関節包、関節唇といった軟部組織は腕を支えようとします。その時にこれらの筋がついている肩甲骨後下方あたりには常に引っ張られる力が加わり、関節包付着部が硬くなります。

硬くなった関節包付着部は骨化現象を起こし、骨棘が形成されて骨が盛り上がり、弾力性を失うことがあります。これをベネット病変といいます。

野球などを長年続けてきた人には、ベネット病変がみられることがあり、通常痛みを伴うことはありません。

ベネット病変が進行して、痛みを伴った場合は、有痛性ベネット病変といいます。有痛性ベネット病変を生じると、野球のピッチャーの投球動作では、ワインドアップ時に肩の後ろに痛みが走り、加速時とフォロースルー時に肩の外後方から上腕外側の上腕三頭筋部にかけて激痛が走ります。全力投球ができなくなり、一度痛みが出ると、数日投げられなくなることもあります。

痛みの発現には、上腕に走行する腋窩(えきか)神経による刺激が関与し、後方関節唇の損傷や、肩関節で上腕を保持している腱板(けんばん)という筋肉と腱の複合体の損傷を伴っている場合が多くみられます。

ベネット病変の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、ベネット病変の場合、触診で肩甲骨後下方の関節包付着部に骨性の盛り上がりを感知することがあります。X線(レントゲン)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行うと、関節包付着部の骨棘が確認できます。

ベネット病変が進行して痛みを伴った有痛性ベネット病変の場合、上腕の水平内転・内旋時の痛みと、肩関節の運動制限を感知することもあります。MRI(磁気共鳴画像撮影)検査を行うと、後方関節唇と腱板後方の損傷を確認できることがあります。

整形外科の医師による治療では、骨化現象があるだけで痛みのないベネット病変の場合、異常とは判断せず、処置を施さずに経過観察します。有痛性ベネット病変に進行する予防法として、肩関節周囲筋のストレッチングや強化訓練、投球後に行うクールダウンのストレッチングやアイシングを心掛けることを勧めます。

有痛性ベネット病変で痛みがひどくない場合は、骨棘部への局所麻酔剤の注射や、ステロイド剤の注射を行います。リハビリで、後方関節包の拘縮に対するストレッチング、腱板の強化訓練を目的として、上腕三頭筋や肩関節により近いローテーターカフである後方の小円筋や棘下筋の強化訓練、肩に負担のかからない投球フォームの指導を行います。

痛みがひどい場合や、スポーツへの復帰を希望する場合は、関節鏡手術で骨棘を切除したり、腋窩神経を剥離したりする場合もあります。

🗼ヘバーデン結節

指の第1関節が節くれ立って、曲がってくる疾患

ヘバーデン結節とは、指が節くれ立って、しかも関節のところで曲がってくる疾患。約200年前に、英国の医師ヘバーデンが初めて報告しました。

かつては珍しい疾患でしたが、最近は日本でも患者が増えています。しばしばリウマチと間違われますが、実体は変形性関節症です。

節くれ立つ場所は、指先に近いところの第1関節(遠位指節間(えんいしせつかん〕関節)で、この部分が程度の差こそあれ、母指(親指)から小指にかけてどの指も節くれ立ちます。また、その関節で変形し、横に曲がります。変形の型は屈曲変形、側方への曲がりと多様で、変形の程度もいろいろです。

痛みを伴うこともあり、第1関節の動きも悪くなります。また、痛みのために強く握ることが困難になりますが、ある時期になると、痛みがなくなります。

同時に、第1関節の背側に骨性の盛り上がりができ、時に柔らかい腫(は)れを伴うことがあります。それぞれ骨棘(こっきょく)、粘液のう胞(ミューカスシスト)と呼ばれています。

原因は不明です。一般に40歳代以降の女性、特に更年期後の女性に多く発症します。男女比は1対10と圧倒的に女性に多く、男性には発症の平均年齢が高くなる傾向があります。

手をよく使う人には、なりやすい傾向があります。遺伝性は証明されてはいませんが、母や祖母、姉妹がヘバーデン結節になっている人は、体質が似ていることを考慮して、指先に負担をかけないように注意する必要があります。

全身の関節に変化が起きることがあるリウマチと違って、ヘバーデン結節がほかの部分の関節に波及することはありません。指の中央の関節である第2関節に生じる類似疾患に、ブシャール結節があります。

整形外科の医師による診断では、第1関節の変形、突出、痛みがあり、X線(レントゲン)写真で関節の透き間が狭くなったり、関節を形成する軟骨が壊れたり、骨棘があることが認められれば、へバーデン結節と診断できます。

治療では、保存的療法として局所の安静や固定、投薬、局所のテーピング、温熱療法、運動療法などが行われます。急性期では、局所の固定、非ステロイド消炎鎮痛剤の投与、軟こう塗布、少量の関節内ステロイド注射などが行われます。

保存的療法で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す場合は、第1関節を固定する手術、骨棘と粘液のう胞を切除する手術が行われることもあります。

対処法としては、第1関節が痛む時は安静を心掛けます。痛くても使わなくてはならない時は、テーピングがお勧めです。ふだんでも、指先に過度な負担が生じることを避けます。

🇰🇷ペルテス病

主に4~8歳ごろの男の子の股関節に起こり、足の引きずり、痛みが生じる疾患

ペルテス病とは、主に4~8歳ごろの男の子の股(こ)関節に起こる疾患。成長期の子供の成長軟骨に障害が起きる骨端症の一つです。

ぶつけたり、歩きすぎたなどの特別な原因はないのに、歩く時に足を引きずったり、股(また)の付け根や太もも、時に膝(ひざ)を痛がります。引きずりや痛みは少し休むと取れますが、よく見ると太ももの筋肉がやせていたり、太ももを外側に倒したり、内側にひねる時に痛みを強く感じるために、あぐらがかけなかったりします。

股関節の血流不足によって、太ももの骨である大腿(だいたい)骨近位骨端部という、骨の頭が球形に成長する部位が崩れて、壊死(えし)するために起こります。血液の流れが悪くなる血行障害の原因については諸説ありますが、いまだは不明。

骨頭がどんどん崩れていきますが、ある時期を経て、血液の流れが再びよくなると骨のほうも修復してきます。2〜3年以内に、壊死した骨が吸収された新たな骨が形成され、元のように回復します。

ただし、壊死が進行している間に股関節に体重をかけていると、骨頭に変形を残したまま治るので、できるだけ崩れが少なくすむように、一定期間体重を股関節にかけないでいることが必要となります。骨頭の変形を残すと将来、股関節の障害が出現し、40〜50歳以降には人工股関節置換術を余儀なくされます。

成長期の子供に足の引きずり、痛みの訴えがある場合は、小児整形外科を受診し適切な経過観察や治療を受けるべきです。

医師による診断では、壊死範囲や修復の程度を評価するために、レントゲン撮影やMRIが行われます。ペルテス病は両側の股関節に発症することもありますが、この場合でも両側同時に起こるわけではなく、左右でレントゲン像が異なります。このことが鑑別診断の際に重要です。鑑別が必要な疾患には、骨端異形成症などの骨系統疾患、マイヤー病、血友病などの血液疾患による骨頭の変化、甲状腺(せん)機能低下症に伴う骨頭変形など多数の疾患があります。

痛みの程度、足の引きずり具合など数年に渡る観察が必要で、年齢と壊死した範囲によって治療方法は変わります。

5歳以下で発症したものは、放っておいても訴えは軽く、骨もきれいに修復されるので経過をみます。骨頭の崩れた範囲が2分の1から3分の1以下の時も、何もせずに経過をみます。それ以上崩れた時は、骨頭を保護しながら、骨頭が球形に矯正されるのを待ちます。

骨頭を保護する方法には、装具の装着と手術があります。装具にはいろいろな種類がありますが、装具は一度つけると生活が不自由で、何年もつけなければなりません。

手術では、大腿骨を骨頭近くで切って、骨頭が関節の中に納まるように骨の角度を整えます。骨がつくまでの間は運動が制限されますが、それ以後は元の生活に戻れます。治療成績は手術療法が圧倒的に良好であり、股関節の良好な可動性が維持されます。

骨頭の崩れた範囲が広い場合や、8歳以上で発症した場合は、適切な治療を行っても骨頭の最終的な形が球形に矯正されにくくなります。同年齢での発症では、骨成熟までの年数が少ない女の子のほうが球形に治りにくい傾向にあります。 

🇰🇷ヘルパンギーナ

風邪の一種で、6カ月から4歳ぐらいの乳幼児を中心に流行

ヘルパンギーナとは、俗にいう夏風邪の一種。6〜7月をピークに、主に4~10月ころに多く、6カ月から4歳ぐらいの乳幼児を中心に流行します。

原因となるウイルスとして、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなど多数が知られていますので、何回でもかかってしまう感染症です。

経口、経気道感染でウイルスが侵入し、2〜4日間の潜伏期間を経て、突然、38~40度の高熱とともに発症します。この時に熱性けいれんを起こすこともあります。口腔(こうくう)の上壁に当たる軟口蓋(なんこうがい)、俗にいうのどちんこに当たる口蓋垂(すい)の周囲の粘膜に、周囲が赤くなった小水疱(すいほう)や直径1〜5ミリぐらいの小さい潰瘍(かいよう)ができ、咽頭(いんとう)は赤くなります。

食欲不振や咽頭痛のために嚥下(えんげ)困難があったり、まれに大きい子供では腹痛や頭痛を覚えることもあります。発熱期間は1〜4日で、全経過は約1週間以内にとどまります。

陰部に潰瘍ができたり、おたふく風邪のような耳下腺(じかせん)炎や、無菌性髄膜炎を起こすことがあります。高熱が続いたり、機嫌が極めて悪くなったり、何かいつもとかなり違うような時には、無菌性髄膜炎を合併していることもあるので注意が必要です。鼻炎や中耳炎などの合併症を起こすことは、まれです。

症状に気付いたら、すぐに小児科の専門医を受診します。

小児科の医師による診断では、役に立つ特別の検査はなく、夏の流行期に口内所見が認められれば確定できます。

小児科の医師による治療では、原因となるウイルスに対する特効薬がないため、症状を抑える対症療法が中心になります。解熱剤や鎮静剤、抗けいれん剤などを投与します。

家庭では、安静、保温、消化のよい食べ物、特に飲み込みやすい食事を与えることが大切です。乳児では、脱水が起こらないように、十分な水分を補給するようにします。適しているのは、麦茶、イオン飲料、ヨーグルト、アイスクリームなど。熱があっても特に具合が悪そうでなければ、入浴して汗を流すことはかまいません。

この疾患の特別な予防法はありません。

🇰🇷ヘルペス

ヘルペスウイルスの感染で、皮膚や粘膜に疱疹が発生

■ヘルペスの正体

「ヘルペス」とは、「ヘルペスウイルス」というウイルスが皮膚や粘膜に感染して、疱疹(ほうしん)ができる病気のこと。疱疹とは、小さな水疱や膿疱(のうほう)が固まってできる症状のことです。

そのように聞くと少し怖い気もするでしょうが、実は、ヘルペスウイルスはごく一般的なウイルスなのです。唇の回りに水ぶくれができる「口唇ヘルペス」を例にとれば、ウイルスに感染している日本人は、20~30代で約半数、60代以上ではほとんど、というデータもあるほどです。

ヘルペスウイルスの特徴は、感染すると症状が治った後も人の細胞の中にじっと隠れていて、ふだんは症状が出てこない点。ところが、風邪や疲れなどで体の抵抗力が落ちると、突然出てきて暴れ出す。例えば「帯状疱疹」は、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが長い間体内に隠れていた後、突然暴れ出してしまう病気なのです。

ただ、一口に「ヘルペス」といっても症状はいろいろ。ヘルペスウイルスにはいくつかの種類があり、それによって引き起こされる病気も違ってくるからです。

主なヘルペスウイルス

                 病     気

水痘・帯状疱疹ウイルス

水痘(水ぼうそう)、帯状疱疹

単純ヘルペスウイル1型

口唇ヘルペス、ヘルペス性歯肉口内炎、ヘルペス性角膜炎、カポジ水痘様発疹症、性器ヘルペス、ヘルペス性脳炎など

単純ヘルペスウイル2型

性器ヘルペス、臀部ヘルペス、ヘルペス性髄膜炎

 

■ヘルペスの気になる症状

………………………帯状疱疹…………………………………

「帯状疱疹」は文字通り、胸から背中にかけてなど、体に帯状の水ぶくれが現れる病気。一般的には体の左右どちらか一方に現れますが、病気などで免疫力が低下している時には、帯状のものに加えて水ぼうそうのような水ぶくれが、全身に出る場合があります。さらに、ウイルスは神経を通って皮膚に出てくるため、激しい痛みを伴うことが多いのも特徴です。

初めの症状は、チクチクした痛み。数日すると、痛みを感じる部分が赤くなって、水ぶくれができてきます。体のどこにでも症状は出ますが、胸から背中にかけてが一番多く、顔や手足、お腹やお尻(しり)の下などに現れることもあります。

痛みが始まってから、かさぶたになって治るまで約3週間~1カ月くらいかかり、痛みもその頃に消えることが多いようです。しかし、たまに「帯状疱疹後神経痛」といって、皮膚の症状が治った後もかなり長期間にわたって痛みが続くことがあるので、注意が必要です。 

………………………口唇ヘルペス……………………………

「口唇ヘルペス」という病名は初耳でも、風邪で体調を崩した時や疲れがたまった時などに、唇の辺りにできるデキモノに悩んだ経験のある人は、多いのではないでしょうか。「風邪の華」、「熱の華」とも呼ばれるこの症状が、実は口唇ヘルペス。日本人の10人に1人が罹患したことがあるといわれるほど、一般的な病気なのです。

初め、唇や口の回りが赤くなり、数日後、小さな水ぶくれができます。ムズムズとしたかゆみや、皮膚のほてり、ピリピリとした痛みを感じることもあります。大抵、水ぶくれは2週間くらいで、かさぶたとなって治癒します。 

………………………性器ヘルペス……………………………

性器やお尻の周辺の皮膚に、赤いブツブツや水ぶくれ、ただれができる病気。通常、性交渉などで感染してから、2日~12日で発症します。

初めてかかった時には、強い痛みや発熱を伴う場合があります。再発の場合には、小さな水ぶくれやただれができるだけの、軽い症状ですむことが多いようです。また、感染しても症状の出ない人や症状に気付いていない人もいるため、自分では気付かないまま、他人に移してしまうこともあります。

■再発しやすい病気

帯状疱疹は一度かかったら、再発することはまれなのですが、口唇ヘルペス・性器ヘルペスの厄介なところは、なんといっても再発しやすいことです。治ったと思っても、ウイルスは神経細胞の中にひっそりと隠れていて、再び暴れ出す機会をじっと待っています。

 再発を防ぐためには、日頃から体調管理や心身のリフレッシュを心掛け、ウイルスに負けない体をつくることが、必要となります。

■ヘルペスの治療法

ヘルペスも、早めの治療が大切です。早い時期に治療を始めるほど、軽い症状ですむし、治りも早いのです。通常、ヘルペスは皮膚科が得意とする病気なのですが、患部が性器の周辺の場合は、男性なら泌尿器科、女性なら婦人科でもよいでしょう。

帯状疱疹の症状では、神経痛に似た痛みが伴うこともあるので、初期の段階では、整形外科や内科にかかる人も多いようです。しかしながら、帯状疱疹は普通、一生に一度しかかからないし、水ぶくれが出ていないと、医師でも診断が難しい病気です。早期に効果的な治療が受けられるように、私たち患者自身が病気の知識をきちんと身に着けておくことも、大切といえそうです。

ヘルペスの治療法の現状について簡単に述べると、ウイルスの増殖を抑える働きがある、バラシクロビル、アシクロビル、ビダラビンなどの「抗ヘルペス薬」が使われています。これらの抗ヘルペス薬には塗り薬と飲み薬がありますが、ヘルペスは体内に潜んでいたウイルスが逆戻りをして症状が起きるため、飲み薬で体のもとからヘルペスウイルスの増殖を抑えることが、有効といわれています。症状がひどい場合には、入院して点滴注射をすることもあります。

口唇ヘルペス・性器ヘルペスの再発の場合、ピリピリ、チクチク、ムズムズといった前兆を感じたら、早めに受診して治療を受けることが、早く治すための近道となります。強い痛みに対しては、鎮痛剤などを投与することもあります。

 ただ、皮膚の帯状疱疹が治った後に残る帯状疱疹後神経痛の場合は、少し状況が違っています。

実は、帯状疱疹後神経痛はヘルペスウイルスによって、神経が破壊されてしまうことが原因。抗ヘルペス薬はヘルペスウイルスが増えるのを抑える薬なので、ヘルペスウイルスが活動していない時期の痛みをとることはできません。一旦、傷付いた神経を治療するのは困難ですし、長期間の治療が必要になってしまうこともあります。だから、帯状疱疹後神経痛が残らないように、できるだけ早く皮膚科で診てもらうことが、帯状疱疹では大切なのです。

■日常生活での注意点

∞∞∞∞∞口唇ヘルペスや性器ヘルペスでは、患部を自分自身で触ることで、他の部位に移してしまう危険もある。ムズムズやピリピリ感が気になって、無意識に触ってしまうこともあるから注意しよう∞∞∞∞∞

∞∞∞∞∞患部に触れた後や、外用薬を塗った後には、しっかり手を洗おう∞∞∞∞∞

∞∞∞∞∞患部に触れた指で目を触らないこと。コンタクトレンズを唾液で濡らして装着しないこと(目に感染して発症する角膜ヘルペスは、失明する危険性があり要注意)∞∞∞∞∞

∞∞∞∞∞水ぶくれは破らないこと∞∞∞∞∞

■治療法の将来について

発症した時の治療に限って抗ヘルペス薬が使われるのが、日本の現状です。一方、欧米では、性器ヘルペスに対して「抑制療法」と呼ばれる治療も、認められています。

抑制療法というのは、頻繁にヘルペスの再発を繰り返す場合に、症状が出ていない時にも抗ヘルペス薬を使用し続けることで、再発を抑えようとする方法。繰り返す再発は、身体的苦痛に加え、人に移すことへの不安など精神的にもさまざまな苦痛を伴います。日本でも抑制療法が許可されれば、このような苦痛や悩みを軽減することもできる、と見なされているところです。  

■ヘルペスQ&A

Q1 私のヘルペスはどこからきたの?

口唇ヘルペスや性器ヘルペスなどを引き起こす単純ヘルペスウイルスは、主に直接接触することで感染します。しかし、感染力が強く、直接患部に触れてなくても、単純ヘルペスウイルスがついたタオルや食器で感染するケースも。従って、家族、恋人など、ごく身近で感染するケースが多く見られます。

一方、帯状疱疹では、子供の頃にかかった水ぼうそうのウイルスが原因。帯状疱疹を人に移すことは、ごくまれなケースです。ただ発症している時に、水ぼうそうになったことがない人と接触すると、相手が水ぼうそうになってしまうことがあるので、要注意。

Q2 再発を繰り返すけど、治らないの?

一般に、口唇ヘルペスや性器ヘルペスは、時間の経過とともに再発の回数や症状の程度が軽くなるといわれています。口唇ヘルペスや性器ヘルペスは体の抵抗力が落ちた時に再発しやすいのが特徴なので、日頃からバランスのよい食事をとり、疲れやストレスをためないことが大切です。また、症状が出た場合は、早めの治療で症状を軽くすることができます。

Q3 タオルやお風呂で移るの?

症状が出ている時期は、皮膚の水ぶくれや唾液中にヘルペスウイルスが存在しているため、注意が必要です。ウイルスがついたタオルや食器などを介して感染することもあるので、共用は避けましょう。お風呂で移る心配はほとんどありませんが、性器やお尻の周囲に症状がある場合は、まれに洋式便座で移ることも。

ただし、過度に神経質にならなくても大丈夫。人から離れたヘルペスウイルスは、熱やアルコール、乾燥、日光(紫外線)などに弱いからです。タオルや食器はよく洗い、便座はアルコールを含んだ布で掃除することです。

Q4 ヘルペスウイルスに対抗する力が弱く、特に気を付けたい人は?

ヘルペスに対する免疫を持っている人は感染しても、症状が出ないか、発症しても軽症ですむことが多いのですが、次のような人はヘルペスに感染すると、重症化しやすいので要注意。ヘルペスを発症している時は、接触をできるだけ避けましょう。 

 ●免疫を持っていない人や新生児

 ●アトピー性皮膚炎の人

 ●白血病、悪性腫瘍、移植手術後など、病気で体の免疫力が落ちている人

■まとめ 

ヘルペスは、誰もが持っているウイルスが原因で起こる、ごく一般的な病気なのです。ただし、感染後すぐに発症する人がいる一方で、一生涯にわたって発症しない人もいます。

とにかく、日頃から心身を健康に保ち、発症した時には早めの治療を開始することで、上手に付き合っていける病気なのです。それに症状が現れたということは、「あなたの体は疲れているよ」という、ヘルペスウイルスからのサインと捉えることもできるのではないでしょうか。

🇰🇵ヘルペス性角膜炎

単純ヘルペスウイルスの感染で起こり、再発を繰り返す眼疾

ヘルペス性角膜炎とは、目の角膜表面に樹枝状の潰瘍(かいよう)ができる疾患。再発を繰り返しながら、表層から深層に炎症が進んでいきます。角膜ヘルペスとも呼ばれます。

角膜とは、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ約1ミリながら目の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。 そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌やかび、ウイルスなどの侵入を防いでいます。しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌などが侵入し、感染を起こします。

ヘルペス性角膜炎の原因は、単純ヘルペスウイルスの感染です。ちなみに、単純ヘルペスウイルスは、皮膚の単純疱疹(ほうしん)や、口唇ヘルペス(熱の花)の原因ともなるウイルスです。ヘルペス性角膜炎を発症する時に、単純ヘルペスウイルスが外から感染するのではありません。大部分の人は成人になるまでに、知らない間に感染していますが、あまり発症には至りません。

ほとんどの場合、単純ヘルペスウイルスは感染後、目の奥にあって角膜の知覚をつかさどっている三叉神経節に潜伏感染しています。このいわば眠った状態の単純ヘルペスウイルスがストレスや体調不良、発熱、気温の低下などが引き金となって目覚め、角膜の表面に出てくることによって、ヘルペス性角膜炎が発症します。発症は、30歳代や40歳代で多くみられます。

ヘルペス性角膜炎は、単純ヘルペスウイルスが角膜の表面の上皮で増える上皮型と、単純ヘルペスウイルスが角膜の内部に侵入し、角膜に混濁を生じる実質型に大きく分けられます。

上皮型の症状としては、常に涙が流れ出ている状態となり、まぶしさ、異物感があります。まぶたの裏側から白目の表面を覆っている結膜も、充血してきます。時に痛みを覚えますが、視力の低下は軽度です。眼科医の診断に際して、角膜の上皮を染色すると樹枝状の特徴ある形を見ることができ、これが広がれば地図状の形になることもあります。

実質型では、充血がひどく、角膜が円板状に濁ってしまうために視界がぼやけ、視力がかなり低下します。角膜の深部の感染した細胞を自分自身のリンパ球が攻撃して起こるのが実質型であり、さらに単純ヘルペスウイルスが深部に入ると、ぶどう膜炎を併発し、角膜に穴が空くこともあります。

ほとんどの場合、片目で発生します。また、一度治しても、三叉神経節には単純ヘルペスウイルスが残っており、これがしばらくしてまた角膜に出てくるため、再発を繰り返すという厄介な特徴を持っています。

何度も再発すると角膜全体が混濁して、治療しても視力障害を残す危険性があります。目の感染症の中では、一番失明率が高い疾患ですが、近年、ヘルペス性角膜炎に対して非常に効果を発揮する特効薬であるアシクロビル(ゾビラックス)、バラシクロビル(バルトレックス)が開発され、失明率は低下しました。

他の人に伝染することはあまりないものの、単純ヘルペスウイルスに対して抗体を持っていない乳幼児に対しては、注意が必要です。成人の発症者が自分の目を触った手で、乳幼児に感染させる可能性があります。

ヘルペス性角膜炎は、もともと体に単純ヘルペスウイルスを保有している人がかかり、再発しやすいものです。皮膚に発生するヘルペス感染症と同じく、ヘルペス性角膜炎に対しても、再発するごとに根気強く繰り返し治療していく必要があるといえます。ほうっておくと失明する可能性のある疾患なので、油断は大敵です。少しでも目に違和感があれば、特に一度経験した人は、早めに眼科を受診します。

ヘルペス性角膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師は、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して診断します。上皮型では樹枝状や地図状の潰瘍、実質型では円板状の混濁が診断に役立ちますが、特徴的な所見を示さない場合も多々あります。その場合は、角膜の悪い部位をこすり取ったり、涙を採取したりして、その中に単純ヘルペスウイルスがいないかどうかを調べます。

一般には、単純ヘルペスウイルスを分離するのはごく一部の専門の施設でないと行えないため、ウイルスの持っている蛋白(たんぱく)に反応する抗体を用いた蛍光抗体法や、ウイルスのDNAを検出するPCRという方法が使用されています。

また、ヘルペス性角膜炎では角膜の知覚が低下することが特徴であるため、角膜の表面をナイロン糸などの先で触れて、触れたことがわかるかどうかを検査します。

眼科の医師による治療では、単純ヘルペスウイルスに対する特効薬であるアシクロビル(ゾビラックス)、あるいはバラシクロビル(バルトレックス)の眼軟こうの点入、IDUという薬の点眼を繰り返し行い、二次感染防止のために抗生物質の投与を行います。アシクロビル(ゾビラックス)、あるいはバラシクロビル(バルトレックス)を内服薬として使用することもあります。

実質型では、体の免疫反応を抑えないと混濁がよくならないので、副腎(ふくじん)皮質ステロイド系の点眼薬を併用します。角膜全体が混濁して視力障害が著しい時には、角膜移植を行います。

🇰🇵ヘルペス性歯肉口内炎

単純へルペス1型ウイルスの感染で、乳幼児に起きる口内炎

ヘルペス性歯肉口内炎とは、単純ヘルペス1型が初めて感染することで、口の中に炎症が起きるウイルス性口内炎の一種。へルペス性口内炎とも呼ばれます。

生後6カ月以降から3歳までの乳幼児に多く発症し、口唇ヘルペスと呼ばれる潰瘍(かいよう)が数個から多数まとまって、口や唇、皮膚などに現れます。単純ヘルペスウイルスは、ウイルスを持つ人が洗顔や歯磨き後に使うタオルや、食器、唾液などに触れることで、感染が起こるとされています。ヘルペスウイルスを持っている母親が子供にキスをして、移してしまう場合もあります。飛沫(ひまつ)感染もあります。

単純ヘルペス1型ウイルスに初感染すると、普通は4~10日の潜伏期間をへて発症します。歯茎の炎症や口の中の強い痛み、かなりの高熱、頚部(けいぶ)リンパ節がはれるなどの症状が現れます。口の中に水疱(すいほう)ができ、それが破裂すると、潰瘍となります。歯を磨いた時に、歯茎から出血することもあります。

痛みは5~7日、発熱は2~5日、症状全体は7日〜14日続き、治癒します。

乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎になると、口内炎ができる前に口の中がチクチクと痛むので、不快感を訴えて泣きますが、症状が見えないため、親は疾患に気が付かない場合もあります。口内炎になると口の中が痛いために、よだれが増え、食事や水分を受け付けずに、脱水症状になることもあるので、注意が必要です。

また、もともと慢性湿疹(しっしん)があって副腎(ふくじん)皮質ステロイド軟膏を塗っている乳幼児が、このヘルペス性歯肉口内炎にかかった場合、湿疹部にヘルペスウイルスが広がって、ヘルペス性湿疹に進行して重症化しますので、特に注意が必要です。

ヘルペス性歯肉口内炎は乳幼児に多い疾患ですが、成人になってから起こすこともあります。この場合、乳幼児の時に発症するよりも重症になるケースが多くみられます。

ヘルペス性歯肉口内炎の検査と診断と治療

乳幼児がヘルペス性歯肉口内炎(ヘルペス性口内炎)を起こした場合、適切な処置をすれば比較的早くよくなりますので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

医師による治療は、単純ヘルペスウイルスを抑えるゾビラックスという抗ヘルペスウイルス剤を1日4回服用で、数日間続けます。発熱やのどの痛みといった症状を和らげるために、解熱鎮静剤や痛み止めの薬、ビタミン剤が使われることもあります。発熱は数日で落ち着きますが、口内炎など症状全体は治るまで1週間~10日ほどかかります。

家庭での食事に関しては、口内の痛みが強く、食べたがらないことが多いので、口当たりのよいプリンやゼリー、アイスクリーム、豆腐などを与えます。何回かに分けて、少量ずつ与えるのも一つの方法です。硬い食べ物、熱い食べ物、あるいは刺激のある味付けは、痛みを強めるので避けます。食後は、ぬるめのお湯やイソジンなどでうがいをし、口の中を清潔にします。

食事ができない時は、脱水症状を起こさないように十分に水分を与えます。牛乳、お茶、イオン飲料などがよいでしょう。食べなくても、水分をしっかりとれていれば大丈夫です。乳酸菌飲料やジュース類は痛みを増すことがあるので、与えないほうが無難です。

唾液などから移りますので、タオル、食器は別にします。入浴は熱がある場合でも、特に具合が悪そうでなければかまいません。

熱が下がって普通の生活ができるようになるまで、学校や幼稚園、保育所などは休み、外出も控えます。完全に治っていないと、他の子供に移してしまう可能性があります。

2022/08/14

🇹🇹ヘルペス脳炎

 

単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる脳炎

ヘルペス脳炎とは、単純ヘルペスウイルスの感染によって起こる重い急性脳炎。単純ヘルペス脳炎とも呼ばれます。

小児、成人、高齢者とすべての年代に起こり、とりわけ成人での発症頻度が高い疾患です。日本では年に約400例という発症頻度で、時期的な集中はみられません。

主として単純ヘルペスウイルス1型(口唇ヘルペス)の感染によって、ヘルペス脳炎は起こります。単純ヘルペスウイルス2型(性器ヘルペス)の感染では、良性の脊髄(せきずい)炎、髄膜炎が起こるのが一般的です。

有り触れて共存的なヘルペスウイルスが重いヘルペス脳炎を起こす原因は、よくわかっていません。ヘルペスウイルスの上気道感染に続いて嗅(きゅう)神経を経由し、あるいは血液に運ばれて、好発部位である側頭葉・大脳辺縁系に侵入し、出血性壊死(えし)の傾向を示しながら脳を破壊すると推定されています。

成人と高齢者のヘルペス脳炎の発症については、三叉(さんさ)神経節などの中枢神経系に潜伏していたヘルペスウイルスが、風邪や疲れなどで体の抵抗力が落ちた際に突然、出てきて暴れ出すとも推定されています。

風邪の症状で始まり、40℃以上の発熱、頭痛、けいれん発作、意識障害、異常行動、性格の変化、知能障害、言語障害、運動まひなどが現れます。重症になると、ものが飲み込めなくなる嚥下(えんげ)障害や呼吸障害が現れ、昏睡(こんすい)に陥り、生命にかかわります。

死亡率は20〜30パーセント、治療せずに放置した場合の死亡率は60~70パーセントとされています。発症早期の治療が極めて重要なので、おかしいと思ったらすぐに神経内科、内科、小児科などを受診し入院すべきです

ヘルペス脳炎の検査と診断と治療

神経内科、内科、小児科の医師による診断では、血液や脳脊髄液を調べ、単純ヘルペスウイルス1型の感染の証拠が得られれば判断できます。実際には、検査結果が出るまでに日数がかかるので、症状のほか、CT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、脳波検査などの結果から判断します。

神経内科、内科、小児科の医師による治療では、急性期における単純ヘルペスウイルス1型の増殖を抑えるため、抗ウイルス剤のアシクロビル、ビダラビン、バラシクロビルなどを投与します。

二次感染を予防する意味でペニシリン系、セフェム系の抗生剤を投与し、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤を併用することもあります。その他は対症療法を適切に行います。

脳の破壊が進む以前の早期に抗ウイルス剤を使用すれば、記憶障害、行動異常、症候性てんかんなどの後遺症を残さずに治すことが可能です。単純ヘルペスウイルスに対する特効薬である抗ウイルス剤の導入以後、死亡率は10パーセント以下に減り、約半数の社会復帰例がみられています。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...