精巣の中で精子が作られているものの、精子を運ぶための精路が途中で閉塞している状態
閉塞(へいそく)性無精子症とは、男性の精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精子が作られているものの、精子が精巣から体外へ出ていく精路のどこかが閉塞して状態。精子が精液と合流して体外へ出ていくことができず、射出精液中に、卵子と結合して個体を生成する精子が認められません。
男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。
運動能力を持つ男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。
男性の100人に1人は、射出精液中に精子が認められない無精子症といわれています。この無精子症は、閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症の2つの型に分類されます。
閉塞性無精子症は精巣自体の造精機能に障害がないのに対して、非閉塞性無精子症は精子が精巣から体外へ出ていく精路があるにもかかわらず、精巣の造精機能の低下により、精巣で全く精子が作られていない状態、もしくは射出精液中に精子が認められない状態を指しています。
閉塞性無精子症は、無精子症の15〜20パーセントを占めているといわれています。非閉塞性無精子症のほうは、無精子症の80~85パーセントを占めているといわれています。
閉塞性無精子症の原因となる疾患は、両側精巣上体炎、小児期の両側鼠径(そけい)ヘルニア術後、精管切断(パイプカット)術後、原因不明の精路閉塞症、先天性両側精管欠損症などです。
一方、非閉塞性無精子症の原因となる疾患は、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下、精巣が陰嚢(いんのう)内に位置していない停留精巣、精巣の上の精索部の静脈が拡張した精索静脈瘤(りゅう)などです。
閉塞性無精子症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、精液検査の結果、射出精液中に精子が存在しない場合に無精子症と判断します。加えて、精巣の大きさに問題がなく、ホルモン検査では脳下垂体から分泌される性腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)の値が正常値で、精路に閉塞部位が認められれば、ほぼ閉塞性無精子症と判断できます。
ただし、性腺刺激ホルモンの値が正常値でも、まれにY染色体の特定部位の微小欠失により、精巣内での精子の成熟が途中で停止しているケースでは、非閉塞性無精子症と判断します。
泌尿器科の医師による閉塞性無精子症の治療では、精子が精巣から体外へ出ていく精路を再開させる精路再建手術を行います。閉塞部位が短く手術でつなぎ合わせることができれば、精液に精子が出るようになり、夫婦生活による自然妊娠も期待できます。
先天性の精管欠損症などで閉塞部位が長い場合は、手術では治療できません。この場合は、閉塞性無精子症の人では精巣で精子が作られているため、精巣精子採取法によって、精巣の精細管や精巣上体、精管から精子を直接取り出し、人工授精、体外受精、顕微授精などという方法を用いて妊娠を期待します。
閉塞性無精子症と診断された段階で、我が子をあきらめる必要はありません。
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