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2022/09/26

🇹🇷乳輪肥大

乳房全体から比べて乳輪の面積が大きすぎる状態

乳輪肥大とは、乳房全体から比べて乳輪の面積が大きすぎる状態。乳暈(にゅううん)肥大とも呼ばれます。

乳輪の大きさは、乳房と同じように個人差があるので、明確な標準はありません。一般的には、乳輪の標準的な大きさは、4センチから5センチといわれています。そのため、5センチ以上になると、乳輪としては大きいといえるかと思われます。乳輪が大きい人だと7センチから8センチほどで、10センチ以上の人もおり、小さい人ならば3センチくらいです。

また、同じ人だから左右の乳房の乳輪が同じ大きさとも限りません。乳房の大きさ自体が左右対照的ではなく、それに比例して乳輪も右と左で大きさが違うことがあります。そのため、片方だけ大きいのがかえって気になるということも起こり得ます。

一概にはいえないものの、乳房が大きいほど、乳輪も大きくなる傾向があります。

遺伝的な要素も乳輪の大きさに関係しています。そのため、両親どちらか、または祖父母など直系の親族に乳輪の大きい人がいれば、生まれ付きで乳輪が大きくても何ら不思議はありません。

しかし、年齢とともに乳輪が大きくなる場合もあります。その原因はいくつかあります。

まずは、乳房が発育して大きくなるにつれ、一緒に乳輪が大きくなるなることが1つ。

もう1つが、妊娠による乳輪の大きさの変化です。妊娠すると女性の体は変化していき、乳輪が大きくなったり黒ずんできたりもします。

妊娠すると、母乳が出るように体が準備を始めることで乳房が大きくなるのですが、乳房が大きくなるほど乳輪も大きくなりがちです。また、新生児が確実に乳房を探せるように、乳首や乳輪の色が濃くなります。乳輪の色が濃くなることで、実際に大きくなったわけではなくても、乳輪が目立って大きくなった感じを受けることもあります。

大半の人は、出産、授乳時期をすぎると、乳輪の大きさや色が元に戻ります。ただし、妊娠前より大きくなった、あるいは大きくなったまま戻らないという人も中にはいます。

さらに、自律神経の乱れも、乳輪が大きくなる原因の一つだと考えられています。自律神経というのは1日中休まず働いている神経で、交感神経と副交感神経が昼夜交互に活動的になります。不規則な生活習慣や、過度なストレスを抱え込むことによって、その2つの神経がうまく機能しなくなると体内のホルモンバラスが崩れ、それが乳輪の肥大化につながります。

乳輪が大きいことで悩んでいる人は、少なくありません。乳輪が大きいと温泉など人前で裸になる場面で気になる、性パートナーと結ばれる時に相手の反応が気になるなどの悩みがあり、本人にとっては深刻で強いストレスになっていることもあります。

美容的な問題により乳輪を小さくしたいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、乳輪縮小術という形成手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

乳輪肥大の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による乳輪縮小術には、乳輪外側をドーナツ型に丸く切除して乳輪のサイズを調整する外側法と、乳頭基部の円周を切開して乳輪を縮める内側法の2つがあります。

手術後の傷が目立ちにくいのは内側法ですが、外側法でも時間の経過で次第に目立たなくなります。内側法では切除できる乳輪の範囲が限られているのに対して、外側法では比較的広範囲の乳輪を切除することが可能なので、乳輪のサイズを希望通りに調整しやすいという違いがあります。

現在の乳房、乳輪、乳頭の大きさや状態から、医師の側が適した方法を提案します。どちらの方法も、乳腺を傷付けることもなく、授乳にも影響ありません。

手術は1時間ほどで、局部麻酔を行うため痛みを感じることはありません。眠っている状態での手術を希望する場合は、静脈麻酔も行っています。

手術当日は、患部を濡らさないようにすれば、シャワーが可能です。1週間から10日後に抜糸を行い、その後は入浴が可能です。

乳輪を縮める際に皮膚を寄せ集めて縫合しますので、2カ月程度、傷の赤みや突っ張り感を伴う場合があります。数カ月かけて、薄茶色から白っぽい線と変化し改善します。乳頭や乳輪は、人体の中でも傷跡が目立ちにくい部位の一つのため、ほかの部位に比べて、手術後比較的短い時間で傷跡がほとんどわからなくなります。

2022/09/13

🇺🇬にきび(尋常性痤瘡)

■皮膚の炎症性疾患で、思春期の生理的な現象

にきびとは、過剰な皮脂分泌により、額やほお、あご、胸、背中などに現れる皮膚の炎症性疾患。医学的には、尋常性痤瘡(ざそう)として知られています。

男性ホルモンの影響によって、思春期にできやすくなります。初期には、毛穴(毛包)の脂腺(しせん)が刺激され、脂腺が大きくなると同時に毛穴が脂肪や角質でふさがって、面皰(めんぽう)という脂肪の塊ができます。この状態が黒にきび、または白にきびと呼ばれるもので、黒にきびは毛穴が開いて中身が見えている状態であり、白にきびは毛穴が閉じている状態です。

ここに皮膚常在菌で多く存在するアクネ桿菌(かんきん)が繁殖して炎症を起こし、赤い小さなぼつぼつや膿(うみ)を持った発疹(はっしん)ができます。この状態が赤にきびと呼ばれるものです。

アクネ桿菌は、嫌気性の細菌のため酸素のない脂腺の奥に生息します。詰まった毛穴の中では、皮脂を栄養として過剰に増殖し、脂肪分解酵素のリパーゼを分泌し、皮脂を遊離脂肪酸にして面皰とします。また、紫外線や空気中の酸素が、皮脂を過酸化脂質に変化させます。このように皮脂が遊離脂肪酸へ変化し、さらに酸化されて過酸化脂質へと変化した結果、皮膚に炎症が起きて赤くなったり、膿がたまって黄色い部分ができるのです。

さらに進行すると、毛穴が破れて中身が流れ出し、炎症が広がることもあります。この場合は皮膚の深い部分を傷付けてしまうため、炎症が治っても瘢痕(はんこん)が残る場合が多くなります。

にきびは思春期の生理的な現象で、疾患ではありません。20歳代前半くらいになると、自然に治っていくか、少なくともその数が減ります。

しかし、一度よくなったにきびが、中年以後に再発したり、あごから首の前のほうにかけて、にきびに似た発疹ができることがあります。この場合には、にきびのような面皰がないのが特徴で、化粧法の誤りが原因となっていることが多いようです。

また、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)など、いろいろな薬剤の作用で、にきびに似た発疹ができることがあります。この場合にもやはり、にきびのように面皰がないので、区別できます。

■にきびの検査と診断と治療

にきびのできた部分に瘢痕を残さないように治療することが、最も大切になってきます。

そのためには、毎日せっけんでよく洗顔し、皮脂を洗い流して毛穴が詰まるのを防ぎます。せっけんは、低刺激性のものが望まれます。抗菌せっけんやスクラブ入りせっけんの使用は、有用な皮膚常在菌を過剰に洗い流し、皮膚を過剰に刺激してにきびを悪化させる恐れがあります。ファンデーションやメーキャップ化粧品は、毛穴を詰まらせ、にきびを悪化させる場合があるので、使用しないようにします。

また、チョコレート、ピーナッツ、コーヒー、ココア、豚肉、糖分の多い物などでは、できるだけ避けます。ビタミンを含んだ新鮮な野菜や果物を十分に摂取して、便秘を予防します。睡眠不足、過労、ストレスには注意して、規則正しい生活を送ることも、治療上、忘れてはならないことです。

皮膚科での治療では、保険適用の範囲内である外用の抗菌剤、抗炎症剤、ビタミン剤が使われます。外用の局所抗菌剤としては、クリンダマイシン、ナジフロキサシンのほか、過酸化ベンゾイルや抗炎症剤が使われています。外用の抗菌薬が効かない場合、毛穴の詰まりを取る効果のあるトレチノイン、アダパレンなどが使われますが、これらは日光に対し過敏になる作用があり、慎重な処方が行われる必要があります。

重症なにきびでは、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシンなどの経口用抗生物質が使われる場合もありますが、長期の服用が必要で重い副作用を引き起こす場合があります。内服薬では、皮膚の新陳代謝を促すビタミンB2、皮膚の抵抗力を高めるビタミンB6のほか、色素沈着などを防ぐためにビタミンCが使われます。

医師の処方なしで入手できる薬として、サリチル酸やレゾルシノール、硫黄を含んだクリーム状の軟膏が市販されています。これらは吹き出ものを乾かす効果がありますが、若干のかさつきが生じる場合もあります。

2022/08/30

🇧🇬肉芽腫性鼓膜炎

外耳と中耳の境界にある鼓膜に、肉芽やびらんが生じる慢性の炎症疾患

肉芽腫(にくげしゅ)性鼓膜炎とは、外耳と中耳の境界である鼓膜の薄い膜の外側表面に炎症が起き、肉芽やびらんの生じる慢性疾患。

鼓膜は、耳に入ってくる音を振動に変換し、耳小骨経由で内耳に伝える働きのほか、外耳と中耳を境界する役目をしている器官です。その構造は、直径約9ミリ、厚さ0・1ミリの薄い膜状で、耳の入り口から約3センチのところに位置しており、外耳道のほうに向かって開いたパラボラアンテナのような形態をしています。

体の中には、いくつかの膜状構造物がありますが、鼓膜は常に外界に交通しているため、外力に弱い器官といえるでしょう。

この肉芽腫性鼓膜炎は、細菌感染が主な原因といわれていますが、まだはっきりしません。子供よりも20〜40歳代の成人女性に多く、両側の耳に起こることはまれです。

肉芽腫性鼓膜炎が引き起こされると、鼓膜の表皮が異常に増殖して、赤く柔らかい粒状の結合組織である肉芽や、赤くただれているように見えるびらんを生じます。

軽度の痛みを覚え、慢性的で頑固な耳垂れが続きます。肉芽などの影響によって鼓膜が肥厚化した場合には、耳の奥のほうのかゆみ、耳の詰まった感じや耳鳴り、難聴を覚えることもいます。

鼓膜の奥にある中耳の慢性炎症の影響を受けていることもあります。

肉芽腫性鼓膜炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、顕微鏡やファイバースコープで、鼓膜を拡大して観察します。観察すると、20パーセントに小さな穴を認め、中耳の慢性炎症の影響を受けていることがあります。

中耳の疾患が疑わしい場合は、側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査なども行うことがあります。また、耳垂れを調べて起炎菌を検出し、その感受性検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳垂れの起炎菌の感受性検査の結果から、適切な抗生剤を耳浴、点耳などで局所投与します。耳垂れは短期間で止まるものの、しばらくするとまた再度、耳垂れが出てくることもあります。

根本的に耳垂れを治すためには、鉗子(かんし)で耳垂れを出す肉芽を切除し、トリクロリールなどの薬品で焼灼(しょうしゃく)することもあります。肉芽を切除すると、その部位に小さな穴があることがありますが、通常は非常に小さく、自然に閉じます。

薬物療法のみでなく、適切な焼灼などの局所処置が重要で、週1〜2回根気よく繰り返すことで徐々に軽快していきます。

肉芽がなくなると耳垂れの繰り返しの再発はなくなりますが、時に肉芽が再発することがあり、その場合は同じ局所処置が必要となります。とりわけ、中耳に炎症が隠れていると再発しやすくなり、治療が長期にわたることもあります。

肉芽腫性鼓膜炎の予防法は、解明されていません。いったん発症した場合は、耳に水が入らないように気を付けることが重要です。

2022/08/29

🇱🇻肉離れ

肉離れとは、瞬間的に筋肉の繊維や膜が伸ばされて、断裂が生じた状態です。運動中に筋肉に急激に強い力がかかった時や、足をすべらせるなど予期しない動きをした時に生じ、起こりやすいのはふくらはぎや太もも。

ダッシュやジャンプなどの動作の多い短距離走やハードル、サッカーなどのスポーツでよくみられますが、運動不足の人では、日常的な動作で起こることもあります。

予防には、ウオーミングアップやクーリングダウン、十分なストレッチングを行うことです。寒い日や筋肉が疲労している時などは、特に注意が必要です。

2022/08/21

🇮🇱二陰茎体

男児が2本の陰茎を持って生まれる先天性疾患

二陰茎体とは、男児が2本の陰茎を持って生まれる先天性疾患。陰茎重複症とも呼ばれます。

極めてまれな先天性障害であり、最古の記録は、1609年にスイス人医師のヨハネス・ヤコブ・ウェッカーが残した「イタリアのボローニャで2つのペニスを持つ男性の遺体を確認した」というもの。アメリカにおいては、550万人に1人の発生率とされています。

妊娠23日目から25日目の胎児において、生殖結節、および直腸から胎児中胚葉(ちゅうはいよう)の尾部細胞塊が尿生殖洞として分離し、最終的に陰茎を形成する過程で、体節構造を決定する遺伝子群であるホメオティック遺伝子の変異による異常形成、損傷、ストレスなどの影響により、二陰茎体が発症すると考えられています。

陰茎が2つに分かれているだけのものから、互いに少し離れた位置に同じ大きさの2本の陰茎がそれぞれ左右を向く形で独立して存在するもの、際立って大きさの違う2本の陰茎が独立して存在するもの、通常の1本の陰茎の上に小さな1本の陰茎がついているものなど、多岐にわたる二陰茎体の例があります。

排尿は、両方の陰茎から可能な場合もあれば、片方からのみ可能な場合もあり、会陰(えいん)の開口部からのみ可能な場合もあります。

長じてからの射精は、ほとんどは片方の陰茎からのみ可能ですが、両方の陰茎から可能な場合、2本の陰茎が完全に独立して機能し、一方で排尿しつつ、もう一方で射精することも可能な場合もあります。

陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしていて、男性ホルモンおよび精子を産生している睾丸(こうがん)、すなわち精巣は、2組4個ではなく、1組2個存在します。

二陰茎体や、これに関連する疾患を持って生まれた男児は、しばしば腎臓(じんぞう)、脊椎(せきつい)、肛門(こうもん)および直腸の先天性重複異常による複雑な内臓構成を持つため、これらの臓器と関連する種々の感染症により死亡する率が高くなっています。

また、先天的に脊椎骨が形成不全となって起きる神経管閉鎖障害である二分脊椎(にぶんせきつい)症、脳脊髄液による脳の圧迫が脳機能に影響を与える水頭(すいとう)症を合併することもあります。

生まれた男児に二分脊椎が発生している場合、二分脊椎の発生部位から下の神経がまひして、両下肢の歩行障害や運動障害、感覚低下が起こるほか、膀胱(ぼうこう)や直腸などを動かす筋肉がまひして排尿・排便障害、性機能障害が起こることもあります。脊椎骨の奇形の程度が強く位置が高いほど、多彩な神経症状を示し、障害が重くなります。

多くは、水頭症を合併しているほか、脳の奇形の一種であるキアリ奇形、嚥下(えんげ)障害、脊椎側湾、脊椎後湾、脊髄空洞症を合併することもあります。

二陰茎体を発症して長じた人は、ほかの先天性疾患を合併したり、性交渉の困難さから、子供を残せない例が多く認められます。中には、女性のパートナーとの間に子供をもうけている人もいます。

この二陰茎体の父親を持って生まれた男児の多くは、通常の陰茎を持っています。

二陰茎体の男児の多くは、今後の人生を考慮し、小児外科、外科などの医師により、生まれた時や幼少時に2本の陰茎を1本に接合する手術、あるいは2本の陰茎のうちの1本を切除する手術を受けています。

🇮🇱Ⅱa型高リポ蛋白血症

遺伝によって高リポ蛋白血症を発症する疾患

Ⅱa型高リポ蛋白(たんぱく)血症とは、遺伝によって、血液の中を流れる脂質成分であるLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が異常に増え、高リポ蛋白血症(高脂血症)を発症する疾患。家族性高コレステロール血症とも呼ばれます。

本来、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)は、肝臓の細胞表面にあるLDL受容体と呼ばれる蛋白によって細胞の中に取り込まれ、壊されます。しかし、Ⅱa型高リポ蛋白血症では、LDL受容体の遺伝子やこれを働かせる遺伝子に異常があるため、血液中のLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が細胞の中に取り込まれないで、血液の中にたまります。

人間の遺伝子は、父親由来と母親由来の2つが一組となってできています。LDL受容体やこれを働かせる遺伝子の両方に異常がある場合をホモ接合体と呼び、いずれか一方のみに異常が認められる場合をヘテロ接合体と呼びます。ホモ接合体のみならずヘテロ接合体も、Ⅱa型高リポ蛋白血症を示します。

Ⅱa型高リポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者は500人に1人以上、Ⅱa型高リポ蛋白血症ホモ接合体の発症者は100万人に1人以上の頻度で認められ、Ⅱa型高リポ蛋白血症の発症者総数は25万人以上と推定されています。さまざまな遺伝性代謝疾患の中でも、最も頻度が高い疾患といえます。

Ⅱa型高リポ蛋白血症ホモ接合体の発症者は、血清総コレステロール値が生まれつき非常に高く、平均で713mg/dl程度とされています。Ⅱa型高リポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者は、平均で338mg/dl程度とされています。健常人は、120~220mg/dlです。

このため、Ⅱa型高リポ蛋白血症ホモ接合体の発症者は、10歳までに、肘(ひじ)や膝(ひざ)などの皮膚に黄色腫(おうしょくしゅ)と呼ばれる黄色いいぼ状の塊が見られます。成長とともに、結節状に盛り上がった黄色腫が肘や膝、手首、尻(しり)、アキレス腱(けん)、手の甲などに多く認められます。

また、幼い時から動脈硬化が進行して、大動脈弁や冠動脈に動脈硬化が進行すると、階段を上がると胸が痛い、苦しいという症状が出ることがあります。小児期に狭心症、心筋梗塞(こうそく)などの命にかかわる疾患を発症することもあります。

Ⅱa型高リポ蛋白血症ヘテロ接合体の発症者では、重症例で皮膚の黄色腫が見られることがありますが、多くは10歳以後に起きます。

Ⅱa型高リポ蛋白血症は、常染色体優性遺伝性の形で遺伝する可能性があります。父親と母親がともにⅡa型高リポ蛋白血症ヘテロ接合体の場合、4分の1確率でホモ接合体の子供が生まれます。両親のいずれか片方がヘテロ接合体である場合、2分の1の確率でヘテロ接合体の子供が生まれます。

Ⅱa型高リポ蛋白血症は、小児期に皮膚の黄色腫で気付かれ、血液検査で明らかな高リポ蛋白血症が判明することで診断されます。動脈硬化性疾患の予防を目的としたLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を低下させるための治療が必要となります。

Ⅱa型高リポ蛋白血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、食餌(しょくじ)療法、運動療法に加えて、薬物療法を行ないます。

食餌療法では、脂肪やコレステロールの少ない食事を摂取します。運動療法では、軽い有酸素運動を行ないます。

薬物療法では、スタチンを始めとする脂質低下剤を使用します。薬剤の効果が十分でない場合が多く、効果が足りなければエゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤、プロブコールなどのコレステロール異化促進剤を使用します。

それでも効果が足りない場合に、LDLアフェレシスという体外循環を用いてLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を取り除くことができる治療法を行ないます。これは、機械装置を使って血液からLDLコレステロール(悪玉コレステロール)を直接除去する方法で、動脈硬化の進行を遅くすることができます。1~2週間に1回の頻度で、一生、続ける必要があります。

Ⅱa型高リポ蛋白血症ホモ接合体の発症者に対して、LDLアフェレシスの導入が遅れると心筋梗塞で死亡する場合もあり、ベッド上で治療の時間中、安静にできるようになる4歳~6歳には治療を始めることが望まれます。治療法の一つとして、 生体肝移植が選択される場合もあります。

適切な治療を行なわない場合、予後は極めて不良です。

🇮🇱肉芽腫性口唇炎

唇が全体的にはれ上がり、再発の繰り返しもある疾患

肉芽腫(にくげしゅ)性口唇炎とは、唇が全体的にはれ上がる特徴的な変化を示す疾患。痛みを伴うことはありませんが、再発を繰り返すことも少なくありません。また、この肉芽腫性口唇炎では、舌の表面に多数の溝(みぞ)ができる溝状舌(こうじょうぜつ)を伴ったり、顔面神経まひを同時に発症したりすることもあり、特にメルカーソン・ローゼンタール症候群と呼ばれています。

肉芽腫性口唇炎は、男女差なく発症し、若年者から中高年者に多くみられます。

肉芽腫が形成される原因は完全には明らかになっておらず、不明な点も多く残っています。原因の一つとしては、虫歯や歯周病など口腔(こうくう)内の疾患が挙げられます。

また、歯科治療において使用する歯冠や矯正具などの金属が唾液(だえき)と反応してイオン化し、イオン化した金属がアレルゲンとなってアレルギー反応を起こすことも、肉芽腫が形成される原因の一つであると推定されています。

そのほかにも、遺伝的要因や食物アレルギー、自律神経失調、消化管に炎症が起きるクローン病なども関与していると考えられています。さまざまな原因が複合的に関与することで、肉芽腫が形成されるとも推定されています。

 肉芽腫性口唇炎を発症すると、非乾酪(ひかんらく)性類上皮細胞肉芽腫と呼ばれる特徴的な組織変化によって、突発的に唇がはれ上がります。唇の全体がはれることもあれば、上唇や下唇が限局的にはれることもあり、唇の周囲の皮膚にもはれがみられることもあります。

 痛みやかゆみを伴うことは、ありません。はれは数時間から数日で改善することもありますが、時間経過とともに再び、はれ上がり、再発することも少なくありません。何回も再発を繰り返すうちに、徐々に弾性のある硬いはれ上がりとなっていくこともあります。

何カ月も症状が持続している人には、一度、皮膚科や口腔内科、歯科口腔外科に相談してみることが勧められます。

肉芽腫性口唇炎の検査と診断と治療

皮膚科、口腔内科、歯科口腔外科などの医師による診断では、唇の組織変化を確認するために、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行います。

発症の背景にある疾患を確認するためには、慢性の病巣感染の有無についての検査、金属パッチテスト、アレルギー検査(血液検査)、パノラマX線(レントゲン)撮影(虫歯の検査)、便検査、消化管内視鏡検査などを適宜、行います。
皮膚科、口腔内科、歯科口腔外科などの医師による治療では、発症する原因がはっきりせず必ず効果があるという処置法は確立されていないため、個々の症状、検査結果に応じて、発症に関与していると考えられる原因への標準的な処置を時には組み合わせて行います。

虫歯や歯周炎など口腔内の疾患が原因であると考えられる場合は、その治療を行います。金属パッチテストで陽性を示した場合は、歯科治療のための金属の除去を検討します。対症療法的に抗ヒスタミン薬を用いることもあります。

唇で生じている異常反応を抑えることを目的として、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)や、アレルギー反応を抑えるトラニラストなどの治療薬を用いることもあります。

このような内科的な保存的治療で十分な効果が得られない場合には、症状の固定から1年以上経過した時点で、外科的に病変部位を切除することも検討されます。

🇹🇷ニコチン酸欠乏症

不規則な食事をするアルコール多飲者に発症

ニコチン酸欠乏症とは、ビタミンBの一つであるニコチン酸が欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患。ナイアシン欠乏症とも呼ばれ、とうもろこしを主食とする中南米などの地域ではペラグラとも呼ばれています。

ニコチン酸は、ナイアシンとも呼ばれる水溶性のビタミンで、蛋白(たんぱく)質に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。糖質、脂質、蛋白質の代謝に不可欠な栄養素であり、また、アルコールや、二日酔いのもとになるアセトアルデヒドを分解します。人為的にニコチン酸を摂取することで、血行をよくし、冷え性や頭痛を改善しますし、大量に摂取すれば血清のコレステロールや中性脂肪を下げる薬理効果もあります。

ニコチン酸欠乏症はとうもろこしを主食とする人に多い疾患ですが、日本では、不規則な食事をするアルコール多飲者にみられます。酒を飲むほどニコチン酸が消費されますので、つまみを食べずに大量に飲む人は、栄養不良に注意が必要です。特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6が不足すると、ニコチン酸の合成能力が低下します。

遺伝病であるハートナップ病の人も、トリプトファンが腸から吸収されないために、ニコチン酸欠乏症を発症します。

症状としては、日光に当たることによって手や足、首、顔などに皮膚炎が起こります。同時に、舌炎、口内炎、腸炎などを起こし、そのために食欲不振や下痢なども起こします。その後、頭痛、めまい、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全による錯乱、見当識の喪失、幻覚、記憶喪失などが起こり、最悪の場合は死に至ります。

日本では普通の食事をしている限り、重症にはなりません。食欲減退、口角炎、不安感などの軽いニコチン酸欠乏症が見られる程度です。

ニコチン酸欠乏症の検査と診断と治療

ニコチン酸欠乏症の治療は、ニコチン酸を含むビタミンB群の投与です。ニコチン酸アミドを1日50〜100mg投与し、他のビタミンBの欠乏を合併することも多いので、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6も併用して投与します。ビタミンB群は、お互いに協力しあって活動しているため、それぞれの成分だけではなく、ビタミンB群としてまとめて投与することが望ましい栄養素でもあります。

ニコチン酸の過剰症は特にありませんが、合成品のニコチン酸を100mg以上摂取すると、皮膚がヒリヒリしたり、かゆくなることがあります。とりわけ、ニコチン酸の摂取に際して注意が必要なのは、糖尿病の人です。ニコチン酸はインシュリンの合成に関与し、大量に摂取すると糖質の処理を妨げてしまいます。 一部の医薬品との相互作用を示唆するデータもあるため、すでに他の薬を服用中の場合は主治医に相談の上、ニコチン酸を摂取する必要があります。

🇹🇷ニコチン性口内炎

長期間の喫煙により口腔粘膜、とりわけ口蓋粘膜が厚く、硬くなる病変

ニコチン性口内炎とは、喫煙により口腔(こうくう)粘膜、とりわけ上側の部分の口蓋(こうがい)粘膜が厚く、硬くなる病変。喫煙者口蓋とも、口蓋ニコチン性白色角化症とも呼ばれます。

喫煙歴の長いヘビースモーカーにみられ、たばこの煙に含まれるニコチンなどの化学物質の蓄積や、たばこ喫煙時の熱刺激が原因となって発生します。

ニコチンのみが直接の原因かどうかは不明で、たばこの煙に含まれるどの化学物質が影響しているかということまでは、わかっていません。たばこの煙には、ニコチンのほか、タール、一酸化炭素、非常に発がん性の高いベンツピレンなど200種以上の有害な化学物質が含まれることは、わかっています。

長期間の喫煙により、口の中が熱く、乾燥したたばこの吸気にさらされ続け、口腔粘膜が刺激されることも、原因の一つとなります。

発症の初期では赤い発疹(はっしん)ができ、すぐに白色になります。口蓋粘膜は白色になって、厚く、硬くなり、時に表面がシワ状、あるいは敷石状になることもあります。やがて、口蓋粘膜に点在する小唾液腺(しょうだえきせん)が炎症により赤くはれるため、白色の口蓋粘膜に赤い点が散在しているように見えるようになります。

痛みなどの自覚症状はほとんどありませんが、時に染みることもあります。重症になると、小唾液腺がふさがれ唾液が出にくくなることもあります。

たばこの悪影響はよく知られているところで、タール、ベンツビレンを始めとする発がん物質を含んでいるため、ニコチン性口内炎においても口腔がんに発展することがあります。

ニコチン性口内炎の検査と診断と治療

歯科口腔外科、内科の医師による診断では、臨床症状や喫煙歴などから判断は容易で、通常、組織検査は不要です。

歯科口腔外科、内科の医師による治療では、禁煙すること、もしくは喫煙本数を減らすことにより、数週間から数カ月で改善します。

ニコチン性口内炎はがん化する恐れも指摘されており、口腔がん予防の意味からも禁煙の意義は大きくなります。

🇹🇷二次性アルドステロン症

ほかの臓器の疾患などの原因により、副腎皮質からアルドステロンが過剰に分泌されて起こる疾患

二次性アルドステロン症とは、ほかの臓器の疾患など何かしらの原因により副腎(ふくじん)皮質が刺激を受けることで、副腎皮質ホルモンの一つであるアルドステロン(鉱質コルチコイド)が過剰に分泌される疾患。続発性アルドステロン症とも呼ばれます。

アルドステロンの分泌は、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系という血圧や体液量の調節にかかわるホルモン系のコントロールを受けているため、二次性アルドステロン症の大半はレニンーアンジオテンシンーアルドステロン系の刺激が高進することに起因します。

エストロゲン製剤(卵胞ホルモン製剤)、経口避妊薬に起因する高血圧や、腎血管性高血圧(腎動脈狭窄<きょうさく>症)、妊娠高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫、傍糸球体細胞腫(しゅ)など高血圧の疾患から発生するもののほか、うっ血性心不全、偽性低アルドステロン症、腹水を随伴させた肝硬変、下剤および利尿薬などの不適切な利用、ネフローゼ症候群、バーター症候群、ギッテルマン症候群といった高血圧以外の疾患から発生するものがあります。

レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を除いたものでは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した高カリウム血症によって引き起こされる傾向にあります。

二次性アルドステロン症で主に現れる症状は、浮腫(ふしゅ、むくみ)、下肢脱力、筋力低下であり、これらは血液中のカリウムが減る低カリウム血症を基礎にして生じ、どの二次性アルドステロン症にも同じく現れます。

また、二次性アルドステロン症を招いている元となる疾患の症状も示されます。例えば、腎血管性高血圧 、悪性高血圧、褐色細胞腫では、アルドステロンが腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧を伴いますが、バーター症候群、心不全や肝硬変などの浮腫性疾患では高血圧を伴いません。

二次性アルドステロン症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科の医師による診断では、元となる疾患が明らかとなり、低カリウム血症がみられ、副腎皮質から分泌されるアルドステロン、および腎臓から分泌され血圧を上昇させるレニンの両ホルモンが高値を示せば、大半の二次性アルドステロン症は確定できます。避妊薬、下剤、利尿薬などの服用している薬剤についての情報も重要となります。

内科、内分泌代謝内科、循環器内科、泌尿器科の医師による治療では、基本的に元となる疾患の是正が中心となります。

浮腫や低カリウム血症などが継続してみられ、元となる疾患の治療も難しいとされる場合は、カリウム保持性の利尿薬であるスピロノラクトン(アルダクトン)を使用します。以上の治療方法で改善がみられない場合においては、カリウム製剤を使用します。そのほか、非ステロイド性抗炎症薬の一つであるインドメタシンがバーター症候群に有用とされる場合もあります。

なお、副作用などの理由からスピロノラクトンを適用できない場合、トリアムテレン(トリテレン)を使用します。ただし、抗アルドステロン様の作用は有しません。

高カリウム血症によって二次性アルドステロン症が引き起こされている場合は、軽度であれば、利尿薬を投与してカリウムの排出量を増やします。また、腎臓を刺激してカリウムを排出させるアルドステロン作用を持つホルモン剤を投与することもあります。重度であれば、消化管からカリウムを吸収し、便と一緒に体外に排出する作用のあるレジン(樹脂製剤)を、経口または浣腸(かんちょう)で投与します。同時に下痢を誘発させて、カリウムを吸収したレジンが速やかに体外へ排出されるようにします。

🇸🇦二次性血小板減少症

いろいろな基礎疾患とともに、血小板の数が減少し、血が止まりにくくなる病態

二次性血小板減少症とは、いろいろな基礎疾患とともに、血小板の数が血液1マイクロリットル中に10万個以下になり、血が止まりにくくなる病態。続発性血小板減少症、症候性血小板減少症とも呼ばれます。

血小板は血を止める働きをする血液中の細胞で、血小板造血の抑制や、自己抗体産生による血小板の破壊により、血小板の数の減少がみられます。

例えば、白血病や再生不良貧血では、白血球、赤血球の変化とともに、血小板の数が減少する二次性血小板減少症が生じます。ほかに、全身性エリマトーデス、バンチ症候群、血栓性血小板減少性紫斑(しはん)病、溶血性尿毒症症候群などでも、血小板の数が減少する二次性血小板減少症が生じます。

出血の症状は、紫斑、溢血(いっけつ)斑(青あざ)、鼻出血、歯肉出血、血尿、血便などがみられます。まれに脳出血があり、これが命取りとなることもあります。

二次性血小板減少症の検査と診断と治療

内科の医師による治療は、いろいろな基礎疾患の治療が第一ですが、直接血小板を補う目的で輸血、または血液から血小板だけを分離して血液に注入する血小板輸注を行うこともあります。

🇸🇦二次性高血圧

何らかの特定される疾患があって、その症状の1つとして起こる高血圧

二次性高血圧とは、何らかの特定される疾患があって、その症状の1つとして起こる高血圧。続発性高血圧ともいいます。

原因となる疾患にもよりますが、治せる高血圧ということもできます。症状は無症状のものから、その原因となる疾患に起因した特徴的なものまでさまざまです。疾患が治れば、その症状である高血圧も解消するのが原則ですが、疾患が治っても高血圧だけが残ってしまうことがあります。この場合は、高血圧の治療が必要になります。

二次性高血圧の頻度は低く、高血圧全体の10パーセント未満で、原因となる疾患のない本態性高血圧が90パーセント以上を占めています。しかし、35歳以下の若い人に発症する若年性高血圧は、この二次性高血圧のことが多く、詳細な検査が必要になることが多いものです。また、治療でなかなか血圧が下がらない場合や、高齢者で急激に高血圧を発症した場合などに、この二次性高血圧が疑われます。

二次性高血圧は、疾患の部位などに応じて、腎性(じんせい)高血圧、内分泌性高血圧、心血管性高血圧、神経性高血圧、妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)などに分類されています。

腎性高血圧は、腎臓の疾患が原因で引き起こされる高血圧。最も頻度が高く、二次性高血圧の4分の3を占めます。高血圧を起こすのは、急性腎炎、慢性腎炎、糖尿病性腎症、痛風腎、腎盂(じんう)腎炎、腎梗塞(こうそく)、腎動脈狭窄(きょうさく)症、レニン産生腫瘍(しゅよう)、ウィルムス腫瘍、腎周囲膿瘍(のうよう)などが主なものです。

これらの疾患が起こった場合、腎臓の中を流れる血液の量が減少します。すると腎臓は、レニン・アンギオテンシン、アルドステロンという血圧を上昇させる物質の分泌量を増やします。血圧を上昇させ、腎臓へより多くの量の血液が流れるように仕向けるのです。

内分泌性高血圧は、ホルモンの分泌が異常になる疾患で引き起こされる高血圧。腎性高血圧に次いで頻度が高くなっています。バセドウ病などの甲状腺(せん)機能高進症で引き起こされることが多いのですが、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫、クッシング症候群などの副腎の疾患が原因のこともあります。

心血管性高血圧は、心臓から出てすぐの太い血管である心血管の疾患で引き起こされる高血圧。大動脈縮窄症、大動脈炎症候群(高安病、脈なし病)などが代表的な疾患です。

神経性高血圧は、脳・神経の疾患で引き起こされる高血圧。脳の中の圧が高くなると、高血圧が起こってきます。原因となる疾患は、髄膜炎や脳腫瘍が代表的ですが、頭に外傷を受けた時や、ポリオ(小児まひ)などによる神経病の後、血圧の上がることがあります。

妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)は、妊娠に伴って起こる疾患です。高血圧、むくみ(浮腫〔ふしゅ〕)、たんぱく尿が3大症状ですが、高血圧だけしか現れないこともあります。

二次性高血圧は本態性高血圧に比べ、軽いうちから自覚症状が現れやすいものですが、 放置すると心疾患や脳血管疾患といった生命にかかわる疾患を引き起こしますので、早期発見、早期治療に努めるべきです。

二次性高血圧の検査と診断と治療

内科、あるいは循環器科の医師に診断では、まず血圧の値がどの程度変動するか、どの程度のレベルを示すかという血圧値の吟味をします。高血圧であることがわかれば、それが原因となる疾患のある二次性高血圧か、通常多くみられる本態性高血圧なのかという原因診断と、高血圧によって脳、心臓、腎臓、眼底などの重要臓器に、どの程度障害があるかという重症度診断の二つを行います。

二次性高血圧は、既往歴、家族歴、現在の検査データや経過などから、これをどの程度疑わなければならないかがかなり判明します。しかも、二次性高血圧は手術などで高血圧も根治できることがある点からも、その診断は重要で、入院しての精密検査を含めて、いろいろな検査が必要なことがあります。特に腎性高血圧が疑われる時は、静脈性腎盂撮影やCT検査が行われます。

逆に、二次性高血圧の頻度は高血圧全体からみれば10パーセント未満なので、無駄な検査はせずに必要最小限ですむよう、疑わしい時は最初から専門施設に紹介されることもあります。

二次性高血圧の治療では、原因となる疾患の治療を進めながら、必要に応じて降圧剤の投与や高血圧の食事療法と運動療法を同時に進めていきます。そして、原因となる疾患が治療されれば、自然と二次性高血圧も改善されていきます。

ただし、高血圧が長く続くと腎臓を痛めてしまうので、原因となる疾患を治しても高血圧の状態が続いてしまう慢性高血圧になってしまうこともあります。

🇸🇦二次性サルコペニア

不活動、低栄養、疾患が原因で、筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態

二次性サルコペニアとは、不活動、低栄養、疾患が原因で、筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態。

筋肉量が減少し、筋力または身体能力が低下した状態がサルコペニア(筋肉減弱症)で、加齢に伴って生じ、加齢以外に明らかな原因がない場合を原発性(一次性)サルコペニア、加齢以外に原因があるものを二次性サルコペニアといいます。

二次性サルコペニアのうち、不活動に関連したサルコペニアは、寝たきり、不活発なスタイル、無重力状態などによって生じます。長期の安静で体を動かさないことにより二次的に起こる廃用症候群(生活不活発病)、筋肉を長い期間使わないことにより生ずる廃用性筋委縮によっても生じます。

低栄養に関連したサルコペニアは、吸収不良、消化管疾患、食欲不振を起こす薬剤の使用などに伴う、エネルギーと蛋白(たんぱく)質の摂取量不足によって生じます。心因性の反応によって食欲不振に陥る神経性食思不振症(神経性食欲不振症、拒食症)や、不適切な栄養管理による飢餓によっても生じます。

疾患に関連したサルコペニアは、手術、外傷、骨折、感染症、熱傷、がん、膠原(こうげん)病、慢性心不全、慢性腎(じん)不全、慢性呼吸不全、肝不全、神経筋疾患などよって生じます。

病院の入院患者では、複数の原因による二次性サルコペニアが多く認められ、3つの悪循環がサルコペニアを進行させると考えられています。

第1に、サルコペニアにより転倒や転落の機会が増加します。その結果骨折を来すと、体動が減少して制限され、サルコペニアが一段と進行します。第2に、体動が減少して制限されるため、摂食能力の低下、低栄養の進行、蛋白合成の障害を来し、サルコペニアはさらに進行します。第3に、アミノ酸プールの減少により、病気や外傷などで蛋白必要量が増加した場合の対応能が低下します。そのため病的状態からの回復が遅延し、サルコペニアはますます進行します。

二次性サルコペニアの検査と診断と治療

整形外科、リウマチ科、膠原病内科などの医師による診断では、筋力または身体能力の低下を調べるため、まず握力と歩行速度を測定します。基準値は、握力が男性26キログラム未満、女性18キログラム未満、歩行速度が秒速0・8メートル以下。どちらか一方でも該当すると、サルコペニアが疑われます。

握力の基準値は、両手で各3回測り、最高値をとります。歩行速度の秒速0・8メートルの目安は、青信号で横断歩道を渡りきれるかどうかです。

確定診断には、X線を用いる特殊な検査法であるDXA法(二重X線吸収法)で筋肉量を測定し、男性7・0(キログラム/平方メートル)、女性5・4(同)の基準値未満なら、サルコペニアとされます。

整形外科、リウマチ科、膠原病内科などの医師による治療では、二次性サルコペニアのうち、不活動に関連したサルコペニアの場合、不要な安静や禁食を避け、少しでも早く離床や経口摂取を行います。

低栄養に関連したサルコペニアの場合、適切な栄養管理を行います。筋肉量が少ないからといって栄養を考慮せず筋力トレーニングを行っても、筋肉量は減少する可能性が高くなります。

疾患に関連したサルコペニアの場合、まず原因となっている疾患の改善を図ります。同時に、適切な栄養管理とリハビリテーションを併用します。疾患の程度によっては、栄養管理を優先し、筋力トレーニングはあえて行いません。機能維持を目標とした関節可動域訓練や座位訓練のみを行い、原因となっている疾患がある程度が落ち着いてから、筋力トレーニングに進みます。

2022/08/19

🇾🇪二次性脂質異常症

生活習慣、疾患、薬剤の副作用などが原因で起こる脂質異常症

二次性脂質異常症とは、体質の遺伝以外の原因で起こる脂質異常症(高脂血症)。続発性脂質異常症、二次性高脂血症とも呼ばれます。

脂質異常症では、血液の中を流れる脂質成分である総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセライド)が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態が継続します。

動脈硬化症などの危険因子の一つで、脂質異常症になると、血液の粘度が高まり、スムーズに流れにくくなります。

通常、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl以下を異常とします。

血液の中には、コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)のほか、リン脂質、遊離脂肪酸といった脂質成分が流れています。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となり、中性脂肪はエネルギーの貯蔵庫などとなり、体の機能を保持するために大切な働きを持っています。これらの脂質は肝臓で作られたり、食事から体に摂取され、血液中の脂質成分の量は保たれ調整されています。

脂質異常症では、このような調整機能が低下したり、食事からの摂取量が多量になっている状態、あるいは、HDLコレステロール(善玉コレステロール)については低い状態が継続します。

この脂質異常症が遺伝的体質以外の原因で起こるのが、二次性脂質異常症であり、食事などの生活習慣や、何らかの疾患、薬剤の副作用が原因になります。

食事では、肉類、脂身の多い魚、バターなどの動物性脂肪(飽和脂肪酸)や鶏卵、うに、イクラ、レバー、もつ類などのコレステロールの多い食品を取りすぎたり、野菜や海草の摂取不足などの食事のアンバランスにより、血液に含まれるコレステロールが増加します。

また、エネルギーの過剰摂取、すなわち食べすぎや清涼飲料水、アルコールの飲みすぎ、脂っこいものや甘いものの過剰摂取により、血液に含まれる中性脂肪(トリグリセライド)が増加します。

食べすぎとともに運動不足は、肥満をもたらし、血液に含まれる中性脂肪(トリグリセライド)を増加させます。喫煙は、血液に含まれるHDLコレステロール(善玉コレステロール)を減少させます。

甲状腺(せん)機能低下症や肝臓病、腎(じん)臓病、糖尿病などの疾患が原因となって、脂質異常症を引き起こすこともあります。女性では閉経後、エストロゲンという女性ホルモンの減退により、血液に含まれるコレステロールが増加します。

さらに、疾患の治療に使ったステロイドホルモン剤という薬剤の副作用により、脂質異常症が起こることがあります。

二次性脂質異常症は放置しておくと、血管の動脈硬化が徐々に進行していくものの、初期の段階では体の自覚症状は全くありません。しかし、最終的には虚血性疾患である心筋梗塞(こうそく)、脳梗塞などの深刻な疾患を引き起こす要因となります。もし検診などで脂質異常症を指摘されたら、放置せずに内科、ないし内分泌・代謝科を受診し、適切な治療を受けることが勧められます。

二次性脂質異常症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、トリグリセライド(中性脂肪)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値は、これらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。

脂質異常症の診断基準では、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が120〜139mg/dl以上を境界域高LDLコレステロール血症、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上を高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症) 、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl以下を低HDLコレステロール血症とします。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、ほかの疾患や薬剤が原因となって起こるタイプの二次性脂質異常症の場合、原因となっている疾患を治療したり、可能ならば薬を変えたりやめたりすることで、脂質異常症を改善することができます。

食事などの生活習慣が原因となって起こるタイプの二次性脂質異常症の場合、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や海草、果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

積極的にウォーキングや水中歩行などの適度な有酸素運動を行なうと、適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、アルコールの飲みすぎ、ストレス、過労、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、改善法として効果的です。

食事などの生活習慣の見直しで血液中の脂質に値が十分に改善しない場合は、脂質を下げる薬を服用することもあります。

高コレステロール血症に対しては、一般にスタチンと呼ばれているHMG‐CoA還元酵素阻害薬を使います。この種類の薬は、コレステロールの合成を抑制するものです。そのほかにも、コレステロールの吸収阻害剤や、レジンと呼ばれる陰イオン交換樹脂やプロブコール、ニコチン酸誘導体を使います。

高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)に対しては、フィブラート系薬物のベザフィブラートや、フェノフィブラートを使います。EPA(エイコサペント酸エチル)を使うと、血管に直接働いて抗動脈硬化作用を示すともいわれています。

🇾🇪二次性赤血球増加症

貧血とは逆に、何らかの原因に反応して血液中の赤血球が増加する疾患

二次性赤血球増加症とは、貧血とは逆に、何らかの原因に反応して血液中の赤血球総数が正常範囲を超えて増加する状態。

血液中の赤血球の増加は、腎臓(じんぞう)で産生される造血ホルモンのエリスロポエチンが過剰に分泌され、刺激を受けた骨髄が赤血球を大量に作るために生じます。

ある種の先天性心臓病で動脈血に静脈血が混じる場合や、肺気腫(はいきしゅ)、慢性気管支炎、肺線維症などの慢性肺疾患のため肺からの酸素摂取がうまくいかない場合、あるいは過度の喫煙で大量の一酸化炭素を肺から血液中に取り込んだ場合などに、全身の組織が酸素欠乏状態に陥り、エリスロポエチンの産生が高まります。その結果、赤血球が大量に作られれば、単位容積血液当たりの酸素運搬量が増えます。この一連の現象は、酸素欠乏を解消しようとするための、目的のある反応と解釈できます。

この点、海抜の高い地域の住民は、常に低酸素状態で生活しているため二次性赤血球増加症になっています。

一方、腎臓の疾患とか、一部の腎がん、肝細胞がん、子宮がん、小脳腫瘍(しゅよう)などの悪性腫瘍によって、酸素欠乏がなくても、エリスロポエチンの過剰産生を来すことがあり、二次性赤血球増加症を生じます。

二次性赤血球増加症の症状としては、血液中の赤血球が増加すると血液の粘度が増加し、血流障害を起こすことから、顔面紅潮と結膜充血のほか、疲れやすい、頭痛、めまい、耳鳴り、高血圧などが生じます。さらに、一過性脳虚血発作、脳梗塞(こうそく)、心筋梗塞などの血栓症状を呈する場合もあり、基礎になる疾患いかんにより、それぞれの症状が加わることになります。

なお、この二次性赤血球増加症には、赤血球が腫瘍性に増殖する真性赤血球増加症(真性多血症)は含まれません。また、体液中の水分が失われて脱水症になった場合に、血液が濃縮して起こる見掛け上の赤血球増加症(相対的赤血球増加症、相対的多血症)、あるいは、脱水症状もなく、はっきりとした原因がないストレス性赤血球増加症も含まれません。

二次性赤血球増加症の検査と診断と治療

内科の医師による診断では、血液検査で赤血球数の増加が認められます。脱水症が原因となって起こる見掛け上の赤血球増加症、ストレス性赤血球増加症と区別するために、循環赤血球量の測定を行い、血液中の総赤血球数が真に増加していることを確認します。

さらに、心・肺疾患の有無の確認、動脈血酸素飽和度の測定、大量喫煙歴の確認、血中エリスロポエチン量の測定などを順次行います。

真性赤血球増加症(真性多血症)の場合と異なり、白血球および血小板数の増加は伴わず、また脾臓(ひぞう)のはれも認めません。エリスロポエチンを産生する悪性腫瘍が疑われる場合には、腫瘍の検索を併せて行う必要があります。

二次性赤血球増加症の治療では、心・肺疾患、エリスロポエチンを産生する悪性腫瘍など、原因となる疾患の治療が主となります。過度の喫煙が原因の場合には、禁煙が重要になります。

🇾🇪二次性肥満

何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こる肥満

二次性肥満とは、何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こるタイプの肥満。症候性肥満、随伴性肥満とも呼ばれます。

一方、原因となる特別の疾患がなくて起こるタイプの肥満は、原発性肥満、あるいは単純性肥満と呼ばれています。こちらのタイプの肥満の多くは、食べすぎと運動不足が主な原因となって起きます。肥満している人の大部分が原発性肥満であり、二次性肥満は肥満者全体の5パーセント程度にしか認められません。

二次性肥満の原因も過食によるものですが、基礎にある疾患が食欲を増加させて脂肪を蓄積し、肥満してきたものです。基礎にあって影響を与える疾患としては、ホルモンの疾患や遺伝性の疾患、食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患が挙げられます。ホルモンの疾患では、ホルモン作用の高進や低下によってエネルギーの摂取や消費のバランスが障害され、二次性肥満を発症します。遺伝性の疾患では、遺伝的要因の異常によりエネルギー代謝調節系が破綻し、二次性肥満を発症します。視床下部の疾患では、食行動の調節機能を有する視床下部の器質的および機能的異常に基づいて、二次性肥満を発症します。

基礎にあって影響を与える薬物としては、抗精神病薬や副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬などがあります。抗うつ剤の服用による副作用で食欲が増して肥満になることがあり、膠原(こうげん)病などで用いられる副腎皮質ホルモン薬は使用量が多いと肥満を起こします。

ホルモンの疾患には、インスリノーマ(インスリン産生膵島〔すいとう〕細胞腫〔しゅ〕)、高インスリン血症、クッシング症候群、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、性腺機能低下症があります。

インスリノーマでは、インスリンによる低血糖発作を回避するために過食を生じ、二次性肥満を発症します。高インスリン血症による脂肪蓄積作用も、二次性肥満に関与します。しかし、多くのケースで肥満は顕著ではなく、インスリン自体は中枢神経系で摂食抑制性に働いています。 クッシング症候群では、副腎皮質からグルココルチコイドというホルモンが過剰に分泌され、丸顔と上半身の肥満を特徴とする二次性肥満を発症します。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの低下によって体重増加を来します。この体重増加は脂肪蓄積ではなく、体液貯留やムコ多糖類の蓄積が原因であるとされます。

遺伝性の疾患には、ターナー症候群、糖尿病などがあります。食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患には、松果体腫瘍(しゅよう)、フレーリッヒ症候群、キアリ・フロンメル症候群といった疾患があります。

二次性肥満の検査と診断と治療

内科の医師は、肥満者を診察する際には、今までの病歴や家族歴、生活歴、身体検査の結果から、二次性肥満か原発性肥満かを区別します。

二次性肥満の場合は、主として原因となっている疾患の治療が必要になるので、入院の上、精密検査を行うことが必要になります。ホルモンの疾患による肥満や、視床下部の疾患による肥満では、各種内分泌学的検査、神経学的検査、CTやMRIなどの画像検査が必要となります。遺伝性の疾患による肥満、および遺伝性の視床下部の疾患による肥満では、必要に応じて染色体検査や各種遺伝子の検査を行います。

二次性肥満に対する治療は、原因となっているクッシング症候群、甲状腺機能低下症などの疾患の治療が中心になります。ホルモンの疾患に対しては、ホルモン補充療法を行います。薬剤の服用による肥満に対しては、薬剤の減量、または体重増加の少ない、ほかの薬剤に変更します。

肥満自体には原発性肥満と同様に食事療法、運動療法および行動療法を用いますが、遺伝性の疾患による肥満など知能障害を伴うケースでは、それらの遂行が困難な場合も多くなります。

🇴🇲二次性貧血

造血器以外の疾患の症状として、二次性にみられる貧血

二次性貧血とは、造血器疾患以外の他の疾患の症状として、二次性にみられる貧血。続発性貧血、症候性貧血と呼ばれることもあります。

主な原因としては、慢性感染症、膠原(こうげん)病などの慢性炎症、悪性腫瘍(しゅよう)、腎(じん)疾患、肝疾患、内分泌疾患などがあります。特に、慢性感染症、膠原病などの慢性炎症、悪性腫瘍による貧血は病態が共通しているため、慢性疾患による貧血とも呼ばれています。 白血病に随伴する貧血も、通常、この二次性貧血の一種です。

二次性貧血の症状は、他の何らかの疾患に基づいて徐々に進行するため、初期段階では自覚されにくいという特徴があります。進行すると、動悸(どうき)や息切れ、立ちくらみなどの貧血特有の症状が現れます。

また、高齢者でみられる軽度から中等度の貧血は、大部分が二次性貧血で、陰に消化器系の悪性腫瘍が潜んでいることがあるので注意が必要です。

結核、感染性心内膜炎、肝膿瘍(のうよう)などの慢性的な感染症のほか、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデスなどの膠原病に伴う慢性炎症、悪性腫瘍があると、鉄分を摂取しても治らない貧血が起こることがあります。その原因は、免疫にかかわる組織が活発になり、鉄が組織に取り込まれて鉄欠乏の状態になることにあります。

次に、腎疾患が悪化して腎臓の機能が失われ腎不全に陥ると、造血を促すホルモンであるエリスロポエチン(赤血球生成促進因子)が産生されにくくなるために、二次性貧血が起こります。そのほかにも、腎臓の排出機能の低下によって体内にたまる尿毒症性物質による造血抑制や、溶血の高進、低栄養、透析に伴う失血など、さまざまな原因が関係して起こります。

さらに、肝硬変や慢性肝炎などの肝疾患がある場合にも、肝臓が体内の一大化学工場のような臓器であるため、さまざまな物質の代謝機能が低下し、二次性貧血が起こります。甲状腺(せん)機能低下症、下垂体機能低下症、副腎皮質機能低下症などの内分泌疾患がある場合も、赤血球の産生能力が低下するため、二次性貧血が起こります。

医師による診断では、血液一般検査で貧血の有無がわかります。二次性貧血の治療では、原因となっている疾患を治療すれば貧血も回復しますが、原因がはっきりせず診断に時間が掛かることもあります。

腎疾患による場合は、造血を促すホルモンであるエリスロポエチンが不足するため、静脈内注射ないし皮下注射によるエリスロポエチンの投与や、造血に必要となるビタミンB12、葉酸などのビタミン剤の投与が行われます。ただし、エリスロポエチンの投与で血圧上昇、高血圧性脳症、脳梗塞(こうそく)を来すこともあるので、あまり急速に貧血を改善させないほうが安全です。エリスロポエチンの投与でも貧血が改善しない場合は、ほかの原因を調べる必要があります。

内分泌疾患による場合も、不足したホルモンの補充などが行われます。重度の貧血症の場合には、赤血球を輸血するなどの治療を行うこともあります。

なお、徐々に二次性貧血になると、体がそれに慣れて、かなり重症でも自覚症状があまり出ない場合があるので、定期的に検査を受けることが大切です。

🇴🇲21トリソミー症候群

染色体の異常により、体と精神の発達が遅れる疾患

21トリソミー症候群とは、21番目の染色体が1本多い、3本あることが原因で引き起こされる重度の先天性障害。21トリソミー、ダウン症候群、ダウン症とも呼ばれます。

人間の体は、父親と母親からもらった遺伝子情報に基づいて作られます。遺伝子情報は、染色体という生体物質が担っています。一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本ずつを父親と母親から継承しています。

合計46本の染色体のうち、ある常染色体が過剰に存在し、3本ある状態がトリソミーです。卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。トリソミーが引き起こされると、その染色体が担当する物質産生などが通常の1・5倍になって致命的な影響を及ぼし、新生児が生きて生まれた場合でも知的障害や奇形など多くの先天性障害を持つことになります。

21トリソミー症候群は新生児で最もよくみられるトリソミーであり、まれに21番染色体と別の染色体が互いに切断されて結合している転座型や、受精後の初期細胞分裂の際に染色体の不分離が起こるモザイク型によって、21トリソミー症候群が起こることもあります。

1866年に英国の眼科医ジョン・ラングドン・ハイドン・ダウンが初めてその存在を報告し、以来、本症例にみられる異常所見が多く報告され、現在の21トリソミー症候群としての症状を導いてきています。しかし、1959年にフランス人のジェローム・レジューンによって、21番染色体がトリソミーを形成していることが初めて証明されるまでは、その原因は不明でした。

日本では現在、新生児800人から1000人に1人の割合で21トリソミー症候群がみられます。母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、21トリソミー症候群の新生児を産む確率が高くなります。しかし、過剰な染色体が生じる原因は、父親にあることもあります。

21トリソミー症候群の子供では、精神と体の発達が遅れます。知能指数(IQ)には幅がありますが、正常な子供の知能指数が平均100であるのに対し、平均でおよそ50。聞くために必要な能力より、絵を描くなどの視覚動作能力が優れている傾向があるため、典型的には言語能力の発達が遅くなります。

身体的な特徴として、特異な顔貌(がんぼう)と多発奇形が挙げられます。頭が小さく、顔は広く偏平で、斜めにつり上がった目と低い鼻を持つ傾向があります。舌は大きく、耳は小さくて頭の低い位置についています。手は短くて幅が広く、手のひらを横切るしわが1本しかありません。

指は短く、第5指の関節は3つではなく2つしかないことが多く、内側に曲がっています。足指の第1指と第2指の間が、明らかに広くなっています。

乳児期には体の筋力が弱く、軟らかいのも特徴で、身長、体重の増えもよくないことがあります。運動の発達も遅れ、歩行開始の平均年齢も2歳くらいになります。

多くの合併症が知られていて、これらの程度が生命的な予後に大きく関係しています。約40パーセントに先天性の心臓疾患がみられ、多くに甲状腺(こうじょうせん)疾患が起こります。耳の感染症を繰り返し、内耳に液体がたまりやすいため、聴覚に障害が起こりやすい傾向があります。角膜と水晶体に問題があるため、視覚障害も起こしやすい傾向があります。

そのほか、十二指腸閉鎖や鎖肛(さこう)といった消化管の奇形、頸椎(けいつい)の異常、白血病がみられることもあります。

40歳以降には、アルツハイマー病でみられるような記憶喪失、知能低下の進行、人格の変化などの認知症の症状が高確率で起こります。

21トリソミー症候群の検査と診断と治療

21トリソミー症候群(ダウン症候群)は、生まれる前に診断することも可能です。妊娠15〜16週ごろに、産婦人科病院で行う羊水染色体検査が相当しますが、妊婦は自ら医療側に進言しないと正式には行ってもらえません。

21トリソミー症候群の乳児には、診断を促す特徴的な外見があります。小児科の医師による確定診断には、乳児の染色体を検査して21トリソミー、あるいは21番染色体のそのほかの疾患を調べます。診断がついたら、超音波検査や血液検査などを行って、21トリソミーに関連する異常がないか調べます。

根本的な治療法はなく、症状に応じて治療を行います。検査で発見した異常を治療すると、それにより健康が損なわれることを防止できます。21トリソミー症候群の子供の死因の多くは心臓の疾患と白血病ですが、心臓の異常はしばしば、薬剤や手術で治療できます。

重い合併症のない21トリソミー症候群の子供は、元来健康で、温厚、陽気な性格であることが多く、訓練や教育により日常生活は可能となります。最近は、早期からの集団保育、集団教育が望ましいといわれています。家族の会などから情報を得ることも役立ちます。

遺伝カウンセリングを受けることも重要で、特に転座型では親の片方が均衡転座保因者である場合もあり、次の子供の再発率を知るためには両親の染色体検査が必須です。

21トリソミー症候群の子供の大半は、死亡することなく成人になり、平均寿命は約50歳といわれています。数十年前までは平均寿命が20歳前後でしたが、当時は循環器合併症の外科的治療ができなかったためであり、合併症と奇形を治療すれば健康状態は改善することができます。

🇴🇲偽近視

目の疲労によって、一時的に近視と同じ症状を生じる状態

偽近視(にせきんし、ぎきんし)とは、目の中の毛様体筋の持続的緊張が起こり、近視と同じ症状を生じるに至った状態。仮性近視、調節緊張性近視とも呼ばれ、近視に含めない考えで単に調節緊張とも呼ばれます。

目には、近くを見る時に網膜上に正しく焦点を合わせるため、毛様体筋を働かせて水晶体を厚くし、屈折を強くする調節力が備わっています。子供などが試験前の猛勉強や読書、ゲームなどで、近い距離に長時間視点を合わせた場合には、毛様体筋の緊張が続いて一時的に水晶体が元の厚さに戻りにくくなり、軽い近視と同じ偽近視になります。文字や画面の距離の近すぎのほか、照明や姿勢の不良も原因となり、軽い遠視がある子供がなりやすい傾向があります。

子供の偽近視は、あまり長時間近くを見ないように心掛けるだけで、いずれは治ります。しかし、偽近視を放置して、同じような目に悪い生活習慣を続けると、症状はますます悪化して本当の近視になります。

偽近視にもかかわらず、眼鏡やコンタクトレンズを使用してしまった際にも、毛様体筋の緊張がなく、水晶体が薄くても楽に近くが見えるような目に適応し、本当の近視になります。学校の健康診断などで視力の低下が指摘された時は、すぐに眼鏡やコンタクトレンズを作る前に、まずは眼科で正確な屈折検査を受け、本当の近視なのか一時的な偽近視なのかを調べることが大切です。

授業の合間に行われることが多い学校の健康診断の場合は、教科書などの近くの文字を見た後にすぐ目の検査をすることになり、調節力が大人より強い子供では近くにピントがあったままになってしまい、遠くが見えない偽近視を生じていることもある点に、留意が必要です。

大人になると、毛様体筋の緊張が長時間続きにくくなるため、偽近視は起こりにくくなります。ただし、パソコンを始めたりして目を酷使すると、大人でも偽近視になりやすいので注意が必要です。時々、パソコン作業を中止して目を休めたり、遠くを見る必要があります。

偽近視の検査と診断と治療

子供の近視が増えている時勢ですが、子供の近視は大人の近視と違い、一時的な偽近視の場合があります。視力が低下したからといって、すぐに眼鏡やコンタクトレンズを使用するのではなく、本当の近視なのか一時的な偽近視なのかを眼科で検査する必要があります。

眼科では、裸眼視力の測定、機械による屈折力の測定、眼鏡をかけての矯正視力の測定を行います。機械による屈折検査で近視がみられ、これを矯正する眼鏡をかけて視力が1・0以上あれば、近視です。調節をまひさせる点眼薬をさして、もう一度屈折検査を行い、屈折度が1D(ディオプター)以上遠視側、すなわち近視度が少ない方向に変化すれば、偽近視と診断されます。

わざとピントが合わないようにした眼鏡を20分ほどかけて、調節ができない状態から偽近視を診断する雲霧(うんむ)法が行われることもあります。

偽近視と診断されると、ミドリン、もしくはサンドールという調節をまひさせる点眼薬を処方されます。この点眼薬を何日か寝る前にさすことにより、寝ている間に目の回りの筋肉である毛様体筋がリラックスし、近視が改善することがあります。ミドリンは本来、眼底を検査するために用いられる薬ですが、硬くなった毛様体筋を緩めることを目的に、濃度を薄めて用いられています。

偽近視ではない軽度近視の始まりの場合は、調節をまひさせるミドリンの点眼で近視を改善することは困難なものの、進行を遅らせる可能性はあります。しかし、教室の黒板の字が見えにくいなどの不都合が生じた時点で、眼鏡やコンタクトレンズを作ることになります。

偽近視の進行を予防する一般的な注意事項としては、悪い姿勢や暗い照明の下で、勉強、読書、ゲームなどをしないことです。目に疲れが出たら、こまめに目薬を点眼するのも効果的です。そのほか、ブルーベリーなどのサプリメントの効果が期待できるのも偽近視の特徴ですので、積極的に服用します。ブルーベリーに含まれるアントシアニンは、視覚機能を高めるということから、近年とても注目されているところです。

🌄日光角化症(老人性角化腫)

長期間、紫外線を受けて起こる前がん性の皮膚変化

日光角化症は、長い年月に渡って日光紫外線を受けたことが原因で起こる前がん性の皮膚変化。老人性角化腫(しゅ)とも呼ばれます。

日光紫外線を受けやすい顔面、耳、前腕、手の甲の皮膚に好発します。直射日光を受けて急性に起こるいわゆる日焼けとは異なり、長い年月に渡って慢性的に日光紫外線、特に中波長紫外線を受けることにより表皮細胞のDNAに傷ができるのが、その原因と考えられています。

日光に含まれる紫外線は肉眼では見えませんが、皮膚に最も大きな影響を与えます。体がビタミンDを作り出すのを助ける働きがあるので、少量ならば紫外線は有益なものの、大量に浴びると遺伝物質であるDNAが損傷を受け、皮膚細胞が作り出す化学物質の量と種類が変わってしまうのです。

発症者の年齢は、中高年層がほとんど。性差は、やや男性に多い傾向があります。日焼けの際に皮膚に紅斑(こうはん)を生じやすい人のほうが、褐色変化する人よりもなりやすいと見なされています。白色人種に比べて黒色人種、黄色人種では発症率が低く、日本人での発症率については沖縄県が高いという報告もあります。

症状としては、黄褐色のかさぶたを伴う大きさ1〜3cmの紅褐色の皮疹(ひしん)が現れることが多く、角化した部分はかさかさしたうろこ状となり、ぼろぼろむけます。色が濃くなったり、灰色がかったりすることもあり、触れると硬く感じられます。周囲の皮膚は薄くなり、多少の赤みがあります。皮疹が1カ所だけにできることも、複数の部位にできることもあります。軽度のかゆみを訴えるケースもありますが、皮疹以外に自覚症状を来すことはまれ。皮疹は自然に消えることもあれば、同じ部位や別の部位に再発することもあります。

老人性のいぼと間違いやすいので注意が必要なものの、前がん性の皮膚変化といっても実際に、扁平(へんぺい)上皮がん、または有棘(ゆうきょく)細胞がんにまで発展するケースは、数パーセントにとどまります。

日光角化症の検査と診断と治療

日光角化症では、いぼ(脂漏性角化症あるいは尋常性疣贅〔ゆうぜい〕)などと紛らわしいことがありますので、疑わしい場合は病変の一部を切り取って組織検査をする皮膚生検を行います。組織所見に基づいて、日光角化症を委縮性、ボーエン病様、棘(きょく)融解性、肥厚性、色素性に分類することもあります。

治療は通常、病変を液体窒素で凍結させて取り除きます。高齢者や角化部分の多発例では、液体窒素による凍結療法やCO2レーザー照射なども行います。また、角化部分の多発例では、フルオロウラシル入りのローションやクリームを塗ることもあります。フルオロウラシルは皮膚の発赤、うろこ状のかさつき、角化症の部分とその周囲の日光で損傷した皮膚をヒリヒリさせるなどの作用を起こすため、この治療を行うと皮膚の状態は一時的に悪化したようにみえます。

治療後も、外科的切除の取り残しがないことや再発の有無をみるため、定期的な経過観察が必要です。

日常生活での注意点としては、一見正常にみえる皮膚も日光紫外線のダメージをすでに受けているので、新たな病巣を生じないためにも、サンスクリーンを使用するとともに帽子などで直射日光を避けるようにします。日光の紫外線が最も強いのは、1日の中では午前10時から午後3時までの日中、季節では夏、地域では海抜の高い場所です。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...