外耳と中耳の境界にある鼓膜に、肉芽やびらんが生じる慢性の炎症疾患
肉芽腫(にくげしゅ)性鼓膜炎とは、外耳と中耳の境界である鼓膜の薄い膜の外側表面に炎症が起き、肉芽やびらんの生じる慢性疾患。
鼓膜は、耳に入ってくる音を振動に変換し、耳小骨経由で内耳に伝える働きのほか、外耳と中耳を境界する役目をしている器官です。その構造は、直径約9ミリ、厚さ0・1ミリの薄い膜状で、耳の入り口から約3センチのところに位置しており、外耳道のほうに向かって開いたパラボラアンテナのような形態をしています。
体の中には、いくつかの膜状構造物がありますが、鼓膜は常に外界に交通しているため、外力に弱い器官といえるでしょう。
この肉芽腫性鼓膜炎は、細菌感染が主な原因といわれていますが、まだはっきりしません。子供よりも20〜40歳代の成人女性に多く、両側の耳に起こることはまれです。
肉芽腫性鼓膜炎が引き起こされると、鼓膜の表皮が異常に増殖して、赤く柔らかい粒状の結合組織である肉芽や、赤くただれているように見えるびらんを生じます。
軽度の痛みを覚え、慢性的で頑固な耳垂れが続きます。肉芽などの影響によって鼓膜が肥厚化した場合には、耳の奥のほうのかゆみ、耳の詰まった感じや耳鳴り、難聴を覚えることもいます。
鼓膜の奥にある中耳の慢性炎症の影響を受けていることもあります。
肉芽腫性鼓膜炎の検査と診断と治療
耳鼻咽喉科の医師による診断では、顕微鏡やファイバースコープで、鼓膜を拡大して観察します。観察すると、20パーセントに小さな穴を認め、中耳の慢性炎症の影響を受けていることがあります。
中耳の疾患が疑わしい場合は、側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査なども行うことがあります。また、耳垂れを調べて起炎菌を検出し、その感受性検査を行います。
耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳垂れの起炎菌の感受性検査の結果から、適切な抗生剤を耳浴、点耳などで局所投与します。耳垂れは短期間で止まるものの、しばらくするとまた再度、耳垂れが出てくることもあります。
根本的に耳垂れを治すためには、鉗子(かんし)で耳垂れを出す肉芽を切除し、トリクロリールなどの薬品で焼灼(しょうしゃく)することもあります。肉芽を切除すると、その部位に小さな穴があることがありますが、通常は非常に小さく、自然に閉じます。
薬物療法のみでなく、適切な焼灼などの局所処置が重要で、週1〜2回根気よく繰り返すことで徐々に軽快していきます。
肉芽がなくなると耳垂れの繰り返しの再発はなくなりますが、時に肉芽が再発することがあり、その場合は同じ局所処置が必要となります。とりわけ、中耳に炎症が隠れていると再発しやすくなり、治療が長期にわたることもあります。
肉芽腫性鼓膜炎の予防法は、解明されていません。いったん発症した場合は、耳に水が入らないように気を付けることが重要です。
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