ラベル 男性の病気 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 男性の病気 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/08/27

🇳🇬睾丸炎(精巣炎)

細菌やウイルスの感染などで、睾丸に炎症が起こる疾患

睾丸(こうがん)炎とは、細菌やウイルスなどに感染することによって、男性の生殖器官である睾丸に炎症が起こる疾患。精巣炎とも呼ばれます。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸炎の原因のほとんどは、後部尿道からの細菌の感染によるものです。原因細菌は、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌など。細菌の感染によって睾丸だけに炎症が起こることはまれで、その多くは細菌性の副睾丸炎(精巣上体炎)が波及して睾丸にも炎症が起きます。

また、流行性耳下腺(せん)炎(おたふく風邪)を起こすムンプスウイルスの血行感染によって起こることがあり、思春期以降に流行性耳下腺炎にかかった人の10〜30パーセントが睾丸炎も発症します。両方の睾丸に炎症を起こすと、後遺症として無精子症など男性不妊の原因になることがあります。

そのほか、外傷で睾丸が強く打たれた時に、睾丸炎が起こることもあります。

症状は、急激な寒けと震えがきて、高熱が出ます。陰嚢は赤くなってはれ上がり、熱感を持ち、睾丸も大きく硬くなり、強く痛みます。圧痛も激しく腹部まで及びます。ムンプスウイルスによるものは、流行性耳下腺炎を発症した4〜7日後に、急激な睾丸の痛みとはれが起き、発熱や倦怠(けんたい)感などが現れます。通常、排尿に関する症状はありません。

睾丸炎の検査と診断と治療

睾丸炎(精巣炎)を発症したら、できるだけ睾丸へのダメージを少なくするため家で安静にし、陰嚢をつり上げて固定し、さらに冷湿布をすると痛みは軽くなります。 男性不妊になるのを予防するために、やはり一度は泌尿器科の専門医を受診しておいたほうが安心です。

医師の側は、睾丸の症状から簡単に診断できます。ムンプスウイルスによるものは、流行性耳下腺炎の先行と、咽頭や精液からのウイルス分離や、血液中のウイルスに対する抗体の値が初回より2回目の測定で上昇することで、確定診断できます。尿中に、うみや細菌は認められません。

治療としては、全身の安静、陰嚢の固定や冷湿布とともに、大腸菌、ブドウ球菌などの細菌が原因の時は抗生物質を強力に投与します。

ムンプスウイルスが原因の時は、抗生物質は有効ではないため、熱を抑えるための消炎鎮痛剤を投与します。1週間程度で炎症は治まりますが、長期化したり両側に炎症を起こすと、睾丸の中の精子のもとになる細胞が死んでしまい、睾丸が委縮し、不妊症の原因になってしまいます。20〜30パーセントに起きると見なされます。

🇨🇲睾丸過剰症

男性の睾丸が3個以上存在する先天性奇形

睾丸(こうがん)過剰症とは、男性の下腹部に睾丸、すなわち精巣が3個以上存在する状態の先天性異常。多睾丸症、精巣過剰症、多精巣症とも呼ばれます。

泌尿器系と生殖器系には、その胎生期の複雑な発生過程のために多くの先天性異常が生じやすく、男性の生殖器官である睾丸、すなわち精巣についても数、形態、位置、機能などの異常が知られています。睾丸過剰症も、比較的まれにみられる先天性異常です。

睾丸は本来、陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生していますが、睾丸過剰症では真ん中にある陰嚢縫線で区切られた左右の陰嚢内に、過剰な睾丸を含めて2個の睾丸が重複して存在します。左の陰嚢内に2個存在することが多く、右の陰嚢内に2個存在することもありますが、左右両側の陰嚢内に2個存在することはまれです。

過剰な睾丸はほとんどが陰囊内に存在しますが、睾丸の下降が不十分で陰嚢内に位置せずに途中でとどまっている停留睾丸(停留精巣)などに合併して、脚の付け根の鼠径(そけい)部に存在することもあります。

過剰な睾丸が発生する理由として、胎生6週で構成される生殖隆起(生殖堤)の分割過程での異常、生殖隆起の重複、胎生5週で構成される胎芽期の腎臓(じんぞう)に相当する中腎の部分的な退化の3つが考えられています。

睾丸過剰症は、睾丸(精巣)、精液の通り路である精管(輸精管)、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸(精巣上体)の関係から6型に分類されています。

第1型は、睾丸、精管、副睾丸を重複するもの。第2型は、重複する一方が睾丸、副睾丸のみで精管を有しないもの。第3型は、重複する一方が睾丸、精管のみで副睾丸を有しないもの。第4型は、重複する一方が睾丸のみで副睾丸、精管を有しないもの。第5型は、重複する睾丸に副睾丸が付着し、これに続く1本の精管を共有するもの。第6型は、重複する睾丸、副睾丸が1本の精管で連結されているもの。このうち、第5型が最も多いとされています。

睾丸過剰症には、停留睾丸(停留精巣)のほか、鼠径ヘルニア、陰囊水腫(すいしゅ)、精索水腫、精巣捻転(ねんてん)、睾丸(精巣)腫瘍(しゅよう)、奇形腫、胎児性がんなどを合併することがあります。

睾丸過剰症を発見された年齢は、2歳から49歳と幅広いものの、平均年齢は20歳で若年者に多くなっています。幼少時は、停留睾丸、鼠径ヘルニアなどほかの疾患の治療時に発見されることが多く、幼少時以降では無痛性陰囊内腫瘤(しゅりゅう)を主訴として受診した際に、診断されることが多くなっています。

睾丸過剰症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず陰嚢の触診による腫瘤の触知を図ります。超音波(エコー)検査を行うと、睾丸と等信号の像が得られ、陰囊水腫、精索水腫との鑑別が可能となります。悪性腫瘍の可能性もあるため、 CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行い、骨盤内病変の有無を調べることもあります。

最終的には、過剰な睾丸に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行う生検も含め、手術で摘除した組織の病理組織診によって、確定します。

鑑別すべき疾患としては、悪性腫瘍のほか、睾丸腫瘍、副睾丸腫瘍、精液瘤などがあります。

泌尿器科の医師による治療では、ほとんどの場合は診断も兼ねて、過剰な睾丸を手術で摘除します。過剰な睾丸が小さい場合はもちろん、特に、陰囊外の鼠径部に存在する過剰な睾丸は、がん化の危険性を考慮し手術で摘除するべきと考えられています。

また、陰囊内にあり妊孕(にんよう)性を期待できるものに関しても、生検で悪性・異型性を認めるもの、解剖学的には精路を認めても造精能を欠くもの、超音波検査で悪性所見を認めるもの、あるいは本人に過剰な睾丸の摘除の希望がある時、定期的な経過観察が望めない時は、手術で摘除するのが一般的です。

生検で過剰な睾丸が睾丸実質であり、悪性腫瘍でないことを確認した後に温存した場合は、慎重を期した定期的な診察と超音波検査が必要になります。

🇹🇩睾丸結核

結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

睾丸(こうがん)結核とは、結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染することによって起こる疾患。精巣結核とも、結核性精巣炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

>肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、副睾丸(精巣上体)、睾丸(精巣)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の睾丸結核は、結核菌が睾丸に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、副睾丸、睾丸などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、炎症を起こして、精巣などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に睾丸の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、睾丸結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、睾丸と、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸との境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には睾丸と副睾丸を破壊することもあります。初めは片方の睾丸にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である睾丸結核の頻度は低下しています。

睾丸結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

睾丸が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、副睾丸と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

睾丸結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、睾丸や前立線などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、睾丸がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば睾丸結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇹🇩睾丸腫瘍(精巣腫瘍)

睾丸にはれ物ができ、がんであることが多い疾患

睾丸腫瘍(こうがんしゅよう)とは、男性の生殖器官である睾丸に、はれ物ができる疾患。悪性腫瘍、いわゆるがんであることが多く、精巣腫瘍とも呼ばれます。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。睾丸腫瘍の頻度としては10万人に1〜2人の非常に珍しい疾患ですが、好発年齢は0~10歳、20~40歳、60歳以上の3つのピークがあります。

睾丸腫瘍は、セミノーマ、胎児性がん、卵黄嚢(のう)腫瘍、奇形腫、絨毛(じゅうもう)がんと呼ばれるものに区分されます。これらのいずれも成人にはみられますが、セミノーマが最も多く、全体の約半数。乳幼児にみられるのは、卵黄嚢腫瘍と奇形腫。

がんでは進行が速く、リンパ管や血管を通じて容易に他の臓器に転移するので、放っておくと命にかかわることがあります。しかし近年では、治療法の進歩により9割以上の人が完治するようになりました。転移を起こしてしまった人でも適切な治療を行えば7〜8割の人が治りますが、進行した状態では治療が困難な場合もあります。

なぜがんができるのか、本当の原因はまだわかっていません。ただ、停留精巣や精巣発育不全などの疾患を持っている人、胎児期に母親がホルモン剤投与を受けた人は、睾丸のがんになりやすいと見なされています。

症状で最も多いのは、痛みのない睾丸のはれです。時には、痛みを伴うこともあります。一般に、痛みもなく、熱もないために放置しておくと、陰嚢の中の睾丸の一部が硬くゴツゴツしたり、全体的にはれて大きくなってきます。かなり進行すると、腹部が膨らんだり、せきが出て胸が苦しくなるなど睾丸腫瘍の転移による症状が現れます。

睾丸腫瘍の検査と診断と治療

睾丸のはれ物に気付いた場合には、恥ずかしがらずに泌尿器科の専門医を受診します。

医師による診断では、ほとんどの場合、触っただけで判断できます。判断に迷う場合は、懐中電灯を当てて中身が詰まっているかどうか調べたり、超音波で腫瘍の内部を検査します。診断が確定すれば、血液検査で腫瘍マーカーを調べ、がんが他の臓器に転移していないかどうかを全身のCTやアイソトープを使った検査で詳しく調べます。

治療では、まず腫瘍ごと睾丸(精巣)を取り除きます。陰嚢を切開せず、おなかの下のほうに傷ができる高位除精巣術と呼ばれる方法です。睾丸は左右一対ありますから、片方を摘出しても、もう一方が正常に機能していれば、男性ホルモンや精子を産生する能力が低下したり、勃起(ぼっき)能が衰えるような後遺症はありません。

睾丸を摘出した後、疾患がまだ全身に広がっていない時は、一般に再発予防の治療が行われます。医療機関によっては、摘出した後、定期的な精密検査のみの場合もあります。このような治療法で転移がない場合には、9割以上治ります。

すでにリンパ節や肺、肝臓、骨、さらに脳などに転移している場合は、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという3種の抗がん剤による治療が追加されます。1回5日間の点滴を3〜4週間おきに繰り返す方法で、3〜4回行うことが標準的。成人に最も多いセミノーマの場合は、放射線治療も有効です。このような治療で転移があるような進んだがんでも、7〜8割が完治します。

なお、転移が見付からないような初期のがんでも、将来2〜3割に転移が現れるため、予防的な抗がん剤投与や放射線治療を行う場合もあります。

2022/08/26

🇯🇲持続勃起症

性的興奮とは関係なく勃起が起こり、長時間続くもの

持続勃起(ぼっき)症とは、性的興奮とは関係なく勃起が起こり、長時間続くもの。

この持続勃起症には、陰茎海綿体内の血液の戻りが悪く虚血状態になる静脈性持続勃起症と、陰茎海綿体内の動脈が破れ動脈血が常に流入する動脈性持続勃起症とがあります。

静脈性持続勃起症では、陰茎海綿体内の血液の入れ替えができなくなるため、海綿体内の組織が虚血に陥り、発症から6時間で組織が壊死し始めます。海綿体組織が壊死すれば、勃起不全などの性障害を来します。一方、動脈性持続勃起症は、痛みを伴わない軟らかい勃起の場合があり、緊急性はありません。

静脈性持続勃起症は、白血病などの血液の疾患、糖尿病、腫瘍(しゅよう)、炎症、勃起不全の治療として行われている陰茎海綿体内自己注射や、アルコール、麻薬などの常習で起こります。動脈性持続勃起症は、陰茎打撲、特に会陰(えいん)部打撲で多く起こります。しかし、持続勃起症では、原因不明のことが10〜20パーセントぐらいあるのが実際です。

静脈性持続勃起症の症状は、早朝勃起や性的興奮後の勃起が収まらずに、陰茎硬度が完全な勃起状態が長時間続くために痛みを覚え、排尿も困難なことがあります。動脈性持続勃起症の症状は、陰茎の硬度は不完全な状態で痛みを伴いません。

持続勃起症の検査と診断と治療

痛みを伴う硬い勃起が4時間続いたら、すぐに泌尿器科の専門医を受診する必要があります。

医師の診断では、陰茎海綿体内の血液の検査を行います。静脈性持続勃起症では、酸素分圧が低い静脈血に近い状態が見られ、動脈性持続勃起症では、酸素分圧が高い動脈血に近い状態が見られます。動脈性持続勃起症の確定診断には、超音波カラードプラ行われ、動脈血の溢流(いつりゅう)像が見られます。

静脈性持続勃起症は、緊急治療が必要です。陰茎海綿体の中を生理食塩水で洗浄したり、血管収縮剤を注射したりします。血管収縮剤は血圧上昇作用がある薬なので、血圧に注意します。薬物治療で改善しなければ、陰茎にたまった血液を取り除く手術や、陰茎に大量の血液が入り込まなくするような手術が直ちに必要です。

動脈性持続勃起症は、陰茎海綿体内の血液の循環がありますので、緊急治療は必要ありません。血液溢流部位の圧迫、冷却、止血剤、抗男性ホルモン剤の投与などの治療を行います。2カ月たって改善傾向がなければ、血管撮影を行いながら総陰茎動脈の自己凝血塊による塞栓(そくせん)術を行います。自己凝血塊を塞栓物質に使用する理由は、陰茎動脈が修復された後に再開通を期待するためです。

原因のはっきりしているものは、その疾患の治療をしなければなりません。

2022/08/25

🇭🇷乏精子症

男性の精液に含まれ、卵子と結合して個体を生成する精子の数が少ない状態

乏精子症とは、男性の精液の中に含まれる精子の数が正常よりも極端に少ない状態。ただし、国際保健機関(WHO)の基準により、精子の数だけでなく精子濃度、精子運動率、奇形率などを総合的にみて、乏精子症と見なすこともあります。

男性の精液の大部分は、陰茎の奥にある前立腺(ぜんりつせん)と、その前立腺の奥にある精嚢腺(せいのうせん)で作られ、前立腺成分が約20パーセント、 精嚢腺成分が約70パーセントを占めます。そのほかにも、精巣(睾丸〔こうがん〕)や精巣上体(副睾丸)、精管でも一部作られます。

運動能力を持ち、卵子と結合して個体を生成する男性の精子のほうは、精巣の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体において成熟し、精嚢腺と前立腺で分泌された精液と一緒になって、尿道に出ていくのが射精です。射精によって精液が尿道から出ていく際には、最初は主に前立腺からの成分、続いて精嚢腺からの成分が出ていきます。

乏精子症は男性不妊症の原因となり、夫婦生活による自然妊娠を難しくすると考えられます。その程度により、軽度乏精子症、中等度乏精子症、重症度乏精子症に分けられます。

精子の数の正常値は1ml当たり6000~8000万以上であり、約5000万の場合は軽度乏精子症、1000万以下の場合は中等度乏精子症、100万以下の場合は重症度乏精子症に相当します。自然妊娠には精子の数が4000万以上あることが望ましいとされるものの、数100万で自然妊娠することも、ごくまれにあります。

乏精子症の原因には、精巣の静脈に血液が逆流することで起きる精索静脈瘤(りゅう)、あるいは、精巣の働きの悪さから精子が作られにくい造精機能障害などがあります。詳細に検査をしても、原因が判明しない特発性造精機能障害によることも多くみられます。

造精機能障害を起こす原因疾患としては、X染色体が1つ以上多いクラインフェルター症候群などの染色体異常症、脳下垂体と視床下部の障害による性腺刺激ホルモンの低下、おたふく風邪による精巣炎、高プロラクチン血症による精子形成の低下、薬の副作用による性腺刺激ホルモンの低下などがあります。

精索静脈瘤は、精巣の上の精索部の静脈が拡張し、静脈瘤ができた状態。後天性の乏精子症、男性不妊症の主要な原因となっています。

静脈には、血液の逆流を防ぐ弁があります。精索内の静脈弁に障害があると、腎(じん)静脈から内精索静脈へ血液が逆流することにより、陰嚢(いんのう)上部にある精索の静脈(蔓〈つる〉状静脈叢〈そう〉)が蛇行して、こぶ状に拡張し、うっ血します。その程度が強い場合は、陰嚢内に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。

この精索静脈瘤の大部分は、左側に生じます。左側の精索静脈は右に比べて長く、左の腎静脈へと合流していますが、還流障害が生じて静脈血が停滞、逆流する原因としては、静脈弁の先天性不全や、左腎静脈が上腸間膜動脈により圧迫されることが考えられています。

精索静脈のうっ血により、陰嚢内の温度が上昇して、体温より2度ほど低い温度でよく機能する精巣の発育不全、委縮、機能低下、精子の形成不全、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞の機能の低下などを引き起こして生殖機能が損なわれることで、乏精子症、男性不妊症の原因になります。

精索静脈瘤は、一般の健康な青年男性の10〜15パーセントに認められるのに対し、男性不妊症の人では20~40パーセントと高率に認められます。思春期以降に多くみられますが、小児にもみられます。大抵は無症状です。時には、陰嚢や鼠径(そけい)部の痛みや突っ張り感などの不快な症状を生じる場合もあります。

乏精子症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液中に存在する精子の数が常に正常値を下回る場合に乏精子症と判断します。

精索静脈瘤に対しては、視診と触診を行い、精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。

泌尿器科の医師による治療では、明確な原因の判明しない乏精子症のケースでは効果的な治療が難しいため、軽度乏精子症の場合には人工授精、中等度乏精子症の場合には体外受精、重症度乏精子症の場合や受精しにくい場合には顕微授精を用いて、妊娠を期待するのが一般的です。

精索静脈瘤の場合は、精液所見が悪い成人男性でいずれ子供が欲しいと考えているケースや、陰嚢や鼠径部の痛みや違和感があるケースで、外科手術を行います。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっているケースには、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。

外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)を行います。手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。

何らかの原因により性腺刺激ホルモンが低下し、造精機能が障害されている場合には、ホルモン補充療法を行い、精巣で精子が作られるようになることを期待します。

2022/08/24

🇱🇺女性化乳房症

男性に乳房の発育を認める疾患

女性化乳房症とは、男性の乳房が女性のような乳房に膨らむ疾患。乳がんと間違われやすい疾患です。

本来、男性の乳房は女性の乳房のように発育しませんが、乳房に膨らみや、しこりが現れたり、自発痛や圧痛を感じることがあります。肥満により脂肪のボリュームが増えたことによる乳房の肥大は、通常の女性化乳房症とは区別されています。

真の意味での女性化乳房症は、両側もしくは片側の乳腺(にゅうせん)が一時的に増殖して、乳頭部や乳輪の下に腫瘍(しゅよう)のようなものが現れる症状をいいます。

このような男性の女性化乳房症には、思春期や更年期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性のもの、肝臓の機能障害による女性ホルモン(エストロゲン)の増加によるもの、薬剤の副作用によるもの、先天性もしくは遺伝性によるものがあります。また、原因がわからないものも多くあります。

思春期や更年期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性の女性化乳房症は、思春期の13~14歳、更年期から老年期の50~80歳に起こり、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れるのが原因となって、乳腺が異常に増殖して乳房が肥大します。普通は、ほうっておけば自然によくなります。

肝臓の機能障害による女性ホルモンの増加による女性化乳房症は、重い肝臓障害や肝硬変などを患っている男性に起こることがあります。男性ホルモンは精巣で作られ、血液中に入って全身に運ばれ、筋肉、骨、脂肪、皮膚などにたどり着き、その後一部は女性ホルモンに変わります。この女性ホルモンが骨を強くしたり、抜け毛を防いだりする役割をしています。

役割を終えた女性ホルモンは、その後肝臓に向かい、最終的には肝臓で分解されます。そのため、肝臓の機能に障害があると、女性ホルモンがうまく分解できなくなる結果、男性の乳房に女性ホルモンがたまって乳房が膨らむことがあります。

薬剤の副作用による女性化乳房症は、女性ホルモンに似た働きをする薬剤などを摂取したことによる副作用として起こりますが、理由ははっきりわかっていません。薬剤としては、女性ホルモン剤、前立腺(ぜんりつせん)疾患治療剤、男性型脱毛症治療剤、利尿剤、降圧利尿剤、血管拡張剤、降圧剤、強心剤、抗結核剤、抗潰瘍(かいよう)剤、抗アレルギー剤、抗けいれん剤、胃腸運動賦活剤、抗真菌剤、向精神剤などで起こっています。

先天性もしくは遺伝性による女性化乳房症には、小児期より発症する遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)というものがあります。女性ホルモンの過剰分泌により、思春期より前ごろから症状が現れ始め、父親または兄弟に同様の症状がある場合には、この遺伝性女性化乳房症が疑われます。大きな症状としては、乳房の肥大を繰り返したり、低身長、性欲の減退などがあります。この疾患は、女性にも発症することがあり、症状は巨大乳房症や不正出血になったりします。

男性の女性化乳房症の多くは問題のないものですが、原因がはっきりしないものもあり、乳がんなどのほかの疾患と区別するためには、外科、乳腺外科を受診することが勧められます。また、女性のように乳房が大きくなることで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。

女性化乳房症の検査と診断と治療

外科、乳腺外科の医師による診断では、原因がわからないものも多いため、問診を行って、合併症の有無や服薬の有無とその種類について聞きます。

続いて、触診と、乳がんと鑑別するための超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線検査)を行います。

触診した時の多くは、乳頭部や乳輪を中心とした境目の不明瞭な堅い塊として触れます。片側の乳房だけにしか認められない場合や、比較的境目が明瞭で弾力があって、硬く平らなしこりとして触れる場合もあります。

超音波(エコー)検査では、境界が不明瞭な低エコー像として見られることが多く、マンモグラフィー(乳房X線検査)では、乳頭部の下に広がる乳腺の肥大が腫瘍様の濃厚陰影として見られます。

確定診断のためには、穿刺(せんし)吸引細胞診、あるいは、針生検(せいけん)を可能な限り行います。

穿刺吸引細胞診は、専用の針をしこりに刺して一部の細胞を吸引して取り、顕微鏡で細胞の形などを調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、しこりとして触れないような小さながんなどは、診断できないことも少なくありません。

針生検は、少し太めのコア針で局所麻酔をして、組織を取り出して調べる検査。体への負担が少ないのが利点ですが、病変が小さい場合は何度も刺す必要があったり、診断が付かないこともあります。

この際、初回の細胞診、組織診で悪性像がない場合でも、中~高年齢者では、一定期間は外来で経過観察を続けます。

外科、乳腺外科の医師による治療では、ホルモン異常などの疾患による女性化乳房症の場合でも、原則的には経過観察のみで薬物療法などの治療は必要ありません。薬剤の副作用として現れている女性化乳房症の場合、服用を一度中止したりして原因を調べ、さらには肝硬変などの重篤な肝機能障害などほかの疾患がないか精査します。

痛みがひどい時は、状況によって非ステロイド系の消炎鎮痛剤を使い、痛みを和らげます。遺伝性女性化乳房症(アロマターゼ過剰症)の場合、脂肪組織で女性ホルモン(エストロゲン)を作っている酵素であるアロマターゼの働きを妨げるアロマターゼ阻害剤が有効とされています。

副作用の原因になる薬剤を軽減しても症状が改善されない場合や、女性のように乳房が大きくなることで悩んでいる場合は、外科的手術を行い、肥大した乳腺の組織をほぼ全部、または一部切除します。

手術後、乳腺を切除した部分に空洞ができるため、血液がたまって血腫ができた場合は、ドレーンチューブを留置します。細菌が感染した場合は、抗生物質を投与したり、乳腺を切除した部分を洗浄したりしながら経過をみていきます。乳頭部や乳輪の血流障害や皮膚の壊死が起こった場合は、皮膚がゆっくり覆うのを待つ必要があります。

2022/08/23

🇲🇳精液瘤(精液嚢腫)

男性の精巣上体に液体がたまり、袋状になった嚢腫ができる疾患

精液瘤(りゅう)とは、精巣上体の主に頭部に、液体がたまって袋状になった嚢腫(のうしゅ)ができる疾患。精液嚢腫とも呼ばれます。

精巣上体、すなわち副睾丸(こうがん)は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣、すなわち睾丸(こうがん)の頭部、および後部に付着しています。小さいコイル管のような形をしていて、精液を収集したり運搬したりする働きがあります。

この精巣上体の細い管腔(かんくう)壁の一部が虚弱になり、伸びて嚢状に膨らみ、精子の混入したミルク状、あるいは透明な液体が充満すると、嚢腫ができます。通常、大きさは直径2センチから3センチほどですが、それよりも大きな場合もあります。

主に性機能が活発な青年期に生じやすいとされ、20歳~50歳代にできます。一般的には症状もなければ、痛みを感じることがなく、非がん性。通常の状態では、精液瘤によって生殖能力が阻害されることもありませんし、大きくなって陰嚢がはれ、違和感や不快感を生じない限りは治療をする必要もありません。

精液瘤の検査と診断と治療

万が一、精液瘤が大きくなって支障が生じるようであれば、医師の判断によって手術で取り除くこともできますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の診断では、陰嚢にしこりを触れれば精液瘤を疑いますが、小さいものは慢性の副睾丸炎と紛らわしいため、超音波検査で判別します。大きいものは陰嚢がはれて、陰嚢水腫(陰嚢水瘤)との区別が難しいため、針を刺して精液瘤の内容物を採取し、顕微鏡下で検査して精子が発見されれば判別できます。

精液瘤が小さい場合は、様子をみます。治療せずに放っておいても、心配はありません。大きい場合は、手術して摘出します。

🗼性感染症

性感染症(STD=Sexually Transmitted Disease)とは、性行為あるいはその類似行為によって感染する疾患の総称です。性行為感染症とも呼びます。

性感染症に含まれる疾患としては、梅毒、淋(りん)病、軟性下疳(げかん)、第四性病というかつての「性病予防法」の対象とされていた4つのほか、クラミジア感染症、エイズ(後天性免疫不全症候群)、性器ヘルペス、尖圭(せんけい)コンジローム、トリコモナス症、カンジダ症、陰部伝染性軟属腫(しゅ)などが挙げられます。

以前の日本では、性感染症は一般的に性病と呼ばれ、代表的な病気である梅毒や淋病に対して、「性風俗などで遊んだ一部の人達がかかる病気」というイメージが持たれていました。梅毒などは発症すれば気付きやすく、早めに治療ができたため、感染はそれほど拡大せずにすんでいました。

近年の日本では、梅毒や淋病などが少なくなった代わりに、自覚症状のほとんど現れない、新しい性感染症が増えています。クラミジア感染症や性器ヘルペス、尖圭コンジローム、エイズなどは、感染しても顕著な症状が出ないため、気付かないうちに人から人へ、感染の輪を広げるという状況を生み出しています。

とりわけ、今、女性に感染が増えているのがクラミジア感染症。女性の側に自覚症状が現れにくい疾患のため、気付かないうちに重症化しているケースもあります。10代後半~20代後半の若い世代に多く、10代後半の感染者では、女性が男性の2倍以上という統計も、発表されています。

今や、性感染症は一部の人がかかる特別なものではなく、普通に生活していて一度でも性行為をした経験があれば、誰がかかっても不思議ではない病気だといえます。

クラミジア感染症を始めとした性感染症が増加している要因としては、複数のパートナーと性行為をし、パートナーが短期間で変わるといった現代のセックス事情が関係しています。性感染症の予防法や対処法について無知であるという要因も、加わっています。

性感染症の中には、薬で簡単に治らず、慢性化したり、根治しないものもあります。放置すると、不妊症や流産、子宮外妊娠などを引き起こす原因になるものもあります。少しでも心配な人はまず、女性は婦人科、男性は泌尿器科で検査を受けるようにしましょう。

🇯🇵性器クラミジア感染症

クラミジア・トラコマーティスという微生物が性器に感染して起こる性感染症

性器クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマーティスという微生物が性器に感染したことが原因となって、発症する性(行為)感染症。今日の性感染症のうち、日本においても、世界においても最も多い疾患で、人々の間で流行しています。

クラミジア・トラコマーティスが性行為により性器に感染した場合が、性器クラミジア感染症に相当し、口を使った性行為により喉(のど)に感染した場合は、咽頭(いんとう)クラミジア感染症と呼ばれます。

性器クラミジア感染症を発症しても、自覚症状はほとんどありません。感染や発症に気が付かないまま進行しますので、検査による早期発見、早期治療が必要になります。

女性の場合は、ほとんど症状はありませんが、下り物が増える、下り物が黄色くなる、出血がみられる、下腹部に痛みがある、排尿時に痛むといった軽度の症状が現れることもあります。

感染したことに気付かず、治療せずにいると、子宮頚管(けいかん)炎を引き起こし、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎になり、将来、卵管の通過障害を起こして不妊症、子宮外妊娠になる恐れがあります。

また、妊婦が感染していると、出産時、新生児が産道を通る際に感染します。感染した新生児は、生後2~3週間ころに結膜炎、生後3~4カ月ころに肺炎を発症する危険性があります。

男性の場合も、全く自覚症状がないか、非常に軽い症状にとどまるケースが大半で、性交の1~3週間後に、尿道に軽い炎症を起こし、排尿時に痛む、透明もしくは白いさらさらした分泌液が出るといった症状が現れることもあります。

症状が現れても治療せずにいると、尿道炎、前立腺(ぜんりつせん)炎、精巣上体炎といった疾患になる恐れがあります。

肛門(こうもん)に感染すると、痛みが起こり、黄色い膿(うみ)と粘液の分泌物が出ます。

性器クラミジア感染症の発症が疑われる際は、まず性感染症かどうかの検査が必要ですので、女性なら婦人科、男性なら泌尿器科の専門医を受診することが勧められます。

また、最近では自宅から郵送で検査できるキットが販売され、コンビニエンスストアの端末やインターネットなどから申し込めるので、これを利用してもいいでしょう。ただし、自分で粘液、粘膜、尿、血液などの検体をきちんと採取できていないと、正確に検査結果が表示されないこともあるので注意が必要です。郵送検査で陽性と判明した場合には、婦人科、泌尿器科を受診することが必要になります。

性器クラミジア感染症の検査と診断と治療

婦人科、泌尿器科の医師による診断では、女性では子宮頸管(けんかん)から採取した分泌物による検査、男性では尿道から採取した分泌物による検査を行い、併せて血液検査を行うこともあります。

分泌物による検査では、クラミジア・トラコマーティスが今いるかどうかがわかります。血液検査では、クラミジア・トラコマーティスに感染したかどうか、クラミジアが活動的でほかの人に感染する可能性が高いかどうかがわかります。

婦人科、泌尿器科の医師による治療では、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)が有効です。通常は、7~14日間服用します。

症状は数日でなくなることが多いものの、クラミジア・トラコマーティスが完全に死滅していないこともあるので、医師が完治の診断が出すまで指示通り服用する必要があります。

また、性的パートナーの同時治療も大切です。どちら一方が治療をしても、性行為で感染が往復するピンポン感染を来し、いつまでも治らないことがあるからです。

🇰🇵精索静脈瘤

精巣の上の精索部にできる静脈の拡張

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)とは、精巣の上の精索部の静脈が拡張し、静脈瘤ができた状態。後天性の男性不妊症の主要な原因となっています。

静脈には、血液の逆流を防ぐ弁があります。精索内の静脈弁に障害があると、腎(じん)静脈から内精索静脈へ血液が逆流することにより、陰嚢(いんのう)上部にある精索の静脈(蔓〈つる〉状静脈叢〈そう〉)が蛇行して、こぶ状に拡張し、うっ血します。その程度が強い場合は、陰嚢内に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。

この精索静脈瘤の大部分は、左側に生じます。左側の精索静脈は右に比べて長く、左の腎静脈へと合流していますが、還流障害が生じて静脈血が停滞、逆流する原因としては、静脈弁の先天性不全や、左腎静脈が上腸間膜動脈により圧迫されることが考えられています。精索静脈のうっ血により、陰嚢内の温度が上昇して、体温より2度ほど低い温度でよく機能する精巣の発育不全、委縮、機能低下、精子の形成不全、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞の機能の低下などを引き起こして生殖機能が損なわれることで、男性不妊症の原因になります。

精索静脈瘤は、一般の健康な青年男性の10〜15パーセントに認められるのに対し、男性不妊症の人では20~40パーセントと高率に認められます。思春期以降に多くみられますが、小児にもみられます。大抵は無症状です。時には、陰嚢や鼠径(そけい)部の痛みや突っ張り感などの不快な症状を生じる場合もあります。

精索静脈瘤の検査と診断と治療

一般には、視診と触診にて診断されます。精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。 片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。

治療は、外科手術によります。精索静脈瘤のある不妊男性は、以下の4つの項目すべてを満たす場合に手術適応とされます。1、夫婦が不妊症を認識している。2、妻の妊娠機能が正常、または妻の不妊原因が治療可能な場合。3、精索静脈瘤が触知される、または触知が疑われ超音波検査で確認できた場合。4、精液所見が悪い場合。

また、精液所見が悪く精索静脈瘤のある成人男性でいずれ子供が欲しいと考えている場合や、精索静脈瘤があり陰嚢や鼠径部の痛みや違和感がある場合も、手術が考慮されます。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっている場合には、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。

精索静脈瘤の外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)が行われます。具体的には、精索静脈高位結紮術、腹腔(ふくくう)鏡下精索静脈結紮術、顕微鏡下精索静脈低位結紮術などがありますが、精索静脈高位結紮術と顕微鏡下精索静脈低位結紮術が一般的に行われています。

精索静脈高位結紮術は最も多く行われている手術法で、腹部横切開で後腹膜腔に達し、精索静脈を結紮します。精索静脈が1〜2本と少なく、手技が簡単です。精索動脈やリンパ管の一部も同時に結紮しますが、動脈は下のほうにもあるので問題はありません。再発の可能性は少ないながら存在し、これは外精索静脈の逆流があるまれな場合です。時に、陰嚢水腫を合併しますが、リンパ管の結紮の影響の可能性があります。高位の精索動脈やリンパ管を温存する手術方法もあります。麻酔は全身麻酔あるいは下半身麻酔で、3泊4日程度の入院で行われます。退院後の事務仕事程度ならすぐに可能ですが、腹筋の間を入って手術するので腹筋を使う運動は3週間できません。

顕微鏡下精索静脈低位結紮術は、手術用顕微鏡とドプラ血流計を使用して、陰嚢上部または鼠径部横を切開し、精索静脈を結紮します。精索静脈が下方にあるため枝分かれが多く、結紮すべき静脈の数が多くなります。麻酔は局所麻酔で、手術時間は約2時間のため、日帰り手術も可能。手術直後は痛みのために歩きにくくても、翌日から事務仕事程度ならすぐに可能で、痛みは通常数日で軽くなります。傷跡は小さく、特に陰嚢上部切開ではほとんど傷跡が目立ちません。1週間は陰嚢がはれる場合があっても、陰嚢水腫の合併はほとんどありません。

精索静脈瘤手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。

🇰🇷精子奇形症

射出精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態

精子奇形症とは、射出精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。奇形精子症とも呼ばれます。

男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、精子奇形症に相当します。

精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。

2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛(べんもう)を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤(りゅう)、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。

精子奇形症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。

クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。

泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。

パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である精子奇形症では自然妊娠が見込めないためです。

通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。

射出精子中には奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。

🇰🇷精子死滅症

男性の射出精液中に存在する精子のほとんどが死んでいる状態

精子死滅症とは、男性の射出精液中に精子を認めるものの、その精子が全く動いておらず、しかもほとんどが死んでいる状態。死滅精子症とも呼ばれます。

精液検査における精子濃度には問題はないものの、精子のほとんどが死滅してしまっているという状態です。精子不動症とともに重度の精子無力症であり、精子不動症では精子の運動率が数パーセントに低下した状態にあるのに対して、精子死滅症では運動率が0パーセントに低下した状態に陥っています。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率が低下し、真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

重度の精子無力症である精子不動症の多くでは、少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。

同じく重度の精子無力症である死滅精子症では、すべての精子が全く動いていないばかりか、ほとんどの精子が死んでいます。

運動能力を持つ男性の精子は、精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体(副睾丸)において成熟しますので、この精子を作る造精機能や造精過程に何らかの障害があると、ほとんどの精子が死んでしまうことになります。

精巣の中で精子となる細胞自体にもともと何らかの原因があるケースと、精巣上体の分泌液に異常があって精子が死んでしまうケースなどがあります。それがどの過程で起こり、なぜ起こるのかについては、不明な点が多く残っています。

精子死滅症になる原因は、精子無力症や精子不動症と同じで先天的なものが大半を占めますが、前立腺(ぜんりつせん)炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)などが原因になっているケースもあります。

精巣の細胞自体に原因がある場合、顕微授精を行っても受精率は大変低くなります。分泌液に異常がある場合は、精巣から直接精子を採取することができれば、顕微授精も可能で、受精、妊娠も期待できます。

精子死滅症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に0パーセントの場合に精子死滅症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが受精、妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の受精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に採取した精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。精子死滅症の場合は3回程度精液を採取し、その中に1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子死滅症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。

🇰🇷精子膿症

精液の中に多数の白血球が混ざっている状態で、精液が黄色く変色

精子膿症(のうしょう)とは、精液1mlの中に、血液の細胞成分である白血球が10万個以上混ざっている状態。膿(のう)精液症とも呼ばれます。

精液は約9割を占める液体成分の精漿(せいしょう)と細胞成分である精子によって構成されており、通常は赤血球や白血球などの血液の細胞成分は混入しないように作られています。精液の中に白血球が混ざると、精液が黄色く変色します。また、精子の運動率が著しく低下し、日常生活におけるパートナーの妊娠率が低下します。

精子無力症を合併しているケースでは、男性不妊症につながることもあります。さらに、白血球から分泌される炎症物質によって、精子頭部に含有されているDNAがダメージを受け、妊娠しても流産の原因になることもあります。

精子膿症になる原因は、クラミジアという微生物や、大腸菌、結核菌などの細菌への感染による精嚢腺(せいのうせん)、前立腺(ぜんりつせん)、尿道、精路などの炎症が一般的で、防衛機能である白血球が増加して精液の中に混ざることになります。

性交渉でクラミジアに感染した場合は、精子膿症を起こすとともに、初期の段階で排尿痛、残尿感、違和感を感じることがあり、さらに進行すると、精巣(睾丸〔こうがん〕)がはれたり、熱が出たりします。

細菌への感染による炎症は自然治癒することもありますが、精路全体が炎症を起こしている場合などは完治までに非常に長い時間がかかります。

精液が黄色く変色したまま放置していると、精子の運動能力が悪化していき、精子無力症を合併することもありますので、泌尿器科を受診することが勧められます。クラミジアに感染した場合は、パートナーも感染している可能性もあるため、一緒に受診することが勧められます。

精子膿症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、精液検査を行い、射出精液内に混入している白血球の程度を調べます。

泌尿器科の医師による治療では、抗生物質を1~2週間処方して、精子膿症の原因となる感染症による炎症を抑え、精液検査で精液の所見が改善したかどうかを確認します。尿道、精路などに洗浄液を通して洗浄することもあります。

ほかに不妊原因がない場合は、精液に混ざっている白血球の数値が正常値に戻れば、パートナーの自然妊娠も可能となります。

精液を検査して白血球の混入が著しい場合、精液を洗浄して人工授精や体外受精をする方法も行われますが、精子の運動能力が著しく悪化していて、胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる着床前の状態への到達率も低いので、受精率は非常に低くなります。

🇹🇼精子不動症

ほとんどの精子の動きがない状態で、受精障害の原因に

精子不動症とは、男性の射出精液中に精子を認めるものの、ほとんどの精子の動きがない状態。重度の精子無力症であり、精子の運動率が低下した状態にあります。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率が低下し、真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

重度の精子無力症である精子不動症の多くでは、少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。

例えば、常染色体の劣勢遺伝でカルタゲナー症候群を発症した人では、慢性副鼻腔(びくう)炎、右胸心、気管支拡張症を合併していて、精子の鞭毛のみならず全身の線毛の機能障害が特徴的で、精子も完全に不動化しています。

精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。

精子が不動化する原因は、尾部の鞭毛を構成している中心部分の2本、および周囲の9本の軸糸の配列が壊れていて、運動のエネルギー源となる中片部のミトコンドリア鞘(しょう)の発育が不十分なためです。

精子不動症になってしまう原因は、精子無力症と同じで先天的なものが大半を占めますが、前立腺(ぜんりつせん)炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)などが原因になっているケースもあります。

精子不動症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に数パーセント以下の場合に精子不動症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の授精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子不動症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。

🇹🇼精子無力症

卵子と結合して個体を生成する精子の運動率が低下した状態

精子無力症とは、男性の射出精液内の精子の運動率が低下した状態。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺(ぜんりつせん)炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。

精子無力症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。

薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。

中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。

🇧🇲精巣過剰症

男性の精巣が3個以上存在する先天性奇形

精巣過剰症とは、男性の下腹部に精巣、すなわち睾丸(こうがん)が3個以上存在する状態の先天性異常。多精巣症、睾丸過剰症、多睾丸症とも呼ばれます。

泌尿器系と生殖器系には、その胎生期の複雑な発生過程のために多くの先天性異常が生じやすく、男性の生殖器官である精巣、すなわち睾丸についても数、形態、位置などの異常が知られています。精巣過剰症も、比較的まれにみられる先天性異常です。

精巣は本来、陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生していますが、精巣過剰症では真ん中にある陰嚢縫線で区切られた左右の陰嚢内に、過剰な精巣を含めて2個の精巣が重複して存在します。左の陰嚢内に2個存在することが多く、右の陰嚢内に2個存在することもありますが、左右両側の陰嚢内に2個存在することはまれです。

過剰な精巣はほとんどが陰囊内に存在しますが、精巣の下降が不十分で陰嚢内に位置せずに途中でとどまっている停留精巣(停留睾丸)などに合併して、脚の付け根の鼠径(そけい)部に存在することもあります。

過剰な精巣が発生する理由として、胎生6週で構成される生殖隆起(生殖堤)の分割過程での異常、生殖隆起の重複、胎生5週で構成される胎芽期の腎臓(じんぞう)に相当する中腎の部分的な退化の3つが考えられています。

精巣過剰症は、精巣(睾丸)、精液の通り路である精管(輸精管)、精巣の上面および後面に付着している精巣上体(副睾丸)の関係から6型に分類されています。

第1型は、精巣、精管、精巣上体を重複するもの。第2型は、重複する一方が精巣、精巣上体のみで精管を有しないもの。第3型は、重複する一方が精巣、精管のみで精巣上体を有しないもの。第4型は、重複する一方が精巣のみで精巣上体、精管を有しないもの。第5型は、重複する精巣に精巣上体が付着し、これに続く1本の精管を共有するもの。第6型は、重複する精巣、精巣上体が1本の精管で連結されているもの。このうち、第5型が最も多いとされています。

精巣過剰症には、停留精巣のほか、鼠径ヘルニア、陰囊水腫(すいしゅ)、精索水腫、精巣捻転(ねんてん)、精巣(睾丸)腫瘍(しゅよう)、奇形腫、胎児性がんなどを合併することがあります。

精巣過剰症を発見された年齢は、2歳から49歳と幅広いものの、平均年齢は20歳で若年者に多くなっています。幼少時は、停留精巣、鼠径ヘルニアなどほかの疾患の治療時に発見されることが多く、幼少時以降では無痛性陰囊内腫瘤(しゅりゅう)を主訴として受診した際に、診断されることが多くなっています。

精巣過剰症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず陰嚢の触診による腫瘤の触知を図ります。超音波(エコー)検査を行うと、精巣と等信号の像が得られ、陰囊水腫、精索水腫との鑑別が可能となります。悪性腫瘍の可能性もあるため、 CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行い、骨盤内病変の有無を調べることもあります。

最終的には、過剰な精巣に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行う生検も含め、手術で摘除した組織の病理組織診によって、確定します。

鑑別すべき疾患としては、悪性腫瘍のほか、精巣腫瘍、精巣上体腫瘍、精液瘤などがあります。

泌尿器科の医師による治療では、ほとんどの場合は診断も兼ねて、過剰な精巣を手術で摘除します。過剰な精巣が小さい場合はもちろん、特に、陰囊外の鼠径部に存在する過剰な精巣は、がん化の危険を考慮し手術で摘除するべきと考えられています。

また、陰囊内にあり妊孕(にんよう)性を期待できるものに関しても、生検で悪性・異型性を認めるもの、解剖学的には精路を認めても造精能を欠くもの、超音波検査で悪性所見を認めるもの、あるいは本人に過剰な精巣の摘除の希望がある時、定期的な経過観察が望めない時は、手術で摘除するのが一般的です。

生検で過剰な精巣が精巣実質であり、悪性腫瘍でないことを確認した後に温存した場合は、慎重を期した定期的な診察と超音波検査が必要になります。

🇲🇸精巣結核

結核菌が男性の生殖器である精巣に感染することによって起こる疾患で、肺外結核の一種

精巣結核とは、結核菌が男性の生殖器である精巣に感染することによって起こる疾患。睾丸(こうがん)結核とも、結核性精巣炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

精巣、すなわち睾丸は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

精巣結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、精巣上体(副睾丸)、精巣(睾丸)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の精巣結核は、結核菌が精巣に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、炎症を起こして、精巣などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、精巣結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、精巣と、精巣の上面および後面に付着している精巣上体の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には精巣と精巣上体を破壊することもあります。初めは片方の精巣にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である精巣結核の頻度は低下しています。

精巣結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

精巣が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、精巣上体と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

精巣結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、精巣や前立線などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、精巣がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば精巣結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇨🇿精巣上体結核

結核菌が男性の生殖器である精巣上体に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

精巣上体結核とは、結核菌が男性の生殖器である精巣上体に感染することによって起こる疾患。

副睾丸(ふくこうがん)結核とも、結核性精巣上体炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

精巣上体、すなわち副睾丸は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣、すなわち睾丸の上面、および後面に付着している精巣付属器の一つになります。精巣上体は、内部に精巣上体管を内包していて、この精巣上体管は、精巣で産生している精子の通路である精路の一部になります。 また、精巣上体は、精子を運ぶだけでなく、精液の液体成分である精漿(せいしょう)の一部の産生も行っています。

精路はこの精巣上体から、精嚢腺(せいのうせん)と前立腺(ぜんりつせん)につながり、そこで分泌された精液と一緒になって尿道に出ていくのが、射精です。

精巣上体結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺、精巣上体、精巣、精嚢腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の精巣上体結核は、結核菌が精巣上体に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、また精路周囲のリンパ管からリンパ行性に感染し、炎症を起こして、精巣上体などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、精巣上体の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、精巣の結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、精巣上体と精巣の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には精巣上体と精巣を破壊することもあります。初めは片方の精巣上体と精巣にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である精巣上体結核の頻度は低下しています。

精巣上体結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

精巣上体が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、精巣と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

精巣上体結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立線や精巣などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立線がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、精巣上体だけを摘出する外科的療法、あるいは精巣上体を含めて精巣、精嚢腺、前立腺まで摘出する外科的療法を検討することもあります。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば精巣上体結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇨🇿精巣性女性化症候群

男性ホルモンの受け皿が働かないために、外性器が女性化する先天性異常

精巣性女性化症候群とは、男性ホルモンの受け皿が働かないために、男性への性分化に障害が生じる先天性の疾患群。アンドロゲン不応症とも呼ばれます。

男性仮性半陰陽(はんいんよう)の発生の原因となる疾患の1つに数えられます。この精巣性女性化症候群では、染色体による性は46XY型の男性であり、男性の性腺である精巣からテストステロンを主とするアンドロゲン(男性ホルモン)が分泌されています。しかしながら、体の中の細胞の表面にあるアンドロゲン(男性ホルモン)受容体という、ホルモンの受け皿のような構造に遺伝子異常があるために、男性ホルモンの全部または一部を感知できません。その結果、外性器になる組織が男性型へ発達することができなくなります。

そもそも、性分化は性染色体による性に規定されます。具体的にはY染色体の有無が性を決定し、Y染色体上のSRY遺伝子が精巣決定因子として作用します。SRY遺伝子を有する男の胎児では未分化性腺から精巣が分化、発生し、SRY遺伝子を有しない女の胎児では卵巣に分化、発生し、それぞれ配偶子が精子と卵子に分かれていきます。

次いで、男の胎児では胎児期精巣のセルトリ細胞からミュラー管抑制因子、ライディッヒ細胞からアンドロゲンが分泌され、それぞれミュラー管の退縮とウォルフ管の発育が起こって、性器の男性化が起こります。

ところが、精巣性女性化症候群の場合、ミュラー管抑制因子は正常に分泌される一方、アンドロゲンの作用が発現しません。その結果、ミュラー管由来の女性内性器(子宮、卵管、腟〔ちつ〕上3分の1)と、ウォルフ管由来の男性内性器(精巣上体、精管、精嚢〔せいのう〕、射精管)はみられないということになります。

精巣性女性化症候群は、X染色体に依存する伴性遺伝であり、多くは母親が保因者となっています。染色体による性が46XX型の女性であれば、精巣性女性化症候群であっても特に症状はなく、疾患として発見されずに保因者となり、家族性に受け継がれることもあります。

精巣性女性化症候群は、アンドロゲンを全く感知しない完全型精巣性女性化症候群、アンドロゲンを不完全に感知する不完全型精巣性女性化症候群、アンドロゲンの一部を感知しない部分型精巣性女性化症候群の3型に分かれます。

完全型精巣性女性化症候群では、外性器は女性型で、上端がふさがっている腟があり、内性器は精巣を持つ男性型で、子宮、卵巣はありません。その精巣は体内にとどまる停留精巣で、造精機能は著しく低下しています。鼠径(そけい)ヘルニア、尿道下裂の合併が多い傾向も示します。第二次性徴は女性化乳房などがみられる女性型を示しますが、子宮、卵巣を持たないため月経はなく、妊娠、出産は不可能です。乳房はやや未発達で、陰毛、わき毛はありません。

不完全型精巣性女性化症候群では、外性器に軽度の男性化が認められ、陰核肥大、陰唇癒合などの男性化兆候がみられます。部分型精巣性女性化症候群では、外性器が男女中間型を示し、男性器とも女性器とも判別しがたい形になることが多く認められます。外性器の形状により、女児もしくは男児として育てられます。

完全型精巣性女性化症候群では、出生時に発見されることはほとんどないため、通常の女児として育てられ、本人も女性として認識して成長します。外見上は正常な女性で、膣も持ち、性交も可能。思春期になって第二次性徴が起きても初潮がない(原発性無月経)ことから、あるいは結婚後に妊娠しないことから、産婦人科などを受診して発見されるケースが多くみられます。

女性として育てられ、思春期あるいは結婚後に、染色体上は男性であるということが診断され、妊娠、出産は不可能と告げられるので、大きな精神的打撃を受ける恐れが大きく、精神的なケアが重要となります。本人や親、夫のショックを配慮して、医師が診断結果を告げないケースもあるといわれています。

出生時に医師や看護師によって、精巣性女性化症候群が発見することが望ましいのですが、思春期や成人後に発見されることもあるのが実態です。思春期になって女の子のはずなのに初潮(初経)がなかったりした場合には、できるだけ早く小児科、あるいは婦人科、産婦人科、内科、内分泌代謝内科などの専門医の診断を受けるようにします。

精巣性女性化症候群の検査と診断と治療

小児科、婦人科、産婦人科、内科、内分泌代謝内科の医師による精巣性女性化症候群の診断では、染色体分析検査、性ホルモンの測定、アンドロゲン受容体の検査、超音波検査、X線造影検査、CTやMRI検査による内性器の存在確認を行います。

精巣性女性化症候群の治療では、戸籍上の性として育てていく性、生きていく性を決めることが最も大事です。一般的には、染色体や精巣によって将来の性を決めるより、現在の外性器の状態、将来の生活、本人の希望や心理状態をも考慮して、男性か女性かを決めます。完全型精巣性女性化症候群の場合、女性として生きていく人がほとんどとなります。

選択した性に合わせて、女性として生きていく決定をした場合で膣が短く、性交に支障を来すケースでは、腟形成術を行って膣を延長します。男性として生きていく決定をした場合には、陰茎形成術を行います。

体内にとどまる停留精巣はがん化するリスクが高いために早期に摘出手術を行う必要があるといわれていますが、成人前にがん化することは少ないため、現在では第二次性徴が完了した思春期以降に精巣摘出が行われています。思春期前に性腺を除去してしまうと、第二次性徴に必要なホルモン量が自前では不足するためです。

一般の男女でもそうですが、分泌された男性ホルモンの一部は体内で女性ホルモンに変換されて機能しており、完全型精巣性女性化症候群であっても精巣からのホルモン分泌が乳房の発育や女性らしい体形を形作るための重要な供給源となっています。

精巣摘出後は、更年期障害や骨粗鬆(こつそしょう)症を防ぐために、ホルモン補充療法によって女性ホルモンを補充します。ホルモン補充療法は一生涯に渡るため、精巣摘出の判断は慎重にしなければならず、精巣を摘出せず、こまめに検診を受けて経過観察を行う場合もあります。

部分型精巣性女性化症候群の停留精巣はがん化リスクが50パーセントと高いのに対し、完全型精巣性女性化症候群の停留精巣はがん化リスクが2パーセントと高くなく、あえて摘出を必須とするほどではないと見なされています。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...