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2022/08/26

🇧🇸小児喘息

季節の変わり目に悪化しやすいのが、この病気です。子供のうちに症状を改善させるためには、きちんと治療を続け、アレルギーを起こす物質である「アレルゲン」を生活から取り除くことが、大切となります。

●小児喘息の原因と症状について

喘息(ぜんそく)とは、肺に流入する空気の通路に当たる「気道」に炎症が起こったために、空気の通り道が狭くなった状態を指します。

小児喘息の原因のほとんどは、アレルギーです。気道にアレルギーを引き起こす物質である、ホコリやダニ、カビ、動物の毛といった「アレルゲン」が入ると、気道の粘膜が刺激されて炎症が起こり、小さな刺激にも過敏に反応するようになります。

従来は3、4歳から小学生に多かった病気でしたが、最近では1歳以下の乳幼児にも発症が増えています。

見られる症状は、軽いものから重いものまでさまざま。せきが出る。たんが出る。胸が圧迫される感じがする。呼吸が苦しい。息を吐く際に、のどがゼーゼー、ヒューヒューと鳴る。のどがイガイガする。ちょっとした刺激で、ひどくせき込む。風邪をひきやすい。

こういった症状がもっとも悪化しやすい時季は、初夏や初秋といった季節の変わり目ですので気をつけたいものです。

●どのような治療が行われるのか?

医師による治療では、発作が起きないように薬物療法でコントロールすることが、重要と見なされます。炎症を抑える吸入ステロイド薬、アレルギー反応を弱める抗アレルギー薬などが、主に用いられています。

霧状にしたものを口から吸い込むのが吸入ステロイド薬で、気道の粘膜に直接、薬が届きます。症状によって、吸入する量や回数は異なります。吸入した後、うがいで口の中に残った薬を洗い流せば、副作用が起こることはほとんどありません。抗アレルギー薬のほうは飲み薬で、吸入ステロイド薬と併用するケースがよくあります。

こうした薬をきちんと服用し、気道の粘膜の状態を整えることで、喘息の発作を起こりにくくしますので、症状がよくなったからといって、勝手に薬をやめないことが大切。何かの刺激によって、大きな発作が起こることもあります。

発作の時には、狭くなっている気道を広げる薬が用いられます。薬が効かず、ふだんと小児の様子が違う際には、すぐに医師の診断を受けてください。

●日常生活における留意点について

小児喘息は、きちんと治療を続ければ生活に支障がなくなります。薬の量を減らしたり、使わなくてすむようになることもあります。

そのためには、ふだんの暮らしの中で、次のような点を心掛けましょう。まず、風邪に対する予防策を十分にとること。風邪を切っ掛けに喘息が悪化することが少なくないためで、日ごろから、うがいや手荒いを実践し、天気や気温の変化に気をつけましょう。

次に必要なのは、原因となるアレルゲンを身の回りからできるだけ減らすこと。部屋のホコリやダニ、カビ、ペットの毛などがアレルゲンとなる場合には、こまめに掃除をしたり、ペットを室内で飼わないといったことが、悪化を防ぐことにつながります。

アレルゲンになりやすい食べ物にも、要注意です。タバコの煙も気道を刺激しますので、家族は子供の近くでタバコを吸わないこと。また、周りの大人が気を配って、タバコの煙に子供を近付けないようにしましょう。

これらに加えて、軽い運動を続けて体を鍛え、基礎体力をつけることも大切です。

2022/08/25

🇵🇦18トリソミー症候群

染色体の異常により引き起こされる重度の先天性障害

18トリソミー症候群とは、18番目の常染色体が1本多い、3本あることが原因で引き起こされる重度の先天性障害。18トリソミー、エドワーズ症候群、エドワード症候群とも呼ばれます。

人間の体は、父親と母親からもらった遺伝子情報に基づいて作られます。遺伝子情報は、染色体という生体物質が担っています。一般の細胞の核には、1番から22番までの一対の常染色体が44本、それにXまたはYの性染色体の2本が加わって、合計46本の染色体がセットになって存在します。半数の23本ずつを父親と母親から継承しています。

合計46本の染色体のうち、ある染色体が過剰に存在し、3本ある状態がトリソミーです。卵子や精子が作られる過程で染色体が分離しますが、分離がうまくいかないことがトリソミーを引き起こします。

18番目の常染色体が3本あるトリソミーが18トリソミー症候群で、イギリスのジョン・エドワーズらのグループにより1960年に初めて報告されました。

日本では現在、新生児約5000人から8000人に1人の頻度で18トリソミー症候群が発生するといわれ、男児は流産する場合が多いため、女児に多くみられます。母親が高齢、特に35歳以上の場合は、若い母親よりも過剰な染色体が生じる原因となるため、18トリソミー症候群の新生児を産む確率が高くなります。しかし、過剰な染色体が生じる原因は、父親にあることもあります。

18トリソミー症候群のうち、約80パーセントが染色体が3本独立している標準型トリソミー、約10パーセントが正常細胞とトリソミーの細胞が混在しているモザイク型、約5パーセントが多い1本が他の染色体についている転座型、約5パーセントが詳細不明と見なされています。一部の転座型を除き、そのほとんどは細胞分裂時に起こる突然変異だと考えられており、遺伝的な背景は否定されています。

早産ではなくて満期産、過熟産で生まれることが多いものの、出生時の体重は2200グラム以下と低体重であり、死産になることも多くなっています。また、明らかな全身の発育不全で生まれ、精神発達遅滞のほか、後頭部の突出、両眼開離、口唇裂、口蓋(こうがい)裂、小顎(しょうがく)、耳介の低位、指の屈曲、多指、先天性心疾患、腹直筋ヘルニアなどの消化管の奇形、揺り椅子(いす)状の足といった多くの異常がみられます。

先天性心疾患はほぼ必発で、心室中隔欠損症、心内膜床欠損症などのほか、単心室、総肺静脈還流異常症、ファロー症候群など、極めて重篤なことも少なくありません。

誕生後の予後は一般的に悪く、生後2カ月以内に約半数、1年以内に90パーセント以上が死亡します。先天性心疾患の重症度が、特に生命予後に重要な影響を及ぼします。

モザイク型では、正常細胞とトリソミーの細胞の混在する割合や症状により、生命予後、成長発達に恵まれる場合もあり、中学生になるまで成長したケースも報告されています。

18トリソミー症候群の検査と診断と治療

産婦人科の医師による出生前の診断では、超音波検査異常または母体血清スクリーニングの異常所見から、18トリソミー症候群と確定します。

小児科の医師による出生後の診断では、特徴的な外見から疑われ、染色体検査で確定します。

小児科の医師による治療では、根本的な治療法がなく予後の改善は見込めないため、さまざまな症状に対する対症療法を行います。症状が安定している場合は、口唇裂、多指、腹直筋ヘルニアなどの手術に踏み切ることもあります。

🇧🇬猩紅熱

のどの痛み、熱、発疹の現れる伝染病

猩紅(しょうこう)熱とは、小児に多い発疹(はっしん)性伝染病。A群β溶血性連鎖球菌という細菌の感染によって発症する疾患の一つです。

昔は死亡することもある疾患として恐れられ、明治時代に法定伝染病に指定されました。現在では抗生物質を正しく使用し、合併症を予防すれば完治が可能となったことから、1999年に施行された感染症新法により、法定伝染病ではなくなりました。

A群β溶血性連鎖球菌は溶連菌と通称され、のどに炎症を起こす咽頭(いんとう)炎を引き起こす細菌ですが、猩紅熱では咽頭炎だけでなく、全身に発疹も現れます。2歳~12歳までの子供に多く、幼稚園や小学校では秋から春にかけて集団発生することもあります。

溶連菌は、すでに感染している人の近くにいたり、感染者の咳(せき)から出た空気中の細菌を吸い込んだりすることで感染します。潜伏期間は1日~7日とされ、38〜39℃の突然の発熱で始まり、のどが痛みを伴って真っ赤にはれます。そのほかの症状としては、吐き気、頭痛、腹痛、筋肉痛、関節痛、中耳炎、首のリンパ節のはれなどがあります。この段階では、風邪との区別がつきません。

発熱から半日~2日後になってから、直径1ミリぐらいの赤くてやや盛り上がった発疹が、かゆみを伴って現れます。発疹は首、胸、わきの下などに現れ、少しずつ増えて全身が赤く見えるようになります。口の回りには発疹は出ないのが、一つの特徴です。3日~4日後には、舌がイチゴのように赤くプツプツするようになります。これをイチゴ舌と呼びます。

症状が消えた後、2週間ほどで指先の皮がむけることがあります。3週間ほどで軽快し、跡は残りません。

注意の必要な合併症には、急性腎炎(じんえん)、リウマチ熱などがあります。治療を行わなかった場合、これらの合併症は感染者の2~3パーセントに現れます。顔のむくみ、赤い尿、動悸(どうき)、息切れ、関節痛などの症状が現れた場合も、注意が必要です。

猩紅熱の検査と診断と治療

高熱や発疹のある場合はもちろん、のどのはれが2日以上治まらない時は、早めに小児科などの医療機関を受診しましょう。なお、高熱や発疹などの特徴的な症状が現れるのは4歳以上の場合が多く、乳児の場合は軽症で、単なるのど風邪症状のみであることがあります。

多くの場合は、臨床症状で診断が可能です。最近は、のどの抗原の迅速検査が、外来診断の主流となっています。確実に診断するには、のどや鼻の粘膜から綿棒で採取した検体の培養検査、血液による抗体の検査が必要となります。

猩紅熱の治療では、溶連菌に有効なペニシリン系の抗生物質を内服で用いるのが一般的です。数日で薬の効果が表れて、熱が下がり、発疹も目立たなくなります。皮膚は乾いて、皮がむけます。

しかし、症状が改善されても、溶連菌はのどに残っていることがあるので、再発や他人に感染させる可能性があります。急性腎炎やリウマチ熱などの合併症を予防するためにも、2週間程度は確実に抗生物質の服用を続けることが大切となります。皮膚のかゆみに対しては、抗ヒスタミン薬の内服、または軟膏(なんこう)を使用します。

症状が改善した後も、2週間~3週間後に尿の中に血液が混じっていないかを検査し、完全に治ったかどうかは、抗生物質の服用をやめてから、のどの粘膜の培養検査をして確かめる必要があります。繰り返し猩紅熱に感染する可能性もありますので、侮れません。家族内で感染する例も30〜50パーセントあることにも、注意が必要です。

>薬を飲んでいる間は、安静を保ち、うがいと手洗いをしっかりと行い、なるべく刺激の少ない食事を取るように心掛けます。のどの痛みが強ければ、無理に食べなくてもかまいません。

2022/08/24

🇨🇭情緒剥脱症候群

子供が十分な愛情を感じられないまま育ち、精神的な発達や身体的な成長に遅れを生じる状態

情緒剥脱(はくだつ)症候群とは、母子関係や家族関係の問題によって、子供が十分な愛情を感じられないまま育った結果、情緒の発達、言語や知的能力の発達、さらに身体発育の遅れと行動異常を生じる状態。愛情遮断症候群、母性喪失症候群とも呼ばれます。

乳幼児から6歳児程度の子供に多くみられます。母親など養育者からの愛情を感じられない極度のストレスや不安から、子供は心から安らいでグッスリ眠ることができず、成長するために必要な成長ホルモンが睡眠時に脳下垂体から十分に分泌されなくなる結果、身体的な成長や精神的な発達に遅れが出ると考えられています。

子供は愛情ばかりでなく、十分な栄養を与えられていないこともあります。入院、死亡、離婚などによる母親不在の環境が原因となったり、母親など養育者が深い悩みを抱えていたり、うつ状態であったり、薬物依存や知的障害、精神的な病気を持っていたりして、適切な子育てができないことが原因となったりします。

母親など養育者自身が子供時代に十分な愛情を受けて育っていない場合に、世代を超えて子育てに影響する世代間伝達、愛情不足の連鎖もあります。

栄養障害によって現れる症状として、身長が低い、体重の増えが悪い、腕や脚が細い、やせている、肋骨(ろっこつ)が目立つ、お尻がへこんでいるなどがあります。不適切な養育の結果として観察される症状としては、おむつかぶれがひどい、皮膚が汚い、汚い服を着ているなどがあります。子供の心理的な変化や行動異常によって現れる症状としては、目を合わせない、表情が乏しい、感情表現が乏しい、動作が緩慢、抱きついたり寄り添ったりしない、親に抱かれるのを嫌がる、異様な食欲増進、尿や便をもらす、寝付きが悪い、かんしゃくを起こすなどがあります。

愛情不足の養育が生後1年以内に始まり、3年以上続く時は、情緒や知能の障害が永久に回復しないといわれています。

養育者が子供の情緒剥脱症候群に気付いたら、母子手帳の成長曲線をつけてみたり、子供らしい豊かな表情をしているかどうか、気を配りましょう。心配なことがあれば、小児科医や保健師に相談しましょう。

情緒剥脱症候群の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、身長、体重、頭囲の計測値から成長曲線をつくり、子供の成長を評価します。食事の内容から、栄養学的な分析をします。また、養育環境についての情報を集めます。

小児科の医師による治療では、食事の内容について養育者に栄養指導を行い、子供の年齢に見合った十分な食事を与えるようにします。

また、子供と養育者にとって、ストレスの少ない環境になるように調整をします。母親など養育者に対する心理カウンセリングが必要な場合もあります。子供にとってストレスの少ない環境で、年齢に見合った十分な栄養を与えると体重が増加し、成長ホルモンの反応も回復して身長の伸びが促進されなど、成長の遅れは取り戻されます。

しかし、虐待やネグレクト(育児放棄)など養育者の子育てに重大な問題がある場合、ケースによっては養育者と子供を遠ざけることも必要です。入院で治療を受けさせたり、乳児院など保護観察施設で養育したりすることで遅れていた成長が改善されることもあります。

母親が不在の場合、あるいは母親がいても子供に愛情を十分に与えることができない場合には、母親に代わって父親や親に代わる養育者が十分な愛情を注ぐことで防ぐことは可能です。

🇦🇹小児型慢性疲労症候群

●「だるい」「疲れる」と訴える子供

 成人の六割が疲労を感じ、三割は半年以上続けて疲労を感じているといった調査結果もある今日の日本では、体や精神に感じる慢性的な疲労は、子供を含む誰もが経験することとなっています。

 「小児型慢性疲労症候群」とは、睡眠障害を伴う病気であり、「学校に行くことができない」という不登校の子供の多くがかかっているものです。主な症状は、集中力の障害、睡眠異常、疲労感、頭痛・頭重(とうじゅう)感などです。

 一九九九年の厚生労働省の調査によると、全国の主な小児科を受診した五歳以上の子供の5・6パーセントが、心身症に伴う頭痛、腹痛、吐き気、めまいなどの不定愁訴を訴えていて、そのほとんどが睡眠障害を同時に起こしている、と報告されています。そして、健康に見える子供でも、30~40パーセントに睡眠障害がある、とされています。

 従来、不登校に対する社会の認識は「怠け」だととらえることが多く、不登校の子供は周囲から理解されず、苦しい思いを抱いてきました。「なぜ自分が学校に行けないのか」、その理由を答えられる不登校児はいない、といってよいのです。「何となく行けない」からであり、誰も「自分が小児型慢性疲労症候群である」ということを知らないのです。

 彼や彼女は怠けているのではなく、十分な睡眠時間をとり、十分な休養をとらなければならないのです。

 今、「だるい」「疲れる」と訴える子供は、よく見られること。2004年に、東京都の公立小中学生2万2000人を対象に実施された調査では、「学校が楽しいか?」との質問に、「楽しくない」と答えたのは、小学生の10パーセント、中学生の11パーセントでした。その理由として挙げられたのは、「体が疲れる」が49パーセント、「友達付き合いが疲れる」が27パーセントでした。

 そうした「だるい」「疲れる」と訴える疲労の極致にあるのが、子供が「学校に登校することができない」、成人が「会社に出勤することができない」といった状態です。

●浅い睡眠と脳の疲労

 現代人は、昔より活動の時間が長く、活動自体の負荷も大きくなっています。長時間の活動を支えるためには、睡眠という休養をしっかりとらなければいけません。

 ところが、先進国では、成人のみならず子供の睡眠時間も、急速に減少してきています。日本では、乳幼児の時期からかなり睡眠時間が削られており、三歳までの子供で、入眠時間が夜十時を過ぎている子が50パーセントを超え、十二時を過ぎる子も20パーセント近くいます。 

睡眠という休養が削られているため、子供を含めた現代人は、休養と活動のバランスが悪くなり、脳の働きも落ちています。これが疲労の原因です。 

 一方、健康な人は、睡眠という休養によってエネルギーが補充されているため、疲労はすぐに回復します。

 もともと、サーカディアン・リズムと呼ばれる、人間の体内の生活時間は二十五時間に近いため、入眠時間が後にずれる傾向があります。それを助長する原因の一つに、深夜まで放送しているテレビ、ラジオ、パソコンや携帯電話で接するインターネットなどのメディアの影響があります。また、ゲーム、受験勉強や部活動、人間関係のストレスも影響しています。 

 日常生活の中で、特に疲れるのは、人とのコミュニケーションです。相手の表情、言葉などいろいろなことを瞬時に読み取り、それに対して自分の考えをまとめていわなければなりません。これは、脳の全体を使うため、非常に疲れます。慢性疲労の状態になれば、脳の前頭葉の血流が下がり、前頭葉の機能が低下しますから、「意欲」や「生命力」も落ちるのです。

 さらに、慢性疲労状態の人で大きな問題となるのは、睡眠中も脳が活動したり、心臓の心拍数が落ちなかったりと、寝ている間にエネルギーの消費が起き、脳の温度が上がったまま浅い睡眠状態が続く、という睡眠異常を起こしていることです。人間の脳の温度は、起きている時には高く、寝ている時には低いのが通常です。

脳の温度が上がった浅い睡眠では、エネルギーの蓄積が非常に遅いため、長時間の睡眠を必要とします。しかも、疲労がなかなか改善しません。この悪循環の中で、不登校は長期化してしまうのです。 

 不登校のきっかけが、いじめだったと仮定します。いじめられた子供の脳は、不安と緊張のため、すごい勢いで活性化しています。その状態で眠りに入っていくわけですから、寝付きを悪くし、入眠時間が遅くなり、眠りが浅くなります。

 不安や緊張がなくても、子供が夜遅くまで起きている時代ですから、朝七時に起きても、体や精神の活動の準備は整っていません。そのため食欲もわかず、朝食を食べない子供が多いのです。睡眠の質が悪いと、生命力の低下、学習意欲の低下を招くのです。

●小児型慢性疲労の予防と治療

 例えば、夜中の二時に寝て、頑張って朝七時に起きていた子供が、慢性疲労の状態になってくると、突然、昼十二時まで寝るようになってしまうケースがあります。こうなってしまうと、なかなか抜け出せません。

 エネルギーの余力がない子供が、ウイルス性疾患にかかって発熱し、それを機に、昼まで起きられなくなってしまうケースも、しばしば見られます。ウイルス性疾患がそのまま続いているという見解もありますが、疲労の蓄積という下地に問題があるのです。 

 小児型慢性疲労には、早寝が有効な対策となります。朝起きが難しくて時々、遅刻するという子供であれば、一時間早く寝てもらう。質のよい睡眠を二週間続ければ、軽症の慢性疲労は解決します。

 重症の慢性疲労症候群に対しては、医師による治療が求められます。医師側では、不登校に陥った子供の体の異常として、自律神経のうち睡眠中、交感神経より優位になる副交感神経が休養を十分にとっても優位にならない、睡眠と活動を促すホルモンの分泌のピークがそれぞれの実態とずれる、脳の温度を反映する深部体温が夜間に下がらない、などと見なしています。

 人工的に明るい光を当てる「高照度光治療」や、ホルモン剤「メラトニン」の投与で、ずれた生体リズムを元に戻したり、睡眠中にもエネルギーを多く使うため、ビタミンB1などサプリメントを投与したりして、治療は行われます。

🇻🇦小児糖尿病

小児期に発症する糖尿病

小児糖尿病とは、小児期に発症する糖尿病。

一口に糖尿病といっても、糖尿病が発症した原因によって、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)、2型糖尿病(インスリン非依存型糖尿病)、妊娠糖尿病、その他の糖尿病の4つの種類に分けられますが、小児糖尿病にはこの4つの種類の糖尿病がすべてあります。以前は小児糖尿病といえば 1型糖尿病のことでしたが、現在では子供の肥満が増えているため2型糖尿病の発症率が増えています。

10歳未満で発症する糖尿病は1型糖尿病がほとんどで、10歳代になると1型糖尿病は増加しますが、2型糖尿病も増えてきます。20歳以降になると、2型糖尿病がほとんどになります。

1型糖尿病は、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島の中にあるβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリン分泌がほぼゼロになってしまうことで発症する種類。原因としては、ウイルス感染、自己免疫性、特発性(原因不明)などがあります。

インスリンは血糖値を下げる唯一のホルモンであり、そのホルモンが体内で作られないわけですから、外からインスリンを補充しなければ、血糖値はどんどん上昇してしまいます。従って、1型糖尿病の人は、生存のために毎日のインスリン注射が絶対に必要になります。発症は小児や若い人に多くみられますが、中高年にも認められることがあります。

2型糖尿病は、インスリン分泌が低下しやすく糖尿病になりやすい体質を持っている人に、過食、運動不足、肥満、ストレス、加齢のほか、発熱、過労、手術、薬の服用、ほかの疾患の影響、妊娠など、インスリンの作用を妨害するような引き金が加わって発症する種類。

日本人の糖尿病の約9割がこの種類に当てはまり、生活習慣病の一つとされています。この2型糖尿病では、親や兄弟にも糖尿病にかかっている人がいることが多く、遺伝的要素が強く関係していると見なされています。

過食など発症の引き金となる複数の因子の中では、とりわけ肥満が深く関係しています。調査によると、2型糖尿病患者の約3分の2は、現在肥満であるか、過去に肥満を経験しています。実際、肥満者ではインスリンの血糖低下作用が弱まっていることも、明らかにされています。

脂肪を蓄積する細胞である脂肪細胞からは、インスリンの作用を妨害する遊離脂肪酸やTNFと呼ばれる物質などが分泌されていますので、肥満して脂肪細胞が増えると、せっかく分泌されたインスリンがうまく働くことができなくなり、血糖値が上昇するようになるのです。中年以降の発症例の多くは、2型糖尿病です。最近の日本では大人の2型糖尿病の増加とともに、小児や若い人の2型糖尿病も増えてきています。

1型糖尿病の症状の現れ方は、急激です。肥満していない子供が急激にやせてくる、水をよく飲む、トイレが近くなる、夜尿が増える、疲れやすい、などの症状が多くみられます。糖がエネルギーとして利用されずに尿中に排出されてしまうため、空腹感が強く、いくら食べても体重が減少していきます。

2型糖尿病は、大人と同じく無症状です。症状は気付きにくく、血糖値が多少高いくらいでは、全く自覚症状のない子供がほとんど。徐々に悪化し、血糖値がかなり高くなってくると初めて、のどが渇く、トイレが近くなる、尿の匂いが気になる、できものができやすい、傷が治りにくい、足がつる、また細胞のエネルギー不足によって体がだるい、疲れやすい、食べてもやせるといった症状が現れてきます。血糖値が極めて高い状態では、昏睡(こんすい)に陥ることもあります。

また、肥満児が急激にやせてきて、2型糖尿病と診断される例もあります。この典型例が一般にペットボトル症候群といわれているもので、軽症の場合は清涼飲料水ケトーシス、重症の場合は清涼飲料水ケトアシドーシスとも呼ばれます。

継続して大量に、糖分の多いジュースなどのペットボトルに入った清涼飲料水を摂取することで、水に溶けている糖分は吸収されやすいために血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つホルモンで膵臓から分泌されるインスリンの働きが一時的に低下します。インスリンが欠乏すると、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解します。その際に、脂肪酸からできるケトン体と呼ばれる代謝成分が、血液中に過剰に増えます。ケトン体は酸性物質で、血液が酸性化(ケトーシス)したり、ひどく酸性化(ケトアシドーシス)したりして、ペットボトル症候群が発症します。

症状としては、のどが異常に渇くことから多量の清涼飲料水を欲しがるようになり、上昇した血糖値によって尿量が増え、体重が急激に減少し、倦怠(けんたい)感を覚えます。週単位から1、2カ月の経過で発症し、意識の混濁や昏睡に陥るケースもあります。

糖尿病の症状に気付いたら、すぐ小児科、内科などを受診してください。1型糖尿病の場合も、血液がひどく酸性化(ケトアシドーシス)した状態から昏睡に陥ることがあるので、早急に受診して、血糖値を測定してもらってください。

2型糖尿病の場合は、気付いてからではすでに遅いことが多いので、学校での検尿を毎年1回必ず受けてください。

小児糖尿病の検査と診断と治療

小児科、内科の医師による診断では、一般の血液生化学検査、尿中ケトン体、胸部X線検査などのほかに、血糖、尿糖、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)など糖尿病の診断に欠かせない検査を行います。急激な発症の時は、血液ガス分析、膵臓特異的自己抗体の検査を追加して行います。

血糖値が落ち着いてから、内因性インスリンの分泌能を調べます。糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症(じんしょう)、糖尿病性神経障害、動脈硬化、高血圧症などの合併症を発症しているか否かを調べるために、眼底や尿中アルブミンの検査などをすることもあります。

小児科、内科の医師による治療では、1型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)の場合、食事療法や運動療法などの一般的な糖尿病治療のほかに,体内でインスリンがほとんど分泌されないので、インスリン製剤を注射で投与します。

インスリン製剤には、速効型、超速効型、中間型、持効型、さらに、速効型や超速効型と中間型がいろいろな比率で混ざっている混合型があります。一般的に、食後に分泌されるインスリンを補充するためには、速効型や超速効型を毎食前に使用します。また、人の膵臓からは食事と関係なく一定のスピードでインスリンが分泌されているので、このインスリンを補充するためには、中間型や持効型インスリンを使用します。

小児期は、1日に混合型インスリンを2回注射し、必要に応じて速効型を注射することで、ほぼ対応できます。学童期になり学校で注射できるようになれば、速効型ないし超速効型の食前3回注射に、睡眠前の中間型1回注射というやり方が、最も生活に合わせやすい方法です。昼食時に注射ができなければ、できるようになるまでの間、朝食時に混合型を使用していくこともできます。

中学生以上になれば、速効型ないし超速効型の食前3回注射と、睡眠前の中間型ないし持効型の1回注射のやり方が、最も生活に合わせやすい方法となります。

2型糖尿病(インスリン依存型糖尿病)の場合は、食事療法および運動療法で血糖値が十分に正常化しない際に、飲み薬やインスリンの注射が必要になります。

飲み薬は、食後高血糖だけの状態か否か、内因性インスリンの分泌能が保持されているか否か、または肥満しているか否かで、使い分けをします。飲み薬には、経口血糖降下薬、SU薬(スルホニル尿素薬)、速効性インスリン分泌促進薬、α-グルコシダーゼ阻害薬、インスリン抵抗改善薬があります。

ペットボトル症候群の場合は、血液中の糖分を低下させるホルモンのインスリンを静脈に注射し、血糖値を下げます。この場合、回復までは通常1カ月程度かかります。

🇻🇦小児まひ

小児まひは、ポリオ (Polio)、脊髄(せきずい)性小児まひ、急性灰白髄(かいはくずい)炎(poliomyelitis)とも呼ばれ、ポリオウイルスによって発症する感染症のことです。

ポリオウイルスが感染して、脊髄神経の灰白質という部分を侵すため、初めの数日間、発熱、頭痛、背骨の痛み、嘔吐(おうと)、下痢などの症状が現れた後、急に足や腕がまひして動かなくなります。

5歳以下の小児の罹患(りかん)率が高かったことから、一般には小児まひと呼ばれることが多いのですが、大人がかからないわけではありません。病原ウイルスは感染者ののどにいますが、主な伝染源になるのが感染者の大便とともに排出されたウイルスで、さまざまな経路で経口感染します。季節的には、夏から秋にかけて多く発生します。

日本では1960年に新潟、北海道、九州で大流行し、61年から生ワクチンの服用が全国的に実施されています。1980年には、自然感染による小児まひが根絶され、現在ではポリオワクチンからの2次感染でしか発症していませんが、海外ではまだ流行している地域があります。世界保健機関(WHO)では、撲滅を目指しています。

なお、日本国内での2次感染での発症は計12件で、2008年2月に北海道の男の乳児が発症、2000年に宮崎県で発生して以来のこととなりました。生ワクチンの服用では、弱毒化したポリオウイルスを体内に取り込んで免疫を作りますが、450万回に1回の割合で発症するとされます。

2022/08/23

🇭🇰精神遅滞(精神薄弱)

全般的な知能が低く、環境への適応に障害

精神遅滞とは、知的機能が全般的に平均よりも低く、同時に環境への適応機能の障害が認められる発達障害の一つ。法令上は18歳までに、多くは一般的に生まれた時点、あるいは早期の乳幼児期に障害が生じ、日常生活において、何らかの援助や介助が必要となります。

以前は精神薄弱と呼ばれていましたが、この用語は最近ではほとんど用いられず、1994年頃から精神遅滞と呼ばれるようになりました。日本では2000年から、法律用語、行政用語としては知的障害が用いられています。知的機能が遅れていることで、精神遅滞は自閉症や学習障害と混同されることがあります。

多くは原因不明です。原因として想定されているものは、以下に示すようにさまざまです。髄膜炎や脳炎などの感染症、頭部外傷、フェニールケトン尿症などの代謝異常症、ダウン症などの染色体異常、子宮内胎児発育遅延や母体のアルコール摂取といった出生前要因などが挙げられ、脳の機能の成熟障害が存在すると見なされています。

心理的、環境的な原因で発達が遅れている場合には、精神遅滞とはいいません。

症状の現れ方については、重度の精神遅滞の子供は一般に、首の座りが遅い、座ることができないなど、運動の発達が遅いことで乳児期に気付きます。染色体異常による場合は、身体奇形を伴うことが多く、出産直後に判明するものも少なくありません。

身体発達に異常がない、軽度から中等度の精神遅滞の場合には、乳幼児の発達課題を乗り越えることができず、少しずつ明らかになってくることが多くみられます。初めの数年間は正常な発達をしているようにみえますが、バイバイをしないことや言葉が出ないことなど、言語の発達の遅れ、遊びの不得手、体の動きの不器用さなどから判明してきます。

全般的な知能が低いために、日常生活や社会生活への適応に障害が生じ、食事、衣服の着脱、トイレでの排便、排尿といった身の回りのことが一人でうまくできない、同じ年齢の子供と遊ばない、といった症状がみられます。小学校に入って、集団生活に適応できないために問題行動が目立ち、初めて精神遅滞に気付くこともあります。

成年期では、一般的な職場への就労はハードルが高いものの、本人の能力に合っている環境であれば問題はありません。一般的な職場での就労が困難な場合は、障害者の保護者やボランティアなどが開設する通所施設で活動するケースが多くみられます。

精神遅滞の検査と診断と治療

兄弟姉妹と比べて、あるいは近所の子供と比べて、自分の子供は発達が遅いのではないかという心配があれば、成長障害や身体的な病気の有無も含めて、小児科医、児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師の診察を受ける必要があります。

医師による診断では、面接や診察、質問用紙、知的水準を測る知能検査、ないし幼児では発達検査などを行って、症状を調べます。これらの検査は、発達の遅れている点を明らかにするだけでなく、子供の優れた能力を見いだすことにもなります。

専門医であっても、一度の診察や検査で長期的な発達の予測をすることは困難です。時間を空けて診察し、発達の経過も併せて判断することが必要です。

しかしながら、フェニールケトン尿症や被虐待児など、ごく一部の場合を除けば、精神遅滞に対する医学的治療はありません。元来が知的機能の遅れであり、その基礎は大脳皮質に存在する神経細胞の働きの弱さにあるため、薬物によって治したり、知能段階を高めることは不可能とされています。

合併する身体の病気が予想される場合には、必要な検査を定期的に行うことがあります。例えば、てんかんの合併が考えられる場合には、脳波検査を行います。もちろん、合併症の症状を改善させる治療も行います。

精神遅滞に対する医学的治療はないため、治療の目標は一人ひとりの子供に応じた教育と訓練に置かれます。つまり、現在の知能に沿った生活能力を訓練して、その知能段階で生きていける能力を開発することが、目標となります。身体機能訓練、言語訓練、作業療法、心理カウンセリングなどを開始し、現実的で達成可能な目標を定め、教育と訓練を行うことにより、子供の持つ発達の可能性を最大限に発揮させることができます。

心理的な問題、自傷行為などの行動の問題に対しては、カウンセリングや環境の調整を行います。十分に行き届いた指導やサポートのためには、個別や少人数集団における特別な教育環境が必要になります。

長期的には、身の回りのことが一人でできるようになること、将来の職業につながるような技能を身に着け、社会に適応していくことが目標となります。

精神遅滞の子供の抱える問題点は、年齢や発達段階によって変化します。周囲の人にとって大切なことは、年齢や発達の段階によって直面するハンディキャップを理解し、子供の能力に見合った教育手段を選ぶことです。小児科医などの医師、発達相談、地域の発達支援プログラムなどを利用して、情報を得るとよいでしょう。

ある程度の障害のある子供には、療育手帳を交付してもらい、特別児童扶養手当の受給手続きを取ることも大切です。公的援助の内容と手続きについては、児童相談所に相談してください。

2022/08/22

🇦🇹脊椎分離症、脊椎すべり症

脊椎が前後に分離、および椎体が前方へすべり出し

脊椎(せきつい)分離症とは、脊椎が前方部分と後方部分に切れている状態。円柱状の椎体から出ている弓状の部分である椎弓が、上下の関節突起の間でひびが入ったり分離したりします。

主に、第5腰椎に起こります。脊椎(背骨)の中でも腰椎は特に頑丈にできていますが、日常生活やさまざまな運動で強い力がかかることが多く、比較的弱い椎体と椎弓の結合部分にひびが入ったり、切れたりするのです。背筋が衰え、骨が弱くなっている中高年や、背筋や骨の形成が未成熟の小学校高学年に多くみられます。

脊椎分離症で骨が前後に分離すると、体重や上体への荷重はすべて前方の椎体に集中してかかるために、やがて椎体が前方へすべり出すことがあります。これが脊椎すべり症です。

脊椎すべり症は普通、脊椎分離症が前提にありますが、時には、分離症がないのに椎体がすべっているものがあります。これを無分離すべり症といいます。中年以降の人の第4、または第5腰椎に多くみられ、椎間板が薄く狭くなる椎間板変性や、変形性脊椎関節症の時に起こりやすいものです。

脊椎分離症および脊椎すべり症の原因としては、先天性の骨形成の不全であるとする説が有力ですが、外傷による骨折で分離が生じることもあります。年齢的には、20歳ごろから症状が現れ、年を加えるにつれてひどくなる場合と、あまり進まない場合とがあります。

分離があっても、多くのケースでは痛みがありません。分離した部分が動きすぎると、周囲の組織に炎症が発生し、痛みを感じることもあります。この場合は、脊椎の後方へ出っ張った骨の突起で、背中の正中線上の皮下に触れる骨である棘(きょく)突起を押すと痛み、また、体を動かすと痛むのが主症状。

脊椎すべり症が強くなると、腰椎部の反りが強くなり、棘突起の配列に段差が生じ、腰痛だけでなく、下肢のほうにも頑固なしびれや痛みが出てきます。これは、神経の根元が圧迫されて起こる症状です。

無分離すべり症では、ひどいすべり出しにならないので、神経を圧迫することはほとんどありませんが、変形性脊椎関節症があるために、局所の圧痛や運動痛が起こります。

脊椎分離症、脊椎すべり症の検査と診断と治療

腰の疲労感や鈍い痛みを感じたら、早めに整形外科を受診しましょう。脊椎分離症では、軽症ならば痛みがあまり感じられないこともあるため、無理をして悪化させてしまうことがあるので注意が必要です。

医師のよる治療では、安静、牽引(けんいん)療法、コルセット装着のほか、薬物療法などが行われます。手術が必要な場合には、椎弓の分離した部分を固定する分離部骨接合術や、骨を移植して、2つ以上の脊椎を癒着させて動かないようにする脊椎固定術などが行われます。

脊椎分離症、脊椎すべり症の改善、予防に有効なのは、腹筋運動とストレッチです。腹筋が弱いと腹圧も弱く、腰が反り気味の姿勢になり、腰椎が前にすべりやすくなります。腹筋のトレーニングとともに、腰痛ベルトを併用するのもよいでしょう。中でも、腹圧を高めやすく、不用意に反る姿勢を制限できる幅の広いタイプの腰痛ベルトが、お勧めです。

2022/08/21

🇧🇩先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)

●生まれつき甲状腺の働きが弱い疾患

先天性甲状腺(せん)機能低下症とは、生まれつき甲状腺の働きが弱いために、甲状腺ホルモンの分泌が不足している疾患。知能低下や発育障害が起こる重症から軽症まで、症状の出方はさまざまです。別名、クレチン症。

発生頻度は、出生児5000~6000人に1人の割合と推測されています。男女比は1:2で、女児が多いようです。

胎児期における発生の異常によって、甲状腺そのものが形成されていない、甲状腺があっても十分な大きさがない,甲状腺が舌根部など別の場所にあって働かない、甲状腺があっても甲状腺ホルモンの合成に障害があるなどのために、甲状腺ホルモンが不足の状態になります。まれに、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に、原因があるケースもあります。

出生時体重は正常ですが、次第に成長、発達が遅れてきます。新生児黄疸(おうだん)から引き続き、黄疸がなかなかとれません。

顔つきは特徴があり、まぶたがはれぼったく、鼻は低く、いつも口を開け、大きな舌を出しています。これをクレチン顔貌(がんぼう)と呼びます。皮膚は乾燥し、あまり汗をかかず、腹部は大きく膨れています。また、臍(さい)ヘルニア、頑固な便秘があります。

また、四肢、特に手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず、あまり泣かずによく眠ります。体動も不活発で、おとなしい子供です。

これらの症状は乳児期以後に認められるものが多く、新生児期にははっきりした症状を示しにくいものです。

そのまま放置しておくと、運動機能の発達の遅れ、発育障害がみられ、おすわりや歩行が遅れ、知能も障害されます。また、骨の成熟が著しく遅れ、身長が伸びずに小人症になります。

●先天性甲状腺機能低下症の検査と診断と治療

現在の日本では、新生児の集団スクリーニングが全国的に行われており、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の症状が現れる前に、ほとんどが発見されます。

この集団スクリーニングは生後5~7日に、足の裏から一滴の血液を濾(ろ)紙で取り、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定によって行われます。このスクリーニングのみでは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)遅発上昇型などの症例や、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に原因があるケースが見逃されますので、症状があれば要注意です。地域によっては、遊離サイロキシン(FT4)の測定を同時に行っています。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であると、再採血あるいは精密検査になります。集団スクリーニングで精密検査の通知が届いたら、速やかに指定された医療機関を受診します。

医療機関によっては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離サイロキシン(FT4)などの再検査、大腿(だいたい)骨遠位骨頭核のX線検査、甲状腺の超音波検査などを行います。一般に、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)では骨の発育が遅延し、大腿骨遠位骨頭核が出現していないか、小さいと見なされています。

一過性甲状腺機能低下症、一過性高TSH血症、ごく軽度の先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)との区別のため、母親の甲状腺疾患、母親がバセドウ病の場合には抗甲状腺薬内服、胎児造影、イソジン消毒などによるヨード大量曝露(ばくろ)の有無などが、確認されます。

症状がそろっていて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が高く、甲状腺ホルモン値が低いと、診断が確定します。 

診断が確定したら治療を開始し、1日1回、甲状腺ホルモン剤の内服を行います。一般に、生後3カ月以内に薬剤の内服が開始できれば、知能障害や発育障害を残さずに正常の発達を期待できますので、経過を見ながら薬剤の量を加減します。生後12カ月以後では、知能障害を残してしまいます。

🇸🇾胎便吸引症候群

胎便を肺に吸い込むことで、呼吸障害を起こす新生児の疾患

胎便吸引症候群とは、出生前あるいは出生時などに、肺に胎便を吸い込んだ新生児が起こす呼吸困難。

胎便とは、胎児が生まれる前に腸で作られる濃い緑色の、無菌性の便です。正常な場合は、胎便は新生児が授乳を開始した時に排出されます。しかし、血中酸素濃度が不十分など何らかのストレスがあると、これに反応して腸の蠕動(ぜんどう)運動が一時的に活発になり、同時に肛門括約筋が緩むため、胎児が羊水の中で胎便を排出してしまうことがあります。さらに、同じストレスが原因で胎児が激しくあえぐ結果、胎便を含む濁った羊水を肺に吸い込んでしまうことがあります。

出生後、吸い込んだ胎便が気道をふさぎ、肺をつぶれた状態にしてしまうことがあります。あるいは、一部の気道が部分的にふさがれた場合、この部分より先の肺の一部に空気を届けることはできても、この空気を吐き出すことができないという状態になることがあります。

このような状態になった肺は、過剰に膨らみます。肺が部分的に膨張し続けると、ついには破裂し、つぶれます。そうなると、空気が肺の周囲の胸腔(きょうくう)にたまる気胸を起こします。

肺に吸い込まれた胎便は、肺の炎症である肺炎の原因にもなるため、肺感染症のリスクも高くなります。また、持続性肺高血圧症を発症するリスクも高くなります。

胎便吸引症候群を起こした新生児は、出生時から呼吸数が1分間に60以上と速くなる、息を吸い込む際に肋骨(ろっこつ)の間や胸骨の下部がへこむ、息を吐く際に息苦しそうにうめき声を出すなどの呼吸困難に陥ります。血液中の酸素濃度が下がると、チアノーゼを起こして新生児の皮膚は紫色になり、血圧が下がることもあります。

大半の新生児は助かりますが、重症の場合は死亡することもあります。胎便吸引症候群が最も重症になるのは、予定日より2週間以上遅れて生まれた過期産児です。その原因は、過期産児では、普通よりも少ない羊水の中に胎便が濃縮された状態になるからです。

胎便吸引症候群の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による診断は、出生時に羊水中に胎便が観察されること、新生児の呼吸困難、胸部X線(レントゲン)検査の異常所見などに基づいて行います。

産科、産婦人科の医師による治療は、出生時に新生児が胎便で覆われて、ぐったりし、呼吸していなかった場合には、直ちに新生児の口、鼻、のどから胎便を吸引して取り除きます。

その後、太い気道である気管の中にある胎便もすべて吸引します。より多くの胎便を吸い出すために、吸引を繰り返し行うこともあり、必要に応じて生理食塩水などによる気管や肺の洗浄を行うこともあります。

さらに、肺感染症のリスクがあることから、新生児に抗生物質(抗生剤)を投与して、酸素吸入を行い、必要であれば人工呼吸器を使用します。新生児が人工呼吸器をつけた場合、気胸や持続性肺高血圧症などの重い合併症が起きないようによく観察します。

胎便吸引症候群を起こした新生児のほとんどは、助かります。重症の場合、特に持続性肺高血圧症を引き起こした場合は、命にかかわる可能性があります。

2022/08/19

🇦🇫乳児嘔吐下痢症

冬季に乳幼児の間で流行し、白っぽい水様便が続く腸炎

乳児嘔吐(おうと)下痢症とは、冬季に乳幼児の間で流行し、白っぽい水様便が続く腸炎。ロタウイルス腸炎、ロタウイルス下痢症、白色便性下痢症、仮性小児コレラなどとも呼ばれます。

オーストラリアのビショップが1975年に発見したロタウイルスの感染が原因となって、11〜3月ごろまでの乾燥して気温が5℃以下になる寒い時期に、乳幼児が発症します。生後6カ月から2歳までが好発年齢であり、発症すると重症化しやすくなります。

発展途上国では乳児死亡の主な原因の一つに挙げられていて、医療が発達した先進国でも1歳未満の乳児には恐ろしい疾患です。保育所、幼稚園、学校などで集団発生することもありますが、多くは感染経路が明らかではありません。

3カ月未満では母親からの免疫で守られ、3歳以上の年齢層では発症しても一般には軽症です。

症状としては、1日に数回から十数回の下痢が5~7日続き、酸っぱい臭いの、白っぽい水様便が出ることが特徴です。便が白っぽくなるのは、ロタウイルスが感染して胆汁が十分に分泌されなくなるためです。時には、白くならずに黄色っぽい便のままのこともあります。

発症初期には吐き気、嘔吐を伴うのが普通ですが、通常、半日から1日で落ち着きます。軽い発熱と、せきを認めることもあります。

下痢の回数が多いと、脱水症状が現れます。その兆候としては、ぐったりしている、機嫌が悪い、顔色が悪く目がくぼんでいる、皮膚の張りがない、唇が乾燥しているなどが挙げられます。まれですが、けいれん、脳症、上方の腸管が下方の腸管の中に入り込む腸重積(じゅうせき)、腎(じん)不全を伴うことがあります。

脱水症状の兆候が認められたり、けいれんなどほかの症状が認められたら、できるだけ速やかに小児科、ないし内科の医師を受診することが、体力のない乳幼児にとって大切なことです。

乳児嘔吐下痢症の検査と診断と治療

小児科、ないし内科の医師の診断は、症状と便中のロタウイルスの検出により確定します。免疫測定法のイムノクロマト法を利用した迅速診断検査薬で、10分以内にロタウイルスを検出できます。

人に感染するロタウイルスにはA、B、C群があり、A群以外は頻度は少ないものの、一般の検査試薬では検出できません。しかし、B群は以前に中国で流行したものの日本ではみられませんし、C群による腸炎は主に3歳以上の年長児や成人にみられ、A群のような大規模な流行はほとんどなく、流行散発例あるだけです。C群は、最も感度が高い電子顕微鏡検査で検出します。

脱水の状態は、排尿があれば尿中のアセトン体(ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトン)の有無および量で推定します。血液中の電解質を調べることもあります。

乳児嘔吐下痢症には、特効薬はありません。小児科、ないし内科の医師による治療では、嘔吐を伴う時期には絶食、絶飲が行われます。嘔吐に対しては、鎮吐(ちんと)剤を使用することもあります。

嘔吐、吐き気が治まると、下痢による脱水症状を改善するための対症療法が行われます。まず、経口補水液をこまめに与えます。すぐに嘔吐するようであれば、入院して点滴をしなければなりません。また、外来で点滴だけを受けることもできます。

嘔吐がなければ、経口補水液の量を増やしていきます。動物性蛋白(たんぱく)質、脂肪に富むミルクや牛乳をこの時期に与えると、ウイルスの攻撃を受けて弱っている腸に負担がかかって吐きやすい上、下痢が長引く恐れがありますので控えます。母乳の蛋白質、脂肪はミルクや牛乳のそれよりも吸収されやすいため、少しずつなら与えても差し支えありません。

さらに野菜スープを与えることへと進め、経口摂食が可能であれば、少量で回数を多くした食事を与えます。腸にかかる負担が最も少ないのは、重湯、おかゆ、うどん、パンなどのでんぷん類です。年齢的にミルクが主たる栄養源で、離乳が進んでいなくて下痢が著しい時には、ミルクを薄めたり、大豆から作ったミルクや牛乳の蛋白質を加水分解したミルクを勧めることもあります。

止痢(しり)剤は原則として使わず、ラックBやビオフェルミンなどの生菌製剤を用います。ロタウイルスの再感染は多く、免疫は生涯できませんが、多くは重症にならずに済みます。

乳幼児の世話をする人は、便とオムツの取り扱いに注意が必要です。ロタウイルスは感染力が強く、下痢便中に大量に排出されるウイルスなので、便に触った手から口に感染することがほとんどのため、せっけんを使って十分に手洗いをし、漂白剤や70パーセントアルコールの消毒液で、オムツ交換の場所や周辺をふきましょう。オムツ交換の場所に、おねしょパッドやバスタオルを敷いておくと、布団までを汚さずに済みます。

予防のためには、予防接種が最も良い対抗手段となります。日本でも2011年11月よりロタウイルスワクチンが認可されましたので、乳児には接種を受けることが勧められます。予防ワクチンには、ロタリックス、ロタテックの2種類があり、生後6週から接種できますが、ヒブや小児用肺炎球菌など他のワクチンとの同時接種を考えて、生後2カ月からが最適です。

🏊プール熱

プール熱とは、アデノウイルスによって起こる急性ウイルス感染症で、結膜充血、咽頭発赤(いんとうほっせき)、発熱が三大症状です。幼児から学童に多く見られ、夏期に学校のプールを介して流行することが多いために、この病名が付けられています。別名は咽頭結膜炎。

原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。

この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。

39度前後 の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜充血、咽頭発赤、発熱の主症状が、全部そろわないことも。

医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、プール熱の特効薬はありません。

家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。

1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。プール熱が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。

集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。

2022/08/18

🇦🇲ハートナップ病

発疹、発作に加え、脳の異常を引き起こす遺伝性の疾患

ハートナップ病とは、トリプトファンなど特定のアミノ酸が腸から十分に吸収されず、さらに腎臓がうまく再吸収できないことが原因で、皮膚の発疹(はっしん)や発作、脳の異常を引き起こす疾患。

まれな遺伝性の疾患で、発症する人は両親からそれぞれ1つずつ、異常を引き起こす原因となる遺伝子を受け継いでいます。

腸からのアミノ酸の吸収機能や、腎臓にある尿細管からの再吸収機能に問題が生じると、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジンなどのアミノ酸が過剰に尿に排出されてしまうため、体内では蛋白(たんぱく)質の構成成分であるアミノ酸が不足します。血液中のトリプトファンが少なくなりすぎると、体はビタミンB群のナイアシンアミド(ニコチン酸アミド)を十分に生産できず、特に多くのビタミンが必要となるストレスを受けた時に顕著になります。

皮膚の発疹や発作などの症状は、乳児期から小児期の早期にかけて始まります。遅いと、青年期になってから起こることもあります。症状は散発的で、ナイアシンアミドの欠乏によって引き起こされ、日光や発熱、薬物、心身のストレスなどが誘因となります。 皮膚の発疹は、日光が当たった肌に現れます。発作は栄養が足りない状態が続くと起こり、けいれん、虚脱状態、失神がみられますが、年を重ねるにつれて発作の回数は少なくなっていきます。

また、精神発達の遅れ、低身長、頭痛、小脳失調による不安定な歩行がよくみられ、不安、急な気分の変化、幻覚や妄想といった一時的な精神失調の症状を示すこともあります。

ハートナップ病の検査と診断と治療

小児科の医師は尿検査を行って、トリプトファン、メチオニン、ヒスチジンなどのアミノ酸とその分解産物が異常な量の多さで排出されていることなどで、ハートナップ病と診断します。

医師による治療は、発作を予防することを主とします。発作予防には、蛋白質を十分に含む食事で良好な栄養状態を維持し、食事とは別にナイアシンアミドや、よく似たビタミンB群のナイアシンを経口で補給することが有効です。

疾患の予後は良好で、加齢に伴って症状も緩和方向に向かいます。

🇲🇺白色便性下痢症

冬季に乳幼児の間で流行し、白っぽい水様便が続く腸炎

白色便性下痢症とは、冬季に乳幼児の間で流行し、白っぽい水様便が続く腸炎。ロタウイルス腸炎、ロタウイルス下痢症、乳児嘔吐(おうと)下痢症、仮性小児コレラなどとも呼ばれます。

オーストラリアのビショップが1975年に発見したロタウイルスの感染が原因となって、11〜3月ごろまでの乾燥して気温が5℃以下になる寒い時期に、乳幼児が発症します。生後6カ月から2歳までが好発年齢であり、発症すると重症化しやすくなります。

発展途上国では乳児死亡の主な原因の一つに挙げられていて、医療が発達した先進国でも1歳未満の乳児には恐ろしい疾患です。保育所、幼稚園、学校などで集団発生することもありますが、多くは感染経路が明らかではありません。

3カ月未満では母親からの免疫で守られ、3歳以上の年齢層では発病しても一般には軽症です。

症状としては、1日に数回から十数回の下痢が5~7日続き、酸っぱい臭いの、白っぽい水様便が出ることが特徴です。便が白っぽくなるのは、ロタウイルスが感染して胆汁が十分に分泌されなくなるためです。時には、白くならずに黄色っぽい便のままのこともあります。

発病初期には吐き気、嘔吐を伴うのが普通ですが、通常、半日から1日で落ち着きます。軽い発熱と、せきを認めることもあります。

下痢の回数が多いと、脱水症状が現れます。その兆候としては、ぐったりしている、機嫌が悪い、顔色が悪く目がくぼんでいる、皮膚の張りがない、唇が乾燥しているなどが挙げられます。まれですが、けいれん、脳症、上方の腸管が下方の腸管の中に入り込む腸重積(じゅうせき)、腎(じん)不全を伴うことがあります。

脱水症状の兆候が認められたり、けいれんなどほかの症状が認められたら、できるだけ速やかに小児科、ないし内科の医師を受診することが、体力のない乳幼児にとって大切なことです。

白色便性下痢症の検査と診断と治療

小児科、ないし内科の医師の診断は、症状と便中のロタウイルスの検出により確定します。イムノクロマト法を利用した迅速診断検査薬で、10分以内にロタウイルスを検出できます。

人に感染するロタウイルスにはA、B、C群があり、A群以外は頻度は少ないものの、一般の検査試薬では検出できません。しかし、B群は以前に中国で流行したものの日本ではみられませんし、C群による腸炎は主に3歳以上の年長児や成人にみられ、A群のような大規模な流行はほとんどなく、流行散発例あるだけです。C群は、最も感度が高い電子顕微鏡検査で検出します。

脱水の状態は、排尿があれば尿中のアセトン体の有無および量で推定します。血液中の電解質を調べることもあります。

白色便性下痢症には、特効薬はありません。小児科、ないし内科の医師による治療では、嘔吐を伴う時期には絶食、絶飲が行われます。嘔吐に対しては、鎮吐(ちんと)剤を使用することもあります。

嘔吐、吐き気が治まると、下痢による脱水症状を改善するための対症療法が行われます。まず、経口補水液をこまめに与えます。すぐに嘔吐するようであれば、入院して点滴をしなければなりません。また、外来で点滴だけを受けることもできます。

嘔吐がなければ、経口補水液の量を増やしていきます。動物性蛋白(たんぱく)質、脂肪に富むミルクや牛乳をこの時期に与えると、ウイルスの攻撃を受けて弱っている腸に負担がかかって吐きやすい上、下痢が長引く恐れがありますので控えます。母乳の蛋白質、脂肪はミルクや牛乳のそれよりも吸収されやすいため、少しずつなら与えても差し支えありません。

さらに野菜スープを与えることへと進め、経口摂食が可能であれば、少量で回数を多くした食事を与えます。腸にかかる負担が最も少ないのは、重湯、おかゆ、うどん、パンなどのでんぷん類です。年齢的にミルクが主たる栄養源で、離乳が進んでいなくて下痢が著しい時には、ミルクを薄めたり、大豆から作ったミルクや牛乳の蛋白質を加水分解したミルクを勧めることもあります。

止痢(しり)剤は原則として使わず、ラックBやビオフェルミンなどの生菌製剤を用います。ロタウイルスの再感染は多く、免疫は生涯できませんが、多くは重症にならずに済みます。

乳幼児の世話をする人は、便とオムツの取り扱いに注意が必要です。ロタウイルスは感染力が強く、下痢便中に大量に排出されるウイルスなので、便に触った手から口に感染することがほとんどのため、せっけんを使って十分に手洗いをし、漂白剤や70パーセントアルコールの消毒液で、オムツ交換の場所や周辺をふきましょう。オムツ交換の場所に、おねしょパッドやバスタオルを敷いておくと、布団までを汚さずに済みます。

予防のためには、予防接種が最も良い対抗手段となります。日本でも2011年11月よりロタウイルスワクチンが認可されましたので、乳児には接種を受けることが勧められます。予防ワクチンには、ロタリックス、ロタテックの2種類があり、生後6週から接種できますが、ヒブや小児用肺炎球菌など他のワクチンとの同時接種を考えて、生後2カ月からが最適です。

🇲🇻はしか

はしかは麻疹(ましん)ともいい、麻疹ウイルスによって引き起こされる小児期に多い急性の感染症として知られていますが、近年は、10代、20代の若年者での感染が多く見られ、社会的にも関心を集めています。

麻疹ウイルスの感染経路は、空気感染、飛沫(ひまつ)感染、接触感染で、その感染力はきわめて強く、免疫を持っていない人が感染するとほぼ100パーセント発症します。一度感染して発症すると、一生免疫が持続するといわれています。

毎年、春から初夏にかけて流行が見られ、感染してから約10日後に発熱や、せき、鼻水といった風邪のような症状が現れて、2~3日熱が続いた後、39℃以上の高熱と赤い発疹が出現します。肺炎、中耳炎を合併しやすく、患者1000人に1人の割合で脳炎が発症すると見なされています。

かつては小児のうちに、はしかに感染し、自然に免疫を獲得するのが通常でした。近年は2001年にあった以降、大きな流行がないことから、成人になるまで発症したことがない場合や、小児の時に予防接種をしたという場合でも、大人になって感染する例が目立ってきました。

ワクチンの予防接種が、有効です。また、はしかの患者に接触した場合、72時間以内にワクチンの予防接種をすることも、効果的です。接触後5、6日以内であれば、γ-グロブリンの注射で発症を抑えられる可能性がありますが、安易にとれる方法ではありません。詳しくは、医師とご相談ください。

🇫🇲知的障害

出生時や乳幼児期に知的能力が低下した状態

知的障害とは、知的能力の発達が全般的に遅れた水準にとどまっている状態で、発達障害の1つ。かつては、精神薄弱とか精神遅滞という言葉が使われていましたが、日本の法律用語、行政用語では、知的障害という表現で統一されるようになっています。

知的能力とは、実際の日常生活において自分で物事を判断したり、必要に応じて適切な行動を行う能力であるといえます。一般的には、金銭の管理、読み書き、計算など、頭脳を使う知的行動を指します。臨床的には、知能検査、ないし幼児では発達検査を行って、知能指数が70以下の場合には、知的障害としてさまざまな援助の対象とされます。

療育手帳が交付され、各種料金の免除などの特典が与えられ、障害年金や特別障害者手当などの制度も利用できます。

知的能力の低下した状態には、痴呆(ちほう)もあります。こちらは、いったん知的能力が正常に発達した後に、何らかの理由で二次的に低下するもので、老年痴呆はその代表例です。知的障害は痴呆と違って、生まれた時点、あるいは早期の乳幼児期に知的能力の発達そのものがあまり進まない状態です。

知的障害とはどのような障害なのか、日本の法律では定義はされていませんが、厚生労働省の平成17年調査によると、知的障害のある人は54万7000人で、そのうち施設で暮らしている人が12万8000人、地域で暮らしている人は41万9000人です。現在、日本国内で運営されている施設は、3600を数えています。

知的障害を起こす要因は、おおまかに3つに分けて考えられています。

1つは生理的要因で、体には特別の異常が見られませんが、脳の発達障害によって知能が低い水準に偏ったと考えられるものです。生理的要因の知的障害がある親からの遺伝や、知的障害がない親から偶然に、知能指数が低くなる遺伝子の組み合わせで生まれたことなどが原因。

知的障害者の大部分はこのタイプで、合併症はないことが多く、健康状態はおおむね良好です。本人、家族などの周囲とも、障害にはっきりと気付かずに社会生活を営んでいて、障害の自認がない場合も多く見受けられます。

次は病理的要因で、脳に何らかの病気あるいは損傷があって、知能の発達が妨げられるものです。例えば、乳幼児期の脳外傷、髄膜炎や脳炎などの感染症、フェニールケトン尿症などの代謝異常症、ダウン症などの染色体異常などがあり、出産の際の障害も重要なものです。胎児の時期に母親が風疹(ふうしん)、梅毒などに感染することや、有機水銀など体外から入った物質の中毒によるものもあります。

この病理的要因で知的障害を起こす場合、脳性麻痺(まひ)やてんかんなどの脳の障害や、心臓病などの内部障害を合併していることも多く、身体的にも健康ではないことが多くなります。

第3は心理的、社会的要因で、知的発達に著しく不適切な環境に置かれている場合であり、養育者の虐待や会話の不足がその典型例です。リハビリによって知能が回復することが可能。

症状の現れ方については、ダウン症などの 染色体異常による場合は、身体奇形を伴うことが多く、出産直後に判明するものも少なくありません。身体発達に異常がない場合には、乳幼児の発達課題を乗り越えることができず、少しずつ明らかになってくることが多く認められます。

言葉の遅れ、遊びの不得手、体の動きの不器用さなどから判明してきます。知的能力の遅れだけではなく、社会生活への適応にも難のあることがみえてきます。

読み書き、計算など限定された部分の発達障害や、全体としての発達が水準以下だけれど部分的にずば抜けた能力を発揮する子供は、療育の上では別に考えるのがよいでしょう。

また、かつての日本では知的障害を3段階に分けて、重度知的障害を白痴、中度知的障害を痴愚、軽度知的障害を軽愚と呼んでいましたが、現在では国際疾病分類に合わせて、最重度、重度、中度、軽度の4段階に分けています。

最重度は、知能指数ないし発達指数が20以下。重度は、知能指数ないし発達指数が20~35程度。中度は、知能指数ないし発達指数が35~50程度。軽度は、知能指数ないし発達指数が50~70程度。

知的障害の検査と診断と治療

兄弟姉妹と比べて、あるいは近所の子供と比べて、自分の子供は発達が遅いのではないかという心配があれば、成長障害や身体的な病気の有無も含めて、小児科医、児童精神科医、小児神経専門医を始めとした医師の診察を受ける必要があります。

医師による診断では、面接や診察、質問用紙、知的水準を測る知能検査、ないし幼児では発達検査などを行って、症状を調べます。これらの検査は、発達の遅れている点を明らかにするだけでなく、子供の優れた能力を見いだすことにもなります。

専門医であっても、一度の診察や検査で長期的な発達の予測をすることは困難です。時間を空けて診察し、発達の経過も併せて判断することが必要です。

しかしながら、フェニールケトン尿症や被虐待児など、ごく一部の場合を除けば、知的障害に対する医学的治療はありません。元来が知的機能の遅れであり、その基礎は大脳皮質に存在する神経細胞の働きの弱さにあるため、薬物によって治したり、知能段階を高めることは不可能とされています。

合併する身体の病気が予想される場合には、必要な検査を定期的に行うことがあります。例えば、てんかんの合併が考えられる場合には、脳波検査を行います。もちろん、合併症の症状を改善させる治療も行います。

知的障害に対する医学的治療はないため、治療の目標は一人ひとりの子供に応じた教育と訓練に置かれます。つまり、現在の知能に沿った生活能力を訓練して、その知能段階で生きていける能力を開発することが、目標となります。身体機能訓練、言語訓練、作業療法、心理カウンセリングなどを開始し、現実的で達成可能な目標を定め、教育と訓練を行うことにより、子供の持つ発達の可能性を最大限に発揮させることができます。

心理的な問題、自傷行為などの行動の問題に対しては、カウンセリングや環境の調整を行います。十分に行き届いた指導やサポートのためには、個別や少人数集団における特別な教育環境が必要になります。

長期的には、身の回りのことが一人でできるようになること、将来の職業につながるような技能を身に着け、社会に適応していくことが目標となります。

知的障害の子供の抱える問題点は、年齢や発達段階によって変化します。周囲の人にとって大切なことは、年齢や発達の段階によって直面するハンディキャップを理解し、子供の能力に見合った教育手段を選ぶことです。小児科医などの医師、発達相談、地域の発達支援プログラムなどを利用して、情報を得るとよいでしょう。

ある程度の障害のある子供には、療育手帳を交付してもらい、特別児童扶養手当の受給手続きを取ることも大切です。公的援助の内容と手続きについては、児童相談所に相談してください。

2022/08/17

🇳🇿足関節滑液包炎

足首の関節の前方にある滑液包に炎症が起こり、はれや痛みを生じる疾患

足関節滑液包炎とは、足首の関節の前方にある滑液包に炎症が起こり、はれや痛みを生じる疾患。

滑液包は、皮膚、筋肉、腱(けん)、靭帯(じんたい)などと骨がこすれる部分にある袋状の潤滑装置で、内側には通常でも少量の滑液が入っています。関節が動く際に、皮膚や腱などと骨がこすれるのを和らげます。

この滑液包に何らかの原因で過剰な摩擦や圧迫が繰り返し加わると、炎症が起こって痛みが生じ、滑液の分泌量が多くなり、滑液包の中に過剰な滑液がたまります。また、炎症が続くと滑液包自体が肥厚してきます。

足関節滑液包は足首の関節の前方にあるため、正座や足首の前の部分をこする動作を続けることで、足関節滑液包炎が起こって足首の前に痛みが起こることがあります。炎症が強く滑液がたくさんたまると、こぶのようにはれることもあります。

慢性化すると、はれが持続します。大抵の場合、はれの内部には血液の混じった滲出(しんしゅつ)液がたまっています。

何かけがをしたなどという原因がなく、ふと気が付くと痛くなり、はれているという感じで起こります。

正座の多い人や、ひざをつく給仕の仕事などに就いて足首の前の部分をこする動作を日常的に行う人で、足首の前に痛みとはれがある場合には、足関節滑液包炎の可能性もありますので、整形外科の受診が勧められます。

足関節滑液包炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、視診と触診にて、足首の関節の前方のはれや痛みの部位などを確認します。通常、X線検査では異常がありません。超音波(エコー)検査を行うと、こぶのようにはれた部位に滲出液がたまっているのを確認できることがあります。

整形外科の医師による治療では、まずは、正座や足首の前の部分をこする動作を避けます。滑液包の中に過剰な滑液がたまり、はれと痛みを生じている場合には、注射器で滑液を抜きます。

炎症が強い場合には、抗炎症薬である副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の注射を行います。必要に応じて、サポーターや包帯を用いて局所を圧迫します。

このような治療を行っても症状が改善しない場合には、滑液包を切除する手術を行う場合もあります。

長年にわたって正座をする習慣がある人が、症状を繰り返さないようにするためには、座布団などをひいて、はれた部分に直接圧力がかからないようにすることが有効です。

🇲🇬新生児壊死性腸炎

新生児の未熟な腸管に発症し、出血や壊死が起きる消化管疾患

新生児壊死(えし)性腸炎とは、未熟な腸管に発症する後天性の消化管疾患。

広範囲の腸管に出血や、組織や細胞の一部が死滅する壊死が起き、死亡率も高く、新生児医療における重い疾患の一つです。壊死の範囲や程度によって、重症度に幅があります。

原因は不明ですが、未熟な小腸と大腸への血液の流れが障害され、それに細菌などの感染症、人工ミルクによる腸管へのストレスなどの誘因が加わり、発症すると考えられています。症例の4分の3は、出生体重が1500グラム未満の極低出生体重児に発症しています。

生後4〜6日に発症することが多く、その多くは授乳開始後に発症しています。出生体重が1000グラム未満の超低出生体重児や、重度の子宮内胎児発育遅延が認められた新生児では、授乳開始前に発症するケースもあります。

症状としては、胃の中のミルク停滞、腹部膨満、粘血便などを認めます。腸管に孔(あな)が開く腸穿孔(せんこう)を起こすと、腹腔(ふくこう)内に腸管の内容物が漏れて腹部全体に炎症を起こす腹膜炎や、細菌が血管などに入り全身に感染する敗血症を生じ、重症になることがあります。

ほとんどが新生児特定集中治療室(NICU)に入院中の新生児に発症するため、全身管理を行い、必要であれば直ちに外科治療を行う必要があります。

新生児壊死性腸炎の検査と診断と治療

小児科、小児外科の医師による診断では、特徴的な症状に加え、腹部X線(レントゲン)検査を行うと、腸管拡張像、腸壁内ガス像、腸と肝臓をつなぐ門脈内ガス像が認められます。

非典型例では腸管内のガスが乏しく、腸管に孔が開く腸穿孔の後に初めて、新生児壊死性腸炎と判断されることもあるため、繰り返し腹部X線検査を行って経過観察することが重要になります。

小児科、小児外科の医師による治療では、早期診断、早期治療が重要で、新生児壊死性腸炎が疑われたら授乳を禁じ、胃管を入れて内容物を外に吸出して腸管の減圧を行い、輸液の点滴、抗生剤の投与を開始します。呼吸や血液循環の積極的管理も行います。

内科的治療で改善傾向が認められない場合や、腸が穿孔した場合には、手術を行います。穿孔が部分的であれば、穿孔した腸と壊死した腸管を可能な限りに切除し、切除した端と端をつなぐ手術をします。穿孔と壊死が広範囲に及んでいれば、切除した端と端を消化管ストーマ(人工肛門〔こうもん〕)にします。その後、状態や体重増加、時期をみて、消化管ストーマを閉鎖する手術を行います。

新生児壊死性腸炎の発症率は、新生児集中治療室(NICU)に入院中の新生児の0・2パーセント前後です。死亡率は30~40パーセントとされ、救命率は治療の時期や壊死範囲、出生体重で異なります。極低出生体重児では死亡率は依然として高く、予防と早期治療が最も大切です。

🇲🇬新生児エリテマトーデス

新生児に円板状の紅斑、時に肝機能異常、血球減少などの全身症状を生じる疾患

新生児エリテマトーデスとは、慢性円板状エリテマトーデに似た円板状の紅斑(こうはん)、もしくはシェーグレン症候群に随伴する円板状の紅斑によく似た症状を、誕生時から誕生後1カ月以内に生じる疾患。新生児紅斑性狼瘡(こうはんせいろうそう)とも呼ばれます。

紅斑は顔面を中心にして、頭部、胸部、四肢などに生じますが、6カ月程度経過するころには、軽度の色素沈着を残して消失してゆきます。しかし、皮膚の症状とともに、膠原(こうげん)病の代表的な疾患で全身性の症状を伴う全身性エリテマトーデスの特徴である溶血性貧血や、肝臓と脾臓(ひぞう)が肥大する肝脾腫(しゅ)、血小板減少、白血球減少、発熱といった全身症状を生じることがあります。

まれには、皮膚症状、全身症状とともに、不可逆性の先天性に脈が乱れる房室ブロック(2度房室ブロック、AVブロック)、あるいは完全房室ブロック(3度房室ブロック)を生じることがあります。新生児エリテマトーデスの新生児の1〜 2%で、房室ブロックを伴うとされています。

房室ブロックは不可逆性の重篤な心伝導障害ですが、それ以外の皮膚症状、肝機能障害、血液障害は一過性の可逆的な障害で、誕生後1年以内に自然に治癒し、持続的な後遺症は残りません。しかし、新生児エリテマトーデスの子供が成長した後、成人期に全身性エリテマトーデスを発症することも、ないわけではありません。

新生児エリテマトーデスは極めてまれな疾患で、全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群に罹患した母親、あるいは時に無症状の母親から、母親由来の自己抗体が胎盤を経て、胎児に移行することによって発症します。抗SS-A抗体、抗SS-B抗体が原因といわれており、特に抗SS-A抗体は皮膚症状に関与しています。

6カ月程度経過すると紅斑を生じる皮膚症状に改善がみられ、その際、母親由来の抗SS-A抗体、抗SS-B抗体も新生児から消失するため、これらの抗体の関与が指摘されています。

新生児エリテマトーデスは出生前に診断することが可能で、適正な治療を行うことで、新生児を最適な健康状態に導くこともできます。例えば、出生前に徐脈心不全が進行する先天性房室ブロックが胎児に見付かった場合は、リトドリンという治療薬の点滴や錠剤による母親への投与が胎児の心拍数増加、心機能改善、子宮収縮抑制作用を有し、出生後のイソプロテレノールという徐脈、房室ブロックの治療薬への反応の予測にも役立つ治療法です。

先天性房室ブロックを随伴している新生児エリテマトーデスの新生児に対しては、出生直後から発症する高度の呼吸循環不全を乗り切るため、産科、新生児科、循環器科、心臓外科が連携して、呼吸管理、抗心不全療法を行います。房室ブロックを伴う新生児エリテマトーデスの新生児の死亡率は15~22%で、新生児の時期を乗り越えると予後はよくなります。

新生児エリテマトーデスの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、免疫血清や血液の検査を行います。免疫血清検査では、高頻度にみられる血清中の抗SS-A抗体、抗SS-B抗体を調べます。また、血液検査によって 貧血の程度や白血球減少、血小板減少の有無を調べます。

併せて、皮膚生検も行います。顔面の頬(ほお)などの紅斑の皮膚症状が出ている部位から米粒大の皮膚組織を採取して顕微鏡を用いて判断する病理組織検査で、事前に眠り薬を点滴で投与してから、組織を採取します。

母親由来の自己抗体が発症の原因と見なされているので、母親の問診、血液検査をすることもあります。自覚症状を認めていない母親に、採血にて抗SS-A抗体と抗SS-B抗体陽性が指摘されたり、膠原病である全身性エリテマトーデスやシェーグレン症候群の可能性が指摘されることもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、基本的には皮膚症状、全身症状ともに、対症療法を中心に行います。皮膚症状に対しては、ステロイド薬(副腎〔ふくじん〕皮質ステロイド薬)の軟こうを直接塗ることが一般的です。目立つほど顔にできている場合や、頭皮の脱毛がひどい場合は、内服のステロイド薬を使用します。

全身性エリテマトーデスを合併する場合には、内臓の炎症に対して内服のステロイド薬が有効で、効果を発揮しています。

円板状の紅斑の悪化を防ぐためには、紫外線を避ける必要があります。肌の露出を控えるために、日焼け止めや帽子、長袖(ながそで)などの対策が大切です。肌に過剰な刺激を与えることも悪影響なので、かゆみがある時でもかいたり刺激を与えないように気を付ける必要があります。薬を塗る時なども、手を洗い清潔な状態で塗るようにします。

先天性房室ブロックに対しては、恒久型ペースメーカーの植え込みが適用されることもあります。ペースメーカーは、正常よりも脈が遅くなる徐脈時には電気刺激を出して心臓の拍動を調整するもので、脈の状態は心臓の中に留置したリード線を通して察知します。手術で、ライターほどの大きさのペースメーカーを鎖骨の下に埋め込みます。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...