ラベル 病気(せ) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 病気(せ) の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/08/23

🇲🇳性依存症

性的な行為におぼれ、自らのコントロールを失う精神疾患

性依存症とは、セックスに限らず性的な行為におぼれ、自らのコントロールを失う精神疾患。セックス依存症とも呼ばれます。

日本ではいまだ認知度が低いものの、アメリカでは薬物やアルコール依存症と同じく代表的な依存症の一つとして、ホルモン療法などによる治療が行われています。

薬物がやめられない薬物依存症、酒がやめられないアルコール依存症と同じく、性的な行為がやめられない強迫性を持ち、自らの意思で興奮や刺激を求める性衝動をコントロールできなくなります。依存する対象には、実際に相手のある性交渉だけでなく、自慰行為やポルノへの過度な耽溺(たんでき)や収集、強迫的な売買春、乱交、露出、のぞき行為、盗撮、性的ないたずら電話、インターネットを介したアダルト・チャットなどすべての性的な行為が含まれます。

何らかのストレスや落ち込み、心理的な問題などで苦しんでいる状態で、セックスなどの性的な行為によって救われるという経験をすると、その快感を求めて繰り返すことになるのが主な原因。緊張感からの解放、現実やストレスからの逃避、生きていることの自己確認、男らしさ女らしさの証明など、いろいろなものが誘因となります。

性依存症のリスクとしては、性病、金銭的な負担、不倫などによる社会的地位の喪失、性犯罪などによる逮捕、異性関係を巡っての配偶者との不和、子供などの家族への虐待、性行為をしていない時の空虚感、不安感、焦燥感などが挙げられます。

なお、性的な行為への依存を依存症の一つとして位置づけられるのかどうか、また、どのあたりに正常と依存症の境界を引くかなど、アメリカでも1970年代から長い間論争が続いています。依存症ではなく行動制御障害であるという説もあり、性依存症という概念を一切認めないとする考えを持つ人々も存在します。

性依存症の検査と診断と治療

性依存症で苦しんでいる場合は、精神科、心療内科、あるいはメンタルクリニックを受診します。また、各都道府県に設置されている精神保健センターには相談できる部門がありますので、予約の上、精神科医、臨床心理士(カウンセラー)の面接を受けることができます。

医師の側は、依存症に至った原因を探り、薬物療法や精神療法などの方法で矯正を図ります。薬物療法では、精神安定剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠薬などが処方され、精神療法では、臨床心理士によるカウンセリングや催眠療法、各種療法が行われます。

また、同じような境遇の人々が集まり、お互いに影響を与える性依存症の自助グループに参加することが、有効な場合もあります。日本でも小規模ではありますが、首都圏にグループがあり、定期的に集まるなどして個々に快復へ向けた活動を続けています。

🇲🇳精液瘤(精液嚢腫)

男性の精巣上体に液体がたまり、袋状になった嚢腫ができる疾患

精液瘤(りゅう)とは、精巣上体の主に頭部に、液体がたまって袋状になった嚢腫(のうしゅ)ができる疾患。精液嚢腫とも呼ばれます。

精巣上体、すなわち副睾丸(こうがん)は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしている精巣、すなわち睾丸(こうがん)の頭部、および後部に付着しています。小さいコイル管のような形をしていて、精液を収集したり運搬したりする働きがあります。

この精巣上体の細い管腔(かんくう)壁の一部が虚弱になり、伸びて嚢状に膨らみ、精子の混入したミルク状、あるいは透明な液体が充満すると、嚢腫ができます。通常、大きさは直径2センチから3センチほどですが、それよりも大きな場合もあります。

主に性機能が活発な青年期に生じやすいとされ、20歳~50歳代にできます。一般的には症状もなければ、痛みを感じることがなく、非がん性。通常の状態では、精液瘤によって生殖能力が阻害されることもありませんし、大きくなって陰嚢がはれ、違和感や不快感を生じない限りは治療をする必要もありません。

精液瘤の検査と診断と治療

万が一、精液瘤が大きくなって支障が生じるようであれば、医師の判断によって手術で取り除くこともできますので、泌尿器科の専門医を受診します。

医師の診断では、陰嚢にしこりを触れれば精液瘤を疑いますが、小さいものは慢性の副睾丸炎と紛らわしいため、超音波検査で判別します。大きいものは陰嚢がはれて、陰嚢水腫(陰嚢水瘤)との区別が難しいため、針を刺して精液瘤の内容物を採取し、顕微鏡下で検査して精子が発見されれば判別できます。

精液瘤が小さい場合は、様子をみます。治療せずに放っておいても、心配はありません。大きい場合は、手術して摘出します。

🗼生活習慣病

健康に害のある生活習慣を長年続けることで、発症する病気です。「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義され、肥満症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、心臓病、歯周病、高尿酸血症、骨粗鬆(しょう)症、ガンなどが含まれます。生活習慣の悪化で、さまざまな疾患を生じ、各疾患は相互に関連しています。

かつては「成人病」と呼ばれていましたが、加齢よりも生活習慣の要因が大きく、若い人でも発症することから、約40年ぶりに「生活習慣病」と名称が改められました。

🗼生活不活発病(廃用症候群)

体を動かさない状態が続くことが原因で、全身の機能が低下する障害

生活不活発病とは、日常生活が不活発になって体を動かさない状態が続くことが原因で、全身の機能が低下する障害。医学用語では廃用症候群と呼び、廃用は使わないことを意味します。

高齢者や、持病のために安静が必要な人に起こりやすく、入院などが切っ掛けとなることが多くみられますが、災害時の避難生活などでも多発することから、東日本大震災発生後、厚生労働省などは注意を呼び掛けています。

症状としては、歩行、食事、入浴、洗面、トイレなど身の回りの動作が不自由になり、家事や仕事、趣味やスポーツ、人との付き合い、電話やメールで連絡をとるなどの日常活動も低下します。

健常な人でも体を動かさないでいると、意外に早く筋力が落ちたり、関節が固まるなど運動器官の機能低下がみられます。安静による筋力低下は、1週目で20パーセント、2週目で40パーセント、3週目で60パーセントにも及び、1週間の安静により生じた筋力低下を回復するには1カ月かかるともいわれています。特に高齢者では、その範囲が大きく、進行が早くなります。

体を動かさなくなったために起こる機能の低下は、筋肉や関節だけではなく、全身のいろいろの臓器に生じてきます。抑うつ状態、仮性痴呆(ちほう)、偽痴呆などの精神や知能の障害、起立性低血圧、静脈血栓症、床擦れ、沈下性肺炎、尿路結石、尿閉、尿失禁、便秘などが、主な障害として挙げられます。

「年のせい」と思いがちな、いろいろな動作の不自由や体力の衰えが、実はこの生活不活発病によるということも多いのです。また、「病気のため」と思っていることに、実はこの生活不活発病が加わっていることも多いのです。

生活不活発病はいったん起こると悪循環に陥りやすく、回復には相当の時間を要するため、治療よりも予防のほうが大切です。すなわち、動かして起こるリスクより安静にして起こるリスクのほうが高いことを認識し、心身の機能低下を予防しなければなりません。家族や周囲が早期に気付けば、積極的に体を動かさせることで機能の改善、回復も見込めます。

体を動かす用事や機会を増やしながら、自然に脳や体を活性化させたり、腰や脚など下半身の筋肉を保ったりすることが大切。外出する意欲を持てるよう仲間を作るのもよいでしょう。

より進行した高齢者に対しては、トイレまで歩きやすいよう手すりを設置したり、シルバーカーを利用したり、介助者が手を引くなどの方法もあります。ひざの痛みがあるとかがみにくいので、トイレを和式でなく洋式にすると使いやすくなります。それぞれの症状や環境に応じて、安全に配慮しながら工夫を心掛けることです。

🗼性感染症

性感染症(STD=Sexually Transmitted Disease)とは、性行為あるいはその類似行為によって感染する疾患の総称です。性行為感染症とも呼びます。

性感染症に含まれる疾患としては、梅毒、淋(りん)病、軟性下疳(げかん)、第四性病というかつての「性病予防法」の対象とされていた4つのほか、クラミジア感染症、エイズ(後天性免疫不全症候群)、性器ヘルペス、尖圭(せんけい)コンジローム、トリコモナス症、カンジダ症、陰部伝染性軟属腫(しゅ)などが挙げられます。

以前の日本では、性感染症は一般的に性病と呼ばれ、代表的な病気である梅毒や淋病に対して、「性風俗などで遊んだ一部の人達がかかる病気」というイメージが持たれていました。梅毒などは発症すれば気付きやすく、早めに治療ができたため、感染はそれほど拡大せずにすんでいました。

近年の日本では、梅毒や淋病などが少なくなった代わりに、自覚症状のほとんど現れない、新しい性感染症が増えています。クラミジア感染症や性器ヘルペス、尖圭コンジローム、エイズなどは、感染しても顕著な症状が出ないため、気付かないうちに人から人へ、感染の輪を広げるという状況を生み出しています。

とりわけ、今、女性に感染が増えているのがクラミジア感染症。女性の側に自覚症状が現れにくい疾患のため、気付かないうちに重症化しているケースもあります。10代後半~20代後半の若い世代に多く、10代後半の感染者では、女性が男性の2倍以上という統計も、発表されています。

今や、性感染症は一部の人がかかる特別なものではなく、普通に生活していて一度でも性行為をした経験があれば、誰がかかっても不思議ではない病気だといえます。

クラミジア感染症を始めとした性感染症が増加している要因としては、複数のパートナーと性行為をし、パートナーが短期間で変わるといった現代のセックス事情が関係しています。性感染症の予防法や対処法について無知であるという要因も、加わっています。

性感染症の中には、薬で簡単に治らず、慢性化したり、根治しないものもあります。放置すると、不妊症や流産、子宮外妊娠などを引き起こす原因になるものもあります。少しでも心配な人はまず、女性は婦人科、男性は泌尿器科で検査を受けるようにしましょう。

🇯🇵性器クラミジア感染症

クラミジア・トラコマーティスという微生物が性器に感染して起こる性感染症

性器クラミジア感染症とは、クラミジア・トラコマーティスという微生物が性器に感染したことが原因となって、発症する性(行為)感染症。今日の性感染症のうち、日本においても、世界においても最も多い疾患で、人々の間で流行しています。

クラミジア・トラコマーティスが性行為により性器に感染した場合が、性器クラミジア感染症に相当し、口を使った性行為により喉(のど)に感染した場合は、咽頭(いんとう)クラミジア感染症と呼ばれます。

性器クラミジア感染症を発症しても、自覚症状はほとんどありません。感染や発症に気が付かないまま進行しますので、検査による早期発見、早期治療が必要になります。

女性の場合は、ほとんど症状はありませんが、下り物が増える、下り物が黄色くなる、出血がみられる、下腹部に痛みがある、排尿時に痛むといった軽度の症状が現れることもあります。

感染したことに気付かず、治療せずにいると、子宮頚管(けいかん)炎を引き起こし、子宮付属器炎、骨盤腹膜炎になり、将来、卵管の通過障害を起こして不妊症、子宮外妊娠になる恐れがあります。

また、妊婦が感染していると、出産時、新生児が産道を通る際に感染します。感染した新生児は、生後2~3週間ころに結膜炎、生後3~4カ月ころに肺炎を発症する危険性があります。

男性の場合も、全く自覚症状がないか、非常に軽い症状にとどまるケースが大半で、性交の1~3週間後に、尿道に軽い炎症を起こし、排尿時に痛む、透明もしくは白いさらさらした分泌液が出るといった症状が現れることもあります。

症状が現れても治療せずにいると、尿道炎、前立腺(ぜんりつせん)炎、精巣上体炎といった疾患になる恐れがあります。

肛門(こうもん)に感染すると、痛みが起こり、黄色い膿(うみ)と粘液の分泌物が出ます。

性器クラミジア感染症の発症が疑われる際は、まず性感染症かどうかの検査が必要ですので、女性なら婦人科、男性なら泌尿器科の専門医を受診することが勧められます。

また、最近では自宅から郵送で検査できるキットが販売され、コンビニエンスストアの端末やインターネットなどから申し込めるので、これを利用してもいいでしょう。ただし、自分で粘液、粘膜、尿、血液などの検体をきちんと採取できていないと、正確に検査結果が表示されないこともあるので注意が必要です。郵送検査で陽性と判明した場合には、婦人科、泌尿器科を受診することが必要になります。

性器クラミジア感染症の検査と診断と治療

婦人科、泌尿器科の医師による診断では、女性では子宮頸管(けんかん)から採取した分泌物による検査、男性では尿道から採取した分泌物による検査を行い、併せて血液検査を行うこともあります。

分泌物による検査では、クラミジア・トラコマーティスが今いるかどうかがわかります。血液検査では、クラミジア・トラコマーティスに感染したかどうか、クラミジアが活動的でほかの人に感染する可能性が高いかどうかがわかります。

婦人科、泌尿器科の医師による治療では、テトラサイクリン系、マクロライド系、ニューキノロン系の抗生物質(抗生剤、抗菌剤)が有効です。通常は、7~14日間服用します。

症状は数日でなくなることが多いものの、クラミジア・トラコマーティスが完全に死滅していないこともあるので、医師が完治の診断が出すまで指示通り服用する必要があります。

また、性的パートナーの同時治療も大切です。どちら一方が治療をしても、性行為で感染が往復するピンポン感染を来し、いつまでも治らないことがあるからです。

🇯🇵性器結核

結核菌が男女の生殖器に感染することによって起こる感染症で、肺外結核の一種

性器結核とは、結核菌が男女の生殖器に感染することによって起こる感染症。肺外結核の一種です。

原因菌である結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌です。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、そして男女の生殖器にも起こります。

男性の性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、精巣(睾丸〔こうがん〕)、精巣上体(副睾丸)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って前立腺などに逆行性に感染し、炎症を起こして、硬い凹凸のあるはれを生じます。

男性の性器結核で感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣などの痛み、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、精巣上体の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、精巣の結核は精巣機能の障害から、それぞれ男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

女性の性器結核は、結核菌が卵管、子宮内膜、卵巣、腟(ちつ)壁に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って卵管、子宮内膜、卵巣などに連続的に感染することが多く、一方では尿路の結核に続発して卵管などに逆行性に感染したり、男性の性器結核者から膣口を通して直接的に感染したりします。

女性性器結核は、粟粒結核を作り、滲出(しんしゅつ)性病変と増殖性病変とを形成しながら、次第に周囲の組織と癒着していきます。このため、卵管の狭窄(きょうさく)や癒着が起こり、卵管に腫瘤(しゅりゅう)や高度の癒着が生じます。また、子宮内膜に炎症が起こると、受精卵や卵子の着床障害を引き起こすことがあります。

そのため、不妊症や月経異常、不正出血、下腹部痛、腹部の膨満感、腰痛などの症状がみられることがあります。

しかし、女性性器結核は、ほとんどが自覚症状がないままに経過するので、不妊症の検査を受けて発見されることもあります。

結核が減少している近年では、男女ともに、結核の二次的発症である性器結核の頻度は低下しています。

性器結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による男性の性器結核の診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。

前立腺や精巣、精巣上体が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、感染が進行すると精巣と精巣上体の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

性器結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立腺や精巣にがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立腺がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科、あるいは産科、婦人科の医師による女性の性器結核の診断では、月経時の経血から結核菌が存在するかどうかを調べる月経血培養検査を行います。

通常生理が始まって1~3日目の経血が最も多くなる日を検査日として、膣内にたまっている経血を注射器などで採取して数十時間培養し、含まれている菌の種類や量を調べます。結核菌が存在する場合、性器結核を発症していなくても月経不順や無月経などになっていることもあります。

泌尿器科、あるいは産科、婦人科の医師による性器結核の治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

性器結核は治療すれば治りますから、これが原因となっていた不妊であれば、妊娠する可能性も高くなります。

🇯🇵性器閉鎖症

先天的に、あるいは後天的に女性性管の一部が閉鎖した状態

性器閉鎖症とは、処女膜、腟(ちつ)、子宮などの女性性管の一部が閉鎖した状態。鎖陰(さいん)とも呼ばれます。

先天的に発生することが多いものの、後天的に外傷や炎症などのために起こることもあります。性器閉鎖症に属する主なものに、処女膜閉鎖症、膣閉鎖症(腟横隔)、膣狭窄(きょうさく)症、膣欠損症があります。

処女膜閉鎖症は、腟口部を取り囲むヒダ状の器官で通常、中央部は開いているはずの処女膜が、完全にふさがっている状態。そのために閉鎖した腟内や子宮、卵管に月経血、分泌物などがたまり、下腹部痛を起こしたり、しこりを生じたり、腰痛を起こしたりします。また、膀胱(ぼうこう)刺激症状や排便痛を起こすこともあります。

腟閉鎖症は、ほとんどが膣の上部3分の1と膣の下部3分の2との境界部に好発し、腎臓(じんぞう)の奇形を合併することもあります。処女膜閉鎖症と同様、思春期以降に潜伏月経が起こっても、流出路が閉鎖しているために月経血が排出されずに腟内や子宮、卵管にたまり、月1回、定期的にかなり強い下腹部痛を起こします。

月経血の貯留が高度になると、下腹部にしこりを感じ、排尿障害、排便障害、腰痛、持続的な腹痛が起こることもあります。大量の貯留が長期間放置されると、子宮や膣が過伸展、変形して、後に不妊症の原因になることもあります。

膣狭窄症は、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じる先天性のものと、小児期のジフテリアや、はしか(麻疹〔ましん〕)などによる膣炎の後遺症として生じた癒着による後天性のものとがあります。狭窄の程度によって全く症状を欠く場合もありますが、高度の場合は月経血の排出障害、分泌物の貯留を起こしたり、膣炎が起きたり、異常な下り物をみることもあります。膣が狭いために、性行為に問題を抱えます。

処女膜閉鎖症、膣閉鎖症、膣狭窄症はいずれも、思春期に初経がこないため婦人科を受診し、発見される例がほとんどです。

腟欠損症は、先天的に女性の腟の一部、または全部が欠損した状態で、腟や子宮の異常がさまざまな程度に起こります。染色体は正常女性型で、卵巣はほとんど正常にあり、女性ホルモンも正常に出ています。外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常です。

膣狭窄症と同様、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じ、子宮はわずかに痕跡(こんせき)を残す程度にしか発育せず、腟も長さが2~3センチと短いか、全くない状態になります。はっきりした原因はまだわかっていませんが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなり、正常な発生ができなくなると推測されています。

腟欠損症は、医学的には上部腟欠損、下部腟欠損、全腟欠損に分類されます。頻度は4000~5000人に1人とされ、そのうち95パーセントは月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。

全腟欠損で機能性子宮を持たない場合をロキタンスキー症候群と呼び、腟欠損の中で最も頻度が高いものです。月経機能を失っている状態で、月経血の貯留による症状はなく、無月経がほぼ唯一の症状となります。卵巣からの排卵はありますが、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。

一部の腟欠損で機能性子宮を持つ場合には、思春期以降、月経に伴って子宮や卵管への月経血の貯留を起こすため、月経血をみないまま周期的な腹痛が出現する月経モリミナという症状が現れます。

また、機能性子宮の有無にかかわらず、普通の性行為はできません。まれに、骨の異常があることもあります。

腟欠損症に気付いたら、婦人科医、ないし産婦人科医を受診してください。

性器閉鎖症の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは小児科の医師による性器閉鎖症の診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。

医師による処女膜閉鎖症、腟閉鎖症(腟横隔)の治療は、閉鎖部位を切開して、月経血や分泌物などの通り道を作れば解決し、後遺症もなく治ります。軽度の処女膜閉鎖症では、簡単な十字切開手術ですみます。膣閉鎖症では、膜様閉鎖では切開のみで問題ありませんが、閉鎖部が厚い場合には輪状切開を行います。この輪状切開を行った場合には、手術後の瘢痕(はんこん)性委縮に注意する必要があります。

処女膜閉鎖症、膣閉鎖症の場合には、閉鎖している部分を切開して完治するので性交渉も可能になります。卵巣および子宮は正常なので、その後の月経も含めて問題はなくなり、正常な妊娠、出産も可能になります。ただし、長期間放置して診断が遅れた場合には、卵管卵巣の壊死(えし)や破裂による腹膜炎を来すことがあります。

膣狭窄症の治療は、程度に応じて頸管(けいかん)拡張器による膣腔(ちつくう)の拡大、狭窄部の小切開、さらに全体的膣形成までさまざまな手術が行われます。

腟欠損症の治療では、性行為ができるように人工的に膣を造る造腟手術を行います。子宮に異常を伴う場合には妊娠が不可能な場合もあり、造腟手術により性行為を可能にして精神的不具感をいやすことが治療の主眼となります。手術は、思春期以降の性的関係を持つ時期を目安に行われます。

造腟手術には数多くの術式があり、今なおさまざまな工夫が試みられています。主な術式は、フランク法、マッキンドー法、ダビドフ法、ルーゲ法の4つです。

フランク法は、腟前庭(ぜんてい)をヘガール持針器などで圧伸して腟腔を形成したのち、その腟腔を拡張する方法。マッキンドー法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、皮膚移植により腟壁を形成する方法。ダビドフ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、骨盤腹膜を利用して腟壁を形成する方法。ルーゲ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、開腹してS状結腸を切り離し、腟壁として利用する方法。

以上4つの方法が従来行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術が行われることも増えてきました。患者の体にかかる負担を軽減し、骨盤腹膜やS状結腸を使った手術が可能となっています。

このような手術の後には、膣管の状態を維持する必要があります。定期的な性交渉やプロテーゼ(腟ダイレーター)により、状態を保たなければいけません。プロテーゼ(腟ダイレーター)とは、筒状の拡張器具のことを指し、皮膚を伸展させて腟管を形成する目的で使用されます。

🇰🇵性器ヘルペス症

単純ヘルペスウイルスによって発症する性感染症

性器ヘルペス症とは、単純ヘルペスウイルスによって発症する疾患。主に性行為によって、性器へ感染して起こります。

女性では性器の外側の部分である外陰の病変が目立つため、外陰ヘルペスとも呼ばれますが、病変が膣(ちつ)や子宮頸部(けいぶ)に及ぶこともあります。単純ヘルペスウイルスには1型と2型があり、1型は口や目などの上半身に感染することが多く、2型は性器などの下半身に感染することが多いのが一般的です。

症状の出方は2通りあり、痛みと発熱を伴う急性型(初発型)と、感染後に再発を繰り返す再発型とがあります。単純ヘルペスウイルスの初めての感染によって起こる急性型は、性行為などの感染の機会があってから、多くは1週間以内に発症します。主症状である痛みが出る前に、外陰部のかゆみや違和感を感じることもよくあります。

症状は強く、外陰部のかなり広い部分に水疱(すいほう)や潰瘍(かいよう)ができて赤くただれ、非常に強い痛みがあります。発熱したり、全身がだるいなどの症状を伴うこともあります。病変は女性では外陰部や子宮頚部に現れ、男性では包皮、冠状溝、亀頭に現れます。

女性では強い痛みのために歩行や排尿が難しくなって、入院が必要になることもあります。太ももの付け根のリンパ節が痛みを伴ってはれることも、大部分の人で認められ、髄膜炎を合併することもあります。無治療では、治癒までに2~4 週間近くを要します。

単純ヘルペスウイルスはいったん感染すると、完全には排除されずに神経節に潜んでいます。これが心身の疲労や月経、性交などを切っ掛けにして再び活性化すると、性器ヘルペスの再発型を発症し、単純ヘルペスウイルスが神経を通って粘膜や皮膚に現れて病変を起こします。

再発型の症状は比較的軽く、小さい潰瘍やいくつか集まった小さな水疱ができます。発熱などの全身症状や、リンパ節のはれなどは伴わないことがほとんど。多くは1週間以内に治ります。 再発の回数は月2~3回から年1~2 回とさまざまで、年齢を重ねるにつれて、再発の回数は減少してくるのが一般的。

性器ヘルペスの問題点は、繰り返し再発して根治が困難であるため、発症者にとって精神的苦痛が大きいことと、感染しても発症せず無症状でウイルスを排出している場合も多く、本人も疾患に気付かないまま次の相手に移すために予防が困難であることにあります。

性の自由化が進む中で、先進国、開発途上国を問わず、性器ヘルペスは世界的に増加の一途をたどっていて、日本における性感染症(STD)の中では、クラミジア感染症に次いで発症が多くなっています。

また、妊娠末期に性器ヘルペス症になると、乳児が産道感染して重症になり、死亡することが多いので、帝王切開をしなければなりません。自分の手についた単純ヘルペスウイルスが目に入ると、角膜ヘルペスなどを起こす危険性もあります。

性器ヘルペス症の検査と診断と治療

急性型の場合には症状が急激に現れるため、男女ともに性器などに痛みのある水疱あるいは潰瘍を認めたら、泌尿器科、婦人科への受診が勧められます。再発型で症状が軽い場合でも、性感染症であるため、治るまでは性行為は控えなければなりません。

医師による検査では、女性では外陰部の浅い潰瘍または水疱が診断のポイントになります。特に急性型では、大陰唇の内側と小陰唇に左右対称に病変ができることが多いのも特徴です。

病変部から採取した細胞に多核の巨細胞を認めたり、単純ヘルペスウイルス抗原を検出する補助診断法が有力ですが、感度が低いことが難点です。単純ヘルペスウイルスに対する抗体は、初感染では急性期には陰性で、2〜3週間後に陽性になります。再発型の場合はほとんど変化しません。区別すべき疾患には、外陰部に潰瘍ができる梅毒、急性外陰潰瘍、外陰がんなどがあります。

症状が軽いものには、単純ヘルペスウイルスに効く薬の入った軟こうを塗るだけで治ります。少し状態が進んだものには、アシクロビルやバラシクロビルなどの抗ウイルス剤の注射や飲み薬が処方され、水疱や潰瘍には軟こうが処方されます。高熱や激痛などの重症のものには、点滴で静脈注射をすることになります。

急性型は通常、1〜2週間のうちに症状が治まりますが、体からウイルスがなくなるわけではないため、完治は難しく、体力が落ちている際などに再発しやすくなります。再発した場合は病変も小さいので、軟こうによる治療で多くの場合は十分です。飲み薬による治療も行われますが、再発後少なくとも2日以内に治療を開始しないと有効でないといわれています。

🇰🇵性交不能症

精神的、ないし身体的な原因で満足な性行為が行えない状態

性交不能症とは、性的な刺激を受けても、陰茎の形や大きさが不足したり、勃起(ぼっき)を射精時まで維持できなかったりして、満足な性行為が行えない状態。勃起障害、勃起不全、インポテンツ、ED(Erectile Dysfunction)とも呼ばれます。

男性の陰茎の内部の中心には、スポンジのような構造をした左右一対の陰茎海綿体があり、この海綿体が硬く膨張して勃起は起こります。平静時には、陰茎は委縮と勃起の中間の状態にあります。活動の神経である交感神経系のシグナルと、リラックスの神経である副交感神経系のシグナルの両方が、互いに作用していることによります。

性的な刺激を受けた場合や、性的なことを想像した場合に大脳皮質が興奮すると、その信号が脊髄(せきずい)や末梢(まっしょう)神経を通って、陰茎海綿体神経に伝達されます。一酸化窒素が分泌され、さらにサイクリックGMP(グアノシン一リン酸)が合成されて、陰茎海綿体にある平滑筋が緩みます。このために、血液が一気に海綿体へと流入します。

すると、陰茎海綿体を覆っている白膜が引き伸ばされ、静脈を圧迫して血液の出口をふさぐために、流入した血液が海綿体中に閉じ込められた状態になって、陰茎が性行為に適当な硬さに硬直して、勃起が完成します。これらの流れのうちどこかに異常が起こった状態が、性交不能症です。

性交不能症は心因性(機能性)の障害と、身体的(器質性)の障害に大別することができますが、大部分は前者です。

心因性(機能性)障害は、基本的には体に異常がないものの、精神的な原因で勃起の障害を来します。具体的には、不安、ストレス、心の病、性器や性行為能力への不信、家の構造上の問題などが原因となります。勃起が起こるには基本的に性的な刺激が必要で、精神的ストレスなどがある時はいくら刺激を受けても、勃起を起こす大脳中枢神経、自律神経、ホルモン系などに悪影響を及ぼし、勃起のメカニズムが正常に作用しなくなります。

身体的(器質性)障害では、糖尿病によるものが著しく増加しています。そのほか、脊髄損傷、脳障害、動脈硬化、高血圧、泌尿器疾患、内分泌機能障害、薬の副作用が、原因となっています。内分泌機能障害の一つには、男性ホルモンの低下が挙げられます。

性交不能症の検査と診断と治療

現在のところ、性交不能症には絶対的な解決策は存在しません。 状態が緊急を要したり、症状が重い場合は、医師へ相談することも選択肢の一つです。

医師による心因性(機能性)障害の場合の治療は、カウンセリング、性的教育などが主体となりますが、薬物療法を用いることもしばしばあります。

身体的(器質性)障害の場合は、陰圧式勃起補助具の使用や、陰茎プロステーシスの海綿体内埋め込み手術などがありますが、保険診療では認められていません。

性交不能症の治療薬としては、厚生労働省にも認可されているバイアグラ(クエン酸シルデナフィル)や、レビトラ(バルデナフィル)が有名です。バイアグラの作用は、勃起のメカニズムのうちでサイクリックGMPの代謝を抑制します。このことで海綿体平滑筋の弛緩(しかん)が増強されるために、勃起も増強されます。つまり、勃起の増強剤であり、決して万能の薬ではありません。

勃起に関する神経や血管の完全障害の人には、バイアグラは全く効果がありません。また、心臓病でニトログリセリンなどの血管拡張剤を使用している人では、死亡ケースも出ており使用できません。動脈硬化の強い人や高齢者などの使用にも、十分な注意が必要です。専門の医師にも相談の上、使用することが大切となります。

なお、生活習慣の改善、禁煙・禁酒の実行、性行為時のちょっとしたアイデアで、性交不能症を解決したというケースもあります。

🇰🇵精索静脈瘤

精巣の上の精索部にできる静脈の拡張

精索静脈瘤(せいさくじょうみゃくりゅう)とは、精巣の上の精索部の静脈が拡張し、静脈瘤ができた状態。後天性の男性不妊症の主要な原因となっています。

静脈には、血液の逆流を防ぐ弁があります。精索内の静脈弁に障害があると、腎(じん)静脈から内精索静脈へ血液が逆流することにより、陰嚢(いんのう)上部にある精索の静脈(蔓〈つる〉状静脈叢〈そう〉)が蛇行して、こぶ状に拡張し、うっ血します。その程度が強い場合は、陰嚢内に腫瘤(しゅりゅう)を形成します。

この精索静脈瘤の大部分は、左側に生じます。左側の精索静脈は右に比べて長く、左の腎静脈へと合流していますが、還流障害が生じて静脈血が停滞、逆流する原因としては、静脈弁の先天性不全や、左腎静脈が上腸間膜動脈により圧迫されることが考えられています。精索静脈のうっ血により、陰嚢内の温度が上昇して、体温より2度ほど低い温度でよく機能する精巣の発育不全、委縮、機能低下、精子の形成不全、男性ホルモンを作るライディッヒ細胞の機能の低下などを引き起こして生殖機能が損なわれることで、男性不妊症の原因になります。

精索静脈瘤は、一般の健康な青年男性の10〜15パーセントに認められるのに対し、男性不妊症の人では20~40パーセントと高率に認められます。思春期以降に多くみられますが、小児にもみられます。大抵は無症状です。時には、陰嚢や鼠径(そけい)部の痛みや突っ張り感などの不快な症状を生じる場合もあります。

精索静脈瘤の検査と診断と治療

一般には、視診と触診にて診断されます。精巣の上部に腫瘤を触れたり、陰嚢や鼠径部の痛みを認めることもあります。数分間立位して腹圧をかけると、静脈の拡張がはっきりします。立位で容易に静脈瘤が触知できたり、陰嚢皮膚ごしに静脈瘤が見えることもあります。 片側の精巣サイズが小さいこともあります。アイソトープを使った診断法もありますが、通常は視診、触診と超音波検査で十分診断できます。

治療は、外科手術によります。精索静脈瘤のある不妊男性は、以下の4つの項目すべてを満たす場合に手術適応とされます。1、夫婦が不妊症を認識している。2、妻の妊娠機能が正常、または妻の不妊原因が治療可能な場合。3、精索静脈瘤が触知される、または触知が疑われ超音波検査で確認できた場合。4、精液所見が悪い場合。

また、精液所見が悪く精索静脈瘤のある成人男性でいずれ子供が欲しいと考えている場合や、精索静脈瘤があり陰嚢や鼠径部の痛みや違和感がある場合も、手術が考慮されます。 思春期の男性でも、片側の精巣サイズが小さくなっている場合には、将来の不妊を予防するため手術が考慮されます。片側の精巣サイズが小さくなっていない場合は、年1回の診察と精液検査を行います。

精索静脈瘤の外科手術では、病変のある静脈を縛る結紮(けっさつ)が行われます。具体的には、精索静脈高位結紮術、腹腔(ふくくう)鏡下精索静脈結紮術、顕微鏡下精索静脈低位結紮術などがありますが、精索静脈高位結紮術と顕微鏡下精索静脈低位結紮術が一般的に行われています。

精索静脈高位結紮術は最も多く行われている手術法で、腹部横切開で後腹膜腔に達し、精索静脈を結紮します。精索静脈が1〜2本と少なく、手技が簡単です。精索動脈やリンパ管の一部も同時に結紮しますが、動脈は下のほうにもあるので問題はありません。再発の可能性は少ないながら存在し、これは外精索静脈の逆流があるまれな場合です。時に、陰嚢水腫を合併しますが、リンパ管の結紮の影響の可能性があります。高位の精索動脈やリンパ管を温存する手術方法もあります。麻酔は全身麻酔あるいは下半身麻酔で、3泊4日程度の入院で行われます。退院後の事務仕事程度ならすぐに可能ですが、腹筋の間を入って手術するので腹筋を使う運動は3週間できません。

顕微鏡下精索静脈低位結紮術は、手術用顕微鏡とドプラ血流計を使用して、陰嚢上部または鼠径部横を切開し、精索静脈を結紮します。精索静脈が下方にあるため枝分かれが多く、結紮すべき静脈の数が多くなります。麻酔は局所麻酔で、手術時間は約2時間のため、日帰り手術も可能。手術直後は痛みのために歩きにくくても、翌日から事務仕事程度ならすぐに可能で、痛みは通常数日で軽くなります。傷跡は小さく、特に陰嚢上部切開ではほとんど傷跡が目立ちません。1週間は陰嚢がはれる場合があっても、陰嚢水腫の合併はほとんどありません。

精索静脈瘤手術により、精液所見は60~70パーセントで改善し、30~50パーセントでパートナーの妊娠が得られるといわれています。手術後の精液検査は、3カ月後に行われます。精子の作り始めから精子として射出されるまで、約3カ月かかるためです。

🇰🇷精子奇形症

射出精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態

精子奇形症とは、射出精液に含まれる精子の96パーセント以上が形態の異常を伴う状態。奇形精子症とも呼ばれます。

男性の誰(だれ)しも精子の100パーセントが正常な形態ということはありませんが、形態の異常を伴う奇形の精子が多く、正常な形態の精子が4パーセント未満の場合は、精子奇形症に相当します。

精子には、精液中の数はもちろんのこと、濃度、運動率、奇形率などさまざまな要素があります。その中でも精子の奇形率が高い場合、日常生活におけるパートナーの妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は、精子の奇形のパターンによって、大きく2つに分類されます。1つは尾部の奇形、2つ目は頭部の奇形です。

2つのうち、頭部が明らかに小さい、異常な形態をしているなど頭部の奇形に関しては、遺伝子情報である核DNAを含有する頭部に奇形があるため、受精自体が非常に困難になり、妊娠率が非常に低くなります。精子尾部の奇形に関しても、結合して個体を生成するために卵子を目指し、鞭毛(べんもう)を振動させて泳いでいく運動能力を尾部が担っているため、妊娠率の低下が引き起こされます。

精子奇形症は原因不明であることが多く、精索静脈瘤(りゅう)、逆行性射精、染色体異常、過度なストレスなどが原因となって発生することもあります。

精子奇形症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、4~5日間の禁欲後に、マスターベーションにより精液を採取し、精液検査とクルーガーテストを行って判断します。

クルーガーテストでは、特殊な溶液で精子を色付けして、奇形率と奇形のパターン、あるいは正常な形態の精子がどれだけいるかを顕微鏡で調べます。

泌尿器科の医師による治療では、原因となる疾患があれば、その治癒をまず図ります。

パートナーの妊娠を期待する場合は、できる限り状態のよい精子を選んで、人工授精や体外受精、顕微授精を試みます。正常な形態の精子が15パーセント以上であれば自然妊娠が期待できますが、4パーセント未満である精子奇形症では自然妊娠が見込めないためです。

通常、顕微授精を試み、場合によって体外受精から試みたり、パートナーが20歳代と若くて不妊症がなければ人工授精から試みたりすることもあります。

射出精子中には奇形精子しかいない場合は、精巣上体精子回収法を行って、精巣上体から正常な形態で運動良好な精子を回収して顕微授精を試みます。精巣上体から回収した精子も奇形精子であった場合もしくは精子が見付からない場合は、精巣生検を行って、精巣から後期精子細胞を回収して顕微授精を試みます。

🇰🇷精子死滅症

男性の射出精液中に存在する精子のほとんどが死んでいる状態

精子死滅症とは、男性の射出精液中に精子を認めるものの、その精子が全く動いておらず、しかもほとんどが死んでいる状態。死滅精子症とも呼ばれます。

精液検査における精子濃度には問題はないものの、精子のほとんどが死滅してしまっているという状態です。精子不動症とともに重度の精子無力症であり、精子不動症では精子の運動率が数パーセントに低下した状態にあるのに対して、精子死滅症では運動率が0パーセントに低下した状態に陥っています。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率が低下し、真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

重度の精子無力症である精子不動症の多くでは、少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。

同じく重度の精子無力症である死滅精子症では、すべての精子が全く動いていないばかりか、ほとんどの精子が死んでいます。

運動能力を持つ男性の精子は、精巣(睾丸〔こうがん〕)の中で精原細胞から分化して作られ、精子を運ぶ精管が精巣のすぐ近くで膨れている精巣上体(副睾丸)において成熟しますので、この精子を作る造精機能や造精過程に何らかの障害があると、ほとんどの精子が死んでしまうことになります。

精巣の中で精子となる細胞自体にもともと何らかの原因があるケースと、精巣上体の分泌液に異常があって精子が死んでしまうケースなどがあります。それがどの過程で起こり、なぜ起こるのかについては、不明な点が多く残っています。

精子死滅症になる原因は、精子無力症や精子不動症と同じで先天的なものが大半を占めますが、前立腺(ぜんりつせん)炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)などが原因になっているケースもあります。

精巣の細胞自体に原因がある場合、顕微授精を行っても受精率は大変低くなります。分泌液に異常がある場合は、精巣から直接精子を採取することができれば、顕微授精も可能で、受精、妊娠も期待できます。

精子死滅症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に0パーセントの場合に精子死滅症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが受精、妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の受精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に採取した精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。精子死滅症の場合は3回程度精液を採取し、その中に1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子死滅症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。

🇰🇷精子膿症

精液の中に多数の白血球が混ざっている状態で、精液が黄色く変色

精子膿症(のうしょう)とは、精液1mlの中に、血液の細胞成分である白血球が10万個以上混ざっている状態。膿(のう)精液症とも呼ばれます。

精液は約9割を占める液体成分の精漿(せいしょう)と細胞成分である精子によって構成されており、通常は赤血球や白血球などの血液の細胞成分は混入しないように作られています。精液の中に白血球が混ざると、精液が黄色く変色します。また、精子の運動率が著しく低下し、日常生活におけるパートナーの妊娠率が低下します。

精子無力症を合併しているケースでは、男性不妊症につながることもあります。さらに、白血球から分泌される炎症物質によって、精子頭部に含有されているDNAがダメージを受け、妊娠しても流産の原因になることもあります。

精子膿症になる原因は、クラミジアという微生物や、大腸菌、結核菌などの細菌への感染による精嚢腺(せいのうせん)、前立腺(ぜんりつせん)、尿道、精路などの炎症が一般的で、防衛機能である白血球が増加して精液の中に混ざることになります。

性交渉でクラミジアに感染した場合は、精子膿症を起こすとともに、初期の段階で排尿痛、残尿感、違和感を感じることがあり、さらに進行すると、精巣(睾丸〔こうがん〕)がはれたり、熱が出たりします。

細菌への感染による炎症は自然治癒することもありますが、精路全体が炎症を起こしている場合などは完治までに非常に長い時間がかかります。

精液が黄色く変色したまま放置していると、精子の運動能力が悪化していき、精子無力症を合併することもありますので、泌尿器科を受診することが勧められます。クラミジアに感染した場合は、パートナーも感染している可能性もあるため、一緒に受診することが勧められます。

精子膿症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、精液検査を行い、射出精液内に混入している白血球の程度を調べます。

泌尿器科の医師による治療では、抗生物質を1~2週間処方して、精子膿症の原因となる感染症による炎症を抑え、精液検査で精液の所見が改善したかどうかを確認します。尿道、精路などに洗浄液を通して洗浄することもあります。

ほかに不妊原因がない場合は、精液に混ざっている白血球の数値が正常値に戻れば、パートナーの自然妊娠も可能となります。

精液を検査して白血球の混入が著しい場合、精液を洗浄して人工授精や体外受精をする方法も行われますが、精子の運動能力が著しく悪化していて、胚盤胞(はいばんほう)と呼ばれる着床前の状態への到達率も低いので、受精率は非常に低くなります。

🇹🇼精子不動症

ほとんどの精子の動きがない状態で、受精障害の原因に

精子不動症とは、男性の射出精液中に精子を認めるものの、ほとんどの精子の動きがない状態。重度の精子無力症であり、精子の運動率が低下した状態にあります。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率が低下し、真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

重度の精子無力症である精子不動症の多くでは、少なくとも何パーセントかは動いています。中には、すべての精子が全く動いていないというケースもあります。

例えば、常染色体の劣勢遺伝でカルタゲナー症候群を発症した人では、慢性副鼻腔(びくう)炎、右胸心、気管支拡張症を合併していて、精子の鞭毛のみならず全身の線毛の機能障害が特徴的で、精子も完全に不動化しています。

精子不動症で動いていない精子には、生きている精子と死んでいる精子の2通りがあります。

精子が不動化する原因は、尾部の鞭毛を構成している中心部分の2本、および周囲の9本の軸糸の配列が壊れていて、運動のエネルギー源となる中片部のミトコンドリア鞘(しょう)の発育が不十分なためです。

精子不動症になってしまう原因は、精子無力症と同じで先天的なものが大半を占めますが、前立腺(ぜんりつせん)炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)などが原因になっているケースもあります。

精子不動症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に数パーセント以下の場合に精子不動症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、精索静脈瘤のように明確な原因がわかっている場合は、その治療を行って造精機能を回復することで、日常生活におけるパートナーが妊娠できる可能性を高めます。

明確な原因がわからない場合は、飲み薬や漢方薬の服用、あるいは外科手術で精子の運動率を改善する効果は期待できず、通常の授精は困難であるため、顕微授精か体外受精を用いて、妊娠を期待します。

まずHOS(ホス)テストを行い、浸透圧の異なる培養液に精子をつけることによって、尾部に変化が起こる生きている精子と死んでいる精子を鑑別し、生きている精子のみを選別します。1個でも生きている精子を見付けられれば、顕微授精が可能なため妊娠も期待できます。

HOSテストを行っても精液中に生きている精子を見付けられなかった場合は、精巣内精子回収法や外科的精巣上体精子回収法などを行って、精巣や精巣上体から生きている精子を見付けていきます。

それでも生きている精子を見付けられなった場合は、精子不動症の人の精子での妊娠は難しくなり、女性側に特に大きな不妊原因がない場合などは、非配偶者間人工授精という方法もあります。とても特殊な治療法となりますので、パートナー間でよく話し合ってから決めることです。

🇹🇼精子無力症

卵子と結合して個体を生成する精子の運動率が低下した状態

精子無力症とは、男性の射出精液内の精子の運動率が低下した状態。

運動能力を持つ精子は、中片部と尾部の鞭毛(べんもう)を振動させて動かし、結合して個体を生成するために卵子を目指して泳いでいきますので、運動率の低下、とりわけ真っすぐ前進し、高速で泳ぐ精子の割合が低いことは、卵子へ到達する精子が少ないということ、また到達しても鞭毛を振れずに卵子の透明体を通過できないということにつながり、受精障害となります。

この精子無力症は、軽度精子無力症、中等度精子無力症、重症度精子無力症に分けられます。運動率に関しては、正常な精子ではだいたい70~80パーセント以上が運動しているのに対して、軽度精子無力症では50パーセント程度、中等度精子無力症では20~40パーセント、重症度精子無力症は10パーセント以下に低下しています。

精子無力症の原因は、先天的なものが大半を占めますが、前立腺(ぜんりつせん)炎、おたふく風邪による精巣炎、高熱による精巣炎、精索静脈瘤(りゅう)などが原因になっているケースもあります。なお、長期間の禁欲も精子の運動率を低下させます。

精子無力症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、間隔を空けながら精液検査を数回行い、射出精液内に存在する精子の運動率が常に正常値を下回る場合に精子無力症と判断します。

泌尿器科の医師による治療では、軽度精子無力症の場合には、飲み薬や漢方薬を処方しながら、定期的に精液検査を行い、運動率が改善しているかどうか様子をみる場合もあります。精子を作るのに要する期間が74日間、その精子が運動能力を獲得するのに要する期間が14日間ですので、少なくとも3カ月以上は薬の処方を継続します。

薬の処方で精子の運動率に変化がみられないケースはもちろん、運動率が改善しても自然妊娠に至らないケースでは、人工授精などを用いる不妊治療を併用し、妊娠を期待します。

中等度精子無力症と重症度精子無力症の場合には、精子の運動率を改善する効果はあまり期待できないため、中等度精子無力症では人工授精か体外受精、高度精子無力症では体外受精か顕微授精を用いて、妊娠を期待します。

🇹🇼正常圧水頭症

頭蓋内の圧力が上がった症状を示さない水頭症

正常圧水頭症とは、脳の中や脊髄(せきずい)の表面を流れる脳脊髄液(髄液)が頭蓋(とうがい)内にたまり、脳の内側で4つに分かれて存在する脳室が正常より大きくなり、周りの脳を圧迫する疾患。

脳脊髄液は、脳全体を覆うように循環して脳保護液として働き、脳を浮かせて頭部が急激に動くことによる衝撃を柔らげたり、部分的な脳の活動によって産生される物質を取り除く働きも併せ持つと考えられています。脳室で血液の成分から産生されて、1日で3回ほど全体が入れ替わる程度のスピードで循環し、最終的には、くも膜という脳の保護膜と脳との間に広がっている静脈洞という部位から吸収され、血液へ戻ってゆきます。

水頭症は、この脳脊髄液の産生、循環、吸収などいずれかが障害されることで、脳内の圧力(脳圧)が高まり、さまざまな症状が出る疾患です。

大きく分けて、胎児期に障害が生じる先天性水頭症と、生後に脳腫瘍(しゅよう)、がん、細菌・ウイルス・寄生虫などの感染で起こる髄膜炎、頭部外傷、脳動脈瘤(りゅう)の破裂や高血圧が原因で起こる脳内出血、脳室内出血、脳室内腫瘍などによって起こる後天性水頭症があります。

後天性水頭症では、脳圧が正常であるにもかかわらず症状が出現する場合もあります。これが正常圧水頭症であり、さらに、くも膜下出血、髄膜炎などといった明らかな原因がある続発性(症候性)正常圧水頭症と、明らかな原因が不明な特発性正常圧水頭症に分けられます。

後者の特発性正常圧水頭症は、高齢者に多く発症し、その症状が認知症と混同されやすいことがあります。物忘れ外来を受診する人の3パーセント程度、認知症と診断されている患者の5〜6パーセントで、特発性正常圧水頭症が疑われるといわれています。早期に適切な治療を受ければ、症状が改善する可能性が高いため、特発性正常圧水頭症は「治る認知症」ともいわれています。

特徴的な症状は、歩行障害、認知障害、尿失禁の3兆候。発症者の約60パーセントに3兆候がみられますが、ほかにも表情が乏しくなったり、声が出にくくなったりすることもあります。

3兆候では、最初に歩行障害が現れることが多いとされます。足を左右に広げ、すり足や小刻みな歩き方になるのが特徴で、転倒しやすくなるほか、次第に第一歩が出なくなり立っている状態を維持できなくなります。

認知障害では、思考や行動が緩慢になり、放置すると物忘れがひどくなって、興味や関心の低下、さらには無反応へと進行します。アルツハイマー病のように、自宅から勝手に出てしまい近所をウロウロするような徘徊(はいかい)は認めません。また、パーキンソン病のように、手の震えは出ません。

尿失禁には、歩行障害や認知障害も影響しており、尿意切迫感や頻尿が出現することもあります。

正常圧水頭症の診断は、神経を専門とする内科や脳外科、脳神経外科が行います。歩行の不自由さに、物忘れとトイレの問題などが加わって疾患が進行してしまうと、治療効果が少なくなりますので、早めの受診が勧められます。

正常圧水頭症の検査と診断と治療

内科、脳外科、脳神経外科の医師による診断では、頭部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などの画像検査を行います。脳脊髄液のたまりと脳室の拡大が確認できれば正常圧水頭症が疑われますが、アルツハイマー病などとの鑑別が難しい場合もあり、両者が併存することもあります。

そのため、腰椎(ようつい)から髄液を20〜30ミリリットル抜き取って症状の変化を調べるタップテストを行います。タップテストによって、症状が1~2日程度で軽くなれば、手術で改善する可能性が高いと考えられます。

内科、脳外科、脳神経外科の医師による治療では、タップテストで髄液を抜き取って反応があった場合は、シャントと呼ばれる手術を行います。

本来の脳脊髄液の流れの一部分から、シリコンでできたシャントチューブと呼ばれる細い管を用いて、頭以外の腹腔(ふくこう)や心房などへ余分な脳脊髄液を半永久的に流す仕組みを作ります。もしくは、できるだけ脳を傷付けないために、腰椎から腹腔へシャントチューブを通して、余分な髄液を半永久的に流す仕組みを作ります。

シャント手術後の特発性正常圧水頭症で示している症状の改善度は、治療の時期や症状の程度によって異なります。歩行障害で60〜90パーセント、認知障害で30〜80パーセント、尿失禁で20〜80パーセントとされますが、中には劇的に回復する例もあります。一般的には、最も改善しやすいのは歩行障害で、次いで尿失禁、記憶障害の順です。

手術後の合併症として、脳を覆う硬膜下血腫などのリスクはありますが、シャント手術自体はそれほど難しい手術ではありません。

3兆候が軽くなれば、日常生活の質(QOL)が向上して家族の負担も軽減されます。治療を受けた後は、定期的な医師の診察を受けることが必要です。

🇲🇴正常眼圧緑内障

眼圧が正常範囲なのに、緑内障と同じ変化をみせる眼疾

正常眼圧緑内障とは、眼圧が正常範囲にあるにもかかわらず、視神経の委縮や視野の欠損など緑内障と同じ変化を認める疾患。現在の日本で最も多いタイプの緑内障で、約7割を占めるといわれています。

普通の緑内障では、眼圧が10~21mmHgの正常値を超えて視神経を圧迫し、視野が欠損します。正常眼圧緑内障では、無治療時の眼圧が21mmHg以下と正常範囲であるにもかかわらず、普通の緑内障と同様の症状が現れます。

原因はまだよくわかっていませんが、眼底にある視神経乳頭の眼圧に対する耐性が低い、視神経乳頭の血液の流れが悪い、目の循環に障害があるなどの原因が考えられています。近視の強い人や、血縁に緑内障の発症者がいる人はなりやすい、という説もあります。40歳以降に好発します。

目が重い、目が疲れやすい、肩が凝るなどの症状が出ることもありますが、多くはかなり進行するまで無症状です。気が付かないうちに徐々に視神経が侵され、中期〜末期になると視野欠損を自覚します。

>視野の欠損の初めは通常、光の感度が落ちる程度で、いきなり黒い物が出現するわけではありません。また、両目で物を見る場合には脳が不具合を補正する両眼視機能が働くために、たとえ片方の目に視野の欠けがあったとしても消失してしまいます。両眼視機能には視力を向上させる働きもあり、片目だけの時よりも、両目で見ると少し視力が上がるため、片目の視神経の50パーセントを失っても、まだ自覚症状がありません。

初期の視野欠損の段階では、視野の中心部分から欠けていくことは、まずありません。通常、中心の少し上あたりか、鼻側から欠けていき、次に、耳側のほうが欠けていきます。視野の中心部分は、網膜の黄班(おうはん)部や中心窩(か)に映っている映像で、黄斑部や中心窩は視神経の線維が強くできているためです。最終的には、中心部分だけが見えるため、まるで筒からのぞいているような見え方になります。

強度の近視では、初期の段階で視野の中心部分が欠ける中心暗点が出現し、視力が低下することがあり注意が必要です。

正常眼圧緑内障の検査と診断と治療

正常眼圧緑内障は急速に進行することはありませんが、自覚症状が出にくいため、かなり進行してから発見されることもあります。一度、欠損した視野は回復しませんので、検診で早期発見し、根気よく治療を行なうことが大切です。特に、近視の強い人や血縁に緑内障発症者がいる人では、30歳すぎからの検診が勧められています。

医師による診断では、眼圧が正常範囲の緑内障であるため眼圧検査では発見できず、眼底検査と視野検査が発見の決め手となります。原因となるような脳腫瘍(しゅよう)や脳梗塞(こうそく)がないかどうかを調べることもあります。

治療では、ビタミンB12の内服、ないしカルシュウム拮抗(きっこう)剤の内服が行われます。眼圧が正常範囲でも視神経に負担がかかっている場合、あるいは眼圧が正常範囲を超えている場合には、眼圧下降剤の点眼が行われます。視野の欠損が進行した場合には、レーザー治療や手術も行われます。

🇲🇴正常血糖性糖尿

血液中の高血糖を伴わずに、尿中に多くのブドウ糖が認められる疾患

正常血糖性糖尿とは、血液中のブドウ糖(グルコース)濃度が過剰である高血糖を伴わず、血糖値は正常な範囲内にあるにもかかわらず、腎臓(じんぞう)からブドウ糖が継続して尿中に漏れる疾患。腎性糖尿とも呼ばれます。

腎臓では、糸球体という部位で、体の老廃物とともに、糖分(ブドウ糖、フルクトース、ガラクトースなど)やミネラル(ナトリウム、カリウムなど)などの血液中の小さな物質はいったん、すべて尿の原液である原尿の中に、ろ過されます。その後、原尿が尿細管という細い管を流れる間に、ブドウ糖やミネラルなど体に必要な物質は再び血液中に再吸収され、血液中に残った老廃物はさらに尿中へ排出されます。その結果、最終的な尿が作られることで、必要な物質は体に保ち、老廃物のみを効率よく体外に排出することができます。

ブドウ糖は体に必要な栄養源ですから、尿細管でナトリウム・グルコース共役輸送体(SGLT)というポンプにより、すぐに血液中へ再吸収されます。しかし、このポンプの力には限度があり、年齢や個人差もあるのですが、通常は血液中のブドウ糖濃度である血糖値が170mg/dlを超えると限界となって再吸収されずに、ブドウ糖が最終的な尿中に排出されます。この尿中に認められるブドウ糖を尿糖と呼びます。

糖尿病でなければ、通常は血糖値が食後でも140mg/dlを超えることはないので、尿糖は出ないことになります。ところが、体質によりポンプの力が弱いと、尿細管におけるブドウ糖再吸入の機能不全が起こるため、血糖値が正常な範囲内にあってもブドウ糖が最終的な尿中に排出されます。これを正常血糖性糖尿と呼んで、糖尿病による尿糖と区別しています。

ポンプの力が弱い体質は、親から子へと遺伝することが確認されています。ポンプの力が普通より弱く、その後どれだけ血糖値を上昇させてもそれ以上にはブドウ糖を再吸収できないA型と、尿糖を示しながらも最大再吸収は普通にできるB型があります。通常、常染色体優性の形質として遺伝しますが、時として劣性遺伝します。

50〜60gのブドウ糖が尿中に排出されますが、多くの場合、生まれ付きで腎臓の機能がやや弱っているだけで、ほかに腎臓に問題がなければ、治療の必要はありません。腎臓以外の部分でも大きな問題が出るケースはほとんどなく、将来の糖尿病のリスクも健康人と変わりありません。

ただし、尿中に排出されるブドウ糖が多い場合、尿の量が増え、脱水によるのどの渇きや倦怠(けんたい)感などの症状がみられることがあります。

なお、まれに尿細管を主に障害する尿細管障害や間質性腎炎などの腎臓病が、尿糖の原因になることもあります。特に、むくみや倦怠感などの症状があるのであれば、その可能性は否定できませんので、腎臓内科で一度相談してみてください。

また、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症などのホルモン異常、クッシング症候群、眼脳腎症候群(ロー症候群)、ファンコニ症候群、ウィルソン病、ガラクトース血症など種々の全身性障害に併発することがあり、妊娠中にも女性ホルモンなどの影響でポンプの力が弱まり、血糖値がそんなに高くなくても、尿糖が出ることが知られています。

健康診断の尿検査で尿糖が確認された場合、医療機関で血液検査を受けて血糖値を調べ、糖尿病でないか確認するのが安全です。また、尿から糖が出るのが当たり前なので、糖尿病の発見を見逃す原因ともなる可能性がありますので、年に一度は検査を受けておくと安心です。生活習慣病対策として2008年4月から導入された特定健康診査(特定健診、メタボ健診)でも、尿糖の測定は必須となっています。

正常血糖性糖尿の検査と診断と治療

内科、内分泌科、腎臓内科、泌尿器科などの医師による診断では、血糖と尿糖の程度を同時に比較することで、糖尿病と正常血糖性糖尿(腎性糖尿)を鑑別します。

また、血糖値140mg/dl未満で高血糖が存在しない場合の24時間採尿における500mg超のブドウ糖(グルコース)所見に基づき、排出された糖がブドウ糖(グルコース)であることを確認し、ペントース尿、フルクトース尿、スクロース尿、マルトース尿、ガラクトース尿、ラクトース尿を除外するために、グルコースオキシダーゼ法という検査を行うことがあります。

内科、内分泌科、腎臓内科、泌尿器科などの医師による治療では、単独の正常血糖性糖尿は良性であり、処置を施すことはありません。当然、運動療法や食事療法の必要はありません。

🇲🇴青色母斑

通常のほくろよりも全体に青色が強いタイプのあざ

青色母斑(せいしょくぼはん)とは、青あざの一種で、通常のほくろよりも全体に青色が強く、青色から黒色調に見えるタイプのあざ。

皮膚の一部分に色調や形状の異常として現れるものが母斑で、あざとも呼ばれています。ほくろも母斑の一種で、その一番小さい型に相当します。

青色母斑の通常のものは、10ミリ以下で少しだけ皮膚から盛り上がっている小結節で、触ると硬い感触がします。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮で増殖しているために、青色から黒色調に見えてしまうのです。

発生する個所としては、顔面、背中、手首、手の甲、足首、足の甲などが挙げられます。多くは乳幼児期に生じますが、30歳ころから生じるケースもあります。突然多く発生することはありません。

まれに、青色母斑がかなり大きくなることもあります。これは細胞増殖型青色母斑と呼ばれ、青年期以降に悪性化して悪性青色母斑となる可能性があります。悪性化した場合には、皮膚がんの一種で、メラノサイトががん化してできるメラノーマ(悪性黒色腫〔しゅ〕)と同様の治療を行う必要があります。

10ミリ以下の青色母斑の場合には、気にならなければ治療の必要はありません。ただ、目立つ部分に現れるので、気になってしまうようなら、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師に相談して下さい。悪性のものと区別がつかないケースもあるため、経過を見守ることも大切です。

青色母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断では、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。細胞増殖型青色母斑の確定診断は、切除した小結節を顕微鏡を用いて病理組織検査することでつきます。

細胞増殖型青色母斑が疑われる場合は、リンパ節転移を起こすことがあるため、CT(コンピュータ断層撮影)検査やシンチグラム検査(RI検査、アイソトープ検査)といった全身の検査も行う必要があります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療では、通常の青色母斑の場合は悪性化の心配はほとんどないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザーにより、あざを除去します。

Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。まれに軽い色素沈着を残したり色素脱出を来すこともありますが、治療はほぼ100パーセントうまくいきます。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は乳幼児期からの早期治療が有効です。成人で濃くなり化粧法で隠せなくなった場合でも、完全に除去することが可能です。

細胞増埴型青色母斑が疑われる場合は、原則として、局所麻酔による手術で深く広範囲に切除します。リンパ節転移が見付かった場合には、リンパ節を切除します。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...