大気汚染を引き起こす微小粒子状物質(PM2・5)の成分のうち、石炭の燃焼や野焼きなどで発生する「ブラックカーボン」(すす)が急性心筋梗塞(こうそく)のリスクを高める可能性があるとの研究結果を、熊本大や国立環境研究所などの研究チームが発表した。健康に被害を及ぼす成分を特定することで、より効果的な対策につながるとしている。論文が国際学術誌に掲載された。
チームの小島淳(すなお)・熊本大客員教授(循環器内科)らは、2017年4月~2019年12月に東京、大阪、福岡など7都道府県で救急搬送され、急性心筋梗塞で入院した患者約4万4000人のデータと、各地のPM2・5濃度の観測データを分析した。その結果、入院した当日と前日のPM2・5濃度が上昇すると、患者が増加する傾向があることが判明した。
PM2・5の成分ごとに調べると、急性心筋梗塞のリスクを高めていたのはブラックカーボンだけだった。濃度が1立方メートル当たり0・3マイクロ・グラム(マイクロは100万分の1)上昇すると、患者数が2・8%増えていた。吸引したブラックカーボンが、肺で炎症を起こすことなどが影響している可能性があるという。
一方、「硝酸イオン」や「硫酸イオン」などその他の成分には、急性心筋梗塞との明確な関係はみられなかった。
上田佳代・北海道大教授(環境保健)は、 「PM2・5はさまざまな物質の混合物であり、詳しい成分に着目して疾病との関係を分析することは重要だ。どの排出源への対策が優先されるかの判断に役立つ」と話している。
2025年9月14日(日)