ラベル 腎臓、泌尿器の病気 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル 腎臓、泌尿器の病気 の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2022/09/08

🇬🇷出血性膀胱炎

出血を伴う膀胱炎で、多くは子供が罹患

出血性膀胱(ぼうこう)炎とは、肉眼で見えるほど尿に血が混じっており、白く濁る膿尿(のうにょう)の症状がない膀胱炎。急性出血性膀胱炎とも呼ばれます。

この出血性膀胱炎の原因は、ウイルスや細菌の感染、抗がん剤の投与、食物や薬のアレルギーなどですが、ウイルス性のものが多く、一般的に出血性膀胱炎といえばウイルスが原因とされます。

子供がかかりやすく、アデノウイルスによるものが一番多くみられます。アデノウイルスは夏風邪のウイルスの一種で、プール熱や流行性結膜炎などの原因としても知られています。このアデノウイルスによる出血性膀胱炎では、排尿時に痛みがあり、真っ赤な血尿が出ます。肉眼的血尿、排尿痛のほか、頻尿、残尿感や、微熱程度の発熱がある場合もあります。

また、白血病の治療に使われる抗がん剤のエンドキサンなどの投与によって、出血性膀胱炎を起こすことがあります。

子供が出血性膀胱炎にかかった場合、症状を口でいうことができないことがあります。トイレに行く様子がおかしかったり、おしっこをしてもじもじしているようなら、膀胱炎を疑ったほうがよいでしょう。基本的には自然治癒を待つことが多いのですが、出血性膀胱炎による血尿であることを判断し、別の大きな疾患であることを否定するためにも、小児科を受診することが勧められます。

医師による出血性膀胱炎の診断では、尿検査を行って、尿を赤くしているものが血液かどうかを調べたり、膀胱炎の時に出てくる細胞が現れているかどうかを確認します。また、尿のウイルスの種類を検査し、原因となるウイルスを検査することもあります。

アデノウイルスに効く薬は今のところないため、アデノウイルスによる出血性膀胱炎も安静と十分な水分摂取を心掛けて、自然治癒を待ちます。一般的に、肉眼的血尿の症状は数日で改善され、尿検査でも血尿は10日間ほどでなくなります。排尿痛、頻尿、残尿感も1週間以内になくなります。細菌性尿路感染症と区別が付くまで、抗生剤を内服することもあります。

抗がん剤など薬剤による出血性膀胱炎の場合、軽い血尿には止血剤を使用したり、原因の薬剤を中止することで改善されます。症状が重い場合、血尿中で血液が塊となり、尿閉を起こしたり、膀胱委縮が起こることもあります。薬を服用中は、水分を多めに取り、たくさん排尿し、膀胱炎を予防することが大切です。

2022/08/27

🇧🇯高カリウム血症

血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態で、重大な障害を生じる危険性も

高カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態。普通は、腎臓(じんぞう)が十分なカリウムを排出しないことが原因で起こります。

カリウムは細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要で、体内のカリウムの98パーセントが細胞の内部にあり、残りのわずか2パーセントが血液中など細胞の外部に存在しています。しかし、血液中のカリウムは細胞の働きを調節する上でとても重要で、濃度の値が乱れると全身に重大な障害が生じます。

血液中のカリウム濃度は正常値の範囲が通常、3・5~5・0mEq/lと狭く、その範囲内に維持しなければなりません。体は、取り込んだカリウムの量と失った量を一致させることで、そのバランスを保ちます。食物や電解質を含んだ飲料から取り込み、主に尿と一緒に排出されることで失い、消化管や汗からも失います。健康な腎臓は、食事からの摂取量の変化に合わせて、カリウムの排出量を調整できますが、限界を超えると徐々に血液内に蓄積され、高カリウム血症を生じます。

軽度の高カリウム血症の原因として最もよくみられるのは、腎臓への血流を減らす薬や、腎臓が正常な量のカリウムを排出するのを阻害する薬の使用です。このような薬には、トリアムテレン、スピロノラクトン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬があります。

アジソン病も、高カリウム血症の原因になります。アジソン病になると、腎臓を刺激してカリウムを排出させるホルモンのアルドステロンを副腎が十分に分泌しなくなります。この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して、重度の高カリウム血症を引き起こすことがあります。

多量のカリウムが細胞から急に放出された時にも、高カリウム血症は生じます。細胞からカリウムが突然放出されるのは、衝突事故による外傷に伴う広範囲の筋組織の破壊、重度のやけど、コカインの多量吸入などが原因です。カリウムが細胞から血液中に急激に移動すると、腎臓に過度の負担を与え、その結果、生命にかかわる高カリウム血症になります。

軽度の高カリウム血症は、ほとんど症状を起こしません。普通は、定期的な血液検査を受けた際に発見されるか、心電図の変化に医師が気付いて初めてわかる程度です。

血液中のカリウム濃度が5・5mEq/l以上になると、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などの症状が現れます。血液中のカリウム濃度が7~8mEq/lを超えると、危険な不整脈が現れ、心臓が止まる危険性が生じます。

高カリウム血症に気付いたら、早めに内科の専門医を受診し、精密検査と治療を行う必要があります。

高カリウム血症の検査と診断と治療

内科の医師による診断では、血液中のカリウム濃度を測定します。合併している疾患からカリウム濃度上昇の原因は予想できることが多いのですが、動脈血ガス分析、心電図検査、腎機能検査、尿検査、副腎皮質ホルモンの測定などが併せて行われ、詳しい原因も診断されます。

軽度の高カリウム血症であれば、食事によるカリウムの摂取量を減らすか、腎臓がカリウムを排出するのを阻害する薬の服用を中止するだけで、治療としては十分です。腎臓が正常に機能していれば、利尿薬を投与してカリウムの排出量を増やします。また、アルドステロン作用を持つホルモン剤を投与することもあります。

重度の高カリウム血症には、迅速な治療が必要不可欠です。消化管からカリウムを吸収し、便と一緒に体外に排出する作用のあるレジン(樹脂)を、経口または浣腸(かんちょう)で投与します。同時に下痢を誘発させて、カリウムを吸収したレジンが速やかに体外へ排出されるようにします。

さらに迅速な治療が必要な場合は、カルシウム、ブドウ糖、またはインスリンを点滴で投与します。カルシウムはカリウム濃度そのものは下げませんが、高濃度のカリウムの影響から心臓を数分間、保護する働きがあります。ブドウ糖とインスリンは、カリウムを血液中から細胞へ移動させ、血液中のカリウム濃度を下げます。

こうした方法で効果がない時や腎不全を起こしている場合は、透析を行って余分なカリウムを取り除く必要があります。

2022/08/26

🇸🇩糸球体腎炎

血液を、ろ過する腎臓の糸球体に起こる炎症

糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)とは、尿を作るために血液を、ろ過する糸球体(しきゅうたい)に、出血性の炎症が起きる疾患です。腎炎、腎臓炎ともいいます。

免疫の異常が関係して起こると考えられており、左右の腎臓とも平等に侵されます。疾患が進行すると、毛細血管の塊である糸球体だけではなく、尿細管にまで障害が広がります。腎臓病のうちで最も多い疾患で、一般に1年以内のものを急性糸球体腎炎といい、それ以上長く続くものを慢性糸球体腎炎といいます。

急性糸球体腎炎の症状と早期発見法

急性糸球体腎炎は4~10歳の子供に多い疾患で、加齢により発生は減少します。子供では完全に治ることが多いのに対して、成人発症者の一部では慢性糸球体腎炎に移行するものもみられますので、慢性化しないよう十分療養するべきです。

細菌、特に溶連菌による扁桃(へんとう)炎、咽頭(いんとう)炎などの上気道感染後、あるいは風邪などのウイルスの感染後、1~3週間たったころ発症する場合がほとんどです。

腎臓の糸球体に炎症が起こるのは、これらの細菌やウイルスが関係する抗原抗体反応によって生じた免疫複合体(抗原抗体複合物)と呼ばれる物質が、血流に運ばれて糸球体に付着するためと考えられています。

通常では、この免疫複合体は糸球体にあるメサンギウム細胞が処理し、発症には至りません。あまりに量が多い場合、糸球体に沈着して炎症を引き起こします。炎症が起こると、糸球体の細胞が異常に増殖したり、血液中の白血球の成分が糸球体の中に入り込んで、糸球体の働きを阻害するとされています。

急性糸球体腎炎の症状として、血尿と蛋白(たんぱく)尿が必ずみられます。ただ、血尿は赤ブドウ酒かコーラ様になっている場合もありますが、ほとんどは肉眼ではわからない血尿であり、顕微鏡で検査をして初めて確認されるほうが多いものです。

ほかに、顔や手のむくみ、血圧上昇、食欲低下、だるさ、尿量減少などがみられます。血圧上昇は病院で測定してもらって、初めて指摘されるのが普通ですが、子供の場合には、高血圧によってけいれん発作が起こる場合もあります。

慢性糸球体腎炎の症状と早期発見法

慢性糸球体腎炎は、腎臓病の中で最も多い疾患。糸球体を中心にした慢性の炎症がみられるもので、さまざまな原因で起こる腎炎が含まれているために、近年では、疾患群(症候群)として考えられるようになっています。

いずれにしても、蛋白尿や血尿とそれに伴う症状が1年以上に渡って、持続する状態を、慢性糸球体腎炎と呼びます。ただし、糸球体腎炎以外で、異常尿所見や高血圧を呈する疾患は除きます。

この慢性糸球体腎炎では、何ら前兆や誘因もなく発症してくることが多く、また進行して腎不全となるまでは、自覚症状のないことが多いのです。そのため、定期健診の時などに検尿で見付かることがほとんどです。

まぶたが腫(は)れぽったくなるほか、疲れやすい、食欲不振、動悸(どうき)、手足のしびれ、目がチカチカする、吐き気、嘔吐(おうと)といった症状が出る場合もあります。

この慢性糸球体腎炎は、腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる腎生検によって、4種類に分けることができます。蛋白尿と血尿が出るという症状は共通しているので、あくまで腎生検を行わないと区別できません。

 腎炎の約4割を占め、日本人の腎臓病で最も多いのがIgA腎症です。このほか、巣状糸球体腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎があります。

IgA腎症では、発症初期から肉眼的血尿に気付くことが多いのが特徴的です。発症は10歳代後半から30歳代前半に多く、やや男性優位です。顕微鏡で見ると、IgA(免疫グロブリンA)という抗体が、抗原と結合して免疫複合体となり、糸球体のメサンギウムという部位に沈着しています。

巣状糸球体腎炎では、糸球体の基底膜という部位に、微小な変化が生じています。膜性腎症では、糸球体の基底膜が肥厚しています。膜性増殖性糸球体腎炎では、糸球体の基底膜の肥厚に加えて、細胞の数が増える変化が生じています。

急性糸球体腎炎の治療と療養上の注意

急性糸球体腎炎の治療では、安静と食事療法が主体となります。特に初期の安静は重要なので、入院治療が原則。食事は蛋白質、塩分、水分の制限が、疾患の程度や時期に応じて行われます。

蛋白質と塩分を制限するのは、腎臓の働きが低下すると、蛋白質から生じる窒素化合物や食塩の成分であるナトリウムの排出がスムーズにいかなくなるためです。蛋白質を減らす分、糖質や脂質でカロリーを十分にとります。むくみのある時や、1日の尿量400ml以下と尿が少ない場合、あるいは無尿の場合は、1日に摂取する水分を制限します。症状の改善とともに運動量を増やし、食事の内容も変えます。

糸球体腎炎そのものを、根本的に治す特効薬というものはありません。ただし、急性糸球体腎炎の切っ掛けとなった溶連菌などの感染症の治療には、抗生物質が使われます。ほかに、炎症を鎮めるために抗炎症剤、血尿がひどい時には止血剤、乏尿やむくみがひどい時には利尿剤、高血圧に対しては降圧剤が使われます。

入院して適切な治療を受ければ、むくみや高血圧は、通常1週間以内によくなりますが、疾患の程度が重ければ長引くことになります。血尿、蛋白尿なども、2~3カ月で消えていくことが多く、この時点で通学あるいは軽作業が許されるようになります。

退院後は、疾患の回復と合わせて医師と相談の上、無理のない生活を送るようにコントロールしていくことになります。一般的にいって、子供の場合には、体育の授業や水泳、遠足などのへの参加は控えましょう。大人の場合は、周囲の理解を求めて夜勤や残業などを避け、最低3年程度、激しいスポーツや肉体労働を見合わせる必要があります。女性の場合には、2年ほど妊娠を避けたほうがよいでしょう。

慢性糸球体腎炎の治療と療養上の注意

慢性糸球体腎炎で最大の問題となるのは、病態が進行するにつれて、次第に腎機能が低下して腎不全となり、人工透析が必要となる例があることです。そのため、病態の進行を阻止することが、治療の最大の目標になります。

現在のところ、進行を確実に止めるという方法は確立していませんが、病態に合わせて、次のような薬物が用いられています。

ネフローゼ症候群の場合と同様、尿蛋白量の多い場合、抗炎症作用がある副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が用いられることがあります。腎炎の始まりが免疫反応によると考えられているので、免疫抑制剤が用いられることもあります。

2つの薬を併用して治療に当たることもありますが、この2剤は副作用も強いので、医師の指導のもと、血液検査など定期的なチェックを受けながらの服用となります。「症状が軽くなった」と勝手に判断して、服用をやめることは危険です。

糸球体内で血液が凝固することが糸球体腎炎の進行を速めると考えられているため、血液凝固の主役である血小板の働きを弱める薬も、よく用いられています。

高血圧も腎炎の進行を速めることが知られていて、高血圧を合併している場合には、降圧剤による治療が行われます。近年、降圧剤の中には、蛋白尿を減少させ、さらに腎機能の低下を抑制するものの存在が確認され、そのために高血圧がなくても治療に用いられるようになってきました。また、むくみのあるような場合には、利尿剤も用いられます。

食事療法も、腎機能の程度、症状の有無に応じて行われます。基本的には、食塩と蛋白質の摂取量に注意することです。蛋白質は1日、体重1kg当たり1g以下に抑えられます。塩分は軽症の場合、多少控える程度で大丈夫ですが、疾患が進行している状態では、1日に5~8g程度にされます。ほかに、水分量とエネルギー摂取量が過不足にならないようにされます。

慢性糸球体腎炎は経過が長引く疾患で、一部のものは進行性に悪化しますので、生活上の注意は重要です。まずは、風邪や下痢などを起こすと、数日後に肉眼でわかる血尿や蛋白尿が出たり、体がむくんだりすることがあるので、こうした疾患にかからないように注意しましょう。

体力と集中力を必要とする仕事や勉強などは、避けましょう。根を詰めてこなさなくてはならぬことは、腎臓に負担をかけます。なるべくリラックスして過ごせるようにして、夕方から夜にかけても、安静に過ごすことが大切です。

病状にもよりますが、一般に体操や散歩など軽い運動は大丈夫です。ただし、激しいスポーツや、体を冷やす恐れのある運動は避けましょう。

🇲🇦シスチン尿症

アミノ酸のシスチンが尿に排出される疾患で、尿路にシスチン結石を形成

シスチン尿症とは、アミノ酸のシスチンが尿に排出されてしまう、まれな疾患。シスチンは含硫アミノ酸の一種で、毛髪や爪(つめ)、皮膚を形成する硬蛋白(たんぱく)質であるケラチンに、特に多く含まれています。

尿細管の遺伝的な異常が原因でシスチン尿症は起こり、しばしば尿路にシスチン結石が形成されます。引き起こす遺伝子は劣性遺伝子で、発症する人は異常遺伝子を両親からそれぞれ1つずつ受け継いでいます。

この遺伝子を受け継いでも発症していない人は、正常遺伝子と異常遺伝子を1つずつ持っています。こうした人では普通より多い量のシスチンが尿に排出されますが、シスチン結石を形成するほどの量になることはめったにありません。

シスチン結石は、膀胱(ぼうこう)や、尿が集まって腎(じん)臓の外に流れ出る部分である腎盂(じんう)、尿を腎臓から膀胱へ運ぶ細長い管である尿管に形成されます。シスチンとともに、アミノ酸のリシン、アルギニン、オルニチンの尿への排出を伴うことも多くみられます。

症状は通常、10〜30歳の間に始まります。しばしば最初の症状として、結石が引っ掛かった部位で尿管がけいれんするために、激しい痛みが生じます。結石によって尿路が閉塞(へいそく)すると、老廃物や過剰な水分と塩分を排出する腎臓の能力が、片方または両方で低下します。結石のある部位は、細菌感染も起こしやすくなります。

シスチン尿症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、腎臓結石が繰り返しできる人に対して、シスチン尿を調べる検査を行います。顕微鏡を使った尿分析でシスチンの結晶がみられることがあり、尿のシスチン濃度を測定します。

泌尿器科の医師による治療では、尿のシスチン濃度を抑え、シスチン結石ができるのを防ぎます。シスチン濃度を低く抑えるには、毎日少なくとも約4リットルの尿を出すために、十分な量の水分を飲まなければなりません。それでも水分を補給できない夜間には、尿の産生量が少なくなり、結石ができやすくなります。対応策としては、寝る前に水分を摂取することで結石のリスクを抑えます。

このほか、クエン酸カリウムか重炭酸ナトリウムを服用して、尿のアルカリ度を高めるという治療法があります。アルカリ性の尿には、酸性の尿よりもシスチンが溶けやすいからです。水分の摂取量を増やし、尿のアルカリ度を高めようとすると腹部が膨満するため、この治療法は耐えがたいと感じる人もいます。

こうした方法を行っても結石が繰り返しできる場合は、シスチンに反応して溶かす作用があるペニシラミン、チオプロニン、カプトプリルなどの薬を試みます。カプトプリルは、効果の点でほかの薬にやや劣りますが、副作用が少ないという利点があります。薬による治療は概して効果がありますが、それでもかなりの確率で結石は再発します。

2022/08/25

🇲🇪膀胱(ぼうこう)異物

入った異物が膀胱炎の原因になることも

膀胱(ぼうこう)異物とは、何らかの原因で膀胱内に異物が入ったもの。いたずらや自慰行為の際、尿道内に挿入した物が膀胱内に入り込んで、出せなくなってしまうケースがよくみられます。

これには体温計、ろうそく、鉛筆、細いビニール管、針金、チューインガム、ヘアピン、乾電池などがみられます。そのほか、魚の骨が腸を突き抜けて膀胱に入る場合や、手術時に使用した糸などが膀胱内に残る場合もあります。尿道カテーテル留置中に、膀胱内でカテーテルが損傷した場合などにも膀胱異物となります。

症状として、頻尿、排尿時疼痛(とうつう)、血尿が出現し、残尿感、下腹部痛、血尿などを伴うことがあります。膀胱内に異物がある場合には、細菌などの病原体がつきやすいため、抗菌薬を投与しても完治しにくいことが多く、慢性膀胱炎の原因になります。また、膀胱異物には結石の基となる結晶が付着しやすいことから、異物を核とした膀胱結石ができることもあります。

膀胱異物の検査と診断と治療

頻尿、排尿時疼痛、尿混濁、血尿、残尿感、下腹部違和感などの膀胱炎の症状が続く場合には、泌尿器科の専門医に相談して、これまでの泌尿器などの疾患の有無や生活習慣などをきちんと話します。また、異物を尿道内に挿入することは避けなければなりません。

病歴上、膀胱異物の診断が明らかな場合もありますが、X線や超音波検査、膀胱鏡検査などにより、膀胱内の異物を確認します。

可能であれば膀胱鏡で除去しますが、異物の大きさや形状によっては非常に困難な場合もあります。放置すれば膀胱炎、膀胱結石、膀胱穿孔(せんこう)などの可能性があり、膀胱鏡で除去できない場合には開腹手術を行うこともあります。

🇲🇪膀胱(ぼうこう)炎

女性に多い膀胱粘膜の炎症

膀胱(ぼうこう)炎とは、膀胱内の粘膜に炎症が起こる疾患です。女性に多いのが特徴で、特に妊娠可能な年齢で多発しますが、男性にも起こります。細菌の感染による急性膀胱炎がすぐに治るのに対して、慢性膀胱炎は完治が難しいといえます。

急性膀胱炎の場合、症状は急激ながら経過は短く、泌尿器科の疾患では最も普通にみられます。原因の大部分は細菌感染で、大腸菌が最も多く、ブドウ球菌、連鎖(状)球菌などによることもあります。

感染経路としては、尿道からの細菌の侵入が最も多く、腎(じん)臓からの感染、周囲の臓器からの感染もあります。この疾患が女性に多発する理由として、尿道が男性に比べて短いために細菌が尿道に入りやすいこと、細菌のいる腟(ちつ)や肛門と尿道との距離が近いことなどが挙げられます。

膀胱は細菌に対して抵抗力があるので、単に細菌が侵入してきただけでは炎症は起こりにくいのですが、体力の低下、尿の停滞、排尿の我慢のしすぎ、便秘、不潔な性交、妊娠、冷えなどが誘因になって発症します。

男性では、膀胱炎は女性ほど一般的ではありません。男性はまず尿道が感染し、その感染が前立腺(ぜんりつせん)から、膀胱に広がって発症します。

症状としてみられるのは、頻尿、残尿感、尿の出が悪い、排尿時の痛み、尿の濁りが特徴。発熱はほとんどみられません。

医師による治療では、原因菌に有効な抗生物質、抗菌剤が投与されます。一般に女性では、合併症が起こっていなければ、2~3日で症状は軽快します。感染が長引く際には、抗生物質を7~10日間服用します。男性では投与期間が短いと再発を繰り返すため、一般に抗生物質を10~14日間服用します。

男女とも、水分の摂取を多くして尿量を増やし、細菌を洗い流すほか、尿の刺激性を低下させて症状を和らげます。症状の強い際は、十分な休息、睡眠を確保するようにします。

慢性膀胱炎と間質性膀胱炎

慢性膀胱炎の場合、症状は比較的軽く、ほとんど自覚しないこともあります。尿検査で偶然に発見されることが、普通です。膀胱に腫瘍(しゅよう)、結石があったり、結核、前立腺、腎臓の病気などが膀胱炎の陰に隠れている際に、慢性化しやすいものです。

治療では、抗生物質や抗菌剤が2~4週間、使用されます。原因疾患がある際には、そちらを治療しない限り、完治しません。特に原因疾患もなく、症状のほとんどない際は、経過観察となることもあります。

また、間質(かんしつ)性膀胱炎という特殊な膀胱炎が近年、増加しています。感染症がみられなくても膀胱が炎症を起こす疾患で、痛みを伴う頻尿などの症状があります。顕微鏡で検査すると、尿中に膿(うみ)や血液が認められ、尿に血が混じっているのが肉眼で見えることもあります。

中年女性に多くみられ、男性がかかることはめったにありません。欧米では以前から割合多くみられていて、いくつかの病因による症候群と見なされていますが、いまだ治療法は確立されていません。

長期に渡る慢性的な炎症によって膀胱は委縮し、重症の場合は外科手術による膀胱の除去が必要になることも、まれにあります。小腸の一部である回腸を使って代用膀胱を作るか、腎臓にチューブを直接挿入し、体の外に装着した袋に尿を排出することになります。

🇲🇪膀胱がん

膀胱の表面を覆う上皮ががん化することで起こる疾患

膀胱(ぼうこう)がんとは、膀胱の内部表面を覆う移行上皮ががん化することで引き起こされる疾患。組織学的には、移行上皮がんが全体の90パーセントを占めています。

膀胱は骨盤内にある臓器で、腎臓(じんぞう)で作られた尿が腎盂(じんう)、尿管を経由して運ばれた後に、一時的に貯留する一種の袋の役割を持っています。膀胱がたまった尿で伸展されると、それを尿意として感じ、筋肉が収縮することによって排尿して、膀胱より尿を出し切るといった働きがあります。その膀胱の表面を覆う移行上皮は、伸縮性に富むことが特徴的です。

泌尿系のがんの中では、膀胱がんが最も死亡者数が多く、7割以上を占めます。罹患(りかん)数も最多で、泌尿系のがん全体の約半数を占めます。

年齢別にみた罹患率は、40歳以上に多く、男女とも60歳以降で急増します。男性のほうが女性より罹患率が高く、女性の約4倍です。罹患率の国際比較では、欧米白人で高く、日本人を含む東アジア系民族では低い傾向があります。日本では、年間10万人中約10人の罹患率。

膀胱がんのはっきりとした原因は、不明です。確立されたリスク要因としては、喫煙が挙げられています。喫煙する人では喫煙しない人と比較して、2〜3倍多くなります。古くはアニリン系色素やゴム工場従事者に多く発生し、職業がんとして有名でした。現在では、ベンチジンなど、がんと因果関係のはっきりしているものの使用は禁止されています。

長期間、膀胱結石があったり、膀胱周囲の血管系に寄生するビルハルツ住血吸虫症に感染していたりすると、その慢性的な刺激により発がんすることがあります。医薬品では、フェナセチン含有鎮痛剤やシクロホスファミドに発がん作用が認められています。

初発症状として最も多いのは血尿で、赤色や褐色の尿で気付いたり、尿検査などで発見されます。この血尿は膀胱炎とは異なり、痛みなどを伴わないのが特徴で、無症候性血尿と呼ばれます。血尿は数日経過すると止まることもありますが、また出たり止まったりを繰り返しながら、疾患は進行します。

病変の部位が膀胱の出口に近い尿道口や膀胱頸部(けいぶ)にあると、頻尿、排尿時の疼痛(とうつう)、尿の混濁、残尿感など膀胱炎と非常に類似した症状や、排尿障害などが現れます。さらに尿管が閉塞(へいそく)してしまうと、尿が流れないために腎臓がはれたり、尿管が拡張する水腎症の症状が現れたり、それによって腎臓機能が低下することがあります。進行すると痛み、排便の異常、直腸や子宮からの出血などが現れることもあります。

膀胱がんの検査と診断と治療

膀胱がんは血尿で始まることが多い疾患ながら、血尿があればすべて膀胱がんというわけではありません。しかし、肉眼的な血尿を自覚したり、尿検査などで指摘されたりした場合には、いろいろな疾患も考えられるため、泌尿器科や腎臓内科の専門医を受診します。

通常、膀胱がんは隆起しているので、膀胱鏡検査でその一部分を採取して顕微鏡検査をすることで、医師の診断は確定します。この膀胱鏡検査では、病変の性状や大きさ、数、発生部位なども観察することができます。膀胱がんは多発することがあり、膀胱鏡検査で見ただけではわかりにくい場合は、肉眼的に正常と思われる部位からも生検します。

尿中に混じっている異常細胞を調べる尿細胞診も行われますが、小さな乳頭状のがんでははっきりがん細胞と断定できないことがあります。

進行度を調べるためには、腹部のCT検査やMRI検査、腹部および経尿道超音波検査、排泄(はいせつ)性尿路造影などが行われます。転移がないかどうかを調べるためには、胸部X線検査、腹部CT検査、骨シンチグラフィなども行われます。膀胱と同様に移行上皮がある腎盂や尿管に異常がないかどうかも、排泄性尿路造影などで検査します。

膀胱がんの治療は、検査によって得られたがんの状態や転移の有無、発症者の年齢や体力などを考慮して決定されます。膀胱壁の比較的浅い部分までに限局している表在性腫瘍では、経尿道的膀胱腫瘍切除術が行われます。これは腰椎(ようつい)麻酔をした上で尿道から膀胱鏡を入れ、電気メスで腫瘍を切除する治療です。再発防止のために、抗がん薬の膀胱内注入が行われることもあります。

がんが膀胱壁の最も浅い層である粘膜内に限局している上皮内がんには、BCG(結核のワクチン)の膀胱内注入が行われることがあります。これは外来で行うことができ、週に一度の注入を数回行います。

膀胱壁のより深い部分に及んでいる浸潤性腫瘍では通常、膀胱全摘除術、および膀胱を切除した後に尿を出すための経路を作る尿路変更(変向)術が行われます。膀胱全摘除術は全身麻酔下で行われる手術で、膀胱と周囲のリンパ節のほかに、男性であれば前立腺(せん)、精嚢(せいのう)などを、女性であれば尿道、腟(ちつ)前壁などを同時に摘出します。

続いて行う尿路変更術には、尿管皮膚瘻(ろう)、回腸導管造設術、自然排尿型代用膀胱などがあります。尿管皮膚瘻は、左右の尿管を皮膚につなぎ、腎臓までカテーテルを入れて、そこから排尿するものです。手術としては簡単ですが、常に尿が出てくるので袋をつけておかなければなりませんし、感染の危険もあります。

回腸導管造設術は、小腸の一部を切り取って、そこに左右の尿管をつなぎ、その小腸の一端を皮膚につないで排尿するものです。感染などの合併症が少ない方法ですが、やはり常に袋をつけておく必要があります。

自然排尿型代用膀胱は、小腸を用いて作成した代用膀胱を元の膀胱と置き換えて、元と同じ尿道口より排尿する方法です。最も生理的な方法ですが、尿道を温存できる場合しか適応となりません。腹圧によって排尿することができますが、うまくできない場合には自己導尿が必要になることもあります。

転移があるような進行がんや、全身状態に問題があったり、手術を希望しない場合には、抗がん剤による化学療法が行われ、通常2種類以上の薬剤が組み合わせて投与されます。メトトレキサート(メソトレキセート)、ビンブラスチン(エクザール、ビンブラスチン)、ドキソルビシン(アドリアシン)、シスプラチン(ランダ、ブリプラチン)の4剤を組み合わせたM—VAC療法が、膀胱がんに対して最もよく行われる化学療法です。近年、タキソールやジェムシタビンといった新しい抗がん剤を用いる治療も注目されています。

また、手術の前に抗がん剤による治療を行うこともあり、これは術前補助療法と呼ばれます。一方、手術の後に抗がん剤による治療を行うこともあり、こちらは術後補助療法と呼ばれています。

放射線併用治療も行われています。放射線にはがん細胞を死滅させる効果があるので、がんを治すため、またはがんにより引き起こされる症状をコントロールするために使われます。放射線治療の適応となるものは、基本的に浸潤性腫瘍です。膀胱の摘出手術では尿路変更が必要となるデメリットがあるため、あえて放射線治療や、放射線治療に化学療法を合わせて治療し、膀胱を温存することもあります。

膀胱がんは膀胱が存在する限り、膀胱内に再発する可能性は常にあります。経尿道的膀胱腫瘍切除術の後は、定期的に外来に通院し、膀胱鏡や尿の細胞診でチェックする必要があります。膀胱を摘出した場合には、転移が出現していないかなど定期的なチェックももちろんのこと、回腸導管や、腸管で作られた新しい膀胱が機能しているか、腎障害が出てきていないかなどのチェックも必要になってきます。

🇷🇸膀胱憩室

膀胱の壁の弱い部分が、尿が通過する際の圧力により膨らんで袋状の憩室ができ、外側に突出する疾患

膀胱(ぼうこう)憩室とは、膀胱の内腔(ないくう)の壁の一部の弱い部分が排尿の圧力によって膨らみ、袋状の憩室ができて外側に突出する疾患。

膀胱から尿道口までに、何らかの通過障害があって、排尿に際して膀胱内の圧力が高まった時に、膀胱憩室の状態になります。通常、膀胱粘膜が筋層を貫いています。

その成因から、先天性膀胱憩室と後天性膀胱憩室に分けられます。先天性は男児に多く、後天性は中高齢の男性に多くみられます。

先天性膀胱憩室は、尿管が膀胱壁を通過する部分や、膀胱頸部(けいぶ)に憩室が好発し、尿路感染の素因を作り、膀胱尿管逆流を伴いやすくなります。通常は幼児期に、繰り返す尿路感染症の検査の際に発見されます。

後天性膀胱憩室は、前立腺(ぜんりつせん)肥大症、神経因性膀胱、尿道狭窄(きょううさく)などによる下部尿路の通過障害の影響が最も多く、そのほか膀胱損傷の後遺症、膀胱手術の合併症などで発症します。

憩室の内部には尿がたまるため、尿路感染が発生しやすく、繰り返す膀胱炎、憩室炎、結石、腫瘍(しゅよう)などの原因となり、頻尿、排尿時の痛み、尿の混濁、残尿感、下腹部違和感などの症状が出ることもあります。

憩室は長い時間をかけて次第に大きくなるため、排尿後、時間がたっていないのにもう一度ある程度の量の排尿がある二段排尿がみられたり、尿道を圧迫して排尿困難を来すこともあります。

膀胱炎の症状が長く続く時や、膀胱炎を繰り返す時には、泌尿器科を受診することが勧められます。

膀胱憩室の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、超音波検査、排せつ性尿路造影、膀胱造影などを行います。膀胱憩室が認められた場合には、膀胱鏡検査で憩室の入り口や、可能であればその内部を観察し、結石、腫瘍が発生していないか確認します。

泌尿器科の医師による治療では、小児にみられる先天性膀胱憩室の場合、できるだけ早期に憩室を切除します。

後天性膀胱憩室の場合、憩室が小さくて自覚症状もなく、膀胱炎、憩室炎、内部の結石などの合併症がなければ、経過観察します。

憩室がある程度大きい時や、強い自覚症状、合併症のある時には、内視鏡を尿道から入れて憩室を電気凝固します。憩室が大きい時や、悪性腫瘍を合併している時には、開腹して憩室を切除する手術を行うことになります。

🇷🇸膀胱頸部硬化症

尿道に移行する部分の膀胱の筋肉が硬くなって、排尿障害を起こす疾患

膀胱頸部(ぼうこうけいぶ)硬化症とは、膀胱の出口と尿道の境目にある膀胱頸部の筋肉が硬く厚くなって、排尿時に開きにくくなることが原因で、排尿障害を起こす疾患。主に男性にみられます。

前立腺(ぜんりつせん)炎や前立腺肥大症、膀胱炎から二次的に発症したり、前立腺の手術後などに発症します。まれに、先天性の膀胱頸部硬化症もみられます。

成人の膀胱頸部硬化症が起こる原因や仕組みに関しては、現在のところ解明されていません。先天的な筋肉の発生発育障害によるという説や、加齢・炎症など後天的要因に起因するという説など諸説があります。

症状としては、膀胱頸部の膀胱壁が硬く厚くなって排尿時に開きにくくなるために、尿が出始めるまでの時間が延長したり、尿の出が悪かったり、尿線が細かったり、尿が出始めてから終了までに時間がかかったりし、残尿感、頻尿が生じます。まれに、閉尿といって、尿が膀胱にあっても排尿できない状態になることもあります。

症状は前立腺肥大症によく似ていて、症状だけから見極めることはできません。

ほとんど男性にみられますが、時に女性でも慢性膀胱頸部炎などのため、膀胱頸部に慢性の刺激が加わり、同様の症状がみられることがあります。

成人の膀胱頸部硬化症では、しばしば尿路感染症や結石を合併し、小児にみられる先天性の膀胱頸部硬化症では、水腎症、腎機能障害を起こす場合があります。

尿の出が悪い、残尿感、頻尿などの症状がある場合には、前立腺肥大症も含めて検査する必要がありますので、泌尿器科で診察を受けて下さい。

膀胱頸部硬化症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、膀胱造影検査、膀胱鏡検査などが行われます。前立腺肥大症、前立腺がん、尿道狭窄(きょうさく)、神経因性膀胱など頻尿や排尿障害を起こす疾患でないことを確認し、膀胱頸部の硬化や狭窄などから膀胱頸部硬化症と確定されます。

泌尿器科の医師による治療では、膀胱頸部の緊張をとる目的で、交感神経遮断薬(α遮断薬)を使用する薬物療法、膀胱頸部を広げることのできるチューブ状の器具を用いる尿道ブジー療法などの保存的治療を行います。

根治的に治すためには、尿道から内視鏡を挿入して膀胱頸部を切開する場合が多いのですが、膀胱頸部を切除する手術を要することもあります。いずれにしても、処置後も比較的長期間、ある程度の拡張処置を外来で続ける必要があります。

🇷🇸膀胱(ぼうこう)結石

腎臓結石がとどまったり、膀胱内で結石ができたりする状態

膀胱(ぼうこう)結石とは、腎臓(じんぞう)結石が膀胱まで落ちてきたり、膀胱内でできた状態。石は少なくて1個、たくさんできてしまう人は数10個までできてしまいます。

発症者には、高齢の男性が多いのが特徴です。結石が小さいうちに尿とともに排出されずに、膀胱内で大きくなったことが原因で、その背景には、前立腺(せん)肥大症、膀胱頸部(けいぶ)硬化症、神経性膀胱機能障害、尿道狭窄(きょうさく)などの尿路通過障害などの疾患があることが多くみられます。

また、尿路通過障害や膀胱内異物などに合併しやすい尿路感染は、尿素分解細菌の働きによって、リン酸マグネシウムアンモニウム結石などのいわゆる感染結石を作る原因となります。膀胱炎にかかりやすい人では、こうした感染結石が約半数を占めるといわれています。

さらに、膀胱留置カテーテルなどの異物には、結石の基となる結晶が付着しやすいことから、異物を核とした結石の形成がみられることもあります。男性に多い尿酸結石は、生活習慣病である高尿酸血症などの尿酸代謝の異常や酸性尿が関係しています。

排尿後に痛みを感じる、尿が濁る、尿が近くなる、血尿が出る、頻尿が起こる、膀胱部が痛むといった症状が現れます。排尿の途中で結石が膀胱出口をふさいでいると、急に尿が止まってしまうこともあります。中には、無症状な人もいます。

膀胱結石の検査と診断と治療

治療としては、膀胱結石を作る原因となる疾患の治療をし、外部から結石を破壊したり、手術をして摘出をします。

膀胱結石の手術による治療法では、経尿道的手術と膀胱切石術が代表的です。

経尿道的手術は、 腰椎(ようつい)麻酔(ますい)下に、尿道から挿入した内視鏡を用いて結石を摘出する方法です。腹部を切開せずにすみ、回復も早いため、最近ではほとんどの膀胱結石に対して、この治療法が行われます。手術の合併症として、出血や膀胱損傷、尿道損傷のほか、尿路性感染症による発熱がみられることがあります。

膀胱切石術は、 腰椎麻酔下に、下腹部から膀胱前壁を切開して結石を取り出す方法です。大きな結石や数が多い場合、あるいは前立腺肥大症や膀胱憩室の手術とともに行われることがあります。合併症としては、細菌感染による皮膚や膀胱壁の縫合不全が起こることがあります。

🇸🇮膀胱神経症

泌尿器の異常が認められないのに、頻尿などを起こす疾患

膀胱(ぼうこう)神経症とは、腎臓(じんぞう)や膀胱などの泌尿器に異常が認められないにもかかわらず、頻尿や尿意切迫感を起こす疾患。神経性頻尿、過敏性膀胱とも呼びます。

一般に、女性に多くみられる傾向があります。神経質で几帳面(きちょうめん)、強迫的傾向にある人に多いようです。

膀胱神経症を発症する原因は、精神的な要因やストレス、恐怖心などです。膀胱は精神的な影響を受けやすい器官で、排尿には精神的、心理的な要因が関係してくることが少なくありません。例えば、試験や試合、デートや会食、発表会や演奏会、大事な面接や会議、プレゼンテーションなど、人それぞれの勝負時や本番など緊張する場面でトイレが近くなる状態は、誰でも経験することです。 

この状態が一過性の現象として終わらず、その後も排尿回数が日常生活に支障を来すほど頻繁になる場合があります。また同じことが起きるのではないかという不安や恐怖心が先立ち、殊更に尿意が意識されてしまう結果、実際に度々尿意を感じるようになり、意識すればするほど我慢できなくなって頻尿のパターンに陥ります。

精神的負担やストレスを感じる場面で精神が高ぶり、何度もトイレに行きたくなった経験や、電車や車の中でトイレを我慢したエピソードなどを切っ掛けに、膀胱神経症は発症します。職場や学校、家庭でのストレスを始め、いじめや暴行、事故や災害などによる重大な精神障害を機に発症することもあります。

通常、排尿痛や発熱は見られず、尿意を意識せずに何かに熱中している時や、夜眠っている時には症状はありません。逆に、尿意を気にしたり、意識すれば意識するほど、膀胱に少量の尿がたまっただけで強い尿意を感じ、我慢できなくなります。

 男性では、職場や仕事上のストレスなどで無菌性の前立腺(せん)炎を起こす場合があり、膀胱神経症の症状と複合して長引くケースも少なくありません。

女性では、軽い膀胱炎を実際に患い、それを切っ掛けに膀胱神経症を発症するケースも多く認められます。この場合、頻尿や尿意切迫感のほかに、排尿痛、残尿感、下腹部の不快感など、膀胱炎と同じ症状を認めることがあります。

膀胱神経症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず尿検査を行うと膀胱炎などのように膿(うみ)や血尿などは出ないので、すぐに膀胱神経症と判断できます。就寝中に排尿がみられないことも、診断の手掛かりになります。

さらに、問診によって、他の自覚症状の有無や頻尿に至った心理的要因を把握していく過程で、残尿感などを訴える発症者には、超音波検査による残尿測定などを行うこともあります。頻尿に伴い、切迫性の尿失禁などの症状を訴える発症者には、膀胱内圧測定や、婦人科的な検査を行うこともあります。

検査の結果、器質的疾患がないことがわかれば、膀胱容量が正常であることを確認するために、一日の排尿回数と排尿量を記録してもらいます。朝一番の排尿量が300ミリリットルあれば、膀胱容量が正常であることがわかります。

泌尿器科の医師による治療では、膀胱の過敏性を和らげ、余分な収縮を抑える抗コリン薬を服用したり、心因的な要素が強い時には抗不安薬や自律神経調整薬などを服用することもあります。

抗コリン薬の服用期間中には、排尿記録を基に目標を決めて、排尿間隔を開け、一回量を増やすような生活を心掛けます。服薬を中止することによる頻尿の再発を心配することはありません。 精神面が大きく作用する膀胱神経症の場合、数週間の服用で頻尿の習慣が消え、服薬を中止しても大丈夫な人が多いものです。 改善したら、予防法など考えず、排尿回数に無関心になることが最大の予防法といえるでしょう。

🇸🇮膀胱尿管逆流症

膀胱に尿が一杯になった時や排尿する時に、尿が尿管、腎盂に逆流する現象

膀胱(ぼうこう)尿管逆流症とは、膀胱に尿が一杯になった時や排尿する時に、尿が尿管、腎盂(じんう)に逆流する現象。

正常な状態では、膀胱に尿がたまってきたり、排尿時に息むと、尿管膀胱移行部の逆流防止機能が働いて、膀胱壁内尿管が膀胱の壁に押し付けられ、尿の逆流が起こらないようになっています。この逆流防止機能が不十分だと、逆流を起こします。膀胱尿管接合部の形態や、膀胱壁内尿管と膀胱壁との進入角度、膀胱壁内尿管の長さなどによって、逆流を起こすと考えられています。

逆流防止機能の未熟な小児にみられることが多いのですが、成人になっても前立腺(ぜんりつせん)肥大などによって膀胱からの尿の出が悪くなった場合にも、膀胱尿管逆流症は起こります。

頻度は、新生児までは男児に多くみられますが、その後は女児および女性に多くみられます。また、家族内発生や多因子による遺伝もあるとされています。

常時、細菌の混じった汚い膀胱内の尿が逆流している場合には、尿管が正常よりも膨らむ水(すい)尿管症、尿が腎盂や腎杯内にたまって膨らむ水腎症を示すようになります。

2022/08/24

🇻🇦小児尿路感染症

小児の尿路に細菌が感染して、膀胱炎、腎盂腎炎などを起こす疾患

小児尿路感染症とは、小児の尿路の中に細菌が入り込んで感染し、炎症を起こす疾患。細菌性尿路感染症とも呼ばれます。

尿路は、腎盂(じんう)から尿管、膀胱(ぼうこう)へと続く尿の通り道です。細菌は例外的に血液の中を回って腎盂に直接入ることもありますが、尿の通る方向とは反対に、尿の出る尿道口から侵入した大腸菌が原因になることがほとんどです。

女児のほうが尿道が短いために細菌が入りやすいものの、まだ陰茎(ペニス)の先の亀頭部が包皮に包まれたままである男児の場合も、亀頭と包皮の間に垢(あか)がたまって細菌が入りやすい状態になっています。

何らかの理由で尿が逆流したり、停滞した状態が続くと、細菌が侵入したり繁殖しやすくなって感染を起こします。尿路に先天的な奇形があるために、尿路感染症を繰り返す場合もあります。

炎症が起きている尿路の部位によって、症状や経過が異なります。下部に炎症が起きている時は膀胱炎や尿道炎、上部に炎症が起きている時は腎盂腎炎が起こります。

膀胱炎では、尿が黄色くなる、においがする、尿の回数が増える、排尿時に痛みがある、残尿感があるなどの症状が起こります。発熱はほとんどみられません。

尿道炎では、排尿時に軽い痛みがありますが、多くは排尿不快感程度です。白みがかった粘液性のうみの混じった尿が出ることもあります。

腎盂腎炎では、風邪の症状がないのに突然38・5℃以上の発熱がみられ、嘔吐(おうと)や下痢を伴うこともあります。腰痛、腎部痛を伴うこともあります。

風邪の症状がないのに発熱したり、排尿痛、頻尿、腰痛といった症状がある時は、小児尿路感染症が疑われますので、小児科を受診します。小児では無症状のことも多いのですが、夜間のおねしょ(夜尿症)や、昼間のお漏らし(昼間遺尿)によって気付くこともあります。

小児尿路感染症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、尿検査を行い、細菌の有無、炎症の時に現れる細胞の有無を確認します。発熱がある場合は、血液検査で炎症の程度を調べ、腎盂腎炎か膀胱炎かを区別します。

尿路感染を繰り返す場合は、尿路で尿が停滞あるいは逆流するような構造的異常があることも考え、超音波検査、腎盂造影、排泄(はいせつ)性膀胱尿道造影などの画像検査を行います。

最近では、全く症状がなく、尿路に異常がないにもかかわらず、尿から常に細菌や白血球が見付かることがあり、無症候性細菌尿あるいは無症候性膿尿(のうにょう)と呼ばれています。これらは、学校健診時の検尿などで偶然発見されることがあります。

小児科の医師による治療では、原因となっている細菌に感受性を示す抗菌剤の内服、あるいは点滴静脈注射による使用を基本とします。一般に、膀胱炎なら抗菌剤の5~7日間の内服で治りますが、腎盂腎炎の場合には入院の上、抗菌剤の14日間の点滴を行います。

腎盂腎炎を繰り返すと、腎臓が障害されて、最終的に腎機能低下を来すため、早期発見、早期治療が重要となります。

尿路のどこかが狭い先天性水腎症や、膀胱の尿が尿管や腎盂に逆流する膀胱尿管逆流現象が原因で、尿路感染を繰り返す小児には、それらの先天的な奇形に対する手術を行うこともあります。

小児尿路感染症の再発予防としては、乳児のほとんどは便に含まれる大腸菌が尿路を逆上って発症しているので、大便が出たら早めにおむつを交換する、女児のおしりをふく時は前から後ろにふくように心掛けるなどに注意します。

また、尿の流れが滞ると細菌も繁殖しやすくなりますので、膀胱炎や腎盂腎炎にかかったら、十分に水分を補給してあげます。尿量が増えて尿がたくさん出ると、細菌も一緒に排出される効果があります。尿路感染症にかかっていなくても、水分を多めに与えると感染予防になります。

🇲🇹上部尿路結石

上部の尿路に石ができた結果、いろいろな障害が発生する疾患

上部尿路結石とは、膀胱(ぼうこう)より上位にある腎(じん)臓と尿管に石ができた結果、いろいろな障害が起こる疾患。20〜40歳代の男性に多くみられます。

尿路に石ができる疾患をまとめて尿路結石といい、石がある尿路の部位により、腎結石、尿管結石、膀胱結石、尿道結石といい、腎結石と尿管結石の上部尿路結石に対して、膀胱より下位にある膀胱結石と尿道結石は下部尿路結石といわれます。

現在、尿路結石の約95パーセントは上部尿路結石で、下部尿路結石は約5パーセントのみで、しかも前立腺(ぜんりつせん)肥大症や尿道狭窄(きょうさく)などの尿の出にくくなる状態の時にのみできます。

結石の大小は、小さい砂のようなものから、腎盂(じんう)全体を占める大きな石で、形からサンゴ状結石と呼ぶものまでいろいろあります。結石の数は、1個のことも多数のこともあります。

これらの結石は、尿に溶けていた塩類が腎臓の中で固まってできたもの。主な成分は、尿酸、蓚(しゅう)酸、炭酸などにカルシウムが付いたものです。尿中の塩類が結石を作る理由は、まだよくわかっていません。尿の停滞と細菌感染、手術時の縫合糸など尿路の異物、副甲状腺(せん)機能高進症、代謝異常などが、結石を作りやすい誘因になると考えられています。

上部尿路結石に相当する腎結石、尿管結石の主な症状は、腎臓部の痛み、血尿、結石の排出です。

腎臓部の痛みには、腎臓や尿管の強い痛みの疝痛(せんつう)と、腎臓部や腰部の鈍い痛みの鈍痛の2種類があります。疝痛というのは、結石が尿管に詰まって、尿が下に流れないで急に腎盂の内圧が高くなり、腎臓が大きく張るために痛みが起こるもの。時には、背中や肩、あるいは下腹部から外陰部へ痛みが走ります。また、尿管のけいれん性の収縮によっても、痛みが起こるといわれています。

疝痛の発作時は、吐き気や嘔吐(おうと)、脈が速くなる頻脈、腹部膨満感なども起こります。疝痛が治まると、鈍痛が腎臓部に感じられます。大きな結石では、鈍痛のことが多く、X線によって偶然発見されることもあります。

血尿は、疝痛時にみられます。これは結石が尿路の粘膜を傷付けるためで、見た目で血尿とわかるものばかりではありません。結石の排出は、疝痛の後の排尿時にみられることがあります。

尿とともに体外されるのは、小さい結石です。結石がある大きさになると、尿管に長い間とどまったままとなり、水腎症になります。また、細菌感染が起こった場合、急性腎盂腎炎になって高熱が出ます。

このような時は、強い抗生物質を用いないと、進行して膿腎(のうじん)症になることもあるので、注意が必要です。速やかに泌尿器科の専門医を受診するようにします。

上部尿路結石の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、尿検査で血尿があるかどうか、超音波検査や腎膀胱部X線単純撮影、CT検査などで結石の陰影があるかどうかを調べます。加えて、腹部の痛みなどの問診でほぼ腎結石、尿管結石と確定できます。そのほか、造影剤によって結石の大きさや場所を調べる排泄(はいせつ)性尿路造影と呼ばれる検査もあります。

泌尿器科の医師による治療法は、結石がどこにあり、どんな大きさで、その成分は何かによっては異なります。5ミリ以下の小さい結石では、多くのケースで自然排出が期待できますので、水分を多量に摂取したり補液を行って、尿管の蠕動(ぜんどう)運動を活発にさせることで、結石の下降を促します。6ミリから9ミリ程度の結石でも、水分を多量に摂取することでおよそ3カ月以内に排出される可能性があります。

疝痛がある場合には、鎮痛薬としてインドメタシン座薬を使用したり、ペンタゾシンを注射したり、鎮けい薬を使用したりしながら、結石形成抑制薬などを投与します。また、尿酸結石やシスチン結石の場合には、尿をアルカリ性に変えるクエン酸カリウムか重炭酸ナトリウムを服用して、結石を溶かす治療を行います。これには数カ月、あるいはそれ以上を要します。

自然排出が期待できない1センチ以上の腎結石、尿管結石の場合、尿の流れが阻害されて水腎症になる恐れがある場合、薬の効かない尿路感染症がある場合、激しい痛みがある場合にはは、体外衝撃波砕石術(ESWL)が治療の第1選択となります。衝撃波発生装置から出た衝撃波を皮膚を通して、結石に収束させて、破砕するものです。さまざまなタイプの優れた機種が広く普及して、ごく一般的に使用されています。

しかし、衝撃波砕石も万能ではありません。衝撃波をあまり当てすぎると、腎臓に障害を生じます。衝撃波で割れない結石もあります。また、衝撃波では割るだけで、大きな結石では割れた結石を自然排出するのが大変です。

今日では、体外衝撃波砕石術と併行して、内視鏡によって腎結石、尿管結石を取り出したり、同じく内視鏡的に超音波、レーザー、圧搾空気で結石を砕く治療も行われています。かつて主に行われていた切開手術は、まれにしか行われなくなっています。

一部の結石では、結石を作りやすい疾患が合併しているものもあり、元になる疾患の治療も行います。尿路感染症を伴っている場合には、原因となる菌を特定し、抗生剤の投与を行います。

尿路結石では一般に、尿の濃縮と運動不足が結石の増大を促します。水分をよく摂取し、縄跳びやジョギングなど適度の運動を続けることが大切です。

🇮🇸腎盂がん

腎臓で作られた尿の通路である腎盂にできるがん

腎盂(じんう)がんとは、腎臓で作られた尿の最初の通路である腎盂にできるがん。

腎盂がんは尿の流れてくる通路の表面のところにできますので、何ら特別の自覚症状もないのに突然、無症候性の血尿が約5人に4人の割合で出ます。この血尿は、血が膀胱よりも上のほうから流れてくるわけですから、尿の全部が真っ赤になります。

その他の症状としては、がんからの出血により、たまたま尿の流れが阻害されると腎臓がはれるために、腹部に痛みが出ることもあります。しかし、腎盂がんそのもので痛むということはなく、血尿が唯一の症状といえるものです。

40歳以降の男性、特に60〜70歳代に多くみられます。男女比はほぼ3対1の割合です。

漏斗状の腎盂の周辺には、長さ25〜30センチ、内腔(ないくう)約5ミリの尿管などの臓器が隣接しているため、腎盂がんがみられた場合には、いろいろな部位にもがんが発生していることもあります。

腎盂がんの検査と診断と治療

痛くない血尿が出たら腎盂がんを疑い、すぐに泌尿器科を受診します。

医師による診断では、まず尿検査と腎臓、腎盂の画像診断を行います。尿の検査では、血液の出血の有無、がん細胞の有無を調べます。画像診断では、超音波検査、CT検査(コンピューター断層撮影)、静脈性腎盂造影や腎動脈造影で、腎臓の形の変化や動脈の分布状態を調べます。近年は、超音波検査やCT検査で発見率が向上してきました。

また、専用の内視鏡で直接がんを確認する方法もあり、内視鏡を利用してがんと思われる組織の一部を採取して、診断を確実なものにすることもあります。

治療法としては、腎盂や尿管、あるいは腎臓の摘出と、膀胱部分を切除する手術を行います。通常、がんが発生した腎盂のみを摘出するという方法は、行われません。周辺の臓器にもがんが発生している可能性も高いため、同時に摘出、切除手術を行います。腎盂のみを摘出した場合では、残った尿管や腎臓にがんが発生する可能性が出てきます。

しかし、がんがまだ小さい場合では、大掛かりな摘出、切除手術を行わず、内視鏡を使って病巣のみを切除する方法が行われることもあります。

補助療法として手術後に、放射線療法を行うこともあります。さらに、がんが転移していた場合には、化学療法として、マイトマイシン、メソトレキセート、シスプラチン、アドリアマイシンなどの抗がん剤を併用して治療を行います。

早期のうちに治療を行うことができ、がんをすべて切除することができれば、予後はよくなっています。手術後も定期的な検査は受け、他の臓器への転移がないかどうか調べておいたほうがよいでしょう。

腎盂がんの5年生存率は、40〜60パーセントです。

🇮🇸腎盂(じんう)腎炎

腎盂、腎杯に起こった炎症が腎実質まで波及

腎盂(じんう)腎炎とは、主に細菌感染で腎盂、腎杯に炎症を起こした腎盂炎が、腎実質まで炎症が波及した疾患。

大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの感染が原因となって、起こります。感染経路は尿の流れとは逆に、尿道、膀胱(ぼうこう)から尿路を通って上行感染するものが多く、そのほか血管から腎臓に感染するものもあります。

腎盂腎炎は、急性と慢性に分けられます。急性の場合は、寒けを伴った39度以上の高熱が出て、背中から腰にかけて痛みがあり、吐き気、嘔吐(おうと)があります。膀胱炎から起こったものは、排尿痛、頻尿があります。

慢性の場合は、倦怠(けんたい)感、食欲不振、腰痛などがあります。微熱が続くために、風邪と間違える人もあります。

急性の腎盂腎炎は、数日から7日くらいで熱が下がり、全治します。慢性の腎盂腎炎は、10〜20年といった長い期間をかけて、腎臓機能が悪くなる場合もあります。

急性の腎盂腎炎は、若い女性によくみられます。基礎疾患として、膀胱尿管逆流症といって、膀胱から尿が腎臓に逆流する疾患で、多くは先天障害が重要です。繰り返し起こす場合は、こうした基礎疾患の検査が必要です。

腎盂腎炎の検査と診断と治療

尿検査で、膿尿(のうにょう)がみられます。症状などから、診断は容易です。治療を始める前に、尿の細菌培養検査を行うことが大切です。繰り返す場合には、X線による腎盂撮影や膀胱尿管逆流検査などが必要となります。

急性腎盂腎炎の場合は、入院の上、点滴と抗生物質の投与を行います。治療薬の進歩により、特殊なケースを除いては、速やかに改善します。

慢性腎盂腎炎の場合は、完全に治癒させるために、長期間、抗生物質やサルファ剤を投与します。また、尿路結石、前立腺(せん)肥大、尿道狭窄(きょうさく)といった慢性化する原因があったら、これを治療しなければなりません。

生活上の注意として、症状が著しい急性期には、水分を多量にとって、尿量を多くすることが大切になります。

慢性の腎盂腎炎は、経過の長い疾患のため、根気よく治療することが必要。規則正しい日常生活を送り、寒さや過労は再発の誘因になるので、できるだけ避けます。食事は体に抵抗力をつけるため、高エネルギー食とします。

自覚症状がなくとも、月に1〜2回、定期的な尿の検査を受けて、進行の防止に努めます。

2022/08/23

🇳🇴腎炎

血液を、ろ過する糸球体に起こる炎症

腎炎(じんえん)とは、尿を作るために血液を、ろ過する糸球体(しきゅうたい)に、出血性の炎症が起きる疾患です。正確には、糸球体腎炎といいます。

免疫の異常が関係して起こると考えられており、左右の腎臓とも平等に侵されます。病気が進行すると、毛細血管の塊である糸球体だけではなく、尿細管まで障害が広がります。腎臓病のうちで最も多い病気で、一般に1年以内のものを急性(糸球体)腎炎といい、それ以上長く続くものを慢性(糸球体)腎炎といいます。

急性腎炎の症状と早期発見法

急性(糸球体)腎炎は4~10歳の子供に多い疾患で、加齢により発生は減少します。子供では完全に治ることが多いのに対して、成人発病者の一部では慢性腎炎に移行するものもみられますので、慢性化しないよう十分療養するべきです。

細菌、特に溶連菌による扁桃(へんとう)炎、咽頭(いんとう)炎などの上気道感染後、あるいは風邪などのウイルスの感染後、1~3週間たったころ発症する場合がほとんどです。

腎臓の糸球体に炎症が起こるのは、これらの細菌やウイルスが関係する抗原抗体反応によって生じた免疫複合体(抗原抗体複合物)と呼ばれる物質が、血流に運ばれて糸球体に付着するためと考えられています。

通常では、この免疫複合体は糸球体にあるメサンギウム細胞が処理し、発病には至りません。あまりに量が多い場合、糸球体に沈着して炎症を引き起こします。炎症が起こると、糸球体の細胞が異常に増殖したり、血液中の白血球の成分が糸球体の中に入り込んで、糸球体の働きを阻害するとされています。

急性腎炎の症状として、血尿と蛋白(たんぱく)尿が必ずみられます。ただ、血尿は赤ブドウ酒かコーラ様になっている場合もありますが、ほとんどは肉眼ではわからない血尿であり、顕微鏡で検査をして初めて確認されるほうが多いものです。

ほかに、顔や手のむくみ、血圧上昇、食欲低下、だるさ、尿量減少などがみられます。血圧上昇は病院で測定してもらって、初めて指摘されるのが普通ですが、子供の場合には、高血圧によってけいれん発作が起こる場合もあります。

慢性腎炎の症状と早期発見法

慢性(糸球体)腎炎は、腎臓病の中で最も多い疾患。糸球体を中心にした慢性の炎症がみられるもので、さまざまな原因で起こる腎炎が含まれているために、近年では、疾患群(症候群)として考えられるようになっています。

いずれにしても、蛋白尿や血尿とそれに伴う症状が1年以上に渡って、持続する状態を、慢性腎炎と呼びます。ただし、糸球体腎炎以外で、異常尿所見や高血圧を呈する病気は除きます。

この慢性腎炎では、何ら前兆や誘因もなく発症してくることが多く、また進行して腎不全となるまでは、自覚症状のないことが多いのです。そのため、定期健診の時などに検尿で見付かることがほとんどです。

まぶたが腫(は)れぽったくなるほか、疲れやすい、食欲不振、動悸(どうき)、手足のしびれ、目がチカチカする、吐き気、嘔吐(おうと)といった症状が出る場合もあります。

この慢性腎炎は、腎臓の組織の一部を採取し、顕微鏡で調べる腎生検によって、4種類に分けることができます。蛋白尿と血尿が出るという症状は共通しているので、あくまで腎生検を行わないと区別できません。

 腎炎の約4割を占め、日本人の腎臓病で最も多いのがIgA腎症です。このほか、巣状糸球体腎炎、膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎があります。

IgA腎症では、発病初期から肉眼的血尿に気付くことが多いのが特徴的です。発症は10代後半から30代前半に多く、やや男性優位です。顕微鏡で見ると、IgA(免疫グロブリンA)という抗体が、抗原と結合して免疫複合体となり、糸球体のメサンギウムという部位に沈着しています。

巣状糸球体腎炎では、糸球体の基底膜という部位に、微小な変化が生じています。膜性腎症では、糸球体の基底膜が肥厚しています。膜性増殖性糸球体腎炎では、糸球体の基底膜の肥厚に加えて、細胞の数が増える変化が生じています。

急性腎炎の治療と療養上の注意

急性(糸球体)腎炎の治療では、安静と食事療法が主体となります。特に初期の安静は重要なので、入院治療が原則です。食事は蛋白質、塩分、水分の制限が、病気の程度や時期に応じて行われます。

蛋白質と塩分を制限するのは、腎臓の働きが低下すると、蛋白質から生じる窒素化合物や食塩の成分であるナトリウムの排出がスムーズにいかなくなるためです。蛋白質を減らす分、糖質や脂質でカロリーを十分にとります。むくみのある時や、1日の尿量400ml以下と尿が少ない場合、あるいは無尿の場合は、1日に摂取する水分を制限します。病状の改善とともに運動量は増し、食事の内容も変わってきます。

腎炎そのものを、根本的に治す特効薬というものはありません。ただし、急性腎炎のきっかけとなった溶連菌などの感染症の治療には、抗生物質が使われます。ほかに、炎症を鎮めるために抗炎症剤、血尿がひどい時には止血剤、乏尿やむくみがひどい時には利尿剤、高血圧に対しては降圧剤が使われます。

入院して適切な治療を受ければ、むくみや高血圧は、通常1週間以内によくなりますが、病気の程度が重ければ長引くことになります。血尿、蛋白尿なども、2~3カ月で消えていくことが多く、この時点で通学あるいは軽作業が許されるようになります。

退院後は、病気の回復と合わせて医師と相談の上、無理のない生活を送るようにコントロールしていくことになります。一般的いって、子供の場合には、体育の授業や水泳、遠足などのへの参加は控えましょう。大人の場合は、周囲の理解を求めて夜勤や残業などを避け、最低3年程度、激しいスポーツや肉体労働を見合わせる必要があります。女性の場合には、2年ほど妊娠を避けたほうがよいでしょう。

慢性腎炎の治療と療養上の注意

慢性(糸球体)腎炎で最大の問題となるのは、病態が進行するにつれて、次第に腎機能が低下して腎不全となり、人工透析が必要となる例があることです。そのため、病態の進行を阻止することが、治療の最大の目標になります。

現在のところ、進行を確実に止めるという方法は確立していませんが、病態に合わせて、次のような薬物が用いられています。

ネフローゼ症候群の場合と同様、尿蛋白量の多い場合、抗炎症作用がある副腎皮質ホルモン剤(ステロイド剤)が用いられることがあります。腎炎の始まりが免疫反応によると考えられているので、免疫抑制剤が用いられることもあります。

2つの薬を併用して治療に当たることもありますが、この2剤は副作用も強いので、医師の指導のもと、血液検査など定期的なチェックを受けながらの服用となります。「症状が軽くなった」と勝手に判断して、服用を止めることは危険です。

糸球体内で血液が凝固することが腎炎の進行を速めると考えられているため、血液凝固の主役である血小板の働きを弱める薬も、よく用いられています。

高血圧も腎炎の進行を速めることが知られていて、高血圧を合併している場合には、降圧剤による治療が行われます。最近、降圧薬の中には、蛋白尿を減少させ、さらに腎機能の低下を抑制するものの存在が確認され、そのために高血圧がなくても治療に用いられるようになってきました。また、むくみのあるような場合には、利尿剤も用いられます。

食事療法も、腎機能の程度、症状の有無に応じて行われます。基本的には、食塩と蛋白質の摂取量に注意することです。蛋白質は1日、体重1kg当たり1g以下に抑えられます。塩分は軽症の場合、多少控える程度で大丈夫ですが、病気が進行している状態では、1日に5~8g程度にされます。ほかに、水分量とエネルギー摂取量が過不足にならないようにされます。

慢性腎炎は経過が長引く疾患で、一部のものは進行性に悪化しますので、生活上の注意は重要です。まずは、風邪や下痢などを起こすと、数日後に肉眼でわかる血尿や蛋白尿が出たり、体がむくんだりすることがあるので、こうした病気にかからないように注意しましょう。

体力と集中力を必要とする仕事や勉強などは、避けましょう。根を詰めてこなさなくてはならぬことは、腎臓に負担をかけます。なるべくリラックスして過ごせるようにして、夕方から夜にかけても、安静に過ごすことが大切です。

 病状にもよりますが、一般に体操や散歩など軽い運動は大丈夫です。ただし、激しいスポーツや、体を冷やす恐れのある運動は避けましょう。

🇳🇴腎芽腫

染色体異常が原因で、乳幼児の腎臓に発生する悪性腫瘍

腎芽腫(じんがしゅ)とは、乳幼児の腎臓に発生する悪性腫瘍(しゅよう)。胎生期の未分化な腎組織から発生し、腎芽細胞腫、ウイルムス腫瘍(しゅよう)とも呼ばれます。

子供の腎臓に発生する腫瘍のうち、この腎芽腫が90パーセントを占めます。頻度は出生数1万2000~1万5000人に1人、年間では80~100人が発症していると推定されています。半数は2歳前に発症しており、90パーセントは5歳までに発症しています.発症率の男女差は、同等かやや女児に多い傾向があります。

2つある腎臓のうち、ほとんどは片側に腫瘍ができます。まれには、左右両側にできることもあります。原因は染色体異常で、染色体の11番目の短腕の部で、がんを抑制する遺伝子が欠失している時に発症します。無虹彩症や半身肥大症、腎臓の奇形、尿道下裂、水腎症、停留精巣など、生まれ付きの奇形と合併しやすい特徴もあり、大人の腎臓がんとは根本的に違います。

おなかに硬いしこりができ、膨らむのが、最も多い症状。疾患が進行すると、肝臓など近くの臓器へ広がったり、肺に転移することが多く、リンパ節、骨などに転移することもあります。治療法の進歩によって、早い時期に見付かればほとんどが治るようになったものの、予後不良組織群と呼ばれる全体の約10パーセントの腫瘍群は極めて治りにくいものです。

しこりがかなり大きくなるまで自覚症状はあまりみられず、ほとんどが入浴時などに偶然、おなかのはれやしこりに家族が気が付いた時に、発見されます。わき腹に表面が滑らかで硬いしこりとして触れる特徴があります。呼吸によって、しこりが動くことはありません。

一般に、しこりに痛みはありませんが、腹痛や吐き気が起こったり、血尿が出ることもあります。また、不機嫌、顔面蒼白(そうはく)、食欲低下、体重の減少、発熱、高血圧などがみられることもあります。

腎芽腫の検査と診断と治療

乳幼児のおなかに硬いしこりや、異様な膨らみを認めたり、腹痛を訴えて血尿がみられたら、腎芽腫の可能性もありますので、すぐに小児科、あるいは泌尿器科を受診します。進行は比較的ゆっくりなものの、肺やリンパ節に転移しやすく、他のがんと同様に早期発見が大切です。

医師による診断では、胸部と腹部のX線撮影のほか、超音波検査、CT検査、MRI検査を行い、腫瘍の大きさ、周囲への進展状態、リンパ節転移の有無などの情報を得ます。特にMRI検査は、腫瘍と血管との関係から腫瘍の外科的切除が可能かどうかを判断する上でも有用です。肺に転移していると、胸部X線写真で丸い不透明な影が認められます。

血尿は症状としては多くはありませんが、顕微鏡的血尿は約3分の1にみられるとされています。無虹彩症、半身肥大症、尿道下裂などの奇形の合併をしばしばみることもあります。

腎芽腫は腫瘤(しゅりゅう)のできる固形性のがんの中では最も治療しやすく、新生児期に発見して手術で腎臓を摘出すれば、抗がん剤や放射線の治療を受けなくても、もう片方の腎臓が十分にその機能を果たし、完全に治癒することがあります。

一般には、腎臓とともに腫瘤を摘出後、抗がん剤による強力な化学療法を行い、時に放射線照射を併用することによって、腫瘍の病変が完全に消失した状態が長期に持続します。手術前に抗がん剤による化学治療を行って腫瘤を小さくしてから、摘出することもあります。両側性の腎芽腫では、両方の腎臓を摘出せずに腎臓の部分切除を行い、腎臓の温存を図ります。

転移がある場合でも、腫瘤がある腎臓を摘出して抗がん剤や放射線による治療を行うことで、かなり治ります。成人の腎臓がんと違って、肺への転移が致命的になることはありません。

🇫🇮腎下垂

腎臓の上下の移動性が大きく、立位での位置が大きく下がる状態

腎下垂(じんかすい)とは、腎臓の上下の移動性が大きく、臥位(がい)での位置に比べて立位での位置が約10センチ以上下がる状態。遊走腎(ゆうそうじん)とも呼ばれます。

健康な人でも、寝ている状態から急に立ち上がると、腎臓の位置は約2~3センチ下がるのが普通です。腎臓は周囲が脂肪組織で支えられているため、体の動きによって上下に移動するためです。しかし、腎臓を支えている周囲の組織が弱い人では、もっと下がって腎下垂を生じます。

立位では元来、肝臓など重量に富む臓器の荷重負荷がかかるなどのさまざまな要因から、右側の腎臓は左側の腎臓と比較して下垂しやすくなっています。腹壁筋(腹筋)の発達が悪く、やせていて体脂肪の乏しい人は、簡単に腎臓は下垂する傾向にあります。

女性の1~2割は腎下垂といわれ、やせた若い女性にしばしば認められます。特に20歳以上で、出産経験のある女性では、出産によって腹壁筋が弱くなるために右側の腎臓に認められやすくなります。男性でも、腹壁筋が弱い人に認められることがあります。

症状としては、長く立っていると腰痛、側腹部痛、腰背部痛がみられ、臥位になる、あるいは腎臓を押し上げてやると、これらの鈍痛が減少するのが特徴です。また、立った時に腎臓の位置が下がるため、血管や尿管が圧迫されます。立位歩行や荷重などで、症状は持続または増悪します。

血尿もよくみられる症状ですが、目に見えない顕微鏡的血尿が主体です。肉眼的血尿がみられることがあっても、軽度です。立位で背中を反る体位をとった時に、軽微な蛋白(たんぱく)尿がみられることもあります。尿路症状として、頻尿、残尿感、排尿痛、排尿困難、尿失禁などがみられることもあります。そのほか、食欲不振、吐き気、下痢、便秘、胃部膨満感などがみられることもあります。

症状がなければ、治療をする必要はありません。症状がある場合は泌尿器科を受診し、専門医から説明を受け、治療法に関して相談をして下さい。

腎下垂の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、臥位と座位における腎臓の触診を行い、静脈性尿路造影で臥位と立位での腎臓の位置を比較し下垂の程度を観察します。

症状の軽い場合は、治療を行わず、そのまま経過観察します。症状の強い場合には、腹帯、コルセットなどを使用して腹壁筋の緊張を保持します。同時に、腹筋、背筋を強化するための運動療法を行うこともあります。やせている人は、腎臓の周囲の脂肪を増加させ、腎臓の支持、補強を行うために体重を増加させます。

 以前は腎臓を固定する手術も行われましたが、今日ではあまり行われていません。

🇱🇻神経因性膀胱(ぼうこう)

膀胱を支配している神経の障害で、排尿に障害

神経因性膀胱(ぼうこう)とは、膀胱を支配している神経に障害があって、尿が出にくいとか、漏れるといった膀胱の機能障害を起こす疾患。

尿は、膀胱と尿道がうまく働いて排出されます。これらを働かせるためには、働けという命令を伝える神経がしっかりしていないとうまく働きません。この神経因性膀胱による排尿障害は、嚥下(えんげ)性肺炎、褥創(じょくそう=床ずれ)とともに神経疾患の3大合併症といわれており、放置すると尿路感染や腎機能障害などを引き起こすことも多く、重大な症状の1つです。

原因としては、脳や脊髄(せきずい)を交通事故などで損傷した場合や、脳出血、脳梅毒、脳脊髄腫瘍(しゅよう)などの疾患から起こるものがあります。とりわけ、糖尿病による神経障害は、かなり増加しています。子宮がん、直腸がんなどの手術後に起こることもあります。

症状は、損傷の部位や障害の程度などでさまざまな型があります。乳児のように脳からの抑制が効かなくて、意思とは無関係に反射的に排尿が起こったり、膀胱部を強くたたいたり、会陰(えいん)部や肛門(こうもん)部などを刺激すると、排尿が可能になるものもあります。また、高齢者では排尿力の低下や、尿失禁など、ある程度は必ずみられるようになります。

神経因性膀胱の検査と診断と治療

神経因性膀胱の診断では、血液や尿検査のほかに排尿後、膀胱に残っている尿量を測る残尿測定や膀胱機能検査などが行われます。

治療はなかなか困難ですが、できるだけ正常な状態に近付けること、具体的には排尿間隔は2時間以上、尿失禁がなく、残尿も100ml以下を目標とします。

薬物療法としては、蓄尿機能の障害に対しては、排尿筋の異常収縮を抑える薬として抗コリン剤などが、尿道の抵抗を高める薬として交感神経を刺激する薬や抗うつ剤の一種が使用されます。排出障害に対しては、排尿筋の収縮率を高める薬としてコリン作用薬や抗コリンエステラーゼ剤などが、尿道の抵抗を弱める薬として交感神経遮断薬の一種や筋弛緩(しかん)剤などが用いられます。

このような薬剤による治療だけでは不十分な場合、手や腹圧による膀胱訓練、カテーテルによる導尿、さらに神経ブロックや手術などの方法もあります。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...