泌尿器の異常が認められないのに、頻尿などを起こす疾患
膀胱(ぼうこう)神経症とは、腎臓(じんぞう)や膀胱などの泌尿器に異常が認められないにもかかわらず、頻尿や尿意切迫感を起こす疾患。神経性頻尿、過敏性膀胱とも呼びます。
一般に、女性に多くみられる傾向があります。神経質で几帳面(きちょうめん)、強迫的傾向にある人に多いようです。
膀胱神経症を発症する原因は、精神的な要因やストレス、恐怖心などです。膀胱は精神的な影響を受けやすい器官で、排尿には精神的、心理的な要因が関係してくることが少なくありません。例えば、試験や試合、デートや会食、発表会や演奏会、大事な面接や会議、プレゼンテーションなど、人それぞれの勝負時や本番など緊張する場面でトイレが近くなる状態は、誰でも経験することです。
この状態が一過性の現象として終わらず、その後も排尿回数が日常生活に支障を来すほど頻繁になる場合があります。また同じことが起きるのではないかという不安や恐怖心が先立ち、殊更に尿意が意識されてしまう結果、実際に度々尿意を感じるようになり、意識すればするほど我慢できなくなって頻尿のパターンに陥ります。
精神的負担やストレスを感じる場面で精神が高ぶり、何度もトイレに行きたくなった経験や、電車や車の中でトイレを我慢したエピソードなどを切っ掛けに、膀胱神経症は発症します。職場や学校、家庭でのストレスを始め、いじめや暴行、事故や災害などによる重大な精神障害を機に発症することもあります。
通常、排尿痛や発熱は見られず、尿意を意識せずに何かに熱中している時や、夜眠っている時には症状はありません。逆に、尿意を気にしたり、意識すれば意識するほど、膀胱に少量の尿がたまっただけで強い尿意を感じ、我慢できなくなります。
男性では、職場や仕事上のストレスなどで無菌性の前立腺(せん)炎を起こす場合があり、膀胱神経症の症状と複合して長引くケースも少なくありません。
女性では、軽い膀胱炎を実際に患い、それを切っ掛けに膀胱神経症を発症するケースも多く認められます。この場合、頻尿や尿意切迫感のほかに、排尿痛、残尿感、下腹部の不快感など、膀胱炎と同じ症状を認めることがあります。
膀胱神経症の検査と診断と治療
泌尿器科の医師による診断では、まず尿検査を行うと膀胱炎などのように膿(うみ)や血尿などは出ないので、すぐに膀胱神経症と判断できます。就寝中に排尿がみられないことも、診断の手掛かりになります。
さらに、問診によって、他の自覚症状の有無や頻尿に至った心理的要因を把握していく過程で、残尿感などを訴える発症者には、超音波検査による残尿測定などを行うこともあります。頻尿に伴い、切迫性の尿失禁などの症状を訴える発症者には、膀胱内圧測定や、婦人科的な検査を行うこともあります。
検査の結果、器質的疾患がないことがわかれば、膀胱容量が正常であることを確認するために、一日の排尿回数と排尿量を記録してもらいます。朝一番の排尿量が300ミリリットルあれば、膀胱容量が正常であることがわかります。
泌尿器科の医師による治療では、膀胱の過敏性を和らげ、余分な収縮を抑える抗コリン薬を服用したり、心因的な要素が強い時には抗不安薬や自律神経調整薬などを服用することもあります。
抗コリン薬の服用期間中には、排尿記録を基に目標を決めて、排尿間隔を開け、一回量を増やすような生活を心掛けます。服薬を中止することによる頻尿の再発を心配することはありません。 精神面が大きく作用する膀胱神経症の場合、数週間の服用で頻尿の習慣が消え、服薬を中止しても大丈夫な人が多いものです。 改善したら、予防法など考えず、排尿回数に無関心になることが最大の予防法といえるでしょう。
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