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2022/08/30

🇪🇪肩凝り

●肩凝りは筋肉からのSOS信号

 現代病とも称される「肩凝り」。その直接の原因は、筋肉への酸素の供給不足と老廃物の蓄積です。しかしながら、筋肉の酸素不足などを招く原因となると、実に多種多様です。肩凝りを治す方法も、原因によって違ってきます。

 肩凝りの原因の8~9割は、使いすぎや年齢、体形などによるものです。若い時から肩の凝りやすい人は、ミドルになるに従って、ますますひどくなり、「背中に鉛の板を背負っているようだ」と表現する人もいます。

 ミドルの肩凝りの原因は、運動不足とストレスがほとんどだといわれています。肩凝りになりやすい人は、運動不足の上に、ストレスが加わり、筋肉に血流が行かなくなって、一種の循環障害を起こしてしまいます。

 また、高血圧や動脈硬化など他の病気が原因で、肩が凝る場合もなきにしもあらずですので、肩凝り以外の症状がある場合には、それぞれの専門医に相談してみましょう。

 一例を挙げれば、めまい、立ちくらみ、頭痛、背中の痛み、耳鳴り、胸が締め付けられるような痛み、などを感じる場合には、肩凝り以外の病気が隠れていることがあります。とりわけ慢性的な症状の場合は、運動不足とストレス以外の病気を疑ったほうがいいでしょう。「いつもと違う痛み」が「いつもより続く」場合には、注意しなければいけません。

 以下、肩凝りを起こす主な原因を紹介します。心当たりのある方は、肩凝りだけでなく、おおもとの原因を治すことが大切になります。

●肩凝りを生じる原因は複雑

 原因

     解   説

     具 体 例

肩凝りになりやすい体形

 肩凝りを起こしやすいのは、右の具体例のようなタイプ。

 例えば、肥満体の人は、頭や腕など肩の筋肉が支えるべきお荷物が重くなる。やせすぎの人は、肩の筋力が衰えているので、凝りを招きやすい。

 このような体形的に肩の筋肉に負担がかかりやすい人のほか、なで肩、猫背などのように、ふだんの姿勢が負担をかけていることもある。

・肥満体

・極端なやせ形(肩の筋肉が貧弱)

・なで肩(首や肩の筋肉が貧弱なことが多い)

・いつも背中が丸まっているような姿勢をとる

・首を下げ、下を向いたような姿勢をとることが多い

肩に無理な姿勢をとることが多い

 筋肉は、緊張させたり、緩めたりすることで、血液の循環を助けている。ところが、長時間にわたって、右の具体例のような姿勢をとっていると、筋肉の緊張状態ばかりが続いて、筋肉の血行が悪くなる。

 デスクワークが多い人などは、その典型。

・腹ばいになって本を読む

・寝転がってテレビを見る

・新聞を床に置いて座ったままで読む

・足を組み、前かがみでデスクワークをする

・枕が高すぎたり、軟らかすぎたりする

冷え症である

 寒い所にいると、私たちは自然に、前かがみの姿勢で肩をすくめ、体を硬くしてしまう。

 また、このような姿勢をとらないまでも、体が冷えると血管が収縮して血行が悪くなってしまう。

・冷え症である

・夏場、クーラーの効きすぎる場所で仕事をしている

・冬場でも、営業の外回りなどで長時間、外にいる機会が多い

精神的なストレスに弱い

 精神的に緊張したり、悩んだり、怒りなどを感じる時、筋肉内の血管も知らず知らずのうちに収縮している。

 このため、特に筋肉を使わなくても血行が悪くなり、筋肉に老廃物がたまってしまう。

・仕事や日常生活で、不安や悩み、怒りを感じることが多い

・責任感が強く、真面目(まじめ)で几帳面(きちょうめん)

・ちょっとしたことでも真剣に悩んだりしてしまう

・データを取り扱う仕事など、間違えないよう神経を使うことが多い

・ノルマや納期などに追われ、気が重くなることが多い

目が疲れている

 眼鏡やコンタクトレンズが合わないために、しっかり見ようとして無理な姿勢をとることで肩凝りにつながるケース、また、目の疲れや頭痛と連動して肩凝りが起こるケースも多い。

・眼鏡やコンタクトレンズがピッタリ適合せず、見えにくい

・パソコンに向かって長時間、仕事をすることが多い

肩や首の骨や関節、筋肉の異常

 年齢を加えるとともに、首、肩などの骨や関節、筋肉に何らかの異常が起きて神経を圧迫し、痛みやしびれを起こすことがある。

 具体例のような症状のある人は、整形外科などに相談してみることがお勧め。

・肩凝りだけでなく、痛みやしびれを感じることが多い

・腕を上げると肩が痛む

内臓系の病気を患っている

 内臓系の病気の自覚症状の一つとして、肩凝りが起こることも多い。例えば、狭心症、心筋梗塞、肺がん、糖尿病、高血圧、低血圧、胆石(胆のう炎)、更年期障害、貧血、胃炎、胃潰瘍など。

 肩凝りのほかに、右の具体例のような症状がいくつかあるようなら、内科医に相談してみよう。

 また、がんでできた腫瘍のせいで、肩凝りと同じような感覚があることもあるし、顎関節症、噛み合わせの悪さ、歯周病など歯の病気が原因になることもある。

・頭痛、頭が重い、めまい、耳鳴り、動悸、手足の冷え、体全体がだるい、急に胸が締め付けられるような痛みに襲われる、背中や右肩などの痛み、立ちくらみ

・歯や顎の異常

 

●温めるべきか、冷やすべきか

 冷やすと「すーっ」として気持ちがいいため、冷やすものと思われがちだが、基本的には温めること。外傷性の打ち身や捻挫などで、熱を持っている場合には、早期なら冷やすこともあるが、「じん」とくるような肩凝りの場合には、とにかく温めて血液の循環をよくしたほうがいいでしょう。

2022/08/28

🇳🇴かぜ症候群

かぜは、口、鼻から肺までの空気の通り道である呼吸器が、微生物や寒さの刺激を受けたことにより、さまざまな反応を起こした状態(急性炎症)を示します。正確には「かぜ症候群」あるいは「かぜ疾患群」といいます。

ごく軽いかぜを含めると、人は1年間に平均6回かぜをひくという統計があります。呼吸器は四六時中、外の空気に接していますから、トラブルが多くなるのも無理からぬことです。

軽い症状のまま約1週間で治ってしまうことがほとんどですが、場合によっては重い合併症を起こすこともあります。昔から「かぜは万病のもと」といわれてきたように、かぜを決してあなどってはいけません。

●なぜ、かぜにかかるのか?

1.かぜの原因

かぜは寒さやアレルギー反応で起こることもありますが、多くの場合、病原微生物(病原体)の感染が原因で起こる呼吸器の急性炎症です。かぜを起こす病原体にはウイルス、マイコプラズマ、細菌、クラミジアがありますが、かぜの原因の80~90%をウイルス(かぜウイルス)が占めています。かぜウイルスには、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、レオウイルスがあります。これらのウイルスは呼吸器以外でも感染を起こすものがあり、アデノウイルスは眼の病気や乳児の下痢症、エコーウイルスは髄膜炎の原因にもなります。

2.かぜに何回もかかる理由

体は、ウイルスに一度感染するとその免疫ができて、次にそのウイルスが入ってきたときには、迅速に攻撃してやっつけてしまう仕組みを備えています。しかし、この免疫はいつまでも残っているわけではありません。また、ウイルスには多数の型があり、同じ種類のウイルスでも型が違うと免疫は十分には働きません。そのため、異なるウイルス、また違う型のウイルスが侵入してくるたびに、かぜをひくことになります。

3.ウイルスの感染とからだの反応

ウイルスによるかぜをひいている人の痰や鼻水は、たくさんのウイルスを含んでおり、くしゃみや咳をしたときにしぶきとなって飛び出し、空気中に漂います。そして、近くにいる人に吸い込まれ、ほとんどが鼻の粘膜にくっつきます。ウイルスは粘膜にある感染防御機構と戦い、それに勝利すると粘膜の細胞の中に入り込んで増え始めます(感染の成立)。

やがて、ウイルスは細胞内を埋め尽くして、ついには細胞を壊します。体は、これに対して「炎症」で応じます。これが急性鼻炎です。そして、感染が奥に進むにつれ、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎が起こります(病名で○○炎というのは、炎症の炎なのです)。

(なお、かぜウイルスの中には痰や鼻水だけでなく、結膜や便の中にも出てくるものがあります。その場合は、結膜や便に直接触れることでも感染します。)

●症状 

1.炎症の場所によって異なる症状

鼻の炎症は急性鼻炎といい、くしゃみ、鼻水(水状→粘液状→黄色い膿状)、鼻づまりなどの症状を起こし、のどの炎症である咽頭(いんとう)炎では、のどの粘膜の充血や腫れ、痛みを訴えます。さらに、感染が呼吸器の奥へと進んだ喉頭(こうとう)炎では、声がれ、ときには呼吸困難を起こし、気管、気管支、肺にいたると、咳や痰が出るようになります。

2.その他の症状

かぜには、前述のような呼吸器症状の他に、頭痛、発熱、腰痛、全身のだるさ、食欲不振などの全身症状があります。また、腹痛、下痢などの消化器症状が加わることもあります。

3.かぜの病型

これまで説明したように、かぜの症状はさまざまです。そこで、全身症状があるのかないのか、呼吸器症状は何が中心かということで、8つの型(病型)に分けられています。個々のかぜウイルスについて、よく見られる病型というものはありますが、同じウイルスでも場合によってさまざまな病型のかぜを起こします。

主な病原体によるかぜの病型

* インフルエンザ:インフルエンザウイルス

* 普通感冒:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ

* 咽頭炎:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ、細菌(レンサ球菌)

* 咽頭結膜熱:アデノウイルス

* クループ:パラインフルエンザ・インフルエンザウイルス

* 気管支炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

* 異型肺炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス

* 肺炎:インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

4.インフルエンザ

1.インフルエンザとインフルエンザウイルス

インフルエンザは高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型のかぜをいいます。悪寒とともに39~40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状のあとに現れてきます。

こういった全身症状が強いかぜは、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他のかぜウイルスが起こすこともあります。

また、インフルエンザウイルスが起こすかぜは、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻かぜ(鼻水、鼻づまりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型のかぜ)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。

インフルエンザウイルスが感染して症状がでるまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

2.インフルエンザが怖いわけ

インフルエンザが怖いのは、65歳以上を中心にインフルエンザウイルスに感染したひとの約1%が肺炎を合併するからです。インフルエンザに肺炎を合併すると、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがたまにあり、また、いったん治ったように見えながら2~3日で肺炎になることもあります。

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く流行も目立ちません。一方、A型とB型(とくにA型)は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

5.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、細菌より小さくウイルスよりやや大きいマイコプラズマという病原体が起こす異型肺炎という型のかぜです。

のどが赤く腫れて痛み、38℃前後の発熱、激しい乾いた咳、胸痛があります。潜伏期が2~3週間と比較的長く、感染力も強くないため、爆発的に流行することはありませんが、約4年ごとに流行しています。時として、重い合併症を起こすことがあります。

●合併症

かぜの合併症としては、中耳炎(ちゅうじえん)、副鼻腔炎(ふくびくうえん)などが一般的ですが、最も注意を要するのが肺炎です。肺炎は、ウイルスによるかぜで抵抗力が弱ったところに、細菌(ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌、レンサ球菌など)が感染して起こします。インフルエンザによる死亡の8割は肺炎が原因です。

その他、筋炎、心筋炎、また、神経系の合併症(ライ症候群、脳症、ギランバレー症候群、急性小脳失調症、脊髄炎(せきずいえん)、多発神経炎、髄膜炎など)もあり、うっ血性心不全や心筋症などの慢性の病気が悪化することもあります。

●治療法

1.一般療法

体の回復力を高めるには、安静と睡眠が大切です。38℃以上の熱がある場合は、安静を助けるために水枕、氷枕をあてます。体力をつけるには食事も大切です。かぜの時には胃腸の働きが落ちるため、葛湯、おかゆ、スープなど、消化が良く水分の多いものにします。

かぜをひいた人が休んでいる部屋は、気温を18~20℃、湿度を60~70%に保ちます。空気が乾燥していると、呼吸器の粘膜が乾燥して抵抗力が弱くなり、感染しやすくなるからです。乾燥はインフルエンザウイルスの好むところで、湿度30%で最も盛んに増えるためでもあります。

2.薬物療法

かぜの時に使われる薬は、かぜの症状を抑えるためのもの(対症療法)と、細菌を殺すためのもの(化学療法)とに大別されます。かぜの原因のほとんどはウイルスですが、現在のところ、かぜウイルスに効く薬はありません。

1. 対症療法

●抗ヒスタミン剤:鼻水、鼻づまり、くしゃみを抑えます。

●うがい薬、口腔用製剤(トローチ):咽頭(いんとう)痛がある時に使います。

●解熱鎮痛剤:発熱は、病原体をやっつけようとするからだの正常な反応です。ですから、やたらに熱をさげるのはいいことではありません。そこで、解熱剤は38℃以上の発熱、強い頭痛や筋肉痛があり、苦痛のために身体が衰弱するような場合に限って使います。

●消炎鎮痛解熱剤:頭痛やのどの痛みが強い時に使います。熱を下げる作用もあります。

●鎮咳剤:咳には、痰を伴う湿った咳と、痰を伴わない乾いた咳とがあります。痰がある場合は、咳は痰を出す役目をするので、止めない方がよいのです。しかし、乾いた咳は安静や睡眠を妨げて体力を消耗させるだけなので、鎮咳剤で止めてしまいます。

●去痰剤:痰の粘りけが強く、気道にくっついて、なかなか出せない場合に使います。痰に水分を補ったり、痰を分解する働きのある薬です。

●総合感冒剤:以上の対症療法剤を2種類以上組み合わせた製剤です。製剤によって、組み合わせや量が異なるので、症状に合わせて選ぶ必要があります。

2. 化学療法

●抗生物質:抗生物質は、細菌の増殖を抑えたり、殺したりする薬です。かぜでは、細菌が原因であることは少ないのですが、かぜで抵抗力が落ちたところに細菌が感染(二次感染)するのを予防するために、抗生物質を使うことが少なくありません。発熱がある場合、特に重症になる恐れのある高齢者や慢性の病気を持っている人には欠くことのできない治療です。

●かぜの予防

1.簡単にできること

空気中には、ウイルスを含む細かい粒子が浮かんでいて、特に混み合った電車やバス、保育園や学校の教室など、人が多く集まる場所、また、かぜをひいた人がいる部屋では、ウイルスが高濃度で漂っています。そこで、かぜの予防の第一は、このような場所を避けることです。

インフルエンザウイルスやライノウイルスに感染した人が休んでいる部屋では、湿度を60~70%に保つと、ウイルスの増殖が抑えられ、呼吸器の抵抗力を保つことにもなり、家族への感染を少なくすることができます。頻回な手洗いやうがいも予防に効果があります。

そして、何よりも体調を整えて免疫力を保つことです。生活の乱れ(睡眠不足、栄養不足、気のゆるみ)、強すぎる精神的ストレスがないようにしましょう。女性では、生理中はホルモンの関係でかぜをひきやすくなるのでご用心ください。

2.ワクチン

ワクチンとは、ウイルスの一部(ワクチン)を体に入れて免疫を作らせ、本当のウイルスがやってきた時に、その免疫でやっつけてしまうというものです。現在のところ、かぜウイルスでは、インフルエンザウイルスだけにワクチンがあります。

流行の直前に、流行するインフルエンザウイルスと同じ型のワクチンを打っておけば、そのウイルスがからだに入ってきた時、確実にやっつけることができます。また、ワクチンの型が流行しているインフルエンザウイルスと少し異なっていても、侵入してきたウイルスの増え方を抑える効果があります。つまり、ワクチンを打っておけば病院にかかるほどの症状にはなりにくく、なったとしても入院するほどの重症化しない、重い合併症で命を落とす危険が少なくなります。

このようにワクチンはインフルエンザの予防に有効です。特に、体力や免疫力が低いためにインフルエンザにかかると重症になりやすい高齢者や乳幼児、また、集団生活が流行の温床となる幼少児にとって、確実に役に立つ予防法です。

3.重症になりやすい人

かぜは一般には軽い病気ですが、高齢者や乳幼児、慢性の病気(基礎疾患)を持つ人では、合併症を起こして重症になることも珍しくありません。

これらの方々は、かぜにかからないよう普段から予防することが大切です。頻回の手洗いやうがいを励行し、インフルエンザが流行する時期に近づいたら、先述したワクチンを受けておきましょう。また、人混みに近づかないことも立派な予防法です。うっかり、かかってしまった場合は、重症になるのを防ぐために早めに治療を受けてください。

呼吸器の病気を持つ人 気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎など

心臓の病気を持つ人 うっ血性心不全、弁膜症、狭心症など

腎臓の病気を持つ人 慢性腎不全、透析患者、腎移植など

代謝性の病気を持つ人 糖尿病、アジソン病など

免疫力が低下している人 免疫不全状態

その他の人 高齢者、妊産婦、乳幼児など

「かぜ症候群」について説明しました。皆さんの健康を守るために少しでもお役に立てれば幸いです。わからない点や心配な点などある場合は、お近くの掛かり付け医などの医療機関にご相談ください。

2022/08/12

🇦🇲カーパルトンネル症候群

手首にあるカーパルトンネル内で神経が圧迫されて、手や指がしびれ、痛みが起こる疾患

カーパルトンネル症候群とは、手首の手のひら側にある骨と靭帯(じんたい)に囲まれたカーパルトンネル(手根管〔しゅこんかん〕)の中で、神経が慢性的な圧迫を受け、しびれや痛み、運動障害を起こす疾患。手根管症候群とも呼ばれます。

カーパルトンネルは、手関節部にある手根骨と横手根靱帯で囲まれた伸び縮みのできない構造になっており、その中を1本の正中神経と、9本の指を動かす筋肉の腱(けん)が滑膜性の腱鞘(けんしょう)を伴って通っています。

初期には人差し指、中指がしびれ、痛みが出ますが、最終的には親指から薬指にかけての親指側にしびれ、痛みが出ます。

このしびれ、痛みは明け方に強く、目を覚ますと指がしびれ、痛みます。ひどい時は夜間の睡眠中に、痛みやしびれで目が覚めます。この際に手を振ったり、指を曲げ伸ばしすると、楽になります。手のこわばり感もあります。

進行すると親指の付け根の母指球筋という筋肉がやせてきて、親指と人差し指できれいな丸(OKサイン)ができなくなります。細かい作業が困難になり、縫い物がしづらくなったり、細かい物がつまめなくなります。

原因が見いだせない特発性というものが多く、原因不明とされています。妊娠期や出産期、更年期の女性に多く生じるのが特徴で、骨折などのけが、仕事やスポーツでの手の使いすぎ、腎不全のために人工透析をしている人などにも生じます。腫瘍(しゅよう)や腫瘤(しゅりゅう)などの出来物でも、生じることがあります。

妊産婦と中年の女性にはっきりした原因もなく発症する特発性のカーパルトンネル症候群は、女性のホルモンの乱れによる滑膜性の腱鞘のむくみが誘因と考えられ、カーパルトンネルの内圧が上がり、圧迫に弱い正中神経が偏平化して症状を示すと見なされています。

けがによるむくみや、手の使いすぎによる腱鞘炎などでも、同様に正中神経が圧迫されて症状を示すと見なされています。

最近では、パソコンの使用者が多いアメリカや日本で、カーパルトンネル症候群が増えていることが注目されています。パソコンは、手首を不自然な位置に置いたまま動かします。そして、長い時間キーを打ち、マウスを操作することは、手首に大きな負担をかけます。また、キーを打つ際に、無意識に力を入れている人もいます。こうして特定の筋肉や腱だけを繰り返し使うことで、手首を傷めてしまうのです。

パソコンだけでなく、レジスター係、食肉加工業者、電気組み立て工、建築施工業者、板金工、自動車修理工、調理員、包装・箱詰め作業者、音楽家、針仕事・編み物作業者、農業従事者、歯科衛生士なども、仕事での手の使いすぎによってカーパルトンネル症候群を発症する可能性がある職業です。

指にしびれ、痛みがあり、朝起きた時にひどかったり、夜間睡眠中に目が覚めるようなら、整形外科を受診することが勧められます。

カーパルトンネル症候群の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、手首の手のひら側を打腱器などでたたくとしびれ、痛みが指先に響きます。これをチネル(ティネル)サイン陽性といいます。手首を手のひら側に最大に曲げて保持し、1分間以内にしびれ、痛みが悪化するかどうかをみる誘発テストを行い、症状が悪化する場合はファレンテスト陽性といいます。母指球筋の筋力低下や筋委縮も診ます。

補助検査として、電気を用いた筋電図検査を行い、カーパルトンネル(手根管)を挟んだ正中神経の伝導速度を測定します。正中神経を電気で刺激してから筋肉が反応するまでの時間が、カーパルトンネル症候群では長くなります。知覚テスターという機器で感覚を調べると、カーパルトンネル症候群では感覚が鈍くなっています。 腫瘤が疑われるものでは、エコーやMRIなどの検査を行います。

首の病気による神経の圧迫や、糖尿病性神経障害、手指のほかの腱鞘炎との鑑別も行います。

整形外科の医師による治療では、消炎鎮痛剤やビタミンB12などの内服薬、塗布薬、仕事やスポーツの軽減、手首を安静に保つための装具を使用した局所の安静、腱鞘炎を治めるためのカーパルトンネル腱鞘内へのステロイド剤注射など、保存的療法が行われます。

保存的療法が効かない難治性のものや、母指球筋のやせたもの、腫瘤のあるものなどは、手術が必要になります。以前は手のひらから前腕にかけての大きな皮膚切開を用いた手術が行われていましたが、現在はその必要性は低く、靭帯を切ってカーパルトンネルを開放し、神経の圧迫を取り除きます。カーパルトンネルの上を4~5cm切って行う場合と、カーパルトンネルの入り口と出口付近でそれぞれ1~2cm切って内視鏡を入れて行う場合とがあります。

とりわけ母指球筋のやせたものは、手術を含めた早急な治療が必要となります。母指球筋のやせた状態が長く続くと、カーパルトンネルを開放する手術だけでは回復せず、腱移行術という健康な筋肉の腱を移動する手術が必要になります。

🇦🇲外陰炎

いろいろな原因により、女性性器の外陰部に発生する炎症

外陰炎とは、いろいろな原因によって女性性器の外陰部に発生する炎症。

外陰とは、性器の外側の部分である恥丘、大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)、会陰(えいん)の総称です。この外陰部に、細菌やウイルス、かびなどの病原体が感染したり、薬物などの化学物質や腟からの下り物などが刺激になって、急性、慢性の炎症を引き起こします。

外陰単独に発生することもありますが、多くの場合は膣炎を合併しており、その下り物の刺激に体の抵抗力の低下が加わって発症しています。糖尿病やアレルギーのある人は、特になりやすい傾向があります。また、高齢者や子供のように外陰部の皮膚や粘膜が弱い人でも、発症しやすくなります。

初期の症状としては、かゆみですが、炎症が進むと赤くはれて痛みます。ただれたりすると、少量の出血をみます。炎症が慢性化すると、皮膚や粘膜が白っぽくなり、頑固なかゆみが続きます。

外陰炎の検査と診断と治療

外陰部のかゆみが現れて2〜3日しても治らない時は、婦人科あるいは産婦人科を受診します。頑固なかゆみが続く時は、外陰部の粘膜が白く硬くなる硬化性苔癬(たいせん)や悪性病変も考えられるので、必ず受診するようにします。

医師による診断では、まず外陰部を視診します。次いで、外陰や腟分泌物中の病原体を検出します。糖尿病があると発症しやすいため、しばしば再発するような時は、糖尿病の有無も調べます。

治療では、原因に応じて、細菌やウイルス、かびに効く抗生物質の入った軟こうを用います。時には、かゆみを止める抗ヒスタミン剤や、ステロイドホルモン含有の軟こうを用います。高齢者のように外陰や腟粘膜の弱い場合は、ホルモン剤を投与して強化を図ります。

なお、外陰炎がある時は、局所を化粧せっけんなどで洗うと症状が悪化するので、お湯で洗い流すだけにするか、無刺激性のせっけんを使用するようにします。

🇦🇿外陰がん

女性性器の外陰部にできる、比較的まれながん

外陰がんとは、女性性器の外陰部にできる皮膚がんの一種。あまり多いものではなく、頻度は女性性器がんの3~4パーセントです。

外陰とは性器の外側の部分である大陰唇、小陰唇、陰核、外尿道口、腟前庭(ちつぜんてい)、会陰(えいん)の総称で、外陰がんのほとんどは大陰唇に発生します。

日本での年間発生数は10万人当たり0.5人以下で、高齢者に多く、50歳代から増え始め、60歳代、70歳代が最も多くなります。近年は、平均寿命の延びとともにやや増えています。

原因はいまだ不明な点が多いのですが、妊娠や出産経験のない人に多く、若いころに梅毒や尖圭(せんけい)コンジロームなど性病にかかった人がなりやすく、外陰白板症からがんに進むことがあります。また、肥満、高血圧、糖尿病のある人に多いようです。

症状としては、外陰部、特に大陰唇や陰核、小陰唇などに硬いしこり、すなわち腫瘤(しゅりゅう)ができ、頑固なかゆみが出てきます。腫瘤の周囲に、白斑(はくはん)を伴うこともあります。

次第に腫瘤が大きくなると、表面にびらんや潰瘍(かいよう)ができ、引っかいて出血することがあります。痛みや、排尿時の灼熱(しゃくねつ)感なども出てきます。 さらに、太ももの付け根の鼠径(そけい)リンパ節がはれてきます。

外陰がんの検査と診断と治療

外陰部の腫瘤や、頑固に続くかゆみなどがある場合には、積極的に婦人科を受診します。

医師による診断では、まず外陰部を視診します。次いで、外陰部の皮膚は乾燥していて細胞診には向かないため、初期のものでは、疑わしい部位の組織の一部を採取して調べる生検を行います。潰瘍を形成するようになったものでは、細胞診でも診断できます。

治療は主に手術療法で、腫瘤を広範囲に切除し、周囲のリンパ節や鼠径部のリンパ節も切除します。がんが外陰部を超えたり、他の臓器に広がっている場合は、子宮、腟と一緒に直腸、膀胱(ぼうこう)も切除することもあります。これらの手術の後、太ももなどの皮膚を移植する外陰形成術も行われます。

進行がんでは、手術療法に放射線療法と抗がん剤による化学療法を併用して、治療に当たる場合もあります。

🇦🇿外陰上皮内腫瘍

ヒト乳頭腫ウイルスが感染して、性器の外陰部に丘疹ができる疾患

外陰上皮内腫瘍(しゅよう)とは、主にヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)16型と18型が感染して、性器の外陰部に丘疹(きゅうしん)ができる疾患。外陰上皮内腫瘍は婦人科での呼び名で、皮膚科ではボーエン様丘疹と呼ばれます。

性行為感染症の1つとされており、一般に20~30歳代の性活動が盛んな年代に多くみられ、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。性的パートナーがウイルスを体内に保有しているキャリアならほぼ感染するほど、ヒト乳頭腫ウイルスの感染力は強く、皮膚や粘膜との直接的または間接的な接触により感染し、唾液(だえき)、血液、生殖器からの分泌液などの体液からは感染しません。

感染後3週間から6カ月程度で、男性では陰茎と陰嚢(いんのう)、女性では大陰唇、小陰唇、陰核、腟前庭(ちつぜんてい)、処女膜など性器の外陰部や、肛門(こうもん)周囲などに、2ミリから1センチくらいの黒褐色の丘疹、すなわちいぼが多発します。個々の丘疹が癒合して、大きな平面状になることもあります。丘疹は、外陰部の扁平(へんぺい)上皮細胞が異型化して増殖したものです。

症状としては、外陰部のはれ、かやみ、痛みを生じます。

同じ性行為感染症の1つで、ヒト乳頭腫ウイルス6型と11型が感染して、性器に1ミリから3ミリくらいのカリフラワー状の丘疹を生じる尖圭コンジロームと、区別が付きにくい場合もあります。混合感染して、外陰上皮内腫瘍と尖圭コンジロームを一緒に発症することもあります。

また、外陰上皮内腫瘍の病変は、病理組織学的にはボーエン病の病変に類似しているとされています。ボーエン病は、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病で、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つです。

しかし、比較的若い人に生じた外陰上皮内腫瘍が悪性化することは少なく、90パーセントは体内の免疫力で数カ月から3年以内で、ヒト乳頭腫ウイルスは自然消滅します。

10パーセントはウイルスが細胞の中に残り、その中の10パーセントから20パーセントは悪性で、さらにその中の10パーセント子宮頸(けい)がんや、外陰がん、肛門がんなどを発症するリスクがあります。

外陰上皮内腫瘍の受診科は、泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科(女性)となります。

外陰上皮内腫瘍の検査と診断と治療

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尖圭コンジロームや、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジロームなどのほかの疾患と鑑別します。判断が難しい場合は、丘疹の一部を切除して顕微鏡で調べる組織検査で判定することもあります。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。

泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による治療では、一緒にできることもある尖圭コンジロームの場合と同じで、丘疹が小さくて少数なら、局所免疫調節薬であるイミキモド軟こう、ポドフィリン液、5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれています。

一般的には、液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。改善しない場合や悪性化が疑われる場合は、外科的切除も考慮します。

診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。また、子宮頸がん、外陰がんなどの発症の可能性があるという観点から、治癒が確認できるまで治療、あるいは経過観察を怠らないようにすべきです。ヒト乳頭腫ウイルス16型に長期間感染していると、子宮頸がんを発症する可能性があると考えられています。

なお、外陰上皮内腫瘍を生じた男性の性的パートナーである女性は、子宮頸がんの発症に注意し、検診を定期的に行うことが勧められます。

🇹🇲外因性眼内炎

けがや手術により目にできた傷口から直接、細菌や真菌が侵入して起こる目の感染症

外因性眼内炎とは、けがや手術などにより目にできた傷口から直接、細菌や真菌(カビなど)、原生動物が侵入して起こる目の感染症。健常な人や目の手術を受けたことがない人に発症することは、ほとんどありません。

一方、体のほかの部分に感染していた細菌や真菌、原生動物が血流に乗って、目に侵入して起こる目の感染症は、内因性眼内炎です。

外因性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目の手術による外因性眼内炎のほとんどは、術後2日から3日ほどで発症します。原因となる微生物によっては、術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

症状が出たら、早めに眼科を受診します。細菌によるものは数時間から数日の単位で、真菌によるものは数日から数週間の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

外因性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる微生物が入った可能性が強いとして、外因性眼内炎と判断します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因微生物を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤または抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

眼内炎の原因であると判明した微生物に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤や抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤や抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇹🇲外因性細菌性眼内炎

けがや手術により目にできた傷口から直接、細菌が侵入して起こる目の感染症

外因性細菌性眼内炎とは、細菌が手術の切開部や眼球のけがから直接、目に侵入し、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

目の手術による外因性細菌性眼内炎のほとんどは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌などのグラム陽性球菌が原因となって、手術後2日から3日ほどで発症します。プロピオニバクテリウム・アクネスというグラム陽性桿菌(かんきん)や、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌が原因となる場合は、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

眼球のけがによる外因性細菌性眼内炎は、グラム陽性球菌のほか、土壌中にも存在するグラム陽性桿菌、緑膿(りょくのう)菌などのグラム陰性桿菌が原因となって、発症します。

外因性細菌性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目のかすみ、痛みの症状が出たら、早めに眼科を受診します。数時間から数日の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

外因性細菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる細菌が入った可能性が強いとして、外因性細菌性眼内炎と判断します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べ、瞳孔(どうこう)を開いた散瞳下の精密眼底検査を行います。

続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている細菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

また、同じような症状が出る外因性真菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

後に、感染の原因であると判明した細菌に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇳🇱外因性真菌性眼内炎

けがや手術により目にできた傷口から直接、真菌が侵入して起こる目の感染症

外因性真菌性眼内炎とは、真菌が手術の切開部や眼球のけがから直接、目に侵入し、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。

目の手術による外因性真菌性眼内炎のほとんどは、手術後2日から3日ほどで発症します。原因となる真菌によっては、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

原因となる真菌は、皮膚や腸管に普通に存在しているカンジダが多く、次いでアスペルギルス、クリプトコックス、フサリウムなどが続きます。

外因性真菌性眼内炎の初期症状としては、 目の前に蚊など小さい物が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかっているように見える霧視などが出ます。

眼内の炎症が悪化すると、ひどい目の痛み、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、視力低下を自覚するようになり、さらに進行すると、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

飛蚊症が出た時期に眼科を受診し、適切な治療を受ければ、ほとんどのケースで治癒します。しかし、数日から数週間の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

外因性真菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる真菌が入った可能性が強いとして、外因性真菌性眼内炎と判断します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べ、瞳孔(どうこう)を開いた散瞳下の精密眼底検査を行います。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている真菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

また、同じような症状が出る外因性細菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

原因となる真菌はカンジダがほとんどですので、第1選択の抗真菌剤としてトリアゾール系薬剤のジフルカンを用います。

後に、感染の原因であると判明した真菌に応じて、抗真菌剤の選択を調整することがあります。ジフルカンが無効な場合は、ほかのファンギゾン、アンコチル、フロリード、イトリゾールなどの抗真菌剤を選択します。

抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。

感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇫🇷回外筋症候群

肘関節周辺で後骨間神経が圧迫され、神経まひが引き起こされる疾患

回外筋(かいがいきん)症候群とは、前腕の親指側にある橈骨(とうこつ)と小指側にある尺骨(しゃくこつ)、この2つの細長い骨の間をつなぐ骨間膜の前後を走る後骨間(こうこつかん)神経が圧迫され、引き起こされる神経まひ。後骨間神経まひとも呼ばれます。

運動神経である後骨間神経は、鎖骨の下から手首、手指まで走る知覚神経である橈骨神経から、肘(ひじ)の辺りで分岐して、手の甲を顔に向ける回外筋の浅層と深層の間に潜り込み、指を伸ばすいくつかの筋肉を支配しています。

後骨間神経が肘の下で、回外筋の浅層で形成されたフローゼのアーケードと呼ばれる骨間膜の部位を通る際に、何らかの原因で圧迫(絞扼〔こうやく〕)されると、回外筋症候群が引き起こされます。

上腕骨や上腕骨顆上(かじょう)の骨折などの外傷が原因で引き起こされるものの、一般には使いすぎが原因で引き起こされるため、手や腕を内側に回す回内、外側に回す回外を多く繰り返す、指揮者やギター奏者、あるいはテニスやバドミントンなどのスポーツ選手に起こることがあります。

発症すると、肘周辺や前腕部が痛み、肘が伸ばしにくい日が続きますが、3~7日で痛みは消えます。その後、まひが生じて、下垂指(ドロップフィンガー)になります。

下垂指になると、手首の関節の背屈は可能なものの、手指の付け根の関節の背屈が不可能になり、指のみが下がった状態になります。重度の場合は、手指を付け根から全く伸ばせなくなり、親指を広げられなくなります。まひの状態が長く続くと、筋肉の委縮が起こり、腕の筋肉がやせ細ってきます。

後骨間神経は運動神経であるため、手の甲から前腕の皮膚を触った感覚には異常はありませんが、まれに知覚異常を認めることもあります。

回外筋症候群に気付いた場合には、整形外科、ないし神経内科を受診することが勧められます。

回外筋症候群の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、下垂指と皮膚の感覚障害のないことで判断します。確定診断には、筋電図検査、X線(レントゲン)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)、超音波(エコー)検査などを必要に応じて行います。

回外筋症候群の初期では、上腕骨外側上顆炎(テニス肘、バックハンドテニス肘)との鑑別が大切となります。

整形外科、神経内科の医師による治療では、回復の可能性のあるものや原因が明らかでないものに対しては、局所の安静、薬剤内服、必要に応じ装具、運動療法などの保存療法を行います。薬剤内服では、 ビタミンB12 、消炎鎮痛剤などを服用することが有用です。

ほとんどは保存療法で回復しますが、数パーセントは回復しないこともあります。中にはフローゼのアーケードの部位の前後で後骨間神経の砂時計様のくびれが存在することもありますので、3~6カ月ほど様子をみて全く回復しないもの、まひが進行するもの、骨折などの外傷で手術が必要なもの、腫瘤(しゅりゅう)のあるものでは、手術を行います。

神経損傷のあるものでは、神経剥離(はくり)、神経縫合、神経移植などの手術を行います。神経の手術で回復の望みの少ないものでは、ほかの筋肉で動かすようにする腱(けん)移行手術を行います。

🇹🇯回帰熱

野生のダニやシラミが媒介する細菌感染症

回帰熱とは、野生のダニやシラミに媒介されることで発症する細菌感染症。再帰熱とも呼ばれます。

回帰熱を発症すると、発熱期と無熱期を数回繰り返すことから、この疾患名が付けられました。回帰熱を引き起こす病原体は、スピロヘータ科ボレリア属のボレリア・レカレンチス、ボレリア・ミヤモトイ、ボレリア・ヘルムシーなどの細菌で、回帰熱ボレリアとも呼ばれます。

回帰熱には、ダニが媒介してボレリア・レカレンチスやボレリア・ミヤモトイを病原体とするものと、シラミが媒介してボレリア・ミヤモトイやボレリア・ヘルムシーなどを病原体とするものがあります。

ダニ媒介回帰熱は、アフリカ大陸、イベリア半島(特に地中海地域)、中央アジア、中東の一部、インド、中国、アメリカ大陸など非常に広い範囲で分布します。シラミ媒介回帰熱は、エチオピア、スーダン、南スーダン、ソマリアなどアフリカ大陸の高地、インド、南米アンデス山地などでみられます。

日本では、海外で感染し帰国後に発症した数例を除き、過去数十年間、国内で回帰熱の患者の報告はありませんでしたが、近年の逆上り調査の結果、2011年以降に、北海道でボレリア・ミヤモトイ感染による回帰熱の患者2名が発生していたことが明らかになりました。

日本では、回帰熱は感染症法で全数把握対象の4類感染症に指定されており、診断した医師は直ちに保健所に届け出ることになっています。

回帰熱は、基本的にダニやシラミに刺されることを原因として発症します。人から人に直接感染することはありません。

刺されてから約1〜2週間の潜伏期間をへて、病原体が血液中に存在して40℃以上の高熱が1週間ぐらい続き、その後一時的に細菌が減少して約1週間は熱がなく、再び発熱するといった発熱期と無熱期を複数回繰り返します。

発熱期には、発熱以外に頭痛や筋肉痛、関節痛、悪寒、吐き気、結膜炎、点状出血、黄疸(おうだん)、肝臓や脾臓(ひぞう)の腫大(しゅだい)などが生じます。無熱期には、発汗、倦怠(けんたい)感がみられ、時に低血圧症や赤いぶつぶつとした発疹(はっしん)が発生することもあります。

一般的には2回目以降の発熱期は短く、熱の程度も軽くなります。これを繰り返した後、最終的に解熱します。

ただし、発熱期には、中枢神経障害として髄膜炎や脳出血、心筋炎、肺炎などを起こすこともあり、症状が重い場合には死に至ることもあります。妊婦が感染した場合は、低出生体重児や早産、自然流産のリスクが高まります。

ダニ媒介回帰熱とシラミ媒介回帰熱の症状は似ていますが、一般にシラミ媒介回帰熱のほうがより重篤な症状を示します。致死率は、ダニ媒介回帰熱では10%以下ですが、シラミ媒介回帰熱では50%にまで達することがあります。

回帰熱の検査と診断と治療

内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による診断では、その特殊な熱型と、血液中の病原体ボレリア属の顕微鏡による検出によって、容易に回帰熱と確定できます。

血液検査では、血液中の細菌量が比較的多い発熱期に採血し、血液を染色して顕微鏡で観察して病原体の特徴的な形態が見られるか調べます。ほかにも、抗原や遺伝子などを検出する蛍光抗体法(免疫蛍光法)やPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法など別の方法を選択することもあります。

内科、皮膚科、感染症科、感染症内科などの医師による治療では、抗生物質を使用します。テトラサイクリン系の抗生物質が最も有効で、ストレプトマイシン、ペニシリンも効果がありますので、年齢などに応じて使用する抗生物質を決定します。

ただし、抗生物質の初回投与後数時間以内に悪寒や震えが生じ、その後ショックから死亡に至ることもあるので、注意が必要です。この反応は、ダニ媒介回帰熱の場合は30〜40%、シラミ媒介回帰熱の場合は80〜90%の症例で生じるといわれています。

回帰熱はワクチンによる予防対策を講じることができない疾患のため、病原体を保有するダニやシラミに刺されない対策を講じることが重要です。

そのポイントは、森林作業や農作業、レジャーなどで、草むらややぶなどダニやシラミが多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖(ながそで)、長ズボン、帽子、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。

衣類にダニがついていることがあるので、森林や野山などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。

万が一ダニ類に刺され、皮膚に吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、入浴して体をよく洗って注意深く取り除くか、医療機関で処理してもらうことです。

シラミが移ることを防ぐために、衣類や寝具、ヘアブラシなどの共有を避けます。

🇹🇯外脛骨障害

足関節の内くるぶし前下方にある外脛骨に痛みを感じる障害

外脛骨(がいけいこつ)障害とは、足関節の内くるぶし前下方にある、舟状(しゅうじょう)骨という骨の内側に存在する外脛骨に痛みを感じる障害。有痛性外脛骨とも呼ばれます。

外脛骨は、普通には退化して存在しない余分な骨である過剰骨に相当します。過剰骨である外脛骨は、日本人の15〜20パーセントに認められるものの、多くは足部中央の内側に骨の出っ張りがみられるだけです。

しかし、スポーツ活動が盛んになる小学校高学年から中学生になると、スポーツによる使いすぎや、シューズによる圧迫、さらには捻挫(ねんざ)などの外傷を契機に、外脛骨に痛みを感じる外脛骨障害を生じることがあります。

原因の多くは、比較的大きな外脛骨と舟状骨とを結合している薄い線維軟骨が損傷されるためで、外脛骨がわずかに動くことにより痛みを生じます。

圧倒的に女子に多く発症し、土踏まずが低く縦アーチのない足、いわゆる扁平足(へんぺいそく)の傾向のある人も、体重がより内側にかかるために発症しやすくなります。

症状は、足の内側に骨性の隆起があり、ここを押した時の圧痛や、シューズを履いた時の痛み、スポーツをした時の痛みがあり、足全体のだるさを覚えることもあります。激しい痛みではありませんが、痛みを避けるために、外側に体重をかけて歩いていることがあります。

外脛骨障害は若年性のスポーツ障害として数多くみられる疾患の一つですが、成人になって痛みが発症することも少なくありません。多くは捻挫を契機として足部中央の内側に痛みが出現しますが、時には明らかな誘因がなく痛みが生じることもあります。

外脛骨障害の検査と診断と治療

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による診断では、足の内側に骨性の隆起と同部位の圧痛があり、単純X線(レントゲン)検査で外脛骨が確認されると、比較的容易に外脛骨障害と確定できます。

区別すべき他の障害としては、外脛骨の存在しない外反扁平足、後脛骨筋腱(けん)炎、シンスプリント、膝蓋骨亜脱臼(しつがいこつあだっきゅう)症候群があります。

整形外科、形成外科、ないし足の外科の医師による治療では、まず局所の安静を行い、鎮痛剤、温熱療法などの保存療法で痛みの改善を図ります。症状が長引くケースや、繰り返し痛みが出現するようなケースでは、ギプス固定を行ったり、土踏まずの部位を持ち上げる足底板(アーチサポート)を装着する方法が有効なこともあります。

4カ月以上適切な保存療法を行っても一向に症状の改善がないケースや、何度も再発を繰り返し、日常生活やスポーツ活動に支障を来すようなケースでは、手術的に外脛骨の摘出術や接合術を行うこともあります。

外脛骨障害を発症した少年少女は、骨の成長とともに症状が改善することが多いので、焦らずに痛みを生じない程度のものだけに運動を制限して回復するのを待ちましょう。ジャンプやダッシュなど足部に負担のかかるスポーツ活動を3週間程度中止し、筋力トレーニングなど局所に負荷のかからないものに限るようにします。

スポーツ活動における練習量と練習メニューの見直しや、シューズが適しているかどうかをチェックすることも必要です。特に野球やサッカーなどで使用するスパイクシューズは、靴の足底部が堅く衝撃吸収に劣ることが多く、さらに土踏まずの部分の盛り上がりがほとんどないため、足にかなりのストレスがかかります。

そこで、ランニングや筋力トレーニングなど本来の競技特性に関係のない練習では、なるべく通常のジョギングシューズに履き替えるようにするだけでも、症状を和らげることができます。

🇸🇦壊血病

ビタミンCの不足で起こる、出血性の障害

壊血病とは、ビタミンCの欠乏によって、出血性の障害が体内の各器官で生じる疾患。ビタミンC欠乏症とも呼ばれます。

水溶性ビタミンであるビタミンCは、血管壁を強くしたり、血液が凝固するのを助けたりする作用を持っています。また、生体内の酸化還元反応に関係し、コラーゲンの生成や骨芽細胞の増殖など、さまざまな作用も持っています。

成人におけるビタミンCの適正摂取量は、1日に100mgとされています。日本人はもともとビタミンCの摂取量が多く欠乏症になりにくいのですが、3~12カ月に渡る長期、高度のビタミンC欠乏があると、壊血病が生じます。妊娠や授乳時では、ビタミンCの必要量も増えます。

ビタミンCが欠乏すると、毛細血管が脆弱(ぜいじゃく)となって、全身の皮下に点状の出血を起こしたり、歯肉に潰瘍(かいよう)ができたり、関節内に出血を起こしたりします。また、消化管や尿路から出血することもあります。一般症状として、全身の倦怠感(けんたいかん)や関節痛、体重減少が現れます。

小児においても、壊血病は生じます。特に生後6~12カ月間の人工栄養の乳児に発生し、モラー・バーロー病とも呼ばれています。現れる症状は、骨組織の形成不全、骨折や骨の変形、出血や壊死(えし)、軟骨や骨境界部での出血と血腫(けっしゅ)、歯の発生障害などです。

壊血病の検査と診断と治療

乳児では1日100mg、成人では1日1000mgのビタミンCを投与すると、症状の改善が認められます。ただ、長期に投与すると尿路結石(シュウ酸カルシウム結石)が生じることがあり、注意が必要です。

予防としては、新鮮な果物や野菜を十分に取ります。また、煮すぎない、ゆですぎない、ミキサーに長時間かけないなど、調理によるビタミンCの破壊に気を付ければ、まず壊血病の心配はありません。

🇺🇿介護うつ

家族を在宅介護する人に、ストレスが原因で起こる、うつ病

介護うつとは、家族を在宅介護するストレスが原因で起こる、うつ病。介護従事者の多数は40歳代から60歳代の女性であり、この年代の女性にとって、在宅介護は大きなストレス因子となっています。

厚生労働省の研究班が2005年、在宅介護者を対象に実施したアンケートによると、在宅介護者の23パーセント、およそ4人に1人が軽度以上のうつ状態にあるといいます。うつ病の発症率はおよそ7パーセントですから、介護に当たる人はそうでない人の約3倍、うつ病になりやすい状況下にあるといえます。

また、「死んでしまいたいと思うことがあるか」と聞いた質問に対して、65歳以上の介護者の3割以上が「ある」「少しある」と回答。さらに、介護者の約5割が介護について相談できる仲間がほしいと感じており、介護者の支えとなる存在の必要性が浮き彫りとなっています。

在宅介護は、その物理的な負担のみならず、先の見えなさ、拘束感、完璧な介護への捕らわれなど、いくつもの特徴があります。閉塞(へいそく)した家庭内で、一日中被介護者と向き合って生活している在宅介護者は、外との接点が極端に少なくなってしまう場合があり、うつ病や慢性疲労などへの注意が必要といえます。

うつ病はきちょうめんで、きまじめな性格の人がなりやすいといわれていますが、はっきりしたことはわかっていません。人間は期間が限定されているストレスには耐えることができますが、介護のように先が見えないストレスには弱いものです。加えて、一生懸命介護をしたとしても、決して高齢者の状態が大きく改善するわけではなく、むしろ徐々に弱っていくことが多いと思われる状況では、成果として目に見えて結果が出ないので、自分の目標を見失ってしまいます。そのような状況下で周囲や職場の理解が得られないなど、別のストレスも加わることで、精神的にも肉体的にも限界になり、うつ病を発症するケースが多いのではないかと推測されます。

介護うつの原因ともなっている介護負担は、各世代に大きくのしかかっています。具体的には、介護者も被介護者も高齢であることからくる介護力不足が問題となる老老介護や、一つの家庭に複数の要介護者が同時に存在する多重介護、あるいは、祖父母の介護を孫の世代が担う隔世介護など、介護の様式が複雑化したことや、医療技術の進歩で寿命が延長したことよる介護期間の長期化などが、負担増の原因と考えられます。

このような社会現象に照らして、従来家族のものであった介護を社会全体で担うために、介護保険法の制定、施行、度重なる改正が行われていますが、なお社会的介護力は質的にも量的にも介護者および被介護者の生活の質(QOL)を維持するためには十分とはいえません。

特に在宅介護においては、どうしても家族に負担がかかり、介護うつや慢性疲労など介護者の心身への負担が問題視されています。介護力の不足から介護従事者が心理的に追い詰められることが誘因となる高齢者虐待の事例が頻発したことから、2006年には介護支援法として高齢者虐待防止法が制定されましたが、高齢者を保護する目的にはかなっても、介護者のストレス緩和には役に立っていないのが実情です。

働く女性にとっては、育児とともに、高齢化した両親、あるいは配偶者の介護が大きな問題となっています。総務省が2007年に実施した就業構造基本調査では介護を理由に離職した介護離職者は年間14万4800人と前年から4万人増の過去最高となり、このうち女性の離職者は全体の82・3パーセントを占めています。もちろん男性の介護離職者も9年前との比較では2倍近くに増え、男女ともに介護が就業世代に大きな影響を与えていることは確かですが、女性に介護離職者が多いことは、女性が介護を担うものという従来の家族観が働く女性の動向に大きく関与していると推定されています。

育児離職とは異なり、介護離職の場合には、「離職期間がどのくらい続くかわからない」ことや「再雇用時の年齢が高い」など、介護を終えてからの再就職には不利な条件が多くあります。

現在の介護保険制度は介護者の負担減および在宅療養支援のため数々のサービスが利用可能ではありますが、介護支援の必要度や種類は介護者の年齢、経済的状況、ケアに対する意欲、介護者以外の援助者の存在、介護従事者の性格、家族関係など多様な因子によりさまざまです。

例えば、プライバシー重視の考え方が強い介護者は本人の肉体的、時間的介護負担が大きくても訪問ヘルパー制度を利用せず、家族のみでの介護を希望するケースや、被介護者本人が強く家族介護を希望し、援助制度を利用しないケースもあり、プライバシー維持と介護負担を天秤(てんびん)にかけるといったストレスを強いられています。

あるいは、介護度が高くても定期的に介護を代行する援助者がいる場合や、被介護者からのねぎらいの言葉、24時間の医療支援システムなどにより、良好なストレスマネジメントが確保できるというケースもあります。

逆に、介護者がもともと依存度が高く、家族の病態を受容できず介護不安が増強するケースや、介護者が過剰な責任感のためにパニックや不安に陥るケースなどもあり、被介護者の性格も介護者のストレスマネジメントの重要な因子と考えられます。

介護うつの自己治療と医師による治療

一人で介護を抱え込んで疲弊し、精神的に孤立した時に、うつ病に陥りやすくなります。よく眠れない、どうしても元気が出ない、御飯が食べられない、落ち込んだ気分が続く、死や自殺について考えることがある、といった症状が出ていると要注意です。早めに精神科や神経科の医師に相談するなど、メンタルケアにも気を配りましょう。

介護うつも通常のうつ病も、基本的には同じ性格傾向であったり、同じ素因があったり、ストレスでなるものです。しかし、介護うつの場合は理由がはっきりしているわけですから、ある程度医師による治療の余地は増えるのではないかと思われます。

予防のためには、介護のみではなく、自分の時間を作る、愚痴をいったり、相談できる環境を作るなど、セルフケアを心掛けることが重要です。

現在の制度では在宅介護のすべてを介護保険の範囲で賄うことは困難ですが、経済的な事情が許す限り民間のサービスなども併用して、自分の負担を減らすことも考えましょう。介護の大変さは経験した人にしかわからないものです。周囲の目など気にすることはありません。

一人で抱え込まないために、友人や知人に相談してみるのもよいと思われますが、介護経験のない人に相談しても、相談される人も困ってしまうというのが実情でしょう。周りに介護経験者がいない場合は、市区町村で行っている介護者の交流会に出て、同じ悩みを持つ人達と情報交換するのもいいと思われます。もっと大勢の意見を聞きたい場合には、インターネットの利用も有効です。最近は悩みを相談できる掲示板やコミュニティサイトも増えているので、うまく活用して悩みをため込まないようにするとよいでしょう。

同時に、バランスのよい食事を取る、十分な睡眠を取る、軽い運動などを心掛ける、定期的に健康診断を受けるなど、自らの体をケアすることも介護の一部と考えて下さい。根を詰めすぎるのではなく、ちょっといい加減なぐらいが、ちょうどよい。そんな気持ちで、無理のない介護を実践していきましょう。

🇵🇰外痔核

肛門周囲の静脈が膨らんで、直腸と肛門を隔てる歯状線よりも外側にこぶができる痔疾

外痔核(がいじかく)とは、直腸と肛門(こうもん)を隔てる歯状線(しじょうせん)よりも外側にできる痔核。痔核は、肛門周囲の静脈が膨らんで、いぼ状のこぶになったものです。一般には、いぼ痔と呼ばれます。

痔核には、歯状線を境にして、外側の肛門部にできる外痔核と、内側の直腸にできる内痔核とがあります。内痔核は、肛門の内側にいぼがあるため、普通の状態では見ることも触ることもできません。外痔核は、外からいぼが見え、自分で触ることができます。

痔核の原因はさまざま考えられますが、直腸や肛門付近の静脈がうっ血したために、静脈が膨らんで、いぼ状のこぶができることが大きな原因です。

外痔核は、排便時の強い息みで突然、出現します。また、内痔核を長期間患っていたり、内痔核の再発を繰り返している場合に、外痔核の症状として現れることもあります。

外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。排便時だけでなく通常時でも激しい痛みを伴うことが多いものの、出血を伴うことはあまりありません。

この外痔核がある時に、下痢のために頻繁に排便したり、便秘のために力んで便を出したりすると、静脈叢(そう)のうっ血が急にひどくなり、よどんでいる血液の中に血液の固まりである血栓ができ、強い痛みを伴った青黒いはれ物となります。一種の血豆のようなもので、これを血栓性外痔核といいます。

血栓性外痔核は、2~3日で痛みのピークとなります。しかし、血栓性外痔核が小さなうちは、軟こうや座薬などを使用するだけで、血栓はすぐに溶けてきます。溶け始めると、完全に詰まっていた血管が流れ出します。そうすると、はれもひいてきて、痛みも次第に少なくなってきます。はれがひくのに1カ月くらいかかりますが、完全に治ります。

しかしながら、肛門に負担をかけるようなことをしていると、何度でも血栓性外痔核になります。どこに血栓ができるかによってはれる個所が決まりますので、いつも同じところがはれるとは限らず、はれる個所はその時々によって違います。

この血栓性外痔核は、肛門に一時的に急激に負担がかかった時にできます。多い原因としては、便秘、下痢のほか、冷え、飲酒が挙げられます

血栓性外痔核が大きくなってしまうと、痔核を保護している皮膚が圧迫されて潰瘍(かいよう)ができ、出血を起こしますし、血栓が吸収されても皮膚の盛り上がりは残って、皮垂(ひすい)というこぶのような高まりが肛門の入り口にできます。

痔の場合、どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、ほとんどの外痔核は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。

1カ月以上たってもはれがひかない、あるいはどんどんはれてくる、排便時に痛みや出血があるといった気になる症状があれば、自己判断せずに、肛門科を受診するのがよいでしょう。

外痔核の検査と診断と治療

肛門科の医師による診断では、肛門を診察し、内痔核、脱肛、直腸脱、肛門周囲膿瘍(のうよう)、肛門がんなど大腸肛門病の有無を検査し、外痔核との鑑別を行います。

肛門科の医師による治療では、外痔核が小さなもので、ほとんど痛みもなく肛門周囲のこぶだけが症状の場合は、座薬や軟こうを処方します。日常生活に注意をして、自身で座薬や軟こうを塗っていれば、徐々にはれが引いていきます。手術はまず必要ありません。

血栓が大きくて痛みが強い場合、薬を3~4週間使っても治らない場合、何回も同じところがはれる場合、表面が破れて多量の出血が起こっている場合には、痛みを除き皮膚の変形を防止するためにも、局所麻酔で血痔核の部分を舟型に切開し、血栓を摘出(てきしゅつ)する結紮(けっさつ)切除法という簡単な処置を行います。この血栓切除は、外来で3分くらいでできます。

血栓を切除すれば、すぐに痛みが消失します。切除後1週間くらいは無理せず、運動や旅行などを控える必要があります。血栓を切除した後は1~2週間ほど、傷口から少しずつ出血が続くことがありますが、血栓が吸収されてなくなれば、自然にしぼんで消えてなくなります。

こぶが非常に大きく、痛みが非常に強く、また内痔核も同時にある重症の時は、手術が必要です。内痔核結紮切除法を組み合わせて、外痔核も取ります。大きな外痔核が吸収されるのは時間がかかりますし、局所麻酔で血栓だけ取る方法では術後に肛門周囲に皮垂ができ、外痔核は治っても肛門周囲が不潔になりやすく、余病を招く恐れがあるからです。

また、外痔核に限らず痔核は肛門周辺の静脈の流れが悪くなり、うっ血していることが大きな原因ですので、肛門周辺を温めることも効果的になってきます。ただし、外痔核がすでに化膿(かのう)している場合には、温めすぎるとかえって逆効果になることもありますので、注意が必要です。

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、日常生活でのセルフケアで悪化させない生活習慣が大切。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒、喫煙といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、外痔核を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。便秘を解消し、軟らかい便が出るように食物繊維を多く取り、辛い刺激物の摂取を控えるなど、食事を見直すことも大切。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分に確保し、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫をします。入浴や座浴で、肛門周辺の血液の流れをよくするのも効果的。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。たばこはやめるようにします。

🛏概日リズム睡眠障害

夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計が固定されている睡眠障害

概日(がいじつ)リズム睡眠障害とは、夜更かしと朝寝坊のリズムで体内時計がセットされている睡眠障害。睡眠相後退症候群とも呼ばれています。

毎日の生活習慣の中で、この時間までに眠りたいと望む時間には眠ることができず、そのため、朝は起きなければいけない時間に目覚めることができません。しかし、休日や起きる時間がふだんより遅くてもよい日には、必要な睡眠時間が経過した後に自然と、すっきりと目覚めることができます。

つまり、体内時計(サーカディアンリズム)が他の人より後ろへずれた状態で固定されて、狂ったまま24時間のリズムを刻んでいるのです。

体内時計を正常な状態に戻すことが難しくなってしまう病理的な原因は、はっきりしていません。体の中にいくつも存在している体内時計を同調させる機能が正常に働いていないことが、誘因の一つと推測されています。

パソコンやテレビなど体内時計のリズムを狂わせてしまう強い光を夜遅い時間まで浴びていたり、知らないうちに毎日かなりの量のカフェインを摂取していたり、太陽の光を浴びることのないい生活が長いなど、体内時計の調節機能を阻害する要素が多い生活習慣を送っていることが、誘因になっているとも推測されています。

正常な人の場合、夏休みなどの長期休暇の間に少しずつ体内時計が遅れてしまっても、数日間、早寝早起きをすることで、苦痛なく体内時計を修正することができます。しかし、概日リズム睡眠障害と見なされる人は、体内時計が遅れた状態が2週間~1カ月以上も続き、修正しようとしても修正できません。

また、起きなければいけない時間に無理に早起きしても、体内時計は後ろへずれたままなので、頭がボーっとしたり、集中力が続きません。次第に朝起きることができなくなり、学校や会社に遅刻したり、欠席、欠勤するといった状態に陥ってしまうこともあります。

体内時計のリズムが後ろへずれて固定された状態になっていると、朝起きるのは苦痛だし、日中眠気を感じるしと睡眠不足状態になりがちですが、概日リズム睡眠障害は夜間眠れない不眠症ではありませんので、睡眠導入剤や睡眠薬など眠気を誘う薬では改善することができません。

さらに、日中の眠気を追い払うために、コーヒーや栄養ドリンクなどカフェインを多く含んでいるものを飲んでいると、眠りを誘うホルモンであるメラトニンの分泌が乱れてしまう結果、体内時計が正常に戻りにくくなります。

概日リズム睡眠障害の自己治療と医師による治療

自分でできる対策としては、生活習慣の改善による時間療法が有効です。夜は早く眠るための工夫をし、朝起きた時には太陽の光をしっかりと浴びる習慣をつけます。例えば、眠くなるための工夫として、食事は目標とする就寝時間の3時間前までにすませる、入浴は目標時間の1時間~30分前までにすませる、就寝30分前から部屋の明かりを落としてリラックスするなどがあります。目標とする起床時間には、カーテンを開けて太陽の光を部屋に取り込むように工夫します。

精神科や神経科、心療内科の医師によって行われる高照度光療法も、概日リズム睡眠障害の治療として有効です。毎日決まった朝の時間帯に太陽の光と同じ効果のある光を照射することで、メラトニンタイマーをリセットさせ、体内時計を早送りして調整する方法です。その際には、眠りのパターンやリズムを日誌などに書き留めておくことで眠りの状態を把握し、きちんと決められた期間続けることが必要です。

眠気を催すメラトニンの分泌量や働きが低下している場合には、メラトニンやギャバ(GABA)、ビタミン剤などといった薬を併用することもあります。

これらの治療でいったん睡眠時間帯が正常化しても、不規則な生活をすると再び入眠時間が遅れてしまうことが多いので、睡眠時間帯が安定するまで休日に夜更かししないように生活習慣を見直すことも大切となります。

🌋外耳道炎

外耳道に細菌が感染し、炎症が起こる疾患

外耳道(がいじどう)炎とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、細菌が感染して炎症が起こる疾患。

この外耳道炎は、外耳道の外側3分の1に位置する軟骨部外耳道に起こる限局性外耳道炎と、外耳道の内側の3分の2に位置する骨部外耳道に起こるびまん性(広汎性)外耳道炎とに分かれます。限局性外耳道炎が悪化し、膿瘍(のうよう)ができた場合は、耳せつと呼ばれます。

外耳道炎の症状は、限局性の場合、耳がツンとしたり、かゆかったり、熱いような感じがします。耳鳴りを伴うこともあります。この時に耳に触るとチクッとした痛みを感じるのが特徴で、これが耳を触らなくても痛む中耳炎と異なる点です。

口を開けたり、食事をした時にも、痛むことがあります。炎症がひどいと軽い難聴を伴うこともありますが、一般的には聴力に影響するようなことはありません。

症状が進んで膿瘍ができると、触らなくても痛むようになり、痛みも強くなってきます。時には痛くて夜眠れないということもありますが、炎症がピークを過ぎると膿瘍が破れて、膿(うみ)が出てしまい、痛みは自然に治まります。

びまん性の場合も、かゆかったり、熱いような感じがするのが一般的な自覚症状です。慢性化すると、かゆみがひどくなり、時に耳が詰まる感じがする耳閉感が出てきます。病変が鼓膜方向に進展すると、鼓膜の炎症、肥厚を合併することがあります。

子供の場合の症状としては、熱が出たり、不機嫌に泣き続けることがあります。耳を引っ張って痛がるのであれば外耳道炎、何もしなくても痛がるのであれば中耳炎と判断できます。

外耳道炎の原因は、耳かきや不潔な指先で外耳道をいじって傷を付けたため、そこから細菌、主にぶどう球菌が入り、その細菌に感染して起こるのが一般的です。中耳炎などで耳垂れ(耳漏)があると、その細菌が外耳道に侵入し、感染して起こることがあります。

また、洗髪時や水泳時などに水が耳に入ったままになって、細菌感染を起こすこともあります。白髪染めや化粧品なども、要注意です。さらに、免疫が低下した糖尿病の人にも起こりやすく、また治りにくいとされます。

外耳道炎を発症しても、炎症が軽度で元の外耳道が健康であれば、多くの場合は放置しても自然に治ります。1〜2日たっても症状が軽快しない場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

外耳道炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、耳介の後ろ下や前方の下部がはれていて、触ると痛く、耳垂れに血や膿が混じっていてもねばねばした粘液が混じっていないことなどから、判断します。

また、X線(レントゲン)検査で骨の部分に異常がなく、聴力検査で異常がないことも、判断の目安となります。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、まず耳垢を取り除きます。鼓膜内視鏡で耳の中を見ながら、耳垢鉗子(かんし)や耳専用の器具で耳垢をつまんだり、細い吸引管で耳垢を吸い取ります。耳垢が硬くて取り除きにくい場合は、薬で耳垢を軟らかくしてから洗浄、吸引する方法を行います。

耳垢を取り除いた後は、外耳道の消毒を行って清潔にした上で、抗生剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を含んだ軟こうの塗布、抗生剤の内服を行います。

耳の痛みがある場合には、鎮痛剤を服用して痛みを抑えます。耳のかゆみがある場合には、かゆみ止めを服用してかゆみを抑えます。ほとんどの症例は、容易に治ります。

軽快した後は、再発防止のためにも耳かきや綿棒の使用を制限します。健康な状態であれば、耳垢は自然に排出される仕組みになっているので、耳掃除を頻繁にやる必要はなく1~2週間に1度くらいで十分です。

🗻外耳道外骨腫

外耳道の深部の骨部外耳道の骨が増殖して、隆起する疾患

外耳道外骨腫(がいじどうがいこつしゅ)とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道に長期間冷水刺激が加わることにより、骨部外耳道の骨が増殖して隆起が生じた疾患。サーファーズイヤーとも呼ばれます。

外耳道でも、耳の穴の入り口は軟骨部外耳道で、深部の鼓膜に近い部分が骨部外耳道に相当します。

外耳道外骨腫は古くから潜水夫や、頻繁に水泳を行う人に多いことが知られていましたが、特にサーファーに好発することから1977年にサーファーズイヤーと命名されました。

日本でのサーフィンの起源は、第2次大戦後日本に駐留した米軍兵士が神奈川県や千葉県で行ったのが始まりといわれ、国内でのサーフィンの歴史は60年前後と考えられます。1990年代に起こった世界的なロングボードサーフィンのリバイバルブーム以降、日本でもサーフィン愛好者は増加しています。

外耳道外骨腫は、水上スポーツ愛好家、水中スポーツ愛好家、職業ダイバーのほか、サウナ愛好家にも認められることがあります。サウナ愛好家の中には、サウナで温まった後に、冷水に飛び込むことを習慣とするケースがあり、そのような場合にも外耳道外骨腫が形成されることがあります。

競技会に参加するような熱心なサーファーを対象とした調査では、日本人のプロサーファーの81パーセント、アマチュアサーファーの54パーセント、両者の平均で59・8パーセントに外耳道外骨腫の形成が認められました。また、サーフィン経験が同程度の場合、男性のほうが女性よりも高度の病変が形成されることが多いことがわかりました。

原因は、外耳道に長期間にわたって加わる冷水刺激と考えられます。サウナ愛好家にも認められることから、外耳道に加わる寒暖差が外耳道外骨腫の形成に関与している可能性も示唆されます。サーフィン経験年数や頻度が多いほど、また海水温の低い地域のサーファーほど高度な病変が形成されやすくなります。耳に強い冷たい風を受ける影響もあると考えられます。

外耳道に冷水の侵入が繰り返されたり、強い冷たい風を受ける刺激で、基本的には両側の耳の骨部外耳道の骨が炎症を起こして増殖し隆起するために、外耳道が狭くなっていきます。

形成される外耳道外骨腫は、層状の緻密(ちみつ)な骨で、骨細胞に富み、骨髄腔が乏しいことが特徴とされます。1つ、あるいは2つの外耳道外骨腫が形成されることも、3つ以上形成されることもあります。

発症初期には自覚症状に乏しく、高度の外耳道の狭窄(きょうさく)に至っても、いくらか透き間が開いていれば難聴はほとんど起こりません。ただし、外耳道炎を起こしたり、外耳道外骨腫と鼓膜の間に耳垢(みみあか)がたまることにより、外耳道が閉塞(へいそく)した場合は、急に伝音(でんおん)難聴を来すことがあります。

そのほか、外耳道から水が抜けにくい、耳痛、耳鳴り、頭痛、かゆみなどの症状も起こりますが、必ずしも外耳道外骨腫の程度とは相関しません。

サーフィンやマリンスポーツなどの後、耳の穴から水がいつまでも抜けない、右耳だけが聞こえにくい気がするなど、耳に違和感を覚えたら、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

外耳道外骨腫の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、処置用顕微鏡で耳の中を観察し、聴力検査を行います。側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、外耳道骨と同濃度の結節性、あるいはびまん性の外耳道外骨腫の隆起を認めることで確定できます。手術の実施を予定している場合は、側頭骨CT検査で、外耳道に近接している顔面神経の走行と、骨の削除範囲を入念に確認します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道の狭窄が軽度で無症状であれば手術は行わず、点耳薬などの保存的治療で対応します。サーフィンやマリンスポーツをやめたとしても、一度形成された外耳道外骨腫は小さくならないと考えられています。

外耳道炎を繰り返したり、難聴などの症状が強い場合は、基本的に全身麻酔の下、耳内切開ないし耳後切開による手術を実施し、ノミやドリル、あるいは超音波装置といった手術具を使用して隆起した骨を削り、外耳道を広げます。

外耳道の皮膚の温存に努めて、骨部外耳道の骨面露出を最低限に抑えれば、通常、別の部位の皮膚を移植する遊離植皮などは必要ありません。外耳道外骨腫の程度が左右の耳で大きく異なる場合には、治療期間にも左右差が生じることがあります。手術後、完治するまでには時間がかかります。

予防としては、外耳道への冷たい海水の侵入刺激や、風による蒸散熱の冷却により骨増殖が増進するので、冬期や海水温の低い海域でのサーフィン中止、型を取った耳栓の装用が有効です。

市販されている耳栓も、シリコン製の耳栓や粘土形状の耳栓、大きなサイズや小さなサイズ、外部からの音を聞き取れる耳栓とさまざまなものがありますので、自分の耳に一番適した耳栓を探すとよいでしょう。

⛰外耳道湿疹

耳の穴の入り口から鼓膜までの外耳道の皮膚にできる湿疹の総称

外耳道湿疹(がいじどうしっしん)とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚にできる湿疹の総称。

湿疹は、かゆみを伴う皮膚の炎症の総称で、浮腫(ふしゅ、むくみ)、紅斑(こうはん)、丘疹、水疱(すいほう)、膿疱(のうほう)など湿潤を主な症状とし、痂皮(かひ、かさぶた)、鱗屑(りんせつ)などもみられます。

湿疹は体のどの部位の皮膚にもできますが、耳の穴の入り口から鼓膜まで2センチから2・5センチほどの長さがあり、軽くS状に曲がっている外耳道のうちでも、外側3分の1に位置する軟骨部外耳道は皮膚の直下に軟骨があるために、外的刺激に対して弱く、浮腫や紅斑を生じやすい特徴があります。

また、外耳道には柔らかい毛があり、汗腺の一種の耳垢腺(じこうせん)と皮脂腺という二種類の腺から常に分泌物が出ていて、細菌が入り込むと付着しやすい環境になっているため、顔面や頭部の湿疹が波及して、外耳道に湿疹が起こることもあります。中耳炎などの耳垂れ(耳漏)が原因で、その細菌が侵入して、外耳道に湿疹が起こることもあります。

洗髪時や水泳時などに水が耳に入ったままになって、細菌感染を起こし、外耳道に湿疹が起こることもあります。白髪染めや整髪剤などの化学物質をつけた刺激などが原因で、外耳道に湿疹が起こることもあります。

本来、耳には自浄作用があり、耳垢腺と皮脂腺の分泌物と、は表面がはげた皮膚が混じった耳垢(みみあか)を自然と体外へ排出する働きがありますが、耳かきや綿棒、不潔な指先で必要以上に外耳道をいじることで、外側3分の1に位置する軟骨部外耳道や、内側3分の2に位置する骨部外耳道の皮膚が傷付き、入り込んだ細菌によって、湿疹が起こることもあります。

細菌感染や外傷以外にも、衣服や装身具に付属する金属や、補聴器で使うシリコンなどが接触することによるアレルギー、耳垢腺や皮脂腺の分泌異常、アトピー性皮膚炎などが原因で、外耳道に湿疹が起こることもあります。原因が特定できないケースも少なくありません。

外耳道湿疹にはさまざまな症状がありますが、耳のかゆみ、耳の詰まる感じのほか、透明な耳垂れが出ることもあります。細菌が感染すると、耳の痛みが生じ、はれてくることもあります。外傷では、炎症を伴うため、耳を押したり、引っ張ったりすると、耳の痛みを生じ、食事の際の咀嚼(そしゃく)による痛みも感じます。

耳は体の中でも傷付きやすい部位の1つですが、少々の炎症であれば自然に治ることもあります。しかし、悪化してしまう可能性があるため、外耳道の中にかゆみや違和感が生じる場合には、耳鼻咽喉(いんこう)科を早めに受診することが勧められます。

外耳道湿疹の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、視診、問診、触診を行い、外耳道湿疹の原因を見極めます。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道の消毒を行って清潔にした上で、抗生剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)を含んだ軟こうの塗布、抗生剤の内服を行います。

耳の痛みがある場合には、鎮痛剤を内服して痛みを抑えます。耳のかゆみがある場合には、かゆみ止めを服用してかゆみを抑えます。

先行する上気道感染があり、中耳炎の合併が疑われる場合には、中耳炎の治療を併せて行います。金属などに接触することによるアレルギーが疑われる場合には、原因物質を突き止め、それとの接触を回避します。

軽快した後は、再発防止のためにも耳かきや綿棒の使用を制限します。健康な状態であれば、耳垢は自然に排出される仕組みになっているので、耳掃除を頻繁にやる必要はなく1~2週間に1度くらいで十分です。

また、耳に極力水を入れないよう心掛けることも大切です。

🏔外耳道真菌症

外耳道に、アスペルギルスなどの真菌が寄生し、かゆみや詰まった感じがする疾患

外耳道真菌(がいじどうしんきん)症とは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道の皮膚に、アスペルギルス、カンジダなどの真菌が寄生する疾患。

真菌はカビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称で、葉緑素を持たない真核生物であり、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。この真菌には、健康な人の体内に常にいるものや、空気中のあらゆる所に浮いている胞子が体内に入ってくるものなど、さまざまな種類があります。

外耳道真菌症は外耳道炎の一種で、多くの外耳道炎が耳かきなどで傷付けた外耳道の皮膚表面に細菌が寄生、繁殖して炎症が発生するのに対し、外耳道真菌症は傷付いた外耳道の皮膚表面に真菌が入り込んで寄生、繁殖するものです。

耳掃除のやりすぎ、強く耳掃除をする習慣、汚れた耳かきの使用、爪(つめ)による耳の穴のいじりすぎなどで皮膚に傷が付いた時点で、外耳道にある自浄作用がなくなると、外耳道湿疹(しっしん)、または細菌による外耳道炎を発症し、ここに真菌が入り込んで外耳道真菌症に進展するケースが少なくありません。

また、わずかな耳垂れ(耳漏)の出る慢性中耳炎、抗生剤やステロイド剤の長期投与、外耳道への水の侵入、中耳炎手術後に、外耳道真菌症が起こることもあります。

発症すると、白色、黒色、黄色、青緑色の膜状、または耳垢(みみあか)のような物質が外耳道に大量に、繰り返し付着し、時に、その表面が白色または黄色の粉を吹いたようになることがあります。これらの物質は、真菌が作る菌膜です。耳垢を除去すると、発赤、びらん、湿潤が現れます。

自覚症状としては、耳の中のかゆみが頑固に続き、耳の穴が詰まったように感じる耳閉塞(へいそく)感、耳内異物感がみられます。耳の痛み、耳垂れ、白・黒・黄色などの菌糸を含むフワフワ状の耳垢、外耳道の肥厚、外耳道の充血、難聴がみられることもあります。また、慢性中耳炎に併発する場合は、多量の耳垂れが出てくることもあります。

外耳道真菌症の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、耳鏡検査、検鏡を行うほか、真菌培養検査を実施し、寄生しているアスペルギルスなどの真菌の種類を確定します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、刺激の少ない消毒薬で十分に真菌を清掃した後、抗真菌剤を患部に塗ります。同時に、ブロー液という薬で外耳道を一定時間満たす、耳浴と呼ばれる治療を行うこともあります。

真菌が原因のため、治療には1カ月から数カ月の通院が必要になります。症状が治まったと自己判断して、短期間で治療を中断した場合には再発につながりますから、こまめに通院することが必要です。

日常生活では、できるだけ患部を乾燥させるよう外耳道を湿らせないように努め、耳掃除などで再度外耳道に傷が付くと再発することがあるので、必要以上の耳掃除はやめます。耳かきにも真菌が付着している恐れがあり、使い回すと家族にも迷惑をかける恐れがあるので、思い当たる耳かきは捨てるようにします。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...