ヒト乳頭腫ウイルスが感染して、性器の外陰部に丘疹ができる疾患
外陰上皮内腫瘍(しゅよう)とは、主にヒト乳頭腫(にゅうとうしゅ)ウイルス(ヒトパピローマウイルス)16型と18型が感染して、性器の外陰部に丘疹(きゅうしん)ができる疾患。外陰上皮内腫瘍は婦人科での呼び名で、皮膚科ではボーエン様丘疹と呼ばれます。
性行為感染症の1つとされており、一般に20~30歳代の性活動が盛んな年代に多くみられ、ヒト乳頭腫ウイルスがセックスの時などに感染することで起こります。性的パートナーがウイルスを体内に保有しているキャリアならほぼ感染するほど、ヒト乳頭腫ウイルスの感染力は強く、皮膚や粘膜との直接的または間接的な接触により感染し、唾液(だえき)、血液、生殖器からの分泌液などの体液からは感染しません。
感染後3週間から6カ月程度で、男性では陰茎と陰嚢(いんのう)、女性では大陰唇、小陰唇、陰核、腟前庭(ちつぜんてい)、処女膜など性器の外陰部や、肛門(こうもん)周囲などに、2ミリから1センチくらいの黒褐色の丘疹、すなわちいぼが多発します。個々の丘疹が癒合して、大きな平面状になることもあります。丘疹は、外陰部の扁平(へんぺい)上皮細胞が異型化して増殖したものです。
症状としては、外陰部のはれ、かやみ、痛みを生じます。
同じ性行為感染症の1つで、ヒト乳頭腫ウイルス6型と11型が感染して、性器に1ミリから3ミリくらいのカリフラワー状の丘疹を生じる尖圭コンジロームと、区別が付きにくい場合もあります。混合感染して、外陰上皮内腫瘍と尖圭コンジロームを一緒に発症することもあります。
また、外陰上皮内腫瘍の病変は、病理組織学的にはボーエン病の病変に類似しているとされています。ボーエン病は、境のはっきりした褐色の色素斑(はん)が体幹や四肢に好発する皮膚病で、かなり高い確率で将来がんに移行し得る皮膚がん前駆症の一つです。
しかし、比較的若い人に生じた外陰上皮内腫瘍が悪性化することは少なく、90パーセントは体内の免疫力で数カ月から3年以内で、ヒト乳頭腫ウイルスは自然消滅します。
10パーセントはウイルスが細胞の中に残り、その中の10パーセントから20パーセントは悪性で、さらにその中の10パーセント子宮頸(けい)がんや、外陰がん、肛門がんなどを発症するリスクがあります。
外陰上皮内腫瘍の受診科は、泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科(女性)となります。
外陰上皮内腫瘍の検査と診断と治療
泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による診断では、皮膚症状から視診で判断し、似たような尖圭コンジロームや、梅毒でみられる扁平(へんぺい)コンジロームなどのほかの疾患と鑑別します。判断が難しい場合は、丘疹の一部を切除して顕微鏡で調べる組織検査で判定することもあります。時には、血液検査で梅毒ではないことを確認することもあります。
泌尿器科、性病科、皮膚科、婦人科の医師による治療では、一緒にできることもある尖圭コンジロームの場合と同じで、丘疹が小さくて少数なら、局所免疫調節薬であるイミキモド軟こう、ポドフィリン液、5−FU軟こう、尿素軟こうなどの塗り薬も効果があるといわれています。
一般的には、液体窒素による凍結凝固や、レーザー、電気メスによる焼灼(しょうしゃく)が有効です。改善しない場合や悪性化が疑われる場合は、外科的切除も考慮します。
診断が確定したら、きちんと治るまで性行為は控えるか、コンドームを使用するようにします。また、子宮頸がん、外陰がんなどの発症の可能性があるという観点から、治癒が確認できるまで治療、あるいは経過観察を怠らないようにすべきです。ヒト乳頭腫ウイルス16型に長期間感染していると、子宮頸がんを発症する可能性があると考えられています。
なお、外陰上皮内腫瘍を生じた男性の性的パートナーである女性は、子宮頸がんの発症に注意し、検診を定期的に行うことが勧められます。
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