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2022/08/03

🇱🇮猫鳴き症候群

5番染色体の短腕の欠損により引き起こされ、新生児が猫の鳴き声に似た泣き声を発する重度の先天性障害

猫(ねこ)鳴き症候群とは、22対ある常染色体のうち、5番染色体の短腕(5p)の一部分が欠損していることが原因で引き起こされ、罹患(りかん)した新生児が出生時に猫の鳴き声のような泣き声を発するのを特徴とする重度の先天性障害。

5p(ごぴー)モノソミー、5pー(まいなす)症候群、5p欠失症候群、レジューン症候群とも呼ばれます。

常染色体は性染色体以外の染色体のことであり、人間の体細胞には22対、44本の常染色体があります。それぞれの常染色体はX型をしていて、短腕(p)と長腕(q)という部分があり、5番染色体の短腕の末端の一部分が欠損している状態が5pモノソミーに相当し、猫鳴き症候群を引き起こします。

5pモノソミーは、常染色体の一部分が欠けている常染色体部分モノソミーの一種で、常染色体部分モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれても知的障害を含む重い先天性障害を併発します。通常、2本で対をなしている常染色体が1本になる常染色体モノソミーが起こった場合は、胎児が生きて生まれることはできません。

5pモノソミーから引き起こされる猫鳴き症候群の主な原因は、突然変異による5番染色体の変化が原因で、なぜ突然変異が起こるのかまではわかっていません。

まれに、両親からの遺伝が原因で起こります。転座といって、ほかの染色体の一部分が5番染色体の短腕に間違ってくっついていることにより起こり、この場合は両親の片方が染色体異常の保因者であることがあります。

猫鳴き症候群は、フランス人のジェローム・レジューンによって1963年に初めて発見されました。レジューンは、1959年にダウン症の原因を発見したことでよく知られる人物です。

猫鳴き症候群に罹患した新生児は、出生時に子猫の鳴き声のような甲高いニャーニャーという泣き声を発します。特有の泣き声は喉頭(こうとう)の変化が原因とされ、数週間継続して消失します。

新生児は子宮内発育不全のため低出生体重であり、医学的な症状としては重度の精神発達遅滞、小頭症、成長不全、筋緊張低下、両目の離れた円形の顔、眼瞼(がんけん)裂斜下、内眼角贅皮(ぜいひ)、外斜視、鼻根部偏平、耳介低位、副耳などが認められます。多指、心奇形、腎(じん)奇形、脊柱側湾などが認められることもあります。発語は3歳以降で、言葉の出ないこともあります。

身体的な合併症がみられる場合は、専門医による適切な治療が必要ですが、乳幼児期の頻繁な呼吸器感染症、筋緊張が弱いことによる便秘を除けば、おおむね健康に育っていき、多くが成人期まで生存します。

🇸🇰寝違え

就寝中の首の不良姿勢によって起こる急性の痛み

寝違えとは、前夜まで何ともなかったのに、朝起きると首が痛くて回らない状態。ただし寝違えという医学用語はなく、頸部(けいぶ)周囲の靭帯(じんたい)や筋肉の急性炎症による頸痛の総称といえます。

就寝中の頸部の不良姿勢によって起こります。通常は頸部に痛みが生じたり違和感を覚えた場合には、目が覚めたり無意識のうちに首の姿勢を変えますが、疲労や睡眠不足あるいは泥酔状態で就寝すると、これらの反応がなくなり、不自然な姿勢で眠り続けることがあります。または、窮屈なソファーで寝たり、椅子に座ったまま不自然な姿勢で寝てしまった時に、頸部周囲の靭帯や筋肉の一部分への負担が大きくなって炎症を起こします。

また、強い精神的ストレスを受けたり、内臓の不調があったりと、必ずしも頸部周辺に原因があるわけではないケースもあります。寝違えを繰り返しやすい人の中には、慢性的な肩凝りの悪化が関係しているケースもあります。結果的に、頭を支え、動かす際に働く筋肉が過緊張したり、関節に負荷がかかり、周辺の組織が痛むといった状態になるのです。

寝違えの症状は、起床時にある一定の姿勢をとった時、首から肩、背中の上部辺りに痛みが生じます。軽度の場合は、顔を向けられる範囲がいつもより多少狭く、動かすに連れて痛みが増していきます。重症な場合は、顔を真上へ向けて天井を見る、真下へ向けて床を見る、左右に傾ける、左右を振り向くといった動きすべてが制限され、少しでも動かすと激痛が走るようになります。

痛みとともに、手足などの末端器官のしびれ症状などを併発している場合は、神経系の障害が原因となっていることもあります。例えば、頸椎椎間板(けいついついかんばん)変性症といって頸椎のクッション役を果たしている椎間板が薄くなったり、変形性頸椎症といって椎体に骨のとげができたり、椎体の後ろを走っている後縦(こうじゅう)靱帯が骨化しているような、いわゆる老化現象による神経系の障害が、背景の原因となっていることも少なくありません。

軽度の寝違えの場合、その症状はほとんど一時的なもので、数日もすれば局所の炎症が治まって自然に治ります。寝違えの症状があまりにも長引くような場合は、神経系の障害や、骨のほかの疾患が疑われることもあるので、念のために整形外科の医師の診察を受けるとよいでしょう。

寝違えの検査と診断と治療

医師の診察では、腱(けん)反射などのチェックが正常であった場合に、通常の寝違えと判断します。逆に、腱反射などが鈍かったり、反応しない場合は、神経系の障害が原因と考えます。寝違えの症状と神経系の障害の症状は酷似しているので、正しい見極め、判断が重要です。

通常の寝違えの治療は、消炎鎮痛剤や筋弛緩(しかん)薬の内服、パップ剤の張り付け、電気刺激やレーザー照射による鎮痛処置、局所注射、神経ブロックなどを行います。また、首用のカラーをつけて頸椎を固定することも効果があります。

注意点としては、炎症が起きて痛みが発生している初期段階で、マッサージなどを行わないことです。マッサージを行うと血行が促進され、炎症を拡大させて症状の悪化を招くケースが大半だからです。マッサージなどの処置は、炎症が治まった回復期に入ってから行うようにします。

なお、手足などのしびれ症状がある場合は、各部位よりも頸椎損傷を確認します。頸椎の神経は人体のさまざまな部分に関与しているため、頸部のダメージであっても体の各部に症状が現れるのが、特徴となっています。頸椎損傷の原因は、突発的な外力による負担だけが原因とは限らず、慢性的な姿勢などによる神経の圧迫などが原因である場合もあります。そのため、日常生活の見直しから治療を始めます。

🇨🇿熱傷(やけど)

熱湯など高熱の物質に接した際に生じる皮膚の損傷

熱傷とは、熱湯、炎、蒸気、湯たんぽなど、高熱の物質に接した時に生じる皮膚の損傷。やけどとも呼びます。

数ある外傷のうち、最も危険な結果を招くことがあり、厳重な予防が必要です。最も多いのは家庭内で起こる熱傷ですが、重症例は火事や工場災害で多くみられます。

症状としては、熱傷の重症度を、その広さと深さにより判定します。ことに、皮膚が焼けた深さは、第1〜3度で表されます。

第1度(表皮熱傷)は、いわゆる日焼けの状態で、放っておいても治ります。

第2度(真皮熱傷)では、水疱(すいほう)ができ、深いものでは潰瘍(かいよう)を形成し、手術が必要となります。

第3度の熱傷では、焼けた深さが皮下組織に達して、皮膚は全く死んでいますので、自然に治ることはありません。

そのほか、熱傷は部位により治療が難しかったり、気管に火や煙を吸い込んで起こる気道熱傷のように、死亡率が非常に高くなるものもあります。年齢も救命に大きく関係し、年齢が低いほど重症です。

熱傷の検査と診断と治療

熱傷では、受傷した場合すぐ水で冷やすことが治療の第一歩です。大きな熱傷では、衣服を脱がす前に水をかけ、冷やしてから救急隊に連絡し、専門医に連れていってもらうことです。

重症の熱傷では、全身治療による救命がまず問題となります。

局所的な治療としては、軟こうを塗布するのが主となりますが、成分が不明の軟こうなどは感染を助長することがあるので避けます。軽い熱傷のように見える場合でも、感染を起こすと深くなり瘢痕(はんこん)を残すので、形成外科医の治療を受けます。

一般に、熱傷で死んだ皮膚を切り取って、自分自身の健康な皮膚を植える植皮の手術は、瘢痕の状態に応じて行います。

🇹🇲熱中症

暑さによって体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもることで起こる急性の障害の総称

熱中症とは、暑さによって体温調節がうまくいかず、体内に熱がこもることで起こる急性の障害の総称。

専門的には、「暑熱環境下にさらされる、あるいは運動などによって体の中でたくさんの熱を作るような条件下にあった者が発症し、体温を維持するための生理的な反応より生じた失調状態から、全身の臓器の機能不全に至るまでの、連続的な病態」されています。熱中症という漢字は、読んで字のとおり、熱に中(あた)るという意味を持っています。

この熱中症には、いくつかの種類があります。熱波により主として高齢者に起こるもの、高温環境で幼児に起こるもの、暑熱環境での労働で起こるもの、スポーツ活動中に起こるもの、夜間熱中症とも呼ばれ夕方5時以降の夜間に起こるものなどです。

いずれのケースも、体内に熱がたまったために温熱中枢が障害され、体温調節機能が破綻(はたん)して、体温が異常に上昇した結果、肝臓、腎臓(じんぞう)、中枢神経などに障害を起こします。日射病、熱けいれん、熱疲労(熱ひはい)、熱射病、熱失神などさまざまな病態が、熱中症には含まれます。

日本における熱中症の発生は、かつては軍隊や労働現場で発生するとされていましたが、近年では日常生活時やスポーツ活動中に発生しています。

熱中症というと「暑い環境で起こるもの」という概念があるかと思われますが、労働やスポーツ活動中に起こる熱中症では、体内の筋肉からの大量の熱の発生と脱水などの影響により、寒いとされる環境でも発生し得るものです。実際、11月などの冬季でも、死亡事故が起きています。活動開始から比較的短時間の30分程度からでも、発症する例もみられます。

また、熱中症というと日中の炎天下や蒸し暑い時の外出中、労働中、スポーツ中に発症するものが多数を占めますが、近年では熱中症による死亡者の約40パーセントは夜間に亡くなっています。

そもそも真夏日や猛暑日、熱帯夜が多い年は、熱中症で亡くなる人も増えます。一般的には、最高気温が25度を超えると熱中症の発症者が現れ、30度を超えると熱中症で死亡する人の数が増え始めるといわれています。

気温が低くても、湿度が高ければ、汗が蒸発しにくくなって体内の熱がうまく放熱できなくなるため、熱中症の危険が高くなります。例えば、気温が25度以下でも、湿度が80パーセント以上ある時は、注意が必要となります。また、風が弱い時は、汗をかいても体にまとわりついて蒸発しにくくなって、体温を下げる効果を弱めてしまうため、体に熱がこもりやすくなるので危険です。

熱中症の症状

熱中症の症状は、大量発汗、強い口の乾き、倦怠(けんたい)感、興奮、高体温、発汗停止、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、脱力感、反射の低下、筋けいれん、強い頭痛、めまい、失神、精神錯乱、昏睡(こんすい)、意識不明などがみられます。最終的に呼吸停止、心停止に至ることもあります。

熱中症を暑熱障害、熱症として、重症度で分類すると、以下のようになります。

●1度(軽症度)、熱けいれん: 四肢や腹筋の痛み、時には腹痛を伴ったけいれんがみられます。多量の発汗で、塩分などの電解質が入っていない水のみを補給した場合に起こります。呼吸数が増加し、顔色が悪くなり、めまいなどもみられます。

●2度 (中等度)、熱疲労: めまい、疲労感、虚脱感、頭痛、失神、吐き気、嘔吐、血圧の低下、頻脈、顔面の蒼白、多量の発汗などで、ショック症状がみられます。脱水と塩分などの電解質が失われて、極度の脱力状態となります。

●3度 (重傷度)、熱射病:2度の症状に加えて、意識障害、奇怪な言動や行動、過呼吸、ショック状態になります。温度調節機能の破錠による多臓器障害が起こり、脳、肺、肝臓、腎臓などに障害が生じます。

熱中症の初期症状はめまいや、頭痛、吐き気などで、特有の症状ではないので気付きにくいとされます。

夜間熱中症の場合は、室内にいても発症します。特に都会では、ヒートアイランド現象により夜間になっても気温が下がりにくく、日中の熱が建物の壁などに吸収されて室内にこもりやすくなります。そのため、気密性が高い最近の住宅では、室内はサウナのような状態となり、就寝している間に知らず知らずに発症することになり、命を落とす高齢者が続出しています。

高齢者は体温調節機能が低く、体に熱がこもりやすい上、暑さやのどの渇きを感じにくいため、熱中症や夜間熱中症になりやすくなります。

高齢者の中には、エアコンは体に悪いと誤解して全く使わなかったり、トイレが近くなるからと水分を取らない人もいます。また、防犯の観点から、窓を閉め切って眠ってしまう人もいます。そのような状態での睡眠中は、水分を取ることができないので、脱水状態となり、朝起きた途端に意識障害や心疾患などが起こってしまう危険もあります。

熱中症の手当と治療

熱中症は、いくつかの症状が重なり合い、互いに関連し合って起こります。また、軽い症状から重い症状へと症状が進行することもありますが、きわめて短時間で急速に重症となることもあります。しかも、熱中症は大変に身近なところで起きていますので、十分にその危険性を認識しておくことが必要です。

もし周りの人が熱中症にかかった場合には、すべての症状に対して次の三つが手当の基本となります。

●休息:安静にさせる。そのための安静を保てる環境へと運ぶことともなる。衣服を緩める、また、必要に応じて脱がせ、体を冷却しやすい状態とする。

●冷却:涼しい場所、例えばクーラーの入っているところ、風通しの良い日陰などで休ませる。症状に応じて、必要な冷却を行う。

●水分補給:意識がはっきりしている場合に限り、水分補給を行う。意識障害がある、吐き気がある場合には、医療機関での輸液が必要となるので、直ちに救急車を呼ぶこと。

以上の三つをベースとして手当を行い、症状やその程度によって追加して望まれる手当も派生します。

医療機関での治療においては、氷水浴、アルコール冷却などを行い、ラクテック、生理食塩水、デキストラン製剤などの輸液を行います。

熱中症の予後と予防

熱中症にかかった人が、暑い環境での活動や運動を再開するには、相当の日数を置く必要があります。

どんなに症状が軽かったとしても、1週間程度。症状が重くなるにつれ、日数は増えていきます。詳しくは医師と相談の上、当人の調子を照らし合わせながら、再開を決めることになります。

その間は、暑い環境での活動や激しい運動は、厳禁となります。十分に回復するまでの休息の日数を置いた上、涼しいところでの軽めの運動から開始し、徐々に運動負荷を上げていくのがよいでしょう。また、一度かかった者は再度かかりやすいとも見なされていますので、十分に注意をしつつ、活動や運動を行うようにしなければなりません。

熱中症を予防するための注意事項について述べれば、酷夏の運動場、体育館、海水浴場、市街地などにいて、通風性がよくない場合には熱中症を起こしやすいので、スポーツドリンクなどで塩分を含む水分補給を積極的に行うことが必要です。休息を多く取り入れ、激しい運動は中止すべきです。

夜間熱中症を防ぐためには、まず、こまめに水分を取ること。のどが渇いた時にはすでに脱水に近い状態になっているといわれ、補給した水分が体全体に運ばれるまでには時間差があるので、早め早めに水分補給をすることが大切です。のどの渇きを感じた時だけガブガブ飲むのではなく、のどが渇く前に少量の水を取るようにするとよいでしょう。

特に、夜眠る前と朝起きた時の水分補給は忘れずに。風呂に入る時も水分が失われやすいので、入浴前後に水分を取り、40度以下のぬるめの湯で、あまり長湯にならないようにしましょう。寝ている間にもかなりの水分が失われますので、枕元に飲料を置いて水分の補給に努めましょう。

また、汗と一緒に体のミネラルが不足してしまうので、塩分や糖分も適度に補給するとよいでしょう。真水(軟水)だけではなく、ミネラルウォーター(硬水)、麦茶、梅干入りの水、スポーツドリンクを時々飲むようにすると、手軽にミネラルが補給できます。

ただし、冷たい水やビール、コーヒーなどの飲みすぎには注意を。冷水は胃の調子を悪くしたり、体の冷えの原因になることがあり、ビールやコーヒーなどは利尿作用が強く、脱水を進めてしまうことがあるからです。

水分補給に加えて、気を付けたいのが室温の調整です。冷やしすぎはよくありませんが、気温30度を超えるような時は、何らかの方法で室温調整が必要です。湿度計付き温度計を置き、室温28度、湿度60パーセントになったらエアコンを使うなど、目で確認できる温度の管理がお勧め。

エアコンが苦手な人は、送風が直接体に当たらない工夫をしたり、隣の部屋のエアコンをつけるようにしたりすると、冷やしすぎを防ぐことができます。どうしてもエアコンが苦手という人には、扇風機や冷却マットなどの使用をお勧めします。

さらに、部屋の中でじっとしていると、室温に対して鈍くなってしまうので、時々体を動かしましょう。汗をかくのが嫌だと感じる人もいるようですが、汗には体の熱を下げ、余分な水分を排出する働きがあるので、適度に汗をかくことは必要です。水分を補給しても、ただため込むだけでは脱水を防ぐことはできず、体がむくむ原因になります。血液循環をよくして水分を体全体にゆき渡らせ、古い水分を老廃物と一緒に汗や尿として排出し、水を循環させることが大切。

ふだん運動不足の人や代謝がよくない人は、汗をかきにくく、その結果、熱が体にこもったり、余分な水分がたまって体調を崩してしまうこともあるので、日頃から汗をかける体に整えておくことも必要。

暑さにより体は疲労し、体の代謝が弱って脱水症状が進みますので、夜の睡眠に影響しない程度の軽い昼寝をし、夜は十分に睡眠を取って体を休めましょう。そうすれば、熱中症や夜間熱中症、夏バテから体を守ることができます。

🇹🇯ネフローゼ症候群

腎臓や全身の病気に伴って発症

ネフローゼ症候群とは、腎臓(じんぞう)の働きが損なわれて、多量の蛋白(たんぱく)尿が糸球体から尿中に常時排出され、血液中の蛋白質が極度に不足する病的状態です。症候群とは、同じ病状を示す腎臓病が多数あるということを意味します。

主な症状は、浮腫(ふしゅ)や多量の蛋白尿、低蛋白血症と、コレステロールや中性脂肪などが増えて現れる高脂血症(高コレステロール血症)です。

原因となる病的状態は、大きく二つに分けられます。一つは、腎臓の糸球体、特に糸球体基底膜に病変があって起こるもので、原発性(一次性)ネフローゼ症候群と呼ばれます。もう一つは、全身性疾患が糸球体に障害を及ぼして起こるもので、続発性(二次性)ネフローゼ症候群と呼ばれます。

原発性(一次性)ネフローゼ症候群には、腎臓組織を顕微鏡で調べた病理組織型でみて、微小変化型ネフローゼ症候群、巣状糸球体硬化症、膜性糸球体腎炎、膜性増殖性糸球体腎炎などがあります。

いずれも入院治療の対象となりますが、小児では微小変化型ネフローゼ症候群が多くみられます。糸球体の基本構造にほとんど変化はみられませんが、急性発症することが多く、ほかの原因によるものに比べて尿中に出る蛋白量も多いため、脱水症状やショック症状を示すこともあります。しかし、この型は治療によく反応し、80パーセント以上は副腎皮質ステロイド薬が有効です。

副腎皮質ステロイド薬に反応しないステロイド抵抗性のものや、血尿を伴うもの、高血圧を伴うものは、ほかの病型が多く、腎生検による病型診断を行って治療法が決められます。

続発性(二次性)ネフローゼ症候群では、その原因となる病気の種類は多くありますが、糖尿病からくるものが増加中で、膠原(こうげん)病の一つである全身性エリテマトーデスからくるもの、アミロイドーシスからくるものも、しばしば認められます。

病気の症状と早期発見法

ネフローゼ症候群の症状としては、まず、皮下組織に水がたまる浮腫、すなわち、むくみが起こります。尿中に多量の蛋白が排出されてしまうと、血液中の蛋白量が少なくなり、低蛋白血症となります。血液中の蛋白濃度が低下すると、浸透圧の作用で、血液中の水分や塩分などが、血管の外の組織間に移動してしまうために起こる現象です。

このむくみは、原因となる病気や、蛋白尿の程度、年齢などにより、急に出現したり徐々に出てきたり、強かったり弱かったりとさまざまです。呼吸が困難になるほど重いもの、全身性のむくみを示すものから、押せばへこむ程度の軽いものまでみられます。

むくみが軽いからといって、腎障害が進行するような病気が原因になっている場合には、放置しておいてはいけません。腎不全となってから、気付くようでは困ります。むくみの発見の仕方は、向う脛(ずね)を押した時に跡が残るかどうかです。

症状や経過により異なる薬物療法

むくみを解消するのに、利尿薬がよく用いられます。利尿薬は腎尿細管に働いて、水とナトリウムを尿中に排出するのを促進させ、むくみを軽減します。ただし、病気そのものを根本的に治す薬ではなく、対症薬と呼ばれるものの一つです。

副腎皮質ステロイド薬は、原発性ネフローゼ症候群や、免疫異常が関与していると思われる腎症ではよく用いられ、時に特効薬となっています。続発性ネフローゼ症候群でも、膠原病からくるものなど免疫関連の病気にはよく用いられます。

免疫抑制薬は、免疫の異常が関与していると思われる場合に、しばしば用いられます。しかし、副作用を考慮して、副腎皮質ステロイド薬の効果がない場合や使用できない場合、減量したい場合、しばしば再発する例などで用いられます。

その他、蛋白尿を減らしたり、腎機能を保持することを目的に、抗凝固薬、抗血小板薬、消炎薬、漢方薬なども、併用されることがあります。

食事療法については、ごく最近まで、血液中の蛋白が大量に失われているので、食事により蛋白質を補うことが必要と考えられてきました。今では、高蛋白食は腎機能をさらに悪くすると考えられ、高蛋白食にしない方針で治療するようになりました。すでに腎機能が中等度以下になっている場合には、さらに低蛋白食にするようになっています。

食塩や水分の取り方が多いことも、むくみの原因や悪化させる因子となります。多くの場合には、むくみの程度によって、食塩や水の摂取を制限します。

🇹🇯捻挫

関節に無理な力がかかり、周囲の靭帯などが傷付き、部分的に切れる外傷

捻挫(ねんざ)とは、関節に無理な力がかかり、関節の生理的な可動範囲を超えてひねった結果、関節周囲の靭帯(じんたい)などが傷付き、部分的に切れてしまうこと。関節を構成する骨と骨の間にずれがなく、骨折もしていない場合を指します。

多少なりとも骨と骨の間にずれが生じた場合は、脱臼(だっきゅう)あるいは亜脱臼といいます。捻挫は骨の位置関係に異常がなく、関節面が完全に接触を保っている、亜脱臼は関節面が一部接触を保っている、脱臼は関節面の接触が全く失われている、という違いがあります。

捻挫が最も起こりやすい関節は足(そく)関節ですが、人の体の中には多数の関節があります。四肢の関節の中にも肩、肘(ひじ)、手首、指、膝(ひざ)、足首など、誰もが関節と認識する関節のほかに、動きが小さいために目立たない関節が多数ありますし、背骨を構成する一つひとつの椎骨(ついこつ)の間にもすべて関節があります。これらの関節がずれないように骨と骨とをつなぎ止め、さらに関節の動きをコントロールする非常に重要な組織が靭帯で、大半の関節は複数の靭帯でいろいろな方向から支えられいますす。

捻挫の症状は、受傷した関節の種類や、靭帯損傷の程度によってさまざまです。一般的な症状は関節の痛みや、はれ、熱感、内出血などで、動かさなくても痛む場合や、はれや内出血がひどい場合は靭帯が断裂している場合もあります。

ただし、このような重傷例は靭帯が断裂する際に必ず関節のずれを伴うので、厳密には捻挫とはいえず、右膝前十字靭帯損傷などという具体的な外傷名が付けられるのが一般的です。

断裂した靭帯が修復されないまま経過すると、関節に緩みが残り、それによる続発症が出ることもあるので注意が必要で、自己診断はせずに整形外科を受診することが望まれます。

医師による捻挫の診断では、単純X線検査を行って関節のずれや骨折の有無を確かめます。関節の不安定性の程度を検査するために、ストレス(負荷)を加えてX線写真を撮ることもあります。

単純X線写真には靭帯そのものは映し出されないため、MRI検査も行います。近年、MRI検査は多くの外傷や障害の補助診断に用いられていますが、特に膝関節の靭帯損傷に対しては必須ともいえます。

医師による捻挫の治療としては、受傷直後は局所の安静、冷却、圧迫、患肢の高挙(こうきょ)が基本的な処置になり、はれや内出血がより以上に高度になることを止めます。

その後の治療は重傷度によっても違いますが、弾力包帯、テーピング、装具などにより関節の動きを制御するのが基本。ギプスによる固定が行われることもありますが、長期に渡る関節の固定は、正常な靭帯の修復過程をむしろ妨げるとの説もあり、関節軟骨にも悪影響を及ぼすことから、その適応は限られています。

治療後しばらくの間は、過負荷を抑えて保温するため、サポーターや矯正具などを用いて再発抑止に努めるのがよいとされます。避けたいのは、日常使う関節で捻挫が起きるために痛みが軽快した途端治療を中止してしまうこと。そんな時に起こる後遺症として、関節を構成する靱帯や軟部組織が弛緩(しかん)した状態で、関節を補強すべき筋肉が弱体化している場合には、何度も同じ部分の捻挫を引き起こす捻挫癖につながることもあります。

なお、捻挫より重い靭帯の完全断裂に対する治療法は、受傷した関節、患者の年齢や職業、スポーツをするかどうかなど、いろいろな因子によって違ってきます。特にスポーツ選手など活動性の高い人では、損傷した靭帯の縫合術や再建術のような手術的治療が必要になることもまれではありません。受傷した関節によっても手術的治療の適応は異なり、膝や足首など荷重がかかる関節は手術の適応となることが多く、指や肘はならないことが多くなっています。

2022/07/16

🇦🇪年齢依存性てんかん性脳症

難治性てんかんで、発症時期と症状が年齢と強い関係を持っている疾患群

年齢依存性てんかん性脳症とは、発症時期と症状が年齢と強い関係を持っており、新生児期から幼児期にかけて特徴的なてんかん発作で発症する疾患群。難治性てんかんの代表でもあり、特異的な脳波所見を示し、知能、運動、情緒に関する発達障害を併発します。

年齢依存性てんかん性脳症の代表的な疾患として、大田原症候群(早期乳児てんかん性脳症)、ウエスト症候群(点頭てんかん)、レノックスガストー症候群(レンノックス・ガストー症候群)が挙げられます。年間の発症者数は約500人で、推定患者数は約2万人です。

生後3カ月以前の乳児早期に発症する大田原症候群

大田原症候群とは、新生児期から生後3カ月以前の乳児早期に発症する難治性のてんかん。早期乳児てんかん性脳症とも、EIEE(early infantile epileptic encephalopathy with suppression burst)とも呼ばれます。

生後4カ月から1歳ころに発症するウエスト症候群(点頭てんかん)、2歳~8歳に発症するレノックスガストー症候群とともに、年齢依存性てんかん性脳症に分類されます。それぞれのてんかんの好発年齢が乳幼児期にみられること、大田原症候群からウエスト症候群へ、さらにウエスト症候群からレノックスガストー症候群へと年齢とともに移行することが多いため、脳の発達過程とこれらのてんかんの発症が密接に関連しているものと考えられています。

てんかんは、脳の神経細胞の伝達システムに一時的な機能異常が発生して、反復性の発作が起こる疾患です。発作時には意識障害がみられるのが普通ですが、動作の異常、けいれんなどだけの場合もあります。こうした異常な症状が長期間に渡って何度も繰り返し現れるのが、てんかんの特徴です。

大田原症候群の発症者は、10万人に1人以下とみられています。発症すると、強直発作を頻発します。強直発作は全身を強直させて、頭部を前屈し、両上肢を挙上させ、眼球が上転する数秒~30秒程度の発作で、発作の発見時には多くの場合、一過性に呼吸を止めて、唇や爪(つめ)が青紫色になるチアノーゼが見られます。覚醒(かくせい)時にも睡眠にも、発作は出現します。

脳波を調べると、覚醒時、睡眠時を問わず持続的に、サプレッションバーストという特徴的な脳波が認められます。サプレッションバーストは、振幅の小さい波の時(サプレッション)と、振幅の大きい波の時(バースト)とが交互に現れるものです。発作を起こしている時の脳波は、ほとんどが全般性脱同期を示します。

強直発作に伴って脳の働きが弱まり、知的障害や運動障害などを来します。

大田原症候群は、脳の低酸素や感染症、事故などよる脳損傷によっても生じますが、一部は脳で働くARX、およびSTXBP1という遺伝子の配列の異常によって生じます。ARXという遺伝子は、ガンマアミノ酪酸(GABA、 ギャバ)と呼ばれる脳の興奮を抑える物質を含む神経細胞の発生に関係しています。

小児科、あるいは神経内科の医師による治療では、抗てんかん薬の内服のほか、ビタミンB6の内服、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)療法、甲状腺(こうじょうせん)刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の注射などが行われます。

しかしながら、大田原症候群の発作は難治で、多くは抗てんかん剤および副腎皮質刺激ホルモンに反応しません。薬剤が部分的に有効で発作が消退しても、重症の心身障害を残し予後は極めて不良で、早期死亡の例も少なくありません。

脳の前頭葉に焦点性皮質形成異常のある大田原症候群の場合には、外科治療が精神運動発達と発作コントロールの両方に有益な効果があります。

生後4カ月から1歳ころの小児に発症するウエスト症候群

ウエスト症候群とは、生後4カ月から1歳ころの小児、特に男児に多く発症する予後不良のてんかん。1841年にウエストという医師が彼自身の息子の病状と経過を報告したのが最初で、点頭てんかんとも呼ばれます。

てんかんの一つのウエスト症候群は、発症前の発達が正常で、いろいろな検査でも原因が見いだせない特発性と、明らかな原因となる基礎疾患があって脳に障害が存在し、その随伴症状として発作がみられる症候性の2つに大別されます。特発性が10から20パーセント、症候性が80から90パーセントを占めます。

症候性の基礎疾患としては、胎内感染症、先天性脳奇形、先天性代謝異常症、新生児頭蓋内(ずがいない)出血、新生児低酸素性虚血性脳症、小頭症、髄膜脳炎、結節性硬化症、フェニルケトン尿症、頭部外傷などがあります。原因となる基礎疾患のうち、単性疾患としては結節性硬化症が最も多く、皮膚の白斑(はくはん)が診断の手掛かりとなります。

発作の型としては、瞬間的な全身性ミオクロニー発作が特徴です。すなわち、驚いたように両腕を上げると同時に頭部を前屈(点頭)する短い強直発作が数秒間の間隔で、数回から数十回と反復して起こります。このような反復発作をシリーズ形成といい、寝て起きた時あるいは眠くなった時など1日に数シリーズ繰り返してみられます。

 発作が起こるとともに、今まで笑っていた乳児が笑わなくなったり、お座りしていた乳児がお座りしなくなるような精神運動発達の荒廃がみられてきます。

症状がある場合は、小児科、あるいは神経内科を受診します。早期診断と早期治療開始が重要で、とりわけウエスト症候群発症まで正常の発達がみられていた特発性では、治療によって良好な予後が期待されます。

医師による診断では、脳波検査が決め手となり、ヒプスアリスミア(脳波の不整波)と呼ばれる特徴的な所見がみられます。生後1カ年未満で、10分間程度の間に発作が10~30回まとまってみられるシリーズ形成、ヒプスアリスミア、精神運動発達遅滞がみられれば、ウエスト症候群と確定されます。原因となる症候性の基礎疾患の検討も重要で、血液検査、頭部CT、頭部MRI検査などを行います。

医師による治療では、バルプロ酸、ゾニサミド、ニトラゼパム、クロナゼパムなどの抗てんかん薬と、ビタミンB6の大量投与が試みられますが、有効でない場合も少なくありません。

その場合は、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)療法が行われます。約70パーセントにコントロールが期待されますが、副作用として感染症、高血圧、電解質異常、一過性の脳委縮などがみられることがあるため注意が必要で、最近はなるべく少量を短期間に使用する傾向があります。症候性では、ACTH療法で一時的にコントロールできても再発することも多く、年齢が進むとレノックスガストー症候群へ変容することも多くみられます。

予後は不良で、90パーセント以上に何らかの精神運動発達障害みられます。また、50パーセント以上に他の発作型の合併がみられます。ウエスト症候群の発作そのものは、2~3歳以後になると自然消失しますが、多くはレノックスガストー症候群や焦点発作などの他の発作型へ移行します。脳波のヒプスアリスミアも発達の一時期にみられる異常で、年齢とともに、焦点性発作波や不規則棘徐波(きょくじょは)結合に移行します。

ウエスト症候群で予後良好なものとしては、発症以前の発達が正常で、治療が発症1カ月以内に開始されて発作が抑制され、脳波で局在のみられないものが挙げられます。発作の消失は、必ずしも知能の改善を意味しません。

幼少期に始まるレノックスガストー症候群

レノックスガストー症候群とは、通常、幼少期に始まるてんかんの重症型。レンノックス・ガストー症候群とも呼ばれます。

レノックスガストー症候群は、年齢依存性てんかん性脳症の一つにも分類され、頻回に続く全般性の発作、激しい脳波異常、高率な知的機能の低下が特徴で、極めて治りにくいタイプのてんかん群に相当します。

全般性の発作は、いつも同じ1種類だけではなく、急に手足を突っ張るようにする強直けいれんを主体にして、意識だけがぼーっとする非定型欠神(けっしん)発作、手足をピクピクさせるミオクロニー発作、突然力が抜けて倒れる転倒(脱力)発作など、いろいろな形のけいれん発作がみられます。

脳波検査を行うと、遅い棘徐波結合など特徴的な波形が出現します。重篤な知的機能の低下を残すことも、少なくありません。

多くは3~5歳をピークに、2~8歳で発症しますが、成人になって発症することもあります。しかし、頻度の少ない、まれな疾患です。

レノックスガストー症候群の一部は、ウエスト症候群(点頭てんかん)などの他のてんかん性脳症から移行してきます。脳炎、脳症などの疾患の後遺症として起こることもあります。

このレノックスガストー症候群で生じる複数の発作の中でも、転倒発作が最も生活に支障を来します。前兆なく突然意識を消失し、全身の意識が抜けて激しく転倒するために、生傷が絶えず、頭の保護のためにしばしば保護帽を必要とします。

症状がある場合は、小児科、あるいは神経内科を受診します。

医師による診断では、脳波検査を最も重視します。てんかんは脳の神経細胞の電気的発射によって起きますので、この過剰な発射を脳波検査で記録することができます。診断のみでなく、てんかんの発作型の判定にも役立ちます。脳波検査のほかにも、CT検査やMRI検査などは、脳腫瘍(しゅよう)や脳外傷などを画像で確認できるため有効です。

医師による治療では、いろいろな抗けいれん薬が発作の症状を抑えるために使用されますが、レノックスガストー症候群ではけいれんが治まりにくいことが多く、部分的にしか成功していません。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)を使用するホルモン療法が奏効することもあります。

発作を軽くするために、脳梁(のうりょう)離断術という手術を行うこともあります。全般性のてんかん発作では、短時間で異常波が対側の脳へ伝わり、その異常波が両方の脳で同期したてんかん波となるために、脳梁という場所が重要であると考えられています。そこで、転倒発作を防ぐためには、脳梁の部分で左右の脳の連絡を絶つ方法をとります。大人では脳梁を前から3分の2を部分的に切りますが、子供では脳梁をすべて切ります。

脳梁離断術は根治術ではなく緩和術であるため、発作すべてをなくすことはできません。しかし、発作の症状を減らすことによって、生活の質を向上させることが可能です。

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