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2022/08/02

🇺🇾椎間板ヘルニア

椎間板の一部がずれて、神経を圧迫する疾患

椎間板(ついかんばん)ヘルニアとは、椎間板の一部がずれて起こる疾患。椎間板とは、脊柱(せきちゅう)の椎体と椎体の間にある円板状の軟骨組織で、骨に対するクッションの役割を果たしています。

椎間板ヘルニアは、腰椎に起こるものと頸椎(けいつい)に起こるものが多く、それぞれ症状が異なります。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎椎間板ヘルニアとは、脊柱のうち腰部にある腰椎の椎間板の一部がずれ、神経を圧迫する疾患。頸椎、胸椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

腰椎は、脊柱(背骨)のうちで腰の部分を構成する骨で、5つの椎骨からなります。上から第1腰椎、第2腰椎と呼び、一番下が第5腰椎。その椎骨の連結の主な部分は、前部の椎体と後部の脊椎関節突起で、前部の椎体と椎体の間にはそれぞれ椎間板が挟まっていて、クッションのような役割を果たしています。椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

体重や外部からの荷重が椎体に加わると、椎間板が分散して受け止めて次の椎体に伝え、ある程度弾力的に伸縮するために、背中や腰を曲げたり伸ばしたりすることができるような構造になっています。

ところが、椎間板には血管がないために、何かの具合で損傷を受けると、回復が遅い上に組織の老化的な変性が起こりやすく、そこに荷重が加わると線維輪に亀裂(きれつ)が入り、中にある髄核が脱出して腰椎椎間板ヘルニアを起こします。

脱出は前でも横でもどちらの方向へ出てもヘルニアですが、後方へ出たのが一番問題になります。後方の脊柱管には、脊髄ないし馬尾(ばび)神経と、それから枝分かれして末梢(まっしょう)へ分布する神経の根部があるため、ヘルニアによって圧迫されると激しい痛みやまひを起こすからです。

腰椎椎間板ヘルニアは、第4、第5腰椎間に起こることが最も多く、次いで第5腰椎とその下の仙椎間に多く認められ、10歳代の後半から30歳代までの比較的若い年齢層によく起こります。

切っ掛けとなるのは、重い物を持ち上げようとした時や、体をひねった時などです。腰がぎくりとして、そのまま立ち上がれなくなったというような急性腰痛症(ぎっくり腰)の症状で現れるのが一般的。また、顔を洗おうとして前かがみになった拍子とか、特別な動作をしないのに自然に起こることもあります。

初期は腰痛のみのことが多いのですが、次第に脚の痛みやしびれを伴ってきます。腰痛と左右どちらかの脚の痛みを現すことが多いのですが、時に両脚のしびれを来すことがあります。この脚の症状は、座骨神経を刺激することによって起こる座骨神経痛です。仰向けに寝て、ひざを伸ばしたまま痛む側の足を上げようとしても、痛みがひどくなって十分に上げられません。若年者の腰椎椎間板ヘルニアでは、脚の症状がなく腰痛のみのこともあります。

さらに症状が進むと、運動神経も障害されるようになり、脚の筋力が低下します。排尿障害、排便機能の異常が現れることもあります。

第4腰椎以下の下部腰椎部のヘルニアは、片側だけの症状にとどまることが多いのに対し、第3腰椎以上の上部腰椎部の場合は、両側に症状が起こることが多く、脊髄腫瘍(しゅよう)と同じような症状を現すことがあるので、その区別が必要になります。

頸椎椎間板ヘルニア

頸椎椎間板ヘルニアとは、背骨の最上部にある頸椎の椎間板の一部が後方へずれ、神経を圧迫する疾患。胸椎、腰椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

背骨のうちで首の部分を構成する骨が頸椎であり、7つの椎骨からなります。上から第1頸椎、第2頸椎と呼び、一番下が第7頸椎。第2〜7頸椎までは、それぞれの間に椎間板が挟まっていて、椎骨と椎骨の間でクッションのような役割を果たしています。この椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

頸椎椎間板ヘルニアになると、椎間板の線維輪に亀裂が入り、中にある髄核が飛び出して脊髄や神経根を圧迫し、さまざまな神経症状が現れます。頸椎の中でも首の根元に位置し、頭蓋(とうがい)骨を支えるのに最も負担が強いられる下位の頚椎である第5、第6頸椎間に、最も多くヘルニアが認められます。

椎間板の年齢的な変性が基盤となり、頸椎への運動負荷が加わることが原因となって発生します。このために、頸椎椎間板の変性がある程度進み、頸椎への運動負荷の多い年代である30〜50歳代が好発年齢になります。

椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、手足の痛みやしびれなどのさまざまな症状が出てきます。代表的な症状は首の痛みや凝りで、午前中は比較的症状が軽くても、午後から夕方になるにつれて症状が強くなります。

脊髄が圧迫されている場合、手のしびれが現れます。手のしびれは片側だけの時もあり、次第に反対側にも現れることもあります。最初から両側にしびれが現れていることもあります。手指の細かな運動もしづらく、字を書いたり、はしで豆をつまんだり、魚肉をほぐすことができにくくなったり、衣服のボタン、特に目で見ることのできない首回りのボタンの止め外しが難しくなります。

脚にも症状が出て、腱(けん)反射が高進し、脚がこわばって歩きにくくなる痙性(けいせい)歩行が現れます。階段の昇降に手すりが必要になり、特に階段を降りにくくなることが多くみられます。

神経根が圧迫されている場合、主に後頸部から肩、手指にかけてズキズキする痛みが現れます。この痛みは、首を後ろに反らすと強まるのが特徴で、神経根の圧迫がますます増強されるためです。そして、上肢、手指の筋力低下も現れます。

また、頸椎椎間板ヘルニアの存在する高さによって、手足に発生するしびれや痛みの部位、触覚や痛覚などの知覚障害が起こる部位に違いがみられます。排尿、排便の障害を起こすこともあります。

椎間板ヘルニアの検査と診断と治療

腰椎椎間板ヘルニア

腰痛だけではなく、脚の痛み、特にひざよりも先まで痛みがある場合は、整形外科を受診します。無理に腰椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、腰椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。近年は、MRI検査によって診断が容易になりましたが、無症候性のヘルニアが多数見付かる問題も生じています。症例によっては、脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

治療では、骨盤の牽引(けんいん)療法が効果的です。腰部の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、腰部のコルセットなども効果的です。

薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤が投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するためにホットパックなどの温熱療法、体操療法、腰部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

頸椎椎間板ヘルニア

頸椎椎間板ヘルニアの症状に気付いたら、整形外科を受診します。無理に頸椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、頚椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。症例によっては、脊椎・脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

治療では、頭蓋の牽引(けんいん)療法が効果的です。首の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、頸部のカラー(えり巻き式補装具)なども効果的です。

薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤を投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するために温熱療法、体操療法、頚部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

🇦🇹椎間板変性症、変形性脊椎症

長年の使用による椎間板の変性と変形

椎間板(ついかんばん)変性症とは、椎骨をつないでいる椎間板に老化など何らかの変性が生じ、組織の構造や成分が変化したために起こってくる疾患。軟骨である椎間板が変性すると、次第に厚さが薄くなり、椎間が狭くなります。

壮年期から老年期によくみられ、無症状のこともありますが、体を動かすと腰痛が起こることがあります。

椎間板変性症が進むと、椎間板のクッション性が少なくなり、椎間板に接する椎体と椎体がぶつかりやすくなります。同時に、靭帯(じんたい)の変化も加わった結果、骨のふちに骨棘(こっきょく)という、とげができてきます。これはちょうど、長く使った金づちのように、椎体の周辺に骨の突起物ができた状態で、骨の輪郭がでこぼこした感じになります。そして、とげが神経を刺激したり、圧迫したりすることで、痛みが引き起こされます。これが変形性脊椎(せきつい)症です。

変形性脊椎症は、高齢者や重労働者に多くみられる疾患で、長年の過度の使用による組織の変化を基盤にして起こります。高齢者では程度は違いますが、ほとんどの人に症状がみられるので、加齢に伴う生理的な変形ともいえます。若い頃に重労働や激しいスポーツを行ってきた人では、40歳以降に発症する場合が多く、頸椎(けいつい)や腰椎に起きやすくなります。

脊椎の変形が長期間に渡って、徐々に進行する場合は、痛みなどの自覚症状を伴わないことが少なくありません。比較的急速に進行する場合には、症状も強く、体を動かすと痛んだり、押すと痛みが起こることがあります。

変形が発生する場所によって、痛みを感じる場所が違います。頸椎に発生した場合は、自覚症状がない時もありますが、多くは脊髄圧迫による手足のしびれ、肩凝りを感じたり、首の後ろに痛みを感じます。頸髄が圧迫されると、手足のしびれを感じたり、細かい字を書いたりボタンをかけるなどの軽作業が困難になったり、けいれんして歩きにくくなったりします。腰椎に発生した場合は、腰痛はもちろんのこと、下肢のしびれがあります。腰を曲げたり、反らしたりすると痛み、足に力が入らなくなることもあります。

変形性脊椎症に加えて、脊髄や馬尾(ばび)神経が収まっている脊柱管が狭くなる脊柱管狭窄(きょうさく)症や、椎間板ヘルニアなどを引き起こすと、症状はさらに悪化します。

椎間板変性症、変形性脊椎症の検査と診断と治療

椎間板変性症、変形性脊椎症は主に老化によるもので、でき上がった変形を元に戻すことは困難なため、治療は対症療法になります。安静にした上で、薬物療法、温熱療法、牽引(けんいん)療法、体操療法などの治療法を行い、それらで症状が改善されない場合や、神経がまひしたりした場合は手術療法が行われることもあります。

しびれや痛みがある場合は、まず局所の安静を保つことが大切で、しばらく床に就いているとか、コルセットを着用します。症状が薄れてきたら、温熱療法や頸椎牽引(けんいん)、骨盤牽引も有効です。強い痛みに対しては、消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤などの薬剤を使用したり、ビタミン剤を補助的に使用します。注射しやすい場所ならば、ステロイド剤と局所麻酔剤とを注射するのも効果的です。

症状が軽症であれば、できるだけ体を動かして、体を軟らかくするようにします。多少痛いからといって安静にしすぎると、背骨を支える筋肉や靭帯(じんたい)が少しずつ弱くなるために腰痛が出るなど、かえって症状が悪化したりする場合がありますので注意が必要です。コルセットなどを着用して負担を少なくする方法もありますが、日常あまり使いすぎると筋肉が弱ってしまいますので、最小限に抑える必要があります。

軽い体操、ウオーキング、水中ウオーキングなどの運動をしたり、風呂に入って体を温めた後ストレッチをすることで、周りの筋肉の緊張や、こわばりがとれます。重い物を持つなど、無理な姿勢や動作は避けます。

🇧🇴椎骨動脈解離

首の左右を通る椎骨動脈の壁の一部が裂けて、血流が動脈の壁の中に入る疾患

椎骨(ついこつ)動脈解離とは、首の左右を通って脳に血液を送っている椎骨動脈の壁の一部が裂けて、血流が壁の中に入る疾患。

動脈の壁は内膜、中膜、外膜の三層構造から成り立っています。この動脈の壁が層と層の間や、層内で裂けて、血流が壁の中に入る状態を動脈解離と呼びます。

椎骨動脈の血管が裂ける原因は、はっきりとはわかっていません。中年の成人に、はっきりした誘因なしに発生します。しかし、頭をぶつけたり、首を回したりしたことが、引き金になることがあります。ゴルフのスイング中や、カイロプラクティックなどでの治療中、美容院などでのシャンプー後に起こる場合もあります。

椎骨動脈解離を起こした場合、たいてい急に首の後ろや後頭部に激しい痛みを感じます。

解離を起こした動脈の内腔(ないくう)は狭くなって、この狭窄が高度になれば一過性脳虚血発作を起こしたり、裂けた血管の壁に血液が入り込んで膨らんで血管をふさぐと脳梗塞(のうこうそく)を起こすことがあります。さらに、内出血したところから血管が破れると、くも膜下出血を起こして激しい頭痛がし、命にかかわる危険もあります。

40〜60歳代の発症が多く、くも膜下出血の患者の中では5パーセント程度、脳梗塞の患者の中では1パーセント程度いると考えられています。

椎骨動脈解離は古くから知られてはいましたが、臨床的に明確に認識されるようになったのは、MRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像診断が普及してきた最近のこと。ここ数年の間に、椎骨動脈解離と診断されるケースは急速に増加しています。その多くは症状を残さず杜会復帰しているので、従来ならば原因の明かでない後頭部痛ないし後頸部(こうけいぶ)痛として、対症療法のみが施されていたケースであろうと考えられています。

現在でも、多くの自然経過のよいケースが椎骨動脈解離とは診断されないで、対症療法のみを受けている可能性があります。通常は自然経過がよいので大きな問題にはなりませんが、脳梗塞、くも膜下出血など重篤な症状を起こすこともあるので、注意する必要があります。

椎骨動脈解離の検査と診断と治療

脳神経外科の医師による診断では、椎骨動脈解離を疑ったならば、MRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管撮影)、血管造影検査を行って確定します。くも膜下出血の有無はその後の治療を大きく左右するので、一般的な方法で確定します。くも膜下出血の状況はCT(コンピューター断層撮影法)検査によって判明し、出血量が少なくCTでははっきりしない場合は髄液を採取して検査します。

脳神経外科の医師による治療は、椎骨動脈の解離だけなら、通常1カ月の安静で血管の裂け目が固まるので、痛み止めを注射しながら安静にします。血栓ができないような薬を点滴することもあります。

椎骨動脈解離が再発することはまれで、同じ場所がもう一度、裂けることはあまりありませんが、避けたところがこぶになった場合は、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの検査を行い、破裂の危険性を調べます。

予防法としては、たばこは血管に悪影響を及ぼすので、禁煙、節煙を心掛けます。

🇨🇱通年性アレルギー性鼻炎

季節を問わず1年中、鼻詰まりなどの症状が現れやすい鼻炎

通年性アレルギー性鼻炎とは、季節に関係なく、年間を通じて起こりやすい鼻炎。

アレルギー性鼻炎は、季節性アレルギー性鼻炎と通年性アレルギー性鼻炎の2種類に分かれています。季節性アレルギー性鼻炎のほうは、特定の季節にのみ起こる鼻炎で、そのほとんどが日本人の国民病とも呼ばれる花粉症です。花粉症は、風の媒介で受粉する風媒花の花粉を抗原(アレルゲン)としますので、花粉が飛ばない季節には発症しません。

通年性アレルギー性鼻炎のほうは、季節に関係なくいつでも発症し、1年中続くこともあります。症状は、季節性アレルギー性鼻炎と変わらず、くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻詰まり(鼻閉)が主となります。

鼻から吸い込まれた抗原が鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして、通年性アレルギー性鼻炎を発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原は、ダニ、ハウスダスト(室内のほこり)、カビや細菌です。

日本の住宅の布団やカーペットなどに潜むダニの約九割を占めるヒョウヒダニ、中でもヤケヒョウヒダニとコナヒョウヒダニの2種類が、主な原因となります。人やペットの抜け毛、フケなどが含まれているハウスダストをエサとして繁殖するダニの死骸(しがい)も、原因となります。

人やペットの抜け毛、フケ、ゴキブリなどの虫の死骸やフン、織物の繊維が含まれているハウスダストも、原因となります。室内の空気中を浮遊しているカビの胞子や室内の細菌も、原因となります。現代の住宅は密閉度が高く、湿度も高いため、ダニ、カビ、細菌が繁殖しやすくなっています。

外部からダニ、ハウスダストなど異物である抗原が侵入した時に、その抗原に対応する特定の抗体(IgE抗体)が体内に存在すると、抗原と抗体が結合し、抗原抗体反応が起こります。抗原抗体反応が起こると、肥満細胞や好塩基球などの細胞からヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの化学伝達物質が遊離され、その作用でアレルギー反応が起こります。

ヒスタミンが鼻の粘膜の三叉(さんさ)神経を刺激したり、自律神経のバランスを崩して副交感神経の働きを優位にするために、くしゃみや、透明なさらさらとした鼻水の過剰分泌、鼻のかゆみなどが起こります。ロイコトリエンやトロンボキサンなどは、鼻の粘膜の血管を刺激して拡張させるために、鼻詰まりも起こります。

鼻詰まりが強く、くしゃみや鼻水を感じない場合や、くしゃみと鼻水が強く、鼻詰まりを感じない場合などがあります。アレルギー性結膜炎を合併することも多く、目のかゆみや充血、流涙がみられることもあります。口の中とのどのかゆみ、のどの痛み、皮膚の炎症などが起こることもあります。

鼻の奥と中耳をつないでいる耳管がはれることもあり、特に小児では聴力が低下したり、慢性中耳炎になったりすることがあります。また、鼻の周囲にあって骨で囲まれた空洞である副鼻腔(ふくびくう)炎を繰り返すことで、鼻の粘膜組織が増殖して鼻ポリープができることもあります。

ダニやハウスダストを抗原とする通年性アレルギー性鼻炎では、しばしば気管支喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎を併せ持っています。

近年、冷暖房が普及して住宅の空気が密閉されるようになったことで、ダニやハウスダストが室内に蓄積されやすくなり、通年性アレルギー性鼻炎を発症する人が増えたとされています。さらに、花粉症などの季節性アレルギー性鼻炎と、通年性アレルギー性鼻炎の両方を発症する人も増加傾向にあります。

常に鼻炎に悩まされている人は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診して、症状を引き起こす原因が何かを調べることが勧められます。原因が特定できれば、日常生活の中でそれを避ける工夫ができ、症状の軽減につなげることが可能になるためです。

通年性アレルギー性鼻炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず鼻炎の症状がアレルギー性かどうかを検査で調べます。検査には、問診、鼻鏡検査、鼻汁検査などがあります。

問診では、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つの症状が始まった時期、症状が1年中起こるのか季節と関連して起こるのか、症状の種類と程度、過去の病歴、気管支喘息やアトピー性皮膚炎などほかのアレルギー性疾患の併発の有無、副鼻腔炎や鼻ポリープの併発の有無、家族の病歴などを明らかにします。

鼻鏡検査では、専用のスコープを使って直接鼻の粘膜の状態を観察します。通年性アレルギー性鼻炎の場合は、鼻の粘膜が全体的にはれ上がって白っぽく見え、透明の鼻水が認められます。また、副鼻腔炎、鼻ポリープなどほかの疾患があるかどうかも観察します。

鼻汁検査では、綿棒などで採取した鼻水の中に、白血球の一種の好酸球という細胞がどの程度含まれているかを調べます。抗原抗体反応が起こると、鼻水中の好酸球が増加するので、アレルギー性鼻炎の診断の助けになります。

アレルギー性であれば、原因となる抗原は何かを検査します。検査には、特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストがあります。

特異的IgE抗体検査では、抗原抗体反応を起こす抗体(IgE抗体)が血液中にどの程度含まれているか、その抗体がどんな種類の抗原(アレルゲン)と結合するか、採血して調べます。

皮膚テストでは、可能性のある抗原のエキスを前腕の皮膚に注射するか、皮膚につけた引っかき傷に滴下して反応を調べます。15〜20分後に、皮膚が赤くはれる面積と程度で判定します。

鼻粘膜誘発テストでは、可能性のある抗原エキスの染み込んだ小さな紙を鼻の粘膜に張り付け、アレルギー反応を調べます。5分後にくしゃみ、鼻水、鼻詰まりがどの程度出現するかで判定します。

鼻汁検査、特異的IgE抗体検査または皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストの3つのうち2つ以上が陽性の場合に、アレルギー性鼻炎と確定します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、まず抗原の除去、回避に努めます。ダニやハウスダストが抗原であれば、室内の清掃をこまめに行い、布団や枕(まくら)に防ダニカバーを付け、空気清浄器を使用するのも有効です。

次に、減感作療法(特異的免疫療法)という体質改善の治療や、抗アレルギー薬で症状を抑える治療を行います。

減感作療法は、抗原に体を慣れさせ、抗原に接しても症状を起こしにくくする治療です。現在のところ、長期にわたって症状の出現を抑えることが可能な唯一の方法であり、週に1回くらいの割合で抗原希釈液を注射し、徐々に濃度を濃くしていく治療を2~3年続けます。治療終了後にも、症状の改善が持続します。

最近、長期にわたる通院の負担を軽減するのを目的として、急速減感作療法がいくつかの医療機関で行われています。副作用の出現も危ぶまれるために入院して行う場合もありますが、従来の減感作療法と同じか、それ以上の効果があるといわれています。

薬物療法では、ヒスタミンなどの化学伝達物質の作用を抑える抗ヒスタミン薬や、化学伝達物質の遊離を抑えるいわゆる抗アレルギー薬、副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬、自律神経薬などを、症状やそのほかの状況に応じて内服薬、点鼻薬として使用します。

症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいため、長期間の経過観察も行います。

薬物療法に効果を示さない場合は、手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、凍結手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また、鼻水に対しては、自律神経の副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。

副鼻腔炎や鼻ポリープがある場合も、副鼻腔からの粘液の排出をよくしたり、感染物質を除去したり、鼻ポリープを切除したりするために、手術療法を行うこともあります。手術の前後に、温水や生理食塩水で副鼻腔を定期的に洗浄すると有効なこともあります。

🇭🇳痛風

痛風とは、血液中の尿酸量が高い値を示す高尿酸血症が原因となって、関節が痛む発作症状です。「風が吹いても痛い」といわれるほど、激しい痛みを感じます。

圧倒的に中年以後の男性に多く、約70パーセントの確率で、足の親指の付け根の関節に痛みが起こります。時に、足、ひざの関節が痛むことも。女性はめったに発症せず、なぜ男女差があるのか理由は不明です。

痛みの発作は、血液中に増えて溶け込めなくなった尿酸が尿酸塩結晶となって関節にたまり、この結晶を異物と判断した白血球が攻撃して起こるといわれています。

発作がある時の治療には、鎮痛消炎剤の投与が行われ、発作がない時は、尿酸降下薬を服用します。治療が正しく行われていれば、再発作はほとんどありません。しかし、尿酸を正常域に保つ治療は、ずっと続けなければなりません。

日常生活では、発作の誘因となるストレス、過度の飲酒、プリン体を多く含む臓物や豆類の過剰摂取に注意すべきです。

🇸🇻痛風腎

尿酸の結晶が腎臓に沈着することで発症する腎臓病

痛風腎(つうふうじん)とは、尿酸の結晶が腎臓に沈着することで発症する腎臓病。

血液中の尿酸の量が高い値を示す高尿酸血症や、高尿酸血症が原因となって関節が痛む痛風に合併して、痛風腎は起きます。

尿酸は、体内でプリン体という蛋白(たんぱく)質が分解されてできる老廃物で、血液中に混じる尿酸は、腎臓から尿の中に溶けた状態で排出されています。その尿酸の生成が過剰であったり、腎臓での尿酸の排出がうまくいかない場合には、血液中の尿酸値が高くなり、高尿酸血症となります。

この高尿酸血症の状態がある程度長期化すると、尿酸は尿酸塩という結晶の形になって、関節や腎臓などに沈着するようになります。このように高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が関節に沈着することによって急性の関節炎を起こす疾患が痛風です。痛風にかかると、足の親指の付け根の関節などがはれて、激しく痛みます。

一方、高尿酸血症を基礎として、尿酸塩が腎臓の髄質や尿細管、間質などに沈着することによって腎臓の機能を低下させる疾患が痛風腎です。特に腎臓の髄質では尿が酸性に傾いており、尿酸はより結晶化しやすくなり、それらが腎臓組織に沈着して、こぶ状の物ができ、炎症を起こします。

痛風腎の初期には、静かに進行し自覚症状が現れにくいので、気付かれません。かなり進行すると、尿酸結石ができやすくなり、それが尿路に詰まって尿管を刺激したり傷付けたりすると、腹部や背中が激しく痛んだり、場合によっては血尿も出ることがあります。

また、痛風腎を発症すると、尿細管を取り囲む間質の線維化が進む慢性間質性腎炎を示して、腎臓の機能が低下し、慢性腎不全の原因となります。

痛風腎の検査と診断と治療

内科、腎臓内科などの医師による診断では、通常の腎臓疾患の検査と同じように、尿検査で血尿や蛋白尿を調べますが、痛風腎の初期ではどちらも異常が認められないことがあります。しかし、尿酸値が高い場合には痛風腎が疑われることになります。

痛風腎の確定には、尿濃縮力試験(髄質機能検査)で腎臓の髄質の状態を確認します。尿細管には尿を濃縮する働きがあり、痛風腎ではこの尿細管に異常が出ますので、判定できます。尿路結石の疑いがある場合には、超音波検査で確認します。

内科、腎臓内科などの医師による治療では、薬物療法としては尿酸の排出を促す尿酸排泄(はいせつ)促進薬、体内で過剰な尿酸の生成を抑制する尿酸生成抑制薬、酸性尿を改善する尿アルカリ化剤などを用います。

食事療法としては、尿酸値を下げることを目的に、食生活全体を見直し、改善します。肉類は食べ過ぎることにより、尿を酸性に傾け尿酸が溶けにくくなりますので、野菜を多く摂取しアルカリ性に持ってゆきます。

また、魚卵、内臓類、大豆などプリン体を多く含む食品や、アルコール類、特に体内でプリン体の合成を促すビールは控えなければなりません。肥満、高血圧、高脂血症、ストレスなどにも注意が必要になります。

腎臓の機能が低下していないようであれば、尿酸の排出を促すために、水分を多く摂取することも勧められます。適切な運動も必要ですが、痛風発作を起こす可能性もありますので、医師の指示通りに行動することが大切となります。

🇨🇴疲れ目

目の症状と全身症状が出現した状態

疲れ目とは、いわゆる眼精疲労のこと。読書や自動車の運転などのように目を持続的に使った際に、目の疲労感、重圧感など目の症状だけでなく、疲労、頭痛、肩凝り、吐き気、倦怠(けんたい)感、いらいら、めまいなどの全身症状が起こり、休息や睡眠を取っても十分に回復し得ない状態をいいます。

最初は目が重い感じがしますが、目が痛くなったり、かすんできたり、まぶしくなったり、じんじんしたり、赤くなったり、涙が出たりします。

疲れ目で体に症状が現れる理由はよくわかっていませんが、物が見にくくなるために、よく見ようとして不自然な姿勢を取るのが肩凝りなどを引き起こすということは、容易に考えられます。また、視力が低下すれば、目を凝らしたり、集中力をより高める必要があることによる緊張の連続が、頭痛やめまい、吐き気、倦怠感の原因かもしれません。精神的ストレスによって、目と体の不調が同時に起きている可能性もあります。

疲れ目をもたらす原因は、実にさまざまなものが考えられています。原因を特定することが難しい場合が、多く見受けられます。

疲れ目の原因は、大きく4つに分けて考えられています。目に原因があるもの、全身疾患に原因があるもの、精神的なもの、環境的なものです。

●目に原因があるもの

屈折異常によるもの

遠視、近視、乱視があったり、両目の屈折度に著しい差がある場合に、物が適正に見えないため、それを無理に調節して見ようとして、目を無理に働かせることによって疲れ目が発生します。眼球の内部では、フィルムに相当する網膜に何とかピントを合わせようとして、レンズに相当する水晶体の厚さを調節する筋肉である毛様体の緊張が続くからです。

遠視の場合は、調節力が低下し始める30歳代後半~40歳代にかけて起こりやすいのですが、20歳代でも起こります。

近視の場合は、眼鏡やコンタクトレンズが合っていないために疲れ目が起きることも、少なくありません。例えば、眼鏡屋で近視の眼鏡を作る時に、遠方がより見えるレンズを自分で選び、そのために疲れ目を訴える人を時々見掛けます。遠くがよく見える眼鏡が必ずしもよいわけではないので、眼科で適正な眼鏡の処方をしてもらいましょう。

調整力の低下によるもの

調整力、つまり近くの物をはっきり見る力が低下している時も、疲れ目が発生します。老視(老眼)の場合がそうですが、若い人でも起こります。特に、老視は40歳代半ばから60歳ぐらいまでの間に急速に進み、この年齢層は疲れ目を訴える人の年齢層のピークと一致します。

調整力が低下しているために目が疲れる場合には、遠用鏡と近用鏡を両方作り、使い分ける必要があります。

斜視、斜位によるもの

物を見る時には両目が連動して動き、わずかに寄り目になって視線を一点に合わせます。両目の視線が一致せずに左右別々の方角を向いてしまうことを斜視といい、疲れ目の原因になります。一方、ふだんは両眼視できても、片目を手で隠すなどすると目の位置がずれる状態を斜位といいます。

斜視が固定していて両眼視ができていない場合は、かえって疲れ目は起こりませんが、斜位の場合は両眼視をしようと努力を強いられるために、疲れ目が現れやすくなります。水平方向の眼位(目の位置)の異常よりも、上下方向の眼位の異常のほうが、左右の目に映った像を一つにまとめて見る融像という働きの幅が狭いために、疲れ目を起こしやすくなります。

程度が強い斜位は手術が勧められますが、比較的軽い場合には、目を使いすぎないようにし、プリズムの眼鏡で斜位の矯正をすることもあります。

不等像視によるもの

左右の視力差が大きく、それを無理にレンズの度が相当違う眼鏡で矯正している場合、左右の目に感じる映像の大きさが異なる不等像視によって、疲れ目が起こります。この場合は、コンタクトレンズにすると疲れ目は起こりにくくなります。

その他の目の病気によるもの

逆さまつ毛、結膜炎、角膜炎などによっても、疲れ目が起こります。最近では、特にパソコンなどを使用する機会が増えたため、VDT(Visual Display Terminal:画像情報端末)作業によるドライアイが原因の疲れ目が増えています。

一連の細かい操作が必要となるVDT作業による目の疲れは、テレビを見ているのと比べものになりません。しかも、VDT作業中は、まばたきの回数が極端に減ります。その結果、涙が蒸発して、眼球の表面の角膜や結膜が乾燥する疾患であるドライアイになりやすくなります。

緑内障も、疲れ目の原因になります。網膜の視神経が障害されて視野が狭くなる疾患が緑内障で、初期には調節力が低下してくることがあり、老視が早くきたかと思い違いすることがあります。

また、緑内障の一種である慢性閉塞隅角(へいそくぐうかく)緑内障の場合は、時々、霧がかかったように見えたりして疲れ目と感じることがあります。緑内障をしっかり治療せずにいると、失明することもあります。緑内障の人は眼球の内圧である眼圧が高い場合が多く、眼圧が高い時には頭痛が起きやすくなります。

白内障も、水晶体が濁るために視力が低下したり、まぶしさを感じたりして、疲れ目の原因となります。白内障は手術で治せますが、手術後に少し見え方が変わるので、それが疲れ目を起こすこともあります。

まぶたが垂れ下がってくる眼瞼(がんか)下垂も、視野の上のほうが見えなくなるので、 物を見る時に頭を後ろへ反らすなどしなければならず、疲れ目の原因になります。

●全身疾患に原因があるもの

全身疾患によっても、疲れ目が起こります。高血圧、低血圧、糖尿病、バセドウ病、貧血、自律神経失調症、月経異常、更年期障害、風邪、インフルエンザなど、さまざまな疾患で疲れ目が発生します。

●精神的なもの

職場での不適合、心身症、神経症、うつ病などによっても、疲れ目が起こります。ストレスが強くなると、不安感が異常に強まったり、いらいらして落ち着かなかったり、眠れないといった精神的なことに影響が現れる一方で、体に対しても、高血圧、血行不良、胃潰瘍(かいよう)といった多様な病気を引き起こす一つとして、疲れ目が起こることがあるのです。

●環境的なもの

最近注目されているVDT作業による疲れ目のほか、紫外線や赤外線、過度の照明などの光刺激による疲れ目があります。また、機械的刺激によるものとして、エアコンの風やごみなどがあります。化学的刺激としては、ガスや有機溶剤によるものがあり、近年では、新築の家などで起こるシックハウス症候群が注目され、住居の建材に含まれる化学物質などの影響による体調不良と疲れ目の関係も指摘されています。

疲れ目の検査と診断と治療

疲れ目(眼精疲労)の原因を特定し、それが発見されれば排除することが必要です。原因が精神的なもの、環境的なものと予想が付いた時は、自分でそれをまず除外して下さい。

眼鏡やコンタクトレンズを使用している人では、目に合っているかのチェックも重要です。眼鏡の度などが合わない人は作り直したり、使用状況に合わせて眼鏡をいくつか作って使い分け、目の負担を軽くするのも一案です。

パソコンを使用する機会の多い人では、作業時の照明の明るさ、自分の姿勢、パソコンを置く位置をチェックしてみましょう。作業中は適度な休憩をとって目を休めて下さい。

室内が乾燥したり、エアコンの風が目に当たると、ドライアイを引き起こします。また、疲れ目の意外な原因として、周囲の人のたばこの煙も挙げられます。これらについては、家庭や職場で相談して調整してもらいましょう。

そして、睡眠を十分とりましょう。寝不足の時には、目を使う時間が長くなる一方で目を休める時間が減るのですから、目が疲れて当然です。目の筋肉は、体の中で最もデリケートな筋肉で、体の疲労がすぐ目にも現れてくるのです。趣味や散歩、スポーツなどで、ストレスを解消することも大切です。

疲れ目の背後に目や全身の疾患が疑われる時は、まず眼科医、その後に内科医の診察を受けるようにしましょう。

眼科では、視力、視野、眼圧、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡検査、眼底検査などの一般検査が、まず行なわれます。目に原因がないと考えられる時は、全身検査を含めて原因を精密検査します。

疲れ目の的確な治療は、その原因によって異なりますので、原因追及が最も重要です。ただし、いくつかの小さな原因が重なり合って目の負担が増え、疲れ目になりますので、原因と思われる病気を治したのに、疲れ目が治らないことも少なくありません。そのようなケースでは、問診や検査で原因と考えられるものを洗い出し、それを一つひとつ治療、解決していきます。

原因を特定できない場合にも、ビタミン剤の配合された点眼薬や内服薬で、症状が改善することがよくあります。ビタミン剤は、細胞の新陳代謝を助けるのです。

🇬🇫突き目(匐行性角膜潰瘍)

目を突いた時の傷に細菌が感染して、潰瘍を生じる眼疾

突き目とは、目を突いたために起こる角膜の外傷。匐行(ふくこう)性角膜潰瘍(かいよう)とも呼ばれますが、匐行性とはある方向に進行していくという意味です。

普通は、稲や麦の穂、木の小枝、草の葉などで、黒目の表面を覆う角膜を突いたとしても、傷が小さく細菌感染が起こらなければ、角膜の表面は修復能が高いため2〜3日で完全に治ります。しかし、何かで突いた時やゴミが刺さった時などに角膜にできた傷に、細菌が感染すると潰瘍ができます。

もともと慢性涙嚢(るいのう)炎のある場合は、細菌が常駐しているために特に潰瘍ができやすくなります。 感染する細菌は、ブドウ球菌、肺炎双球菌、緑膿(りょくのう)菌のことが多く、緑膿菌や真菌(かび)が感染すると重症になります。

急激な眼痛、まぶしさ、異物感などの刺激症状が強く起こります。涙が出て、まぶたははれ、白目の表面を覆う結膜は充血します。頭痛も起こり、視力はかなり低下します。

進行は早く、角膜の中央部にできた潰瘍は周囲および深部に向かって進行し、角膜の後方の前房にうみがたまり、適切な治療が行われないと、角膜に穴が開いて失明することもあります。

潰瘍が進んで細菌が眼内にまで移行し、炎症がぶどう膜、硝子体(しょうしたい)などに波及した場合には全眼球炎となり、眼球全体がしぼむことがあります。こうなると、治ってからも、黒目を覆う角膜が白く濁ったり、時にはこぶのように突き出して角膜ぶどう腫(しゅ)を残すことがあります。角膜ぶどう腫は、虹彩(こうさい)が角膜に癒着して混濁、膨張したものです。

潰瘍があまり進まなかった時は、濁りも限局しているので、瞳(ひとみ)の中心部に濁りが残らなければ、視力もそれほど障害されません。潰瘍が進んで角膜の全面に濁りが残った場合は、視力が著しく低下します。

突き目の検査と診断と治療

目を何かで突いた時は、軽くても早くに眼科医の診察を受けます。手当が遅れると失明することもありますが、初期に適切な治療を受ければ、大部分は治ります。ゴミが刺さった時は、こすらずに目を閉じて涙で流したり、水で目を洗ったりします。それでも異物感が残れば、早くに眼科医の診察を受けます。

治療としては、角膜異物があれば除去し、抗生物質の点眼や、眼球への注射、内服、静脈注射を行います。虹彩炎が起こるのを防ぐために、アトロピンの点眼を行って瞳を広げます。

黒目を覆う結膜が白濁し、混濁が全面に残った場合は、 潰瘍が治まった状態で角膜移植を行います。

🇸🇷突き指

指先から縦軸方向に力が加わって、手足の指に起こるさまざまな外傷の総称

突き指とは、指先から縦軸方向に力が加わって、指の関節周辺に起こるさまざまな外傷の総称。手の指だけでなく、足の指でも起こり得ます。

多くのスポーツ種目で発生し、 野球、バレーボール、バスケットボールなどの球技でボールを受け損なった時や、転倒して指を突いた時に発生しやすく、スポーツ外傷の中で最も頻度が高いものの一つです。スポーツ以外にも、自動ドアやエレベーターの扉の開閉時の接触事故などでも起きます。

いわゆる突き指には、指の関節の捻挫(ねんざ)、脱臼(だっきゅう)、靭帯(じんたい)の損傷や断裂、腱(けん)の損傷や断裂、打撲、軟骨損傷、骨折などが含まれます。 医学的には、予期せぬ指の外傷で、内出血はあっても止血が必要なほどの出血がない場合が突き指とされます。

このうち、頻度が高い外傷に槌指(つちゆび)があります。これには、指先にボールなどが当たることによって、指先に最も近い第1関節を伸ばす腱が断裂する場合と、この腱のついているところの裂離骨折による場合があります。いずれも指先が曲がったまま伸ばせなくなり、欧米で使われている木槌(マレット)の形状に似ていることから、槌指(マレット指)といわれています。

槌指では指先が曲がったままになり、自分の力で伸ばせなくなるほか、痛みやはれも認められます。脱臼や骨折があった場合も、指が異常に曲がった状態になります。このような変形がなくても、はれや内出血が強い場合には、骨折や靭帯損傷が疑われます。

突き指は軽いけがと思われがちですが、さまざまな外傷が含まれますので、受傷直後に指を引っ張るという行為はやるべきではありません。無理に引っ張ると、切れかかっていた腱や靭帯をさらに損傷することがあるからです。整形外科で実施する徒手整復法という患部を引っ張る手技は、腱や靭帯損傷がないと判断してから実施しています。

患部を氷などで冷やしてはれを抑え、骨折や脱臼の可能性もあるので患部を固定し、早めに整形外科、手の外科の医師を受診することをお勧めします。

患部の固定には添え木とテーピングが必要ですが、応急措置で適当な添え木がない場合は、親指以外なら隣の指を添え木として利用できます。例えば、中指を突き指した場合は中指と薬指を2本まとめてテープで巻けば十分です。

医師を受診せずに放置しておくと、いつまでもはれや痛みが続いたり、指の動きが悪くなったり、指の関節の変形や不安定性が残ったままになるケースも少なくありません。

突き指の検査と診断と治療

整形外科、手の外科の医師の診断では、指の痛み、はれ、変形があればX線撮影を行って、骨折や脱臼の有無を確認します。また、関節が不安定でぐらつきがあれば指に内反ストレス、外反ストレスを加えてX線撮影を行い、靭帯損傷の有無を確認します。

整形外科、手の外科の医師の治療には、保存療法と手術療法とがあり、外傷の種類や重症度によってどちらかを行います。保存療法では、腱や靭帯の損傷と骨折がなく必要な場合に徒手整復法を行った後、副子(ふくし)や装具、テープ、包帯などで体の外からの固定を行います。

手術療法は、第1関節が曲がったまま自力で伸びない槌指(マレット指)でずれのある骨折の場合、極めて整復が困難な親指の付け根の関節の脱臼の場合、内側の腱や靭帯が完全に切れている損傷の場合、骨折で欠けた骨のかけらの除去が必要となる場合などに行います。手術療法で整復や体の内からの固定を行った場合でも、保存療法と同じように体の外からの固定をすることもあります。

いずれの治療法でも、指の動きが悪くならないようにリハビリテーションを早期に行うことが重要になります。手術後に1カ月固定した場合には、固定期間の約3倍の3カ月程度のリハビリテーションが必要となります。

しかし、手術が必要になった場合にリハビリテーションをしても、指の機能は100パーセント戻るわけではありません。通常、指を曲げる屈曲角度はほぼ戻るものの、指を伸ばす伸展角度は完全には治らないと考えられています。ただし、指は通常曲げて使うので機能的には伸びなくても、日常生活では問題はありません。

🇵🇼ツツガムシ病

ダニ類のツツガムシの幼虫に刺され、引き起こされる感染症

ツツガムシ病とは、細菌のリケッチアを保有するダニ類のツツガムシの幼虫に刺されることによって、引き起こされる感染症。症状は、リケッチアを保有するマダニに刺されることによって感染する日本紅斑(こうはん)熱と酷似しています。

日本海側の河川領域にいるネズミに寄生するアカツツガムシの幼虫、日本海側の山林にいるネズミに寄生するフトゲツツガムシの幼虫、太平洋側の山林にいるネズミに寄生するタテツツガムシの幼虫に刺されることによって、ツツガムシ病は引き起こされます。

かつては秋田県、山形県、新潟県などで夏季に河川敷でアカツツガムシの幼虫に刺されて感染する風土病(古典型ツツガ虫病)でしたが、戦後はフトゲツツガムシ、タテツツガムシの幼虫に刺されて感染する新型ツツガ虫病の出現により、北海道、沖縄県など一部の地域を除いて、全国で発症がみられるようになりました。

感染しやすい時期は、フトゲツツガムシの活動する春から初夏と、タテツツガムシおよびフトゲツツガムシの活動する秋から初冬の2つの時期で、近年は毎年500人程度の報告があります。1950年に伝染病予防法によるツツガムシ病の届け出が始まり、1999年4月からは感染症法により4類感染症全数把握疾患として届け出が継続されています。

ツツガムシの生息場所は、草むら、やぶ、林の土の中。ツツガムシの幼虫は成長過程で一度地表に出て、アカネズミ、ハタネズミといった野ネズミなどの動物に吸着して組織液を吸います。その後は、土壌中で昆虫の卵などを摂食して生活します。

人間は、リケッチアを保有するツツガムシの幼虫に刺され、吸着されると、皮膚から感染します。潜伏期間は、5~14日で、人から人への感染はありません。

よく刺される部位は、頭髪部、わきの下、腰など。刺し口は、刺されてから2~3日で赤くはれ、4~5日で水疱(すいほう)、その後潰瘍(かいよう)となり、10日目ごろには周囲が赤い陥没した黒いかさぶたとなります。

刺されてから10日目前後から、全身の倦怠(けんたい)感、手足の痛み、頭痛を伴う発熱が起こります。高熱は1~2週間続き、発疹(はっしん)は2~5日間に現れます。径5mm前後、紅斑性、丘疹性で全身に出現しますが、胸、腹部、背部に多くみられます。7日程度で、発疹は消退に向かいます。

刺し口近くのリンパ節のはれは、ほとんどでみられ圧痛を伴います。全身のリンパ節のはれも、約半数にみられます。肝臓が大きくなる肝腫大と脾(ひ)臓が大きくなる脾腫大は通常、軽度です。

重症例では、播種(はしゅ)性血管内血液凝固症候群(DIC)による出血傾向、髄膜刺激症状、昏睡(こんすい)やけいれんなどの中枢神経症状、肝障害による黄疸(おうだん)、末梢(まっしょう)血管抵抗の弱まりや心筋障害による血圧低下、間質性肺炎や胸膜炎などを合併します。

重症例で治療が遅れると、多臓器不全で死亡することもあります。

発熱、刺し口、発疹があって、感染する可能性のある場所への立ち入り、発症した時期からツツガムシ病の可能性を疑ったら、直ちに治療を受けるべきです。発症後7日以後になると重症化の傾向が高いので、早期診断、早期治療が重要となるからです。

ツツガムシ病の検査と診断と治療

内科、感染症内科、皮膚科の医師による診断では、一般検査で、細菌などに感染すると血液中で一気に増えるCRP(C反応性タンパク)強陽性、AST(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)およびALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)などの肝酵素の上昇がほとんどの例にみられます。

確定診断は、主に間接蛍光抗体法または間接免疫ペルオキシダーゼ法という方法によってリケッチアに対する血清抗体価の4倍以上の上昇、またはIgM(免疫グロブリンM)抗体の有意の上昇を測定することで行われます。PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)法などによって、リケッチアの遺伝子の検出も行うこともあります。検査所見は日本紅斑熱のものと類似するため、鑑別が必要となります。

内科、感染症内科、皮膚科の医師による治療では、テトラサイクリン系の抗菌薬(抗生物質)を第一選択として、点滴静脈内注射か内服で使用します。そのほか、クロラムフェニコールも使用されます。通常1~2日で速やかに解熱し、症状も軽快します。ただし、薬剤の投与は7~10日継続します。

細胞壁がペプチドグリカンを持たないというリケッチアの生物学的特性のため、ペニシリンを始めとするβ—ラクタム系抗菌薬は無効です。

ツツガムシ病の予防ワクチンはないため、ダニ類のツツガムシの幼虫に刺されないことが、唯一の感染予防法です。

そのポイントは、レジャーや作業などで、草むらややぶなどツツガムシの幼虫が多く生息する場所に入る時は、肌をできるだけ出さないように、長袖、長ズボン、手袋、足を完全に覆う靴などを着用することです。また、肌が出る部分には、人用の防虫スプレーを噴霧し、地面に直接寝転んだり、腰を下ろしたりしないように、敷物を敷きます。山野などから帰宅後は衣類を家の外で脱ぎ、すぐに入浴し体をよく洗って、新しい服に着替えます。

ツツガムシの幼虫に刺され、吸着された時は、つぶしたり無理に引き抜こうとせず、できるだけ病院で処理してもらうことです。

🇵🇭爪かみ

爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態

爪(つめ)かみとは、爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態。爪かみ癖、かみ爪、咬爪(こうそう)症とも呼ばれます。

自分の爪をかむ行為は、実は子供にとっては特殊なことではありません。4、5歳から10歳くらいの子供がほとんど無意識に爪をかむ癖を持っているのは、珍しいことではありません。

一般的には、長ずるにつれて自然になくなる癖ですが、時には習慣化して、大人になっても爪をかむ行為が続く場合もあります。一般に精神的緊張の置き換えと考えられ、無理にやめさせると、さらに緊張を高めて他の行動へ置き換わるだけになることもあります。

爪かみの子供は、爪を切る必要がないくらい深爪で、爪の先端がギザギザになっていたり、爪の甲の表面がデコボコしていたり、指先や爪郭部が荒れて傷ができていたり、爪の根元部分の甘皮がささくれたりしています。

深爪になったばかりのころは直接皮膚がさらされているので、痛みを伴い、出血がみられたりします。また、皮膚がさらされているので細菌感染が生じ、爪の甲が完全に失われることもあります。中には、足の爪までかんでしまう子供もいます。

爪をかむ行為で、歯並びや歯のかみ合わせが悪くなることはありませんが、チック、指しゃぶり、歯ぎしり、夜驚などを併せ持っていることもあります。

一般に子供の欲求不満、過度の緊張、不安や不満、退屈など精神的緊張の置き換えと考えられ、子供は精神的な緊張を和らげる手段として爪をかみます。

爪かみの子供の性格は、神経質、緊張しやすい、敏感、活動的、攻撃的、動作が落ち着かないなどの特徴を持ち、情緒や社会性の未熟さがみられることが多いようです。

子供が緊張する背景としては、親の過干渉、放任、緊張状態が持続する厳格なしつけなど、親子関係に情緒的な安定が保たれていないことが多いようです。

爪かみの治療

子供の軽度の爪かみの場合は、保護者による指導の必要はなく、子供が緊張する心理的な背景を配慮するようにします。

小学校に入るころになると、爪かみは習慣化して、子供自身が治そうとしないとなかなかやめられません。やめさせるために家庭でできることとしては、汚れた爪をかむのは不潔なため清潔のしつけとしてやめさせる、深爪の危険を説明する、爪を保護する透明なマニキュアを塗り爪の大切さを教える、不安やストレスの要因を見付けて除去していく、やめた時のご褒美を子供と約束してカレンダーにシールを張るなどが考えられます。

ひどい場合には、精神科、心療内科を受診させます。

大人になっても爪かみがひどい場合も、精神的要因が絡んでいるなら、精神科、心療内科を受診します。爪かみは自傷行為であり、心が鳴らす警笛でもありますから、胸の中にある傷みや不安など精神的緊張と向き合い解決することは、爪かみの改善、解決につながることもあります。

爪、皮膚の症状に対しては、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診するか、ネイルサロンで相談してみるのもよいでしょう。

自分で爪の甲にマニキュアやクリームを塗ったり、爪ヤスリなどでなるべく自然の丸みを帯びた形に爪を整え、グッズで爪磨きすることで、きれいな爪を保ちたいと思い、爪をかむことを自然と避けるようになる実例は多くあるようです。爪をかむことによって変形がひどい場合は、十分に伸びて変形が治るようになるまで、付け爪(人工爪)をつけるようにし、自分自身の爪を隠して保護することが効果的な実例も多くあるようです。

また、ネイルサロンできれいにマニュキアを塗ってもらい、きれいに爪を整えてもらうことで、爪かみが治ることもあります。ネイルサロンの中には、ネイルアートだけでなく、深爪矯正に力を入れ、自爪の強化や、自爪の回復ができるネイルケアを行っている所もあります。

ひどい深爪状態になってしまった爪は、治そうとして爪を伸ばしても、先端の白い部分が伸びるだけで、皮膚から浮いた状態になってしまいますが、ネイルサロンの深爪矯正を受けることで、きれいな自爪を取り戻すことが可能です。自爪がよみがえるまでの間の人工爪も、自然に見えるものを作成してくれるため、男性でも抵抗なく付け爪をすることが可能です。

🇻🇳爪乾癬

皮膚疾患である乾癬の症状が爪の表面に現れ、爪が白濁、肥厚する状態

爪乾癬(つめかんせん)とは、慢性の経過をとり治りにくい皮膚疾患である乾癬の症状が爪の表面に現れた状態。

爪の水虫(爪白癬〔はくせん〕)と似た症状が現れ、爪の甲が変形して白く厚ぼったくなり、悪化すると表面がはがれ落ちます。爪の周囲に乾癬による皮膚病変を認め、頭部、腰部、下腿(かたい)前面などの好発部位にも、乾癬特有の皮膚病変を認めます。

乾癬は、皮膚が赤くなって盛り上がり、表面に厚い銀白色の鱗屑(りんせつ)がついて、その一部がポロポロとはがれ落ちる皮膚疾患。炎症性角化症の代表で、慢性の経過をとり、なかなか治りにくい疾患ですが、周囲の人に移ることはありません。

日本では3〜16万人の発症者がいると推定されており、近年は増加傾向にあります。男女比は2対1で男性に多く、主に30〜40歳代に発症します。女性では、10歳代と50歳代の発症が多いともいわれています。

乾癬の起こる原因は、いまだはっきりとしていません。一説によると、一種の免疫反応の異常により生じるとされます。すなわち、健常の皮膚では、表皮細胞と白血球(リンパ球など)がサイトカインなどの伝達物質を使って、うまく連絡を取り合ってお互いを制御しています。このバランスが崩れると表皮細胞が一方的に増殖して、早く脱落していくことが起こります。

健常の皮膚では普通、表皮細胞はその一番外側に角質層という死んだ細胞の層を作り、垢(あか)になって落ちていくことを、一定の周期の45日で繰り返しています。乾癬では、この周期が4~5日と極度に短縮しているため、カサカサした薄皮である鱗屑がどんどんできては、ポロポロとはがれていきます。

この免疫反応の異常は、遺伝的になりやすい体質がある人に、扁桃腺(へんとうせん)炎などの感染症、薬物や外傷などの外的因子、糖尿病や高血圧、肝臓病、ストレスなどの内的因子が複雑に絡み合って発症したり、悪化したりすると考えられています。第二次世界大戦後に増加した疾患であり、もともと欧米人に多いことから、食事の西洋化が関係しているのではと類推されています。

一つひとつの発疹(はっしん)は、にきびのような赤いぶつぶつで始まり、次第に周囲に拡大するとともに厚い鱗屑を持つようになり、ある時を境によくなって、鱗屑がなくなるということを繰り返します。その時の鱗屑の大きさは、一定していません。このように、よくなったり悪くなったりを年余に渡って繰り返します。

乾癬では、ケブネル現象といって、繰り返しこすったり、傷付いたりした個所に、数日してから新しい発疹が出てくることがあります。これは、体の中でよくこすれる部位である肘(ひじ)や膝(ひざ)、尻(しり)、頭の毛の生え際などから発疹が出てきたり、あるいは発疹がひどい傾向にあります。

また、アウスピッツ血露現象といって、鱗屑を無理にはがすと、点状に出血がみられることがあります。これは、乾癬の特徴的な表皮の増殖の仕方と関係しています。すなわち、表皮が厚くなった部分と薄くなった部分が隣り合っているため、薄い表皮の下にある血管が傷付いて生じると考えられます。

鱗屑が厚い時にかゆみがありますが、基本的には自覚症状もなく、内臓にまで疾患が及ぶことはありません。

こういった乾癬の典型的症状のみがみられる例を尋常性乾癬といい、尋常性乾癬の病変が爪の表面に現れた状態が爪乾癬です。乾癬の発症者の3割から5割が爪乾癬を発症するとされますが、生涯のうちでは8割から9割が爪乾癬を発症するとされます。

爪乾癬は一度、手や足の爪に症状が現れると、一個所にとどまらず、両手や両足の爪に症状が広がります。そして、重症化すると、爪の甲が変形して白濁、肥厚するだけではなく、爪がはがれ落ちるほどになり、爪が一時的になくなってしまう状態になります。

爪乾癬の症状に気付いたら、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診し、治療法を相談します。多くのケースでは外来通院治療が行われ、重症化した場合には入院治療が必要なこともあります。

爪乾癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断は、爪の症状や特徴的な皮膚の発疹とその分布、経過より判断します。通常は内臓の異常はありませんが、時に糖尿病、高血圧、肝臓病を合併していることがあるので、検査で確認することが必要です。また、薬の副作用で乾癬のような発疹が出てくることもあります。

治療の効果がみられない場合や経過の長い場合は、発疹の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行うと、診断が確定します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、一般的な尋常性乾癬や爪乾癬に対する根本的な治療法はまだなく、完治させることは難しいと考えられているため、症状に合わせたいろいろな治療を行います。

症状に合わせた治療の方法には、外用薬、内服薬、光線療法などさまざまあります。症状が軽い場合には主に外用薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。

外用薬には、炎症を抑制する副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、皮膚の細胞が増殖するのを阻害する活性型ビタミンD3外用薬も、副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。しかしながら、皮膚ではなく爪に現れた爪乾癬の場合、外用薬では深部に浸透させることが難しいのが実情です。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を発疹部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。乾癬が全身にある場合、入院して内服のメトキサレンを使用してPUVA療法を行う場合もあります。紫外線を当てることで、異常な免疫反応が抑制され、効果が得られると考えられています。近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。

いずれの治療法も一長一短があるため、治療により得られる効果と副作用のリスクの兼ね合いを考え、うまく組み合わせて症状をコントロールすることが大切です。乾癬の多くは慢性に経過しますが、自然に軽快、治癒することもあります。

生活上の注意としては、こすると新しい発疹が出てくるケブネル現象がありますので、皮膚をこすり過ぎないように注意します。入浴は構いませんが、こすり過ぎず、また鱗屑を無理にはぎ取らないようにします。ただし、鱗屑には発疹の慢性化に関係する物質も含まれていますので、ぬるま湯につかって軟らかくした後で無理なく鱗屑を取ることはよいことです。

日光浴も効果があるので、適度に行います。急激に日焼けをするとやはりケブネル現象で悪化することもあるので、あくまでも適度に。風邪を引いたりした後など、感染によりサイトカインのバランスが崩れ、乾癬の症状が悪化することがあります。風邪を引かないように、まめにうがいを励行します。精神的な動揺やストレスが疾患を悪くしますので、短気を起こさず、気長に治療していきます。

🇵🇪爪白癬(爪の水虫)

水虫が爪に発生し、爪が白濁、肥厚

爪白癬(つめはくせん、そうはくせん)とは、いわゆる水虫、足白癬や手白癬が爪に発生したもの。爪が白く濁り、爪の下が厚く、硬くなります。

白癬とは、皮膚糸状菌が皮膚に感染して起こる疾患。皮膚糸状菌の多くは白癬菌と呼ばれる一群の真菌(カビ)で、高温多湿を好み、ケラチンという皮膚の蛋白(たんぱく)質を栄養源とするため、足の裏、足指の間などが最も住みやすい場所になり、足白癬を始めとして手白癬、頭部白癬、体部白癬などを生じます。

この足白癬や手白癬を放置していると、白癬菌が爪の中に感染して、爪白癬になります。爪は表皮が変化して硬くなった皮膚の一部であり、白癬菌の栄養源となるケラチンでできていますから、爪もまた水虫にかかるというわけです。

爪白癬は足指に多いのですが、手指の爪に生じることもあります。最近の統計によると、足白癬を持つ人の半分が爪白癬も持っていることがわかりました。日本国内に500万~1000万人の発症者がいるという統計も報告され、60歳以上の人の4割が発症しているとも推計されていますが、治療されずに放置されたままのケースがほとんどです。

爪の症状の現れ方には、いくつかあります。最も多いのは、爪の甲の先端部が白色から黄色に濁って、爪の甲の下の角質部分が厚くもろくなり、全体として爪が厚くなるものです。爪の甲の先端部が楔(くさび)状に濁って、角質部分が厚くもろく全体として爪が厚くなるものも、よくみられます。そのほかに、爪の甲の表面が点状ないし斑(まだら)状に白濁するのみのものもあります。まれに、爪の甲の付け根が濁ることもあります。

かゆみ、痛みなどの自覚症状は、ありません。陥入爪(かんにゅうそう)の原因の一つにもなりますが、一般にカンジダ症と異なり、爪の爪囲炎の合併はまれです。

爪白癬の検査と診断と治療

成人の爪白癬の発症率は、かなり高いとされています。爪の肥厚や変形が高齢者の起立、歩行障害、転倒事故の原因になることも、指摘されています。重症になるとますます治療が難しくなるため、なるべく早く医師による治療を受けます。

医師による爪白癬の検査では、ピンセットやメスで採取した爪を水酸化カリウムで溶かし、溶けずに残る白癬菌を顕微鏡で観察する方法が一般的で、皮膚真菌検査と呼ばれます。 時には、培養を行って、原因菌の同定を行うこともあります。爪では皮膚と違って菌を見付けにくく、菌の形態が不整形で判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

治療法としては、水虫の外用薬はほとんど効果がなく、グリセオフルビン、イトラコナゾールなどの内服が必要です。少なくても、3〜6カ月間の内服します。硬く厚くなった爪の外側から外用薬を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。

従来の飲み薬は、1年以上服用しなければなりませんでした。近年開発された薬は、内服をやめた後も有効成分が爪の中にとどまって効果が持続しますので、従来に比べ治療期間が大幅に短縮されました。しかし、肝臓に負担がかかることもあるため、肝臓の弱い人は内服できません。内服中は1カ月に1回、肝機能検査を行います。

生活上で爪白癬に対処する注意点を挙げると、真菌(カビ)は高温多湿を好むので、その逆の状態にすることが必要です。すなわち、蒸さない、乾かす、よく洗うといったことです。爪白癬や足白癬の場合、ふだんから足の清潔を心掛けることは予防のためにも大事です。家族で他に水虫の人がいたら、一緒に治療することが必要です。白癬菌は共用の足ふきから移ることが最も多いため、足ふきは別々にします。

🇮🇸爪メラノーマ

メラニンを作り出す爪部のメラニン細胞から発生するがん

爪(つめ)メラノーマとは、メラニンを作り出す爪部(そうぶ)のメラニン細胞(メラノサイト、皮膚細胞)から発生するがん。爪部悪性黒色腫(しゅ)、爪下悪性黒色腫とも呼ばれます。

メラニン細胞は、色素を作り、皮膚の色を決める色素細胞です。日光(紫外線)がメラニン細胞を刺激すると、メラニンという皮膚の色を濃くする色素がたくさん作られて、メラノーマ(悪性黒色腫)を発生するリスクが高まります。

メラノーマは最初、正常な皮膚に新しくできた小さな濃い色の皮膚の増殖性変化として現れます。多くの場合、日光にさらされる皮膚にできますが、もともとあったほくろに発生する場合もあります。体のほかの部位に非常に転移しやすく、転移した部位でも増殖を続けて組織を破壊します。また、メラノーマは遺伝することがあります。

日本でのメラノーマの発症数は、人口10万人当たり1・5~2人くらいといわれ、年間1500~2000人くらい発症しています。白色人種の多い欧米では人口10万人当たり10数人以上で、オーストラリアは20数人以上の発症と世界一です。日本でも外国でも年々、発症数の増加傾向が認められています。

日本でのメラノーマによる死亡者は、年間約450人。40歳以上になると発症が多くなり、60~70歳代が最も多くなっています。男女差はありません。

メラノーマの外観は、さまざまです。平らで不規則な形の茶色の皮疹(ひしん)の中に黒い小さな点がある場合もあれば、盛り上がった茶色の皮疹の中に赤、白、黒、青などさまざまな色の点があるものもあります。黒か灰色の硬い塊ができることもあります。

その外観や色などによって、いくつかのタイプに分類されています。悪性黒子型は高齢者の顔などの露出部に色素斑が発生するタイプ、表在拡大型はやや盛り上がった不整型の色素斑が発生するタイプ、結節型は盛り上がるタイプ、末端黒子型は手や足から発生するタイプ、粘膜型は口腔(こうくう)や陰部などの粘膜に発生するタイプ、またメラニン欠乏性は色素を持たないので発見されにくいタイプです。

末端黒子型の一つに、爪メラノーマのほとんどは含まれます。爪メラノーマのほとんどは、手足の爪の主に爪母部(爪の基部)上皮のメラニン細胞のがん化によって、爪甲色素線条、すなわち黒褐色で縦の線状の染みとしてみられます。

時には、爪床上皮や爪郭(そうかく)部表皮のメラニン細胞ががん化することもあり、表在拡大型や結節型に含まれます。

爪甲色素線条がみられる爪メラノーマは、全メラノーマの10パーセント近くを占め、手の親指の爪、足の親指の爪、手の人差し指の爪、手の中指の爪に好発します。しかし、爪メラノーマによく似た良性腫瘍(しゅよう)が、はるかに多く存在しています。

悪性か良性かを一応判別する目安として、染みの横幅が6センチ以上、黒褐色の色調に不規則な濃淡がみられるか真黒色、20歳以後、特に中高齢者になって発生した色素線条、色素線条が爪の表面を越えて皮膚の部分にまで及んでいる状態であれば、爪メラノーマかもしれません。

がん化したメラニン細胞が増えるにつれて、黒褐色の線状の染みが増えるだけでなく太くなっていき、長さも伸びていきます。やがて、爪全体が黒くなります。進行すると、爪が変形したり破壊されてしまいます。

爪メラノーマは、がんの中でも繁殖しやすいタイプです。そのため、爪から全身に転移していくというデメリットもあります。短期間で転移してしまうため、爪の症状の変化に気付いたら、すぐに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪メラノーマの検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診、視診、触診を行い、続いてダーモスコピー検査を行います。ダーモスコピー検査は、病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニンや毛細血管の状態を調べ、デジタルカメラで記録するだけの簡単なもので、痛みは全くありません。

そして、爪メラノーマが疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もし爪メラノーマだった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。

一方、メラノーマの周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診などで診断する医師もいます。

確定診断に至ったら、ほかの部位への転移の有無を調べるためのCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査などの画像検査や、心機能、肺機能、腎機能などを調べる検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は原則的に、爪メラノーマの部位を外科手術によって円形に切除します。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで爪メラノーマが侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い爪メラノーマであれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している爪メラノーマの場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移したメラノーマは致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。

とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえ爪メラノーマが転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。

一度、爪メラノーマを発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科、皮膚泌尿器科で検査を受けるべきです。

2022/07/17

🇦🇩ツラレミア

野ウサギ、リスなどとの接触で引き起こされる感染病

ツラレミアとは、グラム陰性菌の野兎(やと)病菌によって引き起こされる感染症。日本では野ウサギとの接触で感染することが多いために野兎病とも名付けられていて、大原病とも呼ばれます。

世界的には北アメリカ、北ヨーロッパ、北アジアに広くみられ、日本では北海道、東北、関東地方で多くみられ、野兎病菌に感染した野ウサギ、モグラ、リス、ネズミ、ハムスターなどの齧歯(げっし)類に触ることで、主に感染が起こります。

冬場の感染症はほとんどが野ウサギとの接触によって起こり、特にその皮をはぐ時に起こります。夏場は、野兎病菌を持ったカやアブ、ダニに刺されて起こります。

まれに、火が十分に通っていない齧歯類の肉を食べたり、野兎病菌に汚染された水を飲んだり、野兎病菌に汚染された干し草を扱ったり、齧歯類の食肉解体中や芝刈り機で動物をひいて空気中に舞い上がった菌を吸い込んだりすることでも起こります。この野兎病菌は、傷のない皮膚からも侵入することができるのが特徴。

猟師、食肉処理業者、農業従事者、毛皮製造業者、検査技師に多くみられ、散発的に起こりますが、時に流行を示すことがあります。過去、スウェーデン、フィンランド、アメリカでは、カの媒介による流行がありました。

野兎病菌は10〜50個の菌だけでも感染、発症する可能性があり、重症の疾患を起こし死者も出すことがあることから、生物兵器として使われる可能性が心配されています。人畜共通感染症(ズーノーシス、動物由来感染症)の一つですが、人から人への感染例は報告されていません。

日本では、第二次世界大戦前は年平均13.8件のツラレミアの発生がありましたが、戦後は食糧難のために野ウサギを捕獲、解体する機会が増加し1955年まで年間50~80例と急増しました。その後減少傾向を示し、1999年、2008年の千葉県での各1例の発生以降、感染例の報告はありません。

ツラレミアには、4種類の型があります。最もよくみられるのが潰瘍(かいよう)リンパ節型で、手や指に潰瘍ができ、感染部位と同じ側のリンパ節がはれます。2番目の眼リンパ節型では、目に充血やはれが生じ、リンパ節もはれます。この型は、感染した指や細菌のついた指で目に触れたり、感染部位の体液が目に入ることで起こると考えられます。

3番目は扁桃(へんとう)リンパ節型で、リンパ節がはれるだけで潰瘍はできないことから、食物を通して体内に入った細菌が原因と思われます。4番目はチフス型で、高熱、腹痛、激しい消耗がみられ、リンパ節のはれはみられません。

ツラレミアを引き起こす細菌を吸いこんだ場合には、肺炎を起こすこともあります。

菌と接触してから1〜10日後、通常は2〜4日後に突然症状が現れます。まず、頭痛、悪寒、吐き気、嘔吐(おうと)、約40度に達する熱、激しい疲労感が起こり、続いて、極度の脱力感、悪寒の繰り返し、大量の発汗が起こります。

扁桃リンパ節型とチフス型のツラレミアを除き、24〜48時間以内に指、腕、目、口蓋(こうがい)などの感染部に炎症性の水疱(すいほう)が現れます。水疱にはすぐに膿(うみ)がたまり、破れて潰瘍になります。腕や脚には単独でできますが、目や口の中にはいくつもできます。

潰瘍周囲のリンパ節ははれて膿を持ち、膿はやがて排出されます。発疹(はっしん)は疾患の経過中、いつでも現れることがあります。

肺炎が起こることもあるものの、空せきや胸の中心部に焼けるような痛みが起こるだけで、あまり重い症状は現れません。ただし、中にはせん妄を起こすケースもあります。

ツラレミアの検査と診断と治療

カやアブ、ダニに刺されたり、ウサギやリスなどの野生動物と少しでも接触したりした後で、急な発熱、リンパ節のはれ、特徴的な潰瘍がみられた場合に、ツラレミア(野兎病)と診断されます。

検査技師が感染した場合は、リンパ節や肺のみに限った感染のことが多いので、診断するのは難しく、野兎病菌は特別の培地で培養することになります。

ツラレミアの治療では、抗生物質のストレプトマイシンを7〜14日間注射します。潰瘍には湿性包帯を当て、頻繁に取り替えます。包帯をすることによって、感染の広がりを防ぐことができます。まれに、大きな膿のかたまりである膿瘍ができて、切開して膿を吸い出さなくてはならなくなります。

症状が出た目には温湿布を当て、サングラスをかけるといくらか楽になります。激しい頭痛がある場合は、コデインのようなオピオイド系鎮痛薬を使います。

放置すると約3人に1人は死亡しますが、治療すればほぼ全員が助かります。死亡するのは感染が手に負えないほど広がった場合や、肺炎、髄膜炎、腹膜炎などを起こした場合です。再発はまれなものの、治療が不適切だと起こります。ツラレミアにかかると免疫ができます。

野兎病菌は、水や土、齧歯類の死体や皮の中で何週間も生存可能です。ただし、熱には弱く、55度で10分の加熱で不活化します。野兎病菌で飲用水の水源地が汚染されても、塩素殺菌などの通常の処理で、飲用水による感染は防げると考えられています。

一般の場で野兎病菌で汚染されたものの表面の消毒の一つの方法としては、まず、0.5パーセントの次亜塩素酸ナトリウム溶液をスプレーします。10分後に今度は70パーセントのアルコールを使用します。アルコールはよく燃えますので、火気に注意する必要があります。次亜塩素酸ナトリウム溶液についても塩素ガスを発生したり、脱色作用があったりします。薬品の使用に当たっては、注意が必要です。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...