首の左右を通る椎骨動脈の壁の一部が裂けて、血流が動脈の壁の中に入る疾患
椎骨(ついこつ)動脈解離とは、首の左右を通って脳に血液を送っている椎骨動脈の壁の一部が裂けて、血流が壁の中に入る疾患。
動脈の壁は内膜、中膜、外膜の三層構造から成り立っています。この動脈の壁が層と層の間や、層内で裂けて、血流が壁の中に入る状態を動脈解離と呼びます。
椎骨動脈の血管が裂ける原因は、はっきりとはわかっていません。中年の成人に、はっきりした誘因なしに発生します。しかし、頭をぶつけたり、首を回したりしたことが、引き金になることがあります。ゴルフのスイング中や、カイロプラクティックなどでの治療中、美容院などでのシャンプー後に起こる場合もあります。
椎骨動脈解離を起こした場合、たいてい急に首の後ろや後頭部に激しい痛みを感じます。
解離を起こした動脈の内腔(ないくう)は狭くなって、この狭窄が高度になれば一過性脳虚血発作を起こしたり、裂けた血管の壁に血液が入り込んで膨らんで血管をふさぐと脳梗塞(のうこうそく)を起こすことがあります。さらに、内出血したところから血管が破れると、くも膜下出血を起こして激しい頭痛がし、命にかかわる危険もあります。
40〜60歳代の発症が多く、くも膜下出血の患者の中では5パーセント程度、脳梗塞の患者の中では1パーセント程度いると考えられています。
椎骨動脈解離は古くから知られてはいましたが、臨床的に明確に認識されるようになったのは、MRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの画像診断が普及してきた最近のこと。ここ数年の間に、椎骨動脈解離と診断されるケースは急速に増加しています。その多くは症状を残さず杜会復帰しているので、従来ならば原因の明かでない後頭部痛ないし後頸部(こうけいぶ)痛として、対症療法のみが施されていたケースであろうと考えられています。
現在でも、多くの自然経過のよいケースが椎骨動脈解離とは診断されないで、対症療法のみを受けている可能性があります。通常は自然経過がよいので大きな問題にはなりませんが、脳梗塞、くも膜下出血など重篤な症状を起こすこともあるので、注意する必要があります。
椎骨動脈解離の検査と診断と治療
脳神経外科の医師による診断では、椎骨動脈解離を疑ったならば、MRI(核磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管撮影)、血管造影検査を行って確定します。くも膜下出血の有無はその後の治療を大きく左右するので、一般的な方法で確定します。くも膜下出血の状況はCT(コンピューター断層撮影法)検査によって判明し、出血量が少なくCTでははっきりしない場合は髄液を採取して検査します。
脳神経外科の医師による治療は、椎骨動脈の解離だけなら、通常1カ月の安静で血管の裂け目が固まるので、痛み止めを注射しながら安静にします。血栓ができないような薬を点滴することもあります。
椎骨動脈解離が再発することはまれで、同じ場所がもう一度、裂けることはあまりありませんが、避けたところがこぶになった場合は、MRA(磁気共鳴血管撮影)などの検査を行い、破裂の危険性を調べます。
予防法としては、たばこは血管に悪影響を及ぼすので、禁煙、節煙を心掛けます。
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