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2022/09/02

🇦🇹委縮性胃炎

慢性的な胃の炎症により胃の粘膜が委縮する疾患

委縮性胃炎とは、慢性的な胃の炎症によって、胃液を分泌する胃腺(せん)の部分の粘膜が委縮していく疾患。

胃粘膜の委縮の度合は人によってさまざまで、胃の一部しか委縮してない人から、胃全体まで委縮している人もいます。

委縮性胃炎の経過はまず、胃の粘膜が赤く痛んだ状態になることから始まり、胃の粘膜の細胞が次第に少なくなって、胃液(胃酸)を分泌する力が次第に衰えていきます。さらに進行すると、粘膜の性質が変わって、腸の粘膜に近いような細胞に姿を変えます。これを腸上皮化生(じょうひかせい)といい、委縮性胃炎の最も進行した病態です。

この委縮性胃炎には、大きく分けてA型胃炎(自己免疫性胃炎)とB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)という2つのタイプが存在しています。

A型胃炎(自己免疫性胃炎)は、胃の真ん中の部分を中心として、広い範囲で委縮が広がり、主に胃液を出す壁細胞という細胞が減っていきます。その進行した病態は腸上皮化生で、自分の細胞に対する抗体ができることによる疾患であり、一種の自己免疫疾患です。

悪性貧血という貧血を伴い、カルチノイドという腫瘍を誘発しやすいのも特徴です。このタイプは、海外に比較的多く、日本では非常にまれだと見なされています。

その一方で「自己免疫性胃炎」の原因は不明で、こちらもピロリ菌が関わっているのでは、という意見もありますが、どちらかと言えば少数派です。

B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)は、ほとんどの場合、委縮が胃の出口の付近から始まり、進行とともに、次第に胃の上のほうへと上がっていきます。進行すると、胃の全体に広がり、腸上皮化生が見られるようになります。

委縮の進行した粘膜には遺伝子異常が起こり、これが胃がんの大きな原因となるのも特徴です。このタイプが、日本人の委縮性胃炎の大部分を占めます。

B型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の原因の大部分は、ピロリ菌の感染であると見なされています。

人間の胃にピロリ菌が感染すると、まず表面が赤くはれるようなタイプの胃炎が起こります。その中には潰瘍(かいよう)化するものもあり、しばらくすると、胃の出口から胃の細胞の減少、すなわち委縮が始まります。

さらに進行すると、胃の粘膜の細胞に遺伝子異常が起こり、腸上皮化生が起こります。この腸上皮化生が進行すると、胃酸はほとんど出なくなり、胃の中の酸度は低下します。

ピロリ菌は胃粘膜の環境に適合しているので、委縮性胃炎が高度になると、ピロリ菌はかえって減少し、時には胃の中からいなくなります。つまり、委縮性胃炎の原因はピロリ菌なのですが、進行した委縮性胃炎では、往々にしてピロリ菌は見付からないことがあるのです。

ピロリ菌の感染から数十年を掛けて、委縮性胃炎が発生し、それからさらに十数年を経て腸上皮化生が生じるというのが、一般的な時間経過と考えられています。従って、高齢者に多く見られ、食欲不振、食後のもたれ、上腹部の張りを覚える人もいます。

委縮性胃炎の検査と診断と治療

消化器科、内科の医師による診断では、内視鏡で胃の粘膜の状態を見て、委縮しているかどうか判断します。通常の粘膜であれば胃の血管は見えませんが、委縮している場合は粘膜が薄くなり、胃の血管が黄色っぽく見えてきます。

消化器科、内科の医師による治療では、委縮してしまった粘膜を元に戻す画期的な方法はありません。ピロリ菌が原因のB型胃炎(多巣性委縮性胃炎)の場合は、除菌という方法があります。ピロリ菌に感染しているかどうかを調べ、陽性の場合は、除菌すれば胃の壁の状態が回復し、胃液分泌も元に戻ります。しかし、除菌したからといって、委縮が治るわけではありません。

胃がんを発症した人はほぼ100パーセントがピロリ菌に感染していたことがわかっており、ピロリ菌の除菌をすれば、胃がんのリスクの減少につながります。もちろん、ピロリ菌に感染している人がすべて胃がんになるわけではなく、1000人の陽性者のうち胃がんを発症する人は2~3人にすぎません。

除菌だけで、すべてが解決するわけでもありません。委縮性胃炎の状態では、胃液の分泌が少ないため、できるだけ胃に負担をかけない食生活を心掛けることが大切です。1日3食を規則正しく摂取するようにして、脂っこいものなど消化の悪いものや、香辛料など刺激の強いものは控えめにします。

委縮性胃炎を持っている人は胃がん発症のリスクが高くなりますから、最低でも年に一度の内視鏡検査は必ず受けることも大切です。委縮の程度が軽度であれば、少し間隔を空けても構いませんが、中等度から重症といわれている場合は、定期健診は欠かせません。

たとえ胃がんが発生したとしても、早期発見ならば内視鏡による胃粘膜切除手術で、簡単に切除することができます。早期の胃がんの5年生存率は90パーセント以上と高くなっています。

2022/08/31

🇷🇺便の変化

●腸の働きについて

 人体の下半身からの出物として、腸からの大便という固形物、すなわちウンコがある。

 この大切な排泄物の出具合が悪くて、朝から「やれ下痢だ」、「また便秘だ」と、腹を抱えてうずくまったり、苦しんでいたのではいただけない。人間が健康を手に入れるには、やはり内臓の正常な働きが必要なわけである。

 そこで、腸の仕組みについて、まずは小腸から探っていこう。

 最近の生理学の教えるところによると、人間の小腸という消化器官は、取り出せば、七~八メートルにもなるという、とんでもなく長い管状の臓器である。自分の腹に手を当ててみても信じられないほどだろうが、通常、体の中では、およそ三メートルほどの長さに縮んで収まっている。

 なぜそんなに長いかといえば、人間が生きていくためには、胃で消化された食物から栄養やエネルギーを摂取、吸収しなければならないからである。 

しかも、小腸の内側は、絨毛(じゅうもう)の表面をまた絨毛でおおうという、無数の絨毛で埋め尽くされた構造で、必死に表面積を稼いでいる。その表面積は、何とテニスコート二面分に相当するという。さらに、一本の絨毛は約五千個の栄養吸収細胞からできており、小腸全体で千五百億個と推定される。驚くべきは、人体の機能、働きの素晴らしさである。

 こうした構造を持つ消化管である小腸は、胃から、かゆ状となって送り込まれた食物を、改めて消化したり、栄養を吸収し、大腸へ送り出す重要な役割を持つ。

 詳しくいうと、胃のほうから十二指腸、空腸、回腸に、小腸は大きく分けられる。それぞれが消化酵素を多量に含んだ腸液を分泌し、あるいは膵臓(すいえき)からの膵液、胆嚢(たんのう)からの胆汁も一緒に合わせて、最終的には、かゆ状食物から栄養を取り入れていくのである。

●栄養を吸収する小腸、便を形作る大腸

 かゆ状の食物が栄養のほとんどを吸収され、小腸を後にするのは、食後四~六時間といわれている。身ぐるみはがされた残滓、液状のカスとなって、大腸に到達する。

 盲腸から始まる大腸は、時計回りに上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、そして直腸に区別できる。

 この大腸の大きな役割は、先の液状のカスから水分と電解質を吸収し、固形物、すなわちウンコを作ることである。

 ウンコは、下行結腸からS状結腸にとどまる。その後、ある一定の量にウンコが達した場合や、胃に食物が入った刺激で起こる大きな蠕動(ぜんどう)運動があると、ウンコは直腸に送られる。この時の圧力を自律神経が察知して大脳に伝えると、便意を催すという仕組みだ。

この間、およそ二十四時間から七十二時間。口にした食物がようやく、腸の末端の肛門(こうもん)から出てくるのである。

このようにして、我々日本人は、一日に平均で百五十グラムから二百グラムほどのウンコを出すのである。一日当たり百五十グラムとして、八十年間生きれば、単純計算で五トン近くの排出となる。

 では、出てきた我々人間のウンコは、なぜ一様に臭いのであろうか。実はみな、腸に住む細菌のせいである。

 特別な環境で出生、飼育された無菌動物のウンコは、栄養を吸収された食べ物の残りカスだけだから、臭くない。一方、我々のするウンコは普通、三分の一から二分の一が腸内細菌ともいわれており、特有のにおいは腸内細菌の分泌物が原因なのである。

 言い換えれば、人間のウンコは細菌のウンコによって臭い、ともいえるのである。

 ところで、人間は誰でも、一生に一度だけ臭くない通じをする。生まれて一番最初にするウンコが、それである。

 胎内で、母親の免疫系に守られている胎児は、いわば無菌状態で、腸にも細菌がいない。そのため、赤ちゃんが胎内でためていて、生まれてすぐするウンコは、臭くないのである。

 しかし、生まれた翌日のウンコには、すでに大腸菌を始め、腸球菌や乳酸桿菌(かんきん)など、一グラム当たり一千億個の菌が見られるのである。 

●便という体からの情報は役に立つ

 先に、日本人の一日のウンコの量は平均で、百五十グラムから二百グラムと述べたが、アメリカ人はせいぜい百五十グラムである。

 これは、日本人のほうが植物繊維を含む食べ物を多くとっているからなのだ。人間の腸は、植物繊維を分解する酵素を持っていない。だから、植物繊維はそのままカスとして出てくるのである。「便秘気味の人は野菜を食べよ」といわれるのは、繊維質が残ったほうが便がかさばって出やすくなるからなのだ。

 よって、便秘も日本人よりアメリカ人のほうが多いのである。植物繊維を多くとっているアフリカ原住民には、一日に七百五十グラムもの便をする種族がいるとのこと。 

 比較ついでに、日本人とアメリカ人の一物はどちらが臭いかというと、ずばり答えはアメリカ人である。

 一般の日本人の食事は、低蛋白、低脂肪、高炭水化物、高食塩、高繊維。欧米人はその逆で、高蛋白、高脂肪、低炭水化物、低繊維。ウンコのにおいで特に臭いインドールや硫化水素は、みな蛋白質のアミノ酸が細菌によって代謝されてできるのである。

 また、植物繊維には、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を増やし、同時に悪玉菌が繁殖する前に排泄をうながすという働きも期待できる。加えて、ウンコの量を増すということは、薄めるということでもあるから、蛋白を多く摂取するアメリカ人のほうが一物が濃い。すなわち臭いといえるだろう。

 しかし、最近は日本人の食生活も急速に欧米化しているから、排泄物もどんどん臭くなっているはずである。 

 もう一つ比較すると、動物はみんな排泄行為をするのに、お尻(しり)をふくのは人間だけである。が、動物も人間も、消化器官の仕組みはたいして変わらない。

 コロコロとした丸いウンコができるウサギは、腸が長いために、水分を絞りとってしまうのである。我々人間も、便秘をすると固くてコロコロした一物が出るのは、徹底的に大腸で水分を絞りとられた結果のようである。

 さて、体内で不要になって排泄された大便も、実は、体外に出た後も役に立つ存在なのである。今、世の中はリサイクル・ブームであるが、ウンコも負けてはいない。自然農法やウンコを飼料にした豚や牛の飼育が見直されているし、リンやビタミンB12を大量に含む資源としても注目されている。 

 リサイクルの極端な例は、先のウサギのコプロファジー(食糞症)である。ウサギは一日一回、普通の便とは違うコプロファジー用の便をするが、それを食べられないようにしてしまうと、衰弱して死んでしまう。ウサギは草や木の葉を一度体内のバクテリアで発酵させ、出てきたウンコを食べることで、不可欠な蛋白質やビタミンを補っているようだ。

 人間の場合はそういう極端なリサイクルは無理にしても、体からの黄金の出物は健康の指標として役に立つのである。

 ウンコはいわば食べ物の残滓であり、カスであるが、二十四~七十二時間にわたる自分の体の情報、とりわけ胃腸のメカニズムがはっきりと現れる。

 体からのメッセージの解読法を心得ておくのは、誰にとっても決して無駄にはならないはずである。

 基本となる正常便の量は、一日に百~二百五十グラム。形は太めのバナナ状で、色は黄褐色が理想的だ。水洗便所の水に浮けば、もういうことはない。一日にちょっと茶色いバナナ二、三本も出ていれば、内臓はたいそう健康である証拠。

 平均百五十~二百グラムといわれる便の組成は、約七十五パーセントが水分、残り二十五パーセントが固形成分であり、意外なことに便の大部分は水分なのである。 

●厄介な下痢が起こるメカニズム

 健康の証(あかし)の正常便に対して、誰もが経験したことがある便のトラブルは、便秘と下痢であろう。

 二つの厄介な症状は、大腸の機能が正常に働かなくなった時に起こる。食べ物の栄養の約九割を吸収してしまう小腸に、トラブルはほとんど見当たらないといわれ、問題が生じるのは残りカスをウンコにして排泄する大腸なのである。

 まず、いわゆる下痢の原因は、大腸が水と酸・アルカリ・塩類の電解質を正しく吸収できないことによる。正常な便は七十五パーセント程度の水分を含んでいるが、この割合がさらに高くなると泥状になったり、液状になったりするのである。水分を大量に含んだままでは、便は固まらないという単純な理屈だ。

 しかしながら、下痢に至る過程は、主に二つが挙げられる。

 一つは、ストレスなどが原因で、腸の蠕動運動が激しくなり、水分を吸収し切れないまま内容物が直腸に向かってしまうもの。試験の前になると決まって、トイレにゆきたくなったなどという経験がある人も、多いことだろう。

 二つ目は、膵臓疾患などで、腸粘膜からの水分吸収が妨げられた時に起こるもの。二日酔いの下痢もこれに当たり、アルコールの作用によって、膵液の分泌が後退し、脂肪が分解されずに大腸へ送られるために、水分の吸収が妨げられるのである。

 牛乳を飲むと下痢をしてしまう人も、多いだろう。これは乳糖不耐症と呼ばれ、日本人では五人に一人の割合で存在する。牛乳に含まれる乳糖は、小腸で分泌されるラクターゼという消化酵素によって分解され、吸収される。乳糖不耐症の人は、このラクターゼが少ないため、乳糖は大腸で細菌によって分解される。この時に作られた乳酸や炭酸ガスが、腸を刺激して、腹痛や下痢を引き起こしてしまう。  

 ともあれ、アルコールや牛乳によるものはじきに治ってしまうが、下痢をともなった腹痛が起こったら食中毒、左下腹部が痛み、頻繁に下痢をする場合は急性大腸炎の疑いがあるので、注意を促しておきたい。専門医の診断を仰ぐのが賢明である。

 また、激しい下痢などのため脱水症になったら、常識にこだわらず大いに水を飲むことを勧めたい。体の水分が尿になって排出されるのは健康な生理的現象であるが、この下痢をしたり、吐いたりというのは、脱水作用といって非生理的なものであるといわれる。

 ことに子供の体には水分の予備が少ないから、十回ぐらい下痢をすると脱水症状を起こしてしまうことが多い。下痢の時には、余計に水を飲ませるべきである。 

●便秘を極度に気にする必要はない

 一方の便秘の原因を探ろう。例えば、消化のいいものばかりを食べて、繊維が足りない場合、材料不足のためになかなか便にならない。排泄まで時間がかかるのである。それでも、腸は水分をとれるだけとろうと律義に働く。結局、水分のないカチカチウンコになってしまうのである。

 トイレにゆくのを我慢して、便意を無視し続けることも原因。おおげさにいうと、しまいには便意の感覚がマヒする。せっかくウンコの元が直腸まで到達しても、便意が起こらなければ、ウンコはそのまま滞ってしまうわけである。

 この便秘には、個人差がある。仮に二日、三日出なくても、便が硬くなく、不快感がなければ正常といえる。昔から三、四日に一回の通じを習慣にしてきたが、全く不都合を感じないし、ずっと内臓の健全と体の健康を維持し続けている、という百歳人もいる。 

 東京都新宿区にある日本百歳会が、平成五年に新百歳人になった四百六十五人を対象に実施したアンケート調査で、便通についての有効回答を見ると、「毎日」が百八十六人、「一日置き」が七十一人、「二、三日に一回」が二十七人。「便秘がち」の人も九十八人いた。

 高齢になるにつれて、食事の量も運動の量も減り、従って排便の回数も少なくなるのは当然としても、若い頃からずいぶん間遠な百歳人もいた。一般に、排便は毎日、一定の時間にあったほうがいいようにいわれるが、それは望ましい形であって、必ずしもそうでなくてもいいようである。

 女性の中には、一週間くらいウンコが出なくても平気な人さえいる。それでも本人が苦痛でないならば、便秘とはいえない。少ししか食べなければ、内容物は少ないわけだから、なかなか出ないということもあるのだ。

 極端な例を挙げれば、宇宙食のような無駄を省いた食べ物を食べると、便の量は二分の一から四分の一に減るという。 

 俗に、便秘を長く続けると、糞便が腐敗して毒素が吸収されるというようなことがいわれるが、必ずしもそうではないようである。

 むしろ、便秘をすると体に悪いとか、おなかに汚いものがたまっているという気持ちそのものが、精神に悪影響を与え、さらに便秘が続くということもある。

 皮膚などは精神の影響を大きく受けるから、便秘はいけない、便秘で毒素が体に回ると肌が汚くなるなどと気にすること自体が、肌を悪くしていて、不健康でザラザラした皮膚の感じを与えるようにも思われる。

 事実、誰にとっても、快便というのは気持ちのよいものであるし、体の汚いものが一気に出ていったような気分がする。しかし、便秘気味でも、極度に気にするのはかえって体を不健康にしたり、社会生活、対人関係に悪い影響を与え、いろいろなことがうまくゆかない原因になったりすることは、よく覚えていただきたい。

●便の色と形で内臓の機能障害を知る

 世の中で、こういった便秘の悩みを持つ人は、男性より女性に多いようである。女性は生殖のために子宮と卵巣という器官を抱えているが、けっこう重さがある上に、生理時には多少膨張したりするので、隣り合った腸の蠕動運動を圧迫して便秘につながるのである。

 男性の精子を作るための生殖器官は、性器周辺にコンパクトにまとまっているのに対して、女性の生殖器官は形も大きく、メカニズムも複雑になっている。従って、腸に影響があるのも致し方ないことかもしれない。生理的には、ホルモンバランスも影響してくることなのである。

ただ、医師たちは女性たちの便秘に対して、心理的な理由もあると指摘している。特に、働く女性に多い「独特な羞恥(しゅうち)心」だというのだ。朝、ろくに朝食もとらずに家を出る。朝食をとったとしても、トイレの時間をゆっくりと確保できない。実際、何よりも化粧を優先させる女性が多いのである。

 仕事場では、便意を催しても、会社のトイレでは嫌なのである。男性から見たら不可解なことかもしれないが、「ウンチしている」というのは同性にも悟られたくないのだという。我慢していると、そのうち便意が消える。そんなことを繰り返しているうちに、習慣性の便秘になることも少なくないというわけだ。 

 習慣性の便秘はともかくとして、一般の人の便秘の主要原因は、結局、水分の吸収異常であった。このトラブルを防ぎ、大腸の機能を正しく保つには、食物繊維と乳酸菌が不可欠である。

 食事で野菜や海草を多くとるように心掛け、広く出回っているヤクルト菌、ビフィズス菌などの乳酸菌を含む飲料やヨーグルトも利用したらよいだろう。乳酸菌は乳酸や酢酸を作り出し、腸内を酸性に保つ。この酸性の刺激が腸の蠕動運動を盛んにし、感染予防にも一役買う。

 大腸の調子が整えば、立派な便が規則正しく出る。踏ん張れる。快調な毎日を送れるのである。  

 さて、下痢や便秘のほかにも、自分の体からの黄金の出物は、その色や形で胃腸のメカニズムの異常を知らせてくれる。自分の便を見れば、病気を発見できる場合もあるのだ。

 ふだんの正常便と違う白っぽい便が出たら、肝臓や胆嚢などの異常によって、胆汁が腸に送られなくなったことを意味する。要するに無着色のウンコだ。

 次に、脂肪分をとりすぎれば、すっぱいにおいのベタベタした便になるし、白いブツブツがあり、しかもプカプカ浮くウンコが出たら、脂肪便である。これは、膵臓から分泌され脂肪を分解する膵液の不足によるもので、特に高カロリー食を好む美食家は用心が必要。  

 ほかに、肉眼で見る便の色で注意したいのが、血の混ざった便。これには二種類あって、一つは真っ赤な血便。これは肛門に近いところの出血によるもので、粘液便なら直腸ガン、それ以外なら痔(じ)の疑いがある。

 もう一つは、同じ出血でも黒い便が出る場合。こちらは胃や小腸、大腸が出血し、それが腸管を通過するうちに酸化して黒色になるというパターンである。その他、黒い便は、肉食を好む人にも多いという。

 形で注意したいのは、大腸ガンで腸狭窄(きょうさく)を起こせば、便が細くなること。

 いきなり病院に担ぎ込まれる前に、毎日自分の目で、便からのメッセージを読み取る能力を養っておくのが、内臓へのいたわりというものである。

2022/08/27

🇬🇭後外側裂孔ヘルニア

横隔膜に生まれ付き開いている穴を通して、腹腔の臓器が胸腔へ脱出

後外側裂孔(こうがいそくれっこう)ヘルニアとは、横隔膜に生まれ付き開いている穴を通して、腹腔(ふくくう)内の臓器が胸腔内に入り込んだ状態。先天性の横隔膜ヘルニアの一つで、ボックダレック孔ヘルニア、胸腹裂孔ヘルニア、後外側ヘルニアなどとも呼ばれます。

先天性の横隔膜ヘルニアの中でも、穴の位置や大きさによってはほとんど症状や障害を起こさないものがありますが、後外側裂孔ヘルニアは横隔膜の後ろ外側に穴があるタイプで、多くは生まれた直後から呼吸困難など生命にかかわる重大な症状を来します。新生児2000〜3000人に1人の割合で、認められています。

横隔膜は、肺の下に位置していて胸腔と腹腔を区切る膜で、上のほうは胸膜、下のほうは腹膜で覆われています。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜である横隔膜が上下することによって、呼吸ができます。

胎児が母胎にいる時、次第に横隔膜が形成されてきて、妊娠2カ月半ころにはしっかりと横隔膜が胸腔と腹腔を区切るのですが、何らかの原因で横隔膜の後外側孔(ボックダレック孔:解剖学者の名前)がきっちりと閉じ切らないことがあります。このころは、腹腔の外に一度出ていた腸などの臓器が腹腔の中に戻って来る時期で、穴があると臓器が胸腔に入り込むことになり、横隔膜が閉じようとしても脱出した臓器がじゃまをして閉じられなくなってしまいます。

小腸、大腸、胃、脾(ひ)臓,肝臓などたくさんの臓器が胸腔に入り込むと、穴の開いていない側の肺も圧迫され、肺の発達が両側とも障害され、生まれてからひどい呼吸困難を来すこととなります。横隔膜にできる穴はどちらの側にも発生しますが、左側が75パーセントと多く、時には片側の横隔膜がほとんどできていないこともあります。

症状の程度は、発症の時期により異なります。胎児の場合はへその緒から酸素をもらっているので平気なのですが、出生後は自分で呼吸しなければならないため、多くの場合は重症の呼吸不全、高度のチアノーゼを伴った多呼吸が認められます。胸部は膨らんで盛り上がり、逆に、うまく空気が回らない腹部はへこんでいるのも特徴です。呼吸障害が強く、出生直後から人工呼吸管理が必要になります。

特殊な例としては、出生直後には呼吸器症状は示さず、年長になってから、風邪をひいて強いせきをした時や腹部を打撲した時に発症する場合があります。これを遅発性といい、速やかに手当てを受ければほぼ助かります。

後外側裂孔ヘルニア検査と診断と治療

先天性で後外側裂孔ヘルニアを持って生まれてくる場合、大抵は胎児が母胎の中にいるうちに、産科や産婦人科の医師が胎児超音波検査で気付きます。この場合は周産期センターに妊婦を搬送し、新生児科医、小児外科医の立ち会いのもとに帝王切開で出産し、直ちに治療を開始します。

成長すればするほど脱出した臓器が胎児の肺を押しつぶし、危険な状態になっていくからで、出生直後から人工呼吸管理を行った上で、体の血液循環を安定させ、できるだけ早期に、手術に耐えられるようになった時点で速やかに、生育時に閉じ切れなかった横隔膜を閉じる手術が行われます。

すべての医療機関で可能な方法ではないものの、人工肺(ECMO)という特殊装置を用いて新生児の血液循環を改善させてから、手術が行われることもあります。横隔膜の欠損が大きい場合は、人工膜を使用して横隔膜の形成手術が行われます。

しかし、最高の環境で早期に手術が行われても、生存率は芳しくないのが実情です。出生後24時間以内の発症例は予後が悪く、救命率は約50パーセント程度と見なされています。出生後1日以上を経過してから呼吸障害などで後外側裂孔ヘルニアが見付かった場合や、生後たまたま他の疾患の検査時に見付かった場合は、肺の発育が良好なため、治療成績は格段に良好です。

年長になってから発症する遅発性の後外側裂孔ヘルニアでは、小児科や小児外科医、消化器外科の医師による治療で100パーセント救命されます。

🇿🇦好酸球性胃腸炎

胃腸の壁に血液中の好酸球が浸潤して慢性炎症を引き起こし、胃腸の正常な機能が障害される疾患

好酸球性胃腸炎とは、血液中の好酸球の消化管壁への浸潤を特徴とする炎症性消化器疾患。好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、アレルギーや寄生虫感染の時に重要な働きをする細胞です。

詳しい原因は不明ですが、胃や腸に入ってきた飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、胃壁や腸壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって胃や腸の正常な機能が障害されます。

病変は胃、十二指腸、小腸などに好発し、食道や大腸にも病変を認める場合もあります。

好酸球性胃腸炎にはかなり長い潜行期間があると見なされ、顕性化すると発熱、全身倦怠(けんたい)感、疲れやすさを覚え、少量の食物で上腹部の膨満感と停滞感を来して十分に食事が取れなくなります。

下痢、腹痛、胸痛、嘔吐(おうと)がみられ、胃や小腸から出血するようになり、特に胃の前庭部と十二指腸の上部に、びらん、むくみ、発赤、潰瘍(かいよう)、出血が現れます。

炎症が胃や腸の粘膜に及ぶと、腹水が生じることがあります。病変の広がりと程度によって、軽度から重度の飲食物の消化障害、栄養物の吸収障害と蛋白(たんぱく)質喪失胃腸症を来し、次第に鉄欠乏性貧血と低蛋白血症が目立つようになります。

小腸の病変が強いと、繊維性狭窄(きょうさく)のために腸の内容物である飲食物や消化液の通過障害が起こる腸閉塞(へいそく)となることもあります。

なお、好酸球性胃腸炎の発症者は、喘息(ぜんそく)などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

まれな疾患ですが、小児から高齢者までのあらゆる年齢層に生じ、20歳代から50歳代の年齢層に好発しています。

下痢、腹痛が繰り返しみられ、胃薬の効果がない時には、好酸球性胃腸炎を疑い、消化器科、消化器内科、内科を受診することが勧められます。

好酸球性胃腸炎の検査と診断と治療

消化器科、消化器内科、内科の医師による診断では、胃や十二指腸などの粘膜組織を採取して調べる生検を行って好酸球の浸潤の存在を認め、腹水中の多数の好酸球の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、末梢(まっしょう)血液中の好酸球の増多、喘息などのアレルギー疾患の病歴、内視鏡検査によるびらん、むくみ、発赤の存在、腹部超音波検査またはCT検査による胃や腸壁の肥厚の存在も確認します。

鑑別する疾患としては、硬性がん、メネトリエ病、胃の平滑筋腫(しゅ)または平滑筋肉腫、悪性リンパ腫、多発性内分泌腺(せん)腫、好酸球性肉芽腫などがあります。

消化器科、消化器内科、内科の医師による治療では、消化管の安静や保存的治療を行います。

消化管の安静としては、牛乳、卵、肉、魚などの食事性アレルギーの原因になりやすい食物を除いた除外食を摂取し、糖質を主にした輸液を中心にします。

保存的治療としては、早期に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)のプレドニゾロンを1日30〜40mg 程度で使用します。効果のあるケースでは、1週間も使用すれば症状は改善するので、それから徐々に減量し、4週程度で終了するのが一般的です。胃腸症状は急速に軽症化し、腹水は消失、末梢血液中の好酸球はほとんど認められなくなります。

同時に、胃酸の分泌を促す物質の働きを抑える作用や止血作用のあるシメチジン製剤と、胃酸を中和する制酸剤を併用することもあります。制酸剤はシメチジン製剤の効果を増強するとともに、粘膜保護の役割を果たします。

消化管の狭窄、閉塞が起こっている場合は、外科手術を行うこともあります。

🇱🇸好酸球性消化管疾患

血液中の好酸球が消化管の粘膜に浸潤して、種々の症状を来す疾患の総称

好酸球性消化管疾患とは、血液中の好酸球が消化管の粘膜に浸潤して、種々の症状を来す疾患の総称。EGID(Eosinophilic Gastro-Intestinal Disorders)とも呼ばれます。

好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担い、アレルギー反応の制御を行う一方で、このアレルギー反応による炎症の一因にもなる細胞です。

この好酸球が引き起こす好酸球性消化管疾患は、好酸球性食道炎と好酸球性胃腸炎に大きく分けられます。

好酸球性食道炎の患者が2000年以降、欧米諸国で急増し、病態の解析や治療に関する研究が進んだことにより、日本でも好酸球性消化管疾患が注目されるようになりました。

欧米では好酸球性消化管疾患のほとんどが好酸球性食道炎ですが、日本では好酸球性胃腸炎のほうが多く認められています。

好酸球性食道炎は、血液中の好酸球の食道壁への浸潤を特徴とする炎症性消化管疾患。詳しい原因は不明ですが、飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、食道壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって食道の正常な機能が障害されます。

胸痛、胸焼け、食物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害、食物のつかえ感、腹痛などが主な症状です。進行すると、食道粘膜の下層にむくみや繊維化が起こり、食道の狭窄(きょうさく)によって食べ物の通過障害を起こすことがあります。

また、好酸球性食道炎の発症者は、喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

日本では比較的まれですが、近年は男性を中心として患者数が増加しています。発症者の平均年齢は49歳。

胸焼けや食物のつかえ感など好酸球性食道炎と類似した症状を示す疾患に、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こる逆流性食道炎があります。医療機関で逆流性食道炎と診断されて、胃酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を服用しても症状が改善しない患者の一部には、好酸球性食道炎が含まれるとみられています。

好酸球性食道炎を疑い、診断・治療機器の整った大学病院などの内科、気管食道科を受診することも勧められます。

一方、好酸球性胃腸炎は、血液中の好酸球の消化管壁への浸潤を特徴とする炎症性消化管疾患。こちらも詳しい原因は不明ですが、胃や腸に入ってきた飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、胃壁や腸壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって胃や腸の正常な機能が障害されます。

病変は胃、十二指腸、小腸などに好発し、食道や大腸にも病変を認める場合もあります。

好酸球性胃腸炎にはかなり長い潜行期間があると見なされ、顕性化すると発熱、全身倦怠(けんたい)感、疲れやすさを覚え、少量の食物で上腹部の膨満感と停滞感を来して十分に食事が取れなくなります。

下痢、腹痛、胸痛、嘔吐(おうと)がみられ、胃や小腸から出血するようになり、特に胃の前庭部と十二指腸の上部に、びらん、むくみ、発赤、潰瘍(かいよう)、出血が現れます。

炎症が胃や腸の粘膜に及ぶと、腹水が生じることがあります。病変の広がりと程度によって、軽度から重度の飲食物の消化障害、栄養物の吸収障害と蛋白(たんぱく)質喪失胃腸症を来し、次第に鉄欠乏性貧血と低蛋白血症が目立つようになります。

小腸の病変が強いと、繊維性狭窄のために腸の内容物である飲食物や消化液の通過障害が起こる腸閉塞(へいそく)となることもあります。

なお、好酸球性胃腸炎の発症者は、喘息などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

まれな疾患ですが、小児から高齢者までのあらゆる年齢層に生じ、20歳代から50歳代の年齢層に好発しています。

下痢、腹痛が繰り返しみられ、胃薬の効果がない時には、好酸球性胃腸炎を疑い、消化器科、消化器内科、内科を受診することが勧められます。

好酸球性消化管疾患の検査と診断と治療

内科、気管食道科の医師による好酸球性消化管疾患のうちの好酸球性食道炎の診断では、食道粘膜の組織を採取して調べる生検を行って、好酸球の浸潤の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、問診による喘息などのアレルギー疾患の病歴、血液検査による末梢(まっしょう)血液中の好酸球の増加、内視鏡検査による食道の壁の肥厚、縦方向のしまや白い斑点(はんてん)、環状狭窄の存在なども確認します。

鑑別する疾患としては、胸焼けや食物のつかえ感などで類似した症状を示す逆流性食道炎が重要です。逆流性食道炎は、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こる疾患です。

内科、気管食道科の医師による好酸球性食道炎の治療では、アレルギー反応を起こす原因と考えられる抗原の除去が基本となります。食事療法として、抗原と疑われる食品を検査して特定し、その食品を除いた食事を用いる方法、検査は行わず一般的に抗原となりやすい牛乳、卵、肉、魚などの食品を除いた食事を用いる方法、アミノ酸成分栄養食を用いる方法の3種類があります。

薬物療法として、好酸球による炎症を抑えることを目的に、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の吸入剤が主に用いられます。吸入剤は局所的に作用するため副作用が少なく、気管に吸い込まず、いったん口の中にため、唾液(だえき)と一緒に飲み込みます。重症の人には、ステロイド剤の内服剤を用いることもあります。

また、食道の運動機能が低下して胃酸の逆流症状を併発する場合、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を補助的に使用することもあります。

食事療法、薬物療法で症状が改善しない場合や、食べ物のつかえや嚥下障害が強い場合は、狭くなった食道を広げる外科手術を行うこともあります。

消化器科、消化器内科、内科の医師による好酸球性消化管疾患のうちの好酸球性胃腸炎の診断では、胃や十二指腸などの粘膜組織を採取して調べる生検を行って好酸球の浸潤の存在を認め、腹水中の多数の好酸球の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、問診による喘息などのアレルギー疾患の病歴、血液検査による末梢血液中の好酸球の増多、内視鏡検査によるびらん、むくみ、発赤の存在、腹部超音波検査またはCT検査による胃や腸壁の肥厚の存在も確認します。

鑑別する疾患としては、硬性がん、メネトリエ病、胃の平滑筋腫(しゅ)または平滑筋肉腫、悪性リンパ腫、多発性内分泌腺(せん)腫、好酸球性肉芽腫などがあります。

消化器科、消化器内科、内科の医師による好酸球性胃腸炎の治療では、消化管の安静や保存的治療を行います。

消化管の安静としては、牛乳、卵、肉、魚などの食事性アレルギーの原因になりやすい食物を除いた除外食を摂取し、糖質を主にした輸液を中心にします。

保存的治療としては、早期に副腎皮質ホルモン(ステロイド剤)のプレドニゾロンを1日30〜40mg 程度で使用します。効果のあるケースでは、1週間も使用すれば症状は改善するので、それから徐々に減量し、4週程度で終了するのが一般的です。胃腸症状は急速に軽症化し、腹水は消失、末梢血液中の好酸球はほとんど認められなくなります。

同時に、胃酸の分泌を促す物質の働きを抑える作用や止血作用のあるシメチジン製剤と、胃酸を中和する制酸剤を併用することもあります。制酸剤はシメチジン製剤の効果を増強するとともに、粘膜保護の役割を果たします。

消化管の狭窄、閉塞が起こっている場合は、外科手術を行うこともあります。

🇱🇸好酸球性食道炎

食道壁の粘膜に血液中の好酸球が浸潤して慢性炎症を引き起こし、食道の機能が障害される疾患

好酸球性食道炎とは、血液中の好酸球の食道壁への浸潤を特徴とする炎症性消化管疾患。好酸球は、免疫にかかわる白血球の一種で、アレルギーや寄生虫感染の時に重要な働きをする細胞です。

詳しい原因は不明ですが、飲食物を含む何らかの物質が直接、間接の引き金になってアレルギー反応が起こり、血液中の好酸球が大量に産生される結果、食道壁の粘膜に多数浸潤して慢性炎症が引き起こされ、これが原因となって食道の正常な機能が障害されます。

胸痛、胸焼け、食物を飲み込みにくくなる嚥下(えんげ)障害、食物のつかえ感、腹痛などが主な症状です。進行すると、食道粘膜の下層にむくみや繊維化が起こり、食道の狭窄(きょうさく)によって食べ物の通過障害を起こすことがあります。

また、好酸球性食道炎の発症者は、喘息(ぜんそく)やアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の病歴を高い頻度で有しています。

欧米を中心にここ20年くらいで知られるようになった疾患であり、日本では比較的まれですが、近年は男性を中心として患者数が増加しています。発症者の平均年齢は49歳。

好酸球性食道炎の検査と診断と治療

内科、気管食道科の医師による診断では、食道粘膜の組織を採取して調べる生検を行って、好酸球の浸潤の存在を認めれば、それでほぼ確定します。

また、問診による喘息などのアレルギー疾患の病歴、血液検査による末梢(まっしょう)血液中の好酸球の増加、内視鏡検査による食道の壁の肥厚、縦方向のしまや白い斑点(はんてん)、環状狭窄の存在なども確認します。

鑑別する疾患としては、胸焼けや食物のつかえ感などで類似した症状を示す逆流性食道炎が重要です。逆流性食道炎は、胃液、十二指腸液の食道への逆流によって、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こる疾患です。

内科、気管食道科の医師による治療では、アレルギー反応を起こす原因と考えられる抗原の除去が基本となります。食事療法として、抗原と疑われる食品を検査して特定し、その食品を除いた食事を用いる方法、検査は行わず一般的に抗原となりやすい牛乳、卵、肉、魚などの食品を除いた食事を用いる方法、アミノ酸成分栄養食を用いる方法の3種類があります。

薬物療法として、好酸球による炎症を抑えることを目的に、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の吸入剤が主に用いられます。吸入剤は局所的に作用するため副作用が少なく、気管に吸い込まず、いったん口の中にため、唾液(だえき)と一緒に飲み込みます。重症の人には、ステロイド剤の内服剤を用いることもあります。

また、食道の運動機能が低下して胃酸の逆流症状を併発する場合、酸の分泌を抑えるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を補助的に使用することもあります。

食事療法、薬物療法で症状が改善しない場合や、食べ物のつかえや嚥下障害が強い場合は、狭くなった食道を広げる外科手術を行うこともあります。

🇹🇿痔

成人の3人に1人が悩む国民病

虫歯に次ぐ「第2位の国民病」といわれているのが、お尻のトラブル、すなわち痔(じ)。成人の3人に1人が、その症状に悩んでいるとされています。

正確には、痔とは肛門(こうもん)周辺の病気の総称で、大きく分けて3種類、「痔核(じかく)」、「裂肛(れっこう)」、「痔瘻(じろう)」があります。最も多いのが痔核で、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

痔核は通称「いぼ痔」と呼ばれ、肛門周囲の静脈がふくらんで、こぶになったものです。直腸側にできる「内痔核」と、肛門部にできる「外痔核」があります。

内痔核は、肛門の中の直腸静脈に静脈血がたまって、感染と腫脹を起こしてできた静脈瘤です。排便、立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかると、静脈瘤ができます。不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて、だんだんうっ血し、直腸の静脈瘤が腫(は)れてきて、内痔核になります。

この内痔核の症状は、「出血」です。拡張した静脈瘤から出血し、赤い血が飛び散ります。進行すると、出血だけでなく、痔核がだんだん大きくなり、肛門の外に飛び出して「脱肛」になります。重症の内痔核による脱肛者には、医療機関での手術が必要になります。

外痔核のほうは、肛門の外側で目に見えるところに、皮下の静脈が血栓や静脈瘤を形成したもので、炎症を起こし腫れています。この外痔核も強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。

裂肛は通称「切れ痔」と呼ばれ、肛門部の皮膚が切れたり裂けたりした外傷で、ひりひりとした強い痛みがあるのが特徴です。便秘している硬い大便が、肛門を無理に通過する際に、肛門管の粘膜面が傷ついて出現します。「急性裂肛」の場合には、便を軟らかくしておけば治りますが、裂肛が慢性化すると、排便時には激痛が起こり、ひどくなると、排便後も痛みが長く続きます。

痔瘻の通称は「あな痔」で、肛門と直腸の境にあって、分泌物を出している歯状腺という組織が感染して、膿(うみ)がたまり、それが破れて出た跡に瘻管、ないし瘻孔と呼ばれる膿が出る穴ができる病気です。慢性化し、炎症を起こした穴からは、肛門の外側にいつまでも膿がじくじくと出ます。激しい痛みや発熱を伴い、肛門がんになることもあるので、100パーセント手術が必要とされています。

悪化させない生活習慣が大切に

肛門周辺に起こる炎症が、お尻のトラブルである痔の原因ですが、炎症を引き起こすのは「便秘」、「下痢」、「肉体疲労」、「ストレス」、「冷え」、「飲酒」といった生活習慣です。中でも、便秘や下痢などの排便の異常は、痔の最大要因となります。

便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、裂肛や痔核を招くもとになります。逆に、下痢の軟らかすぎる便も、痔瘻をつくる切っ掛けになります。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、抹消血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。

セルフケアと薬が治療の基本

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。

どんないい薬を使おうと、生活習慣を変えない限り、痔は治りません。手術が必要な痔瘻を除いて、生活習慣の改善と、薬で症状を軽くしていく保存療法が、治療の基本になります。

日常のセルフケアには、三つのルールがあります。第一には、病名がきちんと診断されていること。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えているので、「本当に痔なのか、ほかの病気は隠れていないのか」、専門の肛門科医に診察してもらうことが必要です。

とりわけ痔の場合、どんなに不快な症状があっても病院へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる病気ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

第二には、医師や看護師などの指導を受けて、計画を立てて行なうこと。第三には、長続きできる方法で行なうことです。

日常生活におけるセルフケアのポイントを挙げれば、排便のコントロールで、規則正しい便通習慣をつけることが大切です。便意を感じたら我慢しないでトイレに行くこと、便意がないのに息むと肛門に負担を強いるのでトイレは3分で切り上げることも、痔の予防や治療のために心掛けたい習慣です。

食物繊維を多くとるなど、食事を見直すことも大切。肉体疲労やストレスは痔を誘発するだけでなく、健康も損なうので、休養と睡眠を十分にとり、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスをはかるようにします。

冷え対策としては、冬よりも夏の冷房に要注意です。特に、電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫を。

 飲酒については、酒を断つ必要はありませんが、適量を心掛けましょう。アルコール代謝能力には個人差があるため、ほろ酔い程度が適量となります。

痔の検査と診断と治療

病院で医師が薬を使うのは、痔による痛みや出血、腫れを和らげるほかに、肛門内を薬の膜で覆って、排便時の刺激を減らす目的もあります。

日常生活のセルフケアと薬による保存療法を行なっても、効果や改善がみられないケース、再発を繰り返すケースでは、手術ということになります。とはいえ、なるべく手術をしないで治すのが医師側の主流となっていますし、最近では炭酸ガスレーザーによる、切らない手術で、痔核、裂肛、痔瘻を治療している施設もあります。

内痔核には、「保存療法」、「切らない治療法」として肛門を清潔にして、便秘や下痢にならないように便通を整える目的で、座薬や軟膏を使用したり、鎮痛剤や抗消炎剤を投与します。

この内痔核や脱肛の患者には、PPHと呼ばれる自動縫合器による直腸粘膜切除術が日本でも行なわれるようになり、普及しつつあります。PPHという新しい痔の手術法は、1993年にオーストリアのセントエリザベス病院の大腸・肛門外科部長により開発されたもので、治療の対象になるのは主に内痔核。特殊な専用機器で下部直腸粘膜にできた内痔核を上に押し上げ、機器で簡単に切除し、縫合します。手術後の肛門がきれいで、手術後の痛みが少ないのが特徴で、日帰り手術も可能ですが、日本では健康保険に採用されておらず自費となります。

 外痔核の場合、座薬や軟膏の塗布や温浴などにより多くの方が軽快しますが、なかなか治らない場合に手術が行なわれます。

痔瘻の場合、座薬や軟膏などの外用薬で出血や痛み、腫れなどの症状を和らげた上で切開処置しても、再発を繰り返し、なかなか自然治癒しません。手術で切り取るケースが、ほとんどとなります。 

痔の予防と痔を悪化させないための注意事項

1)お風呂は毎日入る

 2)肛門を清潔に保つ

 3)規則正しい便通習慣をつける

 4 )食物繊維を多くとり、便秘や下痢をしないように注意する

 5)トイレでは、強く息まない

 6)十分な休養と睡眠を心掛け、リラックスをはかる

 7)アルコールは適量、あるいは飲まない

 8)おしりを冷やさない

 9)長く座ったままの状態でいない

 10)便器は、シャワー付き・便座ヒーター付きを利用する

🇪🇷痔核(いぼ痔)

肛門周囲の静脈が膨らんで、こぶになった痔疾

痔核とは、肛門(こうもん)周囲の静脈が膨らんで、こぶになったもの。一般には、いぼ痔と呼ばれます。

肛門周辺の疾患の総称である痔は、虫歯に次ぐ第2位の国民病といわれており、成人の3人に1人がその症状に悩んでいるとされています。痔には大きく分けて3種類、この痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔瘻(じろう:あな痔)があります。痔核が最も多く、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

痔核には、直腸と肛門を隔てる歯状線を境にして、内側の直腸にできる内痔核と、外側の肛門部にできる外痔核があります。 内痔核は、肛門の内側にいぼがあるため、普通の状態では見ることも触ることもできません。外痔核は、外からいぼが見え、自分で触ることができます。

痔核の原因はさまざま考えられますが、直腸や肛門付近の静脈がうっ血したために、静脈が膨らんで、いぼ状のこぶができることが大きな原因です。

内痔核は、主に不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて腹圧が過度にかかることで、直腸の静脈がだんだんうっ血し、膨らんで発生します。立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかることも原因となります。

内痔核の初期状態では痛みなどがほとんどないので自覚症状がなく、知らない間に症状が進行していくという特徴があり、症状を大きく分けると4段階に分類されます。

第1段階では、排便時に出血し、トイレットペーパーに血が付着しているものの、痛みなどはほとんどありません。内痔核ができるのが肛門と直腸を隔てる歯状線の内側で、自立神経が支配していて痛みの神経がない場所に相当するため、痛みを感じにくいのです。

第2段階では、排便時の出血に加え、痛みを生じます。大きくなったいぼが肛門の外に飛び出す脱肛を伴う場合もありますが、脱肛した場合でも自然に戻ります。

第3段階では、排便時の脱肛が自然に戻らなくなり、自分の手で押し込まなければ戻らなくなります。また、排便時だけでなく、日常生活を送っている時で運動をしたり、力仕事をして腹に力が入った場合にも、脱肛するようになります。

第4段階では、常に脱肛している状態となり、粘液によって下着が汚れたりします。この段階になると出血や痛みを伴わないことが多くなり、逆に肛門周辺がかぶれたり、かゆみを伴うことが多くなります。 この脱肛したまま、手で押し込んでも戻らなくなってしまった状態を、嵌頓(かんとん)痔核と呼ぶこともあります。

一方、外痔核のほうも、排便時の強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。排便時だけでなく通常時でも激しい痛みを伴うことが多いものの、出血を伴うことはあまりありません。

内痔核を長期間患っていたり、内痔核の再発を繰り返している場合にも、この外痔核の症状として現れることがあります。さらに、血栓性の静脈炎である血栓性外痔核や血腫(けっしゅ)を併発すると、より激しい痛みを伴います。

痔核の検査と診断と治療

痔核(いぼ痔)などの痔では、何が原因で起こっているのかを見極めることが大切になります。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えていますので、ほかの疾患が隠れていないのかどうかを確認するためにも、肛門科の専門医を受診します。

どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

痔核の治療法は、内痔核か外痔核かで少し異なります。内痔核の場合は症状によっても治療法が異なってきますが、基本的にはまず生活習慣を改善することが大切になってきます。初期段階では、これに加えて塗り薬、座薬、内服薬を用いれば、多くの場合は症状が改善されていきます。

しかし、いわゆる第3段階~第4段階以上の内痔核の場合は、脱肛が自然に戻らなくなったり、常に脱肛している状態にあるため、手術が必要になることもあります。

手術が必要になった場合には、硬化療法(注射療法)、レーザー療法、結さつ療法(輪ゴム結さつ法)、ジオン(消痔霊治療)、ICG併用半導体レーザー療法、半閉鎖法、PPH法などが行われ、内痔核の症状が改善することが期待できます。

外痔核の場合は、生活習慣の改善、食生活の改善だけで治ることも珍しくありません。それに加えて、塗り薬や座薬 、内服薬などの治療薬、痛みが激しい場合には鎮痛薬を使用して治療していきます。手術が必要になることはほとんどありません。

また、外痔核に限らず痔核は肛門周辺の静脈の流れが悪くなり、うっ血していることが大きな原因ですので、肛門周辺を温めることも効果的になってきます。ただし、外痔核がすでに化膿(かのう)している場合には、温めすぎるとかえって逆効果になることもありますので、注意が必要です。

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。痔核は、悪化させない生活習慣が大切。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒、喫煙といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、痔核を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。便秘を解消し、軟らかい便が出るように食物繊維を多く取り、辛い刺激物の摂取を控えるなど、食事を見直すことも大切。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分に確保し、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫をします。入浴や座浴で、肛門周辺の血液の流れをよくするのも効果的。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。たばこはやめるようにします。

2022/08/26

🇵🇾縦隔炎

胸腔を左右に区切る縦隔に炎症が起こる疾患

縦隔炎とは、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔に炎症が起こる疾患。

縦隔は、左右の肺の真ん中にあり、縦に広がる円筒状の空間。前方を胸骨、後方を脊椎(せきつい)、下方を横隔膜に囲まれています。その中には、前部に心臓、大動脈、大静脈、胸腺(きょうせん)、横隔膜神経、後部には気管、食道、迷走神経が収まっています。

この縦隔炎には、急性型と慢性型があります。急性縦隔炎の多くは、間違って異物を飲み込んだり、内視鏡検査などで誤って損傷を受けたりして、食道の穿孔(せんこう)、破裂に続いて起こります。食道がんや食道憩室の穿孔に続いて起こることもあります。食道に穿孔、破裂が起こると、胸骨後方の激痛、発熱、嚥下(えんげ)困難、寒け、せき、呼吸困難、頸部(けいぶ)痛などが急性に現れます。重症になると、細菌が血液の中に入り、敗血症を発症する場合もあります。

慢性型の縦隔炎では、縦隔組織にひきつれができ、それが徐々に進行します。疾患の初期には無自覚、無症状であることもしばしばですが、そのうち血管が圧迫されて、顔や首の前側がはれます。これは腰をかがめたり、横になった場合に、より顕著になります。時には、胸部の圧迫感や喘鳴(ぜんめい)が聞こえることもあります。

縦隔炎の検査と診断と治療

間違って異物を飲み込んだり、内視鏡検査を受けて帰宅後に胸骨後方の激痛を感じた場合、食道がんの既往がある人が同様の症状を感じた場合には、すぐに内視鏡検査をした医師などに連絡をとります。

医師は速やかに、胸部X線を撮影します。胸部X線像では、異物が認められたり、縦隔陰影の拡大や縦隔気腫(きしゅ)がみられます。血液検査では、白血球数の増加やCRP(C反応性蛋白)が高値を示します。

急性型の縦隔炎の治療には、大量の抗生物質を使用します。化膿(かのう)している部位があれば、外科手術で取り除くことが必要となります。食道がふさがるまでは、絶飲絶食として点滴で栄養を補給します。原因が食道がんの場合、予後は極めて不良ですが、ほかの原因の場合ではおおむね治ります。

慢性型の縦隔炎の治療では、原因となっている疾患の治療と同時に、炎症に対する治療を行います。外科手術などで、縦隔に加えられた圧力を取り除くこともあります。

🇨🇱習慣性便秘

主に生活習慣が原因となって大腸の働きに異常が生じ、数日以上も便通がない症状が起こる慢性便秘

習慣性便秘とは、主に生活習慣が原因となって大腸の働きに異常が生じ、大腸内に便がとどまり、数日以上も便通がない症状が日常的に起こる慢性便秘。常習性便秘とも、機能性便秘とも呼ばれます。

大腸がん、大腸ポリープ、大腸憩室(けいしつ)、子宮筋腫(きんしゅ)など大腸や婦人科の疾患が原因となって、腸の内径が狭くなり、便が通りにくくなるために起こる器質性便秘といわれる慢性便秘は、除外します。また、旅行などで食事や生活環境が急に変化して起こる一過性の便秘も、除外します。

習慣性便秘は一般に、結腸性便秘(弛緩〔しかん〕性便秘)、けいれん性便秘、直腸性便秘の3つのタイプに分類されます。

結腸の緊張が緩んで、蠕動運動が弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる結腸性便秘

結腸性便秘は、大腸の大部分を占める結腸の緊張が緩んでいて、蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが弱いために、便を十分に送り出せないことから起こる便秘。弛緩性便秘とも呼ばれます。

この結腸性便秘で、日本人の常習化した慢性便秘の約3分の2を占めるとされています。慢性便秘は症状が1〜3カ月以上続く便秘で、旅行や生活の変化に伴う数日間だけの一過性の便秘と区別されます。

また、結腸の緊張の緩みと腸管の蠕動運動の低下のために起こる結腸性便秘と、排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる直腸性便秘とが重なって、慢性便秘が起こることもあります。

結腸性便秘になると、便が大腸を通過するのに時間がかかり、水分の吸収が必要以上に増加するために、出てくる便は太くて硬くて量が少なくなり、排便回数も少なくなります。

もともと排便に関与する腹筋が弱い女性に、結腸性便秘は多くみられます。腸が緩んで、便を送り出す力も便意を感じる力も弱まってしまうため、排便時に上手に腹圧をかけて息むことができなくなった結果、起こるものです。

高齢者、内臓下垂のある人、経産婦、長期臥床(がしょう)者、虚弱体質の人、体力が低下している人、運動不足の人などにも、結腸性便秘は多くみられます。高齢者では、入れ歯がかみ合わなかったり、歯の数が少なかったりして、食事量や食物繊維の摂取不足になる傾向から、大腸を刺激する力が弱まるとともに、腹筋などの筋力が弱まる結果、起こるものです。

また、下剤を使いすぎた場合も、薬の刺激で便意を催させるため、腸の機能が低下して結腸性便秘になることがあります。

結腸性便秘になると、腹痛などの強い症状を生じることは少ないものの、長く続くと、大腸に便が滞りガスがたまることによる腹部膨満感、腹部不快感、残便感、食欲の低下などの症状がみられます。頭痛や肩凝り、手足の冷え、倦怠(けんたい)感などの症状を伴うこともあります。

また、腸内細菌のバランスが崩れ、腐敗便がたまると、肌のトラブルや大腸がんの発生の引き金になることもあります。

腸の運動が活発になりすぎることで、腸がけいれん状態に陥って起こるけいれん性便秘

けいれん性便秘は、大腸が便を押し出す蠕動運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが活発になりすぎ、腸がけいれん状態に陥っていることから起こる便秘。特に男性に多い便秘です。

排便があっても、便の量が少なく、うさぎの糞のように固い塊状の便、あるいは細い便となるのが、けいれん性便秘の特徴です。

けいれん性便秘は、精神的なストレスや、感情の高まり、生活習慣の乱れ、睡眠不足が原因となって、自律神経のアンバランス、特に副交感神経が緊張しすぎることにより便秘が起こるものです。大腸の蠕動運動が活発になりすぎて、下行結腸にけいれんを起こした部位が生じ、その部位が狭くなって、便の正常な通過が妨げられます。

けいれんを起こした部位の上部は腸の圧力が高くなるため、腹が張った感じがして、不快感や痛みを覚えます。

排便後には少しは気持ちがよくなりますが、十分に出切った感じがなく、すっきりしないなど、残便感を生じる人が多いようです。

便秘の後に、腸の狭くなった部位より上のほうで水分の量が増えるため、水様の下痢を伴うこともあり、便秘と下痢を交互に繰り返す場合もあります。頭痛、めまい、不眠、動悸(どうき)などの自律神経症状を伴う場合もあります。

けいれん性便秘をほうっておくことで、腹部の不快感や腹痛を伴って便秘や下痢が長く続く過敏性腸症候群という、さらに重く、日常生活にも支障を来す便秘になる場合もあります。

けいれん性便秘は男性に多い種類の便秘なのですが、近年では女性でもかかるケースが増えています。女性も社会に出て、精神的なストレスを感じる機会が多くなった反動といえるかもしれません。

ストレスを感じているような自覚がなかったとしても、けいれん性便秘に当てはまる症状が出ている場合は、肛門(こうもん)科、消化器科、婦人科、あるいは心療内科を受診することが勧められます。

主に、排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる直腸性便秘

直腸性便秘は、主に排便を我慢する習慣が便意を感じにくくさせるために起こる便秘。単純性便秘とも呼ばれます。

直腸性便秘は、朝はぎりぎりまで寝ていて朝食抜き、トイレに行く時間もなく家を飛び出すような生活をしている人に多く、便意が起こっても、時間がないからと排便を我慢し続けた結果、便意を催さなくなるものです。あるいは、排便痛を伴うような肛門の疾患である痔(じ)のために、排便を我慢し続けた結果、便意を催さなくなるものです。

便が大腸の中で肛門に最も近い直腸の中に進入すると、直腸の壁が伸びる刺激で便意は起きますが、この便意は排尿感覚と違って、15分ぐらい我慢していると消えてしまうのが特徴。

排便を我慢することが度重なると、刺激に対する直腸の神経の感受性が低下して、直腸内に便が入っても便意が起こらなくなってしまい、大腸の蠕動運動も始まらないことから、直腸性便秘となります。そして、便が長いこと直腸にたまっていると、水分がどんどん吸収されて硬くなり、ますます出にくくなって、直腸性便秘が慢性化します。

便は太くて硬い、分割便となりやすいのが特徴で、その便が排出されると、その奥からむしろ軟らかい便が一挙に排出されることもあります。

直腸性便秘になると、便通不良で直腸の壁や肛門を傷付けたり、痔を悪化させるばかりでなく、腸内容物の腐敗などが進行して有害物質が生成され、下腹部不快感、膨満感、腹痛などの障害を来すこともあります。肌のトラブルや大腸がん発生の引き金になることもあります。

排便を我慢する習慣が直腸の神経の感受性を低下させて起こるほか、骨盤の底にあって下腹部の臓器を支えている骨盤底筋の機能の悪化で、直腸性便秘が起こることもあります。

骨盤底筋は排便時に緩むことで、直腸と肛門を真っすぐつなげる役割を持ち、その作用で便をスムーズに送り出すことが可能になっています。この骨盤底筋の機能が悪化して、排便時に緩まずに緊張した状態が続くと、便の通り道ができなくなり、便の排出が困難な状態になります。

しかも、便秘を治すために食物繊維や水分をいくら補給しても、通り道がなくては便は腸内にたまる一方で、便秘を逆に悪化させることになります。

さらに、女性だけにみられる症状で、度重なる出産や加齢などで直腸と膣(ちつ)の間にある直腸膣隔壁が弱って、排便しようと息んだ時に直腸の一部が膣側に膨らむ直腸瘤(りゅう)ができることで、便が直腸瘤に入り込んでうまく排出できずに、直腸性便秘が起こることもあります。直腸瘤に入り込んだ便は、どんどん水分を奪われて硬くなり、ますます排出しにくい状態になります。

それ以外に、手術で腸管を切除した場合や、下剤や浣腸(かんちょう)を多用した場合に、直腸の神経の感受性が低下して直腸性便秘が起こることもあります。

直腸性便秘に当てはまる症状が出ている場合は、肛門科、消化器科、婦人科を受診することが勧められます。

習慣性便秘の検査と診断と治療

肛門科、消化器科、婦人科、あるいは心療内科の医師による診断では、問診による病歴の聞き取り、腹部の触診、直腸の指診が重要です。

腹部の触診では、腹部腫瘍(しゅよう)の有無、腹筋の筋力をチェックします。けいれん性便秘では、特に左下腹部に圧痛を認めることが多く、時に圧痛のあるS状結腸を触知することがあります。

直腸の指診では、肛門部病変、肛門と直腸の狭窄(きゅうさく)あるいは腫瘍、直腸内の便の有無、便の潜血反応を調べます。けいれん性便秘では、直腸内に便を触れません。

通常の検査として、検便、検血、腹部X線(レントゲン)検査を行い、便秘が持続していたり腹痛がある場合には、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影、あるいは大腸内視鏡検査を行います。

腹部腫瘤、イレウス(腸閉塞〔へいそく〕)などが疑われる場合には、腹部超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。

さらに、けいれん性便秘の場合は問診で、要因となる自律神経症状や精神神経症状の有無、精神的ストレスの関与を確認します。性格・心理テストを行って、診断の決め手とすることもあります。

肛門科などの医師による結腸性便秘の治療では、食事指導、生活指導、運動、緩下剤といった保存的治療法が主体となり、これらをうまく取り入れて便通をコントロールするようにします。

日常の食生活で不足しがちな食物繊維を補うためには、市販の食物繊維サプリメントであるオオバコ、小麦ふすまなどを活用するのもよい方法です。運動で腹筋を鍛え、蠕動運動を活性化するためには、ウオーキングやジョギングを行うのもよい方法です。

緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心掛けます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。

肛門科などの医師によるけいれん性便秘の治療では、生活指導、食事指導、薬物療法、心身医学的治療が基本になります。精神的なストレス、不規則な生活、睡眠不足、慢性疲労の蓄積、睡眠不足など、けいれん性便秘を悪化させる要因が日常生活の中にあれば改善を試みます。

症状を悪化させる大量のアルコール、香辛料などの摂取は控え、便秘または下痢どちらのタイプにも有効な食物繊維は積極的に摂取することを勧めます。

薬物療法が必要な場合は、便の状態を調整する薬剤(ポリカルボフィルカルシウム)、腸管運動機能調節剤、漢方薬などをまず投与します。便秘に対して緩下剤、腹痛に対して鎮けい剤、下痢に対して整腸剤や乳酸菌、セロトニン受容体拮抗(きっこう)剤、止痢剤を投与することもあります。

緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤や、水分を吸収して便が膨張する膨張性下剤を主体として使用します。

自律神経失調症が認められる場合は自律神経調整剤、精神症状の強い場合は抗不安剤や抗うつ剤、睡眠剤などの併用を考慮します。心身医学的治療としては、精神療法、自律訓練法、認知行動療法などを行います。

肛門科などの医師による直腸性便秘の治療は、原因によって対処方法が変わります。

直腸の神経の感受性が低下したために起こる直腸性便秘の場合、生活習慣を改善することで治療の効果を期待できます。便意があれば我慢しないですぐにトイレに行くこと、そしてトイレに行く時間を生活リズムの中に組み込んで習慣化することで、便意を促すことができるからです。

また、便が硬いままだと便意が感じにくくなりますので、食生活も見直して、牛乳とバナナなどの果物だけの朝食でもよいので摂取を心掛け、水分補給と食物繊維を多く含む食品の摂取も心掛けます。腸を活動させるために、適度で定期的な運動をして血液の循環をよくするのも効果的。まず便秘を治せば、便意も正常に感じるように感覚が戻ってきます。あまりにもひどい場合には、座薬を適切に使うことでも症状の緩和がみられます。

骨盤底筋の機能が悪化したために起こる直腸性便秘の場合、排便時の姿勢や息み方を正して骨盤底筋を矯正する指導をしたり、座薬などを用いて治療します。

骨盤底筋を矯正する手順は、1)排便時には上体を前傾させて両ひじを太ももの上に置く(前傾姿勢になると直腸肛門角が開いて便がスムーズに直腸へ送られるため)、2)かかとをおよそ20度上げる(腹筋の力を腸にかけやすくなるため)、3)息む時は、腰に手を当ててせきをした時に動く筋肉である腹筋だけに力を入れる(肩や背中に力を入れて全身で踏ん張らないようにするため)。トイレに行った時に、この手順を繰り返すようにすることで、骨盤底筋を回復させることができます。

直腸瘤ができて排便が困難になる直腸性便秘の場合、軽度のケースでは、下剤や座薬で便通をコントロールする方法を取ります。指で会陰(えいん)や膣を押さえないと排便できなかったり、薬を飲んでも指でかき出さないと出ないほどひどい重度のケースでは、手術を考慮します。骨盤底筋の一部を縫い合わせて直腸瘤の前に堅い壁を作ることで、強く息んでも直腸が膣側に飛び出さないようにする手術です。

2022/08/25

🇻🇪十二指腸潰瘍

十二指腸の粘膜が傷付く疾患

十二指腸潰瘍(かいよう)とは、胃とつながる小腸の一部である十二指腸において、入り口に当たる球部の壁の上皮組織が傷付き、深くえぐられた疾患です。通常、より深層の組織も、症例ごとにさまざまな深さで損傷を起こしています。

主な原因は、精神的なストレスなどによる胃酸過多。ストレスは胃液の分泌を高進するため、食物を消化するために強力な胃酸が含まれている胃液と、この胃液から十二指腸壁を守るために分泌している粘液との不均衡が生じ、十二指腸の粘膜が侵されて、潰瘍が生じるのです。胃酸と同じ胃液の成分で、蛋白(たんぱく)質分解酵素のペプシンなどの働きの過剰も関与しています。

性別では、男性に圧倒的に多く、年齢的には、20~30代の比較的若い人に多くみられます。また、最近では、胃の粘液の中に生息しているヘリコバクター・ピロリという細菌が、十二指腸潰瘍の発症や再発に深く関係していることが明白になりました。

症状としては、みぞおちの痛み、重苦しさなどが、空腹時に起こります。食事をすると、一時的に症状が軽くなります。その他、悪心、嘔吐(おうと)、上腹部不快感、食欲低下、背部痛などもみられます。傷が深かったり、血管が表面に出てくると、潰瘍から出血が起こり、大量の血を吐く吐血や、真っ黒な便が出る下血が起こることもあります。

病気が重症になり、十二指腸壁の組織に穴が開くと、気の遠くなるような強い腹痛が出現し、その後、ショック状態となります。これを十二指腸の穿孔(せんこう)と呼び、このような症状が現れた場合は、緊急に手術が必要です。高齢になると痛みを伴わない場合もあり、注意が必要です。

十二指腸潰瘍の治療は薬物療法が基本

十二指腸潰瘍の診断では、X線検査、内視鏡検査、組織検査、血液検査が行われます。

X線検査では、造影剤のバリウムを使用し、潰瘍の状態や十二指腸の変形などを確認します。内視鏡検査では、胃カメラで十二指腸潰瘍部を直接観察します。組織検査では、内視鏡検査時に粘膜の組織片を採取し、組織診断をします。同時にヘリコバクター・ピロリ菌感染の有無を検査します。血液検査では、内視鏡検査の前にC型肝炎、B型肝炎、梅毒などの感染症の有無を調べた上、赤血球数、血色素、白血球数、ヘマトクリットなどを測定します。

十二指腸潰瘍の治療においては、薬物療法が基本となります。出血に対しては内視鏡的治療、穿孔などに対しては外科的治療、食事療法が行われるほか、精神的肉体的安静が求められます。

薬物療法では、潰瘍の状態によって医師が判断し、H2ブロッカー、プロトンポンプ阻害薬などの胃酸の分泌を抑える薬、十二指腸粘膜の組織を保護し回復させる薬、血流を高める薬などが処方されます。

薬を飲み始めると、すぐに痛みなどの症状はとれてきますが、すぐに潰瘍が治るわけではありません。症状がとれたからといって、薬を飲まなくなると、いつまでたっても潰瘍は治りません。潰瘍が完全に治るまで、薬を続けることが大切です。薬をきっちり服用すれば、約6週間でほとんどの十二指腸潰瘍は治ります。

ヘリコバクター・ピロリ菌の存在が確認できた場合は、除菌剤が処方されます。除菌すれば、ピロリ菌による潰瘍はかなり治りますが、定期的に検査を受けて、再発を繰り返さないようチェックをすることも必要です。

食事療法としては、急性期にはコーヒー、濃い茶、炭酸飲料、香辛料など、十二指腸粘膜を傷付けやすい食品を避け、牛乳、豆腐、野菜スープなどの消化しやすい食品を取るように指導されます。

普段の食生活の中では、バランスが整い、十分なカロリーのある食事を規則正しく取ることが重要です。睡眠を十分に取ることや、タバコをやめることも大切です。

🇨🇷宿便性大腸穿孔

長い間、腸にたまっている硬い便が原因で大腸に穴が開く疾患

宿便性大腸穿孔(せんこう)とは、便秘で硬くなった便が原因で大腸に穴が開く疾患。特発性大腸穿孔の一つです。

主に便秘で長い間、腸にたまって硬くなった便、あるいは体内で作られた糞石(ふんせき)といわれる結石により、腸管壁が圧迫され、粘膜の血流障害から壊死(えし)に陥り、腸管に穴が開きます。病理学的には、穿孔部は円形もしくは楕円(だえん)形で、辺縁に壊死および炎症を認めます。

腸管内圧の上昇などによって、大腸粘膜の一部が腸壁外へ嚢胞(のうほう)状に突出する大腸憩室や、大腸にできた腫瘍(しゅよう)などが原因となる大腸穿孔と比べると、比較的まれな疾患です。

宿便性大腸穿孔は、大部分がS状結腸と直腸に発生し、横行結腸、下行結腸、脾(ひ)湾曲部(脾曲部下行結腸)、大腸以外の盲腸に発生することもあります。

かつては極まれにしかみられませんでしたが、高齢者の便秘の増加で多くの病院で、宿便性大腸穿孔への対応を迫られるようになっています。高齢者に多いほか、長期臥床(がしょう)者や、便秘をもたらす薬剤常用者に多くみられます。また、慢性腎(じん)不全や強皮症、舌がん、胆汁うっ滞性黄疸(おうだん)などの基礎疾患を持つ患者にみられることも、まれにあります。

大腸に穴が開けば、その穴を通して体の中に、本来は排出されるはずの有害物質が流れ込むので、体にとっては深刻な事態となります。大腸は通常でも腸内細菌が多く、病原性のある細菌も繁殖しやすい部位であるため、大腸に穴が開くと、腹痛を起こし、すぐに重症の腹膜炎を起こします。敗血症を伴ったり、ショック状態に近かったり、腹痛が重篤で下血もあったりと、誰でも重症と疑えるような症状のものがほとんどですが、それほどの症状に見えないのに実際には重症というケースもまれに存在します。

宿便性大腸穿孔は、特に高齢者の便秘持ちに多くみられます。高齢で大腸の動きが落ち、水分をあまり摂取しない生活で便が出難く、かつ硬くなると、石のような便が腸を傷付けることもあり、スムーズに便が移動しないため、大腸の圧力が部分的に異常に高まり、宿便性大腸穿孔の原因となります。また、高齢者では大なり小なり動脈硬化に伴う腸の虚血もあるので、そうしたもろく、弱い部位に強い圧力が掛かることにより、宿便性大腸穿孔の原因となります。

抗精神病薬の常用による便秘も、宿便性大腸穿孔の一因とされています。抗精神病薬や抗うつ薬は、抗コリン作用を有するため便秘を起こしやすく、大腸穿孔の原因となります。

突然の腹痛、下血がみられたら、できるだけ早く内科、ないし消化器科の専門医を受診し、適切な治療を受けるようにします。緊急で手術して大腸管に開いた穴をふさぐことになりますが、死亡率は14%とされており、50%前後とされた従来に比較して救命率は上がっているものの、発症から24時間以上で死亡率は33%、48時間以上では50 %とされており、診断の遅れたケースでは予後不良となるため、早期診断と早期治療が重要です。

宿便性大腸穿孔の検査と診断と治療

内科、ないし消化器科の医師による診断は、便秘、腹痛、下血などの症状だけで容易に推定できますが、確定するために血液検査、腹部単純X腺検査、腹部CT(コンピュータ断層撮影法)検査を行います。

大腸管の拡張、大腸管内に硬便や多量の便塊を認め、本来は腸管内にとどまっているガスが開いた穴から腹腔(ふくくう)内に漏れ出るフリーエアー、腹水の貯留、腹膜炎、閉塞(へいそく)性腸炎、大腸管穿孔などを認めれば、宿便性大腸穿孔と確定します。

内科、ないし消化器科の医師による治療では、症状が急速に進み、もともと高齢でほかの疾患を持っている発症者が多いので、緊急で手術して壊死、穿孔した大腸管を切除し、管を挿入して大腸管の内容物を吸引するドレナージ、双孔式人工肛門(こうもん)の造設などを行います。

宿便性大腸穿孔の再発を防ぐためには、便秘を起こさないようにすることが大切です。規則的な生活や野菜類の多い食事、適度の運動を心掛けてください。医師の側でも、症状などに応じて便秘薬を処方します。

🇲🇽消化管カルチノイド

非がん性、がん性の混じった腫瘍で、消化管のホルモン産生細胞に発生

消化管カルチノイドとは、消化管の原腸(げんちょう)由来の臓器から発生する、非がん性ないしがん性の腫瘍(しゅよう)。原腸とは、受精卵が成長する過程で出現する消化管その他の原器です。

消化管カルチノイドは、胃、十二指腸、小腸、虫垂、直腸などの消化管内壁のホルモン産生細胞に発生します。また、カルチノイドは消化管のほか、膵臓(すいぞう)、精巣、卵巣、肺、気管支、胸腺(きょうせん)のホルモン産生細胞でも発生します。

がん性のカルチノイドは、一般のがんに比べて進行はゆっくりで、長い経過をたどります。転移することもまれです。全く症状を示さない非がん性のカルチノイドも、発生します。

消化管に発生したカルチノイドは、小型核を持つ形状をしていて、卵円形から円形をした細胞で構成されており、セロトニン、ブラジキニン、ヒスタミン、プロスタグランジン、カテコールアミンなどのホルモン様の生理活性物質を産生します。一方、膵臓、肺、気管支、胸腺などに発生したカルチノイドは、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン、抗利尿ホルモン、ガストリンなどを産生します。

カルチノイドが消化管や膵臓にできると、それが産生する物質は血液中に放出され、直接肝臓の門脈に入り、肝臓の酵素によって破壊されます。そのため、消化管にカルチノイドができても、一般的には肝臓に広がらなければ症状は現れません。

肝臓に広がった場合は、肝臓はこれらのホルモン様の生理活性物質が全身を循環し始める前に破壊できなくなります。腫瘍が放出する物質によって、カルチノイド症候群と呼ばれる種々の症状が現れます。また、肺、精巣、卵巣に腫瘍ができた場合も、産生するホルモン様の生理活性物質が肝臓を迂回(うかい)して血流に乗り、広く全身を循環するために種々の症状が現れます。

消化管カルチノイドのある人の多くは、他の腸管腫瘍に似た症状を示し、主に締め付けられるような腹部の痛みと、腸閉塞(へいそく)の結果として便通の変化が現れます。

カルチノイド症候群は腫瘍がある人の10パーセント以下に現れ、顔や首に出る不快な紅潮は最も典型的で、最初に現れることが多い症状です。血管拡張による紅潮は、感情、食事、飲酒、熱い飲み物によって起こります。紅潮に続いて、皮膚が青ざめることがあります。

セロトニンに起因して腸の収縮が過剰になると、腹部けいれんと下痢を生じます。腸は栄養を適切に吸収できないため栄養不足になり、脂肪性の悪臭を放つ脂肪便が出ます。心臓も傷害を受けて、下肢がはれます。肺への空気の供給も妨げられて、気管支ぜんそくに似た発作や息切れが現れます。セックスへの興味を失ったり、男性では勃起(ぼっき)機能不全になることもあります。

カルチノイド症候群による種々の症状が現れた場合は、消化器科、外科の医師を受診します。主症状が腹痛なので、内科を受診することがあるかもしれませんが、それでも問題はありません。

消化管カルチノイドの検査と診断と治療

消化器科などの医師による診断では、症状から消化管カルチノイドが疑われる場合は、尿を24時間採取して、尿中のセロトニンの副産物の1つである5ーヒドロキシインドール酢酸(5ーHIAA)の量を測定し、その結果から判断します。

この検査を行う前の少なくとも3日間は、バナナ、トマト、プラム、アボカド、パイナップル、ナス、クルミといったセロトニンを豊富に含む食べ物を避けます。ある特定の薬、せき止めシロップによく使われるグアイフェネシン、筋弛緩(しかん)薬のメトカルバモール、抗精神病薬のフェノチアジンなども検査結果の妨げになります。

腫瘍の位置を突き止めるには、放射性核種走査が有効な検査です。カルチノイドの多くはホルモンのソマトスタチン受容体がありますので、放射性ソマトスタチンを注射する放射性核種走査によって、腫瘍の位置や転移の有無が確認できます。この方法で約90パーセントの腫瘍の位置がわかります。

CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、動脈造影も、腫瘍の位置を突き止めたり、腫瘍が肝臓に転移していないかを確認するのに役立ちます。腫瘍の位置の診査手術が必要な場合もあります。

腫瘍が胃、小腸、虫垂、直腸など一定部分に限定していれば、外科的切除で治癒することがあります。腫瘍が肝臓に転移している場合、手術で治すのは困難ですが、症状が緩和されることがあります。腫瘍の増殖は遅いので、腫瘍が転移している人でさえ10〜15年生存することがしばしばあります。

進行した場合、一般のがんと同様に放射線療法や、抗がん剤による化学療法を含めた集学的治療を行います。ストレプトゾシンにフルオロウラシル、時にはドキソルビシンなどの抗がん剤の併用によって、症状を緩和できることがあります。オクトレオチドもホルモン産生や腸の収縮を抑制して症状を緩和し、タモキシフェン(ホルモン剤)、インターフェロンアルファ(生物学的応答調節剤)、エフロルニチンは腫瘍の増殖を抑制します。

カルチノイド症候群による紅潮を抑えるためには、フェノチアジン、シメチジン、フェントラミンが使用されます。

2022/08/24

🇨🇭小腸がん

小腸に発生するがんで、大変まれな疾患

小腸がんとは、胃と大腸の間にある消化器官である小腸に発生するがん。消化器管の長さ全体の75%パーセント、消化器管の表面積全体の90パーセントを占める臓器でありながら、小腸に発生するがんは大変まれです。

小腸にできる腫瘍(しゅよう)は、消化器管の腫瘍全体の1〜3パーセントを占め、良性に比べて悪性が多い特徴があります。組織学的には、小腸がんは腺(せん)がん、悪性カルチノイド、悪性リンパ腫、平滑筋肉腫の4つの型に大きく分類されます。腺がん、悪性カルチノイドは悪性上皮性腫瘍に、悪性リンパ腫、平滑筋肉腫は悪性非上皮性腫瘍に相当します。

小腸がんの発生部位は、十二指腸に最も多く、空腸、回腸には少ない傾向にあります。悪性リンパ腫に限っては、回腸に多くみられます。

原因は、はっきりとはわかっていません。原因となっている可能性が高いとされているのは、クローン病やセリアック病などの慢性炎症。一般に、小腸がんは女性に比べて男性に多くみられます

主な症状は、吐き気、嘔吐(おうと)、腹痛、腸閉塞(へいそく)、体重減少、貧血、出血、腹部膨満、腹鳴、腫瘤(しゅりゅう)触知、下痢など。特異的な症状がないために、診断が確定するまでに長期間経過してしまうこともあります。

小腸がんの検査と診断と治療

小腸がんは特異的な症状に乏しいため、進行した状態で発見されることが多くなっています。早期に発見するには、貧血や吐き気、腹痛などの症状がある場合は、胃、大腸、肝臓、胆囊(たんのう)、膵臓(すいぞう)などの検査を受け、異常を認めない時でも積極的に小腸の検査を受ける必要があります。

医師による診断では、X線による小腸全体の造影検査と小腸内視鏡検査が行われます。超音波検査、CT検査、血管造影検査なども行われ、腫瘍の大きさや性状、リンパ節転移、腹水などの有無、さらに肝臓や肺などへの転移の有無を調べます。

従来、消化器管のちょうど中央に位置する小腸全体を内視鏡で調べることが難しかったため、神経性疾患や腸過敏性症候群と誤診されるケースも多くみられました。近年では、カプセル内視鏡やダブルバルーン内視鏡の開発により、診断が容易になりつつあります。

しかし、小腸がんの早期診断、治療法の確立は、今日も重要課題です。

治療としては、外科的切除が基本です。進行度に応じて、がんから5〜10cmセンチ離して小腸部分を切除し、領域リンパ節も切除します。ポリープ状の早期がんの場合は、内視鏡的切除が可能です。外科的切除ができない場合には、緩和的切除術やバイパス手術などが考慮されます。

手術ができない場合には、抗がん剤による化学療法や、放射線療法が行われます。化学療法、放射線療法とも治療法は確立していませんので、現状では、結腸がんなど大腸がんに類似する療法が適用されます。

🇦🇩食中毒

食中毒とは、食べ物、飲み物の中に入った有毒物により、下痢、腹痛、吐き気、嘔吐(おうと)など急性の胃腸障害のほか、発熱、呼吸困難、けいれん、失神、脱水、腎(じん)臓障害などといった中毒症状を起こすものを指します。

その原因によって、細菌・ウイルス性食中毒と、非細菌・ウイルス性食中毒に分けることができます。

細菌・ウイルス性食中毒を起こす細菌には、カンピロバクター、サルモネラ菌、ブドウ球菌 、ボツリヌス菌 、腸炎ビブリオ 、 病原大腸菌、リステリア菌、ウェルシュ菌 、セレウス菌 、ノロウイルス、ロタウイルスなどがあります。

非細菌・ウイルス性食中毒には、メタノール、ヒ素、変質した油脂など化学物質によるものと、毒キノコ、毒フグなど植物や動物が持つ自然毒によるものがあります。

🇦🇩食道アカラシア(特発性食道拡張症)

食道下端の通過障害と、胸部食道の拡張が起こる疾患

食道アカラシアとは、食道と胃の接合部である噴門の神経節障害の結果、胸部の食道全体が広がる疾患。特発性食道拡張症、噴門けいれん症とも呼ばれます。

食道は飲んだり食べたりした物を口から胃へ通す25センチほどの管ですが、それ自体が蠕動(ぜんどう)運動という、物を運ぶための働きを備えています。食べ物がのどを通ると、反射的に蠕動運動が起こって次第に下方に伝わり、その動きの波に乗って飲食物は運ばれます。蠕動の波が噴門に達すると、ここが緩んで飲食物を胃へ通し、通した物を再び食道へ逆流しないように、噴門は締まります。

しかし、何かの原因で食道の蠕動運動が起こらなくなると、噴門が緩まなくなるアカラシアという状態になって飲食物が滞る結果として、胸部の食道が異常に広がる食道アカラシアを生じます。

原因は、はっきりとはわかっていません。食道の蠕動運動は自律神経の働きによりますが、現在のところ、噴門の粘膜の下にある筋層内の神経節細胞の機能異常であることまでしか解明されていません。精神的なショックが誘因になることもあります。

症状としては、食べた物が胸の辺りでつかえる感じがして、すぐに満腹感が起こり、たくさん食べられません。ほかの食道狭窄(きょうさく)疾患と異なり、固形物より液体、とりわけ冷水の通過が悪い傾向にあります。

食道の広がりが高度になると嘔吐(おうと)が起こりますが、特に夜間、寝ている時にに多い傾向があります。そのほか、胸の圧迫感や痛み、背中の痛みが出て、病状が進行すると体重が減少してきます。

よくなったり悪くなったして長期間続き、精神的に緊張した時、体調不良の時には症状が悪くなります。10〜50歳代に発症して中年にピークがあり、やや女性に多くみられます。

食道アカラシアの検査と診断と治療

食べ物のつかえ、胸痛、嘔吐などがあったら、内科、消化器科(胃腸科)を受診します。

医師による診断では、バリウムを飲んでのX線造影検査をしたり、食道内視鏡検査、食道内圧検査を行います。さらに、食べ物の長期残留によって起こる慢性食道炎、食道内容物が気道に入って起こる肺感染症、食道がんなどの合併もあるので、これらの検査も行われます。

食道アカラシアの治療としては、精神安定剤、鎮痙(ちんけい)剤、狭心症に対する薬剤などがある程度有効なものの、大きな期待はできません。

軽症、中等症のものに対しては、噴門拡張術が有効です。食道下端の狭窄部にバルーンという袋つきのゴム管を挿入し、これに空気、水を満たして膨らませ拡張を図ります。また、内視鏡で病変を見ながら、バルーンを狭窄部に当てて膨らませるバルーン拡張術は、検査と治療が同時に行え、よい結果を得ています。

重症のものに対しては、手術が行われます。 内視鏡下に狭くなった下部食道の筋層を切開して広げ、胃液の逆流を防止する修復をします。

ただし、食道アカラシアでは、食道に食物が停滞する時間が長いので、食物中の発がん物質が食道壁に接触する時間が長くなり、食道がんを合併する確率が高くなります。定期的に内視鏡検査を受けるようにします。

🇪🇸食道異物

食道内に停滞、はまり込んで、周囲に炎症を起こすもの

食道異物とは、何らかの原因で飲み込まれて、咽頭(いんとう)や食道内に停滞、はまり込んだもの。

異物の種類としては、乳幼児や小児では硬貨、おもちゃ、ボタン電池、針、くぎ、ピン、はしなどが代表的で、大人では魚の骨、入れ歯、錠剤のPTP(銀色のカバー)などが代表的です。時には、肉、サザエなどの食べ物が異物となることもあり、ステーキハウス症候群とも通称されます。

異物を飲み込んだと気付かない場合は、ものが飲み込めない、吐く、胸痛、吐血などの症状が出ます。幼児では、吐く、唾液が多いなどがあり、乳児では、授乳のたびに泣くなどの症状が現れます。

硬貨を飲み込んだ場合、大部分が胃まで落ち、小腸、大腸を通過して自然に肛門(こうもん)から排出されます。乳幼児や小児でボタン電池、鋭利なものを飲み込んだ場合、4〜8時間くらいたつと、食道組織の破壊が起こり、食道潰瘍(かいよう)から食道壁に穴が開く穿孔(せんこう)を起こします。

大人で入れ歯や錠剤のPTPなどの鋭利なものを飲み込んだ場合、食道粘膜に刺さると食道炎、潰瘍を生じ、胸痛、狭窄(きょうさく)感を起こします。食道壁に穿孔を起こすと、細菌感染を併発して、食道膿瘍(のうよう)、縦隔炎などの疾患を起こして、発熱、胸痛、腹痛さらには呼吸困難などの症状が出て危険となりますが、抗生物質の使用で防ぐことができます。最も危険なものは魚の骨で、大動脈へ刺さっての死亡例もあります。

食道異物の検査と診断と治療

成人では異物を飲み込んだ自覚のある人、また食物がつかえる、飲み込むと痛いなどの症状がある場合、乳幼児や小児では食べると吐く、つばを飲み込まない、何となくおかしい場合は、内科、小児科、気管食道科を受診します。

食道異物が疑われる時、医師は胸部・腹部X線検査で確かめます。硬貨、ボタン電池、入れ歯などは存在がわかりますが、X線で透過してしまうような錠剤のPTP、食べ物、おもちゃ、小さい針など撮影されないものもあります。この場合は、水溶性造影剤(ガストログラフィン)を使用して食道の造影を行う方法もありますが、小さいものは見逃してしまうことがあるため、治療目的も兼ねて、内視鏡検査が必要になります。

また、食道に病変がある場合は、食道に異物が停滞する症状がよく起こりますので、精密検査が望まれます。

異物が食道に停滞している場合は、大人は咽頭麻酔後、乳幼児や小児は全身麻酔後、小さいものであれば鉗子(かんし)でつまんで除去します。角が鋭利な錠剤のPTPなどであれば、内視鏡の先端に透明キャップなどを装着して除去します。

食道壁の穿孔の可能性がある場合、内視鏡的に摘出が困難な入れ歯などの場合は、全身麻酔下に食道を切開して摘出します。

🇪🇸食道炎

急性食道炎と逆流性食道炎

食道炎とは、食道の内面を覆う粘膜に炎症が起こった疾患。炎症が粘膜の下にまで深く及び、強いただれの起こった食道潰瘍(かいよう)も、本質的には食道炎に含みます。

この食道炎は、急性食道炎と逆流性食道炎に大別されます。急性食道炎は物理的刺激、化学的刺激、かび、細菌感染で起こり、逆流性食道炎は胃液、十二指腸液の食道への逆流によって起こります。

急性食道炎

急性食道炎は、熱い食べ物、冷たい食べ物の摂取した時や、魚の骨、義歯といった異物を飲み込んだ時、抗生物質、鎮痛剤、鉄剤、カリウム錠を就寝前に水なしで服用した時に起こります。

さらに、全身衰弱のある時にはウイルス性食道炎があり、抗生物質、抗がん剤の服用時には、かびの一種が繁殖して起こるカンジダ食道炎もあります。そのほか、酸性やアルカリ性の液体を誤って飲み込んだり、自殺の目的で飲み込んで起こることもあります。

軽いものは特に症状がないこともありますが、通常は食道に沿って灼熱(しゃくねつ)感があったり、胸焼けが起こります。食べ物が食道に残留している感じを伴うこともあります。

逆流性食道炎

正常な人では、胃の入り口である噴門が閉じて、胃の内容物の食道への逆流を防いでいます。たとえ多少の逆流があっても、食道の収縮運動で再び胃内へ戻す働きもあります。

しかし、手術で胃を全部切除した人は噴門の働きがなく、胆汁の逆流によるアルカリ食道炎を起こします。食道裂孔ヘルニアなどの疾患があると、寝たり、前かがみになったり、食後には、胃液が食道へ逆流して食道炎が起こります。

膠原(こうげん)病の合併症としてのものや、胃・十二指腸潰瘍でピロリ菌の除菌治療後に発症することもあります。しかし、逆流性食道炎の大部分は、胃酸逆流によるものです。

この胃酸逆流によるものは、胃食道逆流症(GERD)とも呼ばれ、食道裂孔ヘルニアがなくても起こります。高齢者に多く、近年増加しつつあります。

症状としては、胸焼け、胸痛が主なもので、狭心症と似ていることもあります。また、早朝の咽頭(いんとう)部の不快感、せきなどもあり、気管支ぜんそくにも似ていることがあります。重症になると、嚥下(えんげ)障害を起こすこともあります。

食道炎が慢性に経過すると、障害された食道粘膜上皮がなくなり、胃粘膜上皮で覆われることがあり、バレット上皮食道と呼ばれます。ここには食道がんが発症しやすく、注意が必要です。

食道炎の検査と診断と治療

食道炎の診断に際しては、内視鏡検査が最も重要な検査の一つです。それは、各食道炎により特徴的な内視鏡像を呈するからです。

急性食道炎の治療では、原因となっているものをやめ、重症の初期には絶食も必要です。軽ければ飲食を取り、食道粘膜を保護するように心掛けます。また、傷を治す薬を内服します。

逆流性食道炎の診断でも、内視鏡検査が重要ですが、近年、内視鏡検査でも診断のつかないケースがしばしばあることがわかったため、半日ないし1日の食道内の酸度を連続測定する24時間PH(ペーハー)モニターという方法を行うことがあります。そのほか、逆流を防ぐ噴門の働きや、逆流した胃液を再び胃内へ戻す収縮力が、どのくらいのレベルまで低下しているかを詳しく調べる食道内圧測定もあります。

逆流性食道炎の治療では、胃酸分泌を抑える薬が効果的。症状が長引いてる場合には、逆流をしないように手術をしなければならないこともあります。

日常生活における注意としては、脂肪食の制限、禁煙、就寝時に上体を高く上げて胃液の逆流を防ぐ、などがあります。腹部を圧迫しないこと、便秘を避けること、さらに太りすぎの人は標準体重に近付けること、なども大切です。

🇪🇸食道がん

高齢の男性に多くみられるがん

食道がんとは、のどと胃をつなぐ細長い管である食道に発生するがんです。消化管のがんでは胃がん、大腸がんほどではありませんが、比較的多くみられ、近年のがんの臓器別死亡率をみると、徐々に増加する傾向にあります。特に、50~70歳代の男性に多くみられます。

食道がんの中で最も一般的なのは、扁平(へんぺい)上皮細胞がんと、腺(せん)がんの2種類です。

直径およそ1・5センチ、長さ25センチの食道の内面は、粘膜の扁平上皮で覆われています。この薄くて平たい粘膜の細胞から発生するのが、扁平上皮細胞がん。食道の上部、および中央部に最も頻繁に発生しますが、食道に沿ってあらゆる場所に発生する可能性があります。日本では、食道がん全体の90パーセント以上を占めます。

一方、食道の内側の食道腺は、粘液などの体液を産生し、放出しています。この食道腺の細胞から発生するのが、腺がん。通常、胃に近い食道下部に発生します。日本では、食道がん全体のおよそ5パーセントを占めます。

食道がんの発生原因は、ほかのがんと同様、はっきりしたことはまだ解明されていません。しかし、女性の約7倍と圧倒的に男性に多く、喫煙者とアルコールの常用者、腺がんでは慢性の逆流性食道炎(バレット食道)のある人などに多いと見なされています。そのほか、香辛料などの刺激物、熱い食事や熱いお茶などを好む人にも、食道がんが多いといわれています。

早期がんでは症状のないことも

早期の食道がんと、進行した食道がんでは、その症状がかなり異なります。

早期では、症状のないことがしばしばあります。食べ物のつかえを感じる人は少なく、熱い飲み物、アルコール類、あるいは酢の物、ミカン類などの刺激物が食道を通過する際に、しみるのを感じることが多いようです。

進行したがんでは、食べ物を飲み込む際に途中でつかえる感じ、胸の辺りの異物感などがあり、固形物が飲み込みにくくなる嚥下(えんか)困難を生じ、飲み込む際に痛みが生じることもあります。

さらに進行してくると、腫瘍(しゅよう)によって食道が狭くなり、水分を取ることもできなくなります。食道に隣接する臓器に、がんが浸潤してくると、食道の症状以外の、いろいろな症状も出てきます。体重減少、吐血、嘔吐(おうと)、せき、声がれ、胸部痛、背部痛などです。

手術を主に放射線治療、化学治療も

進行した食道がんは隣接する他の臓器やリンパ節を侵し、末期には肝転移もみられるため、早期発見、早期治療が何より大切となります。比較的周囲に浸潤しやすい理由としては、食道が他の消化器臓器と異なり、外膜である漿(しょう)膜を有していないことが挙げられます。

医師が早期治療するには、粘膜がんの状態で発見することが必要ですが、この段階では、ほとんどの人に症状の自覚はみられません。粘膜がんの状態で治療されるような人は、上部消化管内視鏡検査を含めたスクリーニング検査で発見されています。人間ドックや検診で、胃の異常を指摘され、内視鏡検査を受けた際に、食道に発赤粘膜やわずかな凹凸病変などを指摘された人です。

ほかの消化管がんでも同じですが、今日では粘膜がんであれば内視鏡で治療できるようになっています。

進行がんになれば、外科的な手術療法が最も一般的な治療法となります。食道周囲のリンパ節を取り除き、顕微鏡検査でがんがあるかどうかを調べます。一部の食道が腫瘍により閉塞(へいそく)されている場合、食道を拡張させておくために金属チューブ(ステント)を留置することもあります。

食道切除術と呼ばれる手術で、食道の一部を摘出することもあります。飲食物を飲み込むことができるように、残っている食道の健常な部分を胃につなぎます。プラスチックチューブや腸の一部を利用して、食道をつなぐこともあります。

放射線療法では、高エネルギーX線やその他の種類の放射線を用いて、がん細胞を殺します。この放射線療法には、体外照射と体内照射という2つのタイプがあります。体外照射では、体外の機械を用いてがんに放射線を照射します。体内照射では、放射性物質を密封した針、シーズ、ワイヤ、カテーテルをがんの内部またはその近くに直接留置して、がんに放射線を照射します。放射線療法の方法は、がんの種類や病期によって異なります。

化学療法では、抗がん薬を用いてがん細胞を殺すか、細胞分裂を停止させることで、がん細胞の増殖を停止させます。口から服用したり、筋肉や静脈内に薬剤を注入する全身化学療法では、血流を通って全身のがん細胞に影響します。脊柱(せきちゅう)、臓器、腹部などの体腔(たいくう)に薬剤を直接注入する局所化学療法では、薬剤は主にこれらの領域中にあるがん細胞に影響します。化学療法の方法も、がんの種類や病期によって異なります。

レーザー療法では、強い光の細い光線であるレーザー光線を用いてがん細胞を殺します。 電気凝固療法では、電流を用いてがん細胞を殺します。

このほかに温熱療法、免疫療法も行われますが、これらの治療法は通常単独で行われることはなく、いくつかの治療法を適切に組み合わせて行われます。

🇲🇨食道憩室

食道壁の一部が外側へ袋状に突き出した状態

食道憩室とは、食道壁の一部が外側へ嚢胞(のうほう)状に突き出した状態。憩室は消化管の一部が嚢胞状に突き出したものを指し、嚢胞は液体を満たした袋を意味します。

十二指腸、大腸とともに、食道は憩室のよく発生するところで、嚢胞壁に筋層がある先天性の食道憩室と、後天性の食道憩室とがあります。

また、発生の切っ掛けにより、食道内圧の上昇が原因で食道壁の弱った部分が押し出されたものを内圧性憩室といい、食道の周囲で炎症が起こり、それに引っ張られて飛び出したものを牽引(けんいん)性憩室といいます。

内圧性憩室には、食道壁が弱い食道の入り口にできるゼンカー憩室や、横隔膜の上にできる横隔膜上憩室があります。牽引性憩室を起こす炎症には、リンパ腺(せん)炎などがあり、日本では結核性リンパ腺炎が多くみられます。

自覚症状があることは、ほとんどありません。自覚症状を起こすものは、きわめてまれに生じるゼンカー憩室。憩室内に食物が入り、袋が大きくなって食道を圧迫し、つかえ感や嚥下(えんげ)困難を感じることがあります。また、袋の中に食物が入ったまま横になると、食物が逆流して誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしたり、袋にある食物が腐って口臭の原因になります。

いずれの食道憩室でも、大きくなった憩室の中で炎症が起きたり、憩室の表面を覆う粘膜が破れた場合は、胸痛や出血が起こります。

食道憩室の検査と診断と治療

自覚症状のあることはほとんどないため、自分では気付かず、ほかの疾患で検査を受けた時に偶然、発見されるのが普通です。発見されても多くは経過観察で十分ですが、時には、がんや狭窄(きょうさく)がある付近が憩室様になることもあるため、つかえ感があったり、ふだんと違う感じがある際には、一度は専門医を受診することが勧められます。

医師による診断では、上部消化管X線検査や上部消化管内視鏡が行われます。上部消化管X線検査で、嚢胞状の突出が認められれば食道憩室と診断されます。内視鏡検査では、食道の入り口にある憩室は見えにくい場合がありますが、憩室内の粘膜上皮の観察には適しています。粘膜面の観察は、時に憩室内にがんを合併することがあるため必要です。

基本的には症状がないので、小さい憩室に治しては治療は行わずに、経過観察をします。嚥下痛がひどい場合、炎症を繰り返す場合、誤嚥の原因になる場合は、外科的な治療を行います。外科的治療には、憩室を切除する方法と、切除せずに縫い縮める方法があります。

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