食道壁の一部が外側へ袋状に突き出した状態
食道憩室とは、食道壁の一部が外側へ嚢胞(のうほう)状に突き出した状態。憩室は消化管の一部が嚢胞状に突き出したものを指し、嚢胞は液体を満たした袋を意味します。
十二指腸、大腸とともに、食道は憩室のよく発生するところで、嚢胞壁に筋層がある先天性の食道憩室と、後天性の食道憩室とがあります。
また、発生の切っ掛けにより、食道内圧の上昇が原因で食道壁の弱った部分が押し出されたものを内圧性憩室といい、食道の周囲で炎症が起こり、それに引っ張られて飛び出したものを牽引(けんいん)性憩室といいます。
内圧性憩室には、食道壁が弱い食道の入り口にできるゼンカー憩室や、横隔膜の上にできる横隔膜上憩室があります。牽引性憩室を起こす炎症には、リンパ腺(せん)炎などがあり、日本では結核性リンパ腺炎が多くみられます。
自覚症状があることは、ほとんどありません。自覚症状を起こすものは、きわめてまれに生じるゼンカー憩室。憩室内に食物が入り、袋が大きくなって食道を圧迫し、つかえ感や嚥下(えんげ)困難を感じることがあります。また、袋の中に食物が入ったまま横になると、食物が逆流して誤嚥(ごえん)性肺炎を起こしたり、袋にある食物が腐って口臭の原因になります。
いずれの食道憩室でも、大きくなった憩室の中で炎症が起きたり、憩室の表面を覆う粘膜が破れた場合は、胸痛や出血が起こります。
食道憩室の検査と診断と治療
自覚症状のあることはほとんどないため、自分では気付かず、ほかの疾患で検査を受けた時に偶然、発見されるのが普通です。発見されても多くは経過観察で十分ですが、時には、がんや狭窄(きょうさく)がある付近が憩室様になることもあるため、つかえ感があったり、ふだんと違う感じがある際には、一度は専門医を受診することが勧められます。
医師による診断では、上部消化管X線検査や上部消化管内視鏡が行われます。上部消化管X線検査で、嚢胞状の突出が認められれば食道憩室と診断されます。内視鏡検査では、食道の入り口にある憩室は見えにくい場合がありますが、憩室内の粘膜上皮の観察には適しています。粘膜面の観察は、時に憩室内にがんを合併することがあるため必要です。
基本的には症状がないので、小さい憩室に治しては治療は行わずに、経過観察をします。嚥下痛がひどい場合、炎症を繰り返す場合、誤嚥の原因になる場合は、外科的な治療を行います。外科的治療には、憩室を切除する方法と、切除せずに縫い縮める方法があります。
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