2022/08/31

🟦新型コロナワクチン打ち手、診療放射線技師と臨床工学技士にも拡大へ 厚労省が検討

 新型コロナウイルスのワクチン接種を巡り、一部で打ち手不足が生じたことから、厚生労働省は今後の感染症の流行時に、診療放射線技師と臨床工学技士の2職種がワクチンを接種することを特例として認める検討に入りました。31日の有識者検討会に拡大案を示し、異論は出ませんでした。

 ワクチン接種の筋肉注射ができるのは、医師法などで医師や看護師らに限定されています。ただ、コロナ禍では担い手が不足して接種が進まない場面がありました。厚労省は医師や看護師らが確保できない場合、特例として歯科医師や臨床検査技師、救急救命士でも接種ができる対応をとってきました。

 特例的に打ち手と認めるのは、医師や看護師らが対応しても、なお担い手の確保が困難と見込まれる場合で、一定の研修を受けることを条件とし、新型コロナに限らず新たな感染症が流行した時にも認める考えです。

 2022年8月31日(水)

🟦梅毒感染数、最悪ペースで増加 7200人超、年間1万人を超える恐れ

 性感染症の梅毒患者が、過去最悪のペースで増加しています。国立感染症研究所によると、今年の報告数(8月14日時点)は7241人。現在の方法で統計を取り始めた1999年以降で最多だった昨年(7983人)に7カ月余りで迫っています。急増の原因は不明ながら、今年は年間1万人を超える恐れがあり、関連学会が注意を呼び掛けています。

 梅毒は細菌性の感染症で、主に性的な接触でうつり、全身の発疹やリンパ節のはれなどの症状が出ます。感染しても症状がすぐに消えたり無症状だったりすることがあり、治療をせずに放置すると脳や心臓に深刻な症状が出ることもあります。

 日本性感染症学会によると、戦後間もない1949年には18万人近くの患者が発生したとの報告があります。抗菌薬の普及で大幅に減少し、1990年代は年間500人程度でしたが、2010年代以降は増加に転じました。

 感染症研究所によると、これまでに報告された7241人のうち、東京都が2090人で最も多く、大阪府は968人、愛知県が402人でした。北海道や神奈川など6道県でも200人を超えており、報告は全国で相次いでいます。

 今年の上半期に当たる7月3日までに報告された感染者の性別は男性が67%、女性が33%となっています。

 年代別にみると、女性では20歳代と30歳代が合わせて約75%を占める一方、男性では、20歳代が22・4%、30歳代が25・4%、40歳代が25・8%、50歳代が16・4%と、より年齢の高い層にも広がっています。

 近年増加している理由は不明ながら、インターネット交流サイト(SNS)で出会った不特定多数との性行為や、性風俗店の利用が要因との指摘もあります。

 日本性感染症学会は感染予防策として、性行為時にコンドームを着用することを推奨。不安な場合は保健所に相談し、疑わしい症状が出た場合は医療機関を受診することも呼び掛けています。

 梅毒の治療に詳しい医師は、「予防にはコンドームを使うことが最も重要だが、100%防ぐことはできないので、リスクのある性行為をした場合は症状がなくても検査を受けてほしい」と話しています。

 2022年8月31日(水)

🟦日本、初の結核「低蔓延国」入り 昨年の患者は過去最少

 厚生労働省は30日、国内で2021年に結核との診断を受けた患者は人口10万人当たり9・2人だったと発表しました。1950年代に調査が始まってから初めて10人を切り、世界保健機関(WHO)の分類で初めて「低蔓延(まんえん)国」となりました。

 明治から戦前にかけて結核は「不治の病」と恐れられ、1970年代の後半まで日本人の死因のワースト10に入っていました。特効薬の登場や栄養状態の改善、感染対策によって、アメリカやイギリスの水準に近付きました。

 厚労省によると、国内で2021年に結核と診断された患者は過去最少の1万1519人(前年比1220人減)、死亡したのは1844人(前年比65人減)でした。新型コロナウイルスの流行による受診控えや保健所の繁忙による接触者健診の制限などにより、減っている可能性も指摘されています。

 人口10万人当たりの新規患者数(罹患(りかん)率)は2000年に31・0人でしたが、2015年は14・4人と年々低下しました。日本は2020年に低蔓延国入りを目指していたものの、同年の罹患率は10・1人とわずかに上回って、「中蔓延国」のままでした。

 結核の典型的な症状は、たんのからむせきや微熱、だるさが2週間以上続くことです。ただ、高齢者ではせきがでないことが多く、発見の遅れにつながっています。放置すると、たんに血が混じるようになり、半数の人が亡くなります。

 2022年8月31日(水)

🇷🇺便の変化

●腸の働きについて

 人体の下半身からの出物として、腸からの大便という固形物、すなわちウンコがある。

 この大切な排泄物の出具合が悪くて、朝から「やれ下痢だ」、「また便秘だ」と、腹を抱えてうずくまったり、苦しんでいたのではいただけない。人間が健康を手に入れるには、やはり内臓の正常な働きが必要なわけである。

 そこで、腸の仕組みについて、まずは小腸から探っていこう。

 最近の生理学の教えるところによると、人間の小腸という消化器官は、取り出せば、七~八メートルにもなるという、とんでもなく長い管状の臓器である。自分の腹に手を当ててみても信じられないほどだろうが、通常、体の中では、およそ三メートルほどの長さに縮んで収まっている。

 なぜそんなに長いかといえば、人間が生きていくためには、胃で消化された食物から栄養やエネルギーを摂取、吸収しなければならないからである。 

しかも、小腸の内側は、絨毛(じゅうもう)の表面をまた絨毛でおおうという、無数の絨毛で埋め尽くされた構造で、必死に表面積を稼いでいる。その表面積は、何とテニスコート二面分に相当するという。さらに、一本の絨毛は約五千個の栄養吸収細胞からできており、小腸全体で千五百億個と推定される。驚くべきは、人体の機能、働きの素晴らしさである。

 こうした構造を持つ消化管である小腸は、胃から、かゆ状となって送り込まれた食物を、改めて消化したり、栄養を吸収し、大腸へ送り出す重要な役割を持つ。

 詳しくいうと、胃のほうから十二指腸、空腸、回腸に、小腸は大きく分けられる。それぞれが消化酵素を多量に含んだ腸液を分泌し、あるいは膵臓(すいえき)からの膵液、胆嚢(たんのう)からの胆汁も一緒に合わせて、最終的には、かゆ状食物から栄養を取り入れていくのである。

●栄養を吸収する小腸、便を形作る大腸

 かゆ状の食物が栄養のほとんどを吸収され、小腸を後にするのは、食後四~六時間といわれている。身ぐるみはがされた残滓、液状のカスとなって、大腸に到達する。

 盲腸から始まる大腸は、時計回りに上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸、そして直腸に区別できる。

 この大腸の大きな役割は、先の液状のカスから水分と電解質を吸収し、固形物、すなわちウンコを作ることである。

 ウンコは、下行結腸からS状結腸にとどまる。その後、ある一定の量にウンコが達した場合や、胃に食物が入った刺激で起こる大きな蠕動(ぜんどう)運動があると、ウンコは直腸に送られる。この時の圧力を自律神経が察知して大脳に伝えると、便意を催すという仕組みだ。

この間、およそ二十四時間から七十二時間。口にした食物がようやく、腸の末端の肛門(こうもん)から出てくるのである。

このようにして、我々日本人は、一日に平均で百五十グラムから二百グラムほどのウンコを出すのである。一日当たり百五十グラムとして、八十年間生きれば、単純計算で五トン近くの排出となる。

 では、出てきた我々人間のウンコは、なぜ一様に臭いのであろうか。実はみな、腸に住む細菌のせいである。

 特別な環境で出生、飼育された無菌動物のウンコは、栄養を吸収された食べ物の残りカスだけだから、臭くない。一方、我々のするウンコは普通、三分の一から二分の一が腸内細菌ともいわれており、特有のにおいは腸内細菌の分泌物が原因なのである。

 言い換えれば、人間のウンコは細菌のウンコによって臭い、ともいえるのである。

 ところで、人間は誰でも、一生に一度だけ臭くない通じをする。生まれて一番最初にするウンコが、それである。

 胎内で、母親の免疫系に守られている胎児は、いわば無菌状態で、腸にも細菌がいない。そのため、赤ちゃんが胎内でためていて、生まれてすぐするウンコは、臭くないのである。

 しかし、生まれた翌日のウンコには、すでに大腸菌を始め、腸球菌や乳酸桿菌(かんきん)など、一グラム当たり一千億個の菌が見られるのである。 

●便という体からの情報は役に立つ

 先に、日本人の一日のウンコの量は平均で、百五十グラムから二百グラムと述べたが、アメリカ人はせいぜい百五十グラムである。

 これは、日本人のほうが植物繊維を含む食べ物を多くとっているからなのだ。人間の腸は、植物繊維を分解する酵素を持っていない。だから、植物繊維はそのままカスとして出てくるのである。「便秘気味の人は野菜を食べよ」といわれるのは、繊維質が残ったほうが便がかさばって出やすくなるからなのだ。

 よって、便秘も日本人よりアメリカ人のほうが多いのである。植物繊維を多くとっているアフリカ原住民には、一日に七百五十グラムもの便をする種族がいるとのこと。 

 比較ついでに、日本人とアメリカ人の一物はどちらが臭いかというと、ずばり答えはアメリカ人である。

 一般の日本人の食事は、低蛋白、低脂肪、高炭水化物、高食塩、高繊維。欧米人はその逆で、高蛋白、高脂肪、低炭水化物、低繊維。ウンコのにおいで特に臭いインドールや硫化水素は、みな蛋白質のアミノ酸が細菌によって代謝されてできるのである。

 また、植物繊維には、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を増やし、同時に悪玉菌が繁殖する前に排泄をうながすという働きも期待できる。加えて、ウンコの量を増すということは、薄めるということでもあるから、蛋白を多く摂取するアメリカ人のほうが一物が濃い。すなわち臭いといえるだろう。

 しかし、最近は日本人の食生活も急速に欧米化しているから、排泄物もどんどん臭くなっているはずである。 

 もう一つ比較すると、動物はみんな排泄行為をするのに、お尻(しり)をふくのは人間だけである。が、動物も人間も、消化器官の仕組みはたいして変わらない。

 コロコロとした丸いウンコができるウサギは、腸が長いために、水分を絞りとってしまうのである。我々人間も、便秘をすると固くてコロコロした一物が出るのは、徹底的に大腸で水分を絞りとられた結果のようである。

 さて、体内で不要になって排泄された大便も、実は、体外に出た後も役に立つ存在なのである。今、世の中はリサイクル・ブームであるが、ウンコも負けてはいない。自然農法やウンコを飼料にした豚や牛の飼育が見直されているし、リンやビタミンB12を大量に含む資源としても注目されている。 

 リサイクルの極端な例は、先のウサギのコプロファジー(食糞症)である。ウサギは一日一回、普通の便とは違うコプロファジー用の便をするが、それを食べられないようにしてしまうと、衰弱して死んでしまう。ウサギは草や木の葉を一度体内のバクテリアで発酵させ、出てきたウンコを食べることで、不可欠な蛋白質やビタミンを補っているようだ。

 人間の場合はそういう極端なリサイクルは無理にしても、体からの黄金の出物は健康の指標として役に立つのである。

 ウンコはいわば食べ物の残滓であり、カスであるが、二十四~七十二時間にわたる自分の体の情報、とりわけ胃腸のメカニズムがはっきりと現れる。

 体からのメッセージの解読法を心得ておくのは、誰にとっても決して無駄にはならないはずである。

 基本となる正常便の量は、一日に百~二百五十グラム。形は太めのバナナ状で、色は黄褐色が理想的だ。水洗便所の水に浮けば、もういうことはない。一日にちょっと茶色いバナナ二、三本も出ていれば、内臓はたいそう健康である証拠。

 平均百五十~二百グラムといわれる便の組成は、約七十五パーセントが水分、残り二十五パーセントが固形成分であり、意外なことに便の大部分は水分なのである。 

●厄介な下痢が起こるメカニズム

 健康の証(あかし)の正常便に対して、誰もが経験したことがある便のトラブルは、便秘と下痢であろう。

 二つの厄介な症状は、大腸の機能が正常に働かなくなった時に起こる。食べ物の栄養の約九割を吸収してしまう小腸に、トラブルはほとんど見当たらないといわれ、問題が生じるのは残りカスをウンコにして排泄する大腸なのである。

 まず、いわゆる下痢の原因は、大腸が水と酸・アルカリ・塩類の電解質を正しく吸収できないことによる。正常な便は七十五パーセント程度の水分を含んでいるが、この割合がさらに高くなると泥状になったり、液状になったりするのである。水分を大量に含んだままでは、便は固まらないという単純な理屈だ。

 しかしながら、下痢に至る過程は、主に二つが挙げられる。

 一つは、ストレスなどが原因で、腸の蠕動運動が激しくなり、水分を吸収し切れないまま内容物が直腸に向かってしまうもの。試験の前になると決まって、トイレにゆきたくなったなどという経験がある人も、多いことだろう。

 二つ目は、膵臓疾患などで、腸粘膜からの水分吸収が妨げられた時に起こるもの。二日酔いの下痢もこれに当たり、アルコールの作用によって、膵液の分泌が後退し、脂肪が分解されずに大腸へ送られるために、水分の吸収が妨げられるのである。

 牛乳を飲むと下痢をしてしまう人も、多いだろう。これは乳糖不耐症と呼ばれ、日本人では五人に一人の割合で存在する。牛乳に含まれる乳糖は、小腸で分泌されるラクターゼという消化酵素によって分解され、吸収される。乳糖不耐症の人は、このラクターゼが少ないため、乳糖は大腸で細菌によって分解される。この時に作られた乳酸や炭酸ガスが、腸を刺激して、腹痛や下痢を引き起こしてしまう。  

 ともあれ、アルコールや牛乳によるものはじきに治ってしまうが、下痢をともなった腹痛が起こったら食中毒、左下腹部が痛み、頻繁に下痢をする場合は急性大腸炎の疑いがあるので、注意を促しておきたい。専門医の診断を仰ぐのが賢明である。

 また、激しい下痢などのため脱水症になったら、常識にこだわらず大いに水を飲むことを勧めたい。体の水分が尿になって排出されるのは健康な生理的現象であるが、この下痢をしたり、吐いたりというのは、脱水作用といって非生理的なものであるといわれる。

 ことに子供の体には水分の予備が少ないから、十回ぐらい下痢をすると脱水症状を起こしてしまうことが多い。下痢の時には、余計に水を飲ませるべきである。 

●便秘を極度に気にする必要はない

 一方の便秘の原因を探ろう。例えば、消化のいいものばかりを食べて、繊維が足りない場合、材料不足のためになかなか便にならない。排泄まで時間がかかるのである。それでも、腸は水分をとれるだけとろうと律義に働く。結局、水分のないカチカチウンコになってしまうのである。

 トイレにゆくのを我慢して、便意を無視し続けることも原因。おおげさにいうと、しまいには便意の感覚がマヒする。せっかくウンコの元が直腸まで到達しても、便意が起こらなければ、ウンコはそのまま滞ってしまうわけである。

 この便秘には、個人差がある。仮に二日、三日出なくても、便が硬くなく、不快感がなければ正常といえる。昔から三、四日に一回の通じを習慣にしてきたが、全く不都合を感じないし、ずっと内臓の健全と体の健康を維持し続けている、という百歳人もいる。 

 東京都新宿区にある日本百歳会が、平成五年に新百歳人になった四百六十五人を対象に実施したアンケート調査で、便通についての有効回答を見ると、「毎日」が百八十六人、「一日置き」が七十一人、「二、三日に一回」が二十七人。「便秘がち」の人も九十八人いた。

 高齢になるにつれて、食事の量も運動の量も減り、従って排便の回数も少なくなるのは当然としても、若い頃からずいぶん間遠な百歳人もいた。一般に、排便は毎日、一定の時間にあったほうがいいようにいわれるが、それは望ましい形であって、必ずしもそうでなくてもいいようである。

 女性の中には、一週間くらいウンコが出なくても平気な人さえいる。それでも本人が苦痛でないならば、便秘とはいえない。少ししか食べなければ、内容物は少ないわけだから、なかなか出ないということもあるのだ。

 極端な例を挙げれば、宇宙食のような無駄を省いた食べ物を食べると、便の量は二分の一から四分の一に減るという。 

 俗に、便秘を長く続けると、糞便が腐敗して毒素が吸収されるというようなことがいわれるが、必ずしもそうではないようである。

 むしろ、便秘をすると体に悪いとか、おなかに汚いものがたまっているという気持ちそのものが、精神に悪影響を与え、さらに便秘が続くということもある。

 皮膚などは精神の影響を大きく受けるから、便秘はいけない、便秘で毒素が体に回ると肌が汚くなるなどと気にすること自体が、肌を悪くしていて、不健康でザラザラした皮膚の感じを与えるようにも思われる。

 事実、誰にとっても、快便というのは気持ちのよいものであるし、体の汚いものが一気に出ていったような気分がする。しかし、便秘気味でも、極度に気にするのはかえって体を不健康にしたり、社会生活、対人関係に悪い影響を与え、いろいろなことがうまくゆかない原因になったりすることは、よく覚えていただきたい。

●便の色と形で内臓の機能障害を知る

 世の中で、こういった便秘の悩みを持つ人は、男性より女性に多いようである。女性は生殖のために子宮と卵巣という器官を抱えているが、けっこう重さがある上に、生理時には多少膨張したりするので、隣り合った腸の蠕動運動を圧迫して便秘につながるのである。

 男性の精子を作るための生殖器官は、性器周辺にコンパクトにまとまっているのに対して、女性の生殖器官は形も大きく、メカニズムも複雑になっている。従って、腸に影響があるのも致し方ないことかもしれない。生理的には、ホルモンバランスも影響してくることなのである。

ただ、医師たちは女性たちの便秘に対して、心理的な理由もあると指摘している。特に、働く女性に多い「独特な羞恥(しゅうち)心」だというのだ。朝、ろくに朝食もとらずに家を出る。朝食をとったとしても、トイレの時間をゆっくりと確保できない。実際、何よりも化粧を優先させる女性が多いのである。

 仕事場では、便意を催しても、会社のトイレでは嫌なのである。男性から見たら不可解なことかもしれないが、「ウンチしている」というのは同性にも悟られたくないのだという。我慢していると、そのうち便意が消える。そんなことを繰り返しているうちに、習慣性の便秘になることも少なくないというわけだ。 

 習慣性の便秘はともかくとして、一般の人の便秘の主要原因は、結局、水分の吸収異常であった。このトラブルを防ぎ、大腸の機能を正しく保つには、食物繊維と乳酸菌が不可欠である。

 食事で野菜や海草を多くとるように心掛け、広く出回っているヤクルト菌、ビフィズス菌などの乳酸菌を含む飲料やヨーグルトも利用したらよいだろう。乳酸菌は乳酸や酢酸を作り出し、腸内を酸性に保つ。この酸性の刺激が腸の蠕動運動を盛んにし、感染予防にも一役買う。

 大腸の調子が整えば、立派な便が規則正しく出る。踏ん張れる。快調な毎日を送れるのである。  

 さて、下痢や便秘のほかにも、自分の体からの黄金の出物は、その色や形で胃腸のメカニズムの異常を知らせてくれる。自分の便を見れば、病気を発見できる場合もあるのだ。

 ふだんの正常便と違う白っぽい便が出たら、肝臓や胆嚢などの異常によって、胆汁が腸に送られなくなったことを意味する。要するに無着色のウンコだ。

 次に、脂肪分をとりすぎれば、すっぱいにおいのベタベタした便になるし、白いブツブツがあり、しかもプカプカ浮くウンコが出たら、脂肪便である。これは、膵臓から分泌され脂肪を分解する膵液の不足によるもので、特に高カロリー食を好む美食家は用心が必要。  

 ほかに、肉眼で見る便の色で注意したいのが、血の混ざった便。これには二種類あって、一つは真っ赤な血便。これは肛門に近いところの出血によるもので、粘液便なら直腸ガン、それ以外なら痔(じ)の疑いがある。

 もう一つは、同じ出血でも黒い便が出る場合。こちらは胃や小腸、大腸が出血し、それが腸管を通過するうちに酸化して黒色になるというパターンである。その他、黒い便は、肉食を好む人にも多いという。

 形で注意したいのは、大腸ガンで腸狭窄(きょうさく)を起こせば、便が細くなること。

 いきなり病院に担ぎ込まれる前に、毎日自分の目で、便からのメッセージを読み取る能力を養っておくのが、内臓へのいたわりというものである。

🇭🇺マタニティーブルー

■短期間に消失する気分障害■

産後2~3日目になると、訳もなく涙が出てきたり、家族のちょっとした言葉が気に障って悲しくなるのが、マタニティブルーと呼ばれる気分障害です。

出産を境にして、今まで盛んに分泌されていた女性ホルモンが急激に低下し、ホルモンの状態が激変するために、自律神経系に影響をおよぼし、本人の自覚のあるなしにかかわらず感情の変化として現れます。

そのほかにも、出産や慣れていない育児の疲れ、睡眠不足、家で独り育児に取り組まなければならない孤独感や不安などのストレスが重なり、感情が不安定になるのです。

主な症状は、情緒の不安定と涙もろさで、不眠や食欲不振、軽いうつ状態になったりもします。しかし、ピークは産後2~3日目で、産後2週間以内に治まります。短期間に消失する一過性の正常な反応であり、産後のうつ病とは違うものと考えられていますが、マタニティブルーから産後うつ病に移行するケースも。

産後うつ病のほうは、出産直後の数週間~数カ月の時期にみられるもので、強い悲嘆と、それに関連する心理的障害が起きている状態です。原因はいまだ、よくわかっていません。女性ホルモンの一種、エストロゲンとプロゲステロンが急激に減ることが一因、とも考えられています。

🇧🇬委縮性鼻炎

鼻腔の粘膜が委縮し、鼻腔が広がって乾燥が進む鼻炎

委縮性鼻炎とは、慢性鼻炎の一種で、鼻腔(びくう)の粘膜が委縮し、鼻腔内が極度に広くなって乾燥が進む鼻炎。

正常な鼻腔は血管が密集した粘膜に覆われており、広い表面積と多くの血管があることで、外から入ってくる空気を素早く温め、加湿することができます。また、正常な鼻腔の粘膜には、線毛と呼ばれる極めて細かい毛のような突起を持っている多列円柱上皮という細胞があり、この多列円柱上皮は適度な量の粘液を分泌し、ほこりなどの異物粒子をのどの奥へと運んで取り除く働きをします。

委縮性鼻炎になると、多列円柱上皮細胞が失われ、皮膚のような重層扁平(へんぺい)上皮という細胞に置き換わって、鼻腔の粘膜は薄く硬くなります。

そうなると鼻腔の中は潤いがなくなって乾燥するために、かさぶたが多量に付着するようになります。かさぶたは汚く、雑菌が増えることで悪臭がするようになります。

鼻出血を繰り返すことも多く、鼻詰まりや頭痛が起こります。症状が進行すると、嗅覚(きゅうかく)も鈍くなり、臭いがわかりにくくなります。しばしば、のどが乾燥し、痛みや違和感が出ます。

鼻腔に引き続く副鼻腔の粘膜も、線毛を持ち粘液を分泌する細胞でできた粘膜で覆われており、委縮性鼻炎になると、副鼻腔の粘膜も次第に委縮してゆくため炎症や感染が起こりやすくなり、慢性副鼻腔炎の症状も加わってきます。

委縮性鼻炎が生じる原因はいまだ特定されていませんが、ビタミンAやDの慢性的な不足で抵抗力が低下することで、発症すると考えられています。また、女性の場合はホルモン異常により、さまざまなホルモンのバランスが崩れることで、発症することもあると考えられています。

さらに、慢性副鼻腔炎の根治手術で鼻腔内の骨や粘膜のかなりの部分を切除した人が、委縮性鼻炎を発症することもまれにあります。

昔に比べて近年は、委縮性鼻炎は随分少なくなっています。その理由としては、生活習慣の変化や栄養改善による鼻腔の粘膜の変化、抗生剤治療の発達による感染症の軽症化と短期化、アレルギー性鼻炎の増加など、さまざまな要因が考えられています。

委縮性鼻炎の長く症状が続いた場合は、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

委縮性鼻炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、特別な検査は行わずに、鼻鏡を用いて鼻の入り口から鼻腔内を調べ、鼻腔が広くなっていて、臭いの強いかさぶたが多量に付着していることで、委縮性鼻炎と確定します。

ウェゲナー肉芽腫(にくげしゅ)症、悪性リンパ腫(しゅ)、梅毒などと区別するために、血液検査や病理検査を行うこともあります。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、かさぶたができることを防ぎ、悪臭をなくし、感染を抑えるために、抗生剤含有の軟こうや、副腎(ふくじん)皮質ホルモンなどのステロイド剤含有の軟こうを鼻腔の中に塗布、あるいは噴霧します。鼻腔、副鼻腔を洗浄することもあります。

同時に、ビタミンA剤やビタミンD剤、あるいは女性ホルモンのエストロゲン剤も内服して、鼻腔内の粘膜が粘度を取り戻せるようにします。冬の空気が乾燥する季節には、保湿効果のあるワセリン基剤の点鼻剤を塗布して、鼻腔内が乾燥しないようにします。

広くなった鼻腔を狭くするため、粘膜や骨の移植手術を行うこともまれにあります。移植手術を行うと、鼻を通る空気の量が少なくなり、かさぶたの形成が減るという効果があります。

🇺🇿太田母斑

褐青色の色素斑が、まぶたから額、頬にかけてできる皮膚の疾患

太田母斑(おおたぼはん)とは、片側のまぶたから額、頬(ほお)にかけてできる、境界の不明瞭な褐青色の色素斑。眼上顎部(がんじょうがくぶ)褐青色母斑とも呼ばれます。

母斑は、皮膚の一部分に色調や形状の異常が現れる状態で、あざとも呼ばれ、皮膚から盛り上がることはありません。

太田母斑は、詩人や作家としてのペンネーム木下杢太郎(もくたろう)でも知られる皮膚科の医学者・太田正雄東大教授が、1939年(昭和14年)に初めて報告した疾患で、日本人など東洋人に比較的多くみられます。

通常は顔の片側に色素斑ができますが、両側にできる場合もあります。また、生後間もなく色素斑ができる早発型と、小児期や思春期に色素斑ができて徐々に拡大する遅発型の2種類があります。

さらに、色素斑は顔面の皮膚だけでなく、眼球結膜や口の粘膜、鼓膜にできることがあります。

色素斑は、三叉(さんさ)神経の第1・第2枝の支配領域にみられ、青みを帯びた色素斑の中に褐色調の小さな斑点が散在した状態で現れます。皮膚の表面は滑らかで、盛り上がったりしません。

原因は、メラノサイト(メラニン細胞、メラニン形成細胞、色素細胞)にあります。通常は表皮にあって、メラニンという皮膚の色を濃くする色素を作り出すメラノサイトが、深い部分の真皮の上層に存在し増殖しているために、皮膚が褐青色に見えてしまいます。

色素斑が拡大したり、色調が濃くなったりすることもあり、自然に消えることはありませんが、悪性化を心配することもありません。

なお、同様の色素斑が肩から上腕に見られることがあり、これは伊藤母斑と呼ばれます。

本人が特に気にしなければ、太田母斑の治療の必要はありません。見た目が気になるようなら、カバーマークによる化粧で色を隠すのも選択肢の一つですが、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科を受診し色素斑を除去することも勧められます。

太田母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による診断では、部位や色素斑の様子から視診で判断します。皮膚をほんの少し切り取って病理組織検査を行うと、真皮上層に色素含有メラノサイトが認められます。

また、異所性蒙古(もうこ)斑、青色母斑などの皮膚疾患と鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし形成外科の医師による治療では、悪性化の心配はないため、見た目の問題で気になるならQスイッチレーザー治療により、色素斑を除去します。

Qスイッチレーザーには、ルビーレーザー、アレキサンドライトレーザー、ヤグレーザーなどがあり、レーザーの種類により多少の効果や経過の違いがみられます。特定のレーザー光線を照射すると、皮膚の中にあるメラニン色素に対してのみ反応するため、周辺の正常な皮膚組織へのダメージを極力抑えながら、色素斑の元になっているメラニン色素だけを破壊することができます。

いずれのレーザー治療も痛みを伴うため、麻酔シール、注射などを使用して痛みの緩和を行います。治療対象となる太田母斑の色が濃く、範囲が広い場合は、1〜2回のレーザー照射だけは不十分で、およそ3カ月の間隔で、少なくとも5~6回の照射を行います。

治療時期は何歳からでも可能ですが、小児の場合は全身麻酔が必要なため3歳ごろから開始するのが普通で、早期から開始するほうが効果が高いといわれています。成人の場合でも、かなり色調が改善し、完全に色素斑を除去できることもあります。

眼球の色素斑はレーザー照射ができないので、現在は治療法がありません。

2022/08/30

🟩全国で新たに15万2546人の新型コロナ感染確認 前週比5万5939人減

 国内では30日午後6時10分の時点で、大阪府で1万6364人、東京都で1万4219人、愛知県で1万3785人、兵庫県で7007人、福岡県で6881人、神奈川県で6775人など全47都道府県と空港検疫で、新たに15万2546人の新型コロナウイルスへの感染が発表されました。

 前週の同じ曜日(23日)より5万5939人少なく、6日連続で前週の同じ曜日を下回りました。

 また、大阪府で30人、東京都で26人、福岡県で18人、埼玉県で15人、愛知県で14人、長野県で14人、北海道で13人、神奈川県で13人、長崎県で13人、千葉県で11人、京都府で9人、愛媛県で9人、奈良県で8人、沖縄県で8人、高知県で8人など計319人の死亡の発表がありました。死亡の発表は16日連続で200人を超えました。

 国内で感染が確認された人は、空港検疫などを含め1879万7522人、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて1879万8234人となっています。

 感染して亡くなった人は、国内で感染が確認された人が3万9604人、クルーズ船の乗船者が13人で、合わせて3万9617人です。

 厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認された人で、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けるなどしている重症者は、前日より10人減って30日時点で618人となっています。

 大阪府は30日、新たに1万6364人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。先週の火曜日と比べて6560人少なくなりました。これで大阪府内の感染者の累計は190万4044人となりました。

 また、30人の死亡が発表され、府内で感染して亡くなった人は合わせて5989人となりました。

 重症者は29日から1人増えて82人です。

 2022年8月30日(火)

🟩東京都の新型コロナ感染1万4219人 前週比7551人減、26人死亡

 東京都は30日、都内で新たに10歳未満から100歳以上の1万4219人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

 1週間前の火曜日(23日)より7551人減り、9日続けて前の週の同じ曜日を下回りました。30日までの7日間平均は1万7722・1人で、前の週の72・4%となりました。

 30日の新規感染者を年代別にみると、最多は30歳代の2460人。以下、40歳代が2371人、20歳代が2329人と続きました。10歳未満は1846人、65歳以上は1537人でした。

 ワクチンの接種状況別では、2回接種済みが9214人、未接種は2572人でした。

 病床使用率は50・7%。また、都が緊急事態宣言の要請を判断する指標を30~40%としている重症者用病床使用率は30・7%。「人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO<エクモ>)を使用」とする都基準の重症者は、前日より5人減って36人でした。

 一方、都は、感染が確認された50歳代から100歳以上の男女、合わせて26人が死亡したことを発表しました。

 また、確認された感染者のうち、他県内の陽性者登録センターなどを通じて申請があったのは247人で、都外から持ち込まれた検体を都内の医療機関で検査したのは258人でした。

 東京都の累計の感染者数は291万423人となり、累計の死者数は5293人になりました。

 2022年8月30日(火)

🟩ファイザー製ワクチン、5~11歳の3回目接種での使用を承認 厚労省

 アメリカの製薬大手ファイザー製の新型コロナウイルスワクチンについて、厚生労働省は5歳から11歳までの子供の3回目接種で使用することを正式に承認しました。5歳から11歳までの3回目接種のワクチンが承認されるのは、国内では初めてです。

 5歳から11歳の子供のワクチン接種は、今年2月からファイザー製のワクチンを使って1回目と2回目が行われています。

 厚労省は、29日夜に開いた専門家の部会で、5歳から11歳までの3回目の接種でファイザー製のワクチンを使用することを了承し、30日正式に承認しました。

 ファイザーによりますと、海外で2回目の接種から約6カ月たった5歳から11歳の子供に3回目の接種を行ったところ、ウイルスの働きを抑える中和抗体の値が約6倍に増えたということです。

 厚労省は3回目の接種について、大人と同様に2回目を打って以降少なくとも5カ月以上間隔を開けることとする方針で、接種を開始する時期などについて今後、議論を行う予定です。

 5歳から11歳の子供のワクチン接種を巡っては、オミクロン型への効果や安全性に関するデータが集まってきたとして、接種を受けるよう保護者が努めなければならない「努力義務」とするための政令が9月にも閣議決定される見通しです。

 2022年8月30日(火)

🇧🇬肉芽腫性鼓膜炎

外耳と中耳の境界にある鼓膜に、肉芽やびらんが生じる慢性の炎症疾患

肉芽腫(にくげしゅ)性鼓膜炎とは、外耳と中耳の境界である鼓膜の薄い膜の外側表面に炎症が起き、肉芽やびらんの生じる慢性疾患。

鼓膜は、耳に入ってくる音を振動に変換し、耳小骨経由で内耳に伝える働きのほか、外耳と中耳を境界する役目をしている器官です。その構造は、直径約9ミリ、厚さ0・1ミリの薄い膜状で、耳の入り口から約3センチのところに位置しており、外耳道のほうに向かって開いたパラボラアンテナのような形態をしています。

体の中には、いくつかの膜状構造物がありますが、鼓膜は常に外界に交通しているため、外力に弱い器官といえるでしょう。

この肉芽腫性鼓膜炎は、細菌感染が主な原因といわれていますが、まだはっきりしません。子供よりも20〜40歳代の成人女性に多く、両側の耳に起こることはまれです。

肉芽腫性鼓膜炎が引き起こされると、鼓膜の表皮が異常に増殖して、赤く柔らかい粒状の結合組織である肉芽や、赤くただれているように見えるびらんを生じます。

軽度の痛みを覚え、慢性的で頑固な耳垂れが続きます。肉芽などの影響によって鼓膜が肥厚化した場合には、耳の奥のほうのかゆみ、耳の詰まった感じや耳鳴り、難聴を覚えることもいます。

鼓膜の奥にある中耳の慢性炎症の影響を受けていることもあります。

肉芽腫性鼓膜炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、顕微鏡やファイバースコープで、鼓膜を拡大して観察します。観察すると、20パーセントに小さな穴を認め、中耳の慢性炎症の影響を受けていることがあります。

中耳の疾患が疑わしい場合は、側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査なども行うことがあります。また、耳垂れを調べて起炎菌を検出し、その感受性検査を行います。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、耳垂れの起炎菌の感受性検査の結果から、適切な抗生剤を耳浴、点耳などで局所投与します。耳垂れは短期間で止まるものの、しばらくするとまた再度、耳垂れが出てくることもあります。

根本的に耳垂れを治すためには、鉗子(かんし)で耳垂れを出す肉芽を切除し、トリクロリールなどの薬品で焼灼(しょうしゃく)することもあります。肉芽を切除すると、その部位に小さな穴があることがありますが、通常は非常に小さく、自然に閉じます。

薬物療法のみでなく、適切な焼灼などの局所処置が重要で、週1〜2回根気よく繰り返すことで徐々に軽快していきます。

肉芽がなくなると耳垂れの繰り返しの再発はなくなりますが、時に肉芽が再発することがあり、その場合は同じ局所処置が必要となります。とりわけ、中耳に炎症が隠れていると再発しやすくなり、治療が長期にわたることもあります。

肉芽腫性鼓膜炎の予防法は、解明されていません。いったん発症した場合は、耳に水が入らないように気を付けることが重要です。

🇷🇴鼻詰まり

■慢性的な鼻詰まりの原因は?

●空気の通る道が狭くなる状態

 私たち人間の鼻の中は、鼻腔(びくう)と呼ばれる空洞が広がり、鼻腔の表面はひだ状の粘膜で覆われています。鼻には、この鼻腔上部の粘膜上皮に約五百万個ある嗅細胞でにおいを嗅ぐ嗅覚機能のほかにも、呼吸作用を効率よく行うための役割があります。

 まず、鼻から吸い込まれた冷たい空気がそのまま肺に送られとよくないので、鼻甲介の血管の収縮によって、空気を吸い込んだ瞬間に三十度くらいまでに温度を上げる暖房の機能、加温機能があります。

 その次は加湿機能で、鼻の中の粘膜は水分が九十五パーセント前後あり、入ってきた乾燥した空気に湿り気を与え、喉などの粘膜を保護するわけです。

また、鼻腔内の数百万本も生えている繊毛によって、外から侵入するホコリなどを体外へ排出する浄化機能という役目も、鼻は果たしています。

 しかしながら、風邪のウイルスや異物などが鼻粘膜の内部にまで入り込み、さらに細菌感染も加わって炎症を起こすと、粘膜が腫れるために過剰な粘液が分泌されて、空気の通る道が狭くなります。この状態が、鼻詰まりなのです。

 長く続く鼻詰まりで圧倒的に多いのはアレルギー性鼻炎で、それに続くのが慢性副鼻腔炎、鼻中隔わん曲症。それらが重なっているケースも、多く見られます。

 鼻詰まりの症状がひどいと、日常生活にも支障が出るので、適切な対処をする必要があります。注意したいのは、嗅覚障害や頭痛、睡眠不足などを招いたり、乾燥した空気を吸うために呼吸器系に悪影響を与えたりすることです。集中力が欠ける原因や、口臭の原因にもなります。 

●多くみられる鼻詰まりの原因

 それぞれの病気や症状により、薬物療法や手術などが医師によって行われます。

アレルギー性鼻炎

 鼻から吸い込んだ異物に対して免疫システムが過剰に反応するため、すなわちアレルギー反応を起こすために、鼻腔の粘膜が腫れて、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりを招きます。透明で水のような鼻水が出るのが特徴ですが、少し黄色い場合も。

 代表的なのは、スギ、ヒノキなどの花粉によって起こる花粉症。そのほかにハウスダスト、ダニ、カビなどが原因となりますので、原因物質を避けることが大切です。 

慢性副鼻腔炎(蓄膿症)

 副鼻腔とは、鼻腔に続いて周囲の骨内に陥入している四対の小さい空洞です。鼻詰まりが長引くと、副鼻腔の中でも炎症が起こり、うみがたまります。この状態が3カ月以上続くのが慢性副鼻腔炎で、急性副鼻腔炎と違って治りにくいとされています。黄色く粘り気のある鼻汁が特徴で、うみが口臭を引き起こすこともあります。

 耳鼻咽喉科では、定期的に鼻腔や副鼻腔内を洗浄し、噴霧薬や内服薬などによる治療が行われます。内服薬では、粘膜によい影響があるとされるマクロライド系の抗生物質が最近、一般的に使われ、少量ずつ、効果を確かめながら2、3カ月服用します。ひどい症状のケースでは、手術も。 

鼻中隔わん曲症

 鼻中隔とは、鼻腔を左右に分ける隔壁であり、板状の薄い骨からなっています。前方は軟骨で、周囲は三つの骨で構成されていますが、それぞれの骨の成長速度の違いから、隔壁がわん曲します。日本人の約85パーセントは、左か右、どちらかに曲がっているとされています。

 その曲がり方がはなはだしい場合は、鼻詰まりの原因となります。鼻中隔わん曲症は、10歳から15歳の成長段階に発症する鼻の構造異常。鼻中隔が飛び出ている側だけでなく、反対側も粘膜が厚くなって、左右とも鼻詰まりになりますが、比較的安全な手術で治ります。 

●その他の鼻詰まりの原因

鼻たけ

 鼻たけとは、鼻の粘膜にできる寒天状のポリーフ。慢性副鼻腔炎が進行してできるケースが多く、空気の通り道が狭くなるために、鼻詰まりを招きます。軽い副鼻腔炎で、大きな鼻たけができるケースもあります。

 長い期間をかけて作られるので、口呼吸が習慣化している人では、鼻詰まりの自覚症状がない場合もあります。 

アデノイド肥大

 アデノイドとは、鼻の奥にある扁桃(へんとう)組織です。幼児期に大きくなり、10代以降は自然に小さくなります。

 そのため、小学生までの子供にはアデノイド肥大は珍しくなく、鼻詰まりがはなはだしかったり、炎症を起こしたりしなければ問題はありませんが、大きいケースは手術も行われます。 

腫瘍

 鼻の中に、鼻たけに似たブヨブヨした腫瘍がいくつもできると、鼻詰まりの原因になります。腫瘍はほとんどが良性ですが、まれには鼻腔がん、副鼻腔がんなどの悪性の腫瘍もあります。

 片側の鼻が常に詰まっていたり、少量の鼻血が度々、出たりするケースでは、耳鼻咽喉科の診察を受けましょう。 

■心掛けたい「鼻詰まり」対策

●鼻うがいの実行を

 鼻の炎症を抑えるには、鼻うがいも効果的です。蒸留水か生理食塩水で鼻の中を洗い流す際には、市販されている鼻うがい専用の器具を使うのがよいでしょう。

 なお、蒸留水は薬局で購入できますが、生理食塩水は医師の処方箋が必要となります。 

●鼻は強くかまない

 鼻は優しくかみましょう。鼻の奥には耳に通じる穴があり、強く鼻をかむと、その圧力で鼻にたまったうみが耳へと流れ、中耳炎を起こす病原菌となってしまう可能性があるからです。 

●点鼻薬は一日一回まで

 血管収縮性(粘膜収縮性)の点鼻薬は粘膜を縮ませますので、すぐに鼻詰まりに効きます。しかし、効果は一時的で依存性もあるものなので、使用は鼻詰まりで眠れない時などに限って、一日一回までに。

 長期にわたって乱用すると、作用しにくくなったり、かえって使用前よりも粘膜が腫れる点鼻薬性の鼻炎を起こすので、注意が必要です。 

●風邪をひかない 

 風邪をひかない、ひいたらこじらせない。二点が、鼻詰まりへの最も有効な対策です。鼻への刺激を減らすには、マスクが有効。空気が乾燥すると、鼻の粘膜は炎症を起こしやすいため、特に冬期には有効です。

 また、花粉症の人も早めにマスクの利用を。スギ花粉の平均的な飛散開始時期は、九州や四国の南部が2月上旬、関東南部が2月中旬、関東北部が2月下旬、東北地方は3月で、気温の上昇に伴って増加します。

●食材で風邪を予防する

 風邪のウイルスに打ち勝つためには、ビタミンA(お勧め食材は春菊、ホウレンソウ、ニラなどの青菜類)、ビタミンC(お勧め食材はジャガイモ、サツマイモ、カボス、スダチ、ユズ)、ビタミンE(お勧め食材はゴマ、豆乳、カボチャ)と良質なたんぱく質が必要です。

ビタミンAは、鼻やのどの粘膜を強化します。ビタミンCは、体内の抗酸化力を高めます。ビタミンA、Cの働きを助けるのが、ビタミンEです。

体を温めることも大切で、鍋料理がお勧め。体を温める効果があるショウガ、ネギ、ニンニク、唐辛子などの香辛野菜を、料理に添えることも忘れずに。

🇵🇱口臭

●口臭の原因を探る●

 「口臭」とは口から出る嫌なにおいを意味しますが、本人は家族や親しい友人に指摘されて、気付く場合がほとんどです。鼻と口はつながっているため、においに慣れてしまい、口臭があっても自分ではなかなか気付きません。

 人間の口の中の粘膜や歯肉の代謝は盛んで、通常は500億を超す口腔細菌が、不要になった細胞や死んだ細菌、壊れた白血球などのタンパク質を分解しています。この時に、臭気が発生します。

 また、人間の口は物を食べる器官ですから、食事をした後には、食べカスが歯垢(プラーク)として残ってしまうのは、当たり前のことです。この食べカスは、口の中の細菌によって簡単に腐敗、発酵を起こし、さらに細菌を培養します。これが、口臭をもたらしているといえます。

 においの元となる物を飲食したり、薬剤を摂取したりすると、その成分の血中濃度が上がって、呼気がにおう場合もあります。さらに、内科的疾患から、呼気にアンモニア臭がする場合もあります。

 口臭の主な成分は、揮発性硫黄化合物(VSC)です。例えば、メチルメルカプタン、硫化水素、ジメチルサルファイドなど。

 ちなみに、人が悪臭と感じるにおいは・・・

スカトール

屎尿(しにょう)のにおい。アンモニア、アミン類などの窒素化合物も、この系統

イソ吉草酸

靴下のムレたようなにおいや、油の腐ったようなにおい

メチルシクトペンテノロン

砂糖が焦げたようなにおいや、卵が腐ったようなにおい。口臭の原因となる揮発性硫黄化合物は、これに含まれる

 気にしすぎて「口臭がある」と思い込む人も、最近では増えています。口臭対策は、まず原因を知ることから始まります。口の中の疾患が心配なら、歯科を受診する必要があります。

●口が臭う原因は?●

 口臭の原因は、大きく分けて3つあります。

■生理的な口臭

 誰もが持っているにおいで、基本的には気になりません。しかし、清潔を保つ習慣を怠ると、そのにおいが悪臭へと変わっていきます。

 その特徴は、

・歯垢(プラーク)の80%は、細菌。口の中の細菌は、食べカスから口臭を作り出す

・口の乾きを覚えるほどの緊張時には、口臭が出やすくなる

・朝起きた時と食後3時間経過した時分に、ピ−クになる 

 生理的な口臭は、解消する方法があるので、悩むことはありません。 

 ■病気が原因の口臭

 病気が原因となるものは、「口の中の病気」と「その他の病気」に分けられます。ただ、口臭の原因の8割以上が「口の中の病気」、すなわち歯科口腔領域の疾患で、中でも多いのが歯周病と見なされています。

「口の中の病気」

虫歯や歯垢によるもの

食べカスが溜まったままだと、虫歯になりやすい。この虫歯が、悪臭を放つ。特に、神経が腐った歯があると危ない

歯周病(歯肉炎)・歯槽膿漏(しそうのうろう)などによるもの

歯肉が炎症を起こし、それがひどくなっていくもの。初期症状の歯肉炎なら、小学生でもかかることがある

炎症があれば、組織が破壊され、タンパク質の分解が増大して、臭気物質が増える。「歯磨きで出血する」、「口が粘っこい」などの症状があれば、要注意

 

義歯や金属冠ブリッジなどの義歯垢

義歯などにも、歯垢はつきやすい。人工のものだからと安心しないで、きちんとした手入れをすること

舌苔(ぜったい)

舌にできる苔状の舌苔の成分は、歯の表面につく歯垢(プラーク)とほぼ同じで、これが細菌によって分解されて、臭気を放つことが多い

舌苔自体は疾患ではないが、体調に大きく左右され、過労や、消化器系の不調、発熱などで多くなる。例えば、慢性胃炎の時は汚れた厚い灰白色の舌苔になり、熱性疾患の時は厚い褐色の舌苔になる

「その他の病気」

代謝系疾患

甘酸っぱいにおいがする時は糖尿病、ねずみ臭いにおいがする時は肝臓の病気、を疑ってみること

消化器系疾患

胃腸の働きが悪いと、げっぷのようににおいが上がってくる。胃腸が爛れていると腐敗臭がすることも

呼吸器系疾患

気管支炎や肺化膿症などでも、においが出ることがある

その他の疾患

だ液が出にくくなる病気(膠原病やシェーグレン症候群など)や、鼻・咽頭などの病気からも、におうことがある

■食べ物による口臭

 生理的な口臭、病的な口臭でない場合、においの強い食べ物(ニンニク、ニラ、ネギ、ラッキョウなど)や、たくあん、納豆などを食べた後、口臭がひどくなることがあります。

 また、アルコールやたばこ、あるいは薬剤も同じ。これらは、単に口の中に残っていてにおうだけでなく、いったん体内に取り込まれたにおいの元になる成分が胃を経て、腸で消化されると、におい成分が移行した血液を介して全身を循環し、肺でのガス交換で呼気として吐き出され、口臭になります。

 よって、口の中だけをきれいにしていてもにおうことがあるので、注意が必要です。

●対策へのアドバイス●

■口の中を清潔に

 口臭予防に関しては、口の中を清潔に保つのが一番の基本です。歯磨きをきちんとして、歯垢や歯石をできるだけ除去しましょう。

 歯磨きをする際に出血したり、歯茎に赤みがあったりするのは、歯周病の初期症状ですので、早め歯科を受診するようにしましょう。

舌苔が多くなったら、ガーゼなどでぬぐい取って下さい。傷付きやすいので、気にして何回も繰り返さないように。 

■鼻で呼吸する

 鼻が悪い場合や、口の周りの筋肉の力が足りない場合には、口呼吸になりがちです。この口呼吸をしていて口が乾くと、においは強まります。歯肉が乾燥して菌の影響を受けやすくなるためで、唾液には洗い流すだけではなく、抗菌作用もあるわけです。

 起床時に口臭が強いのも、睡眠中は極端に唾液の分泌が少ないために、自浄作用が低下するせいです。また、加齢に伴って代謝が悪くなり、唾液の分泌が減少して口臭になりやすくなります。

 さて、口の周囲の筋肉不足の場合は、訓練によって口呼吸を改善することが可能ですので、医師の指導で試みて下さい。鼻閉の場合は、鼻の治療が必要になります。 

■食べ物で消臭を

口の対策

 緑茶に含まれているカテキンには、消臭効果がはっきり証明されています。ハーブオイルにも、効果があるとされています。繊維質の多い食べ物は、食べカスを取り除き、噛むことで唾液の分泌を促します。

腸の対策

 日頃から、バランスのよい食生活を心掛けることが大切です。特に、食物繊維には整腸作用があります。 

■規則正しい生活を

 口臭は、体調に大きく影響されます。規則正しい生活を心掛けましょう。

 また、食事をすると唾液が出て、食べ物をかき回し、菌もタンパク質も掃除されるので、口臭予防になります。忙しい朝も、きちんと食事を取りましょう。

🇵🇱歯周病

■歯周病とはどのような病気なのか?■

歯を取り巻く組織にかかわる歯周病は、生活習慣病の一つとされていて、40歳以上の日本人の約8割が悩んでいると見なされています。歯と歯茎(はぐき)の間の歯肉に、細菌の塊(プラーク)が異常繁殖して炎症を起こし、歯肉炎→歯周炎→歯槽膿漏へと進行する病気です。

歯肉の腫れ、出血、膿が出ていると口臭を伴います。放置しておくと、最終的には歯が抜けてしまいます。

歯周病の原因となる細菌として、十数種類が発症に深く関係しております。歯茎より上で繁殖して、歯肉炎を起こす好気性菌(酸素が必要な細菌)としては、アクチノマイセス・ビスコーサス、アクチノマイセス・ネスランディ、アクチノバジルス・アクチノマイセテン、オイコネラ・コロデンス、キャプノサイトファーガ・オクラセアなどがあります。

歯茎より下で繁殖して、歯周病を起こす嫌気性菌(酸素が不要な細菌)としては、ポルフィノモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インテルメディア、アクチノバチラス・アクチノミセテムコミタンス、ポルフィロモナス・ジンジバーリス、フソバクテリウム・ヌクレアトゥム、トレポネーマ・デンティコーラなどがあります。

最近の研究によれば、これらの歯周病菌が全身の病気を引き起こすのではないかと疑われ、糖尿病、ガン、心筋梗塞などとの関連性も明らかになっています。

歯周病菌が血管に入り込み、体内を循環するために糖尿病の悪化の原因、心筋梗塞の引き金になります。歯周病の患者さんは、歯周病のない患者さんに比べ致命的な心臓発作を起こす危険が約2.8倍、早産の確率が7.5倍高いようです。

歯周病を原因とする炎症が、心臓の冠状動脈に脂性沈殿物を付着させ、血管腔が狭くなります。そこで、心筋梗塞や心内膜を起こしやすくなるのです。誤嚥性肺炎(黄色ブドワ球菌や緑膿菌)も起こすようです。

■歯周病の予防法と治療法■

1日1度10分間のブラッシングを行いましょう。特に歯と歯茎との間をブラッシングしてプラークを除去することが、必要となります。糸ようじなどのデンタルフロスで歯と歯の間を掃除することも、大切です。歯科医で定期的に検診を受け、歯垢や歯石を除去しましょう。

また、常に口の中を清潔にし、細菌の繁殖を防ぐために偏食をなくし、規則正しい食事をとりましょう。過労、ストレス、睡眠不足、喫煙もなくしましょう。

歯周病の薬物治療としては、嫌気性細菌に有効な抗生物質を歯周ポケットに直接注入する方法があります。麻酔をしてメスで切開し、同時に抗生物質の投与を行います。この他、レーザーで細菌数を減少させ、炎症組織を焼き取る手術も行われています。

最近では、3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム、歯科薬剤到達システム)と呼ばれる方法が実施されています。歯型に合わせた樹脂製のマウスピースの内側に薬剤を塗り、1日5分間歯にかぶせることにより歯周病菌を殺菌して減少させ、歯周病をなくす治療法です。

🇪🇪肩凝り

●肩凝りは筋肉からのSOS信号

 現代病とも称される「肩凝り」。その直接の原因は、筋肉への酸素の供給不足と老廃物の蓄積です。しかしながら、筋肉の酸素不足などを招く原因となると、実に多種多様です。肩凝りを治す方法も、原因によって違ってきます。

 肩凝りの原因の8~9割は、使いすぎや年齢、体形などによるものです。若い時から肩の凝りやすい人は、ミドルになるに従って、ますますひどくなり、「背中に鉛の板を背負っているようだ」と表現する人もいます。

 ミドルの肩凝りの原因は、運動不足とストレスがほとんどだといわれています。肩凝りになりやすい人は、運動不足の上に、ストレスが加わり、筋肉に血流が行かなくなって、一種の循環障害を起こしてしまいます。

 また、高血圧や動脈硬化など他の病気が原因で、肩が凝る場合もなきにしもあらずですので、肩凝り以外の症状がある場合には、それぞれの専門医に相談してみましょう。

 一例を挙げれば、めまい、立ちくらみ、頭痛、背中の痛み、耳鳴り、胸が締め付けられるような痛み、などを感じる場合には、肩凝り以外の病気が隠れていることがあります。とりわけ慢性的な症状の場合は、運動不足とストレス以外の病気を疑ったほうがいいでしょう。「いつもと違う痛み」が「いつもより続く」場合には、注意しなければいけません。

 以下、肩凝りを起こす主な原因を紹介します。心当たりのある方は、肩凝りだけでなく、おおもとの原因を治すことが大切になります。

●肩凝りを生じる原因は複雑

 原因

     解   説

     具 体 例

肩凝りになりやすい体形

 肩凝りを起こしやすいのは、右の具体例のようなタイプ。

 例えば、肥満体の人は、頭や腕など肩の筋肉が支えるべきお荷物が重くなる。やせすぎの人は、肩の筋力が衰えているので、凝りを招きやすい。

 このような体形的に肩の筋肉に負担がかかりやすい人のほか、なで肩、猫背などのように、ふだんの姿勢が負担をかけていることもある。

・肥満体

・極端なやせ形(肩の筋肉が貧弱)

・なで肩(首や肩の筋肉が貧弱なことが多い)

・いつも背中が丸まっているような姿勢をとる

・首を下げ、下を向いたような姿勢をとることが多い

肩に無理な姿勢をとることが多い

 筋肉は、緊張させたり、緩めたりすることで、血液の循環を助けている。ところが、長時間にわたって、右の具体例のような姿勢をとっていると、筋肉の緊張状態ばかりが続いて、筋肉の血行が悪くなる。

 デスクワークが多い人などは、その典型。

・腹ばいになって本を読む

・寝転がってテレビを見る

・新聞を床に置いて座ったままで読む

・足を組み、前かがみでデスクワークをする

・枕が高すぎたり、軟らかすぎたりする

冷え症である

 寒い所にいると、私たちは自然に、前かがみの姿勢で肩をすくめ、体を硬くしてしまう。

 また、このような姿勢をとらないまでも、体が冷えると血管が収縮して血行が悪くなってしまう。

・冷え症である

・夏場、クーラーの効きすぎる場所で仕事をしている

・冬場でも、営業の外回りなどで長時間、外にいる機会が多い

精神的なストレスに弱い

 精神的に緊張したり、悩んだり、怒りなどを感じる時、筋肉内の血管も知らず知らずのうちに収縮している。

 このため、特に筋肉を使わなくても血行が悪くなり、筋肉に老廃物がたまってしまう。

・仕事や日常生活で、不安や悩み、怒りを感じることが多い

・責任感が強く、真面目(まじめ)で几帳面(きちょうめん)

・ちょっとしたことでも真剣に悩んだりしてしまう

・データを取り扱う仕事など、間違えないよう神経を使うことが多い

・ノルマや納期などに追われ、気が重くなることが多い

目が疲れている

 眼鏡やコンタクトレンズが合わないために、しっかり見ようとして無理な姿勢をとることで肩凝りにつながるケース、また、目の疲れや頭痛と連動して肩凝りが起こるケースも多い。

・眼鏡やコンタクトレンズがピッタリ適合せず、見えにくい

・パソコンに向かって長時間、仕事をすることが多い

肩や首の骨や関節、筋肉の異常

 年齢を加えるとともに、首、肩などの骨や関節、筋肉に何らかの異常が起きて神経を圧迫し、痛みやしびれを起こすことがある。

 具体例のような症状のある人は、整形外科などに相談してみることがお勧め。

・肩凝りだけでなく、痛みやしびれを感じることが多い

・腕を上げると肩が痛む

内臓系の病気を患っている

 内臓系の病気の自覚症状の一つとして、肩凝りが起こることも多い。例えば、狭心症、心筋梗塞、肺がん、糖尿病、高血圧、低血圧、胆石(胆のう炎)、更年期障害、貧血、胃炎、胃潰瘍など。

 肩凝りのほかに、右の具体例のような症状がいくつかあるようなら、内科医に相談してみよう。

 また、がんでできた腫瘍のせいで、肩凝りと同じような感覚があることもあるし、顎関節症、噛み合わせの悪さ、歯周病など歯の病気が原因になることもある。

・頭痛、頭が重い、めまい、耳鳴り、動悸、手足の冷え、体全体がだるい、急に胸が締め付けられるような痛みに襲われる、背中や右肩などの痛み、立ちくらみ

・歯や顎の異常

 

●温めるべきか、冷やすべきか

 冷やすと「すーっ」として気持ちがいいため、冷やすものと思われがちだが、基本的には温めること。外傷性の打ち身や捻挫などで、熱を持っている場合には、早期なら冷やすこともあるが、「じん」とくるような肩凝りの場合には、とにかく温めて血液の循環をよくしたほうがいいでしょう。

🟩新型コロナ抗体薬を薬事承認へ 厚労省、発症予防薬では初

 厚生労働省の専門部会は29日、イギリスの製薬大手アストラゼネカ製の新型コロナウイルス抗体薬「エバシェルド」の薬事承認を了承しました。発症後の治療のほか、感染前の投与で発症抑制効果も期待できる国内初の予防薬となります。厚労省は、早ければ30日にも緊急時に審査を簡略化できる「特例承認」で対応します。

 「エバシェルド」は、アストラゼネカが6月に製造販売承認を求めて申請していました。ウルスが体内で増えるのを防ぐ抗体薬を2種類、それぞれ筋肉に注射します。発症後に投与する場合は、重症化リスクを持つ軽症から中等症患者が対象。予防薬としては、体質によりワクチンが打てない人や、接種しても持病で十分な免疫が得られない人などが使用できます。感染者と接触後の発症抑制効果は示されておらず、濃厚接触者は対象外となります。

 アストラゼネカは臨床試験(治験)で、軽症から中等症の外来患者に対して発症から3日以内に投与し、重症化や死亡のリスクを88%減らしています。予防薬としては、投与から6カ月時点の感染が83%減ることを確認しており、これまでにアメリカやヨーロッパ連合(EU)、イギリスなどで使用が認められています。

 オミクロン型の派生型「BA・2」への有効性は確認されている一方、現在主流の「BA・5」では効果が下がる恐れがあるとして「ほかの治療薬が使用できない場合に検討する」としました。

 2022年8月29日(月)

2022/08/29

🟩全国の新型コロナ感染者9万5916人 41日ぶり10万人下回る

 国内では29日午後6時15分の時点で、東京都で9880人、神奈川県で7203人、福岡県で5729人、埼玉県で5419人、大阪府で5290人など全47都道府県と空港検疫で、新たに9万5916人の新型コロナウイルスへの感染が発表されました。1日当たりの新規感染者は前週の月曜日から約4万5000人減り、7月19日以来、41日ぶりに10万人を下回りました。

 また、東京都で30人、埼玉県で19人、愛知県で16人、福岡県で13人、長野県で13人、千葉県で10人、熊本県で10人、北海道で9人、神奈川県で9人、大阪府で8人、宮崎県で8人、兵庫県で7人、京都府で6人など計233人の死亡の発表がありました。

 国内で感染が確認された人は、空港検疫などを含め1864万5018人、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて1864万5730人となっています。

 感染して亡くなった人は、国内で感染が確認された人が3万9285人、クルーズ船の乗船者が13人で、合わせて3万9298人となりました。

 厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認された人で、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けるなどしている重症者は、前日より1人増えて29日時点で628人となっています。

 大阪府は29日、新型コロナウイルスの新たな感染者を5290人確認したと発表しました。感染者数は前週同曜日(7892人)と比べ2602人減りました。府内の累計感染者数は188万7681人。

 新たに50~90歳代の男女8人の死亡が判明し、府内の累計死者数は5959人。

 29日時点の重症者は前日から6人減の81人で、重症病床(597床)の同日の実質使用率(重い持病などを抱える軽症・中等症患者らを含む)は26・0%になりました。軽症・中等症病床には2904人が入院しており、軽症・中等症病床(4194床)の使用率は69・2%となりました。

 新規感染者のうち、感染者と同居して症状があり、PCR検査を受けずに医師の診断で陽性と判断された濃厚接触者は70人でした。自宅療養者は13万3157人。公費によるPCR検査などを2万2794件実施しました。

 2022年8月29日(月)

🟩「けん怠感」や「せき」訴える人が増加 オミクロン型流行後のコロナ後遺症

 新型コロナウイルスのオミクロン型の流行が広がった今年、後遺症を訴えて医療機関を受診した人を東京都が分析したところ、デルタ型が流行していた以前に比べ、けん怠感やせきの症状を訴える人の割合が増えたことがわかりました。

 東京都は、オミクロン型の流行が広がった今年1月から7月までに新型コロナに感染した後、後遺症を訴えて都立病院を受診した119人の症状を調査・分析しました。

 それによりますと、デルタ型が流行していた時期に行われた分析と比べ、けん怠感を訴える人が40%から46%に、せきの症状を訴える人が14%から22%に、それぞれ増えたことがわかりました。

 一方、息切れの症状は19%から10%に、嗅覚障害は16%から10%に、味覚障害は12%から8%に、それぞれ減っていました。

 また、後遺症の症状が出る時期は、発症から1カ月未満が82%、発症から1カ月以上が18%となっています。

 東京都の担当者は、「年齢やコロナ発症時の重症度にかかわらず、後遺症が出る可能性がある。後遺症が疑われる場合は無理をせず専門の窓口などに相談してほしい」と話しています。     

 2022年8月29日(月)

🟩東京都の新型コロナ感染者9880人 7週間ぶり1万人下回る

 東京都は29日、都内で新たに10歳未満から100歳以上の9880人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

 1日に発表される感染者の数が1万人を切るのは、6000人台だった7月11日以来、7週間ぶり。前週の月曜日(22日)より5205人少なく、8日連続で前週と同じ曜日を下回りました。29日までの1週間の感染状況をみると、1日当たりの感染者数は1万8800・9人で、前週(2万4742・6人)の76・0%でした。

 29日の新規感染者を年代別にみると、最多は40歳代の1784人。以下、30歳代が1773人、20歳代が1701人と続きました。10歳未満は1162人、65歳以上は840人でした。

 ワクチンの接種状況別では、2回接種済みが6495人、未接種は1833人でした。

 病床使用率は52・5%。また、都が緊急事態宣言の要請を判断する指標を30~40%としている重症者用病床使用率は30・5%。「人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO<エクモ>)を使用」とする都基準の重症者数は、前日より1人多い41人でした。

 一方、都は、感染が確認された50歳代と70歳代から90歳代までの男女合わせて30人が死亡したことを発表しました。

 また、確認された感染者のうち、他県内の陽性者登録センターなどを通じて申請があったのは1883人で、都外から持ち込まれた検体を都内の医療機関で検査したのは663人でした。

 東京都の累計の感染者数は289万6204人となり、累計の死者数は5267人になりました。

 東京都の1日の新型コロナの感染確認が7週間ぶりに1万人を下回ったことについて、小池百合子知事は千葉県成田市で記者団に対し「減少傾向にあることは誰にとっても負荷が減るという点で少しは安心するところはある。しかし学校が再開しているところもあり、これからも用心と注意をしっかりと行いながら、ワクチン接種など原点に戻って感染防止対策を進めていくことで協力をお願いしたい」と述べました。

 2022年8月29日(月)

🇱🇹手足のしびれ

手足のしびれは神経からのサインです。きちんと検査をして、適切な対処を心掛けましょう。

手足のしびれは、なぜ起こる?

 「ピリピリする」、「ジンジンする」など人によって訴える症状はさまざまですが、手足のしびれの多くは、体を通る末梢(まっしょう)神経や中枢神経のどこかで神経が刺激されたり、伝導が正常に行われなかったして起こります。痛みや灼熱(しゃくねつ)感を伴う場合もあります。

 原因となる病気で代表的なのは、変形性脊椎(せきつい)症。背骨や周囲の組織が変形し、神経を刺激するために、しびれや痛みを引き起こします。私たち日本人には神経が通る脊柱管(せきちゅうかん)の狭い人が多いために、発症しやすいと見なされています。

 また、パソコンに長時間、向かっている人の中に、手指のしびれを訴える方も多く見られるところですが、この場合は、重症化することはまれです。ただし、しびれが繰り返したり、持続したりしたら、何かの病気のサインである可能性もありますので、専門医の検査をぜひ受けましょう。 

原因をチェック 

●頚椎や腰椎の疾患

 変形性脊椎症は、加齢などによって頸椎(けいつい)や腰椎が変形し、神経を圧迫するものです。多くの場合、頸椎なら手に、腰椎なら脚に症状が現れます。

 脊椎症の一つである腰部脊柱管狭窄(きょうさく)症では、歩くと脚がしびれ、立ち止まって前かがみになると治まるのが特徴で、50代以上で発症します。

 骨と骨との間のクッションの役割を果たしている椎間板(ついかんばん)が、衝撃などによって突出してしまい、神経を圧迫するのが椎間板ヘルニア。こちらは、青壮年期に多く発症します。 

●末梢神経の障害

 女性の方に多く発症するのが、手根管(しゅこんかん)症候群。手首を通る神経の通り道が狭くなり、小指以外の4本の指がしびれます。肘部管(ちゅうぶかん)症候群では、小指や薬指の一部がしびれます。ひじの内側を通る神経が、関節の変形や良性の腫瘍(しゅよう)などにより圧迫されて、発症します。 

●血行不良 

 動脈硬化により血行が悪くなり、脚がしびれるのが閉塞(へいそく)性動脈硬化症です。中高年の男性の方に多く、初期には歩くと脚にしびれや痛みが出て、しばらく休むと治まります。

 上胸部で手指への血行が悪くなることで発症するのが、胸郭出口症候群です。なで肩の若い女性の方に多く見られ、手がしびれたり、肩が凝ったりします。

●その他

 骨折脱臼切り傷などで神経が傷付き、しびれが出るケースもあります。また、糖尿病が進行すると、末梢神経障害で手足の先がしびれます。

 脳血管障害の初期やその後遺症、さらに脊髄腫瘍骨のがんウイルスや細菌の感染などでも、手足がしびれることがあります。 

対策へのアドバイス

●同じ姿勢を避ける

 デスクワークなどで同じ姿勢を続けていると、当然、体に負荷がかかります。約30分に一度、首や肩を回したり、腰を伸ばしたりして、体を動かしましょう。

 椅子(いす)の高さは、自分の体に合わせて調節しておきましょう。 

●日常生活での注意

 しびれの原因となる病気によって、日常生活での対処法は異なります。

 脊椎症の場合は、まず体重を増やさないことが大切で、コルセットも有効。無理な運動は避け、しびれや痛みがとれてから、医師の指示に従って腹筋や背筋を鍛えましょう。水泳がお勧めのスポーツです。 

 頸椎症の場合は、首を少し前かがみにすると、症状が和らぎます。反対に、首を後ろに反らす、うがいをする際のような動作は控えましょう。頭の重みが神経を圧迫するので、つらい時は横になりましょう。

 胸郭出口症候群では、肩付近の筋肉を鍛えます。 

●対症療法で症状を緩和

 脊椎症や椎間板ヘルニア、手根管症候群、肘部管症候群では、薬物療法などの対症療法が主となり病状に応じて手術も行われています。

 椎間板ヘルニアの場合では、医師が治療を続けるうちに、突出したヘルニアの塊が体の免疫反応などにより消失し、症状が治まるケースも、よくあります。

●体に負担をかけない姿勢

 不自然な姿勢を続けると、背骨や筋肉に大きな負担がかかります。ふだんから正しい姿勢を心掛けたいものです。    

 ◎いすに座る時

 ・あごを少し引き、背中は真っすぐに伸ばす。

 ・腰とひざはほぼ直角に、太ももの上面はほぼ水平になるように。

 ・両腕はひじ掛けや机に乗せた際、水平になるように。

 ・足の裏全体が床に着くように。

 ◎寝る時

 ・敷き布団は軟らかすぎない物に。

 ・首が自然なカーブになる枕を使う。 

🇱🇻肉離れ

肉離れとは、瞬間的に筋肉の繊維や膜が伸ばされて、断裂が生じた状態です。運動中に筋肉に急激に強い力がかかった時や、足をすべらせるなど予期しない動きをした時に生じ、起こりやすいのはふくらはぎや太もも。

ダッシュやジャンプなどの動作の多い短距離走やハードル、サッカーなどのスポーツでよくみられますが、運動不足の人では、日常的な動作で起こることもあります。

予防には、ウオーミングアップやクーリングダウン、十分なストレッチングを行うことです。寒い日や筋肉が疲労している時などは、特に注意が必要です。

🇲🇩膝痛

■なぜ多い?中高年の膝の痛み

●膝の関節軟骨がすり減って発症

中高年の方々は、膝の不快な痛みを「年のせい」とあきらめていませんか。あきらめてしまう前に、日常生活の見直しをしたいところです。

私たちが体を動かすために欠かせない部分が、関節です。骨と骨とが連結している部分のことですが、実は、関節では骨と骨は直接ぶつかっていないのです。

関節の骨と骨の透き間を埋めているのは、軟らかくて弾力性のある「関節軟骨」と、「滑膜(かつまく)」という薄い膜から分泌される「関節液」。関節軟骨は関節部分の骨を覆っていて、厚さは3~4ミリで、非常に弾力性があります。そして、関節液が潤滑油の役割を果たし、私たちは関節をスムーズに動かすことができるのです。

とはいえど、膝の関節の場合は、肩や腰など全身の関節の中でも特に大きな負担がかかっていて、痛みを起こしやすいものです。常に体重を支えながら、立ったり歩いたり、階段を上ったり下りたりするのですから、かかる負担は大。平地を歩行する時で体重の約2~3倍、階段を上り下りする時では約3~4倍、走る際には約6倍もの力がかかっています。

同時に、膝関節は広い範囲の曲げ伸ばし運動など、複雑な動きを行うことを強いられています。歩行時には約60度、しゃがむ動作では約100度、正座では約140度の曲げ伸ばしとなります。

衝撃を柔らげる役割を果たしている関節軟骨も、加齢とともに水分が失われ、弾力性がなくなってしまいます。そこに体重の増加、仕事や運動などによる負担が加わると、関節軟骨は次第に、すり減ります。

結果として、関節に炎症を起こしたり、骨が変形したりして、痛みが生じることになります。この変形性膝(しつ)関節症が、膝の痛みの原因として最も多いのです。ほかにも、けがや免疫の病気、代謝の病気が、原因として考えられます。

軟骨は一度すり減ると、残念ながら再生しません。「年齢」、「体重」、「習慣」が変形性膝関節症の三大要因といわれていますので、膝への負担を少しでも減らすことが、日常生活で大切になります。

●疑われる関節の病気

◆変形性膝(しつ)関節症

関節の軟骨がすり減ったために、痛みが生じる病気が変形性関節症で、中でも一番多いのが、膝の部分に痛みが出る変形性膝関節症。膝が痛む病気としても、最多です。

加齢で増加する病気であり、通常は50代から発症するケースが多いのですが、肥満の人は40代でも発症します。

初期では、立ち上がる際や歩き始めに痛みますが、時間がたてば治まります。進行すると、正座や階段の上り下りで感じる痛みが大きくなり、膝を真っすぐに伸ばしたり、十分に曲げたりできなくなります。悪化すると、じっとしていても痛みを感じ、歩けなくなれば手術も必要となります。

O脚の人の場合、膝の内側に圧力がかかるため、内側の関節軟骨がすり減って発症しやすく、女性に多いのが特徴ですが、はっきりした理由は不明です。

◆半月板損傷

膝の関節内でクッションの役割を担っているのが、半月板です。この繊維性の軟骨は、スポーツなどで急に方向転換をしたり、膝を素早く曲げ伸ばししたりすると、切れることがあります。

切れた場合には、膝の全体が腫れて痛みが出たり、ロックされたように膝が動かなくなったりし、自然に治癒することはありません。損傷がひどいケースでは、手術が行われます。

加齢によって柔軟性がなくなるので、中高年は半月板の損傷に注意が必要。半月板損傷と変形性膝関節症とが合併する例も、みられます。

◆関節リウマチ

自己免疫反応の異常により、膝だけでなく全身の関節が炎症を起こす病気が、関節リウマチ。膝、指、手首、肘(ひじ)などの関節の滑膜に炎症が起こり、そこから出る物質が関節軟骨や骨を破壊するため、痛みや腫れが生じ、関節が変形します。

40代以上の女性に多くみられ、出産後に発病することも。朝、手や指がこわばって動かしにくいのが、症状の特徴となります。こわばりが30分以上、6週間続く、腫れが3カ所以上ある、腫れが左右対称である、などのケースでは、関節リウマチが疑われます。

◆化膿性関節炎

体のある部分が黄色ブドウ球菌などの細菌によって化膿(かのう)した場合、その感染が関節におよび、炎症を起こすことがあります。炎症は膝だけでなく、全身の関節で起こります。

関節が赤く腫れ上がって熱を持ち、痛みも徐々に強くなって自由に動かせなくなります。体温も上がり、緊急手術が必要。熱があって激しい痛みがあれば、すぐに医療機関へ行くべきです。

◆大腿(だいたい)骨顆骨壊死

大腿骨顆骨という、膝の上側の骨の一部が壊死して、強い痛みが生じます。50歳以上の女性に多く、症状が変形性膝関節症に似ています。

◆痛風

血液中の尿酸が関節にたまることで、炎症を起こします。尿酸は細胞の燃えカスで、プリン体という物質からできています。

炎症はまず、足の親指の付け根に起こることが多く、中高年の男性に多い病気です。

■心掛けたい「膝痛」対策

●原因を明白にさせる

まずは、膝の痛みの原因を突き止めることです。歩きすぎなどのはっきりした原因があり、2~3日で治るようであれば、それほど心配はありません。

心当たりがないのに激しく痛んだり、だんだん痛みが増してきたりしたら、専門医を受診しましょう。

膝の痛みが急に悪化し、腫れや熱を持っている場合は、氷などで冷やして炎症を抑えましょう。慢性的な痛みの場合は、ゆっくり入浴して膝を温め、血行をよくしましょう。

●膝への負担を減らす

膝の関節に負担をかけないためには、日常生活の改善が最も大事です。

体重をかけて膝を曲げることが膝関節への一番の負担になりますので、椅子や洋式トイレを使用して、しゃがまない、正座をしない、横座りをしないように心掛けましょう。

長時間、立ち続けるのもよくありませんし、重い荷物を持つのもよくありません。肥満の人は、減量を試みましょう。

階段を上り下りする時は、体重の3~4倍の負担が膝にかかります。膝の悪い人が外出する際には、エスカレーターやエレベーターを利用しましょう。負担がかからない靴を履くようにし、関節の保護と保温のためにサポーターを利用するのもよいでしょう。

寒い季節には、体を冷やさないように注意し、入浴で血行をよくしましょう。

●筋トレで太ももを鍛える

膝は筋肉によって支えられています。太ももの筋肉を柔軟にし、筋力を向上することで、膝への負担を減らすことが可能になります。

高低差の少ないコースでのウオーキングや水泳が、お勧めのトレーニングです。水中ウオーキングも、膝への体重の負担が少なくてよいでしょう。

家でできる筋トレもあります。寒くて家に閉じこもりがちな季節の場合、じっとしているだけでは関節は弱る一方です。簡単な体操や適度な運動で、関節痛を解消、ないし予防しましょう。変形性膝関節症の慢性期は、適度なトレーニングで症状が改善します。

まずは、太ももの前側の筋力を強化する方法の紹介。足の裏がちょうど床につく程度の高さの椅子に座って、足首を上に曲げたまま片脚を5秒くらいかけてゆっくり上げ、膝が伸びたところで10秒静止します。同様に、ゆっくり下ろし、反対側の脚の上げ、止め、下げを行います。これを1セット10~20回、朝、昼、晩に行いましょう。

関節軟骨の一カ所に負担が集中することがなくなり、膝の曲げ伸ばしの力も強くなります。注意すべき点は、・沈み込まない椅子を選ぶ、・腰などに痛みがある人、膝が伸びない人は無理をしない、・膝の症状が進行している人は医師と相談の上行う、ことです。

太ももを強化する他の方法としては、・畳やカーペットに仰向けに寝て、片脚は膝を曲げたまま、もう一方の脚をゆっくり上げる、・横向きに寝て、股を開けるようにゆっくりと片脚を上げる。上げない方の脚は、曲げていてもよい、・太ももでボールやまくらをはさみ、膝を内側にねじったり曲げたりしないようにしながら、ボールなどを押すように力を入れる、などを試してもよいでしょう。

次は、太ももの背面の筋肉を柔軟にするストレッチ。両膝を真っすぐに伸ばして、床に座ります。右の手のひらを右膝、左の手のひらを左膝に当て、膝のお皿の上あたりを押すと、膝の後ろ側が伸びます。反動をつけず、ゆっくり行いましょう。

膝の曲げ伸ばしをお風呂の中でするのも、よい方法です。関節を伸ばす時に力を入れながら、ゆっくりと行うのが要領。

●関節によい成分をとる

痛み止めを使わずにいると、しばらくするとまた関節が痛くなってくる…そんな経験を持つ人も多いのでは。これは薬で痛みや炎症を抑えていても、軟骨がすり減っている、という根本的な原因が解決されていないから。

ここで注目したいのが、最近話題のグルコサミンやコンドロイチン、MSM(メチルスルフォニルメタン)など。軟骨の成分でもあるこれらには、軟骨細胞の再生を促す作用があるのです。

グルコサミンは、軟骨の原料となる物質を作る。アミノ糖の一種。生体内に広く分布しているが、特に軟骨細胞に多い。若いうちは体内でスムーズに作られますが、加齢とともに生成量が減り不足気味に。

コンドロイチンは、細胞に水分を補給し、栄養を与えて老廃物を排出する。ムコ多糖の一種。骨や軟骨、皮膚など広く生体内にある。加齢とともに生成量が減り不足気味に。また、目の角膜や水晶体の透明感や弾力性の維持の働きもあります。

MSM(メチルスルフォニルメタン)は、たんぱく質やコラーゲンの生成に不可欠。有機イオウ化合物の一種で、人間を含むほとんどの動植物にとって必須の成分。調理により大部分が失われるので、通常の食事だけでは不足しがち。

サプリメントでとる場合、グルコサミンとコンドロイチンは、食後ならいつでもOK。1日分をまとめて飲んでも、分けて飲んでもOK。MSMは朝食後、夕食後と分けて飲むとよいでしょう。

🇫🇮委縮性膣炎

閉経後に自浄作用が低下して細菌が繁殖するため、膣壁が委縮して起こる膣炎

委縮性膣炎(ちつえん)とは、卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンが閉経後に低下し、それとともに自浄作用も低下して細菌が繁殖するために、膣壁が委縮して起こる膣炎。老人性膣炎とも呼ばれます。

通常は加齢に伴って発症するもので、生理が止まった閉経後の女性の多くが委縮性膣炎を生じている状態にあります。また、出産から最初の月経までの期間の産婦や、悪性腫瘍(しゅよう)で卵巣を摘出する手術をした女性にも発症することがあります。

女性生殖器系の器官である腟は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。腟の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。腟壁は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この腟の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、腟には自浄作用という働きがあります。腟壁上皮は卵巣から分泌されるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、腟内の乳酸桿菌(かんきん)によって乳酸菌に換えられます。これにより腟内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

閉経後の女性の場合は、卵巣から分泌されるエストロゲンや卵胞ホルモンが低下するため、ブドウ糖が不足し腟内の乳酸菌が著しく減少する結果、細菌が繁殖します。

また、閉経後の女性の場合は、腟壁は女性ホルモンや少量の男性ホルモンの働きにより、閉経後十数年たっても若い時代の3分の2の厚さが保たれていますが、一部の女性ホルモンが不足してくると腟のひだが少なくなるとともに、腟壁のコラーゲンが少なくなり、壁そのものも委縮して薄くなり、乾燥も起こります。この薄くなった腟の壁は、腟内に細菌が繁殖すると、充血して炎症を生じます。

そのために、委縮性膣炎を発症すると、下り物が黄色っぽくなる、下り物に血が混じる、下り物に悪臭を伴うなどの症状が、現れることがあります。腟壁の痛みや灼熱(しゃくねつ)感などの不快感、腟入口の乾燥感、掻痒(そうよう)感、違和感などの症状が、現れることもあります。性行為に際して、痛みを伴ったり、出血、掻痒感などの症状が、現れることもあります。

エストロゲンの分泌が低下したり、膣壁が委縮して薄くなること自体は、閉経後の女性であれば当たり前のことですので、無症状であったり、症状が軽いこともあります。

必ずしも治療が必要なわけではありませんが、黄色い下り物は子宮体がんなどに伴う症状の可能性もありますので、注意が必要となります。

委縮性膣炎の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、膣や外陰部の肉眼的な観察を主に行います。細菌性膣炎を合併していることが多く、腟内の細菌検査を必要とする場合もあります。同時に、がん細胞の有無も確認します。

明らかにエストロゲンが低下している年齢でなければ、ホルモン検査を行うこともあります。

近年は、診断と治療的効果判定の数値化を目的に腟健康指数を用いて診断する方法も行われるようになりました。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、がん細胞がない場合は、女性ホルモンの膣錠、エストロゲンの経口剤や貼付剤、女性ホルモンの補充療法などで、症状の改善を図ります。

軽度の炎症であれば、膣洗浄によって細菌を流し、症状を改善させることもあります。細菌感染がひどい場合は、抗生物質が入った腟錠を併用することもあります。性交痛などに対して、潤滑ゼリーを勧めることもあります。

多くは1~2週間の治療で治りますが、1カ月程度にわたって薬剤を使用しないと治らない人もいます。

子宮体がんや乳がんなどの病歴がある人に対しては、別の治療法が選択されることもあります。

🟧東京都で新たに1万5834人が新型コロナ感染 前週の同じ曜日から8946人減

 東京都は28日、都内で新たに10歳未満から100歳以上の1万5834人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

 1週間前の日曜日より8946人減り、これで1週間続けて前の週の同じ曜日を下回りました。28日までの7日間平均は1万9544・4人で、前の週の75・5%となりました。

 新規感染者を年代別にみると、20歳代が2653人と最も多く、40歳代が2622人、30歳代が2571人と続きました。65歳以上の高齢者は1694人でした。

 ワクチンの接種状況別では、2回接種済みが1万65人、未接種は3009人でした。

 人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO<エクモ>)を使っている重症の患者は、27日より2人増え40人でした。

 一方、都は感染が確認された40歳代から90歳代までの男女、合わせて23人が死亡したことを発表しました。

 また、確認された感染者のうち、他県内の陽性者登録センターなどを通じて申請があったのは768人で、都外から持ち込まれた検体を都内の医療機関で検査したのは648人でした。

 東京都の累計の感染者数は288万6324人となり、累計の死者数は5237人になりました。

 2022年8月28日(日)

2022/08/28

🇸🇪息切れ

●苦しい時は適切な対応を

 息切れが気になっても、年齢や風邪のせいにしていませんか。適切な対応をしないと、生死にかかわるケースもあるので、注意したいところです。

●肺は壊れると元に戻らない

人体の臓器の中で唯一、直接外気に触れているのが、呼吸器である「肺」です。容量も臓器の中で最大で、左右一対ある肺には一日、約1万リットルの空気が出入りしています。

肺に空気が運ばれていく通路が「気管」で、気管は胸のほぼ中央で左右に分かれて「気管支」となります。気管支は「肺門」から肺に入り、肺の奥に進むにつれて枝分かれして細くなっていき、末端は「肺胞」と呼ばれる小さな袋の集まりとなっています。

 肺胞の数は大人で3億~7億個、総面積はおよそテニスコート1枚分。肺胞の壁は毛細血管と接しており、空気中の酸素と血液中の炭酸ガスの交換が絶え間なく行われています。

酸素と炭酸ガスの交換を一般に「呼吸」と呼びますが、呼吸は脳の呼吸中枢によってコントロールされていて、肺だけではなく鼻、のど、胸郭、横隔膜などが複雑に動き、血液の循環とも密接な関係にあります。

こうした一連の動きがうまくいかない時、私たちに息切れが起こります。そのため、息切れにはさまざまな原因が考えられるのです。

急性の息切れでは、緊急に対応しないと命にかかわることもありますので、すぐに病院へ行く必要があります。慢性の息切れのケースも、放置は厳禁です。

肺は一度、壊れたら元に戻らないことが、怖いのです。肺の機能が衰えると、苦しいために体を動かさなくなり、やがては全身の筋肉が弱まってしまい、寝たきりになる危険性があります。

●息切れの原因のチェック

◎慢性の息切れ

◎COPD(慢性閉塞性肺疾患)

中高年にみられる呼吸器の病気の代表格。たばこや大気汚染によって、肺胞が壊されたり、細い気管支の壁が厚くなって管が細くなったりした結果、肺の中の空気が出しにくくなるもので、肺気腫、慢性気管支炎が含まれます。

徐々に進行し、症状が息切れ、せき、たんであるため、慢性的な風邪と勘違いしているケースもあります。喫煙者の15~20パーセントに起こる、と見なされているところ。

◎気管支ぜんそく

全年齢層にみられる病気。気管支が慢性的な炎症で狭くなり、空気が通過しにくくなります。せき、たんが出るのはCOPDと同様ですが、夜中や夜明けに症状が出るケースが目立ちます。

原因はアレルギー、と見なされているところ。

◎その他

高度の貧血によって、全身の臓器に酸素がいきわたらないと、息切れになります。

肺が徐々に硬く縮み、空気を吸い込むことができずに息切れするのは、間質性肺炎や肺線維症です。

また、肺結核、肺がんや気管支拡張症、神経や筋肉の疾患、甲状腺疾患、緑内障の点眼薬(βブロッカー)の副作用などでも、息切れが起こります。

◎加齢によるもの

肺機能は男女とも25歳がピークで、加齢とともにゆるやかに低下していきます。健康であっても、誰にでも起こること。日常生活に支障がなければ、問題はありません。

 ただし、体力が落ちていて日頃から元気のない高齢者の場合、肺炎を起こしても息苦しさや、高熱などの症状が現れにくいことに、注意が必要です。「おかしい」と思ったら、手遅れにならないように、早めに医療機関へ。

◎危険な急性の息切れ

◎自然気胸

若い元気な人に多く、突然起こります。肺に穴が開き、肺から出た空気によって、肺が圧迫されて縮んでしまいます。急激な息切れ、胸痛を伴います。

◎うっ血性心不全

 心筋梗塞などによって、心臓のポンプ機能が低下し、体に十分な血液が送り出せない状態になると、肺に水分がたまり、呼吸が速くなります。「寝ると息苦しい」、「水っぽい、たんが出る」などの症状があります。

◎エコノミー症候群

前触れもなく、急に息苦しくなります。飛行機の座席などで、水分不足のまま何時間もじっとしていると、脚の静脈に血栓ができます。その血栓が肺動脈に運ばれ、急に血流を止めてしまうケースがあります。

●心掛けたい息切れ対策

◎専門医を受診する目安

息切れの感じ方は人によってさまざまで、痛みの感じ方と似ています。中には、実際には病気があるのにあまり感じない人もいます。

息切れに伴って、せき、たんがある場合には一度、専門医を受診しましょう。また、同年代の人と一緒に歩いている際に自分だけ歩調が遅れるのも、重要なシグナルとなります。

◎COPDには禁煙が最も有効 

年齢が上がるにつれて増加するCOPDの主要因は、たばこです。たばこの煙の粒子は非常に小さく、肺の奥深くまで入り込んで沈着し、炎症を起こすのです。

喫煙者でも、元には戻らないものの、たばこをやめた時点から肺の機能低下がゆるやかになるので、すぐに禁煙を実行しましょう。

◎ウォーキングと腹式呼吸を

COPDの人の場合、息が切れると動くのが面倒になり、運動不足になって運動機能が低下し呼吸困難がさらに悪化する、という悪循環になりがちです。そのため、全身の筋肉を鍛えることが大切になります。

最も勧めたい対策は、ウォーキングなどの軽い運動です。腹式呼吸も効果的で、横隔膜を十分に使って呼吸することで、肺の容量が大きくなります。腹筋を縮めるようにして、口をすぼめた状態でゆっくり息を吐く、口すぼめ呼吸も効果的で、気管や気管支での空気の通りがよくなります。

◎日常生活を楽にする工夫

COPDの人は、体に余計な負担をかけない工夫をすると、日常生活が楽になります。床に置いたものを取る際には、かがんで持ち上げるといった工夫です。

重症になると、息を吸う時に横隔膜だけでなく、首や腕などの筋肉の助けも必要になります。これらの筋肉を使わない、息を吐く時だけ体を動かすように、そしてリズムをつけて動くようにしましょう。階段を上がる際には、息を吐きながら歩を進め、息を吸う時は立ち止まりましょう。

🇳🇴かぜ症候群

かぜは、口、鼻から肺までの空気の通り道である呼吸器が、微生物や寒さの刺激を受けたことにより、さまざまな反応を起こした状態(急性炎症)を示します。正確には「かぜ症候群」あるいは「かぜ疾患群」といいます。

ごく軽いかぜを含めると、人は1年間に平均6回かぜをひくという統計があります。呼吸器は四六時中、外の空気に接していますから、トラブルが多くなるのも無理からぬことです。

軽い症状のまま約1週間で治ってしまうことがほとんどですが、場合によっては重い合併症を起こすこともあります。昔から「かぜは万病のもと」といわれてきたように、かぜを決してあなどってはいけません。

●なぜ、かぜにかかるのか?

1.かぜの原因

かぜは寒さやアレルギー反応で起こることもありますが、多くの場合、病原微生物(病原体)の感染が原因で起こる呼吸器の急性炎症です。かぜを起こす病原体にはウイルス、マイコプラズマ、細菌、クラミジアがありますが、かぜの原因の80~90%をウイルス(かぜウイルス)が占めています。かぜウイルスには、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、レオウイルスがあります。これらのウイルスは呼吸器以外でも感染を起こすものがあり、アデノウイルスは眼の病気や乳児の下痢症、エコーウイルスは髄膜炎の原因にもなります。

2.かぜに何回もかかる理由

体は、ウイルスに一度感染するとその免疫ができて、次にそのウイルスが入ってきたときには、迅速に攻撃してやっつけてしまう仕組みを備えています。しかし、この免疫はいつまでも残っているわけではありません。また、ウイルスには多数の型があり、同じ種類のウイルスでも型が違うと免疫は十分には働きません。そのため、異なるウイルス、また違う型のウイルスが侵入してくるたびに、かぜをひくことになります。

3.ウイルスの感染とからだの反応

ウイルスによるかぜをひいている人の痰や鼻水は、たくさんのウイルスを含んでおり、くしゃみや咳をしたときにしぶきとなって飛び出し、空気中に漂います。そして、近くにいる人に吸い込まれ、ほとんどが鼻の粘膜にくっつきます。ウイルスは粘膜にある感染防御機構と戦い、それに勝利すると粘膜の細胞の中に入り込んで増え始めます(感染の成立)。

やがて、ウイルスは細胞内を埋め尽くして、ついには細胞を壊します。体は、これに対して「炎症」で応じます。これが急性鼻炎です。そして、感染が奥に進むにつれ、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎が起こります(病名で○○炎というのは、炎症の炎なのです)。

(なお、かぜウイルスの中には痰や鼻水だけでなく、結膜や便の中にも出てくるものがあります。その場合は、結膜や便に直接触れることでも感染します。)

●症状 

1.炎症の場所によって異なる症状

鼻の炎症は急性鼻炎といい、くしゃみ、鼻水(水状→粘液状→黄色い膿状)、鼻づまりなどの症状を起こし、のどの炎症である咽頭(いんとう)炎では、のどの粘膜の充血や腫れ、痛みを訴えます。さらに、感染が呼吸器の奥へと進んだ喉頭(こうとう)炎では、声がれ、ときには呼吸困難を起こし、気管、気管支、肺にいたると、咳や痰が出るようになります。

2.その他の症状

かぜには、前述のような呼吸器症状の他に、頭痛、発熱、腰痛、全身のだるさ、食欲不振などの全身症状があります。また、腹痛、下痢などの消化器症状が加わることもあります。

3.かぜの病型

これまで説明したように、かぜの症状はさまざまです。そこで、全身症状があるのかないのか、呼吸器症状は何が中心かということで、8つの型(病型)に分けられています。個々のかぜウイルスについて、よく見られる病型というものはありますが、同じウイルスでも場合によってさまざまな病型のかぜを起こします。

主な病原体によるかぜの病型

* インフルエンザ:インフルエンザウイルス

* 普通感冒:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ

* 咽頭炎:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ、細菌(レンサ球菌)

* 咽頭結膜熱:アデノウイルス

* クループ:パラインフルエンザ・インフルエンザウイルス

* 気管支炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

* 異型肺炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス

* 肺炎:インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

4.インフルエンザ

1.インフルエンザとインフルエンザウイルス

インフルエンザは高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型のかぜをいいます。悪寒とともに39~40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状のあとに現れてきます。

こういった全身症状が強いかぜは、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他のかぜウイルスが起こすこともあります。

また、インフルエンザウイルスが起こすかぜは、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻かぜ(鼻水、鼻づまりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型のかぜ)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。

インフルエンザウイルスが感染して症状がでるまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

2.インフルエンザが怖いわけ

インフルエンザが怖いのは、65歳以上を中心にインフルエンザウイルスに感染したひとの約1%が肺炎を合併するからです。インフルエンザに肺炎を合併すると、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがたまにあり、また、いったん治ったように見えながら2~3日で肺炎になることもあります。

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く流行も目立ちません。一方、A型とB型(とくにA型)は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

5.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、細菌より小さくウイルスよりやや大きいマイコプラズマという病原体が起こす異型肺炎という型のかぜです。

のどが赤く腫れて痛み、38℃前後の発熱、激しい乾いた咳、胸痛があります。潜伏期が2~3週間と比較的長く、感染力も強くないため、爆発的に流行することはありませんが、約4年ごとに流行しています。時として、重い合併症を起こすことがあります。

●合併症

かぜの合併症としては、中耳炎(ちゅうじえん)、副鼻腔炎(ふくびくうえん)などが一般的ですが、最も注意を要するのが肺炎です。肺炎は、ウイルスによるかぜで抵抗力が弱ったところに、細菌(ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌、レンサ球菌など)が感染して起こします。インフルエンザによる死亡の8割は肺炎が原因です。

その他、筋炎、心筋炎、また、神経系の合併症(ライ症候群、脳症、ギランバレー症候群、急性小脳失調症、脊髄炎(せきずいえん)、多発神経炎、髄膜炎など)もあり、うっ血性心不全や心筋症などの慢性の病気が悪化することもあります。

●治療法

1.一般療法

体の回復力を高めるには、安静と睡眠が大切です。38℃以上の熱がある場合は、安静を助けるために水枕、氷枕をあてます。体力をつけるには食事も大切です。かぜの時には胃腸の働きが落ちるため、葛湯、おかゆ、スープなど、消化が良く水分の多いものにします。

かぜをひいた人が休んでいる部屋は、気温を18~20℃、湿度を60~70%に保ちます。空気が乾燥していると、呼吸器の粘膜が乾燥して抵抗力が弱くなり、感染しやすくなるからです。乾燥はインフルエンザウイルスの好むところで、湿度30%で最も盛んに増えるためでもあります。

2.薬物療法

かぜの時に使われる薬は、かぜの症状を抑えるためのもの(対症療法)と、細菌を殺すためのもの(化学療法)とに大別されます。かぜの原因のほとんどはウイルスですが、現在のところ、かぜウイルスに効く薬はありません。

1. 対症療法

●抗ヒスタミン剤:鼻水、鼻づまり、くしゃみを抑えます。

●うがい薬、口腔用製剤(トローチ):咽頭(いんとう)痛がある時に使います。

●解熱鎮痛剤:発熱は、病原体をやっつけようとするからだの正常な反応です。ですから、やたらに熱をさげるのはいいことではありません。そこで、解熱剤は38℃以上の発熱、強い頭痛や筋肉痛があり、苦痛のために身体が衰弱するような場合に限って使います。

●消炎鎮痛解熱剤:頭痛やのどの痛みが強い時に使います。熱を下げる作用もあります。

●鎮咳剤:咳には、痰を伴う湿った咳と、痰を伴わない乾いた咳とがあります。痰がある場合は、咳は痰を出す役目をするので、止めない方がよいのです。しかし、乾いた咳は安静や睡眠を妨げて体力を消耗させるだけなので、鎮咳剤で止めてしまいます。

●去痰剤:痰の粘りけが強く、気道にくっついて、なかなか出せない場合に使います。痰に水分を補ったり、痰を分解する働きのある薬です。

●総合感冒剤:以上の対症療法剤を2種類以上組み合わせた製剤です。製剤によって、組み合わせや量が異なるので、症状に合わせて選ぶ必要があります。

2. 化学療法

●抗生物質:抗生物質は、細菌の増殖を抑えたり、殺したりする薬です。かぜでは、細菌が原因であることは少ないのですが、かぜで抵抗力が落ちたところに細菌が感染(二次感染)するのを予防するために、抗生物質を使うことが少なくありません。発熱がある場合、特に重症になる恐れのある高齢者や慢性の病気を持っている人には欠くことのできない治療です。

●かぜの予防

1.簡単にできること

空気中には、ウイルスを含む細かい粒子が浮かんでいて、特に混み合った電車やバス、保育園や学校の教室など、人が多く集まる場所、また、かぜをひいた人がいる部屋では、ウイルスが高濃度で漂っています。そこで、かぜの予防の第一は、このような場所を避けることです。

インフルエンザウイルスやライノウイルスに感染した人が休んでいる部屋では、湿度を60~70%に保つと、ウイルスの増殖が抑えられ、呼吸器の抵抗力を保つことにもなり、家族への感染を少なくすることができます。頻回な手洗いやうがいも予防に効果があります。

そして、何よりも体調を整えて免疫力を保つことです。生活の乱れ(睡眠不足、栄養不足、気のゆるみ)、強すぎる精神的ストレスがないようにしましょう。女性では、生理中はホルモンの関係でかぜをひきやすくなるのでご用心ください。

2.ワクチン

ワクチンとは、ウイルスの一部(ワクチン)を体に入れて免疫を作らせ、本当のウイルスがやってきた時に、その免疫でやっつけてしまうというものです。現在のところ、かぜウイルスでは、インフルエンザウイルスだけにワクチンがあります。

流行の直前に、流行するインフルエンザウイルスと同じ型のワクチンを打っておけば、そのウイルスがからだに入ってきた時、確実にやっつけることができます。また、ワクチンの型が流行しているインフルエンザウイルスと少し異なっていても、侵入してきたウイルスの増え方を抑える効果があります。つまり、ワクチンを打っておけば病院にかかるほどの症状にはなりにくく、なったとしても入院するほどの重症化しない、重い合併症で命を落とす危険が少なくなります。

このようにワクチンはインフルエンザの予防に有効です。特に、体力や免疫力が低いためにインフルエンザにかかると重症になりやすい高齢者や乳幼児、また、集団生活が流行の温床となる幼少児にとって、確実に役に立つ予防法です。

3.重症になりやすい人

かぜは一般には軽い病気ですが、高齢者や乳幼児、慢性の病気(基礎疾患)を持つ人では、合併症を起こして重症になることも珍しくありません。

これらの方々は、かぜにかからないよう普段から予防することが大切です。頻回の手洗いやうがいを励行し、インフルエンザが流行する時期に近づいたら、先述したワクチンを受けておきましょう。また、人混みに近づかないことも立派な予防法です。うっかり、かかってしまった場合は、重症になるのを防ぐために早めに治療を受けてください。

呼吸器の病気を持つ人 気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎など

心臓の病気を持つ人 うっ血性心不全、弁膜症、狭心症など

腎臓の病気を持つ人 慢性腎不全、透析患者、腎移植など

代謝性の病気を持つ人 糖尿病、アジソン病など

免疫力が低下している人 免疫不全状態

その他の人 高齢者、妊産婦、乳幼児など

「かぜ症候群」について説明しました。皆さんの健康を守るために少しでもお役に立てれば幸いです。わからない点や心配な点などある場合は、お近くの掛かり付け医などの医療機関にご相談ください。

🟧全国で15万7817人が新型コロナに感染 前週の日曜日より6万8303人減少

 国内では28日午後6時30分の時点で、東京都で1万5834人、大阪府で1万1606人、愛知県で9621人、福岡県で8249人、兵庫県で8086人、埼玉県で7734人など全47都道府県と空港検疫で、新たに15万7817人の新型コロナウイルスへの感染が発表されました。

 前週の同じ曜日(21日)より6万8303人少なく、前週の同じ曜日を下回ったのは4日連続。

 また、死亡の発表は、東京都で23人、埼玉県で17人、福岡県で14人、兵庫県で12人、千葉県で11人、大阪府で10人、京都府で8人、北海道で8人、沖縄県で7人、鹿児島県で7人など計220人でした。

 国内で感染が確認された人は、空港検疫などを含め1854万9171人、クルーズ船の乗客・乗員が712人で、合わせて1854万9883人となっています。

 感染して亡くなった人は、国内で感染が確認された人が3万9051人、クルーズ船の乗船者が13人で、合わせて3万9064人となっています。

 厚生労働省によりますと、新型コロナウイルスへの感染が確認された人で、人工呼吸器や集中治療室などで治療を受けるなどしている重症者は、前日より3人増えて28日時点で627人となっています。

 一方、大阪府は28日、新たに1万1606人が新型コロナウイルスに感染していることが確認されたと発表しました。先週の日曜日と比べて約6000人少なくなりました。これで、大阪府内の感染者の累計は188万2394人となりました。

 また、70歳代から90歳代の10人の死亡が発表され、府内で感染して亡くなった人は合わせて5951人となりました。

 重症者は27日から1人減って87人です。病床使用率は62・6%。1週間の陽性率は51・5%。

 2022年8月28日(日)

🟧新型コロナ後遺症で最大400万人働けず アメリカのブルッキングス研究所が分析

 アメリカ国内では、新型コロナウイルスに感染した後、息が続かない、頭に霧がかかったような症状が出るなどの後遺症に苦しむ人の数が約1600万人に上り、このうち200万人から400万人が仕事ができない状態に陥っているもようです。

 アメリカ・ワシントンにあるシンクタンク、ブルッキングス研究所は24日、新型コロナの感染拡大が社会に与える影響について分析した新たな報告書を発表しました。

 この報告書では、これだけの人が働けないことで年間約1700億ドル(約23兆3000億円)の賃金が失われたことになると見積もっています。ブルッキングス研究所の1月の報告書では、アメリカの労働力不足の15%が新型コロナの後遺症によるものと推定していました。

 報告書では、アメリカの生産年齢人口(18~65歳)のうち約1600万人が新型コロナの後遺症を抱えていると推定しています。大半のグループや医師はコロナ後遺症の定義を、感染後に何カ月にもわたりさまざまな症状が続くこととしており、息切れ、極度の疲労、神経認知の問題などが含まれるといいます。

 政府、病院、大学、医師の研究や推定によると、コロナ感染者の10~30%が後遺症を抱えていて、軽症だった人も後遺症が出る可能性があります。後遺症の影響は、従業員数に余裕のない職場や、経済的な自立が難しい患者、家族を介護する役割を担っている人などに及んでいます。

 ブルッキングス研究所のノンレジデント・シニアフェローで両報告書の著者であるケイティ・バック氏は、「フルタイム換算で300万人の労働者はアメリカの民間労働力全体の1・8%に相当する」と述べました。

 その上でブルッキングス研究所は、コロナ感染者が毎年10%ずつ増え続けると10年後の経済的な損失は5000億ドル(70兆円)近くになると分析していて、新型コロナの治療や予防の選択肢を増やしたり、企業で取得できる有給休暇を充実させたりするなど、対策の強化を訴えています。

 2022年8月28日(日)

🟧新型コロナの感染者、世界全体で6億人超える 最多はアメリカで日本は10番目

 アメリカのメリーランド州ボルチモアに本部を置くジョンズ・ホプキンス大学のまとめによりますと、世界全体で新型コロナウイルスへの感染が確認された人が、日本時間の27日時点で累計6億人を超えました。死者は648万人超。

 国別の累計感染者数はアメリカが約9417万人で最多。次にインドが約4440万人、フランスが約3466万人と続き、日本は約1819万人で10番目。

 一方、人口10万人当たりの感染者数では、サンマリノとアイスランドが6万人近くに上っていて、韓国が4万4600人余り、アメリカが2万8500人余り、日本が1万4300人余りなどとなっています。

 世界保健機関(WHO)によりますと、世界全体の新規感染者数は減少傾向にあるとしていますが、検査態勢が十分に整っていなかったり、検査数自体が減っていたりする国もあり、各国の実際の感染者数はこれよりも多い可能性があります。

 また、WHOは去る25日、今年に入ってから新型コロナウイルスで死亡した人が世界で100万人に上ったと発表し、死を防ぐさまざまな手段があるにもかかわらず「悲劇的な節目」を迎えたと指摘しました。

 2019年末に中国で初めて同ウイルスが検出されて以降、累計で約645万人の死亡がWHOに報告されており、テドロス・アダノム・ゲブレイェスス事務局長は、世界が本当にコロナ流行に対処できているのかと疑問を呈しました。

 テドロス事務局長は記者会見で、「今年報告された死者数は今週、100万人という悲劇的な節目を超えた」と説明。「パンデミック(世界的な大流行)開始から2年半が経過し、こうした死を防ぐために必要なあらゆる手段があるにもかかわらず、今年だけで100万人が新型コロナウイルスで死亡している。これで私たちが同ウイルスと共存することを学んでいるとはいえない」と指摘しました。

 WHOは6月末までにすべての国でワクチン接種率70%を達成する目標を掲げていたものの、目標に達しなかった国は136に及び、うち66カ国は接種率が40%未満にとどまっています。テドロス事務局長は各国の政府に対し、目標達成に向け、医療従事者や高齢者ら高リスク層への接種を強化するよう呼び掛けました。

 2022年8月28日(日)

2022/08/27

🟧東京都で新たに1万7126人の新型コロナ感染確認 30~90歳代の25人死亡

 東京都は27日、都内で新たに10歳未満から100歳以上の1万7126人が新型コロナウイルスに感染していることを確認したと発表しました。

 1週間前の土曜日(20日)より8151人少なく、6日連続で前週と同じ曜日を下回りました。27日までの7日間平均は2万822・4人で、前の週の81・3%となりました。

 27日の新規感染者を年代別にみると、最多は20歳代の3137人。以下、40歳代が2952人、30歳代が2944人、50歳代が2269人と続きました。65歳以上は1808人でした。

 ワクチンの接種状況別では、2回接種済みが1万1381人、未接種は3188人でした。

 病床使用率は53・5%。また、都が緊急事態宣言の要請を判断する指標を30~40%としている重症者用病床使用率は30・2%。「人工呼吸器か体外式膜型人工肺(ECMO<エクモ>)を使用」とする都基準の重症者数は、前日と同じ38人でした。

 一方、都は、感染が確認された30歳代と50歳代の男性、70歳代から90歳代までの男女の、合わせて25人が死亡したことを発表しました。

 また、確認された感染者のうち、他県内の陽性者登録センターなどを通じて申請があったのは1672人で、都外から持ち込まれた検体を都内の医療機関で検査したのは588人でした。

 東京都の累計の感染者数は287万490人となり、累計の死者数は5214人になりました。

 2022年8月27日(土)

🟧モデルナがファイザーとビオンテック提訴 mRNAワクチン特許訴訟再燃

 新型コロナウイルスワクチンの特許を巡り、アメリカのバイオ医薬ベンチャーのモデルナが26日、ライバルであるアメリカのファイザーとドイツのビオンテックを訴えると発表しました。同日付で、アメリカのマサチューセッツ州の地方裁判所とドイツのデュッセルドルフ地方裁判所に訴訟を提起するとしています。

 モデルナはワクチンを構成するメッセンジャーRNA(mRNA)技術を模倣したと主張しています。mRNA技術はほかのワクチンや免疫疾患などさまざまな治療領域に応用される可能性が高く、訴訟により競合の参入をけん制する狙いがありそうです。

 訴訟はmRNAワクチンの設計に焦点を当てています。モデルナは2010年から2016年にかけて出願した特許について、許可なく使用されたと主張しています。これに対しビオンテックは「あくまでオリジナル技術で、特許侵害の申し立てについては積極的に抗弁する」との声明を出しました。

 体内で安全に使用できるmRNA技術の基本設計は、アメリカのペンシルベニア大学にいたカタリン・カリコ博士(現ビオンテック上級副社長)らが中心となって開発した経緯があります。mRNAを医薬品として活用する上で重要なこの特許について、モデルナとビオンテックはそれぞれペンシルベニア大学からサブライセンス権を取得。モデルナはこの技術を改良してワクチンなどに使用しているとみられています。

 今回、ファイザーとビオンテックを訴えるモデルナは、自らもmRNAを巡る特許トラブルを抱えています。モデルナのコロナワクチンはアメリカ国立衛生研究所(NIH)と開発した製品でしたが、特許出願に当たりNIHの研究者らを除外したためNIH側は反発しています。

 また、ワクチンを構成する脂質ナノ粒子(LNP)技術については、特許を持つバイオ企業のアービュタス・バイオファーマの権利無効化を訴えたものの失敗。その後「モデルナが持つLNP技術はアービュタスの特許に抵触しない」との主張を展開しています。LNP技術を巡ってモデルナは、別のバイオ企業であるアメリカのアルナイラム・ファーマシューティカルズから特許侵害で訴えられています。

 もっともこうした特許訴訟は製薬業界で頻発しています。特に売上高が1000億円を超えるような大型製品が登場すると、ライバル同士の特許訴訟が過熱しており、がん免疫薬「オプジーボ」と「キイトルーダ」が実用化された際も、特許訴訟が相次ぎました。

 ただモデルナはパンデミック(世界的な大流行)期間中は関連特許を行使しないと表明しており、3月8日より前に発生したワクチン販売については損害賠償を求めない意向で、現在流通するファイザー・ビオンテック製のワクチンの販売差し止めも求めません。

 その意味で今回の訴訟はライバルの勢いをそぐとともに、競合の参入をけん制する狙いが強そうです。今後はファイザー側からの対応を含め、さまざまな訴訟が相次ぐ可能性があります。パンデミックの混乱がある程度落ち着いてきたことで、mRNAを巡る製薬会社間の特許紛争が再び顕在化した格好です。

 2022年8月27日(土)

🟧ネット販売可能なコロナ抗原検査キット、厚労省が初承認 スイスのロシュ社製

 新型コロナウイルスに感染したかどうかを調べる抗原定性検査キットについて、厚生労働省は24日、スイス製薬大手ロシュ傘下で検査薬事業を手掛けるロシュ・ダイアグノスティックス(東京都港区)の製品を、インターネット販売も可能な一般用医薬品(OTC)として承認しました。国内でOTCとしてコロナ検査キットが承認されたのは初めて。

 厚労省によると、ネット販売できるのは、実店舗を持つ薬局などに限られます。薬剤師がメールなどで使い方や注意点を説明し、購入者が理解したことを確認した上で販売します。

 ロシュの検査キットは鼻の穴に綿棒を入れて、粘膜の表皮を採取して検査します。15分ほどで結果がわかります。陽性の場合、医療機関を受診します。

 国が性能などを確認して「医療用」として承認され、薬局で販売していました。今回の承認により、医療用を扱えないドラッグストアでも、薬剤師の説明を対面で受ければ購入することができます。

 ロシュは19日に承認の申請をしており、9月中旬の発売を目指しているといいます。

 2022年8月27日(土)

🇨🇮高アルドステロン症

副腎皮質ホルモンのアルドステロンの過剰分泌によって起こり、筋肉の弱化、高血圧がみられる疾患

高アルドステロン症とは、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの一つのアルドステロン(鉱質コルチコイド)の過剰分泌により、カリウムの喪失が起こり、筋肉の弱化、高血圧がみられる疾患。アルドステロン症とも呼ばれます。

この高アルドステロン症は、本来のアルドステロンの分泌組織である副腎(ふくじん)皮質の異常によって起こる原発性アルドステロン症と、ほかの臓器の疾患に続いて起こる続発性アルドステロン症に大別されます。

原発性アルドステロン症は、初めて報告したアメリカのコン医師にちなんで、コン症候群とも呼ばれます。

副腎皮質の片側の腫瘍(しゅよう)、または両側の副腎皮質の肥大増殖が原因となって、原発性アルドステロン症は起こります。腫瘍の場合は、ここからアルドステロンが多量に分泌され、肥大増殖の場合は、副腎全体からアルドステロンが出てきます。

アルドステロンは腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧になります。また、尿の中にカリウムを排出する作用を持つため、アルドステロンが過剰になると血液中のカリウムが減って、低カリウム血症となり、筋力の低下による四肢の脱力や、疲れやすいなどの症状が引き起こされます。

そのほか、低カリウム血症により尿量が多くなり、口の渇きがみられたり、発作的に数時間の間、手足が動かなくなる周期性四肢まひが起こったり、テタニー発作という痛みを伴う筋肉の硬直現象が起こることもあります。

高血圧に低カリウム血症を合併していたら、この原発性アルドステロン症が疑われます。治療しないでほうっておくと、高血圧が長く続くために体のいろいろな臓器に障害が起こってきますので、内科、ないし内分泌代謝内科の専門医を受診することが勧められます。

一方、続発性アルドステロン症は、ほかの臓器の疾患により、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系というホルモン系が刺激を受け、結果として過剰なアルドステロンが分泌されることが原因となって起こります。

エストロゲン製剤(卵胞ホルモン製剤)に起因する高血圧や、腎血管性高血圧、妊娠高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫、傍糸球体細胞腫(しゅ)など高血圧の疾患から発生するもののほか、うっ血性心不全、偽性低アルドステロン症、腹水を随伴させた肝硬変、下剤および利尿薬などの不適切利用、ネフローゼ症候群、バーター症候群、ギッテルマン症候群といった高血圧以外の疾患から発生するものがあります。

レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を除いたものでは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した高カリウム血症によって引き起こされる傾向にあります。

主に現れる症状は、浮腫(ふしゅ、むくみ)、下肢脱力、筋力低下であり、これらは低カリウム血症を基礎にして生じ、どの続発性アルドステロン症にも同じく現れます。また、続発性アルドステロン症を招いている元となる疾患の症状も示されます。例えば、腎血管性高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫では高血圧を伴いますが、バーター症候群、心不全や肝硬変などの浮腫性疾患では高血圧を伴いません。

高アルドステロン症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による原発性アルドステロン症の診断では、アルドステロンの過剰分泌を確かめるため、血液中、尿中のホルモンを測定します。アルドステロンは腎臓から分泌されるレニンというホルモンによって調節されていますが、原発性アルドステロン症のように、副腎から勝手にアルドステロンが出てくると、レニンはその働きを控えます。そこで、診断のためには血漿(けっしょう)レニン活性が抑制されていることを確認します。

腫瘍か肥大増殖か、また、左右どちらの副腎に腫瘍があるのかなどを判断するため、腹部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、あるいは副腎シンチグラフィーを行います。腫瘍はしばしば小さく、また多発性のこともあり、これらの検査で診断できない場合があります。その場合は副腎の近くの血管にカテーテルを挿入して、そこから採血する副腎静脈血サンプリングという検査を行うこともあります。

内科、内分泌代謝内科の医師による原発性アルドステロン症の治療では、腫瘍による場合、その腫瘍を手術で摘出します。何らかの理由で摘出手術ができない場合や、肥大増殖の場合は内服薬で治療を行います。アルドステロンの産生を制限する目的でトリロスタン(デソパン)、作用を阻害する目的でスピロノラクトン(アルダクトン)などを用います。

原発性アルドステロン症が治れば、血圧は徐々に低下します。しかし、疾患の期間が長く高血圧が長く続いた場合は、血圧が下がりにくいこともあります。

内科、内分泌代謝内科の医師による続発性アルドステロン症の診断では、元となる疾患が明らかとなり、低カリウム血症がみられ、アルドステロンおよびレニンの両者が高値を示せば、確定します。避妊薬、下剤、利尿薬などの服用している薬剤についての情報も重要となります。

内科、内分泌代謝内科の医師による続発性アルドステロン症の治療では、基本的に元となる疾患の是正が中心となります。

浮腫や低カリウム血症などが継続してみられ、元となる疾患の治療も難しいとされるケースにおいては、スピロノラクトンを利用します。以上の治療方法で改善がみられない場合においては、カリウム製剤を利用します。そのほか、非ステロイド性抗炎症薬の一つであるインドメタシンがバーター症候群に有用とされる場合もあります。

なお、副作用などの理由からスピロノラクトンを適用できない場合、トリアムテレン(トリテレン)を使用します。ただし、抗アルドステロン様の作用は有しません。

🇧🇫口囲皮膚炎(酒さ様皮膚炎)

副腎皮質ホルモン外用剤の副作用で、口の周囲に小さくて赤い吹き出物が現れる皮膚病

口囲(こうい)皮膚炎とは 鼻を中心として両ほおが赤くなる酒さ(赤鼻、赤ら顔)に似た症状が現れる酒さ様皮膚炎のうち、口の周囲にのみ症状が現れる状態。

比較的長期間に渡って、顔に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を使用したことによる副作用が主な原因で、20歳ぐらいから中年にかけての女性の顔面に多くみられます。

口囲皮膚炎では、口の周囲に小さくて赤い吹き出物が現れます。酒さ様皮膚炎では、毛細血管が拡張して赤ら顔になるほか、にきびのような小さく赤い吹き出物や、膿胞(のうほう)ができます。火照りやぴりぴり感を伴い、中にはかゆみを感じる人もいます。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤の使用をやめると、一時的にさらに症状が悪化するために、中止することができないと、ますます悪化していきます。

この口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎は、顔以外の皮膚ではあまりみられません。強力な副腎皮質ホルモン剤、特に構造式でフッ素を含有する副腎皮質ホルモン軟こうを外用した時に起こるとされますが、それ以外の副腎皮質ホルモン軟こうでも起こることがあります。化粧品を始め、シャンプーやリンスでかぶれた際に、市販の副腎皮質ホルモン剤が入ったかぶれ止めの薬を顔に長期間、連用するなどは、注意したほうがよいでしょう。

アトピー性皮膚炎の発症者で、顔の湿疹(しっしん)に連用して起こる場合もあります。副腎皮質ホルモン軟こうには、血管収縮作用があるために、外用時は赤みが除かれ肌が一時的に白くきれいに見えますが、長い間使用していると、口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎になりかねません。女性が化粧品の下地クリームとして長期間、連用して起こる場合もあります。

口囲皮膚炎の検査と診断と治療

症状を自覚した時は、皮膚科を受診します。アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎を治療するために、副腎皮質ホルモン(ステロイド)軟こうを用いて発症した場合は、掛かっている医師に相談します。

治療の基本は、副腎皮質ホルモン軟こうの外用を中止すればよいのですが、実際には難しさがあります。外用を中止すると、数日後から、口囲皮膚炎では口の周囲の赤い吹き出物、酒さ様皮膚炎では顔面の赤み、はれがますます強くなり、火照り感が強く、我慢できなくなるほどに悪化します。この状態がひどい時は、3週間から2カ月くらい続くこともあり、その後は次第に症状が消えていきます。

問題はこの悪化する時期をどう治療するかで、外出もできないと訴える発症者もいます。精神的苦痛や不安を伴うので、入院するのも選択肢に入ります。徐々に効果の弱い副腎皮質ホルモン軟こうに変えていくとか、全身的に副腎皮質ホルモンの内服を行って炎症を抑え、徐々にその量を減らす方法もありますが、この方法では軽快するまでに、かなり長期間を要することがあります。

軽いケースでは、テトラサイクリンなどの抗生物質とビタミンB2の内服で、症状が改善されます。アトピー性皮膚炎がある場合は、副腎皮質ホルモン軟こうの代わりに、タクロリムスという免疫抑制剤の軟こうを用いたりします。

口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎を予防するためには、顔にはなるべく副腎皮質ホルモン含有軟こうを使用しないことです。かぶれやアトピー性皮膚炎で炎症症状が強く、どうしても顔にこの軟こうを使わなければならない時は、できるだけ短期間に抑え、症状が軽快すれば、早めに副腎皮質ホルモンを含まない軟こうに変えます。そのためには、外用剤でも必ず皮膚科専門医の指示に従って、使用する必要があります。

日常生活では、皮膚内の毛細血管を広げる働きのある食品は、避けなくてはなりません。具体的には、香辛料の効いた食品、アルコール飲料、コーヒーなどのカフェイン入り飲料などです。化粧をする人は、腕に試してみるパッチテストをしてから使うように心掛けます。

🇹🇬高LDLコレステロール血症

動脈硬化に関係が深いLDLコレステロールが高いタイプの脂質異常症

高LDLコレステロール血症とは、動脈硬化に関係が深いLDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高いタイプの脂質異常症。

血液中に含まれる脂質成分であるLDL(低比重リポ蛋白〔たんぱく〕)が血液中に140mg/dl以上と多く存在する状態で、LDLは血管壁に取り込まれて蓄積し動脈硬化を起こすため、虚血性疾患のリスクを非常に高めるとされています。

脂質異常症は、血液の中を流れる脂質成分である総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、中性脂肪(トリグリセライド)が高く、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い状態が継続する疾患。2007年以前は、高脂血症と呼ばれていました。

脂質異常症は、動脈硬化症などの危険因子の一つです。動脈硬化は血管壁が分厚くなり、血管の柔軟性が失われた状態で、血管が損傷したり、血液の流れが滞ったりして、最後には脳卒中や心筋梗塞(こうそく)など、命にかかわる重大な病気を引き起こす可能性があります。

コレステロールには、肝臓で作られたコレステロールを体中の細胞に運ぶ働きをするLDLに包まれたLDLコレステロール(悪玉コレステロール)と、余分なコレステロールを回収して肝臓に戻す働きをするHDL(高比重リポ蛋白)に包まれたHDLコレステロール(善玉コレステロール)があります。

どちらも大切な役割を果たしていますが、脂質が多すぎる食事などにより、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が必要以上に増えると、血管壁に必要以上にコレステロール がたまり、動脈硬化が進みやすくなります。

悪者と思われがちなコレステロールは、実は体にとって重要なものです。コレステロールは細胞膜やホルモン、脂肪の消化を助ける胆汁酸などを作り出すのに欠かせません。また、中性脂肪もエネルギーの貯蔵庫であり、中性脂肪を蓄えた脂肪細胞には、衝撃から内臓を守るクッション役、寒さや暑さから身を守る断熱材などの役割があります。

しかし、不適切な食生活や運動不足などによって、体内のコレステロールや中性脂肪が過剰になると、血管の健康が損なわれます。必要なものであっても、多すぎれば問題を起こすので、適量を保つことが大切 。

近年、日本人のコレステロール値が高くなった原因として挙げられるのは、食生活の欧米化と運動不足です。日本人のコレステロール値はもともと低かったのですが、ここ半世紀ほどの間に食生活がかつての魚や野菜中心の和食から、脂質の多い肉中心の食事に変わりました。食事における三大栄養素のバランスをみると、脂質の占める割合が大きく増えています。

同じような食事、生活習慣でも、高LDLコレステロール血症になりやすい人となりにくい人がいます。女性ホルモンにはHDLコレステロール(善玉コレステロール)を上げる作用があり、若い女性は男性よりも高LDLコレステロール血症になりにくいのですが、閉経を過ぎるとLDLコレステロール値が高くなります。

ストレスも、値を高める原因の一つ。ストレスが加わると、体内では闘うための準備として、血中に糖や脂肪、カルシウムなどのミネラルが分泌され、血糖値やHDLコレステロール(悪玉コレステロール)、血圧などが上がります。

また、親や祖父母、兄弟姉妹など血のつながった家族に脂質異常症や動脈硬化症の人がいる場合も、高LDLコレステロール血症になるリスクが高くなります。

動脈硬化、さらには冠動脈疾患や脳卒中などに至らないようにするには、LDLコレステロールを適切にコントロールすることが重要です。LDLコレステロールが高い状態のままでいると、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患による死亡の危険度は上がる一方です。

総コレステロールが160〜179mg/dlの人を基準にした場合、200〜219mg/dlの人では約1・4倍、220〜239mg/dlの人では約1・6倍、240〜 259mg/dlの人では約1・8倍、260mg/dl以上の人では3・8倍と4倍近くまで高くなります。

高LDLコレステロール血症は放置しておくと、血管の動脈硬化が徐々に進行していくものの、初期の段階では体の自覚症状は全くないために、血液検査で初めてわかることがほとんどです。無症状であっても正しい治療が必要なので、自己判断せずに医療機関に相談して下さい。内科、ないし内分泌・代謝科が、担当の診療科です。

高LDLコレステロール血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中のコレステロール、中性脂肪(トリグリセライド)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。朝食前の空腹時に採血します。LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の値は、これらから計算することもできますが、直接、測定する方法もあります。

脂質異常症の診断基準では、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が140mg/dl以上を高LDLコレステロール血症、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が120〜139mg/dl以上を境界域高LDLコレステロール血症とするほか、中性脂肪(トリグリセライド)が150mg/dl以上を高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症) 、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が40mg/dl以下を低HDLコレステロール血症とします。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、食餌(しょくじ)療法、運動療法、薬物療法を行ない、LDLコレステロール値を下げます。

LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の管理目標値は、心筋梗塞や狭心症といった冠動脈疾患を持っている人の場合、最もリスクが高いと判断し、同じ疾患を繰り返さないように、100mg/dl未満と一番厳しく設定します。また、年齢、性別にかかわらず、糖尿病や慢性腎臓(じんぞう)病、非心原性脳梗塞、末梢(まっしょう)性動脈疾患などの疾患を持っている人の場合、冠動脈疾患を起こすリスクが高いため、120mg/dl未満に設定します。

○男性45歳・女性55歳以上○高血圧○喫煙○家族に冠動脈疾患がいる○低HDLコレステロール血症という主要危険因子を3個以上持っている人の場合、120mg/dl未満に設定します。主要危険因子を1から2個持っている人の場合、140mg/dl未満に設定します。主要危険因子を持っていない人の場合、160mg/dl未満に設定します。

いずれの場合も、HDLコレステロール(善玉コレステロール)値は40mg/dl以上、中性脂肪(トリグリセライド)値は150mg/dl未満を目指します。

食餌療法では、欧米風の高カロリー食品やコレステロール値の高い食品、脂分の多いファーストフードの過剰な摂取を制限します。そして、野菜や果物、魚といった低カロリー食や低脂肪食、低炭水化物食を中心とした食生活に切り替えます。

運動療法では、積極的に運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、高LDLコレステロール血症の改善法、予防法として効果的です。

食事療法、運動療法、生活習慣全般の見直しで十分な値までLDLコレステロール値が下がらない場合、もしくは危険因子が多く、冠動脈疾患を起こすリスクが高い場合には、薬物療法を併用します。

主に、一般にスタチンと呼ばれているHMG‐CoA還元酵素阻害薬を使います。この種類の薬は、コレステロールの合成を抑制するものです。そのほかにも、コレステロールの吸収阻害剤や、レジンと呼ばれる陰イオン交換樹脂やプロブコール、ニコチン酸誘導体を使います。

🇬🇭後外側裂孔ヘルニア

横隔膜に生まれ付き開いている穴を通して、腹腔の臓器が胸腔へ脱出

後外側裂孔(こうがいそくれっこう)ヘルニアとは、横隔膜に生まれ付き開いている穴を通して、腹腔(ふくくう)内の臓器が胸腔内に入り込んだ状態。先天性の横隔膜ヘルニアの一つで、ボックダレック孔ヘルニア、胸腹裂孔ヘルニア、後外側ヘルニアなどとも呼ばれます。

先天性の横隔膜ヘルニアの中でも、穴の位置や大きさによってはほとんど症状や障害を起こさないものがありますが、後外側裂孔ヘルニアは横隔膜の後ろ外側に穴があるタイプで、多くは生まれた直後から呼吸困難など生命にかかわる重大な症状を来します。新生児2000〜3000人に1人の割合で、認められています。

横隔膜は、肺の下に位置していて胸腔と腹腔を区切る膜で、上のほうは胸膜、下のほうは腹膜で覆われています。この筋肉層の丈夫なドーム状の膜である横隔膜が上下することによって、呼吸ができます。

胎児が母胎にいる時、次第に横隔膜が形成されてきて、妊娠2カ月半ころにはしっかりと横隔膜が胸腔と腹腔を区切るのですが、何らかの原因で横隔膜の後外側孔(ボックダレック孔:解剖学者の名前)がきっちりと閉じ切らないことがあります。このころは、腹腔の外に一度出ていた腸などの臓器が腹腔の中に戻って来る時期で、穴があると臓器が胸腔に入り込むことになり、横隔膜が閉じようとしても脱出した臓器がじゃまをして閉じられなくなってしまいます。

小腸、大腸、胃、脾(ひ)臓,肝臓などたくさんの臓器が胸腔に入り込むと、穴の開いていない側の肺も圧迫され、肺の発達が両側とも障害され、生まれてからひどい呼吸困難を来すこととなります。横隔膜にできる穴はどちらの側にも発生しますが、左側が75パーセントと多く、時には片側の横隔膜がほとんどできていないこともあります。

症状の程度は、発症の時期により異なります。胎児の場合はへその緒から酸素をもらっているので平気なのですが、出生後は自分で呼吸しなければならないため、多くの場合は重症の呼吸不全、高度のチアノーゼを伴った多呼吸が認められます。胸部は膨らんで盛り上がり、逆に、うまく空気が回らない腹部はへこんでいるのも特徴です。呼吸障害が強く、出生直後から人工呼吸管理が必要になります。

特殊な例としては、出生直後には呼吸器症状は示さず、年長になってから、風邪をひいて強いせきをした時や腹部を打撲した時に発症する場合があります。これを遅発性といい、速やかに手当てを受ければほぼ助かります。

後外側裂孔ヘルニア検査と診断と治療

先天性で後外側裂孔ヘルニアを持って生まれてくる場合、大抵は胎児が母胎の中にいるうちに、産科や産婦人科の医師が胎児超音波検査で気付きます。この場合は周産期センターに妊婦を搬送し、新生児科医、小児外科医の立ち会いのもとに帝王切開で出産し、直ちに治療を開始します。

成長すればするほど脱出した臓器が胎児の肺を押しつぶし、危険な状態になっていくからで、出生直後から人工呼吸管理を行った上で、体の血液循環を安定させ、できるだけ早期に、手術に耐えられるようになった時点で速やかに、生育時に閉じ切れなかった横隔膜を閉じる手術が行われます。

すべての医療機関で可能な方法ではないものの、人工肺(ECMO)という特殊装置を用いて新生児の血液循環を改善させてから、手術が行われることもあります。横隔膜の欠損が大きい場合は、人工膜を使用して横隔膜の形成手術が行われます。

しかし、最高の環境で早期に手術が行われても、生存率は芳しくないのが実情です。出生後24時間以内の発症例は予後が悪く、救命率は約50パーセント程度と見なされています。出生後1日以上を経過してから呼吸障害などで後外側裂孔ヘルニアが見付かった場合や、生後たまたま他の疾患の検査時に見付かった場合は、肺の発育が良好なため、治療成績は格段に良好です。

年長になってから発症する遅発性の後外側裂孔ヘルニアでは、小児科や小児外科医、消化器外科の医師による治療で100パーセント救命されます。

🇳🇪高カイロミクロン血症

血液中にカイロミクロンが異常に蓄積し、時に急性膵炎を発症する疾患

高カイロミクロン血症とは、中性脂肪に富む軽くて大きなリポ蛋白(たんぱく)であるカイロミクロンが血液中に異常に増加し、黄色腫(しゅ)や、時に急性膵(すい)炎を発症する疾患。脂質異常症(高脂血症)の一つです。

脂質異常症(高脂血症)は大きく5つに分類され、その中ではⅠ型脂質異常症(高脂血症)でカイロミクロンの増加を呈し、V型脂質異常症(高脂血症)でもカイロミクロンとVLDL(超低比重リポ蛋白)の増加を呈し、高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)を示します。

カイロミクロンは中性脂肪を分解する酵素のリポ蛋白であり、トリグリセライド(中性脂肪)が1000mg/dl以上の高トリグリセライド血症(高中性脂肪血症)では、カイロミクロンが増加して高カイロミクロン血症を伴うことが多くなります。

Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)は、原発性高カイロミクロン血症、家族性高トリグリセライド血症とも呼ばれ、常染色体劣性遺伝を示すまれな疾患で、100万人に1人が発症するといわれています。

その原因は、中性脂肪を分解する酵素であるリポ蛋白リパーゼ(LPL)活性の低下であり、それにはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的欠損に加え、この分解反応に必要なアポリポ蛋白C-Ⅱ、アポリポ蛋白A-Ⅴ、GPIHBP1、LMF1の先天的欠損、さらにはリポ蛋白リパーゼ(LPL)の阻害物質(インヒビター)の存在が挙げられます。

V型脂質異常症(高脂血症)は、成人期に発症し、原因不明です。リポ蛋白リパーゼ(LPL)の先天的欠損、アポリポ蛋白C-Ⅱなどの先天的欠損を認めません。

発症の要因とされるのは、過食、チーズや卵などの酪農製品の取りすぎ、アルコール多飲、運動不足、肥満、糖尿病などのほかの疾患、利尿剤やβ遮断薬などの治療薬に含まれる物質、エストロゲンやステロイド補充によるものなどが挙げられます。

高カイロミクロン血症では、血液中に含まれるトリグリセライド(中性脂肪)が1000mg/dlを超えると、急性膵炎の発症リスクが高まり、発症例ではほとんどが2000mg/dlを超えているとされます。

Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)では、小児期から脂肪摂取後の膵炎による上腹部痛を繰り返します。また、肝臓や脾(ひ)臓のはれが起きます。皮膚には、黄色腫という小さなピンクがかった黄色い皮疹(ひしん)ができます。

トリグリセライド(中性脂肪)が4000mg/dlを超えると、網膜血管が白色ピンク状に見える網膜脂血症を示します。

高カイロミクロン血症の検査と診断と治療

内科、内分泌・代謝科の医師による診断では、血液検査で血中の総コレステロール、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)、HDLコレステロール(善玉コレステロール)の値を測定します。食後12時間以上の空腹時に採血します。

血液検査では、中性脂肪(トリグリセライド)の値が基準の値を大きく上回る場合や、HDLコレステロール(善玉コレステロール)が基準の値を下回る場合に、治療の対象とすることを確定します。

内科、内分泌・代謝科の医師による治療では、Ⅰ型脂質異常症(高脂血症)の場合、薬物療法の効果は限定的であるため、食餌(しょくじ)療法を中心に、運動療法も行ないます。

食餌療法では、1 日の脂肪摂取を15~20g 以下、または総カロリーの15%以下、食後でも血液中に含まれるトリグリセライド(中性脂肪)が1500mg/dlを超えない程度にまで、食事での脂肪摂取を制限します。極端な制限が行われるため、ご飯やパンの量を1・2~1・5倍程度食べることにより、1日のエネルギー量を確保することになります。カイロミクロンの生成を抑える中鎖脂肪酸(MCT)製品を使うことも、治療および予防に有効です。

運動療法では、積極的にウォーキングや水中歩行などの適度な有酸素運動を行ないます。適切な体重の維持につながるばかりか、適度な運動を行なうことで基礎代謝の向上効果が期待できます。

また、喫煙、ストレス、過労、飲酒、睡眠不足など生活習慣全般の見直しも、治療のスピードを早め、症状の悪化を予防するのに効果的です。

V型脂質異常症(高脂血症)の場合、成人の発症の要因とされる過食、アルコール多飲、運動不足、肥満、糖尿病などの是正を行い、薬物療法としてフィブラート系薬物のベザフィブラートやフェノフィブラート、およびオメガ3系多価不飽和脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)製剤やドコサヘキサンエン酸(DHA)製剤を用います。

急性膵炎の発症、重症度により、生命予後は左右されます。

🇧🇯口角炎

さまざまな原因により、唇の両端である口角部が切れたような状態になる炎症性疾患

口角炎とは、唇の両端である口角部が切れたような状態になる炎症性疾患。口角びらん、口角亀裂(きれつ)とも呼ばれ、俗にカラスの灸(きゅう)とも呼ばれます。

口角部の皮膚から粘膜にかけて赤くなり、次いで亀裂が生じて出血してただれ、潰瘍(かいよう)となります。そのうち、かさぶたで覆われます。普通は、左右の口角部に同時に生じることが多いようです。

大きく口を開けると痛みがあり、かさぶたがはがれて出血したりしますが、一般には2週間程度で治ります。

しかし、長期化して数カ月も治らないケースや、再発を繰り返すケースもあります。

直接的には、持続的な唾液による湿潤、連鎖球菌やブドウ球菌などの細菌の感染、真菌の一種であるカンジダ菌などの感染が原因となって、口角炎が起こります。

高熱の出る疾患、ビタミンB2やビタミンB6やニコチン酸などのビタミン欠乏、貧血や糖尿病などの重症の慢性疾患による衰弱など、全身的な疾患が誘因になることもあります。

また、胃腸などの消化器官の不調、体調の乱れ、ストレス、口腔内の不衛生が誘因になることもあります。

原因が複数あるため自分で見極めるのが危険なケースもあること、全身的な疾患が誘因となって長期化、再発化しているケースもあることから、症状がひどい場合は皮膚科、内科、歯科口腔(こうくう)外科などを受診することが勧められます。

口角炎の検査と診断と治療

皮膚科、内科、歯科口腔外科の医師による診断では、どの疾患がもとにあって発症したのかを調べます。病変部の皮膚を数ミリ切り取って調べる病理組織検査である皮膚生検は、もとの疾患が何かを知る上で有用です。

皮膚科、内科、歯科口腔外科の医師による治療では、もとの疾患があればそれを治すことが先決です。そうでないと、いったん治っても再発を繰り返します。

全身的にはビタミン剤や鉄剤の服用が有効であることが多いのですが、糖尿病によって抵抗力が低下している場合には、抗菌剤(抗生物質)や抗真菌剤の入った軟こうを口角に塗ったりもします。

細菌やカンジダ菌の感染が原因になっている場合も、抗菌剤や抗真菌剤の入った軟こうを口角に塗ります。

また、1週間くらいは大きく口を開けないように注意して生活することも必要です。心身の安静とバランスのとれた食事を心掛け、口唇と口腔内の清潔保持に努めることも必要です。

🇧🇯高カリウム血症

血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態で、重大な障害を生じる危険性も

高カリウム血症とは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した状態。普通は、腎臓(じんぞう)が十分なカリウムを排出しないことが原因で起こります。

カリウムは細胞、神経、筋肉が正常に機能するのに必要で、体内のカリウムの98パーセントが細胞の内部にあり、残りのわずか2パーセントが血液中など細胞の外部に存在しています。しかし、血液中のカリウムは細胞の働きを調節する上でとても重要で、濃度の値が乱れると全身に重大な障害が生じます。

血液中のカリウム濃度は正常値の範囲が通常、3・5~5・0mEq/lと狭く、その範囲内に維持しなければなりません。体は、取り込んだカリウムの量と失った量を一致させることで、そのバランスを保ちます。食物や電解質を含んだ飲料から取り込み、主に尿と一緒に排出されることで失い、消化管や汗からも失います。健康な腎臓は、食事からの摂取量の変化に合わせて、カリウムの排出量を調整できますが、限界を超えると徐々に血液内に蓄積され、高カリウム血症を生じます。

軽度の高カリウム血症の原因として最もよくみられるのは、腎臓への血流を減らす薬や、腎臓が正常な量のカリウムを排出するのを阻害する薬の使用です。このような薬には、トリアムテレン、スピロノラクトン、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬があります。

アジソン病も、高カリウム血症の原因になります。アジソン病になると、腎臓を刺激してカリウムを排出させるホルモンのアルドステロンを副腎が十分に分泌しなくなります。この状態の時に、けが、発熱などで強いストレスがかかった場合、急性副腎不全を来して、重度の高カリウム血症を引き起こすことがあります。

多量のカリウムが細胞から急に放出された時にも、高カリウム血症は生じます。細胞からカリウムが突然放出されるのは、衝突事故による外傷に伴う広範囲の筋組織の破壊、重度のやけど、コカインの多量吸入などが原因です。カリウムが細胞から血液中に急激に移動すると、腎臓に過度の負担を与え、その結果、生命にかかわる高カリウム血症になります。

軽度の高カリウム血症は、ほとんど症状を起こしません。普通は、定期的な血液検査を受けた際に発見されるか、心電図の変化に医師が気付いて初めてわかる程度です。

血液中のカリウム濃度が5・5mEq/l以上になると、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)などの胃腸症状、しびれ感、知覚過敏、脱力感などの筋肉・神経症状、不整脈などの症状が現れます。血液中のカリウム濃度が7~8mEq/lを超えると、危険な不整脈が現れ、心臓が止まる危険性が生じます。

高カリウム血症に気付いたら、早めに内科の専門医を受診し、精密検査と治療を行う必要があります。

高カリウム血症の検査と診断と治療

内科の医師による診断では、血液中のカリウム濃度を測定します。合併している疾患からカリウム濃度上昇の原因は予想できることが多いのですが、動脈血ガス分析、心電図検査、腎機能検査、尿検査、副腎皮質ホルモンの測定などが併せて行われ、詳しい原因も診断されます。

軽度の高カリウム血症であれば、食事によるカリウムの摂取量を減らすか、腎臓がカリウムを排出するのを阻害する薬の服用を中止するだけで、治療としては十分です。腎臓が正常に機能していれば、利尿薬を投与してカリウムの排出量を増やします。また、アルドステロン作用を持つホルモン剤を投与することもあります。

重度の高カリウム血症には、迅速な治療が必要不可欠です。消化管からカリウムを吸収し、便と一緒に体外に排出する作用のあるレジン(樹脂)を、経口または浣腸(かんちょう)で投与します。同時に下痢を誘発させて、カリウムを吸収したレジンが速やかに体外へ排出されるようにします。

さらに迅速な治療が必要な場合は、カルシウム、ブドウ糖、またはインスリンを点滴で投与します。カルシウムはカリウム濃度そのものは下げませんが、高濃度のカリウムの影響から心臓を数分間、保護する働きがあります。ブドウ糖とインスリンは、カリウムを血液中から細胞へ移動させ、血液中のカリウム濃度を下げます。

こうした方法で効果がない時や腎不全を起こしている場合は、透析を行って余分なカリウムを取り除く必要があります。

🇳🇬交感性眼炎

片方の目のぶどう膜が損傷する外傷や手術を受けた後、1カ月以上経過してから、反対側の健康な目にも炎症が起こる疾患

交感性眼炎とは、片方の目の虹彩(こうさい)、毛様体、脈絡膜からなるぶどう膜が損傷するような外傷や手術を受けた後、1カ月以上経過してから、反対側の健康な目にも炎症が起こる疾患。

ぶどう膜は、眼球の外膜と内膜に挟まれた中間の層です。この層の膜は外から見えませんが、果物のぶどうの色をしていて、形もぶどうによく似ており、虹彩、毛様体、脈絡膜の3つの部分で構成されています。

虹彩は、瞳孔(どうこう)の周囲にある色の付いた環状の部分で、いわゆる茶目に相当する部分です。カメラレンズの絞りのように開いたり閉じたりして、眼内に入る光の量を調整します。

虹彩に続く毛様体は、いくつかの筋肉が集まった部分で、目のピント合わせをします。毛様体が収縮すると、水晶体が厚くなって近くの物に焦点を合わせることができ、毛様体が緩むと、水晶体が薄くなって遠くにある物に焦点を合わせることができます。同時に、毛様体で作られる房水は、目の内圧を一定に保つのに重要な働きをしています。

脈絡膜は、毛様体の縁から眼球後部の視神経のところまで広がっている部分。最も血管に富んで色素の多い組織で、網膜を裏打ちして目に栄養を与え、暗室効果を作って目を保護する役割を果たしています。

このぶどう膜の一部、あるいは全体が炎症を起こすのが交感性眼炎ですが、外傷や手術を切っ掛けとして、色素細胞が免疫系にさらされることにより色素に富んだぶどう膜に対する自己免疫反応として引き起こされ、多くの場合、外傷や手術を受けてから1カ月から2カ月を経て症状が現れます。

色素細胞に対する自己免疫反応という意味では、原田病と呼ばれる日本人を含め、アジア系の人種で頻度の高いぶどう膜炎と同じ病態であり、経過も似ていますが、外傷や手術が切っ掛けになる点で区別されます。

交感性眼炎の症状としては、原田病と似ており、発熱、のどの痛みなどの風邪のような症状、耳鳴り、難聴、めまい、頭痛などが、目の症状に先立って現れることもあります。時に、頭皮にピリピリするなどの違和感が出てきます。

目の症状は、まぶしい、目の奥のほうが痛い、物が見えにくいなど、通常、両目に現れます。一般的に脈絡膜炎を認め、しばしばその上に滲出(しんしゅつ)性網膜剥離(はくり)を伴います。

目のけがをした後は、眼科医の指示に従って、受傷していない目の定期的なチェックも必要で、異常を感じた場合は速やかに眼科医の診察を受けて下さい。早期治療を行わないと、視力が回復力しない場合もあります。

交感性眼炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、原田病と呼ばれるぶどう膜炎と基本的に同じ検査を行います。

眼底検査を行うと、網膜剥離を伴う特徴的な炎症像がみられます。この滲出性網膜剥離は炎症に伴って起こるもので、通常の網膜に裂孔ができて起こる網膜剥離と違って、手術の必要はありません。炎症を鎮めることによって治ります。

造影剤を注射して蛍光眼底造影検査を行うと、網膜剥離に相当するところで造影剤が漏出するなどの特有の所見が得られます。髄液検査や聴力検査なども必要です。

ほかに血液検査を行うと、白血球の増大、赤沈の高進、CRP(C反応性蛋白〔たんぱく〕)陽性化などの炎症性の反応がみられます。また、白血球の血液型に当たる組織適合抗原(HLA)の中で、DR4またはDR53を持った人によく発症することも原田病と似ています。

眼科の医師による治療は、原田病の治療に準じて、目に永久的な障害が出るのを防ぐため早期に開始します。治療の中心は、炎症を鎮めるためのステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の大量点滴投与です。

ホルモンの一種であるステロイド剤を大量に投与すると、血栓の形成、高血圧、血糖上昇などの重い副作用が出る危険性もあるので、入院が必要です。超大量のステロイド剤を短期間に集中して投与する、いわゆるパルス療法が行われることもあります。免疫抑制薬を使うこともあります。

穿孔(せんこう)性の目の外傷を受けた人で、HLAーDR4またはHLAーDR53など遺伝的素因を持つ場合には、十分な経過観察が必要です。

重篤な交感性眼炎を起こした片方の目の視機能の回復が全く期待できない場合には、もう片方の目に交感性眼炎が起こる危険性を最小限にするために、眼球摘出や眼球治療の外科手術を行うこともあります。

🇳🇬睾丸炎(精巣炎)

細菌やウイルスの感染などで、睾丸に炎症が起こる疾患

睾丸(こうがん)炎とは、細菌やウイルスなどに感染することによって、男性の生殖器官である睾丸に炎症が起こる疾患。精巣炎とも呼ばれます。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸炎の原因のほとんどは、後部尿道からの細菌の感染によるものです。原因細菌は、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌など。細菌の感染によって睾丸だけに炎症が起こることはまれで、その多くは細菌性の副睾丸炎(精巣上体炎)が波及して睾丸にも炎症が起きます。

また、流行性耳下腺(せん)炎(おたふく風邪)を起こすムンプスウイルスの血行感染によって起こることがあり、思春期以降に流行性耳下腺炎にかかった人の10〜30パーセントが睾丸炎も発症します。両方の睾丸に炎症を起こすと、後遺症として無精子症など男性不妊の原因になることがあります。

そのほか、外傷で睾丸が強く打たれた時に、睾丸炎が起こることもあります。

症状は、急激な寒けと震えがきて、高熱が出ます。陰嚢は赤くなってはれ上がり、熱感を持ち、睾丸も大きく硬くなり、強く痛みます。圧痛も激しく腹部まで及びます。ムンプスウイルスによるものは、流行性耳下腺炎を発症した4〜7日後に、急激な睾丸の痛みとはれが起き、発熱や倦怠(けんたい)感などが現れます。通常、排尿に関する症状はありません。

睾丸炎の検査と診断と治療

睾丸炎(精巣炎)を発症したら、できるだけ睾丸へのダメージを少なくするため家で安静にし、陰嚢をつり上げて固定し、さらに冷湿布をすると痛みは軽くなります。 男性不妊になるのを予防するために、やはり一度は泌尿器科の専門医を受診しておいたほうが安心です。

医師の側は、睾丸の症状から簡単に診断できます。ムンプスウイルスによるものは、流行性耳下腺炎の先行と、咽頭や精液からのウイルス分離や、血液中のウイルスに対する抗体の値が初回より2回目の測定で上昇することで、確定診断できます。尿中に、うみや細菌は認められません。

治療としては、全身の安静、陰嚢の固定や冷湿布とともに、大腸菌、ブドウ球菌などの細菌が原因の時は抗生物質を強力に投与します。

ムンプスウイルスが原因の時は、抗生物質は有効ではないため、熱を抑えるための消炎鎮痛剤を投与します。1週間程度で炎症は治まりますが、長期化したり両側に炎症を起こすと、睾丸の中の精子のもとになる細胞が死んでしまい、睾丸が委縮し、不妊症の原因になってしまいます。20〜30パーセントに起きると見なされます。

🇨🇲睾丸過剰症

男性の睾丸が3個以上存在する先天性奇形

睾丸(こうがん)過剰症とは、男性の下腹部に睾丸、すなわち精巣が3個以上存在する状態の先天性異常。多睾丸症、精巣過剰症、多精巣症とも呼ばれます。

泌尿器系と生殖器系には、その胎生期の複雑な発生過程のために多くの先天性異常が生じやすく、男性の生殖器官である睾丸、すなわち精巣についても数、形態、位置、機能などの異常が知られています。睾丸過剰症も、比較的まれにみられる先天性異常です。

睾丸は本来、陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生していますが、睾丸過剰症では真ん中にある陰嚢縫線で区切られた左右の陰嚢内に、過剰な睾丸を含めて2個の睾丸が重複して存在します。左の陰嚢内に2個存在することが多く、右の陰嚢内に2個存在することもありますが、左右両側の陰嚢内に2個存在することはまれです。

過剰な睾丸はほとんどが陰囊内に存在しますが、睾丸の下降が不十分で陰嚢内に位置せずに途中でとどまっている停留睾丸(停留精巣)などに合併して、脚の付け根の鼠径(そけい)部に存在することもあります。

過剰な睾丸が発生する理由として、胎生6週で構成される生殖隆起(生殖堤)の分割過程での異常、生殖隆起の重複、胎生5週で構成される胎芽期の腎臓(じんぞう)に相当する中腎の部分的な退化の3つが考えられています。

睾丸過剰症は、睾丸(精巣)、精液の通り路である精管(輸精管)、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸(精巣上体)の関係から6型に分類されています。

第1型は、睾丸、精管、副睾丸を重複するもの。第2型は、重複する一方が睾丸、副睾丸のみで精管を有しないもの。第3型は、重複する一方が睾丸、精管のみで副睾丸を有しないもの。第4型は、重複する一方が睾丸のみで副睾丸、精管を有しないもの。第5型は、重複する睾丸に副睾丸が付着し、これに続く1本の精管を共有するもの。第6型は、重複する睾丸、副睾丸が1本の精管で連結されているもの。このうち、第5型が最も多いとされています。

睾丸過剰症には、停留睾丸(停留精巣)のほか、鼠径ヘルニア、陰囊水腫(すいしゅ)、精索水腫、精巣捻転(ねんてん)、睾丸(精巣)腫瘍(しゅよう)、奇形腫、胎児性がんなどを合併することがあります。

睾丸過剰症を発見された年齢は、2歳から49歳と幅広いものの、平均年齢は20歳で若年者に多くなっています。幼少時は、停留睾丸、鼠径ヘルニアなどほかの疾患の治療時に発見されることが多く、幼少時以降では無痛性陰囊内腫瘤(しゅりゅう)を主訴として受診した際に、診断されることが多くなっています。

睾丸過剰症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、まず陰嚢の触診による腫瘤の触知を図ります。超音波(エコー)検査を行うと、睾丸と等信号の像が得られ、陰囊水腫、精索水腫との鑑別が可能となります。悪性腫瘍の可能性もあるため、 CT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを行い、骨盤内病変の有無を調べることもあります。

最終的には、過剰な睾丸に針を刺して組織を採取し、その組織を顕微鏡で見て検査を行う生検も含め、手術で摘除した組織の病理組織診によって、確定します。

鑑別すべき疾患としては、悪性腫瘍のほか、睾丸腫瘍、副睾丸腫瘍、精液瘤などがあります。

泌尿器科の医師による治療では、ほとんどの場合は診断も兼ねて、過剰な睾丸を手術で摘除します。過剰な睾丸が小さい場合はもちろん、特に、陰囊外の鼠径部に存在する過剰な睾丸は、がん化の危険性を考慮し手術で摘除するべきと考えられています。

また、陰囊内にあり妊孕(にんよう)性を期待できるものに関しても、生検で悪性・異型性を認めるもの、解剖学的には精路を認めても造精能を欠くもの、超音波検査で悪性所見を認めるもの、あるいは本人に過剰な睾丸の摘除の希望がある時、定期的な経過観察が望めない時は、手術で摘除するのが一般的です。

生検で過剰な睾丸が睾丸実質であり、悪性腫瘍でないことを確認した後に温存した場合は、慎重を期した定期的な診察と超音波検査が必要になります。

🇹🇩睾丸結核

結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

睾丸(こうがん)結核とは、結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染することによって起こる疾患。精巣結核とも、結核性精巣炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

>肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、副睾丸(精巣上体)、睾丸(精巣)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の睾丸結核は、結核菌が睾丸に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、副睾丸、睾丸などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、炎症を起こして、精巣などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に睾丸の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、睾丸結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、睾丸と、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸との境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には睾丸と副睾丸を破壊することもあります。初めは片方の睾丸にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である睾丸結核の頻度は低下しています。

睾丸結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

睾丸が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、副睾丸と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

睾丸結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、睾丸や前立線などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、睾丸がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば睾丸結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇹🇩睾丸腫瘍(精巣腫瘍)

睾丸にはれ物ができ、がんであることが多い疾患

睾丸腫瘍(こうがんしゅよう)とは、男性の生殖器官である睾丸に、はれ物ができる疾患。悪性腫瘍、いわゆるがんであることが多く、精巣腫瘍とも呼ばれます。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。睾丸腫瘍の頻度としては10万人に1〜2人の非常に珍しい疾患ですが、好発年齢は0~10歳、20~40歳、60歳以上の3つのピークがあります。

睾丸腫瘍は、セミノーマ、胎児性がん、卵黄嚢(のう)腫瘍、奇形腫、絨毛(じゅうもう)がんと呼ばれるものに区分されます。これらのいずれも成人にはみられますが、セミノーマが最も多く、全体の約半数。乳幼児にみられるのは、卵黄嚢腫瘍と奇形腫。

がんでは進行が速く、リンパ管や血管を通じて容易に他の臓器に転移するので、放っておくと命にかかわることがあります。しかし近年では、治療法の進歩により9割以上の人が完治するようになりました。転移を起こしてしまった人でも適切な治療を行えば7〜8割の人が治りますが、進行した状態では治療が困難な場合もあります。

なぜがんができるのか、本当の原因はまだわかっていません。ただ、停留精巣や精巣発育不全などの疾患を持っている人、胎児期に母親がホルモン剤投与を受けた人は、睾丸のがんになりやすいと見なされています。

症状で最も多いのは、痛みのない睾丸のはれです。時には、痛みを伴うこともあります。一般に、痛みもなく、熱もないために放置しておくと、陰嚢の中の睾丸の一部が硬くゴツゴツしたり、全体的にはれて大きくなってきます。かなり進行すると、腹部が膨らんだり、せきが出て胸が苦しくなるなど睾丸腫瘍の転移による症状が現れます。

睾丸腫瘍の検査と診断と治療

睾丸のはれ物に気付いた場合には、恥ずかしがらずに泌尿器科の専門医を受診します。

医師による診断では、ほとんどの場合、触っただけで判断できます。判断に迷う場合は、懐中電灯を当てて中身が詰まっているかどうか調べたり、超音波で腫瘍の内部を検査します。診断が確定すれば、血液検査で腫瘍マーカーを調べ、がんが他の臓器に転移していないかどうかを全身のCTやアイソトープを使った検査で詳しく調べます。

治療では、まず腫瘍ごと睾丸(精巣)を取り除きます。陰嚢を切開せず、おなかの下のほうに傷ができる高位除精巣術と呼ばれる方法です。睾丸は左右一対ありますから、片方を摘出しても、もう一方が正常に機能していれば、男性ホルモンや精子を産生する能力が低下したり、勃起(ぼっき)能が衰えるような後遺症はありません。

睾丸を摘出した後、疾患がまだ全身に広がっていない時は、一般に再発予防の治療が行われます。医療機関によっては、摘出した後、定期的な精密検査のみの場合もあります。このような治療法で転移がない場合には、9割以上治ります。

すでにリンパ節や肺、肝臓、骨、さらに脳などに転移している場合は、シスプラチン、エトポシド、ブレオマイシンという3種の抗がん剤による治療が追加されます。1回5日間の点滴を3〜4週間おきに繰り返す方法で、3〜4回行うことが標準的。成人に最も多いセミノーマの場合は、放射線治療も有効です。このような治療で転移があるような進んだがんでも、7〜8割が完治します。

なお、転移が見付からないような初期のがんでも、将来2〜3割に転移が現れるため、予防的な抗がん剤投与や放射線治療を行う場合もあります。

🇨🇫口腔異常感症

はれなどの異常が口腔内に存在しないのに、痛み、しびれ、乾燥感などの異常を感じる疾患

口腔(こうくう)異常感症とは、はれや炎症などの異常が口腔内に存在しないのに、痛み、しびれ、乾燥感、知覚過敏、違和感、異物感などの異常を感じる疾患。中でも多いのは、舌の表面には外見上の異常がないのに、舌に痛み、しびれなどを感じる症状で、これを特にに舌痛(ぜっつう)症といいます。

発症者の多くは女性で、年齢的には更年期を迎える40歳代、50歳代に多いのが特徴です。主に舌の先端や側面に、ヒリヒリした痛みや、焼けるような痛み、しびれ、違和感が現れ、長期間続きます。食事がおいしくない、本来の味がしないなどの味覚異常などを併発していることも、しばしばあります。

舌の痛みやしびれは我慢できないほどではないものの、1日中気になって 舌に意識が集中したり、精神的に緊張したりした時に、症状が出やすいようです。口の中が痛いので、イライラしたり、他のことをやる気がそがれたりすることもあります。

食事や会話には支障がないことが多いものの、食べ終わった後や長電話の後に、また午前中よりも夕方から夜にかけて舌の痛みやしびれが悪化する傾向があります。痛む部位が移動することもあり、唇や口蓋(こうがい)にヒリヒリした痛みが現れることもあります。ガムやアメなどを口に入れておくと、少し痛みが紛れることがあります。

不眠、肩凝り、頭痛など自律神経症状を伴うことが多い傾向もあります。

この口腔異常感症は歯科治療の後に発症することがしばしばあり、入れ歯や歯列矯正具が口に合わず物理的な刺激によって痛みが出たり、歯の治療に用いる金属のアレルギーが原因になっていることもあります。

また、別の原因として、生体内の微量金属である鉄、亜鉛、銅やビタミンB12が欠乏しても、舌の表面が荒れやすくなり、舌の痛みなどを生じやすくなります。 味覚異常を伴っている場合には、血液中の亜鉛欠乏が一因となっている場合もあります。

更年期の女性に多いことから、ホルモンのアンバランスや自律神経の変調なども関係があるとも考えられています。

2002年以降の研究では、ドライマウス(口腔〔こうくう〕乾燥症)も原因になっていると考えられています。ドライマウスでは、唾液(だえき)の分泌量の低下により口の中が乾燥します。口の中の乾燥は症状の進行程度により舌にも悪影響を及ぼし、舌の乾燥、舌の表面のひび割れ、味覚障害などさまざまな症状となって現れます。カンジダ菌という真菌の増殖による舌痛、口角炎も認められます。シェーグレン症候群からもたらされるドライマウスもあります。

薬物の服用によっても、ドライマウスが生じます。従来から、口腔異常感症の原因の大半は心身症あるいは心気症とされてきた関係で、舌の痛みに対する不安を取り除く心理面の治療として、精神安定剤(抗不安剤)、抗うつ剤、向精神剤などが処方されるケースが一般的でした。これらの薬物は、精神面での不安を和らげる効果があるものの、かえって症状が進行するケースもあります。

精神安定剤、抗うつ剤などには、唾液腺(せん)を支配している神経に作用し、唾液分泌量を低下させる作用があることが知られており、ドライマウスの症状が現れることもあります。

口腔異常感症の原因の大半は現在、心身症あるいは心気症と考えられています。日常生活でストレスを抱えている時に発症することがありますし、ストレスを抱えている時に行った歯科治療を契機に発症することがあります。これは心身症と考えられます。

舌の痛いことにとらわれて、舌をいつも観察しては片時も舌の痛みから解放されず、舌がんノイローゼにまでなるような場合は、舌が気になることが疾患で、舌そのものが悪いわけではありません。これは心気症と考えられます。この口腔異常感症が原因で、舌がんになることはありません。

舌の痛みなどを自覚した場合、できるだけ早期に口腔内科、あるいは歯科心療科、心療歯科のような専門機関を受診して、検査を受けることが勧められます。現在のところ、診療する医療機関が割合少ないため、適切な診断と治療がされていないケースが非常に多くなっています。

口腔異常感症の検査と診断と治療

口腔内科などの医師による診断では、まず、視診で口腔内の検査をして、はれや炎症などの原因となる疾患がないかを確認します。また、問診では食事で症状が増強しないか、消失するかを確認します。

安静時と刺激時の唾液量を測定し、唾液腺機能を調べます。血液検査で鉄、亜鉛、銅などの微量金属やビタミンB12の値も調べます。口腔内菌検査は、食事などの影響を受けない早朝の唾液を検体としますが、真菌の一種であるカンジダ菌の増殖の有無には、とりわけ注意します。

心因的要因は問診の際に感じ取れますが、いろいろのアンケートを行って、より客観的に診断します。診断に苦慮する際は軽い精神安定剤(抗不安剤)を少量使用し、症状の変化をみることもあります。

口腔内科などの医師による治療では、検査で異常があった場合は、その治療を行います。入れ歯などの刺激が一因なら、改善する必要があります。微量金属やビタミンの不足の場合は、亜鉛製剤などで不足した物質を補充することで容易に症状は改善します。

舌の痛みやしびれ、乾燥感などの原因となるようなはれや炎症などは見付からず、神経のまひも認められず、血液検査でも特に異常値が認められない場合は心身症と見なし、薬物療法と心理療法などを行います。

最も有効な治療法は抗うつ剤を中心とした薬物療法で、不眠や不安を伴う場合は睡眠導入剤や精神安定剤を併用します。漢方薬が有効なこともあります。抗うつ剤には、その作用機序から三環系、選択的セロトニン取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルアドレナリン取り込み阻害薬(SNRI)などがあります。

抗うつ剤を服用すると、早ければ4日から5日目、遅くても1週間から10日くらいで、舌の痛みが緩和していきます。理想的に治療が進展していけば、3週間から4週間後には痛みは7割方改善していきます。胃腸の調子が少し悪くなる場合もあるものの、軽い整腸剤を併用すればすぐに治まります。

効果が十分得られたら、そのまま数カ月は抗うつ剤の服用を続けて再発を防ぎますが、半年から1年くらいは続けたほうがよい場合が多いようです。年単位で継続しても、きちんと通院していれば特に副作用などの問題は心配ありません。しかしながら、抗うつ剤の鎮痛効果には個人差があります。

心気症の場合は、口腔内に舌がんなどの疾患のないことを根気よく説明し、必要以上に口の中を鏡で見たり、指で触ったりしないようにと説明します。症状が治まらない際は、軽い精神安定剤を用います。

ドライマウス(口腔乾燥症)の場合は、唾液の分泌を促す薬や、ジェルやスプレー状の保湿剤で口の中を潤します。夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース(モイスチャープレートなど)、夜間義歯などを症状に応じて用います。薬の副作用が原因なら、主治医と相談して薬の変更や減量を検討します。原因がはっきりすることでストレスが軽くなり、ドライマウス自体が改善する場合もあります。

シェーグレン症候群からもたらされるドライマウスでは、残念ながら根本的な治療法はありません。口や目などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことを目的に、内服薬と症状に応じた人工唾液、口腔乾燥症状改善薬、保湿剤、含嗽(がんそう)剤(うがい薬)などによる対症療法に頼らざるを得ないのが現状です。

日常生活上の注意としては、体内の鉄のほか、亜鉛の低下でも起こりやすくやすくなるので、偏食を避けることが重要です。口腔異常感症は、唾液量の低下もその要因の1つですが、唾液量の低下に引き続いて起こりやすいカンジダの増殖も重要で、歯磨き、うがいなどで口腔内を清潔に保つことを心掛ける必要があります。

🇨🇫口腔カンジダ症(鵞口瘡)

カンジダ菌の感染で、口の粘膜が白い苔状物で覆われる疾患

口腔(こうくう)カンジダ症とは、口腔内に常在するカンジダ菌という真菌によって、主として斑点(はんてん)状の白い苔(こけ)のようなものが生じる疾患。急性偽膜性カンジダ症とも呼ばれ、以前は鵞口瘡(がこうそう)とも呼ばれていました。

乳幼児や老人に多い疾患ですが、生後間もない健康な乳児にみられるものは、放置しておいても自然に消えます。成人がかかることもあります。

原因は真菌(かび)の一種のカンジダ菌の感染で、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多い原因菌となり、カンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが原因菌となることもあります。誘因としては全身の衰弱、抗生物質の長期連用、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)、免疫抑制剤、抗がん剤などの使用、がんの放射線治療、ビタミン欠乏、全身疾患による免疫機能の低下が挙げられます。

カンジダ菌は酵母菌(イースト)の一種で、元来、人間の口腔粘膜や腸管の中に住んでいます。これが誘因があってたまたま増殖すると、口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症になるのですが、このカンジダ菌は水虫などを起こす白癬菌とは異なって、体の内部に侵入する力があります。そのため、免疫機能の低下がある時には、全身に増殖して、重篤な疾患になることがあります。

口腔カンジダ症の最初は、口腔粘膜、舌、歯肉が赤くはれ、表面が白い斑点状の苔状物の膜で覆われます。この苔状物の膜は軟らかくて、こするとすぐはがれ、はがれたところは赤くただれます。普通、痛みは軽度ですが、舌のズキズキする痛み、違和感、味覚異常を伴うこともあります。熱などの全身症状は、ほとんどありません。

適切な処置をすれば、比較的早くよくなりますが、まれには進行して咽頭(いんとう)から食道、肺に広がって、カンジダ性肺炎を生じることもあります。

口腔カンジダ症の検査と診断と治療

口腔カンジダ症が味覚異常の原因になっていることもありますので、口の中を清潔に保ち、消毒力のあるうがい薬を使ってみます。それで舌などの口腔内の違和感が治らない場合、また全身状態が悪い場合には、食道や肺に広がることがあるので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

医師は病状から診断しますが、カンジダ菌が証明されれば確定します。証明のためには、KOH検査(皮膚真菌検査)と培養検査が行われます。KOH検査では、綿棒で皮膚の表面をこすり、それを水酸化カリウム溶液で溶かして、顕微鏡で観察します。5分もあれば結果が出ますが、カンジダ菌の種類の特定までは困難です。培養検査では、クロモアガー・カンジダ培地などで培養します。検査に時間がかかりますが、菌の種類を特定できます。

治療においては、抗真菌剤の外用が主体で、殺菌性消毒剤による口すすぎも有効です。外用剤では、イミダゾール系のものが抗菌域が広く、カンジダ菌に対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)などの新しい薬は、抗菌力が強化されています。基剤としては、軟こう剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤があります。口腔カンジダ症ではただれの症状を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟こう剤が無難です。

なお、抗真菌剤の外用剤は近年、たくさんの新しい薬剤が開発されかなり有効ですが、中には白癬菌にだけ効き、カンジダ菌には効きにくい薬剤もありますので、注意が必要です。

症状が強い場合には、抗真菌剤の内服を行います。内服剤では、トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査は必要で、併用に注意する薬剤があります。特殊な内服剤として、口腔・食道カンジダ症用で、ほとんど吸収されないミコナゾール(フロリード)ゲルがあります。1日1〜2本を4回に分けて内服しますが、口腔カンジダ症では病変部に塗るだけでも有効です。

🇬🇶口腔乾燥症

唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾く疾患

口腔(こうくう)乾燥症とは、唾液(だえき)の分泌量が少なくなって唾液の質に異常を来し、口の中やのどが渇く疾患。ドライマウスとも呼ばれます。

ストレスやうつ病による影響が主な原因ですが、さまざまな原因が考えられます。アレルギーを抑える抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、血圧を下げる降圧剤、鎮痛剤、抗パーキンソン剤など多くの薬の副作用でも起こります。

自分の免疫細胞が唾液腺(せん)や涙腺を攻撃してしまうシェーグレン症候群でも、口や目が渇きます。糖尿病や更年期障害、腎(じん)障害、唾液腺障害、口腔周囲の筋力の低下、食習慣、放射線が関係することもあります。

保湿や抗菌作用がある唾液が足りないと、食べ物の味がよくわからない味覚障害、水分の少ない食品が飲み込めないなどの嚥下(えんげ)障害、口の中がネバネバするなどの不快感、口腔の粘膜の乾燥、夜間の乾燥感といった症状が現れます。さらに、義歯の不適合、装着時の痛み、カンジダ菌という真菌の増殖による舌痛(ぜっつう)や口角炎も認められます。

虫歯の多発や悪化、歯周病、舌苔(ぜったい)の肥厚、舌表面のひび割れ、口内炎や口臭、食事がとれない摂食障害、会話時に話しづらいなどの発音障害を引き起こすこともあります。

口腔乾燥症の検査と診断と治療

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による診断では、安静にして自然に出てくる唾液を15分間採取し1・5ミリリットル以下だと、口腔乾燥症の可能性が高いと判断します。

原因により対処は異なりますので、原因を明らかにします。血液検査や画像検査で、シェーグレン症候群などの判別もできます。

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による治療は、唾液の分泌を促す薬や、ジェルやスプレー状の保湿剤で口の中を潤します。夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース(モイスチャープレートなど)、夜間義歯などを症状に応じて処方します。

薬の副作用が原因なら、主治医と相談して薬の変更や減量を検討します。原因がはっきりすることでストレスが軽くなり、口腔乾燥症自体が改善する場合もあります。

あごをよく動かして食べ物をかむことも大切。ほおや唇の内側など、口の中に広がっている唾液腺を刺激するマッサージも有効です。舌を転がして押し付けたり、指を入れて軽くこすったりします。口腔筋機能療法も、筋力を強化させ唾液分泌を促進させる効果が期待できます。

シェーグレン症候群からもたらされる口腔乾燥症では、残念ながら根本的な治療法はありません。口や目などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことを目的に、内服薬と症状に応じた人工唾液、口腔乾燥症状改善薬、保湿剤、含嗽(がんそう)剤(うがい薬)などによる対症療法に頼らざるを得ないのが現状です。

>なお、シェーグレン症候群で全身性の臓器病変のある人の場合は、内科などでステロイド剤や免疫抑制剤などを含めて適した治療を受けるべきです。

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