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2022/08/14

🚭サードハンドスモーク

たばこの煙がカーテンや衣服、髪などに吸着して残った有害物資を吸い込むこと

サードハンドスモークとは、たばこの煙が室内の壁などに吸着して有害物質が残り、たばこを吸わない人が有害物資を吸い込むこと。三次喫煙、残留受動喫煙とも呼ばれます。

このサードハンドスモークは、喫煙者が体内に主流煙を吸い込むファーストハンドスモーク(能動喫煙)や、非喫煙者が喫煙者と同じ空間にいることで、自分の意思とは関係なく、たばこから出る副流煙を吸い込むセカンドハンドスモーク(二次喫煙、受動喫煙、間接喫煙)とは異なります。

たばこの煙が消失した後も、喫煙者の髪や衣服、部屋の壁紙やカーテン、クッション、カーペット、床、家具などの表面に吸着して残っている有害物質が徐々に揮発し、これを非喫煙者が吸い込むことで健康被害が生じる恐れがある受動喫煙を指します。

とりわけ、たばこの煙に含まれるニコチンは、壁紙などの表面に付着して凝結し何カ月も残存することが可能で、空気中の亜硝酸と反応して発がん性物質のニトロソアミンが生成され、健康被害が生じる可能性が指摘されています。

乳幼児の場合、床や家具に顔が近く、部屋の中の物を手や口で触ったりするため、大人以上に有害物質を吸い込みやすいとされます。

たばこが燃えている時に窓を開けたり、扇風機を回して換気しても、サードハンドスモークの危険性がなくなるわけではありません。また、屋外で吸うことは屋内での喫煙よりはましですが、たばこの煙の残留物は喫煙者の髪や肌、衣服に付着して屋内に持ち込まれ、広く拡散するとされます。オフィス内で喫煙室が仕事場と別にあっても、仕事場がたばこ臭かったりするのは、そのためです。

たばこの煙については、たばこの先の火のついた部分から立ち上る副流煙のほうが、喫煙者が直接口から吸い込む主流煙よりも、血管収縮作用のあるニコチンや、発がん物質のタール、学習・運動能力が低下する一酸化炭素を始め、非常に発がん性の高いベンツピレン、ベンゼン、トルエン、アンモニアなど200種以上の有害物質を多く含むことがわかっています。

しかし、サードハンドスモークに関連する有害物質の濃度は極めて低いため、現時点では正確な測定は難しく、健康への影響を判断するのは困難とされています。

セカンドハンドスモークによる害には、のどの痛み、心拍数の増加、血圧上昇などがあります。また、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などにかかりやすくなります。とりわけ、子供は大人以上に影響を受けやすくなり、家庭内の喫煙によって、気管支炎、喘息(ぜんそく)などを起こす率が高くなったり、乳幼児突然死症候群が増加することも明らかになっています。

アメリカや日本の有識者らは、「子供がいるなら、家庭内は完全禁煙を」と呼び掛けています。サードハンドスモー クの認識があるアメリカの家庭では、完全禁煙にしている割合が高くなっています。

🏄サーファーズイヤー

外耳道の深部の骨部外耳道の骨が増殖して、隆起する疾患

サーファーズイヤーとは、耳の穴の入り口から鼓膜までの空洞である管腔(かんくう)、つまり外耳道(がいじどう)に長期間冷水刺激が加わることにより、骨部外耳道の骨が増殖して隆起が生じた疾患。外耳道外骨腫(がいこつしゅ)とも呼ばれます。

外耳道でも、耳の穴の入り口は軟骨部外耳道で、深部の鼓膜に近い部分が骨部外耳道に相当します。

外耳道外骨腫は古くから潜水夫や、頻繁に水泳を行う人に多いことが知られていましたが、特にサーファーに好発することから1977年にサーファーズイヤーと命名されました。

日本でのサーフィンの起源は、第2次大戦後日本に駐留した米軍兵士が神奈川県や千葉県で行ったのが始まりといわれ、国内でのサーフィンの歴史は60年前後と考えられます。1990年代に起こった世界的なロングボードサーフィンのリバイバルブーム以降、日本でもサーフィン愛好者は増加しています。

サーファーズイヤーは、水上スポーツ愛好家、水中スポーツ愛好家、職業ダイバーのほか、サウナ愛好家にも認められることがあります。サウナ愛好家の中には、サウナで温まった後に、冷水に飛び込むことを習慣とするケースがあり、そのような場合にも外耳道外骨腫が形成されることがあります。

競技会に参加するような熱心なサーファーを対象とした調査では、日本人のプロサーファーの81パーセント、アマチュアサーファーの54パーセント、両者の平均で59・8パーセントに外耳道外骨腫の形成が認められました。また、サーフィン経験が同程度の場合、男性のほうが女性よりも高度の病変が形成されることが多いことがわかりました。

原因は、外耳道に長期間にわたって加わる冷水刺激と考えられます。サウナ愛好家にも認められることから、外耳道に加わる寒暖差が外耳道外骨腫の形成に関与している可能性も示唆されます。サーフィン経験年数や頻度が多いほど、また海水温の低い地域のサーファーほど高度な病変が形成されやすくなります。耳に強い冷たい風を受ける影響もあると考えられます。

外耳道に冷水の侵入が繰り返されたり、強い冷たい風を受ける刺激で、基本的には両側の耳の骨部外耳道の骨が炎症を起こして増殖し隆起するために、外耳道が狭くなっていきます。

形成される外耳道外骨腫は、層状の緻密(ちみつ)な骨で、骨細胞に富み、骨髄腔が乏しいことが特徴とされます。1つ、あるいは2つの外耳道外骨腫が形成されることも、3つ以上形成されることもあnter>ります。

発症初期には自覚症状に乏しく、高度の外耳道の狭窄(きょうさく)に至っても、いくらか透き間が開いていれば難聴はほとんど起こりません。ただし、外耳道炎を起こしたり、外耳道外骨腫と鼓膜の間に耳垢(みみあか)がたまることにより、外耳道が閉塞(へいそく)した場合は、急に伝音(でんおん)難聴を来すことがあります。

そのほか、外耳道から水が抜けにくい、耳痛、耳鳴り、頭痛、かゆみなどの症状も起こりますが、必ずしもサーファーズイヤーの程度とは相関しません。

サーフィンやマリンスポーツなどの後、耳の穴から水がいつまでも抜けない、右耳だけが聞こえにくい気がするなど、耳に違和感を覚えたら、早めに耳鼻咽喉(いんこう)科を受診することが勧められます。

サーファーズイヤーの検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による診断では、処置用顕微鏡で耳の中を観察し、聴力検査を行います。側頭骨CT(コンピュータ断層撮影)検査を行い、外耳道骨と同濃度の結節性、あるいはびまん性の外耳道外骨腫の隆起を認めることで確定できます。手術の実施を予定している場合は、側頭骨CT検査で、外耳道に近接している顔面神経の走行と、骨の削除範囲を入念に確認します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、外耳道の狭窄が軽度で無症状であれば手術は行わず、点耳薬などの保存的治療で対応します。サーフィンやマリンスポーツをやめたとしても、一度形成された外耳道外骨腫は小さくならないと考えられています。

外耳道炎を繰り返したり、難聴などの症状が強い場合は、基本的に全身麻酔の下、耳内切開ないし耳後切開による手術を実施し、ノミやドリル、あるいは超音波装置といった手術具を使用して隆起した骨を削り、外耳道を広げます。

外耳道の皮膚の温存に努めて、骨部外耳道の骨面露出を最低限に抑えれば、通常、別の部位の皮膚を移植する遊離植皮などは必要ありません。サーファーズイヤーの程度が左右の耳で大きく異なる場合には、治療期間にも左右差が生じることがあります。手術後、完治するまでには時間がかかります。

予防としては、外耳道への冷たい海水の侵入刺激や、風による蒸散熱の冷却により骨増殖が増進するので、冬期や海水温の低い海域でのサーフィン中止、型を取った耳栓の装用が有効です。

市販されている耳栓も、シリコン製の耳栓や粘土形状の耳栓、大きなサイズや小さなサイズ、外部からの音を聞き取れる耳栓とさまざまなものがありますので、自分の耳に一番適した耳栓を探すとよいでしょう。

🇵🇦サーモンパッチ

新生児に多くみられ、額の中央、上まぶたなど顔の中央に近い部分に現れるあざ

サーモンパッチとは、額の中央、上まぶた、上唇、鼻背など顔の中央に近い部分に現れる、紅鮭(べにざけ)の赤身に似た淡紅色ないし暗赤色のあざ。正中部母斑(ぼはん)とも呼ばれます。

生まれた時からあり、多くは帯状や逆三角形の形をしており、平らで濃淡のむらは少なく、境界線は不明瞭です。新生児の20〜40パーセントに現れると見なされています。

圧迫すると一時的に色が消えることが特徴で、新生児が力んだり、泣いたりすると、色が濃くなることがあります。

生後6カ月くらいで薄くなり、上まぶたにあるサーモンパッチの大部分は、1歳ごろまでに自然に消失します。眉間(みけん)から額の中央、上唇にあるサーモンパッチの大部分も、1歳6カ月ごろまでに自然に消失します。

しかし、眉間から額の中央にあるサーモンパッチは、まれに成人になっても残ります。成長とともに拡張した血管が自然に細かくなって目立たなくなっても、やはり力んだり泣いたり、飲酒したりすると赤く浮かび上がることがあるという人は、多いようです。

サーモンパッチの原因は、皮膚の真皮表層での毛細血管の機能的拡張だとされています。毛細血管の内部の血液によって、皮膚の表面が淡紅色ないし暗赤色に見えます。

このサーモンパッチが後頭部かcenter>ら頸(けい)部(うなじ)にかけてできた場合は、ウンナ母斑と呼ばれます。ウンナ母斑は消失するのに時間がややかかりますが、3歳ごろには半数が消えます。しかし、一生消えない場合もあります。

1歳をすぎてもサーモンパッチが消えない場合は、念のため皮膚科の医師を受診することが勧められます。サーモンパッチが残っている成人で、どうしても気になる人も、治療を受けることが勧められます。

サーモンパッチの検査と診断と治療

皮膚科の医師は通常、見た目と経過から診断します。一般的には、サーモンパッチは自然に消えていく場合が多いので、治療せずに経過をみます。

単に色調だけを自然経過よりも早期に淡くしたい場合には、パルス色素レーザー治療を行います。完全に消えず成人まで残る可能性があるもの、成人になっても残ったものは、露出部位のあざなので、パルス色素レーザー治療を行います。

パルス色素レーザー治療は、傷を残さずに赤みを消退させることができます。術後に残った傷が目立ちますので、手術を行うことはありません。

ウンナ母斑は、髪に隠れて目立たない部位に生じるので、ほとんど治療しません。成人まで残っていても、悪性になることはないため、大半は治療をしません。美容的に気になる場合には、パルス色素レーザー治療を行います。

🇨🇷臍炎

新生児のへそに細菌が感染し、周囲にも炎症が及んだ状態

臍炎(さいえん)とは、新生児の臍帯(へその緒)が取れたくぼみの部分に細菌感染が起こり、へそやへその周囲に炎症が及んだ状態。

出生時に母胎と切り離された新生児の臍帯は、生後1週間〜10日で乾いて自然に脱落し、跡はすぐ皮膚で覆われたくぼみになります。このくぼみにたまった垢(あか)や汗、異物などに細菌が感染すると、臍炎が生じます。

症状としては、へそやその周囲に発赤、はれ、痛みが起こったり、へそから分泌液や、うみが出てジクジクしたりします。出血することもあります。

臍炎の検査と診断と治療

へそやへその周囲が赤くはれている、分泌物が出ている、出血している、新生児が痛がるなどの症状が出ている場合には、早めに小児科を受診します。

医師による治療は、感染した垢や異物を取り除き、うみを十分に排液しながら消毒を行います。さらに、抗生物質を服用したり、軟こうを塗布します。

このような処置で通常は比較的短期間に治癒することが多いのですが、症状が長引く場合や再発を繰り返す場合は、ほかの病状を考える必要があります。

胎生の初期では、臍帯が腸管や膀胱(ぼうこう)とつながっているために、まれに腸管の一部が臍部に残る臍ポリープを生じたり、膀胱とのつながりが臍部に残る尿膜管遺残を生じたりすることがあります。これらは臍炎とは別のもので、治りにくく手術が必要です。

<臍炎の予防としては、へその緒が取れたくぼみの部分がきれいに乾くまで、しっかり消毒します。入浴後に消毒し、滅菌ガーゼを張っておくのがよく、出産した病院でもらえる臍消毒セットを使い切るぐらいまでやっておくと安心です。

🇨🇷細菌性角膜炎

目の角膜に細菌が感染して、強い炎症を起こす疾患

細菌性角膜炎とは、目の角膜に細菌が感染して、強い炎症を起こす疾患。

角膜は、黒目の表面を覆う透明な無血管組織で、4つの異なった層からなっています。外界の光が目の中に入る入り口となるとともに、目の屈折力の約7割を担うレンズとしての役割も果たしています。三叉(さんさ)神経が多岐に分布し、知覚が非常に鋭敏であるという特徴があり、厚さ1ミリながら目の中の組織を守るために膠原線維(こうげんせんい)というとても丈夫な線維組織で作られています。

この角膜は、常に外界と接して空気にさらされているために乾燥したり、ほこりが付いたりします。そこで、まばたきというまぶたの動きによって、常にその表面を涙で湿らして、ほこりを取り除き、細菌を始め、かび、ウイルス、アメーバなどの侵入を防いでいます。涙には、細菌感染などから目を守るさまざまな分子が含まれています。

しかし、目にゴミが入ったり、目を強くこすったり、涙の出る量が少なくて角膜が乾燥したりすると、角膜の表面に傷が付いて、傷口から細菌が侵入し、感染を起こします。

近年は、コンタクトレンズを介して細菌が侵入し、角膜上皮で増殖して感染を起こすケース非常に増えています。涙の出る量が少なかったり、コンタクトレンズを長時間装用しすぎたりすると、目の中の細菌が洗い流されずに定着して、増殖しやすくなり、細菌性角膜炎の発症につながります。また、レンズケースの洗浄を怠っていると、ケース内で細菌が増殖してコンタクトレンズに付着し、目の中に細菌が持ち込まれることもあります。

目の角膜に感染する主な細菌は、ブドウ球菌、緑膿(りょくのう)菌、連鎖球菌などです。

細菌性角膜炎の症状は、炎症の原因、位置、大きさなどによって異なりますが、通常は片眼性で、一般的には激しい目の痛み、目の充血、視力低下、異物感、流涙、目のかすみ、まぶしさなど。

角膜には三叉神経が走っているために、炎症が起きると激しい痛み、異物感が生じます。そして、炎症が進行すると角膜が濁って視力が低下していきます。ひどくなると、角膜に穴が開いて失明する危険性も伴います。角膜に穴が開いた時は、温かい涙が突然たくさん出ます。これは、眼内液である房水(ぼうすい)が外へ突然漏れ出すためです。

また、細菌が目にとどまっているために、コンタクトレンズを外しても症状は消えません。むしろ、コンタクトレンズを外した時のほうが、痛みや異物感が増すこともあります。

細菌性角膜炎は日に日に症状が悪くなる疾患で、治療のスタートが遅れれば遅れるほど予後が悪くなるため、早く眼科を受診する必要があります。ゴミなどの異物が入った時は、それが細菌の感染の切っ掛けになるため、症状が軽くても、やはり放置せず眼科を受診する必要があります。

コンタクトレンズが感染源として疑われた場合は、そのコンタクトレンズをレンズケースの保存液に浸したまま持っていけば、検査設備の整った医療機関なら、そこから原因となった細菌を見付けることができることがあります。

細菌性角膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で角膜を観察して、角膜炎の診断を行います。一般的に、病変部は混濁するとともに、病変周囲の角膜組織には浮腫(ふしゅ)が生じています。

細菌性角膜炎の可能性がある場合は、角膜の悪くなっている部分をこすり取って、顕微鏡で調べたり、培養したりして、細菌が感染していることを確認します。同時に、病原体となっている細菌の種類を同定する検査と、どのような抗菌剤が有効かを調べる薬剤感受性試験を行います。

眼科の医師による治療では、原因となっている細菌に感受性を示す抗菌剤を必要、かつ十分に投与することを原則とします。ただし、原因菌の同定や薬剤感受性試験の結果が出るまでには一定の日時を要するため、病歴や細隙灯顕微鏡所見などから原因菌を想定して、治療を開始する必要があります。

通常は、有効な抗菌剤を配合した点眼薬や眼軟こうによる治療が主体となりますが、病状によっては、白目の表面を覆っている眼球結膜下への抗菌剤の注射、点滴、内服などを併用することもあります。この場合は、多くは入院治療が必要となります。

症状が軽い場合は、短期間で治って予後も良好です。治療が遅れた場合は、病変が角膜中央部に及んでいると、たとえ病変が治癒しても瘢痕(はんこん)性の角膜混濁を残し、視力障害が残る可能性があります。

重篤な視力障害が残った場合には、角膜移植などの手術治療が必要となることがあります。

細菌性角膜炎の治療中は、風、ゴミ、光などの刺激から目を守ることが重要です。

🇨🇷細菌性眼内炎

細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症

細菌性眼内炎とは、何らかの原因で細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

細菌が手術の切開部や眼球のけがから侵入する外因性のものと、体のほかの部分に感染していた細菌が血流に乗って目に波及する内因性のものがあります。

目の手術による外因性細菌性眼内炎のほとんどは、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌、腸球菌などのグラム陽性球菌が原因となって、手術後2日から3日ほどで発症します。プロピオニバクテリウム・アクネスというグラム陽性桿菌(かんきん)や、表皮ブドウ球菌などの弱毒菌が原因となる場合は、手術後半年から1年以上経過してから発症する場合もあります。

眼球のけがによる外因性細菌性眼内炎は、グラム陽性球菌のほか、土壌中にも存在するグラム陽性桿菌や、緑膿(りょくのう)菌などのグラム陰性桿菌が原因となって、発症します。

内因性の細菌性眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。原因となる細菌は、グラム陰性桿菌(かんきん)である肺炎桿菌や大腸菌が多くみられ、グラム陽性球菌であるB群レンサ球菌もみられます。

肺炎桿菌は、口腔(こうこう)や腸管に常在する細菌で、免疫力の低下した人に感染し、肺炎や尿路感染症、敗血症などを起こしています。大腸菌は、代表的な腸内細菌で、血液中や尿路系に侵入した場合に病原体となり、敗血症、尿路感染症などを起こしています。B群レンサ球菌は、糖尿病やがんなどを基礎疾患に持つ人に感染しています。

細菌性眼内炎の症状としては、 ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目のかすみ、痛みの症状が出たら、早めに眼科を受診します。数時間から数日の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

細菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、目のけががある場合や、眼科の外科手術を受けた経験がある場合は、そこから目に原因となる細菌が入った可能性が強いとして、外因性の細菌性眼内炎と判断します。

内因性の細菌性眼内炎が疑われる場合には、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無を確認します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている細菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

また、同じような症状が出る真菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

細菌性眼内炎の原因であると判明した細菌に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇬🇹細菌性急性胃腸炎

消化管への細菌感染により、腹痛、発熱、血便などが現れる疾患の総称

細菌性急性胃腸炎とは、消化管への細菌感染により、腹痛、発熱、血便などが現れる疾患の総称。

いわゆる食中毒の形をとることも多く、犬や猫などのペットからの感染もあります。カンピロバクター菌、サルモネラ菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などの細菌感染が、細菌性急性胃腸炎の原因になります。

いずれも、食べ物が十分に調理されていない時や、料理人の手洗いがきちんとなされていない際に、細菌が感染します。すると、細菌が腸粘膜に付着、侵入したり、細菌が出す毒素の影響などで、腸粘膜に炎症が起きます。

成人の場合、細菌が感染しても、多くは細菌性急性胃腸炎を発症しません。発症するのは、成人とほぼ同じ内容の食事をした子供、あるいは高齢者がほとんどです。大人が知らないうちに感染して、子供に移してしまうと重症化したりするので、注意が必要です。家庭で作った離乳食を食べている乳児や、母乳だけを飲んでいる赤ん坊には起こりにくい疾患です。

カンピロバクター菌による細菌性急性胃腸炎は、最も多い鶏肉を始めとして、豚肉、牛肉、馬肉などを食べることが原因となって発症します。とりわけ、生あるいは加熱があまりなされていないユッケ、鳥わさ、レバ刺しなどは、発症する可能性が高いことで知られています。鶏肉の場合、加熱不十分なバーベキュー、鶏鍋(なべ)、焼き鳥などが原因となることもあります。

井戸水や湧水(ゆうすい)、簡易水道水など消毒不十分な飲用水が原因となって、発症することもあります。犬、猫などのペットの腸管内にもカンピロバクター菌が存在するため、小児ではペットとの接触によって直接感染することもあります。

サルモネラ菌による細菌性急性胃腸炎は、鶏肉、豚肉、牛肉や、鶏卵などをよく火を通さないで食用にしたもののほか、納豆、氷小豆、乳製品などが原因となって発症します。特に近年では、鶏卵に含まれるエンテリティディスという血清型の菌によって、生卵を始めとして、卵焼き、オムレツ、手作りケーキやマヨネーズなどから発症しています。

また、ペットから感染したサルモネラ菌が原因となって発症することもあります。

病原性大腸菌には4つの種類があり、腸管出血性大腸菌O(オー)157による細菌性急性胃腸炎は、牛、羊などの生肉、生レバーを食べることが原因となって発症します。消毒不十分な飲用水が原因となって、発症することもあります。

腸炎ビブリオによる細菌性急性胃腸炎は、魚介類、あるいはその加工品を食べることが原因となって発症します。とりわけ、刺身など生の魚介類は、発症する可能性が高いことで知られています。

黄色ブドウ球菌よる細菌性急性胃腸炎は、牛乳、クリーム、バター、チーズ、かまぼこ、おにぎり、折詰弁当、すし、サンドイッチ、ケーキなどを食べることが原因となって発症します。

潜伏期は感染する細菌によって異なり、早いものでは数時間から、多くは5日間程度までの潜伏期の後、腹痛、発熱、嘔吐(おうと)、水様便または粘血便の下痢などがみられます。

細菌性急性胃腸炎は細菌の繁殖しやすい夏季に多く、アデノウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎と比較すると、発熱、腹痛の程度が激しく、しばしば血便を認めます。

嘔吐、下痢などの回数が多くなると、特に乳幼児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

O157による場合には、特に腹痛が強く、血液そのもののような血便が出ることもあります。重い合併症として、O157が出すベロ毒素が起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)が、小児では6〜7パーセントにみられます。この場合は、下痢発症後平均5〜6日で、顔色不良、黄疸(おうだん)、出血斑(はん)、浮腫(ふしゅ)、血尿、尿量減少、頭痛、不眠などの症状が現れます。

腹痛、発熱、下痢があり、便に血液らしきものが混じっていたら細菌性急性胃腸炎の可能性が強いことから、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診して、便の細菌検査を受ける必要があります。周囲に同様の症状の人がいる場合には、食中毒を考える必要があります。

細菌性急性胃腸炎の検査と診断と治療

内科、消化器科、胃腸科、小児科の医師による診断では、急性の中毒症状から細菌感染を疑いますが、どんな細菌に感染したかを確定するには、O157や黄色ブドウ球菌など毒素だけで判断できる一部の細菌を除いて、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。

感染初期や軽症の場合は、ブドウ糖液やリンゲル液などの電解質液の点滴、吐き気や嘔吐を止める鎮吐剤の投与、あるいは整腸剤の投与による対症療法を行います。ただし、下痢止めは基本的に使用しません。症状を慢性化させたり、悪化させたりすることがあるからです。

多くの場合は点滴などで自然軽快しますが、重症化した場合は、エリスロマイシン、ホスホマイシンなどのマクロライド系抗菌剤の投与による治療を行います。抗菌剤は原因菌に有効な種類を使用することが原則ですが、原因菌の分離には24〜48時間かかるので、急を要する場合には症状、原因食、季節、年齢などから推定して治療を始めます。

ほとんどの場合は点滴や抗菌剤などで治りますが、サルモネラ菌による場合は下痢の症状が消えても長期間、排菌される傾向があるので、検査を続ける必要があります。

細菌性急性胃腸炎を予防するためには、以下のことを心掛けます。食肉や卵は、十分に加熱する。まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。調理後は、早めに食べる。食品の長期間の保存は、できる限り避ける。

また、野生動物の糞便などで汚染される可能性のある井戸水や湧水、簡易水道水など消毒不十分な飲用水を飲まない、小児では犬や猫などのペットの糞便に触らないなどの注意も必要です。

🇬🇹細菌性結膜炎

白目の一番表面の粘膜である結膜に、細菌が原因で炎症が起こる疾患

細菌性結膜炎とは、白目の一番表面の粘膜である結膜に、細菌が原因で炎症が起こる疾患。

結膜は、上下のまぶたの裏側と、眼球の表面から黒目の周囲までを覆っている、薄い粘膜の部分を指します。まぶたの裏側を覆っている部分は眼瞼(がんけん)結膜、白目の表面を覆っている部分は眼球結膜と呼ばれています。一方、黒目の部分を覆っている粘膜は角膜と呼ばれています。

その結膜の働きは、直接、外界に接している目を異物の侵入から守ること。そこで、結膜には抗菌作用のある粘液や涙液が分泌され、常に作られている涙で目の表面を潤して防御しているのですが、多くの細菌にさらされたり、睡眠不足、過労などで抵抗力が落ちている時には、炎症を起こすことがあります。

細菌性結膜炎の原因となる細菌には多くの種類が存在しますが、代表的なものはインフルエンザ菌、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、クラミジア菌、淋(りん)菌。

通常よくみられる細菌性結膜炎は乳幼児や学童期に多く、原因菌はインフルエンザ菌が最も多いようです。発症時期は冬期が多く、風邪にかかった時に起こりやすいといわれています。

肺炎球菌の場合は、インフルエンザ菌に比べて罹患(りかん)年齢がやや高い傾向にあります。

黄色ブドウ球菌による細菌性結膜炎は、高齢者の慢性細菌性結膜炎の代表的な疾患です。黄色ブドウ球菌は、健康な人ののどや鼻、皮膚、手指、毛髪、腸管などにも分布しています。感染力が弱いため、感染の危険は大きくありませんが、目にけがをした時、病気などで体の抵抗力が落ちた時は、高齢者や子供が感染しやすくなります。

クラミジア菌、淋菌は主に性感染症(STD)で知られる細菌ですが、感染者の手などが感染源となり、接触感染を通じて細菌性結膜炎を発症することがあります。

細菌性結膜炎の主な症状は、目の充血や眼球の痛み、大量の目やにが出ること。放置しておくと、結膜だけではなく角膜にまで感染し、角膜が混濁して、永久に視力が低下したままになる危険性も伴います。

原因となる細菌により症状に多少の差があり、インフルエンザ菌や肺炎球菌の場合は、結膜の充血と粘液膿性(のうせい)の目やにが現れます。肺炎球菌の場合は、時に小点状の出血斑(はん)や軽度の結膜のむくみも現れます。黄色ブドウ球菌の場合は、成人では眼瞼結膜炎の形で慢性的にみられることが多く、角膜にも病変が存在することもあります。

細菌性結膜炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、細隙灯(さいげきとう)顕微鏡で結膜を観察します。症状からほぼ類推することができますが、確定診断のために、目やにの培養を行い、原因菌の検索と、どのような抗菌剤が有効かを調べることもあります。

眼科の医師による治療では、原因菌に対する感受性の高い抗菌剤を配合した点眼薬による症状の改善が基本となります。細菌の種類によっては、抗菌剤を配合した眼軟こうや、抗菌剤の内服も必要となります。治療が適切な場合は、約1~2週間で完治します。

細菌性結膜炎の症状が治まってきたころに、黒目の部分を覆っている角膜の表面に、小さな点状の濁りが出てくることがあります。この時に治療をやめると、角膜が混濁して視力が低下することがありますので、眼科医の指示に従って点眼などの治療を続けることが必要となります。

感染の拡大予防には、手をこまめに洗い、顔をふくタオルを家族と共有しないようにし、風呂は最後に入るかシャワーですませるなどの注意が必要です。

🇬🇹細菌性下痢症

消化管に感染する細菌によって、下痢を生じる疾患の総称

細菌性下痢症とは、胃、小腸、大腸などの消化管に感染する細菌によって、下痢を生じる疾患の総称。細菌性腸炎、細菌性胃腸炎とも呼ばれます。

いわゆる食中毒の形をとることも多く、犬や猫などのペットからの感染もあります。腸管出血性大腸菌O(オー)157のように、大規模な集団発生をみることもあります。コレラ、細菌性赤痢、腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法の三類感染症であり、すべての医師による届け出が必要で、かつ学校伝染病に指定されており、出席停止の措置がとられます。

サルモネラ菌、病原大腸菌(O157を含む)、カンピロバクター菌の3つの菌が重要で、これらではしばしば血便がみられます。そのほか、腸炎ビブリオ、ブドウ球菌、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、セレウス菌、エルシニア菌、エロモナス菌、プレシオモナス菌なども原因になります。コレラ菌、赤痢菌は、主に海外においての感染です。

赤痢菌、病原大腸菌は、少量の菌量でも感染が起こるため、人から人への感染を来します。ブドウ球菌による食中毒は、産生された毒素により、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢が生じます。

そのほか、抗菌剤の使用時に生じる特殊な腸炎として、クロストリジウム・ディフィシルによる偽膜性大腸炎、クレブシエラ・オキシトカによる出血性腸炎、MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)による腸炎があり、抗菌剤関連下痢症と総称されます。

潜伏期は菌によって異なり、早いものでは数時間から、多くは5日間程度までの潜伏期の後、腹痛、嘔吐、発熱、水様便または粘血便の下痢などがみられます。

細菌性下痢症は細菌の繁殖しやすい夏季に多く、アデノウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎と比較すると、発熱、腹痛の程度が激しく、しばしば血便を認めます。

嘔吐、下痢などの回数が多くなると、特に乳幼児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

O157による場合には、特に腹痛が強く、血液そのもののような血便が出ることもあります。重い合併症として、O157が出すベロ毒素が起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)が、小児では6〜7パーセントにみられます。この場合は、下痢発症後平均5〜6日で、顔色不良、黄疸(おうだん)、出血斑(はん)、浮腫(ふしゅ)、血尿、尿量減少、頭痛、不眠などの症状が現れます。

発熱、腹痛、下痢があり、便に血液らしきものが混じっていたら細菌性下痢の可能性が強いことから、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診して、便の細菌検査を受ける必要があります。周囲に同様の症状の人がいる場合には、食中毒を考える必要があります。

細菌性下痢症の検査と診断と治療

内科、消化器科、胃腸科、小児科の医師による診断では、急性の中毒症状から細菌感染を疑いますが、どんな細菌に感染したかを確定するには、O157やブドウ球菌など毒素だけで判断できる一部の細菌を除いて、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。

感染初期や軽症の場合は、ブドウ糖液やリンゲル液などの電解質液の点滴、吐き気や嘔吐を止める鎮吐剤の投与、あるいは整腸剤の投与による対症療法を行います。ただし、下痢止めは基本的に使用しません。症状を慢性化させたり、悪化させたりすることがあるからです。

多くの場合は点滴などで自然軽快しますが、重症化した場合は、エリスロマイシン、ホスホマイシンなどのマクロライド系抗菌剤の投与による治療を行います。抗菌剤は原因菌に有効な種類を使用することが原則ですが、原因菌の分離には24〜48時間かかるので、急を要する場合には症状、原因食、季節、年齢などから推定して治療を始めます。

ほとんどの場合は点滴や抗菌剤などで治りますが、サルモネラ菌による場合は下痢の症状が消えても長期間、排菌される傾向があるので、検査を続ける必要があります。

細菌性下痢症を予防するためには、以下のことを心掛けます。食肉や卵は、十分に加熱する。まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。調理後は、早めに食べる。食品の長期間の保存は、できる限り避ける。

また、野生動物の糞便などで汚染される可能性のある井戸水や湧水、簡易水道水など消毒不十分な飲用水を飲まない、小児では犬や猫などのペットの糞便に触らないなどの注意も必要です。

🇸🇻細菌性赤痢

赤痢菌によって起こり、血便を生じる感染症

細菌性赤痢とは、赤痢菌によって引き起こされ、血便を生じる急性の感染症。世界中に広く分布する細菌感染症です。

赤痢菌には、志賀赤痢菌(ディゼンテリー菌)、フレキシネリ菌、ゾンネ菌、ボイド菌の4種があります。志賀赤痢菌は、志賀潔によって発見され、志賀毒素という腸管出血性大腸菌O—157の産生する毒素の一つとほとんど同じものを産生し、4種の中で最も病原性が強いものです。フレキシネリ菌も、典型的な赤痢の症状を示します。ゾンネ菌は、日本で70〜80パーセントを占めて最も多いものの、病原性が弱く軽症です。ボイド菌は、日本では非常にまれ。

赤痢菌に汚染された食品や水、氷などを介して感染しますが、感染に必要な赤痢菌の菌量は10〜100個と極めて少なく、食器やはしなどを介して人から人に直接感染することもあります。家庭内2次感染の危険性が高く、約40パーセントでみられます。特に、小児や老人に対しての注意が必要です。

日本でのここ数年の発症者数は年間700〜800人で、20歳代に年齢のピークがあり、14歳までの発症者は全体の約10パーセント程度。国外感染例が70パーセント程度で、国内では保育園、学校、ホテルなどでの集団発生や、牡蠣(かき)を介した全国規模での感染がありました。

典型的な赤痢では、1〜3日の潜伏期間の後、下痢、悪寒、発熱、腹痛、倦怠(けんたい)感が現れます。赤痢菌の種類によって症状の程度に差があり、最も病原性の強い志賀赤痢菌では、1〜2日間発熱があって、腸内からの出血によって粘血便がみられ、トイレにいった後でもすっきりせず、また行きたくなる渋り腹が現れることがあります。

他の3種の赤痢菌では、粘血便をみることはほとんどありません。特に、日本で多いゾンネ菌によるものは重症例が少なく、軽い下痢と軽度の発熱で経過することが多く、菌を持っていても症状のない健康保菌者もいます。

細菌性赤痢の検査と診断と治療

海外旅行中や旅行後に血便を伴う下痢の症状が現れたら、赤痢を含む細菌性腸炎の可能性があります。検疫所あるいは培養検査のできる医療機関を受診し、便の細菌検査を受けることが必要です。

日本では、細菌性赤痢は感染症法で2類感染症に指定されており、発症者は原則として2類感染症指定医療機関に入院となりますが、無症状者は入院の対象とはならず外来治療も可能です。

医師による診断では、便の細菌培養を行い、赤痢菌が検出されれば確定します。他の細菌による下痢症との区別も、培養結果によります。迅速検査として、赤痢菌の遺伝子を検出する方法も開発されています。細菌性赤痢もしくは病原体保有者であると診断した医師は、直ちに最寄りの保健所に届け出ます。

治療では、成人にはニューキノロン系の抗菌剤、小児には抗菌剤のホスホマイシンを投与します。生菌整腸薬を併用し、下痢や発熱による脱水があれば点滴や経口輸液による補液を行います。強力な下痢止めは使いません。治療後に再度、便培養を行い、除菌を確認します。最近は、分離される赤痢菌の多くがアンピシリン、テトラサイクリン、ST合剤に耐性があるとされています。

赤痢は世界中どこでもみられる感染症で、特に衛生状態の悪い国に多くみられます。海外旅行中は、生水、氷、生ものは避けることが、重要な予防方法となります。屋台のヨーグルト飲料や氷で感染した例も報告されていますので、不衛生な飲食店、屋台などでの飲食も避けます。

🇸🇻細菌性膣炎

女性生殖器系の器官である腟に、一般的な細菌が増殖して炎症が起こる疾患

細菌性膣炎(ちつえん)とは、女性生殖器系の器官である腟に、一般的な細菌が増殖して炎症が起こる疾患。非特異性膣炎とも呼ばれます。

腟は、骨盤内にあって子宮と体外とをつなぐ管状の器官で、伸び縮みできる構造をしています。腟の前方には膀胱(ぼうこう)や尿道があり、後方には直腸があります。腟壁は粘膜に覆われ、その粘膜面には横に走るひだがあります。このひだは正中部で集合し、前壁と後壁で中央に縦に走るひだになっています。このひだは出産の経験のない人に、多く認められます。

この腟の中は、温かく湿っていて有機物が豊富にある状態で、細菌の繁殖に適しています。しかし、腟には自浄作用という働きがあります。腟壁上皮は卵巣から分泌される女性ホルモンであるエストロゲンの作用により、表皮細胞への分化が促され、細胞質の内にグリコーゲンが蓄積されます。剥離(はくり)した細胞内のグリコーゲンは、ブドウ糖に分解されて、腟内のデーデルライン桿菌(かんきん)という乳酸桿菌によって乳酸菌に換えられます。これにより腟内は酸性となり、酸性環境に弱い細菌の増殖が抑制されます。

しかし、疲労や体力の低下、生理周期や妊娠などによるホルモンバランスの変化、過度なセックスや膣洗浄のしすぎ、薬の服用などが原因で、自浄作用の働きが低下すると、ふだんから腟の中に常在しているような一般的な細菌が通常以上に増殖して、膣に炎症が起こり、細菌性膣炎を発症します。

増殖によって細菌性膣炎を起こす一般的な細菌の代表は、大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、ガードネレラ菌、B群溶連菌で、これらの菌が10~100倍に増殖します。

ふだんから腟の中に常在している細菌が多いのですが、腸の中にいる大腸菌の場合、排便した時に出てきた菌が何らかの理由により腟内に入り込み、細菌性腟炎を引き起こします。

細菌性腟炎を発症すると、灰色または黄色の水っぽい下り物があります。魚のような生臭い悪臭を伴うこともあります。臭いが発生するかどうかは増殖した細菌の種類により、ガードネレラ菌が増殖すると悪臭のもとになります。生理後やセックスの後では、細菌が増えるため特に臭いが強くなります。

腟内の炎症が強い場合には、排尿時に尿が染みて痛みが出たり、尿道周辺の違和感を感じることもあります。また、膣入口部が発赤し、灼熱(しゃくねつ)感、掻痒(そうよう)感などが起こることもあります。

ただし、一般的な細菌は病原性が弱いため、増殖しても腟内に炎症が起きず、半数異常の人は症状を感じません。このため、正確には細菌性腟炎ではなく細菌性腟症と呼ばれます。

腟炎にはカンジダ腟炎やトリコモナス腟炎、委縮性膣炎などいろいろな種類がありますが、割合としてはこの細菌性腟炎になる女性が最も多く、若い女性の1割以上が発症していると見なされています。妊娠期のホルモンの影響などで妊婦では特に細菌性腟炎になりやすく、2割から3割の妊婦は細菌性腟炎を発症していると見なされています。また、トリコモナス腟炎では、細菌性腟炎を同時に発症することが多くみられます。

細菌性腟炎は自然治癒することもありますが、治療しなければずっと続くこともあります。

細菌性膣炎の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科の医師による診断では、腟の分泌物を顕微鏡で観察し、炎症反応やその原因となった病原体を検出したり、時には培養したりして特定します。

婦人科、産婦人科の医師による治療では、膣錠を使っての治療が一般的です。薬が効けば通常、2~3日で症状は消えます。しかし、いろいろな細菌が原因となって起こるため、薬を投与しても増えている菌によっては効果がないこともあり、なかなか治らないような場合には、さまざまな薬を試していくこともあります。

一番よく使われる薬は、保険が効くクロロマイセチン(クロマイ、ハイセチン)の膣錠で、臭いのもととなるガードネレラ菌に効果はありますが、同時に乳酸桿菌も殺してしまうという欠点があります。

効果的な薬は、トリコモナス膣炎の治療薬であるメトロニダゾール(フラジール)の膣錠で、乳酸菌を殺すことなく、ガードネレラ菌を退治します。値段の高い薬ではありませんが、細菌性膣炎の場合には保険が効かないという欠点もあります。

最初の治療の前には、膣洗浄を行って増えた細菌を洗い流して症状を抑えます。この膣洗浄を行うのは、普通は初回の治療だけで、治療のたびに膣洗浄を行うと、せっかく増えた乳酸桿菌が消えてしまうためです。

細菌性膣炎は再発が多いため、治療が長期間に及ぶこともあります。

🇸🇻細菌性尿路感染症

小児の尿路に細菌が感染して、膀胱炎、腎盂腎炎などを起こす疾患

細菌性尿路感染症とは、小児の尿路の中に細菌が入り込んで感染し、炎症を起こす疾患。小児尿路感染症とも呼ばれます。

尿路は、腎盂(じんう)から尿管、膀胱(ぼうこう)へと続く尿の通り道です。細菌は例外的に血液の中を回って腎盂に直接入ることもありますが、尿の通る方向とは反対に、尿の出る尿道口から侵入した大腸菌が原因になることがほとんどです。

女児のほうが尿道が短いために細菌が入りやすいものの、まだ陰茎(ペニス)の先の亀頭部が包皮に包まれたままである男児の場合も、亀頭と包皮の間に垢(あか)がたまって細菌が入りやすい状態になっています。

何らかの理由で尿が逆流したり、停滞した状態が続くと、細菌が侵入したり繁殖しやすくなって感染を起こします。尿路に先天的な奇形があるために、尿路感染症を繰り返す場合もあります。

炎症が起きている尿路の部位によって、症状や経過が異なります。下部に炎症が起きている時は膀胱炎や尿道炎、上部に炎症が起きている時は腎盂腎炎が起こります。

膀胱炎では、尿が黄色くなる、においがする、尿の回数が増える、排尿時に痛みがある、残尿感があるなどの症状が起こります。発熱はほとんどみられません。

尿道炎では、排尿時に軽い痛みがありますが、多くは排尿不快感程度です。白みがかった粘液性のうみの混じった尿が出ることもあります。

腎盂腎炎では、風邪の症状がないのに突然38・5℃以上の発熱がみられ、嘔吐(おうと)や下痢を伴うこともあります。腰痛、腎部痛を伴うこともあります。

風邪の症状がないのに発熱したり、排尿痛、頻尿、腰痛といった症状がある時は、細菌性尿路感染症が疑われますので、小児科を受診します。小児では無症状のことも多いのですが、夜間のおねしょ(夜尿症)や、昼間のお漏らし(昼間遺尿)によって気付くこともあります。

細菌性尿路感染症の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、尿検査を行い、細菌の有無、炎症の時に現れる細胞の有無を確認します。発熱がある場合は、血液検査で炎症の程度を調べ、腎盂腎炎か膀胱炎かを区別します。

尿路感染を繰り返す場合は、尿路で尿が停滞あるいは逆流するような構造的異常があることも考え、超音波検査、腎盂造影、排泄(はいせつ)性膀胱尿道造影などの画像検査を行います。

最近では、全く症状がなく、尿路に異常がないにもかかわらず、尿から常に細菌や白血球が見付かることがあり、無症候性細菌尿あるいは無症候性膿尿(のうにょう)と呼ばれています。これらは、学校健診時の検尿などで偶然発見されることがあります。

小児科の医師による治療では、原因となっている細菌に感受性を示す抗菌剤の内服、あるいは点滴静脈注射による使用を基本とします。一般に、膀胱炎なら抗菌剤の5~7日間の内服で治りますが、腎盂腎炎の場合には入院の上、抗菌剤の14日間の点滴を行います。

腎盂腎炎を繰り返すと、腎臓が障害されて、最終的に腎機能低下を来すため、早期発見、早期治療が重要となります。

尿路のどこかが狭い先天性水腎症や、膀胱の尿が尿管や腎盂に逆流する膀胱尿管逆流現象が原因で、尿路感染を繰り返す小児には、それらの先天的な奇形に対する手術を行うこともあります。

細菌性尿路感染症の再発予防としては、乳児のほとんどは便に含まれる大腸菌が尿路を逆上って発症しているので、大便が出たら早めにおむつを交換する、女児のおしりをふく時は前から後ろにふくように心掛けるなどに注意します。

また、尿の流れが滞ると細菌も繁殖しやすくなりますので、膀胱炎や腎盂腎炎にかかったら、十分に水分を補給してあげます。尿量が増えて尿がたくさん出ると、細菌も一緒に排出される効果があります。尿路感染症にかかっていなくても、水分を多めに与えると感染予防になります。

🇳🇮細菌性肺炎

さまざまな細菌が肺に入り、肺の奥の領域に炎症が起きる疾患

細菌性肺炎とは、一般細菌が肺に入り、酸素と炭酸ガスの交換を行う肺胞や肺間質など、肺の奥の領域に炎症が起きる疾患。実に多種類の細菌が関与します。

普通はまず、ウイルス感染が起きて、気道粘膜が障害を受けたのに乗じた形で、細菌による二次感染が起きるという過程をとります。

細菌性肺炎の代表的なもので、ふだん健康な人がかかる市中肺炎を引き起こす主な原因となるのは、肺炎球菌によるものです。人間の右肺は上中下3つ、左肺は上下2つの大きな袋である肺葉に分かれていますが、この肺葉全体を侵す大葉性肺炎を起こすことで、肺炎球菌はかつては有名でした。抗生物質の発達した現在では、大葉性肺炎は珍しくなり、気管支肺炎にとどまるもののほうが多くなりました。

黄色ブドウ球菌も、肺炎を起こします。この菌のうち、ほとんどすべての抗生物質に耐性を示す耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が近年、重症の疾患で入院している人がかかる院内肺炎の原因となり、大きな問題となっています。

インフルエンザ桿菌(かんきん)も、肺炎を起こします。この菌の場合には、気管支拡張症、慢性気管支炎などの呼吸器疾患を持っている人に、繰り返し急性の気道感染を起こすのが、問題となっています。

同じように、緑膿菌(りょくのうきん)という厄介で、院内肺炎の原因となる菌があり、気管支拡張症、びまん性汎細(はんさい)気管支炎などの疾患を持つ人の気道に住み付いて、治療をしてもなかなか取り除くことができません。

レジオネラ菌も、肺炎を起こします。1976年にアメリカで集団発生したことにより発見された菌で、建物の屋上などに設置されている冷却塔であるクーリングタワー、エアコンディショナーなど、空調設備や給湯系を介した感染や、土壌、河川などの自然環境からの感染が知られるところ。日本での特徴としては、温泉、特に消毒が不十分な沸かし湯を用いた風呂(ふろ)での感染が多いことです。

また、高齢者に多い嚥下(えんげ)性肺炎も、細菌性肺炎。唾液(だえき)や物を飲み込みにくいために誤飲して、さらに誤飲した物を吐き出す力が弱いために、細菌感染が起こることが原因です。

細菌性肺炎の症状は、発熱と激しい寒け、せき、たんなどが主な症状。発熱は39度以上と、高熱になることがしばしば。

せきが激しい時は、それに伴って胸が痛くなります。肺炎が胸壁を覆う胸膜にまで達して胸膜炎を合併した時は、激しい胸痛が起こることがあります。頻度はあまり多くないものの、たんに血が混じることがあり、気管支拡張症などの既往症がある時は、血たんがしばしば認められます。

しかし、体の反応の弱い高齢者では、あまり激しい症状が出ないことも少なくなく、気が付いた時にはかなり悪化していることもあります。風邪を引いた後、いつまでもだるそうにして元気がなく、食欲も回復しない時は、肺炎を疑う必要があります。

肺結核などの呼吸器疾患の既往症がある人や、肺の疾患で手術を受けた人が肺炎にかかると、劇症になりやすくなります。肺から取り込む酸素が不足し、速く浅い呼吸になり、時には呼吸困難に陥ることもあります。

細菌性肺炎の検査と診断と治療

肺炎が劇症になると、時には呼吸困難に陥ることもありますので、なるべく早期のうちに呼吸器内科、呼吸器科の専門医を受診します。

医師は、胸部X線撮影を行います。炎症が起こると肺の末梢(まっしょう)血管から水分が染み出して、肺胞にたまりますが、これがX線で撮影すると影になって見えます。

ほかに、血液検査を行って白血球の増加、CRP値(C反応たんぱく)の増加、赤血球沈降速度の高進など、炎症反応を調べます。有効な抗生物質を探るために、たんを培養して原因菌も調べます。

細菌性肺炎の治療の基本は、原因となっている細菌の排除を目的に、抗生物質を投与すること。通常、市中肺炎で原因となる細菌は肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌であるため、ペニシリン系やセフェム系の抗生物質、ニューキノロン系の抗菌剤が用いられます。

院内肺炎の場合は、セフェム系やマクロライド系、ペニシリン系の抗生物質がよく用いられます。

対症療法として、たんをサラサラにして出しやすくするために去たん剤、せき込みによる体力の消耗を防ぐために鎮咳(ちんがい)剤が用いられます。

いろいろのタイプがある肺炎は、かつては非常に怖い疾患の一つでしたが、現在は胸部X線検査の進歩で早期に診断できるようになり、ペニシリン系、セフェム系などの抗生物質の開発で、完治しやすくなりました。しかしながら、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者、体の衰弱した疾患の人などの肺炎による死亡率は依然として高く、油断できない疾患だといえます。

日常生活においては、風邪を引かないように注意する、 うがいや歯磨きでいつも口の中を清潔にする、 室内の換気をよくし空気を清潔に保つ、禁煙するなどの予防対策を施したいものです。

🇸🇻再生不良性貧血

貧血の中で最も治りにくく、いわゆる難病に指定されている疾患

再生不良性貧血は、骨髄にある血液細胞の源に当たる造血幹細胞が何らかの原因によって減るために、赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減る疾患。

貧血の中で最も治りにくいために、厚生労働省は1972年に特定疾患、いわゆる難病に指定しました。日本の患者数はそれほど多くはなく推定で5000~6000人とされますが、諸外国に比べると日本での有病率は世界で最も高いといわれています。年齢別でみると、20歳代と50~60歳代に発症のピークがあります。

赤血球だけが減少する他の貧血と異なり、再生不良性貧血ではすべての血球が減少するのが特徴です。すべての血球は骨髄で造血幹細胞が盛んに分裂、増殖を繰り返し、そこにさまざまな造血因子が働き掛けることで、あるものは赤血球に、あるものは白血球に、またあるものは血小板へと姿を変えていきます。この血球分化の源である造血幹細胞が障害を受けてしまうと、いずれの血球も作られなくなるのです。

鉄欠乏性貧血は欠乏している鉄、悪性貧血は欠乏しているビタミンB12や葉酸を補充することで治りますが、再生不良性貧血はそういうわけにはいかず、これが難病に指定された理由でもあります。

再生不良性貧血は血球全体が減少するので、他の貧血のように赤血球だけが減少するものと症状の出方が異なります。赤血球が減少すると、動悸(どうき)や息切れ、めまい、立ちくらみ、頭痛などの貧血症状が現れ、顔面が蒼白(そうはく)になります。白血球、特に好中球が減少すると、細菌に対する防御力が低下し、感染症に掛かりやすくなり発熱も続きます。血小板が減少すると、出血しやすくなり、鼻や歯肉、泌尿器、性器、消化管からの出血のほか、皮下に紫斑(しはん)が現れることがあります。

この再生不良性貧血の80パーセント以上は誘因が不明ですが、一部は抗生剤や鎮痛薬などの薬物投与、ウイルス感染、原因不明の肝炎などが引き金になって、造血幹細胞自体の異常や造血幹細胞に対する免疫反応が誘導され、造血幹細胞が分裂、増殖できなくなるために、発症すると考えられています。

医師による診断では、すべての血球が減少していることを確認すると同時に、針を刺して採取する骨髄穿刺(せんし)によって骨髄の細胞密度が低いことを確認します。一般に測定される血液細胞は赤血球、白血球、血小板の3つですが、骨髄の働きを評価する場合には、網状赤血球という未熟な赤血球の数を調べる必要もあります。

骨髄を検査できる骨は、胸骨という胸の中心に位置する骨と、腸骨という骨盤の骨に限られています。全身の骨髄の状態を評価するためには、MRI(磁気共鳴画像)検査を行う必要があります。この検査の結果、胸部や腰部の脊椎(せきつい)骨の骨髄細胞密度が低ければ、再生不良性貧血の診断は確実になります。

再生不良性貧血との区別が特に難しいのは、骨髄異形成症候群のうち、骨髄中の芽球という幼弱な細胞の割合が5パーセント未満の不応性貧血です。不応性貧血では細胞の形に異常がみられますが、再生不良性貧血でも軽度の異常がみられるため、その区別には高度の専門的な判断が必要です。

再生不良性貧血に対する治療の二本柱は、免疫抑制療法と、HLA(ヒト白血球抗原)が一致する血縁ドナーからの同種骨髄移植です。45歳以下の発症者でHLAの一致する血縁ドナーが得られる場合には、一般に同種骨髄移植が適しています。45歳以上の発症者では、移植に伴う合併症のために生存率が低下するので、免疫抑制療法が第一選択の治療と見なされます。

抗ヒト胸腺(きょうせん)細胞免疫グロブリン(ATG)やシクロスポリン(CSA)などの免疫抑制剤を内服する、最新の免疫抑制療法を用いれば、年齢を問わず80~90パーセントの長期生存率が得られます。ただし、免疫抑制療法後の長期生存者の中に、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行する例が10~15パーセント存在するため、20歳以下の発症者では一般に骨髄移植療法が優先されます。

🇳🇮臍帯ヘルニア

へその部分の腹壁が生まれ付き欠損し、腸管などが脱出

臍帯(さいたい)ヘルニアとは、生まれ付き欠損している、へその部分の腹壁から、腸などの腹腔(ふくくう)内臓器が体の外に脱出した状態。脱出した臓器は、羊膜<、臍帯膠質(こうしつ)、腹膜の3層からなる薄い膜で覆われています。

臍帯ヘルニアは、腹壁にできた穴の場所により臍上部型、臍部型、臍下部型の3つに分けられます。最も多いのは臍部型で、他の型と比較すると奇形の合併は少ないものの、穴が5センチ以上と大きい場合は腸だけでなく肝臓も出ていることがあります。臍上部型と臍下部型では、いろいろな種類の重い奇形を合併していることが知られています。

全体でみると、50パーセント以上の症例で染色体異常、消化管、心血管、泌尿生殖器、中枢神経系などの重い奇形を合併しています。

また、穴が小さく小腸の一部だけがわずかに出ているものは臍帯内ヘルニアと呼ばれ、重い奇形の合併は少ないものの、腸の奇形を伴うことが多く、治療する時に確認が必要です。

原因としては、胎生早期の3〜4週の腹壁形成障害(腹壁形成不全説)と、胎生8週ころの中腸の腹腔内への還納(かんのう)障害(腹腔内還納不全説)の2つの説があります。肝臓の脱出を伴うような大きな臍帯ヘルニアでは腹壁形成障害、小さな臍帯ヘルニアでは還納障害が有力と見なされています。

在胎20週ころの胎児エコー(超音波)により出生前に診断される場合が多く、出生後でも臍帯内に脱出した腸が認められるため診断は容易です。へその緒(臍帯)が極端に太いために異常に気付かれ、小さな臍帯ヘルニアが見付かることもあります。 発生の頻度は出生5000人に1人。

症状としては、脱出した臓器を覆う薄い膜であるヘルニア嚢(のう)の表面が破れたり、細菌感染を起こしたりします。ヘルニア嚢が破れたものは、破裂臍帯ヘルニアと呼ばれます。

臍帯ヘルニアの検査と診断と治療

出生前診断で臍帯ヘルニアが疑われた場合は、新生児科と小児外科の専門医がそろった医療機関での出産が望まれます。出生後に診断された場合は、同様の医療機関への緊急搬送が必要です。搬送に際しては、ヘルニア嚢と脱出臓器が滅菌乾燥ガーゼで覆われます。

医師による診断に際しては、破裂臍帯ヘルニアと先天性腹壁破裂との見極めが必要になります。他の奇形の合併の確認も大切です。

臍帯ヘルニアの治療では、脱出している臓器を腹腔内に戻し、腹壁の穴を皮膚で覆う手術を行います。脱出臓器が少なければ、1回の手術で腹壁を閉めることができます。脱出臓器が多い場合や肝臓も出ている場合は、1回の手術では腹壁を閉めることができないため、何回かに分けて少しずつ臓器を腹腔内に戻します。通常、1~2週間で戻すことが可能です。

生まれ付き心臓の疾患などの重い奇形の合併があり、全身状態が悪い場合は、生まれてすぐに手術をすることが危険なので、ヘルニア嚢を特殊な液で消毒しながら皮膚のように硬く強くなるのと、1歳を過ぎて体が大きくなるのを待って、腹壁を閉める根治手術を行います。

🇳🇮サイトメガロウイルス感染症

サイトメガロウイルスによって起こり、さまざま症状を生じる感染症

サイトメガロウイルス感染症とは、ヒトヘルペスウイルスの仲間であるサイトメガロウイルス(CMV)に感染することによって、さまざまな症状を生じる疾患。

サイトメガロウイルスは世界中で見られるウイルスで、その感染は直接的、間接的な人と人の接触によって起こります。感染源になり得るものとしては、唾液(だえき)、鼻汁、子宮頸管(けいかん)粘液、腟(ちつ)分泌液、精液、母乳、涙、血液、尿、便などが知られており、一見健康にみえる人からもウイルスの排出が起こることもあります。

日本人の大多数は、誕生前の胎児の段階で母子間でサイトメガロウイルスに初めて感染し、潜伏した状態で体内にウイルスを保有します。この先天性感染では、胎児に重い後遺症を残すこともあり、重症の場合には肝臓のはれ、黄疸(おうだん)、出血などの症状に加え、小頭症や水頭症といった神経の異常も加わり、胎児や新生児が死亡することもあります。5歳ころまでに、難聴や知能の障害、目の異常などの症状が出てくる場合もあります。

小児や成人の段階で初めてサイトメガロウイルスに感染する後天性感染では、症状が現れる場合でも発熱、肝臓やリンパ節のはれというような軽い症状がほとんどです。しかし、一度、サイトメガロウイルスに感染すると、症状が消えて治ったように見えても一生の間、体内に生きたサイトメガロウイルスが潜伏しています。

疾患や薬など何らかの原因で免疫力や抵抗力が低下した状態になると、潜伏感染していたサイトメガロウイルスが再活性化して、ほとんどの人に症状が現れます。発熱、白血球減少、血小板減少、肝炎、関節炎、大腸炎、網膜炎、間質性肺炎などの症状が現れると重症になります。

サイトメガロウイルス感染症の検査と診断と治療

免疫状態や抵抗力が低下している場合は、治療が必要です。それ以外の場合は無症状か軽症のことが多く、治療が不必要なこともあります。

医師による診断は、血清抗体の測定や尿などの臨床材料からウイルスを検出することで確定します。妊娠中に超音波検査などで胎児に異常が見付かった場合は、羊水のウイルス検査を行うこともあります。サイトメガロウイルスの遺伝子は健常人の組織中にもあり、無症状でウイルスを排出することもあります。

治療では、ガンシクロビル、フォスカーネット、シドフォビル 、アシクロビル、バラシクロビルなどの抗ウイルス剤、抗サイトメガロウイルス高力価(こうりきか)免疫グロブリン、ヒト型抗サイトメガロウイルス単クローン抗体などが用いられます。

予防のためには、サイトメガロウイルスを含む唾液、母乳、膣分泌物、精液、血液、尿、便を介して人から人への感染が起こると考えられますので、これらの体液に触れた後は、よく手を洗うようにします。

🇳🇮再発性アフタ

口腔粘膜に円形、あるいは楕円形の浅い潰瘍ができるアフタ性口内炎が再発を繰り返す疾患

再発性アフタとは、単純にアフタとも呼ばれるアフタ性口内炎が再発を繰り返す疾患。再発性アフタ性口内炎、慢性再発性アフタとも呼ばれます。

アフタ性口内炎は、口腔(こうくう)粘膜に、1センチまでの円形あるいは楕円(だえん)形の浅い潰瘍(かいよう)であるアフタができる疾患で、このアフタが1個できる場合もあれば、多数できる場合もあります。唇や頬(ほお)の内側の粘膜、舌、歯茎など、どこにでもできます。

アフタの表面は白色や黄色がかった白色をしており、中央は少しくぼみ、クレーターのような形をしています。アフタの縁は周囲の粘膜よりも赤く、物が触れたりすると強く痛みます。

通常は1週間から2週間程度で、自然に完治します。発熱や全身倦怠(けんたい)感などの全身症状は伴いません。

このアフタ性口内炎が再発を繰り返す再発性アフタの場合は、7~10日ぐらいで跡を残さず自然に治りますが、また再発します。年に数回から月に1度程度の頻度で、再発することもあります。

何もしなくても痛く、また強い接触痛があります。複数個所にアフタ性口内炎が生じる重度のものでは、痛みのあまり摂食不能になることもあります。

再発性アフタは、20~30歳代に多く生じ、女性のほうが多いといわれています。

アフタ性口内炎そのものの原因は、まだ不明です。過労、精神的ストレス、胃腸障害、ビタミン不足、ウイルスの感染、女性では妊娠、月経異常といった内分泌異常などが誘因になります。

ベーチェット病が、再発性アフタで始まることがあり、目や外陰部にも潰瘍のできている時は注意が必要です。ベーチェット病は、原因不明の膠原(こうげん)病類縁疾患で、目のぶどう膜炎に加えて、口腔粘膜のアフタ性潰瘍、皮膚症状、外陰部潰瘍を主症状とし、血管、神経、消化器などの病変を副症状として、急性炎症性発作を繰り返すことを特徴とします。

再発性アフタによる痛みが強い場合は、口腔内科、口腔外科、歯科口腔外科を受診するのがよいでしょう。何度も再発を繰り返す場合は、ベーチェット病などの全身的な疾患の部分症状ということも考えられますので、眼科、皮膚科、内科などを受診しておいたほうがよいでしょう。

再発性アフタの検査と診断と治療

歯科口腔外科、内科などの医師による診断では、原因となる誘因の検査を行い、口腔内の炎症部位、炎症状態の観察を行います。アフタが何度も再発を繰り返す場合は、ベーチェット病なども考えて、血液検査や免疫学的検査を行います。

歯科口腔外科、内科などの医師による治療では、ステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)の入ったケナログ軟こう、アムメタゾン軟こうや貼(は)り薬をアフタのできている部位に使います。

貼り薬は軟こうと異なり、シールを貼るように潰瘍面を被覆保護するため、貼ることが可能な部位にアフタがあって個数が少ない場合はとても有効であり、食事時の痛みが劇的に減少します。

アフタの個数が多い場合や、口の奥にできた場合には、ステロイド剤の入った噴霧剤、うがい剤なども使います。

予防としては、過労、精神的ストレス、胃腸障害などの誘因となるものを避けるようにします。うがいをして、いつも口内を清潔に保つことも大切です。

🇧🇿臍肉芽腫

新生児の臍帯が脱落して皮膚で覆われる前に、肉の塊が生じたもの

臍肉芽腫(さいにくげしゅ)とは、新生児の臍帯が乾いて脱落した跡に、豆状の肉の塊である肉芽が増殖したもの。

出生時に母胎と切り離された新生児の臍帯(へその緒)は、生後1週間〜10日で乾いて自然に脱落し、本来ならば、跡はすぐ皮膚で覆われます。臍帯が脱落する際に、臍帯の組織の一部が臍底に残ると、これが増殖して盛り上がるために、米粒から小豆粒ぐらいの大きさで、赤いいぼのような臍肉芽腫が生じます。時には、大豆(だいず)大になり、臍部から表面に飛び出して見えることもあります。

肉芽腫の表面から、少し濁った滲出(しんしゅつ)液が出るため、いつも湿って乾きが悪く、放置すると細菌感染を起こしたり、こすれて出血したりします。表面が上皮化して、皮膚のように硬く強くなることもあります。

なお、胎生の初期では、臍帯が腸管や膀胱(ぼうこう)とつながっているために、まれに腸管の一部が臍部に残る臍ポリープを生じたり、膀胱とのつながりが臍部に残る尿膜管遺残を生じたりすることがあります。これらは臍帯の名残の臍肉芽腫とは別のもので、治りにくく手術が必要です。

臍肉芽腫の検査と診断と治療

退院した後1週間〜10日ぐらいしても、へそがジクジクしているようなら臍肉芽腫の可能性がありますので、出産した病院または小児科を早めに受診します。

医師による治療では、滅菌した糸で肉芽腫の根元を硬く縛り、ステロイド含有軟こうを塗布してガーゼで覆っておくと、2〜3日で取れます。小さければ、硝酸銀棒(ラピス)や硝酸銀液で焼き切る方法もあります。

硝酸銀棒はそのまま使用し、滅菌蒸留水100cc に硝酸銀20gを溶かした硝酸銀液は滅菌綿棒に染み込ませて使用します。焼き切った後は、化学熱傷を起こさないように、臍部を生理食塩水を浸した滅菌綿棒でよくふいて、硝酸銀を除去します。

以上の処置で治らない臍肉芽腫の場合は、手術で切除することもあります。臍ポリープ、尿膜管遺残の場合も、手術で切除することが必要です。

2022/08/08

🇱🇸臍ヘルニア

生後間もなくへその緒が取れた後、へそが飛び出してくる状態

臍(さい)ヘルニアとは、生後間もなくへその緒が取れた後に、へそが飛び出してくる状態。乳幼児期特有の疾患で、俗に出べそと呼ばれます。

へその緒(臍帯)が取れた生まれて間もない時期には、まだへその真下の臍輪が完全に閉じていないために、乳児が泣いたり息んだりして腹に圧力が加わった時に、筋肉の透き間から腸管が皮下に飛び出してきて、へそが膨らんだ出べその状態となります。

触れると柔らかく、圧迫するとグジュグジュとした感触で簡単に腹の中に戻りますが、乳児が再び泣いたり息んだりして腹に圧力が加わると、すぐに元に戻ってしまいます。腸管が腹腔(ふくくう)内に入ったり、出たりする結果です。

臍帯付着部の臍輪の閉鎖不全が、原因です。臍輪の下方には正中(せいちゅう)臍靭帯(じんたい)、外側(がいそく)臍靭帯があり、上方には肝円(かんえん)靭帯があります。特に、臍上部が弱く、出生までに臍輪が閉じられない場合に、臍ヘルニアが発症します。

この臍ヘルニアは、新生児の5~10人に1人、出生体重1000〜1500グラムの未熟児の80パーセント以上にみられるといわれています。生後3カ月ころまで大きくなり、ひどくなる場合は直径が3センチ以上にもなることがあります。しかし、4カ月ころには日1日と急速に小さくなり、ほとんどの臍ヘルニアは左右の腹直筋が発育してくる1〜2年の間に完全に臍輪が閉じて、自然に治ります。

ただし、1~2歳を超えても臍ヘルニアが残っている場合や、ヘルニアは治ったけれども皮膚が緩んでしまって、へそが飛び出したままになっている場合には、手術が必要になることがあります。

臍ヘルニアで痛みがある場合は、大網(だいもう)がヘルニア嚢(のう)に癒着しているためと考えられます。大網とは、胃の下部から垂れて腸の前面を覆う薄い膜で、ヘルニア嚢とは、飛び出してくる腸管を包む腹膜です。乳幼児の臍ヘルニアでは、腸管がヘルニア嚢内に陥入し、腸管血行障害を起こす嵌頓(かんとん)は極めてまれです。

臍ヘルニアの検査と診断と治療

1~2歳を超えても臍ヘルニアが残っている場合や、へそが飛び出したままになっている場合には、小児外科の専門医を受診します。

医師が指で圧迫すると、腸管はグル音という腹腔内に戻る時の音を伴い、簡単に還納できることで、確定診断ができます。

乳幼児期に自然に治る可能性が高いので、まずは手術はせずに外来で経過観察します。腸が腐る危険はまずありませんし、どんなに大きくても皮膚が破裂することもありません。へその形をよくする意味で、絆創膏(ばんそうこう)固定を行う医師もいます。

生後1年以内に、80〜95パーセントは自然に治ります。2歳までに治らなければ、外科的治療を行います。臍輪の穴を閉じるとともに、へそのへこみを人工的に作ります。成人の場合は、臍ヘルニア内に腸管嵌頓が起こる頻度が高いので、発見次第、外科的治療を行います。合併症がなければ、予後は良好です。

🇱🇸鎖陰

先天的に、あるいは後天的に女性性管の一部が閉鎖した状態

鎖陰(さいん)とは、処女膜、腟(ちつ)、子宮などの女性性管の一部が閉鎖した状態。性器閉鎖症とも呼ばれます。

先天的に発生することが多いものの、後天的に外傷や炎症などのために起こることもあります。主なものに、処女膜閉鎖症、膣閉鎖症(腟横隔)、膣狭窄(きょうさく)症、膣欠損症があります。

処女膜閉鎖症は、腟口部を取り囲むヒダ状の器官で通常、中央部は開いているはずの処女膜が、完全にふさがっている状態。そのために閉鎖した腟内や子宮、卵管に月経血、分泌物などがたまり、下腹部痛を起こしたり、しこりを生じたり、腰痛を起こしたりします。また、膀胱(ぼうこう)刺激症状や排便痛を起こすこともあります。

腟閉鎖症は、ほとんどが膣の上部3分の1と膣の下部3分の2との境界部に好発し、腎臓(じんぞう)の奇形を合併することもあります。処女膜閉鎖症と同様、思春期以降に月経が起こっても、流出路が閉鎖しているために月経血が排出されずに腟内や子宮、卵管にたまり、月1回、定期的にかなり強い下腹部痛を起こします。

月経血の貯留が高度になると、下腹部にしこりを感じ、排尿障害、排便障害、腰痛、持続的な腹痛が起こることもあります。大量の貯留が長期間放置されると、子宮や膣が過伸展、変形して、後に不妊症の原因になることもあります。

膣狭窄症は、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じる先天性のものと、小児期のジフテリアや、はしか(麻疹〔ましん〕)などによる膣炎の後遺症として生じた癒着による後天性のものとがあります。狭窄の程度によって全く症状を欠く場合もありますが、高度の場合は月経血の排出障害、分泌物の貯留を起こしたり、膣炎が起きたり、異常な下り物をみることもあります。膣が狭いために、性行為に問題を抱えます。

処女膜閉鎖症、膣閉鎖症、膣狭窄症はいずれも、思春期に初経がこないため婦人科を受診し、発見される例がほとんどです。

腟欠損症は、先天的に女性の腟の一部、または全部が欠損した状態で、腟や子宮の異常がさまざまな程度に起こります。染色体は正常女性型で、卵巣はほとんど正常にあり、女性ホルモンも正常に出ています。外陰部も正常で、女性としての二次性徴も正常です。

膣狭窄症と同様、胎児期におけるミュラー管という組織の発生障害によって生じ、子宮はわずかに痕跡(こんせき)を残す程度にしか発育せず、腟も長さが2~3センチと短いか、全くない状態になります。はっきりした原因はまだわかっていませんが、血管に異常が起こってミュラー管へ血液が流れなくなり、正常な発生ができなくなると推測されています。

腟欠損症は、医学的には上部腟欠損、下部腟欠損、全腟欠損に分類されます。頻度は4000~5000人に1人とされ、そのうち95パーセントは月経を起こし得る機能性子宮を持ちません。

全腟欠損で機能性子宮を持たない場合をロキタンスキー症候群と呼び、腟欠損の中で最も頻度が高いものです。月経機能を失っている状態で、月経血の貯留による症状はなく、無月経がほぼ唯一の症状となります。卵巣からの排卵はありますが、体内で死滅して吸収され、体外に排出されるということはありません。

一部の腟欠損で機能性子宮を持つ場合には、思春期以降、月経に伴って子宮や卵管への月経血の貯留を起こすため、月経血をみないまま周期的な腹痛が出現する月経モリミナという症状が現れます。

また、機能性子宮の有無にかかわらず、普通の性行為はできません。まれに、骨の異常があることもあります。

腟欠損症に気付いたら、婦人科医、ないし産婦人科医を受診してください。

鎖陰の検査と診断と治療

婦人科、産婦人科、あるいは小児科の医師による診断は、内診のほか、超音波検査、MRI検査、基礎体温の測定、血液中ホルモン検査、腎臓(じんぞう)と尿管の検査、骨のレントゲンなどを行います。

医師による処女膜閉鎖症、腟閉鎖症(腟横隔)の治療は、閉鎖部位を切開して、月経血や分泌物などの通り道を作れば解決し、後遺症もなく治ります。軽度の処女膜閉鎖症では、簡単な十字切開手術ですみます。膣閉鎖症では、膜様閉鎖では切開のみで問題ありませんが、閉鎖部が厚い場合には輪状切開を行います。この輪状切開を行った場合には、手術後の瘢痕(はんこん)性委縮に注意する必要があります。

処女膜閉鎖症、膣閉鎖症の場合には、閉鎖している部分を切開して完治するので性交渉も可能になります。卵巣および子宮は正常なので、その後の月経も含めて問題はなくなり、正常な妊娠、出産も可能になります。ただし、長期間放置して診断が遅れた場合には、卵管卵巣の壊死(えし)や破裂による腹膜炎を来すことがあります。

膣狭窄症の治療は、程度に応じて頸管(けいかん)拡張器による膣腔(ちつくう)の拡大、狭窄部の小切開、さらに全体的膣形成までさまざまな手術が行われます。

腟欠損症の治療では、性行為ができるように人工的に膣を造る造腟手術を行います。子宮に異常を伴う場合には妊娠が不可能な場合もあり、造腟手術により性行為を可能にして精神的不具感をいやすことが治療の主眼となります。手術は、思春期以降の性的関係を持つ時期を目安に行われます。

造腟手術には数多くの術式があり、今なおさまざまな工夫が試みられています。主な術式は、フランク法、マッキンドー法、ダビドフ法、ルーゲ法の4つです。

フランク法は、腟前庭(ぜんてい)をヘガール持針器などで圧伸して腟腔を形成したのち、その腟腔を拡張する方法。マッキンドー法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、皮膚移植により腟壁を形成する方法。ダビドフ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、骨盤腹膜を利用して腟壁を形成する方法。ルーゲ法は、出血を余儀なくされる処置で腟腔を形成したのち、開腹してS状結腸を切り離し、腟壁として利用する方法。

以上4つの方法が従来行われてきましたが、近年では腹腔鏡下手術が行われることも増えてきました。患者の体にかかる負担を軽減し、骨盤腹膜やS状結腸を使った手術が可能となっています。

このような手術の後には、膣管の状態を維持する必要があります。定期的な性交渉やプロテーゼ(腟ダイレーター)により、状態を保たなければいけません。プロテーゼ(腟ダイレーター)とは、筒状の拡張器具のことを指し、皮膚を伸展させて腟管を形成する目的で使用されます。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...