2022/08/14

🇬🇹細菌性急性胃腸炎

消化管への細菌感染により、腹痛、発熱、血便などが現れる疾患の総称

細菌性急性胃腸炎とは、消化管への細菌感染により、腹痛、発熱、血便などが現れる疾患の総称。

いわゆる食中毒の形をとることも多く、犬や猫などのペットからの感染もあります。カンピロバクター菌、サルモネラ菌、病原性大腸菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌などの細菌感染が、細菌性急性胃腸炎の原因になります。

いずれも、食べ物が十分に調理されていない時や、料理人の手洗いがきちんとなされていない際に、細菌が感染します。すると、細菌が腸粘膜に付着、侵入したり、細菌が出す毒素の影響などで、腸粘膜に炎症が起きます。

成人の場合、細菌が感染しても、多くは細菌性急性胃腸炎を発症しません。発症するのは、成人とほぼ同じ内容の食事をした子供、あるいは高齢者がほとんどです。大人が知らないうちに感染して、子供に移してしまうと重症化したりするので、注意が必要です。家庭で作った離乳食を食べている乳児や、母乳だけを飲んでいる赤ん坊には起こりにくい疾患です。

カンピロバクター菌による細菌性急性胃腸炎は、最も多い鶏肉を始めとして、豚肉、牛肉、馬肉などを食べることが原因となって発症します。とりわけ、生あるいは加熱があまりなされていないユッケ、鳥わさ、レバ刺しなどは、発症する可能性が高いことで知られています。鶏肉の場合、加熱不十分なバーベキュー、鶏鍋(なべ)、焼き鳥などが原因となることもあります。

井戸水や湧水(ゆうすい)、簡易水道水など消毒不十分な飲用水が原因となって、発症することもあります。犬、猫などのペットの腸管内にもカンピロバクター菌が存在するため、小児ではペットとの接触によって直接感染することもあります。

サルモネラ菌による細菌性急性胃腸炎は、鶏肉、豚肉、牛肉や、鶏卵などをよく火を通さないで食用にしたもののほか、納豆、氷小豆、乳製品などが原因となって発症します。特に近年では、鶏卵に含まれるエンテリティディスという血清型の菌によって、生卵を始めとして、卵焼き、オムレツ、手作りケーキやマヨネーズなどから発症しています。

また、ペットから感染したサルモネラ菌が原因となって発症することもあります。

病原性大腸菌には4つの種類があり、腸管出血性大腸菌O(オー)157による細菌性急性胃腸炎は、牛、羊などの生肉、生レバーを食べることが原因となって発症します。消毒不十分な飲用水が原因となって、発症することもあります。

腸炎ビブリオによる細菌性急性胃腸炎は、魚介類、あるいはその加工品を食べることが原因となって発症します。とりわけ、刺身など生の魚介類は、発症する可能性が高いことで知られています。

黄色ブドウ球菌よる細菌性急性胃腸炎は、牛乳、クリーム、バター、チーズ、かまぼこ、おにぎり、折詰弁当、すし、サンドイッチ、ケーキなどを食べることが原因となって発症します。

潜伏期は感染する細菌によって異なり、早いものでは数時間から、多くは5日間程度までの潜伏期の後、腹痛、発熱、嘔吐(おうと)、水様便または粘血便の下痢などがみられます。

細菌性急性胃腸炎は細菌の繁殖しやすい夏季に多く、アデノウイルスやノロウイルス、ロタウイルスなどによるウイルス性胃腸炎と比較すると、発熱、腹痛の程度が激しく、しばしば血便を認めます。

嘔吐、下痢などの回数が多くなると、特に乳幼児や高齢者では、脱水症状が強くなることがしばしばあります。脱水症状とは、体内の水分が不足するために全身のバランスが崩れ、心臓などの循環器、腎臓(じんぞう)、肝臓の働きが悪くなることで、ひどくなったまま放置すればショック状態となり、死に至ることもあります。

O157による場合には、特に腹痛が強く、血液そのもののような血便が出ることもあります。重い合併症として、O157が出すベロ毒素が起こす溶血性尿毒症症候群(HUS)が、小児では6〜7パーセントにみられます。この場合は、下痢発症後平均5〜6日で、顔色不良、黄疸(おうだん)、出血斑(はん)、浮腫(ふしゅ)、血尿、尿量減少、頭痛、不眠などの症状が現れます。

腹痛、発熱、下痢があり、便に血液らしきものが混じっていたら細菌性急性胃腸炎の可能性が強いことから、内科、消化器科、胃腸科、小児科の専門医を受診して、便の細菌検査を受ける必要があります。周囲に同様の症状の人がいる場合には、食中毒を考える必要があります。

細菌性急性胃腸炎の検査と診断と治療

内科、消化器科、胃腸科、小児科の医師による診断では、急性の中毒症状から細菌感染を疑いますが、どんな細菌に感染したかを確定するには、O157や黄色ブドウ球菌など毒素だけで判断できる一部の細菌を除いて、実際に糞便(ふんべん)などから原因となっている菌を分離することが必要です。

感染初期や軽症の場合は、ブドウ糖液やリンゲル液などの電解質液の点滴、吐き気や嘔吐を止める鎮吐剤の投与、あるいは整腸剤の投与による対症療法を行います。ただし、下痢止めは基本的に使用しません。症状を慢性化させたり、悪化させたりすることがあるからです。

多くの場合は点滴などで自然軽快しますが、重症化した場合は、エリスロマイシン、ホスホマイシンなどのマクロライド系抗菌剤の投与による治療を行います。抗菌剤は原因菌に有効な種類を使用することが原則ですが、原因菌の分離には24〜48時間かかるので、急を要する場合には症状、原因食、季節、年齢などから推定して治療を始めます。

ほとんどの場合は点滴や抗菌剤などで治りますが、サルモネラ菌による場合は下痢の症状が消えても長期間、排菌される傾向があるので、検査を続ける必要があります。

細菌性急性胃腸炎を予防するためには、以下のことを心掛けます。食肉や卵は、十分に加熱する。まな板、包丁、ふきんなどはよく洗い、熱湯や漂白剤で殺菌する。調理後は、早めに食べる。食品の長期間の保存は、できる限り避ける。

また、野生動物の糞便などで汚染される可能性のある井戸水や湧水、簡易水道水など消毒不十分な飲用水を飲まない、小児では犬や猫などのペットの糞便に触らないなどの注意も必要です。

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