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2022/09/02

🇩🇪妄想性障害

不自然でない妄想を抱く精神疾患

妄想性障害とは、脳および心の機能的、器質的障害によって引き起こされる精神疾患の1つ。偏執症とも呼ばれます。

1つ以上の奇異ではない内容の妄想、すなわち誤った思い込みが、少なくとも1カ月間持続するのが特徴です。

妄想性障害における妄想は、理にかなっていて、不自然な内容のものではありません。例えば、妄想性障害では「友人はスパイで、自分は隠しカメラで監視されている」、「隣人はスパイで、犬を毒殺しようと企てている」などという妄想を抱くのに対し、統合失調症では「友人が小さくなって、自分の耳の中に入っている」、「隣人が蚊に変装し、窓の外を舞っている」などという明らかに不自然な妄想を抱きます。

統合失調症が健康な状態と明らかに一線が画される重度の精神疾患であるのに対して、妄想性障害では人格は保たれ、感情や行動の異常は見られません。この妄想性障害は、しばしば統合失調症、器質性精神疾患、妄想性人格障害、うつ病のような他の障害と同時に起こります。発症する年代は一般的に、成人期中期から後期にかけてです。妄想性障害の亜型も、いくつか知られています。

すべての妄想性障害の本質的な特徴は、偵察される、だまされる、陰謀を企てられる、追跡される、毒を盛られる、感染させられる、わざと中傷される、嫌がらせを受ける、配偶者や恋人に裏切られるなどという被迫害信念のような妄想システムで、実生活でも起こり得るような状況を含んでいます。

一般的に、怒り、恨み、そして時折の暴力は、これら誤った被迫害信念に付随したもの。疑い深さも共通しており、誰(だれ)にでも向けられるか、または一人あるいは複数の人に向けられます。

妄想性障害の病型として、 色情型、誇大型、嫉妬(しっと)型、被害型、身体型、混合型、特定不能型の7タイプが認められています。

色情型では、他の誰か、通常は社会的地位の高い人が自分と恋愛関係にあるというのが、妄想の中心的なテーマになります。電話、手紙、メール、さらには監視やストーカー行為などで、妄想の対象と接触を図ろうとすることもあり、この妄想から出た行動が法律に触れることもあります。

誇大型では、肥大した価値、権力、知識、身分、あるいは神や有名な人物との特別なつながりに関するものが、妄想の中心的なテーマになります。例えば、自分には偉大な才能があるとか、重要な発見をしたなどと思い込みます。

嫉妬型では、自分の性的パートナーが不誠実であるというのが、妄想の中心的なテーマになります。あいまいな証拠から誤った推測をして、配偶者や恋人が浮気をしているなどと思い込みます。このような状況では、傷害事件に発展する恐れもあります。

被害型では、自分、もしくは身近な誰かが何らかの方法で悪意をもって扱われているというのが、妄想の中心的なテーマになります。陰謀をたくらまれている、見張られている、中傷されている、嫌がらせをされているなどと思い込み、裁判所など行政機関に訴えて、繰り返し正当性を主張しようとすることもあります。まれに、害を及ぼそうとしている想像上の迫害者に報復しようとして、暴力的な手段に訴えることがあります。この被害型は、犯罪行動、特に暴力的な犯罪行動と最も関連がある病型なのです。

身体型では、自分に何か身体的欠陥がある、あるいは自分が一般的な身体疾患にかかっているというのが、妄想の中心的なテーマになります。体に異常があるとか体臭がするなど、体の機能や特性に捕らわれ、寄生虫感染といった想像上の身体疾患の形を取る場合もあります。

混合型では、妄想が上記の病型の2つ以上によって特徴付けられますが、どのテーマも優性ではありません。 特定不能型では、妄想のテーマが特定できません。

妄想性障害の検査と診断と治療

妄想性障害は、もともと妄想性人格障害がある人に発症します。その妄想性人格障害の人は成人期初期より、他人の行動や行動理由に対して全般的な不信と疑い深さを示します。発症初期には、人に利用されていると感じる、友人の誠実さや信頼に執着する、悪意のない言葉や出来事の中に自分を脅す意味が隠されていると読む、恨みを抱き続ける、軽視されていると感じるとすぐに反応するなどの症状がみられます。

医師による診断では、妄想を伴う統合失調症などの他の精神疾患のほか、薬物乱用や投薬、一般的な身体疾患による直接的な生理的作用がないことが確認されれば、本人の病歴に基づいて妄想性障害と判断されます。

医師の側は、発症者の危険性がどの程度か評価する必要があります。とりわけ、本人がどの程度妄想に捕らわれていて、自分の妄想に基づいてどのような行動をするつもりなのかを評価することが、犯罪行動を防ぐ意味からも重要です。

妄想性障害から重度の障害に至ることは、まずありません。しかし、次第に妄想に深くのめり込むようになることがあります。大抵の場合、仕事を続けることができます。

医師と発症者の良好な関係が、妄想障害の治療に役立ちます。危険な病態だと判断されるケースには、入院治療が必要となります。一般に、抗精神病薬は用いられませんが、場合によっては症状を抑える効果があります。長期治療の目標は本人の関心を妄想からもっと建設的で満足感のあるものへ移すこととされますが、かなり難しい目標です。

2022/08/26

🇬🇩自閉症

人と心を通わせることが不自由な、発達障害の一つ

自閉症とは、生まれ付きの脳障害により、人と心を通わせる能力が不自由な発達障害の一種。症状は2歳までに現れることが多く、3歳までには必ず現れます。

1943年に、アメリカの児童精神科医のレオ・カナー教授が「情緒的接触の自閉的障害」という論文で初めて報告し、最初は幼児期にみられる精神病の一つと考えられていました。現在では、広汎性発達障害の一つとして自閉性障害に分類されており、脳と脊髄(せきずい)を含む中枢神経機能の成熟の遅れによって広い範囲に及ぶ、アンバランスな発達の遅れとされています。

子供の0・1〜0・2パーセントに発症し、女子よりも男子に2〜4倍多くみられます。自閉症の子供には精神遅滞を伴う場合も少なくありませんが、全般的な知能の遅れがある精神遅滞と自閉症は別のものです。また、うつ病や引きこもり、内気な性格を指して自閉症と呼ぶこともありますが、誤った認識です。

自閉症のはっきりした原因は、完全には解明されていません。遺伝的な要因によって脳の構造や機能に異常が生じる疾患であることは明らかで、脆弱(ぜいじゃく)X症候群のようなある種の染色体異常は、自閉症の一因となります。出生前に風疹(ふうしん)や、ヘルペスウイルス科に属するサイトメガロウイルスに感染することも、原因となるようです。自閉症が育て方のまずさや環境の悪さ、予防接種などによって起こるものでないことは、はっきりしています。

症状は軽度から重度まで幅がありますが、自閉症の子供は少なくとも、人間関係、言語、行動の3つの領域で症状が現れます。場合によっては、知能に影響が出ることもあります。これらの症状があるために、自閉症の子供は学校や社会で自主的に行動することができません。さらに、自閉症の子供の約20〜40パーセント、特に知能指数(IQ)が50未満の子供は、小児期の後期から思春期の早期にかけて、脳波異常やてんかん発作を合併します。

人間関係の領域の症状として、自閉症の乳児は生後数カ月頃から反応が少なく、抱いても喜ばず、視線を合わせようとしません。親と離れると動揺する自閉症の子供もいますが、大抵はほかの子供のように安心や安全を求めて親を頼ることがありません。年長児は1人で遊ぶことを好んで、個人的に親密な関係を築こうとせず、特に家族以外の人と親しくしません。他の子供と交流する際にも視線を合わせようとはせず、顔に表情を浮かべることも、ほかの人の気分や表情を読み取ることもできません。

言語の領域の症状として、自閉症の子供の約半数は話せるようになりません。話せるようになる子供でも、話し出すのは普通の子供より遅く、言葉の使い方に異常がみられます。意味のない独り言や、テレビのコマーシャルの一節を繰り返したりします。自分に話し掛けられた言葉をそのまま繰り返して使うオウム返しや、代名詞を入れ替えて使うこともよくあります。とりわけ、自分のことを指して「わたし、ぼく」という代わりに、「あなた、きみ」といった主客が逆の表現をよく使います。めったに他人と話すことがありませんし、異常な韻や音程を付けて話すことがよくあります。

行動の領域の症状として、自閉症の子供は変化を非常に嫌い、新しい食べ物やおもちゃ、部屋の模様替え、新しい衣服などを嫌がります。反対に、特定の物や習慣、儀式に異常なほど執着を示すことがよくあり、極度の偏食や奇妙なこだわりがみられます。特定の行動を繰り返す傾向があり、体を揺らす、耳をふさぐ、手をひらひらさせる、全く同じやり方で繰り返し物を回転させるなどの行動がみられます。パニックや、かんしゃく、衝動的行動がよくみられ、頭を何かにぶつけたり、自分の手をかんだりという自傷行動を繰り返すために、けがをする子供もいます。睡眠のリズムも、不規則になりがちです。

知能の領域の症状として、自閉症の子供の約70パーセントにある程度の精神遅滞がみられ、知能指数(IQ)が70未満となります。言語能力よりも運動能力や空間感覚が優れ、学習に抵抗を示して成績にむらがある一方、数学や音楽、芸術、記憶に非凡な才能をみせる子供もいます。

自閉症の検査と診断と治療

自閉症の子供は、愛情を通わせたり示したりすることが苦手ですが、ほかの子供たちと同じように愛されることを求めています。早期から継続的に治療していくことにより、自閉症の子供の発達を伸ばすことができます。小児科医、精神科(児童精神科)医、保健所、児童相談所、自閉症児の施設などに相談し、適切な診断と指導を受けることが必要です。

専門家による自閉症の診断では、まず、言語や社会性の発達に遅れがあるかどうかを判断します。さらに、出生から現在までの医学的情報、診察所見、血液検査、頭部画像検査、心理発達検査などにより自閉症かどうか、治療可能な疾患や遺伝性の疾患(代謝性遺伝性疾患や脆弱X症候群など)はないか、総合的に診断します。

自閉症の治療には、療育的方法と薬物療法とがあります。いずれも自閉症の原因に対する根治療法というよりは、行動異常に対する対症療法という意味合いが強い治療ですが、早期に適切な療育や教育を行うことが必要とされています。

療育的方法では、刺激の少ない、落ち着いた治療環境で、自閉症の子供の基本的な行動の特徴と苦手なところを理解し、年齢や発達水準に合わせた療育や教育を個別指導と集団指導を組み合わせて行い、生活体験を広げていくようにします。

年齢が低い間は、運動や言語や社会性の訓練、指導を行い、日常生活で自立でき、社会生活に適応できることを目指します。年長になるにつれ、人間関係を築けるようにすることを目的とした心理面への対応を組み入れていきます。

薬物療法では、脳機能の障害に由来する自閉症そのものを治すことはできません。しかし、フルオキセチン、パロキセチン、フルボキサミンなどの選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)は、自閉症の子供の儀式的行動を軽減するのにしばしば効果があります。自傷行為を減らすためには抗精神病薬のリスペリドンを使いますが、運動障害などの副作用を考慮しなくてはなりません。

自閉症の症状は、生涯続きます。経過の見通し(予後)は、子供が7歳までにどの程度使い物になる言語を習得できるかによって、大きく左右されます。標準以下の知能、例えば標準的知能指数(IQ)検査で50未満のスコアの子供は、成人後も施設で完全なケアを受けることが多くなります。知的障害の程度が軽く、ある程度会話が可能な子供は、早期からの適切な療育や教育がなされた場合、比較的予後がよいとされています。

🇬🇫社会不安障害

●社会不安障害(SAD:Social Anxiety Disorder<エスエーディー>)とは

 下記のような状況に自分が置かれたり、また、そのような状況に自分が置かれることを想像する時、「緊張したり」、「不安を感じたり」することは、誰でもあると思います。

 ・会議などで発表したり、意見を言ったりする

 ・人前で電話をかける

 ・例えば職場の上司、学校の先生など権威ある人や、良く知らない人と話をする

 ・多くの人の前で話したり、歌を歌ったりする 

 社会不安障害(SAD)とは、上記のような状況で普通の人よりも「強い不安」を感じたり、それらの状況を「避ける」ことにより、毎日の生活や仕事に支障をきたしてしまう病気です。 

 ほかにも、SADの患者さんは、普通の人であれば特に「緊張したり」、「不安を感じたり」することのない次のような状況でも、「強い不安」を感じることがあります。

 ・趣味のサークル、PTA、ゼミ等のグループ活動に参加する

 ・レストラン、喫茶店、居酒屋等で飲食をする

 ・職場や学校など人前で、仕事をしたり、字を書く

 ・会議やゼミ等、他の人たちがいる部屋に入る

 ・人と目を合わせる

 ・来客を迎える

 ・自分を紹介される 

 SADの患者さんが、このような状況に「強い不安」を感じる時、具体的には次のような症状が現れてきます。

 ・手足が震える

 ・息が苦しくなる

 ・動悸がする

 ・大量の汗をかく

 ・顔が赤くなる

 ・声が出なくなる

 ・頻繁にトイレにいきたくなる など 

●強い不安を抱くのが特徴

 SADの患者さんの特徴として、人前で自分が何かおかしなことをしてしまうのではないかという「強い不安」を抱き、また、それを他の人に気付かれまいとして、不安の元となる状況を避けようとします。

 例えば、「話をしている時に声が震えたり、顔がひきつったりしていると、他の人に気付かれて恥ずかしい思いをするのではないかと考えて、非常に不安になる」、「手が震えていることを気付かれるのではないかと心配になり、他の人がいるところで食事をしたり、字を書いたりすることを避ける」といったことです。 

 SADは、以前「対人恐怖症」と呼ばれていたものの一部分の症状であり、患者さんの特徴として次のことが挙げられます。

 ・劣等感が強い

 ・自分に自信が持てない

 ・人前で恥をかくのではないか、変な人と思われるのではないか、と強く心配する

 ・他人の評価に敏感である 

●発病年齢がとても低い病気

 以前は「まれな病気である」と認識されていましたが、 「全人口の約10~15パーセントの人が罹患している」という海外の大規模調査の報告もあって、現在では決して「まれな病気ではない」、とSADは認識されるようになっています。

 10代半ばから20代前半で発病することが多く、性別では男性より女性のほうが多いと見なされています。なお、アメリカで行われた調査によれば、SADの発病年齢の平均は15歳となっており、不安を持つ障害の中で最も発病年齢が低いと言われています。 

●社会不安障害の診断と分類

 SADの診断基準には、米国精神医学会編「精神疾患の(strikethrough:分類と診断の手引)診断・統計マニュアルDSM-Ⅳ」、WHO編「精神および行動の障害」ICD-10などいくつかあります。 

 例として、前者の基準をいくつか示してみます。

 ・よく知らない人と交流する、他人の注目を浴びるといった、1つまたはそれ以上の状況において、顕著で持続的な恐怖を感じ、自分が恥をかいたり、不安症状を示したりするのではないかと恐れる。

 ・恐れている社会的状況にさらされると、ほぼ必ず不安を生じる。

 ・自分の恐怖が過剰であり、また、不合理であることに気付いている。

 ・予期不安、回避行動、苦痛により、社会生活が障害される。または、その恐怖のために著しく悩む。

 ・18才以下の場合は、罹病期間が6カ月以上である。

※罹患(りかん)期間:症状が出始めてから現在に至るまでの期間のことです。 

 次に、SADは「強い不安」を感じる頻度により、「全般型」、「非全般型」「限局型」の3つのタイプに分けることができます。

分 類          症  状     


      全般型   ほとんどすべての社会的状況において「強い不安」を感じる。


     非全般型  2,3の社会的状況において「強い不安」を感じる。


      限局型   1つのみの社会的状況において「強い不安」を感じる。


 なお、全般型の患者さんは、発症原因に「遺伝的要因」が強く、発症年齢が低い傾向にあると言われています。 

●治療の機会を逃がさずに 

 海外では、SADは一般的に理解度が低く、治療の機会を得にくい病気とされています。

 海外で行われた調査によれば、SADの患者さんの約2/3は病院に行っておらず、また、病院に行っている場合でも「自分がSADであると認識して受診した」患者さんは3パーセントにすぎないという結果となっており、治療の機会を自ら逃していることがうかがえます。 

 一方、日本では、SADという名称や病気の症状については、あまり認知されておらず、その症状の原因を「自分の性格のせい」であると思って、病院での治療を受けていない方が多いようです。 

 SADは発病すると、他の精神疾患(うつ病、アルコール中毒、パニック障害など)を併発する割合が70パーセントを超えるとも言われていますので、症状が現れている場合は、「性格のせい」ではなく「病気である」と認識して、早めに精神科や心療内科に出向き、専門医の診断を受けてください。 

●社会不安障害(SAD)の治療法

 SADの治療法には大きく分けて、薬物療法と認知行動療法の2つがあります。実際の治療では、この2つの治療法を併用することが多くなっています。 

【薬物療法】

 最近の研究では、SADは脳(セロトニン神経系とドーパミン神経系)の機能障害により発症するのではないかと推測されており、現在もその発症原因について、世界中で研究が進められています。

 海外では、早い時期から薬物による治療の研究が盛んに行われており、すでにSADの治療薬として承認され、患者さんの治療に使われている薬(一般名:パロキセチンなど)もあります。 

 一方、日本では、SADという病名で国(厚生労働省)に承認されている薬はなく、抗うつ薬や抗不安薬などを用いて治療が行われているのが現状です。

 現在、いくつかの薬の治験(国から薬として承認を受けるための臨床試験のことです)が、SADという病名で承認を受けるために行なわれています。 

【認知行動療法】

認知行動療法は薬物療法より歴史が長く、精神療法の中でも重要と考えられている治療法ですが、日本ではあまり知られていません。

 認知行動療法では、エクスポージャー、ソーシャルスキルトレーニング(社会技術訓練)などの方法を用いて、実際に恐怖を感じる場面に直面した時に感じる不安感を、自分自身でコントロールできるようにします。

 薬物療法と違って、副作用が少ないのが、利点です。しかしながら、患者さん自身もかなり努力しなければなりません。そのため、認知行動療法では、問題点を順番に洗い出していき、解決できそうな問題、患者さん自身も大きな不安と感じないような小さな問題から順番に、解決していくという方法がとられます。

   方 法

      内   容

エクスポージャー

・擬似的に、不安症状を引き起こす場面や状況(恐怖刺激)に自分の身を置き、不安症状が収まるまで十分な時間、その状況に身を置き続けることを繰り返すことにより、不安症状・回避行動を和らげます。

・治療者同伴エクスポージャー、現実エクスポージャーなど、様々な種類があります。

ソーシャルスキルトレーニング(社会技術訓練)

・SADの患者さんは人との付き合いが苦手な人が多いので、実際に社交的な場面において、どのように人と接するのか(視線の位置、話し方等)を練習します。

不安対処訓練

・不安症状が起きてしまった場合の対処方法を学びます。

・リラクセーションや呼吸法などがあります。

認知修正法

・自分が変なことをして他人に不快な思いをさせているといった考え方が、本当に正しいのかどうかを、考え方を再度見詰め直したり、実際に確認したりすることで、修正していきます。

🇬🇾若年性認知症

18~64歳で発症する認知症の総称

若年性認知症とは、働き盛りの年代の18歳以上、65歳未満で発症する認知症の総称。40歳代、50歳代を中心とした比較的若い世代の認知症であり、初老期認知症とも呼ばれます。

老年性認知症と総称される65歳以上の高齢者で発症する認知症と同じく、脳の障害によって起きる脳の疾患ですが、原因がつかめているものと、原因がつかめていないものに分かれます。

厚生労働省では、旧厚生省時代の1996年の研究で、患者数は2万5000人~3万7000人と推計しています。現実には、その3倍以上に及ぶともいわれています。

初期症状は一時的な物忘れから始まりますが、やがて進行していくと新しいことが覚えられなかったり、物忘れがひどくなったり、判断力の低下などが起こります。会議の予定を忘れたり、同僚の名前や取引先の場所がわからなくなったりするため、仕事を続けることもできなくなります。また、徘徊(はいかい)などの行動障害も出てきます。

若年性認知症の主な種類として、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、ピック病が挙げられます。

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症というと、高齢者の疾患のように思われがちですが、もともとは若年性の疾患で、1907年にドイツの精神医学者アロイス・アルツハイマーが最初の症例報告を行った患者は50歳代だった、という記録が残っています。

アルツハイマー型認知症は、脳の変性委縮によって発症します。その原因としては、脳の中の記憶に関係する部位である海馬や側頭葉、頭頂葉に、アミロイドという蛋白(たんぱく)の一種が蓄積していくことが始まりと考えられていて、さらにタウという蛋白も神経細胞の中に蓄積するようになり、神経細胞を壊していくことがわかっています。

なぜこのような現象が起こるのか、アミロイドの産生高進や蓄積が発症の直接原因なのか、それとも結果であるのかについては、まだ結論は得られていません。

いまだに原因がよくわかっていないアルツハイマー型認知症ですが、最近になって、遺伝的要因があると考えられるようになりました。親族にアルツハイマー型認知症の患者がいる人は、発症する割合が高くなりますし、発症する年齢は30~50歳くらいといわれています。

若い人にみられるアルツハイマー型認知症では、脳の委縮スピードも若いぶん、高齢者に比べると速くなります。40歳代の場合、高齢者に比べ2倍以上のスピードで病気が進行します。

アルツハイマー型認知症では大脳皮質という知能活動の中核が第一義的に侵されることから、記憶力などすべての認知機能が一様に低下し、その程度も大きくなります。加えて、自分が病気であるという病識が早くからなくなり、多幸性、多弁であることが多くみられます。

もう一つ重要なことは、アルツハイマー型認知症では、人格の崩壊といって、全く人柄が変わってしまうことが多い点です。いつかわからないほど発症はゆっくりで、進み方も徐々であり、かつ絶えず進行性であるのが、特徴といってよいでしょう。幻覚や幻視、被害妄想が現れ、暴言、暴力などの問題行動が見られることもあります。

脳血管性認知症

脳血管性認知症は、脳の血管に血栓という血の固まりが詰まった脳梗塞(こうそく)や、脳の血管が破れて出血した脳出血など、脳の血管に異常が起きた結果、脳細胞の働きが低下するために起こります。男性に多く、50~60歳で発病しやすくなります。

主な症状は、日常生活に支障を来すような記憶障害と、その他の認知機能障害である言葉、動作、注意、物事を計画的に行う能力などの障害です。末期を除けば、すべての認知機能が一様に、顕著に低下するわけではありません。

脳の一部の機能が低下してしまうため、記憶力の低下ははっきりしていても、計算力はある程度残っているとか、時間や場所はわかるとか、対応は全く正常であるという場合が少なくありません。

脳血管障害を発症した経験があったり、高血圧、糖尿病、心疾患、動脈硬化症、高脂血症など脳血管障害を起こしやすい危険因子を持っている人に、よく起こります。危険因子のほとんどは、生活習慣病といわれるものに相当します。

ピック病

ピック病は、人格の変化や理解不能な行動を特徴とする認知症の一種。働き盛りの40歳~60歳に多く発症し、大脳皮質のうち前頭葉から側頭葉にかけての部位が委縮します。

1898年にチェコのアーノルド・ピックにより報告された疾患で、100年以上経過してもまだ世界共通の明確な診断基準すらなく、正確な発生頻度も不明。疾患を正しく診断できる医師が少ないために、アルツハイマー型認知症と誤診されたり、うつ病や統合失調症と間違えられて、不適切な治療やケアを受けるケースも少なくありません。

若年性認知症の代表疾患で、40歳代~50歳代にピークがあり、平均発症年齢は49歳、早ければ20歳で発病することも。女性の発症率が多いアルツハイマー型認知症に対して、そういった性差はありません。

初期では、記憶力などの認知機能は保たれています。目立つのは人格障害で、認知症の中では人格の変化が一番激しくなります。その人格障害には、易怒、不機嫌、爽快なども認められ、人を無視した態度、人に非協力な態度、不まじめな態度、ひねくれた態度、人をばかにした態度などが目立つようになります。しかし、本人に病識はありません。

ピック病特有の症状といえる滞続言語も、認められます。滞続言語とは特有な反復言語で、会話や質問の内容とは無関係に、同じ内容の話を繰り返したり、おうむ返しを続けたりします。これらは持続的で、制止不能です。

自制力の低下により、周囲には理解不能な行動、状況に合わない行動もみられます。例えば、場所や状況に不適切と思われる悪ふざけや、配慮を欠いた行動をしたり、周囲の人に対して無遠慮な行為や身勝手な行為を示します。

また、自発性が低下し、考え不精がみられる一方で、多動、外出、徘徊(はいかい)、落ち着きのなさ、多弁、衝動行為、粗暴行為が増加することもあります。窃盗や万引きなどの犯罪を犯す場合もありますが、反省したり説明したりできず、同じ違法行為を繰り返すこともあります。

症状が進行すると、意欲減退が生じ、仕事を放棄して引きこもったり、何もしないなどの状態が持続し、自発性行動の少なさは改善しません。身だしなみにも無関心になり、不潔になります。周囲の出来事にも無関心になります。

やがて、記憶障害や言葉が出ないなどの神経症状が現れます。最終的には、重度の認知症に陥ります。

その他の若年性認知症

その他、交通事故や転倒で脳障害を起こしたのが原因で、若年性認知症になる場合もあります。 また、脳腫瘍(しゅよう)、薬物・アルコール依存症、クロイツフェルト・ヤコブ病、パーキンソン病、エイズなども、若年性認知症を発症する原因となる疾患として挙げられます。

若年性認知症の治療と予防

若年性認知症には、高齢者の発症する老年性認知症とは異なる問題や課題が存在しています。その一つは、年齢が若いので、家族や仕事仲間、医療関係者さえも、まさか認知症が始まっているとは考えられず、早期受診、早期治療に結び付かないケースが多いという点です。

うつ病と誤診されたり、職場では怠けていると誤解されたりすることも多いようです。何年もかかってやっと専門医を受診し、正確な診断に至ったケースも見受けられます。また、正確に診断できたとしても、職場での対応の調整や、介護環境の調整も重要です。

日常生活は保たれているものの、記憶力の障害があるとか、集中力が欠けているとか、言語能力が低下しているなど、認知症の症状が現れたら少しでも早く、医師の診断を受けるようにしましょう。

一口に若年性認知症といっても、医師による治療や対応法はさまざまです。実際、若年性認知症の種類は、アルツハイマー型認知症や脳血管性認知症、ピック病だけではなく、頭部外傷や脳腫瘍の後遺症などとても多彩で、診断が難しいものもあります。

残念ながら、まだアルツハイマー型認知症、脳血管性認知症、ピック病などほとんどの認知症では、完治に至る根本的な治療法はありません。ピック病の場合は、錯乱して暴れるなど、介護は危険を伴うので、在宅でのケアは難しくなります。感染症にかかりやすく、数年で死に至るケースもあります。

しかし、アルツハイマー型認知症、脳血管性認知症では、早期に発見し適切な治療を受けてリハビリに努めれば、症状を軽くして進行を遅らせることはできますし、回復の可能性もあります。

薬物療法と心理社会的療法による早期治療によって、脳の代償機能と呼ばれるメカニズムが働くようにすることができれば、残された認知機能は維持され、社会生活機能を保つことは可能です。

脳にはもともと、ある部位の機能が失われても、他の障害されていない部位の神経細胞がその機能を補うように働く代償機能が備わっており、たとえ脳の病変があったとしても、代償機能が働くことで発症を抑えたり、症状の進行を抑制することが可能なのです。

散歩などによる昼夜リズムの改善、なじみのある写真や記念品をそばに置いて安心感を与える回想法、昔のテレビ番組を見るテレビ回想法などが、不眠や不安などに有効な場合もあります。

若年性認知症の予防には、生活改善がカギとなります。きちんとした食事や睡眠、適度な運動を心掛けるなど生活習慣を見直せば、発病の確率は減らせるはず。また、趣味や職場以外の社交場を持つなど、毎日を生き生きと暮らす工夫も大切。

とりわけ、以下の食習慣、運動習慣、知的生活習慣が、認知症の予防に効果があることがわかっています。

食習慣では、EPA・DHAなどの脂肪酸を多く含むサバ、サンマ、イワシ、アジなどの青魚の摂取、ビタミンE・ビタミンC・βカロテンなどを多く含む野菜や果物の摂取、さらにポリフェノールを多く含む赤ワイン、緑茶、ゴマの摂取が、発症を抑えます。これらの食品を3度の食事で、バランスよく食べるようにします。

運動習慣では、ウォーキングなどの有酸素運動を行えば、脳血管障害の危険因子である高血圧やコレステロールのレベルが下がり、脳血流量も増し、発症の危険性を下げます。ある研究では、普通の歩行速度を超える運動強度で週3回以上運動している人は、全く運動しない人と比べて、発症の危険が半分になっていました。

知的生活習慣も、発症の危険性を下げます。テレビ・ラジオを視聴し、トランプ・チェスなどのゲームをし、文章を読み、楽器の演奏をし、ダンスなどをよく行う人は、発症の危険性が減少するという研究があります。

また、旅行、パソコン、園芸、料理など、計画を立てたり、考えたりすることが必要な趣味の活動が、脳を活性化し、軽い認知機能の衰えがある認知症予備軍の高齢者でも、記憶力や注意力、計画力を改善するという研究もあります。

もしも、経済的な一家の大黒柱や子育て中の人が若年性認知症になってしまったら、経済的な問題や心理的ストレスは、とても大きいものになります。高齢者と違い、若いだけに体力もあるので、介護する側もエネルギーを消耗してしまいます。

現在のところ、専門施設や情報の不足も深刻です。とはいえ少しずつではありますが、助け合いの輪は生まれつつあります。自分たちだけで抱え込まず、いざという時は専門医やケアマネージャー、精神科病院のソーシャルワーカーなどに相談してみることをお勧めします。また、介護する側も息抜きを忘れずに。

🇧🇴周期性四肢運動障害

睡眠中に手や足の筋肉に瞬間的なけいれんや、ぴくつきが起こり、眠りが中断される疾患

周期性四肢運動障害とは、睡眠中に手や足の筋肉に瞬間的なけいれんや、ぴくつきが起こり、眠りが中断される疾患。PLMD( Periodic Limb Movement Disorder )とも呼ばれています。

瞬間的なけいれんや、ぴくつきは周期的に反復し、特に下肢に現れます。足が瞬間的にけいれんする際に、親指、足首の関節、膝(ひざ)の関節、股(こ)関節を曲げ伸ばしし、この時に布団を上へ持ち上げたり、けることになります。

通常、20~30秒周期で足の動きを繰り返し、悪化すると回数が増え、多い人では1時間に100回以上起こる場合もあります。足の動きは、浅い眠りのノンレム睡眠の時に多くみられます。

この周期性四肢運動障害は、人口の1~4パーセントの人にみられるとされています。年齢とともに増えるので中高年に多く、また、妊娠中の女性の約2割にも起こっているとされています。疲れていたり、コーヒーやお茶に含まれるカフェインを多く取った時に、起きやすいともされています。

また、むずむず脚症候群を合併しやすいことが知られています。むずむず脚症候群とは、夜間の睡眠時などに下肢を中心に不快な感覚が起こり、むずむずする不穏な運動を生じて、慢性的に寝付けない疾患です。

周期性四肢運動障害の人は、手や足の瞬間的なけいれんや、ぴくつきのために深い眠りが妨げられ、眠りが浅くなったり、 中途覚醒(かくせい)が生じたりします。このため、熟睡感を得ることができず、日中、眠気を催します。

目が覚めない場合には、この症状によって自分の睡眠の質が低下していることに気付かないこともあります。朝起きると、前日に特に足を使ったわけではないのに足にだるさを感じることもありますが、このような自覚症状がないことも多くみられます。

疾患の原因はまだ十分解明されていませんが、むずむず脚症候群の人や、 抗うつ薬、抗てんかん薬、ベンゾジアゼピン系薬剤(睡眠薬、抗不安薬など)といった薬を飲んでいる人に多くみられ、 これらの薬を中断した時にもみられます。また、鉄欠乏性貧血や腎(じん)機能障害の人にも多くみられます。

周期性四肢運動障害や、むずむず脚症候群で起こる不眠は、睡眠薬を服用しても解消されません。睡眠障害を専門にしている医療機関を受診し、適切な治療を受ける必要があります。近くに睡眠障害の専門医療機関がない場合は、精神科もしくは神経内科に相談するのがよいでしょう。

医師による診断は、終夜睡眠ポリグラフ検査で、足の筋肉の動きをとらえることではっきりします。足の動きは、浅い眠りのノンレム睡眠の時に多くみられます。起きている時に足のけいれんを自覚している場合には、それだけで診断できることもあります。

周期性四肢運動障害の症状には波があるので、症状に合わせた治療が行われます。一般的な睡眠薬では効果はなく、治療にはむずむず脚症候群と同様、けいれんを止めるためにパーキンソン病の治療薬や抗てんかん薬などが用いられる。

薬で主に使われるのは、パーキンソン病の治療薬であるカルビドパ/レボドパ合剤(メネシット)。脳神経に指令を伝えるドーパミンの働きを改善する薬で、パーキンソン病の治療で使うよりも少ない量を服用します。十分な効果が得られない場合は、抗てんかん薬であるクロナゼパム(リボトリール、ランドセン)や、バルプロ酸をさらに用いることもあります。

2022/08/25

🇨🇷熟眠障害

熟睡したという満足感がなく、目覚めた時に睡眠不足を感じるタイプの不眠症

熟眠障害とは、眠りが浅くて、目覚めた時に熟睡したという満足感がなく、睡眠不足を感じるタイプの不眠症。不眠症と判断される目安となるのは、この症状が週に2回以上、かつ1カ月以上続いており、本人が苦痛を感じている場合です。

この熟眠障害は、寝付いたにもかかわらず途中で何度も目が覚めてしまう中途覚醒(かくせい)が原因となっている場合があります。しかし、尿意や夢、ちょっとした物音、部屋の寒さや暑さなどを始めとする何らかの原因で眠りが中断されても、その時間が短いと夜中に目覚めたという記憶がないこともあります。それを夜中に何度も繰り返していると、熟眠障害になってしまうのです。

熟眠障害では睡眠の持続性が得られないため、本人にとっては症状はかなりきついといえます。中には、夜、十分な時間寝ているはずなのに朝起きた時に全く寝た感じがしない、疲れが取れていず、昼に眠くて眠くてどうしようもないという人もいます。

そのため、中途覚醒の自覚のあるなしにかかわらず、熟睡した、ぐっすり眠ったという感覚が得られない場合は、熟眠障害を疑ってみる必要があります。熟眠障害だけがあり、中途覚醒がないということはまれです。

実際、眠っている途中に一度起きてしまうと、入眠から浅い眠りのレム睡眠へ、さらに深い眠りのレム睡眠へと続く眠りのリズムを初めからやり直さなければならないために、脳も体もしっかり休息することができません。

熟眠障害は、睡眠環境が原因で起こることもあります。引っ越したばかりで環境に慣れていない、新しい寝具に変えたなどという環境の変化によるものかもしれません。また、特に環境の変化や寝具の変化がないけれど睡眠不足を感じている人は、寝具を見直してみてください。寝具は毎日使うものですから、一生同じ状態を保持するのは難しいもので、弾力性やフィット感が変わって熟眠障害を起こしている可能性もあります。

寝具の見直しをしても改善されない場合は、睡眠時間を見直してみましょう。年齢を重ねるにつれて、体は衰え、疲労感も増していきます。頭では今までの生活に慣れていても、体に疲労がたまっているのかもしれません。

それらで改善につながらない場合は、睡眠中に症状の現れる疾患が関係していることもあります。本人が自覚していない熟眠障害や中途覚醒の原因として近年、注目を浴びているものに睡眠時無呼吸症候群があります。この疾患は、睡眠中に10秒以上に渡って呼吸が止まり、1時間に5回以上みられる場合に診断されます。

すなわち、深い睡眠に入ろうとすると呼吸が止まり、息苦しくなって目が覚めてしまうために、一晩中深い睡眠に入れなくなります。全体として一晩に6~7時間眠ったとしても、常にウトウトしたような浅い睡眠でしかないために、昼間に眠気を催したり集中力が低下してしまいます。

睡眠時無呼吸症候群では、本人が息苦しさを翌日に覚えていないために、自覚的には昼間の眠気だけしかないことが少なくありません。もっとたくさん寝ようと早くからベッドに入る努力をしても、睡眠の質が不良なためにいくら長時間寝ても昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失は改善されません。

意外と知られていないが決して少なくない熟眠障害の原因として、周期性四肢運動障害という疾患もあります。この病気は睡眠時無呼吸症候群と同様に、深い眠りに入ろうとすると、周期的に反復する瞬間的な手足、特に下肢の運動が現れます。

つまり、まどろみから深い睡眠に移行しようとすると、足がピクンと動いてしまうのです。通常、20~30秒周期で足の動きを繰り返し、悪化すると回数が増え、多い人では1時間に100回以上起こる場合もあります。足が動いても、多くの場合本人は気付きませんが、足がピクンと動くと、脳は目覚めてしまうので眠りが妨げられます。このために深い睡眠に入れずに、昼間に眠気を催します。

熟眠障害の裏側には他の疾患が隠れていることが多いので、常日ごろから体の状態をチェックしておくとよいでしょう。また、どんな疾患が絡んでいるにせよ、精神的ストレスがたまっている状態だと、熟眠障害が起きやすくなります。精神的ストレスがかかった状態で眠ると、眠っているつもりでも脳はリラックスして休むことができず、浅い睡眠状態で眠ることになります。

精神的ストレスからくるイライラや緊張を鎮めるためにには、リラックスできる音楽や読書、入浴や食事など生活面での工夫をしてみることも必要です。眠りやすい環境を作ることも心掛け、騒音や温度調整、明るさの調整をするのもよいでしょう。

昼間の眠気や、集中力の低下、活力の喪失など日中の生活に支障が出るような場合には、午前中など早い時間に10~20分の仮眠を取ることも効果的です。仮眠を取る場合には、夜眠れなくなるほど長時間寝てしまうと意味がありません。夕方など遅めの時間に仮眠を取るのも、夜の睡眠に支障が出ることがあるので、遅くても昼の休憩くらいまでの間に仮眠するようにしましょう。

生活面での工夫をしても熟眠障害が続くようであれば、不眠症専門の外来や、神経科、心療内科を受診することが勧められます。

医師による熟眠障害などの不眠症治療では、精神的な療法を行ったり、薬による治療を行うことになります。一般的には睡眠薬による治療ですが、人それぞれ原因も違ってきますから、睡眠薬の服用については医師に相談しながら治療を進めていくことが大切です。

最近の睡眠薬は、安全性が高くなりました。以前はバルビツール酸系の薬が主に用いられていましたが、依存しやすいという問題などから最近は比較的安全なベンゾジアゼピン系が多く使われています。ただし、疾患を併せ持つ人が他の薬と併用する場合は副作用などの恐れもあるため、使用には医師の診断が必要で、症状に合った薬を処方によって服用します。

すべての薬にあるように、睡眠薬にも副作用はあります。最大の特徴は、薬が効いている間に布団から起きてしまうと、効果がすべて眠気、ふらつき、頭重感などの副作用に変わってしまうこと。従って、服用したらすぐ布団に入ること、増強作用のあるアルコールと一緒に服用しないこと、用量用法は医師の指示を守ること、突然、服用を中止すると症状が悪化する場合もあるので、医師と相談しながら漸減することなどが必要となります。

2022/08/24

🇲🇨食道神経症(ヒステリー球)

食道には病変がないのに、食道の違和感などを覚える疾患

食道神経症とは、食道そのものに病変がなく正常にもかかわらず、食道の違和感や胸痛など覚える疾患。ヒステリー球とも呼ばれます。

症状は、食べ物が食道につかえる感じ、食道にヒステリー球と呼ばれる異物が存在している感じ、胸焼け、吐き気、胸部圧迫感、胸痛など多彩です。

発症者の多くは女性で、ストレス、自律神経失調症、情緒不安定、貧血などが背景にあります。いたずらに精神的なもの、気のせいと判断することは禁物で、発症者が不安を持つ食道由来の胸痛の原因としては、胃食道逆流によるものが多くみられます。そのほかに、食道運動機能異常、食道知覚過敏、精神疾患との関連があり、これらが相互に関係して発症することが多いようです。

中年女性では、食道通過障害の症状のほかに、鉄欠乏性貧血、舌炎を合併するプランマー・ビンソン症候群という疾患もあります。食道上部にある慢性食道炎が通過障害の原因とも考えられていますが、こちらも食道そのものに病変は認められず、心因性要素も関係しているようです。

食道神経症の検査と診断と治療

胸が何となくおかしいなど、食道由来の胸部異和感や胸痛を訴える症例の多くは、胃液が食道に逆流して起こる胃食道逆流症が主な原因です。この診断のためには、まず心電図や心臓エコー検査を行って心臓疾患を否定します。次に内視鏡検査やバリウム造影で食道を調べます。

ここで胃食道逆流症による食道粘膜の病変の存在が確認されれば、そのまま治療に入ります。通常は、酸分泌抑制薬の内服が選択されます。

前記の検査で胃食道逆流症が証明されない際には、食道内酸逆流の程度を食道内腔(ないくう)に設置したpHセンサーで証明する方法が最も確実です。近年では鼻から挿入する有線型のセンサーではなく、食道内に固定する無線式のセンサーが使用できるようになっています。

以上の食道の内視鏡検査や食道内のpHのモニタリングで病変が観察されない場合は、心臓の精密検査となります。この目的は、虚血性心疾患の診断です。心臓の冠動脈造影で異常がみられる場合には、心疾患の治療を行います。冠動脈造影で異常が認められない場合で、胃食道逆流症が否定される場合には、骨格筋由来の胸痛の検査に入ります。

最近では、心臓に異常を認めない非心臓性胸痛(NCCP)という概念が普及しています。非心臓性胸痛の約半数は、胃食道逆流症によるものと考えられています。従って、最も専門的な治療経験が要求される食道神経症をいたずらに精神的なもの、気のせいと判断することは禁物で、順序を追った検査体制で診断を進めていくことが大切となります。

精密検査を進めても、食道などに病変がなければ、過敏になっている神経を沈めるための鎮静薬や精神安定薬が投与されます。また、抱えている問題やストレスになっている原因を突き止め、その問題についてのカウンセリングを行うことで、自然と食道の違和感が消えていくこともあります。

日常生活では、運動や趣味に励み、精神的、身体的機能を高めることが望まれます。

🇮🇪書痙

書痙とは、字を書こうとすると指先に力が入りすぎたり、手が細かく震えたり、手が不随意的に屈曲したりして、字がうまく書けなくなる機能的運動障害です。人前でサインする時などには、誰でも緊張して書きづらいことがありますが、書痙ではそれが著しく障害されます。

字を書く時にのみみられる症状で、はしを持つ、縫い物をする、ボタンを掛けるなどの他の細かい動作は、すべて普通に行うことが可能です。神経学的にも、異常が認められることはありません。

仕事上の失敗や自信の喪失がきっかけとなるケースが多く、上手に書こうとすればするほど、障害は悪化します。偶然に生じた好ましくない反応が、条件反射的に習慣付けられてしまったものといえます。

神経質で緊張しやすく、完全癖の人が、なりやすい傾向を有しています。事務職、教師、文筆家、記者、速記者、代書人など書くことを専門にしている人に多く発症し、職業病の一つとも考えられていますが、心理的ストレスなどの要因が影響しており、心身症と見なされます。手に力が過剰に入るために、手、肘(ひじ)、肩の凝りや痛みを伴うケースもあります。

書痙の治療法には、薬物療法と精神療法があります。適切な薬物療法の助けを借りながら、時間かけて精神療法を行うことが大切です。

薬物療法としては、抗不安薬、抗けいれん薬、β遮断薬、ボツリヌストキシンなど各種あり、作用の程度が違いますが、特効薬といったものはありません。精神療法としては、森田療法、認知行動療法、バイオフィードバック療法、筋弛緩(きんしかん)法、催眠療法、自律訓練法などがあります。

🇬🇱心因性失声症

心因的なストレスが原因で声が出なくなる疾患

心因性失声症とは、心因的なストレスが原因となって、 声が出ない、話せない、声が出てもかすれ声や、しわがれ声になってしまう疾患です。ヒステリー性失声症とも呼ばれています。

30歳以上の女性に多くみられ、突然、声が出なくなるため、周囲の人たちも驚きます。心理的な要因によることが多く、これに性格が反映して発症します。

周囲への依存性が高く、自己顕示欲が強いなど、ヒステリー性格を持っている人に多い、と分析されています。心理的に厳しい立場に立っている時、欲求が満たされない時など特殊な状況下では、内的な葛藤を自分で処理することができなくなり、性格が未熟な人では、体に症状として現れてきてしますのです。一種の逃避である場合もあります。

放っておいても、自然治癒することが多い病気ですが、なかなか治らなかったり、繰り返し発症する場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診しましょう。声帯などに異常がないことが判明した場合は、精神科や心療内科を受診しましょう。

精神科などでの心因性失声症の治療では、発症の原因になっている心理的な要因を探ります。医師の説明を受け、本人が病歴とともに生育暦、生活暦などを、よく把握することが大切となります。その上で、発声の訓練と、カウンセリングなどによる心理療法の二つの治療が進められ、精神安定剤を用いることもあります。

治療効果が高いため、疾患は比較的すぐ、だいたい1週間くらいで治るのが、一般的と見なされています。

🇩🇰心因性多飲症

ストレスが原因となって、強迫的に1日6リットル以上の水分を摂取してしまう疾患

心因性多飲症とは、心理的なストレスが原因で強迫的、または習慣的に水分を多飲してしまう疾患。

心因性多飲症の人は、1日に摂取する水分の量が極端に多く、何度もトイレにゆくことが特徴です。水をがぶ飲みする人もいれば、コーヒーやお茶、ペットボトルに入った清涼飲料水やスポーツドリンクを頻繁に飲む人もいますが、1日に6リットル以上の水分を摂取するとされています。それに伴い尿の量も増え、1日に尿を2・5リットルから3リットルも排出する多尿症になります。

尿を作る人間の腎臓(じんぞう)は非常に精密にできており、水分の摂取量によって排尿の量を変化させ、体の中の水分の量を一定にしています。従って、水分を大量に摂取すれば排尿の量も増えることになります。成人の膀胱(ぼうこう)容量は500ミリリットルほどで、普通は300ミリリットルほどの尿がたまると尿意を感じることになります。そして、成人の1日の排尿量は通常、1〜2リットルであり、起床時に排尿をする回数は7回程度です。心因性多飲症の人では、起床時に20回近く排尿をすることにもなります。

どうしても水分を大量に摂取せずにいられない心因性多飲症になる原因は、心理的なストレスにあるとされています。ほんの些細(ささい)なストレスからなる人もいれば、仕事、学業、対人関係などのストレスや、病気、事故、事件など大きなトラブルに巻き込まれたストレスからなる人もいます。

原因は人それぞれなのですが、心理的なストレスによって極度の不安を感じたり緊張状態に陥り、それを抑えるために水などを飲むようになります。水分を摂取すると心が落ち着くという経験をすることで、落ち着くためにあらかじめ水分を摂取しておこうと考えるようになります。

いわば水分が精神安定剤のような役割を果たすわけですが、次第に水分を摂取していないと落ち着かなくなります。そして、水分を摂取しなければ自分でいられないような、自分を保てないよう気持ちになって、次第に摂取量が増加し、強迫的、または習慣的に6リットル以上の水分を摂取するようになっていきます。

心因性多飲症は、更年期障害で起こる症状の1つとして中年女性に多くみられますが、男女を問わず、ほかの年代でもみられます。

心因性多飲症がほかの心の病と異なる点は、深刻な臓器の障害を引き起こす可能性があることです。大量に水分を摂取することで、血液中のナトリウム濃度が低下し体液が薄まった状態になると、低ナトリウム血症を引き起こす恐れがあり、注意が必要です。

低ナトリウム血症の症状は、その発症速度と血液中のナトリウム濃度の低下の程度にもよりますが、軽度の疲労感がみられる初期から、進行すると頭痛や嘔吐(おうと)、食欲不振、精神症状が加わり、悪化すると昏睡(こんすい)やけいれん、認知機能低下が起きてきます。精神症状やけいれんがみられるような重篤な低ナトリウム血症では、急速なナトリウムの補充が必要となります。

自分の症状に気付かず、長期間にわたって、水分の多飲と多尿を続けている人もいます。些細なストレスが原因となっている場合は、異常さに気付けないことも多いので、周囲から「飲みすぎ」「トイレにゆきすぎ」と指摘されることが増えたら、日常を振り返ってみるようにしましょう。

心因性多飲症かもしれないと思い当たった場合は、ストレス源を取り除いて症状を解消し、低カリウム血症を予防するためにも、精神科、心療内科、神経内科を受診することが勧められます。

なお、1日3リットル以上の著しい多尿や口渇、多飲などの症状は、糖尿病、腎疾患、尿崩症で引き起こされることもあります。

心因性多飲症の検査と診断と治療

精神科、心療内科、神経内科の医師による検査では、カウンセリングを行い、発症の原因になっている心理的な要因を探ります。

精神科、心療内科、神経内科の医師による治療では、カウンセリングを行うなど精神療法により、心理的な部分の要因を取り除くため、日常生活での行動の見直しなどから始めていきます。「ストレスがあるから水を飲んでいる」という自覚はなく、「のどが渇いたと感じるので水を飲んでいる」と認識している人が多いので、まずは自身に向き合うことから始め、大量の水を欲しがるのは体が渇いているからではなく、ストレスに関連した異常行動であることを理解してもらいます。

原因となったストレスは、人によってはほんの些細なことの積み重ねという場合があるので、自分でも気付かずに心因性多飲症になっていることがあります。さまざまなしがらみが絡み合っていることがあるので、一つひとつほどいていきます。ストレスの軽減や環境の変化によって、自然と治癒する場合もあります。

薬物療法として、不安が強い人には、症状を落ち着かせるために精神安定剤を補助的に使用することもあります。抑うつ症状が出ている人には、うつ病の薬も使います。薬を飲むことで、症状が治まる場合もあります。

🇩🇰心因性発熱

体は健康であるのに、精神的ストレスで発熱し、37℃以上の高体温となる状態

心因性発熱とは、精神的ストレスで熱が出て、37℃以上の高体温となる状態。ストレス性高体温症とも呼ばれます。

精神的ストレスで高い熱が出るケースもありますが、37℃を少し超える程度の軽い熱がずっと続くケースが多くがみられます。

高い熱が出るケースは、仕事をする、人に会う、授業に出る、極度に緊張する、他人と激しい口論を交わすなどの精神活動に伴って、高熱が出ます。大学入試や資格試験など大切な試験当日の朝、急に39℃の高熱が出たけれど、試験が終わったらすぐ下がったというようなことがあります。

これは小児によくみられるタイプで、すぐ解熱するものの、ストレスの原因を解決しないと何度でも繰り返すことがあります。

微熱が続くケースは、仕事で残業が続く、介護で疲れ果てている、授業と部活の両立が難しいなど、慢性的なストレスが続いて気が抜けない状況や、いくつかのストレスが重なった状況で、37℃台の微熱程度の高体温が続くものです。微熱はしばしば、頭痛、倦怠(けんたい)感などの身体症状を伴います。

これは働き盛りの成人によくみられるタイプで、ストレスの原因が解決した後もしばらく続くことがあります。

この精神的ストレスがある時の発熱は、風邪を引いた時の発熱とメカニズムが異なります。

風邪を引いた時の発熱は、ウイルスやマイコプラズマ、細菌などへの感染によって生じた炎症が信号となり、脳が交感神経と筋肉に指令して体温を上げ、ウイルスなどをやっつけようとする正常の反応です。この時の信号として働くのが、炎症性サイトカインとプロスタグランジンE2(PGE2)と呼ばれる物質。風邪を引いた時に服用する漢方薬の葛根湯(かっこんとう)はサイトカインの産生を抑えることで、また解熱薬はプロスタグランジンE2の産生を抑えることで解熱作用を発揮します。

一方、精神的なストレスがある状況では、ストレスに対処するために交感神経の働きが活発になり、体温が上がります。体温が上がるという点では風邪を引いた時と同じですが、ストレス性の高体温の場合、サイトカインとプロスタグランジンE2は働かないため、医療機関で血液検査をしても炎症反応は認められず、風邪薬や解熱薬など炎症を抑える薬を飲んでも、熱は下がりません。

心因性発熱の症状は、風邪とよく似たもので、頭がくらくらして歩く時にふらついたり、体が熱っぽく感じるようになります。心因性発熱を風邪と勘違いして解熱剤を服用すると、解熱剤の効果で一時的に体温は下がります。しかし、薬の効果が切れたところですぐに体温が上昇してくるのが、心因性発熱の特徴です。

精神的ストレスは体にも心にも多くの影響を与えますので、ストレスで体調を壊す時、一つの疾患だけでなく、複数の身体疾患、精神疾患が同時に起こることがあります。心因性発熱では、小児では起立性調節障害、成人では緊張型頭痛、うつ病、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)、不安障害、パニック障害、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を合併していることがあります。

開業医などの医療機関を受診して各種の検査を受けてもなかなか疾患名がはっきりしないというのも、心因性発熱の特徴です。風邪でもないのに微熱が3週間以上続いている場合には、心因性発熱が疑われることになりますが、自己判断は禁物で、実は感染症、自己免疫疾患、悪性腫瘍(しゅよう)など発熱を伴う器質的な疾患が隠れているかもしれません。まず、子供の場合は小児科、大人の場合は内科で、しっかり発熱の原因を調べてもらうことが勧められます。

器質的な疾患が否定的で心因性発熱が疑われる場合は、検査を受けた医療機関から心療内科、ないし精神科を紹介してもらってください。

心因性発熱の治療と生活上の注意

心療内科、ないし精神科の医師による治療は、薬物療法、心理療法、自律訓練法などのリラクセーショントレーニング、合併している身体疾患、精神疾患の治療、生活指導を組み合わせて行います。

薬物療法では、不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。

うつ病、双極性障害(躁〈そう〉うつ病)などの治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。

十分な睡眠がとれていない人には、睡眠薬が有効です。風邪薬や解熱薬はほとんど効きませんが、緊張型頭痛に対しては有効です。

薬による治療と合わせて、過労、緊張状態、対人関係など精神的ストレスの原因を探って、それを改善する心理療法も行います。交感神経の過剰な興奮を鎮め、自律神経を鍛えてバランスを整え、免疫力を回復する自律訓練法を併用すると、さらに効果的です。

日常生活では、仕事や学業、家事などのペースダウンを試みて、精神的ストレスをためないように気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。

🇩🇰心因性鼻炎

心の問題によって、鼻詰まりなどが引き起こされる症状

心因性鼻炎とは、慢性ストレス、うつ病、気分変調性障害(神経症)など心の問題によって、鼻詰まりなどが引き起こされる症状。

鼻炎には、アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎、好酸球増多性鼻炎などのほかに、非アレルギー型で鼻粘膜がうっ血して膨張し、鼻詰まりが主体となる症状に分類されるものがあります。このような、うっ血型の鼻炎として、この心因性鼻炎や、薬剤性鼻炎、妊婦性鼻炎、寒冷性鼻炎、内分泌性鼻炎などがあります。

鼻詰まりは、鼻の中の粘膜がうっ血してはれることが原因で引き起こされますが、自律神経とも深い関連性があります。

自律神経は、発汗、呼吸、体温調整など、さまざまな身体機能を調整する重要な神経で、交感神経と副交感神経がバランスよく働くことで健康な体を維持できます。交感神経は、興奮した時や動いている時に優位となり、副交感神経はリラックスしたり、じっとしている時に優位になります。

自律神経は血流も調節しており、交感神経と副交感神経のバランスが崩れると、うっ血状態になり、鼻詰まりを引き起こしやすくなります。つまり、夜更かしや睡眠不足など、不規則な生活が自律神経の乱れを引き起こします。

交感神経と副交感神経のバランスを維持するには、早寝早起き、定期的な運動、入浴、就寝前のテレビやパソコンを控えることが大切です。

夜更かしや睡眠不足など、不規則な生活が自立神経の乱れを引き起こすのと同様に、仕事や学業、対人関係などで積み重なるストレスに長期間さらされたり、強い憂うつ感が長く続き、何事にもやる気がなくなるうつ病を患ったり、症状が軽い反面、長く続くタイプのうつ病である気分変調性障害(神経症)を患ったりすると、自律神経のバランスが崩れ、免疫力も低下する結果、物理的には鼻が詰まっていないにもかかわらず、鼻が詰まったように感じ、極端な例になると呼吸困難を感じることもあります。

心因性鼻炎の主な原因は、慢性ストレスです。人間はストレスにさらされると興奮したり、緊張したりします。この興奮や緊張によって、自律神経のバランスが崩れ、交感神経が活性化した状態が継続すると、心因性鼻炎の症状が現れてきます。また、思い悩むことが多くなってしまうと、脳が休まらなくなり交感神経が活性化したままの状態となり、自律神経失調症のような症状になると眠れなくなってしまいますが、それとともに心因性鼻炎を発症することもあります。

心因性鼻炎の場合、耳鼻科、耳鼻咽喉(いんこう)科で鼻炎の治療を受けても治りませんので、精神科や心療内科などでの治療が必要になります。

心因性鼻炎の治療

耳鼻科、耳鼻咽喉科で「原因不明」とか、「気のせい」といわれることもありますが、心因性鼻炎は原因不明でもなく、単なる気のせいでもありません。気持ちだけで、心因性鼻炎を治すことできません。鼻詰まりのもとは、慢性ストレスや精神の疾患であり、適切な治療で回復します。

精神科や心療内科の医師による治療は、薬物療法が主となります。不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。

うつ病の治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。

薬による治療と合わせて、ストレスの原因を探ってそれを改善する心理療法なども行います。

うつ病、気分変調性障害(神経症)の治療には時間がかかりますが、適切な治療が行われれば克服することができます。根気よく治療を続けることが大切です。

心因性の症状に対する治療で大切なのは、自律神経を鍛えてバランスを整え、免疫力を回復するという方法です。それには、日常生活でストレスをためず気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。

🇮🇸心因性めまい

主に心理的な要因の影響で生じるめまい

心因性めまいとは、主に心理的な要因が影響して生じるめまい。その多くは、疾患としての不安障害、身体表現性障害、うつ病の一症状としてみられます。

めまいを生じる疾患には、大きく分けて耳の疾患、脳の疾患、精神の疾患の3つがあります。めまいで耳鼻咽喉(いんこう)科や脳神経外科を受診し検査を受けても、特に異常が見付からなかったり、めまいの治療を受けているのになかなか改善しない場合には、単に耳の疾患、脳の疾患だけによって起こるめまいではなく、精神の疾患である不安障害、身体表現性障害、うつ病で生じる心因性めまいの可能性もあります。

めまいの特徴は発症者ごとに異なり、辺りがグルグルする回転性のめまいから、体がふらついて真っすぐに歩けない浮動性めまいまで多種多様で、耳鳴りの障害を伴うこともあります。めまいだけではなく、気分の落ち込みや倦怠(けんたい)感といった抑うつ状態、食欲不振または過食、睡眠不足または過眠、頭痛や肩凝りなどといった症状がみられるのが特徴です。

人間関係や仕事のトラブル、育児のストレス、将来への不安などが自律神経に悪影響を与えているのが、原因だと考えられています。

心因性めまいには、大きく分けて2つのタイプがあります。 耳や脳に異常がある上に心の不調が影響してめまいが起こるタイプと、 耳や脳には異常はなくて心の不調が主な原因となるタイプです。

前者のタイプは、もともと耳や脳の異常によるめまいがある上に、心の不調が重なることによって悪化しているもの。耳の異常によってめまいが起こる疾患としてメニエール病などがありますが、これらはストレスなども疾患の発症に関与しているため、精神的にも不調になることでさらに症状が悪化すると見なされます。この場合、めまいに関係する耳や脳の異常部位の治療と一緒に、不安障害やうつ病に対する治療も必要になります。

後者のタイプは、不安障害、身体表現性障害、うつ病の一症状として、めまいが発症しているもの。なぜ、精神の疾患でめまいが発現するかは正確にはわかっていませんが、心理的な要因が交感神経に過度の影響を与えることが関係していると見なされています。また、精神の疾患は意欲や活力を伝える役割を持つセロトニンやノルアドレナリンなど脳内の神経伝達物質の働きが悪くなり、脳機能が十分に働かなくなることにより起こるとされ、体の中の平衡機能も影響を受けると見なされています。この場合、耳鼻科でめまいの治療を受けても治りませんので、精神科や心療内科などでの治療が必要になります。

不安障害は、急に激しい不安の発作に襲われるパニック障害と、不安感がいつもあり、仕事や生活に支障を来す全般性不安障害の2種類に分けられます。女性に多くて青年期に発症しやすく、不安障害の発症者の約70パーセントにめまいがあります。

身体表現性障害は、体の疾患を思わせる症状があるのに、その体の疾患から説明できないか、疾患がないというものです。数年間、さまざまな体の不調を訴えて、体の異常はないと医師から説明を受けても、疾患への恐怖と捕われが続きます。身体表現性障害の発症者の80パーセント以上にめまいがあります。

うつ病は、気分がひどく落ち込み、何事にもやる気がなくなる精神の疾患で、20人に1人が症状を持っているといわれています。全身に力が入らない感じでふらふらする、疲れ切った感じでふらふらする、目の焦点が合わないなどの訴えが多く、壮年期以降に増える傾向があります。

心因性めまいの検査と診断と治療

耳鼻咽喉科で耳の疾患もなく、脳の疾患もない場合に、原因不明とか、気のせいといわれることもありますが、心因性めまいは原因不明でもなく、単なる気のせいでもありません。気持ちだけで、心因性めまいを乗り越えることができません。めまいのもとは、精神の疾患であり、適切な治療で回復します。 ずっと続くめまいに悩まされているようであれば、精神科や心療内科で検査を受けてみます。

精神科や心療内科での治療は、薬物療法が主となります。不安障害には、抗不安薬(ベンゾジアゼピン系)が使われ、不安を即効的に鎮めます。抗うつ薬SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)も使われ、長期的な効果が得られています。一般的には、身体表現性障害を含め、抗不安薬で当面の症状を鎮めて経過をみます。

うつ病の治療には、抗うつ薬SSRI、SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が第一に選ばれる薬となります。不安が合併する時には、抗不安薬を併用します。薬による治療と合わせて、心理療法なども行われます。

不安障害や身体表現性障害、うつ病の治療には時間がかかりますが、適切な治療が行われれば克服することができます。根気よく治療を続けることが大切です。そのためには、発症者本人だけではなく、周りの家族のサポートや職場の人たちの理解が欠かせません。

日常生活では、ストレスをためず気分転換を図る、3食きちんとバランスのよい食事を心掛ける、早寝早起きで睡眠を十分にとる、酒やたばこ、コーヒーを控える、軽い運動を定期的に続ける、入浴で心身ともにリラックスするなどが大切です。

2022/08/23

🇳🇴人格障害

人格の著しい偏りで社会生活に支障

人格障害(パーソナリティー障害)とは、精神医学の領域において、生来持っている人格傾向が思春期、青年期に顕著に出てきて、その人格の著しい偏りのために、社会生活を営むことに支障を伴う状態を指します。物事の認識の仕方や行動が逸脱していて、対人関係の機能が障害され、自分自身や他人、または両方を苦める傾向が目立ちます。

人格障害は精神疾患の一つに含まれますが、その他の精神疾患と比べて慢性的であり、全体としての症状が長期に渡って変化しないことに特徴があります。従来は人格異常、精神病質と呼ばれていた病気の概念で、性格障害と呼ばれることもあります。

なお、この人格障害は否定的なニュアンスが強いことから、近年はパーソナリティー障害と呼ばれることが多くなっています。日本精神神経学会では2008年5月に、人格障害をパーソナリティー障害に用語改定をすることを発表しました。

人格障害(パーソナリティー障害)にはさまざまなパターンがあり、時代や国によって分類方法が変わってきます。現在、アメリカの精神医学会によって作られた診断基準では、人格障害は3つのグループに分けられています。

A群は、妄想性人格障害、統合失調症質人格障害、統合失調症型人格障害。統合失調症(精神分裂病)に近い人格障害です。

これらの人格障害の特徴は、思考、感情、行動などの統一性を失う統合失調症のようなはっきりとした精神症状はありませんが、それとよく似た傾向を持っています。自閉的で、しばしば妄想を持ちやすく、奇妙で風変わりな傾向を示します。

B群は、反社会性人格障害、境界性人格障害、演技性(ヒステリー性)人格障害、自己愛性人格障害。感情が不安定、かつ激しいのが特徴的な人格障害です。ストレスに対して弱く、他人を巻き込むことが多い傾向を示します。

C群は、回避性(不安性)人格障害、依存性人格障害、強迫性人格障害。不安やおびえ、引きこもりなどを特徴とする人格障害です。周りの評価が気になり、それがストレスとなる傾向を示します。

その他、 抑うつ性人格障害 、受動攻撃性人格障害も、診断基準の付録に挙げられています。

これら人格障害の人には、融通が利かず、問題に対して適切に対処できない傾向があるため、しばしば家族、友人、職場の同僚との関係の悪化を招きます。問題への不適応や、物事の認識の仕方や行動の逸脱は多くの場合、思春期、青年期から成人期初期にかけて始まり、時を経ても変わることはありません。

ただし、一部の人格障害の人では、30~40歳代までに状態が改善していく傾向があるとされ、晩熟現象と呼ばれています。加齢による生理的なものの影響だけではなく、仕事等の社会生活を通じて多くの人々に触れ、世の中には多様な生き方、考え方があるということを知り、それを受容することに基づく現象と考えられています。

人格障害者の診断と治療

人格障害(パーソナリティー障害)の人は、自らの思考や行動のパターンに問題があることに気付いていません。このため、自分から医師に治療や助力を求めることは、あまりありません。当人の行動がほかの人に迷惑をかけているなどの理由で、友人や家族、社会的機関によって、医療機関に連れてこられることは、より多くあります。自主的に受診するのは、不安、抑うつ、薬物乱用など、つらい症状がある場合が主です。

医師の側では、既往歴、特に繰り返し現れる不適応的な思考や行動のパターンに基づいて、人格障害を診断します。統合失調症や気分障害など他の精神疾患でも、人格障害の症状を示すことがあるため、区別に注意しなくてはなりません。また、受診者の年齢が幼いほど、人格障害の診断に慎重になる必要があります。人格発達が不完全な未成年者では、いずれかの人格障害の傾向を示すことが珍しくないためです。

人格障害がある人では、行動の結果が思わしくない場合にもそのパターンを頑固に変えようとしないため、他人の目にも明らかになりがちです。問題への心理的な対処のメカニズムの不適切も、よく目に付きます。この対処メカニズムは誰(だれ)もが無意識に用いるものですが、人格障害がある人の場合はその使い方が未熟で不適応的であるために、日常生活にまで支障を来します。

人格障害の治療には、長い時間がかかります。人格障害は一時的な心の病ではなく、問題が人格といえるほどに当人の心の奥底まで浸透し、長期に渡って変化せずに安定していますので、社会適応の妨げとなる特性が短期間で改善されることはあまり望めません。

人格障害の人は何よりも他人を信頼しないので、医師との治療関係に持っていくまでが大変ですし、治療関係自体を良好なまま維持していくのにも工夫が必要とされます。

何らかの精神症状が出ている場合、妄想などの内容が過激で生活にかなりの支障が出ている場合には、薬物を投与しながら治療していくほうが好ましいとされます。薬物療法や環境ストレスの低減により、不安や抑うつなどの症状はすぐに軽快します。ただし、薬には症状を緩和させるだけの限られた効果しかなく、人格障害から起こる不安や悲しみなどの感情は、薬で十分に軽減されることはまずありません。

薬物療法や環境ストレスの低減により、不安や抑うつなどの症状を軽減した後、心理・対話療法が行われ、その人独自の思い込みを少しずつ解いていくことが試みられます。

人格障害のタイプにより治療法は異なりますが、独自の思い込みを解くのは、すべての治療に共通する原則の一つ。当人は自らの行動に問題があるとは思っていないため、状況に適応していない思考や行動が引き起こす有害な結果に、直面させる必要があります。それにはまず、当人の思考や行動パターンから生じる望ましくない結果を、心理療法士が繰り返し指摘する必要があります。時には、怒って声を張り上げるのを禁じて、普通の声で話させるなど、行動に制限を加えることも必要とされます。

家族の行動は、本人の問題行動や思考に良くも悪くも影響するため、家族の関与は治療に役立ち、多くの場合不可欠でもあります。グループ療法や家族療法、専用施設での共同生活、治療を兼ねた社交サークルや自助グループなどが、社会的に望ましくない行動を変えていく上で役立ちます。

心理・対話療法は通常、不適応行動や対人関係のパターンに何らかの変化がみられるまで、1年以上は続けなければなりません。医師と人格障害の人との間に、親密で協力的な信頼関係ができると、当人はそこから自らの悩みの根源を理解し、不信、ごう慢、人に付け込むといった対人問題の原因となる態度や行動を、より明確に認識するのに役立ちます。一般的に、不適応行動の変化は1年以内に生じますが、対人関係の変化にはなお時間がかかります。

人格障害の中でも、特に適応の妨げとなる態度や期待、信念などがある自己愛性人格障害、強迫性人格障害などの場合には、精神分析的精神療法を受けることが勧められ、通常は少なくとも3年間続けられます。

境界性人格障害、反社会性人格障害、回避性人格障害の場合には、当人の行動の変化が最も重要と見なされ、落ち着きがない、社会的に孤立している、自己主張が欠如している、怒りやすいなどの行動を変えるのに、認知行動療法が役立ちます。ただし、反社会性人格障害または妄想性人格障害の場合は、どの治療法でも成功することはまれです。

🇱🇹神経循環無力症

心臓病にみられる胸痛などの症状を示しているにもかかわらず、心臓の異常が見付からない疾患

神経循環無力症とは、心臓病によくみられる胸痛、動悸(どうき)、息切れ、呼吸困難、めまいなどの循環器症状を示しているにもかかわらず、心臓を検査しても器質的、機能的な異常が何も見付からない疾患。心臓神経症とも呼ばれます。

その際、胸痛などの症状のほかに、手足のしびれ、疲れやすい、頭痛、不眠、不安など、多彩な症状を伴うのが普通です。心臓病というよりはむしろ、心の病というほうが正しいといえます。

なお、心臓に何らかの病変がある場合は、器質的心臓病といいます。相当するのは、心筋梗塞(こうそく)や弁膜症、先天性心臓病など。また、器質的な病変はないが、心臓の働きに異常があって症状が出る場合は、機能的心臓病といいます。相当するのは、多くの不整脈や貧血に由来するものなど。

神経循環無力症の症状として、ほとんどの人が胸痛を訴えます。胸の痛みは一見、狭心症や急性心筋梗塞の症状と似ていますが、よく調べると、多くの点で性質に違いがあることがわかります。

神経循環無力症で感じる胸痛は、「ズキズキ」とか「チクチク」と表現されるようなもので、左胸の狭い範囲に痛む部分が限られていて、手で圧迫すると痛みが強くなるという点が特徴です。この痛みは、運動したり、興奮したりしている時ではなく、一人で静かにしている時におおかた現れます。持続時間が長いのも特徴の一つで、長い時は1日中続くこともあります。狭心症で使う硝酸薬も効きません。

神経循環無力症で感じる息切れも、心不全の場合と違って、「息が詰まる」、「息が十分に吸えない」、「ため息が出る」などの症状が、運動時よりもむしろ安静時に生じます。

神経循環無力症の呼吸症状の中で、過換気症候群を伴う場合もあります。若い女性に多く、浅くて速い過呼吸のために、急性呼吸性アルカローシスを起こして、血液中の炭酸ガス(二酸化炭素)が少なくなるために、しびれやめまい、失神を生じるものです。

感じる動悸は、心臓のリズムが増加する洞性頻脈がほとんどで、不安や心配などの精神的緊張によって起こります。頻脈を強く意識し、心配すると、余計に脈は速くなるという悪循環に陥ります。多少の不整脈(期外収縮)、まれに発作性上室性頻拍を伴った時も、同じことです。

この神経循環無力症は、神経症的な素因や体質を持っている人、とりわけ無力性体質の人に、起こりやすいと見なされています。人間の体は神経系の働きによって、うまく平衡が保たれ、恒常性を維持するとともに、運動、発熱などにうまく対応していますが、無力性体質の人は神経系の働きが十分でなく、わずかな体の変化や周囲の変化についてゆけず、易疲労感や動悸、息切れなどの症状が現れます。

また、子供から手が離れ、暇な時間ができたために自分の体の状態が気になるようになった女性、親しい人を心臓病で亡くして、心臓病や突然死に対して恐れや不安を抱いている人などにも、よく起こります。

発症の原因としては、心臓病に対する極度の不安感、心身の過労、ストレス、精神的葛藤(かっとう)などが考えられます。不安感、過労などは心臓の働きを活発にする交感神経を刺激しますので、心拍数が増え、動悸を強く感じたりします。一度こうした症状を感じると、その不安が徐々に大きくなるにつれて、胸痛、呼吸困難、めまいなど、より大きな症状を感じるようになってしまうのです。

心電図検査で、ささいで意味のない変化や、心配する必要のない不整脈を指摘されたことがきっかけとなる場合も、少なくありません。

神経循環無力症の検査と診断と治療

内科、神経内科などの医師による治療においては、まず一般的な心臓病の検査を行い、心臓の病気の有無を判断します。さらに、胸膜の病気や食道けいれんなど胸痛の原因となる病気の有無について調べ、それらが除外されて初めて神経循環無力症と診断されます。

胸痛発作を強く訴える人で、狭心症との区別が難しい場合には、ニトログリセリン舌下錠を処方して、胸痛発作が起きた時に服用してもらい、その時の薬の効き具合をみることで診断する場合もあります。

神経循環無力症の原因は心の問題なので、症状が起こる仕組みをよく説明して納得してもらうと同時に、症状を引き起こしている原因が何であるのかを調べ、それに対するアドバイスをします。

症状が強い場合には、心臓の働きを抑えるβ(ベータ)遮断薬や精神安定薬を処方することもあります。

これらの治療を行っても症状が続く場合には、心療内科や精神神経科の医師の診察が必要になります。

🇲🇩神経性過食症

神経性過食症とは、神経性の摂食障害の一つで、食欲が異常に増し必要以上に食べる病気です。神経性大食症、過食症とも呼びます。

過食は気晴らし食いから発展し、過食症のみを呈することもあります。多くはやせるためのダイエットの反動から発展し、神経性食欲不振症の部分症状としてみられる過食症です。

過食してしまった自分に強い嫌悪感を覚え、翌日からまた厳しい食事制限をしますが、朝食、昼食は何とかコントロールできても、夜になると食欲に抵抗できず過食してしまうという、悪循環に陥る傾向が認められます。

拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあります。一度に大量を食べ、ほとんどの場合、自分の指を喉(のど)に入れて自己嘔吐をします。頻繁に行うと、手の甲の歯が当たる個所に吐きだこができます。

人格障害が背景にあるケースもあり、難治性なので、入院治療が原則となります。精神療法、行動療法を気長に行い、人間的な成熟を図ったり、悩みを解決したり、食に関する片寄った習慣や考え方を徐々に是正していくことが大切です。

🇧🇾神経性食欲不振症

神経性食欲不振症とは、どこにも病変が認められないのに、心因性の反応によって食欲不振に陥り、著しいやせ症になることをいいます。思春期前後の若い女性に多く発症し、思春期やせ症、神経性無食欲症、神経性食思不振症、拒食症とも呼びます。

母子関係に問題があるなど何らかの精神的原因によって極度に食欲を失うか、自分自身で太りすぎだと思い込んだり、美容上の観点から肥満を病的に恐れて節食や断食をすることから、やせが始まります。拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあります。心因的な反応ばかりではなく、視床下部にある食欲中枢の機能に異常があるのではないかとの見方も近年、出ています。

症状としては、高度のやせのほかに、月経がなくなり、便秘が強く、皮膚の色が真っ白になり、体毛が産毛のように細く柔らかくなります。内分泌疾患で体重の減少を来すケースに比較して、肉体的な活動力もあり、耐久力もあることが特徴です。

医師による治療では、根気よく悩みの原因を聞くことと、精神的指導が必要になります。本人には病気の意識がなく、やせたいという願望が強いため、著しくやせてしまっていても、あまり異常であることが自覚できません。従って、治療意欲もないため、病気の治療は難しく、期間も長引く場合が多いようです。

食べたいものを食べさせ、少しずつ摂取エネルギーを増やしていきます。頑固な便秘、胃のもたれに対しては、下痢や便の排出を促す補助薬が用いられます。母子関係など家庭に問題のみられるケースでは、家族からの隔離を目的に入院治療が原則となります。

🇺🇿心身症

■心理的な要因で発生する身体疾患の総称

心身症とは、心理的あるいは社会的な要因が大きく関わって、症状が発現したり悪化したりする身体疾患の総称。ストレスや精神の持続的な緊張によって、身体疾患が起こるため、身体的な治療と並行して、多くの場合は心理面の治療やケアも必要となります。

日本心身医学会では1991年に、心身症(精神身体症)とは「身体疾患の中で、その発症や経過に心理社会的な因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態をいう。ただし、神経症やうつ病など、他の精神障害に伴う身体症状は除外する」と規定しています。すなわち、心身症は病名ではなく、身体疾患の病態を説明する一つの概念なのです。

なお、心身症と適応障害との区別は不確実であり、同じ病気として扱う精神神経科医も多くいます。

心身症がしばしば認められる疾患の発症には、それぞれの疾患特有の原因が考えられます。中でも、ストレスは発症や悪化、慢性化の大きな要因と考えられていて、持続するストレスが脳の中枢神経系を介して、自律神経系、内分泌系、免疫系といった生体機能調節系に影響を与えると、臓器の構造や働きに異常を来すと見なされています。

例えば、仕事に悩んだり、家庭内のもめ事に悩んだりしている時に、高血圧や胃潰瘍(かいよう)、十二指腸潰瘍が起こってくるのが、その好例です。

心身症を発症すると、特に自律神経に支配されている臓器である胃・腸などの消化器、心臓・血管などの循環器、気管支・肺などの呼吸器のほか、内分泌・代謝系、神経・筋肉系、泌尿器系、皮膚系、整形外科領域、婦人科領域などに身体疾患が起こります。

心身症がしばしば認められる身体疾患を、以下に挙げます。

消化器系:過敏性腸症候群、胃潰瘍、十二指腸潰瘍

循環器系:高血圧症、狭心症、心筋梗塞(こうそく)、不整脈

呼吸器系:気管支喘息(ぜんそく)、過呼吸(過換気)症候群

内分泌・代謝系:糖尿病、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症

神経・筋肉系:緊張性頭痛、片頭痛、自律神経失調症、書痙(しょけい)

泌尿器系:夜尿症、インポテンツ、過敏性膀胱(ぼうこう)

皮膚系:アトピー性皮膚炎、慢性じんま疹、円形脱毛症

整形外科領域:頸肩腕(けいけんわん)症候群、腰痛症、慢性関節リウマチ

婦人科領域:月経困難症、無月経、月経異常、不感症

以上のように、心身症と一般的な身体の疾患を扱う内科や外科の病気とは、表面的にはなかなか区別しがたいといえます。

また、心身症の発症の際、どの臓器に異常を来すかは、もともと弱いところに出る、ストレスの種類によって決まる、性格傾向によって決まるといった考え方があります。

心身症になりやすい人には、不安や緊張の強い人や、アレキシサイミア(失感情症)と呼ばれるタイプの人が多いようです。アレキシサイミアの人は、あまり感情を表に出さず、自分のことを表現するのが苦手。空想力、創造力の欠如を特徴とする性格傾向を持っているため、不満や不安などの自己の感情を意識で認識する代わりに、身体で表現してしまうのではないか、というメカニズムが考えられています。

よく発症する年代については、それぞれの病気によってまちまちですが、心療内科に心身症のために受診する人の内訳をみますと、女性は20~30歳代、男性は30~40歳代が最も多くなっており、それぞれ職場や家庭内におけるストレスが多くなる時期と重なっている可能性があります。

■診断と治療とセルフコントロール

一般的な身体の疾患を扱う内科や外科、整形外科などにかかって、症状がなかなか改善しなかったり、いったん治った病気が何らかの切っ掛けで再発を繰り返す時には、心身症を専門に扱う心療内科、精神科の診察を受けましょう。ただし、最近は内科を始め各診療科の窓口でも、心身症を取り扱うところが増えています。

心身症の治療は基本的には、それぞれの疾患に応じた直接的な治療に、心理療法が併用されます。加えて、心身症では心身の緊張、不安、抑うつといった精神症状が認められることも多く、その緩和のためには抗不安薬(精神安定剤)や抗うつ薬の服用が行われます。

心理療法としてよく行われるのは、自律訓練法とバイオフィードバック療法です。いずれも、自己をコントロールして、リラックスする手段を身に着けることを目的としています。

自律訓練法は、自己暗示によって、段階的に緊張をほぐす方法を体得していきます。バイオフィードバック療法は、音や光によって緊張状態を本人に自覚させ、自分で緊張をほぐすようにする方法です。

以上のような多面的な治療を行っていくと、大体のケースは半年くらいでかなり改善し、後は身体的な疾患の治療と自分の力で、セルフコントロールできるようになることがほとんどです。

例えば、高血圧であれば塩分を控えめに、糖尿病であればカロリーを控えめにする食事療法や、定期的な運動を行う運動療法が治療の大きな手段になってきますし、過敏性腸症候群や消化性潰瘍であれば刺激物を避け、気管支喘息であれば喫煙を控えるといった取り組みが症状の改善につながります。

さらに、直接疾患の治療と関係しなくても、生活習慣を規則正しくすることは、ストレスに対する心身の全般的な抵抗性を高めますので、心身症の治療には大変有効といえます。

心身症がしばしば認められる身体疾患は、慢性の疾患であることが多く、生活習慣病といわれる疾患群とかなり重なってきます。そして、ストレスの多い生活を送っていると、食事、運動、飲酒、喫煙、休養といった面の生活習慣は乱れがちになり、それがさらにこれらの病気を悪化させることになります。

ストレスは慢性の心身の緊張状態を作り出し、それがさまざまな身体の障害をもたらすと考えられていますが、その影響を緩和するためには、さまざまなリラクセーション法が非常に有効です。毎日定期的に練習を続けていくことにより、ストレスに対する身体の反応性自体が変わってくることも知られています。

具体的な方法として、ここでは比較的簡単に習得できる方法を紹介しましょう。

それは腹式呼吸をしながら、呼吸の数を数える数息という方法です。息を吸う時にお腹が膨らみ、吐く時にお腹がへこむのが腹式呼吸ですが、わかりにくければ、仰向けに寝て腹の上に置いたタオルを上げ下げする練習をしましょう。腹式呼吸をマスターしたら、静かな場所でゆったりと座るか仰向けになるかして、呼吸の数を1から順番に10まで数え、10になったらまた1から数えることを繰り返します。

その際、いくつまで数えたかわからなくなったら1に戻ることと、リラックスすることを目的にしているので、一生懸命にならずにゆったりと行うことを心掛けます。

数息を1回5~10分、1日1~2回行うようにし、2~3カ月も続けていくと、多くの症状が改善し、また体調全般もよくなってくるでしょう。

🇲🇳性依存症

性的な行為におぼれ、自らのコントロールを失う精神疾患

性依存症とは、セックスに限らず性的な行為におぼれ、自らのコントロールを失う精神疾患。セックス依存症とも呼ばれます。

日本ではいまだ認知度が低いものの、アメリカでは薬物やアルコール依存症と同じく代表的な依存症の一つとして、ホルモン療法などによる治療が行われています。

薬物がやめられない薬物依存症、酒がやめられないアルコール依存症と同じく、性的な行為がやめられない強迫性を持ち、自らの意思で興奮や刺激を求める性衝動をコントロールできなくなります。依存する対象には、実際に相手のある性交渉だけでなく、自慰行為やポルノへの過度な耽溺(たんでき)や収集、強迫的な売買春、乱交、露出、のぞき行為、盗撮、性的ないたずら電話、インターネットを介したアダルト・チャットなどすべての性的な行為が含まれます。

何らかのストレスや落ち込み、心理的な問題などで苦しんでいる状態で、セックスなどの性的な行為によって救われるという経験をすると、その快感を求めて繰り返すことになるのが主な原因。緊張感からの解放、現実やストレスからの逃避、生きていることの自己確認、男らしさ女らしさの証明など、いろいろなものが誘因となります。

性依存症のリスクとしては、性病、金銭的な負担、不倫などによる社会的地位の喪失、性犯罪などによる逮捕、異性関係を巡っての配偶者との不和、子供などの家族への虐待、性行為をしていない時の空虚感、不安感、焦燥感などが挙げられます。

なお、性的な行為への依存を依存症の一つとして位置づけられるのかどうか、また、どのあたりに正常と依存症の境界を引くかなど、アメリカでも1970年代から長い間論争が続いています。依存症ではなく行動制御障害であるという説もあり、性依存症という概念を一切認めないとする考えを持つ人々も存在します。

性依存症の検査と診断と治療

性依存症で苦しんでいる場合は、精神科、心療内科、あるいはメンタルクリニックを受診します。また、各都道府県に設置されている精神保健センターには相談できる部門がありますので、予約の上、精神科医、臨床心理士(カウンセラー)の面接を受けることができます。

医師の側は、依存症に至った原因を探り、薬物療法や精神療法などの方法で矯正を図ります。薬物療法では、精神安定剤、抗うつ剤、抗不安剤、睡眠薬などが処方され、精神療法では、臨床心理士によるカウンセリングや催眠療法、各種療法が行われます。

また、同じような境遇の人々が集まり、お互いに影響を与える性依存症の自助グループに参加することが、有効な場合もあります。日本でも小規模ではありますが、首都圏にグループがあり、定期的に集まるなどして個々に快復へ向けた活動を続けています。

🇭🇰精神疾患

脳および心の障害で起こる疾患

精神疾患とは、脳および心の機能的、器質的な障害によって、精神の変調が引き起こされる疾患。統合失調症や躁(そう)うつ病といった重度のものから、不安障害(神経症)、パニック障害、適応障害といった中、軽度のものまでの多くの疾患を含みます。

精神の変調が髄膜炎、内分泌疾患などの身体疾患によって引き起こされる場合も含み、広義の精神疾患として知的障害や人格障害をも含みます。

精神疾患には多くの種類があり、精神医学の領域では、精神疾患の定義、診断基準が統一されていません。そのために、同じ病状に対して付けられる病名が、精神疾患の分類法によって変わってくることがあります。

世界保健機構 (WHO) による国際疾患分類(ICD-10)や、アメリカ精神医学会による統計的診断マニュアル (DSM-IV)においては、診断カテゴリーを用いて網羅的に分類しています。これにより、個々の精神疾患の診断が世界全体で以前よりも標準化され、一貫性を持つようになりつつあります。

以下の精神疾患の分類は、世界保健機構による国際疾患分類に基づきます。

●症状性を含む器質性精神障害

認知症疾患、コルサコフ症候群、頭部外傷後遺症などによる精神疾患

 ●精神作用物質使用による精神および行動の障害

アルコール、アヘン、大麻、鎮静薬または催眠薬、コカイン、覚醒(かくせい)剤・カフェイン、幻覚薬、タバコ、揮発性溶剤などの精神作用物質に関連した精神疾患。依存症、乱用、中毒などに分けられる。アルコール依存症、薬物依存症など

 ●統合失調症・統合失調型障害および妄想性障害

統合失調症、統合失調症型障害、持続性妄想性障害、急性一過性精神病性障害、感応性妄想性障害、統合失調感情障害

●気分(感情)障害

躁病、双極性障害(躁うつ病ともいう)、うつ病

●神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害

不安障害、恐怖症、単一恐怖広場恐怖社会恐怖、パニック障害全般性不安障害、強迫性障害、重症ストレス障害、急性ストレス障害PTSD(心的外傷後ストレス障害)適応障害、 解離性障害、解離性同一性障害(いわゆる多重人格)、身体表現性障害、転換性障害心気症、疼痛(とうつう)性障害、身体醜形障害

●生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群

摂食障害、神経性無食欲症(拒食症)、神経性大食症(過食症)、 睡眠障害、不眠症、精神生理性不眠症概日リズム睡眠障害、入眠困難中間覚醒早朝覚醒過眠症、睡眠時無呼吸症候群、ナルコレプシー、原発性過眠症反復性過眠症特発性過眠症睡眠時随伴症レム睡眠行動障害、睡眠時遊行症、夜驚症

●成人の人格および行動の障害

妄想性人格障害、統合失調質人格障害、分裂病型人格障害、境界性人格障害(境界例)、自己愛性人格障害、演技性人格障害、反社会性人格障害、強迫性人格障害、回避性人格障害、依存性人格障害、性同一性障害、性嗜好(しこう)障害、フェティシズム、露出症、窃視症、小児性愛、サディズム・マゾヒズム、虚偽性障害、ミュンヒハウゼン症候群

●精神遅滞

精神遅滞

●心理的発達の障害

広汎(こうはん)性発達障害、自閉症、アスペルガー症候群

●小児期および青年期に通常発症する行動および情緒の障害

多動性障害、チック障害、トゥレット障害

●その他

幻覚、妄想、文化依存症候群、神経質、対人恐怖症

精神疾患の診断と治療

精神疾患の治療を担当するのは、主に精神科、神経科です。発症者の症状や状況によっては、心療内科や内科など他の科で診察、治療が行われている場合もあります。

精神疾患の治療とケアを行うための訓練を受けた専門家は、精神科医だけではありません。医師以外の専門家として、臨床心理士、ソーシャルワーカー、看護師などがいます。ただし、このうち薬を処方する資格を持っているのは精神科医だけです。医師以外の精神医療の専門家は、主に心理療法を行います。

医師による診断においては、精神疾患を判別するための研究が進み、以前よりはるかに正確にできるようになっています。診断方法も進歩し、CT(コンピューター断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像)検査、ポジトロンCT(PET)検査(脳の特定領域への血流を測定する画像診断法の1種)といった脳の画像診断が行われています。

医師による治療法は精神疾患の種類や重症度により異なりますが、大きく分けると、身体療法か心理療法(精神療法)のいずれかです。身体療法には、薬物療法と電気けいれん療法があり、脳に直接働き掛けます。

心理療法には、個人療法、作業療法、グループ療法、家族療法、夫婦療法といったもののほか、行動療法におけるリラクセーション訓練や暴露療法などの各種技法、催眠療法などがあり、言語や行動を介して治療します。

重い精神疾患に対しては、薬物療法と心理療法を併用することが治療効果を高めると見なされています。ストレスの緩和は精神疾患の症状の緩和につながることから、音楽療法、運動療法、ユーモア療法などが活用されることもあります。

精神疾患を予防したり、症状が軽減、消失した後の再発防止のために、社会適応能力を習得したり、趣味やスポーツなどでストレスを適切に管理することも、重要視されています。

また、家族など周囲の人間が理解を示すことも必要です。精神疾患に偏見や差別的な見方を持っている人もいるため、それが発症者のストレスとなり、引きこもりがちに、内向的になることもあるためです。

🟪インフルエンザの患者数が注意報の基準を超える 新型コロナと同時に流行ピークの恐れも

 インフルエンザの感染状況について、厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関から9〜15日の1週間に報告された感染者数が1医療機関当たり19・06人だったと発表しました。前週(9・03人)と比べ2・11倍に急増し、「注意報」の基準の10人を超まし た。  都道府県別では...