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2022/08/10

🇹🇩ナイアシン欠乏症

不規則な食事をするアルコール多飲者に発症

ナイアシン欠乏症とは、ビタミンBの一つであるナイアシンが欠乏することにより、皮膚炎、下痢、精神錯乱などを起こす疾患。ニコチン酸欠乏症とも呼ばれ、とうもろこしを主食とする中南米などの地域ではペラグラとも呼ばれています。

ナイアシンは、ニコチン酸とも呼ばれる水溶性のビタミンで、蛋白(たんぱく)質に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンから体内で合成されます。糖質、脂質、蛋白質の代謝に不可欠な栄養素であり、また、アルコールや、二日酔いのもとになるアセトアルデヒドを分解します。人為的にナイアシンを摂取することで、血行をよくし、冷え性や頭痛を改善しますし、大量に摂取すれば血清のコレステロールや中性脂肪を下げる薬理効果もあります。

ナイアシン欠乏症はとうもろこしを主食とする人に多い疾患ですが、日本では、不規則な食事をするアルコール多飲者にみられます。酒を飲むほどナイアシンが消費されますので、つまみを食べずに大量に飲む人は、栄養不良に注意が必要です。特にビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6が不足すると、ナイアシンの合成能力が低下します。

遺伝病であるハートナップ病の人も、トリプトファンが腸から吸収されないために、ナイアシン欠乏症を発症します。

症状としては、日光に当たることによって手や足、首、顔などに皮膚炎が起こります。同時に、舌炎、口内炎、腸炎などを起こし、そのために食欲不振や下痢なども起こします。その後、頭痛、めまい、疲労、不眠、無感情を経て、脳の機能不全による錯乱、見当識の喪失、幻覚、記憶喪失などが起こり、最悪の場合は死に至ります。

日本では普通の食事をしている限り、重症にはなりません。食欲減退、口角炎、不安感などの軽いナイアシン欠乏症が見られる程度です。

ナイアシン欠乏症の検査と診断と治療

内科の医師によるナイアシン欠乏症の治療は、ナイアシン(ニコチン酸)を含むビタミンB群の投与です。ナイアシンを1日50〜100mg投与し、他のビタミンBの欠乏を合併することも多いので、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6も併用して投与します。ビタミンB群は、お互いに協力し合って活動しているため、それぞれの成分だけではなく、ビタミンB群としてまとめて投与することが望ましい栄養素でもあります。

ナイアシンの過剰症は特にありませんが、合成品のナイアシンを100mg以上摂取すると、皮膚がヒリヒリしたり、かゆくなることがあります。とりわけ、ナイアシンの摂取に際して注意が必要なのは、糖尿病の人です。ナイアシンはインシュリンの合成に関与し、大量に摂取すると糖質の処理を妨げてしまいます。 一部の医薬品との相互作用を示唆するデータもあるため、すでに他の薬を服用中の場合は主治医に相談の上、ナイアシンを摂取する必要があります。

🇨🇫内因性眼内炎

体のほかの部位に感染していた細菌や真菌が目の中に転移して、炎症を引き起こす眼病

内因性眼内炎とは、目以外の体の部位に感染していた細菌や真菌(カビなど)が血流に乗って目に波及し、炎症を引き起こす眼病。転移性眼内炎とも呼ばれます。

内因性眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。

症状としては、 ひどい目の痛み、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

真菌の転移による内因性眼内炎の場合は、目の症状が出る前に発熱することが多く認められます。発熱のほかに全身症状が出ることもあります。続いて1週間前後で、目の前に蚊など小さい物が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかっているように見える霧視などの症状が出ます。

症状が出たら、早めに眼科を受診します。真菌によるものは、飛蚊症が出た時期に眼科的な検査を行い適切な薬剤を使用すると、ほとんどのケースで治癒します。

しかし、細菌によるものは数時間から数日の単位で、真菌によるものは数日から数週間の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

内因性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、眼球の検査の前に、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無、発熱の有無を確認します。

続いて、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べます。さらに、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗菌剤または抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

眼内炎の原因であると判明した菌に応じて、抗菌剤や抗真菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤や抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤や抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇨🇫内因性細菌性眼内炎

体のほかの部分に感染していた細菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症

内因性細菌性眼内炎とは、体のほかの部分に感染していた細菌が血流に乗って目に波及し、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

内因性細菌性眼内炎のほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。

原因となる細菌は、グラム陰性桿菌(かんきん)である肺炎桿菌や大腸菌が多くみられ、グラム陽性球菌であるB群レンサ球菌もみられます。

肺炎桿菌は、口腔(こうこう)や腸管に常在する細菌で、免疫力の低下した人に感染し、肺炎や尿路感染症、敗血症などを起こしています。大腸菌は、代表的な腸内細菌で、血液中や尿路系に侵入した場合に病原体となり、敗血症、尿路感染症などを起こしています。B群レンサ球菌は、糖尿病やがんなどを基礎疾患に持つ人に感染しています。

内因性細菌性眼内炎の症状としては、ひどい目の痛み、目のかすみ、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、急な視力低下、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

目のかすみ、痛みの症状が出たら、早めに眼科を受診します。数時間から数日の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

内因性細菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、内因性細菌性眼内炎が疑われる場合には、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無を確認します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べ、瞳孔(どうこう)を開いた散瞳下の精密眼底検査を行います。

続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている細菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

また、同じような症状が出る内因性真菌性眼内炎や、悪性リンパ腫(しゅ)などと慎重に区別していきます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、第1選択の抗菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

第1選択の抗菌剤としては、グラム陰性桿菌が起炎菌と推定される場合は、アミノグリコシド系薬のベカナマイシン、ないしセフェム系薬のセフタジジムが選択されます。グラム陽性球菌が起炎菌として推定される場合は、グリコペプチド系薬のバンコマイシンが選択されます。

後に、感染の原因であると判明した細菌に応じて、抗菌剤の選択を調整することがあります。抗菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。

抗菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇬🇶内因性真菌性眼内炎

体のほかの部分に感染していた真菌が目の中に入り、眼球の内部が炎症を起こす感染症

内因性真菌性眼内炎とは、体のほかの部分に感染していた真菌が血流に乗って目に波及し、眼球の内部が炎症を起こす感染症。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。

この真菌が全身感染により、血行性に目の中に入って起こるのが、内因性真菌性眼内炎。そのほとんどは、糖尿病を患っている、抗がん剤投与を受けている、肝臓や心臓に感染症を起こしている、体が弱り免疫力が落ちている、血管内カテーテル(栄養のチューブ)が挿入されているなどで起こります。

原因となる真菌は、皮膚や腸管に普通に存在しているカンジダが多く、次いでアスペルギルス、クリプトコックス、フサリウムなどが続きます。

内因性真菌性眼内炎を発症すると、目の症状が出る前に、発熱することが多く認められます。発熱のほかに全身症状が出ることもあります。続いて1週間前後で、目の前に蚊など小さい物が飛んでいるように見える飛蚊(ひぶん)症や、視界に霧がかかっているように見える霧視などの症状が出ます。

眼内の炎症が悪化すると、ひどい目の痛み、明るい光の非常なまぶしさ、充血、目やに、視力低下を自覚するようになり、さらに進行すると、視力の部分的な欠損があり、視力の完全な欠損によって失明を起こすこともあります。

 一般的に、内因性の真菌性眼内炎は程度の差こそあれ、両目に生じることが多いのが特徴です。片目のみに生じ、視力低下が軽度の場合には、ほとんど自覚症状がないため、発症に気付くのが遅れがちになります。

飛蚊症が出た時期に眼科を受診し、適切な治療を受ければ、ほとんどのケースで治癒します。しかし、数日から数週間の単位で進行し、重症になった場合は、最大限の治療を施しても目を救えないこともあります。

内因性真菌性眼内炎の検査と診断と治療

眼科の医師による診断では、内因性真菌性眼内炎が疑われる場合には、問診で全身的な要因の有無や、血管内カテーテルの使用有無、発熱の有無を確認します。

確定するためには、目の表面を拡大して見る細隙灯(さいげきとう)顕微鏡を用いて眼球を丹念に調べ、瞳孔(どうこう)を開いた散瞳下の精密眼底検査を行います。

続いて、分泌液の培養検査を行います。場合によっては、抗体検査やDNA検査も行います。

分泌液の培養検査では、眼球内の前方にある液体である房水や、眼球後部の内部にあるゼリー状の組織である硝子体(しょうしたい)から採取し、感染の原因となっている真菌を早急に特定するとともに、どの薬剤が最も有効かを調べます。

眼科の医師による治療では通常、視力を守るために、抗真菌剤による治療を直ちに開始します。極端な場合、数時間の遅れが、回復不可能な視力の低下につながることがあります。

原因となる真菌はカンジダがほとんどですので、第1選択の抗真菌剤としてトリアゾール系薬剤のジフルカンを用います。

後に、内因性真菌性眼内炎の原因であると判明した真菌に応じて、抗真菌剤の選択を調整することがあります。ジフルカンが無効な場合は、ほかのファンギゾン、アンコチル、フロリード、イトリゾールなどの抗真菌剤を選択します。

抗真菌剤は、眼内注射、あるいは静脈内注射、または経口で投与します。抗真菌剤を眼内に注射した後、数日間にわたって痛みを和らげるコルチコステロイド剤を経口で投与することもあります。

感染を食い止める確率を上げるため、眼球内部の感染組織を取り除く手術を行うこともあります。

🇬🇶内頸動脈狭窄症

頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患

内頸動脈狭窄(ないけいどうみゃくきょうさく)症とは、心臓から脳に向かう左右2本の頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患。頸部内頸動脈狭窄症とも呼ばれます。

左右に1本ずつある太い頸動脈は、あごの下の高さで、大脳に血液を送る内頸動脈と、顔面や頭皮に血液を送る外頸動脈に分かれます。この分岐する部分では、狭窄が好発します。

この狭窄の原因としては、動脈硬化が最も多く、狭窄によって血液が流れる道が細くなって血液の流れが妨げられると、遠位部の脳への血流が不足するために症状が生じることがあります。主な症状は、左右どちらかの半身の運動障害や知覚障害、言語障害、顔面下半分のまひで、立ちくらみ、揺れるようなめまいなどを覚えることもあります。

また、狭窄部で血液の流れが乱れることによって血の塊である血栓が形成されると、血栓がはがれて遠位部の脳に飛び、細い血管に詰まって閉塞(へいそく)させたりして、症状が生じることがあります。症状は障害の部位や程度によりさまざまで、一過性視力障害、一過性脳虚血発作など一時的な症状を起こして回復する場合と、脳梗塞(こうそく)を起こす場合があります。脳梗塞を来すと、その部位に応じた運動まひ、知覚障害、言語障害、視機能障害、高次機能障害などを示し、重症の場合には寝たきりや植物状態、さらには生命の危険を生ずることがあります。

近年、食事摂取の欧米化で、日本人の血清コレステロール値は米国人と同じレベルに増加しています。この結果、比較的大きい血管の動脈硬化による疾患が増加しつつあり、その中でも内頸動脈は最も影響を受けやすく、動脈硬化が進行した場合、狭窄や場合によっては閉塞を来すこともあります。

内頸動脈狭窄症の急性期には、症状の進行や脳梗塞の再発が多いため、症状に気付いた場合にはすぐに神経内科、ないし脳神経外科を受診することが重要です。最近では、脳ドックや他の疾患の検査などの際に、症状が出る前に内頸動脈狭窄症が発見されることも多くなっています。

内頸動脈狭窄症の検査と診断と治療

神経内科、脳神経外科の医師による診断では、首に超音波を当てて診断する頸部血管ドップラー検査、CTやMRIによる血管の検査で容易に確定されます。近年では、狭くなった部位の診断やその程度のほか、動脈硬化の性質、血流の早さなどの質的診断も行え、よい治療方法が選択できるようになりました。

治療上必要な場合は、内頸動脈を直接レントゲンで撮影する血管撮影が行われます。また、血液が到達する脳の状態を調べるため、脳のMRIや核医学による脳血流検査なども行われます。さらに、心臓などほかの血管に、同じような疾患がないか調べることも重要です。

神経内科、脳神経外科の医師による治療では、禁煙、運動療法、食事療法などに加え、高血圧、高脂血症、糖尿病に対する薬による内科的治療が基本となります。これに加えて脳梗塞を予防するために、軽度から中等度の内頸動脈狭窄症では、血液の流れをよくする抗血小板療法の薬が追加されます。

内頸動脈の狭窄が強くなった場合には、その程度により手術、ないし血管内治療が追加されます。内頸動脈狭窄のみが発見されて、脳の症状がなく内頸動脈の狭さが60パーセント以上の場合は、脳神経外科医により手術で内頸動脈の病変を摘出することが脳梗塞を予防するためによいとされています。一方、脳の症状がある場合の手術の基準は70パーセントの狭さに上昇し、手術により脳梗塞が拡大することを防止します。この脳神経外科医による手術法は、長年に渡って世界中で行われ、多くの結果が蓄積された結果、現在の基準が確立されました。

血管内治療は新しい治療法で、太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを内頸動脈の狭窄した部位に誘導します。ここでカテーテルの先についたバルーンと呼ばれる風船を広げ、網目状に血管の中で拡張し、内頸動脈の内側を適切な太さに保つステントと呼ばれる形状記憶合金で作られた機器を留置してきます。この治療法は歴史が浅いため、病変を直接取り除く手術のリスクが高いと思われる場合や高齢者の場合などに行われています。

🇮🇳内耳炎

中耳炎の炎症が鼓膜より奥にある内耳に広がることで炎症が起こる疾患

内耳炎とは、主に中耳炎の炎症が鼓膜よりもさらに奥にある内耳に広がることで、炎症が起こる疾患。

耳は、外耳、中耳、内耳の3つの部分からできています。外耳は、体の外に出ている耳介と外耳道とを合わせた部分を指します。その奥の中耳には、鼓膜、耳小骨、中耳腔(くう)などがあり、音を伝える要所です。中耳のさらに奥にある内耳には、平衡機能をつかさどる三半規管と耳石、聴覚をつかさどる蝸牛(かぎゅう)などがあります。

内耳炎は、三半規管や蝸牛に炎症が生じ、機能が低下するために起こります。一般には、急性中耳炎や、慢性化膿(かのう)性中耳炎、真珠腫性中耳炎などの慢性中耳炎の炎症が、内耳へと波及することで起こります。

急性中耳炎によって炎症が内耳へと波及した場合には、難聴や耳鳴り、回転性のめまい、吐き気、嘔吐(おうと)といった激烈な症状が出ます。平衡感覚や回転感覚が強く障害され、もはや真っすぐに歩くことはできません。

好酸球性中耳炎などの慢性中耳炎によって炎症が徐々に内耳へと波及した場合には、耳鳴りや進行性難聴、軽度のめまい、ふらふら感といった症状を示します。さらに症状が進行すると、黄色もしくは白色の耳垂れが出るようになります。これは、細菌感染による膿(うみ)が原因です。

また、髄膜炎が内耳道を経由して広がって内耳炎が起こった場合は、重度の難聴を来します。

炎症が内耳に広がる経路としては正円窓や卵円窓、外側半規管、内耳道の4つがあり、そのほかの経路はまれです。真珠腫性中耳炎が原因の場合は、内耳の骨が破壊され中耳の炎症が内耳に波及することで起こります。

急性中耳炎では耳が痛くなります。それに引き続いてめまいや強い難聴が起こったら、急性内耳炎と見なされますので、耳鼻咽喉科の専門医を受診します。

また、慢性中耳炎がある場合には長期にわたって放置せず、内耳に影響が出ないうちに受診します。抗生物質の普及によって通常の中耳炎から内耳炎まで進行する例は激減しましたが、現在でも好酸球性中耳炎では内耳炎が起こることがよくあります。

内耳炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、難聴がある場合には聴力検査、めまいがある場合には平衡機能検査を行います。

平衡機能検査では、めまいが起こる頭の位置で、眼球が不随意に小刻みに揺れ動く自発眼振(がんしん)が認められることがよくあります。また、外耳道に冷たい水や温かいお湯を入れると、内耳の三半規管が刺激されて眼振、めまいが起きる温度眼振反応が低下していることもあります。外側半規管が壊れているために、耳の入り口を指で圧迫したり離したりすると、めまいが起きる瘻孔(ろうこう)症状があったりすることもあります。

耳のCT(コンピュータ断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査による画像診断も、有効です。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、細菌感染による炎症の場合には、抗生物質を用いて中耳炎と内耳炎を同時に治療します。内耳の機能低下に対しては、ビタミン剤やステロイド剤を用いて対処します。

真珠腫性中耳炎などの慢性中耳炎が基礎疾患である場合には、抗生物質を用いて炎症を抑えながら、内耳の骨が破壊されているケースでは、鼓室形成術という手術によって外科的に治療します。また、外側半規管などに内耳瘻孔という管状の欠損があるケースでは、破壊された骨を修復して瘻孔を閉鎖する処置を講じます。

髄膜炎による内耳炎の場合も、基本は抗生物質で治療します。この場合、早期に適切な治療が施されないと、難聴などの後遺症が残ることがあります。

2022/08/06

🇵🇰内痔核

肛門周囲の静脈が膨らんで、歯状線の内側の直腸にいぼ状のこぶできる痔核

内痔核とは、直腸と肛門(こうもん)を隔てる歯状線を境にして、内側の直腸にいぼ状のこぶできる痔核。歯状線を境にして、外側の肛門部にいぼ状のこぶできる痔核は、外痔核です。

内痔核は、肛門の内側、直腸の一番下にいぼ状のこぶがあるため、普通の状態では見ることも触ることもできません。外痔核は、外からいぼ状のこぶが見え、自分で触ることができます。

内痔核と外痔核とがある痔核の原因はさまざま考えられますが、直腸や肛門付近の静脈がうっ血したために、静脈が膨らんで、いぼ状のこぶができることが大きな原因です。

内痔核は、主に不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて腹圧が過度にかかることで、直腸の静脈がだんだんうっ血し、膨らんで発生します。立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかることも、内痔核の原因となります。

内痔核の初期状態では痛みなどがほとんどないので自覚症状がなく、知らない間に症状が進行していくという特徴があり、症状を大きく分けると4段階に分類されます。

第1段階では、排便時に出血し、トイレットペーパーに真っ赤な血が付着しているものの、痛みなどはほとんどありません。内痔核ができるのが直腸と肛門を隔てる歯状線の内側で、自律神経が支配していて痛みの神経がない場所に相当するため、痛みを感じにくいのです。

第2段階では、排便時の出血に加え、痛みを生じます。出血の量としては、トイレットペーパーに付着する程度のものから、ポタポタと出たり、ひどくなると、ほとばしるように出るものまでさまざまです。出血の回数も、初めは1カ月に1回など、たまに出るだけなのが、1週間に1回とか2回、ひどくなると排便のたびに毎日出るようになります。大きくなったいぼ状のこぶが肛門の外に飛び出す脱肛を伴う場合もありますが、脱肛した場合でも自然に戻ります。

第3段階では、排便時の脱肛が自然に戻らなくなり、自分の手で押し込まなければ戻らなくなります。また、排便時だけでなく、日常生活を送っている時に運動をしたり、力仕事をしたり、せきやくしゃみをして腹に力が入った場合にも、脱肛するようになります。

第4段階では、常に脱肛している状態となり、粘液によって下着が汚れたりします。この段階になると出血や痛みを伴わないことが多くなり、逆に肛門周辺がかぶれたり、かゆみを伴うことが多くなります。 この脱肛したまま、手で押し込んでも戻らなくなってしまった状態を、嵌頓(かんとん)痔核と呼ぶこともあります。また、内痔核だけでなく外痔核部分も合併するようになると、内外痔核と呼びます。

痔の場合、どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。

排便時の出血や痛み、脱肛といった気になる症状があれば、自己判断せずに、肛門科を受診するのがよいでしょう。

内痔核の検査と診断と治療

肛門科の医師による診断では、肛門を診察し、血栓性外痔核、直腸脱、肛門周囲膿瘍(のうよう)、肛門がんなど大腸肛門病の有無を検査し、内痔核との鑑別を行います。

肛門科の医師による治療では、内痔核の症状によって治療法が異なってきますが、基本的にはまず生活習慣を改善することが大切になってきます。初期段階では、これに加えて塗り薬、座薬、内服薬を用いれば、多くの場合は症状が改善されていきます。

しかし、いわゆる第3段階~第4段階以上の内痔核の場合は、脱肛が自然に戻らなくなったり、常に脱肛している状態にあるため、手術が必要になることもあります。

手術が必要になった場合には、硬化療法(注射療法)、レーザー療法、結さつ療法(輪ゴム結さつ法)、ジオン(消痔霊治療)、ICG併用半導体レーザー療法、半閉鎖法、PPH法などが行われ、内痔核の症状が改善することが期待できます。

内痔核に限らず、どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。内痔核は、悪化させない生活習慣が大切。引き起こす原因となるのは、便秘、下痢、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒、喫煙といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、内痔核を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。便秘を解消し、軟らかい便が出るように食物繊維を多く取り、辛い刺激物の摂取を控えるなど、食事を見直すことも大切。

便秘の逆といえる下痢も、よくありません。下痢便はすごい勢いで排便されるので、どうしても肛門部を刺激し負担をかける結果となります。

長時間の同一姿勢も、よくありません。肛門は体の下のほうに位置し、同一姿勢が長くなると、どうしても肛門部にうっ血を来し負担がかかってしまいます。 激しい力仕事、運動も原因となり得ます。妊娠、出産も肛門部へ負担をかけてしまうため、内痔核の原因となります。

嗜好品(しこうひん)ではアルコール、辛い物も、よくありません。アルコールは肛門部の血管を拡張させ、うっ血を来すもとになりますし、飲みすぎれば下痢となり、やはり肛門部へ負担がかかります。唐辛子(とうがらし)、わさび、こしょう、カレー粉などの辛い物も、排便の際に肛門部へ刺激を加え、負担をかけます。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。

特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫をします。入浴や座浴で、肛門周辺の血液の流れをよくするのも効果的。

休養と睡眠を十分に確保し、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

🇮🇳内側型野球肘

手首や腕の使い過ぎで、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる障害

内側(ないそく)型野球肘(ひじ)とは、投球動作による手首や腕の使い過ぎで慢性的な衝撃がかかることによって、利き腕の肘の内側に炎症や痛みが起こる関節障害。正式な医学的名称は上腕骨内側上顆(じょうか)炎で、一般にはリトルリーガー肘、リトルリーガーエルボー、ベースボール肘、ベースボールエルボーとも呼ばれます。

利き腕の上腕骨は肩から肘にかけての大きな骨で、その肘の部位には親指側と小指側に2つの突起部があり、手のひらを天井に向けた時に肘の親指側の突起部が外側上顆、肘の小指側の突起部が内側上顆です。外側上顆には手の甲を顔に向ける回外筋群や、指や手首を伸ばす伸筋群が付いており、内側上顆には手のひらを顔の方へ向ける回内筋群や、指や手首を手のひら側に曲げる屈筋群が付いています。

内側型野球肘は、手首を過剰な力で手のひら側に曲げる投球動作によって、上腕骨内側上顆に慢性的な衝撃が繰り返し加わり、回内筋群や屈筋群に微小断裂や損傷を来して起こると考えられています。

内側型野球肘は、一定の動作を繰り返し行うことで症状を発症するオーバーユース症候群として知られています。特に、成長期に当たる少年野球の投手がボールを投げすぎると生じやすいことが知られていますが、中年以降のテニス愛好家にフォアハンドストロークの繰り返しで生じやすいためにフォアハンドテニス肘、ゴルフの一部のスイングをやり過ぎると生じやすいためにゴルフ肘、重いスーツケースを持ち運び過ぎると生じやすいためにでスーツケース肘とも呼ばれ、スポーツや手の使いすぎが原因となって、誰にでも発症する可能性がある関節障害でもあります。

内側型野球肘を起こす要因としては、肩や手の筋肉が弱い、投球動作をやり過ぎる、投球フォームに無理がある、テニスでサーブを強打したりオーバーハンドサーブやトップスピンサーブをする、濡れて重くなったボールを打つ、ラケットが重すぎるかグリップが細すぎる、ラケットのガットの張りが強すぎるなどが挙げられます。

症状としては、野球では投球のリリースのたびに、テニスではフォアハンドストロークのたびに、ゴルフでは一部のスイングのたびに、肘の内側に疼痛(とうつう)が現れます。ズキズキする痛みがあるのに運動を続けると、筋肉を骨に結び付けている腱(けん)が上腕骨内側上顆からはがれてしまい、出血を起こすこともあります。

また、野球やテニス、ゴルフ以外の日常生活でも、物をつかんで持ち上げる、タオルを絞る、ドアのノブを回すなどの手首を使う動作のたびに、肘の内側から前腕の小指側にかけて疼痛が出現します。多くの場合、安静時の痛みはありません。

内側型野球肘の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、肘の内側に圧痛が認められます。また、抵抗を加えた状態で手首を甲側に曲げてもらうトムセンテスト、肘を伸ばした状態で椅子を持ち上げてもらうチェアーテストなどの疼痛を誘発する検査を行い、肘の内側から前腕にかけての痛みが誘発されたら、内側型野球肘、すなわち上腕骨内側上顆炎と確定診断します。X線(レントゲン)検査やMRI検査も、診断に有効です。

整形外科の医師による治療法は、大きく分けて4つあります。1つは、肘の近くの腕をバンド状のサポーター(エルボーバンド、テニスバンド)で押さえること。2つ目は、痛い所を冷やして行う冷マッサージ、超音波を当てるなどのリハビリテーションを行うこと。3つ目は、痛みや炎症を抑える飲み薬や湿布薬を使用する薬物治療を行うこと。4つ目は、炎症を抑えるステロイド剤と局所麻酔剤を混合して痛い部分への注射を行うこと。

同時に日常生活では、強く手を握る動作や、タオルを絞る、かばんを持ち上げるなどの動作をなるべく避けるようにします。物を持つ時には、肘を曲げて手のひらを上にして行うことを心掛けます。

このような治療で、大部分の人が3〜6カ月ほどで治ると考えられています。障害が治癒したら、患部の筋肉と、手首や肩の筋肉を強化します。手術が必要となることはまれで、多くの場合、安静や投薬といった保存的治療で治ります。治癒を早める目的で、筋肉から瘢痕(はんこん)化した組織を切除するニルシュル法が行われることもあります。

手指や前腕の筋肉は日常生活で非常によく使うため、安静がなかなか取れずに痛みが長引く場合もありますが、根気よく治療を続けることが大切です。治っていないのに野球やテニスなどの運動を続けると、内側側副靭帯(そくふくじんたい)の緩みや骨に付着する部分での断裂を起こし、靭帯を修復するための手術が必要になることもありますので、無茶は禁物です。

🇻🇺内側側副靭帯損傷

野球の投球動作の繰り返しによって、肘関節の内側を支える靱帯に生じる障害

内側側副靭帯(ないそくそくふくじんたい)損傷とは、野球の投球動作の繰り返しによって肘(ちゅう)関節の内側を支える靱帯に生じる障害。肘尺側側副靭帯損傷とも呼ばれます。

肘関節は、上腕骨と橈(とう)骨と尺骨という3骨の間に生じた複関節であり、その周りは靭帯や腱(けん)などによって支えられています。

野球の投球動作では、テークバックからの加速期には、腕が前方に振り出される際に肘を外側に広げ、さらにその後のボールリリース期からフォロースルー期には、手首を手のひら側に曲げ、前腕を内側にひねるため、手首を曲げる作用をする屈筋と、前腕をひねる作用をする回内筋が付着している上腕骨内側上顆(ないそくじょうか)という、肘関節の内側にある骨性の隆起に牽引(けんいん)力が働きます。

この投球動作の長年にわたる繰り返しにより、肘関節の内側にあって上腕骨と尺骨をつなぎ、肘関節の横ぶれを防ぐ役目をしている内側側副靱帯が損傷します。回内・屈筋群筋筋膜炎を起こしたり、上腕骨内側上顆炎を起こすこともあります。

野球の投球動作での内側側副靭帯損傷では、繰り返す牽引により内側側副靱帯が伸びた状態になっていることがほとんどです。これは、小さな断裂の繰り返しや靭帯組織の劣化によるもので、投球歴の長いピッチャーに多く発症します。

バランスのとれたフォームでの投球動作ならば、投球歴の長いピッチャーでも肘関節への負担は少なくなりますが、フォームのバランスが悪かったり、変化球を多投したりすると、内側側副靭帯損傷を発症する可能性が高くなります。

投球時の肘関節内側痛が、主な症状です。特に、テークバックからの加速期に痛みが起こります。通常、徐々に痛みが起こりますが、急に痛みが起こり投球が不能になることもあります。

日常動作では無症状のことがほとんどなものの、重症例では日常動作で肘がぐらつくような不安定性が生じたり、痛みが起こることもあります。

また、頻度は低いものの、不安定性により肘の内側の表面近くを走行する尺骨神経が損傷され、手の小指側(尺側)にしびれや感覚障害、握力が落ちるなどの運動動障害が生じることもあります。

野球によって内側側副靭帯損傷が生じるほか、転落などで手を突いて肘に外力が加わった時、スキーで転倒して肘に外力が加わった時、柔道などで肘の固め技を受けた時、アームレスリングで肘に強い外力が加わった時など、1回の外力で内側側副靱帯が損傷したり、完全に断裂することもあります。

外傷性の内側側副靭帯損傷では、受傷後すぐに肘が痛くなり、はれが生じ、痛みのため肘関節の運動が制限されます。

投球時に肘の内側が痛む場合は、内側側副靭帯損傷が疑われます。適切な治療を受けないと、競技生活を引退しても変形性肘関節症により肘の可動域が低下したり、尺骨神経遅発性まひを起こし、日常生活にも支障を来すことがありますので、早期に整形外科を受診することが勧められます。

内側側副靭帯損傷の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、投球時の痛みに加え、肘関節の内側にある骨性の隆起である上腕骨内側上顆の下端前方に圧痛があり、肘を外側に開くように力を加えると痛みが誘発される場合に、内側側副靭帯損傷を疑います。

X線(レントゲン)検査を行うと、靭帯付着部から剥離(はくり)した小さな骨片を認めることもありますが、正常な場合もあります。肘を外側に開くように力を加えて行うストレスX線(レントゲン)検査やMRI(磁気共鳴画像撮影)検査により、靭帯付着部に異常が認められることもあります。

整形外科の医師による治療では、投球禁止をした上、テーピングやギプスによる外固定を行って局所安静を図り、その後の筋力トレーニングで、手首を動かす屈筋と、前腕を内側にひねる回内筋の強化を行います。

ハイレベルの競技活動の継続を希望する野球選手などの場合や、不安定性により肘の内側を走行する尺骨神経に障害を来す場合、強い痛みと不安定性により日常生活に支障を来す場合には、膝(ひざ)や爪先(つまさき)の靱帯、腱、あるいは長掌(ちょうしょう)筋という前腕の筋肉にある腱を移植し、靱帯を再建する手術を行うことがあります。

スキーでの転倒、柔道などの固め技による外傷性の内側側副靭帯損傷の場合は、軽度から中等度の損傷であれば、テーピングやギプスによる外固定を2〜3週間行い、その後、徐々に筋力トレーニングを始めます。

🎐夏風邪

夏もウイルス感染症がはやりやすい季節

夏風邪とは、夏にかかる感冒性疾患の総称。特定の病名ではありません。

普通、ウイルス感染症や寝冷えに対する反応なども含まれます。ウイルス感染症は夏もはやりやすい季節で、200種類以上ある風邪の原因になるウイルスのうち、夏の暑さと湿気を好むウイルスが流行します。

夏風邪の代表的なものは、ヘルパンギーナ、手足口(てあしくち)病、プール熱。このうちヘルパンギーナとプール熱は高い熱が出ますが、手足口病は高熱になることがほとんどなく、代わりに手足に発疹(はっしん)ができます。このほかにも、名前は付いていませんが、熱が出るだけの夏風邪も多くみられます。冬の風邪と違い、せき、鼻水がなく、寒気もあまりありません。

いずれの夏風邪も、脳や脊髄(せきずい)などの中枢神経の中に入り込みやすい性質があり、髄膜炎を引き起こすことがありますので注意が必要です。

ヘルパンギーナは乳幼児を中心に流行

ヘルパンギーナとは、俗にいう夏風邪の一種。6〜7月をピークに、主に4~10月ころに多く、6カ月から4歳ぐらいの乳幼児を中心に流行します。

原因となるウイルスとして、コクサッキーウイルスA群、コクサッキーウイルスB群、エコーウイルスなど多数が知られていますので、何回でもかかってしまう感染症です。

経口、経気道感染でウイルスが侵入し、2〜4日間の潜伏期間を経て、突然、38~40度の高熱とともに発症します。この時に熱性けいれんを起こすこともあります。口腔(こうくう)の上壁に当たる軟口蓋(なんこうがい)、俗にいうのどちんこに当たる口蓋垂(すい)の周囲の粘膜に、周囲が赤くなった小水疱(すいほう)や直径1〜5ミリぐらいの小さい潰瘍(かいよう)ができ、咽頭(いんとう)は赤くなります。

食欲不振や咽頭痛のために嚥下(えんげ)困難があったり、まれに大きい子供では腹痛や頭痛を覚えることもあります。発熱期間は1〜4日で、全経過は約1週間以内にとどまります。

陰部に潰瘍ができたり、おたふく風邪のような耳下腺(じかせん)炎や、無菌性髄膜炎を起こすことがあります。高熱が続いたり、機嫌が極めて悪くなったり、何かいつもとかなり違うような時には、無菌性髄膜炎を合併していることもあるので注意が必要です。鼻炎や中耳<炎などの合併症を起こすことは、まれです。

症状に気付いたら、すぐに小児科の専門医を受診します。

小児科の医師による診断では、役に立つ特別の検査はなく、夏の流行期に口内所見が認められれば確定できます。

小児科の医師による治療では、原因となるウイルスに対する特効薬がないため、症状を抑える対症療法が中心になります。解熱剤や鎮静剤、抗けいれん剤などを投与します。

家庭では、安静、保温、消化のよい食べ物、特に飲み込みやすい食事を与えることが大切です。乳児では、脱水が起こらないように、十分な水分を補給するようにします。適しているのは、麦茶、イオン飲料、ヨーグルト、アイスクリームなど。熱があっても特に具合が悪そうでなければ、入浴して汗を流すことはかまいません。

この疾患の特別な予防法はありません。

手足口病は乳幼児の間で5月から9月に流行

手足口病は、腸管系ウイルスによって起こる感染症で、手のひらや足の裏に小さな水疱、口の中の粘膜に小さな発疹がたくさんできます。軽い病気ながら、感染力はかなり強く、夏を中心に5月から9月にかけて、乳幼児の間で流行します、

代表的な原因ウイルスはコクサッキーA16、あるいはエンテロ71という名前のウイルスですが、原因となるウイルスがそれ以外にも何種類もあるため、以前にかかったことがある乳幼児でも、またかかることがあります。

潜伏期は2~7日で、多くの乳幼児はほとんど前駆症状なしに発症します。発熱も約半数にみられますが、高熱になることはあまりなく、3日以内に解熱します。

手足の水疱は、痛くありません。ひざやおしりなどにも、多数の水疱が現れることもあります。おしりだけの場合もあり、おむつかぶれと間違えられることも。これらの水疱は、一週間ほどで消失します。

口の中はひどく痛くなることがあるので、酸っぱい物、辛い物など刺激性の食べ物は避け、乳児では脱水を起こさないように水分を与えましょう。口内痛が強くて、全く飲んだり食べたりできない時や、高熱が続いて、頭痛を訴えたり、嘔吐(おうと)を繰り返す時は、早めに小児科の医師の診察を受けましょう。無菌性髄膜炎を合併して起こすこともあります。

プール熱は幼児から学童に多く流行

プール熱とは、アデノウイルスによって起こる急性ウイルス感染症で、結膜充血、咽頭発赤(いんとうほっせき)、発熱が三大症状です。幼児から学童に多く見られ、夏期に学校のプールを介して流行することが多いために、この病名が付けられています。別名は咽頭結膜炎。

原因となるのは、夏風邪のウイルスの一種であるアデノウイルス3型、4型、7型の感染です。結膜の充血はほとんどが下まぶたに起こり、角膜に症状が現れることはほとんどありません。目には痛みやかゆみがあり、目やにが出て、まぶしくなったり、涙が止まらなくなることもあります。

この目の症状は、一般的に片方から始まり、多くの場合、もう一方にも広がります。

39度前後の発熱が、数日、続きます。のどの痛みも、飲食物が飲み込めないほどひどくなることがあります。幼児では、吐き気や下痢を伴うこともあります。時には、結膜充血、咽頭発赤、発熱の主症状が、全部そろわないことも。

小児科の医師による治療では、結膜炎に対しては抗生剤の目薬を使い、熱が高い時は、解熱剤を使います。ウイルス性の病気なので、プール熱の特効薬はありません。

家庭での看護では、口の中が痛くなることが多いので、簡単に飲めるスープ、ジュースに、口当たりのよいゼリーやプリンなどを用意すればよいでしょう。飲食物を全く受け入れられない時には、子供の脱水に気を付けましょう。

1週間くらいでよくなりますが、数週間、便の中にウイルスが出ています。プール熱が治っても、学校側からすぐにプールの許可が下りないのは、このためです。

集団感染の予防のためには、プールでの水泳後の手洗い、洗眼、うがい、シャワー浴びを必ず実行し、目やにから接触感染することがあるため、タオルの貸し借りはやめるなどの注意が必要です。

2022/08/05

🇻🇺夏型過敏性肺炎

高温多湿な夏季をピークに、家屋内に増殖するカビの一種を吸入して起こるアレルギー性の肺炎

夏型過敏性肺炎とは、梅雨時から秋口にかけて、家屋内に増殖するカビの一種の真菌が原因で起きるアレルギー性の肺炎。日本独特の肺炎で、過敏性肺炎の一種です。

一口に肺炎といっても、そのタイプはさまざまです。呼吸の際に吸い込んだ感染源の種類によっては、細菌性肺炎やウイルス性肺炎などの感染性の肺炎と、薬剤性肺炎やアレルギー性肺炎などの非感染性の肺炎に分類されます。

感染性の肺炎の場合、例えば風邪やインフルエンザにかかって気管支の粘膜に炎症が起きたため、ふだんなら、たんとともに出ていくような菌が残り、この菌によって起こされた炎症が肺の奥にある小さな袋状の肺胞まで達すると、細菌性肺炎を起こします。

片や、非感染性の肺炎は、例えばエアコンのカビや加湿器の水に繁殖した真菌など、アレルギーを起こす原因物質である抗原(アレルゲン)が肺胞に入って反応し、アレルギー性肺炎を起こします。

夏型過敏性肺炎は、アレルギー性肺炎の一種で、梅雨の後の高温多湿な夏季をピークにして、風通しや日当たりが悪く、湿気が多く、古い家屋内に増殖するトリコスポロンというカビの一種の真菌が抗原となって起こります。トリコスポロンを吸い込んだからといって、すべての人が肺炎になるわけではありませんが、アレルギーとして症状が出る場合は、少量のトリコスポロンに接しただけでも重篤な症状を呈する可能性があります。

急性のものと慢性のものとがあり、急性のものでは、3~10ミクロンと極めて小さく、飛散しやすいトリコスポロンの胞子を吸入してから、肺胞でアレルギー反応が起こり、8〜13時間で症状が現れます。

症状は軽いせきや、たん、頭痛程度のこともありますが、悪寒、全身倦怠(けんたい)感、体重減少、発熱、著しい呼吸困難、さらに血液中の酸素が減少し、皮膚や粘膜の色が青紫色になるチアノーゼなど重篤な症状になることもあります。

トリコスポロンは、家屋内の台所、洗面所、風呂場、便所、あるいは畳の下の腐った木の部分などを栄養源として繁殖するほか、エアコン内部にも繁殖しやすく、エアコン使用時に室内に広がるとせきなどの症状が出ることがあります。エアコンが原因の場合、使用期間に相当する5月から10月の間だけ症状が現れることもあります。

急性のものでは、旅行や里帰りなどで家を空け、原因となるトリコスポロンから離れることにより回復しますが、慢性になると、病変と症状は続き、進行することがあります。

夏型過敏性肺炎は、梅雨の後の高温多湿な夏季をピークに、6月から10月ころにわたって、秋田県、岩手県以南の地域にみられ、冬季はみられません。東北よりも西日本に多い傾向があり、高温多湿な地域環境がトリコスポロンの増殖を促すためと見なされます。

好発年齢は、30〜50歳代の女性。女性に多い理由は、家屋内の滞在時間が長く、トリコスポロンとの接触時間がほかの家族より長いためと見なされます。夏に発症して秋には症状が治まり、翌年の夏になるとまた発症するというように、数年間繰り返す傾向もあります。

同じ症状が夏季をピークに繰り返し起こっている場合には、夏型過敏性肺炎ではないかと疑うことが大切で、内科、呼吸器科を受診します。

夏型過敏性肺炎の検査と診断と治療

内科、呼吸器科の医師による診断では、胸部聴診で、髪の毛を指でつまんでこすり合わせた時の音に似た、チリチリとした捻髪(ねんぱつ)音が認められます。一般血液検査で、末梢(まっしょう)白血球数の上昇、CRP(C反応性タンパク)の上昇などの炎症反応が認められ、低酸素血症を示し、胸部X線像で両肺にすりガラス状や粒状の陰影が認められます。

ほかに、気管支鏡と呼ばれる細い肺カメラを使って、肺内の組織を採取する経気管支肺生検が行われることがあります。この検査は他の疾患を否定する意味もあります。夏型過敏性肺炎の特徴的な病理組織像は、器質化肺炎、リンパ球性胞隔炎、肉芽腫(にくげしゅ)などです。

気管支鏡を使って、肺内に生理食塩水を注入して肺を洗った後、回収した液を検査する気管支肺胞洗浄(BAL、バル)が行われることもあります。回収した液の中には、リンパ球が多くみられ、リンパ球のCD4とCD8の比率が低下する特徴があります。

また、血清中に原因となる抗原に対する抗体の存在を検索することも重要です。しかし、疾患を起こしていない健常者でも陽性になることがあるので、この検査だけでは確定診断とはなりません。

家の中に存在するカビの一種の真菌であるトリコスポロンが原因であれば、帰宅すると抗原を吸入することになるので、診断できることもあります。

内科、呼吸器科の医師による治療では、原因となっているトリコスポロンの吸入を避けるようにすることが重要です。

薬物療法については、軽度の症状で日常生活に影響しない場合、無治療で経過をみることがあります。中等症、重症では、発熱、呼吸困難、低酸素血症などがあるため、炎症を抑える作用のある副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を服用するか、静脈注射します。そのほか、息苦しさには酸素吸入など対症療法を行います。

急性の場合では、入院することなどにより原因抗原のトリコスポロンから離れると回復することがほとんどです。しかし、慢性の場合では進行することがあり、肺に線維組織が増えて硬くなる肺線維症や、呼吸不全になりますから、予防が大切です。

家などの環境が原因の夏型過敏性肺炎の予防では、家の中の掃除や消毒、台所・洗面所・風呂場の腐った木の部分の除去、畳替え、こまめな換気で風通しをよくする、年に1度のエアコンクリーニング、2週間ごとのフィルター洗浄などの工夫が重要です。場合によっては、住居の建て替えや、古い個所の改修、転居なども考えるべきでしょう。

🇻🇺ナットクラッカー症候群

左側の腎臓の静脈が動脈に圧迫されることが原因となって、目で見て赤い尿が出る疾患

ナットクラッカー症候群とは、左側の腎臓(じんぞう)からの出血のために、目で見て明らかに赤い尿が出る疾患。ナッツクラッカー症候群、くるみ割り症候群、腎臓くるみ割り症候群、左腎静脈捕捉(ほそく)症候群、左翼腎静脈わな症候群などとも呼ばれます。

まれな疾患で、その多くは小児から思春期前後に発症します。成人では、やせた人によくみられるともいわれています。

右側の腎臓の静脈は下大静脈にすぐに合流しますが、左側の腎臓の静脈は下大静脈に合流する途中で、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間を通り、ナットクラッカー(くるみ割り)の器具に挟まったような状態になっています。この静脈が2つの動脈に挟まった部位で、動脈圧が高く静脈圧が低いために静脈が押しつぶされると、静脈内圧が上がって静脈の血液の流れが悪くなるために、左側の腎臓の毛細血管がうっ血や出血を来し、排尿時に赤い尿が出ます。

身体的には無症状で、目で見て赤い肉眼的血尿のみが認められる場合が多く、一定の時を置いて起こる間欠的な血尿が認められます。血尿は、ピンク色から鮮紅色で、コーラのように色の濃いこともあります。

尿の中に混ざる赤血球の程度によって、多ければ目で見て明らかに赤い肉眼的血尿となり、少なければ見た目は正常な尿の色でも赤血球が混ざっているいわゆる尿潜血、または顕微鏡的血尿の状態になります。ナットクラッカー症候群でも、検診などによって尿潜血を認めることによって発見されるケースが多くみられます。

症状が重いケースでは、血尿のほかに、片腹部痛、腰痛、貧血、精巣静脈瘤(りゅう)、卵巣静脈瘤、起立性蛋白(たんぱく)尿がみられることもあります。精巣静脈瘤、卵巣静脈瘤があると、不妊の原因になることもあります。

こうした一部のケースを除き、ナットクラッカー症候群の予後は良好で、多くは時間の経過とともに、他の静脈への側副血行路といわれる血液の別ルートが発達しますので、自然に治ることがほとんどです。

ナットクラッカー症候群の検査と診断と治療

泌尿器科、腎臓内科の医師による診断では、出血の部位が左側の腎臓であることを膀胱(ぼうこう)鏡で確認後、造影剤を静脈注射して撮影する造影CT(コンピューター断層撮影)検査、腹部超音波(エコー)検査などを行います。

腹部超音波検査の際には、左側の腎臓静脈、卵巣静脈、副腎をよく観察し、それぞれの拡張や、腎臓静脈の周囲の循環系による圧迫、狭窄(きょうさく)がないかどうかに注意します。超音波検査法の一種である超音波ドップラー法という検査を行い、腎臓静脈を観察し、狭窄部位から下大静脈への血流速度の計測をすることもあります。

泌尿器科、腎臓内科の医師による治療は、基本的には不要で、側副血行路が発達し自然に治ることが多いものの、薬物療法として、抗プラスミン薬などの止血薬を使用して、血尿を止めます。

貧血が進行するほどの肉眼的血尿が持続する場合には、尿管カテーテルを用いて、1~3パーセントの硝酸銀を腎盂(じんう)内へ注入して、出血している静脈を凝固させる治療を行うこともあります。

それでもうまく出血のコントロールができない場合には、左側の腎臓静脈の狭窄部位に、血管の中で拡張して適切な太さに保つステントと呼ばれる機器を挿入する手術を行うこともあります。あるいは、左側の腎臓静脈が下大静脈に合流する部位を切り離し、上腸間膜動脈と腹部大動脈の間の距離が広い下側につなぎ直す、左腎静脈転位術という手術を行うこともあります。

🇵🇬夏ばて

夏ばてとは、体が暑さや湿気に対応しきれなくなり、だるい、疲れやすい、食欲減退、睡眠不足、胃腸障害など、さまざまな不調が現れることです。

🛏ナルコレプシー

突然に起きる強い睡眠発作を中核症状とする神経疾患

ナルコレプシーとは、突然に眠り込んでしまう激しい睡眠発作を中核症状とする神経疾患。過眠症、居眠り病とも呼ばれます。

夜の睡眠は十分に取れていても、昼間、急に睡魔が襲ってきて自分では抑制できず、眠ってしまいます。会話中、車の運転中、食事中、はたまたセックスの最中など、通常では考えられない状況で、突然、すーっと眠り込んでしまうといった具合です。

睡眠発作は1日に何度も起こることもあれば、ほんの数回しか起こらないこともあります。1回の発作で眠っている時間は、普通30分以下。意図的に短い仮眠を取った時には、すっきりと目覚めます。この睡眠発作は、ノンレム睡眠を経過せずに、いきなりレム催眠に入るのが特徴です。

ナルコプレシーのもう1つの特徴は、脱力発作(情動脱力発作、カタプレキシー)です。笑ったり、喜んだり、怒ったり、驚いたり、自尊心がくすぐられたりなどの突発的な感情が誘因となって、全身の脱力発作が起こって力が抜け、物を落としてしまったり、ろれつが回らなくなったり、数秒~数分間、筋肉がまひしてその場に崩れ込んでしまったりします。

意識ははっきりしているし、見たり聞いたりもできますが、ただ動けないだけです。この脱力発作は、レム睡眠に入ると筋肉の緊張が完全に消えることと似ています。

ほかに、睡眠まひ、入眠時幻覚を伴います。睡眠まひでは、寝入ったばかりや目が覚めた直後に、体を動かそうとして動かせない状態になります。いわゆる金縛りと呼ばれる状態で、開眼し意識はあるものの随意筋を動かすことができません。本人は非常な恐怖に駆られますが、他の人に体に触れてもらうと治ります。周りに人がいなくても、まひは数分後には自然に治まります。

入眠時幻覚では、睡眠発作により眠り込んだ際や、夜間に寝入った直後、まれに目覚めた際に、現実感の強い幻覚、幻聴を経験します。これらの幻覚、幻聴は正常な夢に似ていますが、もっと強烈で鮮明です。

夜間は、頻回の中途覚醒(かくせい)や、睡眠まひ、幻覚を体験するなどのため、睡眠も妨げられます。

日本人のナルコレプシーの有病率は、1万人当たり16人~18人といわれています。すべての人種において発病がみられる中で、日本人の有病率は世界で最も高く、欧米では1万人に2~4人といわれています。

家族内に起こる傾向がありますが、原因は不明です。ナルコプレシーのほとんどは通常、思春期から青年期にかけて発症するため、脳の性的成熟と関係があるとも考えられています。また、オレキシンという視床下部から分泌される神経伝達物質の欠乏と関係があるとも考えられています。

症状は一生涯続きますが、症状のすべてが現れる人は全体の約10パーセントにすぎず、大部分の人は2、3の症状が出るだけです。

ナルコレプシーの検査と診断と治療

昼間に強い眠気を感じる時は、内科や睡眠外来、神経内科を受診します。

診断は症状に基づいて行われますが、別の疾患が原因で同じ症状が起こることもあります。睡眠まひと幻覚は、特に問題がない健康な成人にも起こり得ます。診断が確定しない時は、脳波検査を行って脳の電気活動の記録を取ります。ナルコレプシーがあると、寝入りばなにレム睡眠の活動が起きていることを示す典型的な波形が現れます。正常であれば、レム睡眠は睡眠サイクルの後のほうで起こります。画像診断で見付かるような異常によっては、ナルコレプシーは起こりません。

根治的治療方法はありませんが、対症的療法でかなりよくなります。中枢神経刺激剤を使用することで眠気を抑制することができ、メチルフェニデート、モダフィニル、ペモリンアンフェタミン、デキストロアンフェタミンなどが使用されます。中で、モダフィニルは他より副作用の少ない薬剤です。脱力発作や睡眠まひの症状を軽くするためには、イミプラミン、クロミプラミンなどの三環系抗うつ剤、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)、SNRI(選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)が使用されます。

イライラ、異常行動、体重減少などの副作用が起こらないように薬剤の量の調整が必要なため、薬物療法を行っている人の体調は慎重に監視されます。

抗うつ剤によって夜の眠りを安定させ、中枢神経刺激剤を朝と昼に服用することにより、日中の睡眠発作をほとんどなくすことができます。しかし、根気よく治療を続けることが必要で、長い年月がたつと症状がかなり軽くなり、多くのケースでは薬剤の量を減らすことができるようになります。

治療では、薬剤によって症状を軽減するとともに、生活習慣の改善も図ります。大事なのは規則正しく生活をし、夜にしっかり睡眠を取ることで、睡眠表をきちんとつけることにより、自分の睡眠生活が理解できるようになります。日中に15〜20分程度の短い昼寝をこまめに取ると、睡眠発作の予防効果があります。

2022/08/03

🇧🇾軟骨性外骨腫

関節近くの骨がこぶのように突出する良性の骨腫瘍

軟骨性外骨腫(がいこつしゅ)とは、関節の近くの骨の表面がこぶのように、外側へ突出する良性の骨腫瘍(しゅよう)。骨軟骨腫とも呼ばれます。

突出した骨は軟骨組織で覆われ、ちょうど帽子をかぶったように見えることから軟骨帽と呼ばれています。この軟骨帽が内側に向かって骨を作ることにより、大きくなります。

骨自体から発生する原発性骨腫瘍の中では最も発生頻度の高いもので、基本的に良性とはいえ、約1割で悪性化して軟骨肉腫(がん)になることがあります。単発性の軟骨性外骨腫と多発性の軟骨性外骨腫とに分けられ、単発性が約70パーセント、多発性が約30パーセントの割合で発生します。多発性は、遺伝性、家族性として起こることがあります。

成長期における正常な骨は、骨の両端近くにある骨端成長軟骨板という軟骨組織が骨を作ることによって成長し、骨端成長軟骨板の消失によって成長が停止します。この成長をつかさどる軟骨組織と同じ軟骨帽が誤った方向へ骨を作るために、軟骨性外骨腫が発生すると考えられています。通常、骨の成長が止まるとともに、軟骨性外骨腫の増殖も停止します。

年齢別では10歳代に最も多くみられ、性別では男性のほうにやや多くみられます。

軟骨性外骨腫を持っている多くの人は、こぶが小さくて気付かずに生活しています。外傷などほかの原因でX線検査を行い、偶然に発見されることがよくあります。大きくなると、無痛性の硬いこぶとして触れるようになって気付きます。

こぶの増大に伴い、周囲の筋肉や腱(けん)などを圧迫すると、運動障害を起こすようになります。血管や神経を圧迫すると、血行障害や神経の刺激症状として痛みを引き起こします。前腕や下腿(かたい)など2つの骨が隣接する部位では、こぶが隣の骨を圧迫して成長を妨げ、周囲の関節の変形を引き起こして関節炎などの痛みを誘発することもあります。

単発性の軟骨性外骨腫が好発する部位は、膝(しつ)関節を形成する脛(けい)骨近位端で、大腿(だいたい)骨、上腕骨、手指の指骨、肩甲骨などにも生じます。多発性の軟骨性外骨腫では、四肢の変形、短縮などを生じることがあります。

整形外科の医師による診断では、X線写真で骨性のこぶが確認されます。こぶの頂上に当たる軟骨帽の形状には、球状、きのこ状、台地状、珊瑚(さんご)状などさまざまななものがあります。軟骨帽の内側では、軟骨内骨化、骨形成、骨髄形成が認められます。

治療では、こぶによって運動障害や血行障害、痛みや神経まひの症状を起こした場合や、悪性化して軟骨肉腫が疑われる場合に、摘出手術を行います。

🇪🇪軟骨石灰化症(偽痛風)

高齢者に多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患

軟骨石灰化症とは、多発性の関節痛を起こし、痛風とよく似た疾患。偽(ぎ)痛風とも呼ばれます。

高齢者では、特に風邪などの切っ掛けもなく、急にあちこちの関節が痛み出すことを比較的よく経験します。血液検査でも関節リウマチや痛風の反応は異常がなく、医師が診断に苦しむことがあります。このような疾患の中に、軟骨石灰化症があります。

この軟骨石灰化症は、関節液中にピロリン酸カルシウム(CPPD)結晶という結晶が沈殿することによって起こります。よく似た痛風は、血中の尿酸が増加して高尿酸血症となり、関節液内に尿酸ナトリウム結晶が生じることによって起こります。

ピロリン酸カルシウムの結晶ができる原因としては、軟骨変性が重要です。軟骨内の結晶は関節破壊により関節腔(くう)内へ脱落し、関節腔内では白血球、単球などがこの結晶をきれいに掃除しようとします。その時に、細胞からはさまざまな化学物質が放出されて、炎症はいよいよ強くなります。痛風発作でも同様に、白血球などが尿酸の結晶を掃除しようとして炎症が起こります。

軟骨石灰化症の発症年齢は、痛風に比べて60~80歳の高齢者での発症が多いと見なされています。痛みの起こりやすい部位は膝(ひざ)の関節が最も多く、次いで手、足、股(また)、肘(ひじ)、肩の関節など比較的大きな関節で、男女差はありません。痛風が男性に圧倒的に多くみられ、痛みの部位も足首や足の親指の付け根に起こりやすいのと対照的。

軟骨石灰化症の発作は数日、ないしそれ以上持続し、1カ所から数箇所の関節炎が特徴です。痛風発作のように突然出現して自然に軽快しますが、痛風より痛みは軽度。急性発作時には、関節腫脹(しゅちょう)、局所発熱、痛みがあり、関節の動きが悪くなります。腕や足の関節に慢性の痛みやこわばりが長引くこともあり、関節リウマチと混同されることもあります。

軟骨石灰化症の検査と診断と治療

医師による診断では、膝関節痛などに多発性関節炎の所見がみられ、X線検査で軟骨石灰化症の存在が認められ、関節腔内に針を刺し関節液を吸引してピロリン酸カルシウム結晶を調べることにより、総合的に判断されます。軟骨石灰化症(偽痛風)では、血液中の尿酸値は基準範囲内ですが、痛風でも発作時の尿酸値は正常のことが多くあります。

軟骨石灰化症のほかにも、多発性関節炎は慢性関節リウマチ、リウマチ性筋痛症、膠原(こうげん)病、乾癬(かんせん)性関節炎、サルコイド関節炎、悪性腫瘍(しゅよう)に伴う関節炎、再発性多発軟骨炎、感染症に伴う関節炎、変形性関節症などいろいろな疾患で起こり、診断が困難なことも多くあります。長期間の経過観察により診断が明らかになる場合が多いのですが、それでも診断ができないケースもあります。

治療法はほとんどが対症療法で、完治につながるような決定的な治療法はありません。炎症をコントロールすることで痛みを抑えるために、ステロイド剤や非ステロイド系抗炎症剤などが用いられます。治療により急性発作を止めて、次の発作を予防することが可能ですが、関節へのダメージを防ぐことはできません。

ステロイド剤などで痛みが抑えられない場合は、内視鏡で関節内を洗浄する手術も考慮されます。

発作のない時には、通常の変形性関節症のような病像をとりますが、多くの発症者では膝の変形と慢性的な運動痛、動作の開始時の痛みで特徴とされる変形性関節症に移行します。

日常での注意点としては、関節への負担をかけないように、体重を増やさないことが基本で、 適度な運動をして筋肉をつけることも大切です。太ももの筋肉を鍛えるなら、膝を伸ばしたまま足を上げたり、片足立ちしたりするなど、家の中でも簡単にできます。

🇱🇹軟骨肉腫

比較的ゆっくり大きくなる骨のがん

軟骨肉腫(にくしゅ)とは、軟骨を作る細胞から生じる悪性腫瘍(しゅよう)、すなわち、がん。骨肉腫についで多い骨のがんに相当します。

 骨肉腫やユーイング肉腫に比べると、かかりやすい年齢は高く、30歳以降の中高年に発症します。原因は不明です。

悪性度の高いものから低いものまであり、低いものでは骨の良性腫瘍である軟骨腫との区別が付かないこともあります。大きくなる速度は比較的ゆっくりで、腫瘍の性格はおとなしいものです。

最初から悪性腫瘍として軟骨肉腫が発生するほか、以前からあった軟骨腫や骨軟骨腫などが、悪性に変化して、軟骨肉腫となることもあります。好発部位は、大腿(だいたい)骨、脛(けい)骨のほか、上腕骨、骨盤、肋骨(ろっこつ)、肩甲骨。

腫瘍が小さい時には痛みを伴わず、比較的ゆっくりとした速度で大きくなるために、痛みを覚えるようになると次第に痛みが増して、鎮痛剤が必要になってきます。以前からあった腫瘤(しゅりゅう)が急速に大きくなり、痛みを伴うようになることもあります。このような時は、良性の骨軟骨腫が悪性に変化した可能性があります。

また、軟骨肉腫では、腫瘍のために骨の強度が弱まり、小さな力で骨折する病的骨折を起こして、急に激痛を感じることもあります。腫瘍が非常に大きくなると、関節の動きが障害されます。

このような症状が現れた際には、がんなどの専門医を直ちに訪れる必要があります。

医師による軟骨肉腫の診断は、単純X線像、骨シンチグラフィー(アイソトープによる画像で腫瘍を見付ける検査)、CT、MRIなどの画像検査と、最終的には、腫瘍の小片を採取して顕微鏡で組織を調べる生検によって診断します。

軟骨肉腫の治療は、手術が主要な治療法となります。普通の軟骨肉腫は比較的悪性の程度が低く、肺などの遠い臓器に遠隔転移することはまれですが、腫瘍が非常に大きくなると、遠隔転移が起こることがあるため、化学療法、放射線療法などは効果が期待できません。

軟骨肉腫の手術には、腫瘍の部分を完全に切除して、人工関節などに置き換える方法、腫瘍のできた骨を腫瘍ごといったん取り出した後に、オートクレーブ(高圧蒸気滅菌器)で処理をして元に戻す方法、自分の骨を移植する方法などがあります。このようなさまざな方法による再建術を用いて、腕や脚を失わないですむような患肢温存手術が行われます。

腫瘍が巨大で、部分的な切除が不可能な場合には、やむを得ず手足の即断術、腕や脚の関節からの離断術が行われます。

悪性度の高い未分化型、特殊型の軟骨肉腫では、手術だけでは転移を防ぎきれない可能性があるので、補助的に、抗がん剤などによる化学治療が行われます。

手術による5年生存率は、60パーセントを超えています。また、軟骨肉腫の治療を開始した時に遠隔転移がない場合には、5年生存率は70パーセント以上となっています。

🇱🇻軟骨無形成症

遺伝子の突然変異で軟骨の形成が不十分になり、低身長を生じる先天性疾患

軟骨無形成症とは、遺伝子の突然変異によって起こる先天性の骨の疾患。難病に認定されています。

手足が短いために背が大きくならない四肢短縮型小人症の一つに数えられ、その中で最も頻度が高く、発症者は1万人から2万5000人に1人といわれています。

代表的症状としては、軟骨の形成が不十分なために、外見的に低身長であることが挙げられます。手や足の長い管状の骨である長管骨において、その成長軟骨の発達が悪いために、成人男子の平均身長が130cm、女性で124cmにしかなりません。

外見的には、頭囲が大きく鼻の部分が低いという共通の特徴があります。また、背骨の湾曲が大きく、尻(しり)の部分が出るというような姿勢になります。指も短く、手の指を伸展すると中指と薬指、または中指と人差し指との間に透き間ができる三尖手(さんせんしゅ)も生じます。

そのほか、腰痛や関節痛などの障害、睡眠時無呼吸や中耳炎などを含む呼吸器関連の合併症、水頭症を始めとする脳神経に関する合併症、腰椎の狭窄(きょうさく)による歩行困難や排泄(はいせつ)障害なども起こります。

新生児、乳幼児においては、筋力が弱い場合が多いために健常者に比べて約半年から1年、首の座りや歩行などの遅れが生じています。小さいうちは関節が軟らかく筋力が弱いため、全体的にグニャグニャした感じでしっかり座ることができません。

この軟骨無形成症によって、直接に知能的な問題が生じるということはありません。ただし、合併症の中耳炎により耳の聞こえが悪くなって、言語能力が遅れる場合があります。鼻の周辺やあごの部分が狭いために睡眠時無呼吸症になりやすく、注意力が散漫になったり、知的な遅れが生じる場合もあります。

青年期以降には、ほとんどに関節痛や腰痛が生じ、時には腰椎の手術が必要となることがあります。あごの骨の発達が悪く、歯並びに影響する場合もあります。

原因は長い間不明とされていましたが、近年、第4染色体に存在する線維芽細胞増殖因子受容体3(FGFR3)という軟骨を形成する遺伝子の異常であることがわかりました。FGFR3は成長軟骨細胞の細胞膜にあり、主に骨が縦に伸びようとする作用を抑制することから、四肢短縮のアンバランスな体形になります。

遺伝様式は常染色体優性遺伝で、この軟骨無形成症を持つ人とそれ以外の人との間では2分の1の確率で、この軟骨無形成症を持つ人同士の場合は4分の3の確率で、子供に遺伝すると見なされています。しかし、約80パーセント以上は健常な両親から生まれており、FGFR3の突然変異が原因となっています。

医師による軟骨無形成症の診断は、多くの場合、特徴的な身体所見やレントゲン検査で確定できます。胎児の段階で見付かることも、まれではありません。胎児が確定診断をするのに小さすぎたり、非典型的な場合には、FGFR3遺伝子を調べることで確認できます。

疾患の原因は明らかになってきましたが、原因となるFGFR3遺伝子を対象とした根本的な治療は、まだ行われる段階には至っておりません。現在行われている治療は、それぞれの年齢段階に応じた問題に対処するための、対症的なものが主流となっています。治療の方法としては、骨延長術や成長ホルモン治療などの方法があります。

骨延長術は、手術で骨切りをして骨折状態を作った上で創外固定器で連結し、骨を作ろうとする自然治癒力を利用して骨を伸ばしていく方法です。成長ホルモン治療は、成長ホルモンを毎日、数年間、自宅で注射する方法です。

一方、重篤な合併症が生じていない場合には、この疾患を受容し、生活の質の向上(QOL)を考えていこうという立場の医師もいます。

🇫🇮軟性下疳

軟性下疳(げかん)は、軟性下疳菌という細菌が起こす性感染症で、生殖器に痛みのある潰瘍(かいよう)ができます。

世界中でよくみられますが、日本では第二次世界大戦の後、非常に少なくなり、今日ではほとんどみられない疾患となりました。

2~7日の潜伏期間の後、性器や肛門(こうもん)付近の皮膚に、紅色で米粒大のはれたおできができ、中に膿(うみ)がたまって破れると、痛みのある潰瘍になります。単発または多発で、容易に出血します。潰瘍が広がって合体することもあります。

少し遅れて、太ももの付け根の鼠径(そけい)リンパ節がはれて大きくなり、皮膚も赤くはれ上がります。痛みが強いので、有痛性横痃(おうげん、よこね)といいます。

軟性下疳には、数種類の抗生物質が有効です。潰瘍には、抗生物質の入った軟こうを用います。

🇸🇪軟性線維腫

摩擦を受ける皮膚に生じる小型の良性腫瘍

軟性線維腫(なんせいせんいしゅ)とは、皮膚に生じる直径1センチ程度の小型の良性腫瘍(しゅよう)。線維性軟疣(なんゆう)とも呼ばれます。

皮膚と同じ肌色、あるいは少し濃い褐色をした、半球状から有茎性の軟らかいはれ物で、あまり目立たないこともあります。わきの下やまぶた、首、胸、鼠径(そけい)部、しり、外陰部などにできやすく、痛みやかゆみは伴いません。かゆみがある場合も軽度です。

この軟性線維腫がさらに巨大になり、皮膚面から垂れ下がるようになったものは懸垂性線維腫です。

わきの下や首、鼠径部など皮膚と皮膚、あるいは衣類やアクセサリーと皮膚がこすれて摩擦を受ける個所で、皮膚の角質が増殖して少し飛び出すために、線維や脂肪や血管で構成された軟性線維腫や懸垂性線維腫ができます。

感染性はなく、皮膚の老化や体質でできるもので、中年以降に多く発生し加齢とともに増えてきますが、早ければ思春期のころから認められます。特に更年期をすぎた女性や、肥満者に好発します。

がん化するなど特に心配な疾患ではありませんが、衣類やアクセサリーでこすれて炎症を起こすことがあります。

目立って外見が悪い、衣類の脱着時に引っ掛かって赤みを帯びヒリヒリとした痛みが生じるという場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師を受診することが勧められます。ただし、まぶたにできた場合は、眼科を受診したほうがいいでしょう。

軟性線維腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、特に検査は行わず、視診を中心に確定します。

ごくまれに、皮膚がんが軟性線維腫のように見えたり、ホルモン障害の予兆として軟性線維腫が生じることもあり、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは形成外科、美容外科の医師による診断では、塗り薬や食生活の改善で完治させるのは難しいため、一般的には、取り除くための処置を行います。

取り除くための方法はいくつかあり、麻酔シートを張ってから電気メスで焼灼(しょうしゃく)する、-200℃近い超低温の液体窒素で冷凍凝固して小さくした後に電気メスで焼灼する、ハサミやメスなどの道具を使って切除するといった方法が一般的です。軟性線維腫の数が多い場合は、液体窒素療法を何度か繰り返します。

処置に要する時間は場合によりますが、短時間ですむことがほとんどです。処置した場合、1~2週間後に、かさぶたになります。かさぶたはかなり色が濃く、治療後はかなり目立つこともありますが、自然に脱落し、半年くらいすると赤みもひいて、きれいになります。

なお、完ぺきに取り除いたとしても、再発したり別の個所に生じることもあり得ます。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...