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2022/08/28

🇸🇪息切れ

●苦しい時は適切な対応を

 息切れが気になっても、年齢や風邪のせいにしていませんか。適切な対応をしないと、生死にかかわるケースもあるので、注意したいところです。

●肺は壊れると元に戻らない

人体の臓器の中で唯一、直接外気に触れているのが、呼吸器である「肺」です。容量も臓器の中で最大で、左右一対ある肺には一日、約1万リットルの空気が出入りしています。

肺に空気が運ばれていく通路が「気管」で、気管は胸のほぼ中央で左右に分かれて「気管支」となります。気管支は「肺門」から肺に入り、肺の奥に進むにつれて枝分かれして細くなっていき、末端は「肺胞」と呼ばれる小さな袋の集まりとなっています。

 肺胞の数は大人で3億~7億個、総面積はおよそテニスコート1枚分。肺胞の壁は毛細血管と接しており、空気中の酸素と血液中の炭酸ガスの交換が絶え間なく行われています。

酸素と炭酸ガスの交換を一般に「呼吸」と呼びますが、呼吸は脳の呼吸中枢によってコントロールされていて、肺だけではなく鼻、のど、胸郭、横隔膜などが複雑に動き、血液の循環とも密接な関係にあります。

こうした一連の動きがうまくいかない時、私たちに息切れが起こります。そのため、息切れにはさまざまな原因が考えられるのです。

急性の息切れでは、緊急に対応しないと命にかかわることもありますので、すぐに病院へ行く必要があります。慢性の息切れのケースも、放置は厳禁です。

肺は一度、壊れたら元に戻らないことが、怖いのです。肺の機能が衰えると、苦しいために体を動かさなくなり、やがては全身の筋肉が弱まってしまい、寝たきりになる危険性があります。

●息切れの原因のチェック

◎慢性の息切れ

◎COPD(慢性閉塞性肺疾患)

中高年にみられる呼吸器の病気の代表格。たばこや大気汚染によって、肺胞が壊されたり、細い気管支の壁が厚くなって管が細くなったりした結果、肺の中の空気が出しにくくなるもので、肺気腫、慢性気管支炎が含まれます。

徐々に進行し、症状が息切れ、せき、たんであるため、慢性的な風邪と勘違いしているケースもあります。喫煙者の15~20パーセントに起こる、と見なされているところ。

◎気管支ぜんそく

全年齢層にみられる病気。気管支が慢性的な炎症で狭くなり、空気が通過しにくくなります。せき、たんが出るのはCOPDと同様ですが、夜中や夜明けに症状が出るケースが目立ちます。

原因はアレルギー、と見なされているところ。

◎その他

高度の貧血によって、全身の臓器に酸素がいきわたらないと、息切れになります。

肺が徐々に硬く縮み、空気を吸い込むことができずに息切れするのは、間質性肺炎や肺線維症です。

また、肺結核、肺がんや気管支拡張症、神経や筋肉の疾患、甲状腺疾患、緑内障の点眼薬(βブロッカー)の副作用などでも、息切れが起こります。

◎加齢によるもの

肺機能は男女とも25歳がピークで、加齢とともにゆるやかに低下していきます。健康であっても、誰にでも起こること。日常生活に支障がなければ、問題はありません。

 ただし、体力が落ちていて日頃から元気のない高齢者の場合、肺炎を起こしても息苦しさや、高熱などの症状が現れにくいことに、注意が必要です。「おかしい」と思ったら、手遅れにならないように、早めに医療機関へ。

◎危険な急性の息切れ

◎自然気胸

若い元気な人に多く、突然起こります。肺に穴が開き、肺から出た空気によって、肺が圧迫されて縮んでしまいます。急激な息切れ、胸痛を伴います。

◎うっ血性心不全

 心筋梗塞などによって、心臓のポンプ機能が低下し、体に十分な血液が送り出せない状態になると、肺に水分がたまり、呼吸が速くなります。「寝ると息苦しい」、「水っぽい、たんが出る」などの症状があります。

◎エコノミー症候群

前触れもなく、急に息苦しくなります。飛行機の座席などで、水分不足のまま何時間もじっとしていると、脚の静脈に血栓ができます。その血栓が肺動脈に運ばれ、急に血流を止めてしまうケースがあります。

●心掛けたい息切れ対策

◎専門医を受診する目安

息切れの感じ方は人によってさまざまで、痛みの感じ方と似ています。中には、実際には病気があるのにあまり感じない人もいます。

息切れに伴って、せき、たんがある場合には一度、専門医を受診しましょう。また、同年代の人と一緒に歩いている際に自分だけ歩調が遅れるのも、重要なシグナルとなります。

◎COPDには禁煙が最も有効 

年齢が上がるにつれて増加するCOPDの主要因は、たばこです。たばこの煙の粒子は非常に小さく、肺の奥深くまで入り込んで沈着し、炎症を起こすのです。

喫煙者でも、元には戻らないものの、たばこをやめた時点から肺の機能低下がゆるやかになるので、すぐに禁煙を実行しましょう。

◎ウォーキングと腹式呼吸を

COPDの人の場合、息が切れると動くのが面倒になり、運動不足になって運動機能が低下し呼吸困難がさらに悪化する、という悪循環になりがちです。そのため、全身の筋肉を鍛えることが大切になります。

最も勧めたい対策は、ウォーキングなどの軽い運動です。腹式呼吸も効果的で、横隔膜を十分に使って呼吸することで、肺の容量が大きくなります。腹筋を縮めるようにして、口をすぼめた状態でゆっくり息を吐く、口すぼめ呼吸も効果的で、気管や気管支での空気の通りがよくなります。

◎日常生活を楽にする工夫

COPDの人は、体に余計な負担をかけない工夫をすると、日常生活が楽になります。床に置いたものを取る際には、かがんで持ち上げるといった工夫です。

重症になると、息を吸う時に横隔膜だけでなく、首や腕などの筋肉の助けも必要になります。これらの筋肉を使わない、息を吐く時だけ体を動かすように、そしてリズムをつけて動くようにしましょう。階段を上がる際には、息を吐きながら歩を進め、息を吸う時は立ち止まりましょう。

🇳🇴かぜ症候群

かぜは、口、鼻から肺までの空気の通り道である呼吸器が、微生物や寒さの刺激を受けたことにより、さまざまな反応を起こした状態(急性炎症)を示します。正確には「かぜ症候群」あるいは「かぜ疾患群」といいます。

ごく軽いかぜを含めると、人は1年間に平均6回かぜをひくという統計があります。呼吸器は四六時中、外の空気に接していますから、トラブルが多くなるのも無理からぬことです。

軽い症状のまま約1週間で治ってしまうことがほとんどですが、場合によっては重い合併症を起こすこともあります。昔から「かぜは万病のもと」といわれてきたように、かぜを決してあなどってはいけません。

●なぜ、かぜにかかるのか?

1.かぜの原因

かぜは寒さやアレルギー反応で起こることもありますが、多くの場合、病原微生物(病原体)の感染が原因で起こる呼吸器の急性炎症です。かぜを起こす病原体にはウイルス、マイコプラズマ、細菌、クラミジアがありますが、かぜの原因の80~90%をウイルス(かぜウイルス)が占めています。かぜウイルスには、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、RSウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルス、コロナウイルス、レオウイルスがあります。これらのウイルスは呼吸器以外でも感染を起こすものがあり、アデノウイルスは眼の病気や乳児の下痢症、エコーウイルスは髄膜炎の原因にもなります。

2.かぜに何回もかかる理由

体は、ウイルスに一度感染するとその免疫ができて、次にそのウイルスが入ってきたときには、迅速に攻撃してやっつけてしまう仕組みを備えています。しかし、この免疫はいつまでも残っているわけではありません。また、ウイルスには多数の型があり、同じ種類のウイルスでも型が違うと免疫は十分には働きません。そのため、異なるウイルス、また違う型のウイルスが侵入してくるたびに、かぜをひくことになります。

3.ウイルスの感染とからだの反応

ウイルスによるかぜをひいている人の痰や鼻水は、たくさんのウイルスを含んでおり、くしゃみや咳をしたときにしぶきとなって飛び出し、空気中に漂います。そして、近くにいる人に吸い込まれ、ほとんどが鼻の粘膜にくっつきます。ウイルスは粘膜にある感染防御機構と戦い、それに勝利すると粘膜の細胞の中に入り込んで増え始めます(感染の成立)。

やがて、ウイルスは細胞内を埋め尽くして、ついには細胞を壊します。体は、これに対して「炎症」で応じます。これが急性鼻炎です。そして、感染が奥に進むにつれ、咽頭炎、喉頭炎、気管支炎、肺炎が起こります(病名で○○炎というのは、炎症の炎なのです)。

(なお、かぜウイルスの中には痰や鼻水だけでなく、結膜や便の中にも出てくるものがあります。その場合は、結膜や便に直接触れることでも感染します。)

●症状 

1.炎症の場所によって異なる症状

鼻の炎症は急性鼻炎といい、くしゃみ、鼻水(水状→粘液状→黄色い膿状)、鼻づまりなどの症状を起こし、のどの炎症である咽頭(いんとう)炎では、のどの粘膜の充血や腫れ、痛みを訴えます。さらに、感染が呼吸器の奥へと進んだ喉頭(こうとう)炎では、声がれ、ときには呼吸困難を起こし、気管、気管支、肺にいたると、咳や痰が出るようになります。

2.その他の症状

かぜには、前述のような呼吸器症状の他に、頭痛、発熱、腰痛、全身のだるさ、食欲不振などの全身症状があります。また、腹痛、下痢などの消化器症状が加わることもあります。

3.かぜの病型

これまで説明したように、かぜの症状はさまざまです。そこで、全身症状があるのかないのか、呼吸器症状は何が中心かということで、8つの型(病型)に分けられています。個々のかぜウイルスについて、よく見られる病型というものはありますが、同じウイルスでも場合によってさまざまな病型のかぜを起こします。

主な病原体によるかぜの病型

* インフルエンザ:インフルエンザウイルス

* 普通感冒:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ

* 咽頭炎:すべてのかぜウイルス、マイコプラズマ、細菌(レンサ球菌)

* 咽頭結膜熱:アデノウイルス

* クループ:パラインフルエンザ・インフルエンザウイルス

* 気管支炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

* 異型肺炎:マイコプラズマ、インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス

* 肺炎:インフルエンザ、パラインフルエンザ、RSウイルス、コクサッキーエコーウイルス、細菌(レンサ球菌)

4.インフルエンザ

1.インフルエンザとインフルエンザウイルス

インフルエンザは高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型のかぜをいいます。悪寒とともに39~40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状のあとに現れてきます。

こういった全身症状が強いかぜは、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他のかぜウイルスが起こすこともあります。

また、インフルエンザウイルスが起こすかぜは、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻かぜ(鼻水、鼻づまりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型のかぜ)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。

インフルエンザウイルスが感染して症状がでるまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

2.インフルエンザが怖いわけ

インフルエンザが怖いのは、65歳以上を中心にインフルエンザウイルスに感染したひとの約1%が肺炎を合併するからです。インフルエンザに肺炎を合併すると、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがたまにあり、また、いったん治ったように見えながら2~3日で肺炎になることもあります。

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く流行も目立ちません。一方、A型とB型(とくにA型)は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

5.マイコプラズマ肺炎

マイコプラズマ肺炎は、細菌より小さくウイルスよりやや大きいマイコプラズマという病原体が起こす異型肺炎という型のかぜです。

のどが赤く腫れて痛み、38℃前後の発熱、激しい乾いた咳、胸痛があります。潜伏期が2~3週間と比較的長く、感染力も強くないため、爆発的に流行することはありませんが、約4年ごとに流行しています。時として、重い合併症を起こすことがあります。

●合併症

かぜの合併症としては、中耳炎(ちゅうじえん)、副鼻腔炎(ふくびくうえん)などが一般的ですが、最も注意を要するのが肺炎です。肺炎は、ウイルスによるかぜで抵抗力が弱ったところに、細菌(ブドウ球菌、インフルエンザ桿菌、肺炎球菌、レンサ球菌など)が感染して起こします。インフルエンザによる死亡の8割は肺炎が原因です。

その他、筋炎、心筋炎、また、神経系の合併症(ライ症候群、脳症、ギランバレー症候群、急性小脳失調症、脊髄炎(せきずいえん)、多発神経炎、髄膜炎など)もあり、うっ血性心不全や心筋症などの慢性の病気が悪化することもあります。

●治療法

1.一般療法

体の回復力を高めるには、安静と睡眠が大切です。38℃以上の熱がある場合は、安静を助けるために水枕、氷枕をあてます。体力をつけるには食事も大切です。かぜの時には胃腸の働きが落ちるため、葛湯、おかゆ、スープなど、消化が良く水分の多いものにします。

かぜをひいた人が休んでいる部屋は、気温を18~20℃、湿度を60~70%に保ちます。空気が乾燥していると、呼吸器の粘膜が乾燥して抵抗力が弱くなり、感染しやすくなるからです。乾燥はインフルエンザウイルスの好むところで、湿度30%で最も盛んに増えるためでもあります。

2.薬物療法

かぜの時に使われる薬は、かぜの症状を抑えるためのもの(対症療法)と、細菌を殺すためのもの(化学療法)とに大別されます。かぜの原因のほとんどはウイルスですが、現在のところ、かぜウイルスに効く薬はありません。

1. 対症療法

●抗ヒスタミン剤:鼻水、鼻づまり、くしゃみを抑えます。

●うがい薬、口腔用製剤(トローチ):咽頭(いんとう)痛がある時に使います。

●解熱鎮痛剤:発熱は、病原体をやっつけようとするからだの正常な反応です。ですから、やたらに熱をさげるのはいいことではありません。そこで、解熱剤は38℃以上の発熱、強い頭痛や筋肉痛があり、苦痛のために身体が衰弱するような場合に限って使います。

●消炎鎮痛解熱剤:頭痛やのどの痛みが強い時に使います。熱を下げる作用もあります。

●鎮咳剤:咳には、痰を伴う湿った咳と、痰を伴わない乾いた咳とがあります。痰がある場合は、咳は痰を出す役目をするので、止めない方がよいのです。しかし、乾いた咳は安静や睡眠を妨げて体力を消耗させるだけなので、鎮咳剤で止めてしまいます。

●去痰剤:痰の粘りけが強く、気道にくっついて、なかなか出せない場合に使います。痰に水分を補ったり、痰を分解する働きのある薬です。

●総合感冒剤:以上の対症療法剤を2種類以上組み合わせた製剤です。製剤によって、組み合わせや量が異なるので、症状に合わせて選ぶ必要があります。

2. 化学療法

●抗生物質:抗生物質は、細菌の増殖を抑えたり、殺したりする薬です。かぜでは、細菌が原因であることは少ないのですが、かぜで抵抗力が落ちたところに細菌が感染(二次感染)するのを予防するために、抗生物質を使うことが少なくありません。発熱がある場合、特に重症になる恐れのある高齢者や慢性の病気を持っている人には欠くことのできない治療です。

●かぜの予防

1.簡単にできること

空気中には、ウイルスを含む細かい粒子が浮かんでいて、特に混み合った電車やバス、保育園や学校の教室など、人が多く集まる場所、また、かぜをひいた人がいる部屋では、ウイルスが高濃度で漂っています。そこで、かぜの予防の第一は、このような場所を避けることです。

インフルエンザウイルスやライノウイルスに感染した人が休んでいる部屋では、湿度を60~70%に保つと、ウイルスの増殖が抑えられ、呼吸器の抵抗力を保つことにもなり、家族への感染を少なくすることができます。頻回な手洗いやうがいも予防に効果があります。

そして、何よりも体調を整えて免疫力を保つことです。生活の乱れ(睡眠不足、栄養不足、気のゆるみ)、強すぎる精神的ストレスがないようにしましょう。女性では、生理中はホルモンの関係でかぜをひきやすくなるのでご用心ください。

2.ワクチン

ワクチンとは、ウイルスの一部(ワクチン)を体に入れて免疫を作らせ、本当のウイルスがやってきた時に、その免疫でやっつけてしまうというものです。現在のところ、かぜウイルスでは、インフルエンザウイルスだけにワクチンがあります。

流行の直前に、流行するインフルエンザウイルスと同じ型のワクチンを打っておけば、そのウイルスがからだに入ってきた時、確実にやっつけることができます。また、ワクチンの型が流行しているインフルエンザウイルスと少し異なっていても、侵入してきたウイルスの増え方を抑える効果があります。つまり、ワクチンを打っておけば病院にかかるほどの症状にはなりにくく、なったとしても入院するほどの重症化しない、重い合併症で命を落とす危険が少なくなります。

このようにワクチンはインフルエンザの予防に有効です。特に、体力や免疫力が低いためにインフルエンザにかかると重症になりやすい高齢者や乳幼児、また、集団生活が流行の温床となる幼少児にとって、確実に役に立つ予防法です。

3.重症になりやすい人

かぜは一般には軽い病気ですが、高齢者や乳幼児、慢性の病気(基礎疾患)を持つ人では、合併症を起こして重症になることも珍しくありません。

これらの方々は、かぜにかからないよう普段から予防することが大切です。頻回の手洗いやうがいを励行し、インフルエンザが流行する時期に近づいたら、先述したワクチンを受けておきましょう。また、人混みに近づかないことも立派な予防法です。うっかり、かかってしまった場合は、重症になるのを防ぐために早めに治療を受けてください。

呼吸器の病気を持つ人 気管支喘息、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症、びまん性汎細気管支炎など

心臓の病気を持つ人 うっ血性心不全、弁膜症、狭心症など

腎臓の病気を持つ人 慢性腎不全、透析患者、腎移植など

代謝性の病気を持つ人 糖尿病、アジソン病など

免疫力が低下している人 免疫不全状態

その他の人 高齢者、妊産婦、乳幼児など

「かぜ症候群」について説明しました。皆さんの健康を守るために少しでもお役に立てれば幸いです。わからない点や心配な点などある場合は、お近くの掛かり付け医などの医療機関にご相談ください。

2022/08/27

🇹🇩睾丸結核

結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染して起こる疾患で、肺外結核の一種

睾丸(こうがん)結核とは、結核菌が男性の生殖器である睾丸に感染することによって起こる疾患。精巣結核とも、結核性精巣炎とも呼ばれ、また肺外結核の一種であり、男性性器結核の一種でもあります。

睾丸、すなわち精巣は、男性の陰嚢(いんのう)内に左右各1個あって卵形をしており、男性ホルモンおよび精子を産生しています。

睾丸結核の原因菌となる結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

>肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

男性性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、副睾丸(精巣上体)、睾丸(精巣)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こり、その一種の睾丸結核は、結核菌が睾丸に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、副睾丸、睾丸などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って逆行性に感染し、炎症を起こして、精巣などに硬い凹凸のあるはれを生じます。

感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に睾丸の痛み、違和感、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、睾丸結核は精子を産生する精巣機能の障害から、男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

感染が進行すると、睾丸と、睾丸の上面および後面に付着している副睾丸との境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりして、最終的には睾丸と副睾丸を破壊することもあります。初めは片方の睾丸にはれが起きるケースがほとんどですが、放置すると両方に起きる恐れもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である睾丸結核の頻度は低下しています。

睾丸結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。なお、精液からの結核菌の証明は困難です。

睾丸が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、副睾丸と一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

睾丸結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、睾丸や前立線などにがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、睾丸がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば睾丸結核は治りますから、これが原因となっていた男性不妊症であれば、性パートナーの女性が妊娠する可能性も高くなります。

🇸🇿好酸球肺浸潤症候群

白血球の一種である好酸球が肺に浸潤する肺疾患の総称

好酸球肺浸潤症候群とは、白血球の一種である好酸球が肺の中に浸潤する肺疾患の総称。肺好酸球浸潤症候群とも呼ばれます。

好酸球は免疫にかかわる白血球の一種で、ある種の寄生虫に対して体を守る免疫機能を担い、アレルギー反応の制御を行う一方で、このアレルギー反応による炎症の一因にもなる細胞です。好酸球肺浸潤症候群では、末梢(まっしょう)血液中に好酸球が増える場合がしばしばみられますが、必ずしも合併するとは限りません。

カビなどの真菌、寄生虫、特定の薬物、化学物質などが、肺の中に好酸球が集積する原因になることがあります。その原因がわかっているものには、真菌に対するアレルギー疾患であるアレルギー性気管支肺真菌症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)、線虫・回虫などの寄生虫感染、抗生剤(抗生物質)・抗菌剤・降圧薬・抗結核薬などの薬物による肺炎、栄養食品であるLートリプトファンによる好酸球増加筋痛症候群があります。

また、初めてたばこを吸い始めた時に、急性好酸球性肺炎を発症することがあり、数日後に呼吸困難を引き起こします。

原因不明のものとしては、レフレル症候群(単純性好酸球性肺炎)、急性好酸球性肺炎、慢性好酸球性肺炎、アレルギー性肉芽腫(にくげしゅ)性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)、好酸球増加症候群があります。

現れる症状は、肺疾患の重症度により異なります。重症では、せきや呼吸困難、息切れなどの症状がみられ、血液中の酸素が減少し、皮膚や粘膜の色が青紫色になるチアノーゼを示すことがあります。また、発熱や食欲不振、体重の減少なども認められることがあります。軽症では、全く症状がなく、X線写真で肺炎像として発見されることもあります。

アレルギー性気管支肺真菌症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)は、アスペルギルス属という種類の真菌の胞子を吸い込むことによって、気管支や肺に、炎症などのアレルギー症状が引き起こされる疾患。発作性のせきや、喘鳴(ぜんめい)を伴う呼吸困難で始まり、褐色の喀痰(かくたん)が出ます。痰の中には、しばしば好酸球やアスペルギルスの菌糸が含まれています。時に喀血(かっけつ)をみることがあるほか、発熱、食欲不振、頭痛、全身倦怠(けんたい)感、胸痛などがしばしばみられます。気管支が広がって元に戻らなくなる気管支拡張症が引き起こされることもあります。

レフレル症候群(単純性好酸球性肺炎)や、フィラリアと呼ばれる線虫類の一種が体内に侵入して発症する熱帯性好酸球増多症(ミクロフィラリア症)では、症状が現れた場合に微熱や軽い呼吸器症状がみられることがあります。また、せき、喘鳴、息切れなどが現れることもありますが、通常はすぐに回復します。

急性好酸球性肺炎では、血液中の酸素濃度が著しく低下し、治療をしなければ、数時間から数日で急性呼吸不全に進行する可能性があります。

慢性好酸球性肺炎は、数週間から数カ月間かけてゆっくりと進行する疾患で、重症化することもあります。治療をしなければ、命にかかわるような息切れを起こすことがあります。

アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)は、喘息で発症する特徴がありますが、その後、好酸球性肺炎を起こすこともあり、皮膚、消化管、末梢神経、心臓、腎臓(じんぞう)など重要な臓器も障害される全身性の血管炎です。喘息の治療が成功しているにもかかわらず、手や足がしびれたり、皮膚炎、腹痛や胸痛が現れてきた場合には、この疾患の可能性があります。

好酸球増加症候群では、末梢血の中の好酸球が6カ月以上、1500μl(マイクロリットル)以上に増えて、多くの臓器障害が起こり、特に心臓の障害が重い合併症となってきます。

好酸球肺浸潤症候群は、集団健診の胸部X線検査で異常を指摘されるか、せき、呼吸困難、発熱、全身倦怠感を自覚して、初めて受診して発見されるケースがほとんどです。

いずれにしても早期発見、早期治療が重要なので、これらの疾患が疑われたら内科、呼吸器科、アレルギー科を受診します。

好酸球肺浸潤症候群の検査と診断と治療

内科、呼吸器科、アレルギー科の医師による診断では、胸部X線検査で肺炎像が確認されます。肺炎像に加えて、血液検査で好酸球の増加があれば好酸球肺浸潤症候群が考えられ、喀痰に好酸球が増えていれば診断にほぼ間違いはありません。

原因が予測できる疾患では、その原因物質を特定することで診断が可能になってきます。アレルギー性気管支肺真菌症(アレルギー性気管支肺アスペルギルス症)は、喀痰の中から真菌を確認し、血液検査でその真菌に対する免疫グロブリン(IgGおよびIgE)を確認します。また、気管支拡張症を合併することも1つの特徴なので、CT検査で確認することが重要です。

さらに、常用している薬物はないか、寄生虫感染地域への旅行あるいは在住がなかったかどうかは、重要な診断の参考になります。

また、アレルギー性肉芽腫性血管炎(チャーグ・ストラウス症候群)では、血液検査でIgEの上昇と、白血球の一種である好中球に対する抗体(抗好中球細胞質抗体、P‐ANCA)の上昇が重要な診断の根拠になります。

内科、呼吸器科、アレルギー科の医師による治療では、軽症例では無治療で改善することもありますが、一般的には副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を内服することにより早期に改善します。

しかし、アレルギー性肉芽腫性血管炎、慢性好酸球性肺炎、好酸球増加症候群では、ステロイド剤に十分な反応が得られないこともあります。その場合は、抗がん剤を併用することもあります。

線虫や他の寄生虫が原因であれば、それに対して適切な薬を用いて治療します。通常、この好酸球肺浸潤症候群を引き起こす可能性がある薬は、服用を中止します。

🇱🇸高山病

低圧低酸素状態に置かれた時に発症

高山病とは、低圧低酸素状態に置かれた時に発生する病的症状。高い所では気圧が下がるため空気が薄くなり、それに応じて含まれる酸素の量も減ります。体がそのような環境への急激な変化に順応できずに、極端な酸欠状態に陥った場合に、さまざまな症状が現れます。

一般的には、3000メートル以上の高山に登った際に発症するといわれていますが、標高2500メートルぐらいから発症する可能性があり、日本国内でも報告例があります。海外のトレッキングコースには4000メートルを超えるものもあるので、国内での経験が豊富な人でも、十分な注意が必要となります。

また、高山病は登山に伴うものばかりではありません。チベットや南米には、標高3000~4000メートルの高地に乗り物で行ける観光地があり、そこを訪れる人にも発症の可能性があります。

高山病の症状が出現する標高や、その高さに慣れるまでの時間には個人差があり、同じ人でもその時の体調によって異なります。

低圧低酸素状態において6~12時間で発症し、一般的には4~5日後には自然消失します。主な症状としては、頭痛、食欲不振、吐き気、嘔吐(おうと)、疲労、脱力、めまい、ふらつき、睡眠障害などです。

ほかにも、すぐに眠ってしまう、日時や場所がわからなくなるなどの精神状態の変化、真っすぐ歩けない、立っていられないなどの運動失調、顔や手足のむくみが挙げられます。

高山病の重症型として注意しなければならないものに、高地肺水腫(すいしゅ)と高地脳浮腫(ふしゅ)があります。

高地肺水腫は、肺がむくみ、水分が浸み出した状態で、呼吸がたいへん苦しくなります。呼吸とともにガラガラする音がしたり、せきや血痰(けったん)がみられたりします。肺を通して体に取り込める酸素の量がとても少なくなり、命の危険があります。

高地脳浮腫は、脳がむくんだ状態で、足元がふらつきバランスを崩して転ぶ、意識を失うなどの症状が出現し、こちらも死に至る危険があります。

2006年7月に発表された外務省診療所の調査によると、1996年からの10年間で、ネパール、ペルー、タンザニアの日本大使館が把握している日本人高山病発症者の内、少なくとも26人が死亡しています。死亡者の平均年齢は50歳。

高山病の治療法と予防法

最も基本的で効果的な高山病への対処法は、高度を下げることです。楽になる所まで下ることが大切です。症状が軽い場合は、それ以上高度を上げずにとどまるだけで体が慣れてくることがあります。普通は1~2日で回復し、パラセタモールかアスピリンを服用すれば、頭痛は治ります。

とどまっていても症状が続いたり、次第に具合が悪くなる場合は、直ちに高度を下げるべきです。500メートル下がるだけでも、症状は軽くなります。

重症の場合は、できるだけ速やかにに低地に搬送し、集中的治療が必要です。低地域へすぐに搬送できない場合は、酸素吸入やガモフバッグ(携帯型加圧バッグ)、内服薬による治療を考慮しなくてはなりませんが、そのためには事前の準備が必要です。

ガモフバッグは、携帯用の軽量布製大型バッグまたはテントで、手動のポンプによって中の気圧を上げることができます。重症者を中に入れ、きっちりと口をふさぎ、ポンプを使って内部の気圧を上げて2~3時間過ごさせます。登山の際には酸素吸入が使えない場合が多いのですが、ガモフバッグには同様の効果があります。ただし、それらで完全に治せるわけではなく、若干時間稼ぎができる程度と考えるべきで、下山に勝る治療法はありません。

高山病の予防法は、以下のとおりです。標高3000メートル以上では、眠る場所の高度を前日に比べて300メートル以上上げないこと。高度を1000メートル上げるごとに、1日休息日をとること。自分が背負う荷物を重くしすぎないこと。ゆっくり登ること。

眠る場所の高さが大切な理由は、睡眠中は起きている時に比べて呼吸回数が減り、体の中の酸素状態が悪化しやすいからです。いきなり高度を上げると、悪化の程度も大きくなります。また、アルコールや睡眠薬、安定剤などは睡眠中の呼吸状態を悪化させることにつながるので、高い所では控えておくほうが安全。

高所に滞在していると次第に低酸素の状態に慣れてきますが、慣れる速さは人によって違いますし、標高によっても違います。毎日自分の体調をチェックし、必要に応じて休息日を入れることが大切です。

高所の低圧低酸素環境で運動すると、平地での運動に比べて心拍数が増加しやすく、心臓への負担が大きくなります。肺に問題がある場合は、他の人より体に取り込む酸素量が少ないため、体調を崩しやすくなります。

従って、心臓や肺に疾患のある人は、体への負担を考慮し、あらかじめ主治医に相談しておいたほうがよいでしょう。荷物を重くしないこと、ゆっくり登ることは、健康な人にとっても大事です。

高所の冷えた空気は乾燥しており、その中で汗をかくような運動をする場合は、体の中の水分を失いやすく、脱水症に対する注意が必要です。体調維持のため、軽い、高炭水化物の食事を取るとともに、十分な水分を取るよう心掛けてください。また、乾燥した冷たい空気はのどを痛めやすく、風邪をひくことにもつながりますので、マスクを用意しておくとよいでしょう。

高山病の予防と症状の緩和のために、アセタゾールアミド、デキサメタゾンの服用を勧める医師もいます。しかし、これらの薬で危険な症状が隠されてしまうこともあるとして、使用には異論もあります。

2022/08/26

🇧🇸インフルエンザ

■インフルエンザは風邪の一つ

風邪とは、鼻やのどに急性の炎症が起こった状態のことです。風邪の主な原因はウイルスで、その種類は何百とあります。インフルエンザは、風邪の症状を起こすウイルスの一種なのです。

また、ウイルスのほかにも、細菌やマイコプラズマなどの微生物が、風邪の原因になることもあります。

これらの病原体は、つば(唾液)とともに空中に飛び散って感染(飛まつ感染)します。

■インフルエンザの特徴は

インフルエンザは、突然の高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身のだるさといった全身症状が強い型の風邪をいいます。悪寒とともに39~40℃に発熱し、3、4日続きます。結膜の充血、鼻炎、のどの痛み、咳、痰、扁桃(へんとう)の腫れなどの呼吸器症状は、全身症状の後に現れてきます。

こういった全身症状が強い風邪は、インフルエンザウイルスによって起こることが多いのですが、その他の風邪ウイルスが起こすこともあります。

また、インフルエンザウイルスが起こす風邪は、大抵インフルエンザ(型)ですが、鼻風邪(鼻水、鼻詰まりが中心で、のどの痛みや咳は少ない型の風邪)、咽頭炎、気管支炎、肺炎などを起こすこともあります。

インフルエンザウイルスが感染して症状が出るまでの潜伏期間は2日前後で、日本では空気の乾燥する12月から3月にかけて流行します。

インフルエンザの怖い点は、気管支炎や肺炎、中耳炎を起こす原因になることです。乳幼児が肺炎にかかると、命にかかわることもありますし、65歳以上を中心に、インフルエンザウイルスに感染した人の約1%が肺炎を合併しています。

インフルエンザに肺炎を合併した場合、熱が続き、咳、痰、時には血痰が出て、呼吸困難を起こすこともあります。インフルエンザにかかってから2、3日で呼吸困難になることがまれにあり、また、いったん治ったように見えながら、2~3日で肺炎になることもあります。

インフルエンザウイルスには、A型、B型、C型がありますが、C型は症状が軽く、流行も目立ちません。一方、A型とB型、特にA型は症状が強く、世界的に流行して命にかかわることも、珍しくありません。ソ連型、香港型というのはA型のインフルエンザウイルスで、交互に流行がみられます。

 インフルエンザのウイルスは風邪の他のウイルスとはまったく違うものですが、症状を見るだけで普通の風邪と区別するのは難しいことです。普通の風邪ウイルスが高熱などの全身症状が強い風邪を起こすケースもありますので、地域ではやっているといった情報がないと、医師でもインフルエンザと診断するのは難しいようです。

病院に行って風邪と診断され、薬をもらった後も症状が改善しないようなら、再度医師に診てもらうことをお勧めします。

■インフルエンザの予防接種とは

予防接種は1回で終わりではない

インフルエンザの感染の予防、また、万一感染しても軽くすむのに有効なのが予防接種だ、とされています。

しかしながら、インフルエンザの予防接種は、1回で一生効果があるものではありません。インフルエンザのウイルスには多様な種類があり、すべてに対抗できるワクチンは作れないからです。

現在インフルエンザのワクチンは、毎年、“その年にはやりそうなウイルスの型”を予測し、それに対抗するものが作られています。つまり、予防接種でインフルエンザを防ごうとするのなら、毎年接種する必要があるのです。

もちろん、予測した型と実際に流行するインフルエンザの型とが異なることもありますが、毎年予防接種を受けている人は免疫が蓄積するので、かかった場合でも軽くすむケースが多いようです。

鶏卵、ゼラチンにアレルギーのある子は注意!!

予防接種の副反応は、ごくまれに発熱や頭痛がある程度で、特に心配はありません。注意したいのは、ワクチンには 鶏卵やゼラチンが含まれている点で、アレルギーのある赤ちゃんや子供の場合は、接種前に医師に相談しましょう。

■インフルエンザに負けない生活術

インフルエンザや風邪にかかった場合でも、軽い症状ですませるためにできる対策は、予防接種だけではありません。ウイルスに負けないだけの抵抗力、すなわち体力をつけておくだけでも、かかった時の症状はずいぶん異なるのです。

赤ちゃんや子供さんの抵抗力をつけるため、家庭で配慮できることを紹介してみましょう。

(1)動きやすい服装でよく遊ぶ

「風邪をひかせるのが怖いから」と考えて厚着をさせるのは、着膨れして動きにくく、運動不足になることもあるため、逆効果。赤ちゃんの場合の大体の目安は、生後1カ月以内で大人の着ている枚数より1枚多いくらい、それ以後は大人と同じ枚数か、1枚少ない程度で大丈夫でしょう。枚数よりも、体が動かしやすい服装を心掛けてやりましょう。

(2)生活時間と栄養バランスに考慮を

こちらは大人にも当てはまることですが、仕事で疲労している時に風邪などをひいてしまうと、こじらせやすいもの。赤ちゃんや幼児も、起床、就寝と三食の時間をなるべく規則的にし、栄養バランスを考えた食事がとれるようにしましょう。

(3)手洗い・うがいの習慣をつける

外出から帰った後、食事の前には必ず手洗いと、うがいの習慣を。8カ月~1歳くらいになって、赤ちゃんがママのまねをするようになったら、水を口に含んで「ペッ」と吐き出す様子を、ママが見せてあげるのも一案です。また、家族やお客さんも、赤ちゃんに触る前には手洗い、うがいの習慣を!

(4)室内が乾燥しないような配慮を

乾燥した空気は、のどに負担をかけるもとです。暖房をつけるならまめに換気したり、加湿器を使ったりして、適度な湿度を心掛けましょう。

(5)冬場の外出は人込みを避けて

風邪やインフルエンザは、咳やくしゃみによって感染します。冬場は赤ちゃん連れで人込みの多い場所へ外出するのは、極力、避けるようにしましょう。

🇧🇸小児喘息

季節の変わり目に悪化しやすいのが、この病気です。子供のうちに症状を改善させるためには、きちんと治療を続け、アレルギーを起こす物質である「アレルゲン」を生活から取り除くことが、大切となります。

●小児喘息の原因と症状について

喘息(ぜんそく)とは、肺に流入する空気の通路に当たる「気道」に炎症が起こったために、空気の通り道が狭くなった状態を指します。

小児喘息の原因のほとんどは、アレルギーです。気道にアレルギーを引き起こす物質である、ホコリやダニ、カビ、動物の毛といった「アレルゲン」が入ると、気道の粘膜が刺激されて炎症が起こり、小さな刺激にも過敏に反応するようになります。

従来は3、4歳から小学生に多かった病気でしたが、最近では1歳以下の乳幼児にも発症が増えています。

見られる症状は、軽いものから重いものまでさまざま。せきが出る。たんが出る。胸が圧迫される感じがする。呼吸が苦しい。息を吐く際に、のどがゼーゼー、ヒューヒューと鳴る。のどがイガイガする。ちょっとした刺激で、ひどくせき込む。風邪をひきやすい。

こういった症状がもっとも悪化しやすい時季は、初夏や初秋といった季節の変わり目ですので気をつけたいものです。

●どのような治療が行われるのか?

医師による治療では、発作が起きないように薬物療法でコントロールすることが、重要と見なされます。炎症を抑える吸入ステロイド薬、アレルギー反応を弱める抗アレルギー薬などが、主に用いられています。

霧状にしたものを口から吸い込むのが吸入ステロイド薬で、気道の粘膜に直接、薬が届きます。症状によって、吸入する量や回数は異なります。吸入した後、うがいで口の中に残った薬を洗い流せば、副作用が起こることはほとんどありません。抗アレルギー薬のほうは飲み薬で、吸入ステロイド薬と併用するケースがよくあります。

こうした薬をきちんと服用し、気道の粘膜の状態を整えることで、喘息の発作を起こりにくくしますので、症状がよくなったからといって、勝手に薬をやめないことが大切。何かの刺激によって、大きな発作が起こることもあります。

発作の時には、狭くなっている気道を広げる薬が用いられます。薬が効かず、ふだんと小児の様子が違う際には、すぐに医師の診断を受けてください。

●日常生活における留意点について

小児喘息は、きちんと治療を続ければ生活に支障がなくなります。薬の量を減らしたり、使わなくてすむようになることもあります。

そのためには、ふだんの暮らしの中で、次のような点を心掛けましょう。まず、風邪に対する予防策を十分にとること。風邪を切っ掛けに喘息が悪化することが少なくないためで、日ごろから、うがいや手荒いを実践し、天気や気温の変化に気をつけましょう。

次に必要なのは、原因となるアレルゲンを身の回りからできるだけ減らすこと。部屋のホコリやダニ、カビ、ペットの毛などがアレルゲンとなる場合には、こまめに掃除をしたり、ペットを室内で飼わないといったことが、悪化を防ぐことにつながります。

アレルゲンになりやすい食べ物にも、要注意です。タバコの煙も気道を刺激しますので、家族は子供の近くでタバコを吸わないこと。また、周りの大人が気を配って、タバコの煙に子供を近付けないようにしましょう。

これらに加えて、軽い運動を続けて体を鍛え、基礎体力をつけることも大切です。

🇯🇲自然気胸

肺に穴が開き、肺がつぶれてしまう疾患

自然気胸とは、肺から空気が漏れて胸腔(きょうくう)にたまり、肺の一部または全体がつぶれる疾患。肺結核の治療法として意図的に胸腔に空気を注入する人工気胸がかつて行われていましたが、これに対して人工ではない気胸のことを自然気胸と呼びます。

正常な状態では、胸腔内の圧力は肺の内部よりも低くなっています。肺胞が破れるなどで肺に穴が開き、空気が胸腔に入ると、胸腔内の圧力が肺の内部よりも高くなり、肺が空気に押されてつぶれ、小さくなるため、自然気胸になります。

自然気胸は、原発性自然気胸、続発性自然気胸、外傷性気胸、医原性気胸、月経随伴性気胸に分類されます。

原発性自然気胸は、交通事故やナイフで刺されたというような明らかな理由もなく、発生するものをいいます。普通、肺の表面のややもろくなった部分である肺胞内嚢胞(のうほう)が破裂するために起こり、40歳以下の背が高く、やせて胸の薄い男性に最もよくみられます。

この原発性自然気胸の大部分は、運動中には起こりません。ダイビング中や高い高度を飛行中に起こることがあり、肺の内部の圧力が変化するのが原因です。ほとんどの人は一時的に空気が漏れますが、すぐに閉じて完治します。漏れた空気は、血液に溶け込んで次第に消失します。問題なのは、穴がふさがらず、空気が漏れ続ける時です。また、しばしば再発を起こすことも問題です。

続発性自然気胸は、肺にある広範囲の疾患が原因となって起こるものをいいます。原因疾患の分布から高齢者に多くみられます。この気胸で最も多いのは、肺気腫(きしゅ)のある高齢者で肺胞内嚢胞が破裂して起こるものです。そのほか、嚢胞性線維症、ランゲルハンス細胞肉芽腫(にくげしゅ)症、サルコイドーシス、肺膿瘍(しゅよう)、肺結核、カリニ肺炎などの肺疾患がある場合にも起こります。肺に原因疾患があるため、続発性自然気胸の症状および経過は一般的に良くありません。原発性自然気胸と同じく、しばしば再発を起こします。

外傷性気胸は、交通事故などで折れた肋骨(ろっこつ)が肺を傷付けたり、胸部が強く圧迫されたり、刃物などで胸を刺されたりすることで起こるものをいいます。

医原性気胸は、病院で針を刺すような、胸腔内に空気が入りやすい治療や検査を受けたことが原因となって起こるものをいいます。人工呼吸器も、肺に気圧外傷を与え気胸を起こす場合があります。これは、重症の急性呼吸促迫症候群の患者に最もよくみられます。

月経随伴性気胸は、生理の前後に発症するものをいいます。この変わった気胸の原因は、子宮内膜症が横隔膜に広がり、生理の時に横隔膜に穴が開くことにより胸腔に空気が入るため、あるいは肺に子宮内膜症があり生理に際して穴が開くためと考えられています。自然気胸は女性には比較的少ないので、女性が自然気胸を起こした時は、月経随伴性気胸の可能性を考えておかなくてはなりません。治療は、外科療法かホルモン療法を行います。

自然気胸の主な症状は、胸痛、呼吸困難、せきです。多くの場合、鋭い胸の痛みや息切れ、時には乾いた空せきが突然始まります。気胸を起こした肺はしぼみ切っており、機能不全状態になっているため酸素の供給量が著しく低下し、息切れを感じやすくなるのです。また、自然気胸で開いた穴から胸腔に空気が流れ込み、気圧が高まって肺を圧迫するため、痛みを感じやすくなるのです。肩、首、腹部に痛みを感じることもあります。

胸腔に流れ込む空気の量が多くなると、緊張性気胸となります。緊張性気胸では、突然発症し、進行性の胸痛と呼吸困難が生じ、血圧が低下します。疾患のある側の肺は空気で置き換えられて完全につぶれており、気胸の起こっていない肺も次第につぶされていきます。大量の空気が心臓を圧迫して、心停止させてしまうこともあり、非常に危険です。

一方、ゆっくり進行する自然気胸では、急激に進行する自然気胸よりも症状が軽い傾向にあります。まれに、症状がないのに胸部レントゲン検査で発見されることがあります。

緊張性気胸や非常に広範囲の気胸を除き、症状は体が肺のつぶれた状態に順応するにつれて大抵治まり、胸腔から空気が再吸収されるのに伴って、肺はゆっくりと再び膨らみます。

自然気胸の検査と診断と治療

胸部X線写真で肺の紋様がない領域が胸腔内に確認されれば、自然気胸と診断されます。健康な長身、やせ型の青年男子で急に胸痛や息切れを訴える時は、原発性自然気胸を疑います。ほとんどの症例では、胸部レントゲン写真で診断がつきます。判断に迷う時は、息を吐いた時と吸った時の写真を比較します。

軽度の自然気胸の場合は、特別な治療をしなくても安静にしていれば、自然に治癒します。軽い原発性自然気胸では、重い呼吸障害は起こらず、たまった空気は数日間で吸収されます。外来で時々、胸部X線検査を行って経過観察をします。

より広範囲の気胸では、空気が完全に吸収されるのに2〜4週間かかりますが、入院して胸腔ドレナージを行えば、より早く空気を除去できます。胸腔ドレナージでは、胸壁を切開して挿入したチューブで、たまっている空気や新たに漏れた空気を外に排出します。チューブからの空気漏れがなくなったら、チューブを抜去し、肺の膨らみが良好なら退院です。

自然治癒を見込めないほど自然気胸の範囲が大きい場合、胸腔ドレナージを行って空気の漏れが止まらない場合、自然気胸が再発した場合、左右両側の肺が自然気胸の場合などでは、全身麻酔による胸腔鏡下手術で肺嚢胞の切除が行われます。従来の開胸手術においては、初回の気胸について手術をすることはありませんでしたが、胸腔鏡下手術は入院期間も1週間程度ですむため、初回から手術して今後起こり得る病変まで切除してしまうこともあります。

しかし、胸腔鏡下手術には、切除した周囲の組織が自然気胸を起こしやすくなるというデメリットがあります。そのため、セルロース製のメッシュシートを被せるカバーリング法が、新たに注目を浴びています。セルロース製のメッシュシートは、肺組織に吸収されて厚みを増すため、自然気胸の再発防止に効果を発揮します。

再発率は内科的に治療した場合、初回の自然気胸が起こってまた再発するのが約50パーセント、2回起こるとまた再発するのが80パーセント以上と考えられています。内科的治療と比べると外科治療の成績は格段によく、再発率は数パーセント以下です。

続発性自然気胸の場合は、肺に原因疾患があるため、手術は危険な場合があります。手術が行えない際は、胸腔から空気を抜き取ったチューブを通して薬を入れて、肺を周囲と癒着させ気胸を起こさないようにします。この薬を使って気胸を起こした組織をやけどさせた状態にしてふさぐという治療法は、手術と比較して効果が不確実です。

外傷性気胸や緊張性気胸の場合は、迅速な治療が求められます。緊張性気胸では、血圧が低下しショックを起こすので、直ちに治療をしないと数分間で死に至ります。大きな注射器をつけた針を胸部内に挿入し、すぐに空気を抜き取ります。その後、継続的に空気を抜くために別のチューブを挿入します。

🇧🇷若年性肺気腫

55歳以下で発症した肺気腫で、肺胞が破壊されて呼吸困難が発生

若年性肺気腫(はいきしゅ)とは、喫煙の有無にかかわらず、55歳以下で発症した肺気腫のこと。若年発症COPD(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)とも呼ばれます。

肺気腫は一般的には60歳以上の高齢者に多くみられ、肺の組織が破壊されて機能低下を起こし、呼吸困難を生じる疾患です。慢性気管支炎と合わせて慢性閉塞(へいそく)性肺疾患(COPD)と呼ばれ、気道閉塞がみられる疾患群の一つとして扱われています。肺気腫と慢性気管支炎を合わせた慢性閉塞性肺疾患(COPD)は糖尿病なみに多く、日本での患者数は500~700万人と推定されていますが、実際に治療を受けている人は20数万人程度といわれ、著しく診断率が低いことが問題になっています。

肺気腫についてはまだまだわからないことが多いのですが、肺の中の気管支の末端にあって、酸素と炭酸ガスの交換作用を行っている肺胞という組織が何らかの障害を受け、壊れやすい状態になるのが、疾患の基本的な原因だと考えられています。

約3億個ともいわれる肺胞を壊す主な原因は、たばこの煙や大気中に含まれる汚染物質。肺胞は1日に約1万リットルの空気の出し入れをしており、さまざまな刺激によって生じる炎症から肺胞が壊されないように、炎症細胞が出す酵素(エラスターゼなど)に対する防御物質(アンチエラスターゼなど)を持っています。しかし、長年の汚染物質の刺激によって、絶えずエラスターゼが出され続けることにより、防御物質では防ぐことができず少しずつ肺胞が壊されます。

本来、肺胞は一つ一つが弾力性に富み、息を吸う時に膨らみ、吐く時に縮みます。壊れて弾力性が著しく低下したり、全く失われた肺胞が増加していくと、その分だけ肺機能が低下し、取り込める空気の量が低下します。とりわけ肺の収縮が行われにくくなるため、空気を吸い込めても、吐き出すことがうまくいかなくなります。 徐々に進行し、肺胞が破壊を繰り返すと、ブラという袋を形成してしまいます。そして、肺の血管が細くなったり、肺全体が膨張し、呼吸筋である横隔膜を押し下げたり、心臓を圧迫したりします。

呼吸細気管支を中心に肺胞壁が壊れる場合と、肺胞壁全体が壊れる場合があり、喫煙による肺気腫のほとんどは前者です。

一般に、40歳代以降で長く喫煙を続けてきた人にみられ、発症者の8割以上が喫煙者であることが報告されています。男性に圧倒的に多くみられますが、女性より男性のほうが多く喫煙をするからだろうと考えられています。同じくらいの本数のたばこを同じ期間吸い続けた場合には、男性よりも女性のほうが発症しやすいというデータもあります。

ごくまれに、α1ートリプシンという酵素が先天的に欠損している場合に、環境因子が加わって、肺気腫を発症することもわかっています。そのほかに、家族集積性があることなどから、遺伝的要素も推定されています。

自覚症状としては、体動時の息切れ、息苦しさが主です。若年性肺気腫の症状として代表的な息切れは、季節変動や日内変動がそれほど著しくなく、階段の上り下りや軽い運動など体を動かした時に強くなり、休むと改善します。息苦しさは、膨らんだ肺が横隔膜や心臓を圧迫すると感じやすくなり、胸部が前にせり出して樽(たる)状になります。

疾患の進行とともに、息切れは徐々に悪くなり、自分のペースで平地を歩いていても、安静にしていても呼吸困難を生じるようになります。風邪を引いたり、こじらせて気管支炎や肺炎を併発すると、息を吐き出す力がうんと弱まるため、息切れは一段と強くなります。

また、肺の疾患に多くみられる症状である、せき、たんも多くなります。せきは、肺気腫に感染症を伴ったり、肺動脈圧が高くなり右心室の肥大拡張が生じる肺性心になった時など、症状が短期間に著しく悪くなる急性増悪の時に多く認められます。たんは、慢性の気道炎症により過剰になった気道分泌物によるもので、やはり、急性増悪の時に多く認められます。

若年性肺気腫の検査と診断と治療

内科、あるいは呼吸器科の医師による若年性肺気腫を含めた肺気腫の確定診断は、肺の組織を採取して顕微鏡で観察し、初めて決定されます。肺線維化の所見を認めず、呼吸細気管支を中心とした肺胞壁または肺胞壁全体の破壊と拡張が病理形態的に確認されることが必要です。しかし、肺の組織を採取することは発症者の苦痛を伴いますので、通常は胸部レントゲン写真とCT写真、呼吸機能、血液検査などから総合的に判断します。

肺気腫の治療では、壊れた肺胞組織を再生させる方法がないため、現状維持と症状の改善を目的とした治療が行われます。発症時に、たばこを直ちに中止しても、疾患の進行をなくすことはできません。しかし、そのまま吸い続けると、肺気腫の急激な進行も予想され、まず禁煙することが最重要です。周りの人の吸っているたばこの煙である副流煙も、自分で吸うのと同じように悪いことがわかっていますので、喫煙者の多くいる環境は避けたほうがよいでしょう。

根治治療となるのは、外科手術による肺の移植です。といっても、臓器手術は提供者との移植適合性を考えて行わなければならないため、あまり現実的な方法であるとはいえません。現在、肺気腫の新しい治療法として注目されているのが、肺減量療法と呼ばれる外科手術です。この治療法は、肺胞が壊れた患部を切除して肺の大きさを縮め、肺機能を正常化するというもの。肺減量療法には、両肺の手術を一度に行うことができる胸骨正中切開法と、切開する個所が小さく発症者の負担を抑えられる胸腔(きょうくう)鏡法があります。

若年性肺気腫を含めた肺気腫の内科治療は、根治治療が望めるものではなく、症状の進行を遅れさせることを目的としたものです。薬剤の投与を行い、肺機能を維持することを目的とします。

初期で、階段の昇降や坂道での息切れや、息苦しさを自覚したての時には、肺での空気の出し入れがしやすくるように、気管支拡張剤の内服や、気道のクリーニングのために、たんを出しやすくなる去痰(きょたん)剤を内服します。

一般的な気管支拡張剤には、吸入用気管支拡張剤とテオフィリン製剤があります。吸入用気管支拡張剤は、鼻から吸入することによって空気の通り道である気管支を広げる働きがあり、気管支喘息(ぜんそく)の発症者で使われる薬と同様のものです。

テオフィリン製剤は、経口薬で効果が長く持続する特徴があります。気管支拡張効果は吸入用気管支拡張剤と比べると強いものではありませんが、呼吸に使う筋肉の力を強めたり、肺の中の血管の抵抗を下げて心臓に対する負担を軽くする作用もあるため、発症者によってはとても有効です。食欲不振や吐き気などの消化器症状、頻脈、手の震え、不眠などの副作用も出やすい薬なので、注意深く使う必要があります。

また、気管支を拡張する目的で、β刺激剤や抗コリン剤という機序の異なる薬を併用することもあります。肺気腫の場合は普通、気管支喘息の場合とは違って抗コリン剤のほうが多く使われますが、両者を併用したり、β刺激剤のほうを使うこともあります。ただし、β刺激剤を使いすぎると、手の震えや脈拍が速くなるなどの副作用があります。

日常の生活については、特に神経質になることはありませんが、規則正しい生活をして、体力を落とさないことが大切です。風邪をこじらせると肺炎になりやすいので、早めの治療が必要です。肥満の人は呼吸筋の働きをよくするために、ダイエットしたほうが経過がよいようです。やせすぎの人は、良質の蛋白(たんぱく)質を多めに摂取するように心掛けるべきです。

息切れのため、運動が面倒になりがちですが、適度の運動は必要です。専門機関で、自律訓練によるリラクゼーションや呼吸リハビリテーションを受け、呼吸法について指導を受けるのも、よい方法と考えられます。

肺気腫の急性増悪期で、気道や肺の感染症、肺性心などを合併すると、呼吸苦が増悪します。呼吸困難感が、強くなった場合には、抗生物質の点滴や、利尿剤など、原因に見合った治療が行われます。一時的に、酸素の吸入が必要になる場合もあります。

肺気腫の進行期で、着替えをしたり少し歩いただけで息切れし、安静にしていても呼吸苦が続いたり、炭酸ガスが貯留して頭痛や冷や汗、思考力の低下などが生じる場合には、在宅酸素療法が必要なこともあります。鼻チューブを介して酸素吸入をしながら、自宅で日常生活を送るものですが、現在では酸素吸入装置も便利で軽くなり、酸素吸入をしながら外出をすることも珍しくなくなりました。在宅酸素療法には保険が適用され、 全国で10万人以上の人が利用しています。

肺の疾患の治療として行われる転地療法は、若年性肺気腫にも有効です。空気がきれいな場所で、原因となるものから遠ざかることで、症状の改善を図れます。ただし、気管支炎を併発している場合、気管支炎の治療を並行して行う必要があります。

🇵🇾縦隔炎

胸腔を左右に区切る縦隔に炎症が起こる疾患

縦隔炎とは、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔に炎症が起こる疾患。

縦隔は、左右の肺の真ん中にあり、縦に広がる円筒状の空間。前方を胸骨、後方を脊椎(せきつい)、下方を横隔膜に囲まれています。その中には、前部に心臓、大動脈、大静脈、胸腺(きょうせん)、横隔膜神経、後部には気管、食道、迷走神経が収まっています。

この縦隔炎には、急性型と慢性型があります。急性縦隔炎の多くは、間違って異物を飲み込んだり、内視鏡検査などで誤って損傷を受けたりして、食道の穿孔(せんこう)、破裂に続いて起こります。食道がんや食道憩室の穿孔に続いて起こることもあります。食道に穿孔、破裂が起こると、胸骨後方の激痛、発熱、嚥下(えんげ)困難、寒け、せき、呼吸困難、頸部(けいぶ)痛などが急性に現れます。重症になると、細菌が血液の中に入り、敗血症を発症する場合もあります。

慢性型の縦隔炎では、縦隔組織にひきつれができ、それが徐々に進行します。疾患の初期には無自覚、無症状であることもしばしばですが、そのうち血管が圧迫されて、顔や首の前側がはれます。これは腰をかがめたり、横になった場合に、より顕著になります。時には、胸部の圧迫感や喘鳴(ぜんめい)が聞こえることもあります。

縦隔炎の検査と診断と治療

間違って異物を飲み込んだり、内視鏡検査を受けて帰宅後に胸骨後方の激痛を感じた場合、食道がんの既往がある人が同様の症状を感じた場合には、すぐに内視鏡検査をした医師などに連絡をとります。

医師は速やかに、胸部X線を撮影します。胸部X線像では、異物が認められたり、縦隔陰影の拡大や縦隔気腫(きしゅ)がみられます。血液検査では、白血球数の増加やCRP(C反応性蛋白)が高値を示します。

急性型の縦隔炎の治療には、大量の抗生物質を使用します。化膿(かのう)している部位があれば、外科手術で取り除くことが必要となります。食道がふさがるまでは、絶飲絶食として点滴で栄養を補給します。原因が食道がんの場合、予後は極めて不良ですが、ほかの原因の場合ではおおむね治ります。

慢性型の縦隔炎の治療では、原因となっている疾患の治療と同時に、炎症に対する治療を行います。外科手術などで、縦隔に加えられた圧力を取り除くこともあります。

🇵🇾縦隔気腫、縦隔血腫

胸腔を左右に区切る縦隔に気体、あるいは血液がたまる疾患

縦隔気腫(じゅうかくきしゅ)とは、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔の中に気体がたまる疾患。縦隔血腫とは、縦隔の中に血液がたまる疾患。

縦隔は、左右の肺の真ん中にあり、縦に広がる円筒状の空間。前方を胸骨、後方を脊椎(せきつい)、下方を横隔膜に囲まれています。その中には、前部に心臓、大動脈、大静脈、胸腺(きょうせん)、横隔膜神経、後部には気管、食道、迷走神経が収まっています。

この縦隔に、傷付けられた気管や気管支から空気が漏れ出てたまるのが縦隔気腫であり、同じように、血管から血液が流れ出てたまるのが縦隔気腫。

原因となるのは、交通事故などによる胸部の強い打撲、銃弾や刃物などによる外傷、気胸、皮下気腫、気管支ぜんそくなど。症状としては、胸痛、胸部圧迫感、皮膚が紫色になるチアノーゼ、血たんなどが現れます。重症になると、顔や首のはれが現れ、窒息することもあります。

これらは往々にして、原因を作った外傷や、合併してみられる気胸などの陰に隠れて、見逃されてしまいます。

縦隔気腫、縦隔血腫の検査と診断と治療

進行性で高度な縦隔気腫、縦隔血腫の場合は、一般の人ができる応急処置は特にありません。重い呼吸障害を起こす肺損傷や気管損傷、気管支損傷に起因していることが多いので、一刻も早く救急車を呼ぶ必要があります。

医師による診断では、胸部単純X線検査や胸部CT検査が行われます。

縦隔気腫、縦隔血腫の治療は、流出した空気や血液が少量の時には必要ありません。流出した空気や血液が多量で、疾患が進行している場合などには、空気や血液が漏れた原因の治療が行われます。内科的な治療で改善の見込みが薄い場合、打撲や外傷が原因の場合は、外科的な手術が行われます。

🇨🇱縦隔ヘルニア

胸膜と肺の一部が縦隔を越えて、反対側の胸腔に突き出た状態

縦隔ヘルニアとは、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔の弱い部分を越えて、胸膜と肺の一部が反対側の胸腔内に突き出した状態。ヘルニアとは、体内の臓器などが本来あるべき部位から逸脱した状態を指します。

縦隔は、左右の肺の真ん中にあり、縦に広がる円筒状の空間。前方を胸骨、後方を脊椎(せきつい)、下方を横隔膜に囲まれています。その中には、前部に心臓、大動脈、大静脈、胸腺(きょうせん)、横隔膜神経、後部には気管、食道、迷走神経が収まっています。

縦隔の上部や縦隔の後下方では、両側の胸膜がほとんど接触するまで接近していて、わずかな小血管やリンパ節があるだけなので抵抗力が弱く、医療行為に伴う人工気胸や、自然気胸などで気胸が発生した側の胸腔内圧がある程度以上高くなると、縦隔の抵抗の弱い部分が反対側へ突き出します。

また、一方の肺が炎症や無気肺のために委縮したり、治療のために切除されている場合には、内圧低下や癒着を起こして、縦隔が同じ側の胸腔へ引っ張られて突き出していくこともあります。

通常、症状が全くみられない場合が多く、健康診断などの胸部X線撮影で発見されるのがほとんどです。ただし、ヘルニアが高度で、特にその内容が反対側の肺の時は、突き出した肺の呼吸不全や、もう一方の肺の圧迫などで、呼吸困難、心悸(しんき)高進、胸内重圧感などの症状が現れます。

縦隔ヘルニアの検査と診断と治療

医師による診断では、胸部単純X線検査や胸部CT検査が行われます。

自覚症状のない場合は、特に緊急の治療は不要です。気胸、肺気腫(きしゅ)、肺嚢胞(のうほう)症、無気肺など縦隔ヘルニアの原因となる疾患がある場合には、その治療が先決となります。

2022/08/25

🇳🇮受動喫煙

受動喫煙とは、たばこを吸わない人が吸う人と同じ空間にいることで、自分の意思とは関係なく、たばこの煙を吸い込んでしまうこと。間接喫煙ともいいます。

受動喫煙で吸い込む副流煙、すなわち、たばこの先の火のついた部分から立ち上る煙のほうが、喫煙者が直接口から吸い込む主流煙よりも、ニコチンやタール、一酸化炭素を始め、非常に発がん性の高いベンツピレンなど200種以上の有害物質を多く含むことがわかっています。

その他、喫煙者が口から吐き出す煙を吐出煙と呼び、副流煙と混ざって室内の空間に立ち上る煙は、環境たばこ煙といいます。たばこを吸わない人も同じ空間にいれば、環境たばこ煙を吸い込みます。

燃焼されて発生する煙がたばこの中を通り、フィルターを通って喫煙者の体の中に入っていく主流煙は酸性であるため、副流煙と比べて刺激が少なくなっています。副流煙は強いアルカリ性で、アンモニアなども含まれて刺激臭を伴うので、目や鼻の粘膜をより刺激します。

受動喫煙による害には、のどの痛み、心拍数の増加、血圧上昇などがあります。また、肺がんや虚血性心疾患、呼吸器疾患などにかかりやすくなります。とりわけ、子供は大人以上に影響を受けやすくなり、家庭内の喫煙によって、気管支炎、喘息(ぜんそく)などを起こす率が高くなったり、乳幼児突然死症候群が増加することも明らかになっています。

なお、厚生労働省の研究班が2010年9月28日に、受動喫煙が原因の肺がんや心筋梗塞(こうそく)で年間約6800人が死亡しているとの推計値を発表しています。うち職場での受動喫煙が原因とみられるのは約3600人で、半数以上を占めました。喫煙による死者は年間約13万人と推計されていますが、受動喫煙に関する推計は初めてで、研究は喫煙との因果関係が明らかな肺がんと心筋梗塞に絞って実施。

健康増進法では、受動喫煙を「室内かそれに準ずる環境で、他人のたばこの煙を吸わされること」と定義しています。健康被害を防ぐため厚生労働省は2010年2月、飲食店やホテル、百貨店など多くの人が利用する公共的な施設に対し、建物内での全面禁煙実施を求める通知を出しました。

2022/08/24

🇱🇺女性性器結核

結核菌が女性の生殖器に感染することによって起こる感染症で、肺外結核の一種

女性性器結核とは、結核菌が女性の生殖器に感染することによって起こる感染症。肺外結核の一種です。

原因菌である結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌です。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、尿路、そして男女の生殖器にも起こります。

女性の性器結核は、結核菌が卵管、子宮内膜、卵巣、腟(ちつ)壁に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って卵管、子宮内膜、卵巣などに連続的に感染することが多く、一方では腎臓、尿路の結核に続発して卵管などに逆行性に感染したり、男性の性器結核者から膣口を通して直接的に感染したりします。

女性性器結核は、粟粒結核を作り、滲出(しんしゅつ)性病変と増殖性病変とを形成しながら、次第に周囲の組織と癒着していきます。このため、卵管の狭窄(きょうさく)や癒着が起こり、卵管に腫瘤(しゅりゅう)や高度の癒着が生じます。また、子宮内膜に炎症が起こると、受精卵や卵子の着床障害を引き起こすことがあります。

そのため、不妊症や月経異常、不正出血、下腹部痛、腹部の膨満感、腰痛などの症状がみられることがあります。

しかし、女性性器結核は、ほとんどが自覚症状がないままに経過するので、不妊症の検査を受けて発見されることもあります。

結核が減少している近年では、結核の二次的発症である女性性器結核の頻度は低下しています。

女性性器結核の検査と診断と治療

産科、婦人科、あるいは泌尿器科の医師による診断では、月経時の経血から結核菌が存在するかどうかを調べる月経血培養検査を行います。

通常生理が始まって1~3日目の経血が最も多くなる日を検査日として、膣内にたまっている経血を注射器などで採取して数十時間培養し、含まれている菌の種類や量を調べます。結核菌が存在する場合、性器結核を発症していなくても月経不順や無月経などになっていることもあります。

卵管の狭窄、癒着があるかどうかを調べるために、子宮卵管造影検査や腹腔鏡検査などを行うこともあります。

産科、婦人科、あるいは泌尿器科の医師による治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。腎臓結核により片方の腎臓の機能が完全に失われている場合には、内科的療法の前に腎臓を摘出する外科的療法を先行することを積極的に検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

早期発見、早期治療を行えば女性性器結核は治りますから、これが原因となっていた不妊であれば、妊娠する可能性も高くなります。

2022/08/23

🇯🇵性器結核

結核菌が男女の生殖器に感染することによって起こる感染症で、肺外結核の一種

性器結核とは、結核菌が男女の生殖器に感染することによって起こる感染症。肺外結核の一種です。

原因菌である結核菌は、正式な名称をマイコバクテリウム・ツベルクローシスで、グラム陰性無芽胞性桿菌(かんきん)に所属する抗酸性の細菌です。この結核菌は、酸、アルカリ、アルコールに強い上に乾燥にも強く、また空気感染を引き起こします。

基本的には、その多くは肺に孤立性の臓器結核を発症する肺結核の病原菌になりますが、低い頻度ながら、肺外結核と呼ばれる肺以外への結核菌感染症を引き起こします。

肺外結核は、主に結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、そして男女の生殖器にも起こります。

男性の性器結核は、結核菌が前立腺(ぜんりつせん)、精巣(睾丸〔こうがん〕)、精巣上体(副睾丸)、精嚢(せいのう)腺、精索に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って前立腺、精巣上体、精巣などに連続的に感染することが多く、一方では尿路の結核に続発して尿路、精路に沿って前立腺などに逆行性に感染し、炎症を起こして、硬い凹凸のあるはれを生じます。

男性の性器結核で感染部位のはれが起こっても、ほとんどは自覚症状はないものの、時に精巣などの痛み、不快感、下腹部痛を生じることもあります。

また、精巣上体の結核は精路の物理的閉塞(へいそく)から、精巣の結核は精巣機能の障害から、それぞれ男性不妊症の発生に関連する場合があります。特に長期的、慢性的に炎症が継続すると、男性不妊症の発生頻度が上昇しやすくなります。

女性の性器結核は、結核菌が卵管、子宮内膜、卵巣、腟(ちつ)壁に病巣を作ることによって起こります。

結核菌が血管を通って卵管、子宮内膜、卵巣などに連続的に感染することが多く、一方では尿路の結核に続発して卵管などに逆行性に感染したり、男性の性器結核者から膣口を通して直接的に感染したりします。

女性性器結核は、粟粒結核を作り、滲出(しんしゅつ)性病変と増殖性病変とを形成しながら、次第に周囲の組織と癒着していきます。このため、卵管の狭窄(きょうさく)や癒着が起こり、卵管に腫瘤(しゅりゅう)や高度の癒着が生じます。また、子宮内膜に炎症が起こると、受精卵や卵子の着床障害を引き起こすことがあります。

そのため、不妊症や月経異常、不正出血、下腹部痛、腹部の膨満感、腰痛などの症状がみられることがあります。

しかし、女性性器結核は、ほとんどが自覚症状がないままに経過するので、不妊症の検査を受けて発見されることもあります。

結核が減少している近年では、男女ともに、結核の二次的発症である性器結核の頻度は低下しています。

性器結核の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による男性の性器結核の診断では、血液検査や尿検査、前立腺液検査、ツベルクリン反応検査などを行い、体内に結核菌があるかどうかを調べます。

前立腺や精巣、精巣上体が結核にかかっている場合には、痛みや発熱などの症状がなくても、硬い凹凸のあるはれがみられたり、感染が進行すると精巣と精巣上体の境界がわからないほどの一塊となったはれがみられたりするので、触診による検査を初めに行うこともあります。

性器結核に尿路結核が併発していることが多いため、静脈性尿路造影ないし逆行性尿路造影、CT(コンピュータ断層撮影)検査、膀胱(ぼうこう)鏡などの画像検査を行うこともあります。

また、前立腺や精巣にがんなどの腫瘍(しゅよう)ができている場合にも、同じようなはれが現れたり下腹部痛を感じる場合があるため、前立腺がんなどの検査を同時に行うこともあります。

泌尿器科、あるいは産科、婦人科の医師による女性の性器結核の診断では、月経時の経血から結核菌が存在するかどうかを調べる月経血培養検査を行います。

通常生理が始まって1~3日目の経血が最も多くなる日を検査日として、膣内にたまっている経血を注射器などで採取して数十時間培養し、含まれている菌の種類や量を調べます。結核菌が存在する場合、性器結核を発症していなくても月経不順や無月経などになっていることもあります。

泌尿器科、あるいは産科、婦人科の医師による性器結核の治療では、抗結核剤の投与による化学療法を中心とする内科的療法を行います。

肺結核に準じて、普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の抗結核剤を投与し、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類の抗結核剤の投与にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

抗結核剤の投与によっても完治しない場合には、外科的療法を検討します。

自覚症状があまり現れないため、結核菌が発見されて治療が始まっても、薬の服用を忘れてしまったり自己判断でやめてしまう人もいます。しかし、結核菌は中途半端な薬の使用で薬に対する耐性ができてしまうこともあるので、服用の必要がなくなるまできちんと検査を受ける必要があります。

性器結核は治療すれば治りますから、これが原因となっていた不妊であれば、妊娠する可能性も高くなります。

2022/08/21

🇲🇾先天性気管狭窄症

生まれ付き、空気の出し入れを行う気管が細い疾患

先天性気管狭窄(きょうさく)症とは、のどから肺までの気管が生まれ付き細い疾患。医学が進歩した現在でも、治すことが難しい疾患の1つに挙げられています。

気管は、空気の出し入れを行う道に相当します。正常な気管は全周の80パーセントの気管軟骨と20パーセントの膜様部と呼ばれる薄い膜でできていますが、この疾患の大部分は膜が欠如していて、軟骨が気管の全周を占めています。これは、気管軟骨の形成異常のために生じると考えられています。

正常な気管は首を動かしても軟骨の輪をつないでいる膜様部が自由に伸び縮みして、空気の出し入れが妨げられることはありません。また、大きな呼吸をすると膜様部が伸びて気管の内腔(ないくう)を大きく開き、空気の出し入れを容易にします。先天性気管狭窄症では、これらの働きが大なり小なり障害されます。

気管の狭窄の程度や、狭窄の長さ、また狭窄が起きる気管の部位によって、疾患の発生時期や重症度が変わってきます。内腔が極端に細い場合には、生まれて間もなく生じる呼吸困難のために発見されます。内腔が半分くらいある場合には、1歳をすぎてから見付かることもあります。狭窄の程度が軽度である場合には、無症状に推移することもあります。

多くの場合は、生後1〜2カ月頃から呼吸困難や、呼吸時のゼーゼー、ヒューヒューという喘鳴(ぜんめい)音が発生し、時には突然呼吸困難に陥り、気管内にチューブを入れようとして入らないために生後比較的早い時期に見付かります。

狭窄の形と狭窄の長さはさまざまで 、狭窄の長さは気管の20~30パーセント程度から、気管全体が細い場合もあります。狭窄の長さが長いほど、狭窄の部位が気管の下にあるほど、疾患の程度は重いと考えられています。

気管支の分岐に異常を起こす気管気管支炎を合併していたり、肺動脈による血管輪症を合併することも多く、先天性心疾患の合併も多くみられます。かつては数万人に一人のまれな疾患と考えられていましたが、診断法の進歩や疾患に対する理解から、以前より多い頻度で発見されるようになっています。

先天性気管狭窄症の検査と診断と治療

医師による診断では、胸部単純撮影、MRI、3次元CT(3DCT)、硬性気管支鏡検査、並びに気管支造影が行われます。硬性気管支鏡検査は、狭窄起始部の同定、狭窄の範囲、末梢(まっしょう)気管支の状態の検索のために必須です。他の疾患を合併している場合には、他の検査も行われます。

保存的な治療としては、狭窄の程度が軽く、呼吸症状が軽度な場合に、去たん剤、気管支拡張剤、抗生物質を投与し、経過観察します。成長とともに狭窄部気管が拡大し、症状が軽減していくこともあります。しかし、気道感染などを切っ掛けに、急激に症状が悪化することもあります。

外科的な治療としては、気管の狭窄の長さがごく限られている場合には、細い気管を切除し、上下の気管を縫い合わせます。狭窄が長い場合は、さまざまな気管形成術が行われています。まず、狭窄部の気管前壁を縦に切開し、切開部に肋(ろく)軟骨、骨膜、心膜などの自家グラフトを当て、内腔を拡大する方法があります。気管後壁を縦に切開し食道壁を用いて拡大する方法や、内視鏡下に狭窄部をバルーン拡張したり、その後にステントを留置して拡大を図る方法もあります。

2022/08/19

🇰🇭フィコミコーシス

ムーコル目の真菌を吸い込むことで発症する感染症

フィコミコーシスとは、空気中に浮遊するムーコル目の真菌(かび)の胞子を気道から吸い込むことが原因となって、発症する感染症。ムーコル症とも呼ばれます。

ムーコル目の真菌には、ケカビ、アブシディア、クモノスカビなどがあり、土壌、堆肥(たいひ)、野菜などの自然界に広く生息しています。健康である限り、ムーコル目の真菌が人間に感染することはありません。免疫不全、代謝異常、慢性消耗性疾患などを持つ人の肺などに感染し、特に血糖管理の不十分な糖尿病は最も感染リスクが高い疾患となっています。

肺のほか、鼻と脳に感染し、まれに皮膚や消化管にも感染します。急性に進行する重度の感染症では、場合によっては死に至ります。

肺のフィコミコーシスは、発熱、せき、時に血たんや喀血(かっけつ)、呼吸困難を生じることもあります。

鼻と脳のフィコミコーシスでは、痛み、発熱のほか、眼窩(がんか)へ感染した眼窩蜂巣(ほうそう)炎による眼球突出などがあります。鼻からうみが出て、口の天井に当たる口蓋(こうがい)、眼窩、副鼻腔(ふくびくう)周辺の顔の骨、2つの鼻孔(びこう)を仕切っている壁の破壊も起こります。脳に感染すると、けいれん発作、部分まひ、昏睡(こんすい)が起こります。

フィコミコーシスの検査と診断と治療

フィコミコーシスの症状に気付いたら、呼吸器疾患専門医のいる病院を受診します。早期に診断されない場合は急速に病状が進行しますので、注意が必要です。

フィコミコーシスの症状は他の感染症とよく似ているので、医師がすぐに診断を下すことは容易ではありません。胸部X線検査で浸潤影が認められる場合に本症が疑われ、確定診断のためには、たんや病巣から病原真菌を検出、培養する必要があり、典型的には気管支鏡検査法により肺から、および前検鼻法により副鼻腔から採取します。

しかしながら、培養には時間がかかるため、急性で生命を脅かす病態に対する迅速な確定診断用としては、適していません。発症者の状態が悪いことから、体への負担が大きい気管支鏡検査を行えないケースも多く、確定診断は困難なことがしばしばあります。

フィコミコーシスの治療には、一般に抗真菌剤のアムホテリシンBを静脈内投与するか、髄液の中に直接注射します。また、薬で真菌の活動を抑えた後、感染組織を外科手術で取り除くこともあります。基礎疾患に糖尿病がある場合には、血糖値を正常範囲まで下げる治療を行います。

真菌は真核生物であり、原核生物である細菌とは異なって、構造が複雑で菌糸や分生子(分生胞子)を形成します。それがフィコミコーシスの治療を難しくしていて、死亡率の高い、非常に重い疾患としています。

🇳🇵非結核性抗酸菌症

結核菌以外の抗酸菌によって引き起こされ、肺などに病変ができる疾患

非結核性抗酸菌症とは、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌によって引き起こされ、肺などに病変ができる呼吸器感染症。非定型抗酸菌症とも呼ばれます。

抗酸菌とは、結核の原因である結核菌の仲間を指し、水中や土壌など自然環境に広く存在して、酸に対して強い抵抗力を示す菌です。結核菌よりもかなり病原性が低く、健康な人では気道を介して侵入しても通常は速やかに排除されて、ほとんど発症しません。

結核と症状が似ているために間違えられることもありますが、結核と非結核性抗酸菌症の大きな違いは、人から人へ感染しないこと、疾患の進行が緩やかであること、抗結核剤があまり有効でないことなどがあります。

非結核性抗酸菌症の原因は通常、非結核性抗酸菌(マイコバクテリウム)と呼ばれる抗酸菌で、約150種類が知られており、人に病原性があるとされているものだけでも10種類以上あります。日本で最も多いのはマイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ(MAC菌)で、約80パーセントを占めます。次いでマイコバクテリウム・カンサシイが約10パーセントを占め、その他が約10パーセントを占めています。

リンパ節、皮膚、骨、関節など全身どこにでも病変を作る可能性はありますが、結核と同様、最も病変ができやすいのは肺です。発症様式には2通りあり、1つは体の弱った人あるいは肺に古い病変のある人に発症する場合、もう1つは健康と思われていた人に発症する場合です。感染系路として、非結核性抗酸菌の吸入による呼吸器系からの感染と、非結核性抗酸菌を含む水や食物を介する消化器系からの感染があると見なされています。

自覚症状が全くなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然、見付かる場合があります。症状として最も多いのは咳(せき)で、次いで、痰(たん)、血痰、喀血(かっけつ)、全身倦怠(けんたい)感など。進行した場合は、発熱、呼吸困難、食欲不振、やせなどが現れます。一般的に症状の進行は緩やかで、ゆっくりと、しかし確実に進行します。

結核の減少とは逆に、非結核性抗酸菌症の発症者は増えてきており、確実に有効な薬がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。特に、気管支を中心に病変を作る肺MAC症が中年以降の女性に増えていますが、近年は若年者にも見付かっています。

症状に気付いたら、呼吸器科の医師、あるいは内科、呼吸器内科、感染症内科の医師を受診するのがよいでしょう。

非結核性抗酸菌症の検査と診断と治療

医師の診断の糸口は、胸部X線やCTなどの画像診断です。最も頻度の高い肺MAC症は、特徴的な画像所見を示します。異常陰影があり、喀痰(かくたん)などの検体から非結核性抗酸菌を見付けることにより、診断が確定されます。

ただし、非結核性抗酸菌は水中や土壌など自然環境に広く存在しており、たまたま喀痰から排出されることもあるので、ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床所見と一致することが必要です。

2008年に肺MAC症の診断基準が緩やかになり、特徴的画像所見、他の呼吸器疾患の否定、2回以上の菌陽性で診断できることになっています。菌の同定は、PCR法やDDH法などの遺伝子診断法により簡単、迅速に行われます。

非結核性抗酸菌症と最も鑑別すべき疾患は、結核です。そのほか、肺の真菌症、肺炎、肺がんなども重要です。

医師による治療は、結核に準じて行われます。非結核性抗酸菌の多くは抗結核剤に対し耐性を示しますが、治療に際しては、菌によって効果があるので、まずは抗結核剤をいくつか併用します。

最も一般的なのはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシンの4剤を併用する方法です。この方法による症状、X線像、排菌の改善率は、よくても50パーセント以下にすぎません。治療後、再び排菌する例などもあり、全体的な有効例は約3分の1、副作用の出現率も3分の1程度あります。

薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があり、確実に有効な治療法がないので患者数は増え、進行例が増えてきているのが現状です。完全に治すことは難しく経過観察が必要ですので、非結核性抗酸菌症と診断された場合には、通院不要と判断されることはありません。自覚症状がないまま悪化する場合もあるので、症状がなくても通院を中断しないことが重要です。

症状が特に強く、肺病変が著しい場合には、肺切除などの外科療法が行われます。

生活は普通通りにできますし、人から人へ感染しないので、自宅で家族と一緒に生活してもかまいません。水中や土壌など自然環境に存在している非結核性抗酸菌が感染するということは、体が弱っている、すなわち免疫が落ちていることが考えられますので、過労を避けつつ適度な運動を心掛けて、体力を増強させるような生活が望まれます。

2022/08/18

🇦🇿非定型抗酸菌症

慢性的に経過しながら、確実に肺をむしばんでいく疾患

非定型抗酸菌症とは、結核菌と、らい菌以外の抗酸菌で、通常、非定型抗酸菌と呼ばれるものが起こす疾患。非結核性抗酸菌症とも呼ばれます。

抗酸菌は酸に対して強い抵抗力を示す菌であり、非定型抗酸菌にはたくさんの種類があって、水や土など広く自然界に存在しています。人間に病原性があるとされているものだけでも10種類以上。日本で最も多いのは、MAC菌(マイコバクテリウム・アビウム・イントラセルラーレ)で、約75パーセントを占めます。次いで、マイコバクテリウム・キャンサシーが約15パーセント、その他が約10パーセントを占めています。

人間への感染経路は明らかではありませんが、同じ抗酸菌である結核菌よりもかなり病原性の低い菌であり、健康な人ではほとんど発症しません。発症した場合も、人間から人間へは感染しません。

全身どこにでも病変を作る可能性はあるものの、結核と同様、ほとんどは肺の疾患です。発症様式には、もともと健康であった肺に感染する一次型と、結核後遺症や気管支拡張症などによって傷んだ肺に感染する二次型とがあります。高齢者は、特に二次型に注意が必要。

症状に際立った特徴はなく、せき、たん、軽い発熱、倦怠(けんたい)感などがあります。自覚症状が全くなく、胸部検診や結核の経過観察中などに偶然見付かる場合もあります。

発症するとその多くは治療が容易ではなく、慢性的に経過しながら少しずつ肺をむしばんでいくのが特徴です。進行した場合は、呼吸困難、喀血(かっけつ)、食欲不振、やせ、発熱などが現れます。肺結核と症状が似ているため、間違えられることもあります。

肺結核の減少とは逆に発症者が増えてきており、確実に有効な薬がないため、患者数は蓄積され、重症者も多くなってきています。また、HIV感染者への感染するエイズ合併症が問題になっています。

非定型抗酸菌症の検査と診断と治療

非定型(非結核性)抗酸菌症に気付いたら、結核に理解のある呼吸器科、あるいは結核療養所を受診します。

医師による診断では、喀たんなどの検体から非定型抗酸菌を見付けることにより確定されます。ただし、非定型抗酸菌は水や土など広く自然界に存在しており、たまたま喀たんから排出されることもあるので、ある程度以上の菌数と回数が認められることと、臨床症状、レントゲン写真の陰影の変化と一致することが必要です。

非定型抗酸菌症と鑑別すべき疾患には、結核のほか、肺の真菌症、肺炎、肺がんなどがあります。

非定型抗酸菌の多くは抗結核剤に対して耐性を示しますが、治療に際しては、菌によって効果があるため、まずは抗結核剤をいくつか併用します。最も一般的なのはクラリスロマイシン、リファンピシン、エタンブトール、ストレプトマイシンの4剤を同時に使用する方法。

確実に有効な薬がないため、薬は結核の時よりはるかに長期間服用する必要があります。 場合によっては、肺切除などの外科療法が行われます。

🇬🇪肺炎

肺炎の分類

肺炎とは、主に細菌やウイルスなどの病原体が肺に入り、酸素と炭酸ガスの交換を行う肺胞や肺間質など、肺の奥の領域に炎症が起きる疾患をいいます。

一口に肺炎といっても、そのタイプはさまざまです。罹患(りかん)場所によっては、ふだん健康な人がかかるものを市中肺炎、重症の病気で入院している人がかかるものを院内肺炎に分類します。炎症の範囲によっては、肺胞性肺炎、大葉性肺炎、気管支肺炎、 間質性肺炎に分類します。

呼吸の際に吸い込んだ感染源の種類によっては、細菌性肺炎、ウイルス性肺炎、心筋性肺炎などの感染性の肺炎と、薬剤性肺炎、アレルギー性肺炎などの非感染性の肺炎に分類します。

感染性の肺炎の場合、たとえば風邪やインフルエンザにかかって気管支の粘膜に炎症が起きたため、ふだんなら痰(たん)と共に出ていくような菌が残り、この菌によって起こされた炎症が肺胞まで達すると、細菌性肺炎を起こします。

特に高齢者の場合には、免疫力が落ちているため、ちょっとした風邪から肺炎を起すことが少なくありません。また、糖尿病、心臓病、脳血管障害、腎臓(じんぞう)病、肝臓病などの慢性疾患のある人も、免疫力が低下しているため要注意です。

片や、非感染性の肺炎は、たとえばエアコンのカビや加湿器の水に繁殖した真菌など、アレルギーを起こす原因物質(アレルゲン)が肺胞に入って反応し、アレルギー性肺炎を起こします。

また、細菌性肺炎と非細菌性肺炎に分類します。 細菌性肺炎は一般細菌の感染によって起こる肺炎で、実に多種類の細菌が関与します。普通はまず、ウイルス感染が起きて、気道粘膜が障害を受けたのに乗じた形で、細菌による二次感染が起きるという過程をとります。

非細菌性肺炎はさらに、インフルエンザウイルスなどによるウイルス性肺炎、微生物によるマイコプラズマ肺炎、同じく微生物によるクラミジア肺炎(オウム病)などに分類します。

肺炎の症状を細菌性肺炎を例にとって説明しますと、初めは喉(のど)の痛みや鼻水、鼻詰まり、咳(せき)、頭痛、悪寒といった風邪の症状から始まります。やがて高熱が続き、咳、痰、呼吸困難や胸の痛み、顔面紅潮、唇や爪(つめ)が青黒くなるチアノーゼなどの症状が現れます。

しかし、老人では重症の場合でも、あまり激しい症状が出ないことも少なくなく、気が付いた時にはかなり悪化していることもあります。

細菌性肺炎

細菌性肺炎の代表的なもので、市中肺炎を引き起こす主な原因となるのは、肺炎球菌によるものです。人間の右肺は上中下3つ、左肺は上下2つの大きな袋である肺葉に分かれていますが、この肺葉全体を侵す大葉性肺炎を起こすことで、肺炎球菌はかつては有名でした。抗生物質の発達した現在では、大葉性肺炎は珍しくなり、気管支肺炎にとどまるもののほうが多くなりました。

黄色ブドウ球菌も、肺炎を起こします。この菌のうち、ほとんどすべての抗生物質に耐性を示す耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)が近年、院内肺炎の原因となり、大きな問題となっています。

インフルエンザ杆菌(かんきん)も、肺炎を起こします。この菌の場合には、慢性の呼吸器病を持っている人に、繰り返し急性の気道感染を起こすのが、問題となっています。

同じように、緑膿菌(りょくのうきん)という厄介で、院内肺炎の原因となる菌があり、気管支拡張症、びまん性汎細(はんさい)気管支炎などの病気を持つ人の気道に住み付いて、治療をしてもなかなか取り除くことができません。

レジオネラ菌も、肺炎を起こします。1976年にアメリカで集団発生したことにより発見された菌で、建物の屋上などに設置されている冷却塔であるクーリングタワー、エアコンディショナーなど、空調設備や給湯系を介した感染や、土壌、河川などの自然環境からの感染が知られるところ。日本での特徴としては、温泉、特に消毒が不十分な沸かし湯を用いた風呂(ふろ)での感染が多いことです。

非細菌性肺炎

ウイルス性肺炎の中では、インフルエンザウイルスによる肺炎が最も重要です。高齢者や慢性の呼吸器病を抱える人では重症化しやすく、また細菌感染によって細菌性肺炎に移行しやすいためです。

風邪を起こすRSウイルス、はしかを起こす麻疹(ましん)ウイルスなども、肺炎を起こすことがあります。インフルエンザウイルス以外に、これらのウイルスに直接効く抗ウイルス薬は現在のところありませんので、細菌の二次感染に注意しつつ、対症療法が行われます。

ウイルスと細菌の中間のような微生物であるマイコプラズマも、頑固な咳を特徴とする肺炎を起こします。学童期や若年の成人に多く、乳幼児や高齢者に少ないというのも、マイコプラズマ肺炎の特徴の一つです。このマイコプラズマには、普通の細菌に有効なペニシリン系、セフェム系の呼吸器感染症で最も頻繁に使われている抗生物質が効きません。代わりに、テトラサイクリン系、マクロライド系、ケトライド系と呼ばれ抗生物質が、第一選択薬とされます。

ウイルスに近い微生物であるクラミジアも、クラミジア肺炎(オウム病)を起こします。病原体のクラミジアは、オウム、セキセイインコ、ハトなどに寄生して分裂、増殖します。感染、発病した鳥の排泄(はいせつ)物などから、空気中に飛散した病原体を吸入することによって、人間は発症します。病鳥に接してから1~2週間後に、風邪と同じ症状と共に激しい咳が出ます。重症の場合には、呼吸困難、意識障害も出現します。治療には、テトラサイクリン系、マクロライド系の抗生物質が用いられます。

以上、いろいろのタイプを紹介してきた肺炎は、かつては非常に怖い病気の一つでしたが、現在は胸部X線検査の進歩で早期に診断できるようになり、ペニシリン系、セフェム系などの抗生物質の開発で、完治しやすくなりました。

しかしながら、抵抗力の弱い乳幼児や高齢者、体の衰弱した病気の人などの肺炎による死亡率は依然として高く、油断できない病気だといえます。

日常生活においては、風邪を引かないように注意する、 うがいや歯磨きでいつも口の中を清潔にする、 自分のアレルゲンを知り予防対策をとる、室内の換気をよくし空気を清潔に保つ、禁煙するなどの予防対策を施したいものです。

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