胸膜と肺の一部が縦隔を越えて、反対側の胸腔に突き出た状態
縦隔ヘルニアとは、胸腔(きょうくう)を左右に区切る縦隔の弱い部分を越えて、胸膜と肺の一部が反対側の胸腔内に突き出した状態。ヘルニアとは、体内の臓器などが本来あるべき部位から逸脱した状態を指します。
縦隔は、左右の肺の真ん中にあり、縦に広がる円筒状の空間。前方を胸骨、後方を脊椎(せきつい)、下方を横隔膜に囲まれています。その中には、前部に心臓、大動脈、大静脈、胸腺(きょうせん)、横隔膜神経、後部には気管、食道、迷走神経が収まっています。
縦隔の上部や縦隔の後下方では、両側の胸膜がほとんど接触するまで接近していて、わずかな小血管やリンパ節があるだけなので抵抗力が弱く、医療行為に伴う人工気胸や、自然気胸などで気胸が発生した側の胸腔内圧がある程度以上高くなると、縦隔の抵抗の弱い部分が反対側へ突き出します。
また、一方の肺が炎症や無気肺のために委縮したり、治療のために切除されている場合には、内圧低下や癒着を起こして、縦隔が同じ側の胸腔へ引っ張られて突き出していくこともあります。
通常、症状が全くみられない場合が多く、健康診断などの胸部X線撮影で発見されるのがほとんどです。ただし、ヘルニアが高度で、特にその内容が反対側の肺の時は、突き出した肺の呼吸不全や、もう一方の肺の圧迫などで、呼吸困難、心悸(しんき)高進、胸内重圧感などの症状が現れます。
縦隔ヘルニアの検査と診断と治療
医師による診断では、胸部単純X線検査や胸部CT検査が行われます。
自覚症状のない場合は、特に緊急の治療は不要です。気胸、肺気腫(きしゅ)、肺嚢胞(のうほう)症、無気肺など縦隔ヘルニアの原因となる疾患がある場合には、その治療が先決となります。
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