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2022/09/14

🇬🇭体臭

■体臭のメカニズム■

《汗と体臭と、個性と》

 広辞苑によると、「体臭」とは「皮膚の汗腺・皮脂腺の分泌物から生ずる一種の臭気」、現代実用辞典に至っては、「からだのにおい」と素っ気ない表現で片付けています。

 しかし、汗をかく季節には、体臭を気にしないでいられる人は、少ないのではないでしょうか。特に潔癖症、臭い過敏症ともいえる現代人にとっては、自分や他人の体臭が気になります。そこで、そもそも体臭とは何かといった点から、考えてみましょう。

 体臭ができるメカニズムは、ほぼ解明されています。皮脂や汗など脂質の酸化が、その大きな原因です。同時に、体臭が「HLA」という遺伝子に関係しており、人によって臭いの種類も違えば、臭う強さも違うなど個人差があることも、わかっています。 

  私たち人間が動物である以上、他の動物と同様に、その個体を識別するものが「体臭」といったところが、妥当な認識ではないでしょうか。このように考えれば、「一般的に体臭が薄い」といわれる日本人でも、人によって臭いがほとんどなかったり、あるいは体臭そのものがよい香りだという幸運な人がいる一方、臭いが強かったり、あるいは自分の体臭は悪臭だと思い込んで悩む人がいるのも、納得できます。

 「自分の体臭は悪臭で、人に嫌われるのではないか」といった不安や悩みを持つことこそが、現代人の深刻な心の病の一つだとも、一説にいわれています。まずは、自分の個性の一つとして、体臭を前向きにとらえることから、対処してみたいものです。

《体臭の発生源とその理由》

発生源
働き
体臭となる理由
皮脂腺

皮脂を分泌し、体の表面を守り、潤いを与える。

空気に触れることで酸化し、臭いが生じる。

汗腺(エクリン腺)

汗を出すことで、体温と水分を調整している。

汗そのものは、ほとんど臭いがない。ただ、上記の皮脂と混ざり合い、雑菌が繁殖するなどして、臭いを発生させる。

汗腺(アポクリン腺)

異性へのアピール!?

脇の下、乳輪、外陰部など限られた部分にのみあり、この腺から分泌される汗には脂肪、鉄分、尿素、アンモニアなどが含まれ、汗そのものに大なり小なり臭いがある。

《実は、においに恋してる?》

 興味深い調査結果が、あります。未婚の女性に、男性の着たTシャツの「におい」をかいでもらい、好き嫌いの関係を探ったところ、父親由来のにおいの遺伝子(HLA)を多く持つ男性に対して、好意を持つ傾向があったというのです。

 これを推測していくと、女性は父親の、男性は母親のにおいと似ている異性を好むという仮説も、成り立ちます。また、特に脇の下のにおいは、思春期以降に出てくるため、フェロモンと関係しているといった説も、根強くあります。とかく否定されがちな存在ですが、体臭はもしかしたら、異性に好き嫌いを判定させる好材料なのかもしれませんね。

 因みに、日本ではあまり発達してこなかった化粧品に、香りの強い順に「香水」、「オードトワレ」、「コロン」などの種類がある「フレグランス」があります。まことしやかに語られてきた説では、「体臭が日本人より強い欧米人がにおいを隠すために、フレグランスを使う文化を発達させてきた」としていますが、まったくの俗説に属します。彼らが体臭を気にし始めた歴史より、香料を愛用し始めた歴史のほうが、圧倒的に古いからです。 

 このフレグランスを選ぶ際、おおかたの人は「香りが好き」といった基準で、つい選びがちなのではないでしょうか。しかしながら、フレグランスは自分の体臭や体温と相まって香りを醸し出すもの。最初から「体臭ありき」で発想し、選ぶのが正解なのです。

 かの女優、マリリン・モンローがシャネルNo.5をネグリジェにしていたという話は、あまりにも有名です。シャネルの香水がモンローの体臭と組み合わされた時、とても魅惑的な香りを放ったことと想像されます。

 自分の体臭と体温、それとの組み合わせで選ぶフレグランス。そのような視点で楽しめば、体臭そのものが自分の魅力をいっそう引き出す要素となるのです。香水やオードトワレの場合は、香りが強くて持続性もあるので、使用する量に気を付けましょう。自分にとってはよくても、周囲に不快感を覚えさせたり、必要以上に「派手な人」といった印象を与えることもあるので、配慮をお忘れなく。

《こんな臭いにはご用心》

 体から発せられるにおいには個人差があり、においの強さもまた人それぞれではありますが、時には、臭いの原因が病気に基づくこともあります。

 例えば、糖尿病になると甘い臭いがするようになり、甲状腺機能亢進症やパーキンソン氏病になると、皮脂腺が刺激され、独特の体臭が出るようになるといわれます。また、口臭がひどい場合は、内臓疾患の可能性もあります。

 大切な体をしっかりセルフチェックするためにも、日頃の自分の体臭を知っておくことが、大切となります。「体臭がいつもと違う」、「体のにおいが変わってきた」、「ケアをいろいろしても、臭いが軽減されない」…こんな時は、一度専門医に相談してみましょう。

■体臭防止の傾向と対策■

《清潔第一。食べ物注意》

 体臭は個性、あなたの魅力とはいえ、猛暑の夏に体臭が強くなっては、自分でもうっとうしいもの。周りから「汗くさい」なんていわれないためにも、生活や食事に一工夫していきましょう。

 臭い対策でまず最初に押さえておきたいのが、気持ち的なポイント。「汗をかきたくない」、「汗をかくと臭い→人に嫌われる」といった頭の中の思考回路を一

度、断ち切ることです。

 なぜかといえば、気にすれば気にするほど、汗をかく要因になるからです。これを「精神性発汗」といいます。例えば、緊張すると冷や汗が出たり、手に汗が浮いたりするのが、精神性発汗です。「汗をかくことは自然なことで、汗へのケアをすればよい」と気持ちを切り替えて、必要以上の心配は抑えていきましょう。

 次にケア。こちらは清潔第一。毎日、お風呂に入る、まめに下着を取り替えるといったことが基本ですが、近年はさまざまな制汗剤が出回っているので、出掛ける前に使用しておくのもよいでしょう。

 因みに、制汗剤とデオドラント剤では、もともとの発想が違うことをご存知ですか。制汗剤は、汗腺に働きかけて汗を出にくくするもの。デオドラント剤のほうは、臭いを作り出す雑菌を退治したり、繁殖を阻止するもの。覚えておくと、何かと便利でしょう。

 第三に、汗をかいたら、こまめの対処を。汗を拭(ふ)き取り、サッパリと。こちら用にもシート状の拭き取り剤が多数市販されているので、便利です。汗をかけば、誰でも気持ちが悪いもの。肌だって、同じなのです。汗をかいたまま放置されれば、肌が臭いを発生させる。つまり、汗臭さや体臭が強くなるのは、「不快だ」という肌からのサインともいえましょう。

 そして、もう一つ気を付けたいのが、食生活。下表で示すように、基本的に肉類の多い食生活をしていると、体臭は強くなるといわれています。欧米人の体臭が強いのも、食生活に一因があるとされています。

 逆に多く取りたいのが、抗酸化食品。先にも述べた通り、体臭の原因は脂質などの酸化。酸化を防げば、体臭も抑えることができるわけです。

《体臭を抑えるために控えたい食品》

控えたい食べ物
その理由
動物性たんぱく質

動物性たんぱく質や脂肪を多く含む肉や乳製品を多く摂取すると、脂質の分泌が増え、臭いのもととなる。汗も、かきやすくなる。肉・牛乳・チーズなどは、控えめにしよう。

辛いもの、臭いの強いもの

辛いものを食べると汗が出るのは、誰もが経験したことがあるはず。また、ニンニク・ニラ・ネギ・ラッキョウなどが臭いの原因であることも、周知の事実。夏は食べる時間や場所を選びたい。

《意識して取りたい抗酸化食品》

種類
多く含まれる食品
ビタミンE

小麦胚芽、植物油、アーモンド、ピーナッツ、うなぎ、緑黄色野菜など

ビタミンB2

どじょう、うなぎ、レバー、さば、干ししいたけ、強化米、納豆など

《部位別の臭いの原因とケア法》

 特に気になる部位には、適材適所の臭い対策を。

部位
臭いの原因
対策

頭皮や髪に皮脂がたまると、細菌に分解されて、臭いが発生。たばこなどの臭いが移りやすいことも、悪臭の原因に。

まめの洗髪を心掛ける。また、濡れていると臭いが移りやすいので、よく乾かす。

口 

唾液の分泌が少なくなると、細菌が繁殖し、食べカスの分解や発酵が進むために、悪臭が発生。

よく噛んで食べて、唾液の分泌を促す。食後は歯磨きをし、臭いの原因となる食べカスを残さない。口の中が渇いたら、適度な水分を補給する。ない場合には、ガムなどでも。

脇の下

アポクリン腺による独特の臭いが発生。

吸汗性の高い下着を身に着ける。消臭剤を利用する。食生活に注意する。

生殖器

アポクリン腺と恥垢によって、臭いが発生。

こまめに洗う。ただし、石鹸などの洗い残しがあると、それ自体が臭いの原因に。シャワーなどで洗い流す程度が、最もよい。

足の裏に密集したエクリン腺からの汗を、雑菌が分解。脂質とも混ざり合い、悪臭が発生。

程よいゆとりがあり、通気性の高い靴を選ぶ。2日続けて、同じ靴を履かない。とりわけ冬は体が汗をかかないぶん、手足が汗をかきやすくなる。時々、靴内をアルコールで拭くなどして、靴内の雑菌を排除する。足も、アルコールの入ったウエットティッシュで拭いたり、汗を抑える足用スプレーを使う。

 

🇹🇷脱毛、薄毛

■脱毛のメカニズム

 なぜ、人間は髪の毛が抜け落ちて、ハゲや薄毛になるのでしょうか。ハゲることに関しては、「ホルモン悪人説」と「血統・遺伝説」という二大原因説があります。

●ホルモン悪人説とは

 性別を問わず、私たち人間の毛髪はさまざまホルモンの影響を受けていますが、ハゲや薄毛には男性ホルモンが深く関わっています。中でも、人間の毛髪に影響を及ぼす男性ホルモンは、「テストステロン」と「DHT(5α-デヒドロテストステロン)」の2種類で、とりわけDHTはハゲや薄毛の引き金となる怖いホルモンです。 

 DHTは、毛根鞘にある5α-リダクターゼという還元酵素によりテストステロンが変身したもので、頭髪以外の体毛には多毛化を促す反面、頭髪に対してだけは成長を抑制するため、結果的にハゲ・薄毛へと導くことになります。これが「ホルモン悪人説」です。 

 このDHTは皮脂腺活性も高進させる作用を有するため、ハゲの人は皮脂過多になりやすい状況にあります。そのため、頭髪の皮脂軽減が発毛の根幹のように宣伝される傾向がありますが、皮脂の取りすぎはリバウンドで、さらに脱毛を悪化させることもありますので、適度がよいでしょう。 

 「ホルモン悪人説」の元凶とされるDHT以外に、人間の毛髪に影響を及ぼすホルモンには次のようなものがあります。

人間の毛髪に影響を及ぼすホルモン

1. テストステロン(男性ホルモン)

 テストステロンは、筋肉の増強を促し、男らしい体付きをつくります。

2. エストロジェン(女性ホルモン)

 頭髪が成長し続ける期間を長くする作用があり、全体からみれば頭髪の成長にプラスに働いているといえます。男性の頭髪成長期よりも、女性のほうが時間的に長いため、女性は腰のあたりまで髪を伸ばすことが可能なのです。

3. サイロキシン(甲状腺ホルモン)

 休止期にある頭髪の成長開始(成長活動)を早くするように、促す役目を持っています。同じ頭部でも、側頭部や後頭部はこの支配を受けているため、ハゲにくいといえます。

4. コルチゾン(副賢皮質ホルモン)

 甲状腺ホルモンとは逆に、頭髪成長期の開始を遅くします。しかし、分泌が過剰になると、全身多毛ということになります。   


 このように頭髪にはいろいろなホルモンが複雑に関係し、毛の成長をコントロールしています。その中でも、脱毛、抜け毛、ハゲ、薄毛に大きく関わってくるのが男性ホルモンであることは、間違いのないところです。

●血統・遺伝説とは 

 若いうちからハゲてしまう若ハゲ(若年性脱毛症)は、遺伝性であることが非常に多く、それも家系の中で男性だけに現われる遺伝形式(伴性優性遺伝)で受け継がれていきます。男性型禿髪症の実に80%以上が遺伝性といわれるほどで、この場合もDHTに影響されやすい体質が受け継がれてしまうのです。これが「血統・遺伝説」です。 

 では、どのように血統が遺伝していくのでしょうか。私たちは両親から一個ずつの毛髪に関する遺伝子をもらいます。その遺伝子の組み合わせは、下の主な3つです。 

両親から受ける毛髪遺伝子の組み合わせ

 1. 正常な遺伝子と正常な遺伝子

 2. ハゲ・薄毛の遺伝子と正常な遺伝子

 3. ハゲ・薄毛の遺伝子とハゲ・薄毛の遺伝子

  男性は優性遺伝のため、ハゲ・薄毛の遺伝子が一つでもあればハゲてしまう確率は高くなります。

 その確率は次のとおりです。

遺伝子によってハゲる確率

 A. 父親にハゲ・薄毛の遺伝子が一つでもある→50%

 B. 母親にもハゲ・薄毛の遺伝子がある→75%

 これに比べて、両親ともに正常な遺伝子を持っていた場合、子供にハゲ・薄毛が現われることは、遺伝子学的にはありません。ただし、食生活や生活環境の乱れ、ストレスなどで薄毛になることもありますので、注意しましょう。 

 ちなみに女性にはハゲが少なく、あっても薄毛程度なのは、頭髪の成長にプラスに働く女性ホルモンが常に男性ホルモンより優位にあることのほかに、脱毛の仕方に違いがあるからです。

 毛は通常、一つの毛根から2〜3本が生えています。脱毛の時、女性はその中から1本だけが抜けますが、男性は一つの毛根から生えているすべての毛が一度に抜けてしまうのです。

■脱毛、薄毛を予防する3ポイント

 遺伝的要因を退治することは、不可能です。それでは、日常生活でできる中でハゲないためには、どうしたらよいのでしょうか。ポイントは、頭皮を清潔に保つことと、健康的な生活習慣を心掛けることにあります。 

ハゲを予防する3つのポイント

 1、効果的なシャンプー

 2、効果的な食事

 3、ストレスからの解放

●効果的なシャンプー

 毎日たくさんの脱毛に悩み、「シャンプー時には生きた心地がしない」という人は、意外に多いものです。だからといっても、頭皮を清潔に保つためにもシャンプーは欠かせません。

 脱毛の悩みのある人は、皮脂過剰でベタつきがちな頭皮の場合が多いのですが、使用するとスッとするミント感覚のシャンプーや、「フケ防止」とうたう硫黄分が配合されているシャンプーは、かえって頭皮を刺激しすぎる結果となり、リバウンド現象としてますます皮脂を出してフケを増やしてしまうことがあります。

 頭皮を保護するために最もお勧めできるのは、「ベビー用の低刺激性シャンプー」。頭皮を傷付けないように、毎日サッと洗うことです。もし、頭皮がパサついているようなら、シャンプー前にベビーオイルかオリーブオイルでマッサージしてから、髪を洗うようにしましょう。 

●効果的な食事

 ハゲ、薄毛によいというので、海藻類を多く食べるようにしたけれども、大した変化はみられなかった。こんな経験をお持ちの方も、少なくないと思います。その他にも、毛の成分であるタンパク質を多く取るのがよいという人もいます。

 確かに、海藻などは毛髪の質を良くする効果はあるでしょう。しかし、それを食べることが髪が生えるための重要なポイントであるとはいえません。

 より大切なことは、体の健康を保つための基本的な方法として、バランスのとれた食生活を心掛けることです。特に注意する点としては、皮脂が過剰にならないように、脂っこいものを食べすぎないようにすることです。

●ストレスからの解放

 大きすぎるストレスは、脱毛を促進させるだけでなく、心身全体に悪い影響をもたらします。そこで、毎日のリラックス法をいろいろと考えましょう。

 普通、人はストレスが高じるとイライラして髪をかきむしったり、食事、飲酒、喫煙などで発散させようとします。ところが、度がすぎると睡眠不足なども加わり、当然のように体や髪の健康に悪影響をもたらすことになります。

 暴飲暴食は頭皮の血行を悪くしてしまい、喫煙も毛細血管を縮めるので、やはり血行を害してしまいます。髪にうまく栄養が送られなくなれば、脱毛はますます進むことになります。

 また、いろいろな悩みで苦しんだりすると、精神だけでなく頭皮にも緊張が生まれ、血行が悪くなってしまいます。自分自身の心身を絶えずチェックして、ストレスを解消するように工夫し、体全体の代謝バランスを整えることが、髪にも必要なのです。

2022/09/13

🇺🇬にきび(尋常性痤瘡)

■皮膚の炎症性疾患で、思春期の生理的な現象

にきびとは、過剰な皮脂分泌により、額やほお、あご、胸、背中などに現れる皮膚の炎症性疾患。医学的には、尋常性痤瘡(ざそう)として知られています。

男性ホルモンの影響によって、思春期にできやすくなります。初期には、毛穴(毛包)の脂腺(しせん)が刺激され、脂腺が大きくなると同時に毛穴が脂肪や角質でふさがって、面皰(めんぽう)という脂肪の塊ができます。この状態が黒にきび、または白にきびと呼ばれるもので、黒にきびは毛穴が開いて中身が見えている状態であり、白にきびは毛穴が閉じている状態です。

ここに皮膚常在菌で多く存在するアクネ桿菌(かんきん)が繁殖して炎症を起こし、赤い小さなぼつぼつや膿(うみ)を持った発疹(はっしん)ができます。この状態が赤にきびと呼ばれるものです。

アクネ桿菌は、嫌気性の細菌のため酸素のない脂腺の奥に生息します。詰まった毛穴の中では、皮脂を栄養として過剰に増殖し、脂肪分解酵素のリパーゼを分泌し、皮脂を遊離脂肪酸にして面皰とします。また、紫外線や空気中の酸素が、皮脂を過酸化脂質に変化させます。このように皮脂が遊離脂肪酸へ変化し、さらに酸化されて過酸化脂質へと変化した結果、皮膚に炎症が起きて赤くなったり、膿がたまって黄色い部分ができるのです。

さらに進行すると、毛穴が破れて中身が流れ出し、炎症が広がることもあります。この場合は皮膚の深い部分を傷付けてしまうため、炎症が治っても瘢痕(はんこん)が残る場合が多くなります。

にきびは思春期の生理的な現象で、疾患ではありません。20歳代前半くらいになると、自然に治っていくか、少なくともその数が減ります。

しかし、一度よくなったにきびが、中年以後に再発したり、あごから首の前のほうにかけて、にきびに似た発疹ができることがあります。この場合には、にきびのような面皰がないのが特徴で、化粧法の誤りが原因となっていることが多いようです。

また、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)など、いろいろな薬剤の作用で、にきびに似た発疹ができることがあります。この場合にもやはり、にきびのように面皰がないので、区別できます。

■にきびの検査と診断と治療

にきびのできた部分に瘢痕を残さないように治療することが、最も大切になってきます。

そのためには、毎日せっけんでよく洗顔し、皮脂を洗い流して毛穴が詰まるのを防ぎます。せっけんは、低刺激性のものが望まれます。抗菌せっけんやスクラブ入りせっけんの使用は、有用な皮膚常在菌を過剰に洗い流し、皮膚を過剰に刺激してにきびを悪化させる恐れがあります。ファンデーションやメーキャップ化粧品は、毛穴を詰まらせ、にきびを悪化させる場合があるので、使用しないようにします。

また、チョコレート、ピーナッツ、コーヒー、ココア、豚肉、糖分の多い物などでは、できるだけ避けます。ビタミンを含んだ新鮮な野菜や果物を十分に摂取して、便秘を予防します。睡眠不足、過労、ストレスには注意して、規則正しい生活を送ることも、治療上、忘れてはならないことです。

皮膚科での治療では、保険適用の範囲内である外用の抗菌剤、抗炎症剤、ビタミン剤が使われます。外用の局所抗菌剤としては、クリンダマイシン、ナジフロキサシンのほか、過酸化ベンゾイルや抗炎症剤が使われています。外用の抗菌薬が効かない場合、毛穴の詰まりを取る効果のあるトレチノイン、アダパレンなどが使われますが、これらは日光に対し過敏になる作用があり、慎重な処方が行われる必要があります。

重症なにきびでは、ミノサイクリン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、エリスロマイシンなどの経口用抗生物質が使われる場合もありますが、長期の服用が必要で重い副作用を引き起こす場合があります。内服薬では、皮膚の新陳代謝を促すビタミンB2、皮膚の抵抗力を高めるビタミンB6のほか、色素沈着などを防ぐためにビタミンCが使われます。

医師の処方なしで入手できる薬として、サリチル酸やレゾルシノール、硫黄を含んだクリーム状の軟膏が市販されています。これらは吹き出ものを乾かす効果がありますが、若干のかさつきが生じる場合もあります。

2022/09/12

🇰🇭水いぼ

幼児に多いウイルス性のいぼで、他人にも移りやすい疾患

水いぼとは、6歳以下の子供の皮膚に多くできる小さな、丸い突起物。正式には、伝染性軟属腫(しゅ)といいます。

でき初めは水っぽく見えるので、水いぼという名前があります。ウイルス感染が原因で起こり、自分の皮膚に移って広がるだけでなく、プールなどで他人にも移りやすい疾患です。

背中や首、ひざの裏など皮膚の薄いところにできやすく、直径1~3ミリほど、肌色や白色、赤みがかったものがあります。半球状に盛り上がり、表面は滑らかで光沢があり、成長したものでは中央にへそのようなくぼみができるのが特徴です。

自覚症状は少ないものの、時に多少のかゆみを伴うこともあります。気になって絶えずいじることも多く、このため自分の体に次々と移して数を増やすことになります。

放っておいて自然治癒することもあります。しかし、半年から2年、長いと4年ほどかかりますし、その間に水いぼの数が増えてしまう恐れもあります。早めに皮膚科の専門医を受診することが勧められます。

水いぼの検査と診断と治療

先が輪っかになった特殊なピンセットで、水いぼをつまみ取るのが、最も早く効果的な方法です。いぼの中にあるウイルスの白い塊を取り除くのです。ただ、痛みがあるので、泣いたり暴れたりする子供もいます。痛みを和らげるために、事前に局所麻酔剤付きのテープを張った後に行うこともあります。

一部の医師では、痛くない治療として、いぼを液体窒素で凍らせウイルスを死滅させる方法や、硝酸銀溶液を塗って焼き取る方法などをしています。しかし、治療期間が長くなったり、効果が出にくかったり、硝酸銀の場合、患部回りの皮膚にまで薬剤がついてしまい、軽いやけどの跡が残ってしまうこともあるなど一長一短です。治療内容を問い合わせてから、受診するとよいでしょう。

家庭での注意としては、軽いかゆみを感じることがあっても、いじって、いぼをつぶさないこと。ウイルスが散って症状が広がったり、他人に移すことになります。 水を介して移ることはなく、裸同士の接触で感染すると考えられています。治るまで入浴は兄弟姉妹と別々にし、タオルも使い分けます。保育園などのプールは、治療がすむまで控えることが望まれます。

2022/08/27

🇧🇫口囲皮膚炎(酒さ様皮膚炎)

副腎皮質ホルモン外用剤の副作用で、口の周囲に小さくて赤い吹き出物が現れる皮膚病

口囲(こうい)皮膚炎とは 鼻を中心として両ほおが赤くなる酒さ(赤鼻、赤ら顔)に似た症状が現れる酒さ様皮膚炎のうち、口の周囲にのみ症状が現れる状態。

比較的長期間に渡って、顔に副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を使用したことによる副作用が主な原因で、20歳ぐらいから中年にかけての女性の顔面に多くみられます。

口囲皮膚炎では、口の周囲に小さくて赤い吹き出物が現れます。酒さ様皮膚炎では、毛細血管が拡張して赤ら顔になるほか、にきびのような小さく赤い吹き出物や、膿胞(のうほう)ができます。火照りやぴりぴり感を伴い、中にはかゆみを感じる人もいます。

副腎皮質ホルモン(ステロイド)外用剤の使用をやめると、一時的にさらに症状が悪化するために、中止することができないと、ますます悪化していきます。

この口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎は、顔以外の皮膚ではあまりみられません。強力な副腎皮質ホルモン剤、特に構造式でフッ素を含有する副腎皮質ホルモン軟こうを外用した時に起こるとされますが、それ以外の副腎皮質ホルモン軟こうでも起こることがあります。化粧品を始め、シャンプーやリンスでかぶれた際に、市販の副腎皮質ホルモン剤が入ったかぶれ止めの薬を顔に長期間、連用するなどは、注意したほうがよいでしょう。

アトピー性皮膚炎の発症者で、顔の湿疹(しっしん)に連用して起こる場合もあります。副腎皮質ホルモン軟こうには、血管収縮作用があるために、外用時は赤みが除かれ肌が一時的に白くきれいに見えますが、長い間使用していると、口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎になりかねません。女性が化粧品の下地クリームとして長期間、連用して起こる場合もあります。

口囲皮膚炎の検査と診断と治療

症状を自覚した時は、皮膚科を受診します。アトピー性皮膚炎や脂漏性皮膚炎を治療するために、副腎皮質ホルモン(ステロイド)軟こうを用いて発症した場合は、掛かっている医師に相談します。

治療の基本は、副腎皮質ホルモン軟こうの外用を中止すればよいのですが、実際には難しさがあります。外用を中止すると、数日後から、口囲皮膚炎では口の周囲の赤い吹き出物、酒さ様皮膚炎では顔面の赤み、はれがますます強くなり、火照り感が強く、我慢できなくなるほどに悪化します。この状態がひどい時は、3週間から2カ月くらい続くこともあり、その後は次第に症状が消えていきます。

問題はこの悪化する時期をどう治療するかで、外出もできないと訴える発症者もいます。精神的苦痛や不安を伴うので、入院するのも選択肢に入ります。徐々に効果の弱い副腎皮質ホルモン軟こうに変えていくとか、全身的に副腎皮質ホルモンの内服を行って炎症を抑え、徐々にその量を減らす方法もありますが、この方法では軽快するまでに、かなり長期間を要することがあります。

軽いケースでは、テトラサイクリンなどの抗生物質とビタミンB2の内服で、症状が改善されます。アトピー性皮膚炎がある場合は、副腎皮質ホルモン軟こうの代わりに、タクロリムスという免疫抑制剤の軟こうを用いたりします。

口囲皮膚炎と酒さ様皮膚炎を予防するためには、顔にはなるべく副腎皮質ホルモン含有軟こうを使用しないことです。かぶれやアトピー性皮膚炎で炎症症状が強く、どうしても顔にこの軟こうを使わなければならない時は、できるだけ短期間に抑え、症状が軽快すれば、早めに副腎皮質ホルモンを含まない軟こうに変えます。そのためには、外用剤でも必ず皮膚科専門医の指示に従って、使用する必要があります。

日常生活では、皮膚内の毛細血管を広げる働きのある食品は、避けなくてはなりません。具体的には、香辛料の効いた食品、アルコール飲料、コーヒーなどのカフェイン入り飲料などです。化粧をする人は、腕に試してみるパッチテストをしてから使うように心掛けます。

🇨🇫口腔カンジダ症(鵞口瘡)

カンジダ菌の感染で、口の粘膜が白い苔状物で覆われる疾患

口腔(こうくう)カンジダ症とは、口腔内に常在するカンジダ菌という真菌によって、主として斑点(はんてん)状の白い苔(こけ)のようなものが生じる疾患。急性偽膜性カンジダ症とも呼ばれ、以前は鵞口瘡(がこうそう)とも呼ばれていました。

乳幼児や老人に多い疾患ですが、生後間もない健康な乳児にみられるものは、放置しておいても自然に消えます。成人がかかることもあります。

原因は真菌(かび)の一種のカンジダ菌の感染で、カンジダ・アルビカンスが圧倒的に多い原因菌となり、カンジダ・トロピカーリス、カンジダ・パラプシローシスなどが原因菌となることもあります。誘因としては全身の衰弱、抗生物質の長期連用、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)、免疫抑制剤、抗がん剤などの使用、がんの放射線治療、ビタミン欠乏、全身疾患による免疫機能の低下が挙げられます。

カンジダ菌は酵母菌(イースト)の一種で、元来、人間の口腔粘膜や腸管の中に住んでいます。これが誘因があってたまたま増殖すると、口腔カンジダ症や皮膚カンジダ症になるのですが、このカンジダ菌は水虫などを起こす白癬菌とは異なって、体の内部に侵入する力があります。そのため、免疫機能の低下がある時には、全身に増殖して、重篤な疾患になることがあります。

口腔カンジダ症の最初は、口腔粘膜、舌、歯肉が赤くはれ、表面が白い斑点状の苔状物の膜で覆われます。この苔状物の膜は軟らかくて、こするとすぐはがれ、はがれたところは赤くただれます。普通、痛みは軽度ですが、舌のズキズキする痛み、違和感、味覚異常を伴うこともあります。熱などの全身症状は、ほとんどありません。

適切な処置をすれば、比較的早くよくなりますが、まれには進行して咽頭(いんとう)から食道、肺に広がって、カンジダ性肺炎を生じることもあります。

口腔カンジダ症の検査と診断と治療

口腔カンジダ症が味覚異常の原因になっていることもありますので、口の中を清潔に保ち、消毒力のあるうがい薬を使ってみます。それで舌などの口腔内の違和感が治らない場合、また全身状態が悪い場合には、食道や肺に広がることがあるので、口腔外科や内科などで治療を受けます。

医師は病状から診断しますが、カンジダ菌が証明されれば確定します。証明のためには、KOH検査(皮膚真菌検査)と培養検査が行われます。KOH検査では、綿棒で皮膚の表面をこすり、それを水酸化カリウム溶液で溶かして、顕微鏡で観察します。5分もあれば結果が出ますが、カンジダ菌の種類の特定までは困難です。培養検査では、クロモアガー・カンジダ培地などで培養します。検査に時間がかかりますが、菌の種類を特定できます。

治療においては、抗真菌剤の外用が主体で、殺菌性消毒剤による口すすぎも有効です。外用剤では、イミダゾール系のものが抗菌域が広く、カンジダ菌に対しても有効性が高く、第一選択薬といえます。ネチコナゾール(アトラント)、ケトコナゾール(ニゾラール)、ラノコナゾール(アスタット)などの新しい薬は、抗菌力が強化されています。基剤としては、軟こう剤、クリーム剤、液剤、ゲル剤があります。口腔カンジダ症ではただれの症状を示すことが多いので、刺激が少ないクリーム剤か軟こう剤が無難です。

なお、抗真菌剤の外用剤は近年、たくさんの新しい薬剤が開発されかなり有効ですが、中には白癬菌にだけ効き、カンジダ菌には効きにくい薬剤もありますので、注意が必要です。

症状が強い場合には、抗真菌剤の内服を行います。内服剤では、トリアゾール系のイトラコナゾール(イトリゾール)が、抗菌域が幅広く、第一選択薬です。副作用は比較的少ないのですが、血液検査は必要で、併用に注意する薬剤があります。特殊な内服剤として、口腔・食道カンジダ症用で、ほとんど吸収されないミコナゾール(フロリード)ゲルがあります。1日1〜2本を4回に分けて内服しますが、口腔カンジダ症では病変部に塗るだけでも有効です。

🇬🇶口腔乾燥症

唾液の分泌量が低下し、口腔内が乾く疾患

口腔(こうくう)乾燥症とは、唾液(だえき)の分泌量が少なくなって唾液の質に異常を来し、口の中やのどが渇く疾患。ドライマウスとも呼ばれます。

ストレスやうつ病による影響が主な原因ですが、さまざまな原因が考えられます。アレルギーを抑える抗ヒスタミン剤、抗うつ剤、血圧を下げる降圧剤、鎮痛剤、抗パーキンソン剤など多くの薬の副作用でも起こります。

自分の免疫細胞が唾液腺(せん)や涙腺を攻撃してしまうシェーグレン症候群でも、口や目が渇きます。糖尿病や更年期障害、腎(じん)障害、唾液腺障害、口腔周囲の筋力の低下、食習慣、放射線が関係することもあります。

保湿や抗菌作用がある唾液が足りないと、食べ物の味がよくわからない味覚障害、水分の少ない食品が飲み込めないなどの嚥下(えんげ)障害、口の中がネバネバするなどの不快感、口腔の粘膜の乾燥、夜間の乾燥感といった症状が現れます。さらに、義歯の不適合、装着時の痛み、カンジダ菌という真菌の増殖による舌痛(ぜっつう)や口角炎も認められます。

虫歯の多発や悪化、歯周病、舌苔(ぜったい)の肥厚、舌表面のひび割れ、口内炎や口臭、食事がとれない摂食障害、会話時に話しづらいなどの発音障害を引き起こすこともあります。

口腔乾燥症の検査と診断と治療

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による診断では、安静にして自然に出てくる唾液を15分間採取し1・5ミリリットル以下だと、口腔乾燥症の可能性が高いと判断します。

原因により対処は異なりますので、原因を明らかにします。血液検査や画像検査で、シェーグレン症候群などの判別もできます。

歯科口腔外科、歯科、内科の医師による治療は、唾液の分泌を促す薬や、ジェルやスプレー状の保湿剤で口の中を潤します。夜間の乾燥を防ぐ保湿用マウスピース(モイスチャープレートなど)、夜間義歯などを症状に応じて処方します。

薬の副作用が原因なら、主治医と相談して薬の変更や減量を検討します。原因がはっきりすることでストレスが軽くなり、口腔乾燥症自体が改善する場合もあります。

あごをよく動かして食べ物をかむことも大切。ほおや唇の内側など、口の中に広がっている唾液腺を刺激するマッサージも有効です。舌を転がして押し付けたり、指を入れて軽くこすったりします。口腔筋機能療法も、筋力を強化させ唾液分泌を促進させる効果が期待できます。

シェーグレン症候群からもたらされる口腔乾燥症では、残念ながら根本的な治療法はありません。口や目などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことを目的に、内服薬と症状に応じた人工唾液、口腔乾燥症状改善薬、保湿剤、含嗽(がんそう)剤(うがい薬)などによる対症療法に頼らざるを得ないのが現状です。

>なお、シェーグレン症候群で全身性の臓器病変のある人の場合は、内科などでステロイド剤や免疫抑制剤などを含めて適した治療を受けるべきです。

🇬🇦口腔白板症

舌や口腔粘膜の上皮が白濁、角化する疾患

口腔白板(こうくうはくばん)症とは、舌や口腔粘膜の表面が白く濁り、触れると硬い疾患。白板症とも、ロイコプラキーとも呼びます。

この粘膜上皮が白濁、角化する状態は、いろいろな原因で起こります。継続的に作用する物理的、化学的な刺激で起こるもの、粘膜苔癬(たいせん)など慢性の炎症があって起こるもの、カンジダがついて起こるもののほかに、がん前駆症としての口腔白板症もあります。原因不明なものも少なくありません。従って、口腔白板症のすべてが悪性というわけではありません。

継続的に作用する物理的、化学的な刺激としては、たばこ、アルコール飲料、刺激性食品、過度なブラッシングによる擦過、虫歯、不適合な補綴(ほてつ)物と充填(じゅうてん)物である金冠や金属の詰め物、入れ歯などが挙げられます。

この口腔白板症は、女性の2倍と男性に多くみられ、年齢では50歳〜70歳代に多くみられます。好発部位は舌で、次いで歯肉、ほお、口蓋(こうがい)、口腔底などが続きます。

症状としては、舌や口腔粘膜の一部がさまざまな程度の白色になり、徐々に表面にしわができます。白色の程度も高度になり、いぼ状に隆起してくるものもあります。また、隆起はしないで、赤い部分が混在してくるものもあります。白斑(はくはん)のみでは痛むことはありませんが、紅斑が混在するものでは痛みを伴うようになります。

長期に経過すると、口腔白板症からがんが発生することもあります。ある確率で、がんに発展するような皮膚の異常をがん前駆症といいますが、がん前駆症としての口腔白板症は、舌の側面に最も起こりやすく、不規則な形をしています。その一部が崩れて、腫瘍(しゅよう)やびらんができたり、割れ目を生じたり、隆起してくる場合には、注意が必要です。口腔扁平(へんぺい)上皮がんに進展する確率が高く、すでにがんを発生している場合があります。

口腔白板症の検査と診断と治療

口の中に、白色あるいは白色と赤色の混在する病変を見付けた場合、あるいは長い間続いていた口の中の異常が急に変化して、びらん、潰瘍(かいよう)を生じたり、大きさが増したりした場合には、すぐに皮膚科、口腔外科の専門医の診断を受けます。

口腔白板症の診断のためには、実際の病変の一部を切り取って、顕微鏡で組織検査をする生検を行います。広範囲に病変が存在する場合は、複数の部位より切り取ります。口腔白板症の病理組織像は多彩で、種々な程度の角化の高進、有棘(ゆうきょく)層の肥厚、上皮下への炎症性細胞浸潤、上皮の種々の程度の異形成などが認められます。特に、がん化との関連性においては、上皮異形成の程度は重要になります。

治療としては、まず刺激源になっているものがあれば、除去します。次に、ビタミンAを投与し、反応するか否かを観察します。ビタミンAによる薬物治療に反応せず、生検で上皮異形成と診断される病変があれば、病変の粘膜を手術で切除します。広範囲の病変では、切除すると機能障害が出ます。

なお、口腔白板症のすべてが悪性というわけではなく、良性の変化にとどまることも多く、必ず治療しなければならないというものではありません。また、口腔白板症から口腔扁平上皮がんに進展しても、経過観察を定期的に行えば、極めて早期に対処することも可能です。

🇦🇴厚硬爪

爪の甲が異常に厚くなり、硬くなった状態

厚硬爪(こうこうそう)とは、爪(つめ)の甲が異常に厚くなり、硬くなった状態。厚硬爪甲とも呼ばれます。

多くは、爪の先端の皮膚の隆起を伴っており、爪の甲が前に伸びていきません。主に足の親指(第1指)の爪に症状が現れ、厚く、硬くなった爪の伸びる方向は上方から真上へ向かい、高度になると爪の先端が後方へ向かうこともあります。

爪の色は混濁して、灰色から茶褐色に変色し、爪の表面もでこぼこになり、光沢がなくなります。

一度、痛みを感じるほどに厚硬爪の症状が悪化すると、歩いた時の足を後ろにけり出す力により、厚く、硬くなった爪が皮膚に食い込んだり、靴先にぶつかったりして、痛みは余計に増していきます。

加齢とともに生じる場合が多く、高齢者に多くみられます。年齢を増すごとに、栄養が足の爪までゆき届かずに、靴や靴下などによる摩擦からも爪の水分や油分が奪われて、爪の甲が厚く、硬くなります。

また、靴による慢性的な足先への圧迫が原因で、生じることもあります。小さい靴を無理に履いたり、ハイヒールをいつも履いていたりすると、爪の先端の軟らかい皮膚の部分が歩いた時に地面から受ける圧力によって隆起するために、足の親指の爪が正常に伸びることができずに変形し、厚硬爪となります。

外傷、血行障害が原因で、生じることもあります。極めて少ないものの、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症を始めとする内分泌系の疾患や、下肢の静脈瘤(りゅう)性症候群、血管閉塞(へいそく)、末梢(まっしょう)神経障害が原因で起きることもあります。

厚硬爪を治療せずに放置すると、爪甲鉤弯(こうわん)症といって、金具の鉤(かぎ)や鳥のくちばし、羊の角のように、爪が分厚く変形して、弓なりに曲がったり、後ろを向く症状が現れることがあります。

爪甲鉤弯症になると、普通の爪切りでは切れなくなって爪が長くなり、靴を履くことができなくなります。時々、変形した部位が痛むこともあります。

厚硬爪は、いくつかの疾患が合わさって生じていることや、爪の水虫といわれる爪白癬(はくせん)により悪化していることもあるので、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

厚硬爪の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、まず爪の水虫といわれる爪白癬の検査をするのが一般的です。爪に白癬菌などが認められなければ、爪の形状から厚硬爪と確定することになります。甲状腺機能低下症など原因となり得る疾患を確認することもあります。

皮膚科の医師による治療では、厚く、硬く変形した爪を専用の爪切りで処置したり、爪やすりでできるだけ薄くなるように削ります。

日常生活に支障を来すような場合や、爪が下の皮膚から浮いている場合には、外科的に爪をすべて取り除くこともあります。変形した爪が、血管や神経にダメージを与える可能性もあるからです。爪を切除することで、痛みを緩和することにもつながります。

爪を取り去った後、アクリル樹脂製の人工爪を取り付けることもあります。この方法は、治療直後から痛みが軽減し靴を履いて帰宅できますし、入浴も可能です。また、人工爪が外れても繰り返し取り付けることができます。

足の親指の先端の皮膚の隆起が硬くなっている場合、爪の伸びを妨害する骨や皮膚の盛り上がりを外科的に取り除くこともあります。爪の甲の前方だけを外科的に取り除き、その爪床部を開けて骨を削り、人工爪を取り付けることもあります。

甲状腺機能低下症などの疾患が原因になっている場合は、その疾患の治療がそのまま厚硬爪の治療になります。

予防法としては、足先への圧迫、血行障害も厚硬爪の原因となりますので、足指を圧迫することがないようサイズの合った靴を履くことが大切です。複数の靴を毎日履き替え、爪が当たる位置を変えてみたり、靴ひもをしっかり結んで爪が当たらないようにするのも一案です。

🇲🇿紅色陰癬

蛍光発色性ジフテロイドという特殊な細菌に、皮膚の表層部が感染する疾患

紅色陰癬(こうしょくいんせん)とは、コリネバクテリウム属の蛍光発色性ジフテロイドという特殊な細菌に、皮膚の表層部が感染する疾患。エリトラスマとも呼ばれます。

紫外線を当てると感染した皮膚の表層部が紅色に光ることから、紅色陰癬といわれています。蛍光発色性ジフテロイドは常在菌ですが、主に成人がかかり、特に糖尿病、多汗症、肥満症といった基礎疾患を持つ人がかかりやすいです。健康な人には症状を起こさない菌が、抵抗力の弱い人に感染症を起こす日和見感染の一種と考えられています。また、熱帯地方などの高温多湿な環境では、比較的多くみられます。

皮膚と皮膚が接触する部位、すなわち、乳房の下、わきの下、足の指と指の間、性器周辺、尻(しり)の割れ目に多く発症します。このような場所は、皮膚と皮膚が接触して発汗しやすいため、汗や皮脂を栄養源とする細菌が増殖しやすい部位です。

特に男性の場合は、陰嚢(いんのう)が熱に弱いため、陰嚢の皮膚が汗を出して冷やそうという働きがあるため、腿(もも)と陰嚢が接触する部位によくできます。特に肥満の中年女性や糖尿病患者の場合は、乳房の下、わきの下、腹部のひだ、会陰部にも発症することがあります。

最初は、皮膚と皮膚が接触する部位に、不規則な形のピンク色の皮疹(ひしん)ができます。この皮疹はやがて、茶色く、うろこ状にカサカサした状態に変わります。皮疹が、胴体や肛門(こうもん)周辺に広がることもあります。足の指と指の間では、皮膚がふやけて白くなります。

正常な皮膚との境界ははっきりとしており、かゆみなどの自覚症状はほとんどありません。まれなケースでは、灼熱(しゃくねつ)感やかゆみを自覚することもあります。

白癬などの真菌感染症と混同されることがありますが、体部白癬、股部(こぶ)白癬、陰嚢白癬、足白癬などとは異なり、周囲に炎症が広がって中央はきれいになる中心治癒傾向を示さず、水疱(すいほう)や丘疹も発生させません。

紅色陰癬の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、ウッド灯という長波長の紫外線を出す蛍光管で病変部を照らすと、蛍光発色性ジフテロイドがサンゴのような紅色に輝くので、すぐ診断がつきます。

白癬、カンジダ症、癜風(でんぷう)、脂漏性皮膚炎などとの区別が必要ですが、ウッド灯での紅色蛍光で区別できます。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、クリンダマイシンやミコナゾールなどの抗真菌剤、エリスロマイシンあるいはテトラサイクリンなどの抗生剤の軟こうまたはクリームを塗ります。範囲が広い場合には、エリスロマイシンあるいはテトラサイクリンを内服します。クロルヘキシジンなどの抗菌せっけんを使うのも、効果があります。

紅色陰癬は6〜12カ月以内に再発することがあるので、その場合は再度治療します。肥満症や多汗症の人は病変部が再び蒸れやすく、再発を繰り返して完治しにくい場合も多いようです。

股部や陰部周辺の紅色陰癬を予防するには、常日ごろから通気性がよく、蒸れない下着を着用し、清潔に保ち、乾燥させるように心掛けることが大切です。

🇺🇬光線角化症

長期間、紫外線を受けて起こる前がん性の皮膚変化

光線角化症とは、長い年月にわたって日光紫外線を受けたことが原因で起こる前がん性の皮膚変化。日光角化症、老人性角化腫(しゅ)とも呼ばれます。

日光紫外線を受けやすい顔面、耳、前腕、手の甲の皮膚、頭部に好発します。直射日光を受けて急性に起こるいわゆる日焼けとは異なり、長い年月にわたって慢性的に日光紫外線、特に中波長紫外線を受けることにより表皮細胞のDNAに傷ができるのが、その原因と考えられています。

日光に含まれる紫外線は肉眼では見えませんが、皮膚に最も大きな影響を与えます。体がビタミンDを作り出すのを助ける働きがあるので、少量ならば紫外線は有益なものの、大量に浴びると遺伝物質であるDNAが損傷を受け、皮膚細胞が作り出す化学物質の量と種類が変わってしまうのです。

発症者の年齢は、中高年層がほとんど。性差は、やや男性に多い傾向があります。日焼けの際に皮膚に紅斑(こうはん)を生じやすい人のほうが、褐色変化する人よりもなりやすいと見なされています。白色人種に比べて黒色人種、黄色人種では発症率が低く、日本人での発症率については沖縄県が高いという報告もあります。

症状としては、黄褐色のかさぶたを伴う大きさ1〜3cmの紅褐色の皮疹(ひしん)が現れることが多く、角化した部分はかさかさしたうろこ状となり、ぼろぼろむけます。色が濃くなったり、灰色がかったりすることもあり、触れると硬く感じられます。周囲の皮膚は薄くなり、多少の赤みがあります。皮疹が1カ所だけにできることも、複数の部位にできることもあります。

軽度のかゆみを訴えるケースもありますが、皮疹以外に自覚症状を来すことはまれ。皮疹は自然に消えることもあれば、同じ部位や別の部位に再発することもあります。

老人性のいぼと間違いやすいので注意が必要なものの、前がん性の皮膚変化といっても実際に、扁平(へんぺい)上皮がん、または有棘(ゆうきょく)細胞がんにまで発展するケースは、数パーセントにとどまります。

有棘細胞がんに発展した場合は、治療せず放置していると命にかかわることもあります。

光線角化症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、光線角化症では、いぼ(脂漏性角化症あるいは尋常性疣贅〔ゆうぜい〕)などと紛らわしいことがありますので、疑わしい場合は病変の一部を切り取って組織検査をする皮膚生検を行います。

組織所見に基づいて、光線角化症を委縮性、ボーエン病様、棘(きょく)融解性、肥厚性、色素性に分類することもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、通常、局所麻酔は行わず、液体窒素を浸した綿棒などを病変に押し付けて凍結、壊死させて除去する凍結療法を施します。簡便な処置法ですが、凍結時にかなり強い痛みを伴います。また、多くの場合、数回の処置が必要となります。

高齢者や角化部分の多発例では、液体窒素による凍結療法やCO2レーザー(炭酸ガスレーザー)照射なども行います。

角化傾向の強い病変の場合や、有棘細胞がんに発展している可能性がある場合は、局所麻酔を行い、病変をメスで切除する外科切除を施します。

薬物療法として、抗がん剤の1種であるフルオロウラシル入りのローションやクリーム、またはイミキモド(ベセルナクリーム)を病変に塗ることもあります。フルオロウラシル入りのローションやクリームは、1日2回単純に塗布するか、1日1回塗布後にラップ類で密封します。イミキモドは、1日1回、週3回、自分で患部に直接塗布します。薬物療法は、塗り薬の副作用で皮膚が荒れて、びらん、痛みが出ることがありますが、治療に伴うものであるため頻度を調節して継続します。

治療後も、外科切除の取り残しがないことや再発の有無をみるため、定期的な経過観察が必要です。

日常生活での注意点としては、一見正常にみえる皮膚も日光紫外線のダメージをすでに受けているので、新たな病巣を生じないためにも、サンスクリーンを使用するとともに帽子などで直射日光を避けるようにします。日光の紫外線が最も強いのは、1日の中では午前10時から午後3時までの日中、季節では夏、地域では海抜の高い場所です。

💅咬爪症

爪の甲のかみすぎにより、形が変形する状態

咬爪(こうそう)症とは、爪(つめ)の甲のかみすぎにより、形が変形する状態。かみ爪、爪かみ癖とも呼ばれます。

咬爪症の原因はいうまでもなく、自分の爪をかむ行為です。爪をかむ行為は、実は子供にとっては特殊なことではありません。4、5歳から10歳くらいの子供がほとんど無意識に爪をかむ癖を持っているのは、珍しいことではありません。

一般的には自然になくなる癖ですが、時には習慣化して、大人になっても爪をかむ行為が続く場合もあります。一般に精神的緊張の置き換えと考えられ、無理にやめさせると、さらに緊張を高めて他の行動へ置き換わるだけになることもあります。

咬爪症の子供は、爪を切る必要がないくらい深爪で、爪の先端がギザギザになっていたり、爪の甲の表面がデコボコしていたり、指先や爪郭部が荒れて傷ができていたり、爪の根元部分の甘皮がささくれたりしています。

深爪になったばかりのころは直接皮膚がさらされているので、痛みを伴い、出血がみられたりします。また、皮膚がさらされているので細菌感染が生じ、爪の甲が完全に失われることもあります。中には、足の爪までかんでしまう子供もいます。

爪をかむ行為で、歯並びや歯のかみ合わせが悪くなることはありませんが、チック、指しゃぶり、歯ぎしり、夜驚などを併せ持っていることもあります。

一般に子供の欲求不満、過度の緊張、不安や不満、退屈など精神的緊張の置き換えと考えられ、子供は精神的な緊張を和らげる手段として爪をかみます。

咬爪症の子供の性格は、神経質、緊張しやすい、敏感、活動的、攻撃的、動作が落ち着かないなどの特徴を持ち、情緒や社会性の未熟さがみられることが多いようです。

子供が緊張する背景としては、親の過干渉、放任、緊張状態が持続する厳格なしつけなど、親子関係に情緒的な安定が保たれていないことが多いようです。

咬爪症の治療

子供の軽度の咬爪症の場合は、保護者による指導の必要はなく、子供が緊張する心理的な背景を配慮するようにします。

小学校に入るころになると、咬爪症は習慣化して、子供自身が治そうとしないとなかなかやめられません。やめさせるために家庭でできることとしては、汚れた爪をかむのは不潔なため清潔のしつけとしてやめさせる、深爪の危険を説明する、爪を保護する透明なマニキュアを塗り爪の大切さを教える、不安やストレスの要因を見付けて除去していく、やめた時のご褒美を子供と約束してカレンダーにシールを張るなどが考えられます。

ひどい場合には、精神科、心療内科を受診させます。

大人になっても咬爪症がひどい場合も、精神的要因が絡んでいるなら、精神科、心療内科を受診します。咬爪症は自傷行為であり、心が鳴らす警笛でもありますから、胸の中にある傷みや不安など精神的緊張と向き合い解決することは、爪かみ癖の改善、解決につながることもあります。

爪、皮膚の症状に対しては、皮膚科、皮膚泌尿器科を受診するか、ネイルサロンで相談してみるのもよいでしょう。

自分で爪の甲にマニキュアやクリームを塗ったり、爪ヤスリなどでなるべく自然の丸みを帯びた形に爪を整え、グッズで爪磨きすることで、きれいな爪を保ちたいと思い、爪をかむことを自然と避けるようになる実例は多くあるようです。爪をかむことによって変形がひどい場合は、十分に伸びて変形が治るようになるまで、付け爪(人工爪)をつけるようにし、自分自身の爪を隠して保護することが効果的な実例も多くあるようです。

また、ネイルサロンできれいにマニュキアを塗ってもらい、きれいに爪を整えてもらうことで、咬爪症が治ることもあります。ネイルサロンの中には、ネイルアートだけでなく、深爪矯正に力を入れ、自爪の強化や、自爪の回復ができるネイルケアを行っている所もあります。

ひどい深爪状態になってしまった爪は、治そうとして爪を伸ばしても、白い部分が伸びるだけで、皮膚から浮いた状態になってしまいますが、ネイルサロンの深爪矯正を受けることで、きれいな自爪を取り戻すことが可能です。自爪がよみがえるまでの間の人工爪も、自然に見えるものを作成してくれるため、男性でも抵抗なく付け爪をすることが可能です。

🇰🇪シェーンライン・ヘノッホ紫斑病

手や足のいわゆる四肢末梢に紫斑ができる疾患で、4~7歳の小児に好発

シェーンライン・ヘノッホ紫斑(しはん)病(Schoenlein-Henoch purpura)とは、手や足のいわゆる四肢末梢(まっしょう)に、軽く盛り上がった紫斑ができる疾患。アレルギー性紫斑病、血管性紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病とも呼ばれます。

今から逆上って100年以上前に、ドイツの医師シェーンラインが関節の症状を伴う紫斑病ということでリウマチ性紫斑病と命名し、同じくドイツの小児科医ヘノッホが腹部の症状を伴うということで腹部紫斑病と名付けたため、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病といわれますが、リウマチとの関係はわかっていません。

このシェーンライン・ヘノッホ紫斑病は上気道感染後に発症することが多く、ウイルスや細菌に対するアレルギーが原因だといわれていますが、はっきりしたことはまだ解明されていません。シェーンライン・ヘノッホ紫斑病の障害部位にIgAなどの特異的な免疫物質が沈着しているのが特徴であり、それが皮膚のほか、腸管、関節、腎臓(じんぞう)、時に精巣や脳などに障害を起こします。また、服用中の薬や食べ物との関連性も研究されています。

それほど多くみられる疾患ではなく、日本における発症者は年間10万人当たり10~20人といわれているものの、4~7歳の小児に好発し、女児より男児の発症が若干多い傾向にあります。多くは冬に発症し、人から人への感染はありません。今の段階では予防策がないというのが現状です。

皮膚の紫斑は手足の左右両側対称に、とりわけ関節付近に出現します。体や顔に出る場合もあります。初めはかゆみを伴ったじんましんのような発疹(はっしん)で始まり、次第に紫色に変色していきます。じんましんなどの紅斑は上から押すと赤みが消えるのに対して、紫斑は色が消えません。

紫斑ができるのは、血管が炎症を起こしているからです。紫斑は血管から出てしまった血液が皮膚の奥で滞留した状態なので、上から押しても色が消えることはありません。血小板減少性紫斑病とは違い、わずかに隆起しているのも特徴で、「触れることができる紫斑」と呼ばれています。紫斑の形は点状のものから不整形のものなどさまざまで、新しいものと古いものが混在します。

通常、毛細血管になる前に存在する細静脈を中心に血管が炎症を起こしますが、放置したままにしておくと、大動脈の血管壁が薄くなり、そこから大量に血液成分が漏れ、強いむくみが出現することもあります。

腹痛も半数ほどの発症者に認められます。腸管内の血管透過性の高進によるむくみや、腸管内の血管の炎症が原因で、しばしば血便や便潜血も認められます。

腹痛は嘔吐(おうと)を伴う激しいものであることも少なくなく、紫斑が起こる前に腹痛が起きたケースなどでは、虫垂炎や腸重積、腸閉塞(へいそく)などの内臓疾患が疑われることもあります。腹痛がひどく、日常生活を行えないレベルのものであれば、入院して治療を受けることが必要になります。

関節炎、関節痛もおよそ3分の2の発症者にみられます。足の関節、手の関節に起こることが多く、股(また)や肩の関節には普通起こりません。関節炎を起こすと、その部分ははれ、痛みのため動かすのも苦痛になります。痛みで歩くことができなくなることもしばしば起こり、日常生活が困難になった場合にも、入院して治療を受けることが必要になります。

局所的な大きなむくみも、顔、体、手足、陰嚢(いんのう)などに痛みを伴って現れますが、発赤はみられません。

さらに、尿の異常が半数の発症者に認められ、血尿、蛋白(たんぱく)尿が現れます。紫斑病性腎炎を合併する率が高いため、定期的に尿検査をする必要が生じます。腎炎の多くは軽症ですが、中には急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしたり、慢性の腎不全に陥るケースもあります。

シェーンライン・ヘノッホ紫斑病の検査と診断と治療

シェーンライン・ヘノッホ紫斑病を発症した時にかかる科としては、小児の場合はやはり小児科が適しています。小児科医にとって、この疾患はポピュラーなものであり、症状を見れば容易に判断が付きます。

紫斑病性腎炎が出現し、蛋白尿が悪化した場合には、小児腎臓医に相談するのがよいでしょう。専門の機器、専門の治療方法を持った病院の専門の医師に診てもらうことは、小児が成人した後の将来を見据えた治療につながります。

成人が行く診療科としては、皮膚科、内科のほか、皮膚泌尿器科も適しています。皮膚泌尿器科とは、本来別々であった皮膚科と泌尿器科が一緒になったもので、性感染症などが両科にまたがることから標榜されるようになったようです。アレルギー性紫斑病は皮膚症状のほかに、泌尿器科の分野である腎炎の症状もしばしば伴うので、長期に渡って経過を観察しなければならないことも考慮して、皮膚泌尿器科で診てもらうのもよいかもしれません。

シェーンライン・ヘノッホ紫斑病を根本的に治療する薬剤や方法は、現状ではありません。急性期は安静を保つことが大切で、症状に見合った対症療法が中心となります。

紫斑は動きの激しい部分にできやすいので、軽い運動制限をすることもあります。腹痛が強い場合は、入院治療をすることが多くなります。腹痛の急性期には、副腎(ふくじん)皮質ステロイドが有効で、消化管からの吸収は期待できないので、静脈内に投与し、症状の改善を図ります。

また、関節炎、関節痛で歩行困難を来した場合も、入院治療が必要となります。関節の炎症や痛みには、経皮鎮痛消炎剤や、作用の穏やかな解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを投与し、症状の改善を図ります。

紫斑病性腎炎で血尿が出たり、蛋白尿が出たりということは珍しくなく、多くは治療しなくても、徐々にその症状も消失していきます。ただ、急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしている重症の場合は、ステロイドパルス治療などを行います。また、急激に症状が悪化しなくても、数カ月~数年経ってから慢性の腎不全を起こすこともあるので、定期的な検査が必要となってきます。シェーンライン・ヘノッホ紫斑病は腎臓の機能の経過を見るという点でも、完治までに時間のかかる疾患だといえます。

薬物治療を長期に渡って行うことになった場合、小児慢性特定疾患という医療費の補助を受けることもできます。補助を受けられる診断基準などを地域の保健所に問い合わせてみるとよいでしょう。

🇩🇯色素失調症

皮膚に特徴的な色素沈着を来す母斑症で、女児に発症しやすい遺伝疾患

色素失調症とは、新生児のころ、皮膚に特徴的な色素沈着を来す母斑(ぼはん)症。女児に発症しやすいまれな遺伝疾患です。

外胚葉(がいはいよう)と呼ばれる皮膚や粘膜のもとになる組織に異常を生じるために発症し、皮膚以外にも多くの臓器に異常を来しますが、目にも障害が起きることがあります。

X染色体優性遺伝です。人間の遺伝子の一対は性染色体と呼ばれ、女性はX染色体を2本、男性はXとY染色体を1本ずつ持っています。新生児は母親からXの1本、父親からはXかYのどちらかを受け継ぎ、Xなら女性になり、Yなら男性になります。このX染色体に異常があるのが、X染色体遺伝です。

優性遺伝では、女児が異常なX染色体を持っていても対になるXが正常ならば補完されて成長しますが、男児では致死的なのでほとんどは流産になります。従って、この色素失調症は一般に母親から娘に遺伝していき、兄弟姉妹のうち女児の半数は異常、残り半数は正常で、男児はほとんどが正常です。

色素失調症に見られる皮膚の異常は、4つの時期に分けられます。第1期は炎症期で、誕生直後あるいは2週間以内に、水疱(すいほう)や膿疱(のうほう)が主に体幹に多数出現し、かさぶたになっていきます。血液には好酸球と呼ばれる細胞が多数見られます。この時期、抹消血中および組織中に高率に好酸球増多を認めます。

第2期はいぼ状苔癬(たいせん)期で、生後数週から数カ月に、硬く盛り上がった丘疹(きゅうしん)が主に四肢末端に多発します。

第3期は色素沈着期で、生後3~4カ月ころから、褐色あるいは灰褐色の渦巻き状、帯状、網目状、飛沫(ひまつ)状など多彩な模様を描いたような色素沈着が出現し、かなり長期間続きます。血液中の好酸球は減り、多くは正常化してきます。

第4期は色素沈着消退期で、4~5歳ころから色素沈着が消えていくようになり、多くは思春期までには完全に消えます。

これらの皮膚症状に加え、90パーセントに歯の欠損や発育不全、40パーセントに頭蓋(とうがい)の変形や小人症、指の形成異常などの骨の異常、形成不全が見られます。ほかにも、脱毛、縮れ毛などの頭髪の異常、欠損、発育不全などの爪(つめ)の異常、精神発達障害、けいれんなどの中枢神経症状といった、さまざまな異常が見られる場合があります。

目の障害は30パーセントに見られ、斜視が最も多く、先天白内障や視神経の異常が見られることもあります。中でも問題になるのは、網膜の異常です。網膜は眼球壁の内張をしている神経の膜で、その細い血管が閉塞(へいそく)します。閉塞は生後1年以内に生じ、その後は進行しないとされています。

網膜血管の閉塞が高度だと、異常な新生血管が発生し、眼内出血や網膜剥離(はくり)を引き起こすなど未熟児網膜症とよく似た変化を来し、失明や高度の視力障害に至ることがあります。ただし、病変には左右差があることが多く、両目が失明することは少ないとされています。また、網膜の異常と中枢神経の異常は、関連して発生する傾向があります。

色素失調症に気付いた場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、小児科を受診し、全身的な検査を受けることが勧められます。

色素失調症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、小児科の医師による診断は、皮膚の特有の変化と経過でつきます。母親か姉に同じ疾患が確認されれば診断に役立ちますが、大きな異常がない場合、成長とともに皮膚の変化が消えていくので気付かないケースもあります。時には、皮膚の一部を切り取って検査する場合もあります。

目の合併症の診断のためには、皮膚科などで診断され次第すぐに眼科を受診してもらい、眼底検査を行って、網膜の状態を確認するのがよいとされます。

そして、以後は1カ月から3カ月に1回、生後1年まで検査を続けたほうがよいとされています。

皮膚科、皮膚泌尿器科、小児科の医師による治療は、皮膚病変は年齢とともに消退するので、それぞれの皮膚症状に応じて、外用療法を行って皮膚の保護に努めます。さまざまな臓器の変化に対しては、対症的に対応します。遺伝病のため根本的治療法はありません。

目の合併症のうち、斜視や白内障はそれぞれ、単独で発症した場合と同じように治療します。網膜血管の閉塞が確認されたら、速やかに閉塞部にレーザー網膜光凝固術を行って進行を防止します。それでも進行したり、すでに網膜剥離を生じている場合には、網膜の手術を行うこともあります。

🇸🇴色素性母斑(黒あざ、黒子)

皮膚のすべての部位にできる黒色の色素斑

色素性母斑(ぼはん)とは、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素斑。母斑細胞性母斑とも呼ばれます。

母斑というのは、皮膚の部分的な奇形のことです。その皮膚の奇形というのは、皮膚の成分の一部が遺伝的素因により、異常に発育、増殖した状態をいいます。この場合、生まれた時からあるものもあるし、生後数年、あるいは数十年後に初めて出てくることもあります。

母斑の代表的なものが、この色素性母斑です。色素性母斑の大きさは大小いろいろで、皮膚と同じ高さのものから、半球状に隆起したものまであります。

色素性母斑の一番小さい型が、いわゆるほくろ(黒子)です。つまり、点状の小さく黒い色素斑や、小豆大の半球状に隆起した黒い小さな結節。顔や全身にあり、小さい時から次第に数は増加し、古くなると色が自然に消えることもありますが、大きさは次第に増大します。

比較的大きな色素性母斑は、いわゆる黒あざです。生れ付きあることが多く、その多くは皮膚と同じ高さで、表面に黒い毛が生えていることもあります。

時には、広い範囲に生じて、先天性巨大色素性母斑と呼ばれます。まれには、全身に大小の黒褐色色素斑が多発し、その上に剛毛が密生し、その外見から獣皮様母斑と呼ばれる場合もあります。この型の母斑は、脳を始め全身の神経組織の色素異常を伴うこともあり、神経皮膚黒色症と呼ばれ、悪性黒色腫(しゅ)ができやすい型です。

色素性母斑の本態は、メラノサイトとなるべき細胞が表皮や真皮の境界部で、異常に増加したものです。この増殖した細胞を母斑細胞と呼びます。一般的には、母斑細胞の活性は出生後はなくなっていますが、時には残っていることがあります。この活性が非常に高進してくると、ほくろのがんといわれる悪性黒色腫に移る危険性があります。特に、足の裏の黒あざで拡大、潰瘍(かいよう)化が出現した場合は、医師による精密検査が必要になります。

色素性母斑の検査と診断と治療

色素性母斑は、それ自体は全く良性であり、心配することはありません。一般的には、治療の対象にならず、放置しておいてもかまわないものです。

しかし、特に成人以降に足の裏や手のひらに急にできて、色や大きさの変化が激しい場合、色の濃淡が強い場合、母斑の境界がはっきりしない場合などは、たとえ小さくても悪性黒色腫の可能性もあるので、早めに受診します。生まれ付きの大きい黒あざも、生後早めに医師と相談します。

医師による診断は、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。ただし、色素性母斑自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍の中でも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。悪性黒色腫の確定診断は、切除したほくろを病理組織検査することでつきます。

放置しておいてもかまわない色素性母斑であっても、顔などに大きなものがあり、本人が非常に気にしたり、他人に悪印象を与える時などは、皮膚科、形成外科での手術で除去することになります。非常に小さなほくろであっても、本人が悪性化や、その他の面で気にする時にも、手術を行うこともあります。

手術では、病変部の皮膚をメスで全部切り取った後、皮膚の欠損部を縫い合わせるか、植皮術を行います。最近では、顔の小さいほくろの場合に、メスの代わりに炭酸ガスレーザーで切除した後、縫い合わせないで自然に治るのを待つ、くり抜き療法も行われています。

いずれにして、多少の傷跡は残ります。特に、植皮術で植皮した皮膚は、周囲の皮膚とは細かい性状が異なり、完全にはなじみません。従って、手術の跡と、ほくろやあざとどちらが目立つかを考えてから、手術をする必要があります。手術をしなくても、カバー・マークを利用して、色を隠せばよいからです。

なお、炭酸ガスレーザーを用いる、くり抜き療法は顔面ではあまり傷跡が目立たないことが多いようですが、他の部位ではくり抜いたところの傷跡が目立つ場合もあります。また、レーザー治療では多くの場合、病変部を焼き飛ばすため、病理組織検査を行えません。悪性黒色腫と見分けがつきにくい場合もあるので、レーザー治療を選択する場合には、担当する医師の十分な診断力が必要とされます。

🇸🇴色素沈着症

皮膚の色に変化を与えるメラニン色素が多くなる疾患

色素沈着症とは、生理的に皮膚に存在し、皮膚の色に変化を与えるメラニンやヘモジデリンなどの色素が多くなる疾患。

皮膚に存在するメラニンの量が変化すると、淡褐色、褐色、黒褐色、黒色などの色が現れます。また、人間の体の表面を覆う厚さ約2ミリの皮膚は、表皮と真皮の2つの層に分かれていますが、表皮にメラニンが増えるほど褐色調が強く、真皮の上層に増えると暗褐色から黒色、真皮の深いところに増えると青色調が強く現れます。

反対に、皮膚の色が白くなる場合は、メラニンが減るか、なくなったかです。

この色素沈着症には、遺伝的なものと、後天的に起こるものとがあります。遺伝的なものの代表は雀卵斑(じゃくらんはん)で、後天的に起こるものの代表は肝斑(かんぱん)です。

雀卵斑は目の回り、ほおに小さな色素斑が群がっている症状

雀卵斑は、両側の目の回り、ほおなどに、直径が数ミリまでの小さな斑点が群がっている症状。そばかすとも呼ばれます。

その顔に群がる淡褐色、ないし黒褐色の小さな斑点は、スズメの卵の殻(から)の模様に似ています。首や肩、前腕の外側、手の甲にできるものもあります。

生まれた時から存在している場合もありますが、だいたい5~6歳ころに目立ち始めて、思春期をピークに減少へと向かう場合が多く、年齢を重ねるとともにだんだんと目立たなくなっていきます。

しばしば家族に同じ症状がみられるため、原因としては遺伝的要素が強いといわれています。また、紫外線の影響、生活の乱れ、ストレス、妊娠によっても発生します。

遺伝的要素が強い雀卵斑は、完全に消すことは難しいものながら、ファンデーションなどでカバーできるくらい薄くできることもあります。そのほかの原因による雀卵斑は、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)がうまくできていないと、メラニンが増えて濃くなってしまいます。

肝斑は30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑

肝斑は、しみの一種で、30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑。肝斑という名称は、肝臓と同じ色ということからつけられたもので、肝臓の疾患とは関係がありません。

日本人女性の皮膚には肝斑ができやすく、皮膚の色が浅黒い人ほどできやすいといわれています。30歳代、40歳代の女性に多くみられますが、50歳代後半で新たに発症する人はほとんどみられません。逆に、60歳代からは症状が治まることも多いともいわれています。 日本男性に肝斑ができることは、めったにありません。

肝斑の症状は、特に額、ほお骨の辺り、口の回りに左右対称に広がるように、点状ないし斑状で淡褐色のしみが生じます。目の周囲にはできず、色が抜けたように見える点が特徴的です。

原因の一つとして、女性ホルモン、特に卵胞ホルモンと黄体ホルモンとの関連が指摘されています。ホルモンバランスの乱れる妊娠時、更年期、婦人科の疾患にかかった時、ピル(経口避妊薬)内服中も、できやすいといわれています。

妊娠時に現れる場合は、妊娠2~3カ月ころからできることが多く、次第に色が濃くなります。出産後には少しずつ消えていく場合もありますが、長期に持続する場合もあります。

また、原因の一つとして、紫外線が重要であると考えられています。紫外線に当たりやすい個所に症状が現れやすく、実際に紫外線を浴びることが症状の悪化と関連している場合が多いのです。

紫外線が皮膚に当たると、皮膚はダメージを受けることになります。そのダメージから皮膚を守るために働くのがメラニン色素で、表皮にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素は、少しずつ皮膚の表面に浮かび上がって皮膚を守ろうとします。役目が終わると、皮膚の新陳代謝とともにメラニン色素ははがれ落ちますが、年齢を重ねるごとに新陳代謝が鈍くなる結果、メラニン色素が皮膚の表面に長期的に滞留し、肝斑となっていきます。

原因として、ストレスも関係しているともいわれています。 そもそも、メラノサイトは紫外線やホルモンの影響を受けて、メラニン色素を作り出します。そのホルモンの分泌に大きくかかわってくるのが、ストレスを始めとする不規則な生活、睡眠不足などです。

初めにかゆみや皮膚の赤みがあって、後に褐色の色が付いてくるものや、顔以外の個所にできるものは、肝斑とは違うほかの疾患が考えられます。

また、肝斑と思っても、時には化粧品による接触皮膚炎か薬疹(やくしん)、エリテマトーデス、老人性色素斑(日光性黒子)などの場合もあります。

色素沈着症の治療法と対処法

雀卵斑の治療法と対処法

皮膚科の医師による治療において、雀卵斑(そばかす)を根治させるためのよい方法はありません。むしろ、悪化させないように日焼け止めクリームを塗り、帽子や日傘を活用して、紫外線をできるだけ避けるようにします。雀卵斑がある状態で紫外線を浴びてしまうと、数が増えるだけでなく、 既存の雀卵斑も色が濃くなってしまいます。

また、雀卵斑の症状を改善させるためには、ビタミンCやトラネキサム酸の摂取が有効だといわれています。ビタミンCは、美白作用が高く抗酸化作用も優れています。一般的には止血剤として用いられているトラネキサム酸は、美白作用があるので雀卵斑や肝斑(しみ)の治療にもよく使われています。

ほかにも、皮膚科や美容外科での専門治療として、レーザー治療や光治療のフォトセラピーなどがあります。これらの治療にはすべて施術後の紫外線対策などが重要です。

レーザー治療で雀卵斑を治療した直後は、施術した部分にテープなどを張る必要があるため、仕事をしながら治療したいという人にとっては難しい場合があるようです。赤みや色素沈着などが出る場合もあり、施術後の回復にも時間がかかります。フォトセラピーは、雀卵斑のメラニンを治療するだけでなく、コラーゲンを増やして皮膚に張りを与える効果があります。レーザー治療よりも、皮膚へのダメージが少ないといわれています。

雀卵斑を消す薬も、市販されています。化粧水タイプの薬品、顆粒タイプの飲み薬があり、用途に合わせて選ぶことができます。

除去することが難しい雀卵斑の対処法として、化粧品によって隠す方法もあります。そのようなメイクで特に使用されているのは、コンシ―ラという顔料を高濃度に固めたものです。最近では、コンシーラやファンデーションそのものに、美白成分などが入っているものもあります。ファンデーションには、紫外線や化学物質から皮膚を保護するという役割もあります。

日常的な対策として、生活習慣を見直し、皮膚の再生が行われる22時~24時には寝ているようにするのも効果的です。

肝斑の治療法と対処法

肝斑には、内服剤によって体の内側から働きかける治療が最も効果的といわれています。内服剤の場合、その有効成分は血流に乗って皮膚の隅々まで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに、より効果を発揮します。内服するものとしては、色素沈着抑制効果を持つトラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。

外用療法としては、コケモモの抽出成分であるアルブチン、甘草の油性抽出エキス(コラージュホワイトニングクリーム)、1パーセントのコウジ酸クリーム(ビオナチュール、フェスモ)などの美白剤の塗布が効果的とされています。皮膚には角層などのバリア機能があるため、美白剤はバリアを通過してメラノサイトに到達します。

外科的療法としては、光治療、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)を促進させてメラニンの排出を促すケミカルピーリング、ビタミンC誘導体イオン導入、メラニンを含む細胞を破壊する高周波での焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固などが、必要に応じて用いられます。ただし、いずれも即効性があるわけではなく、時間がかかることが多いようです。また、高周波での焼灼は、悪化の原因となる可能性を否定できないので、注意が必要です。

日常生活では、外出に際して帽子や日傘を活用して紫外線をできるだけ避けたり、皮膚をケアするだけでなく、生活リズムを整えること、うまくリラックスすること、睡眠時間を十分に取ることなど、ストレスや疲労をためないようにする工夫も重要です。

皮膚のケアでは、刺激を与えないことが大切で、合わない化粧品を使わないことです。最近では、気になる皮膚のトラブルをケアするさまざまな化粧品が登場していますが、使った時に少しでも違和感があるなら、使うのをやめます。ピリピリとした刺激によって、肝斑が増えることもあります。例えばファンデーションの場合、伸びをよくし、水に強く、化粧持ちをよくするため、原料に防腐剤や界面活性剤などが含まれているものもあります。こうした物質や油分の酸化が、皮膚への刺激となって、肝斑が増えることもあります。

また、こすってメイクを落とし、その後ゴシゴシと洗顔したり、クリームを使って強い力でマッサージを行うことも、皮膚にかなりの刺激を与え、結果的に肝斑を増やす原因になることも少なくありません。

2022/08/26

🇱🇾指趾粘液嚢腫

手指の先端にできる良性腫瘍で、中年以降の女性に多く発生

指趾粘液嚢腫(ししねんえきのうしゅ)とは、主に手指の先端の第1関節(DIP関節)の甲側、時に足趾の甲側に、水膨れのような形状の膨らみが生じる良性の疾患。ミューカスシストとも呼ばれます。

中年以降の女性に多くみられる傾向があります。

膨らみは直径1センチ以下のものが多く、膨らみの内部は透明なゼリー状の粘液で満たされています。

多くは膨らみを触知するだけで無症状ですが、大きくなると皮膚が引き延ばされて薄くなり、内部が透けて見えるようになったり、痛みを伴ったりすることがあります。皮膚が破れると、細菌が第1関節内に入って関節を壊し、化膿(かのう)性関節炎や骨髄炎に至る可能性があります。

また、爪(つめ)の付け根近くに膨らみが生じ、爪を作る爪母を圧迫した場合は、爪に縦方向の溝が入ったり、変形したりすることもあります。

この指趾粘液嚢腫には、線維芽細胞がヒアルロン酸を過剰に分泌して、皮膚下にたまる粘液腫性型と、骨性の盛り上がりの骨棘(こっきょく)の刺激により関節内の潤滑剤として働く滑液が周囲の組織に漏れ出し、貯留して膨らみを形成するガングリオン型があります。

さらに、第1関節の変形性関節症であるへバーデン結節に伴う変形や炎症が刺激となって、指趾粘液嚢腫が合併して生じるケースも多く見受けられます。

外傷が元になって生じるケースも多く見受けられるものの、複数の指に指趾粘液嚢腫ができます。

指趾粘液嚢腫は自然に治る傾向がほとんどないため、治療の希望があれば皮膚科、皮膚泌尿器科、あるいは整形外科の専門医を受診します。

指趾粘液囊腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による診断では、病変の見た目から判断することもよくあります。ただし、確定診断のためには、ゼリー状の粘液を注射器で吸引して顕微鏡で調べる生検を行い、ヒアルロン酸などを確認することが必要です。

このほか、小さな病変の確認や、より詳しい評価のために、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査などを実施するケースもあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科、整形外科の医師による治療では、健康に悪影響を及ぼすことが少ない良性疾患であり、治療を行わなければいけないというわけではありません。

膨らみが自然に消えることは少ないため、肥大した膨らみが神経や腱(けん)を圧迫して痛みがある場合や患者が希望する場合には、保存的治療、凍結療法、摘出手術のいずれかを行います。

保存的治療では、注射器でゼリー状の粘液を穿刺(せんし)吸引します。麻酔をかける必要はなく、痛みも少ないという特徴があります。しかし、根本的な治療方法ではないため、繰り返し行う必要がありますが、複数回実施することで治癒するケースもあります。粘液を吸引した後、少量のステロイド薬を注入することもあります。

凍結療法では、液体窒素を用いて、病変組織を凍結して破壊します。治療時に痛みを伴いますが、副作用は少なく安全性の高い方法とされます。

摘出手術では、局所麻酔をかけ、根治を目的として病変組織を十分に切除します。ガングリオン型の指趾粘液囊腫の場合は、病変組織が関節や腱に付着し、その根元が深かったり、小さな病変がたくさん付属していることがあるため、十分に注意を払って骨性の盛り上がりの骨棘を切除すると、治癒することが多くあります。

へバーデン結節に合併した指趾粘液囊腫の場合は、保存的治療で痛みが改善しない時や、変形がひどくなったり関節の動揺性がひどくなって日常生活に支障を来す時は、第1関節を固定する手術、骨棘と病変組織を切除する手術を行うことがあります。

🇧🇸脂腺母斑

生まれ付きまたは幼少時から、頭部から顔面にかけてできる黄色調のあざ

脂腺母斑(しせんぼはん)とは、生まれ付きまたは幼少時から、頭部から顔面にかけてできる黄色調のあざ。

原因は、皮膚の皮脂を分泌する脂腺の先天的な増殖です。成長とともに、あざに変化が見られます。

乳幼児期では、皮膚表面は正常ないし黄色調でざらざらした局面があり、平らから軽度の凹凸となります。頭部にできた場合は、毛髪を欠くことになります。

脂腺の発達する思春期以降では、次第に皮膚表面がいぼ状に隆起し、色調も加齢により褐色調を帯びてきます。頭部では、髪を洗った時に出血したり、散髪がしにくくなったりします。自然消退はなく、多くは単発性です。

ほかの母斑と同様に、体が大きくなるのに比例して脂腺母斑も大きくなります。注意することは、加齢とともに脂腺母斑から続発性に皮膚腫瘤(しゅりゅう)が発生することです。その頻度は、約20パーセントとされています。

続発性腫瘤には良性腫瘍と悪性腫瘍があり、母斑表面に変化が見られた時には注意が必要です。続発性腫瘤の発生年齢は平均30~35歳とされますが、まれに10歳以下のケースもあります。

従って、脂腺母斑は毛髪を欠いたり、盛り上がって汚いといった見た目ばかりでなく、皮膚がんなどになりやすいので比較的低年齢でも治療対象となります。

また、母斑が線状、帯状に並んでできる列序(れつじょ)性の脂腺母斑では、けいれん、精神遅延などの中枢神経障害を合併することがあります。これは脂腺母斑症候群と呼ばれ、目、口腔(こうくう)内、心血管系、骨などに先天異常を伴うので注意が必要です。

頭から顔面にできた黄色調の母斑を認めたら、皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科に相談して下さい。予防的切除を行うのか、二次的に腫瘍ができてから切除を考えるのかなど、十分に相談して下さい。

脂腺母斑の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による診断は、特徴的な母斑なので、ほとんどは見ただけでつきます。

鑑別が必要な疾患には、頭の皮膚が一部欠損して生まれ、その跡が瘢痕(はんこん)になる先天性皮膚欠損症があります。出生直後は区別に迷うことがありますが、経過をみれば診断はつきます。

皮膚科、皮膚泌尿器科、形成外科の医師による治療は、加齢に伴い続発性腫瘤が発生するため、一般的には適当な時期に手術で母斑を切除します。

母斑の切除により生じた皮膚欠損が縫合可能な場合は、患部を縫い合わせます。皮膚欠損が広範囲な場合には、周囲の組織を利用する皮弁移植術や、ほかの部位から移植する植皮術が必要となります。

切除後には瘢痕が必ず残るため、露出している顔面では術後の傷跡を考えた切除、縫合方法が必要です。切除による傷跡を残さないために、エルビウムヤグレーザーや炭酸ガスレーザーなどの照射による剥削(はくさく)術を行う場合もあります。このレーザー治療の効果は、大きな個人差があるため、実際の本格的な照射を行う前に母斑の一部に試験照射を行い、適切なエネルギーを設定します。その治療効果を見た上で、全体の治療を行うかどうかを決めます。

頭部では、毛髪を欠いた部分を最小限にする手術方法が望ましく、最近ではティッシュ・エキスパンダー法(組織伸展法)という、皮膚の下にシリコン製のバッグを埋入し、そのバッグ内に生理的食塩水を少しずつ注入することによりバッグを大きくして、母斑周囲の頭皮や皮膚を拡張することで、手術後の毛髪を欠いた部分や瘢痕を最小限にする手術方法も用いられています。年齢、母斑の大きさ、手術方法によっては、全身麻酔が必要となります。

成人では頭の皮膚の緊張度が高まり、わずかな幅を切除しても縫合が困難なこともあり、大きな傷ができる可能性があります。これに対し小児期では皮膚が軟らかく、十分縫合できるので、結果として小さな傷ですむ傾向があります。

脂腺母斑の完全な切除により、続発性腫瘤の発生はみられなくなります。

🇩🇴紫斑病

紫色の出血斑が皮膚、粘膜に現れる疾患

紫斑(しはん)病とは、皮膚および粘膜に点状、斑(まだら)状の出血を起こす疾患。紫斑が多数現れ、主症状となるものの総称です。

じんましんなどの紅斑は押すと赤みが消えますが、紫斑は押しても色が消えないのが特徴です。紅斑は血管が拡張し、充血するために起こるもので、押すと血管がつぶれて中の血液が移動するので、一時的に赤みが消えます。それに対して、紫斑は皮膚または皮下組織への内出血で、血液は血管の外に出てしまっているので、押しても色は消えません。

紫斑病には、さまざまなものがあります。代表的なものとしては、単純性紫斑、慢性色素性紫斑、アレルギー性紫斑病(血管性紫斑病、シェンライン・ヘノッホ紫斑)、特発性血小板減少性紫斑病(突発性血小板減少性紫斑病)があります。

単純性紫斑は、しこりのない点状の出血斑で、四肢、特に下肢に好発します。20歳代の女性に多くみられ、合併症はなく、血液検査でも異常を認めません。原因は不明ですが、血管壁の弱さが関係するものと考えられ、アレルギー性紫斑病の軽症型ともいわれてます。激しいスポーツなどは控えて、なるべく安静にしていれば、紫色の出血斑は褐色、黄色に変わって消えていきます。過労や生理の時に悪化しやすい傾向と、春、秋に多い傾向があります。

慢性色素性紫斑は、点状の出血斑、丘疹、毛細血管拡張、色素沈着などが下肢に好発し、慢性に経過します。多くの場合、かゆみはありません。中年以降に多くみられますが、時に小児、若年者にもみられます。真の原因は不明ながら、血液の異常はないことが多く、微小循環障害と血管壁の弱さが関係するものと考えられます。時に、高血圧、静脈瘤(りゅう)を合併します。

アレルギー性紫斑病は、小児に多くみられ、主に四肢に大小さまざまな紫斑、丘疹、膨疹が出現してきます。重症例では、水疱(すいほう)、びらん、潰瘍(かいよう)が続発します。同時に、腹痛、嘔吐(おうと)、下痢、下血、食欲不振、関節痛などを伴います。合併症として腎(じん)炎を起こすこともあり、注意が必要です。

原因ははっきりとはわかっていませんが、小児では細菌やウイルスの感染によることが多く、特に溶連菌によることが多い傾向にあります。成人では薬剤アレルギーによることが多い傾向にあります。

特発性血小板減少性紫斑病は、血小板が著しく減少することによって起こる自己免疫疾患です。血小板が自身の肝臓や脾(ひ)臓で破壊されてしまって減少し、出血を止めにくくなります。急性型は小児に多く、慢性型は大人の女性に多くみられ、皮膚の紫斑や粘膜からの出血が全身にみられます。歯茎や鼻からの出血、血便、血尿、月経過多などの症状が起こります。体がだるい、熱っぽい、貧血などの症状も起こってきます。重症の場合は脳出血を起こすこともあります。厚生労働省が特定疾患として認定しています。

紫斑病の検査と診断と治療

血液に異常のある紫斑病では、出血しないように注意することが大切です。特に特発性血小板減少性紫斑病では、脳内での出血には注意しなければいけません。小児はアレルギー性紫斑病に伴って、腎炎を続発させることが多く、血尿や蛋白(たんぱく)尿がみられます。ぶつけた覚えがないのに、紫斑ができる場合は早めに受診します。

いずれの紫斑病でも、検査で原因を見付けることが治療につながります。

アレルギー性紫斑病の治療では、症状が紫斑のみである場合、無治療で経過観察します。機械的刺激のある部分で紫斑が悪化するため、安静を心掛ける必要はあります。また、腎炎の発症の可能性があるため、定期的な尿検査が必要。

腹痛、関節痛などで日常生活が困難となった場合、入院治療が必要となります。その上で、急性期症状の改善には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド剤の投与が有効です。特に腹痛を伴う場合では、消化管からの吸収に期待できないため、ステロイド剤を静脈内投与することが多くなります。

特発性血小板減少性紫斑病では、急性型は自然に治癒することが多いので、ほとんどの場合は経過観察します。急性から慢性へ移行する確率は、高くありません。慢性型の場合は副腎皮質ステロイド剤を投与し、それでも血小板数が増加しなければ、血小板の破壊にかかわっている脾臓を摘出することで、良好な経過を得る可能性が高くなります。なお効果が不十分な場合は、免疫抑制剤などが使われます。

🇬🇩ジベルばら色粃糠疹

胴体を中心に突然、たくさんの赤い発疹ができる皮膚病

ジベルばら色粃糠疹(ひこうしん)とは、胴体を中心に突然、たくさんの赤い発疹ができる皮膚疾患。粃糠疹とは、表皮の細かい角質片が発疹に付着したものをいい、この疾患の特徴です。

主として、比較的年齢の若い10歳代から30歳代にみられます。かゆみはあったり、なかったりで、発疹が派手にたくさんできる割には、全身症状も少なく、心配のない疾患です。

一つひとつの発疹は、直径3〜4センチまでの卵円形の赤い斑点(はんてん)で、大きくなると中心が褐色になり、辺縁が赤く、表皮の細かい角質片はがれ落ち、次第に拡大していくのが特徴です。腹部、背中に多くみられ、皮膚のしわ方向に沿って発疹が出現するため、クリスマスツリー様となることがあります。手足の先端や顔には、発疹は出ません。

症状が出る前の数日から数週間ほど前に、ツバキの葉っぱほどの大きさの発疹が1つだけ、体のどこかに出現することもあります。この初発疹をヘラルドパッチと呼びますが、かゆみがあまりないため発見されることはあまりありません。

ジベルばら色粃糠疹の多くは、放置しても3週間から1カ月で治ります。感染力は弱く、家族内感染も普通はみられません。

1860年に、フランスのカミーユ・メルシオール・ジベール医師が世界で最初に発見したため、この疾患名がつきました。原因は、現在でも不明。ウイルス感染説を始め、掌蹠膿疱(しょうせきのうほう)症などと同じような細菌感染に関係するアレルギー説、胃腸障害による蛋白(たんぱく)質の分解異常による中毒説などがありますが、いまだに結論は出ていません。

ジベルばら色粃糠疹の検査と診断と治療

派手にたくさんの赤い斑点ができるため、驚く人が多いようですが、放置しても3週間から1カ月で治る疾患ですので、あまり心配はいりません。かゆみがなければ、自然に治癒するのを待ってもかまいません。

しかし、健康食品などの薬疹、ウイルス性発疹症などの全身的な疾患、あるいは湿疹、体部白癬(はくせん)、乾癬などの疾患と紛らわしい場合もありますので、一応は皮膚科の専門医を受診したほうが安心です。

医師の診断は、特徴的な発疹とその分布、経過により判断します。かゆみが強ければ、抗ヒスタミン剤などのかゆみ止めの内服剤、あるいは外用剤を処方し、発疹には副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド)外用剤を処方します。

発症者の中には、なかなか副腎皮質ホルモン外用剤に反応しないことや、普通の湿疹と誤診されやすいという理由で、多数の医療機関を駆け回るドクターショッピングをする人もいます。

日常生活は、ふだんと同様でかまいません。学校への登校、会社などへの出勤も、問題はありません。妊婦の感染によって胎児に影響することも、ありません。通常、入浴も問題はありませんが、こすり過ぎると皮膚に傷ができやすいので注意します。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...