長期間、紫外線を受けて起こる前がん性の皮膚変化
光線角化症とは、長い年月にわたって日光紫外線を受けたことが原因で起こる前がん性の皮膚変化。日光角化症、老人性角化腫(しゅ)とも呼ばれます。
日光紫外線を受けやすい顔面、耳、前腕、手の甲の皮膚、頭部に好発します。直射日光を受けて急性に起こるいわゆる日焼けとは異なり、長い年月にわたって慢性的に日光紫外線、特に中波長紫外線を受けることにより表皮細胞のDNAに傷ができるのが、その原因と考えられています。
日光に含まれる紫外線は肉眼では見えませんが、皮膚に最も大きな影響を与えます。体がビタミンDを作り出すのを助ける働きがあるので、少量ならば紫外線は有益なものの、大量に浴びると遺伝物質であるDNAが損傷を受け、皮膚細胞が作り出す化学物質の量と種類が変わってしまうのです。
発症者の年齢は、中高年層がほとんど。性差は、やや男性に多い傾向があります。日焼けの際に皮膚に紅斑(こうはん)を生じやすい人のほうが、褐色変化する人よりもなりやすいと見なされています。白色人種に比べて黒色人種、黄色人種では発症率が低く、日本人での発症率については沖縄県が高いという報告もあります。
症状としては、黄褐色のかさぶたを伴う大きさ1〜3cmの紅褐色の皮疹(ひしん)が現れることが多く、角化した部分はかさかさしたうろこ状となり、ぼろぼろむけます。色が濃くなったり、灰色がかったりすることもあり、触れると硬く感じられます。周囲の皮膚は薄くなり、多少の赤みがあります。皮疹が1カ所だけにできることも、複数の部位にできることもあります。
軽度のかゆみを訴えるケースもありますが、皮疹以外に自覚症状を来すことはまれ。皮疹は自然に消えることもあれば、同じ部位や別の部位に再発することもあります。
老人性のいぼと間違いやすいので注意が必要なものの、前がん性の皮膚変化といっても実際に、扁平(へんぺい)上皮がん、または有棘(ゆうきょく)細胞がんにまで発展するケースは、数パーセントにとどまります。
有棘細胞がんに発展した場合は、治療せず放置していると命にかかわることもあります。
光線角化症の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、光線角化症では、いぼ(脂漏性角化症あるいは尋常性疣贅〔ゆうぜい〕)などと紛らわしいことがありますので、疑わしい場合は病変の一部を切り取って組織検査をする皮膚生検を行います。
組織所見に基づいて、光線角化症を委縮性、ボーエン病様、棘(きょく)融解性、肥厚性、色素性に分類することもあります。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、通常、局所麻酔は行わず、液体窒素を浸した綿棒などを病変に押し付けて凍結、壊死させて除去する凍結療法を施します。簡便な処置法ですが、凍結時にかなり強い痛みを伴います。また、多くの場合、数回の処置が必要となります。
高齢者や角化部分の多発例では、液体窒素による凍結療法やCO2レーザー(炭酸ガスレーザー)照射なども行います。
角化傾向の強い病変の場合や、有棘細胞がんに発展している可能性がある場合は、局所麻酔を行い、病変をメスで切除する外科切除を施します。
薬物療法として、抗がん剤の1種であるフルオロウラシル入りのローションやクリーム、またはイミキモド(ベセルナクリーム)を病変に塗ることもあります。フルオロウラシル入りのローションやクリームは、1日2回単純に塗布するか、1日1回塗布後にラップ類で密封します。イミキモドは、1日1回、週3回、自分で患部に直接塗布します。薬物療法は、塗り薬の副作用で皮膚が荒れて、びらん、痛みが出ることがありますが、治療に伴うものであるため頻度を調節して継続します。
治療後も、外科切除の取り残しがないことや再発の有無をみるため、定期的な経過観察が必要です。
日常生活での注意点としては、一見正常にみえる皮膚も日光紫外線のダメージをすでに受けているので、新たな病巣を生じないためにも、サンスクリーンを使用するとともに帽子などで直射日光を避けるようにします。日光の紫外線が最も強いのは、1日の中では午前10時から午後3時までの日中、季節では夏、地域では海抜の高い場所です。
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