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2022/08/21

💅爪異栄養症

複数の爪の甲の表面に、波打つようなでこぼこが現れた状態

爪異栄養(そういえいよう)症とは、複数の爪(つめ)の甲の表面に、波打つようなでこぼこが現れた状態。二十爪発育異常症粗造爪と呼ばれることもあります。

爪は、爪の甲と、爪の根元の皮下にあって爪を作り出している爪母、爪の甲を下で支える爪床から成り立っています。複数の爪の甲の表面に、波打つようなでこぼこが現れるのは、爪の甲のその部分が爪母で形成された時に、発育を抑制するような刺激が加わったせいです。爪の甲が根元から伸びるのに伴って、その刺激によって生じたでこぼこが次第に爪先へと移行して現れます。

食事による栄養不足や水分不足により、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどが足りないと、爪の甲の表面にでこぼこが現れることがあります。過労や睡眠不足、不規則な生活が連続することにより、爪の甲の表面にでこぼこが現れることもあります。

環境におけるストレスが多いことにより、爪の甲の表面にでこぼこが現れることもあります。ストレスとの因果関係が高いため、爪の甲の表面にでこぼこが見られる人は、円形脱毛症になる可能性が高いといわれています。

うつ病を患っていることにより、爪の甲の表面にでこぼこが現れることもあります。

また、爪の甲の表面にでこぼこが現れるだけでなく、縦方向や横方向の線や溝が現れたり、爪の甲が薄くなり、光沢が消え、もろくなることもあります。

爪異栄養症の症状が手足の複数の爪に現れた場合は、心身ともに疲れがたまっているサインと見なし、食事による栄養不足を解消し、ゆっくり体を休めたり、リフレッシュして心をすっきりさせることを心掛ければよいでしょう。

ただし、いくつかの疾患が合わさって爪異栄養症を生じていることもあり、見た目で扁平苔癬(へんぺいたいせん)や爪乾癬(つめかんせん)、アトピー性皮膚炎と区別が付かないこともあるので、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診して、確認してもらうことが勧められます。

爪異栄養症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、症状と問診から判断します。確定診断には、爪床や爪母を含めて爪組織の一部を切って顕微鏡で調べる組織検査を行い、扁平苔癬や爪乾癬などと鑑別します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、基本的には外用ステロイド剤を患部に塗ります。内用ステロイド剤の内服で軽快することもあります。治りにくい場合には、光線療法も行います。

光線療法は、紫外線の増感剤であるメトキサレン(オクソラレン)を患部に塗り、長波長紫外線UVAを当てる治療で、PUVA(プーバ)療法といいます。近年、PUVA療法に代わる光線療法として、特定の紫外線波長を利用したナローバンドUVB療法も利用されるようになってきています。

🇲🇻騒音性難聴

騒音の出る職場で長期にわたって過ごすことが原因になって起こる難聴

騒音性難聴とは、騒音の下で長時間就業することにより起こる難聴。職業性難聴とも呼ばれます。

騒音性難聴を引き起こす騒音の大きさは80デシベル以上と定義されており、就業期間が長くなるとともに、難聴の症状も進行することになります。

騒音の激しい工事現場、機械の作動音の大きい工場、機械音や音楽に満ちたパチンコ店、あるいはカラオケ店などで働く人は、長年繰り返して騒音を聞き続けることで騒音性難聴になることがあります。騒音性難聴になるかどうかは個人差が大きく、同じような状況下にいても難聴になる人とならない人がいます。

また、ヘッドホンやイヤホンでいつも音楽を聞いている人や、オーケストラや吹奏楽などでトロンボーンの直前にいる奏者が、騒音性難聴になるといったことも起きています。

異なる周波数の音が混じった騒音の下で就業した人を比較すると、疾患の初期には4000ヘルツ付近の高音部を中心とする類似した聴力低下を示します。従って、騒がしく、大きな音により内耳の蝸牛(かぎゅう)内の限られた部位に感覚器障害が発生することが、疾患の発生原因と考えられています。感覚器を障害するのは、同じ大きな音でも、低音よりも3000ヘルツを超えるような高音のほうが強いといわれています。

しかし、初期には4000ヘルツより低い日常会話音域は問題なく聞き取れるため、異常に気付かない人も多くなっています。

そのまま騒音を聞き続けると、高音部から低音部も聞こえにくくなり、会話音域の500〜2000ヘルツまで聴力低下が及んだ時に、初めて難聴を自覚することになります。

異常に気付いた時には取り返しがつかなくなっているという例が、後を絶ちません。また、発症者の中には、耳鳴り、めまいなどの症状を訴える例も多くなっています。

騒音性難聴は左右両側の耳に起こることが多く、両側の耳が同程度の難聴になります。

騒音のある職場では特殊健康診断が行われており、難聴が発生した場合には、その障害の程度に応じて労働者災害補償保険法による補償が行われています。申請書類の記入のために耳鼻咽喉(いんこう)科への受診が必要です。

騒音性難聴の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、難聴の程度を調べるために純音聴力検査を行います。疾患の初期には、4000ヘルツ付近の高音部を中心に特徴的なC5dipと呼ばれる聴力低下像がみられ、比較的容易に診断できます。

しかし、進行すると老人性難聴や薬剤性難聴と似た聴力像を示すようになります。従って、騒音下での作業の職歴の有無が、職業性難聴の診断には極めて有用です。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、慢性の難聴のため、現時点では有効な治療手段はありません。対症療法として、循環改善薬やビタミン薬などが用いられる場合もあります。

難聴を自覚した時には、すでに疾患はかなり進行しており、元に戻すことは困難です。従って、騒音の下で長時間就労する場合には、耳栓、イヤーマフなどの防音具の装着による予防が必要です。騒音過多の職場の環境を変えることができれば、何よりの予防になります。

💅爪郭炎

指の爪の根元が赤くはれて、爪がでこぼこになる皮膚疾患

爪郭炎(そうかくえん)とは、指の爪(つめ)の根元が赤くはれて、爪がでこぼこになる皮膚疾患。オニキアとも呼ばれます。

爪の甲の表面と、爪の甲を根元で固定している皮膚である後爪郭(こうそうかく)の間に透き間ができて、そこに、かびの一種である真菌のカンジダなどや、そのほかの細菌が入り込んで、増殖することで炎症が起き、爪郭炎を生じます。

ほとんどが手の指の爪に起こり、中指、薬指の爪に多くみられます。最初は爪の根元が白く濁り、周囲の皮膚が赤くはれ上がり、押すと圧痛があります。悪化すると、爪と皮膚の間が化膿(かのう)して、うみが出たり、痛みが生じます。

非常に治りにくく、爪の根元の後爪郭に炎症が起きるために、新しく生えた爪が変形して、爪の表面がでこぼこになり、横に筋(横溝)がみられたり、爪が褐色や灰色に変色することがあります。

爪郭炎は、指先が湿る水仕事の機会の多い中年女性や料理人に起こりやすいものです。マニキュアを不適切に行ったり、不衛生な器具を使って行った後にも、しばしば起こります。

感染している指で食品を触ると、カンジダなどの真菌や、そのほかの細菌が移り、調理後食べるまでの時間が長い場合には、食中毒の原因となる可能性もあります。

爪郭炎の症状に気付いたら、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪郭炎の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、病変部の皮膚の表面をピンセットで軽く引っかき、採取した角質を顕微鏡で見る直接鏡検法KOH(苛性〔かせい〕カリ)法で真菌や細菌を検出することで、確定します。真菌や細菌の種類を特定するために、培養検査を行うこともあります。

皮膚科、ないし皮膚泌尿器科の医師による治療では、カンジダなどの真菌が原因となっている爪郭炎の場合、1日1回、外用抗真菌剤を後爪郭から爪甲表面に塗布し、内用抗真菌剤の内服を行います。

黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、大腸菌などの細菌が原因となっている爪郭炎で軽い場合は、外用抗生物質を後爪郭から爪甲表面に塗布します。治りが悪い場合には、内用抗生物質の内服と、局所の安静が必要となります。

それと同時に、患部を濡らさないように水から避けて、手を乾燥した状態に保つことが大切です。指先の炎症が治まっても、爪が正常の状態に戻るにはさらに数カ月かかります。

また、化膿が強い場合は、切開排膿が必要となります。メスで皮膚を切開して、たまっているうみを排出すると、痛みは弱まります。

予防法としては、爪郭炎は水仕事の機会の多い中年女性や料理人などがかかりやすく、特にささくれ、小さい傷がある時に真菌や細菌が入りやすくなりますので、指先に小さい傷がある時には、まめに消毒を行い、水などに指先をつける時には、手袋をして直接、触らないように注意する必要があります。

💅爪下血腫

外的な衝撃により爪床が傷付くことで内出血を起こし、爪下に血液がたまった状態

爪下血腫(そうかけっしゅ)とは、外的な衝撃や、外部からの持続的な圧迫ストレスにより、爪床が傷付くことで内出血を起こし、爪(つめ)と皮膚の間に血液がたまった状態。爪下出血とも呼ばれます。

爪下血腫の原因は、主にけがです。車などのドアに指先を挟んだり、金づちなどで指先を直接たたいたり、足の指先に重い物を落とした時などに、典型的な爪下血腫が起こります。

また、長距離走やサッカーが、爪下血腫の原因になることもあります。走っている時に足指の爪に持続的な圧迫がかかることで、内出血を起こすことがあるのです。

爪下血腫を起こした場合、すぐに爪の甲の一部分または全体が黒く変色します。爪の甲の色が変化するのは、爪の奥で内出血が起こり、爪と皮膚の間に血液がたまるためです。つまり、爪下血腫は、打撲による内出血によって皮膚にできる青あざのようなものです。

たまった血液により爪の下の内圧が上がるため、ズキズキする強い痛みを生じます。また、爪の根元の部分がたまった血液ではれ、爪がグラグラすることがあります。

時間が経つにつれて、爪の黒い部分は消えていきます。また、爪が伸びるに従って、黒い部分が移動するケースもあります。

痛みのない場合に放置しておくと、たまった血液によって爪の甲が爪床から離れているため、血腫が小さくない限り、通常は数週間で変色した爪がはがれ落ちます。爪の下の爪床に変形がなければ、元の爪の下に根元から新しい爪が作られ、指先まで伸び切れば古い爪に置き換わります。

ただし、成人の手指の爪は1日0・1ミリ、足指の爪は0・05ミリしか伸びないため、爪が置き換わるには半年から1年と長い期間がかかります。

爪下血腫が軽く、痛みがなければ、治療をせずに放置していてもかまいません。爪下血腫が重く、痛みがある場合、爪の根元の1/3に血液がたまっている場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし整形外科、形成外科で治療してもらうことが勧められます。

爪床に重度の損傷が生じたり、爪の根元の1/3に血液がたまって爪母の状態が悪くなると、新しく作られる爪が変形したまま、元の形に戻らない場合がよくあるからです。このリスクを減らすためには、早期に血腫を抜いて爪を圧迫、固定しておくか、爪を除去して爪床の損傷をすぐに修復する必要があります。

爪下血腫の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし整形外科、形成外科の医師による診断では、爪のはれや痛みが強い時は、X線(レントゲン)検査で骨折の有無を確認します。

皮膚科、皮膚泌尿器科、ないし整形外科、形成外科の医師による治療では、骨折があれば、骨折の治療を優先します。

爪に対しては、痛みを和らげ、爪下血腫の範囲が広がらないようにする目的で、消毒した注射針や熱したクリップの先などでゆっくりと爪に小さな穴を開けて、たまった血液を外に出します。これで痛みは緩和されます。

爪には痛みを感じる細胞がないので、爪に穴を開ける際に痛みは伴いません。爪に穴を開けた後は、不潔にならないように数日間、血液を吸収する素材を使用したガーゼで覆い、薄く伸縮性があるテープで圧迫しておきます。

痛みがひどい時には、爪とその下の皮膚に少し圧力をかけただけでも痛みが伴うので、麻酔を使用してから爪に穴を開けます。

長距離走やサッカーなどで、足指に持続的な圧迫がかかることにより爪下血腫になった場合は、なるべく走ることを控えるようにしてもらいます。軽度の爪下血腫の場合でも、さらに足や爪を酷使し続けると症状が悪化してしまうからです。

走ることによる爪下血腫を防ぐためには、クッションの効いた指先に圧力がかからないシューズを選び、足に負担をかけないように気を付けることです。また、ストレスがかかる部分にパッドなどの緩衝剤を入れたり、足指にテープを巻いたりワセリンを塗ることもお勧めで、足指を清潔に保ち、爪を正しく切ることも必要です。

💅爪カンジダ症

真菌の一種のカンジダが感染、増殖して、爪や爪の周囲に炎症を生じる疾患

爪(そう)カンジダ症とは、カンジダという真菌の一種が感染、増殖して、爪(つめ)や爪の周囲に炎症を生じる疾患。

真菌は、カビ、酵母(イースト)、キノコなどからなる微生物の総称であり、菌類に含まれる一部門で、細菌と変形菌を除くものに相当します。葉緑素を持たない真核生物で、単細胞あるいは連なって糸状体をなし、胞子で増えます。

その真菌の一種であるカンジダは、もともと人間が持っている常在菌で、口腔(こうくう)や気管支、肺、腸管、膣(ちつ)内、皮膚などに常在して生息し、病原性が弱いため害を及ぼしません。しかし、疲労が重なったり、疾患で体の免疫力が低下している時、あるいは妊娠している時、糖尿病にかかっている時などに、カンジダが増殖して病原性が現れると、皮膚や口腔、膣などさまざまな部位に炎症を引き起こします。

爪や爪の周囲に炎症を引き起こすと爪カンジダ症が生じ、段階的にカンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダを生じます。

爪の周囲に炎症が起きるカンジダ性爪囲炎の場合、症状が軽く、痛みも出ないことが多いものの、爪の生え際が赤みを帯びだり、はれたりします。

この爪囲炎を繰り返していると、カンジダ性爪炎に移行し、爪が変色し、表面に凹凸ができる、横にすじができる、赤くなってはれ、痛むといった症状がみられます。

カンジダ性爪囲炎とカンジダ性爪炎は、爪の表面だけがカンジダに感染している状態ですが、カンジダが爪の内部にまで寄生すると、爪カンジダになります。爪が黒ずんできて、爪の先が皮膚から離れて浮き上がったような状態になり、爪が変形します。また、爪が厚くなることもあれば、逆にボロボロになって先端が欠けたりすることもあります。

カンジダ性爪囲炎、カンジダ性爪炎、爪カンジダは足指の爪よりも手指の爪によく発生し、健康に問題はなくても、手を水で頻繁にぬらしたり洗ったりする職業の人や主婦にもよくみられます。

ある日突然、爪が変色したり変形したりした時は、爪カンジダ症を疑うことが必要です。また、見た目には白癬(はくせん)菌と呼ばれる一群の真菌の感染により生じる爪白癬、いわゆる爪の水虫や、ほかの爪の疾患と似ているため注意が必要で、自己判断で薬を塗ったりすると症状が悪化する可能性もありますので、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪カンジダ症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、通常、爪の外観に基づいて判断します。診断の確定には、爪の破片を顕微鏡で調べ、培養して、真菌の一種のカンジダを認めることが必要です。爪では皮膚と違って真菌を見付けにくく、真菌の形態が不整形で、カンジダと白癬菌との違いを判定しにくいことが多いので、注意が必要です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、カンジダを殺す抗真菌薬のイトラコナゾールなどを服用します。さらに、抗真菌薬のイミダゾール系統の外用薬も併用します。

治療期間は6カ月以上、1年間くらい要することもありますが、症状が軽い場合には、塗り薬だけで治ることもあります。

もし免疫不全、糖尿病など全身的な要因があれば、それらの治療、改善が重要になってきます。

予防には、水仕事の後にはしっかりと手を乾かして清潔にすることを心掛けます。指や爪が湿っている状態は、カンジダが発生する原因となるからです。

🇲🇻早期再分極症候群

致死性不整脈へと直接つながる可能性がある不整脈疾患

早期再分極症候群とは、心臓の器質的な病変がない場合でも、心室細動や心室頻拍などの致死性不整脈へと直接つながる可能性がある不整脈疾患。J波症候群、ERS(Early Repolarization Syndrome)とも呼ばれます。

再分極は、心電図の波形において心臓の電気的刺激が収束していく過程のことを指す言葉であり、早期再分極症候群は、心臓の拍動を生み出す電気的刺激の伝達において、通常の場合よりも心筋の電気的刺激が早く収束する不整脈の形態を意味することになります。

これに対して、早期再分極症候群の別名として使われることも多いJ波症候群のJ波は、心室の収縮を表すQRS波と、心室の弛緩(しかん)すなわち再分極を表すT波の間に出現することがある心電図の小さな波のことを指す言葉であり、心電図のQRS波の終わりにJ波が割り込むように出現することによって、心筋の電気的刺激を収束させる本来の波であるT波がくる前に早期に心筋の弛緩が始まることになります。

従って、心電図においJ波が出現すると、心臓の電気的刺激の収束である再分極が通常よりも早期に始まることになるので、心電図にJ波が現れるJ波症候群は、早期再分極症候群へとつながる一連の不整脈の形態としてもとらえられることになります。

早期再分極症候群ないしJ波症候群においては、心筋の電気的刺激の伝達において、本来よりも早く心臓の電気的刺激が収束する再分極が始まることによって、心臓の電気的状態が不安定となり、特発性の心室頻拍や心室細動といったより重篤で命にかかわる不整脈の状態へと移行する可能性がある程度高まる可能性があると考えられます。

しかし、こうした潜在的な危険性の一方で、早期再分極や心電図におけるJ波の出現は、自覚症状がないものや、心電図におけるJ波の所見が極めて軽微であるものも含めると、全人口の5~10%程度の人に見られるほど非常に多く認められる心電図の特徴でもあります。

つまり、早期再分極症候群という不整脈の形態自体は、発症率の極めて高い、極めて一般的な不整脈の形態であり、早期再分極症候群を有する人の多くが、実際には、失神などの危険な兆候はおろか、何の自覚症状も感じずに、心室細動のような致死的な不整脈とは無縁のまま健康な生活を送っているということにもなります。

早期再分極症候群と診断された場合、その不整脈の形態が実際にどの程度命にかかわる危険性が高いかは、心電図に見られるJ波の波形の大きさや、頻脈発作の有無、失神やめまい、立ちくらみといった危険な兆候の有無などから総合的に判断されていくことになります。

特に、ブルガダ症候群やQT延長症候群といったほかの致死性不整脈と合併して、この早期再分極症候群が現れている場合は、心室細動や心室頻拍を引き起こす危険性が高まる要因として重視されることになります。

早期再分極症候群を発症する70〜80%は男性であり、発症年齢は40歳前後。突然死の家族歴を10〜20%に認め、これは早期再分極症候群の発症に遺伝的背景が関与していることを示唆しており、実際に現在までに5種類のイオンチャネル遺伝子が原因遺伝子として報告されています。

心室細動や心室頻拍を引き起こす状況は一様でなく、夜間や睡眠中に発作を来す場合が多いものの、労作時や運動時に発作を来す場合も少なからず存在します。

主に左室下壁誘導ないしは左室側壁誘導の早期再分極が心室細動に関連しますが、右側胸部誘導に早期再分極を認めることもあります。J波の高さはさまざまな状況において変動し、時に消失するものの、徐脈が生じたり,長いポーズ(心停止)が生じた時に増強し、心室細動の発作の直前に通常は最もJ波は高くなります。

早期再分極症候群の検査と診断と治療

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による診断では、失神の既往歴、突然死の家族歴があり、心臓に流れる電流を異なる12方向から記録する12誘導心電図による検査で、左室下壁誘導(心電図検査のⅡ、Ⅲ、aVFと呼ばれる項目)と左室側壁誘導(心電図検査のⅠ、aVL、V4-V6と呼ばれる項目)の中の2誘導以上で1ミリ以上のJ波を認めた場合、早期再分極症候群の可能性を疑います。

循環器科、循環器内科、不整脈科、不整脈内科などの医師による治療では、心室細動が出現した場合は、植え込み型除細動器(ICD)の埋め込み手術を行います。植え込み型除細動器は、致命的な不整脈が起きても、それを自動的に感知して止めてしまう装置。

心室細動が頻回にわたって出現する場合には、発作予防の抗不整脈薬の投与が必要となり、β(ベータ)刺激薬であるイソプロテレノールや心拍を早くするためのベーシングが有効です。再発予防には、キニジンが有効です。

抗不整脈薬の効果がない場合は、心室細動の引き金になる心室性期外収縮を発生させている左室下壁あるいは左室側壁の異常興奮部位を探し出し、足の付け根などからカテーテルと呼ばれる電極を心臓内に挿入し、高周波電流で焼灼(しょうしゃく)するカテーテルアブレーション(カテーテル焼灼法)という手術を行うことがあります。

🇱🇰早期乳児てんかん性脳症

新生児期から乳児早期に発症する難治性のてんかん

早期乳児てんかん性脳症とは、新生児期から生後3カ月以前の乳児早期に発症する難治性のてんかん。大田原症候群とも呼ばれます。

生後4カ月から1歳ころに発症するウエスト症候群(点頭てんかん)、2歳~8歳に発症するレノックスガストー症候群とともに、年齢依存性てんかん性脳症に分類されます。それぞれのてんかんの好発年齢が乳幼児期にみられること、早期乳児てんかん性脳症からウエスト症候群へ、さらにウエスト症候群からレノックスガストー症候群へと年齢とともに移行することが多いため、脳の発達過程とこれらのてんかんの発症が密接に関連しているものと考えられています。

早期乳児てんかん性脳症を発症すると、強直発作を頻発します。強直発作は全身を強直させて、頭部を前屈し、両上肢を挙上させ、眼球が上転する数秒~30秒程度の発作で、発作の発見時には多くの場合、一過性に呼吸を止めて、唇や爪(つめ)が青紫色になるチアノーゼが見られます。

脳波を調べると、覚醒(かくせい)時、睡眠時を問わず持続的に、サプレッションバーストという特徴的な脳波が認められます。サプレッションバーストは、振幅の小さい波の時(サプレッション)と、振幅の大きい波の時(バースト)とが交互に現れるものです。

強直発作に伴って脳の働きが弱まり、知的障害や運動障害などを来します。

早期乳児てんかん性脳症は、脳の低酸素や感染症、事故などよる脳損傷によっても生じますが、一部は遺伝子の配列の異常によって生じます。

発作は難治で、多くは抗てんかん剤およびステロイド剤に反応しません。薬剤が部分的に有効で発作が消退しても、心身の障害を残し予後は極めて不良で、早期死亡の例も少なくありません。

脳の前頭葉に焦点性皮質形成異常のある早期乳児てんかん性脳症の場合には、外科治療が精神運動発達と発作コントロールの両方に有益な効果があります。

🇱🇰早期ミオクロニー脳症

生後3カ月以内、多くは新生児期に発症する難治性のてんかん

早期ミオクロニー脳症とは、生後3カ月以内、多くは新生児期に発症する難治性のてんかん。

てんかん発作は、初期には断片的なミオクロニー発作が起きます。ミオクロニー発作とは突然、全身がピクンとする一瞬の発作で、その時、意識は保たれています。 やがて、部分発作や全身性のミオクロニー発作、短い強直発作(スパズム)などを起こしてきます。

脳波を調べると、覚醒(かくせい)時、睡眠時を問わず持続的に、サプレッションバーストという特徴的な脳波が認められます。サプレッションバーストは、振幅の小さい波の時(サプレッション)と、振幅の大きい波の時(バースト)とが交互に現れるものです。てんかん発作が起きた時の脳波は、棘徐波(きょくじょは)が認められます。

早期ミオクロニー脳症は脳の低酸素や感染症、事故による脳損傷などさまざな原因に起きますが、一部はSLC25A22という遺伝子の配列の違い(変異) によって起きることがわかっています。先天性の代謝異常との関係も指摘されており、非ケトン性高グリシン血症という先天性代謝異常によって起きることもあります。

てんかん発作に伴って脳の働きが弱まり、知的障害や運動障害などを来します。

小児科、あるいは神経内科の医師による治療では、抗てんかん薬の内服のほか、ビタミンB6の内服、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)療法、甲状腺(こうじょうせん)刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の注射などが行われます。

しかし、てんかん発作は難治で、多くは抗てんかん剤や副腎皮質刺激ホルモンに反応しません。有効な治療法もなく、予後は極めて不良で、重症心身障害が残ったり、誤嚥(ごえん)性肺炎や骨粗鬆(こつそしょう)症など全身症状の併発が多く、死亡する例も少なくありません。

🇱🇰双極性障害(躁うつ病)

●躁状態と、うつ状態を繰り返す気分障害

双極性障害とは、躁(そう)状態とうつ状態を繰り返す精神疾患であり、気分障害の1つ。従来、躁うつ病と呼ばれていた病気に相当し、双極性感情障害とも呼ばれます。

双極性障害(躁うつ病)の生涯有病率は、0.2~1.6パーセントであるとされます。同じ気分障害の1つで、うつ病だけを繰り返す単極性障害(単極性うつ病)の生涯有病率6~15パーセントと比べると、低めではありますが、決して珍しい疾患ではありません。

発病年齢は、単極性障害の場合は年齢層が幅広く分布しているのに対して、双極性障害は20歳代にピークがあります。また、単極性障害は男女比が1対2と女性に多いのに対して、双極性障害では男女比は1対1となっています。

双極性障害は一度回復しても、再発を繰り返すことが多く、生涯に渡る薬物投与による予防が必要となることが普通です。

発症の原因はいまだ解明されていませんが、単極性障害と同様、疾患脆弱(ぜいじゃくせい)性、すなわち病気になりやすい性質を持つ人に身体的、あるいは心理的負荷がかかり、脳の機能のバランスが取れなくなると発病するとされています。

疾患脆弱性を規定する因子は複雑ですが、その1つに遺伝があり、双極性障害の親を持つ人の2~3割は発病すると見なされています。双生児で一方が発病した場合、他方も発病する一致率は6~8割ともいわれています。しかし、他の2~4割は遺伝以外の要因であり、遺伝と環境要因の両方で規定されると考えられます。

シナプスと、セロトニンやノルアドレナリンなどの脳内神経伝達物質を介した神経伝達機構に障害が生じることに、双極性障害の発症原因を求める仮説もあります。

双極性障害は、双極1型障害と双極2型障害に分けられています。双極1型障害の方が躁状態が激しいもので、双極2型障害は軽躁状態を伴うものです。

躁状態とは、気分の異常な高揚が続く状態です。軽躁状態とは、基本的に躁状態と同じ症状で、社会的、職業的機能に影響のない程度のものを指します。双極2型障害においては、軽躁状態そのものが発症者本人や家族に認識されていないことも多く、自覚的には反復性の単極性障害(単極性うつ病)であると考えている発症者も多くみられます。

自尊心の肥大、多弁、注意散漫、活動の増加といった躁状態が1回認められれば、双極1型障害と診断されます。1回の躁状態で終わるケースはまれで、一般的には、症状のない回復期を伴いつつ、うつ状態と躁状態のいずれかが繰り返していくケースが多くみられます。

躁状態から次の躁状態までの間隔は、数カ月から5年と幅があります。再発を繰り返すにつれて、病状の持続期間は長くなる一方、病状と病状の間隔は短くなります。うつ状態から急に躁状態になる躁転もまれではなく、一晩のうちに躁転することもあります。

中には、1年のうちに4回以上、躁状態とうつ状態を繰り返すケースもあり、これを急速交代型(ラピッドサイクラー)と呼びます。時に、躁とうつの症状が混じり合って同時に現れることがあり、これを混合状態と呼びます。

双極性障害の症状は、躁状態とうつ状態で対照的です。基本的には、感情やエネルギーが高まった躁状態に対して、うつ状態は感情やエネルギーの低下状態と理解できます。

具体的な躁状態の診断基準は、以下の症状が3ないし4つ以上みられる状態が1週間以上続き、社会活動や人間関係に著しい障害を生じることとなります。

1. 自尊心の肥大=自分は何でもできるなどと、気が大きくなる

2. 睡眠欲求の減少=眠らなくても、いつも元気なまま過ごせると思い込む

3. 多弁=一日中しゃべりまくったり、手当たり次第にいろいろな人に電話を掛けまくったり、メールを送りまくったりする

4. 観念奔逸=次から次へ新しい考えが浮かんでくる

5. 注意散漫=気が散って一つのことに集中できない

6. 活動の増加=仕事などの活動が増加し、よく動く

7. 快楽的活動に熱中=お金やクレジットカードを使いまくって買物をしたり、性的逸脱行動に出る

この躁状態の初期には、発症者は明るく開放的であることもありますが、症状が悪化するとイライラして、怒りっぽくなる場合も多くみられます。

本人の自覚的には、エネルギーに満ち、快いものである場合が多くて、苦痛を感じません。他人から見ると、感情のコントロールができなくなっていて危なっかしい状態で、社会的には、さまざまなトラブルを引き起こすことが多くみられます。本人は病気だという認識もないので、治療や入院も拒否しがちです。

逆に、うつ状態になると何週間も、憂うつな気分が続きます。朝が最も憂うつで、夜になってくると軽くなるのが普通です。食欲もなくなり、不眠になり、躁の時のことを思い出して自己嫌悪に陥ったり、悲観的なことばかり考えてしまいます。双極性障害のうつ状態では、不眠もありますが、過眠になることも多く見受けられます。

ひどい時は、ほとんど寝たきりになり、頭も働かず、生活ができなくなって入院することもあります。少し体力がついてきても、気分は悪いので、「破産してお金がない」といった貧困妄想や、「恐ろしいことをした」などの加害妄想が出るために将来を悲観し、自殺を図ったりする場合もあります。

●気分安定薬の継続的な服用が治療の柱

双極性障害(躁うつ病)は、発症者の結婚、職業、生活にしばしば深刻な影響を招く原因となります。離婚率も高く、健康な対照者の2~3倍とされています。また、自殺率も高くなっています。

躁状態が確認されれば、双極性障害の診断はさほど困難ではありません。しかし、うつ状態のみの場合は、単極性障害(単極性うつ病)と診断したケースのうち、2~3割が経過を追うと双極性に転じるので、注意が必要です。特に20歳以前、あるいは20歳代で発病する単極性障害の場合は、慎重に経過をみていく必要があります。

双極性障害の治療は単極性障害と同様、薬物療法、心理療法、社会的サポート(地域支援活動)の3本柱で行われますが、薬物療法は単極性障害と基本的に異なります。

双極性障害では、気分安定薬を中心に用いるのが原則で、躁状態だけでなく、うつ状態もある程度予防することが知られています。日本では、炭酸リチウム、カルバマゼピン、バルプロ酸の3種類の気分安定薬が使用できます。

炭酸リチウムは、気分安定薬のうち最も歴史が長く、その有効性について最も科学的研究が行われている薬物です。ただし、治療域と中毒域が近いために、血中濃度を定期的に測定する必要があります。全般的には副作用の少ない薬物ですが、一般的な副作用としては、手の指先の震えがあるほか、時に飲み始めの数週間に、極端な倦怠(けんたい)感が出て服用を止める患者もいます。有効血中濃度を超えた場合、複視、ふらつき、意識障害、腎障害などの中毒症状が現れます。

カルバマゼピンは元来、てんかん、三叉(さんさ)神経痛の治療薬であり、双極性障害に用いられ始めたのは比較的最近。一般的な副作用としては、眠気や倦怠感、めまいなどですが、極まれに、全身性の薬疹(やくしん)、肝機能障害、造血機能障害などが生じることがあり、重篤な状態となる場合もあります。リチウムと同様に、有効血中濃度を超えると中毒症状が現れるため、定期的な血中濃度測定が必要です。

バルプロ酸も元来、てんかんの治療薬ですが、最近、気分安定薬として用いられ始めました。副作用が比較的少ないため、使用しやすい薬物です。

これらの気分安定薬を用いた治療においては、ある種類が無効でも、他の気分安定薬が有効な場合もあります。また、2剤以上組み合わせることで有効な場合も。服薬が不規則であると効果がないため、薬を規則的に飲み、有効血中濃度に保つことが重要です。

激しい躁状態には鎮静効果のある抗精神病薬を、程度の重いうつ状態には抗うつ薬を、不眠に対して睡眠導入剤を用いますが、これらはあくまでも付加的なものです。

また、気分安定薬の長期使用により、双極性障害の6割は再発を予防することが可能なので、再発予防に重点を置いた治療計画が必要です。

しかし、発症者に服薬の必要性が十分、理解できていないこと、副作用を不快に感じること、一度に複数の種類の薬が処方されて混乱することなどにより、服薬が不規則になったり、中断することがあります。このような状態が続いた場合、再発する可能性が高まります。

医師の処方を守って服薬することを服薬順守、あるいはコンプライアンスといいますが、これを高めるために、医師や薬剤師から病状や治療法について十分な説明を受けて理解すること、家族など周囲の人も服薬に協力することが重要となります。

再発予防のためには、服薬順守を高めると同時に、ストレスを管理することが重要となります。一時的な好調、不調に振り回されずに、根本となっているストレスや性格を改善していくことで躁状態、うつ状態を繰り返さなくなります。

💅爪甲委縮症

爪の甲がもろくなって、輝きを失い、委縮したり、欠落したりする状態

爪甲(そうこう)委縮症とは、爪(つめ)の甲がもろくなって、輝きを失い、委縮して小さくなる状態。オニカトロフィア、アトロフィとも呼ばれます。

爪がきちんと育っていない状態であり、爪の甲の形が崩れ、通常の半分程度の大きさにしかならず、表面がでこぼこになります。悪化すると、ボロボロと爪の甲がはがれ落ちる症状が現れ、欠落することもあります。爪の甲が欠落すると、痛みを感じるなど不便なことが多く起こってきます。

爪甲委縮症の原因としては、ごくまれに先天性ないし遺伝性の爪甲委縮症もありますが、多くは後天性で、栄養不足、外傷、内臓の疾患に伴って生じます。

爪も皮膚の一部であり、主に蛋白(たんぱく)質の一種のケラチンで構成されているため、食事での栄養バランスの偏りや過度のダイエットなどで、爪に必要な蛋白質が不足することで、爪甲委縮症を生じることがあります。

爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷することで、爪甲委縮症を生じることもあります。この場合、爪母に損傷が加わってから数週間後に、爪の発育不全の状態が現れます。

胃腸などの疾患があるために、体内で栄養の吸収が悪くなり、極度の栄養不足になることで、爪甲委縮症を生じることもあります。

爪甲委縮症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の委縮、欠落を起こし得る食事摂取の状況、外傷の有無を聞いたり、胃腸などの疾患を検査したりします。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、栄養不足が原因で爪甲委縮症を生じている場合、栄養バランスのとれた1日3食の食生活を心掛け、爪の健康に必要な栄養素である蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類などをしっかり摂取してもらいます。

爪を作り出している爪母の損傷が原因で爪甲委縮症を生じている場合、現在の医療では手当できないとされています。爪が委縮、欠落して直接さらされた爪床部分の皮膚からばい菌が侵入して、感染症を起こしやすくなるのを防ぐ補助医療目的で、人工爪(付け爪)をつけることもあります。

胃腸などの疾患が原因で爪甲委縮症を生じている場合、その原因となる疾患を治療することが先決です。

日常では、爪を保護するためにも、水仕事をする際は柔らかいゴム手袋を着けるようにし、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行うこと、指先に過度の力を入れないこと、指先を圧迫したり強い刺激を与えないことが予防となります。

💅爪甲横溝

つめの甲を横に走る溝状の変化

爪甲横溝(そうこうおうこう)とは、つめの甲を横に走る水平の溝や波打った溝ができる状態。ボーズライン、コルゲーテッドネイルとも呼ばれます。

つめに横溝ができるのは、つめの発育を抑えるような障害がつめを作り出す爪母に作用するためで、その障害の強さや期間によって深さや幅が変わってきます。非常に障害が強く加わると深くなり、期間が長くなると幅が広くなります。

初めに、爪半月(つめはんげつ)の外側の当たりに横溝が現れ、つめの発育とともに先端に移動して行きます。この横溝は爪母に障害が加わってできるものですから、現れるのは障害が加わってから数週間後です。現在できている横溝の位置から、いつごろ障害が起こったのか推測することは簡単です。また、1本のつめに横溝が2~3本同時に見られる場合は、正常な期間をおいて繰り返し障害が加わったと考えらます。

もしも、つめの横溝ができる原因が全身性疾患によるのものであるなら、すべてのつめの同じ場所に変化が見られます。一部のつめの変化の時は、爪母近くの皮膚の病変の影響が考えられます。 また、つめの根元にけがをしたり、マニキュアや薬剤によって爪母を傷付けた時に変化が見られることもあり、この時はつめの甲が凸凹になる場合もあります。

つめの横溝が生じる原因となる全身性疾患としては、急性熱性疾患のほか、尿毒症、糖尿病、ビタミンA欠乏症、低カルシウム血症、亜鉛欠乏症などの慢性疾患が挙げられます。皮膚の疾患としては、湿疹(しっしん)、皮膚炎、円形脱毛症、乾癬(かんせん)などが挙げられます。

さまざま原因がある中で、最も多いのは高熱で発病して、1~2週間で治るチフス、猩紅(しょうこう)熱などの感染症や、中毒の場合です。慢性疾患では代謝異常による疾患が多く、疾患が一時的に悪化した後に現れ、溝は浅く幅が広いのを特徴とします。

皮膚の疾患で最も多いのは、手の湿疹。手の湿疹の大部分は水仕事の多い主婦によくみられて、治りにくい慢性的な湿疹であり、つめの周辺の病変が急激に悪化して爪母にまで広がった場合に、横溝が生じます。これと同様な症状で、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)やカンジタ菌による爪囲炎の時にも生じ、いずれもつめ周辺の疾患が治れば自然に消えて行きます。円形脱毛症や乾癬の時には、点状の凹みと同様に横溝も現れることがあります。

また、レイノー症状に伴って、横溝が現れることもあります。手が冷たい水や風に触れた時に、指が白くなる現象がレイノー症状であり、若い女性に多くみられて、指の小さな動脈が一時的に狭くなって血液が流れにくくなるために起こります。指先に血液が行かなくなると、つめの発育の障害になり、それが強く起こると横溝が現れます。何度も繰り返してレイノー症状が起こると、一枚のつめに何本もの横溝ができることもあります。

爪甲横溝の検査と診断と治療 

つめに横向きの溝ができる爪甲横溝は、一時的に爪母が障害されたために起こる場合がほとんどです。つめが形成される時期に体に何か異常があったということを示しているもので、現在の異常な状態を示すものではありません。過去、数週間から数カ月前に起こった異常の結果を見ているというわけなので、あまり気にしなくてもよいと思われます。

すべてのつめに変化がみられる全身性の慢性疾患があれば、その治療を行います。一部のつめの変化がみられる皮膚の疾患があれば、その治療を行います。

💅爪甲下角質増殖症

爪床側の角質の成長異常により、爪の甲が押し上げられるとともに、厚くなる状態

爪甲下(そうこうか)角質増殖症とは、爪(つめ)の先端にある爪床側の角質部分の不全角化という成長異常によって、爪の甲が爪床から押し上げられるとともに、押し上げられた爪の甲が厚くなる状態。

爪床と爪の甲の間には、もろくなった爪が角質塊という粉となって充満します。

爪甲下角質増殖症の多くは、爪や指先に受けた外傷や、爪の水虫(爪白癬〔はくせん〕)、乾癬(かんせん)、指先の湿疹(しっしん)などの皮膚病に伴う爪の二次的な変化として生じます。ごくまれに、先天性ないし遺伝性の爪甲下角質増殖症をみることもあります。

また、爪甲下角質増殖症単独ではなく、爪の甲が爪床からはがれる爪甲剥離(はくり)症や、爪の甲の先端あるいは全体がスプーン状にへこむ匙状(さじじょう)爪(スプーンネイル)を併発することも少なくありません。爪甲剥離症や匙状爪を併発する場合、何かの病気が原因になっていることがほとんどです。

爪の水虫に伴う爪甲下角質増殖症は、最も一般的にみられるもので、著しい爪甲下角質増殖を呈します。足の親指の爪に生じることが多く、爪甲表面には爪の水虫の特徴の一つである白い濁りを認めます。

乾癬に伴う爪甲下角質増殖症は、爪の水虫と似た症状が現れ、爪甲が白濁化して、悪化すると表面がはがれ落ちます。爪の周囲に乾癬による皮膚病変を認め、頭部、腰部、下腿(かたい)前面などの好発部位にも、乾癬特有の皮膚病変を認めます。

指先の湿疹に伴う爪甲下角質増殖症は、多くは爪の縁の変化を伴います。また、爪の回りには、紅斑(こうはん)や丘疹などの湿疹性変化をみます。

爪甲下角質増殖症に気付いたら、すぐに皮膚科、皮膚泌尿器科を受診することで、早期治療が可能です。遺伝子に問題があると判明するのを早めるためにも、医療機関での検査は早いほうがよいといえます。

爪甲下角質増殖症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の先端部分に角質増殖を起こし得る外傷や外的物質、薬品、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査します

主に遺伝的な問題があることもあり、外服薬や内服薬での治療で完治させられない場合には、遺伝子検査などをすることも大切です。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、外傷などの原因となっているものを優先的に除去ないし治療し、その後、外服薬よりも内服薬による治療を中心に行います。

爪の水虫に伴う爪甲下角質増殖症の場合、水虫の外服薬はほとんど効果がなく、グリセオフルビン、イトラコナゾールなどの内服が必要です。少なくても、3〜6カ月間内服します。

硬く厚くなった爪の外側から外服薬を塗っても、奥深く潜んでいる白癬菌まで薬の有効成分が行き渡りませんが、飲み薬ならば血流に乗って直接白癬菌にダメージを与え、体の内側から治すことができるわけです。

乾癬に伴う爪甲下角質増殖症の場合、まだ根本的な治療法はなく、外服薬、内服薬、光線療法など、症状に合わせたいろいろな治療を行います。症状が軽い場合には主に外服薬で、症状が重くなると内服薬や光線療法で治療します。いずれの治療法も治療を中止すると、再発することがあります。

外服薬には、副腎(ふくじん)皮質ステロイド薬が多く用いられています。そのほか、活性型ビタミンD3外服薬も副腎皮質ステロイド薬ほどの速効性はありませんが、副作用が軽微なので併せて使用します。古くから用いられてきた外服薬にタールやアンスラリンなどがありますが、現在は一部の病院でしか使用されていません。

内服薬としては、ビタミンA類似物質であるエトレチナート(チガソン)や、免疫抑制薬であるシクロスポリン(ネオーラル)が用いられ、一定の効果が得られています。

爪甲剥離症や匙状爪(スプーンネイル)を併発する場合、内的疾患が理由になっているため、爪自体は治療しません。肺疾患や心疾患といった原因となる疾患の検索と、それに対する治療を優先します。

爪甲下角質増殖症を予防するには清潔な足を維持し、食生活をきちんと管理することが大切です。足を蒸れたままにせず、しっかりときれいに洗って乾燥させるなどの工夫が必要です。健康を維持していればそれほど悪化することもなく、爪の水虫も早い時期に治療できるため、重症化せずに治せます。

💅爪甲鉤弯症

足の親指の爪甲が異常に肥厚して、弓なりに曲がった状態

爪甲鉤弯(そうこうこうわん)症とは、爪(つめ)の甲が異常に肥厚して硬くなり、異常に曲がった状態。

足の親指の爪によくみられ、金具の鉤(かぎ)や鳥のくちばし、羊の角のように、爪が分厚く変形して弓なりに曲がる症状が現れます。爪の色も濁った黄色や濁った茶色になることが多く、爪の表面もでこぼこになり、光沢がなくなります。時々、変形した部位が痛むこともあります。

遺伝的に加齢とともに生じる場合が多く、高齢者に多くみられます。また、靴による慢性的な足先への圧迫も原因となります。小さい靴を無理に履いたり、ハイヒールをいつも履いていたりすると、圧迫されやすい足の親指の爪の成長が妨げられ、先端までうまく伸びない場合に、爪甲鉤弯症が起きてきます。爪が足指の先端までないと、先端の骨が変形して上に反っくり返り、なお爪の成長が妨げられることになります。

外傷、血行障害も、爪甲鉤弯症の原因として考えられます。極めて少ないものの、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症を始めとする内分泌系の疾患や、下肢の静脈瘤(りゅう)性症候群、血管閉塞(へいそく)、末梢(まっしょう)神経障害が原因で起きることもあります。

爪甲鉤弯症になると、爪の甲が肥厚して硬くなるので、普通の爪切りでは切れなくなって爪が長くなり、靴を履くことができなくなります。

爪の水虫といわれる爪白癬(つめはくせん)により悪化している場合もあるので、皮膚科を受診することが勧められます。

爪甲鉤弯症の検査と診断と治療

皮膚科の医師による診断では、まず爪の水虫といわれる爪白癬の検査をするのが一般的です。爪に白癬菌などが認められなければ、爪の形状から爪甲鉤弯症と確定することになります。甲状腺機能低下症など爪甲鉤弯症の原因となり得る疾患を確認することもあります。

皮膚科の医師による治療では、分厚く変形した爪を専用の爪切りで処置したり、爪やすりでできるだけ薄くなるように削ります。

日常生活に支障を来すような場合や、爪が下の皮膚から浮いている場合には、外科的に爪をすべて取り除くこともあります。変形した爪が、血管や神経にダメージを与える可能性もあるからです。爪を切除することで、痛みを緩和することにもつながります。

爪を取り去った後、アクリル樹脂製の人工爪を取り付けることもあります。この方法は、治療直後から痛みが軽減し靴を履いて帰宅できますし、入浴も可能です。また、人工爪が外れても繰り返し取り付けることができます。

足の親指の先端の皮膚の隆起が硬くなっている場合、爪の伸びを妨害する骨や皮膚の盛り上がりを外科的に取り除くこともあります。

爪の甲の前方だけを外科的に取り除き、その爪床部を開けて骨を削り、人工爪を取り付けることもあります。

甲状腺機能低下症などの疾患が原因になっている場合は、その疾患の治療がそのまま爪甲鉤弯症の治療になります。

予防法としては、足先への圧迫、血行障害も爪甲鉤弯症の原因となりますので、足指を圧迫することがないようサイズの合った靴を履くことが大切です。複数の靴を毎日履き替え、爪が当たる位置を変えてみたり、靴ひもをしっかり結んで爪が当たらないようにするのも一案です。

💅爪甲色素線条

爪の甲の根元から縦方向に、黒色や褐色の線状の色素沈着が生じた状態

爪甲色素線条(そうこうしきそせんじょう)とは、爪(つめ)の甲の根元から縦方向に、黒色や褐色の線状、または帯状の色素沈着が生じた状態。

爪は、爪の甲と、爪の根元の皮下にあって爪を作り出している爪母、爪の甲を下で支える爪床から成り立っています。このうち爪母や爪母付近に何らかの病変があると、まず爪の甲の根元の表面に爪甲色素線条が現れ、爪が伸びるのに伴って、その直線状の色素沈着が次第に爪先へと移行します。

爪母や爪母付近にある病変としては、メラニンという皮膚の色を濃くする色素が異常に増加したほくろや、あざなどの色素性母斑(ぼはん)があり、爪母に色素性母斑が生じた後に、爪に爪甲色素線条が現れます。

粘液嚢腫(のうしゅ)やグロムス腫瘍(しゅよう)などの良性の腫瘍、爪部悪性黒色腫(爪メラノーマ)や基底細胞がんやボーエン病など悪性の腫瘍が爪母に生じた後にも、爪に爪甲色素線条が現れます。

また、扁平苔癬(へんぺいたいせん)や線状苔癬のなど皮膚疾患、アジソン病やクッシング症候群などの内分泌異常、ポルフィリン症や栄養失調などの代謝異常、ポイツ・イエーガー症候群や妊娠などの全身疾患、細菌や真菌の感染症、抗がん剤などの薬剤の内服、手指への放射線治療や紫外線療法、靴あるいはギターの演奏などによる繰り返す外的刺激が、爪母や爪母付近に病変を及ぼした後にも、爪に爪甲色素線条が現れます。

一般に、爪の根元に現れた爪甲色素線条は横幅1ミリ程度で始まり、次第に拡大して、その色調も濃くなります。時には爪の甲全体に拡大するばかりか、爪の根元の皮膚を覆っている後爪廓(こうそうかく)の皮膚にも色素斑がみられることもあります。多くの爪に帯状の爪甲色素線条が現れた場合は、全身疾患や薬剤の内服が原因です。

手の爪に現れる爪甲色素線条は、親指に生じることが多く、次いで人差し指や薬指です。足の爪に現れる爪甲色素線条は、親指(第一趾)がほとんどです。

新生児や幼児に生じた色素線条は、一時的に広がったりすることもありますが、いずれ思春期ころまでに自然消失することが多いものです。

成人になってから生じた爪甲色素線条で、直線状の色素沈着が淡く、輪郭がぼんやりしていれば、ほくろや、あざなどの色素性母斑が原因の可能性が高く、そのまま放置してかまいません。

しかし、爪甲色素線条の横幅が6センチ以上で、黒褐色の色調に不規則な濃淡がみられるか真黒色、20歳以後、特に中高齢者になって発生したもの、色素線条が爪の表面を越えて皮膚の部分にまで及んでいる状態であれば、爪部悪性黒色腫(爪メラノーマ)かもしれません。

がん化したメラニン細胞が増えるにつれて、色素線条が増えるだけでなく太くなっていき、長さも伸びていきます。やがて、爪全体が黒くなります。進行すると、爪が変形したり破壊されてしまいます。

爪部悪性黒色腫は、がんの中でも繁殖しやすいタイプです。そのため、爪から全身に転移していくというデメリットもあります。短期間で転移してしまうため、爪の症状の変化に気付いたら、すぐに皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪甲色素線条の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、問診、視診、触診を行い、続いてダーモスコピー検査を行います。

ダーモスコピー検査は、病変部に超音波検査用のジェルを塗布してから、ダーモスコープという特殊な拡大鏡を皮膚面に当て、皮膚に分布するメラニンや毛細血管の状態を調べ、デジタルカメラで記録するだけの簡単なもので、痛みは全くありません。

すべての指の爪に爪甲色素線条がみられた時は、原因となり得る疾患があるか否かを検査します。また、爪部悪性黒色腫(爪メラノーマ)が疑われる場合に生検を行います。通常は色の濃い増殖部分全体を切除し、顕微鏡で病理学的に調べます。もし爪部悪性黒色腫だった場合、がんが完全に切除されたかどうかを確認します。

一方、爪部悪性黒色腫の周囲組織を切り取ると、がん細胞が刺激されて転移を起こすことが考えられるため、生検をせずに視診と触診などで診断する医師もいます。

確定診断に至ったら、ほかの部位への転移の有無を調べるためのCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、PET(陽電子放射断層撮影)検査、X線(レントゲン)検査、超音波(エコー)検査などの画像検査や、心機能、肺機能、腎機能などを調べる検査を行います。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は原則的に、爪部悪性黒色腫の部位を外科手術によって円形に切除します。手術が成功するかどうかは、皮膚のどの程度の深さにまで爪部悪性黒色腫が侵入しているかによって決まります。初期段階で最も浅い爪部悪性黒色腫であれば、ほぼ100パーセントは手術で治りますので、周囲の皮膚を腫瘍の縁から最低でも約1センチメートルは一緒に切除します。

皮膚の中に約0・8ミリメートル以上侵入している爪部悪性黒色腫の場合、リンパ管と血管を通じて転移する可能性が非常に高くなります。転移した爪部悪性黒色腫は致死的なものになることがしばしばあり、抗がん剤による化学療法を行いますが、治療の効果はあまりなく余命が9カ月を切る場合もあります。

とはいえ、このがんの進行の仕方には幅がありますし、発症者の体の免疫防御能によっても差がありますので、化学療法、インターフェロンによる免疫療法、および放射線療法などいろいろな手段を組み合わせた集学的治療を行い、たとえ爪部悪性黒色腫が転移しても健康を保って何年も生存する人もいます。

一度、爪部悪性黒色腫を発症した人は、再発するリスクが高くなります。そのため、発症者は毎年皮膚科、皮膚泌尿器科で検査を受けるべきです。

良性の腫瘍による爪甲色素線条の場合は、放置して経過を観察します。皮膚疾患、内分泌異常、代謝異常、全身疾患、細菌や真菌の感染症などによる爪甲色素線条の場合は、原因を除去すれば数年後には色素沈着が消失します。薬剤の内服による爪甲色素線条の場合は、内服を中止すると色素沈着は消失します。

💅爪甲周囲炎(爪囲炎)

爪の周囲の皮膚が赤くはれる状態

爪甲(そうこう)周囲炎とは、爪(つめ)の周囲の皮膚が赤くはれ、うみが出ることもある状態。爪囲炎とも呼ばれ、医学用語ではバロニキアと呼ばれています。

これには、化膿(かのう)性の爪甲周囲炎と、カンジダ性の爪甲周囲炎のほか、学齢期に発症しやすい稽留(けいりゅう)性肢端(したん)皮膚炎などがあります。

化膿性の爪甲周囲炎は、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌などの化膿菌が入って急性の炎症を起こすものです。爪囲部のささくれ、小さな切り傷、足では爪切りの際の傷や爪が皮膚に食い込んでいるところなどから感染が起こり、爪囲が赤くはれ上がり、自発痛、圧痛が強くなります。

この化膿性の爪甲周囲炎は、ひょうそ、ひょうそうとも呼ばれます。ひょうそという疾患名は、指趾(しし)の化膿性炎症全体に付けられるもので、化膿性の爪甲周囲炎から、さらに炎症症状が真皮深層、脂肪織にまで拡大した指の蜂窩織(ほうかしき)炎、あるいは骨、関節部の化膿性炎症が真皮にまで波及した時にも付けられます。

従って、ひょうそという時には、指先全体が赤紫色に強くはれ、痛みが強い状況で、うみが出たり、皮膚が破れ、潰瘍(かいよう)になることもあります。

カンジダ性の爪甲周囲炎は、水仕事の機会の多い中年女性や糖尿病などの人に起こりやすいものです。主に、爪の周囲が赤くはれ上がり、押すと圧痛があり、爪と皮膚の間から、うみが出ることがあります。非常に治りにくく、次第に爪も黄白色に濁り、厚くなってきます。これはカンジダ菌という真菌、いわゆるカビの一種が爪と皮膚の間で増殖し、爪にも入っているからです。この疾患は、指間びらん症と合併することもあります。

稽留性肢端皮膚炎は、極めてまれに起こるものです。四肢の末端に紅斑(こうはん)や小さな膿疱(のうほう)を突然生じ、徐々に爪にまで炎症が拡大して、爪が変形してしまいます。文字通り、皮膚炎が肢端(四肢末端)に稽留して(とどまって)しまうという訳です。

現在では、膿疱性乾癬(かんせん)の一種と考えられるようになってきました。原因については不明な点が多く、必ず生じる爪の変形についても、そのメカニズムは現在のところ不明なままです。

爪甲周囲炎の検査と診断と治療

爪甲周囲炎の検査では、細菌培養を必ず行います。慢性に経過し症状の軽い場合は、カンジダ性爪甲周囲炎などを疑ってカビの検査も行います。

治療としては、軽い化膿性の爪甲周囲炎の場合は、抗生物質含有軟こうの塗布で十分です。治りが悪い場合には、抗生物質の内服と、局所の安静が必要となります。 カンジダ性の爪甲周囲炎の場合は、抗真菌剤を使用します。

また、化膿が強い場合は、切開排膿が必要となります。糖尿病性のものは、血糖コントロールの悪い時にできやすいので、食事や生活の改善が必要です。

予防法としては、爪甲周囲炎は水仕事の機会の多い女性や調理人などがかかりやすく、特にささくれ、小さい傷がある時に菌が入りやすくなりますので、指先に小さい傷がある時には、まめに消毒を行い、水などに指先をつける時には、手袋をして直接、触らないように注意する必要があります。

稽留性肢端皮膚炎の診断を確定するためには、皮膚生検を行う場合もあります。ただし、爪のみに症状が現れる爪乾癬との鑑別が難しいといわれています。

治療には、強めのステロイド外用剤を使用することが多いのですが、十分な効果が得られない場合もあります。ほかには、ビタミンA誘導体であるエトレチナートの内服や免疫抑制剤の内服、紫外線療法などが試みられています。生命に影響を及ぼすことはありませんが、再発を繰り返しやすく、非常に治りにくい疾患です。

💅爪甲縦条

爪の甲の表面に縦方向の線や溝が入っている状態

爪甲縦条(そうこうじゅうじょう)とは、手指や足指の爪(つめ)の甲の表面に縦方向の線や溝が入っている状態。爪の甲の表面に横方向の線や溝が入っている爪甲横溝(おうこう)とともに、すじ爪の一種です。

この爪甲縦条は、誰にでも認められるもので、10歳代、20歳代ではほとんど目立ちません。老化現象の一つとして、加齢とともに滑らかだった爪の甲の表面に線や溝が目立つようになり、40歳以上ではすべての爪の甲に100パーセント現れ、50歳代くらいからは増加します。年齢によって、縦方向の線や溝の数も隆起の程度も異なります。

加齢とともに縦方向の線や溝が増える原因は、胃腸の働きが衰え始めるとともに、爪に十分に栄養素がゆき届かなくなるためです。特に亜鉛不足の場合は、線や溝が現れやすくなります。

若い人でも、食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合は、爪に線や溝が現れます。妊娠を切っ掛けに、線や溝が現れることもあります。

また、冬の季節に空気が乾燥すると、爪も肌と同じように乾燥し、線や溝が現れやすくなります。また、季節を問わず乾燥肌の人は、爪にも線や溝が現れやすくなります。

さらに、若い人でも、血液循環が悪い場合は、爪に線や溝が現れやすくなります。

高熱が出た時に現れることもあり、精神的ストレス、不規則な生活習慣が原因で、爪に線や溝が現れることもあります。

爪甲縦条の改善法と予防法

すじ爪になり、爪の甲の表面に縦方向の線や溝が入る爪甲縦条が現れても、若い人では規則正しい生活を心掛けることで改善します。

1日3回の食事で蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養素をしっかり摂取し、質のよい睡眠をたっぷりとるだけでいいのいです。また、爪甲縦条を引き起こす精神的ストレスを解消することも、大事です。

縦方向の線や溝が目立って気になる場合は、爪の甲の表面を軟らかい爪やすり(ファイル)で磨くと、滑らかな状態にすることができます。さらに、乾燥を防ぎ血液循環をよくするために、爪とその周辺にハンドクリームやキューティクルオイルなどの保湿剤を塗って、擦り込むようにマッサージします。

💅爪甲縦裂症

爪の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態

爪甲(そうこう)縦裂症とは、爪(つめ)の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態。オニコレクシス、スプリットネイルとも呼ばれます。

爪の甲に縦線が入るのは老化現象として一般的にみられるものですが、爪甲縦裂症では縦の割れ目が入るまでに至り、しかも、その割れ目は深く、爪が2つに分かれていることがはっきり確認できるほどになります。

1本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合のほか、数本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合、すべての爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合もあります。炎症や痛みを伴う場合もあります。

爪甲縦裂症の原因は、爪母の損傷、栄養素不足、マニキュアや薬剤、水仕事、爪根部の末梢(まっしょう)循環障害、皮膚疾患、全身性疾患などいくつかあります。

爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷した場合は、新しく生えてくる爪にはすでに縦の割れ目が入っていたり、中央で裂けていたりします。この縦の割れ目は爪母に損傷が加わってできるものですから、現れるのは損傷が加わってから数週間後です。

食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合も、爪がもろくなっているために、圧迫などによって簡単に縦の割れ目が入ることがあります。偏った食生活や過度なダイエットによって鉄欠乏性貧血になり、これが原因で爪甲縦裂症になることもあります。

手の爪に施すマニキュア、足の爪に施すペディキュア、マニキュアなどを落とす除光液(エナメルリムーバー)を使用する機会の多い女性や、仕事で有機溶剤や殺菌・消毒用のアルコールの一つであるエタノール(エチルアルコール)を使用している人の場合、揮発性の高い溶剤が爪から水分と脂分を奪い、爪表面を乾燥させるために、縦の割れ目が入りやすくなります。マニキュアなどを落とす除光液に含まれるアセトンなどが外的刺激になって、爪甲縦裂症を誘発することになります。

水仕事の多い人や、湿気の多い環境にいる人も、水分過多によって爪がもろくなったり、お湯の使用によって爪の脂分が奪われるために、縦の割れ目が入りやすくなることもあります。蛋白質を分解する成分が入っている洗剤などが、蛋白質の一種のケラチンを主成分とする爪への外的刺激になって、爪甲縦裂症を誘発することもあります。

自律神経失調症や糖尿病などが原因で末梢循環不全という疾患を発症し、手足などの末梢まで血液循環が行き届かず爪に必要な栄養素不足になった場合も、爪に縦の割れ目が入ったり、爪が伸びなかったりすることがあります。

乾癬(かんせん)、湿疹(しっしん)、皮膚炎、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)、カンジタ菌による爪囲炎などの皮膚疾患がある場合も、爪がもろくなって爪の甲の先端や中央部に縦の割れ目が入ることがあります。

卵巣機能障害、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、慢性肝障害、貧血、低体温、糖尿病、高尿酸血症、神経疾患などの全身性疾患がある場合も、それが原因で爪甲縦裂症を合併発症することもあります。

爪に縦の割れ目が入るのは、体に異常が出ているシグナルかもしれません。爪に何カ所も割れ目が入る、炎症や痛みがあるなどの場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪甲縦裂症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に縦の割れ目を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、原因に応じて行います。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。

爪を作り出している爪母の損傷が原因で爪甲縦裂症を来している場合は、現在の医療では手当できないとされています。

栄養素不足が原因の場合は、まずは蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養をしっかり摂取します。

マニキュア、除光液、有機溶剤、あるいは水仕事などが原因であれば、極力それらの使用や機会を中止したり、減らします。爪への負担が減るため、多くのケースでは自然に治ります。仕事などでどうしても薬剤、水、洗剤などを使わなくてはいけない場合は、手を保護するものを着用したり、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行います。

爪の末梢循環不全が原因であれば、ステロイド剤を配合した塗り薬をこまめに塗ったり、末梢血管の収縮を防ぐビタミンEの飲み薬を内服します。医師による治療と並行して、血液循環をよくするために日ごろから、手足のマッサージ、爪もみを心掛けます。

一部の爪に爪甲縦裂症がみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。すべての爪に爪甲縦裂症がみられる全身性疾患があれば、その治療を行います。

💅爪甲層状分裂症

爪の甲の先端の部分が、薄く層状にはがれたり、割れたりしていく状態

爪甲(そうこう)層状分裂症とは、爪(つめ)の甲の先端部分が薄く層状にはがれたり、割れたりしていく状態。二枚爪とも呼ばれ、爪が下の皮膚である爪床からはがれる爪甲剥離(はくり)症の一種に分類されています。

爪の甲は三枚の層からなっており、表面を覆う第一層のエナメル質や第二層が少しずつはがれたり、割れたりしていく爪甲層状分裂症は、さほど珍しくはなく、女性によく起こる一般的な爪のトラブルです。

痛みはありませんが、爪の先端がもろくなるため、外見上に問題が出てきます。また、一度治っても、何度も同じ症状が現れることがよくあります。

爪甲層状分裂症になる原因は、いくつかあります。

まず、爪の乾燥が原因になります。つまり、爪の甲の水分含有量が低下することによって生じるため、日本では空気が乾燥している冬に爪甲層状分裂症になりやすいといえます。正常な爪の甲の水分含有量は16パーセントほどですが、爪は成長するに従い、先端に向かって伸びていくと水分量は減っていき、爪の甲の先端部分の水分含有量が12パーセント以下になると、二枚爪が起りやすくなります。

また、水仕事の多い主婦、手の爪に施すマニキュアや、足の爪に施すペディキュア、除光液(エナメルリムーバー)を使用する機会の多い女性では、爪の甲の水分保持能力が低下して、爪甲層状分裂症が起こりやすくなります。洗剤や、マニキュアなどを落とす除光液に含まれるアセトンが外的刺激になって、爪甲層状分裂症を誘発することになります。

次に、食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで蛋白(たんぱく)質不足になることが、爪甲層状分裂症の原因になります。爪の主成分は蛋白質の一種のケラチンなので、体調が悪かったり栄養バランスが悪いと、爪の色が変色したり線が入ったり、爪甲層状分裂症になります。

偏った食生活や過度なダイエットによって鉄欠乏性貧血になり、これが原因で爪甲層状分裂症になることもあります。血行不良や、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症の発症も、爪甲層状分裂症の原因になります。

爪切り、爪やすりの使いすぎ、間違った使い方の継続が、二枚爪の原因となる場合もあります。爪切りなどを使用したショックで、三枚の層からなっている爪に目に見えないヒビが入り、何か力が加わった時に爪甲層状分裂症になったりします。

水をよく使ったり、指先の細かい操作を必要とする職業も、爪甲層状分裂症の原因になります。職業は、料理人、理髪師、美容師、庭師、パソコンのオペレーター、ギタリスト、ピアニストなど。

爪甲層状分裂症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の先端部分に層状の剥離を起こし得る外的物質や薬品、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。

爪の乾燥が原因で爪甲層状分裂症を発症している場合は、日常生活で爪の乾燥を避けるようにしてもらいます。例えば、水仕事の多い人は、水を使う回数を減らしたり、使い終わったらきちんと水分をふき取り、保湿剤を塗ることです。

蛋白質不足が原因の場合は、まずは爪に必要な栄養をしっかり摂取してもらいます。いくら爪の保湿ケアを行っていても、栄養不足のままでは二枚爪を繰り返すだけなので、蛋白質、コラーゲン、さらに野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類をしっかり摂取してもらいます。

鉄欠乏性貧血が原因の場合は、鉄剤を内服してもらったり、食べ物やサプリメントから鉄分を摂取するように心掛けてもらいます。ただし、手の爪が新しくなるまでに3カ月~6カ月かかりますので、すぐに効果を実感することは難しいでしょう。

血行不良や甲状腺機能高進症が原因の場合は、その治療を行えばよくなります。

日常では、保湿剤などを使ったネイルケアにより治療、ないし予防することが、重要となります。爪も皮膚の一部であり、主に蛋白質の一種のケラチンが角質を構成しているのですから、マニキュア、ペディキュア、除光液、洗剤などを使いすぎるとダメージを受けるので、その使用を控えます。

爪切り、爪やすりの使いすぎ、間違った使い方で爪甲層状分裂症になることもあるので、まずは使用をやめます。入浴後や指を温めるなどした後に、紙やすりで丁寧に爪の甲の先端部分を削り、爪にハンドクリームやキューティクルオイルなどの保湿剤を塗って、擦り込むようにマッサージします。

足の爪は爪切りで切っても構いませんが、その後で爪の先を紙やすりで削って形を整え、爪にハンドクリームやキューティクルオイルなどの保湿剤を塗って、擦り込むようにマッサージします。また、足の爪の伸ばしすぎも爪の先に衝撃を与える原因になったりしますので、適度な長さを保ちます。

爪甲層状分裂症の進行中は、水仕事の際にはゴム手袋の着用を心掛けます。

💅爪甲脱落症

爪の甲の一部、もしくは全体が脱落する状態

爪甲(そうこう)脱落症とは、爪(つめ)の甲の一部、もしくは全体が爪床から離れて浮き上がり、やがては脱落する状態。オニコプトーシス、オニコマデシスとも呼ばれます。

手や足の爪の1本だけに起こることもあり、多くの爪に起こることもあります。また、爪の色が変わって、白色もしくは黄色になることもあります。

爪甲脱落症の原因は、かなり広範囲に及んでいます。先天性、遺伝性、後天性とさまざまであり、外傷や高熱、皮膚の疾患、全身の疾患、梅毒、薬、体調不良、ストレスと数え切れないほどの原因があります。

打撲などの外傷で内出血を起こして、脱落することがあります。風邪などで非常に高熱が出た時などに、脱落することもあります。

皮膚の疾患では、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)や、カンジタ菌という真菌による爪囲炎、乾癬(かんせん)、扁平苔癬(へんぺいたいせん)、紅皮症(剥脱〔はくだつ〕性皮膚炎)、爪甲横溝などで、脱落することがあります。

全身の疾患では、甲状腺(こうじょうせん)機能高進症(バセドウ病)、甲状腺機能低下症、ペラグラ、糖尿病、鉄欠乏性貧血、さらには黄色爪症候群、肺がんなどの肺疾患、強皮症、全身性エリテマトーデスなどの膠原(こうげん)病、手足口病、ヘルパンギーナなどで、脱落することがあります。

性病である梅毒に感染している場合や、治療中、治療後に、脱落することもあります。

薬によるものとしては、内服するだけで爪甲脱落症を起こす薬もありますが、多くの場合は薬だけではなく、薬を内服した人の爪に日光の紫外線が作用することで生じる薬剤性光線過敏症、ポルフィリン症などの光線過敏症に伴うものです。多くは日光によるものですから、夏に悪化し、冬に軽快するのが特徴です。

また、体調が悪かったり、強いストレスを感じている際に、爪に出る症状の1つとして脱落することもあります。

爪が健康なピンク色のまま爪床から脱落するのは軽症といえますが、爪の変色が伴うようであれば何らかの疾患のサインかもしれません。疾患が疑われる場合や、症状がひどい場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。

爪甲脱落症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲の剥離、脱落を起こし得る外傷や外的物質、薬、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、すべての爪に変化がみられる全身疾患があれば、その治療を行います。一部の爪の変化がみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。

カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。ビオチンやビタミンEを含んだ飲み薬の内服、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射、抗生剤(抗生物質)の内服などが行われることもあります。

打撲などの外傷で軽度の出血である場合、爪の生え替わりを待つだけでかまいません。爪が作られる爪母の機能が正常であれば、新しい爪は生えてきますが、部位により半年から1年の期間はかかります。

ストレスが原因であれば、心療内科での治療が必要になってきます。皮膚科に通っているのに、一向によくならず、周期的に脱落するのであれば、原因の再確認が勧められます。

💅爪甲軟化症

ケラチン不足のために、つめが異常に軟らかい状態

爪甲(そうこう)軟化症とは、成人のつめの甲が異常に軟らかい状態。

つめは皮膚の付属器で、皮膚の最も表面にあって、軟ケラチンからなる角層が変化したもので、硬ケラチンで主に形成されています。ケラチンとは20種類のアミノ酸が結合してできた蛋白(たんぱく)質で、水分をよく含んで弾力性に富み、紫外線や衝撃など外部刺激から指先を守るクッション効果やバリア効果があります。

そのつめの硬さは、人によってかなり違います。赤ん坊のつめは大変軟らかく、年齢を増すごとにだんだんと硬い、弾力のあるつめとなってくるものです。そして、さらに年を重ねると弾力のない、硬いつめに変わっていきます。つめは指先の保護の役割と細かい作業をするために必要で、もしも成人で赤ん坊のつめのように軟らかいつめをしていると、細かい指先の仕事は難しくなってしまいます。

成人の爪甲軟化症では、つめを構成している成分の一つであるケラチンが不足することから、徐々につめの甲が薄く、軟らかくなります。色は青白く、曲がりやすくなります。よくカルシウム不足だとつめが軟らかくなどといわれますが、カルシウムの不足とは関係ないようです。

爪甲軟化症は手や足に汗を多くかく人に起こりやすく、多汗のために、つめの甲の中の水分が多くなってしまうためと考えられています。若い女性に比較的多くみられます。また、クリーニング業の人などで、アルカリ性の薬品が長くつめに作用した場合、爪の甲がへこむ匙状(さじじょう)づめと一緒に生じることもあります。その他、マニキュアを多用する人、リウマチのある人にも多く見受けられます。

全身的な栄養状態とは、無関係です。 ほとんどの場合、内臓の疾患とは関係ないようです。

爪甲軟化症の検査と診断と治療

爪甲軟化症を起こし得る外的物質や薬品、あるいは皮膚疾患、多汗症などを検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。

クリーニング業の人などに生じる匙状づめの治療では、鉄剤を内服します。仕事上、どうしても薬品を使用しなければいけないという人にとっては、食事で鉄分を意識的に摂取することがお勧めです。また、指を保護するアイテムを使用するのもお勧めです。

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