爪の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態
爪甲(そうこう)縦裂症とは、爪(つめ)の甲の表面に縦の割れ目が入り、中央で裂ける状態。オニコレクシス、スプリットネイルとも呼ばれます。
爪の甲に縦線が入るのは老化現象として一般的にみられるものですが、爪甲縦裂症では縦の割れ目が入るまでに至り、しかも、その割れ目は深く、爪が2つに分かれていることがはっきり確認できるほどになります。
1本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合のほか、数本の爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合、すべての爪に縦の割れ目が1~3本同時にみられる場合もあります。炎症や痛みを伴う場合もあります。
爪甲縦裂症の原因は、爪母の損傷、栄養素不足、マニキュアや薬剤、水仕事、爪根部の末梢(まっしょう)循環障害、皮膚疾患、全身性疾患などいくつかあります。
爪の付け根の皮下にあり、爪を作り出している爪母を強打したり、傷付けたりして、爪母が損傷した場合は、新しく生えてくる爪にはすでに縦の割れ目が入っていたり、中央で裂けていたりします。この縦の割れ目は爪母に損傷が加わってできるものですから、現れるのは損傷が加わってから数週間後です。
食事での栄養バランスの偏りやダイエットなどで、爪に必要な蛋白(たんぱく)質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンBなどの栄養素不足になった場合も、爪がもろくなっているために、圧迫などによって簡単に縦の割れ目が入ることがあります。偏った食生活や過度なダイエットによって鉄欠乏性貧血になり、これが原因で爪甲縦裂症になることもあります。
手の爪に施すマニキュア、足の爪に施すペディキュア、マニキュアなどを落とす除光液(エナメルリムーバー)を使用する機会の多い女性や、仕事で有機溶剤や殺菌・消毒用のアルコールの一つであるエタノール(エチルアルコール)を使用している人の場合、揮発性の高い溶剤が爪から水分と脂分を奪い、爪表面を乾燥させるために、縦の割れ目が入りやすくなります。マニキュアなどを落とす除光液に含まれるアセトンなどが外的刺激になって、爪甲縦裂症を誘発することになります。
水仕事の多い人や、湿気の多い環境にいる人も、水分過多によって爪がもろくなったり、お湯の使用によって爪の脂分が奪われるために、縦の割れ目が入りやすくなることもあります。蛋白質を分解する成分が入っている洗剤などが、蛋白質の一種のケラチンを主成分とする爪への外的刺激になって、爪甲縦裂症を誘発することもあります。
自律神経失調症や糖尿病などが原因で末梢循環不全という疾患を発症し、手足などの末梢まで血液循環が行き届かず爪に必要な栄養素不足になった場合も、爪に縦の割れ目が入ったり、爪が伸びなかったりすることがあります。
乾癬(かんせん)、湿疹(しっしん)、皮膚炎、化膿(かのう)性爪囲炎(ひょうそう)、カンジタ菌による爪囲炎などの皮膚疾患がある場合も、爪がもろくなって爪の甲の先端や中央部に縦の割れ目が入ることがあります。
卵巣機能障害、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、慢性肝障害、貧血、低体温、糖尿病、高尿酸血症、神経疾患などの全身性疾患がある場合も、それが原因で爪甲縦裂症を合併発症することもあります。
爪に縦の割れ目が入るのは、体に異常が出ているシグナルかもしれません。爪に何カ所も割れ目が入る、炎症や痛みがあるなどの場合は、皮膚科、ないし皮膚泌尿器科を受診することが勧められます。
爪甲縦裂症の検査と診断と治療
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、爪の甲に縦の割れ目を起こし得る外的物質や薬剤、あるいは皮膚疾患や全身疾患を検査して、原因がわかるようであれば、それを除去ないし治療します。
皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療は、原因に応じて行います。一般的には、爪の角質に浸透しやすい保湿剤やステロイド剤(副腎〔ふくじん〕皮質ホルモン)をこまめに塗ったり、ビタミンEの飲み薬を使用する場合があります。
爪を作り出している爪母の損傷が原因で爪甲縦裂症を来している場合は、現在の医療では手当できないとされています。
栄養素不足が原因の場合は、まずは蛋白質、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンB、さらにコラーゲン、野菜や海藻類に多く含まれるミネラル類など、爪に必要な栄養をしっかり摂取します。
マニキュア、除光液、有機溶剤、あるいは水仕事などが原因であれば、極力それらの使用や機会を中止したり、減らします。爪への負担が減るため、多くのケースでは自然に治ります。仕事などでどうしても薬剤、水、洗剤などを使わなくてはいけない場合は、手を保護するものを着用したり、使った後にハンドクリームなど油分の高いもので保湿ケアを行います。爪の末梢循環不全が原因であれば、ステロイド剤を配合した塗り薬をこまめに塗ったり、末梢血管の収縮を防ぐビタミンEの飲み薬を内服します。医師による治療と並行して、血液循環をよくするために日ごろから、手足のマッサージ、爪もみを心掛けます。
一部の爪に爪甲縦裂症がみられる皮膚疾患があれば、その治療を行います。カンジダ菌の感染の可能性の強い時には、抗真菌剤の外用を行います。すべての爪に爪甲縦裂症がみられる全身性疾患があれば、その治療を行います。
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