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2022/08/13

🇷🇸鶏眼

刺激や圧迫により、足の皮膚が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態

鶏眼(けいがん)とは、外からの持続的な機械的摩擦や圧迫などによって、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなり、痛みを生じる状態。魚(うお)の目とも呼ばれます。

皮膚表面の角質層は、円錐(えんすい)状に下に向かって厚くなっています。その中央にある芯(しん)が皮膚の奥深くへと入り込み、先がとがっているため、上から押したり、立ったり歩いたりして体重が掛かると、神経を刺激して痛みを生じます。

鶏眼と同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、たこもあります。こちらは厚くなった皮膚の状態が平らに盛り上がっているもので、手で触ると硬く感じるものの、痛みは生じません。たこが慢性化すると、表面が白くカサカサになり、女性ではストッキングが引っ掛かったりもします。

また、鶏眼と同様、足の皮膚表面の角質層が部分的に厚くなる状態には、小型の足底疣贅(そくていゆうぜい)もあります。こちらは皮下の奥のほうにでき、歩く時に痛みを伴うため、鶏眼と区別が付かないことが多いものの、ヒトパピローマウイルスが原因で生じる本質的に別の疾患であり、放置しておくとほかの部位に移ります。

>鶏眼のできやすい場所は、足の指の背(上側)、指と指の間、足裏の母指球の下、第2指と第3指の付け根あたり。いずれも靴による摩擦や圧迫を受けやすい場所です。まれに、かかとにできることもあります。

原因のほとんどは、靴の履き方が悪いために足に掛かる体重分散が偏ることと、足に合わない靴を履いているために摩擦や圧迫を受けることにあります。例えば、小さめの靴を履いていると、足の指や付け根などが靴に当たり、圧迫され続けます。靴幅が狭くて、足指が両側から圧迫されると、指と指の摩擦が起こります。こうした圧迫や摩擦の結果 、皮膚は硬くなり、鶏眼になります。

大きめの靴でも、足が靴の前側へと滑っていき、やはり足指や付け根のあたりが圧迫されて、同じことが起こります。 底が薄い靴でも、地面から受ける衝撃が大きく、足の裏が圧迫されます。

鶏眼のできやすい足もあります。その代表が開張(かいちょう)足で、親指と小指の付け根を結ぶ横のラインの中央に、くぼみがなく、ベタッとした足を指します。この開張足の人は、横ラインの中央部が靴底の圧迫を受け、鶏眼ができやすくなります。開張足かどうかは、靴の内底や中敷(インソール)を見てもわかります。第2指と第3指の付け根の当たる部分などが汚れていたり、擦り減っていれば、そこに力が掛かっていることになります。

開張足の原因としてよくみられるのは、運動不足と立ち仕事などによる疲労です。運動不足、特に歩くことをあまりしないと、指の骨をつなぐ靱帯(じんたい)が弱ってきます。その状態で立ち仕事などを続けていると、疲労のために靱帯が伸び切った状態になり、開張足を起こします。

ハンマー足指やその他の足指の変形も、鶏眼の原因となります。ハンマー足指とは、靴のつま先部分がきついために指が伸ばせず、指の関節がハンマーのような形で曲がったままになった状態です。曲がって上へ飛び出した足指の背が靴に当たるため、そこが角質化しやすくなります。

巻きづめ、内反小趾(ないはんしょうし)も、原因となります。巻きづめとは、伸びたつめの両端が皮膚に食い込んだ状態で、先の細い靴でつま足が両側から圧迫され続けると起こります。巻きづめ気味の人は、指と指がこすれ合うので、指の間に鶏眼ができやすくなります。内反小趾とは、親指が圧迫を受けて変形する外反母趾と逆に、小指が圧迫を受けて変形した状態で、小指の外側に鶏眼ができる人は放っておくと、小指が変形し手術の必要性が生じます。

女性では、冷え性と関係していることもあります。特に足の冷えやすい人は、血行不良から皮膚の角質化が起こりやすいとされています。中高年では、動脈硬化や糖尿病と関係していることもあります。動脈硬化の場合には足の血行不良から、糖尿病では末梢(まっしょう)神経の障害から、鶏眼ができやすくなるからです。反対に、鶏眼が治らないことから、動脈硬化などの疾患が発見されることもあります。

鶏眼の検査と診断と治療

鶏眼の治療と予防に必要なことは、外からの機械的な摩擦や圧迫を防ぐことです。そのためには、足に合った靴を選び、鶏眼の上にスポンジを当てて、絆創膏(ばんそうこう)でしっかり固定するか、薬剤の入った市販の保護パッドを張っておきます。軽い症状なら、しばらくすると自然に治っていきます。

また、スピール膏を使用するのもよいでしょう。これは皮膚の角質を軟化させるもので、家庭で行える治療薬として広く使用されています。まず、スピール膏を患部の大きさと同じか、少し小さめに切って患部に当てて、その上から絆創膏で固定します。2〜3日してはがすと、患部が白くふやけているので、ナイフかはさみで、鶏眼の芯の先を少し血が出る程度に削り取ります。これを何回か繰り返します。

保護パッドなどで治らない場合や、痛みがひどかったり、悪化したりした場合には、早めに皮膚科の専門医の治療を受けます。医師による治療では通常、外科用のレーザーメスや電気メスで厚くなった部分を削ります。その後、フェルトや毛皮でできたさまざまな種類のパッドを当てて、患部への圧迫を減らします。

患部の血流障害がある時は、削って切除することはできません。この場合は、患部にかかる圧力を減らすために、矯正器具やインナーを挿入した特殊な靴が必要になります。

手術で除去しても、自分の足に合わない靴を履き続けていると再発します。予防の基本は、靴選びにあります。靴の理想は「きつからず、緩からず」で、靴店では必ず両足とも履いて、歩いてみます。腰掛けたり、かがんだりして、つま先やくるぶし、かかとなどに当たる個所がないかどうか確認します。モデル風に一直線上を早歩きしてみると、当たる個所がわかりやすくなります。足がむくんで大きくなる夕方の時間帯に、ピッタリの靴を買っておけば、後できつくて足が痛いということもなくなります。

なお、開張足は自分である程度は治すことができます。床にフェイスタオルを広げ、その端に裸足の足を乗せます。そして、足指でタオルをたぐり寄せる練習をします。よりハードなものでは、フローリングの床に裸足で立ち、指で床をつかむようにして前進します。どちらも開張足の改善、予防だけでなく、血行をよくして足の疲労回復にもつながります。

🇷🇸頸肩腕症候群

首、肩、腕の痛みや凝りを起こす疾患の総称

頸肩腕(けいけんわん)症候群とは、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれなどを来すいくつかの疾患の総称。最近では、この頸肩腕症候群からさらに詳しくするために、胸郭出口症候群や腕の神経絞扼(こうやく)症候群などの疾患名が独立して、名付けられるようにもなってきました。

頸肩腕症候群の原因については、さまざまなことが考えられます。筋肉の過労や姿勢の異常でも起こりますが、頸椎(けいつい)のクッション役を果たしている椎間板が薄くなる椎間板変性症、椎体に骨のとげができる変形性頸椎症、椎体の後ろを縦に走っている靭帯(じんたい)に骨化が起こる後縦(こうじゅう)靭帯骨化症といった中年すぎの疾患などでも起きます。むち打ち症の後遺症や、内臓疾患、精神的なストレスでも起きます。

このように原因はさまざまですが、いずれも骨、筋肉、血管、神経の何らかの異常が原因です。普通、首筋や肩が凝って、腕がしびれるような場合は、この頸肩腕症候群によることが多いといえます。

筋肉の過労で起きるケースは、一定の筋肉ばかりに負担がかかるパソコン作業者などでみられます。腕を上げる筋肉は頸椎についているものが多いので、腕を宙に浮かしてする仕事に従事する人は、これらの筋肉の凝りや痛みを起こしがちです。姿勢の異常、例えば前かがみの悪い姿勢では、頭の重心が前に出るので、この頭を支えるために首や肩の筋肉が疲れ、これが痛みに変わることもあります。

また、頚肩腕症候群の症状もさまざまあり、首、肩、腕、手指の痛みや凝り、しびれ、脱力感、冷感のほか、背部の痛み、肩甲骨の凝りやこわばり、めまいや頭痛を伴う場合もあります。

頸肩腕症候群の検査と診断と治療

頸肩腕症候群の治療法としては、まず安静にすることが求められます。特に、筋肉の過労からくる場合は、2、3日安静にすることで治ることもあります。次に、適度な運動やストレッチをして筋肉を使うことで、筋肉を疲労しにくくさせます。このことで、次に頸肩腕症候群になる可能性が低くなるといわれています。

症状が軽く、安静と運動でよくなるようであれば、特に病院に行く必要はないかと思われます。痛みや凝りを取り除くための身近な治療薬としては、湿布などもあります。

そのほか、パソコンの長時間の使用や、同じ姿勢を続けるなどの日常生活を見直し、作業の途中に適当な休息時間を挟む、体操をして筋肉の凝りをほぐすことをふだんから心掛けます。また、過労や睡眠不足とあいまって、精神的なストレスが首、肩、腕の凝りを招くこともありますので、できるだけ睡眠をよくとり、過労にならないように心掛け、努めて精神を平静に保つようにします。

しかし、頸肩腕症候群の症状が頑固な場合には、病院で受診して原因をはっきりさせることが大切です。ひどい症状を何度も体験していたり、肩凝りの症状のほかにめまいやしびれがひどい場合は整形外科や神経内科、頭痛がひどい場合には脳神経外科などを受診するとよいでしょう。病院では、原因となる疾患を明らかにした上で、その治療を最優先します。鎮痛剤や筋弛緩(しかん)剤を使用することもあります。

🇷🇸脛骨疲労性骨膜炎

すねに沿った筋肉に損傷が生じて痛む状態

脛骨(けいこつ)疲労性骨膜炎とは、すねに沿った筋肉に損傷が生じて痛む状態。シンスプリント(Shin splints)、過労性脛部痛とも呼ばれます。

通常、足のすねの部分に、長期に渡って繰り返し負荷がかかるために起こります。起こりやすいすねの筋肉には2つのグループがあり、すねの前側と外側の筋肉に起こる前外側の脛骨疲労性骨膜炎と、すねの後ろ側と内側の筋肉に起こる後内側の脛骨疲労性骨膜炎とがあります。損傷がどちらの筋肉に生じたかによって、痛みを感じる部位が異なります。

前外側の脛骨疲労性骨膜炎は、すねの前面と外側の筋肉が侵された状態です。このタイプは、張り合う関係にある筋肉の大きさがもともと不均衡であるために起こります。すねの筋肉は足を引き上げ、より強く大きいふくらはぎの筋肉は歩行中やランニング中の着地時に、足を地面まで引き下げる働きをしています。ふくらはぎの筋肉の力が強すぎると、すねの筋肉に損傷が生じることがあります。

主な症状は、すねの前面や外側の痛み。最初はランニング、ウオーキング、陸上競技、スキー、バスケットボール、エアロビクスなどの運動中、かかとが地面に打ちつけられた直後にだけ、不快感や軽い鈍痛が生じます。これは散発的なものであるため、本人が大したものではないと思うことがほとんどです。

さらに運動を続けると、痛みは運動中ずっと持続するようになり、やがて常に痛みがある状態になります。医師を受診するころには、押すと痛む圧痛がすねにみられます。

一方、後内側の脛骨疲労性骨膜炎は、すねの後面と内側の筋肉が侵された状態です。これらの筋肉は、つま先をけり出す前にかかとを持ち上げる役割を果たしています。このタイプは、傾斜のあるトラックや中央が高くなった道路を走ると起こりやすく、足の小指側に体重がかかりすぎたり、このような回転を十分に防げない靴を使用していると悪化の原因となります。

痛みはまず、すねの内側から始まることが多く、足首の関節から約2・5〜20センチ上に痛みが現れます。つま先立ちしたり、足首を内側にひねると痛みが強まります。さらに走ることを続けていると、痛みはすねの前面に広がり、足首の関節内を侵し、上方にも広がって膝の付近にまで及ぶことがあります。

脛骨疲労性骨膜炎の進行とともに痛みは強まり、最初は筋肉の腱(けん)だけが炎症を起こして痛みますが、なお走り続けていると筋肉自体にも炎症が広がることがあります。やがて、炎症を起こした腱が緊張して引っぱる力が生じ、骨との付着部である骨膜からはがれたり、出血やさらなる炎症を起こすことがあります。こうなると、ベッドから起きる時や日常生活の他の動作の最中にも痛みが伴うようになります。

脛骨疲労性骨膜炎を発生する年齢は10歳代から40歳代、特に16~17歳くらいに多く、女性は男性の約1・5倍の発生頻度です。高校や大学の運動部の新入部員や、合宿などで練習量が増加した部員に多くみられるので、これらの時期には特に注意が必要になります。

脛骨疲労性骨膜炎の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、症状や問診で脛骨疲労性骨膜炎と確定できますが、疲労骨折や骨腫瘍(しゅよう)との鑑別が必要です。末期ではレントゲン検査で骨膜炎の所見を認め、骨腫瘍、骨肉腫との鑑別が必要なこともあります。

整形外科の医師による治療では、痛みの強い急性期にはランニングなどを休止して局所の安静を図り、アイシングやアイスマッサージを行ったり、消炎鎮痛剤を用います。O脚、偏平足、回内足など下肢や足の形態に起因しているケースでは、足の土踏まずを支える靴の中敷きなどの足底装具を用いて、形態を補正します。

急性期にはランニングなどの休止を徹底しますが、局所の安静期からでも下肢の荷重運動を避け、水泳、エアロバイク、股(こ)関節や足関節、アキレス腱を中心とした下肢のストレッチングを行います。

自発痛や歩行時痛が消失したら、足指でのタオルギャザー、足関節の軽いチューブトレーニングを行います。明らかな圧痛が消失したら、ウオーキングから始め、次に両脚踏み切りジャンプで痛みが出なければ、アスファルトなどの硬い路面を避けて軽いランニングを再開します。ただし、練習量を急激に増やすと、再び痛みが出やすいので注意します。

軽症の脛骨疲労性骨膜炎の場合、完全に運動を休止する必要はないと考えられていますが、練習量と内容の見直しが大切です。ランニング、特にダッシュ系のランニングとジャンプ動作を減らし、練習前のストレッチ、練習後のクールダウンのストレッチと15分くらいの氷冷をすることで、1~2週間で軽快します。慢性のものは、数カ月かかることもあります。

予防には、下肢の筋力強化とストレッチが重要です。バケツを使った運動、つま先立ちなどでの下肢の筋力強化により、脛骨に加わるストレスを軽減させることができます。ストレッチにより筋肉、腱、腱膜の柔軟性を高めれば、脛骨に対する張力を弱めることができます。

シューズはクッションのよいものを選び、硬い路面の走行をなるべく避けるなどの練習環境の整備も必要です。 脛骨疲労性骨膜炎は土踏まずのアーチ部分が下がってきていることも原因の一つなので、土踏まずを上げるためのテーピングも効果的で、足が過度に回転するのを防ぐことができます。

🇷🇴形質細胞性口唇炎

良性の慢性炎症性疾患が口唇にできたもの

形質細胞性口唇炎とは、開口部形質細胞症と呼ばれる良性の慢性炎症性疾患が口唇にできたもの。

開口部形質細胞症は、口唇、頬(ほお)粘膜、歯肉、男性外陰部、女性性器など人体の開口部に、浮腫(ふしゅ)性変化や暗紅色のびらん、痂皮(かひ)などの症状が認められる珍しい疾患です。そして、この開口部形質細胞症の中でも特に口唇に発生するものは、形質細胞性口唇炎と呼ばれています

珍しい疾患で、症状の現れ方は他の一般的な口唇炎と異なる特徴を持ちます。慢性的な炎症により、口唇がむくんだり、はれたり、出血を繰り返したりします。このため、口唇には1ミリ大ほどの境界明瞭(めいりょう)で出血と痂皮、すなわち、かさぶたを伴う暗紅色のびらんが混在するようになります。

びらんに触っても痛みはありませんが、かゆみを認めます。また、かさぶたを除去した際には、除去部より出血を認めます。

形質細胞性口唇炎の発生する部位は下唇が圧倒的に多く、上唇のみに発生するケース、上下唇に併発するケースはまれです。男女の性差はほとんどなく、年齢は50歳代以降に好発し平均は62歳であったという報告もあります。

繰り返される外的な刺激、加齢による口唇粘膜の弾性線維の変性、内分泌による影響、あるいは高血圧症、糖尿病などの全身疾患が原因として挙げられていますが、明確な発症メカニズムは解明されていません。

良性の慢性炎症性疾患が口唇にできたもの

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、口唇の一部を採取して顕微鏡で調べる生検を行うことで、粘膜固有層や皮膚真皮層に形質細胞の浸潤が認められれば、形質細胞性口唇炎と確定します。

口の中にいる一般的なカビであるカンジダや細菌、ウイルスなどの感染を伴うことが疑われる場合には、口唇の表皮や拭(ぬぐ)い液を培養し、病原体を特定する検査を行うこともあります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、形質細胞性口唇炎の治療法が確立していないため、一般的にステロイド軟こうの塗布やステロイドの局所注射を行います。/p>

タクロリムス軟こうなどの非ステロイド軟こうの塗布、グリセオフルビンなどの抗真菌薬軟こうの塗布、インターフェロンなどの抗ウイルス薬の局所注射、放射線療法、電気焼灼(しょうしゃく)、外科的療法としての全切除を行うこともあります。

さらに、口唇に感染症を伴っている場合には、抗生物質(抗菌剤)、抗ウイルス薬、抗真菌薬など、それぞれの病原体に適した塗り薬や内服薬を使用します。

🇷🇴形成性陰茎硬化症

陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患

形成性陰茎硬化症とは、男性の陰茎の皮膚の下に硬いしこりができる疾患。陰茎形成性硬結症、陰茎硬化症、線維性海綿体炎、ペロニー病、パイロニー病、ペイロニー病、ヴァン・ビューレン病などとも呼ばれます。

30~70歳代の男性にみられ、陰茎海綿体を包む白膜(はくまく)という結合組織に、線維性のしこり(硬結)ができます。白膜は伸び縮みする弾性線維と硬い膠原(こうげん)線維の組み合せでできていて、ある程度伸びると止まる構造になっていますが、膠原線維が増えてしこりになります。しこりは陰茎の陰嚢(いんのう)と反対側の面にできることが多く、すじ状のものから板状で骨のようなものまで、さまざまな形があります。

勃起(ぼっき)すると陰茎がしこりのある方向に曲がり、疼痛(とうつう)が起こることもあります。曲がり具合にもよりますが、十分な勃起が得られず、性交に支障を来すこともあります。

平常時は痛くもかゆくもなく、しこりそのものは無害と考えられ、自然によくなることもあります。逆に、徐々に進行することもあります。

詳細な原因は、まだよくわかっていません。慢性陰茎海綿体炎、糖尿病、痛風、外傷などとの関連が疑われています。手の小指や薬指の内側の腱(けん)が引きつって内側に曲がったり、手のひらや足の裏が短縮したりするデュプイトラン拘縮という疾患と一緒に現れることもあります。デュプイトラン拘縮は中年以降の男性に多くみられ、長期に渡るアルコール摂取が危険因子の一つと見なされ、糖尿病に合併することもあります。

形成性陰茎硬化症らしいと思い当たり、性生活に支障を来すようであったり、ほかの疾患、例えば陰茎がんなどとの見極めが困難な場合は、泌尿器科などの医師に相談することが勧められます。

形成性陰茎硬化症の検査と診断と治療

泌尿器科の医師による診断では、特徴的なしこり(硬結)の症状の視診、触診で確定できます。以前に打撲などによる外傷や炎症があったかどうかが、参考になります。超音波検査やMRI検査を行うと、しこりの厚さや大きさを観察でき、しばしば石灰化が確認できます。陰茎知覚異常がある場合には、振動覚測定を行います。

この形成性陰茎硬化症ががんになることはありませんが、しこりや痛みが同じように現れる陰茎がんとの見極めは難しく、正確に診断するためにしこりの一部を切除して組織検査を行うこともあります。

形成性陰茎硬化症に特に有効な根本的な治療法は、現在のところありません。勃起障害の原因となったり、痛みが起こる場合には、超音波治療(体外衝撃波治療)、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)の局所注射ないし内服、コラーゲン分解酵素の局所注射、ビタミンEの内服、ヘパリン類似物質や非ステロイド系消炎鎮痛薬の軟こうの塗布などが試みられますが、あまり有効ではないようです。痛みが起こる場合には、放射線照射が有効とされています。

性交渉に障害が出るような場合、本人が希望すれば手術を行うこともあります。手術には、しこりがある反対側の白膜を切り詰めて湾曲を矯正する縫縮法(プリケーション法)と、白膜のしこり自体を切除し、欠損部に皮膚や静脈を移植する移植法の2つがあります。

通常、軽い場合は縫縮法、症状が進んでいれば移植法が行われます。縫縮法は湾曲の改善のみを目的とした方法で、移植法に比べて簡単ですが、しこりや痛みの改善はできないことと陰茎の短縮が問題となります。移植法も、手術後の瘢痕(はんこん)組織が硬化して手術前より悪化したり、切除しても再発することがあるのが問題となります。

いずれも2時間ぐらいの手術で、3日間程度のの入院が必要です。糖尿病のある人の場合は、血糖コントロールが必要のため入院期間が少し長くなります。縫縮法を局所麻酔で行う場合は、日帰り手術も可能です。

症状が進んで陰茎海綿体にまで影響するなど重い勃起障害がある場合は、陰茎の中に支柱材を埋め込むプロステーシス手術も検討されます。デュプイトラン拘縮が一緒に現れている場合は、 基本的に薬物療法や注射は治療効果がなく、手術による治療になります。

🇭🇷頸椎後縦靭帯骨化症

頸椎の後ろを走っている靱帯が骨に変わり、肥厚してくる疾患

頸椎後縦靭帯(けいついこうじゅうじんたい)骨化症とは、頸椎の後ろを走っている靱帯が骨に変わり、肥厚してくる疾患。

骨に変わった靭帯は、頸椎の可動性を減少させながら脊柱管(せきちゅうかん)内で脊髄や、脊髄から分枝する神経根を徐々に圧迫し、まひ症状を引き起こします。日本人に多い疾患であり、研究と治療法も主に日本で発達してきました。

現在のところ靭帯骨化の原因は不明ですが、単一の要因で生じるのではなく、複数の要因が関与して発症すると考えられています。関与するものとして、遺伝的素因、性ホルモンの異常、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、糖尿病、肥満傾向、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレスなどいろいろな要因が考えられています。特に家族内発症が多いことから、遺伝子の関連が有力視されています。

主な症状は、脊髄圧迫症状です。すなわち、手足のしびれや痛みを発症することが多く、はしを使うなど手指の細かい動作がやりにくくなる巧緻(こうち)運動障害、足が突っ張って歩行がしにくくなる痙性(けいせい)歩行などの運動障害も出現します。さらに、頻尿や失禁、便秘などの膀胱(ぼうこう)直腸障害もみられます。

首の動き、特に前に曲げたり後ろに反らしたりする動きの範囲が狭くなります。

頸椎後縦靭帯の骨化があっても無症状の人、大きくない骨化なのに急速にまひの出る人、5~10年かけてゆっくりまひが進行する人など、脊髄症状の起こり方や進み具合は、人によってさまざまです。

その一方で、転倒などの軽い外傷を契機に、まひ症状は急激に悪化しますので、転倒などには十分注意する必要があります。脊髄症状による歩行障害が転倒を招き、その結果、脊髄症状が悪化するという悪循環にもつながります。いったん症状が重度になると、日常生活に障害が出て、介助を要することもあります。

手足のしびれがある場合はもちろんですが、ほかの目的で撮影したX線写真などで骨化を指摘されたら、整形外科を受診して下さい。経験を積んだ医師による正確な診断の元に、治療方針を決定して脊髄まひを予防することが重要です。

頸椎後縦靭帯骨化症の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、X線検査を行うと骨化の有無が比較的簡単にはっきりします。CT検査を行うと、骨化の大きさや形状がさらにはっきりし、MRI検査を行うとで、脊髄の圧迫されている状況が観察できます。

整形外科の医師による治療は、保存的治療と手術治療とがあります。保存療法では、骨化によって圧迫されている神経を保護することが治療の主目的になります。頸椎における保存的療法では、まず頸椎の安静保持を保つため、外固定装具を装着します。この時頸椎を快適な位置にあることが必要で、高さの調節可能な装具が適しています。また、首を後ろに反らせる姿勢は避ける必要があります。

そのほか、薬物療法として消炎鎮痛剤、筋弛緩(きんしかん)剤などを内服して、自覚症状の軽減が得られることがあります。

明らかな脊髄症状があり、保存的治療を行っているにもかかわらず疾患が進行し、仕事や日常生活に支障を来す場合には、手術治療します。手術方法は、骨化の状態や部位に応じてさまざまな方法があります。神経の圧迫を取るため骨化部位を摘出して、その部位を自分の骨で固定する前方法と、骨化部位はそのままにして神経の入った脊柱管を広げる後方法があり、後方法が選択されることが一般的です。

手術方法の開発や改良が行われ続け、最近では、比較的安定した手術成績が得られています。しかし、手術後に骨化が進んで、まひが再び悪化することもあるので、手術後も長期に渡って経過を観察する必要があります。

🇭🇷頸椎症

首の椎間板と椎骨の変性により、脊髄や神経根が圧迫される疾患

頸椎(けいつい)症とは、首の椎間板と椎骨の変性により、脊髄(せきずい)や神経根が圧迫される疾患。頸椎椎間板変性症、変形性頸椎症、頸椎椎間板症、頸部脊椎症、頸椎骨軟骨症などは、多少の違いはありますが、頸椎症とほぼ同じ意味で使われています。

背骨のうちで首の部分を構成する骨が頸椎であり、7つの椎骨からなります。上から第1頸椎、第2頸椎と呼び、一番下が第7頸椎。第2〜7頸椎までは、それぞれの間に椎間板が挟まっていて、椎骨と椎骨の間でクッションのような役割を果たしています。この椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

頸椎症は通常、中年や高齢者に発症します。中年を過ぎると、骨や軟骨の老化のため、椎間板がつぶれ、骨の丸みがなくなり、椎骨の円柱状の部分である椎体の間の透き間が狭くなり、神経根の通路である椎間孔、あるいは脊髄を入れる脊柱管が狭くなってきます。

その結果、腕のほうへいく神経根が圧迫されて、肩や腕の痛みやしびれが起こったり、脊髄が圧迫されて、下肢のしびれ、知覚鈍麻、痙性(れんせい)まひが起こることがあります。

頸部の症状としては、肩や首の筋肉が緊張して肩凝りなどがみられたり、圧痛がみられます。また、頸部を前屈したり後屈した時に、後頸部から肩、上肢に放散する痛みが現れます。

上肢の症状としては、片側または両側の上肢の痛みとともに脱力感、疲労感、手指の感覚異常、冷感、こわばりを感じることがあります。また、手先の仕事、字を書く、物をつまむなどの動作ができにくくなり、時間がかかるようになります。

手指の感覚異常は圧迫部位の高さに一致しており、例えば第5頸椎椎間板による圧迫時は親指、第6頸椎椎間板の圧迫時は中指、第7頸椎椎間板の圧迫時は小指にそれぞれ感覚異常を来します。症状が進行すると、手の筋肉が委縮したり、皮膚温の低下、発汗異常、手指の変形などがみられます。

脊髄に圧迫が起こると下肢の症状が現れ、脚が震えるようになり歩行が不安定になる歩行障害、便秘、排尿障害などの症状が現れます。

また、椎骨の変形により頭蓋(ずがい)内に行く椎骨動脈が圧迫されると、首を曲げた時などに血行障害が起こり、めまいを引き起こすこともあります。頭痛、耳鳴りなどを引き起こすこともあります。

頸椎症の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、首を横に曲げ、頭部を圧迫した時に上腕に痛みが走ったり、首を軽く後方へ曲げ、頭部を圧迫した時に上腕に痛みが走れば、この頸椎症が疑われます。 頸椎の単純X線写真で、椎体骨の偏平化、硬化、とげ状の突起である骨棘(こっきょく)形成、椎体間腔(かんくう)の狭小化の所見がみられれば、診断はほぼ確実です。

脊髄や神経根の圧迫の状態をみるには頸部MRI検査が有用で、脊柱管のどこが狭くなっているか、どのように脊髄が圧迫されているか、どの神経根が圧迫されているかなどがわかります。

整形外科、神経内科の医師による治療では、神経根の圧迫症状に対しては、頸部周囲の筋肉の緊張を和らげる治療を行います。就寝時の姿勢も大切で、枕の高さを調節して軽度の前屈位をとるようにします。

薬物療法としては、非ステロイド性消炎剤や筋弛緩(きんしかん)剤が有効です。痛みが強い時は、局所の安静のために頸椎固定用のカラー(えり巻き式補装具)を首に装着します。

そのほかの理学療法としては、血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するホットパックなどの温熱療法、頸椎牽引(けんいん)療法、低周波治療、レーザー治療などがあります。頸椎牽引療法では、首の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。

早期に牽引やカラーを用いた装具療法を行えば、症状の進行をかなり食い止めることができます。症状が進行している時や、MRI検査によって重度の椎骨圧迫や脱臼(だっきゅう)がみられる時は、手術による治療が行われます。基本的には手術によっても、すでに起きてしまった障害は元には戻せません。

🇭🇷頸椎椎間板ヘルニア

頸椎の椎間板の一部がずれて、神経を圧迫する疾患

頸椎椎間板(けいついついかんばん)ヘルニアとは、背骨の最上部にある頸椎の椎間板の一部が後方へずれ、神経を圧迫する疾患。胸椎、腰椎など、どこにでも発生する椎間板ヘルニアの1つです。

背骨のうちで首の部分を構成する骨が頸椎であり、7つの椎骨からなります。上から第1頸椎、第2頸椎と呼び、一番下が第7頸椎。第2〜7頸椎までは、それぞれの間に椎間板が挟まっていて、椎骨と椎骨の間でクッションのような役割を果たしています。この椎間板は円板状の軟骨組織で、中心部に髄核と呼ばれるゼラチン状の軟らかい組織があり、それを線維輪と呼ばれる丈夫な組織が取り囲んでいます。

頸椎椎間板ヘルニアになると、椎間板の線維輪に亀裂(きれつ)が入り、中にある髄核が飛び出して脊髄(せきずい)や神経根を圧迫し、さまざまな神経症状が現れます。頸椎の中でも首の根元に位置し、頭蓋(とうがい)骨を支えるのに最も負担が強いられる下位の頚椎である第5、第6頸椎間に、最も多くヘルニアが認められます。

椎間板の年齢的な変性が基盤となり、頸椎への運動負荷が加わることが原因となって発生します。このために、頸椎椎間板の変性がある程度進み、頸椎への運動負荷の多い年代である30〜50歳代が好発年齢になります。

椎間板ヘルニアによって神経が圧迫されると、手足の痛みやしびれなどのさまざまな症状が出てきます。代表的な症状は首の痛みや凝りで、午前中は比較的症状が軽くても、午後から夕方になるにつれて症状が強くなります。

脊髄が圧迫されている場合、手のしびれが現れます。手のしびれは片側だけの時もあり、次第に反対側にも現れることもあります。最初から両側にしびれが現れていることもあります。手指の細かな運動もしづらく、字を書いたり、はしで豆をつまんだり、魚肉をほぐすことができにくくなったり、衣服のボタン、特に目で見ることのできない首回りのボタンの止め外しが難しくなります。

脚にも症状が出て、腱(けん)反射が高進し、脚がこわばって歩きにくくなる痙性(けいせい)歩行が現れます。階段の昇降に手すりが必要になり、特に階段を降りにくくなることが多くみられます。

神経根が圧迫されている場合、主に後頸部から肩、手指にかけてズキズキする痛みが現れます。この痛みは、首を後ろに反らすと強まるのが特徴で、神経根の圧迫がますます増強されるためです。そして、上肢、手指の筋力低下も現れます。

また、頸椎椎間板ヘルニアの存在する高さによって、手足に発生するしびれや痛みの部位、触覚や痛覚などの知覚障害が起こる部位に違いがみられます。排尿、排便の障害を起こすこともあります。

頸椎椎間板ヘルニアの検査と診断と治療

頸椎椎間板ヘルニアの症状に気付いたら、整形外科を受診します。無理に頸椎部に外力を加えると、まひ症状が増悪することがあるので、安静を心掛けます。

医師による診断では、問診を重視し、腱反射異常、知覚障害、筋力低下などを検査して、どの神経が壊れているかを検討します。レントゲン検査で、頚椎のずれたり、ぐらぐらする状態や、椎間板の軟骨が磨り減り、つぶれた状態、脊髄を取り囲んでいる骨の状態などを検討します。

レントゲン検査では主に骨の情報しか得られないので、詳細な検討にはMRI検査が必要となります。症例によっては、脊椎・脊髄腫瘍との見極めが必要となる場合もあります。

治療では、頭蓋の牽引(けんいん)療法が効果的です。首の牽引と休止を繰り返すことにより、痛み、しびれを緩和します。局所の安静のためには、頸部のカラー(えり巻き式補装具)なども効果的です。

薬物療法としては、非ステロイド性消炎鎮痛剤、筋弛緩(しかん)剤、神経賦活剤、ビタミンB製剤などが投与されます。痛みが長期に渡って慢性化した場合や、心的因子やストレスが関与していると思われる場合は、不安や緊張の緩和と筋弛緩作用を期待して抗不安剤を投与されることもあります。速効性を要する時には、脊髄の硬膜外ブロック療法といって、脊髄の硬膜外腔(がいくう)に麻酔薬を注射し、痛みをとる方法が用いられます。

血行を促進し筋肉の凝りや痛みを軽減するために温熱療法、体操療法、頚部のストレッチング、筋力強化訓練などで改善が得られることもあります。

以上のような手術をしないで治す保存的療法で効果がない時には、脱出して神経を圧迫している髄核を摘出する手術や、その後の再発予防のために、骨を移植して2つの脊椎を癒着させて動かないようにする、脊椎固定手術などが行われます。移植する骨は、骨盤の骨でベルトのかかる部分に当たる腸骨から採取します。

🇷🇴頸動脈狭窄

脳へ血液を流す頸部頸動脈が狭まり、脳梗塞を生じる危険性が高まる状態

頸動脈狭窄(けいどうみゃくきょうさく)とは、一般的に頸部頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が狭窄した状態。

頸動脈は頸部頸動脈と頭蓋(ずがい)内頸動脈に分かれますが、心臓から脳に向かう血液の流れ道である頸部頸動脈が狭いため、狭い個所で流れの悪くなった血液が小さな血の塊である血栓を作り、これが頭蓋内の血管を詰まらせる結果、脳の血流不足が起こり、脳梗塞(こうそく)を生じる危険性が高くなってきます。

頸動脈狭窄だけでは全く症状は出ませんが、頸部頸動脈にできた血栓が脳の血管の一部を詰まらせた場合には、突然、言葉が出にくい、手足のしびれやまひ、手足が動きにくいなどの症状が出ます。ほぼ40 パーセントの人は、こういった症状が短時間、多くは1時間以内で完全に改善します。これは一過性脳虚血発作と呼ばれ、脳梗塞の発作を起こす以前の前触れ症状として重要な発作です。短時間のうちに、血栓が溶けるか、副血行路が形成されるために、発作は一過性ですみます。

また、15~20パーセントの人は、数分、数時間、数日以内の短時間の間にどんどん症状が悪化していく進行卒中と呼ばれる経過をたどります。

頭蓋内頸動脈が最初に枝分かれする血管は、目を栄養する血管です。この目の血管を頸部頸動脈にできた血栓が詰まらせると、片側の目の上半分や下半分が暗くなる、幕が上がるまたは下がるように視野が暗くなる、視力が急に低下し、物が見えなくなる、時に眼の奥の痛みを訴えることがあります。一時的な症状で回復することがほとんどなので、一過性黒内障と呼ばれていますが、頸部頸動脈狭窄症に多い症状です。

そのほか、頸動脈狭窄により脳に送られる血流量が減少した場合、脳梗塞と同様の症状以外に、立ちくらみ、揺れるようなめまいなどを覚えることもあります。

頸動脈狭窄の検査と診断と治療

神経内科、ないし脳神経外科の医師による診断では、首に超音波を当てて診断する頸部血管ドップラー検査、CTやMRIによる血管の検査で容易に確定されます。近年では、狭くなった個所の診断やその程度のほか、動脈硬化の性質、血流の早さなどの質的診断も行え、よい治療方法が選択できるようになりました。

治療上必要な場合は、頸動脈を直接レントゲンで撮影する血管撮影が行われます。また、血液が到達する脳の状態を調べるため、脳のMRIや核医学による脳血流検査なども行われます。さらに、心臓などほかの血管に、同じような疾患がないか調べることも重要です。

神経内科、ないし脳神経外科の医師による治療では、禁煙、運動療法、食事療法などに加え、高脂血症、糖尿病、高血圧に対する薬による内科的治療が基本となります。これに加えて、脳卒中を予防するために血液の流れをよくする抗血小板療法の薬が追加されます。

頸動脈の狭さが強くなった場合には、その程度により手術か血管内治療が追加されます。頸動脈狭窄のみが発見されて、脳の症状がなく頸動脈の狭さが60パーセント以上の場合は、脳神経外科医により手術で頸動脈の病変を摘出することが脳卒中を予防するためによいとされています。一方、脳の症状がある場合の手術の基準は70パーセントの狭さに上昇し、手術により脳卒中が拡大することを防止します。この脳神経外科医による手術法は、長年に渡って世界中で行われ、多くの結果が蓄積された結果、現在の基準が確立されました。

血管内治療は新しい治療法で、太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを頸動脈の狭窄した場所に誘導します。ここでカテーテルの先についたバルーンと呼ばれる風船を広げ、網目状に血管の中で拡張し、頸動脈の内側を適切な太さに保つステントと呼ばれる形状記憶合金で作られた機器を留置してきます。この治療法は歴史が浅いため、病変を直接取り除く手術のリスクが高いと思われる場合や高齢者の場合などに行われています。

🇧🇬軽度認知障害

認知症になる前の段階で、健康な状態と認知症の中間にある状態

軽度認知障害とは、認知症になる前の段階で、健康な状態と認知症の中間にある状態。つまり、認知症ではないものの、全く健康でもない状態です。

老化に伴う物忘れよりは記憶障害が進んでいますが、それ以外の認知機能障害は現れておらず、日常生活にも支障を来していません。

認知症になる前の段階といっても、軽度認知障害の人が将来、必ず認知症になるとは限りません。そのまま治療を受けなくても、半数は認知症にならないといわれています。逆にいえば、何もしなければ、半数の人は認知症になるわけであり、将来、認知症を発症する可能性のある予備軍といえます。

発症する可能性のある認知症は、脳の神経細胞がゆっくりと死んでいく変性性認知症で、最も多いアルツハイマー型認知症のほか、レビー小体型認知症、前頭・側頭型認知症が相当します。

65歳以上の高齢者で、アルツハイマー型認知症などさまざまな認知症の人は約462万人おり、これに対して軽度認知障害の人は約400万人いると推計されています。

軽度認知障害の診断は、現状では医療機関への受診が必要なため、「最近物忘れがひどくなった」という状態では受診しない人が多くを占めます。

しかし、最近の研究では、軽度認知障害の人が適切な治療を受ければ、認知症の発症を防いだり、発症を遅らせたりできることがわかってきています。早期診断で軽度認知障害が発見されれば、一生、認知症にならなくてもすむかもしれないので、早めに精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師に相談することが勧められます。

軽度認知障害の検査と診断と治療

精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師による診断では、まず記憶テストや問診などを行います。ここで軽度認知障害と診断されれば、脳血流シンチを使用して脳の血流を測定し、アルツハイマー型認知症などさまざまな認知症かどうかを判断します。

脳血流シンチは2002年ごろから使われ始めた精密診断機器で、注射によって体内に放射性同位元素を微量注入し、その後の脳の血流の様子をシンチカメラで撮影するものです。アルツハイマー型認知症では典型的な脳の血流低下がみられますので、ここで判断することができます。

精神科、神経内科、内科、あるいは物忘れ外来の医師による治療では、場合により、脳の代謝をよくする薬や、アルツハイマー型認知症の治療薬であるドネペジル(製品名:アリセプト)を使用します。

軽度認知障害の段階でドネペジルを使用すれば、アルツハイマー型認知症の進行の抑制期間を長引かせる可能性が高くなります。

軽度認知障害から認知症への進行を防いだり、遅らせるためには、趣味を楽しんだり、人と話したりして、脳を活性化することが有効です。また、食生活の改善や運動不足の解消など、ライフスタイルを見直すことも大切です。

🇧🇬頸部脊柱管狭窄症

頸部の脊柱管が狭くなり、中の脊髄や神経根が圧迫される疾患

頸部脊柱管狭窄(けいぶせきちゅうかんきょうさく)症とは、頸椎(けいつい)を上下に貫いている頸部脊柱管が狭くなり、脳から続く脊髄などが圧迫を受け、腕のしびれなどの症状がみられる疾患。頭部脊柱管狭窄症とも呼ばれます。

頸部脊柱管狭窄症は、加齢に伴って起きるため高齢者に多いのが特徴です。頸椎の老化や酷使、炎症、外傷などのために頸椎のクッションの役割を果たしている椎間板が傷んだり、頸椎の骨自体が変形したり、脊柱管の周りにある靱帯(じんたい)が肥厚したりするために脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から枝分かれしていく神経根が圧迫を受けます。また、生まれ付き脊柱管が狭い人の場合、加齢に伴う圧迫が容易に起こるため、30~40歳代で発症することもあります。

症状は、四肢のしびれや痛み、筋力低下などで、脊髄が圧迫されることによるまひが強い場合は、はしがうまく使えないなどの指先での細かい動作の障害、階段の上り下りが不安定などの歩行障害が顕著になります。 悪化すると、排尿障害、排便障害、知覚障害を起こす可能性があります。

症状に心当たりがある場合は、正確な状態を把握をするために整形外科の専門医を受診し、検査をしてもらうことが大切です。

医師による診断では、頸椎の動きや状態、歩き方などを見ます。また、X線、CT、MRIなどの画像による検査で、狭窄している部位の特定などを行います。

軽いしびれなど症状が軽い場合は、安静、薬剤の投与、神経ブロック注射、コルセットの装着、首の牽引(けんいん)療法などにより、症状の改善を図ります。

四肢のまひのため日常生活に障害がある場合、神経のまひ症状が重篤で排尿・排便困難を伴う場合は、手術を行って脊髄、神経根を圧迫している原因を取り除き、症状の軽快や進行予防を図ります。脊柱管狭窄を生じている頸椎はすでに変形しているわけで、これを元の健常な状態に戻すいかなる方法もありません。

手術後は脊髄、神経根のはれを抑えるため、短期間、副腎(ふくじん)皮質ホルモン(ステロイド剤)を点滴します。一般的には、手術後約3週間で、頸椎装具を装着して歩行が可能になり、頸椎装具は約3カ月間装着します。状態がよければ、手術後できるだけ早くリハビリなどで機能訓練を行います。

後遺症として、脊柱管の狭窄による脊髄や神経根の圧迫がひどく、一部回復できなくなっているような場合は、しびれ、まひが残ります。そのほか、手術により持病の悪化、高齢者の場合は認知症(痴呆〔ちほう〕症)の出現や増悪、肺炎や膀胱(ぼうこう)炎などの併発、床擦れなどが生じる場合もあります。

🇭🇺頸部内頸動脈狭窄症

頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患

頸部内頸動脈狭窄(けいぶないけいどうみゃくきょうさく)症とは、心臓から脳に向かう左右2本の頸動脈から分枝する内頸動脈が動脈硬化を起こし、血液が流れる道が細くなる疾患。内頸動脈狭窄症とも呼ばれます。

左右に1本ずつある太い頸動脈は、あごの下の高さで、大脳に血液を送る内頸動脈と、顔面や頭皮に血液を送る外頸動脈に分かれます。この分岐する部分では、狭窄が好発します。

この狭窄の原因としては、動脈硬化が最も多く、狭窄によって血液が流れる道が細くなって血液の流れが妨げられると、遠位部の脳への血流が不足するために症状が生じることがあります。主な症状は、左右どちらかの半身の運動障害や知覚障害、言語障害、顔面下半分のまひで、立ちくらみ、揺れるようなめまいなどを覚えることもあります。

また、狭窄部で血液の流れが乱れることによって血の塊である血栓が形成されると、血栓がはがれて遠位部の脳に飛び、細い血管に詰まって閉塞(へいそく)させたりして、症状が生じることがあります。

症状は障害の部位や程度によりさまざまで、一過性視力障害、一過性脳虚血発作など一時的な症状を起こして回復する場合と、脳梗塞(こうそく)を起こす場合があります。脳梗塞を来すと、その部位に応じた運動まひ、知覚障害、言語障害、視機能障害、高次機能障害などを示し、重症の場合には寝たきりや植物状態、さらには生命の危険を生ずることがあります。

近年、食事摂取の欧米化で、日本人の血清コレステロール値は米国人と同じレベルに増加しています。この結果、比較的大きい血管の動脈硬化による疾患が増加しつつあり、その中でも内頸動脈は最も影響を受けやすく、動脈硬化が進行した場合、狭窄や閉塞を来すこともあります。

頸部内頸動脈狭窄症の急性期には、症状の進行や脳梗塞の再発が多いため、症状に気付いた場合にはすぐに神経内科、ないし脳神経外科を受診することが重要です。最近では、脳ドックや他の疾患の検査などの際に、症状が出る前に頸部内頸動脈狭窄症が発見されることも多くなっています。

頸部内頸動脈狭窄症の検査と診断と治療

神経内科、脳神経外科の医師による診断では、首に超音波を当てて診断する頸部血管ドップラー検査、CTやMRIによる血管の検査で容易に確定されます。近年では、狭くなった部位の診断やその程度のほか、動脈硬化の性質、血流の早さなどの質的診断も行え、よい治療方法が選択できるようになりました。

治療上必要な場合は、内頸動脈を直接レントゲンで撮影する血管撮影が行われます。また、血液が到達する脳の状態を調べるため、脳のMRIや核医学による脳血流検査なども行われます。さらに、心臓などほかの血管に、同じような疾患がないか調べることも重要です。

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神経内科、脳神経外科の医師による治療では、禁煙、運動療法、食事療法などに加え、高血圧、高脂血症、糖尿病に対する薬による内科的治療が基本となります。これに加えて脳梗塞を予防するために、軽度から中等度の頸部内頸動脈狭窄症では、血液の流れをよくする抗血小板療法の薬が追加されます。

内頸動脈の狭窄が強くなった場合には、その程度により手術、ないし血管内治療が追加されます。内頸動脈狭窄のみが発見されて、脳の症状がなく内頸動脈の狭さが60パーセント以上の場合は、脳神経外科医により手術で内頸動脈の病変を摘出することが脳梗塞を予防するためによいとされています。一方、脳の症状がある場合の手術の基準は70パーセントの狭さに上昇し、手術により脳梗塞が拡大することを防止します。

この脳神経外科医による手術法は、長年に渡って世界中で行われ、多くの結果が蓄積された結果、現在の基準が確立されました。

血管内治療は新しい治療法で、太ももの付け根から血管の中にカテーテルと呼ばれる管を入れ、これを内頸動脈の狭窄した部位に誘導します。ここでカテーテルの先についたバルーンと呼ばれる風船を広げ、網目状に血管の中で拡張し、内頸動脈の内側を適切な太さに保つステントと呼ばれる形状記憶合金で作られた機器を留置してきます。

この治療法は歴史が浅いため、病変を直接取り除く手術のリスクが高いと思われる場合や高齢者の場合などに行われています。

🇧🇬けいれん性便秘

腸の運動が活発になりすぎることで、腸がけいれん状態に陥って起こる便秘

けいれん性便秘とは、大腸が便を押し出す蠕動(ぜんどう)運動と呼ばれる消化管環状筋の伸び縮みが活発になりすぎ、腸がけいれん状態に陥っていることから起こる便秘。特に男性に多い便秘です。

便秘は通常、排便回数が少なくて、3日に1回未満、週2回未満しか、便の出ない状態です。

便が硬くなって出にくかったり、息まないと便が出なかったり、残便感があったり、便意を感じなかったり、便が少なかったりなど多様な症状も含みます。便の水分が異常に少なかったり、うさぎの糞(ふん)のように固い塊状なら便秘です。

排便があっても、便の量が少なく、うさぎの糞のように固い塊状の便、あるいは細い便となるのが、けいれん性便秘の特徴です。

けいれん性便秘は、精神的なストレスや、感情の高まり、生活習慣の乱れ、睡眠不足が原因となって、自律神経のアンバランス、特に副交感神経が緊張しすぎることにより便秘が起こるものです。大腸の蠕動運動が活発になりすぎて、下行結腸にけいれんを起こした部位が生じ、その部位が狭くなって、便の正常な通過が妨げられます。

けいれんを起こした部位の上部は腸の圧力が高くなるため、腹が張った感じがして、不快感や痛みを覚えます。

排便後には少しは気持ちがよくなりますが、十分に出切った感じがなく、すっきりしないなど、残便感を生じる人が多いようです。

便秘の後に、腸の狭くなった部位より上のほうで水分の量が増えるため、水様の下痢を伴うこともあり、便秘と下痢を交互に繰り返す場合もあります。頭痛、めまい、不眠、動悸(どうき)などの自律神経症状を伴う場合もあります。

けいれん性便秘をほうっておくことで、腹部の不快感や腹痛を伴って便秘や下痢が長く続く過敏性腸症候群という、さらに重く、日常生活にも支障を来す便秘になる場合もあります。

けいれん性便秘は男性に多い種類の便秘なのですが、近年では女性でもかかるケースが増えています。女性も社会に出て、精神的なストレスを感じる機会が多くなった反動といえるかもしれません。

ストレスを感じているような自覚がなかったとしても、けいれん性便秘に当てはまる症状が出ている場合は、肛門(こうもん)科、消化器科、婦人科、あるいは心療内科を受診することが勧められます。

けいれん性便秘の検査と診断と治療

肛門科、消化器科、婦人科、心療内科の医師による診断では、問診による病歴の聞き取りと腹部の触診が重要です。腹部の触診では、腹部腫瘍(しゅよう)の有無、腹筋の筋力をチェックしますが、けいれん性便秘では、特に左下腹部に圧痛を認めることが多く、時に圧痛のあるS状結腸を触知することがあります。

直腸の指診では、肛門部病変、肛門と直腸の狭窄(きゅうさく)あるいは腫瘍、直腸内の便の有無、便の潜血反応を調べますが、けいれん性便秘では、直腸内に便を触れません。

通常の検査として、検便、検血、腹部X線(レントゲン)検査を行い、便秘が持続していたり腹痛がある場合には、肛門から腸の中に軟らかい造影剤を注入してX線撮影をする注腸造影、あるいは大腸内視鏡検査を行い、大腸の働きが活発化していることを確かめます。

腹部腫瘍、イレウス(腸閉塞〔へいそく〕)などが疑われる場合には、腹部超音波(エコー)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。

さらに、問診で、要因となる自律神経症状や精神神経症状の有無、精神的ストレスの関与を確認します。性格・心理テストを行って、診断の決め手とすることもあります。

肛門科、消化器科、婦人科、心療内科の医師による治療では、生活指導、食事指導、薬物療法、心身医学的治療が基本になります。精神的なストレス、不規則な生活、睡眠不足、慢性疲労の蓄積、睡眠不足など、けいれん性便秘を悪化させる要因が日常生活の中にあれば改善を試みます。

症状を悪化させる大量のアルコール、香辛料などの摂取は控え、便秘または下痢どちらのタイプにも有効な食物繊維は積極的に摂取することを勧めます。

薬物療法が必要な場合は、便の状態を調整する薬剤(ポリカルボフィルカルシウム)、腸管運動機能調節剤、漢方薬などをまず投与します。便秘に対して緩下剤、腹痛に対して鎮けい剤、下痢に対して整腸剤や乳酸菌、セロトニン受容体拮抗(きっこう)剤、止痢剤を投与することもあります。

緩下剤は、腸への刺激がなく、水分を保持して便を軟らかくする酸化マグネシウムなどの塩類下剤や、水分を吸収して便が膨張する膨張性下剤を主体として使用します。センナ系、漢方などの速効性の刺激性下剤は、できるだけ常用しないように心掛けます。刺激性下剤を常用すると、次第に腸が下剤の刺激に慣れて効果が鈍くなり、ますます便秘が悪化することがあるためです。

自律神経失調症が認められる場合は自律神経調整剤、精神症状の強い場合は抗不安剤や抗うつ剤、睡眠剤などの併用を考慮します。心身医学的治療としては、精神療法、自律訓練法、認知行動療法などを行います。

🇭🇺ケーラー病

足の中央部にある舟状骨が変形して、痛みが生じる第一ケーラー病

ケーラー病とは、足の骨が変形して、痛みを生じる疾患。第一ケーラー病と第二ケーラーとがあり、ともに成長期の子供の成長軟骨に障害が起き、痛みを伴う疾患である骨端(こつたん)症、いわゆる成長痛の一つです。

第一ケーラー病は、足の中央部にある舟状骨が変形して、痛みを生じる疾患。幼児、小児期にみられ、特に4歳から7歳くらいの男児に多くみられます。

1908年に、ドイツのケーラーによって初めて報告されました。持続的な負荷がかかるなど何らかの原因で、舟状骨への血行障害が生じると、骨自体の組織が壊死(えし)するために変形して、偏平化します。両足に発生する例が約3分の1にみられ、症状に左右差があることも多くみられます。急性に発症することはまれで、慢性に経過することが多い傾向にあります。

土踏まずに痛みが生じ、はれることもあります。そのため、足の外側に体重を掛けて歩くために歩き方がおかしい、歩きたがらないといった症状を示します。しかし、足の形は正常で、関節の動きは障害されませんが、足首の内返しによって痛みを訴えることもあります。

多くの例では、1~2年後に自然経過で元の通りに戻ります。舟状骨が足の骨の中でも重要な役割を持っているため、歩行障害を生じることもあります。

成長期の子供に足の痛みの訴えがある場合は、小児整形外科を受診し適切な治療や経過観察を受けるべきです。

医師による診断では、X線写真を撮ると舟状骨の偏平化が見られます。リウマチ性疾患、捻挫(ねんざ)、骨髄炎との鑑別が必要ですが、X線像から区別は容易です。

治療では、軽度の場合、中足部にパッドを着けた厚い中敷きを作って靴に入れ、舟状骨、土踏まずへの体重負荷を減らして痛みを軽くし、他の疾患がないか時々X線写真で確認します。室内では自由に歩行して差し支えありませんが、激しい運動や、長距離の歩行などは控えめにします。

一般に予後は良好で、数カ月から数年で痛みもX線写真上の変化も消え、後遺症は残りません。万一、痛みが残った場合には別の疾患を考える必要があります。

痛みが強い場合、歩行用ギプスで3~6週間安静を保ちます。その後は軽度の場合と同様、靴の中敷きを用います。

思春期ころに多くみられ、足指の付け根部分の骨が壊死する第二ケーラー病

第二ケーラー病は、足の中足骨(ちゅうそくこつ)の骨頭部の組織が血液の循環障害により壊死し、痛みが起こる疾患。フライバーグ病とも呼ばれます。

骨端症の多くは男子に現れますが、第二ケーラー病に関しては女子に多くみられます。好発年齢は12~18歳の思春期ころで、女子は男子より3~4倍ほど多くなっています。

足の第2中足骨に最も多く起こる傾向があり、次いで第3中足骨に多く起こります。第2中足骨に多く起こるのは、中足骨の中で最も長いため、靴を履くことによって長軸上のストレスがかかりやすいためと思われます。足の両側に起こる例が、10パーセント程度にみられます。

症状の最初は、運動をすると足の前の部分の不快な感じがあり、体重が掛かると痛みが出ます。数年間、無症状の時期があり、運動を機に痛みが再発します。中足骨の骨頭部がある足指の第2指(中指)や第3指(薬指)の付け根を押すと痛みがあり、はれが出ることもあります。進行すると、歩く際の踏み返しの時に足指の付け根の関節に痛みがあるため、その部位への荷重を避けた歩き方になります。関節の可動域制限もあります。

外傷に続発することもありますが、発症の原因にはいろいろな説があり、確定したものはありません。靴幅の狭いシューズを長期間使用することで、持続的な負荷がかかって中足骨の骨頭部への血行が一時的に障害されて生じるともいわれています。

足の部分の骨端症の中では、第二ケーラー病だけが早期診断、早期治療が重要な疾患であり、足の痛みがある場合は、整形外科を受診し適切な治療や経過観察を受けるべきです。早期より徹底した治療が行われないと関節変形を来し、痛みが残りやすいので注意が必要です。

医師による診断では、X線写真で中足骨の骨頭の部分が不規則な形をして、つぶれたり、壊れたりしている像が見られます。鑑別が重要な疾患には、中足骨疲労骨折、リウマチ性関節炎がります。

軽度の場合の治療では、足を安静に保つために、過激な運動を避けます。また、靴の中敷きに、土踏まずを高くしたアーチサポートを数年に渡って使用し、血行が再開して骨頭が修復されるまで、異常のある骨に体重がかからないようにします。一般には、2年ほどの経過でX線上の変形は治ってきます。

初期の痛みが強い場合には、3~4週間ギプスを巻いて荷重を避けた後、軽度の場合と同様の中敷きを使用します。踵(かかと)の高い靴の使用、ランニング、長時間の歩行などは厳禁です。

自然によくなる程度が少ないため、放置して関節に障害を残した例や、治療開始が遅れた例で変形が残って痛みがあれば、手術することもあります。手術には、壊死部の骨頭を切除する方法や、骨頭の付け根の部分を楔(くさび)状に切除して、骨頭を背側に回転して固定する方法などがあります。

🇭🇺劇症肝炎

急性肝不全症状を呈する疾患

劇症肝炎とは、急性肝炎の経過中、8週間以内に、精神神経症状である肝性脳症を始めとして、黄疸(おうだん)、出血傾向などの急性肝不全症状が出現する疾患です。

急性肝炎の発病10日以内に肝性脳症が出現する急性型と、11日以後に出現する亜急性型とがあり、経過は急性型のほうが良好です。その肝性脳症は、肝臓の機能の低下に伴う老廃物の蓄積により出現します。

劇症肝炎は死亡率が高く、運よく回復しても肝硬変になることが多く、非常に恐ろしい疾患。肝細胞は増殖する能力に富んでいるために、ほとんどの急性肝炎では肝細胞が壊されても自然に元の状態に戻りますが、劇症肝炎では破壊が広く及ぶために肝細胞の増殖が遅れ、適切な治療が行われないと高頻度に死に至るのです。

日本では、推定で年間約1000人、急性肝炎の発病者の1~2パーセントが劇症化すると見なされています。新生児から高齢者までのあらゆる年齢層で、男女を問わず発症します。

主な原因は肝炎ウイルスの感染で、薬物アレルギーと自己免疫性肝炎によるものもみられます。近年、もともと肝臓病以外の病気のために薬物治療を受けていた人が劇症肝炎になるケースが、増える傾向にあります。

日本では、B型肝炎ウイルスの感染によることが最も多く、全体の約40パーセントを占めています。これには、B型肝炎ウイルスの保菌者が発症する場合と、他の保菌者から感染して発症する場合とがあります。

A型肝炎ウイルスの感染によることもありますが、その発生頻度はA型肝炎ウイルス感染が流行する年によって異なります。C型肝炎ウイルス感染も頻度はわずかながら、劇症肝炎になる場合があります。E型肝炎の劇症化率は1~2パーセントですが、妊婦が発症すると、死亡率は10~20パーセントにも達すると報告されています。

B型肝炎ウイルス感染に次いで多いのは、原因が確定できないもので、全体の約30パーセントを占めています。薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因と確定されるものは、いずれも10パーセント以下を占めるにすぎません。

肝性昏睡が劇症肝炎の特徴的な症状

黄疸が出てから1週間以上たっても強い倦怠(けんたい)感、食欲不振、吐き気、頑固な頭痛、不眠などの症状がある場合には、劇症化の恐れがあります。発熱、筋肉痛、関節痛、腰痛などの全身症状や、肝性口臭と呼ばれる甘酸っぱい口臭のあるものは、注意が必要です。

黄疸が次第に強くなり、やがて精神異常が現れ、昏睡(こんすい)に陥りますが、この状態を肝性昏睡といいます。

肝性昏睡はかなり特徴的な症状で、劇症肝炎の重篤度の指標となります。初めは睡眠のリズムが逆転し、夜は眠れなくて、昼間に眠たがります。また、性格が変わったように投げやりになる、抑うつ状態になるなどの症状があります。

この時期には、肝性昏睡と判定できないことが多いのですが、次第に日付や場所を間違う、簡単な計算ができない、金銭をばらまく、大事なものを捨てるなどの異常な行動を示します。

間もなく、羽ばたき振戦(しんせん)と呼ばれる、鳥の羽ばたきに似た手の粗大な震えが現れ、外界の刺激に応じられなくなり、眠ったような嗜眠(しみん)状態となり、ついには意識が完全に消失します。

そのほか、細菌の感染や腎(じん)臓、肺、心臓、消化管などの異常、血液凝固の異常など、全身の臓器に高頻度に障害が次第に起こるため、発熱、呼吸困難、むくみ、下血、口腔(こうくう)内や注射針で刺した部位からの出血など、いろいろな症状が次々と現れることになります。

人工肝補助療法や肝移植による治療

劇症肝炎は致命率が極めて高いので、発現が疑われたら、できる限り早期に適切な処置をすることが必要となります。

治療においては、B型肝炎ウイルスの感染が原因の場合は、ラミブジンやインターフェロンと呼ばれる抗ウイルス療法が最も有効です。また、薬物アレルギーや自己免疫性肝炎が原因の場合は、副腎皮質ステロイドを大量に点滴するパルス療法が実施されます。これらの治療を肝性脳症が現れる前から行うことにより、劇症肝炎への進行を抑えることができることもあります。

劇症肝炎となった場合には、原因のいかんにかかわらず、肝臓の働きを補うための人工肝補助療法が行われて、血液凝固因子など体に必要な物質を補充し、アンモニアなど体内にたまった中毒性物質を取り除きます。

この人工肝補助療法には、血液から血球以外の成分である血漿(けっしょう)を取り除き、これを健康な人の血漿と交換する血漿交換と、腎臓が悪い人で行われている血液透析を応用した血液濾過(ろか)透析があります。通常は両方が併用されます。

また、全身の臓器障害に対しても、適時に治療が行われて、肝臓の機能が低下している期間を乗り切れると、肝臓が再生してくるので救命されることが可能です。通常は、すべてに後遺症を残すことなく治癒します。

各種の治療によっても肝臓の機能が回復しない場合は、肝移植が行われることになります。脳死者からの肝臓を移植する場合と、近親者の肝臓の一部分を移植する場合がありますが、日本では後者の生体部分肝移植が広く行われています。従来、生体部分肝移植は主に小児を対象に行われていましたが、近年は成人でも積極的に行われるようになりました。

肝移植により救命された後は、移植された肝臓が他人のものであるので、体から拒絶反応によって排除されないように、免疫抑制薬を一生涯服用する必要があります。

🇭🇺下駄履き骨折

足の小指の根元、甲の部分に位置する第5中足骨の基部に起こる骨折

下駄履き骨折とは、足の第5趾(し)(小指)の根元、足の甲の部分に位置する長い骨である第5中足骨(ちゅうそくこつ)の足首に近い基部に起こる骨折。第5中足骨基部骨折とも呼ばれます。

丸くアーチ状になっていて、最も足の外側にあるために地面からの力を直接受けやすい第5中足骨基部は、よく骨折を起こす部分です。骨折しても歩けることも多く、足首をひねった捻挫(ねんざ)と同じ形で受傷するので捻挫と思われがちですが、痛みのある部分や、はれのある部分が違いますので、よく観察すると区別が付きます。

下駄履き骨折による症状は、足の甲の外側や小指の付け根の強い痛み、はれ、押すと痛む圧痛、歩行障害です。一般的には、痛みがほぼなくなるには約1カ月、はれがなくなるには2~3カ月を要します。

一方、足首(足関節)の捻挫で、いわゆる靭帯(じんたい)が伸びた状態であれば数日から1、2週で痛みがなくなりますが、靭帯断裂になると1カ月以上かかることもあります。

下駄履き骨折は、かつて高下駄(げた)を履いている時に足をひねるとよく生じていました。現在は下駄を履く機会があまりありませんので、なくなったかというとそうではありません。下駄は履かなくても、裸足やサンダル履きの時、普通の靴を履いている時にも足をひねると発生することがあります。特に、厚底靴やハイヒールを履いている時は要注意です。

しかし、骨折に至っても、周辺に靭帯や腱(けん)が残存していて骨片の動きが少ないため、ある程度以上ずれることはあまりありません。比較的よく治り、ギプス装着を必要としないこともあります。骨癒合しないことがあっても、動きがほとんどないため、関節部ではないのに関節のようになる偽関節になっても、異常可動性などの症状を来すことはほとんどないとされます。

足首をひねった際には、軽い捻挫だろうと判断して我流で治療せず、早めに整形外科の医師を受診することが勧められます。

下駄履き骨折の検査と診断と治療

整形外科の医師による診断では、第5趾の根元、第五中足骨の基部に明らかな圧痛を認め、内反ストレス(内返し)を加えると激痛を生じます。レントゲン検査の前後像と斜位像の2方向撮影で、確定診断されます。

しかし、ずれ(転位)のないケースでは、受傷した足部の状態を再現したストレスレントゲン撮影を行わないと、骨折が発見できないことがあります。従って、自覚症状と診察所見で下駄履き骨折(第5中足骨基部骨折)が疑われる場合は、必ずストレスレントゲン撮影を行うことが大切です。

整形外科の医師による治療では、骨折部のずれが少ないか亀裂(きれつ)骨折であるため、手術の対象となる場合はまれです。骨折の状態によって、ギプス療法や長靴型の短下肢装具などの装具療法を行い、骨折部を固定して骨の癒合を経過観察します。ギプス装着の期間は1~4週間と状態によって異なり、また、取り外しができる足部だけの簡単なギプスシーネなどで固定することもあります。

ずれがなく痛みやはれが少ない場合は、湿布と弾力包帯だけを使用することもあります。厳重に固定をしなくても、骨折部の骨膜や靭帯の連続性が保たれているため、骨折部のずれが大きくなることはほとんどありません。ギプスやギプスシーネを装着しない場合の注意事項は、痛みの出る動作を極力しないことです。

一般的には、痛みがほぼなくなるには約1カ月、はれがなくなるには2~3カ月、おおよその日常動作で痛みがなくなるには2~3カ月を要します。スポーツができるようになるには5~6カ月、違和感がなくなるには6カ月以上を要します。

骨折部のずれが著明なケースでは、手術の対象とし、経皮的骨接合術や内固定術などの骨接合術を行うことがあります。

骨の癒合や症状の状況に応じて、リハビリを開始します。リハビリの内容は、ジェットバスのようなバイブラバスや電気治療、本人が行う筋力増強訓練、ストレッチングなどです。

関節の動きをよくするためには、足関節の屈伸、足指の屈伸が有効です。筋力をつけるには、歩くことのほか、つま先立ちやかかと立ちも効果があります。血行をよくするには、風呂にこまめに入ってマッサージをするのがよく、風呂に入った際に関節を動かし、つま先立ちなどをすると効果的です。

治療後にスポーツを行う人には、第5中足骨の外側縦アーチを守るため、足底板をシューズに入れることを勧めることもあります。アーチを支える構造になっている足底板は、外側縦アーチにかかるストレスを小さくすることができます。足全体で体重を支えることを目的として、親指側にも足底板を追加することもあります。

🇵🇱血液型不適合妊娠

母親と胎児の血液型や産生抗体の相性が悪いために、新生児溶血性黄疸が引き起こされる可能性のある妊娠

血液型不適合妊娠とは、母親と胎児の血液型や産生抗体の相性が悪いために、新生児溶血性黄疸(おうだん)が引き起こされる可能性のある妊娠。母子血液型不適合妊娠とも呼ばれます。

新生児溶血性黄疸は、さまざまな原因により新生児の赤血球が急激に破壊され、生後24時間以内に出現する早発黄疸や貧血などの症状が現れる疾患で、この血液型不適合妊娠や母体の疾患によるもの、新生児の赤血球の先天異常によるもの、薬剤や感染によるものの大きく3つに分けられます。

この中では、血液型不適合妊娠に伴う新生児溶血性黄疸が最も多くみられ、母親と新生児の間のABO式血液型不適合妊娠、およびRh式血液型不適合妊娠が代表的です。

ABO式血液型不適合妊娠は、O型の母親がA型もしくはB型の子供を妊娠した場合に起こるものです。このABO式血液型不適合妊娠は全出生の約2パーセントに認められ、ABO式血液型不適合溶血性黄疸の発症頻度は3000人に1人です。

Rh式血液型不適合妊娠は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を妊娠した場合に起こるものです。Rh式血液型不適合妊娠は、ABO式血液型不適合妊娠に比べて重症化することが多くなっています。

どちらの場合も、新生児の血液型抗原が母親に欠如している場合、その血液型抗原に感作されて、これに対する抗体が母親の血液中に産生されます。この抗体は、流産や出産時の胎盤剥離(はくり)の際に、少量の胎児赤血球が母体の血液に入って産生されることが多いため、普通、初回の妊娠では新生児溶血性黄疸は起こりません。

2回目以降の妊娠中には、母親の血液中の抗体が胎盤を通過して胎児の血液中に入ると、抗原抗体反応が起こり、胎児の赤血球が破壊(溶血)される際に、その中のヘモグロビン(血色素)から作られる大量のビリルビン(胆汁色素)ができてしまうことがあります。ビリルビンが胎児の体内で異常に増え、体内に一定量以上残った場合は、組織に蓄積するために皮膚などが黄色くなる黄疸を来します。

ABO式血液型不適合溶血性黄疸は、初回の妊娠から起こり、第1子から発症する可能性もあります。一方、Rh式血液型不適合溶血性黄疸は、Rh陰性の母親がRh陽性の子供を産み、次回の妊娠で胎児がRh陽性である場合に問題になります。日本人のRh陰性の頻度は、約0・5パーセントとされ、200人に1人です。

なお、輸血歴のある女性が輸血血液に感作され、妊娠出産時に特殊な血液型不適合妊娠を示す可能性もあります。

赤血球の破壊(溶血)は、胎児や新生児に貧血をもたらすほか、出生後の新生児に重症黄疸をもたらします。

妊娠中は、大量にできたビリルビンが胎盤を通じて母体へ排出されるため、胎児の黄疸は軽くてすみます。ところが、破壊(溶血)が強い場合は、貧血によって心不全、胎児水腫(すいしゅ)となり、胎内で死亡することもあります。

血液型不適合妊娠の検査と診断と治療

小児科の医師による診断では、ABO式、Rh式血液型など母子間の血液型不適合の有無を調べます。母子間に血液型不適合があり、母体血液中に胎児の赤血球に感作された結果生じた抗体が認められた場合や、新生児の赤血球に胎盤を通して移行してきた母親由来の抗体が認められた場合に、診断が確定します。

小児科の医師による治療では、新生児の血液中のビリルビン値により、光線療法や、免疫グロブリンの点滴静注を行い、新生児溶血性黄疸の改善に努めます。重症例では、交換輸血が必要です。

光線療法は、新生児を裸にして強い光を照射することで、脂溶性の間接型ビリルビンを水溶性のサイクロビリルビンに化学変化させる治療法です。水に溶けやすいサイクロビリルビンは尿によって排出されるため、体の中のビリルビンは速やかに減少します。

光線療法でビリルビン値が下がらない場合には、交換輸血を行います。新生児自身の血液をゆっくり取り出しながら、見合う量を輸血する治療法で、新生児自身の約85パーセントの血液が交換されます。

免疫グロブリンの点滴静注は、第2子以降のRh式血液型不適合溶血性黄疸を予防するための治療で、第1子出産直後に、抗Rh抗体を含むγ(ガンマ)グロブリンを母体に点滴静注し、2回目以降の妊娠の際に胎児の血液中で抗原抗体反応が起こらないようにします。

なお、Rh式血液型不適合妊娠において、妊娠中に胎児が溶血性黄疸にかかって極度の貧血になり死亡してしまう恐れが場合は、治療として早期に出産させて交換輸血を行うか、子宮内胎児輸血を行う必要があります。

子宮内胎児輸血には、超音波ガイド下に胎児の腹腔(ふくくう)内に母体側の抗体によって溶血されないRh陰性の濃厚赤血球を注入する胎児腹腔内輸血法と、直接胎児の血管内に輸血する胎児血管内輸血法の2つがあります。

🇵🇱結核

結核菌による感染症で、2万5000人が発症

結核とは、結核菌によって主に肺に炎症を起こす感染症。昔の疾患、あるいは発展途上国の疾患と考えられがちですが、日本では2007年の1年間で2万5000人余が新たに発症し、約1割の人が亡くなっています。

明治時代から昭和20年代にかけて、長らく死因のトップで国民病、亡国病とも呼ばれていた結核も、国を挙げて予防や治療に取り組んで死亡者は激減しましたが、現在でも決して発症者数の少ない感染症ではありません。人口10万人当たり発症者は19・8人と、米独仏伊などの10人以下に比べて高く、世界保健機関(WHO)の分類では、中まん延国とされています。

人口10万人当たり10人以下の低まん延国になるには10年以上、日本から結核を根絶できるまでには50年以上かかるだろうという予測もあります。結核をなかなか根絶できないのは、結核菌がしぶとい菌だからです。世界に目を転じれば、結核はアジアやアフリカで猛威を奮い、2006年には165万人が命を落としています。

日本の結核を巡る状況は、新しい時代に移りました。2005年4月1日に結核予防法がおよそ50年ぶりに改正され、乳幼児へのツベルクリン反応検査は廃止され、BCG接種を生後6カ月までに行うこととなり、定期結核健診の対象も変更されました。

一方、結核の抱える問題は多様化し、発症者の高齢化、都市部への集中、重症発症の増加などが認められるほか、集団感染の発生もなかなか減らず、20年前と比べて20、30歳代の発症者の減り方が他の世代に比べて鈍くなっています。

現在の高齢者は若い頃に結核流行時を経験しているため、すでに結核に感染している人が多く、体力と免疫力が低下した時に、眠っていた結核菌が目を覚まして増殖し始め、結核を発症しやすくなります。2007年の発症者のうち、70歳以上が48パーセントを占めています。

反対に、若い世代の多くは結核菌に未感染のため、結核菌を吸い込むと感染しやすく、比較的早い時期に発症する危険があります。さらに、若年層で増加するエイズ(AIDS、免疫不全症候群)と結核感染が重なると死期を早めるため、十分な注意が必要です。

結核に感染しても、必ず発症するわけではありません。発症する確率は、10人に1人程度です。通常は免疫機能が働いて、結核菌の増殖を抑えます。ただ、免疫力だけでは結核菌を殺すことはできないので、高齢になって免疫力が弱まると発症するというケースが増えているのです。免疫力の弱い乳幼児も、発症しやすくなります。

結核は、結核の発症者と接触してもそれほど簡単に感染することはありません。結核の感染は、次の4つの条件がそろうことによって決まります。

(1)感染源となる重症の発症者の、たんの中に結核菌が出ていること。たんを塗抹して調べたら、大量の菌がみられたという塗抹陽性の場合が、特に危険です。

(2)重症の発症者が激しいせきをしていること。結核菌は、せきをした際に飛び散る、飛沫(ひまつ)の中に含まれています。せきがなければ、結核菌が外に飛び散ることはめったにありません。

(3)感染を受ける側の人は、今までに結核に感染していないこと。なぜなら、すでに一度、結核に感染している人が再び感染する再感染および重感染は、普通まずあり得ないからです。

(4)感染源の発症者と感染を受ける人が、ある程度の距離で接触していること。結核は空気感染するといわれています。せき、あるいは、くしゃみの時に飛び散った飛沫の液体成分が蒸発すると、中にあった菌は裸の状態となります。こうなると軽いので、空気の流れに乗って思わぬ遠いところにいる人が感染することもあります。しかし、普通は話をする程度の距離で接触した場合に感染することが多いようです。

食べ物や食器を通して、結核が伝染することはありません。たんの中に結核菌を出していない軽症の発症者から、感染を受ける恐れもありません。重症の発症者でも結核の薬を飲み始めると、たんの中の菌は激減しますので、せきが止まれば周囲の人が感染を受ける危険性は少なくなります。

結核の約8割を占める肺結核の症状は、せき、たん、微熱、体重減少、胸痛、血痰(けったん)など。せきは最も多くて、80パーセントの肺結核発症者が訴えています。病状はゆっくり進行するので、初めは喫煙、風邪の名残、あるいは喘息(ぜんそく)が原因ではないかと思っているうちに、朝、せきをすると黄色や緑色のたんが出るようになり、やがて血液の筋が混じるようになります。たんに大量の血液が混じることは、まれです。

夜中におびただしい量の寝汗が出ることも、もう1つの症状です。汗が大量で、寝間着や寝具まで取り換えなければならないこともあります。ただし、寝汗は結核だけに特有のものではありません。せきと寝汗に加えて、全体的に気分が優れず、元気や食欲もなくなってきます。少したってから、体重も減少してきます。

急に息切れがして胸痛がある場合は、肺と胸壁の間に空気(気胸)または水(胸水)がたまっている徴候です。結核の約3分の1は、胸水から症状が始まります。放置すると、感染が肺に広がるにつれて息切れが強くなります。

新しい結核感染症の場合、菌は肺から付近のリンパ節まで移動します。体の自然な免疫機能が感染症を制御できれば、そこで感染症は止まり、菌は休眠状態になります。ところが、乳幼児の場合は自然の免疫機能が万全でないため、気管支や動脈、静脈が肺に入っていく部分の肺門にあって、肺のリンパ液の大部分が集められて流れ込んくる肺門リンパ節に結核性病巣ができて、大きくはれます。気管を圧迫し、高い音の空せきが出て、場合によっては肺虚脱まで起こることがあります。

また、リンパ管を伝って首のリンパ節まで感染症が広がる頸部(けいぶ)リンパ節結核になることもあり、はれたリンパ節から膿(うみ)が皮膚を破って出てきます。

肺以外の結核、すなわち肺外結核は、結核菌が血管を通って全身にばらまかれ、そこに病巣を作る粟粒(ぞくりゅう)結核によって起こります。肺外結核は腎(じん)臓とリンパ節に起こるものが最も多く、骨、脳、腹腔(ふくこう)、心膜、関節、生殖器にも起こります。疲労、食欲不振、時々出る熱、発汗、時に体重減少がある以外は症状に乏しく、結核が生じた部位によって痛みや不快感があったり、なかったりします。

脳や脊髄(せきずい)を包む髄膜に感染する結核性髄膜炎は、致死的な病気です。発熱、持続する頭痛などの症状で始まり、やがて嘔吐(おうと)、意識障害など重篤な症状を呈します。早い時期に強力な治療を始めないと、まひ、認知症など重大な後遺症を残すことがあり、救命できない場合も少なくありません。

結核は脳に感染することもあり、結核腫(しゅ)という病巣ができることがあります。結核腫は、頭痛、けいれん発作、筋肉脱力感などの症状を起こします。結核性心膜炎は、心膜を侵す結核です。この感染が起こると心膜が厚くなり、心臓と心膜の間に水がたまります。こうなると、心臓のポンプ機能が損なわれ、頸静脈がふくれ、呼吸が苦しくなります。

結核予防のためのBCG接種を受けていない人の場合には、結核への初めての感染に引き続いて肺門リンパ節がはれたり、4~5カ月で結核性髄膜炎になるなど、比較的早期に発症することが少なくありません。

BCG接種を受けている人の場合には、結核性髄膜炎など重い疾患は約80パーセント、肺結核は約50パーセント防止できますので、発症率はずっと低くなります。たとえ発症しても、感染後6カ月くらいたってからのことが多く、病状自体も軽くすみます。

ただし、BCGの効果は絶対的なものではないので、発症を完全に防ぐわけではないこと、一度感染を受けると、3~5年の間は大丈夫でも、もっと後になって発病することがあることを知っておいてください。

結核の検査と診断と治療

せき、たん、微熱、体重減少、胸痛、血痰などの症状が出た時、特に2週間以上たっても治らない時、あるいは治ったと思っても繰り返す時には、風邪をこじらせたか、あるいは結核も含めた何らかの呼吸器感染症かもしれないので、念のため、検査することが勧められます。

結核の感染を調べるには、ツベルクリン反応検査とQFT(クオンティフェロン®TBー2G)検査が行われます。ツベルクリン反応検査だけでは、結核菌に感染したのか、類似の非結核性抗酸菌に感染したのか、BCG接種の影響であるのかを区別できません。QFT検査はより精度が高く、2006年1月1日から保険適用されています。

結核の発症を調べるには、胸部X線検査が行われます。X線撮影では、白黒が反転して映ります。肺は空気が多いためX線を通しやすく、全体に明るく(=黒く)映ります。この肺の中に暗く(=白く)映る影があれば、何らか異常があると考えられます。

結核菌の質を調べるには、喀痰(かくたん)検査が行われます。たんを顕微鏡で見て細菌を調べたり、菌の一部を培養したりして、菌の種類を見極めます。

結核を発症したとしても、せき、たんと共に結核菌が空気中に吐き出されていない場合は、他の人に感染させる心配はありませんので、入院しなくても通院で治療ができます。医師による治療の基本は、服薬です。1944年にストレプトマイシンが開発されて以降、続々と抗結核薬が開発され、今では10種類以上の抗結核薬があります。このため結核の治療は、昔とは比べものにならないほど進歩しました。

とりわけリファンピシンという薬ができてから、治療成績はまた一段とよくなりました。リファンピシンはほかの薬に比べ、殺菌力が非常に強いからです。今では特別に重症や高齢の患者でない限り、肺結核患者は100パーセント治すことができるといえるほどです。

治療では普通、最初の2カ月間はリファンピシン、ヒドラジド、ピラジナミド、エタンブトールまたはストレプトマイシンの4種類の薬を使い、その後はリファンピシンとヒドラジドの2種類、または、エタンブトールを加えた3種類の薬にし、合計6カ月で治療を完了します。

ピラジナミドを初め2カ月間使うと殺菌力が強く有効ですが、80歳以上の高齢者や肝機能障害のある人には使えません。この場合には、治療は6カ月では短すぎ、最も短くて9カ月の治療が必要です。

たんの中に結核菌が出ていず、結核菌が増殖する病巣である空洞が胸部X線検査でも見えない軽症の場合にも、同じ治療が進められます。最近はヒドラジドの耐性が増えているので、初めから2つの薬だけで治療することは進められず、少なくとも最初は3つの薬で治療することが必要です。

結核の服薬治療で大切なことは、以下の3点になります。

(1)薬を確実に服用すること。結核が治るようになったのは、抗結核薬ができたからで、結核という疾患が変わったわけではありません。薬を飲まなければ昔と同じで、結核は非常に恐ろしい疾患であることに変わりはありません。せきが治まったからといって治療の途中で薬をやめてしまうと、菌は薬への耐性を増し、時に薬の効かない多剤耐性菌になることがありますので、医師の指示を守って服薬を続けてください。

(2)必ず全部の薬を飲むこと。結核の治療は2種類または3~4種類の薬を同時に使うことが原則です。どれかを飲むのを忘れ、例えば1種類だけの薬を服用すると、その薬に対し、結核菌が耐性になり、効かなくなってしまうことがあります。こうして一度効かなくなってしまうと、元には戻りません。抗結核薬のうち最も強力で副作用が少ないのがリファンピシンとヒドラジドで、このどちらかに耐性をつけてしまうと治療は難しくなりますし、副作用の多い薬を飲まなければならなくなります。全部の薬を必ず飲むことが必要です。

(3)最初の2カ月間の薬の服用を特に大切にすること。もちろん、6カ月ないし12カ月、場合によってはもっと長期間の服薬はすべて確実に行うことが大切ですが、特に最初の2カ月間の服薬がポイントです。初めのうち、疾患発見のショックや、胃腸の調子が悪いなどのために、服薬が不確実になることが少なくありません。しかし、病巣内には多数の結核菌がいますので、強力な治療が必要。初めにいい加減に飲んでいては、後になって一生懸命に飲んでも、病巣は治りにくくなり耐性ができたりしますので、初めのマイナスは取り戻せないのです。抗結核薬の服用は副作用を伴うこともあるので、疑問があれば小さなことでも主治医に相談してください。

なお、結核は継続して治療が受けられるように、2005年4月1日に改正された結核予防法に基づく結核医療費公費負担制度により、治療が公費により負担される場合があります。このような負担制度の詳細につきましては、最寄りの保健所に相談してください。

改正された結核予防法では、高齢者や、大都市などの特定地域に発症者が集中している状況に対応するため、集団から個々のリスクに応じた、予防・治療中心の対策を中心としています。具体的には、リスクに応じた健康診断の実施、乳幼児期のツベルクリン反応検査を廃止しBCGの直接接種の導入、DOTS(ドッツ、直接服薬確認療法)体制の強化、国・都道府県による結核予防計画の策定、といった内容が盛り込まれています。

DOTSとは、服薬を確実にするために、確実に服薬したことをチェックしながら行う治療法です。チェックは、看護師、保健師、薬剤師など実情に応じてさまざまな医療従事者により、いろいろな方法で行われています。治療の途中で服薬を止めてしまうのを防ぐためにもDOTSは有効で、入院患者に対する院内DOTSから始めて、退院者への手厚いケアを行う地域DOTSの必要も叫ばれています。

🇵🇱結核性脊椎炎

肺結核から二次的に起こる骨関節結核の一つ

結核性脊椎(せきつい)炎とは、肺の病巣の結核菌が血流に乗って脊椎に到着し、転移して脊椎を破壊する疾患。肺結核から二次的に起こる骨関節結核のうちで代表的な疾患であり、脊椎カリエスとも呼ばれます。

この結核性脊椎炎は、昭和40年代に非常に多くみられました。背骨の痛みといえば結核性脊椎炎といわれ、治療の困難な疾患でした。しかし、抗結核化学療法(ストレプトマイシン)が発達して以降は急激に減少し、近年ではほとんどみることがなくなりましたが、根絶したわけではありません。

現在、結核にかかっている人はもちろんのこと、過去に結核にかかった経験がある人も発症の危険性がある疾患であるため、安心することはできません。過去に結核にかかったことがある人は、結核菌が体内で生き続けていて、体力や免疫力が弱った時などに発症することがあるからです。

胸椎と腰椎部に多く発生し、初期は背中が痛んだり、病巣部を背中からたたくと痛みを感じたりします。腰が痛んだり、足を動かすと腰の痛みが強くなったり、安静にしても痛んだりすることもあります。全身的な反応として、微熱、赤血球沈降速度の促進がみられます。

進行してくると、脊椎の周囲の筋肉が硬くなって脊椎運動制限が現れ、次に椎体運動制限が現れ、さらに進むと椎体が破壊されて脊柱の後湾変形、いわゆる亀背(きはい)がみられます。この時期には、腹部や臀部(でんぶ)に大量のうみがたまり、脊椎を圧迫し、排便障害、排尿障害、下肢まひなどを生ずることもあります。

周囲に結核の人や過去に結核にかかった人がいて、症状に心当たりがある場合は速やかに整形外科、ないし内科の専門医を受診する必要があります。結核性脊椎炎と診断されれば、結核予防法が適用され、結核菌を排出しているかどうかなどを調べて、周囲への感染を防ぐ必要があります。早期に発見し、治療を開始すれば、変形を残さず治ります。

医師の診断では、X線検査が不可欠で、X線写真をみると椎間板が狭くなり、脊椎の不整像や楔(くさび)状化が見られます。胸椎部では、たまったうみが脊椎周囲に紡錘状に映ることもあります。ただし、早期ではX線写真に特徴的な所見がみられないこともあるので、必ずしも安心できません。

結核性脊椎炎の治療は、安静と抗結核化学療法(ストレプトマイシン)が基本です。1~2年間の抗結核化学療法とコルセットの装着が必要で、治すのに忍耐が必要です。

痛みが強く安静にしていても治る気配がない場合や、浸出したうみが神経を圧迫しているような場合、X線写真で死んだ骨(腐骨)などが見付かった場合には、手術して病巣を摘出する脊椎固定術を行うと、治癒を早めることができます。

🇸🇰血管運動性鼻炎

特定のはっきりした原因が不明ながら、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりが起こる鼻炎

血管運動性鼻炎とは、アレルギー反応の関与が証明できないため原因がはっきりしないものの、鼻粘膜の自律神経の過敏反応により、くしゃみ、鼻水(鼻汁)、鼻詰まり(鼻閉)などの症状を示す疾患。血管運動神経性鼻炎、寒暖差アレルギーとも呼ばれます。

くしゃみ、鼻水、鼻詰まりは、体への異物の侵入を阻止し、排除しようとする防御のメカニズムで、これらの症状が過剰に現れた状態を鼻過敏症といいます。鼻過敏症には、血管運動性鼻炎とアレルギー性鼻炎の2つがあり、ほぼ同じ症状を示します。

鼻の粘膜でアレルギー反応が起こるのがアレルギー性鼻炎で、繰り返す発作性のくしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つが主な症状。鼻から吸い込まれた抗原(アレルゲン)が、鼻の粘膜でアレルギー反応を起こして発症することから、空気中を浮遊している抗原が原因となります。代表的な抗原は、ハウスダスト(室内のほこり)やダニ、花粉などです。

一方、血管運動性鼻炎は、特定のはっきりした原因が不明なものの、アレルギー性鼻炎とほぼ同じ症状を示します。ただし、アレルギー性鼻炎とは異なり、鼻や目のかゆみは起こりません。

特定できないものの、鼻粘膜の無意識に作用する自律神経の働きが過敏になって発症すると考えられています。自律神経の働きを過敏にさせる要因には、急激な温度変化、寝不足や慢性的な疲れ、精神的なストレス、たばこの煙の吸入、化粧品などの香料の吸入、飲酒などがあります。

特に、温度変化によって引き起こされることが多く、暖かい場所から寒い場所へ移動した時や、熱い物を食べた時などに症状が現れやすく、空気が乾燥すると悪化するという特徴があります。

例えば、寒暖差の大きい冬の朝、暖かい布団から抜け出た直後から鼻の血管が拡張し、鼻粘膜の細胞から滲出(しんしゅつ)液がにじみ出て鼻粘膜がむくみ、水様性の鼻水が分泌される状態がしばらく続き、食事を終えて出勤、登校するころになると、周囲の温度に慣れて症状が治まってきます。しかし、暖かい家から空気の冷たい戸外へ出た時には、症状が再発します。

逆に、夜になり布団に入って暖まってくると、鼻詰まりなどの症状がしばらく続きます。鼻詰まりがひどくなると、鼻での呼吸が十分にできなくなり口で呼吸するようになるため、のどの痛みやいびき、不眠、注意力散漫などの症状が出ることもあります。

血管運動性鼻炎の症状は、冬に限ったものではなく、冷房の効いた夏場など年間を通じて起こり得ます。暑い戸外から冷房の効いた室内に入った時などに、鼻水が分泌されて不調になる症状が出ることも多々あります。

年間を通じてよくなったり悪くなったりを繰り返し、症状が数週間続く場合もあれば、すぐに治まることもあります。

くしゃみや鼻水などの症状が長引く場合は、耳鼻咽喉(いんこう)科を受診し、自分に合った治療やアドバイスを受けることが勧められます。

血管運動性鼻炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉科の医師による診断では、まず、くしゃみ、鼻水、鼻詰まりの3つの症状が1年中起こるのか、あるいは春や冬の季節などに限定して起こるのかを調べます。それをもとに、アレルギー性鼻炎かどうか、もしそうならば原因となる抗原は何かを鼻汁検査、特異的IgE抗体検査、皮膚テスト、鼻粘膜誘発テストを行って調べます。

検査結果で陽性を示す場合に、アレルギー性鼻炎と確定します。検査結果で陰性を示し、抗原(アレルゲン)を特定できない場合に、血管運動性鼻炎と確定します。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、アレルギー性鼻炎の場合は抗原の除去・吸入回避が重要ですが、血管運動性鼻炎の場合はアレルギー反応の関与が証明できないので、症状を抑える対症療法を主体に行います。

薬物療法では、抗ヒスタミン薬や漢方薬などの内服薬、副腎(ふくじん)皮質ホルモンや抗ヒスタミン剤が含まれる点鼻薬を主に使います。しかし、長期間の経過観察が必要です。症状を抑える薬を使用すると、その時は改善しても、再発することが多く、完全に治ることが難しいからです。

薬物療法に効果を示さない場合は、手術療法を行うこともあります。鼻詰まりに対しては、鼻粘膜の一部を固める電気凝固術やレーザー手術、凍結手術、鼻粘膜の一部を切り取る鼻粘膜切除術などがあります。また、鼻水に対しては、自律神経の副交感神経を遮断する後鼻神経切断術が行われることもあります。

血管運動性鼻炎に関しては、睡眠不足にならない、精神的ストレスをためない、たばこの煙を吸わない、アルコールを飲みすぎない、規則正しい生活とバランスの取れた食事を心掛ける、適度な運動をして体力を付けるなどの点に注意し、症状を悪化させない努力も大事です。

また、体を温めることが効果的です。朝起きたら家の中で軽く体を動かすなど、血行をよくして体を温めると、症状が治まることもあります。服を一枚多く着て体温を調整すると、症状が治まることもあります。

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