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2022/08/27

🇨🇮高アルドステロン症

副腎皮質ホルモンのアルドステロンの過剰分泌によって起こり、筋肉の弱化、高血圧がみられる疾患

高アルドステロン症とは、副腎(ふくじん)皮質ホルモンの一つのアルドステロン(鉱質コルチコイド)の過剰分泌により、カリウムの喪失が起こり、筋肉の弱化、高血圧がみられる疾患。アルドステロン症とも呼ばれます。

この高アルドステロン症は、本来のアルドステロンの分泌組織である副腎(ふくじん)皮質の異常によって起こる原発性アルドステロン症と、ほかの臓器の疾患に続いて起こる続発性アルドステロン症に大別されます。

原発性アルドステロン症は、初めて報告したアメリカのコン医師にちなんで、コン症候群とも呼ばれます。

副腎皮質の片側の腫瘍(しゅよう)、または両側の副腎皮質の肥大増殖が原因となって、原発性アルドステロン症は起こります。腫瘍の場合は、ここからアルドステロンが多量に分泌され、肥大増殖の場合は、副腎全体からアルドステロンが出てきます。

アルドステロンは腎臓に作用し、体の中にナトリウムと水分を蓄えるために高血圧になります。また、尿の中にカリウムを排出する作用を持つため、アルドステロンが過剰になると血液中のカリウムが減って、低カリウム血症となり、筋力の低下による四肢の脱力や、疲れやすいなどの症状が引き起こされます。

そのほか、低カリウム血症により尿量が多くなり、口の渇きがみられたり、発作的に数時間の間、手足が動かなくなる周期性四肢まひが起こったり、テタニー発作という痛みを伴う筋肉の硬直現象が起こることもあります。

高血圧に低カリウム血症を合併していたら、この原発性アルドステロン症が疑われます。治療しないでほうっておくと、高血圧が長く続くために体のいろいろな臓器に障害が起こってきますので、内科、ないし内分泌代謝内科の専門医を受診することが勧められます。

一方、続発性アルドステロン症は、ほかの臓器の疾患により、レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系というホルモン系が刺激を受け、結果として過剰なアルドステロンが分泌されることが原因となって起こります。

エストロゲン製剤(卵胞ホルモン製剤)に起因する高血圧や、腎血管性高血圧、妊娠高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫、傍糸球体細胞腫(しゅ)など高血圧の疾患から発生するもののほか、うっ血性心不全、偽性低アルドステロン症、腹水を随伴させた肝硬変、下剤および利尿薬などの不適切利用、ネフローゼ症候群、バーター症候群、ギッテルマン症候群といった高血圧以外の疾患から発生するものがあります。

レニンーアンジオテンシンーアルドステロン系を除いたものでは、血液中のカリウム濃度が異常に上昇した高カリウム血症によって引き起こされる傾向にあります。

主に現れる症状は、浮腫(ふしゅ、むくみ)、下肢脱力、筋力低下であり、これらは低カリウム血症を基礎にして生じ、どの続発性アルドステロン症にも同じく現れます。また、続発性アルドステロン症を招いている元となる疾患の症状も示されます。例えば、腎血管性高血圧、悪性高血圧、褐色細胞腫では高血圧を伴いますが、バーター症候群、心不全や肝硬変などの浮腫性疾患では高血圧を伴いません。

高アルドステロン症の検査と診断と治療

内科、内分泌代謝内科の医師による原発性アルドステロン症の診断では、アルドステロンの過剰分泌を確かめるため、血液中、尿中のホルモンを測定します。アルドステロンは腎臓から分泌されるレニンというホルモンによって調節されていますが、原発性アルドステロン症のように、副腎から勝手にアルドステロンが出てくると、レニンはその働きを控えます。そこで、診断のためには血漿(けっしょう)レニン活性が抑制されていることを確認します。

腫瘍か肥大増殖か、また、左右どちらの副腎に腫瘍があるのかなどを判断するため、腹部のCT(コンピュータ断層撮影)検査、MRI(磁気共鳴画像撮影)検査、あるいは副腎シンチグラフィーを行います。腫瘍はしばしば小さく、また多発性のこともあり、これらの検査で診断できない場合があります。その場合は副腎の近くの血管にカテーテルを挿入して、そこから採血する副腎静脈血サンプリングという検査を行うこともあります。

内科、内分泌代謝内科の医師による原発性アルドステロン症の治療では、腫瘍による場合、その腫瘍を手術で摘出します。何らかの理由で摘出手術ができない場合や、肥大増殖の場合は内服薬で治療を行います。アルドステロンの産生を制限する目的でトリロスタン(デソパン)、作用を阻害する目的でスピロノラクトン(アルダクトン)などを用います。

原発性アルドステロン症が治れば、血圧は徐々に低下します。しかし、疾患の期間が長く高血圧が長く続いた場合は、血圧が下がりにくいこともあります。

内科、内分泌代謝内科の医師による続発性アルドステロン症の診断では、元となる疾患が明らかとなり、低カリウム血症がみられ、アルドステロンおよびレニンの両者が高値を示せば、確定します。避妊薬、下剤、利尿薬などの服用している薬剤についての情報も重要となります。

内科、内分泌代謝内科の医師による続発性アルドステロン症の治療では、基本的に元となる疾患の是正が中心となります。

浮腫や低カリウム血症などが継続してみられ、元となる疾患の治療も難しいとされるケースにおいては、スピロノラクトンを利用します。以上の治療方法で改善がみられない場合においては、カリウム製剤を利用します。そのほか、非ステロイド性抗炎症薬の一つであるインドメタシンがバーター症候群に有用とされる場合もあります。

なお、副作用などの理由からスピロノラクトンを適用できない場合、トリアムテレン(トリテレン)を使用します。ただし、抗アルドステロン様の作用は有しません。

🇱🇸高脂血症

●まったく自覚症状がない高脂血症 

 高脂血症とは、血液中の脂質(脂肪)、特にコレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)が増えた状態のことをいいます。

 高脂血症は痛くもかゆくもなく全く自覚症状がありません。

 総理府の調査によりますと、高脂血症についての感じ方は、糖尿病や高血圧症などの生活習慣病に比べ、怖い病気という感じ方を持つ人が少なく、わからないという人も多いという結果がでています。

 しかし、高脂血症は自覚症がでた時には、すでに心臓や脳または下肢の動脈硬化が進み、突然、脳梗塞のような脳動脈疾患や狭心症、心筋梗塞などの冠動脈疾患を引き起こすため、高血圧と同様にサイレント・キラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれている怖い病気です。 

■意外と軽視されている高脂血症

怖い病気とは思わない

少し怖い病気だと思う

非常に怖い病気だと思う

わからない

高脂血症についての感じ方

  7.7%

  38.9%

  37.6%

  15.8%

高血圧についての感じ方

  7.8%

  37.6%

  52.5%

  2.1%

糖尿病についての感じ方

  5.8%

  21.4%

   71.0%

   1.9%

            
「生活習慣病に関する世論調査結果」(平成12年2月総理府)より 

【高脂血症が招く合併症】 

 高脂血症とは、血液中の脂質(コレステロールや中性脂肪)が増えた状態で、血液の粘り気も増しています。この状態が長く続くと血管内壁に脂質が沈着し動脈の壁が厚く硬くなっていきます。(動脈硬化の進行)

 その結果、心臓では狭心症や心筋梗塞、脳では脳梗塞など命にかかわる恐ろしい合併症を招きやすくなります。

しっかりとコレステロールや中性脂肪の管理を行ない、これらの合併症の発症を予防しましょう。 

●高脂血症は、大きく2つに分類される

      原発性高脂血症

      続発性高脂血症

 現在、病気でもなく、また特に何か薬を服用しているわけでもないのに、コレステロールや中性脂肪が高く、原因が判明しません。

 多くは、遺伝的な体質に原因があると考えられます。

 1. 食事によるもの(高カロリー食、高脂肪食)

 2. 内分泌性によるもの(甲状腺機能障害ほか)

 3. 代謝異常によるもの(糖尿病、肥満症)

 4. 腎疾患によるもの(慢性腎不全他)

 5. 薬物によるもの(ステロイドホルモン、経口避妊薬、アルコールなど) 

 などを原因とするものです。 

●動脈硬化の危険因子とは?

 動脈硬化を引き起こし、進行させるのは、様々な危険因子が絡みあっています。特に高血圧、高脂血症、喫煙は動脈硬化の3大危険因子と呼ばれています。危険因子は、生活習慣の改善で調整ができるものと、調整ができないものとに区分されます。 

                     調整が可能な危険因子


  生活習慣の改善で調整可能な因子
   アルコールの大量摂取・肥満 ・喫煙・ ストレス・運動不足

  医療によって調整可能な因子

   高脂血症・高血圧・糖尿病・高尿酸血症・痛風


              調整が不可能な危険因子


  
加齢 性別(男性) 遺伝性 
【食生活の変化の影響は?】

 年々、日本人の間に高脂血症が増加している原因としてまずあげられるのが、食生活の欧米化です。下記の表からでも、昭和30年から平成7年の40年間で、エネルギー摂取量に占める脂質エネルギーの割合が大幅に伸びていることがよくわかります。なお、厚生省の第6次「日本人の栄養所要量」によれば、脂質エネルギー比率の望ましい比率は20~25%とされています。

■エネルギーの栄養素別摂取構成割合の変化

たんぱく質

脂 質 

糖 質

昭和30年(1955)

13.3%

8.7% 

78.0%

平成7年(1995)

16.0〃

26.4〃

57.6〃

増 減

+2.7ポイント

+17.7ポイント

-20.4ポイント

 
                               「国民栄養調査」(厚生省)より 

【内臓肥満型は要注意】 

 肥満には、内蔵型肥満と皮下脂肪型肥満というわけ方がありますが、動脈硬化との関連性が高いのが、内蔵型肥満です。

 内臓脂肪型か皮下脂肪型かどうかを正確に診断するためには、腹部CT写真を撮影します。腹部CT写真を撮影する前に、身長と体重、ウエストの値から簡単に推定する方法もあります。 

 なお、詳しい検査と診断方法は、肥満症をご覧下さい。 

【閉経後の女性にとっても問題】

 一般に男性は女性に比べ、動脈硬化になりやすいといえますが、女性も閉経後は注意が必要です。閉経しますと、血液中の脂質を正常に保つ働きをしていたエストロゲンと呼ばれる女性ホルモンの分泌量が激減するため、LDLコレステロールが増加し、動脈硬化へと進行していきます。近年、閉経を迎えた女性にとって大きな問題として骨粗しょう症が取り上げられていますが、骨密度とともに、コレステロールの値も定期的に測定することをお勧めします。 

●高脂血症の検査と診断の方法

 高脂血症かどうかは、12時間以上食事をとらずに採血し、血中の総コレステロール、悪玉コレステロール(LDL)、中性脂肪、善玉コレステロール(HDL)を測定し、それぞれの血清脂質の値によって診断を行います。

正常値

境界域

高コレステロール血症

総コレステロール

200mg/dl未満

200~219mg/dl

220mg/dl以上

悪玉コレステロール

(LDLコレステロール)

120mg/dl未満

120~139mg/dl

140mg/dl以上

正常値

高トリグリセライド血症

血清トリグリセライド

150mg/dl未満

150mg/dl以上

正常値

低HDL血症

善玉コレステロール

(HDLコレステロール)

40mg/dl以上

40mg/dl未満

このように、高脂血症はコレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)、善玉コレステロールの測定した値によって、3つのタイプがあります。 

●高脂血症にならないための1次予防とは?

 高脂血症にならないためには、日頃からの生活習慣の積み重ねが大事です。

 長年の生活習慣はすぐには変えられないかもしれませんが、実行することによる効果はてきめんに現れます。しかも、これらの生活習慣は、糖尿病や高血圧の予防にも結びつきます。

   食事の面

   その他

・食事は1日3食きちんと摂る

・脂っこいものを控える

・就寝前に物を食べない

・間食は控える

・塩分を控えめにする

・食べすぎによる肥満にならない

・お酒を飲みすぎない

・喫煙はしない

・十分な睡眠をとる

・ストレスをためない

・定期的な健康診断を受ける

●高脂血症の治療はどのようにして行うのか? 

 高脂血症と診断された場合には、放置しないで積極的に治療を受けることが必要です。高脂血症の治療の目的は、動脈硬化による病気が起こることを予防することですが、まず、食事療法と運動療法から始めます。食事療法と運動療法を行っても治療目標値に届かない時には、薬物療法に入ります。 

【食事療法】 

 食事療法は高脂血症の種類によっても異なりますが、基本的なこととして下記の点があげられます。 

■食事療法のポイント

適切エネルギーを摂取し、肥満を解消する。標準体重を目指す。標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

中性脂肪を増やす原因となる過剰な糖質の摂りすぎやアルコールの飲み過ぎを控える。間食で果物や菓子類をあまり食べない。週2回以上の休肝日を設ける。

コレステロールの多い食品を控える。卵黄・レバー・ベーコン・たらこ・すじこなどは1回の量をおさえる。

コレステロールの吸収を抑える働きのある植物繊維の多い食品を多く取る いも・豆類・野菜・きのこ・海藻類を積極的に取る。

体の酸化を防ぐ効果のあるビタミンA・C・Eを多く取る。緑黄食野菜(ビタミンA)、野菜類 (ビタミンC)、植物油・種実類 (ビタミンE)を取る。

コレステロールや中性脂肪を低下させる作用のある大豆製品や青魚を多く取る。大豆・納豆・豆腐・いわし・さんま・さばなどを取る。 

【運動療法】

 運動療法は、食事療法とともに高脂血症の治療には欠かせないものです。運動によって、血行が良くなると、中性脂肪や悪玉コレステロールの分解が活発となり、悪玉コレステロールが減って、善玉コレステロールが増えます。とくに、持続的に運動する習慣をつけると、太りにくい体質がつくられます。      

 しかし、抗酸化能力が衰え始めた中高年の人が、あまり激しい運動を始めると、体内に大量の活性酸素を生じさせ、全身の細胞、器官、組織がその活性酸素に攻撃されることになります。運動療法は、必ず医師に相談の上、始めてください。 

■運動療法のポイント

運動を始める前に医師に相談する。特に、高血圧、糖尿病など、心臓の悪い人などは自己判断で始めることは避ける。

脂肪を燃焼させるために、12~15分以上有酸素運動を行う。有酸素運動の代表はウォーキング、水泳、サイクリングなどがある。

1回30分、週3回以上を3ヶ月続けると効果が出る。自分の生活環境と趣味にあった運動を選ぶ。 

【薬物療法】

 食事療法と運動療法だけでは治療の目標値に届かなかった場合には、薬物療法を行います。治療薬は、LDLコレステロールを減らす薬剤と、中性脂肪を減らす薬剤に分類されます。

 

 LDLコレステロールを減らす薬剤

 中性脂肪を減らす薬剤

 *スタチン剤 

 *陰イオン交換樹脂 

 *プロブコール

 *フィブラート剤

 *イコサペント酸

 *エチルニコチン酸

🇿🇲甲状腺がん

内分泌腺の一つで、首の前部にある甲状腺に発生するがん

甲状腺(せん)がんとは、内分泌腺の一つで、首の前部にある甲状腺に発生するがん。

この甲状腺は、のど仏の下方にあって、気管の前面にチョウが羽を広げたような形でくっついて存在し、重さは約15グラム。男性では女性に比べてやや低い位置にあり、甲状腺の後両側には、反回神経という声を出すのに必要な神経が走っています。

甲状腺ホルモンという日常生活に必要不可欠なホルモンを分泌し、そのホルモンレベルは脳にある下垂体という臓器の指令により調節されています。なお、甲状腺の裏側には、副甲状腺というやはりホルモンを分泌する米粒大の臓器が左右上下計4個存在し、血清中のカルシウム値を一定に保つ役割を担っています。

甲状腺がんの発生頻度は、人口3万人に30人程度。年齢的には、若年者から高齢者まで広い年齢層に発生し、子供を含む若い年齢層でもさほど珍しくありません。性別では、男性の5倍と女性に圧倒的に多いのですが、男性の甲状腺がんのほうが治りにくい傾向があります。

原因は、まだよくわかっていません。原爆やチェルノブイリ原発事故などで首に放射線を多量に受けた場合や、甲状腺刺激ホルモンが増加した場合などが、原因になるのではないかといわれています。さらに、甲状腺がんの一つの型で、甲状腺の特殊なC細胞より生じる髄様がんのように、遺伝的に発生するものもあります。また、慢性甲状腺炎(橋本病)にがんが合併することも少なくありません。

甲状腺がんは顕微鏡検査での分類である組織型により、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様がん、未分化がんに分類されます。このいずれであるかによって、病態や悪性度が大きく異なります。

このうち、乳頭がんが全甲状腺がんの約90パーセントを占め、次いで多いのは濾胞がんです。この両者は分化がんと総称され、がん組織が異常であるとはいえ、比較的正常組織に似ています。一般に進行が遅く、治りやすいがんであるのが大きな特徴。リンパ節や肺などに転移がみられる場合もあります。

髄様がんは全甲状腺がんの1〜2パーセント程度を占め、約4分の1が遺伝性。リンパ節転移を起こしやすく、副腎(ふくじん)や副甲状腺の疾患を伴うこともあります。分化がんに比べると悪性度は高いものの、未分化がんほど悪性度は高くありません。

一方、未分化がんは全甲状腺がんの2〜3パーセント程度を占め、あらゆるがんのうちで最も増殖スピードが速いと見なされているもので、全身的な症状を伴ってくるのが特徴です。元からあった分化がんが長年のうちに、変化(転化)して未分化がんになると考えられています。分化がんと比較して、60〜70歳以上の高齢者にやや多く、発生に男女差はほとんどありません。

甲状腺がんの症状は通常、首の前部にしこりを触れるだけです。長年放置して大きなしこりとなると、目で見ただけでわかるサイズになりますし、周囲臓器への圧迫症状を呈することもあります。進行すると、声帯の反回神経のまひを生じて、声がかすれたり、首や全身のリンパ節に転移を生じたり、気管や食道にがんが広がります。

ただし、以上のことは甲状腺分化がんの場合であって、未分化がんでは早い時期から急激な増大、痛み、息苦しさ、全身の倦怠(けんたい)感など多彩な症状を呈します。

甲状腺がんの検査と診断と治療

首のしこりが甲状腺に関係するかどうかは一般の医師でもわかるので、まず掛り付け医を受診し、甲状腺腫瘍(しゅよう)と判明したら、甲状腺を専門にする外科医を受診します。

医師による診断では、手で触る触診以外に、超音波検査(エコー検査)、CT検査などを行います。また、しこりに細い針を刺してがん細胞の有無を顕微鏡で調べる吸引細胞診で、組織型を判断します。目的に応じて甲状腺シンチグラフィ、MRI検査なども行われます。

髄様がんでは、血中のカルシトニンやCEAといった検査値が高くなりますので、診断は容易です。遺伝性のこともあるので、遺伝子の検査や家系調査などが必要となってくることもあります。

治療においては、乳頭がん、濾胞がん、髄様がんはすべて手術の対象となります。病変の広がりにより、甲状腺の全部を切除する甲状腺全摘術、大部分を切除する甲状腺亜全摘術、左右いずれか半分を切除する片葉切除術などを行います。甲状腺の全部や大部分を切除した場合には、残った甲状腺が十分な甲状腺ホルモンを作れないために、チラージンSという甲状腺ホルモン剤を投与します。

首のリンパ節は原則として切除しますが、その範囲もがんの進み具合により判断されます。10ミリ以下の極めて微小な分化がんでは、リンパ節切除を省略する場合もあります。 遠隔臓器に転移を来した分化がん、ことに濾胞がんでは、甲状腺全摘の後にアイソトープ(放射性ヨードの内服剤)の投与が行われます。分化がんに対して、抗がん剤による有効な化学療法はありません。

一方、甲状腺未分化がんに対しては、手術よりも外照射による放射線療法と、抗がん剤による化学療法が中心的な治療となります。従来、有効な治療法が確立されていませんでしたが、近年は複数の抗がん剤の併用が有効なケースもみられます。

甲状腺の手術に特徴的な合併症としては、反回神経まひ、副甲状腺機能低下があります。甲状腺に接する反回神経を手術の時に切断する場合には、声がかすれる、水分を飲むとむせるようなこともあるものの、6カ月から1年経過をみて回復しない場合には、声帯内にシリコンを注入して声をよくします。副甲状腺4個のうちいくつかも手術の時に切除されることが多いのですが、3個以上の摘出では血液中のカルシウムが低下し、指先や口の周囲のしびれが起こることがあるため、カルシウム剤剤や活性化ビタミンD3の補充を行います。

甲状腺がんの予後は、未分化がんを除き良好です。特に、大部分を占める乳頭がんでは、術後10年生存率が90パーセントを超え、がんのうちでも最も治りやすい部類に属します。濾胞がんでも、これに準ずる高い治療成績が得られます。髄様がんでは、分化がんに比べるとやや不良ながら、一般のがんに比べると予後は良好です。未分化がんでは、治療成績は極めて悪いのが現状です。

🇿🇼甲状腺機能亢進症

ホルモンの過剰分泌で生命活動が加速

甲状腺(こうじょうせん)機能亢進(こうしん)症とは、甲状腺が働きすぎるために、甲状腺ホルモンの分泌量が過剰になって起こる疾患。代謝内分泌疾患の一つで、体にエネルギーの利用を促すホルモンである甲状腺ホルモンが過剰になることで、全身の働きが過剰になリます。

どの年代でも発症しますが、一般に出産後や更年期の女性に多くみられます。原因はいくつかあり、バセドウ病、甲状腺炎、毒物や放射線照射による炎症、中毒性甲状腺結節、脳下垂体の機能亢進による過剰刺激、甲状腺ホルモンの過剰摂取などが挙げられます。

バセドウ病は、甲状腺機能亢進症の最も多い原因で、血液中の異常な蛋白(たんぱく)質(抗体)が甲状腺刺激ホルモン受容体を刺激し、甲状腺ホルモンを過剰に作って分泌させることで起こる自己免疫疾患です。

この原因による甲状腺機能亢進症は、しばしば遺伝関係が認められ、女性の発症者のほとんどは甲状腺が肥大します。軽いケースでは、1年くらい放置していても症状が進行しないこともあり、中には数カ月から数年たてば自然に治ることもあります。重いケースでは、放置しておくと心臓が悪くなり、死に至ることもあります。

甲状腺炎は、甲状腺の炎症です。原因としてウイルスの感染が疑われていて痛みのある亜急性甲状腺炎、何らかの原因によって起こり痛みのない無痛性甲状腺炎(無痛性亜急性甲状腺炎)、及び、甲状腺機能亢進症を起こす頻度が少ない慢性甲状腺炎(橋本病)があり、炎症を起こした腺から蓄えられたホルモンが放出されて、甲状腺の機能亢進が起こります。蓄えられたホルモンが使い尽くされると、続いて甲状腺の機能低下が起こり、最終的に腺の機能は正常に戻ります。

毒物や放射線照射による炎症も、甲状腺炎と同じように甲状腺機能亢進症を起こします。

中毒性甲状腺結節は、甲状腺内の部分的組織の異常成長。この異常組織は、甲状腺を正常に制御するメカニズムから逸脱し、甲状腺刺激ホルモンがなくても甲状腺ホルモンを過剰に作ります。プランマー病と呼ばれ、結節が多数ある中毒性多結節の甲状腺腫(せんしゅ)は、若年期や青年期には少なく、加齢とともに増える傾向があります。

脳下垂体の機能亢進も、甲状腺刺激ホルモンを過剰に作り、甲状腺ホルモンの過剰産生を引き起こしますが、この原因による甲状腺機能亢進症はまれです。

原因が何であれ、体のいろいろな機能が過剰になるのが、甲状腺機能亢進症の症状です。発症者の多くは、甲状腺が肥大します。腺全体が肥大したり、特定部分に結節ができて、首の前側から甲状腺を押すと軟らかく、痛みがあります。

また、心拍数の増加、血圧の上昇、心拍リズムの異常(不整脈)、多汗、手の振戦(震え)、イライラ感、情緒不安定、神経過敏、睡眠困難(不眠症)、多飲多尿、食欲の増進にかかわらず体重が減る、疲労や虚弱にかかわらず活動量が増える、いつも腸の働きが活発だが時々下痢をする、などの症状がみられます。

これらの症状は、一度に現れるのではなく、徐々に出てきます。全部の症状が出そろうケースもありますが、半分ぐらいの症状しか出ないケースもあります。

高齢者では、甲状腺機能亢進症の特徴的な症状を示さずに、衰弱、眠気、混乱、無口、うつ状態になることがあり、無欲性甲状腺機能亢進症、ないし仮性甲状腺機能亢進症と呼ばれます。

甲状腺機能亢進症の原因がバセドウ病の場合は、目の周囲が膨れる、涙が出やすい、炎症、光過敏といった目の症状が現れます。眼球が突き出る眼球突出、物が二重に見える複視という2つの特有な症状が、追加されることもあります。

眼球が前に突き出る原因は、目の後ろにあって、眼球が入っているスペースである眼窩(がんか)に蓄積される物質のため。また、眼球を動かす筋肉が炎症を起こすと、適切に機能できず、眼球が正常に動くよう調節するのが難しいか、できなくなる結果として、物が二重に見えます。まぶたは完全に閉じられず、目は外から入る微粒な異物で傷付いたり、乾燥します。

これらの目の症状は、他の甲状腺機能亢進症の症状より早く現れて、バセドウ病の早期の手掛かりになることがあります。多くの場合は、他の症状に気付いた時に起こります。目の症状は、過剰な甲状腺ホルモンの分泌を治療して制御した後も、現れたり悪化することがあります。

検査と診断と治療

医師による診断では、症状から甲状腺機能亢進症の見当をつけ、診断を確定するために血液検査を行います。多くの場合、まず甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定から始めます。甲状腺が亢進していると、TSH値が低くなります。しかし、まれなケースで脳下垂体が亢進していると、TSH値は正常あるいは高くなります。

血清中のTSH値が低い場合には、血液中の甲状腺ホルモンの値を測定し、甲状腺機能亢進症であれば高い数値を示します。原因がバセドウ病であるか疑問がある場合は、血液中の抗甲状腺抗体の有無を検査します。

甲状腺機能亢進症の治療法は、大きく分けて抗甲状腺剤、ベータ遮断剤などによる薬物療法、大きくなった甲状腺の一部を残して切除する手術療法、放射線ヨードを飲むことによって甲状腺の一部、ないし大部分を破壊する放射線ヨード療法の3種類があります。

それぞれ利点と欠点がありますが、発病後1年以上たっているケースや、甲状腺の肥大が大きいケース、症状が重いケースでは一般的に、40歳以上の人には放射線ヨード療法、若い人には手術療法がよいと見なされています。

発病後1年くらいのケースでは、甲状腺の甲状腺ホルモン産生量を減らす働きを持つ抗甲状腺剤の服用によって、半数くらいは治りますので、まず薬物療法が試みられるのが一般的です。最初は高用量での服用から始められますが、後に血液検査の結果をみて調節されます。通常、抗甲状腺剤の服用よって、甲状腺機能は2、3カ月で制御可能です。

抗甲状腺剤を大量に使用すると速く作用しますが、副作用のリスクが高くなります。妊娠している女性が服用する場合には、厳密に経過が観察されます。薬が胎盤を通過して、胎児に甲状腺腫や甲状腺機能亢進症を起こす恐れがあるためです。

重度の甲状腺機能亢進症や、他の治療では効果がなく危険で難しい症状の人には、ベータ遮断剤による薬物療法が有効です。ベータ遮断剤は、甲状腺機能亢進症の多くの症状を制御し、心拍を遅くし、震えを少なくして不安を抑えます。しかし、ベータ遮断薬は、異常な甲状腺の機能を制御するものではありませんので、他の治療法で、ホルモンの産生量が正常に戻されます。

放射性ヨードを経口的に服用して、甲状腺を破壊する放射線ヨード療法では、体全体としては受ける放射能はごくわずかですが、甲状腺がヨードを吸収して濃縮するので、その多くが甲状腺に運ばれます。入院はほとんど必要ありませんが、治療後2~4日は乳児や幼児に近付くべきではありません。職場では特別な予防策の必要はなく、パートナーと一緒に眠ることも問題ありません。ただし、妊娠は約6カ月間は避けるべきです。

甲状腺を破壊する放射性ヨードの量は、甲状腺機能を大きく損なわずに甲状腺のホルモン産生を正常に戻す程度に調整する医師もいれば、甲状腺を完全に破壊する大量の線量を使用する医師もいます。この治療を受けた人の大部分は、その後一生ホルモン補充療法を受けなければなりません。また、放射性ヨードは胎盤を通過し、乳汁に入って、胎児や乳児の甲状腺をも破壊するため、妊娠中と授乳中には投与されません。放射性ヨードと、がんとの関係は、確認されていません。

甲状腺を切除する手術療法は、若い人にとって治療法の選択肢の1つになります。甲状腺腫の大きい人や、甲状腺機能亢進症の治療に使用している薬にアレルギー、あるいは重い副作用のある人にも、選択肢になります。

手術を選択した人の90パーセント以上で、甲状腺機能亢進症は永続的に制御されます。しかし、手術後の甲状腺機能低下はしばしば起こり、そのケースでは以後、生涯に渡って甲状腺ホルモンを補充しなければなりません。手術でまれに起こる合併症は、声帯の麻痺(まひ)と、副甲状腺の損傷です。副甲状腺は、甲状腺の後ろにある小さな分泌腺で、血中カルシウム濃度を制御しています。

バセドウ病では、目と皮膚の症状の治療も必要です。目の症状には、寝床の頭の位置を高くする、点眼薬を使用する、まぶたをテープで閉じる、場合によっては、水分の排出を速める利尿薬を服用するなどが役に立ちます。物が二重に見える複視には、プリズム眼鏡を使用します。

目の症状が重症の場合には、経口コルチコステロイド薬、眼窩のX線治療、目の手術が最終的に必要になります。ステロイド薬のクリームや軟こうは、かゆみや硬くなった皮膚の症状を和らげます。

🇿🇲甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが足りない全身病

甲状腺(こうじょうせん)機能低下症とは、のどの下にある甲状腺の働きが低下し、甲状腺ホルモンの産生が不十分になる疾患。全身のエネルギー利用を促すホルモンである甲状腺ホルモンの不足によって、生命活動がゆっくりと低下します。

先天性のものと後天性のものとがあり、前者の場合はクレチン症と呼ばれ、乳幼児期の知能が低下し、身体的発育も止まって低身長となります。

後天性の場合は、一般的に高齢者、中でも女性に多くみられ、高齢女性の約10パーセントが発症しています。ただし、いずれの年代でも発症します。非常に重症の甲状腺機能低下症として、皮下や心臓に粘液状の物質が沈着する粘液水腫(すいしゅ)があります。

甲状腺機能低下症には、いくつか原因があります。最も一般的なのが、慢性甲状腺炎(橋本病)が長く続くことです。甲状腺が徐々に破壊されるにつれて、甲状腺の機能低下が進行します。

痛みを伴わない無痛性甲状腺炎(無痛性亜急性甲状腺炎)と痛みを伴う亜急性甲状腺炎は、ともに一過性の甲状腺機能低下症の原因になります。この甲状腺機能低下症は、甲状腺が破壊されていない一時的なものです。

さらに、甲状腺機能亢進(こうしん)症や甲状腺がんの治療で使われる放射性ヨード治療、あるいは甲状腺の外科的除去のために、甲状腺ホルモンの産生がされなくなったり、減少された場合にも、甲状腺機能低下症は起こります。

多くの開発途上国では、慢性的なヨード不足の食事が、甲状腺機能低下症の最も多い原因です。海藻類などに多く含まれているヨードは、甲状腺ホルモンを生成する材料であるからです。

比較的まれな原因としては、遺伝性の病気があります。甲状腺細胞中の異常酵素が、甲状腺の十分な甲状腺ホルモンの産生と分泌を妨げるものです。

その他のまれな原因としては、甲状腺を正常に刺激する甲状腺刺激ホルモンを、下垂体も視床下部も十分に分泌できない場合があります。汎(はん)下垂体機能低下症やシーハン症候群などが、その例です。

甲状腺ホルモンが不足すると、身体機能が低下します。症状はとらえにくく、徐々に進行します。体重が増え、便秘性で、冷え性になります。無力感を持ったり、脈拍がゆっくりになり、発汗が減少し、肌が乾燥してガサガサになり、髪は抜けやすく、動きが鈍くなります。

機能低下の程度が著しくなりますと、代謝が低下して皮下に粘液状の物質が沈着し、むくみます。このむくみを粘液水腫といい、普通のむくみと異なり、指で押してもへこんだままにならず、元に戻る特徴があります。

顔のむくみがひどいと、まぶたがむくみ、唇が厚くなり、舌が大きくなるなど、人相が変わってしまうこともあります。話をする時に口がもつれ、ゆっくりした話し方になることもあります。皮膚ばかりでなく、粘膜にもむくみは起こります。喉頭(こうとう)にむくみがくると、声がしわがれて低音になります。心臓への粘液状物質の沈着も見られ、不整脈の原因となります。

これらの症状は割とゆっくり出てくるので、他の病気と間違われます。例えば、脈がゆっくりなので循環器科、腫(は)れぼったいので腎臓科、肌がガサガサなので皮膚科、反応が鈍く精神活動も緩慢となるので、うつ状態や認知症(痴呆症)と間違えられて精神科に回されたりします。

治療せずに放っておくと、甲状腺機能低下症は貧血、低体温、心不全を結果として引き起こします。この状態では、錯乱、物忘れ、意識喪失や粘液水腫昏睡(こんすい)を生じ、呼吸が遅くなり、発作や脳への血流が低下する致死的な合併症に進行することがあります。

検査と診断と治療

甲状腺機能低下症は、血液検査で血中の甲状腺ホルモンを測定することで診断されます。高齢者によく発症し、軽症ではこの年代が侵される他の病気との区別が難しいため、多くの専門医は55歳以上の人に対して、この血液検査を少なくとも1年おきに行うように勧めています。

甲状腺機能低下症のまれなケースに、下垂体も視床下部も甲状腺刺激ホルモンを十分に分泌できないことに起因するものがあり、第2の検査として、蛋白(たんぱく)質に結合していない遊離甲状腺ホルモンT4値を測定する必要があります。このT4値が低ければ、甲状腺機能低下症の診断が確定されます。

治療法としては、軽度であれば経過観察のみとすることもありますが、数種類の経口薬のうち1種類を用いて甲状腺ホルモンを補充する方法がとられます。ホルモン補充に望ましいのは、合成甲状腺ホルモンT4です。ほかに、動物の甲状腺を乾燥させた製剤があります。

一般的に、乾燥甲状腺製剤は錠剤中の甲状腺ホルモンの含有量が変動するので、合成甲状腺ホルモンT4ほど十分な効果が得られません。粘液水腫昏睡のような緊急の場合には、合成甲状腺ホルモンT4か合成甲状腺ホルモンT3、ないしは両剤が静脈注射されます。

甲状腺ホルモン剤の投与は、少量から始められます。多くの量が必要な場合でも、1回分が多すぎると、重篤な副作用を引き起こすことがあるためです。高齢者では副作用のリスクが高いので、治療開始時の量と増量の割合は特に少なくされます。心臓の病気がある人や機能低下症の程度が著しい人に対しても、少量から開始し、血液中の甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの濃度が正常値に戻るまで、慎重に増量します。場合によっては入院も必要です。

妊娠中、授乳中の人に対しても用量を調整する必要がありますが、甲状腺ホルモン剤を飲み続けていても、胎盤を通過せず、母乳にも出ませんので、安心して使えます。

甲状腺機能低下症の半数の人は、甲状腺ホルモン剤を一生飲まなければなりません。しかし、甲状腺ホルモン剤は決められた量を服用している場合、体に症状が出ることはなく、副作用もありません。

🇿🇲甲状腺クリーゼ

甲状腺機能亢進症が重症化したもの

甲状腺(こうじょうせん)クリーゼとは、甲状腺機能亢進(こうしん)症の経過中に、甲状腺ホルモンの血液中への過度の分泌によって急激に、極端な機能亢進が起こる状態。命にかかわる緊急事態で、全身の機能は危険なほど高まります。

バセドウ病などを原因とする甲状腺機能亢進症を、治療しないで放置していたか、治療が不十分な場合に起こり、感染症、コントロール不良な糖尿病、別の病気での手術、外傷、妊娠や出産、甲状腺治療薬の中断、強いストレスなどがきっかけになります。小児ではまれです。

心臓が過度に緊張すると、致死的で不規則な心拍である不整脈や、非常に速い頻脈、ショック症状を引き起こします。高熱、発汗、高血圧、脱力感、筋力低下、気分変動、意識障害、昏睡(こんすい)、興奮、悪心、嘔吐(おうと)、腹痛、下痢、脱水、さらに軽度の黄疸(おうだん)を伴った肝臓肥大による皮膚や白目の黄変などの症状も起こします。

甲状腺クリーゼによる興奮状態から、精神疾患と間違われ、救急隊員が搬送先の医療機関の選択に苦慮することがあります。また、乗用車などの運転中の事故の原因となることがあります。

現在では、甲状腺機能亢進症の治療をちゃんと受けていれば、甲状腺クリーゼになることはないといわれています。感染症、糖尿病などからなる場合もありますが、バセドウ病を原因とする甲状腺機能亢進症を放置していたために、甲状腺クリーゼになる場合が多いので、バセドウ病の人は医師から処方された薬の量を自分の判断で増減したり、勝手にやめたりしないことが大切。

医師による甲状腺クリーゼの治療では、通常の甲状腺機能亢進症の治療に加えて、集中治療室での強力な治療を要します。治療に際しては、ベータ遮断剤、抗甲状腺剤などが用いられます。

🇲🇿甲状腺ホルモン不応症

甲状腺ホルモン受容体の遺伝的な異常

甲状腺(こうじょうせん)ホルモン不応症とは、体の新陳代謝を調節している甲状腺ホルモンが体の中にたくさんあるのに、ホルモンの働きが鈍くなる疾患。日本においても、世界的に見ても、まれな疾患で、その存在は近年になってはっきりしてきました。

特に男性に多く、女性に多いということはありません。先天性の疾患で、子供のころから異常を示すケースも、子供の時は正常で、大人になって初めて甲状腺機能異常の症状を示すケースもあります。異常の程度が強くて、小児期から重い甲状腺機能低下症状を来すような場合は、不可逆的な発育障害を起こしてしまうことがあります。

甲状腺ホルモンが体の中で働くためには、細胞の中にある特別な甲状腺ホルモン受容体という蛋白(たんぱく)質に結合しなければなりません。甲状腺ホルモン不応症では、甲状腺ホルモン受容体に遺伝的な異常があり、生体の各臓器、組織、細胞への甲状腺ホルモンの結合や、作用の伝達が障害されると考えられています。甲状腺ホルモン受容体以外の異常でも、同じような症状が出る可能性はあるようですが、まだ確認できていません。

常染色体優性遺伝という形で、子孫に伝わることが多いようです。具体的には、両親のいずれかが甲状腺ホルモン不応症であると、約2分の1の確率で子供に遺伝します。しかし、両親のいずれにもこの疾患がない場合でも、突然変異によって子供に出ることがあります。

甲状腺ホルモン受容体に異常があれば、甲状腺ホルモンの作用が弱まるはずですが、その分、頭の中にある脳下垂体が甲状腺を刺激して、甲状腺ホルモンの濃度を普通よりも高く設定します。その結果、甲状腺ホルモン受容体に比較的軽い異常があっても、その働きの鈍さを甲状腺ホルモンの濃度が高いことが補って、全身の新陳代謝はほぼ正常人に近くなることが、多くのケースで認められています。

ただ、どうしても甲状腺に負担がかかるため、正常の人に比べ甲状腺が大きくなる傾向があります。異常の程度が強くなると、甲状腺機能低下症の症状が見られたり、部分的に甲状腺機能亢進(こうしん)症に似た症状を来すこともあります。異常がとても強い場合には、難聴を来したり、注意力低下といった精神障害を伴うこともあります。

ほとんどの発症者は、特に治療を受けなくても、甲状腺ホルモンがたくさんあることと、甲状腺ホルモン受容体の機能が低下していることがうまくバランスがとれて、普通の生活が送れます。

むしろ問題は、甲状腺ホルモン不応症の存在がまだ、一般の医師の間でもあまり知られていないことにあります。大抵の発症者は首が腫(は)れているということで受診しますが、甲状腺が腫れていて血中の甲状腺ホルモン濃度も高いことにより、医師にバセドウ病と誤診され、誤った治療が行われてしまう可能性があります。

欧米の統計によると、発症者の3分の1以上が初めはバセドウ病と間違えられ、不適切な治療を受けていました。その意味で、この病気は治療以上に正しく病気を認識することが大切です。

異常の程度が強くて、甲状腺機能低下症の症状が見られる場合は、甲状腺ホルモン剤の服用が必要になります。どのように治療するかは個人差が大きいため、内分泌・代謝科のある医療機関で、この疾患に詳しい甲状腺の専門家に相談することが必要です。

特に薬を使うことなく、正常の人と同じように暮らしている人では、数カ月から1年に1、2回、診察と検査を受けて、経過を見守ることになります。

2022/08/26

🇸🇸メタボリック症候群

■数倍に跳ね上がる生活習慣病リスク■

 メタボリック症候群(メタボリック・シンドローム)は、内臓脂肪症候群、代謝異常症候群、シンドロームX、死の四重奏、インスリン抵抗性症候群などとも呼ばれています。内臓の周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型肥満」の人が、高血糖や高血圧、高脂血症の芽を二つ以上持っている状態を指します。

 高血糖症、高血圧症、高脂血症……いずれも中高年がかかりやすい生活習慣病ですが、これら三つの病気は、共通の根っこから発症すると考えられています。すなわち、脂質代謝異常、糖代謝異常、血圧異常、内臓肥満……など。

 こうした根っこが一つならまだしも、複数持ち合わせている場合は、病気のリスクが高くなります。メタボリック症候群は、まさにこうした複数の危険因子を抱えている状態を指すわけです。

 実際、メタボリック症候群の人では、 動脈硬化の危険因子である「肥満」、「高血圧」、「高血糖」、「高中性脂肪(トリグリセリド)血症」、または「高コレステロール血症」が重複して発症していることがあり、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいのです。危険度が高まるとさまざまな生活習慣病が同時に発症し、場合によっては死につながることも。

 肥満に関しては、上半身肥満のうち内臓脂肪型肥満が、メタボリック症候群になりやすいとされています。肥満には大きく分けて、二つのタイプがあります。女性に多い洋ナシ型と、男性に多いタル型で、洋ナシ型ではおしりや下腹部など皮下に脂肪がつきますが、タル型では内臓回りに脂肪が蓄積されます。

 WHO(世界保健機構)によれば、このメタボリック・シンドロームにかかっている人は、現在、世界的に増え続けているといいます。米国では、実に成人の4人に1人が該当するほど。

 食事が欧米化している日本人も、決して無縁ではありません。厚生労働省の調査によれば、メタボリック症候群の疑いが強い人は、予備軍を含めると中高年男性の約半数に達します。

■日本と海外での診断基準■

 自分の状態を知るには、体重やおなかの回りをチェックするとよいでしょう。   

 日本でのメタボリック症候群(メタボリック・シンドローム)の診断基準(2005年4月8日に策定)を下記に示します。

 下記4項目のうち、 1)肥満が必須条件で、さらに以下の3項目のうち、2項目以上が該当すると、メタボリック症候群と診断されます。

 1)肥満:ウエスト(おへその高さでの腹囲)が男性で85cm以上、女性で90cm以上

 2)高脂血症:中性脂肪150mg/dl以上 、または HDL(高比重リボタンパク:high density lipoprotein)コレステロール40mg/dl未満

 3)高血圧:最大血圧(収縮期血圧)で130mmHg以上、または最小血圧(拡張期血圧)で85mmHg以上、いずれか、または両方。

 4)糖尿病:空腹時血糖値が110mg/dl以上

 海外でのメタボリック症候群の診断基準としては、米国高脂血症治療ガイドライン(2001年)と、WHOによる診断基準の2種類があります。

 米国高脂血症治療ガイドラインでは、下記5項目のうち3項目が該当すると、メタボリック症候群と診断されます。

 1)ウエスト(腹囲)が男性で102cm以上、女性で88cm以上

 2)中性脂肪が150mg/dl以上

 3)HDLコレステロールが男性で40mg/dl未満、女性で50mg/dl未満

 4)血圧が最大血圧で130mmHg以上、または最小血圧で85mmHg以上

 5)空腹時血糖値が110mg/dl以上

 WHOによる診断基準は、下記のようになります。

 高インスリン血症、または空腹時血糖値110mg/dl以上に加え、以下のうちの2つ以上を持つものです。

 1)内臓肥満:ウエスト/ヒップ比>0.9(男性)、>0.85 (女性)、またはBMI(体格指数:body mass index)30以上、または腹囲94cm以上

 2)脂質代謝異常:中性脂肪150mg/dl以上、またはHDLコレステロール35mg/dl未満(男性)、39mg/dl未満(女性)

 3)高血圧:140/90mmHg以上か、降圧剤内服中

 4)マイクロアルブミン尿症:尿中アルブミン排泄率20μg/min以上か、尿中アルブミン/クレアチニン比30mg/g.Cr以上

 それでは、メタボリック症候群はどうして起こるのでしょうか。はっきりとはわかっていませんが、大きな要因は主に体質と生活習慣の二つです。

 体質については不明な点が多いのですが、今のところ有力視されている説では、すい臓から分泌されるホルモンであるインスリンの抵抗性や、脂肪細胞の機能異常が関わっている、と見なしています。 

 まず、私たちが肥満になると、脂肪組織や筋組織における糖の取り込み能力が低下してしまうため、糖を代謝する時に必要なインスリンがうまく働かなくなります。肥満はさらに、筋肉や肝臓でのグリコーゲン合成酵素の活性も低下させます。

 結果的に、血糖値が高くなり、ますますインスリンの働きが阻害されてしまいます。インスリンがうまく機能しないと、糖尿病や高血圧、高脂血症の危険が高まります。動脈硬化が促進され、冠動脈疾患にかかる可能性も出てきます。

 歴史的に見れば、肥満が問題にされているのは、ごく最近のことにすぎません。人類は太古の昔から、ずっと飢餓の歴史に耐えてきました。お陰で、エネルギーが枯渇した場合の身体システムは発達しましたが、近代の飽食に直面して以降、エネルギーがあふれた状態を解消する仕組みができていないために、新たな病も派生しているのではないでしょうか。

■ライフスタイルの見直しを■ 

 メタボリック症候群の主原因は、高カロリー食・高脂肪食のとりすぎと、運動不足という生活習慣に尽きます。

 メタボリック症候群にかかっている人や、疑いが強い人は、三食とも規則正しく、いつもと同じ時間に、摂取カロリーを抑制した食事をとりましょう。外食やファーストフードは、ほどほどに。

 体重減少のために、日ごろから掃除、庭仕事、洗車、子供と遊ぶ、犬の散歩などで、こまめに体を動かすように心掛け、中等度の運動を毎日30分以上、最低でも10分以上行いましょう。ウエストの減少、肥満防止には、出勤前のジョギングもお勧め。中性脂肪、血圧、血糖値を減らし、禁煙するよう努力しましょう。

 厚生労働省の「健康日本21」によると、健康維持に最適な運動消費カロリーは1週間で2000kcal、 1日あたり約300kcalとされております。1日300kcalを消費するために、1日で1万歩を歩きましょう。同じく厚労省の調査によると、メタボリック症候群の予防に効果があるとされる運動習慣がある人は、約3割にとどまっています。

 内臓脂肪型肥満の別名は「タル型肥満」であり、「りんご型肥満」ともいいます。腹部がふくらんでいるのが特徴で、特に男性に多いとされていますが、肥満の予防が健康維持に大切なのは、女性にとっても同じこと。

 「昔に比べて、おなか回りに脂肪がついてきた」、「年々ウエストがきつくなっている」といった場合は、無理なく体重を落とすことから始めたいものです。

 メタボリック・シンドローム予防の10か条

●適正体重を維持する

●野菜や乳製品や豆類などをしっかり食べ、バランスのとれた食事を

●規則正しく食事をし、朝食を抜いたり、寝る直前に夜食を食べたりしない

●脂肪のとりすぎに気を付ける

●塩辛い味付けを避ける

●ジュースやお菓子など、糖分の多い食品を食べすぎない

●ウォーキングやジョギング、水泳など、毎日適度な運動を

●睡眠、休養は十分に

●たばこは百害あって一利なし。思い切って禁煙を

●お酒はほどほどに。週に2回は休肝日を設けて 

 診断のめやすは、次の5項目のうち3つを満たしている場合です(米国の診断基準による)。 

□耐糖能異常(または2型糖尿病)

□高中性脂肪血症

□低HDL(善玉)コレステロール血症

□内臓肥満

□高血圧 

 もし該当する場合、糖尿病を発症するリスクは通常の9倍。心筋梗塞や脳卒中を発症するリスクは3倍。また、それぞれの異常度はさほど高くない、という人も含まれるので警戒が必要です。

 日本の企業労働者12万人の調査では、軽症であっても「肥満」、「高血圧」、 「高血糖」、「高トリグリセリド(中性脂肪)血症」、または「高コレステロール血症」の危険因子を1つ持つ人は心臓病の発症リスクが5倍、2つ持つ人は10倍、3~4つ併せ持つ人ではなんと31倍にもなることがわかりました。

 厚生労働省の調査では、高血圧患者数は3900万人、高脂血症は2200万人、糖尿病(予備軍を含め)は1620万人、肥満症は468万人といわれております。これらの患者は 、年々増加しております。

🇸🇩やせ

●急にやせてきたら注意を

 やせて喜んでいたら、どんどんやせ続ける人には、重大な病気が隠れている可能性もあります。

 近年は「肥満」が悪役になっているためか、「やせ」のほうはあまり問題にされない傾向があります。とりわけ夏の場合、「夏やせだろう」、「夏ばてによる食欲不振が原因じゃないのかな」などと見過ごされがちですが、体重減少は病気のシグナルの可能性もあります。

 普通、自分の身長から割り出される標準体重より20パーセント少ない状態が、「やせ」と考えられます。

 女性の場合の標準体重の求め方は、標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×21(最も有病率の低い、理想のBMI<Body Mass Index>値)となります。男性の場合は、標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22で算出されます。

 「やせ」では、体の脂肪組織が目立って減少し、筋肉組織も減少している状態にあります。「病的」とは必ずしも断定できませんが、一般的には、病気にかかりやすい状態と見なされています。また、病気の初期症状や、やや病気が進行してからの症状として、体重の減少を伴うケースも多々あります。

 体重が徐々に減ってゆく場合はそれほど心配はいりませんが、一カ月の間に5キロも体重が減るなど急激に体が細ってきたら、注意が必要です。安易に自己判断せず、病院や診療所に出向いて、きちんと検査を受けることが大切となります。 

●やせる原因となる主な病気

■食欲がなくてやせるケース■

消化器系の疾患

 消化管である胃腸に病気があると、食欲不振に陥ると同時に、食べたものの消化・吸収も正常に行われなくなるため、やせてきます。消化器系の病気で多いのは、胃潰瘍(かいよう)と十二指腸潰瘍です。

 また、消化液や酵素を分泌する腺臓器である肝臓、膵臓(すいぞう)に、慢性肝炎、肝硬変、慢性膵炎などの疾患があるケースでも、食欲が減退して、やせてきます。

がん

 体のどの臓器、組織にできたがんでも、初期症状として体重が落ち、やせてきます。がん細胞が体の栄養を奪ってしまうために起こり、特に消化器系に発生したがんでは顕著です。末期になると、体がやせ細ってきます。

■食欲があるのにやせるケース■

糖尿病

 糖尿病の初期には太り出すことがありますが、放置して進行すると食欲があるのに体がやせてきて、のどの渇き、多尿などの症状が現れます。

 糖尿病は膵臓から出るインスリンの働きが悪くなり、血糖値が高くなる病気で、進行すると目、腎臓(じんぞう)、神経などに合併症を来す全身病。親や兄弟に糖尿病の人がいると、発症率が高くなります。

バセドー病(甲状腺機能亢進症)

 甲状腺ホルモンが過剰に分泌される病気がバセドー病で、代謝が活発になって消費カロリーが増えるため食欲が増すが、それ以上に代謝が激しいので、急激にやせてきます。

 動悸(どうき)がする、汗をかきやすい、手が震えるなどの症状も伴います。男女比で見ると、約1対4で女性に多く、多くは20~50代で発症します。

■その他のケース■

拒食症(神経性食欲不振症)

 拒食症は若い女性に多く、肥満に対する強い不安などが原因で食欲不振になり、食べても自ら吐いてしまうこともあります。その結果、極度のやせ、無月経などを引き起こします。

 本人には、やせの自覚がないことが多い、とされています。

過度のダイエット

 減量を目的とした自己流の食事制限によって、栄養不足、摂取エネルギー不足に陥って、極端にやせるケースもあります。貧血や肝機能障害などの合併症を引き起こす危険性もあります。 

●心掛けたい「やせ」対策 

■症状に応じて専門医へ

 思い当たることがないのに、一カ月で2~3キロ以上体重が減ったら、念のため内科を受診しましょう。

 ほかに伴う症状があれば、下記の表を参考にして症状、状態に応じた専門医へ出向きましょう。

    症状、状態

   疑われる病気

  受診する科

口が渇く、多尿

糖尿病

内科(代謝内分泌科)

脈が速い、汗が出る

バセドー病(甲状腺機能亢進症)

内科(代謝内分泌科)

長期の下痢

消化管吸収障害、消化管腫瘍(しゅよう)、膵炎

内科(消化器内科)

微熱、せき、たん

肺結核

内科(呼吸器内科)

貧血、高血圧、吐き気

慢性腎不全

内科(腎臓内科)

すぐ満腹になる

通過障害、食道がん、胃がん

内科(消化器内科)

食べられない、食べても吐く

拒食症(神経性食欲不振症)

心療内科、精神科

下剤、利尿剤、甲状腺製剤による副作用

内科

■バランスのよい食事を

 医者の検査を受けても特に異常が見当たらなければ、バランスのよい食事を心掛けるようにすることです。

 全体の摂取カロリーに占める糖質、脂肪、蛋白質の割合は、およそ3対1対1になるのがよいとされています。特に牛乳、卵、大豆など良質の蛋白質を取りましょう。加えて、食事は一日3回、規則正しく取ることが大事です。

■ストレスの発散を

 ストレスが原因となって、やせるケースもあります。適度にストレスを発散しましょう。

■夏ばてでやせたら

 最近の夏ばての傾向として、体温調節機能の不調からくるケースが増えています。この不調は、冷房の利いた室内や車内と屋外の暑さとの温度差によって、引き起こされるものです。

 冷房で体が冷えると、血液循環が悪くなり、肩凝り、腰痛なども悪化します。体を内側から温めるショウガ、ネギ、サフラン、シナモンなどが入った温かい料理を取りたいもの。紅茶、カボチャ、エビ、牛肉も、体を温める食材とされています。

 一方、屋外などで多量に汗をかく人は、十分な水分、塩分に加え、豚肉、大豆製品、胚芽(はいが)米、ライ麦パン、ゴマ、ピーナツなど、ビタミンB1が多く含まれる食品を積極的に取りたいものです。

 ビタミンB1の吸収を助けるアリシンが多く含まれたニンニク、ニラ、タマネギなどを一緒に取ると、より効果的です。

 また、汗とともにビタミンCも失われるので、アセロラ、レモン、赤ピーマン、トマト、キウイなど、ビタミンCの豊富な果物や野菜がお勧めとなります。

2022/08/25

🇵🇦侏儒症

何らかの原因によって身長が著しく低くなる疾患

侏儒(しゅじゅ)症とは、何らかの原因によって身長が著しく低くなる疾患。低身長症とも呼ばれています。

身長が著しく低くなる原因はいろいろあり、ホルモンの不足によって起こる場合や、ターナー症候群という性染色体の異常によって発生する疾患によって起こる場合、軟骨異栄養症という生まれ付き骨に異常があって低身長、短指症になる疾患によって起こる場合などがあります。

ホルモンの不足によって起こる場合にも、成長ホルモンの不足によって起こる場合と、甲状腺(こうじょうせん)ホルモンの不足によって起こる場合とがあります。このうち、成長ホルモンの不足による場合を成長ホルモン分泌不全性低身長症、あるいは下垂体性小人(こびと)症といい、最もよく知られています。

成長ホルモンは主として、脳の中にある下垂体(脳下垂体)という器官から分泌され、骨の両端にある骨端線に作用して骨を成長させる働きを持っています。この成長ホルモンの分泌量が不足することにより、骨が成長できず、低身長になります。

低身長は身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義され、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまりますが、この低身長の中で成長ホルモン分泌不全性低身長症は5パーセント以下です。

侏儒症の原因はいろいろありますが、最も多いのは分娩(ぶんべん)時の異常です。骨盤位分娩(逆子)で、しかも仮死を伴って生まれた男児に多い傾向がみられます。ほかに、少し大きくなってから、脳に腫瘍(しゅよう)ができ、成長ホルモンの分泌が低下するために低身長になることもあります。非常にまれには、成長ホルモンや成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常や、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常によって、低身長になることもあります。

生まれた時には、身長、体重とも健康な赤子と変わりがないのが普通です。しかし、3歳ごろになると、ほかの子供と比べて体が小さいことに家族が気付くようになります。知能の発育は、正常です。

身体的特徴は、体全体の均整がよくとれていて、成人しても顔が丸くて子供っぽく、性器は幼児型のままのことが多いようです。声変わりもなく、陰毛やわき毛もないのが普通。これは性腺刺激ホルモンの分泌も同時に障害されることが多いためです。

このほか、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンや副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモンも低下していることがあります。

現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる時、学校での背の順が前になってくるような時は、成長ホルモン分泌不全性低身長症以外のホルモンの疾患による侏儒症が隠れている時がありますので、内科、内分泌代謝内科、小児科の専門医を受診します。

侏儒症の検査と診断と治療

医師による診断は、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に診断します。病因を調べるために、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。侏儒症と鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺機能低下症による低身長などがあります。

医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することが最もよい方法です。このホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は両親が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日寝る前に皮下注射します。

1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇺🇸肥満

■内臓脂肪型の肥満に注意を

●病気にかかる割合が倍増

あなたは最近、おなかの回りが気になりませんか? 現代人の多くが悩んでいるのが太りすぎで、肥満に伴う生活習慣病も増加しています。

 この肥満とは、体内に占める脂肪の割合が多い状態のことです。食事から得た摂取エネルギーが消費エネルギーよりも多い時、脂肪細胞は余ったエネルギーを蓄えます。その状態が続くと、脂肪細胞の数が増え、一つ一つの脂肪細胞も大きくなるのです。肥満の人においては、エネルギーの摂取、利用、蓄積、放出というメカニズムが、正常に機能していないことになります。

 肥満には、皮下に脂肪がたまる「皮下脂肪型」と、肝臓や腸管などの周囲に脂肪がたまる「内臓脂肪型」があります。

 皮下脂肪型肥満は若い人や女性に多く見られ、付きにくくて落ちにくいのが皮下脂肪の特徴。

 一方、内臓脂肪型肥満は男性や閉経後の女性に多く見られ、付きやすくて、かつ落ちやすいのが内臓脂肪の特徴で、40~50代から徐々に増えていく傾向があります。

 後者の内臓脂肪型の肥満が特に健康に悪影響をおよぼすことが、近年わかってきました。このタイプの肥満の人は、健康な人に比べて1・5~2倍近く、病気にかかりやすいと見なされています。   

●内臓脂肪型肥満とは 

 内臓脂肪が増加すると、脂肪細胞から糖尿病、高血圧、高脂血症、動脈硬化などを引き起こす「生理活性物質」が、体内に多量に放出されます。高尿酸血症や脂肪肝にもつながります。

 その他の肥満のリスクを挙げれば、まず心臓などの臓器に負担がかかります。腰や脚の関節も痛めやすくなります。脂肪がたまって胸郭の動きが悪くなると、呼吸の力が弱まるため、睡眠時無呼吸症候群を引き起こすケースもあります。女性の場合は、生理不順を招きやすくなります。 

 太り方で肥満の型を見分ける場合、下半身に脂肪が付いた「洋ナシ型」は皮下脂肪型肥満、おなかの回りがポッコリ張り出してくる「リンゴ型」、いわゆる太鼓腹は内臓脂肪型肥満の可能性が高い、と考えられます。

 次に、肥満男性の場合、おなかを指でつまんで、つまめる脂肪が薄いほど皮下脂肪が少なく、危険な内臓脂肪がたまっています。特に、おへそ回りの腹囲が85センチ以上の男性は、注意が必要です。

 女性の場合、女性ホルモンの働きで内臓脂肪は付きにくいのですが、肥満になると皮下脂肪とともに内臓脂肪も増えます。そのため、腹囲が大きいほど内臓脂肪がたまっており、特に、おへそ回りが90センチ以上の女性は、注意が必要になります。 

●肥満度チェック

BMI(体格指数)

 体重と身長から肥満度を判定するのがBMI(=Body Mass Index)。成人にのみ当てはまり、個人差があるので目安として利用します。

 BMI=体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)

 日本肥満学会による判定基準では、

 18.5未満    ⇒⇒やせ 

 18.5以上25未満⇒⇒普通(22が最も有病率が低い)

 25 以上    ⇒⇒肥満

体脂肪率

 電気が流れにくいという脂肪の性質を利用し、体に微弱な電流を流して計測するのが体脂肪率。正確に測ることは難しく、あくまでも目安として利用します。内臓脂肪などの状態をきちんと調べるためには、CTスキャン検査が必要となります。

 成人男性 25パーセント以上⇒⇒肥満

 成人女性 30パーセント以上⇒⇒肥満

■心掛けたい「肥満」対策

●体重を5パーセント減らす

健康で長生きするためにも、肥満の解消は重要なことです。肥満により糖尿病になった人でも、体重を5パーセント減らすだけで、かなり症状が改善します。例えば、体重が80キロの人ならば、月に1キロ弱ずつ減らすようにして、3カ月から半年間で76キロにすればよいでしょう。

急な減量を試みると、必要な栄養素を摂取することができず、かえって体調を崩してしまうので、ゆっくりと減らすように心掛けましょう。

●バランスのとれた食事を

食事の内容は、年齢相応の適切な摂取カロリーを考え、栄養バランスのよいものに。砂糖や脂肪分のとりすぎに注意し、緑黄色野菜を積極的にとります。

反対に、まとめ食い、とりわけ一日の食事量の半分以上を夜間に食べるのは、内臓脂肪を蓄積するので禁物。

また、タバコを吸うと体脂肪の分布が変化し、内臓脂肪が付きやすくなるので、注意しましょう。

肥満が気になる人は、毎回の食事量を2~3割減らし、ゆっくり、よくかんで食べることを実践しましょう。間食の多い人の場合は、毎食の食事をきちんととり、間食は量と時間を決めて1回に。

揚げ物、脂の多い物は、控えます。また、味付けが濃いとご飯もお酒も進んで、食べすぎにつながりがちですので、だしをしっかりとり、塩分、糖分を控えた薄味にしましょう。

ワカメ、寒天、ヒジキ、昆布などの海藻、青菜、根菜といった野菜類など食物繊維の多い食材を毎食、とり入れましょう。さらに、動物性脂肪を減らして、魚、豆類をとり、穀類は大麦やヒエ、アワといった雑穀などを加えて、食物繊維やミネラルを増やしましょう。油脂では、植物性のオリーブオイルや魚の油脂がお勧めです。

●有酸素運動を行う

肥満が気になる人にとっては、食事の見直しだけでなく、有酸素運動も必要です。運動不足になると、基礎代謝が減少し、貯蔵エネルギーが増えやすくなるからです。

運動を併せて行えば、筋肉を落とさず、さらに脂肪を燃焼することができます。短距離走や重量挙げのような無酸素運動は筋力を増やし、ウオーキングなどの有酸素運動は脂肪を燃やします。特に、内臓脂肪は運動で減りやすく、これもまた欠かせないのです。

どなたにもお勧めできる運動としては、ウオーキング、ジョギング、ラジオ体操、水泳などの全身を使う有酸素運動が挙げられます。これらの運動は週に3回以上行う必要があり、軽い運動なら毎日から1日置きとし、休日などを利用して十分な時間をとるのがよいでしょう。

運動の強度については、いきなり強い運動をしないこと。軽い運動から始めて、徐々に慣らしていくのがよいでしょう。ウオーキングを主体にして、ダンベルなどを利用した筋力トレーニング、ストレッチも併用するのが、一番のお勧めです。

🇷🇴症候性肥満

何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こる肥満

症候性肥満とは、何らかの疾患や薬物の影響を受けて起こるタイプの肥満。二次性肥満、随伴性肥満とも呼ばれます。

一方、原因となる特別の疾患がなくて起こるタイプの肥満は、原発性肥満、あるいは単純性肥満と呼ばれています。こちらのタイプの肥満の多くは、食べすぎと運動不足が主な原因となって起きます。肥満している人の大部分が原発性肥満であり、症候性肥満は肥満者全体の5パーセント程度にしか認められません。

症候性肥満の原因も過食によるものですが、基礎にある疾患が食欲を増加させて脂肪を蓄積し、肥満してきたものです。基礎にあって影響を与える疾患としては、ホルモンの疾患や遺伝性の疾患、食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患が挙げられます。

ホルモンの疾患では、ホルモン作用の高進や低下によってエネルギーの摂取や消費のバランスが障害され、症候性肥満を発症します。遺伝性の疾患では、遺伝的要因の異常によりエネルギー代謝調節系が破綻し、症候性肥満を発症します。視床下部の疾患では、食行動の調節機能を有する視床下部の器質的および機能的異常に基づいて、症候性肥満を発症します。

基礎にあって影響を与える薬物としては、抗精神病薬や副腎(ふくじん)皮質ホルモン薬などがあります。抗うつ剤の服用による副作用で食欲が増して肥満になることがあり、膠原(こうげん)病などで用いられる副腎皮質ホルモン薬は使用量が多いと肥満を起こします。

ホルモンの疾患には、インスリノーマ(インスリン産生膵島〔すいとう〕細胞腫〔しゅ〕)、高インスリン血症、クッシング症候群、甲状腺(こうじょうせん)機能低下症、性腺機能低下症があります。

インスリノーマでは、インスリンによる低血糖発作を回避するために過食を生じ、症候性肥満を発症します。高インスリン血症による脂肪蓄積作用も、症候性肥満に関与します。しかし、多くのケースで肥満は顕著ではなく、インスリン自体は中枢神経系で摂食抑制性に働いています。 クッシング症候群では、副腎皮質からグルココルチコイドというホルモンが過剰に分泌され、丸顔と上半身の肥満を特徴とする症候性肥満を発症します。甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモンの低下によって体重増加を来します。この体重増加は脂肪蓄積ではなく、体液貯留やムコ多糖類の蓄積が原因であるとされます。

遺伝性の疾患には、ターナー症候群、糖尿病などがあります。食欲中枢を刺激する脳の視床下部の疾患には、松果体腫瘍(しゅよう)、フレーリッヒ症候群、キアリ・フロンメル症候群といった疾患があります。

症候性肥満の検査と診断と治療

内科の医師は、肥満者を診察する際には、今までの病歴や家族歴、生活歴、身体検査の結果から、症候性肥満か原発性肥満かを区別します。

症候性肥満の場合は、主として原因となっている疾患の治療が必要になるので、入院の上、精密検査を行うことが必要になります。ホルモンの疾患による肥満や、視床下部の疾患による肥満では、各種内分泌学的検査、神経学的検査、CTやMRIなどの画像検査が必要となります。遺伝性の疾患による肥満、および遺伝性の視床下部の疾患による肥満では、必要に応じて染色体検査や各種遺伝子の検査を行います。

症候性肥満に対する治療は、原因となっているクッシング症候群、甲状腺機能低下症などの疾患の治療が中心になります。ホルモンの疾患に対しては、ホルモン補充療法を行います。薬剤の服用による肥満に対しては、薬剤の減量、または体重増加の少ない、ほかの薬剤に変更します。

肥満自体には原発性肥満と同様に食事療法、運動療法および行動療法を用いますが、遺伝性の疾患による肥満など知能障害を伴うケースでは、それらの遂行が困難な場合も多くなります。

2022/08/23

🇲🇩神経性過食症

神経性過食症とは、神経性の摂食障害の一つで、食欲が異常に増し必要以上に食べる病気です。神経性大食症、過食症とも呼びます。

過食は気晴らし食いから発展し、過食症のみを呈することもあります。多くはやせるためのダイエットの反動から発展し、神経性食欲不振症の部分症状としてみられる過食症です。

過食してしまった自分に強い嫌悪感を覚え、翌日からまた厳しい食事制限をしますが、朝食、昼食は何とかコントロールできても、夜になると食欲に抵抗できず過食してしまうという、悪循環に陥る傾向が認められます。

拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあります。一度に大量を食べ、ほとんどの場合、自分の指を喉(のど)に入れて自己嘔吐をします。頻繁に行うと、手の甲の歯が当たる個所に吐きだこができます。

人格障害が背景にあるケースもあり、難治性なので、入院治療が原則となります。精神療法、行動療法を気長に行い、人間的な成熟を図ったり、悩みを解決したり、食に関する片寄った習慣や考え方を徐々に是正していくことが大切です。

🇧🇾神経性食欲不振症

神経性食欲不振症とは、どこにも病変が認められないのに、心因性の反応によって食欲不振に陥り、著しいやせ症になることをいいます。思春期前後の若い女性に多く発症し、思春期やせ症、神経性無食欲症、神経性食思不振症、拒食症とも呼びます。

母子関係に問題があるなど何らかの精神的原因によって極度に食欲を失うか、自分自身で太りすぎだと思い込んだり、美容上の観点から肥満を病的に恐れて節食や断食をすることから、やせが始まります。拒食と過食、嘔吐(おうと)を繰り返すケースもあります。心因的な反応ばかりではなく、視床下部にある食欲中枢の機能に異常があるのではないかとの見方も近年、出ています。

症状としては、高度のやせのほかに、月経がなくなり、便秘が強く、皮膚の色が真っ白になり、体毛が産毛のように細く柔らかくなります。内分泌疾患で体重の減少を来すケースに比較して、肉体的な活動力もあり、耐久力もあることが特徴です。

医師による治療では、根気よく悩みの原因を聞くことと、精神的指導が必要になります。本人には病気の意識がなく、やせたいという願望が強いため、著しくやせてしまっていても、あまり異常であることが自覚できません。従って、治療意欲もないため、病気の治療は難しく、期間も長引く場合が多いようです。

食べたいものを食べさせ、少しずつ摂取エネルギーを増やしていきます。頑固な便秘、胃のもたれに対しては、下痢や便の排出を促す補助薬が用いられます。母子関係など家庭に問題のみられるケースでは、家族からの隔離を目的に入院治療が原則となります。

🗼生活習慣病

健康に害のある生活習慣を長年続けることで、発症する病気です。「食習慣、運動習慣、休養、喫煙、飲酒等の生活習慣が、その発症・進行に関与する疾患群」と定義され、肥満症、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、心臓病、歯周病、高尿酸血症、骨粗鬆(しょう)症、ガンなどが含まれます。生活習慣の悪化で、さまざまな疾患を生じ、各疾患は相互に関連しています。

かつては「成人病」と呼ばれていましたが、加齢よりも生活習慣の要因が大きく、若い人でも発症することから、約40年ぶりに「生活習慣病」と名称が改められました。

2022/08/22

🇫🇰成長ホルモン分泌不全性低身長症

成長ホルモンの不足によって、身長が著しく低くなる疾患

成長ホルモン分泌不全性低身長症とは、身長が著しく低くなる疾患。低身長症、あるいは侏儒(しゅじゅ)症とも呼ばれ、以前は下垂体性小人(こびと)症とも呼ばれていました。

低身長症になる原因はいろいろあり、中にはターナー症候群という性染色体の異常によって起こる疾患や、軟骨異栄養症という生まれ付き骨に異常があって低身長、短指症になる疾患など、ホルモンと直接関係のないものもあります。

ホルモンの不足によって起こる場合にも、成長ホルモンの不足によって起こる場合と、甲状腺(こうじょうせん)ホルモンの不足によって起こる場合とがあります。このうち、成長ホルモンの不足による場合を成長ホルモン分泌不全性低身長症といいます。 成長ホルモンは、主として脳の中にある下垂体という器官から分泌されます。

低身長は身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義され、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまりますが、この低身長の中で成長ホルモン分泌不全性低身長症は5パーセント以下です。

原因はいろいろありますが、最も多いのは分娩(ぶんべん)時の異常です。骨盤位分娩(逆子)で、しかも仮死を伴って生まれた男児に多い傾向がみられます。ほかに、少し大きくなってから、脳に腫瘍(しゅよう)ができ、成長ホルモンの分泌が低下するために低身長になることもあります。非常にまれには、成長ホルモンや成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常や、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常によって、低身長になることもあります。

生まれた時には、身長、体重とも健康な赤子と変わりがないのが普通です。しかし、3歳ごろになると、ほかの子供と比べて体が小さいことに家族が気付くようになります。知能の発育は、正常です。

身体的特徴は、体全体の均整がよくとれていて、成人しても顔が丸くて子供っぽく、性器は幼児型のままのことが多いようです。声変わりもなく、陰毛やわき毛もないのが普通。これは性腺刺激ホルモンの分泌も同時に障害されることが多いためです。

このほか、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンや副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモンも低下していることがあります。

現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる時、学校での背の順が前になってくるような時は、成長ホルモン分泌不全性低身長症以外のホルモンの疾患が隠れている時がありますので、内科、内分泌代謝内科、小児科の専門医を受診します。

成長ホルモン分泌不全性低身長症の検査と診断と治療

医師による診断は、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に診断します。病因を調べるために、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺機能低下症による低身長などがあります。

医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することが最もよい方法です。このホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。

本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は両親が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日寝る前に皮下注射します。

1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。

🇰🇾清涼飲料水ケトーシス

継続して大量に清涼飲料水を摂取することで、血糖値が上昇し、倦怠感や昏睡などが起こる疾患

清涼飲料水ケトーシスとは、ペットボトルに入った清涼飲料水やスポーツドリンクなどを大量に飲み続けることによって、糖尿病の悪化した状態が起こる急性疾患。この清涼飲料水ケトーシスは軽症の場合を指し、重症の場合は清涼飲料水ケトアシドーシスと呼びます。俗には、ペットボトル症候群と呼ばれます。

継続して大量に、糖分の多いジュースなどの清涼飲料水を摂取することで、水に溶けている糖分は吸収されやすいために血糖値が上昇し、血糖値を一定に保つホルモンで、膵臓(すいぞう)から分泌されるインスリンの働きが一時的に低下します。インスリンが欠乏すると、ブドウ糖をエネルギーとして使えなくなり、脂肪などを分解します。その際に、脂肪酸からできるケトン体と呼ばれる代謝成分が、血液中に過剰に増えます。ケトン体は酸性物質で、血液が酸性化(ケトーシス)したり、ひどく酸性化(ケトアシドーシス)したりして、清涼飲料水ケトーシスが発症します。

症状としては、のどが異常に渇くことから多量の清涼飲料水を欲しがるようになり、上昇した血糖値によって尿量が増え、体重が急激に減少し、倦怠(けんたい)感を覚えます。週単位から1、2カ月の経過で発症し、意識の混濁や昏睡(こんすい)に陥るケースもあります。

発症者の多くは10~30歳代の男性ですが、高齢者にも起こり得ます。発症する人には血縁者に糖尿病のある場合が多く、本人も糖尿病の遺伝素因を持っていると考えられます。 また、特に発症しやすいのは肥満体型の人で、この糖尿病予備軍と呼ばれる人はインスリンの働きが悪く、よりリスクが高まります。

もともと糖尿病の遺伝素因を持っていたり、軽度の糖尿病の人が糖質を多量に摂取していると血糖値が高くなります。すると、高血糖によるのどの渇きから、さらに清涼飲料の摂取が進むという悪循環が形成されます。

肥満が男性ほど多くなく、人前で清涼飲料水をあまりがぶ飲みしない女性より、男性の方が圧倒的に多くなっており、年々増えています。清涼飲料水ケトーシスが報告され始めたのは、ペットボトルと自動販売機が普及し、清涼飲料水を飲みやすくなった1980年代半ばからです。

一般的な清涼飲料水は、1リットル当たり100グラム前後の糖分が含まれていると考えられます。角砂糖1個が5グラムとすると、1リットルの清涼飲料水をがぶ飲みすると、角砂糖20個をかじっているのと同じことになります。また、スポーツ飲料やフルーツ果汁の入った野菜ジュースなどにも、糖分は入っています。

のどが非常に渇く、多量の水分を欲する、急激な体重減少といった異常に気付いたら、早めに医療機関を受診することです。

医師による治療では、血液中の糖分を低下させるホルモンのインスリンを静脈に注射し、血糖値を下げます。この場合、回復までは通常1カ月程度かかります。

日常の予防法としては、日ごろから、糖分を取りすぎなようにすることです。糖尿病患者の場合は1日当たりの砂糖摂取量は10グラム以下が目安とされ、糖分を含む飲料水を控えますが、そうでない人は知らずにたくさん飲んでしまう可能性があります。暑い日が続き、冷たい飲み物がおいしい夏場の水分補給には、水やミネラルウォーター、お茶などの、糖分の入っていない飲み物に変えることが勧められます。

2022/08/21

🇧🇳先端巨大症

骨の発育が止まった後に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰分泌されて起こる疾患

先端巨大症とは、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されるために起こる疾患。末端肥大症とも呼ばれます。

この先端巨大症は、骨の末端部分の骨端線が閉鎖して骨の発育が止まった後、すなわち思春期が終了した後に起こります。一方、骨端線が閉鎖する前の発育期に、脳下垂体から成長ホルモンが過剰に分泌されると、巨人症が起こります。先端巨大症、巨人症とも大部分は、脳下垂体に腫瘍(しゅよう)ができ、そこから成長ホルモンが過剰に分泌された場合に起こります。

脳下垂体に成長ホルモンを作る腫瘍が生じる原因ははっきりわかってはいませんが、もともと成長ホルモンを作っている細胞が腫瘍化して、成長ホルモンを過剰に産生、分泌するようになるとの考えがあります。膵臓(すいぞう)や肺に、まれに発生する特定の腫瘍でもホルモンが産生され、脳下垂体を刺激して過剰な成長ホルモンが作られこともあります。

先端巨大症は多くの場合、骨の発育が止まって長い年月が経過した30〜50歳で発症します。発症すると、手足が大きくなり、特有な顔や体形を示します。普通、少しずつ変化が生じるために、自分や周囲の人が気付くころにはかなり進んでいることも多いようです。

手足が大きくなるために、より大きいサイズの指輪、手袋、靴、帽子が必要になります。あごの骨の成長過剰で、あごが突き出ます。声帯の軟骨が厚くなるため声は太く、かすれます。肋骨(ろっこつ)が肥厚すると、樽(たる)のように胸板が厚くなります。関節の痛みがあり、長年経過してから体が不自由になる変形性関節炎になることがあります。

舌は肥大して、溝ができます。体毛は硬く濃くなり、皮膚の肥厚で増加します。皮膚の皮脂腺(せん)と汗腺は肥大し、大量の発汗と不快な体臭を発します。心臓が肥大し、機能が著しく損なわれると、心不全を起こすことがあります。時には、肥大した組織が神経を圧迫し、腕や脚に不快な感触や脱力感を覚えます。目から脳へ情報を伝える神経も圧迫されることがあり、視覚、特に視野の外側が損なわれます。脳が圧迫されると、ひどい頭痛が生じることがあります。

そのほか、性機能の低下、女性の場合は無月経などの症状を生じることもあります。また、糖尿病や高血圧症で治療中の人の中に発見されることもあります。

先端巨大症では腸のポリープ、悪性腫瘍、糖尿病、心血管系の合併症が多くみられ、そのまま放置しておくことは危険なので、早期に治療が必要です。 内科ないし内分泌科の専門医の診察を受けて下さい。

先端巨大症の検査と診断と治療

医師による診断は、症状、血中ホルモンの測定、および画像検査により行われます。検査では、まず血中の成長ホルモンを測ります。ブドウ糖液を飲んで、血中の成長ホルモンを測定する検査も行われます。血中の成長ホルモンは正常者ではブドウ糖により低下しますが、先端巨大症では低下が認められません。また、血中の成長ホルモンは分泌が不規則なために、最近は、成長ホルモンにより作られるインスリン様成長因子(IGF―I)というホルモンの信頼性が高いといわれており、診断のために測定されています。

画像検査として、X線写真で骨や軟部組織の肥厚の評価をし、MRIやCTで脳下垂体の腫瘍を見付けることも重要です。

医師による治療は、第一に手術が考慮されます。鼻腔(びくう)から脳下垂体と接している骨を削り、脳下垂体の腫瘍を摘出する方法が一般的に行われています。腫瘍が小さいと完治させることも可能ですが、大きい場合や周囲に広がっている場合は、完全に取り除くことは難しくなります。

その場合は、放射線や薬による追加治療が行われます。コバルトやリニアックを照射する放射線治療では、効果が出るまでに数年かかり、ほかの脳下垂体ホルモンの分泌が低下することがあります。多くの場合、定位手術的照射という直接的照射治療が、治療効果を早く得るため、そして正常な脳下垂体組織を残すために行われています。

薬による治療でも、時にはブロモクリプチンなどのドーパミン作用薬が有効で、錠剤を服用することで成長ホルモンの量を減らせます。最も有効なのは、成長ホルモンの産生と分泌を正常に遮断するソマトスタチン系のホルモンの皮下注射です。注射薬にはオクトレオチドや、持続型インスリンアナログもあり、1カ月に1回程度の投与ですみます。これらの薬で治癒するわけではありませんが、使用し続けている限り、多くの人で先端巨大症を制御する効果があります。

🇧🇩先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)

●生まれつき甲状腺の働きが弱い疾患

先天性甲状腺(せん)機能低下症とは、生まれつき甲状腺の働きが弱いために、甲状腺ホルモンの分泌が不足している疾患。知能低下や発育障害が起こる重症から軽症まで、症状の出方はさまざまです。別名、クレチン症。

発生頻度は、出生児5000~6000人に1人の割合と推測されています。男女比は1:2で、女児が多いようです。

胎児期における発生の異常によって、甲状腺そのものが形成されていない、甲状腺があっても十分な大きさがない,甲状腺が舌根部など別の場所にあって働かない、甲状腺があっても甲状腺ホルモンの合成に障害があるなどのために、甲状腺ホルモンが不足の状態になります。まれに、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に、原因があるケースもあります。

出生時体重は正常ですが、次第に成長、発達が遅れてきます。新生児黄疸(おうだん)から引き続き、黄疸がなかなかとれません。

顔つきは特徴があり、まぶたがはれぼったく、鼻は低く、いつも口を開け、大きな舌を出しています。これをクレチン顔貌(がんぼう)と呼びます。皮膚は乾燥し、あまり汗をかかず、腹部は大きく膨れています。また、臍(さい)ヘルニア、頑固な便秘があります。

また、四肢、特に手足の指が短いことが特徴的です。周囲に興味を示さず、あまり泣かずによく眠ります。体動も不活発で、おとなしい子供です。

これらの症状は乳児期以後に認められるものが多く、新生児期にははっきりした症状を示しにくいものです。

そのまま放置しておくと、運動機能の発達の遅れ、発育障害がみられ、おすわりや歩行が遅れ、知能も障害されます。また、骨の成熟が著しく遅れ、身長が伸びずに小人症になります。

●先天性甲状腺機能低下症の検査と診断と治療

現在の日本では、新生児の集団スクリーニングが全国的に行われており、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)の症状が現れる前に、ほとんどが発見されます。

この集団スクリーニングは生後5~7日に、足の裏から一滴の血液を濾(ろ)紙で取り、血液中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)の測定によって行われます。このスクリーニングのみでは、甲状腺刺激ホルモン(TSH)遅発上昇型などの症例や、中枢性(下垂体性)、視床下部性の機能障害に原因があるケースが見逃されますので、症状があれば要注意です。地域によっては、遊離サイロキシン(FT4)の測定を同時に行っています。

甲状腺刺激ホルモン(TSH)が高値であると、再採血あるいは精密検査になります。集団スクリーニングで精密検査の通知が届いたら、速やかに指定された医療機関を受診します。

医療機関によっては、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離サイロキシン(FT4)などの再検査、大腿(だいたい)骨遠位骨頭核のX線検査、甲状腺の超音波検査などを行います。一般に、先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)では骨の発育が遅延し、大腿骨遠位骨頭核が出現していないか、小さいと見なされています。

一過性甲状腺機能低下症、一過性高TSH血症、ごく軽度の先天性甲状腺機能低下症(クレチン症)との区別のため、母親の甲状腺疾患、母親がバセドウ病の場合には抗甲状腺薬内服、胎児造影、イソジン消毒などによるヨード大量曝露(ばくろ)の有無などが、確認されます。

症状がそろっていて、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が高く、甲状腺ホルモン値が低いと、診断が確定します。 

診断が確定したら治療を開始し、1日1回、甲状腺ホルモン剤の内服を行います。一般に、生後3カ月以内に薬剤の内服が開始できれば、知能障害や発育障害を残さずに正常の発達を期待できますので、経過を見ながら薬剤の量を加減します。生後12カ月以後では、知能障害を残してしまいます。

🇵🇰ターナー症候群

低身長を特徴とし、女性だけに起こる先天的な疾患

ターナー症候群とは、染色体異常のうちの性染色体異常の代表的な疾患で、女性にだけ起こる先天的な疾患。その最も大きな特徴は、背が低いことです。

他にも、首の回りの皮膚がたるんでいるためにひだができる翼状頸(よくじょうけい)、ひじから先の腕が外向きになる外反肘(がいはんちゅう)、乳房が大きくならない、初潮が来ないといった二次性徴欠如などの特徴があります。

ただ、症状にも個人差は大きく、例えば二次性徴に関して、中学生になっても性の発達が見られない女性が多い一方、ほぼ正常に二次性徴が現れるターナー症候群の女性もいます。中学生くらいまでは、低身長以外、あまり気になる症状がない女性も多くいます。また、合併症として、後天的に治療を要する症状が出てくる場合もあります。中耳炎、難聴、骨粗鬆(こつそしょう)症、糖尿病などがその例で、思春期年齢以降に起こることがあります。

ターナー症候群という疾患名は1938年、これを初めてきちんとまとめたアメリカの内科医ヘンリー・ターナーの名前に由来します。それから約20年後の1959年、染色体の検査が開発され、以後、ターナー症候群は染色体検査できちんと診断でき、幅広く見付けられるようになりました。しかし、この疾患は染色体異常が原因のため、今のところ疾患そのものを治す方法はありませんが、成長ホルモン治療で身長は改善し、二次性徴も女性ホルモン剤の使用で治療が可能です。

染色体は、体を作るすべての細胞の内部にあり、2つに分かれる細胞分裂の一定の時期のみ、色素で染めると棒状の形で確認できます。染色体には22対の常染色体と2対の性染色体とがあります。父親から22本の常染色体と1本の性染色体、母親から同じく22本の常染色体と1本の性染色体を受け継いで全部で46対の染色体を持つことになります。性染色体にはXとYという2つの種類があり、Xを2本持つ場合は女性に、XとYを1本ずつ持つ場合は男性になります。染色体は女性だと46XX、男性だと46XYということになります。

ターナー症候群の女性の場合の典型的な例は、45Xであり、Xが1つしかないものです。また、X染色体が2本あるのに先が欠けていたり、時には小さなY染色体の一部を持っていたり、46XXと45Xとが混ざり合っているモザイクを持つなど要因はさまざまです。

ターナー症候群の発生頻度は、1000~2000人に1人と推定されています。先天的な疾患の中では、かなり多いほうといえるでしょう。しかも、この染色体構造を持っていると圧倒的に流産の確率が上がりますので、受精卵の段階での発生数はかなりであろうと考えられます。

ターナー症候群の検査と診断と治療

早期発見が重要です。ターナー症候群という体質を正しく理解する時間的余裕が、本人と家族に得られます。背が低いのを少しでも高くしてほしいという女性に対して、よりよい治療成績も得られます。ターナー症候群における低身長症は成長速度が遅いわけですので、発見が遅れれば遅れるほど標準的な身長との差は開いて、せっかく治療しても取り戻すことが難しくなってきます。

また、低身長症の裏に重大な疾患が隠されていた場合、それを早い段階で見付けて、早く治療することが大事です。成長を促すホルモンを出す脳や甲状腺(せん)、あるいは栄養を体に活かす役割を担う心臓、腎(じん)臓、肝臓、消化器官そのものに異常がある場合は、一刻も早くその元凶を治していかなければなりません。

ターナー症候群の日本人女性は成長ホルモン治療を受けなかった場合、最終身長が平均139センチなので、治療希望の人には早期発見、早期治療は極端な低身長を防ぎ、最終身長を平均身長に近付ける上で効果が見られています。

ターナー症候群であることが確定すれば、そのすべての人に成長ホルモン治療が公費でできます。成長ホルモン治療の方法は、自己注射方法で、家庭で注射を行います。そのため、医師の適切な指示により注射をすることが必要です。年齢に応じ、夜寝る前に毎日、あるいは2日に1回注射をします。小さいうちは、親などが注射をし、自分でできるようになれば本人が行います。注射針はとても細く、痛みは少ないので心配ありません。

成長ホルモン注射は基本的に、最終身長に達するまで続けることが必要です。具体的には、年間成長率が1センチになった時か、手のレントゲンで骨端線が閉じる時まで、すなわち15〜16歳ころまで続けることになります。しかし、思春期の早い遅い、性腺刺激ホルモン分泌不全の有無によって治療期間が異なり、20歳を過ぎることもあります。身長の伸びの程度もさまざまな条件が関係してきますが、一般的にホルモン不足が重症なほど成長率も高いといえます。

成長ホルモン治療ではまれに、副作用がみられることもあります。注射した場所の皮膚が赤くなったり、かゆくなったり、注射部位がへこむこともあります。同じ場所ばかりに注射するのでなく、毎回注射する場所を変えることが重要です。 身長が伸びるのに伴って、関節が痛むこともあります。多くはいわゆる成長痛で、一時的なもので心配いりません。しかし、股関節の痛みが強い時や長時間続く時は、大腿骨(だいたいこつ)骨頭すべり症なども疑う必要があります。

一時期、成長ホルモン治療と白血病発症との関連性が心配されましたが、現在ではその関連性は否定されています。 原則として安全な治療薬ですが、治療中はもちろん、治療後も定期的に検査を行うなど、副作用がないかを専門医で調べる必要があります。

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