成長ホルモンの不足によって、身長が著しく低くなる疾患
成長ホルモン分泌不全性低身長症とは、身長が著しく低くなる疾患。低身長症、あるいは侏儒(しゅじゅ)症とも呼ばれ、以前は下垂体性小人(こびと)症とも呼ばれていました。
低身長症になる原因はいろいろあり、中にはターナー症候群という性染色体の異常によって起こる疾患や、軟骨異栄養症という生まれ付き骨に異常があって低身長、短指症になる疾患など、ホルモンと直接関係のないものもあります。
ホルモンの不足によって起こる場合にも、成長ホルモンの不足によって起こる場合と、甲状腺(こうじょうせん)ホルモンの不足によって起こる場合とがあります。このうち、成長ホルモンの不足による場合を成長ホルモン分泌不全性低身長症といいます。 成長ホルモンは、主として脳の中にある下垂体という器官から分泌されます。
低身長は身長SDスコアがマイナス2SD以下という統計の基準で定義され、同性・同年齢の100人に2~3人が低身長という定義に当てはまりますが、この低身長の中で成長ホルモン分泌不全性低身長症は5パーセント以下です。
原因はいろいろありますが、最も多いのは分娩(ぶんべん)時の異常です。骨盤位分娩(逆子)で、しかも仮死を伴って生まれた男児に多い傾向がみられます。ほかに、少し大きくなってから、脳に腫瘍(しゅよう)ができ、成長ホルモンの分泌が低下するために低身長になることもあります。非常にまれには、成長ホルモンや成長ホルモン放出因子の遺伝子の異常や、下垂体の発生に関係する遺伝子(転写因子)の異常によって、低身長になることもあります。
生まれた時には、身長、体重とも健康な赤子と変わりがないのが普通です。しかし、3歳ごろになると、ほかの子供と比べて体が小さいことに家族が気付くようになります。知能の発育は、正常です。
身体的特徴は、体全体の均整がよくとれていて、成人しても顔が丸くて子供っぽく、性器は幼児型のままのことが多いようです。声変わりもなく、陰毛やわき毛もないのが普通。これは性腺刺激ホルモンの分泌も同時に障害されることが多いためです。
このほか、下垂体から分泌される甲状腺刺激ホルモンや副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモンも低下していることがあります。
現在、低身長でなくても、成長率の低下がみられる時、学校での背の順が前になってくるような時は、成長ホルモン分泌不全性低身長症以外のホルモンの疾患が隠れている時がありますので、内科、内分泌代謝内科、小児科の専門医を受診します。
成長ホルモン分泌不全性低身長症の検査と診断と治療
医師による診断は、血液中の成長ホルモンの量や、ほかの下垂体ホルモンの量を測定し、総合的に診断します。病因を調べるために、下垂体とその周辺のMRI検査、CT検査を行うこともあります。鑑別すべきものに、思春期遅発症、甲状腺機能低下症による低身長などがあります。
医師による治療は、ヒト成長ホルモンを注射することが最もよい方法です。このホルモンは、以前はヒト下垂体から抽出していたので、その生産量に限りがありました。現在では、遺伝子工学技術を応用して大量に産出されるようになり、十分な治療が行われています。
本剤は注射液ですが、毎日少量ずつ投与するのが効果的で、自己注射が認められているため、小さい時は両親が、大きくなると本人が注射の打ち方を習い、毎日寝る前に皮下注射します。
1年目は平均8センチぐらいの身長の伸びが認められますが、2年目、3年目と伸びは落ちていきます。すぐに正常身長になるというような治療ではありません。長期治療した例の最終身長の平均は、男性で160センチ、女性で148センチ前後とされています。
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