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2022/09/19

🇹🇷視力障害

■目が見えにくいのはなぜ■
 物がはっきり見えなくなる原因は、加齢のせいばかりとは限りません。目の怖い病気が潜んでいる場合も、あり得るのです。
 人間の目には120万から130万本もの視神経があり、膨大な量の情報を処理していますが、この視神経は年を加えるとともに年間、約5000本が失われていきます。同時に、目の組織自体も活性酸素などによる老化現象によって年々、感度が悪くなっていきます。年とともに、レンズの働きを担う水晶体の弾力性も失われていきますので、物がはっきり見えにくくなっていくのは、ある程度、仕方のないことです。
 しかしながら、見えにくさの背後に、失明の危険がある病気が隠れている可能性も、あります。「私も年だから」と放っておくと、病気が進行して取り返しのつかないことになりかねません。
 最近の傾向としては、パソコンやゲームの画面に視線を集中して、まばたきが減るために角膜が乾燥するドライアイが、確実に増えています。目の病気に直接つながることはありませんが、注意が必要でしょう。
●自覚症状がある障害
《老眼》
●近くだけが見えにくい
 40代くらいから、水晶体の弾力性が失われ、ピントを合わせることができなくなります。そのために、30~35センチの読書距離に焦点を合わせることが、むずかしくなります。
《白内障》
●霧の中にいるようにぼやける ●まぶしく感じる
 水晶体を形成する蛋白質が白く濁る病気。水晶体の周りから濁っていくケースが多く、初期には視野の中心は正常に見えるために、気が付かないこともあります。60代で60パーセント、80代ではほとんどの人が、発症しています。
《飛蚊(ひぶん)症》
●黒い点や糸くずなどがちらつく
 硝子体(しょうしたい)という眼球を満たすゼリー状の組織の中に濁りが出て、眼球の動きとともに、濁りの影が網膜に落ちて、ちらつきが起こります。加齢による硝子体の変性が原因であれば、それほど心配はありません。
  注意が必要なのは、稲妻のような光が見えた後、飛蚊症が生じた場合です。網膜に穴が開いた可能性があり、早急な治療を要します。
●意識的に自分でチェックすべき障害
《網膜剥離(はくり)》
●見えにくい部分がある ●像がゆがむ
 網膜に穴が開き、液体が網膜の下に入って網膜が浮き上がり、はがれてしまうもの。どんどんはがれてしまうため、早期発見が大切となります。
 発症には二つのピークがあり、30代と50~60代。
《黄斑(おうはん)変性症》
●視野の中心が見えない ●ゆがんで見える ●視力が非常に落ちる
 年齢を加えるのにつれて、網膜の中心部にある黄斑部の働きが悪くなって、発症するもので、欧米では失明原因のトップです。日本でも増加傾向にあり、高齢化や食生活の欧米化が原因と見られています。
●自覚症状がなく危険な障害
《緑内障》
 眼球内部を満たす液体は、常に入れ替わっています。その出口がふさがれて眼圧が高くなるなどが原因となって、視神経が傷付き、視野が狭くなるもので、徐々に進行します。自分では気付かないことが多いので、眼科での眼圧、眼底、視野の検査が必要です。
  潜在的な患者は、40代以降で17人に1人と推定されています。
《糖尿病網膜症》
 日本人の失明原因で最も多いのが、実は糖尿病の合併症です。糖尿病は血管に大きな負担がかかるせいで、網膜に張り巡らされた細い血管がもろくなり、破れて出血すると視力障害を引き起こします。
 糖尿病の人は白内障、緑内障にもなりやすく、注意が必要です。
■対策へのアドバイス■
●毎日、片目ずつチェック
 通常のように両目で見ると、片目の視野が欠けていても、もう一方の目で補ってしまいます。手で片目を隠し、視野が欠けていないか、物がゆがんで見えないか、二重に見えないか、見え方が左右で違わないかなど、チェックを行いましょう。  毎朝、窓の外や鏡などを見て調べる習慣をつけましょう。
●定期検査を受ける
 緑内障では、眼圧が正常の範囲内に収まっているケースが6割を占めているため、内科の定期検診では見逃される場合もあります。眼圧に加えて、眼底と視野の検査をすればわかりますので、心配な人は眼科で検診を受けましょう。
 また、網膜には痛みの神経がないために、穴が開いたり、出血したりしても、痛みを感じません。とりわけ糖尿病や高血圧、動脈硬化がある人は、眼底の異常を起こしやすいので、年に2回の眼底検査を受けましょう。
●紫外線を避ける
 紫外線は化学作用が強く、目の老化を早めます。眼鏡をかけている人は、UV カットのものにし、白内障で光がまぶしく感じられる人は、波長の短い光をカットする黄色やオレンジ、赤系統のサングラスをかけるのがお勧めです。
●パソコンを使いすぎない
 人間は通常、1分間に15~20回のまばたきをして、目の乾燥を防いでいます。ところが、パソコンやゲームの画面を見ている際には、極端に減り、5回以下になってしまいます。目は乾燥すれば自然に涙が出て潤いますが、高齢になると涙の分泌が減るために、角膜が乾いてトラブルも起こりやすくなります。
 「目が疲れたな」と自覚したら、目薬を差すなどして注意しましょう。目薬の中でも、防腐剤の入っていない人工涙液の使用がお勧めです。
●緑黄色野菜をたっぷりと
 目の老化を予防する栄養素を含む食材としては、抗酸化作用のあるビタミンを含む緑色野菜と黄色野菜、いわゆる緑黄色野菜がお勧めです。
 また、ビタミンとともに最近、注目されているのがルテインで、ホウレンソウやブロッコリーなどに豊富に含まれています。ルテインは目の水晶体や黄斑部に分布していますが、人間の体内では作ることができないため、食物から摂取しなければなりません。
 ルテインが不足すると、白内障や黄斑変性症のリスクが高まると見なされています。

2022/09/08

🇬🇷出血性膀胱炎

出血を伴う膀胱炎で、多くは子供が罹患

出血性膀胱(ぼうこう)炎とは、肉眼で見えるほど尿に血が混じっており、白く濁る膿尿(のうにょう)の症状がない膀胱炎。急性出血性膀胱炎とも呼ばれます。

この出血性膀胱炎の原因は、ウイルスや細菌の感染、抗がん剤の投与、食物や薬のアレルギーなどですが、ウイルス性のものが多く、一般的に出血性膀胱炎といえばウイルスが原因とされます。

子供がかかりやすく、アデノウイルスによるものが一番多くみられます。アデノウイルスは夏風邪のウイルスの一種で、プール熱や流行性結膜炎などの原因としても知られています。このアデノウイルスによる出血性膀胱炎では、排尿時に痛みがあり、真っ赤な血尿が出ます。肉眼的血尿、排尿痛のほか、頻尿、残尿感や、微熱程度の発熱がある場合もあります。

また、白血病の治療に使われる抗がん剤のエンドキサンなどの投与によって、出血性膀胱炎を起こすことがあります。

子供が出血性膀胱炎にかかった場合、症状を口でいうことができないことがあります。トイレに行く様子がおかしかったり、おしっこをしてもじもじしているようなら、膀胱炎を疑ったほうがよいでしょう。基本的には自然治癒を待つことが多いのですが、出血性膀胱炎による血尿であることを判断し、別の大きな疾患であることを否定するためにも、小児科を受診することが勧められます。

医師による出血性膀胱炎の診断では、尿検査を行って、尿を赤くしているものが血液かどうかを調べたり、膀胱炎の時に出てくる細胞が現れているかどうかを確認します。また、尿のウイルスの種類を検査し、原因となるウイルスを検査することもあります。

アデノウイルスに効く薬は今のところないため、アデノウイルスによる出血性膀胱炎も安静と十分な水分摂取を心掛けて、自然治癒を待ちます。一般的に、肉眼的血尿の症状は数日で改善され、尿検査でも血尿は10日間ほどでなくなります。排尿痛、頻尿、残尿感も1週間以内になくなります。細菌性尿路感染症と区別が付くまで、抗生剤を内服することもあります。

抗がん剤など薬剤による出血性膀胱炎の場合、軽い血尿には止血剤を使用したり、原因の薬剤を中止することで改善されます。症状が重い場合、血尿中で血液が塊となり、尿閉を起こしたり、膀胱委縮が起こることもあります。薬を服用中は、水分を多めに取り、たくさん排尿し、膀胱炎を予防することが大切です。

2022/09/06

🇩🇪心臓病

■突然の胸の痛みは心臓病?■

心臓病は、日本人の死亡原因の第二位です。いつもの出勤途中の階段なのに、なぜか息が上がってしまったら、要注意です。

 私たち人間の心臓は、筋肉でできた袋のような臓器。一日に約10万回収縮し、全身に血液を循環させて、酸素や栄養を送り届けています。もちろん、心臓の拍動にも多くの酸素や栄養が必要ですが、心臓自身は心臓の中を通る血液からではなく、心臓の表面を取り巻く冠動脈から、血液を受け取っているのです。

この冠動脈が動脈硬化などによって狭くなったり、詰まったりすると、心臓が酸欠状態に陥ってしまいます。これが狭心症や心筋梗塞であり、突然死を招くことにもなる、いわゆる急性冠症候群です。 

人間は加齢に伴って、心臓病のリスクが高まります。急性冠症候群や不整脈など、近年、増加傾向にある心臓病をチェックしてみましょう。

●チェックすべき身体症状

 □いつも歩いている駅やバス停までの距離で、いつもと違って息が切れる。

 □階段の上り下りが、つらい。

 □胸骨(胸の中央、ネクタイの上半分あたり)の裏側が痛む。

 □肩凝りが、ひどい。

 □食後や飲食後に胸焼けや胃痛に似た痛み、異常な発汗がある。

 以上の、いつもと違う症状があったら、念のため内科医を受診しましょう。 

●心臓病が起こりやすい状況 

 □入浴時など、急に寒い所に出た時。

 □興奮したり、緊張した時。

 □病院、診療所で来院者が多い時期は12月と3月で、ストレスが関係すると見なされる。来院者が多い曜日は月曜と土曜で、多い時刻は午前 9時前後と午後9時前後。

●急性冠症候群

 ■労作性狭心症■

動脈硬化などで冠動脈が狭くなっている際に、一定の強さの運動や動作をすることで、心臓が酸欠状態になって、発症します。  

 ■安静狭心症■

  就寝中や早朝など、比較的安静にしている際に、発症します。心不全などを合併することも多く、労作性狭心症よりも重症です。 

 ●狭心症の症状●

  胸が苦しくなる。胸に圧迫感がある。

 胸の中央部、顎、肩、腕(特に左腕内側)などが痛む。 

 息切れや呼吸困難を伴うこともある。 

 発作は2~3分、長くても10分程度である。

 >>>>>>>初めての発作は見過ごしがちだが、一週間以内に心筋梗塞を起こす可能性もある。「治まったから」といって安心せずに、すぐ病院へ。          

 ■心筋梗塞■

  血栓や狭窄(きょうさく)などで、冠動脈が完全に詰まってしまい、心筋細胞が壊死(えし)してしまう。狭心症から移行するケースもあ れば、何の前触れもなく突然、起こる場合もある

  朝、活動して一息ついた際や、一日の活動を終えて、くつろいだ際などに起きやすい。朝方に、胸が苦しくて目が覚めた時も、要注意。

 ●心筋梗塞の症状●

 ◎「このまま死んでしまうのではないか」と思うほどの激痛がする。

 ◎胸全体、または中央が痛む。

 ◎激しい呼吸困難、冷や汗、吐き気がする。

 ◎発作は30分~数時間も続き、いったん治まっても、断続的に繰り返す。

 >>>>>>>一刻も早く病院へ。CCU(心臓疾患集中治療室)のある医療機関で、すぐ治療すれば助かる。 

●不整脈

 ■心室性期外収縮、心房性期外収縮■

  急に「ドキン」として、拍動が一回飛んだような打ち方をする。薬で治まり、それほどの心配はない。

 ■心房細動■

   心臓弁膜症などがあるとなりやすい。心不全や、心臓内に血栓ができて脳に飛び、脳塞栓を起こす危険がある。 

 ■心室細動、心室頻脈■

  命にかかわる危険な不整脈。拍動数が急上昇し、突然死を招くことも。特に心室細動という不整脈は危険で、心臓突然死の8割前後の原因 となっている。約3分以内に電気ショックを与えれば、4人に3人が救命できるとされているが、大半は間に合わず、年間の死者は約3万人 に上る。

 ●不整脈の症状●

  脈の速さや、リズムが乱れる。

 脈の乱れ方は、さまざまなパターンがある。

 めまいや息切れ、強い動悸がしたら、危険である。  

 >>>>>>>治療の必要はない安全なものがほとんどだが、中には危険な不整脈も。加齢による症状も多い一方、高血圧、腎不全、甲状腺の病気、貧血、無痛性の心筋梗塞などが見付かる場合もあるので、一度、病院で検査を。

■予防・対策へのアドバイス■

●発作が起きたら安静に

 発作が起きた時には、安静が原則です。直ちに動作を中止し、歩行中ならば立ち止まって休みます。

 横になると、下半身の血液が大量に心臓に戻ってきて、心臓に負担をかけます。立っている場合は、何かにつかまって前かがみの姿勢で休むようにします。寝ている場合は、上体を起こして座り、布団などにもたれるようにします。

 そして、なるべく早く病院へ行くことです。

●生活習慣病にならない注意を

 狭心症や不整脈などの心臓病は、男性は40代、女性は閉経後の50代から増加し始めますので、年一回は定期検診を受けましょう。心電図や心拍数の変動、連続心電図などで、潜在的な心臓病の有無を調べられます。

 高血圧、高脂血症、糖尿病などの生活習慣病が心臓病のリスクを高めるため、生活習慣病にかからないように留意し、もしかかってしまった場合には、そちらの治療をすることが先決となります。 

また、腹囲の大きい人も、要注意です。肥満は生活習慣病の危険因子であり、動脈硬化の原因にもなるからです。まず、身長(センチ)マイナス100(キロ)までの減量を心掛けて下さい。

●禁煙を必ず実行

たばこの煙を吸うと、血管が収縮して血圧が上昇、心拍数も増えて、心臓が急激に酸素を要求します。

喫煙者が狭心症や心筋梗塞で死亡する危険度は、非喫煙者の1・7~3倍ともいわれています。心臓に不安を抱えている人は、必ず禁煙の実行を。

他人にたばこの煙を吸う受動喫煙も、心臓病のリスクを高めてしまいます。

●動脈硬化を予防する食生活を

青魚に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)という成分は、血栓を溶かす作用があり、動脈硬化を予防します。タマネギに含まれる硫化アリルも、血液をサラサラにする作用があります。

血管の弾力性を保つ蛋白質、抗酸化作用のある緑黄色野菜と大豆製品も、必要不可欠です。

2022/08/30

🇵🇱歯周病

■歯周病とはどのような病気なのか?■

歯を取り巻く組織にかかわる歯周病は、生活習慣病の一つとされていて、40歳以上の日本人の約8割が悩んでいると見なされています。歯と歯茎(はぐき)の間の歯肉に、細菌の塊(プラーク)が異常繁殖して炎症を起こし、歯肉炎→歯周炎→歯槽膿漏へと進行する病気です。

歯肉の腫れ、出血、膿が出ていると口臭を伴います。放置しておくと、最終的には歯が抜けてしまいます。

歯周病の原因となる細菌として、十数種類が発症に深く関係しております。歯茎より上で繁殖して、歯肉炎を起こす好気性菌(酸素が必要な細菌)としては、アクチノマイセス・ビスコーサス、アクチノマイセス・ネスランディ、アクチノバジルス・アクチノマイセテン、オイコネラ・コロデンス、キャプノサイトファーガ・オクラセアなどがあります。

歯茎より下で繁殖して、歯周病を起こす嫌気性菌(酸素が不要な細菌)としては、ポルフィノモナス・ジンジバリス、プレボテラ・インテルメディア、アクチノバチラス・アクチノミセテムコミタンス、ポルフィロモナス・ジンジバーリス、フソバクテリウム・ヌクレアトゥム、トレポネーマ・デンティコーラなどがあります。

最近の研究によれば、これらの歯周病菌が全身の病気を引き起こすのではないかと疑われ、糖尿病、ガン、心筋梗塞などとの関連性も明らかになっています。

歯周病菌が血管に入り込み、体内を循環するために糖尿病の悪化の原因、心筋梗塞の引き金になります。歯周病の患者さんは、歯周病のない患者さんに比べ致命的な心臓発作を起こす危険が約2.8倍、早産の確率が7.5倍高いようです。

歯周病を原因とする炎症が、心臓の冠状動脈に脂性沈殿物を付着させ、血管腔が狭くなります。そこで、心筋梗塞や心内膜を起こしやすくなるのです。誤嚥性肺炎(黄色ブドワ球菌や緑膿菌)も起こすようです。

■歯周病の予防法と治療法■

1日1度10分間のブラッシングを行いましょう。特に歯と歯茎との間をブラッシングしてプラークを除去することが、必要となります。糸ようじなどのデンタルフロスで歯と歯の間を掃除することも、大切です。歯科医で定期的に検診を受け、歯垢や歯石を除去しましょう。

また、常に口の中を清潔にし、細菌の繁殖を防ぐために偏食をなくし、規則正しい食事をとりましょう。過労、ストレス、睡眠不足、喫煙もなくしましょう。

歯周病の薬物治療としては、嫌気性細菌に有効な抗生物質を歯周ポケットに直接注入する方法があります。麻酔をしてメスで切開し、同時に抗生物質の投与を行います。この他、レーザーで細菌数を減少させ、炎症組織を焼き取る手術も行われています。

最近では、3DS(デンタル・ドラッグ・デリバリー・システム、歯科薬剤到達システム)と呼ばれる方法が実施されています。歯型に合わせた樹脂製のマウスピースの内側に薬剤を塗り、1日5分間歯にかぶせることにより歯周病菌を殺菌して減少させ、歯周病をなくす治療法です。

2022/08/27

🇹🇿痔

成人の3人に1人が悩む国民病

虫歯に次ぐ「第2位の国民病」といわれているのが、お尻のトラブル、すなわち痔(じ)。成人の3人に1人が、その症状に悩んでいるとされています。

正確には、痔とは肛門(こうもん)周辺の病気の総称で、大きく分けて3種類、「痔核(じかく)」、「裂肛(れっこう)」、「痔瘻(じろう)」があります。最も多いのが痔核で、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

痔核は通称「いぼ痔」と呼ばれ、肛門周囲の静脈がふくらんで、こぶになったものです。直腸側にできる「内痔核」と、肛門部にできる「外痔核」があります。

内痔核は、肛門の中の直腸静脈に静脈血がたまって、感染と腫脹を起こしてできた静脈瘤です。排便、立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかると、静脈瘤ができます。不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて、だんだんうっ血し、直腸の静脈瘤が腫(は)れてきて、内痔核になります。

この内痔核の症状は、「出血」です。拡張した静脈瘤から出血し、赤い血が飛び散ります。進行すると、出血だけでなく、痔核がだんだん大きくなり、肛門の外に飛び出して「脱肛」になります。重症の内痔核による脱肛者には、医療機関での手術が必要になります。

外痔核のほうは、肛門の外側で目に見えるところに、皮下の静脈が血栓や静脈瘤を形成したもので、炎症を起こし腫れています。この外痔核も強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。

裂肛は通称「切れ痔」と呼ばれ、肛門部の皮膚が切れたり裂けたりした外傷で、ひりひりとした強い痛みがあるのが特徴です。便秘している硬い大便が、肛門を無理に通過する際に、肛門管の粘膜面が傷ついて出現します。「急性裂肛」の場合には、便を軟らかくしておけば治りますが、裂肛が慢性化すると、排便時には激痛が起こり、ひどくなると、排便後も痛みが長く続きます。

痔瘻の通称は「あな痔」で、肛門と直腸の境にあって、分泌物を出している歯状腺という組織が感染して、膿(うみ)がたまり、それが破れて出た跡に瘻管、ないし瘻孔と呼ばれる膿が出る穴ができる病気です。慢性化し、炎症を起こした穴からは、肛門の外側にいつまでも膿がじくじくと出ます。激しい痛みや発熱を伴い、肛門がんになることもあるので、100パーセント手術が必要とされています。

悪化させない生活習慣が大切に

肛門周辺に起こる炎症が、お尻のトラブルである痔の原因ですが、炎症を引き起こすのは「便秘」、「下痢」、「肉体疲労」、「ストレス」、「冷え」、「飲酒」といった生活習慣です。中でも、便秘や下痢などの排便の異常は、痔の最大要因となります。

便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、裂肛や痔核を招くもとになります。逆に、下痢の軟らかすぎる便も、痔瘻をつくる切っ掛けになります。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、抹消血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。

セルフケアと薬が治療の基本

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。

どんないい薬を使おうと、生活習慣を変えない限り、痔は治りません。手術が必要な痔瘻を除いて、生活習慣の改善と、薬で症状を軽くしていく保存療法が、治療の基本になります。

日常のセルフケアには、三つのルールがあります。第一には、病名がきちんと診断されていること。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えているので、「本当に痔なのか、ほかの病気は隠れていないのか」、専門の肛門科医に診察してもらうことが必要です。

とりわけ痔の場合、どんなに不快な症状があっても病院へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる病気ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

第二には、医師や看護師などの指導を受けて、計画を立てて行なうこと。第三には、長続きできる方法で行なうことです。

日常生活におけるセルフケアのポイントを挙げれば、排便のコントロールで、規則正しい便通習慣をつけることが大切です。便意を感じたら我慢しないでトイレに行くこと、便意がないのに息むと肛門に負担を強いるのでトイレは3分で切り上げることも、痔の予防や治療のために心掛けたい習慣です。

食物繊維を多くとるなど、食事を見直すことも大切。肉体疲労やストレスは痔を誘発するだけでなく、健康も損なうので、休養と睡眠を十分にとり、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスをはかるようにします。

冷え対策としては、冬よりも夏の冷房に要注意です。特に、電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫を。

 飲酒については、酒を断つ必要はありませんが、適量を心掛けましょう。アルコール代謝能力には個人差があるため、ほろ酔い程度が適量となります。

痔の検査と診断と治療

病院で医師が薬を使うのは、痔による痛みや出血、腫れを和らげるほかに、肛門内を薬の膜で覆って、排便時の刺激を減らす目的もあります。

日常生活のセルフケアと薬による保存療法を行なっても、効果や改善がみられないケース、再発を繰り返すケースでは、手術ということになります。とはいえ、なるべく手術をしないで治すのが医師側の主流となっていますし、最近では炭酸ガスレーザーによる、切らない手術で、痔核、裂肛、痔瘻を治療している施設もあります。

内痔核には、「保存療法」、「切らない治療法」として肛門を清潔にして、便秘や下痢にならないように便通を整える目的で、座薬や軟膏を使用したり、鎮痛剤や抗消炎剤を投与します。

この内痔核や脱肛の患者には、PPHと呼ばれる自動縫合器による直腸粘膜切除術が日本でも行なわれるようになり、普及しつつあります。PPHという新しい痔の手術法は、1993年にオーストリアのセントエリザベス病院の大腸・肛門外科部長により開発されたもので、治療の対象になるのは主に内痔核。特殊な専用機器で下部直腸粘膜にできた内痔核を上に押し上げ、機器で簡単に切除し、縫合します。手術後の肛門がきれいで、手術後の痛みが少ないのが特徴で、日帰り手術も可能ですが、日本では健康保険に採用されておらず自費となります。

 外痔核の場合、座薬や軟膏の塗布や温浴などにより多くの方が軽快しますが、なかなか治らない場合に手術が行なわれます。

痔瘻の場合、座薬や軟膏などの外用薬で出血や痛み、腫れなどの症状を和らげた上で切開処置しても、再発を繰り返し、なかなか自然治癒しません。手術で切り取るケースが、ほとんどとなります。 

痔の予防と痔を悪化させないための注意事項

1)お風呂は毎日入る

 2)肛門を清潔に保つ

 3)規則正しい便通習慣をつける

 4 )食物繊維を多くとり、便秘や下痢をしないように注意する

 5)トイレでは、強く息まない

 6)十分な休養と睡眠を心掛け、リラックスをはかる

 7)アルコールは適量、あるいは飲まない

 8)おしりを冷やさない

 9)長く座ったままの状態でいない

 10)便器は、シャワー付き・便座ヒーター付きを利用する

🇹🇿シーバー病

成長途上の軟骨がストレスを受け、踵の痛みが起こる疾患

シーバー病とは、スポーツを行っている8~12歳くらいの男子に多く見られ、運動時や運動後に踵(かかと)の痛みが起こる疾患。踵骨骨端(しょうこつこったん)症とも、踵の成長痛とも呼ばれています。

成長期には踵の先端部分に骨端核といわれる軟骨があり、踵骨腱(けん)ともいわれるアキレス腱と、足の土踏まずを形成する硬い膜である足底腱膜がついています。このためジャンプやダッシュ、ストップなど強い力が加わるバスケットボールやサッカーなどのスポーツだけではなく、長時間歩いたりした際の靴による圧迫など、微小な外力の繰り返しによっても刺激が加わり、アキレス腱が付着する部分に炎症を起こしやすくなり、痛みやはれ、熱感を伴います。

シーバー病が発生する原因は、骨端核が存在するような年齢の時に繰り返される踵部分でのストレスです。もともと、軟骨成分の多い子供の骨は衝撃にも弱く、腱による強力な牽引(けんいん)力がかかると、軟骨部分では容易に骨がはがれてしまいます。

シーバー病の症状は、踵のやや後下方から足底に近い辺りを押さえた時の痛みや、走ったり階段を上がったりした時の軽い痛み、踵を浮かせて歩くような重い痛みまでさまざまです。重い痛みをかばって爪先(つまさき)歩きになるために、アキレス腱やふくらはぎにも痛みを感じることがあります。

骨端核は15~16歳で踵骨体部と癒合して骨が完成しますので、症状は2~3年で自然に消失してゆきますが、症状を悪化させないためには、早期診断と治療が重要です。心当たりのある場合には、早めに整形外科の専門医の診察を受けるようにします。

医師による診断では、X線撮影を行うと、踵骨の骨端線が不規則な形に変形しているのがわかります。中には、X線写真で骨端核にひびが入る分節化などを示している症例もあります。

医師による治療では、踵部へのストレスを減少させるために、フェルトなどの材料を靴底に入れてクッションとして用いたり、足底装具を使用して踵を持ち上げたりします。短期間ギプスで固定することもあります。また、湿布や消炎鎮痛剤入りの軟こうを使ったり、温熱療法や周囲の筋肉のストレッチなども行います。

痛みの強い時期には運動は原則的に禁止であり、軽くなってからも痛みの起こる動作は避けます。

症状がとれれば、徐々に運動を再開します。この際、運動の前後の準備運動と整理運動で、アキレス腱や足底腱膜のストレッチをしっかり行うようにします。

🇰🇪シーハン症候群

分娩時の大量出血の結果、分娩後の女性に起こる下垂体機能低下症

シーハン症候群とは、分娩(ぶんべん)の際の大量出血によって、分娩後の女性に起こる下垂体機能低下症。正常分娩の後に限らず、流産の後、中絶の処置の後の女性にも起こり得ます。

妊娠中は、脳の下にある小さな分泌腺(せん)に相当し、ホルモンの倉庫である下垂体(脳下垂体)の組織の体積が増加する過形成があります。主に、分娩の後の大量出血の結果として、過形成がある下垂体への血流が一時的に途絶え、視床下部と下垂体をつないでいる下垂体門脈という血管の梗塞(こうそく)によって、下垂体が壊死(えし)に陥り、シーハン症候群がまれながら起こります。時には、10年以上も後に、シーハン症候群が起こることがあります。

通常は、下垂体前葉と呼ばれる部分が虚血性壊死に陥ることで、組織が障害されて機能が下がり、分泌されるホルモンが全般的に減少します。下垂体が分泌するホルモンには、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の6つがあります。

つまり、下垂体からは副腎、甲状腺、卵巣など各ホルモン分泌器官を刺激するホルモンが分泌されていますから、下垂体の機能低下の結果として、これらの器官から分泌されているホルモンも欠乏し、さまざまな症状が現れます。

典型的な症状としては、分娩の後に乳房の委縮や乳汁の分泌停止がみられ、その後、産褥(さんじょく)期を過ぎても、元気が出ず、全身がだるく、食欲もないためにやせてきます。月経の再来がなく、無月経の状態になることもあります。

また、恥毛(ちもう)、わき毛、まゆ毛などの脱毛がみられます。そして、徐々に下垂体機能低下症の症状が出てきて、副腎機能の低下、甲状腺機能の低下などが起こります。副腎機能の低下では、低血圧、低血糖、意識障害なども出現します。甲状腺機能の低下では、寒け、皮膚の乾燥、集中力と記憶力低下なども出現します。

シーハン症候群の検査と診断と治療

内科、内分泌科、内分泌代謝内科、婦人科の医師による診断では、血液中の下垂体ホルモンの測定をします。次に、視床下部ホルモン剤を注射して下垂体を刺激し、血液中の下垂体ホルモンが増えたかどうか、その値を調べます。下垂体ホルモンの値が異常に低下しているとか、視床下部ホルモンの刺激を受けて下垂体ホルモンの分泌が増加しなければ、シーハン症候群と診断します。

内科、内分泌科、内分泌代謝内科、婦人科の医師による治療では、エストロゲン剤、副腎皮質ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤などのホルモン補充療法が行われます。不足しているホルモンを補うと、普通の人と変わらないほど元気になりますが、生涯、毎日欠かさずホルモン剤を内服しなければなりません。

ホルモンの必要量は、体の状況に応じて変動しますので、それに合わせて調整することが重要です。特に、副腎皮質刺激ホルモンが不足している場合、副腎皮質ホルモンの補充が必要となりますが、発熱や感染時には通常より多く服用するなど、自分で服用量を調整する必要があります。これらのことができている限り、日常生活に特に制限はありません。

妊娠を望む場合には、注射による排卵誘発(HMGーHCG療法)が必須となります。

🇰🇪シェ-グレン症候群

目と口が乾燥する自己免疫疾患

シェーグレン症候群とは、自己免疫の異常によって発症する自己免疫疾患。主症状とされる目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)のほかにも、全身にさまざまな障害を引き起こすことがあります。

自己免疫による疾患であり、自分の体の細胞に対して免疫反応を起こすことによって発症しますが、遺伝的要因、ウイルスなどの環境要因、さらに女性ホルモンの要因も複雑に関連し合っていると考えられています。免疫システムが涙を作る涙腺(るいせん)と唾液(だえき)を作る唾液腺を破壊してしまうために、目や口の乾燥が起こります。乾燥が進むと、目や口に傷が付いたり、涙や唾液の殺菌作用が働かず、感染症にかかりやすくなります。

シェ-グレン症候群という病名は、スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンが1933年に発表した論文にちなんで、付けられています。

発症するパターンは2種類あり、医学的にもその2種類に大別されています。1つ目は原発性シェーグレン症候群で、関節リウマチなどの膠原(こうげん)病の合併のない種類です。 2つ目は続発性(二次性)シェーグレン症候群で、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病などの膠原病に合併する種類です。

原発性シェーグレン症候群の発症者の内訳をみると、約45パーセントの人は目と口の乾燥の症状のみを発症しています。ほとんど健康に暮らしている人もいますが、ひどい乾燥症状に悩まされている人もいます。約50パーセントの人は全身性の何らかの臓器障害を伴っていて、残り約5パーセントの人は悪性リンパ腫(しゅ)や原発性マクログロブリン血症を発症しています。

厚生省研究班の調査では、日本国内において1年間に、17000人が医療機関で治療を受けたという結果がまとまりました。 しかし、病気自体の認知度の向上や診断基準の普及などによって、発見、診断される率が高くなったことにより、シェーグレン症候群の患者数は近年、増加しています。 専門医の間では、診断を受けていない潜在的な発症者を含めると、約10~30万人と推定されています。

発症者は40~60歳の女性に多いのが特徴で、男女比は男性1人:女性14人。50歳代にピークがあり、子供や80歳以上のの老人が発症することも少数ながらあります。

続発性(二次性)シェーグレン症候群については、関節リウマチの発症者の約20パーセントにシェーグレン症候群が併発し、その他の膠原病の発症者にも併発しています。

シェ-グレン症候群の自覚症状は、以下のように現れます。

目の乾燥(ドライアイ)

涙が出ない、目がゴロゴロする、目がかゆい、目が痛い、目が疲れる、物がよく見えない、まぶしい、目やにがたまる、悲しい時でも涙が出ないなど。

口の乾燥(ドライマウス)

口が渇く、唾液が出ない、食事の際によく水を飲む、口が渇いて日常会話が続けられない、食べ物の味がよくわからない 、口内が痛む、夜間に飲水のために起きる、虫歯が多くなったなど。

鼻腔(びくう)の乾燥

鼻が渇く、鼻の中にかさぶたができる、鼻出血があるなど。

その他

唾液腺(だえきせん)の腫(は)れと痛み、息切れ、熱が出る、関節痛、毛が抜ける、肌荒れ、夜間の頻尿、紫斑(しはん)、皮疹(ひしん)、手指や足先が蒼白(そうはく)になり次いで紫色になってピリピリ痛んだりするレイノー現象、アレルギー、日光過敏、膣(ちつ)乾燥(性交不快感)など。全身症状として、疲労感 、記憶力低下、頭痛は特に多い症状で、めまい、集中力の低下、気分が移りやすい、うつ傾向などもよくあります。

病気の診断と、目や口の乾燥症状の治療

医師による診断では、1)口唇小唾液腺の生検組織でリンパ球浸潤がある、2)唾液分泌量の低下が証明される、3)涙の分泌低下が証明される、4)抗SSS‐A抗体か抗SS‐B抗体が陽性である、という4項目の中で2項目以上が陽性であれば、シェーグレン症候群と見なされます。

治療では、目や口などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことが目的とされます。現状では、根本からシェーグレン症候群を治す治療法はありません。

目の乾燥(ドライアイ)に対する治療法は、涙の分泌の促進、涙の補充、涙の蒸発の防止、涙の排出の低下を目的に行われます。

涙の分泌を促進する方法として、ステロイド薬による抗炎症作用や炎症細胞の浸潤抑制による効果が一部で期待されます。

涙の補充には、人工涙液や種々の点眼薬を1日3回以上使用します。傷害された角膜上皮の再生促進や角膜炎の治療の目的として、ヒアルロン酸、コンドロイチン、ビタミンA、フィブロネクチンなどを含んだ点眼薬も使用されます。別の治療法として、自己血清を採取してこれを薄めて使用する方法が推奨されています。血清の中には、上皮成長因子、ビタミンなどさまざまな物質が入っているからです。

涙の蒸発を防ぐために、眼鏡の枠にビニール製のカバーをつけたモイスチャー・エイド(ドライアイ眼鏡)があります。

涙の排出を低下させるためには、鼻側の上下にある涙の排出口である涙点を閉じる方法があります。それには涙点プラグで詰める方法や、手術によって涙点を閉鎖する方法があります。

口の乾燥に対する治療法は、唾液の分泌促進、唾液の補充、虫歯の予防や口内の真菌感染予防、口腔(こうくう)内環境の改善を目的に行われます。

唾液の分泌を促進するものとして、アネトールトリチオン(フェルビテン)、ブロムヘキシン(ビソルボン)のほか、漢方薬なども用いられます。副腎(ふくじん)ステロイド剤も有効であり、症状に合わせて使用されます。

唾液の補充には、サリベートや2パーセントのメチルセルロースが人工唾液として使われます。サリベートは噴霧式で舌の上だけでなく、舌下、頬(ほお)粘膜に噴霧したほうが口内で長持ちします。また、冷蔵庫保存で不快な味が消えます。

虫歯の予防や口内の真菌感染、口角炎を予防するものとしては、イソジンガーグル、ハチアズレ、オラドール、ニトロフラゾン、抗真菌剤などが用いられます。歯の管理と治療としては、ブラッシング、歯垢(しこう)の除去と管理、虫歯、歯周病対策などがあります。オーラルバランスという口腔保湿剤もあります。

なお、全身性の臓器病変のある人の場合は、内科などでステロイド薬や免疫抑制薬などを含めて適した治療を受けるべきです。全身性の病変の中には、白血球減少、高γグロブリン血症、皮膚の発疹、間質性肺炎、末梢神経症、肝病変、腎病変、リンパ腫などがあります。

🇰🇪シェーンライン・ヘノッホ紫斑病

手や足のいわゆる四肢末梢に紫斑ができる疾患で、4~7歳の小児に好発

シェーンライン・ヘノッホ紫斑(しはん)病(Schoenlein-Henoch purpura)とは、手や足のいわゆる四肢末梢(まっしょう)に、軽く盛り上がった紫斑ができる疾患。アレルギー性紫斑病、血管性紫斑病、アナフィラクトイド紫斑病とも呼ばれます。

今から逆上って100年以上前に、ドイツの医師シェーンラインが関節の症状を伴う紫斑病ということでリウマチ性紫斑病と命名し、同じくドイツの小児科医ヘノッホが腹部の症状を伴うということで腹部紫斑病と名付けたため、シェーンライン・ヘノッホ紫斑病といわれますが、リウマチとの関係はわかっていません。

このシェーンライン・ヘノッホ紫斑病は上気道感染後に発症することが多く、ウイルスや細菌に対するアレルギーが原因だといわれていますが、はっきりしたことはまだ解明されていません。シェーンライン・ヘノッホ紫斑病の障害部位にIgAなどの特異的な免疫物質が沈着しているのが特徴であり、それが皮膚のほか、腸管、関節、腎臓(じんぞう)、時に精巣や脳などに障害を起こします。また、服用中の薬や食べ物との関連性も研究されています。

それほど多くみられる疾患ではなく、日本における発症者は年間10万人当たり10~20人といわれているものの、4~7歳の小児に好発し、女児より男児の発症が若干多い傾向にあります。多くは冬に発症し、人から人への感染はありません。今の段階では予防策がないというのが現状です。

皮膚の紫斑は手足の左右両側対称に、とりわけ関節付近に出現します。体や顔に出る場合もあります。初めはかゆみを伴ったじんましんのような発疹(はっしん)で始まり、次第に紫色に変色していきます。じんましんなどの紅斑は上から押すと赤みが消えるのに対して、紫斑は色が消えません。

紫斑ができるのは、血管が炎症を起こしているからです。紫斑は血管から出てしまった血液が皮膚の奥で滞留した状態なので、上から押しても色が消えることはありません。血小板減少性紫斑病とは違い、わずかに隆起しているのも特徴で、「触れることができる紫斑」と呼ばれています。紫斑の形は点状のものから不整形のものなどさまざまで、新しいものと古いものが混在します。

通常、毛細血管になる前に存在する細静脈を中心に血管が炎症を起こしますが、放置したままにしておくと、大動脈の血管壁が薄くなり、そこから大量に血液成分が漏れ、強いむくみが出現することもあります。

腹痛も半数ほどの発症者に認められます。腸管内の血管透過性の高進によるむくみや、腸管内の血管の炎症が原因で、しばしば血便や便潜血も認められます。

腹痛は嘔吐(おうと)を伴う激しいものであることも少なくなく、紫斑が起こる前に腹痛が起きたケースなどでは、虫垂炎や腸重積、腸閉塞(へいそく)などの内臓疾患が疑われることもあります。腹痛がひどく、日常生活を行えないレベルのものであれば、入院して治療を受けることが必要になります。

関節炎、関節痛もおよそ3分の2の発症者にみられます。足の関節、手の関節に起こることが多く、股(また)や肩の関節には普通起こりません。関節炎を起こすと、その部分ははれ、痛みのため動かすのも苦痛になります。痛みで歩くことができなくなることもしばしば起こり、日常生活が困難になった場合にも、入院して治療を受けることが必要になります。

局所的な大きなむくみも、顔、体、手足、陰嚢(いんのう)などに痛みを伴って現れますが、発赤はみられません。

さらに、尿の異常が半数の発症者に認められ、血尿、蛋白(たんぱく)尿が現れます。紫斑病性腎炎を合併する率が高いため、定期的に尿検査をする必要が生じます。腎炎の多くは軽症ですが、中には急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしたり、慢性の腎不全に陥るケースもあります。

シェーンライン・ヘノッホ紫斑病の検査と診断と治療

シェーンライン・ヘノッホ紫斑病を発症した時にかかる科としては、小児の場合はやはり小児科が適しています。小児科医にとって、この疾患はポピュラーなものであり、症状を見れば容易に判断が付きます。

紫斑病性腎炎が出現し、蛋白尿が悪化した場合には、小児腎臓医に相談するのがよいでしょう。専門の機器、専門の治療方法を持った病院の専門の医師に診てもらうことは、小児が成人した後の将来を見据えた治療につながります。

成人が行く診療科としては、皮膚科、内科のほか、皮膚泌尿器科も適しています。皮膚泌尿器科とは、本来別々であった皮膚科と泌尿器科が一緒になったもので、性感染症などが両科にまたがることから標榜されるようになったようです。アレルギー性紫斑病は皮膚症状のほかに、泌尿器科の分野である腎炎の症状もしばしば伴うので、長期に渡って経過を観察しなければならないことも考慮して、皮膚泌尿器科で診てもらうのもよいかもしれません。

シェーンライン・ヘノッホ紫斑病を根本的に治療する薬剤や方法は、現状ではありません。急性期は安静を保つことが大切で、症状に見合った対症療法が中心となります。

紫斑は動きの激しい部分にできやすいので、軽い運動制限をすることもあります。腹痛が強い場合は、入院治療をすることが多くなります。腹痛の急性期には、副腎(ふくじん)皮質ステロイドが有効で、消化管からの吸収は期待できないので、静脈内に投与し、症状の改善を図ります。

また、関節炎、関節痛で歩行困難を来した場合も、入院治療が必要となります。関節の炎症や痛みには、経皮鎮痛消炎剤や、作用の穏やかな解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンを投与し、症状の改善を図ります。

紫斑病性腎炎で血尿が出たり、蛋白尿が出たりということは珍しくなく、多くは治療しなくても、徐々にその症状も消失していきます。ただ、急性腎炎症候群や、ネフローゼ症候群を起こしている重症の場合は、ステロイドパルス治療などを行います。また、急激に症状が悪化しなくても、数カ月~数年経ってから慢性の腎不全を起こすこともあるので、定期的な検査が必要となってきます。シェーンライン・ヘノッホ紫斑病は腎臓の機能の経過を見るという点でも、完治までに時間のかかる疾患だといえます。

薬物治療を長期に渡って行うことになった場合、小児慢性特定疾患という医療費の補助を受けることもできます。補助を受けられる診断基準などを地域の保健所に問い合わせてみるとよいでしょう。

🇪🇷痔核(いぼ痔)

肛門周囲の静脈が膨らんで、こぶになった痔疾

痔核とは、肛門(こうもん)周囲の静脈が膨らんで、こぶになったもの。一般には、いぼ痔と呼ばれます。

肛門周辺の疾患の総称である痔は、虫歯に次ぐ第2位の国民病といわれており、成人の3人に1人がその症状に悩んでいるとされています。痔には大きく分けて3種類、この痔核(いぼ痔)、裂肛(きれ痔)、痔瘻(じろう:あな痔)があります。痔核が最も多く、男女ともに痔全体の約60パーセントを占めるようです。次いで男性では痔瘻13パーセント、裂肛8パーセント、女性では裂肛15パーセント、痔瘻が3パーセントの順だという統計があります。

痔核には、直腸と肛門を隔てる歯状線を境にして、内側の直腸にできる内痔核と、外側の肛門部にできる外痔核があります。 内痔核は、肛門の内側にいぼがあるため、普通の状態では見ることも触ることもできません。外痔核は、外からいぼが見え、自分で触ることができます。

痔核の原因はさまざま考えられますが、直腸や肛門付近の静脈がうっ血したために、静脈が膨らんで、いぼ状のこぶができることが大きな原因です。

内痔核は、主に不規則な排便習慣で、排便時に息んだり、気張りすぎて腹圧が過度にかかることで、直腸の静脈がだんだんうっ血し、膨らんで発生します。立ち仕事、妊娠などで腹圧が過度にかかることも原因となります。

内痔核の初期状態では痛みなどがほとんどないので自覚症状がなく、知らない間に症状が進行していくという特徴があり、症状を大きく分けると4段階に分類されます。

第1段階では、排便時に出血し、トイレットペーパーに血が付着しているものの、痛みなどはほとんどありません。内痔核ができるのが肛門と直腸を隔てる歯状線の内側で、自立神経が支配していて痛みの神経がない場所に相当するため、痛みを感じにくいのです。

第2段階では、排便時の出血に加え、痛みを生じます。大きくなったいぼが肛門の外に飛び出す脱肛を伴う場合もありますが、脱肛した場合でも自然に戻ります。

第3段階では、排便時の脱肛が自然に戻らなくなり、自分の手で押し込まなければ戻らなくなります。また、排便時だけでなく、日常生活を送っている時で運動をしたり、力仕事をして腹に力が入った場合にも、脱肛するようになります。

第4段階では、常に脱肛している状態となり、粘液によって下着が汚れたりします。この段階になると出血や痛みを伴わないことが多くなり、逆に肛門周辺がかぶれたり、かゆみを伴うことが多くなります。 この脱肛したまま、手で押し込んでも戻らなくなってしまった状態を、嵌頓(かんとん)痔核と呼ぶこともあります。

一方、外痔核のほうも、排便時の強い息みで突然、出現します。外痔核の周囲には、多数の神経が集まっているので、激しく痛みます。排便時だけでなく通常時でも激しい痛みを伴うことが多いものの、出血を伴うことはあまりありません。

内痔核を長期間患っていたり、内痔核の再発を繰り返している場合にも、この外痔核の症状として現れることがあります。さらに、血栓性の静脈炎である血栓性外痔核や血腫(けっしゅ)を併発すると、より激しい痛みを伴います。

痔核の検査と診断と治療

痔核(いぼ痔)などの痔では、何が原因で起こっているのかを見極めることが大切になります。「痔だとばかり思っていたら、大腸がんだった」というケースが増えていますので、ほかの疾患が隠れていないのかどうかを確認するためにも、肛門科の専門医を受診します。

どんなに不快な症状があっても医療機関へ行かず、自己療法で我慢している人が少なくありません。「恥ずかしいから」、「命にかかわる疾患ではないから」、「手術はしたくないから」などの理由で受診が遅れるのが一般的ですが、痔の種類にもよるといえど、ほとんどの痔は早く治療を始めれば、手術しないで治すことができます。排便時の出血や痛みといった気になる症状があれば、自己判断せずに、受診するのがよいでしょう。

痔核の治療法は、内痔核か外痔核かで少し異なります。内痔核の場合は症状によっても治療法が異なってきますが、基本的にはまず生活習慣を改善することが大切になってきます。初期段階では、これに加えて塗り薬、座薬、内服薬を用いれば、多くの場合は症状が改善されていきます。

しかし、いわゆる第3段階~第4段階以上の内痔核の場合は、脱肛が自然に戻らなくなったり、常に脱肛している状態にあるため、手術が必要になることもあります。

手術が必要になった場合には、硬化療法(注射療法)、レーザー療法、結さつ療法(輪ゴム結さつ法)、ジオン(消痔霊治療)、ICG併用半導体レーザー療法、半閉鎖法、PPH法などが行われ、内痔核の症状が改善することが期待できます。

外痔核の場合は、生活習慣の改善、食生活の改善だけで治ることも珍しくありません。それに加えて、塗り薬や座薬 、内服薬などの治療薬、痛みが激しい場合には鎮痛薬を使用して治療していきます。手術が必要になることはほとんどありません。

また、外痔核に限らず痔核は肛門周辺の静脈の流れが悪くなり、うっ血していることが大きな原因ですので、肛門周辺を温めることも効果的になってきます。ただし、外痔核がすでに化膿(かのう)している場合には、温めすぎるとかえって逆効果になることもありますので、注意が必要です。

どのような痔も、当人の生活習慣が大きな原因となっていますから、治療の第一は日常生活でのセルフケア、第二が薬です。痔核は、悪化させない生活習慣が大切。引き起こす原因となるのは、便秘、肉体疲労、ストレス、冷え、飲酒、喫煙といった生活習慣です。

中でも、便秘は最大要因となります。便秘に際して、硬い便を息んで排便すると、痔核を招くもとになります。便意がなければトイレは3分で切り上げるのも、心掛けたい習慣です。便秘を解消し、軟らかい便が出るように食物繊維を多く取り、辛い刺激物の摂取を控えるなど、食事を見直すことも大切。

また、肉体疲労は筋肉に疲労物質をため、免疫力を低下させますので、肛門に炎症が起こりやすくなります。ストレスも、免疫力を低下させるとともに自律神経を乱し、便通の異常を生じる原因になります。休養と睡眠を十分に確保し、映画やスポーツ、散歩、旅行など自分に合った趣味を楽しむことで、リラックスを図るようにします。

さらに最近では、夏の冷房で体が冷えすぎて、痔になる人が増えています。体が冷えた場合、肛門括約筋が緊張したり、末梢(まっしょう)血管が収縮して、血液の循環が悪くなるために、痔を誘発することになります。特に電車の中やデパート、スーパーマーケットなどは夏の冷房が効いているので、カーディガンを羽織るなどして体を冷やさない工夫をします。入浴や座浴で、肛門周辺の血液の流れをよくするのも効果的。

過度の飲酒も、アルコールが血管を拡張しますので、肛門の炎症や便通の乱れにつながります。酒を断つ必要はありませんが、ほろ酔い程度の適量を心掛けます。たばこはやめるようにします。

🇪🇷ジカ熱

蚊が媒介するジカウイルスによる感染症で、中南米を中心に流行

ジカ熱とは、ジカウイルスというウイルスに感染して、引き起こされる感染症。ジカウイルス感染症とも呼ばれます。

ジカウイルスは、デングウイルス、日本脳炎ウイルスと同じフラビウイルス科に属します。1947年に、アフリカのウガンダの「ジカの森」にいたアカゲザルから初めて見付かり、1952年に、ウガンダとタンザニアで初めて人の感染が確認されました。

世界保健機関(WHO)によると、ジカウイルスはアフリカから、東南アジア、太平洋諸国、南米のブラジルへと広がっていったとみられます。2007年には、ミクロネシア連邦ヤップ島で流行、2013年から2014年に、フランス領ポリネシアで流行し約1万人の感染者を出したほか、2014年には、チリのイースター島でも感染者が確認されました。

そして、2015年5月に、ブラジル北東部の州で地域的な流行が確認されて以降、中南米を中心に流行が急拡大し、2016年3月9日現在、50を超す国・地域から感染が報告されています。

アメリカやヨーロッパ、そして日本でも、流行地を訪れた人たちが帰国後にジカ熱を発症するケースが、報告されています。感染者は今後、400万人に上ると予測されています。

また、8月にリオデジャネイロオリンピック、9月にパラリンピックが開催されるブラジルでは、頭が小さくなり知的障害を伴うこともある小頭症を伴って生まれた新生児が、疑い例も含めて4000人以上に急増しており、妊娠中の女性のジカ熱感染との関連が強く疑われています。

同時に、ジカウイルスに感染すると、体の中の免疫システムが自分の神経を攻撃してしまうことで、手足に力が入らなくなる難病、ギラン・バレー症候群になる可能性があるとされています。発症の確率はジカ熱の感染者10万人当たり24人程度とまれながら、患者の20パーセントほどで胸の筋肉がまひして呼吸が困難になるほか、合併症を伴って5パーセントほどの人が亡くなるという報告もあります。

こうした状況を受けて、世界各国の保健当局は、妊娠中の女性がブラジルなどの流行地に旅行するのを控えるよう呼び掛けています。性交渉を通じた感染報告も増えており、妊娠中は流行地域に旅行した男性パートナーとの性交渉を控えるか、コンドームを使うよう求めてもいます。

日本では3月中旬、ブラジルに滞在歴があり、発熱や発疹の症状を訴えていた愛知県に在住する外国籍の30歳代女性が、ジカ熱に感染していると確認されました。

中南米を中心に流行が広がった2005年以降、日本国内で患者が確認されたのは2例目で、厚生労働省は感染経路の特定を進めるとともに、現段階では国内で感染が拡大するリスクは極めて低いとして冷静に対応するよう呼び掛けました。

ジカ熱への感染が確認された女性は、全身の発疹(はっしん)、38・2度の発熱、関節痛などの症状を訴えて愛知県内の医療機関を受診。女性は2月に2週間程度ブラジルに滞在した後、帰国していたということで、3月中旬になって国立感染症研究所で女性の血液などを調べたところ、感染が確認されたということです。

日本国内で患者が確認された1例目は、家族と一緒にブラジルに旅行した後、帰国した川崎市に住む10歳代の男性で、2月下旬に感染が確認されました。

日本国内では2013年から2014年に、当時ジカ熱が流行していたフランス領ポリネシアから帰国した27歳の男性が発症するなど、これまでフランス領ポリネシアやタイに渡航歴のある3人の男女の感染が確認されていますが、ブラジルなどの中南米で流行が始まった2015年以降、確認されたのは、これが初めてでした。

厚労省は、感染経路について調べるとともに、帰国後にどこに滞在したかについても聞き取りを行って、蚊が発生する可能性がある場所の調査や駆除を行いました。国内で2人の患者が見付かったものの、2月、3月の時点ではウイルスを媒介する蚊が活動していないため、感染が広がるリスクは非常に低いと見なされました。

ジカウイルスを媒介するのは、主に熱帯や亜熱帯に生息するネッタイシマカや、日本にも生息するヒトスジシマカ。感染者の血液を吸ったネッタイシマカやヒトスジシマカが別の人を刺すことで主に広がるとされ、感染すると3日から12日間ほどの潜伏期間の後、38度5分以下の発熱や発疹、結膜炎、筋肉痛、関節痛、倦怠(けんたい)感、頭痛などの症状を引き起こします。

ジカ熱の治療と対策と予防

医療機関を受診した際は、ワクチンや特効薬はないため、飲水の励行や、輸液による水分補給、鎮痛解熱剤の投与といった対症療法を中心に施すことになります。同じように蚊がウイルスを媒介するデング熱と比べると、比較的症状は軽く、多くの場合、2日から1週間程度で症状は治まります。また、感染しても、実際に症状が出る人は4、5人に1人程度と見なされます。

ジカ熱の感染が世界的に広がっていることを受けて、厚生労働省は2月下旬、ジカ熱をデング熱や日本脳炎と同様に4類感染症に位置付け、全国の医療機関に対して、患者を診察した場合、保健所を通じて国に届け出るよう義務付けました。

同時に、空港の検疫所で中南米から帰国した人などを対象に、サーモグラフィと呼ばれる特殊な機器を使って体温を調べ、水際での対策を強化したほか、検査キットを全国の都道府県の衛生研究所に配布しました。

今後も日本国内でジカ熱の患者が出る可能性はあり、5月になると本州でも蚊の活動が活発になります。ジカウイルスは感染しても4、5人に1人しか症状が出ないので、知らないうちにウイルスが広がっている可能性もゼロではありません。

また、ブラジルやコロンビア、メキシコなど、感染が確認されている国や地域へ渡航したり滞在したりする人は、十分注意する必要があります。特に、妊娠中の女性は、渡航や滞在を可能な限り控えることが求められます。やむを得ず渡航する場合は、防虫スプレーを使用したり、皮膚を露出しないように長袖(ながそで)や長ズボンを着用したりし、外出を控えるなど、蚊に刺されないための対策を講じる必要があります。

🇪🇷子癇

妊娠高血圧症候群の重症例で、けいれん発作の後、昏睡状態に陥る疾患

子癇(しかん)とは、妊娠中に血圧が上がり、脳出血などの危険が高まる妊娠高血圧症候群(妊娠中毒症)の重症例で、てんかんと同じような全身のけいれん発作の後、昏睡(こんすい)状態に陥る疾患。

子癇の原因は不明ですが、脳血管の攣縮(れんしゅく)と脳浮腫(ふしゅ)が関係していると考えられています。攣縮はけいれん性の収縮のことを指し、浮腫は脳実質内に異常な水分貯留を生じ、脳容積が増大した状態を指します。

妊娠高血圧症候群は妊娠20週以降、分娩後12週まで血圧の上昇、または、高血圧にたんぱく尿を伴う場合のいずれかで、これらの症状が単なる妊娠の偶発合併症によるものではないものをいいます。約1割程度の妊婦が発症し、妊娠中期などに早めに発症したほうが悪化する傾向があります。

重症例の子癇を起こし、けいれんが何度も繰り返し起こると、妊婦、胎児ともに危険です。昏睡状態の時に、大声で妊婦の名前を呼んだり、体を揺すったりすると、再びけいれんが起こります。できるだけ静かにして、救急車を手配するようにします。

妊婦の死亡率が10~15パーセント、胎児の死亡率が25~40パーセントという統計もあり、また治癒しても、さまざまな後遺症を残すことがあります。しかし、最近では妊娠管理の向上により、母子ともに死亡率は著しく減少してきています。

けいれん発作が起こった時期によって、妊娠子癇、分娩(ぶんべん)子癇、産褥(さんじょく)子癇の3つに分けられます。子癇の発生頻度が2000~3000分娩に1例程度といわれているうち、妊娠子癇が50パーセント、分娩子癇が25パーセント、産褥子癇が25パーセント程度の発生頻度といわれています。最近では、特に妊娠子癇や分娩子癇の発生頻度は減少傾向にあります。

むくみ、たんぱく尿、高血圧などの妊娠高血圧症候群の症状があって、意識喪失とけいれんが突然、起こってきます。この子癇発作の前触れとして、目の前がチラチラしたり、視野が狭まるなどの眼症状、悪心(おしん)、嘔吐(おうと)、胃痛などの胃症状、頭痛、めまい、耳鳴りなどの脳神経症状などがみられることがあります。

典型的な子癇発作では、症状によって第1期から第4期に分けることができます。

第1期は、意識を失い、瞳孔(どうこう)は散大し、顔面の筋肉が細かくけいれんします。第2期は、全身が硬直し、体は弓なりに反り返り、呼吸も一時停止して顔面が紫色になります。第3期は、口から泡を吹いて全身けいれんが始まります。第4期は、けいれん発作は収まりますが、いびきをかいて深い昏睡に陥ります。この状態から次第に意識が回復する場合と、再び第2期の状態に戻り、発作を繰り返す場合があります。昏睡に陥ったまま、発作を繰り返した場合は、意識が回復することなく死に至ることもあります。

子癇の検査と診断と治療

産科、産婦人科の医師による治療では、外部からの光、音、振動などの刺激を避けるために、暗くした静かな場所に隔離します。それらの刺激によって、子癇発作が誘発されることがあるからです。

また、薬物療法として抗けいれん剤、降圧剤、利尿剤、強心剤などを使用します。けいれんの救急処置としては、体を横向きにし、バイトブロックをすぐに口の中に入れて舌をかむ危険を防ぎ、エアウェイの使用と気道分泌物の除去を行って気道を確保するようにします。そして、抗けいれん剤のジアゼパム(セルシン)を静注し、硫酸マグネシウムの点滴静注を行います。

救急処置がすんだらCT検査、MRI検査を行い、画像診断します。脳出血などを合併することがあるため必要な検査です。

妊娠子癇、分娩子癇で、症状の悪化や胎児仮死のある場合では、分娩を早くすませるために吸引分娩、鉗子(かんし)分娩などの急速遂娩(すいべん)術が行い、場合によっては帝王切開を行います。

🇩🇯趾間神経痛

足先への過度の荷重が原因で、足指や足指の付け根にしびれ、痛みが生じる疾患

趾間(しかん)神経痛とは、体のバランスを保つ中足骨(ちゅうそくこつ)の間の神経がはれて、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じる疾患。モートン病、モルトン病、モートン神経腫(しゅ)とも呼ばれます。

古くから靴の文明が発達していた欧米人に多く見られた足指の神経痛の一種ですが、1876年にトーマス・モートンが足指の第3趾と第4趾の間の付け根にある神経の炎症であると、初めて報告しました。

日本では第2次世界大戦中に、多くの陸軍の歩兵がこの趾間神経痛に悩まされたといわれており、行軍腫とも呼ばれています。戦後は、おしゃれな靴が好まれるようになり、多くの女性が悩まされることとなりました。

足先への過度の荷重が発症の原因とされていて、ハイヒールや窮屈な靴の常用、中腰の姿勢での作業などで、足の指の付け根の関節でつま先立ちをする格好が長時間続く人に、起こりやすくなります。幅の狭い靴、底が薄くて硬い靴を履くことの多い人、硬い床の上でダンスをする人、硬い路面の上でランニングなどの反復性の運動をする人に、起こることもあります。

また、趾間神経痛は足底の横アーチの崩れとも関係していて、足が徐々に偏平になってくる中年以降の女性に多く発症します。

足の中足骨は深横中足靭帯(じんたい)によってつなぎ止められていて、その間を指神経(固有底側指神経)と呼ばれる感覚の神経が通っています。そして、足指の第3趾と第4趾の間の付け根には、指神経が交錯する神経腫と呼ばれる神経の固まりがあります。

この神経腫が深横中足靱帯と地面の間で圧迫されて、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じるほか、第2趾と第3趾の間の付け根にある滑液包と呼ばれるクッションが繰り返される刺激によって炎症を起こして、指神経を圧迫し、足指や足指の付け根にしびれ、痛みを生じることもあります。

症状として、前足部に体重がかかったり、ハイヒールや窮屈な靴を履くと、足指や足指の付け根にしびれ、痛みや、異物感を感じます。歩くだけで激しい痛みを感じる場合があり、足指にかけての知覚障害が発生する場合もあります。時には、痛みが下腿(かたい)まで及ぶこともあります。一般的には、障害部位は第3趾と第4趾にまたがって起き、第2趾と第3趾、第4趾と第5趾にまたがることもあります。

通常は片側の足だけに生じるものの、時には両足に同時に障害が起こることもあります。圧迫部の近位に仮性神経腫といわれる有痛性の神経腫が形成される場合は、足底から第3趾または第4趾の付け根を圧迫すると痛みがあったり、前足部を手で両側から締め付けるようにすると痛みが誘発されます。

趾間神経痛の検査と診断と治療

整形外科、神経内科の医師による診断では、 障害神経の足指間に感覚障害、中足骨頭間の足底に有痛性の仮性神経腫があり、仮性神経腫をたたくとその支配領域に痛みが放散するチネルサインがあれば、診断は確定できます。また、足指を背屈するか、つま先立ちをしてもらうと痛みが強くなります。

X線(レントゲン)検査、筋電図検査、MRI検査、超音波検査なども、必要に応じて行われます。

整形外科、神経内科の医師による治療では、まずハイヒールの使用や中腰での作業を禁止して局所の安静を図り、消炎鎮痛剤などの薬剤内服、足の横アーチを整える足底板の靴底への挿入、筋肉の伸びを制限することで痛みの緩和を図るキネシオテーピング 、靴の変更、温熱療法、運動療法、痛みを和らげるブロック注射などを用いた保存的療法を行います。

発症から治療までの期間が短ければ短いほど、保存療法で治る割合が高くなっています。鍼灸(しんきゅう)治療が有効な場合もあります。

3カ月ほど様子をみて保存療法で症状が回復しない場合や、日常生活に支障を来す場合は、手術が必要になることもあります。手術には、神経剥離(はくり)、神経腫摘出、深横中足靱帯の切離などがあります。しかし、神経腫を切除しても痛みが楽にならないこともあるので、仮性神経腫状態にしないことが肝心です。

そのためには、足指と足底筋を鍛えて足のアーチを維持する必要があり、足じゃんけん、ビー玉拾いエクササイズ、歩行運動などが勧められます。足じゃんけんは、指全体を曲げてグー、親指だけ立ててチョキ、全部広げてパーをするもので、風呂の中などでするのも一案です。

また、足に負担をかけないためにも適切な体重を維持するとともに、自分の足に合った靴を選ぶことも大切です。お勧めの靴は、つま先に1~1・5cmくらいの余裕があり、靴紐(ひも)かマジックベルトが付いていて、靴底は硬めで、ある程度の重さのあるタイプ。

🇩🇯耳管開放症

耳管開放症とは、通常は閉鎖されている耳管が開放されたままの状態になり、耳閉感や、自分の声が大きく聞こえる自声強聴などの症状を引き起こす疾患。耳鼻咽喉(いんこう)科医のジャーゴによって、1867年に初めて報告されました。

耳管は鼻咽腔(くう)と中耳腔をつないでいる管で、大気と中耳腔の圧調整を行っています。通常、ふさがっていますが、あくびや嚥下(えんか)運動を行うと、耳管が短時間開放します。

この耳管が開放されたままの状態になる耳管開放症の発症機序は不明ですが、最近増加傾向にあり、女性がやや多くなっています。疲れや睡眠不足の状態が続いたり、急に体重が落ちた時に起こりやすくなります。

誘因として、ストレス、妊娠、経口ピル、中耳炎、運動、放射線照射、顎(がく)関節症、頸部(けいぶ)自律神経異常、吹奏楽器演奏も報告されています。

耳閉感、自声強聴の典型的な症状のほか、ゴーゴーという自分の呼吸音の聴取、低音域の難聴、非回転性めまいが起こることもあり、耳痛、音程のずれなどの症状も起こります。

耳閉感は頭を下にしたり、横に寝たり、お風呂に入ると一時的によくなりますが、激しい運動をしたりすると悪化します。

耳鼻科、耳鼻咽喉科の医師による診断では、症状が典型的であれば、問診だけで確定できます。体重の急減の有無や、体の位置で症状が変化するか、鼻すすりで一時的に軽快するかを確認できればよく、鼓膜が呼吸によって動揺するのを認めれば確実です。顕微鏡で鼓膜を観察すると、鼓膜の弛緩(しかん)部が呼吸とともに動くのがわかります。特に座位で顕著に観察され、仰臥(ぎょうが)位で鼓膜の動きは消失します。この鼓膜の動きは、チンパノメトリーという検査法でも観察できます。

治療は大きく分けて保存的治療と外科的治療になりますが、決定的に優れた方法はありません。軽度のものは、自然の経過でよくなることもあります。重症な場合は、耳管の鼻側の開口部(耳管咽頭口)に注射をして膨れさせて開口部を狭くする方法や、薬を噴霧して耳管に炎症を起こさせて粘膜を膨らませることにより耳管を狭くするといった方法も試されています。これらは効果の持続時間が短いのが、欠点です。

時に鼓膜チューブ留置術により、自覚症状が改善することがあります。治りにくい場合には、耳管周囲への脂肪やコラーゲンの注入、ピンの挿入といった方法も試されています。

医師によっては、加味帰脾湯(かみきひとう)という漢方薬を中心とした治療も行っています。1~2週間で効果が出る人もいます。

🇩🇯耳管狭窄症、滲出性中耳炎

耳管が狭窄した疾患と、中耳に液がたまる疾患

耳管狭窄(きょうさく)症とは、中耳腔(くう)と鼻の奥の鼻咽腔(びいんくう)をつなげている、耳管という管が狭窄を起こした疾患。狭窄の結果、時に中耳腔に液がたまると、滲出(しんしゅつ)性中耳炎を起こします。

耳管は中耳腔と外耳道の圧を調節するためのもので、唾液(だえき)や食べ物を飲み込んだり、あくびをした際などは、この耳管が開き、中耳腔に空気が入る仕組みになっています。この圧の調節によって、鼓膜の内外は圧が等しくなり、振動しやすくなります。

耳管が狭窄すると、中耳腔の気圧は外気圧より低くなり、耳内がふさがった感じ、難聴、自分の声が強く響く、耳鳴りなどの症状が出てきます。

飛行機が急に下降した際や、新幹線がトンネルに入った際、スキューバダイビングで海に潜った際などにも、同じく中耳腔と外気の圧のアンバランスが起こり、似たような症状が起こります。これを航空性、または気圧性中耳炎といいます。

耳管狭窄症の原因となるのは、風邪などによって炎症を起こす耳管炎、アデノイド増殖症、上咽頭のがんなど。この耳管狭窄症は、子供の難聴の主な原因になっています。

滲出性中耳炎の原因となるのは、不完全な急性中耳炎の治療、弱毒性菌による中耳炎ともいわれています。近年、小児にたいへん増えており、大きな問題となっています。

耳管狭窄症、滲出性中耳炎の検査と診断と治療

耳鼻咽喉(いんこう)科の医師による耳管狭窄症の診断では、鼓膜の観察や聴力検査を行ったり、鼻からカテーテルという管を入れて、耳管の通り具合を調べます。

治療では、狭窄を起こす原因をなくすことが第一とされます。空気を送って中耳腔に入れる通気法が、一般に行われています。

中耳腔に液がたまる滲出性中耳炎の診断では、鼓膜を観察したり、インピーダンスオージオメトリーという検査を行ったりします。

耳鼻咽喉科の医師による治療では、鼓膜を穿刺(せんし)、または切開して液を出します。それでもよくならなければ、鼓膜を通して中耳腔に小さな管を入れ、たまった液が外に出るようにします。

自ら中耳腔に空気を送る方法として、鼻をつまんで、ゴクンと唾液を飲むと空気が耳に入ります。簡単にできるので、1日に何回かやってみます。ただし、風邪の最中には、耳管の炎症が中耳腔に及んで中耳炎を起こすため、勧められません。

🇩🇯色素失調症

皮膚に特徴的な色素沈着を来す母斑症で、女児に発症しやすい遺伝疾患

色素失調症とは、新生児のころ、皮膚に特徴的な色素沈着を来す母斑(ぼはん)症。女児に発症しやすいまれな遺伝疾患です。

外胚葉(がいはいよう)と呼ばれる皮膚や粘膜のもとになる組織に異常を生じるために発症し、皮膚以外にも多くの臓器に異常を来しますが、目にも障害が起きることがあります。

X染色体優性遺伝です。人間の遺伝子の一対は性染色体と呼ばれ、女性はX染色体を2本、男性はXとY染色体を1本ずつ持っています。新生児は母親からXの1本、父親からはXかYのどちらかを受け継ぎ、Xなら女性になり、Yなら男性になります。このX染色体に異常があるのが、X染色体遺伝です。

優性遺伝では、女児が異常なX染色体を持っていても対になるXが正常ならば補完されて成長しますが、男児では致死的なのでほとんどは流産になります。従って、この色素失調症は一般に母親から娘に遺伝していき、兄弟姉妹のうち女児の半数は異常、残り半数は正常で、男児はほとんどが正常です。

色素失調症に見られる皮膚の異常は、4つの時期に分けられます。第1期は炎症期で、誕生直後あるいは2週間以内に、水疱(すいほう)や膿疱(のうほう)が主に体幹に多数出現し、かさぶたになっていきます。血液には好酸球と呼ばれる細胞が多数見られます。この時期、抹消血中および組織中に高率に好酸球増多を認めます。

第2期はいぼ状苔癬(たいせん)期で、生後数週から数カ月に、硬く盛り上がった丘疹(きゅうしん)が主に四肢末端に多発します。

第3期は色素沈着期で、生後3~4カ月ころから、褐色あるいは灰褐色の渦巻き状、帯状、網目状、飛沫(ひまつ)状など多彩な模様を描いたような色素沈着が出現し、かなり長期間続きます。血液中の好酸球は減り、多くは正常化してきます。

第4期は色素沈着消退期で、4~5歳ころから色素沈着が消えていくようになり、多くは思春期までには完全に消えます。

これらの皮膚症状に加え、90パーセントに歯の欠損や発育不全、40パーセントに頭蓋(とうがい)の変形や小人症、指の形成異常などの骨の異常、形成不全が見られます。ほかにも、脱毛、縮れ毛などの頭髪の異常、欠損、発育不全などの爪(つめ)の異常、精神発達障害、けいれんなどの中枢神経症状といった、さまざまな異常が見られる場合があります。

目の障害は30パーセントに見られ、斜視が最も多く、先天白内障や視神経の異常が見られることもあります。中でも問題になるのは、網膜の異常です。網膜は眼球壁の内張をしている神経の膜で、その細い血管が閉塞(へいそく)します。閉塞は生後1年以内に生じ、その後は進行しないとされています。

網膜血管の閉塞が高度だと、異常な新生血管が発生し、眼内出血や網膜剥離(はくり)を引き起こすなど未熟児網膜症とよく似た変化を来し、失明や高度の視力障害に至ることがあります。ただし、病変には左右差があることが多く、両目が失明することは少ないとされています。また、網膜の異常と中枢神経の異常は、関連して発生する傾向があります。

色素失調症に気付いた場合は、皮膚科、皮膚泌尿器科、小児科を受診し、全身的な検査を受けることが勧められます。

色素失調症の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科、小児科の医師による診断は、皮膚の特有の変化と経過でつきます。母親か姉に同じ疾患が確認されれば診断に役立ちますが、大きな異常がない場合、成長とともに皮膚の変化が消えていくので気付かないケースもあります。時には、皮膚の一部を切り取って検査する場合もあります。

目の合併症の診断のためには、皮膚科などで診断され次第すぐに眼科を受診してもらい、眼底検査を行って、網膜の状態を確認するのがよいとされます。

そして、以後は1カ月から3カ月に1回、生後1年まで検査を続けたほうがよいとされています。

皮膚科、皮膚泌尿器科、小児科の医師による治療は、皮膚病変は年齢とともに消退するので、それぞれの皮膚症状に応じて、外用療法を行って皮膚の保護に努めます。さまざまな臓器の変化に対しては、対症的に対応します。遺伝病のため根本的治療法はありません。

目の合併症のうち、斜視や白内障はそれぞれ、単独で発症した場合と同じように治療します。網膜血管の閉塞が確認されたら、速やかに閉塞部にレーザー網膜光凝固術を行って進行を防止します。それでも進行したり、すでに網膜剥離を生じている場合には、網膜の手術を行うこともあります。

🇸🇴色素性じんま疹

肥満細胞が皮膚に蓄積して、小さくて赤みがかった褐色の発疹や丘疹をつくる疾患

色素性じんま疹(しん)とは、肥満細胞が皮膚のあちこちに蓄積して、小さくて赤みがかった褐色の発疹や丘疹をつくる疾患。皮膚肥満細胞症の一種で、大きくは肥満細胞症の一種です。

マスト細胞とも呼ばれる肥満細胞の数が増加して、組織に蓄積すると、色素性じんま疹を発症します。肥満細胞は免疫システムを構成する細胞の仲間で、アレルギー反応や胃酸の分泌に関与する物質であるヒスタミンを産生します。この色素性じんま疹では肥満細胞の数が増えるので、ヒスタミンの量も増加します。しかし、何が原因で肥満細胞の数が増えるのかは、わかっていません。

生後2年以内の小児に発症することが多いものの、成人になってから発症することもあります。

小児の色素性じんま疹は、ほとんどが10歳から15歳までに自然治癒しますが、成人の色素性じんま疹は、慢性の経過をたどることが多いようです。また、小児の色素性じんま疹が進行して、肥満細胞症の一種で、肥満細胞が皮膚のみならず胃、腸、肝臓、脾臓(ひぞう)、リンパ節、骨髄に蓄積する全身性肥満細胞症になることはめったにありませんが、成人の色素性じんま疹では難治性の全身性肥満細胞症になることがよくあります。

色素性じんま疹では、発疹や丘疹をこすったり、引っかいたりするとかゆくなることがあります。かゆみは、温度の変化、衣類などによる摩擦、薬の使用などでひどくなることがあります。熱い飲み物、香辛料の入った食品、アルコール類の摂取、そして運動によってもかゆみが増す場合があります。

かゆい部分をこすったり、引っかいたりすると、赤いみみずばれのような状態になったり、皮膚が赤く火照ったりします。

症状には個人差があり、発疹や丘疹が全身にわずかに生じることもある一方で、頸部(けいぶ)や胸部、背部、腹部に相当な数が生じることもあります。同じ部位で何度も繰り返し発疹や丘疹が生じるのが、特徴です。

症状が進行して、全身性肥満細胞症を発症すると、皮膚に現れる症状のほか、消化性潰瘍(かいよう)も起きることがあります。これは、ヒスタミンが過剰に産生されて胃酸の分泌を促進するためです。潰瘍によって腹痛が起き、吐き気、嘔吐(おうと)、慢性の下痢が起きることもあります。

さらに、肝臓と脾臓が機能不全を起こして腹水がたまった場合は、腹部が膨隆します。骨髄で肥満細胞が増殖すると、骨の痛みが現れます。

症状は広範囲にわたり、重症化して、入浴や皮膚摩擦などがヒスタミンの放出刺激となって、呼吸困難や意識障害、けいれんなどを生じることもあります。

白血球が産生される骨髄に過剰に肥満細胞が蓄積すると、血液細胞を十分に産生できなくなって、骨髄球性白血病などの重い血液疾患を来すことも、まれにあります。そのほかの臓器でも、肥満細胞が多数集まると機能不全が起こり、結果として生命にかかわることがあります。

色素性じんま疹の検査と診断と治療

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による診断では、特徴的な症状から色素性じんま疹を疑い、皮膚または骨髄の生検により診断を確定します。通常は皮膚の組織を採取して、顕微鏡を使って肥満細胞の有無を調べます。骨髄の組織を採取して、顕微鏡を使って肥満細胞の有無を調べることもあります。

また、血液検査で肥満細胞に関連する化学物質の量を調べます。化学物質の量が増えていれば、全身性肥満細胞症と診断する根拠になります。

皮膚科、皮膚泌尿器科の医師による治療では、色素性じんま疹の場合には、皮膚症状によってステロイド外用剤の塗布、あるいはステロイド剤の局所注射を行います。皮膚症状の悪化やかゆみを抑制するために、抗ヒスタミン剤の投与も有効です。

全身性肥満細胞症の場合には、抗ヒスタミン剤と、胃酸を抑えるヒスタミンH2受容体拮抗(きっこう)剤(H2ブロッカー)を投与します。クロモグリク酸を投与すると、消化器症状と骨の痛みを軽減できます。

白血病を発症した場合には、抗がん剤を週に1回、皮下に注射すると、骨髄への影響を抑えられることがあります。短期間であればステロイド剤の投与も効果的です。しかし、3~4週間を超えて投与を続けると、さまざまな重い副作用が起きることがあります。

脾臓に多量の肥満細胞がたまっている場合には、脾臓を摘出することがあります。

🇸🇴色素性母斑(黒あざ、黒子)

皮膚のすべての部位にできる黒色の色素斑

色素性母斑(ぼはん)とは、皮膚のすべての部位にできる褐色から青黒色、あるいは黒色の色素斑。母斑細胞性母斑とも呼ばれます。

母斑というのは、皮膚の部分的な奇形のことです。その皮膚の奇形というのは、皮膚の成分の一部が遺伝的素因により、異常に発育、増殖した状態をいいます。この場合、生まれた時からあるものもあるし、生後数年、あるいは数十年後に初めて出てくることもあります。

母斑の代表的なものが、この色素性母斑です。色素性母斑の大きさは大小いろいろで、皮膚と同じ高さのものから、半球状に隆起したものまであります。

色素性母斑の一番小さい型が、いわゆるほくろ(黒子)です。つまり、点状の小さく黒い色素斑や、小豆大の半球状に隆起した黒い小さな結節。顔や全身にあり、小さい時から次第に数は増加し、古くなると色が自然に消えることもありますが、大きさは次第に増大します。

比較的大きな色素性母斑は、いわゆる黒あざです。生れ付きあることが多く、その多くは皮膚と同じ高さで、表面に黒い毛が生えていることもあります。

時には、広い範囲に生じて、先天性巨大色素性母斑と呼ばれます。まれには、全身に大小の黒褐色色素斑が多発し、その上に剛毛が密生し、その外見から獣皮様母斑と呼ばれる場合もあります。この型の母斑は、脳を始め全身の神経組織の色素異常を伴うこともあり、神経皮膚黒色症と呼ばれ、悪性黒色腫(しゅ)ができやすい型です。

色素性母斑の本態は、メラノサイトとなるべき細胞が表皮や真皮の境界部で、異常に増加したものです。この増殖した細胞を母斑細胞と呼びます。一般的には、母斑細胞の活性は出生後はなくなっていますが、時には残っていることがあります。この活性が非常に高進してくると、ほくろのがんといわれる悪性黒色腫に移る危険性があります。特に、足の裏の黒あざで拡大、潰瘍(かいよう)化が出現した場合は、医師による精密検査が必要になります。

色素性母斑の検査と診断と治療

色素性母斑は、それ自体は全く良性であり、心配することはありません。一般的には、治療の対象にならず、放置しておいてもかまわないものです。

しかし、特に成人以降に足の裏や手のひらに急にできて、色や大きさの変化が激しい場合、色の濃淡が強い場合、母斑の境界がはっきりしない場合などは、たとえ小さくても悪性黒色腫の可能性もあるので、早めに受診します。生まれ付きの大きい黒あざも、生後早めに医師と相談します。

医師による診断は、特徴的な色素斑なので、ほとんどは見ただけで診断はつきます。ただし、色素性母斑自体は良性ですが、皮膚の悪性腫瘍の中でも悪性度が高い悪性黒色腫と見分けがつきにくいものも時々あります。悪性黒色腫の確定診断は、切除したほくろを病理組織検査することでつきます。

放置しておいてもかまわない色素性母斑であっても、顔などに大きなものがあり、本人が非常に気にしたり、他人に悪印象を与える時などは、皮膚科、形成外科での手術で除去することになります。非常に小さなほくろであっても、本人が悪性化や、その他の面で気にする時にも、手術を行うこともあります。

手術では、病変部の皮膚をメスで全部切り取った後、皮膚の欠損部を縫い合わせるか、植皮術を行います。最近では、顔の小さいほくろの場合に、メスの代わりに炭酸ガスレーザーで切除した後、縫い合わせないで自然に治るのを待つ、くり抜き療法も行われています。

いずれにして、多少の傷跡は残ります。特に、植皮術で植皮した皮膚は、周囲の皮膚とは細かい性状が異なり、完全にはなじみません。従って、手術の跡と、ほくろやあざとどちらが目立つかを考えてから、手術をする必要があります。手術をしなくても、カバー・マークを利用して、色を隠せばよいからです。

なお、炭酸ガスレーザーを用いる、くり抜き療法は顔面ではあまり傷跡が目立たないことが多いようですが、他の部位ではくり抜いたところの傷跡が目立つ場合もあります。また、レーザー治療では多くの場合、病変部を焼き飛ばすため、病理組織検査を行えません。悪性黒色腫と見分けがつきにくい場合もあるので、レーザー治療を選択する場合には、担当する医師の十分な診断力が必要とされます。

🇸🇴色素沈着症

皮膚の色に変化を与えるメラニン色素が多くなる疾患

色素沈着症とは、生理的に皮膚に存在し、皮膚の色に変化を与えるメラニンやヘモジデリンなどの色素が多くなる疾患。

皮膚に存在するメラニンの量が変化すると、淡褐色、褐色、黒褐色、黒色などの色が現れます。また、人間の体の表面を覆う厚さ約2ミリの皮膚は、表皮と真皮の2つの層に分かれていますが、表皮にメラニンが増えるほど褐色調が強く、真皮の上層に増えると暗褐色から黒色、真皮の深いところに増えると青色調が強く現れます。

反対に、皮膚の色が白くなる場合は、メラニンが減るか、なくなったかです。

この色素沈着症には、遺伝的なものと、後天的に起こるものとがあります。遺伝的なものの代表は雀卵斑(じゃくらんはん)で、後天的に起こるものの代表は肝斑(かんぱん)です。

雀卵斑は目の回り、ほおに小さな色素斑が群がっている症状

雀卵斑は、両側の目の回り、ほおなどに、直径が数ミリまでの小さな斑点が群がっている症状。そばかすとも呼ばれます。

その顔に群がる淡褐色、ないし黒褐色の小さな斑点は、スズメの卵の殻(から)の模様に似ています。首や肩、前腕の外側、手の甲にできるものもあります。

生まれた時から存在している場合もありますが、だいたい5~6歳ころに目立ち始めて、思春期をピークに減少へと向かう場合が多く、年齢を重ねるとともにだんだんと目立たなくなっていきます。

しばしば家族に同じ症状がみられるため、原因としては遺伝的要素が強いといわれています。また、紫外線の影響、生活の乱れ、ストレス、妊娠によっても発生します。

遺伝的要素が強い雀卵斑は、完全に消すことは難しいものながら、ファンデーションなどでカバーできるくらい薄くできることもあります。そのほかの原因による雀卵斑は、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)がうまくできていないと、メラニンが増えて濃くなってしまいます。

肝斑は30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑

肝斑は、しみの一種で、30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑。肝斑という名称は、肝臓と同じ色ということからつけられたもので、肝臓の疾患とは関係がありません。

日本人女性の皮膚には肝斑ができやすく、皮膚の色が浅黒い人ほどできやすいといわれています。30歳代、40歳代の女性に多くみられますが、50歳代後半で新たに発症する人はほとんどみられません。逆に、60歳代からは症状が治まることも多いともいわれています。 日本男性に肝斑ができることは、めったにありません。

肝斑の症状は、特に額、ほお骨の辺り、口の回りに左右対称に広がるように、点状ないし斑状で淡褐色のしみが生じます。目の周囲にはできず、色が抜けたように見える点が特徴的です。

原因の一つとして、女性ホルモン、特に卵胞ホルモンと黄体ホルモンとの関連が指摘されています。ホルモンバランスの乱れる妊娠時、更年期、婦人科の疾患にかかった時、ピル(経口避妊薬)内服中も、できやすいといわれています。

妊娠時に現れる場合は、妊娠2~3カ月ころからできることが多く、次第に色が濃くなります。出産後には少しずつ消えていく場合もありますが、長期に持続する場合もあります。

また、原因の一つとして、紫外線が重要であると考えられています。紫外線に当たりやすい個所に症状が現れやすく、実際に紫外線を浴びることが症状の悪化と関連している場合が多いのです。

紫外線が皮膚に当たると、皮膚はダメージを受けることになります。そのダメージから皮膚を守るために働くのがメラニン色素で、表皮にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素は、少しずつ皮膚の表面に浮かび上がって皮膚を守ろうとします。役目が終わると、皮膚の新陳代謝とともにメラニン色素ははがれ落ちますが、年齢を重ねるごとに新陳代謝が鈍くなる結果、メラニン色素が皮膚の表面に長期的に滞留し、肝斑となっていきます。

原因として、ストレスも関係しているともいわれています。 そもそも、メラノサイトは紫外線やホルモンの影響を受けて、メラニン色素を作り出します。そのホルモンの分泌に大きくかかわってくるのが、ストレスを始めとする不規則な生活、睡眠不足などです。

初めにかゆみや皮膚の赤みがあって、後に褐色の色が付いてくるものや、顔以外の個所にできるものは、肝斑とは違うほかの疾患が考えられます。

また、肝斑と思っても、時には化粧品による接触皮膚炎か薬疹(やくしん)、エリテマトーデス、老人性色素斑(日光性黒子)などの場合もあります。

色素沈着症の治療法と対処法

雀卵斑の治療法と対処法

皮膚科の医師による治療において、雀卵斑(そばかす)を根治させるためのよい方法はありません。むしろ、悪化させないように日焼け止めクリームを塗り、帽子や日傘を活用して、紫外線をできるだけ避けるようにします。雀卵斑がある状態で紫外線を浴びてしまうと、数が増えるだけでなく、 既存の雀卵斑も色が濃くなってしまいます。

また、雀卵斑の症状を改善させるためには、ビタミンCやトラネキサム酸の摂取が有効だといわれています。ビタミンCは、美白作用が高く抗酸化作用も優れています。一般的には止血剤として用いられているトラネキサム酸は、美白作用があるので雀卵斑や肝斑(しみ)の治療にもよく使われています。

ほかにも、皮膚科や美容外科での専門治療として、レーザー治療や光治療のフォトセラピーなどがあります。これらの治療にはすべて施術後の紫外線対策などが重要です。

レーザー治療で雀卵斑を治療した直後は、施術した部分にテープなどを張る必要があるため、仕事をしながら治療したいという人にとっては難しい場合があるようです。赤みや色素沈着などが出る場合もあり、施術後の回復にも時間がかかります。フォトセラピーは、雀卵斑のメラニンを治療するだけでなく、コラーゲンを増やして皮膚に張りを与える効果があります。レーザー治療よりも、皮膚へのダメージが少ないといわれています。

雀卵斑を消す薬も、市販されています。化粧水タイプの薬品、顆粒タイプの飲み薬があり、用途に合わせて選ぶことができます。

除去することが難しい雀卵斑の対処法として、化粧品によって隠す方法もあります。そのようなメイクで特に使用されているのは、コンシ―ラという顔料を高濃度に固めたものです。最近では、コンシーラやファンデーションそのものに、美白成分などが入っているものもあります。ファンデーションには、紫外線や化学物質から皮膚を保護するという役割もあります。

日常的な対策として、生活習慣を見直し、皮膚の再生が行われる22時~24時には寝ているようにするのも効果的です。

肝斑の治療法と対処法

肝斑には、内服剤によって体の内側から働きかける治療が最も効果的といわれています。内服剤の場合、その有効成分は血流に乗って皮膚の隅々まで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに、より効果を発揮します。内服するものとしては、色素沈着抑制効果を持つトラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。

外用療法としては、コケモモの抽出成分であるアルブチン、甘草の油性抽出エキス(コラージュホワイトニングクリーム)、1パーセントのコウジ酸クリーム(ビオナチュール、フェスモ)などの美白剤の塗布が効果的とされています。皮膚には角層などのバリア機能があるため、美白剤はバリアを通過してメラノサイトに到達します。

外科的療法としては、光治療、皮膚の生まれ変わり(ターンオーバー)を促進させてメラニンの排出を促すケミカルピーリング、ビタミンC誘導体イオン導入、メラニンを含む細胞を破壊する高周波での焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固などが、必要に応じて用いられます。ただし、いずれも即効性があるわけではなく、時間がかかることが多いようです。また、高周波での焼灼は、悪化の原因となる可能性を否定できないので、注意が必要です。

日常生活では、外出に際して帽子や日傘を活用して紫外線をできるだけ避けたり、皮膚をケアするだけでなく、生活リズムを整えること、うまくリラックスすること、睡眠時間を十分に取ることなど、ストレスや疲労をためないようにする工夫も重要です。

皮膚のケアでは、刺激を与えないことが大切で、合わない化粧品を使わないことです。最近では、気になる皮膚のトラブルをケアするさまざまな化粧品が登場していますが、使った時に少しでも違和感があるなら、使うのをやめます。ピリピリとした刺激によって、肝斑が増えることもあります。例えばファンデーションの場合、伸びをよくし、水に強く、化粧持ちをよくするため、原料に防腐剤や界面活性剤などが含まれているものもあります。こうした物質や油分の酸化が、皮膚への刺激となって、肝斑が増えることもあります。

また、こすってメイクを落とし、その後ゴシゴシと洗顔したり、クリームを使って強い力でマッサージを行うことも、皮膚にかなりの刺激を与え、結果的に肝斑を増やす原因になることも少なくありません。

🇸🇴色盲、色弱(色覚異常)

色を感じる働きである色覚に、生まれ付きの障害

色盲、色弱とは、色を感じる働きである色覚が生まれ付き障害されている状態。色覚異常、色覚障害とも呼ばれます。

人間がいろいろな色を感じることができるのは、主に網膜の最も敏感なである黄斑(おうはん)に分布する錐体(すいたい)細胞の働きによるものです。この錐体細胞には、赤、緑、青のそれぞれの光に感じる3種類の細胞があり、物をみると、それらへの刺激が起こり、網膜や脳で処理された上で色として感じられるのが、色覚という働きです。

色覚異常は、日本人男性の4〜5パーセントにみられ、女性ではその10分の1くらいにみられます。男性に多いのは、色覚異常が伴性劣性遺伝をするためです。

この色覚異常は、起こり方によって、全色盲(全色弱)、部分色盲、部分色弱に分けられます。

全色盲(全色弱)は、色の見分けが全くできないもので、弱視や、眼球が左右に揺れたり、ぐるぐる回転する眼球振盪(しんとう)、明るい光をまぶしく感じる羞明(しゅうめい)を伴い、視力も0・1以下であるものを全色盲といいます。また、視力は正常でも、すべての色に対する色覚が欠けているものを全色弱といいます。

色覚がないために、すべての物を黒色、灰色、白色の変化として見ていることになります。

部分色盲は、赤と緑の区別ができないものを赤緑色盲といい、これはさらに、赤色盲と緑色盲に分けられます。

赤色盲とは、赤の光に対する感覚がなく、青緑の光に対する感覚にも異常があるため、赤と緑の区別ができない色盲です。第一色盲ともいいます。

緑色盲とは、緑の部分が灰色か黒色に見え、赤の光に対する感覚にも異常があって、赤と緑の区別ができない色盲です。第二色盲ともいいます。

このほか、青と黄と灰色が同じに見える青黄色盲もあり、第三色盲ともいいますが、非常にまれです。

部分色弱は、赤と緑に対する感度が低下しているが、色盲より障害の程度が軽いもので、赤緑色弱といいます。これもさらに、赤色弱と緑色弱に分けられます。

このほか、青黄色弱もあります。

赤色盲と赤色弱を合わせて第一異常、緑色盲と緑色弱を合わせて第二異常、青黄色盲と青黄色弱を合わせて第三異常と呼ぶこともあります。

色盲、色弱の検査と診断と治療

色覚異常は遺伝子の変異であるため、治療法はありません。

2002年までは学校健診で色覚検査が行われていたため、異常が見付かった人が色覚異常の確定診断のために眼科を訪れていました。しかし、確定診断に必要なアノマロスコープを装備する眼科は多くないため、実際は不十分な診断が行われて問題がありました。

2003年以降は、学校健診での色覚検査は廃止され、希望者のみが検査を受けるようになりました。検査で異常が出たら、専門の医療機関で遺伝子相談や職業適性についてのアドバイスを受けることが可能になっています。

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