耳管開放症とは、通常は閉鎖されている耳管が開放されたままの状態になり、耳閉感や、自分の声が大きく聞こえる自声強聴などの症状を引き起こす疾患。耳鼻咽喉(いんこう)科医のジャーゴによって、1867年に初めて報告されました。
耳管は鼻咽腔(くう)と中耳腔をつないでいる管で、大気と中耳腔の圧調整を行っています。通常、ふさがっていますが、あくびや嚥下(えんか)運動を行うと、耳管が短時間開放します。
この耳管が開放されたままの状態になる耳管開放症の発症機序は不明ですが、最近増加傾向にあり、女性がやや多くなっています。疲れや睡眠不足の状態が続いたり、急に体重が落ちた時に起こりやすくなります。
誘因として、ストレス、妊娠、経口ピル、中耳炎、運動、放射線照射、顎(がく)関節症、頸部(けいぶ)自律神経異常、吹奏楽器演奏も報告されています。
耳閉感、自声強聴の典型的な症状のほか、ゴーゴーという自分の呼吸音の聴取、低音域の難聴、非回転性めまいが起こることもあり、耳痛、音程のずれなどの症状も起こります。
耳閉感は頭を下にしたり、横に寝たり、お風呂に入ると一時的によくなりますが、激しい運動をしたりすると悪化します。
耳鼻科、耳鼻咽喉科の医師による診断では、症状が典型的であれば、問診だけで確定できます。体重の急減の有無や、体の位置で症状が変化するか、鼻すすりで一時的に軽快するかを確認できればよく、鼓膜が呼吸によって動揺するのを認めれば確実です。顕微鏡で鼓膜を観察すると、鼓膜の弛緩(しかん)部が呼吸とともに動くのがわかります。特に座位で顕著に観察され、仰臥(ぎょうが)位で鼓膜の動きは消失します。この鼓膜の動きは、チンパノメトリーという検査法でも観察できます。
治療は大きく分けて保存的治療と外科的治療になりますが、決定的に優れた方法はありません。軽度のものは、自然の経過でよくなることもあります。重症な場合は、耳管の鼻側の開口部(耳管咽頭口)に注射をして膨れさせて開口部を狭くする方法や、薬を噴霧して耳管に炎症を起こさせて粘膜を膨らませることにより耳管を狭くするといった方法も試されています。これらは効果の持続時間が短いのが、欠点です。
時に鼓膜チューブ留置術により、自覚症状が改善することがあります。治りにくい場合には、耳管周囲への脂肪やコラーゲンの注入、ピンの挿入といった方法も試されています。
医師によっては、加味帰脾湯(かみきひとう)という漢方薬を中心とした治療も行っています。1~2週間で効果が出る人もいます。
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