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2022/09/26

🇹🇷乳輪肥大

乳房全体から比べて乳輪の面積が大きすぎる状態

乳輪肥大とは、乳房全体から比べて乳輪の面積が大きすぎる状態。乳暈(にゅううん)肥大とも呼ばれます。

乳輪の大きさは、乳房と同じように個人差があるので、明確な標準はありません。一般的には、乳輪の標準的な大きさは、4センチから5センチといわれています。そのため、5センチ以上になると、乳輪としては大きいといえるかと思われます。乳輪が大きい人だと7センチから8センチほどで、10センチ以上の人もおり、小さい人ならば3センチくらいです。

また、同じ人だから左右の乳房の乳輪が同じ大きさとも限りません。乳房の大きさ自体が左右対照的ではなく、それに比例して乳輪も右と左で大きさが違うことがあります。そのため、片方だけ大きいのがかえって気になるということも起こり得ます。

一概にはいえないものの、乳房が大きいほど、乳輪も大きくなる傾向があります。

遺伝的な要素も乳輪の大きさに関係しています。そのため、両親どちらか、または祖父母など直系の親族に乳輪の大きい人がいれば、生まれ付きで乳輪が大きくても何ら不思議はありません。

しかし、年齢とともに乳輪が大きくなる場合もあります。その原因はいくつかあります。

まずは、乳房が発育して大きくなるにつれ、一緒に乳輪が大きくなるなることが1つ。

もう1つが、妊娠による乳輪の大きさの変化です。妊娠すると女性の体は変化していき、乳輪が大きくなったり黒ずんできたりもします。

妊娠すると、母乳が出るように体が準備を始めることで乳房が大きくなるのですが、乳房が大きくなるほど乳輪も大きくなりがちです。また、新生児が確実に乳房を探せるように、乳首や乳輪の色が濃くなります。乳輪の色が濃くなることで、実際に大きくなったわけではなくても、乳輪が目立って大きくなった感じを受けることもあります。

大半の人は、出産、授乳時期をすぎると、乳輪の大きさや色が元に戻ります。ただし、妊娠前より大きくなった、あるいは大きくなったまま戻らないという人も中にはいます。

さらに、自律神経の乱れも、乳輪が大きくなる原因の一つだと考えられています。自律神経というのは1日中休まず働いている神経で、交感神経と副交感神経が昼夜交互に活動的になります。不規則な生活習慣や、過度なストレスを抱え込むことによって、その2つの神経がうまく機能しなくなると体内のホルモンバラスが崩れ、それが乳輪の肥大化につながります。

乳輪が大きいことで悩んでいる人は、少なくありません。乳輪が大きいと温泉など人前で裸になる場面で気になる、性パートナーと結ばれる時に相手の反応が気になるなどの悩みがあり、本人にとっては深刻で強いストレスになっていることもあります。

美容的な問題により乳輪を小さくしたいと望むのであれば、乳腺(にゅうせん)外科、形成外科、あるいは美容整形外科を受診し、乳輪縮小術という形成手術によって整えることを考えてみてもよいのではないかと思われます。

乳輪肥大の検査と診断と治療

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による診断では、視診、触診で判断します。

乳腺外科、形成外科、美容整形外科の医師による乳輪縮小術には、乳輪外側をドーナツ型に丸く切除して乳輪のサイズを調整する外側法と、乳頭基部の円周を切開して乳輪を縮める内側法の2つがあります。

手術後の傷が目立ちにくいのは内側法ですが、外側法でも時間の経過で次第に目立たなくなります。内側法では切除できる乳輪の範囲が限られているのに対して、外側法では比較的広範囲の乳輪を切除することが可能なので、乳輪のサイズを希望通りに調整しやすいという違いがあります。

現在の乳房、乳輪、乳頭の大きさや状態から、医師の側が適した方法を提案します。どちらの方法も、乳腺を傷付けることもなく、授乳にも影響ありません。

手術は1時間ほどで、局部麻酔を行うため痛みを感じることはありません。眠っている状態での手術を希望する場合は、静脈麻酔も行っています。

手術当日は、患部を濡らさないようにすれば、シャワーが可能です。1週間から10日後に抜糸を行い、その後は入浴が可能です。

乳輪を縮める際に皮膚を寄せ集めて縫合しますので、2カ月程度、傷の赤みや突っ張り感を伴う場合があります。数カ月かけて、薄茶色から白っぽい線と変化し改善します。乳頭や乳輪は、人体の中でも傷跡が目立ちにくい部位の一つのため、ほかの部位に比べて、手術後比較的短い時間で傷跡がほとんどわからなくなります。

2022/08/31

🇭🇺マタニティーブルー

■短期間に消失する気分障害■

産後2~3日目になると、訳もなく涙が出てきたり、家族のちょっとした言葉が気に障って悲しくなるのが、マタニティブルーと呼ばれる気分障害です。

出産を境にして、今まで盛んに分泌されていた女性ホルモンが急激に低下し、ホルモンの状態が激変するために、自律神経系に影響をおよぼし、本人の自覚のあるなしにかかわらず感情の変化として現れます。

そのほかにも、出産や慣れていない育児の疲れ、睡眠不足、家で独り育児に取り組まなければならない孤独感や不安などのストレスが重なり、感情が不安定になるのです。

主な症状は、情緒の不安定と涙もろさで、不眠や食欲不振、軽いうつ状態になったりもします。しかし、ピークは産後2~3日目で、産後2週間以内に治まります。短期間に消失する一過性の正常な反応であり、産後のうつ病とは違うものと考えられていますが、マタニティブルーから産後うつ病に移行するケースも。

産後うつ病のほうは、出産直後の数週間~数カ月の時期にみられるもので、強い悲嘆と、それに関連する心理的障害が起きている状態です。原因はいまだ、よくわかっていません。女性ホルモンの一種、エストロゲンとプロゲステロンが急激に減ることが一因、とも考えられています。

2022/08/27

🇿🇲甲状腺がん

内分泌腺の一つで、首の前部にある甲状腺に発生するがん

甲状腺(せん)がんとは、内分泌腺の一つで、首の前部にある甲状腺に発生するがん。

この甲状腺は、のど仏の下方にあって、気管の前面にチョウが羽を広げたような形でくっついて存在し、重さは約15グラム。男性では女性に比べてやや低い位置にあり、甲状腺の後両側には、反回神経という声を出すのに必要な神経が走っています。

甲状腺ホルモンという日常生活に必要不可欠なホルモンを分泌し、そのホルモンレベルは脳にある下垂体という臓器の指令により調節されています。なお、甲状腺の裏側には、副甲状腺というやはりホルモンを分泌する米粒大の臓器が左右上下計4個存在し、血清中のカルシウム値を一定に保つ役割を担っています。

甲状腺がんの発生頻度は、人口3万人に30人程度。年齢的には、若年者から高齢者まで広い年齢層に発生し、子供を含む若い年齢層でもさほど珍しくありません。性別では、男性の5倍と女性に圧倒的に多いのですが、男性の甲状腺がんのほうが治りにくい傾向があります。

原因は、まだよくわかっていません。原爆やチェルノブイリ原発事故などで首に放射線を多量に受けた場合や、甲状腺刺激ホルモンが増加した場合などが、原因になるのではないかといわれています。さらに、甲状腺がんの一つの型で、甲状腺の特殊なC細胞より生じる髄様がんのように、遺伝的に発生するものもあります。また、慢性甲状腺炎(橋本病)にがんが合併することも少なくありません。

甲状腺がんは顕微鏡検査での分類である組織型により、乳頭がん、濾胞(ろほう)がん、髄様がん、未分化がんに分類されます。このいずれであるかによって、病態や悪性度が大きく異なります。

このうち、乳頭がんが全甲状腺がんの約90パーセントを占め、次いで多いのは濾胞がんです。この両者は分化がんと総称され、がん組織が異常であるとはいえ、比較的正常組織に似ています。一般に進行が遅く、治りやすいがんであるのが大きな特徴。リンパ節や肺などに転移がみられる場合もあります。

髄様がんは全甲状腺がんの1〜2パーセント程度を占め、約4分の1が遺伝性。リンパ節転移を起こしやすく、副腎(ふくじん)や副甲状腺の疾患を伴うこともあります。分化がんに比べると悪性度は高いものの、未分化がんほど悪性度は高くありません。

一方、未分化がんは全甲状腺がんの2〜3パーセント程度を占め、あらゆるがんのうちで最も増殖スピードが速いと見なされているもので、全身的な症状を伴ってくるのが特徴です。元からあった分化がんが長年のうちに、変化(転化)して未分化がんになると考えられています。分化がんと比較して、60〜70歳以上の高齢者にやや多く、発生に男女差はほとんどありません。

甲状腺がんの症状は通常、首の前部にしこりを触れるだけです。長年放置して大きなしこりとなると、目で見ただけでわかるサイズになりますし、周囲臓器への圧迫症状を呈することもあります。進行すると、声帯の反回神経のまひを生じて、声がかすれたり、首や全身のリンパ節に転移を生じたり、気管や食道にがんが広がります。

ただし、以上のことは甲状腺分化がんの場合であって、未分化がんでは早い時期から急激な増大、痛み、息苦しさ、全身の倦怠(けんたい)感など多彩な症状を呈します。

甲状腺がんの検査と診断と治療

首のしこりが甲状腺に関係するかどうかは一般の医師でもわかるので、まず掛り付け医を受診し、甲状腺腫瘍(しゅよう)と判明したら、甲状腺を専門にする外科医を受診します。

医師による診断では、手で触る触診以外に、超音波検査(エコー検査)、CT検査などを行います。また、しこりに細い針を刺してがん細胞の有無を顕微鏡で調べる吸引細胞診で、組織型を判断します。目的に応じて甲状腺シンチグラフィ、MRI検査なども行われます。

髄様がんでは、血中のカルシトニンやCEAといった検査値が高くなりますので、診断は容易です。遺伝性のこともあるので、遺伝子の検査や家系調査などが必要となってくることもあります。

治療においては、乳頭がん、濾胞がん、髄様がんはすべて手術の対象となります。病変の広がりにより、甲状腺の全部を切除する甲状腺全摘術、大部分を切除する甲状腺亜全摘術、左右いずれか半分を切除する片葉切除術などを行います。甲状腺の全部や大部分を切除した場合には、残った甲状腺が十分な甲状腺ホルモンを作れないために、チラージンSという甲状腺ホルモン剤を投与します。

首のリンパ節は原則として切除しますが、その範囲もがんの進み具合により判断されます。10ミリ以下の極めて微小な分化がんでは、リンパ節切除を省略する場合もあります。 遠隔臓器に転移を来した分化がん、ことに濾胞がんでは、甲状腺全摘の後にアイソトープ(放射性ヨードの内服剤)の投与が行われます。分化がんに対して、抗がん剤による有効な化学療法はありません。

一方、甲状腺未分化がんに対しては、手術よりも外照射による放射線療法と、抗がん剤による化学療法が中心的な治療となります。従来、有効な治療法が確立されていませんでしたが、近年は複数の抗がん剤の併用が有効なケースもみられます。

甲状腺の手術に特徴的な合併症としては、反回神経まひ、副甲状腺機能低下があります。甲状腺に接する反回神経を手術の時に切断する場合には、声がかすれる、水分を飲むとむせるようなこともあるものの、6カ月から1年経過をみて回復しない場合には、声帯内にシリコンを注入して声をよくします。副甲状腺4個のうちいくつかも手術の時に切除されることが多いのですが、3個以上の摘出では血液中のカルシウムが低下し、指先や口の周囲のしびれが起こることがあるため、カルシウム剤剤や活性化ビタミンD3の補充を行います。

甲状腺がんの予後は、未分化がんを除き良好です。特に、大部分を占める乳頭がんでは、術後10年生存率が90パーセントを超え、がんのうちでも最も治りやすい部類に属します。濾胞がんでも、これに準ずる高い治療成績が得られます。髄様がんでは、分化がんに比べるとやや不良ながら、一般のがんに比べると予後は良好です。未分化がんでは、治療成績は極めて悪いのが現状です。

🇰🇪シーハン症候群

分娩時の大量出血の結果、分娩後の女性に起こる下垂体機能低下症

シーハン症候群とは、分娩(ぶんべん)の際の大量出血によって、分娩後の女性に起こる下垂体機能低下症。正常分娩の後に限らず、流産の後、中絶の処置の後の女性にも起こり得ます。

妊娠中は、脳の下にある小さな分泌腺(せん)に相当し、ホルモンの倉庫である下垂体(脳下垂体)の組織の体積が増加する過形成があります。主に、分娩の後の大量出血の結果として、過形成がある下垂体への血流が一時的に途絶え、視床下部と下垂体をつないでいる下垂体門脈という血管の梗塞(こうそく)によって、下垂体が壊死(えし)に陥り、シーハン症候群がまれながら起こります。時には、10年以上も後に、シーハン症候群が起こることがあります。

通常は、下垂体前葉と呼ばれる部分が虚血性壊死に陥ることで、組織が障害されて機能が下がり、分泌されるホルモンが全般的に減少します。下垂体が分泌するホルモンには、副腎(ふくじん)皮質刺激ホルモン(ACTH)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、成長ホルモン(GH)、プロラクチン(PRL)、黄体化ホルモン(LH)、卵胞刺激ホルモン(FSH)の6つがあります。

つまり、下垂体からは副腎、甲状腺、卵巣など各ホルモン分泌器官を刺激するホルモンが分泌されていますから、下垂体の機能低下の結果として、これらの器官から分泌されているホルモンも欠乏し、さまざまな症状が現れます。

典型的な症状としては、分娩の後に乳房の委縮や乳汁の分泌停止がみられ、その後、産褥(さんじょく)期を過ぎても、元気が出ず、全身がだるく、食欲もないためにやせてきます。月経の再来がなく、無月経の状態になることもあります。

また、恥毛(ちもう)、わき毛、まゆ毛などの脱毛がみられます。そして、徐々に下垂体機能低下症の症状が出てきて、副腎機能の低下、甲状腺機能の低下などが起こります。副腎機能の低下では、低血圧、低血糖、意識障害なども出現します。甲状腺機能の低下では、寒け、皮膚の乾燥、集中力と記憶力低下なども出現します。

シーハン症候群の検査と診断と治療

内科、内分泌科、内分泌代謝内科、婦人科の医師による診断では、血液中の下垂体ホルモンの測定をします。次に、視床下部ホルモン剤を注射して下垂体を刺激し、血液中の下垂体ホルモンが増えたかどうか、その値を調べます。下垂体ホルモンの値が異常に低下しているとか、視床下部ホルモンの刺激を受けて下垂体ホルモンの分泌が増加しなければ、シーハン症候群と診断します。

内科、内分泌科、内分泌代謝内科、婦人科の医師による治療では、エストロゲン剤、副腎皮質ホルモン剤、甲状腺ホルモン剤などのホルモン補充療法が行われます。不足しているホルモンを補うと、普通の人と変わらないほど元気になりますが、生涯、毎日欠かさずホルモン剤を内服しなければなりません。

ホルモンの必要量は、体の状況に応じて変動しますので、それに合わせて調整することが重要です。特に、副腎皮質刺激ホルモンが不足している場合、副腎皮質ホルモンの補充が必要となりますが、発熱や感染時には通常より多く服用するなど、自分で服用量を調整する必要があります。これらのことができている限り、日常生活に特に制限はありません。

妊娠を望む場合には、注射による排卵誘発(HMGーHCG療法)が必須となります。

🇰🇪シェ-グレン症候群

目と口が乾燥する自己免疫疾患

シェーグレン症候群とは、自己免疫の異常によって発症する自己免疫疾患。主症状とされる目の乾燥(ドライアイ)、口の乾燥(ドライマウス)のほかにも、全身にさまざまな障害を引き起こすことがあります。

自己免疫による疾患であり、自分の体の細胞に対して免疫反応を起こすことによって発症しますが、遺伝的要因、ウイルスなどの環境要因、さらに女性ホルモンの要因も複雑に関連し合っていると考えられています。免疫システムが涙を作る涙腺(るいせん)と唾液(だえき)を作る唾液腺を破壊してしまうために、目や口の乾燥が起こります。乾燥が進むと、目や口に傷が付いたり、涙や唾液の殺菌作用が働かず、感染症にかかりやすくなります。

シェ-グレン症候群という病名は、スウェーデンの眼科医ヘンリック・シェーグレンが1933年に発表した論文にちなんで、付けられています。

発症するパターンは2種類あり、医学的にもその2種類に大別されています。1つ目は原発性シェーグレン症候群で、関節リウマチなどの膠原(こうげん)病の合併のない種類です。 2つ目は続発性(二次性)シェーグレン症候群で、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、強皮症、皮膚筋炎、混合性結合組織病などの膠原病に合併する種類です。

原発性シェーグレン症候群の発症者の内訳をみると、約45パーセントの人は目と口の乾燥の症状のみを発症しています。ほとんど健康に暮らしている人もいますが、ひどい乾燥症状に悩まされている人もいます。約50パーセントの人は全身性の何らかの臓器障害を伴っていて、残り約5パーセントの人は悪性リンパ腫(しゅ)や原発性マクログロブリン血症を発症しています。

厚生省研究班の調査では、日本国内において1年間に、17000人が医療機関で治療を受けたという結果がまとまりました。 しかし、病気自体の認知度の向上や診断基準の普及などによって、発見、診断される率が高くなったことにより、シェーグレン症候群の患者数は近年、増加しています。 専門医の間では、診断を受けていない潜在的な発症者を含めると、約10~30万人と推定されています。

発症者は40~60歳の女性に多いのが特徴で、男女比は男性1人:女性14人。50歳代にピークがあり、子供や80歳以上のの老人が発症することも少数ながらあります。

続発性(二次性)シェーグレン症候群については、関節リウマチの発症者の約20パーセントにシェーグレン症候群が併発し、その他の膠原病の発症者にも併発しています。

シェ-グレン症候群の自覚症状は、以下のように現れます。

目の乾燥(ドライアイ)

涙が出ない、目がゴロゴロする、目がかゆい、目が痛い、目が疲れる、物がよく見えない、まぶしい、目やにがたまる、悲しい時でも涙が出ないなど。

口の乾燥(ドライマウス)

口が渇く、唾液が出ない、食事の際によく水を飲む、口が渇いて日常会話が続けられない、食べ物の味がよくわからない 、口内が痛む、夜間に飲水のために起きる、虫歯が多くなったなど。

鼻腔(びくう)の乾燥

鼻が渇く、鼻の中にかさぶたができる、鼻出血があるなど。

その他

唾液腺(だえきせん)の腫(は)れと痛み、息切れ、熱が出る、関節痛、毛が抜ける、肌荒れ、夜間の頻尿、紫斑(しはん)、皮疹(ひしん)、手指や足先が蒼白(そうはく)になり次いで紫色になってピリピリ痛んだりするレイノー現象、アレルギー、日光過敏、膣(ちつ)乾燥(性交不快感)など。全身症状として、疲労感 、記憶力低下、頭痛は特に多い症状で、めまい、集中力の低下、気分が移りやすい、うつ傾向などもよくあります。

病気の診断と、目や口の乾燥症状の治療

医師による診断では、1)口唇小唾液腺の生検組織でリンパ球浸潤がある、2)唾液分泌量の低下が証明される、3)涙の分泌低下が証明される、4)抗SSS‐A抗体か抗SS‐B抗体が陽性である、という4項目の中で2項目以上が陽性であれば、シェーグレン症候群と見なされます。

治療では、目や口などの乾燥症状を軽快させることと、疾患の活動性を抑えて進展を防ぐことが目的とされます。現状では、根本からシェーグレン症候群を治す治療法はありません。

目の乾燥(ドライアイ)に対する治療法は、涙の分泌の促進、涙の補充、涙の蒸発の防止、涙の排出の低下を目的に行われます。

涙の分泌を促進する方法として、ステロイド薬による抗炎症作用や炎症細胞の浸潤抑制による効果が一部で期待されます。

涙の補充には、人工涙液や種々の点眼薬を1日3回以上使用します。傷害された角膜上皮の再生促進や角膜炎の治療の目的として、ヒアルロン酸、コンドロイチン、ビタミンA、フィブロネクチンなどを含んだ点眼薬も使用されます。別の治療法として、自己血清を採取してこれを薄めて使用する方法が推奨されています。血清の中には、上皮成長因子、ビタミンなどさまざまな物質が入っているからです。

涙の蒸発を防ぐために、眼鏡の枠にビニール製のカバーをつけたモイスチャー・エイド(ドライアイ眼鏡)があります。

涙の排出を低下させるためには、鼻側の上下にある涙の排出口である涙点を閉じる方法があります。それには涙点プラグで詰める方法や、手術によって涙点を閉鎖する方法があります。

口の乾燥に対する治療法は、唾液の分泌促進、唾液の補充、虫歯の予防や口内の真菌感染予防、口腔(こうくう)内環境の改善を目的に行われます。

唾液の分泌を促進するものとして、アネトールトリチオン(フェルビテン)、ブロムヘキシン(ビソルボン)のほか、漢方薬なども用いられます。副腎(ふくじん)ステロイド剤も有効であり、症状に合わせて使用されます。

唾液の補充には、サリベートや2パーセントのメチルセルロースが人工唾液として使われます。サリベートは噴霧式で舌の上だけでなく、舌下、頬(ほお)粘膜に噴霧したほうが口内で長持ちします。また、冷蔵庫保存で不快な味が消えます。

虫歯の予防や口内の真菌感染、口角炎を予防するものとしては、イソジンガーグル、ハチアズレ、オラドール、ニトロフラゾン、抗真菌剤などが用いられます。歯の管理と治療としては、ブラッシング、歯垢(しこう)の除去と管理、虫歯、歯周病対策などがあります。オーラルバランスという口腔保湿剤もあります。

なお、全身性の臓器病変のある人の場合は、内科などでステロイド薬や免疫抑制薬などを含めて適した治療を受けるべきです。全身性の病変の中には、白血球減少、高γグロブリン血症、皮膚の発疹、間質性肺炎、末梢神経症、肝病変、腎病変、リンパ腫などがあります。

🇪🇹子宮下垂、子宮脱

子宮が下垂して腟の中外に脱出した状態

子宮下垂および子宮脱とは、子宮の位置の異常のこと。子宮が正常な位置よりやや下降して、腟(ちつ)内にとどまっている状態を子宮下垂といい、下垂がさらに進行して、子宮の一部または全部が腟から脱出してくる状態を子宮脱といいます。

子宮下垂や子宮脱があると、子宮の前方にある膀胱(ぼうこう)や後方にある直腸も、膣の壁と一緒に膣外に脱出する膀胱脱、直腸脱を合併することが多くあります。

子宮は骨盤内のほぼ中央にあり、前後左右に靭帯(じんたい)で支えられ、また骨盤底の支持組織と筋肉によって位置が保たれています。これらの子宮を支える靭帯や骨盤底の筋肉が弾力を失い、弱くなると発症します。

靭帯や筋肉が弱くなる原因としては、加齢のほか、妊娠や出産による影響も大きく、お産の回数が多かった人、難産だった人、出産の後あまり休まないで働いていた人、長年立ち仕事や肉体重労働を続けていた人などに多くみられます。特に、更年期以降、エストロゲンの分泌が低下してくると、膣や骨盤底の筋肉の緊張が緩んでくるために起こりやすくなります。先天的に骨盤底の筋肉や支持組織が弱い人は、1回の出産だけで起こることもあります。

疾患自体は健康に差し支えることは少なく、治療も必要ありません。ただ、脱出の程度が強くなると、子宮を指で押し戻すことができなかったり、外陰部に出た子宮が体や下着に接触して不快に感じたり、歩行の障害になることもあります。脱出部分の粘膜のただれや炎症のために、出血などの症状がみられることもあります。

また、膀胱脱では残尿が多くなって、腹圧性尿失禁の大きな原因の1つになります。下垂がひどくなると、逆に尿が出にくくなったり、頻尿になったりします。さらにひどくなると、尿が出なくなってしまい、しばしば膀胱炎の原因や腎臓の働きに障害を来すこともあります。

子宮下垂、子宮脱の検査と診断と治療

子宮の下垂感や脱出感があって日常生活に支障を来す場合には、婦人科、産婦人科を受診します。

医師の側は、立位や寝た状態での視診や内診によって、容易に診断できます。さらに、腹圧を加えることにより、子宮下垂と子宮脱の程度が増悪するので、明確に診断できます。

子宮下垂や子宮脱があるといっても、腟の中程まで落ち込んでいる程度で特に症状がなければ、治療は行いません。炎症、出血、尿漏れなどの症状があれば、治療が行われます。

保存的治療としては、硬質プラスチック製のペッサリーを腟内へ挿入し、下から子宮を支えて位置を矯正する方法があります。ペッサリーにはリング状、ドーナツ型、円錐型などがあり、日本では長期連続装着型のリング・ペッサリーが多く用いられていて、必要に応じて2個用いる場合もあります。適切な大きさのものを装着すれば、異物感もなく、性交渉にも問題はありません。ただ、長期に使うと下り物が増えたり、炎症を起こすことがあります。

手術療法では、程度や症状、年齢、持病の有無など全身状態、そして発症者自身の希望によって、さまざまな方法が行われます。

基本的には、骨盤内の臓器を支える筋肉や靭帯を腟のほうから修復する、腟式骨盤底修復術が行われます。状態に応じて、下垂した子宮を丸ごと摘出する子宮全摘術や、膀胱脱などで膨らんだ腟の壁を修復する手術などが、単独あるいは併用して行われます。

子宮全摘術の代わりに、子宮頸部(けいぶ)を切断して子宮を短くし、靭帯で固定するマンチェスター手術も行われます。また、妊娠を望む若い女性には、妊娠能力を残して臓器を固定する手術も行われます。逆に、高齢の女性には体への負担が軽いという意味で、腟を閉鎖する手術が行われることもあります。

子宮下垂、子宮脱の予防には、出産の後は十分に休養すること、骨盤底の部分の筋肉である肛門(こうもん)や尿道、膣口の回りの筋肉を収縮させる運動をすることが役立ちます。

🇪🇹子宮がん

女性性器のがんで、子宮頸がんと子宮体がんの別

子宮がんとは、胎児を宿す子宮に発生するがん。女性性器のがんの中で、最も多いものです。

がんの発生する部位によって、子宮頸(けい)がんと子宮体がんの2つに分けられます。

【子宮頸がんは40、50歳代に多く、若年層にも増加傾向】

子宮頸がんとは、子宮頸部の上皮から発生するがんのことをいいます。子宮頸部は、膣(ちつ)から子宮への入り口部分で、とっくりを逆さにしたような形をしている子宮の細い部分に当たり、その先端が腟の側に突き出ています。

先端の部分と内方の部分では、上皮の組織が異なっています。腟の側に突き出ている先端部分は、皮膚と同じく、数層の平ベったい細胞が重なった扁平(へんぺい)上皮で覆われています。これに対して、子宮体部の側の内方部分は、粘液を分泌する一層の細胞である腺(せん)上皮(円柱上皮)で覆われています。

一般にいう子宮頸がんは、約85パーセントが扁平上皮の細胞から発生する子宮頸部扁平上皮がんで、性成熟期に多く発症します。一方、腺上皮の細胞から発生する子宮頸部腺がんは、閉経後に多く発症します。子宮頸部扁平上皮がんは子宮膣部がん、子宮頸部腺がんは子宮頸管がんとも呼びます。

発生したがんは初め、扁平上皮、あるいは腺上皮の中にとどまっていますが、次第に子宮の筋肉に浸潤。さらに、腟や子宮の周りの組織に及んだり、骨盤内のリンパ節に転移したりします。ひどく進行すると、膀胱(ぼうこう)、直腸を侵したり、肺、肝臓、骨などに転移したりします。

子宮がん全体の中では、子宮頸がんは60~70パーセントを占めています。30歳代で増え始め、40、50歳代で最も多くみられますが、20歳代の人や80歳以上の人にもみられます。とりわけ、性交開始が低年齢化するとともに若年者の発症が多くなっているために、平成16年4月の厚生労働省の通達で、子宮頸がん検診の開始年齢を20歳に引き下げました。

死亡数は、激減しています。前がん病変での早期発見、早期治療のケースが増加し、がんになる前に治療がされるようになったことと、がんになったとしても、がんの進み具合を表す臨床進行期で0(ゼロ)期~Ia期に当たる早期がんのうちに、約65パーセントが発見され、ほぼ100パーセント治癒するようになったためです。

しかしながら、発生率は少なくなっていません。子宮頸部腺がんでは、検診で比較的発見されにくく、進行してから発見される場合もあります。放射線治療や化学療法が効きにくいなど、扁平上皮がんと比べると子宮頸部腺がんの予後は、悪い傾向にあります。

【子宮頸がんはヒトパピローマウイルスの感染が誘因に】

直接、発がんと結び付く原因はまだわかっていませんが、いくつかの疑わしい因子はわかっています。以前から、多産婦に多いことが統計学的に証明されているほか、高リスクの因子として、初めての性交年齢の若い人、性行為の相手が複数いる人、喫煙歴のある人などが挙げられています。

近年、注目されている高リスク因子は、性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス:HPV)。ほとんどの子宮頸がんで、このウイルスが組織中から検出されるため、がんの発生の引き金となると考えられています。

ヒトパピローマウイルスは、いぼを作るウイルスの一種で、男性性器の分泌物などに含まれています。70種類以上あるタイプの中のいくつかのものが、前がん病変の形成や頸がんの発生に関与。一般に、ウイルスを持った男性との性交渉によって、外陰部、腟、子宮頸部などの細胞に感染します。

外陰がんや腟がんは非常にまれにしか生じないのに対して、子宮頸がんは比較的多く発生します。とはいっても、実際に子宮頸がんになる人は、ヒトパピローマウイルスに感染した人の中の一部にすぎません。

前がん病変が形成されても、軽度の場合は経過観察しているうちに、約70パーセントが自然に消失することも知られています。発がんには、ウイルスに感染した人の体質、すなわち遺伝子の不安定性や免疫なども関係しているようです。

初期の子宮頸がんではほとんどが無症状ですが、子宮がん検診で行う子宮頸部細胞診により発見することができます。

進行した際の自覚症状としては、月経以外の出血である不正性器出血が最も多く、特に性交時に出血しやすくなります。膿(うみ)のような下り物が増えることもあります。下腹部痛、腰痛、下肢痛や血尿、排尿障害、血便、下痢などが現れることもあります。

【子宮体がんは子宮体部の内膜に発生するがん】

子宮体がんとは、子宮体部の粘膜にできる悪性腫瘍(しゅよう)。子宮頸部(けいぶ)に悪性腫瘍ができる子宮頸がんと合わせて、子宮がんと呼ばれていますが、子宮体がんと子宮頸がんの二つは、発生部位はもとより、好発年齢、発生原因、症状が異なるため 、区別して扱う疾患です。

子宮体部は、子宮の奥の赤ちゃんを育てる部分。外側は筋肉に覆われており、内側は子宮内膜という粘膜でできています。その内膜にがんができるのが、子宮体がんです。

主に閉経後の50歳以上の人に好発し、若い人では、不妊症の人や卵巣機能に障害がある人に起こります。

初期の症状としては、何らかの不正出血、下り物がみられます。閉経前では、月経が長引いたり、周期が乱れるという形で不正出血があります。閉経後では、少量の出血が長く続く場合には注意が必要です。

下り物は黄色、褐色から始まり、次第に血性、肉汁様になって、進行すると膿(のう)性になり、悪臭を放つようになります。高齢者では、子宮の入り口が狭くなって詰まってしまい、子宮の中に出血や分泌物が貯留することもあります。

さらに進行すると、子宮体部の内膜に発生したがんは、徐々に子宮体部壁に広がっていきます。広がりが深くなると、骨盤リンパ節や腹部動脈節に転移が起こり、卵巣、卵管、子宮頸部、腹膜へも進展します。さらに、肺、肝臓などの遠隔臓器へも転移します。

一般に、子宮体がんの進行は、子宮頸がんより遅いといわれています。以前は子宮頸がんが子宮がんの大半を占めていましたが、最近では食生活及び生活習慣の欧米化や、高齢化などにより、子宮体がんが増える傾向にあります。今後はさらに増加するものと予測されます。

発生や進行には、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が影響を与えています。エストロゲンは内膜を増殖させる作用があり、一方、排卵後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、増殖を抑制する作用があります。更年期には、月経があっても排卵が起こっていないことが多く、排卵後に分泌されるプロゲステロンが十分に出ないため、内膜が過剰に増殖して子宮内膜症になり、さらに、子宮体がんに進展する可能性があります。

子供がいないか少ない人や、不妊、卵巣機能不全、肥満、高脂血症、糖尿病などを抱えている人も、エストロゲンが子宮内膜に働いている時間が長くなるため、子宮体がんのリスクを高めるといわれています。

子宮がんの検査と診断と治療

【進行度で異なる子宮頸がんの治療法】

不正性器出血があったら、婦人科で検査を受けるのがよいでしょう。症状がなくても、年に1回程度は子宮がん検診を受けることが最善です。

子宮頸がんの検査では、子宮頸部を綿棒などでこすって、細胞診用の検体を採取します。細胞診で異型細胞が認められた場合には、コルポスコープと呼ぶ膣拡大鏡で5~25倍に拡大して観察しながら、疑わしい部分の組織を組織診用に採取し、病理学的に検査して診断を確定します。

進行がんの場合は肉眼で見ただけでわかりますが、確定のために細胞診と組織診が行われます。さらに、内診、直腸診で腫瘍(しゅよう)の大きさや広がりを調べます。

子宮頸がんの診断が付いた場合は、胸部X線検査、経静脈性尿路造影、膀胱鏡、直腸鏡検査を行い、臨床進行期が決定されます。腹部超音波検査、CT、MRIによって病変の広がりを調べることも、治療法の選択に当たって重要視されます。

子宮頸がんの主な治療法は、手術療法または放射線療法。年齢、全身状態、病変の進行期を考慮して、治療法が選択されます。治療成績は手術、放射線ともほぼ同じですが、日本では手術が可能な進行期までは、手術療法が選ばれる傾向にあります。

早期がんである0期に対しては、子宮頸部だけを円錐(えんすい)形に切り取る円錐切除術を行うことで、術後に妊娠の可能性を残すことができます。また、レーザーによる治療を行うこともあります。レーザー治療では、子宮頸部をほぼ原形のまま残し、術中まったく出血することなく、痛みもないので無麻酔下で行える利点があり、治療成績も良好です。妊娠の希望がない場合は、単純子宮全摘術を行うこともあります。

進行期の中で浸潤が浅いIa 期の場合は、単純子宮全摘術が標準的ですが、妊娠を強く希望される人の場合は、円錐切除術のみが行われることがあります。

明らかな浸潤がんのIa2期や、子宮の周囲にがんが広がるII期の場合は、広汎(こうはん)子宮全摘術が一般的です。広汎子宮全摘術では、子宮だけでなく、子宮の周りの組織や腟を広い範囲で切除し、通常は卵巣も切除します。40歳未満の場合は、卵巣を温存することもあります。摘出物の病理診断でリンパ節転移や切除断端にがんがあった場合は、術後に放射線療法を追加します。

がんの浸潤が深く、広い範囲に及んで手術ができないIII~IV期の進行がんの場合や、高齢者、全身状態の悪い人の場合は、手術の負担が大きいため放射線療法を行います。

放射線療法は通常、子宮を中心とした骨盤内の臓器におなかの外側から照射する外部照射と、子宮、腟の内側から細い器具を入れて照射する腔内照射を組み合わせて行われます。外部照射ではリニアックというX線を用い、腔内照射ではラジウムに替わってイリジュウムが使われるようになっています。

さらに近年、新しく有効な抗がん薬の開発が進み、主治療の手術や放射線療法を行う前に、原発病巣の縮小と遠隔転移の制御を目的にして、主治療前補助化学療法(NAC)も行われるようになりました。点滴で薬を投与するのが一般的な投与法ですが、子宮動脈へ動注する方法もあります。

IIb期やIIIa期でも、先に化学療法を行ってがんを小さくしてから、手術することもあります。IIIb~IVa期などの本来は手術ができない進行期のがんも、NACを行った後に、手術ができることもあります。NAC併用後に手術ができた場合、放射線療法単独の場合よりも治療効果が高いことが報告されており、最近ではNACを行うことが標準的になっています。

【早期の発見、治療が大切な子宮体がん】

子宮がんでは、早期発見、早期治療が重要です。子宮体がんは子宮頸がんと同様、初期には自覚症状がない場合が多いので、早期発見のために、年に一度は定期検診を受けましょう。50歳前後に発症が多く、最近は閉経後の子宮体がんが増加していますから、閉経後も検診が必要です。

不正出血は大きな手掛かりで、がんになる前の状態の子宮内膜増殖症の段階でも、不正出血が出ることがあります。症状が出てから検診しても、進行がんとは限らないわけです。逆に、進行がんの段階になっても、不正出血のない人もいますので、やはり定期的な検診が大切なのです。

ふだんから自分の体の健康状態に気を付け、不正出血や下り物の異常、性交時の出血、下腹部痛などいつもと違う兆候があったら、ためらわず婦人科を受診することも大切です。

なお、子宮がんの検査を受けた場合でも、実際には子宮頸がんの検査だけを行っている場合もありますから、注意して確認してください。子宮体がんは子宮の奥にできるので、頸がんの検査では発見できません。

検査はまず、細胞診でチェックします。細いチューブを腟から子宮の中に入れて子宮内膜の細胞を吸引採取したり、挿入したブラシでかき取った細胞を、調べます。多少痛みがあります。

細胞診で疑わしい兆候があった場合、あるいは子宮体がんの疑いが強い場合は、最初から組織診が行われることもあります。キューレットと呼ばれる細い金属棒の先に小さな爪のある道具で、子宮体部の組織をかき取り、顕微鏡で検査する方法が中心になっています。少し痛みがあり、出血が数日続くこともあります。

子宮体がんの治療では、手術、放射線、抗がん剤に加え、ホルモン療法が有効な場合もあります。基本は、やはり手術です。

主な手術には、単純子宮全摘術と附属器の切除、広汎子宮全摘術があります。前者の手術は、腹部を切開して子宮と卵巣、卵管を切除する手術です。進行の程度により、周囲のリンパ節の切除も加えます。後者の手術は、子宮と卵巣、卵管、腟、さらに子宮周囲の組織を広く切除する手術で、周囲のリンパ節も一緒に切除します。

手術によって、リンパ節転移が発見されたり、がんが子宮の壁に深く食い込んでいることがわかった場合に、手術後に放射線療法を行うこともあります。抗がん剤を投与して腫瘍を小さくしてから、手術を行うこともあります。

手術が難しい場合は、抗がん剤や放射線による治療を行うことになります。抗がん剤の場合は副作用を抑える薬などが併用され、放射線治療の場合も重い放射線障害が起こらない範囲で治療が行われています。それでも、ある程度の副作用があることは、やむを得ないところです。

また、子宮体がんは女性ホルモンと関係が深いので、ホルモン療法が有効なことがあり、注目されています。基本的には、プロゲステロン(黄体ホルモン)の働きをする薬を飲みます。

【予防の基本は生活習慣と食生活の改善】

子宮がんの予防の基本は、体や局部を清潔に保つことです。また、日常の生活習慣や食生活と子宮がんは、密接な関係にあるといわれています。

改善できる生活習慣では禁煙があり、お酒を飲みすぎない、バランスのとれた食事をし、決して食べすぎず、適切な運動と休養をとり、ストレスをためない工夫を心掛けることです。

特に、食べ物では、高塩分、高コレステ ロール食は避け、繊維質、緑黄色野菜、魚類や、がんを抑える作用があるといわれる大豆食品をたくさん摂取するようにします。

また、がんの発生要因とされている活性酸素を抑える物質を多く含む食品を取ることも、有効ながん予防策。活性酸素を消去する物質としては、体内で作り出される抗酸化酵素と、食事等から摂取する抗酸化力のあるビタミンA(β―カロチン)、C、E、B群やポリフェノール、カロ チノイド、大豆イソフラボンなどがあります。

🇪🇹子宮筋腫

女性の病気の中でも、特に多い病気

子宮筋腫(きんしゅ)とは、子宮の筋肉にできる良性腫瘍(しゅよう)で、こぶのように硬い球形の腫瘍です。その90~95パーセントが子宮の体部に発生し、残りの5~10パーセントが子宮の頸部(けいぶ)に発生すると見なされ、子宮筋の内側にできる場合と外側に張り出してくる場合とがあります。

女性の病気の中でも特に多く、35歳以上の女性では約20パーセントに認められることが知られています。年代的には40歳代に最も多く、ほとんどの場合30~50歳に発見されますが、ごく小さな米粒ぐらいの筋腫まで含めれば、過半数の人が持っていると考えられます。つまり、子宮筋腫があることに気付かないまま、過ごしている人も少なくないのです。

子宮の壁は、平滑筋という筋肉でできています。妊娠によって子宮が大きくなったり、出産の時に陣痛が起こるのも、筋肉が伸縮するからです。この筋肉層にできる腫瘍が子宮筋腫で、平滑筋の細胞が異常に増殖するものです。

なぜ、細胞が異常な増殖を始めるのか、その原因はよくわかっていません。しかし、初経(初潮)が始まった後に子宮筋腫ができてくることから、生まれ付き持っている素因に、エストロゲンなど女性ホルモンの影響が加わり、筋腫が成長していくのではないか、と考えられています。

卵巣からの女性ホルモンの分泌が止まる閉経後では、子宮の縮小に伴って筋腫も退縮し、小さくなっていきます。

筋腫がどの方向に育っていくかによって、子宮筋腫は3種類に分けられます。その種類によって、症状の現れ方にも違いがあります。

一番多いのが、子宮の筋肉の中で筋腫が大きくなっていく筋層内筋腫、次が子宮の外側に向かって成長する漿(しょう)膜下筋腫、そして、数は少ないのですが症状が一番強く現れやすいのが子宮の内側に向かって発育していく粘膜下筋腫。

一般的には、子宮筋腫は月経がダラダラ続く、月経時の出血量が多い、貧血がある、月経痛がひどいなど、月経に関連した症状で気付くことが多いようです。月経が10日以上も続いたり、出血量が多くなって貧血を起こしたり、動悸(どうき)や息切れを起こす人もいます。

3種類の筋腫で違いがある症状

症状が一番強く現れやすいのが、粘膜下筋腫です。筋腫が子宮の内側に向かって発育するため、出血しやすく、まだ筋腫が小さいうちから出血がダラダラ続いたり、月経時の出血量が多いといった症状が現れやすいのです。逆に、内側に筋腫ができるので、外からは触れにくいのも特徴です。

子宮筋腫があると妊娠しにくくなるといわれますが、粘膜下筋腫は胎児が宿る子宮の内腔(ないくう)に突き出てくるため、とりわけ妊娠しにくくなります。また、粘膜下筋腫が大きくなり、茎を持ってぶらさがるように子宮の中で発育すると、まれには腟(ちつ)の中に筋腫が顔を出すこともあります。

こうした状態を筋腫分娩(ぶんべん)と呼びます。不正出血が続いたり、筋腫を伝わって腟の中から子宮の中に細菌感染が起こり、危険な状態になることもあります。実際、不妊症の検査で筋腫が発見される人も、大勢います。

筋腫がかなり大きくなるまで症状が現れにくいのが、筋腫が子宮の外に向かって成長していくタイプ、すなわち漿膜下筋腫です。ふつう子宮は60~70gほどの重さですが、中には1kg、まれには2kgもの筋腫を抱えるようになる人もいます。

外からしこりに触れるような大きさになっても、月経に関連したつらい症状がほとんどないことが多く、そのために見過ごされてしまうことも多いのが、漿膜下筋腫の特徴です。

筋肉の中で筋腫が成長する筋層内筋腫の場合は、大きくなるにつれて、子宮の内側を覆う子宮内膜が引き伸ばされていきます。そのため、月経痛や月経時の出血が多くなり、下腹部を触るとしこりがわかるようになります。

しかしながら、筋腫がゆっくりと大きくなっていくと、自覚しにくいこともあります。「下腹部のしこりは、最近太ったからだろう」、「月経血が多いのは、自分の体質のせい」と、勝手に解釈していることも少なくありません。

検査と診断と治療

病気は、ふつう治療するものです。しかし、子宮筋腫の場合は、どうなれば治療をするというはっきりした基準がありません。基本的には、自覚症状がどのくらいつらいかが、治療を受けるかどうかの判断基準になります。

過多月経、不正出血などの出血傾向が強くて、次第に貧血がひどくなる場合、鎮痛薬が効かないような強い月経痛がある場合には、治療の対象になります。筋腫が不妊や習慣性流産、早産の原因になると考えられる場合も、対象になります。

筋腫の大きさがこぶし大以上になった場合も、治療を考えるべきでしょう。筋腫が大きくなると、周囲の臓器を圧迫し、便秘になる、尿が近い、下腹部が張る、月経時以外にも下腹部痛や腰痛などに悩まされる、といったことも起こります。さらに筋腫が巨大になると、尿管を圧迫して腎(じん)臓から膀胱(ぼうこう)に尿が流れにくくなり、腎臓を悪くする水腎症になることもあります。

子宮筋腫自体は良性の腫瘍なので、命にかかわることはありませんが、急激に大きくなったものや下腹部がいっぱいになるほど大きなものは、まれに肉腫などの悪性腫瘍の場合もあります。

今は、MRI(磁気共鳴画像診断装置)など画像診断機器が進歩しているので、子宮筋腫の有無は触診と超音波検査でほぼわかります。筋腫の中でもどの種類なのか、とりわけ子宮の内側に発育した粘膜下筋腫は診断が付きにくかったのですが、子宮内部の様子を外から観察し、診断をすることが可能になりました。

治療には薬物療法と摘出手術という2つの方法がありますが、根本的な治療は手術になります。

薬物療法は、ホルモン剤によって、女性ホルモンのエストロゲンの分泌を一時的に停止させる方法です。Gn-RH製剤と呼ばれる薬が使われ、月1回注射を打つ方法、1日に2~3回、鼻に噴霧する方法などがあります。これによって、筋腫の重さを半分から3分の2くらいまで縮小させることができます。

しかしながら、この方法では人工的に閉経したのと同じような状態を作るため、更年期障害が現れ、骨粗鬆(こつそしょう)症のリスクも高めることになります。Gn-RH製剤を使うのは、半年が限度とされています。その後、半年治療を中断すれば、骨も元に戻り、骨粗鬆症のリスクも低下しますが、筋腫もまた元の大きさ近くに戻りますので、根本的な治療にはなりません。

最近は、閉経が間近な人や、手術の前に月経を止めて貧血を治したり、筋腫を小さくさせる必要のある人などに対して、補助的な意味合いで使われることも多いようです。

また、子宮に栄養を供給する子宮動脈を人工的に詰まらせ、筋腫を栄養不足にすることで小さくする、子宮動脈塞栓(そくせん)術という治療法があります。X線でモニターしながら、大腿(だいたい)部の動脈から子宮動脈まで細い管を挿入し、詰め物で血管に栓をします。まだ一般的な治療ではなく、一部の施設で試みられている段階です。

手術で筋腫を摘出する場合は、筋腫のみを摘出して子宮を残す方法と、子宮ごと筋腫を摘出する方法とがあります。どの方法を選ぶかは、年齢や妊娠の希望の有無、筋腫の状態、症状の程度などによって決定されます。

手術の方法も、おなかにメスを入れる開腹手術だけではなく、腟から子宮を取る手術や、腹腔鏡など内視鏡によって開腹せずに行う手術もあります。

開腹手術によって腹部からメスを入れる方法は、大きな筋腫も摘出できるのが長所。半面、傷跡も多少目立ちます。

子宮が握りこぶし大より小さくて癒着がなく、悪性腫瘍や卵巣嚢腫(のうしゅ)などの合併もなく、腟からの分娩を経験したことのある人ならば、腟のほうからメスを入れて子宮の摘出を行う腟式手術を行うこともできます。

近年、急速に広まっている内視鏡による手術は、傷跡が小さいかほとんどなく、回復が早いのが長所です。

子宮を残して筋腫だけを摘出する場合、子宮の内側に筋腫ができた粘膜下筋腫ならば、子宮鏡が使われます。腟から子宮の中に子宮鏡を入れ、電気メスで筋腫を少しずつ 削り取っていきます。筋腫はあまり大きくない4~6cm以下、筋腫が内側に飛び出していることなど、いくつかの条件があります。

一方、腹部にいくつか穴を開けて細い管を挿入し、電気メスなどを操作して子宮筋腫を切除するのが、腹腔鏡手術です。子宮を丸ごと摘出することも、筋腫だけを摘出することも可能で、適応になるのは筋層内筋腫や漿膜下筋腫。

なお、開腹手術でも内視鏡による手術でも、子宮を残せば、子宮筋腫の再発の可能性があります。特に20代、30代で手術をした人は、その後の長い年月、エストロゲンにさらされますので、筋腫が再発してまた大きくなる危険性があります。複数の筋腫があった人も、再発の危険性が高くなります。

再手術になると、筋腫だけを取ることは難しいので、子宮の全摘手術を受けることになります。

🇸🇸子宮頸管炎

女性の半数以上が経験する炎症

子宮頸管(けいかん)炎とは、子宮の下部にある頸管粘膜が病原菌に感染して、炎症が起きる病気。単独で起こることはまれで、多くみられるのは腟(ちつ)炎から菌が上ってきて、炎症を起こすケースです。

子宮頸管は、女性性器の中で膣と同様、最も感染を受けやすいところです。腟を介して外界と直接通じていること、出産時や人工妊娠中絶時に頸管損傷を生じやすいこと、さらに感染に比較的弱い子宮腟部びらんが頸管の入り口に存在することなどが、その理由となっています。

女性の半数以上は、この子宮頸管炎にかかった経験を持っているとされます。とりわけ、出産したことのある女性の場合では、六割以上に認められるとされているところです。

原因となる菌として、従来は淋(りん)菌によるものが多かったのですが、最近では大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌などの膣に存在する膣内常在菌と、性行為により感染するクラミジアによるものが多くなってきています。ほかに、結核菌による感染、出産や人工妊娠中絶などの子宮内操作に続発する細菌感染もあります。

特に、クラミジアの感染による頸管炎は、比較的自覚症状が少ないことや、ピル(経口避妊薬)や避妊リングの普及、性の自由化と関連して、日本を含めた先進諸国で隠れた大流行があるといわれています。慢性化して不妊の原因になる場合もあります。

急性、慢性別の症状と、抗生物質による治療

子宮頸管炎は経過により、急性と慢性に分けられます。急性の場合の症状としては、子宮頸管部の入り口に細菌感染が起こると、頸管腺(せん)からの粘液分泌が増量し、しばしば膿(のう)性の下り物がみられます。頸管腺から分泌される粘液は本来、腟からの細菌感染を防ぐ一方、排卵期には、はしごの役割をなして、精子の貫通性をよくする働きをしているものです。

また、頸管の粘膜が炎症でただれているので、セックスなどの後に出血することがあります。

急性で炎症が激しい場合には、周囲にも炎症が及んで尿道炎、子宮内膜炎、骨盤腹膜炎を併発すると、排尿痛、下腹部痛、腰痛、発熱なども現れることもあります。急性の経過をとる代表的なものは、淋菌による頸管炎。

慢性の場合には、炎症の持続的刺激により頸管腺の分泌が増し、頸管腺の組織も増殖し、子宮頸部も肥大してきます。そのため、ネバネバした濃い黄白色の下り物が頑固に続きます。時には、慢性的に炎症が周囲に及ぶため、腰痛や性交痛を生ずることもあります。

医師による治療では、炎症を起こしている原因菌を突き止め、症状に応じて抗生物質の内服、点滴、腟内投与が行われます。実際は、抗生物質を内服してもなかなか薬剤が頸管部まで到達しないことが多く、直接、膣の中に抗生物質を含んだ座薬を入れることになります。

炎症が軽く、下り物もあまり多くなければ、放置しておいてもかまいません。クラミジア感染による場合は、パートナーも一緒に治療を受けることが必要となります。

🇸🇸子宮頸がん

40、50歳代に多く、若年層にも増加傾向

子宮頸(けい)がんとは、子宮頸部の上皮から発生するがんのことをいいます。子宮頸部は、膣(ちつ)から子宮への入り口部分で、とっくりを逆さにしたような形をしている子宮の細い部分に当たり、その先端が腟の側に突き出ています。

先端の部分と内方の部分では、上皮の組織が異なっています。腟の側に突き出ている先端部分は、皮膚と同じく、数層の平ベったい細胞が重なった扁平(へんぺい)上皮で覆われています。これに対して、子宮体部の側の内方部分は、粘液を分泌する一層の細胞である腺(せん)上皮(円柱上皮)で覆われています。

一般にいう子宮頸がんは、約85パーセントが扁平上皮の細胞から発生する子宮頸部扁平上皮がんで、性成熟期に多く発症します。一方、腺上皮の細胞から発生する子宮頸部腺がんは、閉経後に多く発症します。子宮頸部扁平上皮がんは子宮膣部がん、子宮頸部腺がんは子宮頸管がんとも呼びます。

発生したがんは初め、扁平上皮、あるいは腺上皮の中にとどまっていますが、次第に子宮の筋肉に浸潤。さらに、腟や子宮の周りの組織に及んだり、骨盤内のリンパ節に転移したりします。ひどく進行すると、膀胱(ぼうこう)、直腸を侵したり、肺、肝臓、骨などに転移したりします。

子宮がん全体の中では、子宮頸がんは60~70パーセントを占めています。30歳代で増え始め、40、50歳代で最も多くみられますが、20歳代の人や80歳以上の人にもみられます。とりわけ、性交開始が低年齢化するとともに若年者の発症が多くなっているために、平成16年4月の厚生労働省の通達で、子宮頸がん検診の開始年齢を20歳に引き下げました。

死亡数は、激減しています。前がん病変での早期発見、早期治療のケースが増加し、がんになる前に治療がされるようになったことと、がんになったとしても、がんの進み具合を表す臨床進行期で0(ゼロ)期~Ia期に当たる早期がんのうちに、約65パーセントが発見され、ほぼ100パーセント治癒するようになったためです。

しかしながら、発生率は少なくなっていません。子宮頸部腺がんでは、検診で比較的発見されにくく、進行してから発見される場合もあります。放射線治療や化学療法が効きにくいなど、扁平上皮がんと比べると子宮頸部腺がんの予後は、悪い傾向にあります。

ヒトパピローマウイルスの感染が誘因に

直接、発がんと結び付く原因はまだわかっていませんが、いくつかの疑わしい因子はわかっています。以前から、多産婦に多いことが統計学的に証明されているほか、高リスクの因子として、初めての性交年齢の若い人、性行為の相手が複数いる人、喫煙歴のある人などが挙げられています。

近年、注目されている高リスク因子は、性行為によって感染するヒトパピローマウイルス(ヒト乳頭腫ウイルス:HPV)。ほとんどの子宮頸がんで、このウイルスが組織中から検出されるため、がんの発生の引き金となると考えられています。

ヒトパピローマウイルスは、いぼを作るウイルスの一種で、男性性器の分泌物などに含まれています。70種類以上あるタイプの中のいくつかのものが、前がん病変の形成や頸がんの発生に関与。一般に、ウイルスを持った男性との性交渉によって、外陰部、腟、子宮頸部などの細胞に感染します。

外陰がんや腟がんは非常にまれにしか生じないのに対して、子宮頸がんは比較的多く発生します。とはいっても、実際に子宮頸がんになる人は、ヒトパピローマウイルスに感染した人の中の一部にすぎません。

前がん病変が形成されても、軽度の場合は経過観察しているうちに、約70パーセントが自然に消失することも知られています。発がんには、ウイルスに感染した人の体質、すなわち遺伝子の不安定性や免疫なども関係しているようです。

初期の子宮頸がんではほとんどが無症状ですが、子宮がん検診で行う子宮頸部細胞診により発見することができます。

進行した際の自覚症状としては、月経以外の出血である不正性器出血が最も多く、特に性交時に出血しやすくなります。膿(うみ)のような下り物が増えることもあります。下腹部痛、腰痛、下肢痛や血尿、排尿障害、血便、下痢などが現れることもあります。

がんの進行度で異なる治療法

不正性器出血があったら、婦人科で検査を受けるのがよいでしょう。症状がなくても、年に1回程度は子宮がん検診を受けることが最善です。

子宮頸がんの検査では、子宮頸部を綿棒などでこすって、細胞診用の検体を採取します。細胞診で異型細胞が認められた場合には、コルポスコープと呼ぶ膣拡大鏡で5~25倍に拡大して観察しながら、疑わしい部分の組織を組織診用に採取し、病理学的に検査して診断を確定します。

進行がんの場合は肉眼で見ただけでわかりますが、確定のために細胞診と組織診が行われます。さらに、内診、直腸診で腫瘍(しゅよう)の大きさや広がりを調べます。

子宮頸がんの診断が付いた場合は、胸部X線検査、経静脈性尿路造影、膀胱鏡、直腸鏡検査を行い、臨床進行期が決定されます。腹部超音波検査、CT、MRIによって病変の広がりを調べることも、治療法の選択に当たって重要視されます。

子宮頸がんの主な治療法は、手術療法または放射線療法。年齢、全身状態、病変の進行期を考慮して、治療法が選択されます。治療成績は手術、放射線ともほぼ同じですが、日本では手術が可能な進行期までは、手術療法が選ばれる傾向にあります。

早期がんである0期に対しては、子宮頸部だけを円錐(えんすい)形に切り取る円錐切除術を行うことで、術後に妊娠の可能性を残すことができます。また、レーザーによる治療を行うこともあります。レーザー治療では、子宮頸部をほぼ原形のまま残し、術中まったく出血することなく、痛みもないので無麻酔下で行える利点があり、治療成績も良好です。妊娠の希望がない場合は、単純子宮全摘術を行うこともあります。

進行期の中で浸潤が浅いIa期の場合は、単純子宮全摘術が標準的ですが、妊娠を強く希望される人の場合は、円錐切除術のみが行われることがあります。

明らかな浸潤がんのIa2期や、子宮の周囲にがんが広がるII期の場合は、広汎(こうはん)子宮全摘術が一般的です。広汎子宮全摘術では、子宮だけでなく、子宮の周りの組織や腟を広い範囲で切除し、通常は卵巣も切除します。40歳未満の場合は、卵巣を温存することもあります。摘出物の病理診断でリンパ節転移や切除断端にがんがあった場合は、術後に放射線療法を追加します。

がんの浸潤が深く、広い範囲に及んで手術ができないIII~IV期の進行がんの場合や、高齢者、全身状態の悪い人の場合は、手術の負担が大きいため放射線療法を行います。

放射線療法は通常、子宮を中心とした骨盤内の臓器におなかの外側から照射する外部照射と、子宮、腟の内側から細い器具を入れて照射する腔内照射を組み合わせて行われます。外部照射ではリニアックというX線を用い、腔内照射ではラジウムに替わってイリジュウムが使われるようになっています。

さらに近年、新しく有効な抗がん薬の開発が進み、主治療の手術や放射線療法を行う前に、原発病巣の縮小と遠隔転移の制御を目的にして、主治療前補助化学療法(NAC)も行われるようになりました。点滴で薬を投与するのが一般的な投与法ですが、子宮動脈へ動注する方法もあります。

IIb期やIIIa期でも、先に化学療法を行ってがんを小さくしてから、手術することもあります。IIIb~IVa期などの本来は手術ができない進行期のがんも、NACを行った後に、手術ができることもあります。NAC併用後に手術ができた場合、放射線療法単独の場合よりも治療効果が高いことが報告されており、最近ではNACを行うことが標準的になっています。

🇸🇸子宮後屈

通常は前方に傾いている子宮が後方に傾いている状態

子宮後屈とは、通常は前方に傾いている子宮が後方に傾いている状態。子宮の後屈と呼ぶこともあります。

子宮は骨盤のほぼ中央に位置し、通常は前方、すなわち恥骨側に前傾前屈の位置をとっていますが、時として後方に後傾後屈の位置をとる状態が子宮後屈であり、正常女性の約20パーセントに認められるといわれています。

特に障害を伴わない場合は、疾患とは見なしません。かなり以前には病的と考えられて、不妊症や流産、腰痛を起こす原因になるとされ、手術が行われていた時代もありましたが、現在では治療の対象とは考えられていません。

原因には、先天的なものと、子宮内膜症や骨盤内の炎症などの疾患によるものがあります。

症状は、下腹部のだるさ、頻尿、排尿困難など。子宮の位置に問題があっても、特に症状がないことも多く、産婦人科の検査によって指摘され、初めて知るというケースも少なくありません。

子宮内膜症などが原因で、子宮と直腸、あるいは子宮と骨盤腹膜とが癒着し、非可動性の子宮後屈になっている場合には、原因疾患による症状が現れることはあります。

子宮後屈の検査と診断と治療

子宮の位置が後屈であると、妊娠しにくい場合もあるので、不妊の症状があれば婦人科、産婦人科の専門医を受診し、相談するようにします。一般的には、子宮後屈で不妊になることは少なくなっています。

医師の側では、内診や超音波検査により診断します。

特に問題がなければ、治療の必要はありません。後屈は自然に治ったり、妊娠を切っ掛けに治ることもあります。しかし、後屈が子宮内膜症によって生じた場合は、ホルモン療法や手術を行います。ホルモン療法では、ホルモン剤を内服したり、鼻から噴霧することで治療します。手術は子宮内膜症の原因によって癒着がひどくなったり、卵巣がはれた場合に行われますが、根治手術、準根治手術、保存手術の別があります。

また、出産により周辺の靭帯(じんたい)が緩み、子宮が後屈して軽い症状が見られる場合には、靭帯を鍛える運動を行うことで改善を図ります。

2022/08/26

🇸🇩子宮体がん

子宮体部の内膜に発生するがん

子宮体がんとは、子宮体部の粘膜にできる悪性腫瘍(しゅよう)。子宮頸部(けいぶ)に悪性腫瘍ができる子宮頸がんと合わせて、子宮がんと呼ばれていますが、子宮体がんと子宮頸がんの二つは、発生部位はもとより、好発年齢、発生原因、症状が異なるため 、区別して扱う疾患です。

子宮体部は、子宮の奥の赤ちゃんを育てる部分。外側は筋肉に覆われており、内側は子宮内膜という粘膜でできています。その内膜にがんができるのが、子宮体がんです。

主に閉経後の50歳以上の人に好発し、若い人では、不妊症の人や卵巣機能に障害がある人に起こります。

初期の症状としては、何らかの不正出血、下り物がみられます。閉経前では、月経が長引いたり、周期が乱れるという形で不正出血があります。閉経後では、少量の出血が長く続く場合には注意が必要です。

下り物は黄色、褐色から始まり、次第に血性、肉汁様になって、進行すると膿(のう)性になり、悪臭を放つようになります。高齢者では、子宮の入り口が狭くなって詰まってしまい、子宮の中に出血や分泌物が貯留することもあります。

さらに進行すると、子宮体部の内膜に発生したがんは、徐々に子宮体部壁に広がっていきます。広がりが深くなると、骨盤リンパ節や腹部動脈節に転移が起こり、卵巣、卵管、子宮頸部、腹膜へも進展します。さらに、肺、肝臓などの遠隔臓器へも転移します。

一般に、子宮体がんの進行は、子宮頸がんより遅いといわれています。以前は子宮頸がんが子宮がんの大半を占めていましたが、最近では食生活及び生活習慣の欧米化や、高齢化などにより、子宮体がんが増える傾向にあります。今後はさらに増加するものと予測されます。

発生や進行には、女性ホルモンのエストロゲン(卵胞ホルモン)が影響を与えています。エストロゲンは内膜を増殖させる作用があり、一方、排卵後に分泌されるプロゲステロン(黄体ホルモン)は、増殖を抑制する作用があります。更年期には、月経があっても排卵が起こっていないことが多く、排卵後に分泌されるプロゲステロンが十分に出ないため、内膜が過剰に増殖して子宮内膜症になり、さらに、子宮体がんに進展する可能性があります。

子供がいないか少ない人や、不妊、卵巣機能不全、肥満、高脂血症、糖尿病などを抱えている人も、エストロゲンが子宮内膜に働いている時間が長くなるため、子宮体がんのリスクを高めるといわれています。

早期の発見、治療が大切

子宮がんでは、早期発見、早期治療が重要です。子宮体がんは子宮頸がんと同様、初期には自覚症状がない場合が多いので、早期発見のために、年に一度は定期検診を受けましょう。50歳前後に発症が多く、最近は閉経後の子宮体がんが増加していますから、閉経後も検診が必要です。

不正出血は大きな手掛かりで、がんになる前の状態の子宮内膜増殖症の段階でも、不正出血が出ることがあります。症状が出てから検診しても、進行がんとは限らないわけです。逆に、進行がんの段階になっても、不正出血のない人もいますので、やはり定期的な検診が大切なのです。

ふだんから自分の体の健康状態に気を付け、不正出血や下り物の異常、性交時の出血、下腹部痛などいつもと違う兆候があったら、ためらわず婦人科を受診することも大切です。

なお、子宮がんの検査を受けた場合でも、実際には子宮頸がんの検査だけを行っている場合もありますから、注意して確認してください。子宮体がんは子宮の奥にできるので、頸がんの検査では発見できません。

検査はまず、細胞診でチェックします。細いチューブを腟から子宮の中に入れて子宮内膜の細胞を吸引採取したり、挿入したブラシでかき取った細胞を、調べます。多少痛みがあります。

細胞診で疑わしい兆候があった場合、あるいは子宮体がんの疑いが強い場合は、最初から組織診が行われることもあります。キューレットと呼ばれる細い金属棒の先に小さな爪のある道具で、子宮体部の組織をかき取り、顕微鏡で検査する方法が中心になっています。少し痛みがあり、出血が数日続くこともあります。

子宮体がんの治療では、手術、放射線、抗がん剤に加え、ホルモン療法が有効な場合もあります。基本は、やはり手術です。

主な手術には、単純子宮全摘術と附属器の切除、広汎子宮全摘術があります。前者の手術は、腹部を切開して子宮と卵巣、卵管を切除する手術です。進行の程度により、周囲のリンパ節の切除も加えます。後者の手術は、子宮と卵巣、卵管、腟、さらに子宮周囲の組織を広く切除する手術で、周囲のリンパ節も一緒に切除します。

手術によって、リンパ節転移が発見されたり、がんが子宮の壁に深く食い込んでいることがわかった場合に、手術後に放射線療法を行うこともあります。抗がん剤を投与して腫瘍を小さくしてから、手術を行うこともあります。

手術が難しい場合は、抗がん剤や放射線による治療を行うことになります。抗がん剤の場合は副作用を抑える薬などが併用され、放射線治療の場合も重い放射線障害が起こらない範囲で治療が行われています。それでも、ある程度の副作用があることは、やむを得ないところです。

また、子宮体がんは女性ホルモンと関係が深いので、ホルモン療法が有効なことがあり、注目されています。基本的には、プロゲステロン(黄体ホルモン)の働きをする薬を飲みます。

予防の基本は生活習慣と食生活の改善

子宮がんの予防の基本は、体や局部を清潔に保つことです。また、日常の生活習慣や食生活と子宮がんは、密接な関係にあるといわれています。

改善できる生活習慣では禁煙があり、お酒を飲みすぎない、バランスのとれた食事をし、決して食べすぎず、適切な運動と休養をとり、ストレスをためない工夫を心掛けることです。

特に、食べ物では、高塩分、高コレステ ロール食は避け、繊維質、緑黄色野菜、魚類や、がんを抑える作用があるといわれる大豆食品をたくさん摂取するようにします。

また、がんの発生要因とされている活性酸素を抑える物質を多く含む食品を取ることも、有効ながん予防策。活性酸素を消去する物質としては、体内で作り出される抗酸化酵素と、食事等から摂取する抗酸化力のあるビタミンA(β―カロチン)、C、E、B群やポリフェノール、カロ チノイド、大豆イソフラボンなどがあります。

🇸🇩子宮膣部びらん

病気ではなく、一種の生理的な変化

子宮腟(ちつ)部びらんとは、子宮の腟に面した部分の粘膜が赤く変化して、ただれているように見える状態。びらん、すなわち、ただれが子宮膣部に起きているわけではなく、病気ではありません。一種の生理的変化といえるものです。 

びらんが起きる原因には、女性ホルモンであるエストロゲンが深く関わっていると見なされています。

月経があると、エストロゲンが大量に分泌され、皮膚、外陰部、膣などと同じ扁平(へんぺい)上皮で覆われている子宮膣部が膨らむため、子宮の内側にあって、腺(せん)上皮(円柱上皮)で覆われている子宮頸管(けいかん)が外側にめくれてきます。

この子宮頸管の部分を覆う腺上皮は、粘液を分泌する一層の細胞から成り立っていて、毛細血管が際立っているために、赤くただれているように見えるのです。とりわけ若い女性では、エストロゲンが十分に分泌されているために、ホルモンに対する感受性の強い腺細胞が増殖し、頸管の部分がより外側にどんどん広がってきます。びらんのほとんどは、このようにしてできるのですから、びらんは病的というより生理的な変化といえるわけです。

月経がある女性では、びらん面の広さの程度が違っても、60~70パーセントに子宮膣部びらんがあるといわれています。更年期以降に女性ホルモンが減少すると、この赤く見えるところは次第に頸管内に退縮していきますので、閉経後の女性にはあまり見られません。

症状は下り物の増加、不正出血、接触出血

びらんを持っていても、ほとんどの女性が無症状で過ごします。しかし、びらんの部分は細菌や外部からの刺激に対して抵抗力が弱く、炎症のために下り物が増えたり、接触出血といって、性行為やタンポンなどによって刺激を受けると、出血することがあります。また、子宮頸管炎などの感染症が起こりやすくなります。

特にひどい症状がなければ、治療の必要はありません。ただ、びらんが大きい場合、下り物が多い場合や、不正出血、性交後の出血を何回も繰り返す場合は、治療をするほうがいいことなります。

まず、びらんに対する治療は別として、膣の洗浄や、抗生物質の膣錠を使うことによって炎症をとると、症状は軽くなります。この治療によっても症状が改善しない場合は、凍結療法やレーザー療法などでびらんを取り去り、その後に健康な上皮が形成されるのを待ちます。

なお、子宮頸がんの初期には、子宮腟部の粘膜にびらんの時と同じような変化が見られます。そのため、子宮腟部びらんのある場合は、がんの検査を行うのが一般的です。

🇪🇬子宮内膜炎

細菌の感染で炎症が起きる疾患

子宮内膜炎とは、子宮に何らかの原因で細菌が入り、子宮内腔(ないくう)を覆う子宮内膜に炎症を起こす疾患。子宮内膜症とは異なる疾患です。

急性子宮内膜炎と慢性子宮内膜炎とに分類できます。急性子宮内膜炎は、子宮内膜の機能層に感染が起こるもので、月経の際に機能層がはがれることにより、侵入した細菌も体外に排出されて、自然に治ることもあります。

慢性子宮内膜炎は、子宮内膜の基底層まで感染が波及しているもので、月経の際に基底層が排出されないため、感染は慢性化します。基底層に残る細菌は、再生されてくる機能層で再度、感染します。

多くの子宮内膜炎は、妊娠や出産、流産、中絶後の子宮頸管(けいかん)が開いている時に、細菌が上昇しやすくなって発症します。

また、女性ホルモンの分泌が減る更年期や老年期には、女性ホルモンの作用が弱まるために細菌が入りやすくなって、炎症を起こすことがあります。この老年期の子宮内膜炎では、慢性に経過し、子宮頸管の狭窄(きょうさく)や閉鎖を伴うと、子宮瘤(りゅう)膿腫(のうしゅ)を形成することもあります。

原因となる細菌は、大腸菌、腸球菌、連鎖球菌、ブドウ球菌、結核菌、淋(りん)菌などで、性感染症として増加しているクラミジアなどの病原体に感染して、炎症を起こすことも増加中。

腟(ちつ)炎や子宮頸管炎から、子宮内膜炎に移行することもあります。女性にとって腟や頸管がヒリヒリ痛かったり、かゆいというのは珍しいことではありませんが、子宮の中まで菌が入り、炎症が拡大する可能性があります。

細菌の感染経路は、膣からの上行性感染によるものが大部分で、まれにリンパ行性、血行性、下行性感染も認められます。下行性感染は腹腔内から卵管を介して、主に結核菌に感染するもので、卵管結核から子宮内膜へ波及します。この結核性の子宮内膜炎では、慢性に経過します。

さらに、医療機関において、子宮内膜生検、子宮卵管造影、卵管通水術などの子宮内操作時に、細菌が侵入することもあります。

症状としては、下腹部の不快感、下腹部痛、微熱などの症状が多いのですが、悪臭のある膿性の下り物、褐色の下り物、不正出血、排便痛、排尿痛などもみられることがあります。 一般に、全身的な症状はあまりみられません。

医師による治療と日常生活での注意点

下腹部痛や異常な下り物があれば、産婦人科を受診します。炎症後に不妊症になる恐れがありますので、完全に治療する必要があるのです。

医師の内診により、子宮に圧痛が認められます。子宮からの分泌物の培養により、炎症を起こしている起炎菌が特定された場合には、その菌に感受性のある抗生物質が使用されます。起炎菌が特定されるまでの間は、通常、効果の範囲が広い抗生物質を使用します。また、消炎剤、解熱剤を併用することもあります。

流産後や出産後では、子宮収縮薬を併用することで、子宮内腔に残った組織の排出を促すこともあります。子宮瘤膿腫を形成している場合には、頸管を開いて、膿(うみ)を排出する必要が生じます。

病気が進行して、卵管、卵巣、腹膜などの周囲の臓器にも影響が及ぶ時は、入院治療や手術が必要になる場合があります。

生活上の注意点として、子宮が炎症を起こしている期間は、下腹部を温めるのは避け、入浴はシャワーのみとします。性行為もパートナーの理解を得て、控えます。特に、流産後、人工妊娠中絶後には、十分に休養して、出血中は性交を控えることが、予防として大切です。ふだんから、不潔な性交を避けることも大切。

🇪🇬子宮内膜症

増えている3大子宮トラブルの1つ

子宮内膜症とは、子宮内膜と同じ組織細胞が子宮内腔(ないくう)以外の部位に発生し、女性ホルモンのエストロゲンの刺激を受けて増殖する疾患です。

子宮内膜症の大部分は骨盤内に位置する、子宮筋肉の中、子宮の外側、子宮の外の卵巣、卵管、S字結腸、骨盤腹膜、直腸、膀胱(ぼうこう)に発生し、その病変部は月経の際に、子宮内膜と同じようにはがれて出血します。

生殖年齢にある女性の10~15パーセントに、子宮内膜症が存在するといわれていますが、特に最近増えています。子宮筋腫(きんしゅ)、子宮頸がんとともに、3大子宮トラブルの1つといえます。

子宮内膜症が増えている理由としては、腹腔鏡検査が進んで診断能力が向上したため病気が見付かっていること、初婚年齢と初産年齢が上がっていること、出産回数が減少していることなどが指摘されています。

なぜ、子宮の内面の壁にあるべき組織が、子宮筋肉や子宮の外側、子宮の外など別のところに散らばって存在するのか。原因はよくわかっていませんが、子宮内膜移植説と体腔上皮化生説の2つが有力です。

子宮内膜移植説は、卵管を経て逆流した月経血中にある子宮内膜細胞が腹腔内に到達し、腹腔面に生着するという説です。一方、体腔上皮化生説は、腹膜内の組織細胞がエストロゲンや月経血の刺激を受け、子宮内膜の組織細胞のように変化して、子宮内膜症が発生するというものです。

症状の特徴は疼痛と不妊

主な症状は、月経困難症と同じ疼痛(とうつう)で、月経時の腰痛、下腹部痛、下痢、または便秘などを起こします。月経時以外の排卵の時や、排便時、性交時に、痛みを感じることも多くみられます。

また、子宮内膜症になると、不妊になる率が高いことがよく知られています。卵管や卵巣の周囲に病変が発生した場合には、癒着により卵管が狭くなったり、閉鎖したりします。それにより卵管の可動性が失われて、卵巣から排卵された卵子の卵管内に取り入れが損なわれるため、不妊症になることがしばしばあります。

卵巣内で病巣が増殖すると、毎月、卵巣にチョコレート状になった古い血液がたまって大きく膨れ、いわゆるチョコレート嚢腫(のうしゅ)になります。この嚢腫は大きくなると破裂することがあり、突然の激しい下腹部痛や吐き気、嘔吐(おうと)、時に発熱などがみられることがあります。

子宮内膜症は徐々に進行するとされていますが、長年に渡って変化しない場合もあります。また、妊娠、出産を契機に治ることもあります。閉経後は卵巣機能がなくなり低エストロゲン状態になるので、病巣は自然に委縮し、症状もなくなります。

検査と診断と治療の方法

激しい月経痛があったら、子宮内膜症を疑ってみるべきです。妊娠を望んでいるのに、なかなか妊娠しないことも一つのサイン。

医師による診断は、内診、超音波検査、MRI、腹腔鏡検査などにより行われます。

治療には薬物療法と手術療法がありますが、どちらを選択するかは、症状の種類、程度、進行度、年齢、子供をつくる希望の有無などを総合的に考慮して決めます。

薬物療法としては、月経時だけ鎮痛薬を服用する対症療法があります。軽い子宮内膜症は、ホルモン剤を内服したり、鼻から噴霧することで治療します。

また、経口避妊薬による偽(ぎ)妊娠療法、男性ホルモン誘導体のダナゾールやGnRHアゴニストによる偽閉経療法があります。偽妊娠療法は疑似的に妊娠したような状態にするもので、偽閉経療法は疑似的に閉経したような状態にするものです。ダナゾール、GnRHアゴニストの両薬はその作用は異なりますが、内膜の増殖を抑える働きがあり、一般に6カ月間、服用します。

手術療法は、癒着がひどくなったり、卵巣がはれた場合に行われますが、根治手術、準根治手術、保存手術の別があります。

根治手術は、子宮摘出と同時に、両側の付属器である卵巣、卵管を摘出する手術です。子供を希望せず、薬物療法が無効な重症例が対象となります。

準根治手術は、子宮全摘と病巣の摘出を行う手術です。正常な卵巣を可能な限り残すことによって、術後の肩凝り、のぼせ、発汗などの卵巣機能欠落症状が防止できます。しかし、子宮内膜症の再発を完全に否定することはできません。

保存手術は、病巣だけを摘出して子宮や卵巣を温存し、妊娠する能力を残すために行う手術で、開腹手術と腹腔鏡で行う手術とに分けられます。開腹手術では、病巣の摘出、形成、癒着の剥離(はくり)、子宮位置の矯正などが行われます。腹腔鏡下手術では、病巣の焼灼(しょうしゃく)、癒着の剥離、チョコレート嚢腫の摘出などが行われます。

🇩🇿思春期早発症

二次性徴の成熟が早い年齢で起こる疾患

思春期早発症とは、男性ホルモン、女性ホルモンの分泌による二次性徴の成熟が、2〜3年程度早い年齢で起こる疾患。

女子では、乳房が少しでも膨らんできた時が、思春期の開始です。この乳房の発育が7歳6カ月以前に起こった時、思春期早発症の可能性が高いといえます。8歳より前に陰毛が生えてくる、10歳6カ月より前に月経が発来するなどの症状も認めます。

乳房発育だけがみられる時は、女性ホルモンの分泌の一過性の高進によると考えられる乳房早期発育症との区別が必要です。

男子では、精巣( 睾丸〔こうがん〕)が4ミリリットル以上の大きさになった時が、思春期の開始です。この精巣の発育が9歳未満で起こった時、思春期早発症の可能性が非常に高いといえます。10歳より前に陰毛が生えてくる、11歳より前にひげが生えたり、声変わりするなどの症状も認めます。

思春期早発症は、中枢性(真性)思春期早発症と、末梢(まっしょう)性(仮性)思春期早発症に分類されます。さらに、中枢性思春期早発症は、胚芽腫(はいがしゅ)・過誤腫・星状細胞腫などの脳腫瘍や脳炎後遺症、水頭症などによる器質性(中枢性)思春期早発症と、明らかな原因が認められない特発性(中枢性)思春期早発症の2つに大きく分けられます。

中枢性思春期早発症は、通常の思春期の時のように下垂体(脳下垂体)から性腺(せいせん)刺激ホルモンが分泌され、それにより性腺から性ホルモンが分泌されて起こります。女子に起こるものの多くは、原因不明の特発性思春期早発症ですが、男子に起こるものは脳腫瘍などによる器質性思春期早発症が多くみられます。

末梢性思春期早発症の場合は、性腺または副腎(ふくじん)で性ホルモンがつくられて、思春期早発症が起こります。副腎腫瘍、卵巣腫瘍、精巣腫瘍、治療不十分な先天性副腎皮質過形成症、特殊な遺伝子異常によるマッキューン・オルブライト症候群、家族性男性性早熟症などがその原因です。

性ホルモンが早期に分泌されることにより、成長のスパート(急激な進行)が起こります。女子に男子の約3〜5倍多く、起こります。

原因が脳腫瘍による場合は、腫瘍の圧迫症状による頭痛、視野狭窄(きょうさく)などが起こることがあります。

未治療で放置すると、実際の年齢に対して、実際のその人の体の年齢を現す骨年齢が促進して、骨が成長する骨端(こったん)が早期に融合するため、一時的に身長が伸びた後、最終的に低身長で成長が終わります。

低年齢で乳房が大きくなってきた場合や、急に背が伸びてきた場合には、小児内分泌科などを受診することが勧められます。

思春期早発症の検査と診断と治療

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による診断では、問診でいつごろから、どのような症状が始まったかを聞き、視診と触診で全身および外性器の性成熟の状態をチェックします。

また、ホルモン検査で血液中の性腺刺激ホルモンや性ホルモンの分泌状態、頭部MRI(磁気共鳴画像撮影)検査で脳腫瘍などの病変の有無、腹部超音波(エコー)検査で副腎や卵巣の腫瘍の有無を調べることもあります。手と手首のX線(レントゲン)検査を行い、骨年齢を判定して骨の成熟の有無を調べることもあります。

中枢性思春期早発症の場合は、ホルモン検査で性腺刺激ホルモンと性ホルモンの基礎値の上昇が認められるとともに、LHーRH( 黄体形成ホルモン放出ホルモン)テストで性腺刺激ホルモンの思春期レベルの反応が認められます。また、骨年齢が促進し、成長率も高くなります。

末梢性思春期早発症の場合は、性ホルモンの上昇は認められますが、性腺刺激ホルモンの分泌は抑制されています。

小児内分泌科、小児科、内分泌科、内分泌内科、内分泌代謝内科の医師による治療では、中枢性思春期早発症の場合、LHーRHアナログという薬剤で選択的に性腺刺激ホルモンの分泌を抑えます。月に1回の皮下注射を行うことで、多くの場合は著しい効果を示し、二次性徴の進行停止、退縮がみられ、骨年齢の進行が緩やかになります。

器質性中枢性思春期早発症の場合、脳腫瘍が原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出します。手術により切除が難しい場合は、放射線治療や化学療法(抗がん剤)を行います。しかし、過誤腫が原因であれば、腫瘍そのものによる圧迫症状などがなければ、薬物療法を行います。また、脳炎後遺症、水頭症が原因であれば、薬物療法を行います。

末梢性思春期早発症の場合、先天性副腎皮質過形成症が原因であれば、副腎皮質ホルモン治療を行います。副腎腫瘍、卵巣腫瘍などが原因であれば、外科手術により腫瘍を摘出します。

🇩🇿思春期遅発症

思春期による体の変化が現れるのが遅れたり、現れても止まったりする状態

思春期遅発症とは、思春期の二次性徴が正常範囲の年齢を過ぎても現れなかったり、現れても不完全なまま体の変化が止まったり、消失する状態。

思春期は、子供が成長し大人になっていく過程で、男子は男子らしく、女子は女子らしく体が変化し、著しい身長の伸びを認める時期を指しています。思春期が始まる時期は、一般的には女子のほうが男子より早く、女子は10歳ころ、男子は12歳ころです。また、思春期が始まる時期には、個人差があり、親や兄弟姉妹に似る傾向があります。

女子では、12〜13歳になっても乳房が膨らんでこない、14歳までに恥毛が生えない、16歳前に初経が発来しないことが、思春期遅発症の目安となります。男子では、14歳になっても精巣の大きさが4ミリリットルを超えない、14歳前に精巣や陰茎の発育があっても18歳までに発育が完成しない、15歳までに恥毛が生えないことが、思春期遅発症の目安となります。

その原因は、病的なものでなければ体質や低栄養によるものがほとんどですが、場合によっては、女子におけるターナー症候群、男子におけるクラインフェルター症候群という染色体異常、視床下部の下垂体異常、副腎(ふくじん)疾患、甲状腺(こうじょせん)機能低下症、脳腫瘍(しゅよう)、慢性消耗性疾患、中枢神経系疾患、神経性食思不振症、愛情遮断症候群、女子における原発性無月経や過激な身体活動などの可能性もあります。

思春期遅発症は、男子のほうに多くみられます。また、背の低い子供に多くみられます。思春期を迎えてもよいような時期に幼児体形であったり、ほかの子供と比べて学年が2~3年くらい違って見えるような場合に、思春期遅発症が疑われます。

子供の発育には個人差もあるので、思春期の想定期に何らかの二次性徴が現れない場合は、まずは産婦人科、内科、内分泌・代謝科などを受診し、検査を受けて原因を確かめることが勧められます。

思春期遅発症の検査と診断と治療

産婦人科、内科、内分泌・代謝科などの医師による診断では、身長、体重、乳房、腋毛(わきげ)や陰毛の状態、肥満ややせの有無とその程度を調べます。

特に大切なのは、性器の注意深い診察で、女子における陰核の発育の程度、陰核肥大の有無、膣(ちつ)や子宮の形態異常、男子における陰茎の発育の程度について調べることです。そして、内分泌機能評価、染色体分析などの検査を行っていきます。

副腎疾患の疑いがある場合は、頭部や腹部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。

産婦人科、内科、内分泌・代謝科などの医師による治療では、思春期遅発症の原因が疾患の場合、その疾患の治療を行います。

原因が不明の場合、多くは治療を行わずに経過を見ながら、自然に思春期が訪れるのを待ちます。経過観察を続けても一向に第二次性徴の兆しが認められなかったり、著しく成長が遅れている場合、原因がわかっている場合、女子では女性ホルモンや性腺刺激ホルモンを投与し、男子では男性ホルモンであるエナンテストステロンを投与します。

🇹🇳思春期乳腺肥大症

思春期において乳房に過度の成長を生じる疾患

思春期乳腺(にゅうせん)肥大症とは、女性の乳房が成長してくる思春期において、乳房に過度の成長を生じる珍しい疾患。乳腺肥大症の一種です。

原因は、卵巣から分泌されている女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)などに対する乳腺の過敏反応です。

具体的な症状は、両方の乳房の過度の肥大、あるいは片方の乳房のみの過度の肥大で、発症するのは、初めて月経を経験する初潮の1年前後です。

肥大の程度は、人によってさまざまですが、短期間で急成長するのが特徴で、重症の場合は、乳房の重さが片方で10キログラムを超えることもあります。極度の重症の場合は、30キログラムにも過度に肥大化し、陰核の肥大を伴うこともあります。

この急成長は、身体的な不快感を引き起こします。その主な症状は、乳房の皮膚の赤みやかゆみで、時に乳房全般の痛みを生じます。乳房の重さのせいで、ブラジャーのストラップが肩にへこみをつくり、その慢性的な刺激によって消えない傷跡を残すこともあります。

そのほかにも、頭痛や頸(けい)痛、上背痛、腰痛、指のまひや痛みを併発します。

異常に気付いたら、婦人科、乳腺外科、外科、形成外科を受診することが勧められます。また。乳房が過度に肥大することで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。

また、女性に限らず、思春期を迎えた男性もホルモンの影響など女性化によって、思春期乳腺肥大症を発症し、乳房が肥大することがあります。

本来、男性の乳房は女性の乳房のように発育しませんが、乳房に膨らみや、しこりが現れたり、自発痛や圧痛を感じることがあります。これを思春期乳腺肥大症、あるいは女性化乳房症とも呼びます。

この思春期乳腺肥大症は、両側もしくは片側の乳腺が一時的に増殖して、乳頭部や乳輪の下に腫瘍(しゅよう)のようなものが現れる症状をいいます。

これは、思春期の生理的なホルモンバランスの乱れによる一過性のもので、思春期の13~14歳に起こり、男性ホルモンと女性ホルモンのバランスが崩れるのが原因となって、乳腺が異常に増殖して乳房が肥大します。普通は、ほうっておけば自然によくなります。

男性の思春期乳腺肥大症の多くは問題のないものですが、原因がはっきりしないものもあり、乳がんなどのほかの疾患と区別するためには、外科、乳腺外科を受診することが勧められます。また、女性のように乳房が大きくなることで、特に思春期で大きな悩み、心の負担になるような場合は、美容外科や美容皮膚科などを受診し、美容的な乳房の外科手術などを受けることも勧められます。

思春期乳腺肥大症の検査と診断と治療

乳腺外科、外科、形成外科、婦人科などの医師による診断では、視診、触診と、乳がんと鑑別するための超音波(エコー)検査、マンモグラフィー(乳房X線検査)を行います。また、 血液検査で、ホルモンの異常がないかどうか確認します。

乳腺外科、外科、形成外科、婦人科などの医師による治療では、女性の思春期乳腺肥大症の場合、根本的に治療する方法がないため、希望する際は整復乳房形成術とも呼ばれる乳房縮小手術を行い、余分な脂肪組織、肥大した乳腺組織、また皮膚を取り除きます。

手術後、乳房はガーゼのような包帯で覆い、手術後のはれから排出される余分な水分を排液するためのドレーンチューブを乳房に留置することもあります。通常、特別な軟らかいブラジャーを着用できるようになるまでには1週間ほどかかり、数週間は着用する必要があります。また、はれが完全にひくまでに数カ月かかります。

男性の思春期乳腺肥大症の場合、原則的には経過観察のみで薬物療法などの治療は必要ありません。痛みがひどい時は、状況によって非ステロイド系の消炎鎮痛剤を使い、痛みを和らげます。

女性のように乳房が大きくなることで悩んでいる際は、女性の場合と同じく、乳房縮小手術を行い、肥大した乳腺の組織をほぼ全部、または一部切除します。

手術後、乳腺を切除した部分に空洞ができるため、血液がたまって血腫ができた場合は、ドレーンチューブを留置します。細菌が感染した場合は、抗生物質を投与したり、乳腺を切除した部分を洗浄したりしながら経過をみていきます。乳頭部や乳輪の血流障害や皮膚の壊死が起こった場合は、皮膚がゆっくり覆うのを待つ必要があります。

🇧🇧しみ(肝斑)

30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑

しみにもいろいろな種類がありますが、肝斑(かんぱん)とは30歳以後の女性の顔にできやすい、薄い褐色の色素斑。肝臓の疾患とは関係がありません。

日本人女性の皮膚には肝斑ができやすく、皮膚の色が浅黒い人ほどできやすいといわれています。30歳代、40歳代の女性に多くみられますが、50歳代後半で新たに発症する人はほとんどみられません。逆に、60歳代からは症状が治まることも多いともいわれています。 日本男性に肝斑ができることは、めったにありません。

肝斑の症状は、特に額、ほお骨の辺り、口の回りに左右対称に広がるように、淡褐色のしみが生じます。目の周囲にはできず、色が抜けたように見える点が特徴的です。

原因の一つとして、女性ホルモン、特に卵胞ホルモンと黄体ホルモンとの関連が指摘されています。ホルモンバランスの乱れる妊娠時、更年期、婦人科の疾患にかかった時、ピル(経口避妊薬)内服中も、できやすいといわれています。

妊娠時に現れる場合は、妊娠2~3カ月ころからできることが多く、次第に色が濃くなります。出産後には少しずつ消えていく場合もありますが、長期に持続する場合もあります。

また、原因の一つとして、紫外線が重要であると考えられています。紫外線に当たりやすい個所に症状が現れやすく、実際に紫外線を浴びることが症状の悪化と関連している場合が多いのです。

紫外線が皮膚に当たると、皮膚はダメージを受けることになります。そのダメージから皮膚を守るために働くのがメラニン色素で、表皮にあるメラノサイトという細胞が作り出すメラニン色素は、少しずつ皮膚の表面に浮かび上がって皮膚を守ろうとします。役目が終わると、皮膚の新陳代謝とともにメラニン色素ははがれ落ちますが、年齢を重ねるごとに新陳代謝が鈍くなる結果、メラニン色素が皮膚の表面に長期的に滞留し、肝斑となっていきます。

原因として、ストレスも関係しているともいわれています。そもそも、メラノサイトは紫外線やホルモンの影響を受けて、メラニン色素を作り出します。そのホルモンの分泌に大きく関わってくるのが、ストレスを始めとする不規則な生活、睡眠不足などです。

初めにかゆみや皮膚の赤みがあって、後に褐色の色が付いてくるものや、顔以外の個所にできるものは、肝斑とは違うほかの疾患が考えられます。

また、肝斑と思っても、時には化粧品による接触皮膚炎か薬疹(やくしん)、エリテマトーデス、老人性色素斑(日光性黒子)などの場合もあります。

しみ(肝斑)の検査と診断と治療

肝斑には、内服剤によって体の内側から働きかける治療が最も効果的といわれています。内服剤の場合、その有効成分は血流に乗って皮膚の隅々まで届けられ、表皮の深い所にあるメラノサイトに、より効果を発揮します。内服するものとしては、色素沈着抑制効果を持つトラネキサム酸、ビタミンC、ビタミンEなどがあります。

外用療法としては、コケモモの抽出成分であるアルブチン、甘草の油性抽出エキス(コラージュホワイトニングクリーム)、1パーセントのコウジ酸クリーム(ビオナチュール、フェスモ)などの美白剤の塗布が効果的とされています。皮膚には角層などのバリア機能があるため、美白剤はバリアを通過してメラノサイトに到達します。

外科的療法としては、光治療、皮膚のターンオーバーを促進させてメラニンの排出を促すケミカルピーリング、ビタミンC誘導体イオン導入、メラニンを含む細胞を破壊する高周波での焼灼(しょうしゃく)、液体窒素による冷凍凝固などが、必要に応じて用いられます。ただし、いずれも即効性があるわけではなく、時間がかかることが多いようです。また、高周波での焼灼は、悪化の原因となる可能性を否定できないので、注意が必要です。

日常生活では、外出に際して帽子や日傘を活用して紫外線をできるだけ避けたり、皮膚をケアするだけでなく、生活リズムを整えること、うまくリラックスすること、睡眠時間を十分に取ることなど、ストレスや疲労をためないようにする工夫も重要です。

皮膚のケアでは、刺激を与えないことが大切で、合わない化粧品を使わないことです。最近では、気になる皮膚のトラブルをケアするさまざまな化粧品が登場していますが、使った時に少しでも違和感があるなら、使うのをやめます。ピリピリとした刺激によって、肝斑が増えることもあります。例えばファンデーションの場合、伸びをよくし、水に強く、化粧持ちをよくするため、原料に防腐剤や界面活性剤などが含まれているものもあります。こうした物質や油分の酸化が、皮膚への刺激となって、肝斑が増えることもあります。

また、こすってメイクを落とし、その後ゴシゴシと洗顔したり、クリームを使って強い力でマッサージを行うことも、皮膚にかなりの刺激を与え、結果的に肝斑を増やす原因になることも少なくありません。

🇸🇷若年性更年期障害

20〜30歳代でほてり、のぼせなどの更年期障害と同じ症状がみられる状態

若年性更年期障害とは、20~30歳代の女性に、ほてりやのぼせ、手足の冷え、うつ、不安など更年期障害と同じ症状がみられる状態。一般的な更年期障害は、閉経を迎える45〜55歳くらいの年齢にみられます。

女性はストレスがたまったり、体が不調になると、月経の周期が短くなったり長くなったりして生理不順がみられるようになり、無月経もみられます。医学的には無月経の期間が半年ぐらいであれば、続発性無月経と呼びます。1年以上無月経が続くと閉経と見なされ、通常では43歳以前に閉経となることを早発閉経と呼びます。このような状態は病的な状態と考えられます。

早発閉経の場合、卵巣機能低下症(卵巣機能不全)というものがその原因であることが多く、女性ホルモン(エストロゲン)の分泌が低下することから、卵巣機能が正常に機能しなくなり閉経に至ります。若年性更年期障害を訴える女性の中には、卵巣機能低下症などさまざまな原因で、実際に早期閉経を来している人も含まれていますが、20〜30歳代で本当に閉経を迎える人はごく少数です。

若年性更年期障害の原因は、強いストレスを受ける生活環境、過度のダイエットや外食中心の食生活、極端な偏食がもたらす栄養バランスの悪い生活、喫煙などが考えられます。スポーツ選手などの場合、過激な運動が原因になることもあります。

このような原因があると、年齢に関係なく、脳の視床下部から出る女性ホルモンを出すための卵巣への指令がうまく働かず、女性ホルモンの分泌を促すことができなくなり、ホルモンのバランスが乱れて、更年期と同じような症状が現れると考えられています。

卵巣機能の低下や女性ホルモンの欠乏、ホルモンバランスの乱れによる若年性更年期障害の症状としては、心身両面に渡る多彩な症状(不定愁訴)がみられます。 

1.自律神経失調症状 

 血管運動神経系障害の症状

 ほてり、のぼせ(ホットフラッシュ)、冷え症、熱感、発汗、寝汗、動悸(どうき)、頭痛

 運動器系障害の症状

 腰痛、肩凝り、関節痛

 胃腸系障害の症状

 悪心、嘔吐(おうと)、腹痛、便秘、下痢、腹部膨満、食欲低下

 泌尿器系障害の症状

 頻尿 

2.精神神経系障害の症状

 イライラ、不安、不眠、記憶力減退、物忘れ、頭痛、頭重感、めまい、耳鳴り、抑うつ、気分減退、倦怠(けんたい)感、しびれ、知覚過敏、知覚鈍麻、蟻走(ぎそう)感(アリが体をはうような感じ) 

3.生理の状態、性器系障害の症状

 生理不順、無月経、不正出血、乾燥による性交障害

 これらの症状の出現頻度や程度は、個人差がかなりあります。さらに、1日でも程度が異なります。

若年性更年期障害の症状は、長く放置すると、治療をしても回復しなくなることもあり、本当の更年期が来た時により重い症状が出やすいともいわれています。心当たりのある人は要注意で、早発閉経なのか、単に卵巣機能の低下や女性ホルモンの欠乏、ホルモンバランスの乱れなのかを確かめる意味でも、早めに婦人科の医師の診断を受けることが勧められます。

体温の高低は、女性ホルモンの分泌の変化を現します。ふだんから月経周期や基礎体温を記録して、その記録を持って婦人科にいけば、診断の際の重要なデータとなり、早く適切な処置をしてもらえます。

若年性更年期障害の検査と診断と治療

婦人科の医師の診断ではまず、早発閉経なのか、卵巣機能の低下や女性ホルモンの欠乏、ホルモンバランスの乱れが原因なのかを確かめます。これは、血液検査で調べることができ、血液中の女性ホルモン(エストロゲン)や、脳の視床下部から分泌される性腺(せいせん)刺激ホルモンの量をみます。早発閉経の場合は、エストラジオール(最も作用の強い卵胞ホルモン)の量が3分の1以下に低下していますが、卵巣機能の低下程度ならばそれほど激しい低下はありません。

この結果、早発閉経と診断された場合には、骨粗鬆(こつそしょう)症や高脂血症など閉経後に増える疾患が出てくる可能性も高くなるので、ホルモン補充療法などで積極的に治療することが必要になります。卵巣の機能が低下していたり、ホルモンの分泌量が少ない場合も、それぞれに適したホルモンの補充やホルモン分泌を促す薬が使われます。

一方、卵巣機能やホルモンの量には問題がなく、ホルモン分泌がスムーズに行っていない場合は、まず生活を見直すことでホルモンバランスの改善を図ります。仕事や人間関係のストレス、過度のダイエットや不規則な生活など、思い当たることがあればまずこれを改善します。

ストレスや悩みがあるなら、あまり考え込まず、ちょっと体を動かすとか、気分転換に散歩をする、ゆっくり風呂に入りリラックスをする、趣味の時間を作る、友人と話す機会を増やすなどで解消してみましょう。また、座りっ放しや、同じ体勢で仕事をしている場合は、時々体操をしたり、体勢を変えるなどして、体を動かして体全体の血液の流れをよくしましょう。

若年性更年期障害の症状を和らげるには、このようにちょっと体を動かすことや、肩の力を抜き頑張りすぎないことが重要になってきます。体を動かすことは、運動不足からも起こるといわれている月経周期の乱れの改善にも、役立ちます。

ダイエットも体調が回復するまでは中止、その後もこの体験を教訓に食べすぎない程度にとどめることを考えます。

🟧RSウイルス感染症が「流行入り」 静岡県が注意呼び掛け

 静岡県は26日、直近1週間(15~21日)のデータから「RSウイルス感染症が流行入りしている」と発表しました。定点医療機関となっている小児科1カ所当たりの患者数は1・64人で、県が流行入りの目安としている「1人」を大きく上回りました。前週の0・9人よりも8割増加し、急拡大が懸...