思春期による体の変化が現れるのが遅れたり、現れても止まったりする状態
思春期遅発症とは、思春期の二次性徴が正常範囲の年齢を過ぎても現れなかったり、現れても不完全なまま体の変化が止まったり、消失する状態。
思春期は、子供が成長し大人になっていく過程で、男子は男子らしく、女子は女子らしく体が変化し、著しい身長の伸びを認める時期を指しています。思春期が始まる時期は、一般的には女子のほうが男子より早く、女子は10歳ころ、男子は12歳ころです。また、思春期が始まる時期には、個人差があり、親や兄弟姉妹に似る傾向があります。
女子では、12〜13歳になっても乳房が膨らんでこない、14歳までに恥毛が生えない、16歳前に初経が発来しないことが、思春期遅発症の目安となります。男子では、14歳になっても精巣の大きさが4ミリリットルを超えない、14歳前に精巣や陰茎の発育があっても18歳までに発育が完成しない、15歳までに恥毛が生えないことが、思春期遅発症の目安となります。
その原因は、病的なものでなければ体質や低栄養によるものがほとんどですが、場合によっては、女子におけるターナー症候群、男子におけるクラインフェルター症候群という染色体異常、視床下部の下垂体異常、副腎(ふくじん)疾患、甲状腺(こうじょせん)機能低下症、脳腫瘍(しゅよう)、慢性消耗性疾患、中枢神経系疾患、神経性食思不振症、愛情遮断症候群、女子における原発性無月経や過激な身体活動などの可能性もあります。
思春期遅発症は、男子のほうに多くみられます。また、背の低い子供に多くみられます。思春期を迎えてもよいような時期に幼児体形であったり、ほかの子供と比べて学年が2~3年くらい違って見えるような場合に、思春期遅発症が疑われます。
子供の発育には個人差もあるので、思春期の想定期に何らかの二次性徴が現れない場合は、まずは産婦人科、内科、内分泌・代謝科などを受診し、検査を受けて原因を確かめることが勧められます。
思春期遅発症の検査と診断と治療
産婦人科、内科、内分泌・代謝科などの医師による診断では、身長、体重、乳房、腋毛(わきげ)や陰毛の状態、肥満ややせの有無とその程度を調べます。
特に大切なのは、性器の注意深い診察で、女子における陰核の発育の程度、陰核肥大の有無、膣(ちつ)や子宮の形態異常、男子における陰茎の発育の程度について調べることです。そして、内分泌機能評価、染色体分析などの検査を行っていきます。
副腎疾患の疑いがある場合は、頭部や腹部のMRI(磁気共鳴画像撮影)検査やCT(コンピュータ断層撮影)検査を行います。
産婦人科、内科、内分泌・代謝科などの医師による治療では、思春期遅発症の原因が疾患の場合、その疾患の治療を行います。
原因が不明の場合、多くは治療を行わずに経過を見ながら、自然に思春期が訪れるのを待ちます。経過観察を続けても一向に第二次性徴の兆しが認められなかったり、著しく成長が遅れている場合、原因がわかっている場合、女子では女性ホルモンや性腺刺激ホルモンを投与し、男子では男性ホルモンであるエナンテストステロンを投与します。
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